説明

塗料供給具、および該塗料供給具と該塗料供給具から供給された塗料を塗装する塗装ローラとから成る塗装具

【課題】ローラを有する塗装具や複数のローラに掛け渡されたベルトを有する塗装器具のローラやベルトに適量の塗料を均一且つ迅速に付着させることができる塗料供給具を提供する。
【解決手段】塗料供給具1は、上部に配設した上方ローラ11と下部に配設した下方ローラ12とに塗料供給ベルト15を掛け渡して成る塗料供給ロール10をロール保持台20が着脱自在に保持し、保持された塗料供給ロール10は、下方ローラ12が塗料容器2内の塗料Pに浸る所定の高さに保持される。塗装ローラ3をロール保持台20に載置して塗料供給ベルト15に重なるように滑らせて移動させると、塗装ローラ3の移動によって塗料供給ロール10の塗料供給ベルト15が回動して塗料容器2内の塗料Pが塗料供給ベルト15に付着し、該塗料供給ベルト15に付着した塗料Pが塗装ローラ3のベルト33又はローラに供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のローラにベルトを掛け渡した塗装ローラの前記ベルトに、又はベルトを備えない塗装ローラのローラに塗料を供給するための塗料供給具、および該塗料供給具から塗料供給を受けて塗装対象に塗装する塗装ローラと塗料供給具から成る塗装具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塀や建造物の壁面等の塗装対象面に塗装を行う塗装器具として、塗料を塗装ローラに付着させて塗装を行うもの、ローラとローラの間に掛け渡した塗装ベルトに塗料を付着させて塗装を行うもの等が有った。これらは、平面状の塗装対象面を塗装するのに大変に優れている。
【0003】
このうち、ローラとローラの間に塗装ベルトを掛け渡したものとしては、本願出願人が特許文献1で提案している塗装装置がある。
すなわち、基体に前ローラ、後ローラ、中間ローラを回転可能に支持し、前ローラと後ローラとに塗装ベルトを掛け渡して塗装ロールを構成し、塗装ロールの下面側を塗装面として塗装対象面に接触させて移動可能とし、上面側を塗料供給面とし、該塗料供給面に供給した塗料を塗装ベルトの移動によって下面側の塗装面に移動させて塗装対象面に付着させるものである。そして、この塗装装置は、塗料タンクから塗料導入管を介して塗料供給面に塗料の供給を受けながら塗装作業をすることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−264712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の技術では、塗料を塗料供給面に供給するための構成が必要となり、それだけ部品点数が増えて製造コストが嵩むという問題点が有った。
【0006】
また、塗装装置の重量も嵩み、大柄に成り易く使い勝手が悪いという問題点があった。
【0007】
また、塗料の供給機能を有さない塗装器具の場合、容器に溜まっている塗料に塗装ローラや塗装ベルトを浸して使用するが、この場合、塗装ローラや塗装ベルトの表面に略均一且つ適量の塗料を付着させることが難しいという問題点が有った。
【0008】
本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、ローラを有する塗装器具や複数のローラに掛け渡されたベルトを有する塗装器具のローラやベルトに適量の塗料を均一且つ迅速に付着させることができる塗料供給具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
[1] 複数のローラにベルトを掛け渡した塗装ローラ(3)の前記ベルトに、又はベルトを備えない塗装ローラ(3)のローラに塗料(P)を供給するための塗料供給具(1)であって、
上部に配設した上方ローラ(11)と下部に配設した下方ローラ(12)とに塗料供給ベルト(15)を掛け渡して成る塗料供給ロール(10)と、
