説明

塗装装置

【課題】ワークを噴霧塗料により塗装するようにした塗装装置に対する保守作業が、より容易にできるようにする。
【解決手段】ワーク2に対し塗料6を噴霧可能とする塗装機7と、ブース4の内部に収容され、ワーク2を支持してこのワーク2を塗装機7の噴霧方向に対向可能とさせるワーク支持装置8とを設ける。このワーク支持装置8は、縦向きの軸心回りに回動A可能とされる回動体28を有する回動装置20と、回動体28から径方向外方に突出し、その突出端側22にワーク2を支持して回動体28と共に回動Aする支持アーム24とを備える。回動装置20および支持アーム24の基部側21を収容し、これら回動装置20および支持アーム24の基部側21と、塗装機7、支持アーム24の突出端側22およびこの突出端側22に支持されるワーク2との間を仕切る仕切体75を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料を噴霧する塗装機により、自動二輪車の部品等のワークをブースの内部で塗装するようにした塗装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記塗装装置には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、ワークに対し塗料を噴霧可能とする塗装機と、ブースの内部に収容され、上記ワークを支持してこのワークを上記塗装機による塗料の噴霧方向に対向可能とさせるワーク支持装置と、上記ブースの外部に設置されて、ワークを搬送可能とする搬送装置とが設けられている。上記ワーク支持装置は、静止側部材に支持され、縦向きの軸心回りに回動可能とされる回動体を有する回動装置と、各端部側がそれぞれ上記回動体から径方向外方に突出し、その各突出端側が上記ワークを着脱可能に支持して上記回動体と共に回動する支持アームとを備えている。
【0003】
上記塗装装置によるワークの塗装作業時には、まず、その前工程から上記ブースに向かって搬送装置により搬送されてきた未塗装のワークが、上記ブース内に搬入される。そして、上記ワークは上記支持アームの両突出端側のうち、一方の突出端側に移載されて支持される。次に、上記回動体が180°回動させられて、その一方の突出端側と他方の突出端側との位置が交代させられる。これにより、上記一方の突出端側に支持されたワークが上記塗装機による塗料の噴霧方向に対向させられる。
【0004】
そして、上記ワークに対し塗装機により塗料が噴霧されて塗装作業が行われる。この塗装作業の際、上記支持アームの他方の突出端側に支持されている既塗装のワークは上記搬送装置に移載されて支持される。そして、上記既塗装のワークは搬送装置により次工程に向けて搬送される。また、この搬送装置により搬送されてきた後続の未塗装のワークは上記他方の突出端側に移載されて支持される。
【0005】
ここで、前記した支持アームの一方の突出端側に支持されたワークへの塗装作業が完了して既塗装のワークとなれば、上記回動体の回動により上記支持アームが180°回動させられて、その一方の突出端側と他方の突出端側との位置が交代させられる。
【0006】
以下、上記塗装作業が繰り返される。これにより、上記搬送装置により前工程から順次搬送されてきた未塗装のワークが次々と塗装される。一方、これら既塗装のワークは上記搬送装置により次々と次工程に向けて搬送される。
【0007】
なお、上記塗装作業の際、ワークから逸れて塗装に供されなかった噴霧塗料が大気側に自由に飛散しようとすることは、上記ブースによって防止される。
【特許文献1】特開2002−1174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記従来の技術では、次のような問題点がある。
【0009】
第1に、上記塗装作業において、ワークに対し塗装機により塗料を噴霧したとき、上記ワークから逸れた噴霧塗料が上記回動装置や支持アームに無用に付着するおそれがある。そして、この付着が繰り返されてその付着量が多くなると、上記回動装置における回動体の円滑な回動が阻害されるなど不都合が生じてくる。
【0010】
このため、上記回動装置や支持アームに付着する塗料を洗浄したり、回動装置における回動体の回動状態を点検したりするなどの保守作業の頻度を高くすることが要求される。しかし、このような作業は極めて煩雑である。
【0011】
第2に、上記ワークの塗装状態の品質を向上させるために、塗装装置を次のように構成することが考えられる。即ち、上記支持アームと互いに連動連結されて、この支持アームを作動可能とする作動アクチュエータを設ける。そして、上記塗装作業時に、上記支持アームを作動させて、この支持アームの突出端側に支持されたワークの姿勢を所望状態に刻々と変化させる。これにより、ワークにおける塗料の塗膜の厚さを均一にさせるなどして、ワークの塗装状態の品質を向上させる。
