説明

塗料供給方法及び装置

【課題】気泡を混入することなく塗料を圧送して供給する方法及び装置を提供する。
【解決手段】ピグ挿入管19から塗料供給配管7内に挿入されたピグ1dを、押進するに先立って、塗料の先頭部側の気泡を、ピグ挿入管から外部へ排出した後、塗料によりピグ1dを押進する。そして塗料供給装置は、塗料供給配管7内へピグ1dを挿入するためのピグ挿入管19を、斜めに接続して備え、ピグ1dを挿通可能な挿通孔21とピグ挿入管19を連通遮断自在な開閉弁23とをピグ挿入管19に備えた構成であり、ピグ挿入管19の内径は塗料供給管7の内径にほぼ等しい径で、塗料供給管7とピグ挿入管19とのなす角度θは約26°〜60°の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体材料の原板等に塗工を施す塗工手段に対して塗料を供給する方法及び装置に係り、さらに詳細には、塗料を圧送するための塗料供給配管内にピグを挿入し、このピグを供給すべき塗料によって押進するとき、この塗料の先頭部側への気泡の混入を防止することのできる塗料供給方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料などの各種の液状体を、配管を利用して移送するとき、前記配管内へピグを挿入し、移送すべき塗料(液状体)によって上記ピグを押進するように液状体の圧送が行われている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−205025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1には、図3(a)〜(h)に示すような各種形状のピグ1a〜1hの所望のピグを配管内に挿入した後、プロセス液にて前記ピグを押進し、上記プロセス液を圧送することが開示されている。上述のごとく配管内へピグを挿入した後、圧送すべきプロセス液を配管内に供給すると、空気の混入を生じ易いという問題がある。この場合、例えばコンマコータ,リップコータ等の塗工部へ塗料を供給して塗工を施すとき、塗料に気泡が混入した状態で塗工を行うこととなり、被塗工部に対する均一な塗工が難しくなることがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上述のごとき問題に鑑みてなされたもので、ピグ挿入管から塗料供給配管内に挿入されたピグを、前記塗料供給配管に接続されたポンプによって圧送される塗料により押進して当該塗料を塗工部へ供給する塗料供給方法であって、前記塗料によって前記ピグを押進するに先立って、前記塗料供給配管内に発生した当該塗料の先頭部側の気泡を、前記ピグ挿入管から外部へ排出した後、前記塗料により前記ピグを前記塗工部へ押進することを特徴とするものである。
【0005】
また、前記塗料供給方法において、前記ピグ挿入管は、前記ポンプより下流側において前記塗料供給配管に接続しており、前記塗料供給配管と前記ピグ挿入管の接続位置と前記ピグの後端部とがほぼ一致した位置となるように、前記ピグが挿入されることを特徴とするものである。
【0006】
また、前記塗料供給方法において、前記ピグ挿入管は前記塗料供給配管に対して斜めに接続していることを特徴とするものである。
【0007】
また、前記塗料供給方法において、前記ピグは、押し込み具を用いて、前記ピグ挿入管から前記塗料供給配管内に挿入されることを特徴とするものである。
【0008】
また、前記塗料供給方法において、前記押し込み具は金属棒であるることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記塗料供給方法において、第1の塗料を供給した後に、ピグを挿入し、続いて第2の塗料を前記塗料供給配管に供給し、前記塗料供給配管内に発生した第2の塗料の先頭部側の気泡を、前記ピグ挿入管から外部へ排出し、その後、前記ピグ挿入管を閉じて第2の塗料の供給を続けることにより、前記塗料供給配管内において前記ピグの下流側には第1の塗料が満たされ、前記ピグの上流側には第2の塗料が満たされて、塗料の切替がなされることを特徴とするものである。
【0010】