前記塗料供給ロール(10)の下方ローラ(12)が塗料容器(2)内の塗料(P)に浸るように所定の高さに着脱自在に保持するとともに、前記塗装ローラ(3)を載置して該塗装ローラ(3)を前記塗料供給ロール(10)の塗料供給ベルト(15)に重なるように滑らせて移動させるためのロール保持台(20)と、を備え、
前記塗装ローラ(3)の移動によって前記塗料供給ロール(10)の塗料供給ベルト(15)が回動して前記塗料容器(2)内の塗料(P)が前記塗料供給ベルト(15)に付着し、該塗料供給ベルト(15)に付着した塗料(P)を前記塗装ローラ(3)のベルト又はローラに供給できるようにした塗料供給具(1)。
【0010】
[2] 複数のローラにベルトを掛け渡した塗装ローラ(3)の前記ベルトに、又はベルトを備えない塗装ローラ(3)のローラに塗料(P)を供給するための塗料供給具(1)であって、
上部に並行に配設した少なくとも2つの上方ローラ(11)と、下部に配設した少なくとも1つの下方ローラ(12)と、前記上方ローラ(11)および前記下方ローラ(12)に掛け渡した塗料供給ベルト(15)と、を有する塗料供給ロール(10)、および、
前記下方ローラ(12)が塗料容器(2)内の塗料(P)に浸るように所定の高さに前記塗料供給ロール(10)を着脱自在に保持する保持部(24)と、該保持部(24)に続く、前記塗装ローラ(3)を載置可能な載置面(23)と、を有するロール保持台(20)、を備え、
前記ロール保持台(20)の載置面(23)から前記保持部(24)に保持させた前記塗料供給ロール(10)にかけて、又は前記塗料供給ロール(10)上で、前記塗装ローラ(3)を滑らせるように移動させることにより、前記塗料供給ロール(10)の塗料供給ベルト(15)が回動して前記塗料容器(2)内の塗料(P)が前記塗料供給ベルト(15)に付着し、該塗料供給ベルト(15)に付着した塗料(P)を前記塗装ローラ(3)のベルト又はローラに供給できるようにした塗料供給具(1)。
【0011】
[3] 前記ロール保持台(20)は、前記載置面(23)の下方に配置する前記塗料容器(2)の位置決めをする位置決め部(25)を前記載置面(23)の裏側から下方に延設したことを特徴とする[2]に記載の塗料供給具(1)。
【0012】
[4] 前記塗料供給ベルト(15)は、メッシュ状に形成されたものであることを特徴とする[1],[2]または[3]に記載の塗料供給具(1)。
【0013】
[5] 前記塗料供給ロール(10)は、前記上方ローラ(11)と下方ローラ(12)とをそれらの両端で支持する支持部材(13)を有し、
前記支持部材(13)は、前記下方ローラ(12)の支持位置を上下方向に変更可能な下方ローラ位置変更手段(14)を有することを特徴とする[1],[2],[3]または[4]に記載の塗料供給具(1)。
【0014】
[6] 前記[1],[2],[3],[4]または[5]に記載の塗料供給具(1)と、該塗料供給具(1)から塗料(P)の供給を受けて塗装対象に塗料(P)を塗装する塗装ローラ(3)から成る塗装具であって、
前記塗装ローラ(3)は、少なくとも2本の平行するローラ(31,31)を具備し、該ローラ(31,31)の長さは、前記ロール保持台(20)の短辺の長さ以下であることを特徴とする塗装具。
【0015】
[7] 前記塗装ローラ(3)は、前記少なくとも2本の平行するローラ(31,31)に掛け渡した塗装ベルト(33)を備えることを特徴とする[6]に記載の塗装具。
【0016】
前記本発明は次のように作用する。
塗装ローラ(3)によって塗装作業をするときは、先ず、塗料供給具(1)のロール保持台(20)の下方に塗料(P)の入った塗料容器(2)を配置する。具体的には、ロール保持台(20)の保持部(24)の下方に塗料容器(2)を配置する。
【0017】
塗料容器(2)は、ロール保持台(20)よりも背の低いもののときには、ロール保持台(20)と該ロール保持台(20)を置いた地面や床面等との間に入れれば良い。この場合、ロール保持台(20)がその載置面(23)の裏側から下方に延設された位置決め部(25)を有するものである場合には、塗料容器(2)をより適切な位置に配置し、その位置を維持することができる。したがって、ロール保持台(20)と塗料容器(2)との位置のずれを直すために塗装作業を中断する等の煩わしさをなくすことができる。