【0012】
しかし、上記のように構成すると、上記回動体の回動に伴い支持アームと共に作動アクチュエータが回動するため、静止側部材と上記作動アクチュエータとの間に架設される電気配線にねじれが生じないよう構成することが求められる。しかし、このような配線構造は複雑になるおそれがあり、つまり、上記塗装装置の構成が複雑になるおそれを生じる。
【0013】
また、上記のように構成した場合、塗装作業時には、上記作動アクチュエータにも塗料が無用に付着して、上記支持アームの円滑な作動が短期に阻害されるおそれを生じる。よって、塗装作業中にワークの姿勢を変化させてその塗装状態の品質を向上させる、ということは容易ではない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、ワークを噴霧塗料により塗装するようにした塗装装置に対する保守作業が、より容易にできるようにすることである。
【0015】
また、本発明の他の目的は、上記ワークの塗装状態の品質の向上が、簡単な構成で達成されるようにし、かつ、より容易にできるようにすることである。
【0016】
請求項1の発明は、ワーク2に対し塗料6を噴霧可能とする塗装機7と、ブース4の内部に収容され、上記ワーク2を支持してこのワーク2を上記塗装機7の噴霧方向に対向可能とさせるワーク支持装置8とを設け、このワーク支持装置8が、縦向きの軸心回りに回動A可能とされる回動体28を有する回動装置20と、上記回動体28から径方向外方に突出し、その突出端側22に上記ワーク2を支持して上記回動体28と共に回動Aする支持アーム24とを備えた塗装装置において、
上記回動装置20および支持アーム24の基部側21を収容し、これら回動装置20および支持アーム24の基部側21と、上記塗装機7、支持アーム24の突出端側22およびこの突出端側22に支持されるワーク2との間を仕切る仕切体75を設けたものである。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1の発明に加えて、静止側部材3に支持されて上記支持アーム24の突出端側22に支持されたワーク2の姿勢を変化させるようこの支持アーム24を作動可能とする作動アクチュエータ46,47と、上記回動体28の上記縦向きの軸心27回りの回動Aにより、上記支持アーム24が上記作動アクチュエータ46,47に対する所定位置に位置したとき、上記支持アーム24と上記作動アクチュエータ46,47とを互いに連結、連結解除可能とする連結装置49とを設け、上記作動アクチュエータ46,47と連結装置49とを上記仕切体75を基準として上記支持アーム24の基部側21寄りに配置したものである。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1の発明に加えて、上記仕切体75の平面断面視で、この仕切体75が上記回動装置20および支持アーム24の基部側21を囲繞する筒形状となるようにしたものである。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1の発明に加えて、上記仕切体75の一部分をウォータカーテン89で構成し、このウォータカーテン89を上記支持アーム24の長手方向の中途部が貫通するようにしたものである。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1の発明に加えて、上記塗装機7により上記ワーク2に向かって噴霧される塗料6の噴霧方向が上記仕切体75に向かうようにしたものである。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1の発明に加えて、上記ブース4の内面と仕切体75の外面との間の空間84に向かって外部の空気94を供給する給気口92を上記空間84の上部に形成し、この空間84の空気94を外部に排気する排気口96を上記空間84の底部に形成したものである。
【0022】
請求項7の発明は、請求項1の発明に加えて、上記ブース4の外部に設置されて、ワーク2を搬送可能とする搬送装置17と、この搬送装置17により搬送されてきたワーク2を上記支持アーム24に支持させるようこのワーク2を上記搬送装置17から支持アーム24に移載可能とする一方、この支持アーム24に支持されていたワーク2を上記搬送装置17により搬送可能とさせるようこのワーク2を上記支持アーム24から搬送装置17に移載可能とする移載装置18とを設けたものである。
【0023】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0024】
