塗膜製造方法及び塗装物

【課題】屋外に曝露された際、大気中の塵芥や油性物質の吸着による塗膜表面の汚染が少なく、特に塗膜形成直後からの汚染を防止し、降雨後の雨筋跡が残り難い耐汚染性が長期的に維持可能な塗膜及び該塗膜の製造方法を提供することである。
【解決手段】(A)水性樹脂分散体、
(B)アミド基、アミノ基、ヒドロキシル基又はオキシアルキレン基より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する両親媒性ポリマーを有する水性樹脂組成物及び
(C)水分散コロイダルシリカ
を含む塗料被覆組成物を塗布し、乾燥及び硬化させることを特徴とする塗膜、該塗膜の製造方法及び該塗膜を有する塗装物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜、該塗膜の製造方法及び該塗膜を有する塗装物に関する。詳しくは、塗膜形成直後から塗膜表面を親水化して良好な水濡れ性を有し、雨水や洗浄水が塗膜と汚染物質との界面に浸透して汚染物質を洗い流す機能を発現させることができ、耐汚染性とその効果持続性に優れる塗膜、該塗膜の製造方法及び該塗膜を有する塗装物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物を保護し、かつその外観を高めるために塗料が塗装される。従来から有機溶剤希釈型塗料が多用されてきたが、シックハウス/シックスクール症候群や揮発性有機化合物(VOC)規制に見られるような大気中への有機溶媒の放散等の環境問題等が提起され、水性塗料への転換が加速度的に進行している。一方で、消費者ニーズはこれらの商品の塗膜の長期耐久性・高機能化への期待感の高まりを見せている。
【0003】
建築材料等の塗膜に大気中の塵芥や油性物質、排気ガス中に含まれるカーボン等の非極性の汚染物質が付着、蓄積した場合、雨水や洗浄水によって流去せずに蓄積し、汚れの状態が不均一で目立ち易くなる。通常この雨筋汚染を防ぐには、塗膜表面の親水性を高めることによって雨水を汚染物質と塗膜面との界面に介入させ、汚染物質を流去させる手法が用いられている。溶剤系塗料においては、アルコキシシランを塗膜表面に配位させ、経時的に加水分解することによって塗膜表面を親水化させる技術が提案されている。この技術の課題は、塗膜形成直後の1ヶ月間前後の気象条件により、加水分解の程度が左右されるため、特に乾燥した条件が続くことで加水分解が遅れ、塗膜汚染が進行してしまうという点である。
【0004】
水系塗料においては、特定の溶剤を水性エマルションへ添加することによって塗膜の水接触角を低下させる方法が提案されている(特許文献1)が、その効果は十分ではなく、また長期に亘って効果を持続させることが困難であった。
【0005】
特許文献2では、特定のブロックコポリマーの架橋剤とジヒドラジド化合物架橋剤を併用し、ポリカルボニル化合物との架橋塗膜形成によって汚染を低減できることが提案されているが、耐水性が十分なものではなく、持続性にも劣っていた。
【0006】
特許文献3では、無機質充填剤を含有するコロイダルシリカ水分散体無機塗料の塗膜上にアクリル系樹脂とコロイダルシリカの混合物を上塗りする方法が提案されているが、十分な汚染性が得られなかった。
【0007】
特許文献4においては、エマルションにコロイダルシリカをコールドブレンドすることにより、塗膜表面を親水化させる方法が提案されているが、アクリル系樹脂エマルションの固形分30〜400重量部に対して必要とされるコロイダルシリカの量が100重量部と非常に多く、効果の持続性にも劣るものであった。
【0008】
特許文献5においても、含フッ素系重合体粒子とコロイダルシリカ、オルガノアルコキシシランを用いて汚染除去性に優れた塗膜を形成する方法が提案されているが、含フッ素重合体粒子の固形分100重量部に対して、50〜300重量部と非常に多い量のコロイダルシリカを必要とするものであった。
【0009】
特許文献6では、コロイダルシリカをビニル重合体で覆ったエマルションを形成して、固形分濃度が高く、成膜性に優れた塗膜を形成する方法が提案されているが、コロイダルシリカの表面はビニル重合体で覆われているために汚染の付着防止性に劣っていた。
【0010】
特許文献7では、シリカ粒子からなる層が塗膜表面に形成された耐汚染性、透明性、耐候性、耐凍害性に優れる塗膜及び塗装物が提案されているが、塗膜最表面がシリカ粒子のみからなる層のため、雨水によりシリカ粒子が洗い流され易く、耐汚染機能の維持性に劣っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−46099号公報
【特許文献2】特開平10−298489号公報
【特許文献3】特開昭54−139938号公報
【特許文献4】特開平11−116885号公報
【特許文献5】特開平11−124534号公報
【特許文献6】特開2000−290464号公報
【特許文献7】特開2007−31648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は上記のような緒課題を解決することであり、屋外に曝露された際、大気中の塵芥や油性物質の吸着による塗膜表面の汚染が少なく、特に塗膜形成直後からの汚染を防止し、降雨後の雨筋跡が残り難い耐汚染性が長期的に維持可能な塗膜及び該塗膜の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に従って、
(A)水性樹脂分散体と
(B)アミド基、アミノ基、ヒドロキシル基又はオキシアルキレン基より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する両親媒性ポリマーを有する水性樹脂組成物及び
(C)水分散コロイダルシリカ
を含む塗料被覆組成物を塗布し、乾燥及び硬化させることを特徴とする塗膜が提供される。
【0014】
また、本発明に従って、上記塗膜を有することを特徴とする塗装物が提供される。
【0015】
更に、本発明に従って、
(A)水性樹脂分散体と
(B)アミド基、アミノ基、ヒドロキシル基又はオキシアルキレン基より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する両親媒性ポリマーを有する水性樹脂組成物及び
(C)水分散コロイダルシリカ
を含む塗料被覆組成物を塗布する工程と、
塗布した該塗料被覆組成物を乾燥及び硬化させる工程