【0018】
塗料容器(2)がロール保持台(20)よりも背の高いものであれば、塗料容器(2)の開口を跨ぐようにロール保持台(20)を塗料容器(2)の上に載せてもよい。この場合、位置決め部(25)が塗料容器(2)の開口の内側に入るように塗料供給具(1)を載せることができるものでは、塗料供給具(1)を塗料容器(2)に対して位置決めできる場合がある。
【0019】
次に、保持部(24)に塗料供給ロール(10)を保持させる。塗料供給ロール(10)は、その下方ローラ(12)が塗料容器(2)内の塗料(P)に浸るような所定の高さに保持される。
【0020】
下方ローラ(12)を支持している塗料供給ロール(10)の支持部材(13)に下方ローラ位置変更手段(14)を有するものにあっては、下方ローラ(12)と上方ローラ(11)との間隔を変更できる。すなわち、塗料供給ロール(10)をロール保持台(20)に保持させたときの下方ローラ(12)の上下方向の位置を変更できる。
【0021】
したがって、深さの異なる塗料容器(2)に対しても下方ローラ(12)を適切な位置に、あるいは使用者の好みの位置に位置するように塗料供給ロール(10)をロール保持台(20)に保持させることができる。塗料供給ロール(10)をロール保持台(20)に保持させることにより、塗装ローラ(3)への塗料(P)の供給準備が完了する。
【0022】
塗装ローラ(3)に塗料容器(2)内の塗料(P)を付着させるためには、塗装ローラ(3)を載置面(23)に載せて塗装ローラ(3)のベルト又はローラが塗料供給ロール(10)の塗料供給ベルト(15)に重なる所まで滑らせるように移動を適宜に繰り返せばよい。または、塗料供給ロール(10)上で塗装ローラ(3)のベルト又はローラを滑らせるように移動させてもよい。
【0023】
このように塗装ローラ(3)を移動させることにより、塗料供給ロール(10)の塗料供給ベルト(15)を回動させて塗料容器(2)内の塗料(P)が付着した部分を上方に至らせることができる。この上方に至った塗料供給ベルト(15)に塗装ローラ(3)を重ねることにより、塗料供給ベルト(15)に付着した塗料(P)を塗装ローラ(3)のベルト又はローラに付着させることができる。塗料供給ベルト(15)は、このようにして塗料容器(2)内の塗料(P)を運ぶので、メッシュ状に形成されたものであることが好ましい。
【0024】
このように塗料供給具(1)は、上方ローラ(11)と下方ローラ(12)とに掛け渡された塗料供給ベルト(15)に塗料(P)を付着させ、それを塗装ローラ(3)のベルト又はローラに付着させるので、塗装ローラ(3)のベルト又はローラに均一に塗料(P)を供給することができる。
【0025】
また、塗装ローラ(3)のベルト又はローラに付着させる塗料(P)の量は、使用者の判断で適量を付着させることができる。すなわち、少ない量の塗料(P)を均一に付着させる場合には、塗料供給ベルト(15)に塗装ローラ(3)を重ねて移動する回数を少なくし、付着する塗料(P)の量を多めにしたいときは、塗料供給ベルト(15)に塗装ローラ(3)を重ねて移動する回数を多くすればよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる塗料供給具によれば、塗料を供給する塗料供給ロールの上方ローラと下方ローラに掛け渡した塗料供給ベルトに塗料を付着させ、この塗料供給ベルトに付着した塗料を塗装ローラに付着するようにして供給するので、塗料を均一且つ適量を塗装ローラに供給することができる。
【0027】
また、色の異なる塗料を使用するときは、塗料容器を色の異なる塗料の入った塗料容器と交換するだけで異なる色の塗料の塗装をすることができる。この際、塗料供給ロールも交換すれば、塗料を交換した直後の塗料供給の際に異なる色の塗料が混ざり、所望の色と僅かに異なる色となってしまうことを防止することができる。
