説明

塗布針およびその製造方法

【課題】修正剤の保持量を増大させ得る欠陥修正装置用の塗布針を提供する。
【解決手段】塗布針1は、その先端部表面に凸状部4を有する。凸状部4は、塗布針を構成する軸状素材1’とは非接触に設けられたノズル11から供給されたインク12の微小液滴の集合体を硬化させることによって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布針およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ(以下、「LCD」と称す)の大型化、高精細化等に伴って、LCDを無欠陥で製造することが困難となり、また欠陥の発生率も増大してきている。そこで歩留向上のため、LCDのカラーフィルタの製造工程において発生する欠陥を修正する欠陥修正装置が生産ラインに設置されるのが通例となっている。
【0003】
カラーフィルタは、例えば図8(a)〜(c)に示すように、透明基板と、その表面に形成されたブラックマトリクス300と称される格子状のパターンと、複数組のR(赤色)画素301、G(緑色)画素302、およびB(青色)画素303とを含むものである。このカラーフィルタの製造工程において発生する欠陥としては、画素やブラックマトリクス300の色が抜けた白欠陥304(図8(a)参照)、隣り合う画素の色、あるいはブラックマトリクス300が画素にはみ出して混色した黒欠陥305(図8(b)参照)、および画素に異物が付着した異物欠陥306(図8(c)参照)などがある。
【0004】
上記の各種欠陥は、上記の欠陥修正装置を用いて修正することができる。例えば白欠陥304は、白欠陥304が存在する画素と同色の液状材料(修正剤)を塗布針の先端部に付着させ、針先端の円形平坦面の修正剤を白欠陥304に転写し、円形の修正剤層で白欠陥304を被覆することによって修正することができる(例えば、特許文献1参照)。また、黒欠陥305や異物欠陥306は、例えば欠陥部分をレーザカットして矩形の白欠陥を形成し、先端面が矩形状の塗布針を用いて該白欠陥を修正剤層で被覆することによって修正することができる(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−61296号公報
【特許文献2】特開平9−262520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した欠陥修正方法(欠陥修正装置)で用いられる塗布針の先端平坦面は、修正剤の塗布精度を高める観点からあまり大きくすることができず、その最大径は数十μm〜1mm程度に設定されているのが通例である。そのため、1サイクルで塗布可能な修正剤量が少なく、欠陥を効率良く修正するのが困難である。特に大型のLCDにおいては、カラーフィルタの画素サイズ、さらには欠陥サイズも大きくなるため、かかる問題が顕著になる。
【0006】
本発明の課題は、修正剤の保持量を増大させ得る塗布針を提供することにある。
【0007】
また本発明の他の課題は、修正剤の保持量を増大させ得る塗布針を、容易かつ高精度に製造可能とする方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、先端部に液状材料を付着させ、その先端を基板に接触させて液状材料を基板に塗布する塗布針であって、軸状素材の先端表面に供給した微量インクの集合体で凸状部を形成した塗布針を提供する。なお、ここでいう軸状素材は、断面真円形状のものはもちろんのこと、断面矩形状、断面楕円状等、種々の断面形状のものが含まれる。
【0009】
このように、軸状素材の先端表面に凸状部を形成することにより、先端部の表面積が増して修正剤の保持量を増大させることができ、1サイクルで塗布可能な修正剤量を増大させることができる。これにより、特に大型のLCDに発生する各種欠陥を効率良く修正することができる。
【0010】
ところで上述のとおり、塗布針の先端部は極細径に設定されるため、かかる凸状部を切削等の機械加工で精度良く形成するのは容易ではない。すなわち、機械加工はワークに対して接触状態で加工するものであり、加工時にはワークに振動、熱、摩擦力等が作用する。そのため、上述のような極細の塗布針に機械加工を施すと、塗布針(軸状素材)が変形等するおそれがあり、所望の加工精度を確保できない可能性が高い。
【0011】
