説明

塗料供給システム

【課題】塗料の瞬間流量を確保しつつ脈動を防止し、塗料の沈降を防止する塗料供給システムを提供する。
【解決手段】塗料供給システム10は、塗料流路3と塗装機21・22を備える。又、圧送ポンプ6と緩衝装置7を備える。塗料流路3は、タンク5から塗料が供給されると共にタンク5に塗料が帰還可能である。塗装機21・22は、塗料流路3に接続する分岐路40を介して塗料が供給される。圧送ポンプ6は、タンク5から塗料を吸引し、当該塗料を送出する。緩衝装置7は、圧送ポンプ6から送出される塗料を一定容量収容し、この収容された塗料を塗料流路3に一定圧力で圧送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料供給システムに関する。特に、本発明は、塗装ラインに配置される複数の塗装機に塗料を供給し、かつ、余剰の塗料を回収する塗料供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の車体を塗装する塗料供給システムは、車体のルーフ部やサイド部などの各部に下塗り塗装、中塗り塗装、上塗り塗装を施すため、塗装ブースの両側及び上部に設けられる塗装ラインに沿って、複数の塗装ガンなどの塗装機が配置されている。そして、塗料供給システムは、塗料タンクと各塗装機とを一対の塗料供給配管で接続し、圧送ポンプによって塗料タンク内の塗料を供給し、各塗装機からの余剰塗料を一対の塗料戻し配管により塗料タンクに回収している。
【0003】
前述のような塗料供給システムは、車種などに応じて塗装色を変えるため、塗装色数と同数の塗装配管ラインが設けられ、各塗装機に接続されているカラーチェンジバルブ(以下、CCVという)により、塗装機に対して塗料配管ラインを選択的に切り換えている。しかし、従来の塗料供給システムは、塗装ブースの両側に一対の塗料供給配管と一対の塗料戻し配管とが設けられるため、配管長が非常に長く、全配管内の塗料容積が大きなものになっている。したがって、色替え時に多量の塗料を廃棄せねばならず、塗料ロスが増大し、又、洗浄に使用するシンナーのロスも増え、かつ色替えに要する時間が長くなって能率を悪いものとしていた。
【0004】
このため、塗装ラインの両側に設けられる複数の塗装機に塗料を供給し、かつ、余剰塗料を回収する塗料供給システムにおいて、塗料供給配管並びに塗料戻し配管の全配管長を短縮して、色替え時の塗料ロス、洗浄用シンナーのロスを低減する塗料供給システムが発明されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−343914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4は、特許文献1による塗料供給システムの配管図である。本願の図4は、特許文献1の図1に相当している。図4において、塗装ラインに設けられた塗装ブース8の両側に、所定の間隔をおいて一対の塗装機86・86が複数対、配置されている。又、塗装ブース8の上部に複数の塗装機87が適宜配置されている。例えば、一対の塗装機86・86は車体のサイド部を塗装し、塗装機87は車体のルーフ部を塗装する。
【0006】
図4において、塗装ブース8の一方の側部に、塗装ラインの長さ方向に塗料供給配管80が配設され、塗装ブース8の他方の側部に塗料戻し配管81が配設されている。そして、塗装ラインのラインエンドにおいて、塗料供給配管80の下流側端が塗料戻し配管81の上流側端にオリフィス82を介して連通されている。又、塗料供給配管80の上流側端が圧送ポンプ84に接続されている。圧送ポンプ84は、塗料タンク83内の塗料を圧送する。更に、塗料戻し配管81の下流側端が背圧弁85を介して塗料タンク83に接続されている。
【0007】
図4において、塗装ブース8には、一対の塗装機86・86、又は塗装機87がそれぞれ設けられる位置において、塗料供給配管80と塗料戻し配管81とを連通させる複数のバイパス配管86aが配置されている。これらのバイパス配管86aに一対の塗装機86・86、又は塗装機87が接続されている。そして、これらのバイパス配管86aから各塗装機86・87に塗料が供給される。各塗装機86・87にはCCV87が接続されており、CCV87により複数色の塗料配管ラインを切り換え選択できる。
【0008】
図4に示された塗料供給システムにおいて、塗料タンク83から流出した塗料は圧送ポンプ84によって塗料供給配管80に流入し、オリフィス82を通して塗料戻し配管81に流出すると共に、複数のバイパス配管86aを通して塗料供給配管80から塗料戻し配管81にも塗料が流出する。したがって、各塗装機86・87による塗装が可能となる。又、塗装に使用されなかった余剰の塗料は、塗料戻し配管81から塗料タンク83に回収される。このような動きによって、塗料が循環される。
【0009】
図4において、配管ラインは、塗装ブース8の一方側に1本の塗料供給配管80を配設し、かつ他方側に1本の塗料戻し配管81を配設するだけのライン構成としており、従来のものに比べ全配管長が大幅に短縮されている。したがって、全配管内の塗料容積が大幅に少なくなって、使用されなくなった塗料を廃棄する場合の色替え時における塗料のロス、洗浄に使用するシンナーのロスが低減されると共に、この色替えに要される作業時間も短くなって能率が上がる。
【0010】
