塗布装置
【課題】 塗布対象物に押し付ける塗布面に印刷パターンがない場合でも、塗布面の撮像結果を用いた塗布状態の検査を可能とした塗布装置を提供する。
【解決手段】 塗布剤Jを吸湿保持するフェルト材Fと、フェルト材Fの塗布面と塗布対象物Wの端面とを互いに当接させ、当該当接した両面間に押圧力を付与するワーク駆動部22と、塗布前および塗布後の塗布面を各々撮像して塗布前濃淡画像および塗布後濃淡画像を出力するカメラCと、塗布前濃淡画像を濃淡値に基づいて二値化し、塗布後濃淡画像を濃淡値に基づいて二値化する二値化処理部60aと、塗布前濃淡画像を二値化した結果を予め設定された閾値と比較して塗布面の状態を判断する塗布剤保持状態判断部60cと、塗布後濃淡画像を二値化した結果を予め設定された閾値と比較して塗布剤Jの塗布状態を判断する塗布状態判断部60dとを備える。
【解決手段】 塗布剤Jを吸湿保持するフェルト材Fと、フェルト材Fの塗布面と塗布対象物Wの端面とを互いに当接させ、当該当接した両面間に押圧力を付与するワーク駆動部22と、塗布前および塗布後の塗布面を各々撮像して塗布前濃淡画像および塗布後濃淡画像を出力するカメラCと、塗布前濃淡画像を濃淡値に基づいて二値化し、塗布後濃淡画像を濃淡値に基づいて二値化する二値化処理部60aと、塗布前濃淡画像を二値化した結果を予め設定された閾値と比較して塗布面の状態を判断する塗布剤保持状態判断部60cと、塗布後濃淡画像を二値化した結果を予め設定された閾値と比較して塗布剤Jの塗布状態を判断する塗布状態判断部60dとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体またはゲル状の塗布剤を塗布する塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体またはゲル状の塗布剤を塗布する塗布装置において、塗布対象物(筒状、筐体状、函体状等)の端部に液体またはゲル状の塗布剤を塗布する工程があり、例えば塗布剤を含んだパッド等の塗布剤保持手段を塗布対象物の端部に押し付けることによって行われる。そして、この塗布対象物の塗布状態を検査するために、塗布剤保持手段の塗布面近傍に設置した非接触式のセンサ(近接センサ、赤外線センサ等)によって塗布対象物の有無を検知し、塗布剤保持手段が塗布対象物に押し当てられたか否かを判定することによって、塗布状態を検査するものがあった。また、塗布後の塗布対象物の端部表面をカメラで撮像し、撮像した画像データに画像処理を施すことで抽出した特徴をもとに塗布状態を検査する装置もあった。
【0003】
しかし、非接触式のセンサを用いて塗布対象物の有無を検知する上記構成では、塗布対象物の一部を検知すると正常に塗布されたものと判定するため、塗布対象物の端部表面の全領域に塗布剤が正常に塗布されているか否かを判定することはできず、部分的な塗布不良を検出できない虞があり、誤判定によって検査結果の精度が低下するという問題があった。
【0004】
また、塗布後の塗布対象物の端部表面の画像データに基づく上記構成でも、塗布剤が透明または半透明の場合に、塗布剤や塗布対象物表面の光の透過性および反射性の影響によって、正常に塗布された部分と未塗布部分との違いを検出することが困難であり、誤判定によって検査結果の精度が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、塗布剤保持手段の塗布面を塗布対象物の端部に押し付ける前後において当該塗布面を撮像し、この塗布面を撮像した画像データに画像処理を施すことで抽出した特徴をもとに、塗布面の状態、塗布対象物における塗布状態を検査する装置が提案された(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−225235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の構成では、塗布剤保持手段の塗布面には文字や図形等の印刷パターンが印字され、この塗布面の印刷パターンを塗布対象物に押し付けることによって、塗布対象物に文字や図形等を印字するものであり、塗布状態の検査も塗布面の印刷パターンを画像処理で認識することによって行われる。
【0008】
しかし、塗布面に印刷パターンを印字することなく、塗布面の全体にインクや接着剤等の塗布物を吸湿保持させ、この塗布面に塗布対象物を押し付けることによって、塗布対象物に塗布物を塗布する場合は、塗布面に認識可能な印刷パターンがないため、特許文献1のように印刷パターンを用いた画像処理を行うことができず、塗布状態の検査ができなかった。
【0009】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗布対象物に押し付ける塗布面に印刷パターンがない場合でも、塗布面の撮像結果を用いた塗布状態の検査を可能とした塗布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、塗布対象物の端部に塗布剤を塗布する塗布装置であって、塗布剤を吸湿保持する塗布剤保持手段と、塗布剤保持手段と塗布対象物とのうち少なくとも一方を移動させて、塗布剤保持手段の塗布面と塗布対象物の端面とを互いに当接させ、当該当接した両面間に押圧力を付与する押圧駆動手段と、塗布剤保持手段の塗布面と塗布対象物の端面との間に押圧力が付与される前後に、塗布面を各々撮像して塗布前濃淡画像および塗布後濃淡画像を出力する撮像手段と、塗布剤保持手段の塗布面の状態を判断するために塗布前濃淡画像を濃淡値に基づいて二値化し、塗布面に残った塗布対象物の端部の痕跡である塗布痕の状態を検出するために塗布後濃淡画像を濃淡値に基づいて二値化する二値化処理部と、塗布前濃淡画像を二値化した結果を予め設定された閾値と比較して塗布剤保持手段の塗布面の状態を判断する塗布剤保持状態判断部と、塗布後濃淡画像を二値化した結果を予め設定された閾値と比較して塗布剤の塗布状態を判断する塗布状態判断部とを備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、塗布対象物の端部を押し付けた後のフェルト材等の塗布剤保持手段の塗布面に残る塗布痕の状態を画像処理で検出し、この塗布痕の状態によって塗布対象物における塗布状態の検査を行うので、塗布面に印刷パターンがない場合でも、塗布面の撮像結果を用いた塗布状態の検査が可能となる。さらに、塗布前の塗布面の状態も判断するので、必要に応じて塗布面のメンテナンスを行ったり、塗布面の状態に応じた塗布制御を行うことによって、不良品の発生を抑制できる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1において、前記塗布剤保持状態判断部が判断した前記塗布面の状態に基づいて、前記押圧駆動手段が塗布剤保持手段の塗布面と塗布対象物の端面との間に付与する押圧力を制御する押圧駆動制御手段を備えることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、塗布対象物を塗布剤保持手段に押圧して塗布処理を行う際に、塗布面の状態に基づいて押圧条件を制御するので、塗布対象物の塗布状態を安定させることができる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記塗布剤保持状態判断部は、前記塗布面に含有された塗布剤の量を判定することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、塗布対象物における塗布剤の塗布量、塗布範囲を安定させることができる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1乃至3いずれかにおいて、前記塗布剤保持状態判断部は、前記塗布面上における塗布剤の含有量のばらつきを判定することを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、塗布剤が塗布剤保持手段の塗布面に均一に分布しているか否かを判定しているので、塗布面の経時変化による劣化等の状態変化を把握でき、装置が正常な状態であるか否かを監視できる。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1乃至4いずれかにおいて、塗布剤を貯蔵する塗布剤貯蔵部と、前記塗布剤保持手段の少なくとも一部が塗布剤貯蔵部内の塗布剤に浸漬する第1の位置と、前記押圧駆動手段が塗布剤保持手段の塗布面と塗布対象物の端面との間に押圧力を付与する第2の位置との間で、前記塗布剤保持手段を移動させる塗布剤保持部駆動手段とを備えることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、塗布対象物に塗布剤を塗布する前に、塗布剤保持手段を塗布剤貯蔵部内の塗布剤に浸漬することによって、必要な塗布剤を塗布毎に塗布剤保持手段に供給することができ、さらには塗布面の塗布痕を消すことができるので、連続塗布および連続検査が可能となる。
