説明

塗装装置および塗装装置の作動方法

本発明は、塗装要素と内蔵型色替バルブ部3によって塗装材料を塗るための噴霧器1と、異なる色の塗装材料を選択するためのいくつかの色導入口4〜7を有する前記バルブ部からなる、特に自動車の車体を塗装するための塗装装置に関する。内蔵型色替バルブ部3は、選択された塗装材料を塗装要素2に供給するために、噴霧器1と一体化され、その吐出口側で塗装要素2に接続される。本発明は、異なる色の塗装材料を選択するためのいくつかの色導入口を備える外装型色替バルブ部14も含んでおり、前記外装型色替部14は、選択した塗装剤を塗装要素2に供給するために、噴霧器1と別体化された構造を有し、その吐出口側で塗装要素2に接続される。本発明は、その作動方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装装置、特に自動車の車体を塗装する塗装装置および従属請求項のおいて書に記載されたような塗装装置の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大量の自動車の車体を塗装する現代の塗装システムでは、一般に、塗料導入口を1個のみ備える噴霧器(例えば、高速回転噴霧器)を使って塗装を行う。この噴霧器の導入口には、別体にされた色替器が接続されているので、1台の噴霧器で多数の色の塗料を塗布することができる。前記色替器と前記噴霧器の間の配管の全ての経路は、塗料の色を替える際に、前記配管内に残留する塗料を取り除くために、洗浄しなければならない。このため、第1に、25〜70ml程度(実施形態による)の色替損失が生じる。この色替損失は、時として、100mlを超えることもある。また、第2に、色替えには8〜20秒の時間を必要とするので煩わしい。しかも、色替えに要する時間は13〜15秒になるのが普通である。この色替えに要する時間は、使用する塗料や洗浄剤の洗浄性能、媒体の圧力、塗料を扱う部材の構造や塗装装置における部品の位置に応じて変動する。
【0003】
例えば、特許文献1にあるように、一体型色替器(Integrated Colour Changer;ICC)を備える噴霧器も知られている。この一体型色替器を備える公知の噴霧器の利点は、前記一体型色替器と塗装要素(例えばベルプレート)の間の配管経路の体積が小さいところにある。この利点によって、色替損失を低減し、色替時間を短縮できるので、都合がよい。しかしながら、噴霧器中の色替器の取り付けに使える空間は限られているので、この一体型色替器を備える公知の噴霧器には、利用できる色の数が制限されるという不都合がある。
【0004】
特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献1、特許文献5、特許文献6、特許文献7、非特許文献1、非特許文献2、特許文献8、特許文献9および特許文献10にあるように、内蔵型または外装型色替器をさまざまに備える異なる塗装システムが知られている。しかしながら、外装型色替器は塗料吐出口を1個だけしか有しておらず、A/B色替器として設計されていない。したがって、外装型色替器を通って低消費色が供給される場合、ある低消費色を別の低消費色に替えるときに、色替時間が長くなるという課題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1502658号明細書
【特許文献2】独国特許第69722155号明細書
【特許文献3】独国特許第69622407号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第10342643号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第10157966号明細書
【特許文献6】国際公開第2006/004601号パンフレット
【特許文献7】独国特許出願公開第10335358号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第102004038017号明細書
【特許文献9】独国特許出願公開第102004033619号明細書