とを有することを特徴とする塗膜の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の塗膜及び塗膜の製造方法は、一回の塗装で、塗膜表面積の50〜95%をコロイダルシリカが占めている塗膜の膜厚方向に組成傾斜した塗膜を形成することができ、塗膜表面が親水化されるため、塗装系の最表層部に適用された際には耐汚染性、耐水性に優れ、該塗膜上に塗料を塗装する際には、該塗膜上に塗料が濡れ広がり易く、高い密着性を有するためリコート性に優れる。
【0017】
本発明の塗装物は、本発明の塗膜を有し、耐汚染性、耐水性及びリコート性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
本発明者等は、上記の目的を達成するために種々の研究を重ねた結果、(A)水性樹脂分散体と(B)水性樹脂組成物及び(C)水分散コロイダルシリカとを含有する塗料被覆組成物を塗布し、乾燥及び硬化させることによって長期に亘り耐汚染性が良好で耐水性に優れた塗膜を形成することができることを見出した。
【0020】
本発明の詳細な機構は未だ解明されていないが、本発明者らは以下のように考える。(B)水性樹脂組成物は、(C)水分散コロイダルシリカと相互作用してコロイダルシリカのドメインを形成する。乾燥過程において基材上に塗布された塗料被覆組成物内に生じる対流によりコロイダルシリカのドメインが塗膜表面へと移動することで、塗膜内部から塗膜表面につれてコロイダルシリカの割合が徐々に多くなり塗膜の膜厚方向に組成傾斜層が形成される。そのため、優れた耐汚染性、耐水性を発現することが可能となる。更に、塗膜最表面は(C)水分散コロイダルシリカのみから構成されておらず、塗膜形成後も(B)水性樹脂組成物と(C)水分散コロイダルシリカ間の相互作用が維持されるため、雨水により(C)水分散コロイダルシリカが洗い流されることがなく、耐汚染機能の維持性にも優れる。
【0021】
(A)水性樹脂分散体としては、水を媒体とする樹脂組成物であればよく、好ましくは
(1)α,β−エチレン性不飽和単量体を重合してなる均一構造を有するエマルション、多段階乳化重合法によって得られる異相構造を有するエマルションの一方又は両方を含む水性樹脂分散体、
(2)有機溶剤媒体で重合及び/又は縮合されたアクリル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等を水にて相転換及び強制乳化して得られる水性樹脂組成物
が挙げられる。
【0022】
また、(A)水性樹脂分散体の代わりに、水溶解性の樹脂を使用した場合には、塗膜の耐水性、耐温水白化性、溶出率等に劣るものとなる。
【0023】
均一構造を有するエマルションは、緻密な塗膜形成が可能であり耐透水性やクリヤー性に優れた塗膜を得ることができる。異相構造エマルションは、異なるガラス転移温度の単量体を組み合わせること等により成膜性に優れ不粘着性等に優れた塗膜を得ることができる等、これらのエマルションを用いることにより、形成される塗膜特性の幅を広げることができる。
【0024】
有機溶剤媒体で重合及び/又は縮合されたアクリル樹脂やアルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等を水にて相転換及び強制乳化により得られた水性樹脂組成物は、被塗物に対する密着性や強靱性に優れた塗膜を形成することが可能となる。
【0025】
(A)水性樹脂分散体に利用可能なα,β−エチレン性不飽和単量体としては、以下のような単量体が挙げられる。
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリレート系単量体;
スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等のスチレン誘導体;
(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、及びクロトン酸等のカルボキシル基含有単量体;
(メタ)アクリル酸や、クロトン酸、イタコン酸、;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、2(3)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコール、多価アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有単量体;
(メタ)アクリルアミドや、マレインアミド等のアミド基含有単量体;
2−アミノエチル(メタ)アクリレートや、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン等のアミノ基含有単量体;
グリシジル(メタ)アクリレートや、アリルグリシジルエーテル、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物と活性水素原子を有するエチレン性不飽和単量体との反応により得られるエポキシ基含有単量体やオリゴノマー;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、及び3−(メタ)アクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有単量体;
その他、酢酸ビニル、塩化ビニル、更には、エチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、ジアルキルフマレート
等が代表的なものとして挙げられる。
【0026】
更に、得られる塗膜の機能を向上させるために、架橋構造を導入することも可能である。一般的に架橋構造は、“粒子内部架橋構造”と“粒子間架橋構造”の2種に大別される。
【0027】
この“粒子内部架橋構造”や“粒子間架橋構造”をエマルション粒子に組み込むことで、塗膜の強靱性、耐ブロッキング性、不粘着性、耐溶剤性等の塗膜性能を大幅に向上させ得ることができる。粒子内部・間架橋構造を得るための単量体の例を列挙すると、以下のようになる。
【0028】
粒子内部架橋:分子中に重合性不飽和二重結合を2個以上有する単量体である。
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等を使用する方法や;乳化重合反応時に温度にて相互に反応する官能基を持つ単量体を組み合わせて、例えば、カルボキシル基とグリシジル基や、水酸基とイソシアネート基等の組み合わせの官能基を持つエチレン性不飽和単量体を選択含有させた単量体混合物を使用する方法;加水分解縮合反応する、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等、加水分解性シリル基含有エチレン性不飽和単量体を含有させた単量体混合物を使用する方法等の方法により製造することができる。