【0020】
請求項6の発明は、請求項5において、前記塗布剤保持状態判断部が判断した前記塗布面の状態に基づいて、前記塗布剤保持部駆動手段による前記塗布剤保持手段の移動動作を制御する塗布剤保持部駆動制御手段を備えることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、塗布剤貯蔵部における塗布剤保持手段の浸漬条件を塗布面の状態に基づいて制御するので、塗布剤保持手段に含有させる塗布剤の量を適切に調整できる。
【0022】
請求項7の発明は、請求項5または6において、前記塗布剤保持部駆動手段が前記塗布剤保持手段を前記第1の位置から第2の位置へ移動させる際に、塗布剤保持手段を移動可能に挟持する挟持手段と、前記塗布剤保持状態判断部が判断した前記塗布面の状態に基づいて、挟持手段の挟持動作を制御する挟持制御手段とを備えることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、塗布処理を行う前に、塗布剤保持手段に含有している塗布剤を絞って、塗布剤保持手段が含有する塗布剤の量を塗布面の状態に基づいて制御するので、塗布剤保持手段に含有させた塗布剤の量を適切に調整できる。
【0024】
請求項8の発明は、請求項5乃至7いずれかにおいて、前記塗布剤貯蔵部に塗布剤を供給する塗布剤供給手段と、前記塗布剤保持状態判断部が判断した前記塗布面の状態に基づいて、塗布剤供給手段が塗布剤貯蔵部へ供給する塗布剤の量を制御する塗布剤供給制御手段とを備えることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、塗布剤貯蔵部内の塗布剤の量を塗布面の状態に基づいて制御するので、塗布剤貯蔵部内で塗布剤保持手段に含有させる塗布剤の量を適切に調整できる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明では、塗布対象物に押し付ける塗布面に印刷パターンがない場合でも、塗布面の撮像結果を用いた塗布状態の検査が可能になるという効果がある。さらに、塗布前の塗布面の状態も判断するので、必要に応じて塗布面のメンテナンスを行ったり、塗布面の状態に応じた塗布制御を行うことによって、不良品の発生を抑制できるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の塗布装置の構成を示す図である。
【図2】同上の塗布剤供給部の構成を示す図である。
【図3】(a)〜(c)同上のフェルト材の塗布剤供給動作を示す図である。
【図4】同上の塗布前の二値化処理を示す図である。
【図5】同上の塗布剤保持状態の判断処理を示す図である。
【図6】(a)〜(c)同上のフェルト材と塗布対象物との押圧動作を示す図である。
【図7】(a)(b)同上の塗布対象物の端面および塗布痕を示す図である。
【図8】同上の塗布後の二値化処理を示す図である。
【図9】(a)(b)同上の塗布痕の状態を示す図である。
【図10】同上の塗布状態判断処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
(実施形態1)
図1は、本実施形態の塗布装置の構成を示しており、液体状またはゲル状の塗布剤Jを吸湿保持させたシート状のフェルト材F(塗布剤保持手段)に、塗布対象物W(筒状、筐体状、函体状等)の端部を押し付けることで、塗布対象物Wの端部近傍(少なくとも端面)に塗布剤Jを塗布する。なお本実施形態では、固定したフェルト材Fに塗布対象物Wの端部を押し付けるが、固定した塗布対象物Wの端部にフェルト材Fを押し付ける構成でもよい。
【0030】
フェルト材Fは、シート状に形成されており、その上端を支持アーム11によって保持固定されている。支持アーム11は、フェルト駆動部12によって上下方向に移動自在に構成されており、フェルト駆動部12は、モータ等によって支持アーム11を上下方向に駆動することによって、フェルト材Fの上下方向の位置を、上方の塗布位置P11または下方の補充位置P12に制御している(塗布剤保持部駆動手段)。
【0031】
塗布対象物Wは、支持アーム21によって保持固定されている。支持アーム21は、ワーク駆動部22によって水平方向に移動自在に構成されており、ワーク駆動部22は、モータ等によって支持アーム21を水平方向に駆動することによって、塗布対象物Wの水平方向の位置を、フェルト材Fから離れる方向の待機位置P21、または塗布対象物Wの端部をフェルト材Fの塗布面に当接させて押し付ける塗布位置P22に制御している(押圧駆動手段)。
【0032】
フェルト材Fの下方には、上面を開口した函体の塗布剤貯蔵部30が配置されており、塗布剤貯蔵部30内には、透明または半透明の塗布剤Jが入っている。また、塗布剤貯蔵部30の開口付近に水平方向に並設された一対のローラ30aは互いの間隔を調整可能に構成され、一対のローラ30aの間隔はローラ駆動部31によって調整される(挟持手段)。
【0033】
また、塗布剤貯蔵部30内に塗布剤Jを供給、補充するために、塗布剤供給部32が設けられている(塗布剤供給手段)。塗布剤供給部32は、図2に示すように、塗布剤Jを貯めており、塗布剤貯蔵部30に配管を介して接続された塗布剤槽32aと、配管に取り付けたバルブ等で構成された供給量制御部32bとで構成される。そして、供給量制御部32bを駆動制御することによって、塗布剤槽32aから塗布剤貯蔵部30へ供給する塗布剤Jの流量を調整する。
【0034】
さらに、塗布位置P11のフェルト材11の塗布面を撮像するCCDカメラC(以降、カメラCと称す)を備え、カメラCが撮像した濃淡画像データは画像処理部60に出力される(撮像手段)。
【0035】
画像処理部60は、二値化処理部60a、記憶部60b、塗布剤保持状態判断部60c、塗布状態判断部60dで構成されており、カメラCが撮像した濃淡画像データに基づいて、塗布前のフェルト材Fの塗布面状態、および塗布後の塗布対象物Wにおける塗布剤Jの塗布状態を検査し、その検査結果を表示装置70へ出力し、表示装置70はその検査結果を表示する。
【0036】
上記フェルト駆動部12、ワーク駆動部22、ローラ駆動部31、塗布剤供給部32(供給量制御部32b)、画像処理部60は、塗布集中制御部50によって集中制御されており、塗布集中制御部50は、各駆動部の動作を制御するためのワーク駆動制御部50a(押圧駆動制御手段)、ローラ駆動制御部50b(挟持制御手段)、塗布剤供給制御部50c(塗布剤供給制御手段)、フェルト駆動制御部50d(塗布剤保持部駆動制御手段)を備えている。
【0037】
以下、塗布集中制御部50による塗布装置の制御について詳細に説明する。
【0038】
初期状態として、フェルト材Fは塗布位置P11に位置し、塗布対象物Wは待機位置P21に位置している。まずフェルト駆動制御部50dは、フェルト駆動部12を駆動制御して、フェルト材Fを塗布位置P11から補充位置P12に向けて移動させ(図3(a))、フェルト材Fが補充位置P12に到着すると、フェルト材Fの一部が塗布剤貯蔵部30内の塗布剤Jに浸漬し、フェルト材Fに塗布剤Jを含有させる(図3(b))。その後、フェルト駆動部12がフェルト材Fを塗布位置P11に移動させるときは、ローラ駆動制御部50bがローラ駆動部31を駆動制御し、ローラ駆動部31が一対のローラ30aの間隔を狭くして、ローラ30a間にフェルト材Fを挟持し、この状態でローラ30aが回転しながらフェルト材Fが上方に移動する(図3(c))。すなわち、フェルト材Fがローラ30a間を通過することによって、フェルト材Fに含有している余分な塗布剤Jを絞って、フェルト材Fが含有する塗布剤Jの量を制御している。
【0039】
ここで本実施形態では、塗布剤Jを吸湿保持する塗布剤保持手段としてフェルト材Fを用いている。塗布剤保持手段としては、塗布剤Jを適量保持でき、さらには塗布対象物Wに押圧して塗布剤Jを塗布対象物Wに塗布した後に、塗布面に後述の塗布対象物Wの端部痕(以降、塗布痕と称す)が残りやすいものが、塗布対象物Wへの塗布処理、および塗布痕の状態による塗布状態検査に適している。すなわち、多孔質で弾性を有する材料が塗布剤保持手段には適しており、このような理由から本実施形態ではフェルト材Fを用いている。また、上記のようにローラ30aによってフェルト材Fが保持する塗布剤Jの量を適正に制御することによって、フェルト材Fの塗布面の塗布痕を安定して発生させることができる。
【0040】
塗布剤Jを吸湿保持したフェルト材Fが塗布位置P11に復帰すると、直後に画像処理部60は、フェルト材11の塗布面を照射する照明器具Laを始動させた後に、塗布位置P11のフェルト材11の塗布面をカメラCによって撮像し、後述の塗布処理を行う前にカメラCが撮像した塗布前濃淡画像データを取得する。
【0041】
