説明

塗布装置、塗布装置の組み立て方法、塗布装置システム及びヘッド体作製用の架台

【課題】ヘッド体を装置本体の所定位置に簡単に取り付けることができ、さらに組み立て後に、ヘッド体の取り替え作業が容易となる塗布装置の組み立て方法を提供する。
【解決手段】ヘッド体作製工程では、規定形態のヘッド体を模写して得られたマスタMを用いて、ヘッド体7を当該マスタMと同じとなるようにして複数作製する。準備工程では、前記マスタMを設置部9の正規位置に位置合わせし、位置合わせした当該マスタMとの相対位置を定めて位置決定部材11を設置部9に固定する。取り付け工程では、前記マスタMを設置部9から取り外し、マスタMに代えて、作製したヘッド体7を、位置決定部材11に対する前記相対位置の関係を再現して、設置部9に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッド体の吐出口からインクを基板に対して吐出する塗布装置、この塗布装置の組み立て方法、塗布装置システム、及び、この組み立て方法で使用されるヘッド体作製用の架台に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、色形成の中核を成す部材としてカラーフィルタが用いられている。カラーフィルタは、ガラス基板上に微細なR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3色が多数並べられて形成されている。
近年、このカラーフィルタを効率よく製造する装置として、ガラス基板上に形成された多数の微細な画素部に、R、G、Bの各インクをインクジェットヘッドから供給して、R、G、Bの色画素を形成する塗布装置(インクジェット装置)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような塗布装置では、インクを吐出する吐出口を多数有しているヘッドが複数組み合わされて一つのヘッド体(ヘッド群)を構成し、さらに、このヘッド体を複数並べて設けたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−173548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記塗布装置では、R,G,Bの各インクを、ガラス基板上の微細な画素部毎に精度良く着弾させていく必要があるために、ヘッド体は、塗布装置の装置本体に、当該装置本体に規定されている座標軸に対して精度良く取り付けられている必要がある。
そこで、ヘッド体の取り付け精度を確認するために、実際にヘッド体を装置本体に搭載した後、装置本体に搭載されているカメラによってこれを撮像する方法がある。そして、得られた画像に基づいて判断し必要があれば、再度位置合わせを行う。しかしこの方法は時間と労力とが必要であり、特に、塗布装置は多くのヘッド体を有しているため、この作業を一つ一つ行うと、多くの時間と労力とが必要となる。
【0005】
さらに、装置本体に位置合わせして一旦取り付けられたヘッド体は、所定の使用期間が経過すると取り替えが必要となる。この場合、従来では取り替え作業の毎に、前記カメラを用いて新たなヘッド体を装置本体に対して再度位置合わせする必要がある。この取り替え作業に時間がかかるとメンテナンス時間が長くなり、塗布作業のロスタイムが増える。
そこで本発明は、ヘッド体を装置本体の所定位置に簡単に取り付けることができ、さらに組み立て後に、ヘッド体の取り替え作業が容易となる塗布装置、及びこの塗布装置の組み立て方法、塗布装置システム、及び、この組み立て方法で使用されるヘッド体作製用の架台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、インクの吐出口を多数有しているヘッド体を、装置本体の所定の設置部に複数取り付けて組み立てる塗布装置の組み立て方法であって、規定形態のヘッド体を模写して得られたマスタを用いて、前記設置部に取り付けられるヘッド体を当該マスタと同じとなるようにして複数作製するヘッド体作製工程と、前記マスタを前記設置部の正規位置に位置合わせし、位置合わせした当該マスタとの相対位置を定めて位置決定部材を当該設置部に固定する準備工程と、前記位置決定部材を前記設置部に固定したまま前記マスタを当該設置部から取り外し、当該マスタに代えて、作製した前記ヘッド体を、前記位置決定部材に対する前記相対位置の関係を再現して、前記設置部に取り付ける取り付け工程とを有していることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ヘッド体作製工程では、作製されたヘッド体は、どれもマスタと同じとなり規定形態を有する。準備工程では、マスタを設置部の正規位置に位置合わせし、このマスタとの相対位置を定めて位置決定部材を設置部に固定する。そして、取り付け工程では、設置部から取り外したマスタに代えて、ヘッド体作製工程で作製したヘッド体を、位置決定部材に対する前記相対位置の関係を再現して設置部に取り付ければ、当該ヘッド体を設置部の正規位置に簡単に取り付けることができる。
そして、この組み立て方法によって製造された塗布装置において、ヘッド体を交換する場合、古いヘッド体を設置部から取り除き、前記マスタに基づいて作製した新たなヘッド体を、再度、位置決定部材に対する前記相対位置の関係を再現して設置部に取り付ければ、従来のようにカメラを用いて位置合わせしなくても、新たなヘッド体を設置部の正規位置に取り付けることが可能となり、ヘッド体の取り替え作業が容易となる。
【0008】
また、前記準備工程では、前記位置決定部材と前記マスタとを平面方向に少なくとも3点で接触させて当該位置決定部材と当該マスタとの平面方向の変位が規制された状態とすることによって、当該位置決定部材と当該マスタとの平面方向の相対位置を定めるのが好ましい。