又、全配管長が短くなるので、塗料供給配管80の上流側端と塗料戻し配管81の下流側端との間の圧力損失が小さくなり、圧送ポンプ84の能力を増大する必要が無く、配管径を細くできるというメリットがある。特に、配管径を小さくすることにより、多色の塗装配管ラインの配管を束ねた場合の配管スペースが少なくなるというメリットがある。
【0011】
図4において、塗料供給配管80と塗料戻し配管81とはオリフィス82を介して連通しているから、オリフィス82により塗料戻し配管81に流入する塗料の流速に絞りをかけることができ、塗料供給配管80内の圧力は塗料戻し配管81内の圧力よりも高く保たれる。つまり、各配管中で塗料のメタリック片の沈殿が生じない最低流速、又はそれ以上の流速が得られるようにオリフィス82によって圧力差を作り出せば、その圧力差によって各バイパス配管86aには塗料が確実に流れることになり、従来のようにレギュレータを使用せずとも塗装できる。このため、レギュレータの使用による塗料内のメタリック片の変形の問題も生じず、良質の塗装が施される。
【0012】
前述の塗料供給配管80及び塗料戻し配管81などは、メインラインと呼ばれ、このメインラインから分岐するバイパス配管86aやCCVを介して塗装機86・87に至る配管はブランチラインと呼ばれている。
【0013】
一般に、塗料は、水性塗料と油性塗料に大別される。工業用の塗料供給システムでは、有機溶剤を使用する油性塗料に対して、水性塗料の使用割合が増加している。水性塗料は、油性塗料に比べて一般に粘度が高く、配管ラインでの圧力損失が大きいという難点がある。しかし、水性塗料は、油性塗料のように揮発性の高い有機溶剤を使用しないので、配管ラインでの沈降による固化の影響が低いという利点がある。
【0014】
この水性塗料の利点を活かし、メインラインは塗料が循環し、ブランチラインは塗料が循環することなく流路が終端された塗料供給システムが普及している。しかし、この塗料供給システムは、長期停止時に固化しないように、ブランチラインの塗料を排出しておく必要がある。したがって、水性塗料用の塗料供給システムであっても、メインライン及びブランチラインに塗料が循環する、いわゆるツーパイプ(Two Pipe)方式が主流となっている。
【0015】
水性塗料又は油性塗料の共用が可能な塗料供給システムであって、ブランチラインにおいて、特に、油性塗料が沈降しないよう均一化を図るため、遥動機能を備える塗料供給システムが求められている。
【0016】
又、図4に示された工業用の塗料供給システムでは、塗装機として静電塗装機が多く用いられている。特に、水性塗料を直接印加で静電塗装するためには、キャニスター(Canister:圧力容器)方式のボルテージブロック機能を備える静電塗装機が広く普及している。キャニスターは、200cc〜700ccの収容量を有し、色替え時に短時間で、キャニスターに塗料を充填する必要があるため、塗料供給システムは4〜5リットル/minの供給量を要する。
【0017】
このように、キャニスターを用いた塗料供給システムは、一般の塗料供給システムの5倍程度の塗料の供給量を必要とし、複数の静電塗装機の同時稼動を考慮すると、圧送ポンプや配管の供給能力は、非常に大きいものとなっている。例えば、車体1台当たりの正味塗料使用量は、3〜4リットルであるが、圧送ポンプや配管の現状の供給能力は、正味塗料使用量の10倍程度となっている。
【0018】
正味使用量に近い塗料の供給能力で成り立つ塗料供給システムであって、キャニスター方式の静電塗装機などによる瞬間的な塗料の供給能力を満たす塗料供給システムが求められている。
【0019】
更に、図4に示されたような塗料供給システムでは、圧送ポンプとしてプランジャーポンプを用いている。プランジャーポンプは、塗料を循環させて劣化を防止するには優位であるが、脈動が多いのが欠点となっている。サージチャンバをプランジャーポンプに直列に接続して、脈動の抑止を企てる例もあるが、その効果は限られている。
【0020】
塗装ロボットを用いたキャニスター方式の静電塗装機は、脈動の影響を受けることは無いが、塗装ガンを用いたスプレー塗装、いわゆる手吹き塗装は、脈動の影響が大きい。ツーパイプ方式による塗料供給システムは、一般に塗装ガンに圧力調整弁を設けておらず、塗装ガンによる吹き始めの塗料吐出量が多く、作業性に潜在的な問題を抱えている。
【0021】
プランジャーポンプに代えて、電動ロータリポンプを用いることも考えられるが、高価であり、塗料のメタリック片が粉砕されるなど塗料が劣化して、実用に供しない。圧送ポンプとして、安価なプランジャーポンプ又はダイヤフラムポンプを用いても、脈動を防止できる塗料供給システムが求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0022】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、塗料の瞬間流量を確保しつつ脈動を防止し、かつ、ブランチラインにおいて塗料の沈降を防止する塗料供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者は、プレッシャーポット及び遥動ピグ(Pig)を用いて、塗料の瞬間流量を確保しつつ脈動を防止し、かつ、ブランチラインにおいて塗料の沈降を防止可能なことを見出し、これに基づいて、以下のような新たな塗料供給システムを発明するに至った。
【0024】