画像処理部60では、上記取得した塗布前濃淡画像データに基づいて、フェルト材Fの塗布面における塗布剤Jの含有状態を判断する。まず、記憶部60bには塗布前二値化閾値が予め記憶されており、二値化処理部60aは、塗布前濃淡画像データの各画素の濃淡値(明度等)を塗布前二値化閾値と比較することで二値化する。そして、記憶部60bには、各画素に対応した二値化フラグが予め作成されており、二値化結果に基づいて各二値化フラグを「1」または「0」にセットすることで、塗布剤Jの含有量が適正である画素と、塗布剤Jの含有量が適正でない画素とに、各画素を分ける。
【0042】
フェルト材Fの塗布面は、例えば塗布剤Jの含有量が多い場合には暗くなり、塗布剤Jの含有量が少ない場合には明るくなり、塗布前濃淡画像データ内の任意の画素sの濃淡値をG(s)、塗布前二値化下限閾値をGu1、塗布前二値化上限閾値をGu2とすると、「Gu1≦G(s)≦Gu2」のときには、画素sは塗布剤Jの含有量が適量であると判定し、当該画素sの二値化フラグを「1」にセットする。一方、「G(s)<Gu1」のときには、画素sは塗布剤Jの含有量が過多であると判定し、当該画素sの二値化フラグを「0」にセットする。また、「G(s)>Gu2」のときには、画素sは塗布剤Jの含有量が不足していると判定し、当該画素sの二値化フラグを「0」にセットする。すなわち、塗布剤Jの含有量が適量である画素は二値化フラグが「1」にセットされ、塗布剤Jの含有量が適量でない画素は二値化フラグが「0」にセットされる。
【0043】
例えば、図4に示すように、画素s1の濃淡値G(s1)が二値化下限閾値Gu1未満であるので、画素s1は塗布剤Jの含有量が過多であると判定し、画素s2の濃淡値G(s2)が二値化上限閾値Gu2を超えているので、画素s2は塗布剤Jの含有量が不足していると判定し、画素s3の濃淡値G(s3)が二値化下限閾値Gu1以上、二値化上限閾値Gu2以下であるので、画素s3は塗布剤Jの含有量が適量であると判定する。
【0044】
次に、塗布剤保持状態判断部60cは、「1」にセットされた二値化フラグの数Naを、記憶部60bに予め記憶された塗布前フラグ閾値Nuと比較し、「1」にセットされた二値化フラグの数Naがフラグ閾値Nu以上であれば、フェルト材Fは塗布剤Jの含有量が適量であり、塗布面における塗布剤Jの状態が良好であると判定する。一方、「1」にセットされた二値化フラグの数Naがフラグ閾値Nu未満であれば、フェルト材Fは塗布剤Jの含有量が過不足状態であり、塗布面における塗布剤Jの状態が悪いと判定する。例えば、図5の画像1(横軸)は、「1」にセットされた二値化フラグの数Na1がフラグ閾値Nu以上となって、塗布面における塗布剤Jの状態が良好であると判定される。しかし、図5の画像2(横軸)は、「1」にセットされた二値化フラグの数Na2がフラグ閾値Nu未満となって、塗布面における塗布剤Jの状態が悪いと判定される。そして、塗布剤保持状態判断部60cは、上記塗布面における塗布剤Jの状態の判定結果(塗布面判定結果)を表示装置70のモニタ画面に表示させる。
【0045】
作業者は、表示装置70に表示された塗布前の塗布面の状態に基づいて、必要に応じて塗布面のメンテナンスを行うことで、後述の塗布処理後の不良品の発生を抑制する。
【0046】
次に、塗布集中制御部50のワーク駆動制御部50aは、塗布面判定結果に基づいて、ワーク駆動部22による押圧動作を制御する。まず、ワーク駆動制御部50aは、ワーク駆動部22を駆動制御して、塗布対象物Wを待機位置P21から塗布位置P22に向けて移動させ(図6(a))、塗布対象物Wの端部をフェルト材Fの塗布面に押圧し、塗布対象物Wの端部近傍(少なくとも端面)に塗布剤Jを塗布する(図6(b))。ワーク駆動制御部50aは、塗布面判定結果に基づいてワーク駆動部22を制御することによって、押圧力、押圧時間、塗布対象物Wの移動速度等の押圧条件を調整する。すなわち、塗布面における塗布剤Jの状態に関わらず、塗布剤Jが塗布対象物Wに適正に塗布されるようワーク駆動部22による押圧動作を制御するのである。その後、ワーク駆動部22が塗布対象物Wを待機位置P21に復帰させる(図6(c))。
【0047】
このように、塗布対象物Wをフェルト材Fに押圧して塗布処理を行う際に、塗布面判定結果(塗布剤Jの含有量)に基づいて押圧条件を制御するので、塗布対象物Wの塗布状態(塗布量、塗布範囲)を安定させることができる。
【0048】
ここで、塗布対象物Wは棒体状に形成され、その端面は図7(a)に示すように断面が略コの字に形成されている。したがって、塗布対象物Wの端部をフェルト材Fの塗布面に押圧した直後には、フェルト材Fの塗布面に図7(b)に示すようなコの字状の塗布痕Kが残る。この塗布痕Kは、フェルト材Fの塗布面が塗布対象物Wの端面で圧縮されることによる塗布面の状態変化等によって生じた塗布対象物Wの端部の痕跡であり、塗布痕Kの領域と塗布痕K以外の領域とでは互いの濃淡値が異なる。
【0049】
次に、塗布対象物Wが待機位置P21に復帰すると、フェルト材Fの塗布面に塗布痕Kが残っている間で、塗布面の復元によって塗布痕Kが消える前に、画像処理部60は、フェルト材11の塗布面を照射する照明器具Laを始動させた後に、塗布位置P11のフェルト材11の塗布面をカメラCによって撮像し、カメラCが撮像した塗布後濃淡画像データを取得する。
【0050】
画像処理部60では、上記取得した塗布後濃淡画像データに基づいて、塗布対象物Wの端部における塗布剤Jの塗布状態を判断する。まず、記憶部60bには塗布後二値化閾値が予め記憶されており、二値化処理部60aは、塗布後濃淡画像データの各画素の濃淡値(明度等)を塗布後二値化閾値と比較することで二値化する。そして、記憶部60bには、各画素に対応した二値化フラグが予め作成されており、二値化結果に基づいて各二値化フラグを「1」または「0」にセットすることで、各画素を塗布痕の画素と塗布痕以外の画素とに分ける。塗布後濃淡画像データ内の任意の画素sの濃淡値をG(s)、塗布後二値化閾値をGtとすると、「G(s)>Gt」のときには、画素sを塗布痕上の画素であると判定し、当該画素sの二値化フラグを「1」にセットする。一方、「G(s)≦Gt」のときには、画素sを塗布痕上の画素でないと判定し、当該画素sの二値化フラグを「0」にセットする。例えば、図8に示すように、画素s11の濃淡値G(s11)が二値化閾値Gt以下であるので、画素s11は塗布痕上の画素でないと判定し、画素s12の濃淡値G(s12)が二値化閾値Gtを超えているので、画素s12は塗布痕上の画素であると判定する。すなわち、図7(b)のコの字状の塗布痕Kに対応する画素は二値化フラグが「1」にセットされ、塗布痕Kに対応しない画素は二値化フラグが「0」にセットされる。
【0051】
次に、塗布状態判断部60cは、「1」にセットされた二値化フラグの数Nbを、記憶部60bに予め記憶された塗布後フラグ閾値Ntと比較し、「1」にセットされた二値化フラグの数Nbがフラグ閾値Nt以上であれば、塗布痕Kに相当する画素が十分に存在しており、塗布対象物Wにおける塗布剤Jの塗布状態が良好であると判定する(すなわち、塗布対象物Wが良品である)。一方、「1」にセットされた二値化フラグの数Nbがフラグ閾値Nt未満であれば、塗布痕Kに相当する画素が少なく、塗布対象物Wにおける塗布剤Jの塗布状態が悪いと判定する(すなわち、塗布対象物Wが不良品である)。
【0052】
例えば、図9(a)に示す略完全なコの字状の塗布痕K1であれば、塗布痕Kに相当する画素が十分に存在しており、図10の画像11(横軸)に示すように、「1」にセットされた二値化フラグの数Nb11がフラグ閾値Nt以上となって、塗布状態が良好であると判定される。しかし、図9(b)に示す不完全な塗布痕K2であれば、領域Raの塗布痕が存在せず、図10の画像12(横軸)に示すように、「1」にセットされた二値化フラグの数Nb12が領域Ra内の画素分だけ少なくなり、フラグ閾値Nt未満となって、塗布状態が悪いと判定される。
【0053】
そして、塗布状態判断部60cは、上記塗布状態の判定結果を表示装置70のモニタ画面に表示させる。
【0054】
このように、本実施形態では、塗布対象物Wの端部を押し付けた後のフェルト材Fの塗布面に残る塗布痕Kの状態を画像処理で検出し、この塗布痕Kの状態によって塗布対象物Wにおける塗布状態の検査を行うので、塗布面に印刷パターンがない場合でも、塗布面の撮像結果を用いた塗布状態の検査が可能となる。
【0055】
また、塗布対象物Wの端部をフェルト材Fに押圧した後に、フェルト材Fの塗布面の塗布痕Kの全領域に基づいて塗布状態の良否を判定するので、塗布対象物Wの端部全体の塗布状態を検査でき、さらには部分的な塗布不良であっても検出できる。また、透明または半透明の塗布剤Jを用いても、塗布痕Kをもとに塗布状態の良否を判定するので、塗布剤Jや塗布対象物W表面の光の透過性および反射性の影響を受けることなく、塗布状態を検査できる。すなわち、塗布状態の誤判定を防止して、検査結果の精度を向上させることが可能となる。
【0056】
また、塗布後濃淡画像データを用いて、塗布後の塗布対象物Wにおける塗布状態の検査を行うだけでなく、前述のように塗布前濃淡画像データも用いて、塗布前の塗布面の状態も判断しているので、必要に応じて塗布面のメンテナンスを行ったり、塗布面の状態に応じた塗布制御を行うことによって、不良品の発生を抑制できる。