この場合、簡単な方法で、位置決定部材とマスタとの平面方向の相対位置を定めることができるので、準備工程が容易となる。
【0009】
また、前記塗布装置の組み立て方法において、前記マスタには、前記規定形態のヘッド体における多数の吐出口の配列方向を示すマスタ基準方向が設定され、前記ヘッド体作製工程では、前記マスタ基準方向が、ヘッド体作製用の架台に設定されている作製基準方向と一致するようにして、前記マスタを前記架台に位置合わせし、位置合わせした当該マスタとの相対位置を定めて位置調整部材を前記架台に固定し、前記位置調整部材を前記架台に固定したまま前記マスタを当該架台から取り外し、当該マスタに代えて、作製しようとする複数のヘッド体を、順次、前記位置調整部材に対する前記相対位置の関係を再現して、かつ、当該ヘッド体の吐出口の配列方向を前記作製基準方向と一致させて、前記架台上で作製するのが好ましい。
このヘッド体作製工程によれば、架台に設定されている作製基準方向とマスタ基準方向とが一致するようにして、マスタを架台に位置合わせし、このマスタとの相対位置を定めて位置調整部材を架台に固定する。そして、架台から取り外したマスタに代えて、作製しようとする複数のヘッド体を、順次、位置調整部材に対する前記相対位置の関係を再現して、かつ、当該ヘッド体の吐出口の配列方向を前記作製基準方向と一致させて、架台上で作製するので、作製するヘッド体の吐出口の配列方向とマスタ基準方向とが同じとなるヘッド体が、簡単に複数得られる。
【0010】
また、前記ヘッド体作製工程では、カメラ及びセンサを備えたヘッド体作製用の架台が用いられて、前記ヘッド体を複数作製し、前記準備工程及び前記取り付け工程は、前記装置本体において、前記カメラ及び前記センサと同じ構成である当該装置本体側のカメラ及び当該装置本体側のセンサを用いることによって前記架台における環境と同じとして、実行されるのが好ましい。
本発明によれば、塗布装置と架台とにおける環境が同じとなり、架台において作製したヘッド体を、塗布装置の装置本体において精度良く取り付けることができる。
【0011】
また、前記ヘッド体作製工程で用いられる本発明のヘッド体作製用の架台は、インクの吐出口を多数有しているヘッド及び当該ヘッドを位置調整可能に取り付けているヘッドフレームを有するヘッド体を、規定形態のヘッド体を模写して得られたマスタが用いられて、前記吐出口の配列方向が、前記マスタに設定されているマスタ基準方向に一致するようにして作製するための架台であって、前記マスタ及び前記ヘッド体を択一的に取り付け可能であるベース部と、前記ベース部において位置合わせする前記マスタの配置を撮像しかつ当該マスタの前記マスタ基準方向を特定すると共に、前記ベース部に取り付けられた前記ヘッド体の前記ヘッドの配置を撮像可能である撮像装置と、位置合わせされた前記マスタとの相対位置が定められて当該ベース部に固定されると共に、当該マスタに代えて、前記ヘッド体を前記相対位置の関係を再現させて当該ベース部に取り付けるための位置調整部材とを備えたことを特徴とするヘッド体作製用の架台。
【0012】
本発明によれば、撮像装置がマスタの配置を撮像して当該マスタをベース部において位置合わせすることができ、当該撮像装置によって、この位置合わせしたマスタのマスタ基準方向を特定する。そして、位置合わせされたマスタとの相対位置が定められてベース部に位置調整部材が固定されると、このマスタに代えて(マスタを取り外して)、ヘッド体を当該位置調整部材によって前記相対位置の関係を再現させてベース部に取り付ける。
前記位置合わせしたマスタのマスタ基準方向が撮像装置によって特定されていることから、ベース部に取り付けられたヘッド体のヘッドの配置を、前記撮像装置が撮像することで、特定されているマスタ基準方向に合わせて前記ヘッドの位置を調整することができ、マスタ基準方向にヘッドの吐出口の配列方向を一致させることが可能となる。
以上より、マスタと同じとなるようにして複数のヘッド体を作製することができる。
【0013】
また、前記位置調整部材は、上下方向を中心とした円弧部と前記円弧部に2点で接触する二つの壁面との内の一方を有する第一接触部と、前記マスタが点接触する第二接触部とを有しているのが好ましい。
上下方向を中心とした円弧部と、前記円弧部に2点で接触する二つの壁面との内の他方をマスタが有している場合、位置調整部材とマスタとが3点で接触した状態となることで、位置調整部材とマスタとの平面方向の変位が規制された状態となり、位置調整部材とマスタとの平面方向の相対位置が簡単に定められた状態となる。
【0014】
また、本発明の塗布装置は、規定形態のヘッド体を模写して得られたマスタ、及び、前記マスタと同じとなるようにして作製されたヘッド体を択一的に、正規位置に取り付け可能な設置部と、前記設置部において前記正規位置として位置合わせする前記マスタの配置を撮像する撮像装置と、前記正規位置に位置合わせして前記設置部に取り付けられた前記マスタとの相対位置が定められて当該設置部に固定される位置決定部材とを備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、撮像装置がマスタの配置を撮像して当該マスタを正規位置として設置部に位置合わせすることができる。そして、位置合わせされた前記マスタとの相対位置が定められて設置部に位置決定部材が固定されると、このマスタを取り外して、このマスタと同じとなるようにして作製されたヘッド体を設置部に取り付ける。この際、位置決定部材は、マスタとの相対位置が定められて設置部に固定されているので、この位置決定部材に対する前記相対位置の関係を再現して、ヘッド体を設置部に取り付ければ、当該ヘッド体は前記正規位置に位置合わせされた状態となり、ヘッド体の取り付けが簡単である。