【特許文献10】独国特許出願公開第3641416号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】リチャード・レイブル(Richard Laible)博士著,”工業塗装の環境配慮型システム”,1989年エーニンゲン(Ehningen)にある専門出版社刊、55頁
【非特許文献2】ヨアキム・ドミニク(Joachim Domnick)著,”過剰噴霧を低減する塗料噴霧システム”,1997年1月刊行の金属表面、43〜45頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、特に自動車の車体と付属品を塗装するのに適するとともに、それに応じて改善された塗装装置を製造する課題に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、従属請求項に記載された、塗装装置とその操作方法によって解決される。
【0009】
本発明は、噴霧器と一体化された内蔵型色替バルブ部と、噴霧器と構造的に別体化され、A色からB色への色替器として設計されると好ましい外装型色替バルブ部の両方が、塗装装置に設けられるという技術常識を包含している。
【0010】
さて、一体型色替バルブ部を用いて色を替えれば、色替時間と色替損失が大幅に低減されるので、噴霧器と一体化された色替バルブ部は、使用頻度の高い色(高消費色)用に用いられるとよい。
【0011】
一方で、外装型色替バルブ部と塗装要素の間の配管経路が長いため、外装型色替バルブ部を用いた色替えでは、膨大な色替損失がもたらされるとともに、色替時間が長くなるので、別体化された外装型色替バルブ部は、使用頻度の低い色(低消費色)用に用いられるとよい。前記システムの平均的な塗料の消費量/損失は、高消費色と低消費色の組み合わせによって、明らかに低減される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、前記噴霧器は、内蔵型色替バルブ部の塗料導入口に加えて、外装型色替バルブ部が結合される少なくとも1個の追加の塗料導入口を有する。
【0013】
もっとも、これに代えて、外装型色替バルブ部と内蔵型色替バルブ部が直列になって、外装型色替バルブ部が、内蔵型色替バルブ部の塗料導入口に塗料を供給することもできる。
【0014】
好ましい実施形態では、外装型色替バルブ部は、分離していて洗浄可能な2個の塗料吐出口を備えるA/B色替器として設計される。したがって、前記噴霧器は、内蔵型色替バルブ部の塗料導入口に加えて、外装型色替バルブ部の塗料吐出口の両方が接続されている、少なくとも2つの対応する追加の塗料導入口を有する。外装型色替バルブ部の場合、分離していて洗浄可能な2個の外装型色替バルブ部の塗料吐出口によって、色替損失と色替時間も最小になり、上述したICCの水準にまで達する。
【0015】
他方のチャンネルでの塗装工程の間に、一方のチャンネルで洗浄サイクル(例えば、加圧下で空にするステップ、洗浄するステップ、次のコーティング剤を充填または加圧供給するステップ、再循環配管での圧縮ステップからなる、換言すればスラッジ−シンナー(sludge−thinner)再循環)を許可するように、少なくとも1個の再循環バルブがここに備えられる。A/B色替器として設計される外装型色替バルブ部の実施形態では、2個の再循環バルブが備えられると好ましく、前記2個の再循環バルブによって、外装型色替バルブ部のそれぞれの塗料吐出口への再循環が容易になるので、洗浄サイクルが容易になる。再循環バルブは、噴霧器内または噴霧器の外部に設置されてもよい。再循環バルブを噴霧器内に設置することにより、噴霧器内部を洗浄することが容易になる一方で、再循環バルブが噴霧器の外部にある場合には、外部に配置された再循環バルブまで、洗浄されるだけである。
【0016】
もっとも、外装型色替バルブ部が塗料吐出口を1つだけ有するという代替の可能性もある。この代替の可能性は、投資費用の削減、装置スペースの省力化、軽量化という恩恵をもたらす。この変形では、高消費色と低消費色が交互に塗られると好ましいので、内蔵型色替バルブには、高消費色を塗る間に、外装型色替バルブ部を洗浄し、加圧下で前記外装型色替バルブ部に次の低消費色を充填するための十分な時間がある。
【0017】