(1) タンクから塗料が供給されると共に当該タンクに塗料が帰還可能な塗料流路と、この塗料流路に接続する分岐路を介して塗料が供給される塗装機と、を備える塗料供給システムであって、前記タンクから塗料を吸引し、当該塗料を送出する圧送ポンプと、前記圧送ポンプから送出される塗料を一定容量収容し、この収容された塗料を前記塗料流路に一定圧力で圧送する緩衝装置と、を備える塗料供給システム。
【0025】
(1)の発明による塗料供給システムは、塗料流路と塗装機を備えている。又、圧送ポンプと緩衝装置を備えている。塗料流路は、タンクから塗料が供給されると共にタンクに塗料が帰還可能となっている。塗装機は、塗料流路に接続する分岐路を介して塗料が供給される。圧送ポンプは、タンクから塗料を吸引し、当該塗料を送出する。緩衝装置は、圧送ポンプから送出される塗料を一定容量収容し、この収容された塗料を塗料流路に一定圧力で圧送する。
【0026】
ここで、タンクには塗料が蓄えられている。塗料は、水性塗料であってよく油性塗料であってよく、顔料とビヒクル(液体成分)が混合された混合塗料であってよい。顔料とビヒクルが分離、又は沈降及び増粘しないように、混合塗料を撹拌する撹拌機をタンクに設けることが好ましい。例えば、撹拌機は油圧モータで作動される。
【0027】
タンクと塗料流路の一端側の間に圧送ポンプを設け、圧送ポンプを駆動してタンクから塗料を塗料流路の一端側に供給してよく、塗料流路の他端側の設けられる背圧弁を介して塗料をタンクに帰還してもよい。塗料流路はタンクに塗料が帰還可能であるとは、塗装機からの余剰塗料をタンクに回収できることを意味し、塗料流路は塗装ラインを囲う閉回路であり、塗料をタンクに回収することなく、塗料流路に塗料を循環することもできる。ここで、塗料流路はいわゆるメインラインであり、実体として配管である。
【0028】
塗装機は、塗装ロボットを用いたキャニスター方式のボルテージブロック機能を備える静電塗装機であってよく、塗装ロボットを用いたギヤポンプ方式のスプレー塗装機であってよく、塗装ガンを用いたスプレー塗装機、いわゆる手吹きの塗装機であってよく、塗料流路に接続する分岐路を介して塗料が供給される。ここで、分岐路はいわゆるブランチラインであり、実体としてチューブである。分岐路は、塗料が循環することなく流路が終端されてもよく、後述するように、分岐路内の塗料を遥動させる遥動装置を設けてもよい。
【0029】
後述するように、塗装機は、塗装ラインの両側部に沿って対向するように並設配置されることが好ましく、前述した静電塗装機、スプレー塗装機、塗装ガンが並設配置されてよく、これらの塗装機が混在配置されてもよく、塗装ラインを適宜に構成できる。
【0030】
圧送ポンプは、渦巻ポンプなどの遠心力による液体移送原理を利用した遠心式のポンプを含んでよく、ギヤポンプ・スクリューポンプなどの回転式の容積変化による液体移送原理に基づく容積回転式のポンプを含んでよく、後述する容積往復動式のポンプを含んでよい。遠心式のポンプは吐出し口からの脈動がなく、容積回転式のポンプは吐出し口からの脈動が少なく、容積往復動式のポンプは吐出し口からの脈動があるという違いがある。圧送ポンプを駆動すると、タンクから塗料を吸引し、当該塗料を送出する。そして、圧送ポンプから送出された塗料は緩衝装置に収容される。
【0031】
緩衝装置は、後述するように実体として容器であり、圧送ポンプから送出される塗料を一定容量収容すべく機能する。緩衝装置は塗料を一定容量収容するとは、塗料の容量が変動することを意味している。塗装機の塗料消費量に対して、圧送ポンプの塗料供給量が多い場合は、塗料の容量が増加し、圧送ポンプの塗料供給量が少ない場合は、塗料の容量が減少する。
【0032】
緩衝装置は、容器に塗料が満杯にならないように最大容量が設定され、又、容器に塗料が空にならないように最小容量が設定されている。緩衝装置は、容器内の塗料が最大容量と最大容量の間を変動するように制御する。ここで、圧送ポンプの単位時間当たりの塗料供給量が塗装機の単位時間当たりの塗料消費量を上回るように、圧送ポンプの能力が設定されている。
【0033】
緩衝装置は、容器に圧縮流体を供給することにより、容器内の塗料の容量変動に係わらず、非圧縮流体である塗料を一定圧力で加圧できる。そして、容器に収容された塗料を塗料流路に一定圧力で圧送することができる。容器に収容された塗料を塗料流路に一定圧力で圧送するとは、塗料流路の管径と前記圧力で決定される定流速で、塗料が塗料流路に供給されることを意味している。
【0034】
(1)の発明による塗料供給システムは、緩衝装置に収容された塗料を塗料流路に一定圧力で圧送しているので、例えば、キャニスターへの塗料の充填は、大容量であっても、短時間であるため平均化できる。従来の塗料供給システムは、圧送ポンプから直ちに塗料流路、いわゆるメインラインに塗料を供給していたので、瞬間的な塗料の供給量を確保するために、圧送ポンプの容量を増大したり、メインラインの管径を大きくする必要があった。(1)の発明による塗料供給システムは、圧送ポンプとメインラインの間に緩衝装置を介在することにより、塗料の瞬間流量を確保しているということもできる。既存の設備に対応可能ということもできる。
【0035】
(2) 前記タンクと前記圧送ポンプとの間に介在し、当該タンクから当該圧送ポンプに塗料が流出する方向、又は前記塗料流路から当該タンクに塗料が帰還する方向に切り換え可能な方向制御弁を備え、前記緩衝装置は、塗料を一定容量収容する容器と、この容器に収容された塗料の容量を検出する液面レベル検出器と、前記容器に収容された塗料が最大容量と最低容量との間を維持するように前記液面レベル検出器の信号を受信して前記方向制御弁を切り換える制御手段と、を有する(1)記載の塗料供給システム。