本発明による効果は、次の如くである。
【0025】
請求項1の発明は、ワークに対し塗料を噴霧可能とする塗装機と、ブースの内部に収容され、上記ワークを支持してこのワークを上記塗装機の噴霧方向に対向可能とさせるワーク支持装置とを設け、このワーク支持装置が、縦向きの軸心回りに回動可能とされる回動体を有する回動装置と、上記回動体から径方向外方に突出し、その突出端側に上記ワークを支持して上記回動体と共に回動する支持アームとを備えた塗装装置において、
上記回動装置および支持アームの基部側を収容し、これら回動装置および支持アームの基部側と、上記塗装機、支持アームの突出端側およびこの突出端側に支持されるワークとの間を仕切る仕切体を設けている。
【0026】
このため、上記支持アームの突出端側に支持されたワークに対し、塗装機により塗料を噴霧して塗装作業をする場合、上記ワークから逸れて塗装に供されなかった噴霧塗料が上記回動装置や支持アームの基部側に無用に付着する、ということは上記仕切体によって防止される。
【0027】
よって、上記回動装置や支持アームの基部側に付着する塗料についての洗浄作業は不要であると共に、無用に付着する塗料によって上記回動装置における回動体の回動が阻害される、ということが防止されて、回動体の円滑な回動が長期にわたり維持される。この結果、上記塗装装置に対する保守作業が、より容易にできる。
【0028】
請求項2の発明は、静止側部材に支持されて上記支持アームの突出端側に支持されたワークの姿勢を変化させるようこの支持アームを作動可能とする作動アクチュエータと、上記回動体28の上記縦向きの軸心27回りの回動により、上記支持アームが上記作動アクチュエータに対する所定位置に位置したとき、上記支持アームと上記作動アクチュエータとを互いに連結、連結解除可能とする連結装置とを設けている。
【0029】
このため、上記支持アームの突出端側に支持されたワークにつき塗装作業をする場合に、上記作動アクチュエータによりワークの姿勢を所望状態に変化させるよう支持アームを作動させれば、上記ワークの塗装状態の品質をより向上させることができる。
【0030】
そして、上記したように作動アクチュエータを設けた場合において、上記塗装作業の前、後に上記支持アームを回動させようとする場合には、上記連結装置により支持アームと作動アクチュエータとの連結を解除させればよい。このようにすると、上記支持アームの回動に伴って上記作動アクチュエータが回動する、ということが防止されて、静止側部材と作動アクチュエータとの間に架設される電気配線などにねじれの生じることが防止される。よって、上記配線などの構造を簡単にできることから、上記ワークの塗装状態の品質の向上が、簡単な構成で達成される。
【0031】
また、上記作動アクチュエータと連結装置とを上記仕切体を基準として上記支持アームの基部側寄りに配置している。
【0032】
このため、上記塗装機により噴霧された塗料のうち、上記ワークの塗装に供されなかった噴霧塗料が上記作動アクチュエータや連結装置に無用に付着する、ということは上記仕切体によって防止される。
【0033】
よって、上記作動アクチュエータや連結装置に付着する塗料についての洗浄作業は不要であると共に、無用に付着する塗料によって上記作動アクチュエータや連結装置の作動が阻害される、ということが防止されて、これら作動が長期にわたり維持される。この結果、上記塗装装置に対する保守作業が、より容易にできる。
【0034】
請求項3の発明は、上記仕切体の平面断面視で、この仕切体が上記回動装置および支持アームの基部側を囲繞する筒形状となるようにしている。
【0035】
このため、上記仕切体は、上記回動体や支持アームの基部側の回動軌跡を覆うものとして可及的に小型に成形できる。よって、その分、上記支持アームの突出端側に支持されたワークに対する塗装作業の作業空間を広くできる。この結果、ワークの姿勢変化の自由度を、より向上させることができるなど、ワークの塗装状態の品質を、より向上させることができる。
【0036】
請求項4の発明は、上記仕切体の一部分をウォータカーテンで構成し、このウォータカーテンを上記支持アームの長手方向の中途部が貫通するようにしている。
【0037】
このため、上記支持アームは上記仕切体を貫通するものではあるが、この貫通部分は上記ウォータカーテンによってシールされる。よって、上記ワークの塗装に供されなかった噴霧塗料が上記回動装置や支持アームの基部側に無用に付着することは、より確実に防止される。この結果、塗装装置に対する保守作業が、更に確実に容易にできる。
【0038】
請求項5の発明は、上記塗装機により上記ワークに向かって噴霧される塗料の噴霧方向が上記仕切体に向かうようにしている。
【0039】