【0057】
その後、塗布対象物Wが未塗布のものに交換され(作業者による手動交換、または自動交換)、新規の塗布対象物Wに対しても上記同様に塗布処理が行われるのであるが、前回の塗布時における塗布面状態の判定結果に基づいて、塗布集中制御部50のローラ駆動制御部50bおよび塗布剤供給制御部50cおよびフェルト駆動制御部50dは、ローラ駆動部31および塗布剤供給部32およびフェルト駆動部12の各動作を制御する。
【0058】
まず、塗布剤供給制御部50cは、フェルト駆動制御部50dがフェルト材Fを塗布位置P11から補充位置P12に移動させる前に、前回の塗布面判定結果に基づいて供給量制御部32bを制御することによって、塗布剤槽32aから塗布剤貯蔵部30へ供給する塗布剤Jの流量を調整する。すなわち、前回の塗布面における塗布剤Jの含有量が過多であった場合には、塗布剤Jの流量を減少させて、今回の塗布面における塗布剤Jの含有量が少なくなる方向へ調整する。また、前回の塗布面における塗布剤Jの含有量が不足していた場合には、塗布剤Jの流量を増加させて、今回の塗布面における塗布剤Jの含有量が多くなる方向へ調整する。
【0059】
このように、塗布剤貯蔵部30内の塗布剤Jの量を前回の塗布面判定結果に基づいて制御するので、塗布剤貯蔵部30内でフェルト材Fに含有させる塗布剤Jの量を適切に調整できる。
【0060】
また、フェルト駆動制御部50dは、フェルト材Fを塗布剤貯蔵部30内の塗布剤Jに浸漬して、塗布剤Jを含有させる際に、前回の塗布面判定結果に基づいてフェルト駆動部12を制御することによって、浸漬時間、浸漬範囲、フェルト材Fの移動速度等の浸漬条件を調整する。すなわち、前回の塗布面における塗布剤Jの含有量が過多であった場合には、浸漬時間の短縮等のように浸漬条件を変更して、今回の塗布面における塗布剤Jの含有量が少なくなる方向へ調整する。また、前回の塗布面における塗布剤Jの含有量が不足していた場合には、浸漬時間の増加等のように浸漬条件を変更して、今回の塗布面における塗布剤Jの含有量が多くなる方向へ調整する。
【0061】
このように、塗布剤貯蔵部30におけるフェルト材Fの浸漬条件を前回の塗布面判定結果に基づいて制御するので、フェルト材Fに含有させる塗布剤Jの量を適切に調整できる。
【0062】
また、ローラ駆動制御部50bは、フェルト駆動制御部50dがフェルト材Fを補充位置P12から塗布位置P11に移動させるときに、前回の塗布面判定結果に基づいてローラ駆動部31を駆動制御することによって、フェルト材Fを挟持する一対のローラ30aの間隔を調整する。すなわち、前回の塗布面における塗布剤Jの含有量が過多であった場合には、ローラ30aの間隔を狭くして、今回の塗布面における塗布剤Jの含有量が少なくなる方向へ調整する。また、前回の塗布面における塗布剤Jの含有量が不足していた場合には、ローラ30aの間隔を広くして、今回の塗布面における塗布剤Jの含有量が多くなる方向へ調整する。
【0063】
このように、塗布対象物Wをフェルト材Fに押圧して塗布処理を行う前に、フェルト材Fに含有している塗布剤Jを絞って、フェルト材Fが含有する塗布剤Jの量を前回の塗布面判定結果に基づいて制御するので、フェルト材Fに含有させた塗布剤Jの量を適切に調整できる。
【0064】
したがって、本実施形態では、塗布対象物Wの端部をフェルト材Fに押圧する前に、フェルト材Fの塗布面の状態(塗布剤Jの含有量)の良否を判定し、この塗布面判定結果に基づいて、押圧条件だけでなく、塗布剤貯蔵部30内の塗布剤Jの量、フェルト材Fの浸漬条件、一対のローラ30aの間隔も調整することで、塗布対象物Wをフェルト材Fに押圧して行われる塗布処理において、塗布状態(塗布量、塗布範囲)をさらに安定させることができる。
【0065】
また、次の塗布対象物Wに塗布剤Jを塗布する前に、フェルト材Fを塗布剤貯蔵部30内の塗布剤Jに再度浸漬することによって、必要な塗布剤Jを塗布毎にフェルト材Fに供給することができ、さらにはフェルト材Fが膨張して前回検査時の塗布痕Kを消すことができる。すなわち、フェルト材Fが塗布剤Jを再度吸湿することによって膨張し、塗布面が元の状態に復元して塗布痕Kが消え、連続塗布および連続検査が可能となる。
【0066】
(実施形態2)
本実施形態の塗布装置は、画像処理部60の塗布剤保持状態判断部60cが、塗布前濃淡画像データの撮像領域を複数の小領域に分割し、フェルト材Fの塗布面における塗布剤Jの含有量が適量であると判定されて「1」にセットされた二値化フラグの数を小領域毎に導出する。そして、各小領域における「1」にセットされた二値化フラグの数から、フェルト材Fの塗布面上における塗布剤Jの含有量のばらつき(塗布剤Jの分布状態)を判定している。すなわち、塗布剤Jがフェルト材Fの塗布面に均一に分布しているか否かを判定している。
【0067】
そして、塗布剤保持状態判断部60cは、実施形態1で説明した塗布面における塗布剤Jの含有量だけでなく、塗布剤Jの分布状態も塗布面判定結果として、表示装置70のモニタ画面に表示させる。したがって、作業者は、フェルト材Fの塗布面の経時変化による劣化等の状態変化を把握でき、装置が正常な状態であるか否かを監視できる。
【0068】
さらに、ワーク駆動制御部50aは、塗布面における塗布剤Jの含有量だけでなく、塗布剤Jの分布状態も塗布面判定結果として用い、押圧力、押圧時間、塗布対象物Wの移動速度等の押圧条件を調整する。また、ローラ駆動制御部50bおよび塗布剤供給制御部50cおよびフェルト駆動制御部50dも、塗布剤Jの分布状態を含む塗布面判定結果に基づいて、ローラ駆動部31および塗布剤供給部32およびフェルト駆動部12の各動作を制御する。したがって、塗布面判定結果に基づいて、より精度の高い各制御を行うことができ、塗布対象物Wをフェルト材Fに押圧して行われる塗布処理において、塗布状態(塗布量、塗布範囲)をさらに安定させることができる。
【符号の説明】
【0069】
C カメラ
F フェルト材
J 塗布剤
W 塗布対象物
22 ワーク駆動部
50 塗布剤集中制御部
60 画像処理部
60a 二値化処理部
60b 記憶部
60c 塗布剤保持状態判断部
60d 塗布状態判断部
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体またはゲル状の塗布剤を塗布する塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体またはゲル状の塗布剤を塗布する塗布装置において、塗布対象物(筒状、筐体状、函体状等)の端部に液体またはゲル状の塗布剤を塗布する工程があり、例えば塗布剤を含んだパッド等の塗布剤保持手段を塗布対象物の端部に押し付けることによって行われる。そして、この塗布対象物の塗布状態を検査するために、塗布剤保持手段の塗布面近傍に設置した非接触式のセンサ(近接センサ、赤外線センサ等)によって塗布対象物の有無を検知し、塗布剤保持手段が塗布対象物に押し当てられたか否かを判定することによって、塗布状態を検査するものがあった。また、塗布後の塗布対象物の端部表面をカメラで撮像し、撮像した画像データに画像処理を施すことで抽出した特徴をもとに塗布状態を検査する装置もあった。
【0003】
しかし、非接触式のセンサを用いて塗布対象物の有無を検知する上記構成では、塗布対象物の一部を検知すると正常に塗布されたものと判定するため、塗布対象物の端部表面の全領域に塗布剤が正常に塗布されているか否かを判定することはできず、部分的な塗布不良を検出できない虞があり、誤判定によって検査結果の精度が低下するという問題があった。
【0004】
また、塗布後の塗布対象物の端部表面の画像データに基づく上記構成でも、塗布剤が透明または半透明の場合に、塗布剤や塗布対象物表面の光の透過性および反射性の影響によって、正常に塗布された部分と未塗布部分との違いを検出することが困難であり、誤判定によって検査結果の精度が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、塗布剤保持手段の塗布面を塗布対象物の端部に押し付ける前後において当該塗布面を撮像し、この塗布面を撮像した画像データに画像処理を施すことで抽出した特徴をもとに、塗布面の状態、塗布対象物における塗布状態を検査する装置が提案された(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−225235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の構成では、塗布剤保持手段の塗布面には文字や図形等の印刷パターンが印字され、この塗布面の印刷パターンを塗布対象物に押し付けることによって、塗布対象物に文字や図形等を印字するものであり、塗布状態の検査も塗布面の印刷パターンを画像処理で認識することによって行われる。
【0008】