【0036】
(2)の発明による塗料供給システムは、方向制御弁を備えている。又、緩衝装置は、容器と、液面レベル検出器、及び制御手段を有している。方向制御弁は、タンクと圧送ポンプとの間に介在している。方向制御弁は、タンクから圧送ポンプに塗料が流出する方向、又は、塗料流路からタンクに塗料が帰還する方向に切り換えることができる。容器は塗料を一定容量収容する。液面レベル検出器は、容器に収容された塗料の容量を検出する。制御手段は、容器に収容された塗料が最大容量と最低容量との間を維持するように、液面レベル検出器の信号を受信して、方向制御弁を切り換える。
【0037】
方向制御弁は、三方向弁であってよく、方向制御弁を第1の方向に切り換えると、タンクから圧送ポンプに塗料を吸引できる。方向制御弁を第2の方向に切り換えると、タンクから圧送ポンプへの流路が閉じ、塗料流路からタンクに塗料を帰還できる。方向制御弁は、油圧によるパイロット操作形の方向制御弁、又は、防爆形の電磁弁が好ましく、後述する制御部に信号により、塗料の流出方向を切り換える。
【0038】
容器は、筒形の密封容器であって圧力容器が好ましい。容器の底部から塗料が流入し、容器の上部から圧縮流体が供給される。塗装機の塗料消費量に対して、圧送ポンプの塗料供給量が多い場合は、容器内の塗料の液面レベルが上がり、圧送ポンプの塗料供給量が少ない場合は、容器内の塗料の液面レベルが下がる。
【0039】
ここで、容器の最大容量と最小容量は液面レベルに変換され、最大液面レベルと最小液面レベルが予め設定される。ハイレベル(High Level)とローレベル(Low Level)に変換されるということもできる。塗料の排出ポートはローレベルと容器の底面の中間に設けられる。液面レベル検出器は、液面のハイレベルとローレベルの検出値を電気信号に変換する。液面レベル検出器は、磁気フロート式液面計や超音波レベル計、光反射検出器などが適宜用いられる。
【0040】
制御手段は制御盤を含み、制御盤は、液面レベル検出器の検出信号を受信して、方向制御弁を切り換える切り換え信号を送信する。ローレベル信号が制御盤に送信されると、制御盤は、方向制御弁を第1の方向に切り換える。そして、容器にはタンクから塗料が補給される。ハイレベル信号が制御盤に送信されると、制御盤は、方向制御弁を第2の方向に切り換える。そして、塗料流路からタンクに塗料を帰還できる。
【0041】
(2)の発明による塗料供給システムは、容器に収容された塗料が最大容量と最低容量との間を維持するように、液面レベル検出器の信号を受信して、方向制御弁を切り換える簡易な制御を実施している。ここで、容器に塗料を補給している間は、塗料流路における塗料の循環は停止するが、これによる塗料の沈降による影響は少ないと考えられる。
【0042】
(3) 前記緩衝装置は、前記容器内の空間が一定圧力を維持するように圧縮流体を供給する供給手段を備える(2)記載の塗料供給システム。
【0043】
(3)の発明による塗料供給システムは、空気又は窒素ガスを蓄える圧縮流体源を設けてよく、圧縮流体源と容器の間に圧力調整弁と方向切換弁が直列に接続される。例えば、容器には圧力計が設けられ、容器内の空間が所定圧力以下になると、容器に圧縮流体を供給できるように、方向切換弁を切り換える。容器内の空間が所定圧力内のときは、方向切換弁を閉じる。容器内の空間が所定圧力以上になると、圧縮流体源側に圧縮流体が逆流するように、方向切換弁を切り換える。
【0044】
(3)の発明による塗料供給システムは、以上のように緩衝装置は、圧縮流体を供給する供給手段を構成しているので、容器内の空間が圧縮流体で一定圧力を維持できる。圧縮流体は、変動する塗料の収容量に対して一定圧力にする応答時間が早いという利点がある。
【0045】
(4) 前記圧縮流体が窒素ガスである(3)記載の塗料供給システム。
【0046】
圧縮流体に不活性ガスである窒素ガスを用いることで、例えば、塗料の酸化を防止できる。
【0047】
(5) 前記圧送ポンプは、容積往復動式のポンプである(1)から(4)のいずれかに記載の塗料供給システム。
【0048】
容積往復動式のポンプは、往復動式の容積変化による液体移送原理に基づくプランジャーポンプ又はダイヤフラムポンプを含んでよい。これらのポンプは、一般に安価であり、塗料のメタリック片が粉砕されることなく塗料が劣化しないので、実用に適している。
【0049】
(5)の発明による塗料供給システムは、圧送ポンプから送出された塗料を緩衝装置に収容してから、塗料流路に供給しているので、つまり、塗料の流動を緩衝しているので、圧送ポンプで発生する脈動を防止できる。緩衝装置は、電気回路におけるコンデンサと同様に機能し、平滑回路を構成しているということもできる。(5)の発明による塗料供給システムは、特に、いわゆる手吹き塗装を含む塗料供給システムには優位である。
【0050】
(6) 塗料が供給される塗料流路と、この塗料流路に並列接続する分岐路の経路途上に接続される塗装機と、を備える塗料供給システムであって、前記分岐路内の塗料を遥動させる遥動装置を備え、前記遥動装置は、前記分岐路に直列接続するシリンダチューブと、このシリンダチューブに往復動可能に収容される第1ピグと、この第1ピグから相反する向きに延出する一対のピストンロッドと、前記シリンダチューブの両端部に設けられて各ピストンロッドをスライド可能に案内する一対のロッドカバーと、これらのピストンロッドの各先端部に固定されて前記分岐路を密閉する一対の第2ピグと、を有し、前記一対の第2ピグが前記分岐路の一端側に移動される動作と前記分岐路の他端側に移動される動作が交互に繰り返されることで前記分岐路内の塗料を遥動させ、いずれか一方の前記第2ピグが対向する前記ロッドカバーに当接して停止する塗料供給システム。