噴霧器と一体化される色替バルブ部は、第1の計量装置によって、異なる色の塗装材料を供給されると好ましい。また、前記色替バルブ部は、噴霧器と構造的に別体化されているとよい。
【0018】
塗装ロボットでは、第1の計量装置が、一般に”アーム1”と呼ばれる、そのロボットの上腕に取り付けられるとよい。もっとも、これに代えて、噴霧器と一体化された色替バルブ部用の第1の計量装置が、一般に”アーム2”と呼ばれる、そのロボットの下腕に設置されることもできる。
【0019】
さらに、噴霧器と一体化された色替バルブ部用の第1の計量装置は、塗装ロボットのフレーム部に取り付けられている。前記フレーム部は、経路(軸7)に沿って可動でき、ピボット(軸1)を有しており、Z軸周りに回転できる。一体型色替バルブ用の第1の計量装置は、塗装室の内部または外部に静的に取り付けられてもよいが、このように取り付けることは、多くの場合、より困難である。
【0020】
さらに、外装型色替バルブ部は、一般に、第2の計量装置によって供給される。前記外装型色替バルブ部は、従来の構成であってもよいので、より詳細には記載しない。
【0021】
外装型色替バルブ部および/またはそれに割り当てられる第2の計量装置は、塗装ロボットのいわゆる”アーム1”または”アーム2”に取り付けられてもよい。したがって、前述の部品は、噴霧器の近接領域、好ましくは”アーム2”に取り付けられるとよい。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、第1の計量装置および/または第2の計量装置は、先行技術、例えば、独国特許第60009577号明細書から知られる歯車ポンプの形態を有している。
【0023】
歯車ポンプは、複数のポンプ室を有すると好ましく、前記各ポンプ室には、回転自在に取り付けられた内蔵型の歯車対が備えられている。各ポンプ室は、噴霧器の1つの塗料導入口に塗装剤をそれぞれ供給する。さらに、歯車ポンプは、各歯車ポンプを駆動するために、上述の公知の歯車ポンプの事例にはない共通の駆動軸を有してもよい。複数のポンプ室を備える本発明の歯車ポンプの構造は、独立した保護に値するので、前述の本発明の塗装装置の特徴を備えていない場合でも、本出願がこの歯車ポンプの設計を保護することを目的としてもよい。
【0024】
単一のモーターによる駆動を容易にして、歯車ポンプの各ポンプ室で各歯車を駆動するために、本発明のギアポンプは、共通の駆動シャフトを有しても都合がよい。
【0025】
また、前記歯車ポンプは、駆動軸を各歯車対に選択的に噛み合わせるのを許可するように、複数のクラッチを有すると都合がよい。したがって、各クラッチは、それぞれの歯車対を駆動軸に噛み合わせたり、駆動軸から解放したりできる。
【0026】
本発明の歯車ポンプにおいて、各ポンプ室は、歯車ポンプをコンパクトに設計することが容易になるので、駆動軸の軸方向で一列になることが好ましい。そして、隣接するポンプ室が、共通の室壁を有することができれば、歯車ポンプの大きさを出来るだけ小さくできる。
【0027】
本発明の噴霧器が、互いに分離可能に結合された2個のサブアセンブリー(sub−assembly)を有することも本発明の範囲内で可能である。そして、噴霧器の第1のサブアセンブリーが内蔵型色替バルブ部を含んでいると好ましい一方で、噴霧器の第2のサブアセンブリーは、塗装要素(ベルプレートなど)、および/または、メインニードルバルブを含んでいる。これにより、噴霧器の両サブアセンブリーが、ほんのいくつかの配管によって互いに結合されているので、2つのサブアセンブリーを分離する場合、軽微な汚染しかおこらないという利点がもたらされる。一方で、2つのサブアセンブリー間の境界線が内蔵型色替バルブ部の上方に布設されていれば、前記境界線は、噴霧器の2つのサブアセンブリーを分離したならば、重大な汚染をもたらすことになる数多くの塗料配管によって、交差されるであろう。
【0028】
前述の説明から、内蔵型色替バルブ部が、ベルプレートとメインニードルバルブのように、必ずしも噴霧器の同一のサブアセンブリーに配置されることを要しないということも明らかになる。一方で、内蔵型色替バルブ部は、噴霧器の別のサブアセンブリー、例えば、フランジ部、マニホールドまたは肘部に、本発明の範囲内において配置されてもよい。
