説明

塗料ペーパー付き鋼板及びその製造法

【目的】 本発明は、風雨に対して強く、しかも結露に対して良好な効果を奏し、劣化しにくい塗料ペーパー付き鋼板を開発することを目的とする。
【構成】 適宜の厚さの鋼板材1と、該鋼板材1の一面に塗布された錆止めプライマー塗料2と、該錆止めプライマー塗料2に重ねられて塗料を厚みの一部に染みこませたペーパー3と、該ペーパー3の露出側面に上塗り塗料4が塗布されてなること。前記ペーパー3の厚みの約半分以下に前記錆止めプライマー塗料2が浸み込んでなること。製品としてコイル状に形成されてなること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風雨に対して強く、しかも結露に対して良好な効果を奏し、劣化しにくい塗料ペーパー付き鋼板及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の折板屋根において、金属板の裏面には接着剤によって断熱材が接着されている。該断熱材は一般に4mmと5mmがあり結露防止の役割をなしている。
【0003】
また、折板屋根としての金属板の裏面に接着された断熱材は外部に露出していなければ紫外線による劣化はないものと思われるが、実際には、例えば駅のホームの屋根や配送センターの庇屋根などでは、トラックのコンテナの照り返しによって紫外線の影響を受けている。これによって断熱材が劣化し接着部から剥がれて断熱材は落下するなどの事故も発生している。
【0004】
また、特許文献1は、鋼板と塗料とペーパーハニカムとを具備しているが、屋根材などに用いるものではなく、デスク又は家具などの天板に関するものであり、目的も相違し、さらにペーパー構成も著しく相違している。また、近年、アスベストが含有しているスレート屋根が公害の元凶となっており、その代替品開発が緊急に求められている。
【特許文献1】特開2000−279234
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなことから、断熱材を落下させることなく、結露防止の役割をなす部材が求められている。このため、結露防止をなし、風雨に対して強く、しかも劣化しにくい構成の鋼板を開発するとともに、アスベスト入りのスレート屋根の代替品として開発することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そコーテ、発明者は上記課題を解決すべく鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、適宜の厚さの鋼板材と、該鋼板材の一面に塗布された錆止めプライマー塗料と、該錆止めプライマー塗料に重ねられて塗料を厚みの一部に染みこませたペーパーと、該ペーパーの露出側面に上塗り塗料が塗布されてなることを特徴とする塗料ペーパー付き鋼板としたことにより、前記課題を解決した。
【0007】
請求項2の発明を、前述の構成において、前記ペーパーの厚みの約半分以下に前記錆止めプライマー塗料が浸み込んでなることを特徴とする塗料ペーパー付き鋼板としたことにより、前記課題を解決した。また、請求項3の発明を、前述の構成において、前記ペーパーの厚みの約半分以下に前記上塗り塗料が塗布されてなることを特徴とする塗料ペーパー付き鋼板としたことにより、前記課題を解決した。また、請求項4の発明を、前述の構成において、製品としてコイル状に形成されてなることを特徴とする塗料ペーパー付き鋼板としたことにより、前記課題を解決した。
【0008】
請求項5の発明を、適宜の厚さの鋼板材の一面に錆止めプライマー塗料を塗布し、該錆止めプライマー塗料面にペーパーを重ねつつ該ペーパーの一部に前記錆止めプライマー塗料を染みこませ、次いで前記ペーパーの露出側面に上塗り塗料を塗布してなることを特徴とする塗料ペーパー付き鋼板の製造法としたことにより、前記課題を解決した。
【0009】
請求項6の発明を、前述の構成において、前記ペーパーの厚みの約半分以下に前記錆止めプライマー塗料を浸み込ませてなることを特徴とする塗料ペーパー付き鋼板の製造法としたことにより、前記課題を解決した。また、請求項7の発明を、前述の構成において、前記ペーパーの厚みの約半分以下に前記上塗り塗料を塗布してなることを特徴とする塗料ペーパー付き鋼板の製造法としたことにより、前記課題を解決した。また、請求項8の発明を、前述の構成において、最終段階にてコイル状に形成したことを特徴とする塗料ペーパー付き鋼板の製造法としたことにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明においては、接着剤を使わなくとも、ペーパーを鋼板材に対して良好に接着でき、結露防止の役割をなす部材としての塗料付きペーパーが落下することを防止できる。また、ペーパーの存在にて表面温度を上昇させることができ、結露防止もある程度良好にできるものである。さらに、ペーパーの露出側面が上塗り塗料の存在にて結露水を保有できる。また、本発明品はアスベスト入りのスレート屋根の代替品として、公害を防止しつつ断熱性能の優れたものとして提供できる。請求項2及び3でも請求項1と同等の効果を奏する。