これに対し、本願発明における凸状部は微量インクの集合体で形成されていることから、かかる問題点は回避可能である。すなわち、上記の凸状部は、軸状素材の先端表面に微量インクを供給し、微量インクの集合体で素材表面に凸状部を形成する工程を経て製造することが可能で、軸状素材の先端表面にインクを供給するための具体的な方法としては、例えば、インクをインク供給部(例えば、ノズル)から微小液滴の状態で滴下あるいは着弾させる、いわゆるインクジェット法を挙げることができる。
【0012】
インクジェット法では、素材とは非接触の状態で素材表面に凸状部を形成することができるから、機械加工で素材の先端表面に凸状部を形成する場合に懸念される振動等の悪影響を排除して、マイクロオーダーの凸状部を容易かつ高精度に形成することができる。また、以上に例示した方法であれば、予めプログラミングし、そのプログラムに沿ってインク供給部の位置およびインクの供給・停止を制御することにより、任意の箇所に任意形状の凸状部を容易かつ高精度に形成することができる。
【0013】
なお、軸状素材の先端表面と非接触の状態で微量インクを供給する方法としては、上記のインクジェット法の他、電気泳動を利用してインクを誘導する方法、ノズルではなくインク液面からインク液滴を飛ばすノズルレスタイプのインクジェット法(ノズルレスインクジェット法)、マイクロピペットを介してインクを液滴の状態ではなく連続的に吐出する方法、あるいは定着面までの距離を短縮し、インクを吐出と同時に定着面に着弾させる方法等を採用することもできる。
【0014】
また、本発明では上記の課題を解決するため、先端部に液状材料を付着させ、その先端を基板に接触させて液状材料を基板に塗布する塗布針であって、軸状素材の先端表面をエッチングして凹状部を形成した塗布針を提供する。
【0015】
かかる構成の塗布針は、軸状素材の表面に微量インクを供給し、微量インクの集合体で素材表面にマスキング部を形成する工程と、非マスキング部をエッチングする工程と、マスキング部を除去することにより素材表面に凸状部を形成する工程とを経て製造することができる。
【0016】
かかる構成であっても、先端部の表面積が増して修正剤の保持量を増大させることができる。また上記同様、凹状部の形成に際し、機械加工で問題となる振動等の影響を排除することができるから、素材表面にマイクロオーダーの凹状部を容易かつ高精度に形成することができる。なお、非マスク部の素材表面をエッチングする手法としては、化学エッチングあるいは電解エッチングが選択可能である。しかしながら、電解エッチングは、電解電源を必要とし、処理装置が複雑かつ高価なものとなるため、これらの問題点が生じない化学エッチングが望ましい。
【0017】
上述した構成において、素材の先端表面に微量インクを供給するインク供給部と軸状素材とは相対回転させるのが望ましい。このようにすれば、凸状部(あるいはマスキング部)を素材の周方向に漸次形成することができ、凸状部を効率的に形成することができる。このときさらに、例えば素材表面に供給されたインクを硬化させる硬化部を、インク供給部と円周位置を異ならせて設ければ、素材の回転に伴ってインクの供給(印刷)および硬化を同時進行させることができ、一層効率的に凸状部の形成を行うことができる。
【0018】
凸状部(マスキング部)を形成するのに用いるインクとしては、例えば電子線や光線等を照射することにより硬化するものが考えられるが、特にコスト面や作業環境等を考慮すると、光硬化タイプのインクを用いるのが望ましい。光硬化タイプのインクとしては、紫外線硬化タイプや赤外線硬化タイプの他、可視光硬化タイプのインクも使用することができるが、低コストでかつ短時間で硬化させることができる紫外線硬化タイプが特に望ましい。
【0019】
インクとしては、上記の他にも、熱硬化タイプのインクを用いることもできる。
【発明の効果】
【0020】