【0028】
また、ロール保持台に位置決め手段を設けたものにあっては、ロール保持台に対する塗料容器の位置を適切にすることができるとともに、塗装作業を続けていてもロール保持台に対する塗料容器の位置がずれてしまうことがない。
【0029】
また、下方ローラの支持位置を上下方向に変更可能な下方ローラ位置変更手段を有するものでは、深さの異なる塗装容器に対しても上方ローラと下方ローラとの間隔を調節して適宜に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態に係る塗料供給具の上に載置した塗装ローラを示す斜視図である。
【図2】図1における塗料供給具から塗装ローラに塗料の供給を受ける方法を示す模式図である。
【図3】図1におけるロール保持台を示す平面図である。
【図4】図3のロール保持台を示す側面図である。
【図5】図1における塗装供給ロールを示す斜視図である。
【図6】図5の塗装供給ロールを示す側面図である。
【図7】図1における塗装ローラを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施の形態を説明する。
各図は本発明の一実施の形態を示している。
図1は、本実施の形態に係る塗料供給具の上に載置した塗装ローラを示す斜視図である。図2は、図1における塗料供給具から塗装ローラに塗料の供給を受ける方法を示す模式図である。
【0032】
図1及び図2に示したように、塗料供給具1は、塗料容器2に入っている塗料Pを塗装ローラ3に均一に供給するための塗料供給ロール10と、該塗料供給ロール10を保持するためのロール保持台20とから成る。
【0033】
図6および図5に示したように、塗料供給ロール10は、上方ローラ11および下方ローラ12それぞれの両端を板状の支持部材13で支持したものである。支持部材13は、T字状のものである。上方ローラ11は、支持部材13の横方向に延びる部分13aに3つのローラが平行に取り付けられている。
【0034】
3つの上方ローラ11のうち中央の上方ローラ11が取り付けられている部分からは、下方ローラ12が取り付けられる部分が下方に延びている。この下方へ延びる部分13bの下端近くに下方ローラ12が1つ取り付けられている。
【0035】
下方へ延びる部分13bには、その延びる方向に沿って複数の下方ローラ取付け孔14が穿設されている。塗料供給ロール10は、後述するようにロール保持台20に保持されたときに支持部材13が下になる。上方ローラ11や下方ローラ12は、例えば図示したようにボルトBによって支持部材13に着脱可能に取り付けられている。
【0036】
下方ローラ12は、複数の下方ローラ取付け孔14の何れに取り付けるかによって上下方向の位置を変更することができる。言い換えると、下方ローラ12は上方ローラ11との間隔を変更することができる。
【0037】
これら上方ローラ11と下方ローラ12とには、塗料Pに浸して塗料Pを付着させ、該付着した塗料Pを塗装ローラ3に供給するための塗料供給ベルト15が掛け渡されている。この塗料供給ベルト15は、塗料Pが付着し易いように繊維をメッシュ状に形成したものであるが、それに限らず、浸した塗料Pが付着しやすいものであればよく、その材質も塗料Pが付着しやすいものであればよい。
【0038】
図1、図2、図5および図6には、塗料供給ベルト15が下方ローラ12に接しているように示してあるが、塗料供給ベルト15は、上方ローラ11と下方ローラ12とに掛け渡したときに緩く弛む程度のものでもよい。塗料供給ロール10が下方ローラ12の位置を大きく変更可能なものの場合には、塗料供給ベルト15を長さの異なるものに取り替える必要のある場合がある。その場合には、長さの異なる塗料供給ベルト15を用意しておき、下方ローラ12の位置を変更するために下方ローラ12を支持部材13から取り外したときに塗料供給ベルト15を取り替えればよい。
【0039】