そして、前記組み立て方法で説明したのと同様に、本発明の塗布装置においてヘッド体を交換する場合、従来のようにカメラを用いて設置部に対して位置合わせしなくても、新たなヘッド体を設置部の正規位置に取り付けることが可能となるので、ヘッド体の取り替え作業が容易となる。
【0016】
また本発明は、第一カメラ及び第一高さセンサを備え、当該第一カメラ及び当該第一高さセンサを用いて、規定形態のヘッド体を模写して得られたマスタと同じとなるようにしてヘッド体を複数作製するためのヘッド体作製用の架台と、第二カメラ及び第二高さセンサを備え、当該第二カメラ及び当該第二高さセンサを用いて、前記マスタが正規位置に位置合わせされると共に、位置合わせした当該マスタに代えて前記架台において作製された前記ヘッド体が前記正規位置に取り付けられる塗布装置とを備えた塗布装置システムであって、前記塗布装置と前記架台とにおける環境を同じとすべく、前記第一カメラ及び前記第一高さセンサと、前記第二カメラ及び前記第二高さセンサとは、同じ構成であることを特徴とする。
本発明によれば、塗布装置と架台とにおける環境が同じとなり、架台において作製したヘッド体を、塗布装置の正規位置に精度良く取り付けることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の塗布装置の組み立て方法及び塗布装置によれば、ヘッド体を設置部の正規位置に取り付けるのが容易となり、組み立て作業が簡単となる。また、ヘッド体の取り替えの際、従来のようにカメラを用いて位置合わせしなくても、新たなヘッド体を設置部の正規位置に取り付けることが可能となり、ヘッド体の取り替え作業が容易となる。
本発明のヘッド体作製用の架台によれば、マスタと同じとなるようにして複数のヘッド体を作製することができ、前記組み立て方法を実行し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】塗布装置の実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】設置部の平面図であり(a)はヘッド体が取り付けられた状態を示し、(b)はマスタが取り付けられた状態を示している。
【図3】ヘッド体の側面図である。
【図4】ヘッド体作製工程を説明するフロー図である。
【図5】マスタ及びその周辺部の平面図である。
【図6】マスタ及びその周辺部の側面図である。
【図7】架台の説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図8】準備工程及び取り付け工程を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔塗布装置の構成〕
図1は塗布装置の実施の一形態を示す斜視図である。塗布装置は、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)の各インクを基板Wに対して吐出することで、例えばカラー液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイに用いられるカラーフィルタを製造することができる。塗布装置は、装置本体8と、この装置本体8における各種動作を制御する制御装置(図示せず)とを備えている。装置本体8は、機台1、当該機台1上に設けられた吸着テーブル2、塗布ガントリ3、カメラガントリ4及びカメラ搭載フレーム15を備えている。
【0020】
吸着テーブル2は、平板状の基板Wを吸着保持することができ、さらに、基板Wを位置決めするために、Z方向の軸心周りに回転駆動される。なお、前記Z方向は鉛直方向であり、X方向及びY方向は水平面上の方向であり、X方向、Y方向及びZ方向は相互に直交する。
塗布ガントリ3は、複数個のインクジェットヘッド6(以下、ヘッド6という)を一組として有しているヘッド体(ヘッド群)7を、複数整列させて搭載したヘッド搭載部(ヘッド搭載フレーム)5を備えている。塗布ガントリ3は吸着テーブル2上の基板Wを跨ぐ形状であり、複数のヘッド体7は当該基板Wの上方に位置する。そして、ヘッド6から吐出させたインク(塗布液)を基板Wに塗布するために、塗布ガントリ3は、図示しない駆動機構及びガイド機構によってX方向に移動する。
【0021】
図2(a)はヘッド搭載部5の設置部9に取り付けられている一つのヘッド体7の平面図であり、図3はこのヘッド体7の側面図である。この実施形態では、ヘッド体7は、両端にフランジ部20a,20b,20cが形成された平面視ほぼU字型のヘッドフレーム20と、五つのヘッド6とを備え、これらヘッド6が一組となってヘッドフレーム20に搭載されて一つのヘッド体7を構成している。各ヘッド6は、インクを吐出する吐出口6aを多数下面に有している。また、各ヘッド6は、ヘッドフレーム20に対して位置調整可能であり、後述するヘッド体作製工程において、各ヘッド6は位置調整がされた後にねじ等によってヘッドフレーム20に固定される。また、この設置部9には、ヘッド体7毎に、位置決定部材11が設けられている。位置決定部材11の構成及び機能については後に説明する。
【0022】
図1において、カメラガントリ4は、吸着テーブル2上の基板Wを跨ぐ形状であり、図示しない駆動機構及びガイド機構によってX方向に移動する。
また、カメラ搭載フレーム15は、塗布ガントリ4の下部に設置されていて、このカメラ搭載フレーム15に、カメラ10a,10bを有している撮像装置10が搭載されている。撮像装置10は、図示しない駆動機構及びガイド機構によってX方向及びY方向に移動することができ、また、カメラ10a,10bの撮像方向は上方向であり、塗布ガントリ3のヘッド搭載部5を下から見上げた状態で撮像することができる構成である。さらに、撮像装置10は、カメラ10a,10bの画像を処理しモニタに表示させるための処理部(図示せず)を備えている。カメラ10a,10bの位置は、塗布装置(装置本体8)に規定されているXYZ座標系で制御されている。