【0011】
請求項4の製造法の発明においては、結露防止の役割をなす部材としての塗料付きペーパーを著しく落下しにくくできる。さらに、ペーパーの存在にて表面温度を上昇させることで、結露防止もある程度良好にできる。さらに、ペーパーの露出側面が上塗り塗料の存在にて結露水を保有できる。請求項5及び6でも請求項4と同等の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の第1実施例であって、図1乃至2に示すように、適宜の厚さの鋼板材1と、該鋼板材1の一面[図1乃至2において、上面であり、通常は、コイル状としたときには、図1(A)に示すように、裏面側となる]に塗布された錆止めプライマー塗料2と、該錆止めプライマー塗料2に重ねられて該錆止めプライマー塗料2を染みこませたペーパー3と、該ペーパー3の露出側面に上塗り塗料4が塗布されて塗料ペーパー付き鋼板として構成されている。該塗料ペーパー付き鋼板は製品としてはコイル状に構成されている。
【0013】
具体的には、前記鋼板材1は、約0.25mm〜約2mmの亜鉛鉄板、アルミメッキ鋼板、塗装したカラー鉄板等である。また、前記錆止めプライマー塗料2は、材質としては、エポキシ、ウレタン、アクリル樹脂などであり、好ましくは、速乾特殊錆止めプライマー塗料2aが使用される。その塗布量としては、約50〜約200g/mである。さらに好ましくは、前記錆止めプライマー塗料2の塗布量は、約130〜約160g/mである。また、錆止めプライマー塗料2は、2液の場合もあるが、1液とするのが好適である。さらに、プライマー塗料のプライマーには、錆止め内容が包含されているとする考え方もあるため、この明細書では、錆止めプライマー塗料2とプライマー塗料とは同一用語とする。
【0014】
また、前記ペーパー3は、約0.2mm〜約1.2mmで、パルプ材、フェルトなどの繊維材、不燃材などより形成され、保水性を有する材料を構成している。具体的には、ウェットフェルト材や、バルクファイバー材、或いは天然鉱物ケイ酸マグネシウムからなる無機質原紙などである。また、前記上塗り塗料4は、水性、油性を問わず、水蒸気を通さない膜ができるような塗料を外すものであり、ウレタン、アクリルエマルジョン、アクリル樹脂製などである。好ましくは、水性反応硬化形ウレタン上塗り塗料4aが使用される。その塗布量としては、約50〜約160g/mである。さらに好ましくは、前記ペーパー3の塗布量は約120〜約140g/mである。
【0015】
特に重要な点は、前記鋼板材1の一面に塗布された前記錆止めプライマー塗料2に、乾かない状態の約30秒〜2分後に、前記ペーパー3が重ねられる。このとき、該ペーパー3の厚みの約半分以下の繊維部分に前記錆止めプライマー塗料2が浸み込んでおり、且つ該錆止めプライマー塗料2が前記ペーパー3の裏面まで露出していないことが必要である。
【0016】
これを模式的な断面図として書くと、図2(B)に示すように、前記ペーパー3の厚みtに対してこの約半分と、前記錆止めプライマー塗料2が浸み込んだ厚みtaとが略等しい状態であり、これ以下となっていることが好ましい。つまり、前記ペーパー3の厚みtの約半分以下の繊維部分に前記錆止めプライマー塗料2が浸み込んでおり、前記ペーパー3の裏面側の厚みの約半分は、繊維質のみで構成するような状態を保持している[図2(A)]。そして、該ペーパー3の裏面側に前記上塗り塗料4が塗布される。この塗布によって該塗料が、前記ペーパー3の厚みtの約半分又はこれ以下の裏面側の繊維部分Tbに浸透し、水性反応して保水性を有する働きをなす。
【0017】
次に、本発明の製造法について図4(A)及び(B)にて説明する。まず、適宜の厚さのコイルとして巻かれている鋼板材1がセットされる。この場合のコイル状の鋼板材1の外表面(上面)が本発明の塗料ペーパー付き鋼板の裏面側となるようにして設けられている。該鋼板材1の上面[製品となった場合には裏面:図1(A)参照]に前記錆止めプライマー塗料2を塗布する。この塗布は、具体的には、コーティングロール10にて塗布する。塗料厚は調整ロール11、12間の間隙にて調整する。
【0018】
この直後に、コイル状のペーパー3を巻き解きつつ、前記錆止めプライマー塗料2の上面にペーパー3を重ねつつ該ペーパー3の一部に前記錆止めプライマー塗料2を染みこませる。この重ね工程は、上下の押圧ロール13、14にて行う。この直後に、その前記錆止めプライマー塗料2を第1乾燥機15にて約30秒から約2分乾燥させる。そして、前記ペーパー3の裏面側の厚みの約半分は、繊維質のみで構成するような状態を保持させて、該ペーパー3の上面(塗料ペーパー付き鋼板の裏面側)に、前記上塗り塗料4を塗布する。この塗布は、具体的には、コーティングロール16にて2回目の塗布をする。塗料厚は上部調整ロール17、18間の間隙にて調整する。この直後に、前記上塗り塗料4を第2乾燥機19にて約2分から約4分乾燥させる。このような作業によって塗料ペーパー付き鋼板を製造する。