横方向に延びる部分13aの上縁部は、外側へ折り曲げられた被保持部13cを有している。この被保持部13cは、後述するロール保持台20に保持される部分である。
【0040】
図3には、ロール保持台20の平面図が示されており、図4には、ロール保持台20の側面図が示されている。図1にも示したように、ロール保持台20は、平面板21の四隅に脚部22を設けたものである。平面板21の上面は、塗装ローラ3を載置可能な載置面23と、塗料供給ロール10を保持するための保持部24とを有している。ロール保持台20は、金属でもよいし、プラスチック類でもよく、ある程度の堅牢性の有るものであれば素材は問われない。
【0041】
保持部24は、載置面23の中央よりも片側に寄せて穿設された開口である。この保持部24に塗料供給ロール10の上方ローラ11、下方ローラ12が載置面23の短辺と平行になるように塗料供給ロール10を入れると、被保持部13cが保持部24の縁部に掛かる。これにより、塗料供給ロール10がロール保持台20に保持される。
【0042】
図2および図4に示したように、載置面23の裏面、すなわち平面板21の下面には、載置面23の下方に配置する塗料容器2を保持部24の下方に位置決めするための位置決め部25が下方に向けて延設されている。この位置決め部25を設けたものにあっては、図2に示したように塗料容器2を位置決め部25の間に配置することによって位置決めすることができる。また、塗料容器2の大きさによっては、位置決め部25が塗料容器2の内側に位置する場合もあるが、この場合であっても、位置決め部25は塗料容器2を位置決めすることができる。
【0043】
以上のような塗料供給具1から塗料Pの供給を受ける塗装ローラ3は、図1,2および7に示したように、少なくとも2本のローラ31が断面コ字形の保持体32に平行して回転可能に取り付けられており、ローラ31に塗装ベルト33が掛け渡されて成る。保持体32の上面側には、柄34が配設されており、該柄34の末端にはグリップ35が取り付けられている。柄34は、保持体32の上面に設けられた揺動部材40に取り付けられており、揺動可能になっている。
【0044】
揺動部材40は、保持体32の上面に固定されたコ字状のベース41と、該ベース41に回転可能に支持された回転軸42と、該回転軸42に固定されて該回転軸42とともに回転可能なコ字状の柄取付部43とから成っている。柄34は、柄取付部43を貫通して回転軸42に取り付けられている。
【0045】
また、保持体32の上面の長手方向の一端側には、スプリング材取付け部44が固定されている。このスプリング材取付け部44には、コイルバネ45の一端が掛けられている。コイルバネ45のもう一方の端部は、柄取付部43に掛けられている。これにより、柄34に力を加えない自然な状態では、柄取付部43はスプリング材取付け部44側に倒れており、スプリング材取付け部44に支持されている。
【0046】
なお、塗装ローラ3は、塗装ベルト33を有さないものであってもよい。また、ローラ31は、全長がロール保持台20の短辺の長さ以下であることが好ましく、さらには、塗料供給ロール10の塗料供給ベルト15の幅と略同じ長さであることが好ましい。
【0047】
次に本実施の形態に係る塗料供給具1の作用を説明する。
図1または図2に示したように、塗料供給具1から塗装ローラ3に塗料Pを供給するためには、先ず、塗料供給具1のロール保持台20の下方に塗料Pの入った塗料容器2を配置する。塗料容器2は、図2に示したような位置決め部25と位置決め部25の間に収まるような大きさでもよいし、平面板21と略同じ大きさのものでもよい。位置決め部25と位置決め部25の間に収まるような大きさのもの或いは位置決め部25と位置決め部25とが容器の相対する内側面に近い位置になるような大きさのものであれば、ロール保持台20が動いても塗料供給ロール10に対する塗料容器2の位置がほとんどずれない。したがって、使用者は塗料容器2の位置のずれを直す必要がないので、塗装作業が中断されることがなく作業に専念できる。
【0048】