【0029】
粒子間架橋:カルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合させた後、分子中に2個以上のヒドラジド基を有する化合物を混合する方法が最も代表的な例として挙げられる。
【0030】
カルボニル基含有エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクロレインや、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ホルミルスチレン、(メタ)アクリルオキシアルキルプロパナール、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレート−アセチルアクリレート、ビニルエチルケトン、及びビニルイソブチルケトン等が挙げられる。特に、アクロレインや、ジアセトンアクリルアミド及びビニルメチルケトンが好ましい。
【0031】
上記カルボニル基の対となる、分子中に2個以上のヒドラジド基を有する化合物としては、例えば、カルボヒドラジドや、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン2酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、及びチオカルボジヒドラジド等が挙げられる。これらの中でも、エマルションへの分散性や耐水性のバランスからカルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド及びコハク酸ジヒドラジドが好ましい。
【0032】
(A)水性樹脂分散体は、1種又は2種以上の水性樹脂分散体を併用することができる。例えば、α,β−エチレン性不飽和単量体を重合してなる水性樹脂分散体とウレタンディスパージョン等の水性樹脂分散体を併用することで、塗膜の耐水性、ブロッキング性を向上させることができるため、塗膜形成後の耐汚染性の維持性がより良好になる。
【0033】
更に、得られる塗膜の耐候性・耐光性を向上させるために、重合性光安定性単量体や重合性紫外線吸収性単量体を組み込むことも可能である。また、非反応型の光安定剤や紫外線吸収剤を重合時に併用することも可能である。
【0034】
重合性光安定性単量体としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及び1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
【0035】
重合性紫外線吸収性単量体としては、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチル−3’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−t−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、及び2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0036】
本発明の組成物において上記α,β−エチレン性不飽和単量体を重合する際に用いられる重合開始剤としては、従来から一般的にラジカル重合に使用されているものを使用することができる。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)ハイドロクロライドや、4,4’−アゾビス−シアノバレリックアシッド、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)ジハイドロクロライドテトラハイドレート等のアゾ系化合物;過酸化水素水、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。更に、L−アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム等の還元剤と、硫酸第一鉄等とを組み合わせたレドックス系も使用することができる。
【0037】
また、ラウリルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタンや、チオグリコール酸−2−エチルヘキシル、2−メチル−t−ブチルチオフェノール、四臭化炭素、及びα−メチルスチレンダイマー等の連鎖移動剤を使用することもできる。これらを適宜使用することによって、塗膜の光沢や、成膜性、不粘着性を制御することができる。
【0038】
(A)水性樹脂分散体が乳化重合で得られる場合には、一般的に乳化重合で使用される界面活性剤を乳化剤として使用することができる。例えば、
ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩や高級アルコール硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリエチレンオキサイドアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシノニルフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイドグリコールエーテル硫酸塩、スルホン酸基又は硫酸エステル基と重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を分子中に有する、いわゆる反応性乳化剤等のアニオン性界面活性剤;
ポリエチレンオキサイドアルキルエーテルや、ポリエチレンオキサイドノニルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレンオキサイド脂肪酸エステル、又は前述の骨格と重合性の炭素−炭素不飽和二重結合を分子中に有する反応性ノニオン性界面活性剤等のノニオン性界面活性剤;
アルキルアミン塩や、第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤
等が挙げられる。これらのうち1種又は2種以上の界面活性剤を併用しても構わない。
【0039】