以上より、本発明によれば、液状材料の保持量を増大させ得る塗布針を提供することができる。また、液状材料の保持量を増大させることができる欠陥修正用の塗布針を、容易かつ高精度に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、図2に示す塗布針1を構成する軸状(針状)素材の先端表面に凸状部4を形成するインクジェット方式の印刷装置の概要を示すものである。素材1’はステンレス鋼等の金属材料で形成され、先端の平坦面3に向かって断面積が漸次縮小するテーパ部2をその先端部に備える。一方、同図に示す印刷装置は、主要な構成要素として、素材1’を回転駆動させる支持部13と、素材1’の外周面と非接触に対向配置された一組又は複数組(図示例は一組)のノズルヘッド10および硬化部14とを備えている。ノズルヘッド10には、インク12の微小液滴を吐出する複数のノズル11が配設されている。硬化部14は素材表面に着弾したインク12を硬化させるための光を照射する光源で、例えば紫外線ランプが使用される。この硬化部14は、照射紫外線によるノズル11の目詰まりを防止するため、紫外線がノズル11に照射されない程度にノズルヘッド10とは円周方向位置を異ならせて配置されている。支持部13は、素材1’の一端を支持するものであっても、両端を支持するものであってもよい。なお、ノズル11からのインク12の吐出方式は特に問わず、ピエゾ方式、サーマルインクジェット方式、エアジェット方式などの公知の吐出方式が選択可能である。
【0023】
インク12は、例えば光硬化性樹脂、好ましくは紫外線硬化樹脂を主成分(ベース樹脂)とし、これに光重合開始剤等の各種添加剤を適宜配合したものが使用される。
【0024】
インク12のベース樹脂を構成する紫外線硬化樹脂としては、例えばラジカル重合系モノマーやラジカル重合系オリゴマー、カチオン重合系モノマーの他、イミドアクリレート、あるいは環状ポリエン化合物やポリチオール化合物に代表されるエン・チオール化合物が挙げられるが、この中でもラジカル重合系モノマーやラジカル重合系オリゴマー、カチオン重合系モノマーを好ましく使用することができる。
【0025】
ラジカル重合系モノマーとしては、例えば単官能、2官能あるいは多官能のアクリレート系モノマーや、メタクリレート系モノマーが使用でき、ラジカル重合系オリゴマーとしては、例えばウレタンアクリレートや、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、あるいは不飽和ポリエステルなどが使用できる。また、カチオン重合系モノマーとしては、例えばビスフェノールA系エポキシ樹脂や、フェノールノボラックエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂の他、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、3−エチル−3−(2−エチルへキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン等のオキセタン樹脂が使用できる。これら紫外線硬化樹脂は、単体で使用する他、2種類以上を混合したものをベース樹脂として使用することもできる。
【0026】
これらベース樹脂には、紫外線照射により重合反応を起こさせるためのラジカル系光重合開始剤や、カチオン系光重合開始剤等の光重合開始剤を配合することができる。ラジカル系光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノンや、オルソベンゾイン安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4‘−メチルジフェニルサルファイド、ベンゾフェノンのアンモニウム塩、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、チオキサントンのアンモニウム塩に代表される水素引抜型の光重合系開始剤が使用でき、あるいはベンゾイン誘導体や、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキサイド、モノアシルホスフィンオキサイド、ビスアシルホスフィンオキサイド、アクリルフェニルグリオキシレート、ジエトキシアセトフェノン、チタノセン化合物に代表される分子内開裂型の光重合開始剤が使用できる。