撮像装置10の機能は後にも説明するが、規定形態のヘッド体を模写して得られたマスタM(図5参照)を、前記設置部9において正規位置として位置合わせするために、当該マスタMの配置を撮像する。なお、「正規位置」とは塗布作業のために機能上(及び設計上)求められているヘッド体7の取り付け位置である。「規定形態のヘッド体」及び「マスタM」については後に説明する。
【0023】
〔塗布装置の組み立て方法〕
図1において、装置本体8の所定の設置部9(ヘッド搭載部5)に、複数のヘッド体7を精度良く取り付けて塗布装置を組み立てる方法(製造方法)を説明する。この組み立て方法は、装置本体8外の領域でヘッド体7を複数作製するヘッド体作製工程と、装置本体8の設置部9に前記位置決定部材11を固定する準備工程と、ヘッド体作製工程で作製した複数のヘッド体7を順次設置部9に取り付ける取り付け工程とを有している。図4はヘッド体作製工程を説明するフロー図である。
【0024】
〔ヘッド体作製工程〕
前記「規定形態のヘッド体」及び前記「マスタM」について説明する。図5及び図6はマスタM及びその周辺部の平面図及び側面図である。「規定形態のヘッド体」は例えば設計上のヘッド体(設計図面で表されているヘッド体)であり、「マスタM」は、この規定形態のヘッド体を模写して得られたものである。作製するヘッド体7(図2(a)、図3)は、前記のとおりヘッドフレーム20と、このヘッドフレーム20に取り付けられているヘッド6とを有しているのに対して、マスタM(図5、図6)は、マスタフレームM1と、このマスタフレームM1に取り付けられているマスタヘッドM2とを有している。マスタフレームM1及びマスタヘッドM2は、設計値どおりに作製された理想的な形態を備えたヘッド体である。
なお、マスタMは、実際のヘッド体7とは異なり、吐出口やインクの流路等を有していなくてもよく、また、実際のヘッド体7は5つのヘッド6を有しているが、後に説明するヘッド体作製用の架台40を用いることで、マスタMは一つのマスタヘッドM2を有していればよい。マスタMは、ヘッド体7を作製するための雛型となればよい。
マスタMには、設計上の吐出口の配列方向を示す「マスタ基準方向」が設定されている。図6に示しているように、マスタヘッドM2の下面に板部材(例えばガラス板)M2aが設けられていて、図5(b)に示しているように、板部材M2aには、二点のアライメントマークm1,m2が設けられている。このアライメントマークm1,m2を結ぶ直線方向が、設計上の吐出口の配列方向を示す「マスタ基準方向(矢印A)」である。
【0025】
ヘッド体作製工程では、ヘッド体作製用の架台40により、前記マスタMを用いて、実際に設置部9に取り付けられるヘッド体7を当該マスタMと同じとなるようにして複数作製する。
ヘッド体作製用の架台40について説明する。図7は架台40の説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。ヘッド体作製用の架台40は塗布装置と別の独立した装置である。
架台40は、基台40aと、基台40上に設けられ、マスタM及びヘッド体7を択一的に取り付け可能なベース部41と、このベース部41に設けられている位置調整部材42と、マスタMのマスタヘッドM2の配置及びヘッド体7の各ヘッド6の配置を撮像可能である二台のカメラ43a,43bを有する撮像装置43とを備えている。撮像装置43は図示しないが、カメラの画像を処理しモニタに表示させるための処理部を備えている。図7は、ベース部41にヘッド体7が取り付けられている状態を示していて、図5及び図6が、ベース部41にマスタMが取り付けられている状態を示している。
【0026】
2台のカメラ43a,43bは、Y方向に並んでかつY方向に位置調整可能に設けられていて、撮影方向がZ方向上向きである。また、Y方向に並んだ状態でX方向にも移動できる。図7(a)において、架台40は「基準高さ位置L1」からヘッド6の下面(吐出口形成面)までの高さHを測定するセンサ55も備えている。センサ55及びカメラ43a,43bは、装置本体8のセンサ10c及びカメラ10a,10b(図1参照)と、同じ構成(同じ配置)である。センサ55は、Y方向に同軸で並んでいるカメラ43a,43bと同軸上に設置されている。「基準高さ位置L1」は、架台40に規定されている座標系における高さ方向(Z方向)の基準位置である。また、この座標系に基づいて架台40にはY方向の「作製基準方向」が設定されている(図5(a)参照)。
【0027】
この架台40を用いて行うヘッド体作製工程を具体的に説明する。マスタMが設計値どおりに作製されると(図4のステップS1)、図5及び図6に示しているように、このマスタMを架台40のベース部41に取り付ける(ステップS2)。この際、撮像装置43を用いて、マスタMの「マスタ基準方向A」が、架台40に設定されている「作製基準方向B」と一致するようにして、マスタMをベース部41に位置合わせする(ステップS3)。具体的に説明すると、図5(a)において、架台40の「作製基準方向B」の直線上に、それぞれの画像中心が並ぶようにカメラ43a,43bを配置する。そして、カメラ43a,43bそれぞれの画像中心に、マスタヘッドM2のアライメントマークm1,m2が一致するようにして、マスタM(マスタフレームM1)をベース部41の横桁部材41aに対して位置合わせする。これにより、マスタMが架台40に位置合わせされた状態となる(ステップS3)。
さらに、カメラ43a,43bの座標は、架台40に規定されている座標系において制御されているので、マスタMが位置合わされた状態では、撮像装置43によって、マスタヘッドM2のアライメントマークm1,m2の座標を取得することができ、マスタMの「マスタ基準方向A」を特定することができる(ステップS3−a)。
【0028】