また、ポンプによって圧送される塗料を塗工部へ供給するための塗料供給配管を備えた塗料供給装置であって、前記塗料供給配管内へピグを挿入するためのピグ挿入管を、前記ポンプの下流側において前記塗料供給配管に接続して備え、前記ピグ挿入管は、前記ピグを挿通可能な挿通孔を備えかつ前記ピグ挿入管の流路を連通遮断自在な開閉弁を備えていることを特徴とするものである。
【0011】
また、前記塗料供給装置において、前記ピグ挿入管は前記塗料供給配管に対して斜めに接続されることを特徴とするものである。
【0012】
また、前記塗料供給装置において、前記ピグ挿入管の内径は前記塗料供給管の内径にほぼ等しい径であることを特徴とするものである。
【0013】
また、前記塗料供給装置において、前記塗料供給管と前記ピグ挿入管とのなす角度は約26°〜60°の範囲であることを特徴とするものである。
【0014】
また、前記塗料供給装置において、前記塗料供給管は、前記ピグ挿入管と前記塗料供給管との接続位置より上流側でかつ前記ポンプより下流側に塗料開閉弁を設けてあることを特徴とするものである。
【0015】
また、前記塗料供給装置において、塗料開閉弁は、前記ピグ挿入管と前記塗料供給管との接続位置に近接した位置に設けてあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、塗料によってピグを押進する前に、塗料供給管に対してピグを挿入した際の空気がピグ挿入口から排出されるので、塗料供給管内を圧送する塗料内に気泡が混入するようなことがないものである。また、本発明によれば、塗料の切替時間を最小限に抑えることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る塗料供給装置3の全体的構成を、図2に概念的、概略的に示すように、塗料供給装置3は、塗工部5へ塗料を供給する塗料供給配管7を備えており、この塗料供給配管7の上流側には、例えばタンク(図示省略)内の塗料を圧送するためのポンプ9が接続してあり、このポンプ9の下流側には、例えばダイヤフラム弁等よりなる塗料開閉弁11が接続してある。そして、前記ポンプ9と塗料開閉弁11との間には、複数種の塗料を供給するための複数の供給配管(図示省略)が分岐接続してあってもよく、その複数の供給配管にはそれぞれポンプが接続してあってもよい。
【0018】
前記塗工部5は、例えばリップコータ型塗装装置(図示省略)へ供給する塗料を前記塗料供給配管7から受ける塗料受け容器13を備えた構成であって、この塗料受け容器13には、前記塗料供給配管7の出口15から排出されるピグを受けるピグ受け容器17が備えられている。このピグ受け容器は、塗料の流下を許容する小孔を底部に備えた構成であることが好ましい。
【0019】
本発明において用いられるピグとしては、例えば前記ピグ1a〜1hのような各種形状のピグが挙げられるが、なかでも1dが好ましい。
【0020】
前記塗料開閉弁11の下流側で当該塗料開閉弁11に近接した位置には、前記ピグ1a〜1hの適宜のピグ1dを前記塗料供給配管7内へ挿入するために使用するピグ挿入管19が接続してある。このピグ挿入管19の内径は前記塗料供給配管7の内径とほぼ同径であることが好ましい。そして、前記ピグ挿入管19には、前記ピグ1dを挿通可能な挿通孔21(図1参照)を備えて上記ピグ挿入管19を連通遮断自在な開閉弁23が備えられている。さらに、前記ピグ挿入管19には開閉蓋25が着脱自在に備えられている。
【0021】
前記ピグ挿入管19は前記塗料供給配管7に斜めに接続されること、すなわち、前記塗料供給配管7の下流側を指向するように傾斜してあることが好ましい。前記塗料供給配管7と前記ピグ挿入管19とのなす傾斜角θは、塗料供給配管7に対してピグ1dの挿入が容易であるように、約26°〜60°の範囲に設定されることがより好ましい。前記傾斜角θが約26°未満になると、塗料供給配管7とピグ挿入管19との接続部分の長さが長くなり、ピグ挿入管19から塗料供給配管7内へピグ1dを、棒状の押し込み具27によって押し込む距離が長くなる。また、前記傾斜角θが約60°を超えると、ピグ挿入管19から塗料供給配管7内へピグ1dを挿入するとき、所定長さのピグ1dの挿入が難しくなるので、傾斜角θは約60°以下であることが望ましいものである。
【0022】