このため、上記支持アームの突出端側に支持されたワークに対し、塗装機により塗料を噴霧して塗装作業をする場合、上記ワークから逸れて塗装に供されなかった噴霧塗料の多くは、上記仕切体に向かわされる。よって、上記噴霧塗料が上記支持アームに隣り合う他の支持アームの突出端側に支持された他のワークに直接向かってこれを無用に塗装する、ということが防止される。この結果、各ワークの塗装状態の品質を、より確実に向上させることができる。
【0040】
請求項6の発明は、上記ブースの内面と仕切体の外面との間の空間に向かって外部の空気を供給する給気口を上記空間の上部に形成し、この空間の空気を外部に排気する排気口を上記空間の底部に形成している。
【0041】
このため、上記空間を換気しようとしてこの空間に供給された空気は、上記空間の上部から底部に向かって下方に流動する。ここで、上記塗装作業時には、通常、塗装機による塗料の噴霧方向は、斜め下方を含んで下方に向かうこととされる。つまり、上記空気の流動方向と上記噴霧方向とは順方向となって、上記噴霧塗料が上記空気によって乱されるということが防止される。よって、上記空間の換気をする場合でも、所望の塗装作業ができて、上記ワークの塗装状態の品質を向上させることができる。
【0042】
請求項7の発明は、上記ブースの外部に設置されて、ワークを搬送可能とする搬送装置と、この搬送装置により搬送されてきたワークを上記支持アームに支持させるようこのワークを上記搬送装置から支持アームに移載可能とする一方、この支持アームに支持されていたワークを上記搬送装置により搬送可能とさせるようこのワークを上記支持アームから搬送装置に移載可能とする移載装置とを設けている。
【0043】
このため、上記ワークの塗装に供されなかった噴霧塗料が上記搬送装置に無用に付着することは、上記ブースによって防止される。よって、この点でも、上記塗装装置に対する保守作業が、より容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明の塗装装置に関し、ワークを噴霧塗料により塗装するようにした塗装装置に対する保守作業が、より容易にできるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための最良の形態は、次の如くである。
【0045】
即ち、ワークに対し塗料を噴霧可能とする塗装機と、ブースの内部に収容され、上記ワークを支持してこのワークを上記塗装機の噴霧方向に対向可能とさせるワーク支持装置とが設けられている。このワーク支持装置は、縦向きの軸心回りに回動可能とされる回動体を有する回動装置と、上記回動体から径方向外方に突出し、その突出端側に上記ワークを支持して上記回動体と共に回動する支持アームとを備えている。上記回動装置および支持アームの基部側を収容し、これら回動装置および支持アームの基部側と、上記塗装機、支持アームの突出端側およびこの突出端側に支持されるワークとの間を仕切る仕切体が設けられている。
【実施例】
【0046】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0047】
図1,2において、符号1は、自動二輪車の部品などのワーク2を塗装するための塗装装置である。
【0048】
上記塗装装置1には、静止側部材3である建物内の床上に設置されるブース4と、このブース4の内部に収容されて上記床上の架台に支持され、ワーク2の塗装用として塗料6を噴霧可能とする複数台(3台)の塗装機7と、上記ブース4の内部に収容され、上記ワーク2を着脱可能に支持してこのワーク2を上記塗装機7による塗料6の噴霧方向に対向可能とさせるワーク支持装置8とが設けられている。上記各塗装機7は、上記ワーク支持装置8の周りに配置されている。
【0049】
上記ブース4は、平面断面視で筒形状をなす側壁部10と、この側壁部10の上端開口を閉じる天井部11とを備え、上記側壁部10の一部には、上記ブース4に対するワーク2の出し入れを可能とする開口12が形成されている。また、上記塗装機7は、多関節型ロボット14と、このロボット14のアーム先端に支持されて所望位置から所望方向に向かって塗料6を自在に噴霧可能とする噴霧ノズル15とを備えている。
【0050】
上記ブース4の外部に配置されて、上記塗装機7による塗装工程の前段の前工程から上記ブース4の開口12側に向けてワーク2を搬送可能とする一方、上記ブース4の開口12側からワーク2を次工程に向けて搬送可能とするチェーンコンベアである搬送装置17が設けられている。この搬送装置17は、所定ピッチに配置されて、上記ワーク2を着脱可能に支持する支持部17aと、これら支持部17aを互いに連結するチェーン17bとを備えている。上記前工程とは、ワーク2の洗浄、乾燥など前処理工程などである。また、上記次工程とは、焼付炉での焼付塗装工程などである。