【0029】
”噴霧器”の概念は、例えば、ベル状または円盤状噴霧器の形態である回転噴霧器、超音波噴霧器、空気噴霧器、エアレス装置または空気混合装置を含む一般的な用語で解釈されるべきであるということであることも言及されねばならない。同様に、塗装要素は、本発明の範囲内で、ベルプレート、回転ディスクまたは単なるノズルであってもよい。
【0030】
本発明の塗装装置は、水を基材とする塗料または溶剤を基材とする塗料、PVCなどの接合シール剤または粉末ラッカーを塗布できるので、本発明が塗布される塗装剤の種類に関して限定されないことも言及されねばならない。
【0031】
例えば、塗料は、フィラー、ベースコートまたは透明ニスであってもよい。
【0032】
本発明のその他の有利な実施形態は、従属項の記載を特徴とし、以下の図面に基づく好ましい実施形態の記述から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】一体型色替器と追加の別体化された色切換器を有する噴霧器を備える本発明の塗装装置の概略図である。
【図2】図1に係る塗装装置の変形例である。
【図3】図1に示した塗装装置を備える本発明の塗装ロボットの斜視図である。
【図4】塗料吐出口を1つだけ有する外装型色替器を備える図2に係る実施形態の修正例である。
【図5】図4に係る実施形態の作動を示すフローチャートである。
【図6A】高消費色または低消費色を供給するために用いられる従来の設計の歯車ポンプである。
【図6B】複数のポンプ室と、その中に設置される歯車対と、歯車対を駆動する共通の駆動軸を備える新規な設計の歯車ポンプである。
【図7】図6Bに係る歯車ポンプの断面斜視図である。
【図8】図7の歯車ポンプの斜視図である。
【図9】図7および図8に係る歯車ポンプ全体の縦断面である。
【図10】図7乃至図9に係る歯車ポンプの横断面である。
【図11】内蔵型色替バルブ部を備える本発明の噴霧器全体の横断面である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、大量の自動車の車体と付属品を塗装するのに用いられる本発明の塗装システムの概略図である。
【0035】
この目的のため、本発明の塗装装置は噴霧器1を有しており、この実施形態では、前記噴霧器1は、高速回転式噴霧器の形態を有するとともに、塗装要素としてベルプレート2を有している。
【0036】
噴霧器1は、高消費色(high runners)を供給するために、4つの塗料バルブF1,F2,F3,F4を備える一体型色替バルブ部3を有する。一体型色替バルブ部3の塗料バルブF1〜F4は、塗料導入口4〜7にそれぞれ接続されており、塗料導入口4〜7は、噴霧器1の接続フランジで利用可能になっている。
【0037】
計量装置8は、一体型色替バルブ部3の塗料導入口4〜7に接続され、構造的に噴霧器1と別体化されるとともに、塗料導入口4〜7のそれぞれについて、体積計量ポンプ9〜12と、共通の駆動モーター13を有する。
【0038】
一体型色替バルブ部3では、一体型色替バルブ部3とベルプレート2の間の配管経路が短いために、色替損失が少なくなるとともに、色替に要する時間が短いので、高消費色が、計量装置8に供給される。
【0039】
そのため、内蔵型色替バルブ部3は、図中に線図形式でのみ示されている共通のメインニードルバルブHNを通って、ベルプレート2に接続されている。
【0040】
また、短い洗浄バルブKSは、メインニードルバルブHNとベルプレート2の間の分岐上にあり、噴霧器1の接続フランジ上で洗浄接続部Vまで続いている。ベルプレート2は、洗浄接続部Vと短い洗浄バルブKSを通って、公知の洗浄剤で洗浄される。
【0041】
また、一体型色替バルブ部3の吐出口とメインニードルバルブHNの導入口にある共通の節点は、パルス空気バルブPLを通る噴霧器1の接続フランジ上に備えられるパルス空気接続部に接続されている。噴霧器1の配管経路は、パルス空気バルブPLを介してパルス空気により清掃されるが、それ自体は公知である。
【0042】
洗浄剤バルブVVも、色替バルブ部3とメインニードルバルブHNの共通の節点から分岐し、噴霧器1の接続フランジ上で洗浄接続部Vまで続いているので、洗浄剤バルブVVを通じて従来の溶媒洗浄が可能である。