このマスタMの位置合わせの際に前記位置調整部材42を用いてもよい。すなわち、図5(a)において、位置調整部材42は、ベース部41の横桁部材41a上面から立設しZ方向を中心とした円弧部44aを有する基準ピン(第一接触部)44と、マスタフレームM1のフランジ部M1aとX方向に1点で接触するZ方向を中心とした調節ピン(第二接触部)45とを有している。基準ピン44は横桁部材41aに固定されている。調節ピン45は可動片46上から立設していて、可動片46は、横桁部材41aに、Z方向の軸心47回りに(水平方向に)揺動することができるようにして取り付けられている。
マスタフレームM1のフランジ部M1bは、前記円弧部44aにX方向及びY方向に2点で接触する二つの壁面48a,48bを有している。壁面48a,48bは交差(直交)する面である。このため、可動片46上の調節ピン45によって押されるマスタフレームM1は、基準ピン44の軸心を中心として揺動することができる。このように、可動片46を揺動させることで、調節ピン45がマスタフレームM1を押し、マスタMの位置合わせに役立たせることができる。
また、可動片46の揺動を、偏心ピン49によって行うことができる。偏心ピン49は、横桁部材41a上面に形成された孔41bに挿入する細軸部と、可動片46に形成された長孔46aを挿通する太軸部とを有し、細軸部と太軸部とが偏心した形状である。この偏心ピン49の細軸部を孔41bに挿入した状態で偏心ピン49を回転させると、太軸部が長孔46aの壁面を押し、可動片46を微動させることができる。
【0029】
マスタMの位置合わせを終えると、位置合わせしたマスタMとの平面方向(X−Y方向)の相対位置を定めて、前記位置調整部材42をベース部41に固定する(ステップS4)。つまり、マスタフレームM1と位置調整部材42との間において、Y方向に1点で接触し、X方向に2点で接触していることから、マスタフレームM1と位置調整部材42との平面方向の変位(X方向一方側(図5(a)では左側)への変位、Y方向一方側(図5(a)では上側)への変位)が規制された状態となり、両者の平面方向の相対位置が定められた状態となる。この状態で、位置調整部材42の可動片46をねじ50によって横桁部材41aに固定する。これにより、位置調整部材42は、位置合わせしてベース部41に取り付けられたマスタMとの平面方向の相対位置が定められて、ベース部41に固定された状態となる。
【0030】
ベース部41は、マスタフレームM1及びヘッドフレーム20を択一的に取り付け可能であることから、位置調整部材42がベース部41に固定されたままの状態で、マスタMを当該ベース部41から取り外し(ステップS5)、このマスタMに代えて、図7に示しているように、作製しようとするヘッド体7を、ベース部41に取り付ける(ステップS6)。このヘッド体7は、ヘッドフレーム20に対してヘッド6の位置調整を終えていない未完成状態である。このヘッド体7を、位置調整部材42に対する前記相対位置の関係を再現して(ステップS7)、かつ、当該ヘッド体7が有するヘッド6の吐出口6aの配列方向を前記「作製基準方向B」と一致させて(ステップS8)、取り付ける。
【0031】
ステップS5〜S7を具体的に図5(a)を参考にして説明する。位置調整部材42の内の基準ピン44は横桁部材41aに固定されていて、位置調整部材42の内の調節ピン45は可動片46を介してねじ50によって横桁部材41aに固定された状態にあるため、さらに、マスタフレームM1とヘッドフレーム20とは同じ形状を有しているため、このような基準ピン44及び調節ピン45に対して、マスタフレームM1と同様に、(マスタMに代えて)ヘッド体7のヘッドフレーム20を同じ3点で接触させれば、当該ヘッドフレーム20を、マスタフレームM1が取り付けられていた状態と同じ状態に再現することができる。
【0032】
そして、前記のとおりステップS3−aにおいて、マスタMの「マスタ基準方向A」を特定している撮像装置43を用いて、当該「マスタ基準方向A」と、ヘッド体7が有している複数のヘッド6の内の一つ(中央)のヘッド6における吐出口6aの配列方向とを一致させる。なお、このために、ヘッド6の下面には(図7(a)参照)、吐出口6aの配列方向を示すための二つのアライメントマークn1,n2が(マスタヘッドM2の板部材M2aと同様に)形成されていて、この二つのマークn1,n2を結ぶ方向が吐出口6aの配列方向として設定されている。
そこで、二台のカメラ43a,43bそれぞれの画像中心を、特定している「マスタ基準方向A」の直線上に位置させた状態とする。そして、前記画像中心を結ぶ直線方向と、ヘッド6の吐出口6aの配列方向とが一致するように、ヘッドフレーム20に対してヘッド6をX方向及びY方向に位置調整し、ヘッド6をヘッドフレーム20に図示しないねじによって固定する(ステップS8)。また、このステップS8では、前記センサ55によって、前記基準高さ位置L1からヘッド6の下面までの高さHを測定し、記録する。
【0033】
そして、図7(b)に示しているように、カメラ43a,43bを、X方向一方側へ、設計上定められているヘッド6間の1ピッチ寸法について移動させる。この状態で、前記と同様の方法で、二台のカメラ43a,43bそれぞれの画像中心を結ぶ直線方向と、ヘッド体7が有している複数のヘッド6の内の他の(二つ目の)ヘッド6における吐出口6aの配列方向とを一致させる位置合わせを行う。以下同様にして、カメラ43a,43bをX方向に前記1ピッチ寸法毎に移動させながら、残りのヘッド6についても、位置合わせを行う(ステップS9)。これにより、一つのヘッド体7は、ヘッド6の吐出口6aの配列方向が「マスタ基準方向」と一致して(平行となって)、マスタMと同じとして作製される(ステップS10)。
以上のステップS6からステップS10を繰り返し行うことにより、他のヘッド体7も作製することができる(ステップS11)。