また、塗料容器2の背の高さは、ロール保持台20より低いか略ロール保持台20と同じ高さのものでもよい。さらには、ロール保持台20よりも明らかに高さのある塗料容器2であってもよい。この場合は、塗料容器2の開口を跨ぐようにロール保持台20を塗料容器2の上に載せればよい。位置決め部25が塗料容器2の開口の内側に入り、且つ開口の周縁近傍に位置するような塗料容器2の場合には、塗料供給具1全体を塗料容器2に対して位置決めできる。
【0049】
次に、塗料供給ロール10をその被保持部13cが保持部24の開口の周縁に掛かるように保持部24の開口に入れる。これにより、塗料供給ロール10が保持部24に保持される。塗料容器2内には、塗料供給ロール10の下方ローラ12および下方ローラ12に掛かっている塗料供給ベルト15が塗料Pに浸るような量の塗料Pを入れておく。
【0050】
この際、塗料供給ロール10が支持部材13に下方ローラ取付け孔14を有するものの場合は、上方ローラ11から下方ローラ12までの間隔を変更して所望の間隔にしておくことができる。すなわち、深さの異なる塗料容器2に対しても下方ローラ12を適切な位置に、あるいは使用者の好みの位置に位置するように塗料供給ロール10をロール保持台20に保持させることができる。以上のようにして塗料供給具1の準備が整うと塗装ローラ3への塗料Pの供給準備が完了する。
【0051】
図2に示したように、塗料容器2の塗料Pを塗装ローラ3に供給させるためには、塗料Pに浸った塗料供給ベルト15を塗料Pが付着している状態のままに回動させて上方ローラ11上に至らせ、塗料供給ベルト15に付着した塗料Pに塗装ローラ3の塗装ベルト33を重ねて、塗料Pを塗装ベルト33に付着させればよい。したがって、塗装ローラ3をロール保持台20の載置面23に載せて塗装ローラ3の塗装ベルト33が塗料供給ロール10の塗料供給ベルト15に重なる所まで矢印A方向または矢印B方向に滑らせるように移動を適宜に繰り返せばよい。この塗装ローラ3の移動には、矢印A方向および矢印B方向への往復動を適宜に加えてもよいことは言うまでもない。
【0052】
このように塗料供給具1は、上方ローラ11と下方ローラ12とに掛け渡された塗料供給ベルト15に塗料Pを付着させ、その塗料供給ベルト15の塗料Pを塗装ローラ3の塗装ベルト33に付着させるので、塗装ローラ3の塗装ベルト33に均一に塗料Pを供給することができる。
【0053】
また、塗装ローラ3の塗装ベルト33に付着させる塗料Pの量は、使用者の判断で適宜に調節することができる。例えば、少ない量の塗料Pを均一に付着させる場合には、塗料供給ベルト15に塗装ローラ3を重ねて移動する回数を少なくすればよい。また、付着する塗料Pの量を多めにしたいときは、塗料供給ベルト15に塗装ローラ3を重ねて移動する回数を多くすればよい。
【0054】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0055】
例えば、前記実施の形態では、支持部材13をT字状のものとして例示したが、逆三角形状、四辺形状、その他の形状であってもよい。また、上方ローラ11の数は3つに限られない。下方ローラ12の数も1つに限られず、複数のローラを平行に設けてもよい。さらに、塗料供給ベルト15の動きをより良くするために、上方ローラ11の表面に塗料供給ベルト15の裏面との摩擦係数を増大させるための処理を行ったり、上方ローラ11の表面の一部または全周に亘って小突起のようなものを設けたりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る塗料供給具の思想は、塗料を塗装ローラ等の塗装器具に供給するためのものに限らず、液状のものを供給するものに広く利用することができる。例えば、切手を郵便物に貼る際に、切手の裏面の糊付着面に塗る水を供給する物としても利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
P…塗料
1…塗料供給具
2…塗料容器
3…塗装ローラ
10…塗料供給ロール
11…上方ローラ
12…下方ローラ