【0043】
噴霧器1と一体化される色替バルブ部に加えて、本発明のコーティングシステムは、例えば、欧州特許出願公開第1502657号明細書に記載されるように、構造的に噴霧器と別体化されるとともに、従来の形態を有してもよい別体化された色替バルブ部14を有する。外装型色替バルブ部14が、A/B色替器として設計されるとともに、分離していて洗浄可能な2個の塗料吐出口を有することだけが、ここで言及を要することである。このことは、色替時間と色替損失が低減されることを意味している。
【0044】
吐出口側では、外装型色替バルブ部14は、計量装置15に接続されており、計量装置15は、外装型色替バルブ部14の2個の塗料吐出口のそれぞれに体積計量ポンプ16,17を有している。2個の計量ポンプ16,17は、駆動モーター18,19によって、互いに独立して駆動される。
【0045】
一体型色替バルブ部3用の塗料導入口4〜7に加えて、噴霧器1は、2個の分離した塗料導入路20,21を有しており、塗料導入路20,21は、噴霧器1を計量装置15に接続するために、別個に作動可能な塗料バルブFA,FBを通って、メインニードルバルブHNに接続される。
【0046】
外装型色替バルブ部14には、低消費色が供給されるので、色替時間の長期化と色替損失の増加が、重大な問題にはならない。
【0047】
再循環バルブRA,RBは、外装型色替バルブ部14用の追加の塗料導入路20,21の分岐上にあり、2個の再循環バルブRA,RBは、この実施形態において、噴霧器1と構造的に一体化されている。このようにして、塗料導入路20,21は、噴霧器1まで流すことができる。
【0048】
高消費色が総容量の65%を占め、色替損失が外装型色替バルブ部で49mlに、内蔵型色替バルブ部14で5mlに達する場合、前述の本発明の塗装装置は、平均的な色替損失を49mlから20.4mlまで減ずることを促進する。これは、28.6mlの節約に対応している。
【0049】
図2は、図1の実施形態の軽微な変形を示しているので、繰り返しを避けるために、共通する構成要素には、同一の参照番号を付している。
【0050】
この実施形態は、再循環バルブRA,RBの両方が、噴霧器1の外部に設置されることを特徴としている。
【0051】
図3は、2台の塗装ロボット22,23の斜視図であり、前記塗装ロボットを、経路24に沿って直線的に動かせることが知られている。塗装ロボット22,23の両方は、それぞれ可動フレーム25と2つのロボットアーム26,27を有し、ロボットアーム26は”アーム1”と称され、ロボットアーム27は”アーム2”と称される。
【0052】
噴霧器1を案内する従来のロボットリスト28は、ロボットアーム27の下腕部に取り付けられている。
【0053】
噴霧器1と一体化される色替バルブ部3用の計量装置8(図1参照)は、ロボットアーム26(”アーム1”)内部に取り付けられ、一方、外装型色替バルブ部14は、ロボットアーム27内部(”アーム2”)に取り付けられる。
【0054】
また、パルス空気バルブPLと洗浄剤バルブVVが、噴霧器1の外部、例えば、ロボットアーム27(”アーム2”)上に設置されてもよいことが、言及されなければならない。そうすると、切り替えは噴霧器1の外部で起こる。
【0055】
図4は、図2の実施形態についての変形を示しているので、繰り返しを避けるために、共通する構成要素には、同一の参照番号を付している。
【0056】
この実施形態は、外装型色替バルブ部14が、A/B色替器として構成されておらず、塗料吐出口を1個だけ有することを特徴とする。これは、投資費用の削減、装置スペースの省力化および軽量化をもたらす。
【0057】
この変形では、図5のフローチャートで示したように、高消費色と低消費色が交互に塗られるので、内蔵型色替バルブ部3によって高消費色を塗装する間に、外装型色替バルブ部14を洗浄し、加圧下で外装型色替バルブ部14に次の低消費色を充填することができる。外装型色替バルブ部14で要する色替時間の長さは、煩わしくなくなるが、噴霧器1が高消費色と低消費色を交互に塗れることを保証するために、生産計画はより複雑になる。
【0058】
図6Aは、例えば、図1の計量装置8の代わりに用いられて、噴霧器1の各々の塗料導入口4〜7に異なる高消費色を供給する歯車ポンプ29の実施形態を示している。