【0034】
以上のヘッド体作製工程によれば、図4のステップS3において、「マスタ基準方向」が「作製基準方向」と一致するようにマスタMを架台40に位置合わせし、ステップS4においてこのマスタMとの平面方向の相対位置を定めて、位置調整部材42を架台に固定する。そして、架台40から取り外したマスタMに代えて(ステップS5)、作製しようとする複数のヘッド体7を、順次、位置調整部材42に対する前記相対位置の関係を再現して(ステップS6,S7)、かつ、ヘッド体7の吐出口の配列方向を「作製基準方向」と一致させて(ステップS8)架台40上で作製する。これにより、ヘッド体7が有する多数の吐出口の配列方向と、「マスタ基準方向」とが同じ方向を向いたヘッド体7が、簡単に複数得られる。
また、マスタMを用いて作製されたヘッド体7は、どれもマスタMと同じとなり、規定の形態(設計値に基づいた形態)を有することができる。また、ヘッド体7を装置本体8外の別の架台40上で作製しているので、複数のヘッド体7を精度良く作製するのが容易となる。
【0035】
〔準備工程〕
準備工程は、図1に示した塗布装置の装置本体8において行われる。図8は準備工程及び取り付け工程を説明するフロー図である。
この準備工程では、ヘッド体7を作製するために用いたマスタMを装置本体8の設置部9に取り付ける(ステップS21)。そして、この際にマスタMを設置部9の正規位置に位置合わせし(ステップS22)、位置合わせした当該マスタMとの平面方向の相対位置を定めて前記位置決定部材11を当該設置部9に固定する(ステップS23)。装置本体8の設置部9は、ヘッド体7及びマスタMを択一的に取り付け可能であり、図2(a)と図3はヘッド体7が取り付けられた状態であり、図2(b)はマスタMが取り付けられた状態である。
【0036】
位置決定部材11は、前記架台40が備えていた位置調整部材42(図5と図6)と同じ構成、同じ機能を有していて、設置部9に固定前の位置決定部材11は、当該設置部9において位置変化させることでマスタMの位置合わせに役立てることができ、また、ねじ12によって設置部9に固定される。
図2の位置決定部材11は、Z方向を中心とした円弧部13aを有する基準ピン(第一接触部)13と、調節ピン(第二接触部)14とを有している。調整ピン14は、ヘッドフレーム20のフランジ部20b(図2(a))、又は、マスタフレームM1のフランジ部M1a(図2(b))が点接触する。
基準ピン13は、設置部9における(ヘッド搭載部5が有する)取り付け部材9aに固定されている。調節ピン14は可動片25上から立設していて、可動片25は、取り付け部材9aにZ方向の軸心26回りに(水平方向に)揺動することができるようにして取り付けられている。この可動片25を揺動させることで、調節ピン14がマスタフレームM1のフランジ部M1a(図2(b))を押すことができる。
【0037】
前記のとおり、マスタMのマスタフレームM1は、二つの直交する壁面48a,48bを有していて、この壁面48a,48bが、基準ピン13の円弧部13aに2点で接触する。このため、調節ピン14によって押されるマスタフレームM1は、基準ピン13の軸心を中心として移動する。これにより、マスタMを設置部9の取り付け部材9aに位置合わせすることができる。この位置合わせは、マスタMが正規位置となるように行い、カメラ搭載フレーム15に搭載されている前記撮像装置10(図1参照)が用いられる。なお、この撮像装置10(カメラ10a,10bの座標)は、塗布装置(装置本体8)に規定されている座標系で校正されている。
すなわち、マスタMが「正規位置」に取り付けられたとすれば、そのマスタ基準方向となる方向に、撮像装置10の二台のカメラ10a,10bの画像中心が並ぶように設置する。そして、二台のカメラ10a,10bそれぞれの画像中心を結ぶ直線上に、実際のマスタMの前記アライメントマークm1,m2(図5参照)を結ぶ直線が一致するように、実際のマスタM(マスタフレームM1)を設置部9の取り付け部材9aに対して位置合わせする(ステップS22)。
【0038】
そして、図2(b)に示しているように、このマスタMと位置決定部材11との間において、Y方向に1点で接触し、X方向に2点で接触している状態とし、マスタMと位置決定部材11との平面方向の変位が規制された状態とする。これにより、両者の平面方向の相対位置が定められた状態となる。そして、この状態で、位置決定部材11の可動片25をねじ12によって取り付け部材9aに固定する(ステップS23)。
以上の準備工程によれば、位置決定部材11とマスタMとの平面方向の相対位置を定める作業を、簡単な方法により実行できるので、準備工程が容易となる。また、後に説明する組み立て工程において、同様にヘッド体7を前記位置決定部材11に少なくとも3点で接触させれば、ヘッド体7と位置決定部材11との前記相対位置の関係を再現することができ、ヘッド体7を設置部9に取り付ける作業も容易となる。
【0039】
〔取り付け工程〕
装置本体8の設置部9は、マスタフレームM1及びヘッドフレーム20を択一的に取り付け可能であることから、前記位置決定部材11が設置部9に固定されたまま、マスタMを当該設置部9から取り外し(ステップS24)、このマスタMに代えて、前記ヘッド体作製工程で作製した複数のヘッド体7を、順次、設置部9に取り付ける(ステップS25)。この際、ヘッド体作製工程で作製したヘッド体7を、位置決定部材11に対する前記相対位置の関係を再現して、取り付ける(ステップS26)。
【0040】
ステップS26を図2により説明する。図2(b)のマスタMのマスタフレームM1は、フランジ部M1a、及び、二つの直交する壁面48a,48bを有していることから、このマスタMと同じフレーム構造を有している図2(a)のヘッド体7も、同じ形状として、フランジ部20b、及び、二つの直交する壁面21a,21bを有している。そして、フランジ部20bは、位置決定部材11の調節ピン14とX方向に1点で接触し、ヘッドフレーム20の壁面21a,21bは、位置決定部材11の基準ピン13が有する円弧部13aとX方向及びY方向の2点で接触する。