【0051】
(6)の発明による塗料供給システムは、塗料流路と塗装機と遥動装置を備えている。塗料流路には、塗料が供給される。塗装機は、塗料流路に並列接続する分岐路の経路途上に接続される。遥動装置は、分岐路内の塗料を遥動させる。
【0052】
(6)の発明による塗料供給システムは、遥動装置が、シリンダチューブと第1ピグ及び一対の第2ピグを有している。又、遥動装置は、一対のピストンロッドと一対のロッドカバーを有している。シリンダチューブは、分岐路に直列接続している。第1ピグは、シリンダチューブ内を往復動可能に収容されている。一対のピストンロッドは、第1ピグから相反する向きに延出している。一対のロッドカバーは、シリンダチューブの両端部に設けられ、各ピストンロッドをスライド可能に案内する。一対の第2ピグは、一対のピストンロッドの各先端部に固定され、分岐路を密閉している。
【0053】
そして、(6)の発明による塗料供給システムは、一対の第2ピグが、分岐路の一端側に移動される動作と分岐路の他端側に移動される動作が交互に繰り返されることで、分岐路内の塗料を遥動させる。又、いずれか一方の第2ピグが対向するロッドカバーに当接して停止する。
【0054】
ここで、塗料流路はいわゆるメインラインであり、このメインラインから分岐路、いわゆるブランチラインが並列に接続されている。例えば、この分岐路は、二股に分岐しており、両先端部が塗料流路に接続し、基端部が塗装機に接続される。分岐路は塗料流路をバイパスしている、ということもでき、分岐路の流路は塗装機に終端している、いうこともでき、塗装機は、塗料流路に並列接続する分岐路の経路途上に接続される。
【0055】
第1ピグは、空気圧で往復動されることが好ましく、一方のロッドカバーに第1ポートを設け、他方のロッドカバーに第2ポートを設ける。そして、第1ポートに圧縮空気を供給し、第2ポートからシリンダチューブ内の空気を排気することにより、第1ピグが第1の方向に移動し、一対の第2ピグが塗料を分岐路の一端側に移動させる。一方、第2ポートに圧縮空気を供給し、第1ポートからシリンダチューブ内の空気を排気することにより、第1ピグが第2の方向に移動し、一対の第2ピグが塗料を分岐路の他端側に移動させる。
【0056】
第1及び第2ポートの延端に設けられる方向制御弁を切り換えることにより、分岐路の一端側に移動される動作と分岐路の他端側に移動される動作が交互に繰り返されることで、一対の第2ピグが、分岐路内の塗料を遥動させる。
【0057】
一般に、ピグは移動距離が制約されないという利点があるが、停止位置を特定することが困難である。そのため、例えば、ピグに金属片を内蔵させ、磁気センサなどで停止位置を検出している。CCVを用いる塗装機は、分岐路となるチューブが多数であり、一般にチューブが密集しているので、磁気センサなどを用いて位置検出する方式は、電気回路を必要として経済的でなく、磁気センサの配置も困難である。
【0058】
(6)の発明による塗料供給システムは、いずれか一方の第2ピグが対向するロッドカバーに当接して停止するように機械的に遥動装置を構成しているので、停止位置検出などの電気回路を不要とし経済的である。又、遥動装置は、構成要素を分岐路と直列に配置しているので、コンパクトであり、CCVを用いる塗装機などのように、分岐路となる多数のチューブが密集していても、遥動装置を容易に配置できる。又、遥動装置は、第2ピグを両端に有しているので、圧力バランスが図られ、第1ピグの推力が小さくて済むという利点もある。
【0059】
(7) 塗装ラインの両側部に沿って対向するように並設配置される複数の前記塗装機に前記分岐路が接続している(1)から(6)のいずれかに記載の塗料供給システム。
【発明の効果】
【0060】
本発明による塗料供給システムは、圧送ポンプから送出された塗料を緩衝装置に収容してから、塗料流路に供給しているので、塗料の流動が緩衝され、塗料の瞬間流量を確保できる。又、圧送ポンプに容積往復動式のポンプを用いたときは、圧送ポンプで発生する脈動を防止できる。
【0061】
又、本発明による塗料供給システムは、分岐路に遥動装置を設け、分岐路内の塗料の沈降を防止している。本発明による遥動装置は、経済的でありコンパクトであり、CCV付の塗装機を配置する塗料供給システムに好適である。又、本発明による遥動装置は、ピグを両端に有しているので、圧力バランスが図られ、遥動のための推力が小さくて済むという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0063】
図1は、本発明による塗料供給システムの一実施形態を示す配管図である。図2は、前記実施形態による塗料供給システムの要部拡大図であり、遥動装置が分岐路内の塗料を一端側に移動した状態図である。図3は、前記実施形態による塗料供給システムの要部拡大図であり、遥動装置が分岐路内の塗料を他端側に移動した状態図である。
【0064】
最初に、本発明による塗料供給システムの構成を説明する。図1において、塗料供給システム10は、塗装ラインに設けられた塗装ブース1の両側に、所定の間隔をおいて一対の塗装機21・22が複数対、配置されている。
【0065】