【0019】
このように製造した塗料ペーパー付き鋼板では、最大の特長は、そのペーパー3が剥がれない。つまり、前記錆止めプライマー塗料2が、前記ペーパー3と前記鋼板材1とに対して接着剤の役割をなすためである。これによって、風雨などでも容易に剥がれて一部落下する危険を回避できる。水性、油性を問わず、水蒸気を通さない膜ができるような塗料を外すものである。
【0020】
また、前記ペーパー3の存在にて、表面温度を上げることができる。この機能によって結露水がそのペーパー3内に留まり、落下しにくくできる。特に、つまり、ペーパー3箇所で結露水を吸収する役割をなす。これは、前記上塗り塗料4の存在が、前記ペーパー3の保水性を維持するのに役立つものである。前記上塗り塗料4は、水性、油性を問わず、水蒸気を通さない膜ができるような塗料を外すものであり、保水性維持ができる。
【0021】
また、本発明の塗料ペーパー付き鋼板を、JRなどの駅ホームの折板屋根に応用した場合には、従来でも、関東地区では、雪が降った翌朝に結露水の落下が見られる程度であり、このような場合にも十分な対応ができるものである。さらに、上塗り塗料4なる塗料ゆえに、前記ペーパー3の劣化などを保護する役割もなすとともに、前記ペーパー3の剥がれを阻止できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(A)は本発明の実施形態を示す斜視図、(B)は(A)の(ア)個所の拡大断面図である。
【図2】(A)は本発明の実施形態を示す要部拡大断面図、(B)は本発明の実施形態の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図3】(A)乃至(D)は、本発明の製造法の過程を示す断面図であって、(A)は鋼板の断面図、(B)は鋼板上に錆止めプライマー塗料を塗布した状態の断面図、(C)は前記錆止めプライマー塗料上にペーパーを重ねつつ該ペーパーの一部に前記錆止めプライマー塗料を染みこませた状態の断面図、(D)は前記ペーパーの上面に上塗り塗料を塗布して該塗料を前記ペーパーの一部に染みこませた状態の断面図である。
【図4】(A)は本発明の製造工程の概要図、(B)はコーティングロール個所の状態図である。
【符号の説明】
【0023】
1…鋼板材、2…錆止めプライマー塗料、3…ペーパー、4…上塗り塗料、
10、16…コーティングロール、13、14…押圧ロール、15…第1乾燥機、
19…第2乾燥機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適宜の厚さの鋼板材と、該鋼板材の一面に塗布された錆止めプライマー塗料と、該錆止めプライマー塗料に重ねられて塗料を厚みの一部に染みこませたペーパーと、該ペーパーの露出側面に上塗り塗料が塗布されてなることを特徴とする塗料ペーパー付き鋼板。
【請求項2】
請求項1において、前記ペーパーの厚みの約半分以下に前記錆止めプライマー塗料が浸み込んでなることを特徴とする塗料ペーパー付き鋼板。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記ペーパーの厚みの約半分以下に前記上塗り塗料が塗布されてなることを特徴とする塗料ペーパー付き鋼板。
【請求項4】
請求項1、2又は3において、製品としてコイル状に形成されてなることを特徴とする塗料ペーパー付き鋼板。
【請求項5】
適宜の厚さの鋼板材の一面に錆止めプライマー塗料を塗布し、該錆止めプライマー塗料面にペーパーを重ねつつ該ペーパーの一部に前記錆止めプライマー塗料を染みこませ、次いで前記ペーパーの露出側面に上塗り塗料を塗布してなることを特徴とする塗料ペーパー付き鋼板の製造法。
【請求項6】
請求項5において、前記ペーパーの厚みの約半分以下に前記錆止めプライマー塗料を浸み込ませてなることを特徴とする塗料ペーパー付き鋼板の製造法。
【請求項7】
請求項5又は6において、前記ペーパーの厚みの約半分以下に前記上塗り塗料を塗布してなることを特徴とする塗料ペーパー付き鋼板の製造法。
【請求項8】
請求項5、6又は7において、最終段階にてコイル状に形成したことを特徴とする塗料ペーパー付き鋼板の製造法。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−23797(P2008−23797A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197314(P2006−197314)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(506247398)株式会社トーネツ (1)
【Fターム(参考)】