説明

塗装機用ピストンパッキン

【課題】 ピストンの直線往復運動によるねじれを防止することができる。
【解決手段】 直線往復運動するピストンPの外周面Qに設けられた凹周溝Gに装着される環状の塗装機用ピストンパッキンに於て、横断面形状は、凹周溝Gの底面G1 に対応する内周面部2が直線状のストレート部3を有する。横断面形状の幅寸法Wと高さ寸法Hを、W/4≦H≦3Wとなるように設定する。横断面形状に於て、外周面部4が凸曲面部5を有し、凸曲面部5の曲率半径Rと、幅寸法Wを、W/5≦R≦2Wとなるように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装機用ピストンパッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、塗装機用ピストンパッキンとしては、Oリングが用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、潤滑膜が形成されない状態で使用されるので、従来のOリングでは、ピストンの直線往復運動によってねじれが発生していた。Oリングのねじれはリーク量の急増や偏摩耗・切断につながるものであり、この現象によって塗料と溶剤の混ざり合いや機器の作動不良といった不具合を引き起こしていた。また、このようなOリングのねじれは不定期に発生するので、突発的あるいは過剰な頻度でOリングを交換する必要があり、メンテナンスに多大なコストを費やしていた。
【特許文献1】特開平11−128784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、塗装機用ピストンパッキンに於て、ピストンの直線往復運動によってねじれが発生し、リーク量の急増や偏摩耗・切断につながる点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明に係る塗装機用ピストンパッキンは、直線往復運動するピストンの外周面に設けられた凹周溝に装着される環状の塗装機用ピストンパッキンに於て、横断面形状は、上記凹周溝の底面に対応する内周面部が直線状のストレート部を有するものである。
【0006】
また、横断面形状の幅寸法Wと高さ寸法Hを、W/4≦H≦3Wとなるように設定したものである。
また、横断面形状に於て、外周面部が1個乃至2個の凸曲面部を有し、該凸曲面部の曲率半径と、幅寸法を、W/5≦R≦2Wとなるように設定したものである。
また、横断面形状に於て、外周面部が頂部から左右にしだいに降下する勾配直線部を有する三角山型であり、かつ、上記頂部が凸曲面部を有し、該凸曲面部の曲率半径と、全体の幅寸法を、W/5≦R≦2Wとなるように設定した。
また、横断面形状の上記ストレート部の幅寸法が、上記凹周溝の幅寸法に対して、 0.6Wg≦W3 ≦0.95Wgに設定されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の塗装機用ピストンパッキンによれば、ストレート部が凹周溝の底面に常に密に接触して、ピストンの直線往復運動によるねじれを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明の第1の実施の形態の使用状態を示す。この塗装機用ピストンパッキン1は、耐溶剤性を有するふっ素ゴムやパーフロロエラストマー等の弾性体から成る。ピストンパッキン1は、環状であって、(図1の左右方向に)直線往復運動するピストンPの外周面Qに設けられた凹周溝Gに装着される。Aは溶剤系塗料又は水系塗料が充填される塗料室(第1ピストン室)を示す。Bは酢酸ブチル、キシレン等の溶剤が充填される溶剤室(第2ピストン室)を示す。対象物(図示省略)の塗装時には第2ピストン室B内の溶剤に圧力が付加されることによってピストンPが左方向に移動して第1ピストン室A内の塗料が吐出される。塗料室が空になると吐出・吸入口Eより新しい塗料が充填され、ピストンPは右方向に移動する。塗装機用ピストンパッキン1は、ピストンPを移動させる作動圧確保と流体同士の混入防止の目的で装着されている。ピストンPはモーターまたは空気圧で移動させる場合もある。
【0009】