しかし、塗布面に印刷パターンを印字することなく、塗布面の全体にインクや接着剤等の塗布物を吸湿保持させ、この塗布面に塗布対象物を押し付けることによって、塗布対象物に塗布物を塗布する場合は、塗布面に認識可能な印刷パターンがないため、特許文献1のように印刷パターンを用いた画像処理を行うことができず、塗布状態の検査ができなかった。
【0009】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗布対象物に押し付ける塗布面に印刷パターンがない場合でも、塗布面の撮像結果を用いた塗布状態の検査を可能とした塗布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、塗布対象物の端部に塗布剤を塗布する塗布装置であって、塗布剤を吸湿保持する塗布剤保持手段と、塗布剤保持手段と塗布対象物とのうち少なくとも一方を移動させて、塗布剤保持手段の塗布面と塗布対象物の端面とを互いに当接させ、当該当接した両面間に押圧力を付与する押圧駆動手段と、塗布剤保持手段の塗布面と塗布対象物の端面との間に押圧力が付与される前後に、塗布面を各々撮像して塗布前濃淡画像および塗布後濃淡画像を出力する撮像手段と、塗布剤保持手段の塗布面の状態を判断するために塗布前濃淡画像を濃淡値に基づいて二値化し、塗布面に残った塗布対象物の端部の痕跡である塗布痕の状態を検出するために塗布後濃淡画像を濃淡値に基づいて二値化する二値化処理部と、塗布前濃淡画像を二値化した結果を予め設定された閾値と比較して塗布剤保持手段の塗布面の状態を判断する塗布剤保持状態判断部と、塗布後濃淡画像を二値化した結果を予め設定された閾値と比較して塗布剤の塗布状態を判断する塗布状態判断部とを備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、塗布対象物の端部を押し付けた後のフェルト材等の塗布剤保持手段の塗布面に残る塗布痕の状態を画像処理で検出し、この塗布痕の状態によって塗布対象物における塗布状態の検査を行うので、塗布面に印刷パターンがない場合でも、塗布面の撮像結果を用いた塗布状態の検査が可能となる。さらに、塗布前の塗布面の状態も判断するので、必要に応じて塗布面のメンテナンスを行ったり、塗布面の状態に応じた塗布制御を行うことによって、不良品の発生を抑制できる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1において、前記塗布剤保持状態判断部が判断した前記塗布面の状態に基づいて、前記押圧駆動手段が塗布剤保持手段の塗布面と塗布対象物の端面との間に付与する押圧力を制御する押圧駆動制御手段を備えることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、塗布対象物を塗布剤保持手段に押圧して塗布処理を行う際に、塗布面の状態に基づいて押圧条件を制御するので、塗布対象物の塗布状態を安定させることができる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記塗布剤保持状態判断部は、前記塗布面に含有された塗布剤の量を判定することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、塗布対象物における塗布剤の塗布量、塗布範囲を安定させることができる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1乃至3いずれかにおいて、前記塗布剤保持状態判断部は、前記塗布面上における塗布剤の含有量のばらつきを判定することを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、塗布剤が塗布剤保持手段の塗布面に均一に分布しているか否かを判定しているので、塗布面の経時変化による劣化等の状態変化を把握でき、装置が正常な状態であるか否かを監視できる。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1乃至4いずれかにおいて、塗布剤を貯蔵する塗布剤貯蔵部と、前記塗布剤保持手段の少なくとも一部が塗布剤貯蔵部内の塗布剤に浸漬する第1の位置と、前記押圧駆動手段が塗布剤保持手段の塗布面と塗布対象物の端面との間に押圧力を付与する第2の位置との間で、前記塗布剤保持手段を移動させる塗布剤保持部駆動手段とを備えることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、塗布対象物に塗布剤を塗布する前に、塗布剤保持手段を塗布剤貯蔵部内の塗布剤に浸漬することによって、必要な塗布剤を塗布毎に塗布剤保持手段に供給することができ、さらには塗布面の塗布痕を消すことができるので、連続塗布および連続検査が可能となる。
【0020】
請求項6の発明は、請求項5において、前記塗布剤保持状態判断部が判断した前記塗布面の状態に基づいて、前記塗布剤保持部駆動手段による前記塗布剤保持手段の移動動作を制御する塗布剤保持部駆動制御手段を備えることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、塗布剤貯蔵部における塗布剤保持手段の浸漬条件を塗布面の状態に基づいて制御するので、塗布剤保持手段に含有させる塗布剤の量を適切に調整できる。
【0022】
請求項7の発明は、請求項5または6において、前記塗布剤保持部駆動手段が前記塗布剤保持手段を前記第1の位置から第2の位置へ移動させる際に、塗布剤保持手段を移動可能に挟持する挟持手段と、前記塗布剤保持状態判断部が判断した前記塗布面の状態に基づいて、挟持手段の挟持動作を制御する挟持制御手段とを備えることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、塗布処理を行う前に、塗布剤保持手段に含有している塗布剤を絞って、塗布剤保持手段が含有する塗布剤の量を塗布面の状態に基づいて制御するので、塗布剤保持手段に含有させた塗布剤の量を適切に調整できる。
【0024】
請求項8の発明は、請求項5乃至7いずれかにおいて、前記塗布剤貯蔵部に塗布剤を供給する塗布剤供給手段と、前記塗布剤保持状態判断部が判断した前記塗布面の状態に基づいて、塗布剤供給手段が塗布剤貯蔵部へ供給する塗布剤の量を制御する塗布剤供給制御手段とを備えることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、塗布剤貯蔵部内の塗布剤の量を塗布面の状態に基づいて制御するので、塗布剤貯蔵部内で塗布剤保持手段に含有させる塗布剤の量を適切に調整できる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明では、塗布対象物に押し付ける塗布面に印刷パターンがない場合でも、塗布面の撮像結果を用いた塗布状態の検査が可能になるという効果がある。さらに、塗布前の塗布面の状態も判断するので、必要に応じて塗布面のメンテナンスを行ったり、塗布面の状態に応じた塗布制御を行うことによって、不良品の発生を抑制できるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の塗布装置の構成を示す図である。
【図2】同上の塗布剤供給部の構成を示す図である。
【図3】(a)〜(c)同上のフェルト材の塗布剤供給動作を示す図である。
【図4】同上の塗布前の二値化処理を示す図である。
【図5】同上の塗布剤保持状態の判断処理を示す図である。
【図6】(a)〜(c)同上のフェルト材と塗布対象物との押圧動作を示す図である。
【図7】(a)(b)同上の塗布対象物の端面および塗布痕を示す図である。
【図8】同上の塗布後の二値化処理を示す図である。
【図9】(a)(b)同上の塗布痕の状態を示す図である。
【図10】同上の塗布状態判断処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
(実施形態1)
図1は、本実施形態の塗布装置の構成を示しており、液体状またはゲル状の塗布剤Jを吸湿保持させたシート状のフェルト材F(塗布剤保持手段)に、塗布対象物W(筒状、筐体状、函体状等)の端部を押し付けることで、塗布対象物Wの端部近傍(少なくとも端面)に塗布剤Jを塗布する。なお本実施形態では、固定したフェルト材Fに塗布対象物Wの端部を押し付けるが、固定した塗布対象物Wの端部にフェルト材Fを押し付ける構成でもよい。
【0030】
フェルト材Fは、シート状に形成されており、その上端を支持アーム11によって保持固定されている。支持アーム11は、フェルト駆動部12によって上下方向に移動自在に構成されており、フェルト駆動部12は、モータ等によって支持アーム11を上下方向に駆動することによって、フェルト材Fの上下方向の位置を、上方の塗布位置P11または下方の補充位置P12に制御している(塗布剤保持部駆動手段)。
【0031】