pH調整剤としては、従来から中和剤として公知の各種含窒素塩基性化合物が特に制限なく利用できる。具体的には、例えば、トリメチルアミンや、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン類、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、エチルプロパノールアミン等のアルコールアミン類、モルホリン、アンモニア等の揮発性含窒素塩基性化合物が代表的なものとして挙げられる。これらのうち1種又は2種以上のpH調整剤を併用しても構わない。
【0040】
また、3−アミノプロピルトリメトキシシランや、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−シクロへキシル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有アルコキシシランも中和剤の一部として併用可能である。
【0041】
本発明に用いられる(B)アミド基、アミノ基、ヒドロキシル基又はオキシアルキレン基より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する両親媒性ポリマーからなる水性樹脂組成物は、(C)水分散コロイダルシリカと相互作用することによってコロイダルシリカのドメインを形成し、塗膜の乾燥過程においてコロイダルシリカを塗膜表面に移動させ、塗膜内部に比べ徐々にコロイダルシリカの割合が多くなっている塗膜表面が親水化された組成傾斜層を形成し易くするために含有される。
【0042】
更に、(B)水性樹脂組成物を用いることで、塗装作業性に優れた塗料の設計や、より親水性の高い塗膜の形成により耐汚染性に優れた塗膜を得ることができる。
【0043】
(B)水性樹脂組成物の両親媒性ポリマーとしては、例えば、ポリN−イソプロピルアクリルアミド、ポリN−ビニル−2−ピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリクリル酸塩、及びポリアクリル酸エステル共重合体等が挙げられ、中でもポリN−イソプロピルアクリルアミド、ポリビニルアルコール及びヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。これら(B)水性樹脂組成物は、一般的な塊状重合や溶液重合により合成したものや市販品を使用することができる。また、これらのうち1種又は2種以上の水性樹脂組成物を併用しても構わない。
【0044】
これら(B)水溶性樹脂組成物の重量平均分子量は5,000〜100,000g/molであることが好ましく、その重量平均分子量が5,000g/mol未満の時は塗膜の強靱性、耐候性が劣り易くなる。また、重量平均分子量が100,000g/molを超える場合には高粘度になるために塗装作業性が悪くなり好ましくない。
【0045】
(B)水性樹脂組成物として、好ましくはポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレン−ポリオキシエチレン(アルキレン鎖は炭素数3以上)を基本骨格とする水性樹脂組成物が挙げられる。この場合の分子量は、1000〜10000g/molが好ましく、より好ましくは1500〜8000g/molである。
【0046】
ポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレン−ポリオキシエチレンを基本骨格とする水性樹脂組成物に占めるポリエチレンオキサイドの割合は5〜80重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜50重量%である。ポリオキシエチレンの割合が5重量%未満の場合は、疎水性が高くなり、ポリオキシエチレンの鎖長が短くなるかあるいは曇点が室温付近まで低下するために実用性に欠ける。また、ポリオキシエチレンの割合が80重量%を超える場合は、親水性が高くなり、塗膜の耐水性が低下する。
【0047】
また、ポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレン−ポリオキシエチレンを基本骨格とする水性樹脂組成物を加温すると、結合した水分子が次第に脱離し、徐々に親水性が低下するため、やがて水中に溶解出来ずに析出する。このときの温度を曇点と呼ぶ。本発明において、(B)水性樹脂組成物の曇点は20℃〜90℃が好ましく、より好ましくは20℃〜50℃である。曇点が20℃未満の場合には、室温での使用が困難な上に、ポリオキシエチレン鎖が短くなり、塗料化後の安定性に欠ける傾向にある。曇点が90℃超過の場合には、ポリオキシエチレンの割合が高く、鎖長が長くなるために塗膜にした場合の耐水性が低下し易くなる。
【0048】
ポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレン−ポリオキシエチレンを基本骨格とする水性樹脂組成物として、例えば、
(株)ADEKA製のプルロニックL−31、F−38、L−42、L−43、L−44、L−61、L−62、L−63、L−64、P−65、F−68、L−72、P−75、F−77、L−81、P−84、P−85、F−87、F−88、L−92、P−94、F−98、L−101、P−103、P−104、P−105、F−108、L−121、L−122、P−123、F−127や、
三洋化成工業(株)製のニューポールPE−61、PE−62.PE−64、PE−68、PE−71、PE−74、PE−75、PE−78、PE−108、PE−128や、
第一工業製薬(株)製のエバン410、420、450、485、610、680、710、720、740、750、785、U−103、U−105、U−108や、
日油(株)製のプロノン#102、#104、#201、#202B、#204、#208、ユニルーブ70DP−600B、70DP−950B
等の市販品を使用することができる。これらのうち1種又は2種以上の(B)水性樹脂組成物を併用しても構わない。
【0049】
更に、(B)水溶性樹脂組成物として、好ましくはポリオキシアルキレン基(アルキレン基は炭素数2以上)を有するポリオルガノシロキサンを基本骨格とする水性樹脂組成物が挙げられる。ポリオキシアルキレン基(アルキレン基は炭素数2以上)を有するポリオルガノシロキサンを基本骨格とする水性樹脂組成物は、界面活性能に優れるため、少量の添加で塗膜の膜厚方向に組成傾斜した塗膜を得ることが出来る。