位置決定部材11の内の基準ピン13は取り付け部材9aに固定された部材であり、位置決定部材11の内の調節ピン14は可動片25においてねじ12によって取り付け部材9aに固定された状態にあるため、さらに、ヘッドフレーム20とマスタフレームM1とは同じ形状を有しているため、このような基準ピン13及び調節ピン14に、ヘッド体7のヘッドフレーム20を、マスタフレームM1と同様に、前記のとおり3点で接触させれば、ヘッドフレーム20を、マスタフレームM1が取り付けられていた状態と同じ状態に再現させることができる。
【0041】
これにより、一つのヘッド体7を正規位置として設置部9に取り付けた状態とし、当該ヘッド体7を止めねじ23によって設置部9に固定する。なお、後にも説明するが、新旧のヘッド体7の取り替えのために、ヘッド体7を取り外す場合、この止めねじ23を外せばよい。
また、カメラ搭載フレーム15(図1参照)には、高さセンサ10cが設けられていて、このセンサ10cは、Y方向に同軸で並んでいるカメラ10a,10bと同軸上に設置されている(図1参照)。そして、装置本体8には、装置基準高さ位置(図示せず)が設定されていて、ヘッド体7を設置部9に取り付ける際(ステップS25、S26)、前記センサ10cを用いて、当該ヘッド体7のヘッド6の下面(吐出口形成面)の高さ位置の調整を行う(ステップS27)。具体的には、前記ヘッド体作製工程でセンサ55(図7(a)参照)によって測定したヘッド6の高さHを、前記装置基準高さ位置を基準として、装置本体8上で再現させる。つまり、装置基準高さ位置から高さHの位置にヘッド6の下面(吐出口形成面)が位置するように、前記センサ10cを用いて高さ調整を行い、ヘッド体7を設置部9に取り付ける。
これにより、架台40において測定された基準高さ位置L1からヘッド6の下面までの高さHが、装置本体8において再現される。ヘッド6の取り付け高さの調整は、例えば図示しないが薄板を設置部9とヘッドフレーム20との間に介在させる方法がある。
【0042】
この高さ位置の調整についてさらに説明すると、架台40(図7)のカメラ43a,43b及びセンサ55と、装置本体8のカメラ10a,10b及びセンサ10cとが、同じ構成を有している(同じ配置となっている)ので、装置本体8のセンサ10cによるヘッド6の高さの位置調整を、架台40のセンサ55によるヘッド6の高さの位置調整と、同じ作業環境として実行することができる。このため、装置本体8のセンサ10cによってヘッド6の高さ位置調整をすれば、架台40のセンサ55によってヘッド6の高さ位置調整したのと等価となり、位置調整の際に高い精度が確保される。つまり、塗布装置と架台40とにおける環境が同じとなり、架台40において作製したすべてのヘッド体7を、塗布装置の正規位置に精度良く取り付けることができる。
以上のステップS21からステップS27を繰り返し行うことにより、他のヘッド体7も設置部9に正規位置として取り付けることができる(ステップS28)。
【0043】
前記準備工程によれば、装置本体8においてマスタMを設置部9の正規位置に位置合わせし、この位置合わせしたマスタMとの平面方向の相対位置を定めて位置決定部材11を設置部9に固定する。そして、前記取り付け工程によれば、設置部9から取り外したマスタMに代えて、ヘッド体作製工程で作製したヘッド体7を、位置決定部材11に対する前記相対位置の関係を再現して設置部9に取り付ける。これによれば、従来のようにカメラを用いて位置合わせしなくても、ヘッド体7を、設置部9の正規位置に精度良く取り付けることが可能となり、組み立て作業が容易となる。
【0044】
このようにして組み立てられ製造された塗布装置において、一旦取り付けられたヘッド体7は、所定の使用期間が経過すると取り替えが必要となる。そこで、前記組み立て方法によって得られた塗布装置の場合、装置本体8の設置部9に取り付けられているヘッド体7を取り替えるために、図2(a)の止めねじ23を外すことにより古いヘッド体7を設置部9から取り除き、マスタMに基づいて作製した新たなヘッド体7を、再度、位置決定部材11に対して前記相対位置の関係を再現して設置部9に取り付ければ、撮像装置10を用いて設置部9に対して再び位置合わせしなくても、新たなヘッド体7を設置部9の正規位置に精度良く取り付けることが可能となり、ヘッド体の取り替え作業が容易となる。
【0045】
また、本発明は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであっても良い。前記実施形態では、位置決定部材11(位置調整部材42)に対してマスタM及びヘッド体7を3点で接触させて相対位置を定める場合について説明したが、接触部位は少なくとも3点であればよく、4点以上としてもよく、平面方向に関して位置決定部材11に対するマスタM及びヘッド体7の位置を一義的に決定できる構成であればよい。
また、位置決定部材11(位置調整部材42)において、基準ピン13(44)を装置本体8側(架台40側)とし、これに二点接触する壁面をヘッド体7及びマスタM側に設けたが、反対であってもよい。
また、前記実施形態では、カラーフィルタの製造に用いられる塗布装置について説明したが、有機ELを含むフラットパネルディスプレイや太陽電池等の製造に用いられる塗布装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0046】