塗布対象物Wは、支持アーム21によって保持固定されている。支持アーム21は、ワーク駆動部22によって水平方向に移動自在に構成されており、ワーク駆動部22は、モータ等によって支持アーム21を水平方向に駆動することによって、塗布対象物Wの水平方向の位置を、フェルト材Fから離れる方向の待機位置P21、または塗布対象物Wの端部をフェルト材Fの塗布面に当接させて押し付ける塗布位置P22に制御している(押圧駆動手段)。
【0032】
フェルト材Fの下方には、上面を開口した函体の塗布剤貯蔵部30が配置されており、塗布剤貯蔵部30内には、透明または半透明の塗布剤Jが入っている。また、塗布剤貯蔵部30の開口付近に水平方向に並設された一対のローラ30aは互いの間隔を調整可能に構成され、一対のローラ30aの間隔はローラ駆動部31によって調整される(挟持手段)。
【0033】
また、塗布剤貯蔵部30内に塗布剤Jを供給、補充するために、塗布剤供給部32が設けられている(塗布剤供給手段)。塗布剤供給部32は、図2に示すように、塗布剤Jを貯めており、塗布剤貯蔵部30に配管を介して接続された塗布剤槽32aと、配管に取り付けたバルブ等で構成された供給量制御部32bとで構成される。そして、供給量制御部32bを駆動制御することによって、塗布剤槽32aから塗布剤貯蔵部30へ供給する塗布剤Jの流量を調整する。
【0034】
さらに、塗布位置P11のフェルト材11の塗布面を撮像するCCDカメラC(以降、カメラCと称す)を備え、カメラCが撮像した濃淡画像データは画像処理部60に出力される(撮像手段)。
【0035】
画像処理部60は、二値化処理部60a、記憶部60b、塗布剤保持状態判断部60c、塗布状態判断部60dで構成されており、カメラCが撮像した濃淡画像データに基づいて、塗布前のフェルト材Fの塗布面状態、および塗布後の塗布対象物Wにおける塗布剤Jの塗布状態を検査し、その検査結果を表示装置70へ出力し、表示装置70はその検査結果を表示する。
【0036】
上記フェルト駆動部12、ワーク駆動部22、ローラ駆動部31、塗布剤供給部32(供給量制御部32b)、画像処理部60は、塗布集中制御部50によって集中制御されており、塗布集中制御部50は、各駆動部の動作を制御するためのワーク駆動制御部50a(押圧駆動制御手段)、ローラ駆動制御部50b(挟持制御手段)、塗布剤供給制御部50c(塗布剤供給制御手段)、フェルト駆動制御部50d(塗布剤保持部駆動制御手段)を備えている。
【0037】
以下、塗布集中制御部50による塗布装置の制御について詳細に説明する。
【0038】
初期状態として、フェルト材Fは塗布位置P11に位置し、塗布対象物Wは待機位置P21に位置している。まずフェルト駆動制御部50dは、フェルト駆動部12を駆動制御して、フェルト材Fを塗布位置P11から補充位置P12に向けて移動させ(図3(a))、フェルト材Fが補充位置P12に到着すると、フェルト材Fの一部が塗布剤貯蔵部30内の塗布剤Jに浸漬し、フェルト材Fに塗布剤Jを含有させる(図3(b))。その後、フェルト駆動部12がフェルト材Fを塗布位置P11に移動させるときは、ローラ駆動制御部50bがローラ駆動部31を駆動制御し、ローラ駆動部31が一対のローラ30aの間隔を狭くして、ローラ30a間にフェルト材Fを挟持し、この状態でローラ30aが回転しながらフェルト材Fが上方に移動する(図3(c))。すなわち、フェルト材Fがローラ30a間を通過することによって、フェルト材Fに含有している余分な塗布剤Jを絞って、フェルト材Fが含有する塗布剤Jの量を制御している。
【0039】
ここで本実施形態では、塗布剤Jを吸湿保持する塗布剤保持手段としてフェルト材Fを用いている。塗布剤保持手段としては、塗布剤Jを適量保持でき、さらには塗布対象物Wに押圧して塗布剤Jを塗布対象物Wに塗布した後に、塗布面に後述の塗布対象物Wの端部痕(以降、塗布痕と称す)が残りやすいものが、塗布対象物Wへの塗布処理、および塗布痕の状態による塗布状態検査に適している。すなわち、多孔質で弾性を有する材料が塗布剤保持手段には適しており、このような理由から本実施形態ではフェルト材Fを用いている。また、上記のようにローラ30aによってフェルト材Fが保持する塗布剤Jの量を適正に制御することによって、フェルト材Fの塗布面の塗布痕を安定して発生させることができる。
【0040】
塗布剤Jを吸湿保持したフェルト材Fが塗布位置P11に復帰すると、直後に画像処理部60は、フェルト材11の塗布面を照射する照明器具Laを始動させた後に、塗布位置P11のフェルト材11の塗布面をカメラCによって撮像し、後述の塗布処理を行う前にカメラCが撮像した塗布前濃淡画像データを取得する。
【0041】
画像処理部60では、上記取得した塗布前濃淡画像データに基づいて、フェルト材Fの塗布面における塗布剤Jの含有状態を判断する。まず、記憶部60bには塗布前二値化閾値が予め記憶されており、二値化処理部60aは、塗布前濃淡画像データの各画素の濃淡値(明度等)を塗布前二値化閾値と比較することで二値化する。そして、記憶部60bには、各画素に対応した二値化フラグが予め作成されており、二値化結果に基づいて各二値化フラグを「1」または「0」にセットすることで、塗布剤Jの含有量が適正である画素と、塗布剤Jの含有量が適正でない画素とに、各画素を分ける。
【0042】
フェルト材Fの塗布面は、例えば塗布剤Jの含有量が多い場合には暗くなり、塗布剤Jの含有量が少ない場合には明るくなり、塗布前濃淡画像データ内の任意の画素sの濃淡値をG(s)、塗布前二値化下限閾値をGu1、塗布前二値化上限閾値をGu2とすると、「Gu1≦G(s)≦Gu2」のときには、画素sは塗布剤Jの含有量が適量であると判定し、当該画素sの二値化フラグを「1」にセットする。一方、「G(s)<Gu1」のときには、画素sは塗布剤Jの含有量が過多であると判定し、当該画素sの二値化フラグを「0」にセットする。また、「G(s)>Gu2」のときには、画素sは塗布剤Jの含有量が不足していると判定し、当該画素sの二値化フラグを「0」にセットする。すなわち、塗布剤Jの含有量が適量である画素は二値化フラグが「1」にセットされ、塗布剤Jの含有量が適量でない画素は二値化フラグが「0」にセットされる。
【0043】
例えば、図4に示すように、画素s1の濃淡値G(s1)が二値化下限閾値Gu1未満であるので、画素s1は塗布剤Jの含有量が過多であると判定し、画素s2の濃淡値G(s2)が二値化上限閾値Gu2を超えているので、画素s2は塗布剤Jの含有量が不足していると判定し、画素s3の濃淡値G(s3)が二値化下限閾値Gu1以上、二値化上限閾値Gu2以下であるので、画素s3は塗布剤Jの含有量が適量であると判定する。
【0044】
次に、塗布剤保持状態判断部60cは、「1」にセットされた二値化フラグの数Naを、記憶部60bに予め記憶された塗布前フラグ閾値Nuと比較し、「1」にセットされた二値化フラグの数Naがフラグ閾値Nu以上であれば、フェルト材Fは塗布剤Jの含有量が適量であり、塗布面における塗布剤Jの状態が良好であると判定する。一方、「1」にセットされた二値化フラグの数Naがフラグ閾値Nu未満であれば、フェルト材Fは塗布剤Jの含有量が過不足状態であり、塗布面における塗布剤Jの状態が悪いと判定する。例えば、図5の画像1(横軸)は、「1」にセットされた二値化フラグの数Na1がフラグ閾値Nu以上となって、塗布面における塗布剤Jの状態が良好であると判定される。しかし、図5の画像2(横軸)は、「1」にセットされた二値化フラグの数Na2がフラグ閾値Nu未満となって、塗布面における塗布剤Jの状態が悪いと判定される。そして、塗布剤保持状態判断部60cは、上記塗布面における塗布剤Jの状態の判定結果(塗布面判定結果)を表示装置70のモニタ画面に表示させる。
【0045】
作業者は、表示装置70に表示された塗布前の塗布面の状態に基づいて、必要に応じて塗布面のメンテナンスを行うことで、後述の塗布処理後の不良品の発生を抑制する。
【0046】
次に、塗布集中制御部50のワーク駆動制御部50aは、塗布面判定結果に基づいて、ワーク駆動部22による押圧動作を制御する。まず、ワーク駆動制御部50aは、ワーク駆動部22を駆動制御して、塗布対象物Wを待機位置P21から塗布位置P22に向けて移動させ(図6(a))、塗布対象物Wの端部をフェルト材Fの塗布面に押圧し、塗布対象物Wの端部近傍(少なくとも端面)に塗布剤Jを塗布する(図6(b))。ワーク駆動制御部50aは、塗布面判定結果に基づいてワーク駆動部22を制御することによって、押圧力、押圧時間、塗布対象物Wの移動速度等の押圧条件を調整する。すなわち、塗布面における塗布剤Jの状態に関わらず、塗布剤Jが塗布対象物Wに適正に塗布されるようワーク駆動部22による押圧動作を制御するのである。その後、ワーク駆動部22が塗布対象物Wを待機位置P21に復帰させる(図6(c))。
【0047】
このように、塗布対象物Wをフェルト材Fに押圧して塗布処理を行う際に、塗布面判定結果(塗布剤Jの含有量)に基づいて押圧条件を制御するので、塗布対象物Wの塗布状態(塗布量、塗布範囲)を安定させることができる。
【0048】