図2の要部拡大断面図に示すように、ピストンパッキン1の横断面形状は、ピストンPの凹周溝Gの底面G1 に対応する内周面部2が直線状のストレート部3を有している。ストレート部3の幅寸法W3 を全体の幅寸法Wの60%〜 100%に設定するが、図2ではW3 =Wである。
横断面形状の幅寸法Wと高さ寸法Hは、W/4≦H≦3Wとなるように設定されている。H<W/4の場合、弾性反発力が小さくなる虞れがある。3W<Hの場合、ピストンパッキン1を凹周溝Gに装着するときに大きな力を要する。
【0010】
横断面形状に於て、外周面部4が1個の凸曲面部5を有し、凸曲面部5の曲率半径Rと、幅寸法Wは、W/5≦R≦2Wとなるように設定されている。R<W/5の場合、ピストンPが直線往復運動する時に、無理な力が加わって外周面部4が摩耗しやすくなる虞れがある。2W<Rの場合、弾性反発力が過剰に分散し、シリンダチューブ11の内周面12への接触面積が過小となって、シール性が悪くなる虞れがある。
【0011】
横断面形状のストレート部3の幅寸法W3 は、凹周溝Gの幅寸法Wgに対して、 0.6Wg≦W3 ≦0.95Wgに設定する。W3 < 0.6Wgでは、凹周溝G内で不安定となる傾向があり、逆に、0.95Wg<W3 では、装着が困難となる傾向がある。
また、具体的には、上記幅寸法W3 は、 0.5mm≦W3 ≦10mmに設定されている。W3 < 0.5mmの場合、シール効果が小さくなり、流体(塗料、溶剤)が漏れる虞れがある。10mm<W3 の場合、ピストンパッキン1を凹周溝Gに装着する時に、大きな力を要する。
【0012】
図3は、第2の実施の形態を示す。横断面形状に於て、外周面部4が両角肩部に2個の凸曲面部5,5を有し、凸曲面部5の曲率半径Rと、幅寸法Wは、W/5≦R≦2Wとなるように設定されている。このように、外周面部4は、中央の直線状フラット部14と、両端の凸曲面部5,5とから成る。
【0013】
図4は、第3の実施の形態を示す。横断面形状に於て、側面部6が側面凸曲面部13を有し、外周面部4に直線状フラット部14を有している。外周面部4は、従って、上記側面凸曲面部13の一部をもって構成された凸曲面部5,5と、フラット部14と、から成る。
図5は、第4の実施の形態を示す。内周面部2の両角部に勾配面部7,7を有する。図4又は図5に於て、W×60%≦W3 ≦W×95%とするのが望ましい。
【0014】
図6は、第5の実施の形態を示す。外周面部4が勾配面部7,7を有し、両流れ屋根型(三角山型)に形成されている。
図7は、第6の実施の形態を示す。外周面部4及び側面部6に横断面形状が小半円山型の小突隆部8を有する。外周面部4の小突隆部8は、(図1に示した)シリンダチューブ11の内周面12に対して適度に高い面圧にて接触して、摺動摩擦抵抗が小さく、優れた密封性と耐久性を発揮する。
図8は、第7の実施の形態を示す。この図8に示すように、横断面形状に於て、外周面部4が頂部15から左右にしだいに降下する勾配直線部7,7を有し、三角山型(両流れ屋根型)であり、さらに、頂部15が曲率半径Rの凸曲面部5を有する。この凸曲面部15の曲率半径Rと、全体の幅寸法Wとの間に次の関係式が成立する。つまり、W/5≦R≦2Wが成立する。R<W/5の場合、ピストンPが直線往復運動する時に、無理な力が加わって外周面部4が摩耗しやすくなる虞れがある。2W<Rの場合、弾性反発力が過剰に分散し、シリンダチューブ11の内周面12への接触面積が過小となって、シール性が悪くなる虞れがある。このように、(図1の)シリンダチューブ11の内周面に対して適度の高い面圧にて接触して、摺動摩擦抵抗が小さく、優れた密封性と耐久性を発揮する。
【0015】
なお、本発明は、上述の図示の実施の形態に限定されず、設計変更可能であって、例えば、第1の実施の形態から第7の実施の形態の各々の内周面部2、外周面部4、側面部6のいずれかの形状を組み合わせたものとするも良い。また、外周面部4のみ又は側面部6のみが小突隆部8を有するも良いと共に、外周面部4又は側面部6に、複数個(2個以上)の小突隆部8…を配設しても、自由である。
【0016】