また、カチオン系光重合開始剤としては、例えばトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートや、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート、SP−170やSP−150(共に旭電化(株)製)、FC−508やFC−512(共に3Mカンパニー社製)、UVE−1014(ゼネラルエレクトリックカンパニー社製)に例示されるポリアリールスルホニウム塩、Uvacure1590やUvacure1591(共にダイセル・ユーシービー社製)に例示されるトリアリルスルフォニュムヘキサフルオロフォスフェード塩の混合物、Irg−261(チバ・ガイギー社製)に例示されるメタロセン化合物、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートやP−ノニルフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4,4‘−ジエトキシフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等のポリアリールヨードニウム塩が使用できる。これら光重合開始剤は、1種類であるいは2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
【0027】
なお、インク12にはカップリング剤を添加してもよい。カップリング剤は、無機材料(ここでは素材1’)および有機材料(インク12)の双方に結合する官能基を有するものであり、素材1’に対するインク12の密着性を高めることができる。カップリング剤としては、チタネート系、シラン系、アルミネート系、ジルコニウム系等公知のものを使用することができる。なお、インク12の密着性を高めるための他の手段として、上記の印刷装置への投入前、素材1’の表面のうち、少なくとも凸状部4の形成領域にカップリング処理等の表面処理を施しておいてもよい。
【0028】
以上の構成において、素材1’を支持部13で支持しながら回転させ、ノズルヘッド10のノズル11からインク12の微小液滴を吐出する。インク12の微小液滴が多数集合すると、素材1’の表面に凸状部4が形成される。さらに素材1’の回転が進行し、印刷部分が硬化部14の対向領域に達すると、紫外線の照射を受けたインク12(インク12の集合体)が重合反応を起こして硬化する。これら一連の工程は、素材1’の円周方向に順次進行する形で行われ、所定形状の凸状部4が素材1’の表面に形成されると、支持部13の回転を停止して素材1’を支持部13から取り外す。このようにして、図2(a)(c)に示すように、先端部(ここではテーパ部2)の外周面に微量インクの集合体からなる凸状部4を有する塗布針1が得られる。なお、凸状部4は、素材1’を1回転させる間に形成する他、複数回転させる間に形成することもできる。複数回転させてインク12の供給および硬化を行う場合でも、一度硬化部14の対向領域を通過したインク12は完全に硬化しているので、硬化不十分なインク12の重なりによる印刷精度の低下、すなわち凸状部4の形成精度の低下は回避することができる。
【0029】
以上に示すインクジェット法であれば、素材1’とインク供給部としてのノズル11とが非接触に設けられ素材1’とは非接触の状態で凸状部4を形成することができるから、機械加工で極細の素材表面に凸状部4を形成する場合に懸念される振動等の悪影響を排除して、素材1’の表面にマイクロオーダーの凸状部4を容易かつ高精度に形成することができる。また、インクジェット法は、予めプログラムを行うことにより、インク12の供給量や供給箇所を精密に制御することができるから、軸状素材表面の任意の箇所に高精度な凸状部4を形成することが容易に可能である。また、上記の方法では、印刷工程と硬化工程とが連続して設けられ、凸状部4の形成を素材1’の円周方向に連続して行うことができるため、凸状部4を効率良く形成することができる。
【0030】
なお、以上では、ノズルヘッド10および硬化部14を固定し、素材1’を回転させる場合について説明を行っているが、これとは逆に、ノズルヘッド10および硬化部14を素材1’の外周で回転させてもよい。
【0031】
かかる構成の塗布針1を修正剤塗布機構、さらにLCDの欠陥修正装置(具体的な構成は後に詳述)に組み込み、塗布針1の先端部を修正剤タンク内に充満された修正剤に接触(あるいは浸漬)させた後引き上げると、図2(b)に示すように、表面張力によってテーパ部2の上部に修正剤5溜まりが発生し、また平坦面3の近傍が薄い修正剤5層で覆われるのと同時に、図2(c)に示すように、凸状部4によって区画される溝部に修正剤が溜まる。このとき、塗布針1のテーパ部2に凸状部4を設けたことによってテーパ部2の表面積が増大するため、塗布針1の先端部(テーパ部2)で保持し得る修正剤5の量は、この種の凸状部4を設けない場合に比べ増大する。従って、例えば、カラーフィルタの白欠陥、特に大型のカラーフィルタの白欠陥に修正剤を塗布する場合に上記構成の塗布針1を用いれば、1サイクルで塗布可能な修正剤量を増大させることができ、効率的な欠陥修正が可能となる。