図1において、第1塗装ブース11には、塗装ガンを用いたスプレー塗装機、いわゆる手吹きの塗装機21が複数対、配置されている。第2塗装ブース12には、回転霧化装置を備える静電塗装機22が複数対、配置されている。静電塗装機22は塗装ロボットに支持されている。第3塗装ブース13には、手吹きの塗装機21が一対配置されている。なお、図1は、異なる種類の塗装機が混在配置された実施例を示しているが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0066】
図1において、塗装ブース1の一方の側部に、塗装ラインの長さ方向に塗料供給配管31が配設され、塗装ブース1の他方の側部に塗料戻し配管32が配設されている。そして、塗装ラインのラインエンドにおいて、塗料供給配管31の下流側端が塗料戻し配管32の上流側端に連通されている。本明細書では、塗料供給配管31と塗料戻し配管32の両者を併せて、塗料流路3と呼ぶことする。ここで、塗料流路3はいわゆるメインラインである。
【0067】
図1において、塗装機21・22は、塗料流路3に接続する複数の分岐路40を介して塗料が供給される。分岐路40はいわゆるブランチラインであり、実体としてチューブである。分岐路40には、分岐路40内の塗料を遥動させる遥動装置4が設けられている(図2及び図3参照)。なお、遥動装置4の構成と作用は後述する。
【0068】
図1において、塗料供給システム10は、タンク5と圧送ポンプ6と緩衝装置7を備えている。塗料流路3は、タンク5から塗料が供給されると共にタンク5に塗料が帰還可能となっている。圧送ポンプ6は、タンク5から塗料を吸引し、当該塗料を送出する。緩衝装置7は、圧送ポンプ6から送出される塗料を一定容量収容し、この収容された塗料を塗料流路3に一定圧力で圧送する。
【0069】
図1において、タンク5には塗料が蓄えられている。塗料は、水性塗料であってよく油性塗料であってよく、顔料とビヒクルが混合された混合塗料であってよい。顔料とビヒクルが分離、又は沈降及び増粘しないように、混合塗料を撹拌する撹拌機51がタンク5に設けられている。例えば、撹拌機51は油圧モータで作動される。
【0070】
又、図1において、塗料供給システム10は、方向制御弁34を備えている。方向制御弁34は、三方向弁であってよく、方向制御弁34を第1の方向に切り換えると、タンク5から圧送ポンプ6に塗料を吸引できる。方向制御弁34を第2の方向に切り換えると、タンク5から圧送ポンプ6への流路が閉じて、塗料流路3からタンク5に塗料を帰還できる。塗料流路3の他端側の設けられる背圧弁33を介して塗料がタンク5に帰還される。
【0071】
図1において、圧送ポンプ6は容積往復動式のポンプを用いている。容積往復動式のポンプは、プランジャーポンプ又はダイヤフラムポンプを含んでよく、これらのポンプは、一般に安価であり、塗料のメタリック片が粉砕されることなく塗料が劣化しないので、実用に適している。圧送ポンプ6を駆動すると、タンク5から塗料を吸引し、当該塗料を送出する。そして、圧送ポンプ6から送出された塗料は、フィルター75を介して緩衝装置7に収容される。
【0072】
図1において、緩衝装置7は、容器71と、液面レベル検出器72、及び制御手段を有している。容器71は塗料を一定容量収容する。液面レベル検出器72は、容器71に収容された塗料の容量を検出する。制御手段は、容器71に収容された塗料が最大容量と最低容量との間を維持するように、液面レベル検出器72の信号を受信して、方向制御弁34を切り換える。
【0073】
図1において、容器71は、筒形の密封容器であって圧力容器となっている。そして、容器71の底部に設けられた供給ポート71aから塗料が流入し、容器71の上部から圧縮流体Aが供給される。塗装機21・22の塗料消費量に対して、圧送ポンプ6の塗料供給量が多い場合は、容器71内の塗料の液面レベルが上がり、圧送ポンプ6の塗料供給量が少ない場合は、容器71内の塗料の液面レベルが下がる。
【0074】
容器71の最大容量と最小容量は液面レベルに変換され、最大液面レベルと最小液面レベルが予め設定されている。図1において、塗料は、ハイレベルHとローレベルLの間を変動する。塗料の排出ポート71bは、ローレベルLと容器71の底面の中間に設けられている。液面レベル検出器72は、液面のハイレベルHとローレベルLの検出値を電気信号に変換している。
【0075】
図1において、制御手段は制御盤73を含んでいる。制御盤73は、液面レベル検出器72の検出信号を受信して、方向制御弁34を切り換える切り換え信号を送信する。ローレベル信号が制御盤73に送信されると、制御盤73は、方向制御弁34を第1の方向に切り換える。そして、容器71にはタンク5から塗料が補給される。ハイレベル信号が制御盤73に送信されると、制御盤73は、方向制御弁34を第2の方向に切り換える。そして、塗料流路3からタンク5に塗料を帰還できる。
【0076】
図1において、塗料供給システム10は、空気又は窒素ガスを蓄える圧縮流体源(図示せず)を設けている。又、圧縮流体源と容器71の間に圧力調整弁74aと方向切換弁74bが直列に接続されている。容器71には、図示されない圧力計が設けられ、容器71内の空間が所定圧力以下になると、容器71に圧縮流体Aを供給できるように、方向切換弁74bを切り換える。容器71内の空間が所定圧力内のときは、方向切換弁74bが閉じられる。容器71内の空間が所定圧力以上になると、圧縮流体源側に圧縮流体Aが逆流するように、方向切換弁74bを切り換える。