ここで、塗布対象物Wは棒体状に形成され、その端面は図7(a)に示すように断面が略コの字に形成されている。したがって、塗布対象物Wの端部をフェルト材Fの塗布面に押圧した直後には、フェルト材Fの塗布面に図7(b)に示すようなコの字状の塗布痕Kが残る。この塗布痕Kは、フェルト材Fの塗布面が塗布対象物Wの端面で圧縮されることによる塗布面の状態変化等によって生じた塗布対象物Wの端部の痕跡であり、塗布痕Kの領域と塗布痕K以外の領域とでは互いの濃淡値が異なる。
【0049】
次に、塗布対象物Wが待機位置P21に復帰すると、フェルト材Fの塗布面に塗布痕Kが残っている間で、塗布面の復元によって塗布痕Kが消える前に、画像処理部60は、フェルト材11の塗布面を照射する照明器具Laを始動させた後に、塗布位置P11のフェルト材11の塗布面をカメラCによって撮像し、カメラCが撮像した塗布後濃淡画像データを取得する。
【0050】
画像処理部60では、上記取得した塗布後濃淡画像データに基づいて、塗布対象物Wの端部における塗布剤Jの塗布状態を判断する。まず、記憶部60bには塗布後二値化閾値が予め記憶されており、二値化処理部60aは、塗布後濃淡画像データの各画素の濃淡値(明度等)を塗布後二値化閾値と比較することで二値化する。そして、記憶部60bには、各画素に対応した二値化フラグが予め作成されており、二値化結果に基づいて各二値化フラグを「1」または「0」にセットすることで、各画素を塗布痕の画素と塗布痕以外の画素とに分ける。塗布後濃淡画像データ内の任意の画素sの濃淡値をG(s)、塗布後二値化閾値をGtとすると、「G(s)>Gt」のときには、画素sを塗布痕上の画素であると判定し、当該画素sの二値化フラグを「1」にセットする。一方、「G(s)≦Gt」のときには、画素sを塗布痕上の画素でないと判定し、当該画素sの二値化フラグを「0」にセットする。例えば、図8に示すように、画素s11の濃淡値G(s11)が二値化閾値Gt以下であるので、画素s11は塗布痕上の画素でないと判定し、画素s12の濃淡値G(s12)が二値化閾値Gtを超えているので、画素s12は塗布痕上の画素であると判定する。すなわち、図7(b)のコの字状の塗布痕Kに対応する画素は二値化フラグが「1」にセットされ、塗布痕Kに対応しない画素は二値化フラグが「0」にセットされる。
【0051】
次に、塗布状態判断部60cは、「1」にセットされた二値化フラグの数Nbを、記憶部60bに予め記憶された塗布後フラグ閾値Ntと比較し、「1」にセットされた二値化フラグの数Nbがフラグ閾値Nt以上であれば、塗布痕Kに相当する画素が十分に存在しており、塗布対象物Wにおける塗布剤Jの塗布状態が良好であると判定する(すなわち、塗布対象物Wが良品である)。一方、「1」にセットされた二値化フラグの数Nbがフラグ閾値Nt未満であれば、塗布痕Kに相当する画素が少なく、塗布対象物Wにおける塗布剤Jの塗布状態が悪いと判定する(すなわち、塗布対象物Wが不良品である)。
【0052】
例えば、図9(a)に示す略完全なコの字状の塗布痕K1であれば、塗布痕Kに相当する画素が十分に存在しており、図10の画像11(横軸)に示すように、「1」にセットされた二値化フラグの数Nb11がフラグ閾値Nt以上となって、塗布状態が良好であると判定される。しかし、図9(b)に示す不完全な塗布痕K2であれば、領域Raの塗布痕が存在せず、図10の画像12(横軸)に示すように、「1」にセットされた二値化フラグの数Nb12が領域Ra内の画素分だけ少なくなり、フラグ閾値Nt未満となって、塗布状態が悪いと判定される。
【0053】
そして、塗布状態判断部60cは、上記塗布状態の判定結果を表示装置70のモニタ画面に表示させる。
【0054】
このように、本実施形態では、塗布対象物Wの端部を押し付けた後のフェルト材Fの塗布面に残る塗布痕Kの状態を画像処理で検出し、この塗布痕Kの状態によって塗布対象物Wにおける塗布状態の検査を行うので、塗布面に印刷パターンがない場合でも、塗布面の撮像結果を用いた塗布状態の検査が可能となる。
【0055】
また、塗布対象物Wの端部をフェルト材Fに押圧した後に、フェルト材Fの塗布面の塗布痕Kの全領域に基づいて塗布状態の良否を判定するので、塗布対象物Wの端部全体の塗布状態を検査でき、さらには部分的な塗布不良であっても検出できる。また、透明または半透明の塗布剤Jを用いても、塗布痕Kをもとに塗布状態の良否を判定するので、塗布剤Jや塗布対象物W表面の光の透過性および反射性の影響を受けることなく、塗布状態を検査できる。すなわち、塗布状態の誤判定を防止して、検査結果の精度を向上させることが可能となる。
【0056】
また、塗布後濃淡画像データを用いて、塗布後の塗布対象物Wにおける塗布状態の検査を行うだけでなく、前述のように塗布前濃淡画像データも用いて、塗布前の塗布面の状態も判断しているので、必要に応じて塗布面のメンテナンスを行ったり、塗布面の状態に応じた塗布制御を行うことによって、不良品の発生を抑制できる。
【0057】
その後、塗布対象物Wが未塗布のものに交換され(作業者による手動交換、または自動交換)、新規の塗布対象物Wに対しても上記同様に塗布処理が行われるのであるが、前回の塗布時における塗布面状態の判定結果に基づいて、塗布集中制御部50のローラ駆動制御部50bおよび塗布剤供給制御部50cおよびフェルト駆動制御部50dは、ローラ駆動部31および塗布剤供給部32およびフェルト駆動部12の各動作を制御する。
【0058】
まず、塗布剤供給制御部50cは、フェルト駆動制御部50dがフェルト材Fを塗布位置P11から補充位置P12に移動させる前に、前回の塗布面判定結果に基づいて供給量制御部32bを制御することによって、塗布剤槽32aから塗布剤貯蔵部30へ供給する塗布剤Jの流量を調整する。すなわち、前回の塗布面における塗布剤Jの含有量が過多であった場合には、塗布剤Jの流量を減少させて、今回の塗布面における塗布剤Jの含有量が少なくなる方向へ調整する。また、前回の塗布面における塗布剤Jの含有量が不足していた場合には、塗布剤Jの流量を増加させて、今回の塗布面における塗布剤Jの含有量が多くなる方向へ調整する。
【0059】
このように、塗布剤貯蔵部30内の塗布剤Jの量を前回の塗布面判定結果に基づいて制御するので、塗布剤貯蔵部30内でフェルト材Fに含有させる塗布剤Jの量を適切に調整できる。
【0060】
また、フェルト駆動制御部50dは、フェルト材Fを塗布剤貯蔵部30内の塗布剤Jに浸漬して、塗布剤Jを含有させる際に、前回の塗布面判定結果に基づいてフェルト駆動部12を制御することによって、浸漬時間、浸漬範囲、フェルト材Fの移動速度等の浸漬条件を調整する。すなわち、前回の塗布面における塗布剤Jの含有量が過多であった場合には、浸漬時間の短縮等のように浸漬条件を変更して、今回の塗布面における塗布剤Jの含有量が少なくなる方向へ調整する。また、前回の塗布面における塗布剤Jの含有量が不足していた場合には、浸漬時間の増加等のように浸漬条件を変更して、今回の塗布面における塗布剤Jの含有量が多くなる方向へ調整する。
【0061】
このように、塗布剤貯蔵部30におけるフェルト材Fの浸漬条件を前回の塗布面判定結果に基づいて制御するので、フェルト材Fに含有させる塗布剤Jの量を適切に調整できる。
【0062】
また、ローラ駆動制御部50bは、フェルト駆動制御部50dがフェルト材Fを補充位置P12から塗布位置P11に移動させるときに、前回の塗布面判定結果に基づいてローラ駆動部31を駆動制御することによって、フェルト材Fを挟持する一対のローラ30aの間隔を調整する。すなわち、前回の塗布面における塗布剤Jの含有量が過多であった場合には、ローラ30aの間隔を狭くして、今回の塗布面における塗布剤Jの含有量が少なくなる方向へ調整する。また、前回の塗布面における塗布剤Jの含有量が不足していた場合には、ローラ30aの間隔を広くして、今回の塗布面における塗布剤Jの含有量が多くなる方向へ調整する。
【0063】
このように、塗布対象物Wをフェルト材Fに押圧して塗布処理を行う前に、フェルト材Fに含有している塗布剤Jを絞って、フェルト材Fが含有する塗布剤Jの量を前回の塗布面判定結果に基づいて制御するので、フェルト材Fに含有させた塗布剤Jの量を適切に調整できる。
【0064】
したがって、本実施形態では、塗布対象物Wの端部をフェルト材Fに押圧する前に、フェルト材Fの塗布面の状態(塗布剤Jの含有量)の良否を判定し、この塗布面判定結果に基づいて、押圧条件だけでなく、塗布剤貯蔵部30内の塗布剤Jの量、フェルト材Fの浸漬条件、一対のローラ30aの間隔も調整することで、塗布対象物Wをフェルト材Fに押圧して行われる塗布処理において、塗布状態(塗布量、塗布範囲)をさらに安定させることができる。
【0065】
また、次の塗布対象物Wに塗布剤Jを塗布する前に、フェルト材Fを塗布剤貯蔵部30内の塗布剤Jに再度浸漬することによって、必要な塗布剤Jを塗布毎にフェルト材Fに供給することができ、さらにはフェルト材Fが膨張して前回検査時の塗布痕Kを消すことができる。すなわち、フェルト材Fが塗布剤Jを再度吸湿することによって膨張し、塗布面が元の状態に復元して塗布痕Kが消え、連続塗布および連続検査が可能となる。