【0032】
なお図示例において、凸状部4は、テーパ部2の基端から先端の平坦面3に亘って連続して設けられているが、塗布針1の先端平坦面3が基板表面に接触し、平坦面3に付着した修正剤が外周に押し出されたときに、この押し出された修正剤と凸状部4間の溝部に保持された修正剤とが十分に繋がる位置まで形成すれば、平坦面3に至る領域まで形成しなくてもよい。
【0033】
また以上では、凸状部4をテーパ部2の外周面に沿って軸方向に延びる幅一定の帯状に形成した場合について説明を行ったが、凸状部4の幅は先端面3から基端に向かって漸次拡大させることもできる。また凸状部4の厚みは、全領域に亘って均一とする他、部分的に異ならせることもできる。また、テーパ部2の表面積、つまり保持可能な修正剤量を増大させることができるのであれば、凸状部4の配列パターンは上述した帯状に限定されるものではなく、例えば図3に示すような点状パターンとしてもよい。もちろん、図示した凸状部4の配列パターンは例示に過ぎず、塗布針1の先端部の表面積を増大し得る任意形状の配列パターンを採用することができる。上述したインクジェット法であれば、素材表面の任意の箇所に任意形状の凸状部4を容易かつ高精度に形成することができる。
【0034】
また、以上では、インク12のベース樹脂として紫外線硬化樹脂を用い、インク12を紫外線の照射によって硬化させる場合について説明を行ったが、インク12のベース樹脂として熱硬化性樹脂を用い、インク12を加熱することによって硬化させることもできる。この場合、インク12を構成するベース樹脂として、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を使用することができ、これらのベース樹脂は溶融させてそのまま用いる他、溶剤に溶解して使用することもできる。なお、上記のベース樹脂には必要に応じて熱硬化開始剤等の各種添加剤を加えることもできる。
【0035】
インク12として熱硬化性を有するものを使用する場合、インク12の硬化方法としては、例えば予め加熱した素材1’を上記の印刷装置内に投入して間接的にインク12を加熱して硬化させる方法、印刷装置内に配設された硬化部(熱源)から直接インク12を加熱して硬化させる方法、あるいはこれらを併用する方法などを採用することができるが、予め加熱された素材1’を投入する手段を採用するのが望ましい。着弾と同時にインク12の硬化を進行させることができ、界面の接着力が確保された状態で印刷を進行させることができるからである。
【0036】
以上、本発明にかかる塗布針1の一実施形態について説明を行ったが、修正剤の保持量は、表面に凹状部6を設けることで増大させることもできる。かかる構成の塗布針1は、素材1’の表面にインク12の微小液滴を供給し、微量インクの集合体でマスキング部を形成するマスキング工程と、非マスキング部をエッチングするエッチング工程と、マスキング部を除去する除去工程とを順に経て形成することもできる。
【0037】
マスキング工程では、図1に示すインクジェット方式の印刷装置を用いて素材1’の表面に微量インクを供給してこれを硬化させることにより、図4(a)に示すように、微量インクの集合体からなるマスキング部12’が形成される。このとき、マスキング部12’の形成に用いるインクとしては、上記同様に紫外線硬化タイプ、熱硬化タイプの何れであってもよい。
【0038】
エッチング工程では、図4(b)に示すように、素材1’にエッチング処理を施すことにより、素材1’の表面のうち、マスキング部12’を除く領域(非マスキング部)の表面が所定の深さ(数μm〜数十μm程度)だけエッチングされ、素材1’に凹状部が形成される。エッチングとしては、電解エッチングを採用することも可能であるが、電解エッチングは電解電源を必要とし、処理装置が高価かつ複雑なものとなる。そのため、エッチングとしてはこれらの問題点を解消することができる化学エッチングが望ましい。
【0039】
以上の工程の後、素材表面に設けられたマスキング部12’を除去する除去工程を経ることにより、図4(c)および図5に示すように、表面に凹状部6を有する塗布針1が得られる。マスキング部の除去は、例えば有機溶媒中に上記の素材1’を浸漬させることにより行うことができる。