【0050】
ポリオキシアルキレン基(アルキレン基は炭素数2以上)を有するポリオルガノシロキサンを基本骨格とする水性樹脂組成物として、例えば、
東レ・ダウコーニング(株)製のL−7001、L−7002、L−7604、FZ−2105、FZ−2110、FZ−2123、FZ−2191、8029 ADDITIVE、8032 ADDITIVE、57 ADDITIVE、67 ADDITIVE、8616 ADDITIVEや、
信越化学工業(株)製X−22−3939A、X−22−4741、X−22−4952、X−22−4272、X−22−4515、X−22−6266、X−22−6191、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017、KF−6004や、
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製COATOSIL 1211、COATOSIL 2400、COATOSIL 2812、COATOSIL 3500、COATOSIL 3501、COATOSIL 3505、COATOSIL 3573、COATOSIL 7500、COATOSIL 7510、COATOSIL 7602、COATOSIL 7604、COATOSIL 7605、COATOSIL 7650、COATOSIL 7608、COATOSIL 77、COATOSIL 2810や、
等の市販品を使用することができる。これらのうち1種又は2種以上の(B)水性樹脂組成物を併用しても構わない。
【0051】
(B)水性樹脂組成物を含む割合は、(A)水性樹脂分散体に対して固形分基準で0.1〜15重量%が好ましく、特に好ましくは0.5〜10重量%である。(A)水性樹脂分散体に対して固形分基準で0.1重量%未満である場合は、成膜過程で(C)水分散コロイダルシリカを塗膜表面に浮上させるために十分でないために耐汚染性の効果が劣り、(A)水性樹脂分散体に対して固形分基準で15重量%超過の場合には、塗膜の耐水性が低下する。
【0052】
本発明に用いられる(C)水分散コロイダルシリカの形状としては、球状、鎖状、棒状、パールスライク状のものや異形状のものも使用することができる。水分散コロイダルシリカの形状や平均粒子径は、電子顕微鏡による観察で確認することができる。また、水分散コロイダルシリカの平均粒子径は特に限定しないが、好ましくは0.1〜100nmであり、より好ましくは4〜30nmである。水分散コロイダルシリカの平均粒子径が100nmより大きくなると、沈降し易くなるので、貯蔵安定性が低下する。一方、平均粒子径の下限を0.1nmとしたのは、現在容易に入手可能な平均粒子径を示したのであって、0.1nm未満となると非常に高価で入手困難になり使用用途が狭まってしまう。
【0053】
また、(C)水分散コロイダルシリカのpHは8.4〜11.5であることが好ましい。水分散コロイダルシリカのpHが8.4未満の場合、アルカリ性の塗料組成物では系が不安定になる。またpHが11.5超過の場合は塗料組成物中の水分散コロイダルシリカの分散安定性が劣る。
【0054】
水分散型コロイダルシリカとしては、例えば、
日産化学工業(株)製のスノーテックスST−20、ST−O、ST−C、ST−S、ST−N、ST−20L、ST−AK、ST−UP、ST−ZLや、
(株)ADEKA製のアデライトAT−20、AT−30、AT−20N、AT−30N、AT−20A、AT−20S、AT−20Q、AT−30A、AT−30S、AT−40、AT−50、AT−300や、
触媒化成工業(株)製のカタロイドS−20H、カタロイドS−30、カタロイドS−30H、カタロイドSI−500、カタロイドSN、カタロイドSAや、
日本化学工業(株)製のシリカドール30、シリカドール20、シリカドール20A、シリカドール20Bや、
クラリアントジャパン(株)製のクレボゾール30R9、クレボゾール30R50、クレボゾール50R50、
デュポン社製のルドックスHS−40、ルドックスHS−30、ルドックスLS、ルドックスSM−30、ルドックスAS、ルドックスAM
等が挙げられる。これらのうち1種又は2種以上の水分散型コロイダルシリカを併用しても構わない。
【0055】
(C)水分散コロイダルシリカを含む割合は、(A)水性樹脂分散体に対して固形分基準で0.5〜20重量%が好ましく、特に好ましくは3〜15重量%ある。(A)水性樹脂分散体に対して固形分基準で0.5重量%未満である場合は耐汚染性の効果が劣り、(A)水性樹脂分散体に対して固形分基準で20重量%超過の場合、塗膜が硬く脆くなり、更に塗膜内がポーラスになり易く耐水性が劣る傾向がある。また、(C)水分散コロイダルシリカを含む割合が、(B)水性樹脂組成物に対して固形分基準で0.5〜200重量%が好ましく、(B)水性樹脂組成物に対して固形分基準で0.5重量%未満である場合は耐汚染性の効果が劣り、(B)水性樹脂組成物に対して固形分基準で200重量%を超えると塗膜が剛直になり、耐水性が劣る。
【0056】
また、更に下記一般式(a)で表される加水分解性シランを含有すると、塗膜形成後の(C)水分散コロイダルシリカの雨水による流出が抑制されるために耐汚染性の維持性がより良好になり、更に塗膜強度が向上されて、耐久性、硬度、耐熱性が向上する。
【0057】
(R−Si−(R4−n (a)
【0058】
式(a)中、nは0〜3の整数であり、Rは水素原子、炭素数1〜16のアルキル基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、ビニル基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基、又は炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基から選ばれる。n個のRは同一であっても、異なってもよい。Rは炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基又は水酸基から選ばれる。(4−n)個のRは同一であっても、異なってもよい。
【0059】
加水分解性シランとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0060】