【0059】
歯車ポンプ29は、線図形式でのみ示された複数のポンプ室30〜33を有しており、歯車ポンプ29は、例えば、独国特許第60009577号明細書から知られるように、それぞれ一組の歯車対を有する。
【0060】
ポンプ室30〜33の各歯車対は、駆動軸34を介してモーター35によって駆動される。クラッチ36〜39は、機械的切断を促進するものであり、各ポンプ室30〜33の間と、ポンプ室30とモーター35の間に設置される。
【0061】
図6Bは、歯車ポンプ29の更なる新規な実施形態を示しており、この実施形態は、上述し図6Aに示した実施形態と部分的に共通しているので、繰り返しを避けるために、共通する構成要素には、同一の参照番号を付している。
【0062】
この実施形態は、各ポンプ室30〜33に設置された歯車対のための共通駆動軸34が、歯車ポンプ29の全長に渡っていることを特徴としている。
【0063】
この場合、各クラッチ36〜39は、駆動軸34の軸方向の機械的切断を促進しない。代わりに、各クラッチ36〜39によって、ポンプ室30〜33に設置された歯車対を、選択的に駆動軸34と噛み合わせたり、駆動軸34から脱着したりできる。
【0064】
以下に、図7〜10を用いて、歯車ポンプ29の構造設計と作動方法を詳述する。
【0065】
次に述べるように、各ポンプ室30〜33が、中央プレート40〜43および隣接するエンドプレート44〜51によりそれぞれ形成されるので、各ポンプ室30〜33は駆動軸34の軸方向に一列になることが、これらの図面から明らかである。
【0066】
互いに噛み合った2個の歯車がポンプ室30〜33のそれぞれに設置されているが、簡略化のため、5つの歯車52〜56のみが、半横向断面図で図7に完全に示されている。
【0067】
また、歯車ポンプ29は、ポンプ室30〜33に設置される歯車対を駆動軸34と選択的に噛み合わせるためにドローキー(draw key)57を有しており、ロック要素(locking elements)58〜60によって、駆動軸34と各歯車対との噛み合わせが促進される。
【0068】
この実施形態では、歯車ポンプ29は、シャフトシール(shaft seal)61とベアリング62も有する。
【0069】
この設計の歯車ポンプ29は、コンパクトな大きさであると都合がよいが、このことは、歯車ポンプ29がロボットアームに取り付けられるときに特に重要である。
【0070】
最後に、図11は、ベルプレート64と、塗布される塗装材料を静電帯電させるための複数の外部電極65を備える本発明の噴霧器63の概略図を示している。
【0071】
図示するように、噴霧器63は、フランジ部66と、マニホールド67と、肘部68と、先端部69を有する。
【0072】
マニホールド67は、内蔵型色替バルブ部70を有する一方で、メインニードルバルブ71は、先端部69に設置される。これにより、マニホールド67が肘部68と先端部69から分離されれば、境界線を横切る配管は少量なので、分離時に生じる汚染が僅かであるという利点がもたらされる。
【0073】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。それどころか、種々の代替と修正が可能であり、それらは、本発明の概念を用いているので、保護の範囲内にある。
【符号の説明】
【0074】
1 噴霧器
2 ベルプレート
3 一体型色替バルブ部
4,5,6,7 塗料導入口
8 計量装置
9,10,11,12 計量ポンプ
13 駆動モーター
14 色替バルブ部
15 計量装置
16,17 計量ポンプ
18,19 駆動モーター
20,21 塗料導入路
22,23 塗装ロボット
24 経路
25 フレーム
26,27 ロボットアーム
28 ロボットリスト
29 歯車ポンプ
30,31,32,33 ポンプ室
34 駆動軸
35 モーター
36,37,38,39 クラッチ
40,41,42,43 中央プレート
44,45,46,47,48,49,50,51 エンドプレート
52,53,54,55,56 歯車
57 ドローキー
58,59,60 ロック要素
61 シャフトシール
62 ベアリング
63 噴霧器