13…支持部材
13a…横方向に延びる部分
13b…下方へ延びる部分
13c…被保持部
14…下方ローラ取付け孔
15…塗料供給ベルト
20…ロール保持台
21…平面板
22…脚部
23…載置面
24…保持部
25…位置決め部
31…ローラ
32…保持体
33…塗装ベルト
34…柄
35…グリップ
40…揺動部材
41…ベース
42…回転軸
43…柄取付部
44…スプリング材取付け部
45…コイルバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローラにベルトを掛け渡した塗装ローラの前記ベルトに、又はベルトを備えない塗装ローラのローラに塗料を供給するための塗料供給具であって、
上部に配設した上方ローラと下部に配設した下方ローラとに塗料供給ベルトを掛け渡して成る塗料供給ロールと、
前記塗料供給ロールの下方ローラが塗料容器内の塗料に浸るように所定の高さに着脱自在に保持するとともに、前記塗装ローラを載置して該塗装ローラを前記塗料供給ロールの塗料供給ベルトに重なるように滑らせて移動させるためのロール保持台と、を備え、
前記塗装ローラの移動によって前記塗料供給ロールの塗料供給ベルトが回動して前記塗料容器内の塗料が前記塗料供給ベルトに付着し、該塗料供給ベルトに付着した塗料を前記塗装ローラのベルト又はローラに供給できるようにした塗料供給具。
【請求項2】
複数のローラにベルトを掛け渡した塗装ローラの前記ベルトに、又はベルトを備えない塗装ローラのローラに塗料を供給するための塗料供給具であって、
上部に並行に配設した少なくとも2つの上方ローラと、下部に配設した少なくとも1つの下方ローラと、前記上方ローラおよび前記下方ローラに掛け渡した塗料供給ベルトと、を有する塗料供給ロール、および、
前記下方ローラが塗料容器内の塗料に浸るように所定の高さに前記塗料供給ロールを着脱自在に保持する保持部と、該保持部に続く、前記塗装ローラを載置可能な載置面と、を有するロール保持台、を備え、
前記ロール保持台の載置面から前記保持部に保持させた前記塗料供給ロールにかけて、又は前記塗料供給ロール上で、前記塗装ローラを滑らせるように移動させることにより、前記塗料供給ロールの塗料供給ベルトが回動して前記塗料容器内の塗料が前記塗料供給ベルトに付着し、該塗料供給ベルトに付着した塗料を前記塗装ローラのベルト又はローラに供給できるようにした塗料供給具。
【請求項3】
前記ロール保持台は、前記載置面の下方に配置する前記塗料容器の位置決めをする位置決め部を前記載置面の裏側から下方に延設したことを特徴とする請求項2に記載の塗料供給具。
【請求項4】
前記塗料供給ベルトは、メッシュ状に形成されたものであることを特徴とする請求項1,2または3に記載の塗料供給具。
【請求項5】
前記塗料供給ロールは、前記上方ローラと下方ローラとをそれらの両端で支持する支持部材を有し、
前記支持部材は、前記下方ローラの支持位置を上下方向に変更可能な下方ローラ位置変更手段を有することを特徴とする請求項1,2,3または4に記載の塗料供給具。
【請求項6】
前記請求項1,2,3,4または5に記載の塗料供給具と、該塗料供給具から塗料の供給を受けて塗装対象に塗料を塗装する塗装ローラから成る塗装具であって、
前記塗装ローラは、少なくとも2本の平行するローラを具備し、該ローラの長さは、前記ロール保持台の短辺の長さ以下であることを特徴とする塗装具。
【請求項7】
前記塗装ローラは、前記少なくとも2本の平行するローラに掛け渡した塗装ベルトを備えることを特徴とする請求項6に記載の塗装具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−82110(P2013−82110A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222964(P2011−222964)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(306040193)
【Fターム(参考)】