【0040】
以上に示す塗布針1の製造方法であっても、上述した方法と同様に、素材1’の表面に凹状部6を形成する際、機械加工で問題となる振動等の影響を排除することができるから、素材1’の表面に、修正剤の保持量を増大し得る凹状部6を容易かつ高精度に形成することができる。なお、かかる態様の塗布針1を製造する場合に第1実施形態と同径の素材を用いると、素材表面がエッチングされる分、素材1’は縮径する。そのため、図2に示すものと同等の修正剤の保持量を確保し得る塗布針1を図4に示す方法で形成する場合には、若干大径の素材1’を用いる必要がある。
【0041】
以上では、断面真円形状の素材1’を用いた場合について説明を行ったが、本発明を適用可能な素材1’の断面形状は断面真円状に限定されるものではなく、この他にも断面矩形状、断面楕円形状等を採用してもよい。
【0042】
上記のようにして形成された塗布針1は、LCDの欠陥修正装置を構成する修正剤塗布機構に組み込んで好適に用いることができる。以下、修正剤塗布機構21およびこれを組み込んだLCDの欠陥修正装置の構成例を図面に基づいて説明する。
【0043】
図6は、塗布針1を用いて液状の修正剤を基板(カラーフィルタ基板)に塗布する修正剤塗布機構21の構成を概念的に示す斜視図である。同図に示す修正剤塗布機構21は、修正剤塗布用の塗布針1と、塗布針1をZ軸方向(鉛直方向)に駆動させるためのシリンダ22と、水平に設けられ、その中心に立設された回転軸26を介してモータ34で回転駆動される回転テーブル25とを備える。シリンダ22とモータ34とはZ軸テーブル(図示せず)に固定され、Z軸テーブルと欠陥修正の対象となる基板とは、塗布針1の下方のXYテーブル(図示せず)によって相対的に位置決めされる。
【0044】
塗布針1は、保持部材24を介してシリンダ22の駆動軸23の先端に設けられる。
【0045】
回転テーブル25は、円周方向の一部領域に、修正剤塗布時に塗布針1を通過させるための切欠部27を有し、上端面には複数の修正剤タンク28〜31、洗浄装置32、およびエアパージ装置33が円周方向に順次配置されている。修正剤タンク28〜31には、修正剤として、R(赤)、G(緑)、B(青)および黒のインクがそれぞれ充填されている。洗浄装置32は、塗布針1に付着した修正剤を除去するためのものであり、エアパージ装置33は塗布針1に付着した洗浄液を吹き飛ばすためのものである。
【0046】
モータ34はインデックスモータであり、従ってこの修正剤塗布機構21は、回転軸26と一体となって回転するインデックス板35と、インデックス板35を介して回転テーブル25の回転位置を検出するインデックス用センサ36と、インデックス板35を介して回転テーブル25の回転位置が原点復帰したことを検出する原点復帰用センサ37とをさらに備える。モータ34はセンサ36,37の出力に基づいて制御され、回転テーブル25を回転させて切欠部27、修正剤タンク28〜31、洗浄装置32、およびエアパージ装置33のうちの何れかを塗布針1の下方に位置させる。
【0047】
次に、上記の修正剤塗布機構21の動作説明を行う。まず、XYテーブルおよびZ軸テーブルを駆動させ、基板の欠陥部の上方位置に塗布針1の先端を位置決めする。次いで、モータ34を駆動して回転テーブル25を回転させることにより所望の修正剤タンク(例えば28)を塗布針1の下方に移動させた後、シリンダ22によって塗布針1を上下に駆動させ、塗布針1の先端部に修正剤5を付着させる。そして、さらに回転テーブル25を回転させ、切欠部27を塗布針1の下方に移動させた後、塗布針1を上下に駆動させ、塗布針1の先端部に付着した修正剤5を基板の欠陥部に塗布する。
【0048】
修正剤5を塗布した後、塗布針1は以下示す手順を経て洗浄される。まず、回転テーブル25を回転させ、洗浄装置32を塗布針1の下方に移動させた後、塗布針1を上下に駆動させて洗浄装置32に充満された洗浄液にその先端部を浸漬させる。次いで、回転テーブル25を回転させ、エアパージ装置33を塗布針1の下方に移動させた後、塗布針1を上下に駆動させて塗布針1の先端部に付着した修正剤5をエアパージ装置33によって吹き飛ばす。
【0049】