前記押し込み具27は棒状をなすものが好ましく、金属棒であることがより好ましい。押し込み具27の長さ、すなわち把手部27Aから先端部までの長さは、前記ピグ挿入管19の先端部からピグ挿入管19と塗料供給配管7との接続部までの長さにほぼ等しく設定してあること好ましい。そのような長さに設定した場合、ピグ挿入管19の開口端からピグ1dを押し込み具27によって押し込み挿入すると、塗料供給配管7に対するピグ1dの挿入位置が常にほぼ一定の位置となり、挿入位置が安定するものである。
【0023】
以上のごとき構成において、前記ピグ挿入管19からピグ1dを挿入して、前記塗料供給配管7へ供給する塗料の切替えを行う場合、ポンプ9を停止しかつ塗料開閉弁11を閉状態に保持し、ピグ挿入管19から開閉蓋25を取り外すと共に開閉弁23を開状態にする(図1(1),(2)参照)。そして、ピグ挿入管19の開口端部のピグ挿入口からピグ1dを挿入し、押し込み具27により前記開閉弁23の挿通孔21を通過してピグ1dを塗料供給配管7内へ挿入する(図1(2)参照)。
【0024】
この際、ピグ挿入管19の内径と塗料供給配管7の内径とがほぼ同径であるので、ピグ1dの挿入が円滑に行なわれる。また、押し込み具27の長さとピグ挿入管19との長さがほぼ等しいので、ピグ1dの後端部1dEは、前記塗料供給配管7とピグ挿入管19との接続部におけるピグ挿入管19の下流端縁19Eとがほぼ一致した位置となる。この状態で、塗料開閉弁11を開き前記塗料供給配管7へ供給する新たな塗料に切り替えて供給すると、ピグ1dの位置に達した新しい塗料は、ピグ挿入管19の開口端から流出し、開口端に対応して配置した回収容器29に回収される。なお、前述のごとく新しい塗料を塗料供給配管7内へ供給して、上記塗料開閉弁11の下流側に残留していた塗料をピグ挿入管19から排出するとき、ピグ挿入管19は塗料開閉弁11に近接して設けられているので、排出される塗料を少量に抑制することができるものである。
【0025】
そして、ピグ1dを挿入するときに塗料供給配管7内に入った空気が同時に排出されるので、新たな切替え塗料の先頭部側の気泡を外部へ排出することができる(図1(3)参照)。この際、ピグ1dの後端部1dEがピグ挿入管19の下流端縁19Eとがほぼ一致した位置にあるので、ピグ1dの前側へ新しい塗料が回り込むようなことがないと共に、空気溜り等を生じることがなく、新しい塗料の先頭部側から気泡を確実に排除することができるものである。
【0026】
上述のように、ピグ挿入管19から空気の排出を行った後、開閉弁23を閉じてピグ挿入管19の連通状態を遮断することにより、ピグ1dは新しく切替えた塗料によって押進されて出口15から排出されることになる。すなわち、塗料供給配管7を介して塗料の供給を行うとき、塗料の切替え時に気泡を混入することなく塗料の供給を行うことができると共に塗料の切替えを迅速に行うことができるものである。
【0027】
以上のごとき説明より理解されるように、塗料供給配管7内へピグ1dを挿入して、当該塗料供給配管7内を圧送して供給される新しい塗料に切替えを行うとき、塗料に対する気泡の混入を防止することができると共に塗料の迅速な切替えが可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る塗料供給装置の主要部分の作用説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る塗料供給装置の全体的構成を概略的,概念的に示した説明図である。
【図3】ピグの説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ピグ
3 塗料供給装置
5 塗工部
7 塗料供給配管
9 ポンプ
11 塗料開閉弁
13 塗料受け容器
15 出口
17 ピグ受け容器
19 ピグ挿入管
21 挿通孔
23 開閉弁
25 開閉蓋
27 押し込み具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピグ挿入管(19)から塗料供給配管(7)内に挿入されたピグ(1d)を、前記塗料供給配管(7)に接続されたポンプ(9)によって圧送される塗料により押進して当該塗料を塗工部(5)へ供給する塗料供給方法であって、前記塗料によって前記ピグ(1d)を押進するに先立って、前記塗料供給配管(7)内に発生した当該塗料の先頭部側の気泡を、前記ピグ挿入管(19)から外部へ排出した後、前記塗料により前記ピグ(1d)を前記塗工部(5)へ押進することを特徴とする塗料供給方法。