【0077】
このように、緩衝装置7は、容器71内の空間が一定圧力を維持するように、圧縮流体Aを供給する供給手段74を備えている。ここで、供給手段74は、圧縮流体源を含み、圧力調整弁74a及び方向切換弁74bを含み、容器71内の空間圧力を検出する圧力計を含み、方向切換弁74bを制御する制御手段を含むことができる。
【0078】
次に、本発明による塗料供給システムの作用を説明する。緩衝装置7は、実体として容器71であり、圧送ポンプ6から送出される塗料を一定容量収容すべく機能する。塗装機21・22の塗料消費量に対して、圧送ポンプ6の塗料供給量が多い場合は、塗料の容量が増加し、圧送ポンプ6の塗料供給量が少ない場合は、塗料の容量が減少する。このように、容器71内の塗料の容量は変動する。
【0079】
緩衝装置7は、容器71に塗料が満杯にならないように最大容量が設定されている。又、容器71に塗料が空にならないように最小容量が設定されている。緩衝装置7は、容器71内の塗料が最大容量と最大容量の間を変動するように制御される。本発明による塗料供給システム10は、圧送ポンプ6の単位時間当たりの塗料供給量が塗装機21・22の単位時間当たりの塗料消費量を上回るように、圧送ポンプ6の能力が設定されている。
【0080】
緩衝装置7は、容器71に圧縮流体Aを供給することにより、容器71内の塗料の容量変動に係わらず、非圧縮流体である塗料を一定圧力で加圧できる。そして、容器71に収容された塗料を塗料流路3に一定圧力で圧送することができる。容器71に収容された塗料を、塗料流路3の管径と圧力で決定される定流速で、塗料が塗料流路3に供給される。
【0081】
このように、本発明による塗料供給システムは、圧送ポンプから送出された塗料を緩衝装置に収容してから、塗料流路に供給しているので、つまり、塗料の流動を緩衝しているので、容積往復動式の圧送ポンプで発生する脈動を防止できる。本発明による塗料供給システムは、特に、いわゆる手吹き塗装を含む塗料供給システムには優位である。
【0082】
又、本発明による塗料供給システムは、緩衝装置に収容された塗料を塗料流路に一定圧力で圧送しているので、例えば、キャニスターへの塗料の充填は、大容量であっても、短時間であるため平均化できる。本発明による塗料供給システムは、圧送ポンプとメインラインの間に緩衝装置を介在することにより、塗料の瞬間流量を確保しているということもできる。既存の設備に対応可能ということもできる。
【0083】
本発明による塗料供給システムは、容器に収容された塗料が最大容量と最低容量との間を維持するように、液面レベル検出器の信号を受信して、方向制御弁を切り換える簡易な制御を実施している。更に、緩衝装置は、容器内の空間が一定圧力を維持するように圧縮流体を供給する供給手段を備えているので、容器内の空間が圧縮流体で一定圧力を維持できる。圧縮流体は、変動する塗料の収容量に対して一定圧力にする応答時間が早いという利点がある。圧縮流体は、空気又は窒素ガスを用いることができ、圧縮流体に不活性ガスである窒素ガスを用いることで、例えば、塗料の酸化を防止できる。
【0084】
次に、本発明による遥動装置の構成を説明する。図2又は図3において、遥動装置4は、シリンダチューブ41と第1ピグ42、及び一対の第2ピグ43a・43bを有している。又、遥動装置4は、一対のピストンロッド44a・44bと一対のロッドカバー45a・45bを有している。
【0085】
図2又は図3において、シリンダチューブ41は、分岐路40に直列接続している。第1ピグ42は、シリンダチューブ41内を往復動可能に収容されている。一対のピストンロッド44a・44bは、第1ピグ42から相反する向きに延出している。一対のロッドカバー45a・45bは、シリンダチューブ41の両端部に設けられ、各ピストンロッド44a・44bをスライド可能に案内する。一対の第2ピグ43a・43bは、一対のピストンロッド44a・44bの各先端部に固定され、分岐路40を密閉している。
【0086】
図1において、塗料流路3はいわゆるメインラインであり、このメインラインから分岐路40、いわゆるブランチラインが並列に接続されている。分岐路40は、二股に分岐しており、両先端部が塗料流路3に接続し、基端部が塗装機21・22に接続されている。分岐路40は塗料流路3をバイパスしている、ということもできる。分岐路40の流路は塗装機21・22に終端している、いうこともできる。塗装機21・22は、塗料流路3に並列接続する分岐路40の経路途上に接続されている。
【0087】
図2又は図3において、第1ピグ42は、空気圧で往復動される。ロッドカバー45aには、圧縮空気の流路となる第1ポートP1が設けられ、ロッドカバー45bには圧縮空気の流路となる第2ポートP2が設けられている。第1ポートP1に圧縮空気を供給し、第2ポートP2からシリンダチューブ41内の空気を排気することにより、第1ピグ42が第1の方向に移動し、一対の第2ピグ43a・43bが塗料を分岐路40の一端側に移動させる(図2参照)。一方、第2ポートP2に圧縮空気を供給し、第1ポートP1からシリンダチューブ41内の空気を排気することにより、第1ピグ42が第2の方向に移動し、一対の第2ピグ43a・43bが塗料を分岐路40の他端側に移動させる(図3参照)。
【0088】
図2又は図3において、第1及び第2ポートP1・P2の延端に設けられる方向制御弁(図示せず)を切り換えることにより、分岐路40の一端側に移動される動作と分岐路40の他端側に移動される動作が交互に繰り返されることで、一対の第2ピグ43a・43bが、分岐路40内の塗料を遥動させる。