【0066】
(実施形態2)
本実施形態の塗布装置は、画像処理部60の塗布剤保持状態判断部60cが、塗布前濃淡画像データの撮像領域を複数の小領域に分割し、フェルト材Fの塗布面における塗布剤Jの含有量が適量であると判定されて「1」にセットされた二値化フラグの数を小領域毎に導出する。そして、各小領域における「1」にセットされた二値化フラグの数から、フェルト材Fの塗布面上における塗布剤Jの含有量のばらつき(塗布剤Jの分布状態)を判定している。すなわち、塗布剤Jがフェルト材Fの塗布面に均一に分布しているか否かを判定している。
【0067】
そして、塗布剤保持状態判断部60cは、実施形態1で説明した塗布面における塗布剤Jの含有量だけでなく、塗布剤Jの分布状態も塗布面判定結果として、表示装置70のモニタ画面に表示させる。したがって、作業者は、フェルト材Fの塗布面の経時変化による劣化等の状態変化を把握でき、装置が正常な状態であるか否かを監視できる。
【0068】
さらに、ワーク駆動制御部50aは、塗布面における塗布剤Jの含有量だけでなく、塗布剤Jの分布状態も塗布面判定結果として用い、押圧力、押圧時間、塗布対象物Wの移動速度等の押圧条件を調整する。また、ローラ駆動制御部50bおよび塗布剤供給制御部50cおよびフェルト駆動制御部50dも、塗布剤Jの分布状態を含む塗布面判定結果に基づいて、ローラ駆動部31および塗布剤供給部32およびフェルト駆動部12の各動作を制御する。したがって、塗布面判定結果に基づいて、より精度の高い各制御を行うことができ、塗布対象物Wをフェルト材Fに押圧して行われる塗布処理において、塗布状態(塗布量、塗布範囲)をさらに安定させることができる。
【符号の説明】
【0069】
C カメラ
F フェルト材
J 塗布剤
W 塗布対象物
22 ワーク駆動部
50 塗布剤集中制御部
60 画像処理部
60a 二値化処理部
60b 記憶部
60c 塗布剤保持状態判断部
60d 塗布状態判断部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布対象物の端部に塗布剤を塗布する塗布装置であって、
塗布剤を吸湿保持する塗布剤保持手段と、
塗布剤保持手段と塗布対象物とのうち少なくとも一方を移動させて、塗布剤保持手段の塗布面と塗布対象物の端面とを互いに当接させ、当該当接した両面間に押圧力を付与する押圧駆動手段と、
塗布剤保持手段の塗布面と塗布対象物の端面との間に押圧力が付与される前後に、塗布面を各々撮像して塗布前濃淡画像および塗布後濃淡画像を出力する撮像手段と、
塗布剤保持手段の塗布面の状態を判断するために塗布前濃淡画像を濃淡値に基づいて二値化し、塗布面に残った塗布対象物の端部の痕跡である塗布痕の状態を検出するために塗布後濃淡画像を濃淡値に基づいて二値化する二値化処理部と、
塗布前濃淡画像を二値化した結果を予め設定された閾値と比較して塗布剤保持手段の塗布面の状態を判断する塗布剤保持状態判断部と、
塗布後濃淡画像を二値化した結果を予め設定された閾値と比較して塗布剤の塗布状態を判断する塗布状態判断部と、
を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記塗布剤保持状態判断部が判断した前記塗布面の状態に基づいて、前記押圧駆動手段が塗布剤保持手段の塗布面と塗布対象物の端面との間に付与する押圧力を制御する押圧駆動制御手段を備えることを特徴とする請求項1記載の塗布装置。
【請求項3】
前記塗布剤保持状態判断部は、前記塗布面に含有された塗布剤の量を判定することを特徴とする請求項1または2記載の塗布装置。
【請求項4】
前記塗布剤保持状態判断部は、前記塗布面上における塗布剤の含有量のばらつきを判定することを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の塗布装置。
【請求項5】
塗布剤を貯蔵する塗布剤貯蔵部と、
前記塗布剤保持手段の少なくとも一部が塗布剤貯蔵部内の塗布剤に浸漬する第1の位置と、前記押圧駆動手段が塗布剤保持手段の塗布面と塗布対象物の端面との間に押圧力を付与する第2の位置との間で、前記塗布剤保持手段を移動させる塗布剤保持部駆動手段と
を備えることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の塗布装置。
【請求項6】
前記塗布剤保持状態判断部が判断した前記塗布面の状態に基づいて、前記塗布剤保持部駆動手段による前記塗布剤保持手段の移動動作を制御する塗布剤保持部駆動制御手段を備えることを特徴とする請求項5記載の塗布装置。
【請求項7】
前記塗布剤保持部駆動手段が前記塗布剤保持手段を前記第1の位置から第2の位置へ移動させる際に、塗布剤保持手段を移動可能に挟持する挟持手段と、
前記塗布剤保持状態判断部が判断した前記塗布面の状態に基づいて、挟持手段の挟持動作を制御する挟持制御手段と
を備えることを特徴とする請求項5または6記載の塗布装置。
【請求項8】
前記塗布剤貯蔵部に塗布剤を供給する塗布剤供給手段と、
前記塗布剤保持状態判断部が判断した前記塗布面の状態に基づいて、塗布剤供給手段が塗布剤貯蔵部へ供給する塗布剤の量を制御する塗布剤供給制御手段と
を備えることを特徴とする請求項5乃至7いずれか記載の塗布装置。
【請求項1】
塗布対象物の端部に塗布剤を塗布する塗布装置であって、
塗布剤を吸湿保持する塗布剤保持手段と、
塗布剤保持手段と塗布対象物とのうち少なくとも一方を移動させて、塗布剤保持手段の塗布面と塗布対象物の端面とを互いに当接させ、当該当接した両面間に押圧力を付与する押圧駆動手段と、
塗布剤保持手段の塗布面と塗布対象物の端面との間に押圧力が付与される前後に、塗布面を各々撮像して塗布前濃淡画像および塗布後濃淡画像を出力する撮像手段と、
塗布剤保持手段の塗布面の状態を判断するために塗布前濃淡画像を濃淡値に基づいて二値化し、塗布面に残った塗布対象物の端部の痕跡である塗布痕の状態を検出するために塗布後濃淡画像を濃淡値に基づいて二値化する二値化処理部と、
塗布前濃淡画像を二値化した結果を予め設定された閾値と比較して塗布剤保持手段の塗布面の状態を判断する塗布剤保持状態判断部と、
塗布後濃淡画像を二値化した結果を予め設定された閾値と比較して塗布剤の塗布状態を判断する塗布状態判断部と、
を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記塗布剤保持状態判断部が判断した前記塗布面の状態に基づいて、前記押圧駆動手段が塗布剤保持手段の塗布面と塗布対象物の端面との間に付与する押圧力を制御する押圧駆動制御手段を備えることを特徴とする請求項1記載の塗布装置。
【請求項3】
前記塗布剤保持状態判断部は、前記塗布面に含有された塗布剤の量を判定することを特徴とする請求項1または2記載の塗布装置。
【請求項4】
前記塗布剤保持状態判断部は、前記塗布面上における塗布剤の含有量のばらつきを判定することを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の塗布装置。
【請求項5】
塗布剤を貯蔵する塗布剤貯蔵部と、
前記塗布剤保持手段の少なくとも一部が塗布剤貯蔵部内の塗布剤に浸漬する第1の位置と、前記押圧駆動手段が塗布剤保持手段の塗布面と塗布対象物の端面との間に押圧力を付与する第2の位置との間で、前記塗布剤保持手段を移動させる塗布剤保持部駆動手段と
を備えることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の塗布装置。
【請求項6】
前記塗布剤保持状態判断部が判断した前記塗布面の状態に基づいて、前記塗布剤保持部駆動手段による前記塗布剤保持手段の移動動作を制御する塗布剤保持部駆動制御手段を備えることを特徴とする請求項5記載の塗布装置。
【請求項7】
前記塗布剤保持部駆動手段が前記塗布剤保持手段を前記第1の位置から第2の位置へ移動させる際に、塗布剤保持手段を移動可能に挟持する挟持手段と、
前記塗布剤保持状態判断部が判断した前記塗布面の状態に基づいて、挟持手段の挟持動作を制御する挟持制御手段と
を備えることを特徴とする請求項5または6記載の塗布装置。
【請求項8】
前記塗布剤貯蔵部に塗布剤を供給する塗布剤供給手段と、
前記塗布剤保持状態判断部が判断した前記塗布面の状態に基づいて、塗布剤供給手段が塗布剤貯蔵部へ供給する塗布剤の量を制御する塗布剤供給制御手段と
を備えることを特徴とする請求項5乃至7いずれか記載の塗布装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−5427(P2011−5427A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151624(P2009−151624)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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