加水分解性シランを含む割合は、(A)水性樹脂分散体に対して固形分基準で0.05〜5重量%であることが好ましく、特に0.1〜1重量%であることが好ましい。(A)水性樹脂分散体に対して固形分基準で0.05重量%未満である場合は加水分解性シランを含むことで得られる耐汚染性の維持効果が薄れ、(A)水性樹脂分散体に対して固形分基準で5重量%を超える場合には塗料の貯蔵安定性が低下する。
【0061】
上記のように得た(A)水性樹脂分散体と(B)アミド基、アミノ基、ヒドロキシル基又はオキシアルキレン基より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する両親媒性ポリマーからなる水性樹脂組成物及び(C)水分散コロイダルシリカを含む塗料被覆組成物を基板上に塗装し、乾燥及び硬化させることで塗膜が得られる。得られた塗膜が良好な耐汚染性を発現するためには、塗膜最表面を元素分析した際に、Si換算で塗膜表面積のうち水分散コロイダルシリカが50%〜95%を占めることが好ましく、更には80〜95%であることがより好ましい。また、静的表面接触角計CA−X型(協和界面科学社製)で測定した塗膜表面の純水との接触角が、75°以下であることが塗膜の耐汚染性に優れるため好ましく、更には60°以下であることがより好ましい。
【0062】
本発明の塗膜は、建築内装材や外装材等に用いられることが好ましい。塗料被覆組成物としては、クリヤー塗料とエナメル塗料のいずれも使用することができ、一般的に使用されるベンガラ、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の着色顔料や、炭酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、アルミナ、ミョウバン、白土、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土等の体質顔料、更には、光触媒活性を有する酸化チタン、シミ止め・吸着機能を有するフライポンタイト、活性亜鉛華、珪酸マグネシウム等の機能性顔料を含有する塗料被覆組成物も使用可能である。また、増粘剤、分散剤、沈降防止剤、防カビ剤、防腐剤、紫外線吸収剤及び光安定剤等を適宜添加してもよい。
【0063】
成膜に際しては、成膜温度を下げる目的で、塗料被覆組成物中にエチレングリコールモノブチルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート等の有機溶剤(造膜助剤)を任意に添加することができる。
【0064】
塗料被覆組成物を基材に塗布する方法としては、例えば、噴霧コート法、ロールコート法、フローコート法、バーコート法、刷毛塗り法、及びディッピング法等の各種塗装方法が挙げられる。
【0065】
基材表面に塗布された塗料被覆組成物を0℃〜150℃の範囲で乾燥及び硬化させることによって塗膜が得られ、より好ましくは40℃〜100℃で強制乾燥することによって塗膜性能が得易くなる。乾燥温度が0℃未満では、水系の塗料被覆組成物が凍結するだけでなく、水分の蒸発が遅くなるため、塗膜が完全に乾燥及び硬化するのに長時間を要するため実用性に欠ける。乾燥温度が150℃より高い場合では、樹脂成分が熱分解し塗膜が黄変し易くなる。また、0℃〜60℃で塗膜を形成させた後、更に加熱して塗膜をより強靱なものとすることもできる。
【0066】
基材としては、例えば、スレート板、石膏ボード、セメントモルタル、コンクリート、金属、ガラス、陶器タイル、アスファルト、木材、防水ゴム、プラスチック、及び珪酸カルシウム基材等が挙げられる。また、これら基材は予め下塗り及び中塗り塗装等の処理が施されていても構わない。
【0067】
本発明の塗装物は、本発明の塗膜を有するものである。本発明の塗装物としては、例えば、建材、建築物内外装、窓枠、窓ガラス、構造部材、板材、乗物の外装、機械装置や物品の外装、防塵カバー、道路標識用反射板、視線誘導表示体、路面標示、道路用鏡、各種表示装置、広告塔、道路遮音壁、鉄道用遮音壁、道路化粧板、信号機用光源カバー、屋外表示板、橋梁、ガードレール、トンネル内装、トンネル内照明装置、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバービニールハウス、車両用照明灯カバー、車両用鏡、二輪車用計量カバー、ガラスレンズ、プラスチックレンズ、ゴーグル、ヘルメットシールド、家屋、自動車及び鉄道車両用窓ガラス、乗物風防ガラス、ショーケース、膜構造材、熱交換用フィン、種々場所のガラス表面、ブラインド、タイヤホイール、屋根材、屋根樋、アンテナ、送電線、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器収納器、食器洗浄機、食器乾燥機、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、鑑賞用水槽材料、循環水利用施設において循環水と接する部分の表面材料、抗血栓性材料、抗タンパク質付着材料、脂質付着防止材料、コンタクトレンズ、導尿カテーテル、経皮デバイス、人工臓器、血液パック、採血パック、肺ドレナージ、船底、テント地キャンバス、滑走具、機能性繊維、テレビ、パソコン等の表示ディスプレイ、これら物品に貼付させるフィルム等が挙げられる。
【0068】
これらの塗装物においては、塗膜形成初期から良好な親水性が付与されるため、雨水による自浄作用を発現し、優れた耐汚染性が発揮される。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準で示す。
【0070】
(水性樹脂分散体A1の製造例)
撹拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を備えた反応器中に、イオン交換水250部、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(商品名:ニューコール707SF、非反応性アニオン乳化剤、日本乳化剤(株)製)10部をそれぞれ仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら、80℃まで昇温した。
【0071】
次いで、過硫酸カリウム(重合開始剤)1.2部を加え、メタクリル酸メチル180部、アクリル酸ブチル120部、メタクリル酸シクロヘキシル92部、メタクリル酸8部、ニューコール707SF16部、水300部をディスパーで乳化攪拌して得られた乳化混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で1時間攪拌を続けながら熟成し、40℃まで冷却した後、25%アンモニア水溶液にてpH9.0に調整し、均一構造を有するエマルション粒子が分散した固形分42%の水性樹脂分散体A1を得た。