64 ベルプレート
65 外部電極
66 フランジ部
67 マニホールド
68 肘部
69 先端部
70 内蔵型色替バルブ部
71 塗料バルブF1〜F4のメインニードルバルブ
FA,FB 塗料バルブ
HN メインニードルバルブ
KS 短い洗浄バルブ
PL パルス空気バルブ
RA,RB 再循環バルブ
V 洗浄接続部
VV 洗浄剤バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)塗装要素(2)を使って塗装剤を塗布する噴霧器(1)と、
b)色の異なる塗装剤を選択する複数の塗料導入口(4〜7)を有する内蔵型色替バルブ部(3)と、を備え、前記内蔵型色替バルブ部(3)が前記噴霧器(1)に構造的に一体化されるとともに、出口端において前記塗装要素(2)に接続されて、選択された塗装剤を前記塗装要素(2)に供給する、特に自動車の車体を塗装するための塗装装置において、
c)色の異なる塗料を選択する複数の塗料導入口(4〜7)を有する外装型色替バルブ部(14)を備え、前記外装型色替バルブ部(14)が前記噴霧器(1)と構造的に別体化されるとともに、出口端において前記塗装要素(2)に接続されて、選択された塗装剤を前記塗装要素(2)に供給する
ことを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記噴霧器1は、
前記内蔵型色替バルブ部(14)の塗料導入口に加えて、少なくとも1個の追加の塗料導入路(20,21)が前記外装型色替バルブ部(14)に接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項3】
a)前記外装型色替バルブ部(14)は、少なくとも2個の分離した塗料吐出口を有し、
b)前記噴霧器(1)は、前記内蔵型色替バルブ部(3)の前記塗料導入口に加えて、前記外装型色替バルブ部(14)の塗料吐出口に接続されている少なくとも2個の追加の塗料導入路(20,21)を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の塗装装置。
【請求項4】
前記外装型色替バルブ部(14)で選択された塗装剤、および/または塗装剤と洗浄剤の混合物を再循環させる少なくとも1個の再循環バルブ(RA,RB)を備える
ことを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の塗装装置。
【請求項5】
前記再循環バルブ(RA,RB)は、
a)前記噴霧器(1)と構造的に一体化されているか、あるいは、
b)前記噴霧器(1)と構造的に別体化されている
ことを特徴とする請求項4に記載の塗装装置。
【請求項6】
a)前記内蔵型色替バルブ部(3)は、第1の計量装置(8)によって、複数の異なる色の塗装剤が供給され、および/または、
b)前記外装型色替バルブ(14)は、第2の計量装置(15)によって、複数の異なる色の塗装剤が供給される
ことを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の塗装装置。
【請求項7】
前記第1の計量装置(8)は、前記噴霧器(1)と構造的に別体化されるとともに、
a)塗装ロボット(23)の上腕(26)上に、
b)塗装ロボット(23)の下腕(27)上に、
c)塗装ロボット(23)のフレーム(25)上に、
d)塗装室内に静的に、または、
e)塗装室外に静的に、配置されている
ことを特徴とする請求項6に記載の塗装装置。
【請求項8】
前記外装型色替バルブ部(14)、および/または、それに割り当てられた前記第2の計量装置(15)は、
a)塗装ロボット(23)の上腕(26)上に、または、
b)塗装ロボット(23)の下腕(27)上、に取り付けられている
ことを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の塗装装置。
【請求項9】
前記第1の計量装置(8)、および/または、前記第2の計量装置(15)は、歯車ポンプ(29)の形態を有する
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の塗装装置。
【請求項10】