【0089】
次に、本発明による遥動装置の作用を説明する。本発明による塗料供給システム10は、いずれか一方の第2ピグ43a・43bが、対向するロッドカバー45a又は45bに当接して停止するように機械的に遥動装置4を構成しているので、従来のように停止位置検出などの電気回路を不要とし経済的である。
【0090】
又、遥動装置4は、構成要素を分岐路40と直列に配置しているので、コンパクトであり、CCVを用いる塗装機などのように、分岐路40となる多数のチューブが密集していても、遥動装置4を容易に配置できる。更に、遥動装置4は、一対の第2ピグ43a・43bを両端に有しているので、圧力バランスが図られ、第1ピグ42の推力が小さくて済むという利点もある。
【0091】
例えば、第1ピグ42の外径は16mm程度がコンパクトで好ましく、シリンダチューブを透明合成樹脂で形成することにより、第1ピグ42の動作を容易に確認できる。遥動装置4は、定常的に動作させてもよく、タイマーを用いて所定の時間帯のみ動作させてもよい。又、塗装機の非稼動中のみ遥動装置4が動作するように制御してもよい。図1に示された実施例では、全ての塗装機21・22に遥動装置4を配置しているが、遥動装置4は必要に応じて配置することもできる。CCVを用いる回転霧化装置を備える静電塗装機22には、本発明の遥動装置は特に有用である。
【0092】
本発明は、水性塗料又は油性塗料の共用が可能な塗料供給システムであって、ブランチラインにおいて、特に、油性塗料が沈降しないよう均一化を図るため、遥動機能を備える塗料供給システムを提供している。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明による塗料供給システムの一実施形態を示す配管図である。
【図2】前記実施形態による塗料供給システムの要部拡大図であり、遥動装置が分岐路内の塗料を一端側に移動した状態図である。
【図3】前記実施形態による塗料供給システムの要部拡大図であり、遥動装置が分岐路内の塗料を他端側に移動した状態図である。
【図4】従来技術による塗料供給システムの配管図である。
【符号の説明】
【0094】
3 塗料流路
4 遥動装置
5 タンク
6 圧送ポンプ
7 緩衝装置
10 塗料供給システム
21・22 塗装機
40 分岐路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクから塗料が供給されると共に当該タンクに塗料が帰還可能な塗料流路と、この塗料流路に接続する分岐路を介して塗料が供給される塗装機と、を備える塗料供給システムであって、
前記タンクから塗料を吸引し、当該塗料を送出する圧送ポンプと、
前記圧送ポンプから送出される塗料を一定容量収容し、この収容された塗料を前記塗料流路に一定圧力で圧送する緩衝装置と、を備える塗料供給システム。
【請求項2】
前記タンクと前記圧送ポンプとの間に介在し、当該タンクから当該圧送ポンプに塗料が流出する方向、又は前記塗料流路から当該タンクに塗料が帰還する方向に切り換え可能な方向制御弁を備え、
前記緩衝装置は、塗料を一定容量収容する容器と、この容器に収容された塗料の容量を検出する液面レベル検出器と、前記容器に収容された塗料が最大容量と最低容量との間を維持するように前記液面レベル検出器の信号を受信して前記方向制御弁を切り換える制御手段と、を有する請求項1記載の塗料供給システム。
【請求項3】
前記緩衝装置は、前記容器内の空間が一定圧力を維持するように圧縮流体を供給する供給手段を備える請求項2記載の塗料供給システム。
【請求項4】
前記圧縮流体が窒素ガスである請求項3記載の塗料供給システム。
【請求項5】
前記圧送ポンプは、容積往復動式のポンプである請求項1から4のいずれかに記載の塗料供給システム。
【請求項6】
塗料が供給される塗料流路と、この塗料流路に並列接続する分岐路の経路途上に接続される塗装機と、を備える塗料供給システムであって、
前記分岐路内の塗料を遥動させる遥動装置を備え、
前記遥動装置は、前記分岐路に直列接続するシリンダチューブと、このシリンダチューブに往復動可能に収容される第1ピグと、この第1ピグから相反する向きに延出する一対のピストンロッドと、前記シリンダチューブの両端部に設けられて各ピストンロッドをスライド可能に案内する一対のロッドカバーと、これらのピストンロッドの各先端部に固定されて前記分岐路を密閉する一対の第2ピグと、を有し、
前記一対の第2ピグが前記分岐路の一端側に移動される動作と前記分岐路の他端側に移動される動作が交互に繰り返されることで前記分岐路内の塗料を遥動させ、いずれか一方の前記第2ピグが対向する前記ロッドカバーに当接して停止する塗料供給システム。
【請求項7】
塗装ラインの両側部に沿って対向するように並設配置される複数の前記塗装機に前記分岐路が接続している請求項1から6のいずれかに記載の塗料供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−213945(P2009−213945A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176559(P2006−176559)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(505166155)デュル・ジャパン株式会社 (6)
【Fターム(参考)】