【0072】
(水性樹脂分散体A2の製造例)
攪拌装置、温度計、冷却管及び滴下装置を装備した反応器中に、イオン交換水250部、ニューコール707SF10部をそれぞれ仕込み、反応器内部を窒素で置換しながら、80℃まで昇温した。
【0073】
次いで、過硫酸カリウム(重合開始剤)1.2部を加え、メタクリル酸メチル172部、アクリル酸2−エチルヘキシル90部、メタクリル酸8部、ニューコール707SF10部、水140部からなる乳化混合液を2時間かけて滴下した。次いで、メタクリル酸メチル50部、メタクリル酸2−エチルヘキシル90部、メタクリル酸シクロヘキシル50部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM503、信越化学(株)製)10部、ニューコール707SF10部、脱イオン水140部からなる乳化混合液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃で2時間撹拌しながら熟成し、40℃まで冷却した後、25%アンモニア水溶液にてpH9.0に調整し、多段階乳化重合法による異相構造エマルション粒子が分散した固形分42%の水性樹脂分散体A2を得た。
【0074】
(水溶性樹脂組成物B1の製造例)
撹拌装置、温度計、冷却管を備えた反応器中に、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(商品名:ブレンマーPE−350、日油(株)製)75部、2−ヒドロキシエチルアクリレート15部、デシルメタクリレート10部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を仕込み、窒素で置換した後に65℃のウォーターバスで加温して4時間重合を行い、水溶性樹脂組成物B1を得た。
【0075】
(実施例1〜13及び比較例1〜5)
表1〜表2に示すように実施例1〜13及び比較例1〜5の試験塗料を作製した。脱イオン水、顔料として酸化チタン(商品名:タイペークCR−90、石原産業(株)製)、添加剤としてノニオン性界面活性剤(商品名:Disperbyk−190、ビックケミージャパン(株)製)を加えて混合した中に、(A)水性樹脂分散体、予め20重量%濃度にイオン交換水で希釈しておいた(B)水性樹脂組成物水溶液、(C)水分散コロイダルシリカ、ウレタン系増粘剤(商品名:プライマルRM−8W、ローム・アンド・ハース(株)製)、シリコーン系消泡剤(商品名:SNデフォーマー1312、サンノプコ(株)製)、エチレングリコールを添加して各塗料を作製し、以下のように各種性能評価を行った。結果を表1〜表2に示す。
【0076】
<接触角>
適当量の成膜助剤を添加した各試験塗料をガラス板に6milアプリケーターで塗布し、所定温度で2時間乾燥及び硬化した後に室温で1日養生した。協和界面科学製FACE接触角計CA−X型を使用して純水との静的接触角を測定した。
【0077】
<塗膜最表面のコロイダルシリカ占有率>
上記のように得た塗膜をOXFORDinstruments製INCA X−Sight元素分析機を装備したHITACHI製SU−70型走査型電子顕微鏡を用いて元素分析し、Si換算で塗膜最表面における表面積のコロイダルシリカ占有率を算出した。
【0078】
<耐雨筋汚染性>
白色塗料を塗装したスレート板(寸法10cm×30cm×厚さ5mm)に上記実施例1〜13及び比較例1〜5の各塗料に適宜成膜助剤を添加したものをスプレー塗装し、所定温度で2時間乾燥及び硬化させた。これを10日間養生した後に、水平面に対して10度に傾斜し、かつ長さ30cmで深さ3mmの溝が3mmピッチで刻まれた屋根を有する架台に、屋根に降った雨が塗膜の表面に筋状に流れ落ちるように南向きに垂直に取り付け、その状態で1ヶ月、6ヶ月、12ヶ月暴露した後、塗膜の外観を未試験の塗膜と比較して汚染状態を目視観察した。
[評価基準]
◎:汚れが全く付着しておらず、試験開始時と同等の状態を維持している。
○:わずかな汚れはあるが、雨筋はほとんど確認されない。
△:局所的な汚れがあり、雨筋がうっすらと確認される。
×:全面にかなりの汚れがあり、雨筋がしっかりと確認される。
【0079】
<耐水性>
適当量の成膜助剤を添加した各試験塗料をガラス板上に6milアプリケーターで塗装し、所定温度で2時間乾燥及び硬化させた後、室温で一日養生した。その後、試験板を23℃の水に1週間浸漬し、乾燥後の塗膜の白化度合いを目視で判定した。
[評価基準]
◎:塗膜の変色が全くない。
○:塗膜の変色がほとんどない、若しくは、やや青みがかった透明である。
△:塗膜が局所的に白化している。
×:塗膜が全体に白化している。
【0080】
<耐温水白化性>
上記各試験塗料から顔料を除いたクリヤー塗料を作製し、適当量の成膜助剤を添加した各試験塗料を黒板上に6milアプリケーターで塗装し、所定温度で2時間乾燥及び硬化させた後、室温で一日養生した。その後、試験板を60℃温水に24時間浸し、乾燥後の塗膜の白化度合いを目視で判定した。
[評価基準]
◎:塗膜の変色が全くない。
○:塗膜の変色がない、若しくは、やや青みがかった透明である。
△:塗膜が局所的に白化している。
×:塗膜が全体に白化している。
【0081】
<溶出性>
各試験塗料をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)板に6milアプリケーターで塗装し、所定温度で2時間乾燥及び硬化させた後に室温で1日養生した。作製した膜を剥がして、10cm×10cmの正方形に裁断し膜重量を測定した後に23℃のイオン交換水に24時間浸漬した。取り出した膜を23℃で減圧乾燥し、下記一般式にて塗膜からの水への溶出率を算出した;
溶出率(%)={1−(浸漬後の皮膜絶乾重量)/(浸漬前の皮膜絶乾重量)}×100
[評価基準]
◎:溶出率1%未満(塗膜の劣化が全くなく、試験開始時の状態が維持されている)
○:溶出率1%以上2%未満(塗膜の劣化がほとんどなく、艶も維持されている)
△:溶出率2%以上5%未満(塗膜表面が若干洗い流され、艶が一部低下する)
×:溶出率5%以上(塗膜表面が脆弱化し、艶が全体的に低下する)
【0082】
<貯蔵安定性>
上記実施例1〜13及び比較例1〜5の各塗料を各々100mlガラス製サンプル瓶に入れ、密栓した状態で50℃恒温室に1ヶ月間貯蔵し、その状態を以下のように評価した。