6:ヘッド、 6a:吐出口、 7:ヘッド体、 8:装置本体、 9:設置部、 10:撮像装置、 10a,10b:カメラ(第二カメラ)、 10c:センサ(第二高さセンサ)、 11:位置決定部材、 20:ヘッドフレーム、 40:ヘッド体作製用の架台、 42:位置調整部材、 43:撮像装置、 43a,43b:カメラ(第一カメラ)、 55:センサ(第一高さセンサ)、 44:基準ピン(第一接触部)、 44a:円弧部、 45:調節ピン(第二接触部)、 M:マスタ、 M1:マスタフレーム、 M2: マスタヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクの吐出口を多数有しているヘッド体を、装置本体の所定の設置部に複数取り付けて組み立てる塗布装置の組み立て方法であって、
規定形態のヘッド体を模写して得られたマスタを用いて、前記設置部に取り付けられるヘッド体を当該マスタと同じとなるようにして複数作製するヘッド体作製工程と、
前記マスタを前記設置部の正規位置に位置合わせし、位置合わせした当該マスタとの相対位置を定めて位置決定部材を当該設置部に固定する準備工程と、
前記位置決定部材を前記設置部に固定したまま前記マスタを当該設置部から取り外し、当該マスタに代えて、作製した前記ヘッド体を、前記位置決定部材に対する前記相対位置の関係を再現して、前記設置部に取り付ける取り付け工程と、
を有していることを特徴とする塗布装置の組み立て方法。
【請求項2】
前記準備工程では、前記位置決定部材と前記マスタとを平面方向に少なくとも3点で接触させて当該位置決定部材と当該マスタとの平面方向の変位が規制された状態とすることによって、当該位置決定部材と当該マスタとの平面方向の相対位置を定める請求項1に記載の塗布装置の組み立て方法。
【請求項3】
前記マスタには、前記規定形態のヘッド体における多数の吐出口の配列方向を示すマスタ基準方向が設定され、
前記ヘッド体作製工程では、
前記マスタ基準方向が、ヘッド体作製用の架台に設定されている作製基準方向と一致するようにして、前記マスタを前記架台に位置合わせし、位置合わせした当該マスタとの相対位置を定めて位置調整部材を前記架台に固定し、
前記位置調整部材を前記架台に固定したまま前記マスタを当該架台から取り外し、当該マスタに代えて、作製しようとする複数のヘッド体を、順次、前記位置調整部材に対する前記相対位置の関係を再現して、かつ、当該ヘッド体の吐出口の配列方向を前記作製基準方向と一致させて、前記架台上で作製する請求項1又は2に記載の塗布装置の組み立て方法。
【請求項4】
前記ヘッド体作製工程では、カメラ及びセンサを備えたヘッド体作製用の架台が用いられて、前記ヘッド体を複数作製し、
前記準備工程及び前記取り付け工程は、前記装置本体において、前記カメラ及び前記センサと同じ構成である当該装置本体側のカメラ及び当該装置本体側のセンサを用いることによって前記架台における環境と同じとして、実行される請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗布装置の組み立て方法。
【請求項5】
インクの吐出口を多数有しているヘッド及び当該ヘッドを位置調整可能に取り付けているヘッドフレームを有するヘッド体を、規定形態のヘッド体を模写して得られたマスタが用いられて、前記吐出口の配列方向が、前記マスタに設定されているマスタ基準方向に一致するようにして作製するためのヘッド体作製用の架台であって、
前記マスタ及び前記ヘッド体を択一的に取り付け可能であるベース部と、
前記ベース部において位置合わせする前記マスタの配置を撮像しかつ当該マスタの前記マスタ基準方向を特定すると共に、前記ベース部に取り付けられた前記ヘッド体の前記ヘッドの配置を撮像可能である撮像装置と、
位置合わせされた前記マスタとの相対位置が定められて当該ベース部に固定されると共に、当該マスタに代えて、前記ヘッド体を前記相対位置の関係を再現させて当該ベース部に取り付けるための位置調整部材と、
を備えたことを特徴とするヘッド体作製用の架台。
【請求項6】
前記位置調整部材は、上下方向を中心とした円弧部と前記円弧部に2点で接触する二つの壁面との内の一方を有する第一接触部と、前記マスタが点接触する第二接触部とを有している請求項5に記載のヘッド体作製用の架台。
【請求項7】
規定形態のヘッド体を模写して得られたマスタ、及び、前記マスタと同じとなるようにして作製されたヘッド体を択一的に、正規位置に取り付け可能な設置部と、
前記設置部において前記正規位置として位置合わせする前記マスタの配置を撮像する撮像装置と、
前記正規位置に位置合わせして前記設置部に取り付けられた前記マスタとの相対位置が定められて当該設置部に固定される位置決定部材と、
を備えたことを特徴とする塗布装置。
【請求項8】
第一カメラ及び第一高さセンサを備え、当該第一カメラ及び当該第一高さセンサを用いて、規定形態のヘッド体を模写して得られたマスタと同じとなるようにしてヘッド体を複数作製するためのヘッド体作製用の架台と、
第二カメラ及び第二高さセンサを備え、当該第二カメラ及び当該第二高さセンサを用いて、前記マスタが正規位置に位置合わせされると共に、位置合わせした当該マスタに代えて前記架台において作製された前記ヘッド体が前記正規位置に取り付けられる塗布装置と、
を備えた塗布装置システムであって、
前記塗布装置と前記架台とにおける作業環境を同じとすべく、前記第一カメラ及び前記第一高さセンサと、前記第二カメラ及び前記第二高さセンサとは、同じ構成であることを特徴とする塗布装置システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−230859(P2010−230859A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76866(P2009−76866)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】