a)前記歯車ポンプ(29)は、回転自在に取り付けられた1組の歯車対(52〜56)を有する複数のポンプ室(30〜33)を備え、
b)前記ポンプ室(30〜33)はそれぞれ、前記噴霧器(1)の塗料導入口(4〜7,20,21)に供給し、
c)前記歯車ポンプ(29)は、前記歯車対のそれぞれを駆動する、共通の駆動軸(34)を備える
ことを特徴とする請求項9に記載の塗装装置。
【請求項11】
前記歯車ポンプ(29)は、複数のクラッチ(36〜39)を備えて、前記駆動軸(34)を前記各歯車対(52〜59)に選択的に噛み合わせる
ことを特徴とする請求項10に記載の塗装装置。
【請求項12】
a)前記ポンプ室(30〜33)は、前記駆動軸(34)の軸方向に直列に配置されるとともに、
b)隣接する前記ポンプ室(30〜33)は、共通の室壁を有する
ことを特徴とする請求項10または11に記載の塗装装置。
【請求項13】
a)前記噴霧器(63)は、前記内蔵型色替バルブ部(70)が配置された第1のサブアセンブリー(67)を備えるとともに、
b)前記噴霧器(63)は、塗装要素(64)、特にベルプレートを有する第2のサブアセンブリー(68,69)を備え、
c)前記第1のサブアセンブリー(67)は、前記第2のサブアセンブリー(68,69)に分離可能に結合される
ことを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の塗装装置。
【請求項14】
前記噴霧器(1,63)は、
a)回転噴霧器、
b)超音波噴霧器、
c)空気噴霧器、
d)エアレス装置、または、
e)空気混合装置である
ことを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の塗装装置。
【請求項15】
前記塗装剤は、
a)水を基材とする塗料、
b)溶剤を基材とする塗料、
c)粉末ラッカー、または、
d)接合シール剤である
ことを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の塗装装置。
【請求項16】
前記塗装剤は、
a)フィラー、
b)ベースコート、または、
c)透明ニスである
ことを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の塗装装置。
【請求項17】
a)噴霧器(1)と構造的に一体化された内蔵型色替バルブ部(3)によって、色の異なる塗装剤を選択するステップを有する
前記噴霧器(1)を備える塗装装置の作動方法において、
b)噴霧器(1)と構造的に別体化された外装型色替バルブ部(14)によって、色の異なる塗装剤を選択するステップを有する
ことを特徴とする塗装装置の作動方法。
【請求項18】
使用頻度の高い塗装剤(高消費色)が、選択的に内蔵型色替バルブ部(3)に送給されるとともに、使用頻度の低い塗装剤(低消費色)が、選択的に外装型色替バルブ部(14)に送給される
ことを特徴とする請求項17に記載の塗装装置の作動方法。
【請求項19】
a)使用頻度の高い塗装剤と使用頻度の低い塗装剤を交互に塗布し、
b)前記外装型色替バルブ部(14)を通して前記使用頻度の低い塗装剤を塗布している間に、前記内蔵型色替バルブ部(3)を洗浄し、
c)前記内蔵型色替バルブ部(3)を通して前記使用頻度の高い塗装剤を塗布している間に、前記外装型色替バルブ部(14)を洗浄する
ことを特徴とする請求項18に記載の塗装装置の作動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公表番号】特表2009−537293(P2009−537293A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510315(P2009−510315)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003874
【国際公開番号】WO2007/131636
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(504389784)デュール システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (54)
【Fターム(参考)】