[評価基準]
○:試験前と同じ状態であり、変化なし。
△:目視で沈殿物は確認されないが、塗装したときの外観に差を生じる。
×:目視で沈殿物が確認された。
【0083】
<リコート性>
適当量の成膜助剤を添加した各試験塗料をガラス板に6milアプリケーターで塗布し、所定温度で2時間乾燥及び硬化した後、室温で1日養生した。作製した塗膜上に再度同様の工程を実施した。
【0084】
次いで、JIS−K−5600−5−6(1999)付着性(クロスカット法)に準じて、試験塗板の塗膜面に2mm×2mmのマス目を25個作製し、塗膜のクロスカット部表面に粘着テープを貼着し、急激に剥がした後のマス目部の塗膜の状態を目視評価した。
[評価基準]
◎:全く剥離が認められない。
○:10%未満の剥離が認められる。
△:10%以上20%未満の剥離が認められる。
×:20%以上の剥離が認められる。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

*1 三井武田ケミカル(株)製ウレタンディスパージョン、NV35%
*2 BASFジャパン(株)製水溶性樹脂、NV77%
*3 日本触媒製ポリビニルピロリドン,平均分子量80000〜120000
*4 (株)ADEKA製(ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド),平均分子量2900,EO40%、曇点58℃
*5 信越化学工業(株)製ポリエーテル変性シリコーンオイル
*6 日油(株)製ポリエチレングリコール、平均分子量300
*7 球状コロイダルシリカ、日産化学工業(株)製、固形分SiO:20%、粒子径:10〜20nm、pH9.5〜10.0、Na安定型
*8 酸化チタン、石原産業(株)製
*9ノニオン性界面活性剤、ビックケミージャパン(株)製
*10 ウレタン系増粘剤、ローム・アンド・ハース(株)製
*11 シリコーン系消泡剤、サンノプコ(株)製
【0087】
表1〜表2から明らかな通り、本発明の塗膜製造方法により得られた塗膜は、耐汚染性とその維持性に優れ、耐水性、耐温水白化性、リコート性も良好であった。これに対して、比較例1の一般的なアクリルエマルションのみの塗膜は接触角が高く、濡れ性が悪いために汚染が付着し易く、最も雨筋汚染性、リコート性に劣っていた。比較例2の(C)水分散コロイダルシリカを含有しない場合、耐雨筋汚染性、耐温水白化性、溶出性に劣っていた。比較例3の(B)水性樹脂組成物を含有しない場合や、(B)水性樹脂組成物の代わりにポリオキシエチレン基を有するが低分子量物質を配合した比較例4においては、塗膜表面積に占めるコロイダルシリカの割合が低いため濡れ性が向上せず、雨筋汚染性が劣っていた。比較例5の(A)水性樹脂分散体の代わりに水溶解性樹脂を使用した場合では、雨筋汚染性の維持性、耐水性、耐温水白化性、溶出性が劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水性樹脂分散体、
(B)アミド基、アミノ基、ヒドロキシル基又はオキシアルキレン基より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する両親媒性ポリマーを有する水性樹脂組成物及び
(C)水分散コロイダルシリカ
を含む塗料被覆組成物を塗布し、乾燥及び硬化させることを特徴とする塗膜。
【請求項2】
上記(B)の両親媒性ポリマーが、ポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレン−ポリオキシエチレン(アルキレン鎖は炭素数3以上)を基本骨格とするもの、ポリオキシアルキレン基(アルキレン基は炭素数2以上)を有するポリオルガノシロキサンを基本骨格とするもの、ポリビニルピロリドン、ポリN−イソプロピルアクリルアミド又はヒドロキシプロピルセルロースである請求項1に記載の塗膜。
【請求項3】
上記(A)水性樹脂分散体が、α,β−エチレン性不飽和単量体を重合して得られるエマルジョンである請求項1又は2に記載の塗膜。
【請求項4】
上記塗膜の膜厚方向に組成傾斜層を形成した請求項1〜3のいずれかに記載の塗膜。
【請求項5】
塗膜最表面を元素分析した際に、Si換算で塗膜表面積の50〜95%を(C)水分散コロイダルシリカが占める請求項1〜4のいずれかに記載の塗膜。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の塗膜を有することを特徴とする塗装物。
【請求項7】
(A)水性樹脂分散体、
(B)アミド基、アミノ基、ヒドロキシル基又はオキシアルキレン基より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する両親媒性ポリマーを有する水性樹脂組成物及び
(C)水分散コロイダルシリカ
を含む塗料被覆組成物を塗布する工程と、
塗布した該塗料被覆組成物を乾燥及び硬化させる工程
とを有することを特徴とする塗膜の製造方法。
【請求項8】
上記(B)の両親媒性ポリマーが、ポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレン−ポリオキシエチレン(アルキレン鎖は炭素数3以上)を基本骨格とするもの、ポリオキシアルキレン基(アルキレン基は炭素数2以上)を有するポリオルガノシロキサンを基本骨格とするもの、ポリビニルピロリドン、ポリN−イソプロピルアクリルアミド又はヒドロキシプロピルセルロースである請求項7に記載の塗膜の製造方法。
【請求項9】
上記(A)水性樹脂分散体が、α,β−エチレン性不飽和単量体を重合して得られるエマルジョンである請求項7又は8に記載の塗膜の製造方法。
【請求項10】
上記塗膜の膜厚方向に組成傾斜層を形成する請求項7〜9のいずれかに記載の塗膜の製造方法。
【請求項11】
塗膜最表面を元素分析した際に、Si換算で塗膜表面積の50〜95%を(C)水分散コロイダルシリカが占める請求項7〜10のいずれかに記載の塗膜の製造方法。
【請求項12】
上記塗料被覆組成物を乾燥及び硬化させる温度が0〜150℃である請求項7〜11のいずれかに記載の塗膜の製造方法。

【公開番号】特開2011−189273(P2011−189273A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57574(P2010−57574)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】