【請求項2】
請求項1に記載の塗料供給方法において、前記ピグ挿入管(19)は、前記ポンプ(9)より下流側において前記塗料供給配管(7)に接続しており、前記塗料供給配管(7)と前記ピグ挿入管(19)の接続位置と前記ピグ(1d)の後端部(1dE)とがほぼ一致した位置となるように、前記ピグ(1d)が挿入されることを特徴とする塗料供給方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の塗料供給方法において、前記ピグ挿入管(19)は前記塗料供給配管(7)に対して斜めに接続していることを特徴とする塗料供給方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の塗料供給方法において、前記ピグ(1d)は、押し込み具(27)を用いて、前記ピグ挿入管(19)から前記塗料供給配管(7)内に挿入されることを特徴とする塗料供給方法。
【請求項5】
請求項4に記載の塗料供給方法において、前記押し込み具(27)は金属棒であるることを特徴とする塗料供給方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の塗料供給方法において、第1の塗料(A)を供給した後に、ピグ(1d)を挿入し、続いて第2の塗料(B)を前記塗料供給配管(7)に供給し、前記塗料供給配管(7)内に発生した第2の塗料(B)の先頭部側の気泡を、前記ピグ挿入管(19)から外部へ排出し、その後、前記ピグ挿入管(19)を閉じて第2の塗料(B)の供給を続けることにより、前記塗料供給配管(7)内において前記ピグ(1d)の下流側には第1の塗料(A)が満たされ、前記ピグ(1d)の上流側には第2の塗料(B)が満たされて、塗料の切替がなされることを特徴とする塗料供給方法。
【請求項7】
ポンプ(9)によって圧送される塗料を塗工部(5)へ供給するための塗料供給配管(7)を備えた塗料供給装置(3)であって、前記塗料供給配管(7)内へピグ(1d)を挿入するためのピグ挿入管(19)を、前記ポンプ(9)の下流側において前記塗料供給配管(7)に接続して備え、前記ピグ挿入管(19)は、前記ピグ(1d)を挿通可能な挿通孔(21)を備えかつ前記ピグ挿入管(19)の流路を連通遮断自在な開閉弁(23)を備えていることを特徴とする塗料供給装置。
【請求項8】
請求項7に記載の塗料供給装置において、前記ピグ挿入管(19)は前記塗料供給配管(7)に対して斜めに接続されることを特徴とする塗料供給装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の塗料供給装置において、前記ピグ挿入管(19)の内径は前記塗料供給管(7)の内径にほぼ等しい径であることを特徴とする塗料供給装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の塗料供給装置において、前記塗料供給管(7)と前記ピグ挿入管(19)とのなす角度は約26°〜60°の範囲であることを特徴とする塗料供給装置。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれかに記載の塗料供給装置において、前記塗料供給管(7)は、前記ピグ挿入管(19)と前記塗料供給管(7)との接続位置より上流側でかつ前記ポンプ(9)より下流側に塗料開閉弁(11)を設けてあることを特徴とする塗料供給装置。
【請求項12】
請求項11に記載の塗料供給装置において、塗料開閉弁(11)は、前記ピグ挿入管(19)と前記塗料供給管(7)との接続位置に近接した位置に設けてあることを特徴とする塗料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−7512(P2007−7512A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188833(P2005−188833)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】