以上のように、本発明は、直線往復運動するピストンPの外周面Qに設けられた凹周溝Gに装着される環状の塗装機用ピストンパッキンに於て、横断面形状は、凹周溝Gの底面G1 に対応する内周面部2が直線状のストレート部3を有しているので、ピストンの直線往復運動によるねじれを防止することができる。従来のOリングよりも長期にわたって安定したシール性能を発揮する。例えば、従来のOリングの数倍から数十倍の耐久性を有する。そして、塗装品質が向上するとともに、メンテナンスコストを大幅に削減することができる。
【0017】
また、横断面形状の幅寸法Wと高さ寸法Hを、W/4≦H≦3Wとなるように設定したので、容易にピストンパッキン1を凹周溝Gに装着することができるとともに、適切なシール効果を得ることができる。
また、横断面形状に於て、外周面部4が1個乃至2個の凸曲面部5を有し、凸曲面部5の曲率半径Rと、幅寸法Wを、W/5≦R≦2Wとなるように設定したので、弾性反発力が適度に分散されて、シール性が良い。
また、横断面形状に於て、外周面部4が頂部15から左右にしだいに降下する勾配直線部7,7を有する三角山型であり、かつ、上記頂部15が凸曲面部5を有し、該凸曲面部5の曲率半径Rと、全体の幅寸法Wを、W/5≦R≦2Wとなるように設定したので、弾性反発力が適度に頂部15からシリンダチューブ内面に作用して、優れたシール性(密封性)を発揮する。
また、横断面形状の上記ストレート部3の幅寸法W3 が、上記凹周溝Gの幅寸法Wgに対して、 0.6Wg≦W3 ≦0.95Wgに設定されているので、容易にピストンパッキン1を凹周溝Gに装着することができるとともに、適切なシール効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態の使用状態を示す断面正面図である。
【図2】要部拡大断面図である。
【図3】第2の実施の形態を示す要部断面図である。
【図4】第3の実施の形態を示す要部断面図である。
【図5】第4の実施の形態を示す要部断面図である。
【図6】第5の実施の形態を示す要部断面図である。
【図7】第6の実施の形態を示す要部断面図である。
【図8】第7の実施の形態を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0019】
2 内周面部
3 ストレート部
4 外周面部
5 凸曲面部
7 勾配直線部(勾配面部)
15 頂部
G 凹周溝
1 底面
H 高さ寸法
P ピストン
Q 外周面
R 曲率半径
W 幅寸法
Wg 幅寸法
3 幅寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線往復運動するピストン(P)の外周面(Q)に設けられた凹周溝(G)に装着される環状の塗装機用ピストンパッキンに於て、横断面形状は、上記凹周溝(G)の底面(G1 )に対応する内周面部(2)が直線状のストレート部(3)を有することを特徴とする塗装機用ピストンパッキン。
【請求項2】
横断面形状の幅寸法(W)と高さ寸法(H)を、W/4≦H≦3Wとなるように設定した請求項1記載の塗装機用ピストンパッキン。
【請求項3】
横断面形状に於て、外周面部(4)が1個乃至2個の凸曲面部(5)を有し、該凸曲面部(5)の曲率半径(R)と、幅寸法(W)を、W/5≦R≦2Wとなるように設定した請求項1又は2記載の塗装機用ピストンパッキン。
【請求項4】
横断面形状に於て、外周面部(4)が頂部(15)から左右にしだいに降下する勾配直線部 (7)(7) を有する三角山型であり、かつ、上記頂部(15)が凸曲面部(5)を有し、該凸曲面部(5)の曲率半径(R)と、全体の幅寸法(W)を、W/5≦R≦2Wとなるように設定した請求項1又は2記載の塗装機用ピストンパッキン。
【請求項5】
横断面形状の上記ストレート部(3)の幅寸法(W3 )が、上記凹周溝(G)の幅寸法(Wg)に対して、 0.6Wg≦W3 ≦0.95Wgに設定された請求項1,2,3又は4記載の塗装機用ピストンパッキン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−316947(P2006−316947A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142107(P2005−142107)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】