図7は、図6に示した修正剤塗布機構21を搭載した欠陥修正装置の一構成例を示す斜視図である。同図に示す欠陥修正装置は、主に、観察光学系40、CCDカメラ41、レーザ42、修正剤塗布機構21、および硬化装置43で構成される欠陥修正ヘッド部と、この欠陥修正ヘッド部を基板6に対して垂直方向(Z軸方向)に移動させるZ軸テーブル44と、Z軸テーブル44を搭載してX軸方向に移動させるためのX軸テーブル45と、基板6を搭載してY軸方向に移動させるためのY軸テーブル46と、装置全体の動作を制御するための制御用コンピュータ47と、制御用コンピュータ47に作業者からの指令を入力するための操作パネル48とで構成される。
【0050】
観察光学系40は、基板6の表面状態や、修正剤塗布機構21で修正剤を塗布している状態を観察するためのものである。観察光学系40によって観察される画像は、CCDカメラ41によって電気信号に変化され、制御用コンピュータ47のモニタ画面に表示される。硬化装置43は、修正剤塗布機構21で塗布された修正剤を硬化させるための照明を搭載するものであり、修正剤が紫外線硬化タイプの場合には紫外線照明が、また修正剤が熱硬化タイプの場合にはハロゲン照明が選択されて搭載される。レーザ42は、黒欠陥や異物欠陥を除去するために用いられる。本装置構成により、カラーフィルタに発生した白欠陥、黒欠陥、および異物欠陥の修正が可能で、特に大型のカラーフィルタに発生する大型の各種欠陥の修正が効率的に行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】軸状素材の先端表面に凸状部を形成する工程を概念的に示す図である。
【図2】(a)図は塗布針の先端部拡大図、(b)図は(a)図に示す塗布針に修正剤を付着させた状態を示す図、(c)図は(b)図のA−A断面図である。
【図3】凸状部の配列パターンを異ならせた場合の先端部拡大図である。
【図4】軸状素材の表面に凸状部を形成する工程の他例を示すものであり、(a)図はマスキング部を形成する工程、(b)図は非マスキング部にエッチングを施す工程、(c)図はマスキング部を除去する工程、をそれぞれ概念的に示す拡大断面図である。
【図5】図4に示す工程を経て形成された塗布針に修正剤を付着させた状態を示す断面図である。
【図6】修正剤塗布機構の一例を示す斜視図である。
【図7】修正剤塗布機構を備えるLCDの欠陥修正装置の一例を示す斜視図である。
【図8】(a)図は白欠陥を示す図、(b)図は黒欠陥を示す図、(c)図は異物欠陥を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 塗布針
1’ 軸状素材
2 テーパ部
3 平坦面
4 凸状部
5 修正剤
6 凹状部
10 ノズルヘッド
11 ノズル
12 インク
12’ マスキング部
13 支持部
14 硬化部
21 修正剤塗布機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に液状材料を付着させ、その先端を基板に接触させて液状材料を基板に塗布する塗布針であって、
軸状素材の先端表面に供給した微量インクの集合体で凸状部を形成した塗布針。
【請求項2】
先端部に液状材料を付着させ、その先端を基板に接触させて液状材料を基板に塗布する塗布針であって、
軸状素材の先端表面をエッチングして凹状部を形成した塗布針。
【請求項3】
先端部に液状材料を付着させ、その先端を基板に接触させて液状材料を基板に塗布する塗布針の製造方法であって、
軸状素材の先端表面に微量インクを供給し、微量インクの集合体で素材表面に凸状部を形成する工程を含むことを特徴とする塗布針の製造方法。
【請求項4】
先端部に液状材料を付着させ、その先端を基板に接触させて液状材料を基板に塗布する塗布針の製造方法であって、
軸状素材の先端表面に微量インクを供給し、微量インクの集合体で素材表面にマスキング部を形成する工程と、非マスキング部をエッチングする工程と、マスキング部を除去することにより素材表面に凹状部を形成する工程とを含むことを特徴とする塗布針の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−119640(P2008−119640A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308114(P2006−308114)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】