【0051】
上記搬送装置17により搬送されてきたワーク2を上記ワーク支持装置8に支持させるようこのワーク2を上記搬送装置17からワーク支持装置8に移載可能とする一方、このワーク支持装置8に支持されていたワーク2を上記搬送装置17により搬送可能とさせるようこのワーク2を上記ワーク支持装置8から搬送装置17に移載可能とする移載装置18が設けられている。この移載装置18は上記開口12に配置されている。そして、この開口12を通し、上記移載装置18によりワーク2が移載される。
【0052】
全図において、上記ワーク支持装置8は、上記ブース4の平面視でのほぼ中央に位置して上記静止側部材3である床の上面に支持される回動装置20と、この回動装置20からその外側方に向かい放射状に突出し、その基部側21が上記回動装置20に支持される一方、突出端側22がそれぞれハンガー23を介して上記ワーク2を支持する複数(4本)の支持アーム24とを備えている。
【0053】
上記回動装置20は、上記静止側部材3に固定される箱形状の固定部26と縦向きの軸心27回りに回動A可能となるよう上記固定部26に支持される回動体28と、上記固定部26の内部に収容され、上記回動体28を駆動可能とする回動アクチュエータ29とを備えている。上記回動体28は円環形状の回転テーブルである。また、上記回動アクチュエータ29は三相モータであって、この回動アクチュエータ29に公知のローラギヤカム機構などを介して上記回動体28が連動連結され、一方向への所定角度(90°)の回動Aと、停止とが繰り返し可能とされている。なお、上記カム機構はバレルカム機構などであってもよく、これに代えて、ゼネバ機構などを用いてもよい。また、上記回動アクチュエータ29をサーボモータとしてインデックス制御により、上記回動体28を上記のように間欠回動Aさせてもよく、この場合、上記のような各機構は設けなくてもよい。
【0054】
上記支持アーム24は、その一端部が上記回動体28にブラケット32により固定され、他端部側がほぼ水平に上記回動体28の径方向外方に突出する円形パイプである固定アーム33と、この固定アーム33のアーム軸心34に直交するほぼ水平な第1軸心35回りに回動(チルト)B可能となるようこの固定アーム33の突出端部に支持される第1回動部36と、上記第1軸心35に直交するほぼ垂直な第2軸心37回りに回動C可能となるよう上記第1回動部36に支持される第2回動部38とを備えている。上記第1、第2回動部36,38は上記支持アーム24の突出端側22を構成している。上記第2回動部38の上部は円形パイプであって、上記第1回動部36から上方に向かって突出している。上記第2回動部38に前記ハンガー23を介しワーク2が着脱可能に支持される。前記搬送装置17の支持部17aの上部は、上記第2回動部38の上部と同形同大とされている。
【0055】
上記固定アーム33のアーム軸心34と平行に延びる第1、第2駆動軸40,41が上記固定アーム33の内部に嵌入されている。上記第1、第2駆動軸40,41の上記支持アーム24の突出端側22の端部と、上記第1、第2回動部36,38とは、それぞれベベルギヤなどの連動機構42,43により互いに連動連結されている。上記第1、第2駆動軸40,41はそれぞれその第1、第2軸心44,45回りに回動可能となるよう上記ブラケット32と固定アーム33とに支持されている。
【0056】
上記回動装置20の固定部26の上面にACサーボモータである一対の第1、第2作動アクチュエータ46,47が複数組(4組)支持されている。つまり、これら各第1、第2作動アクチュエータ46,47は上記固定部26を介し静止側部材3に支持されている。上記回動体28の回動Aに連動して上記支持アーム24が所定角度だけ回動Aした後、停止したとき、上記第1、第2作動アクチュエータ46,47に対する「所定位置」に上記支持アーム24が位置することとされている(図1−3図示)。
【0057】
上記した第1、第2作動アクチュエータ46,47に対する支持アーム24の「所定位置」とは、上記第1、第2作動アクチュエータ46,47の第1、第2軸心44,45に上記第1、第2駆動軸40,41の第1、第2軸心44,45が合致する場合の上記支持アーム24の位置である。なお、上記第1、第2作動アクチュエータ46,47は静止側部材3に直接支持させてもよく、別途のブラケットなどにより上記静止側部材3に支持させてもよい。
【0058】
上記支持アーム24の回動Aにより、この支持アーム24が上記第1、第2作動アクチュエータ46,47に対する上記「所定位置」に位置したとき、上記支持アーム24の第1、第2駆動軸40,41と、上記第1、第2作動アクチュエータ46,47とを互いに連結(図3)、連結解除(不図示)可能とする連結装置49が設けられている。
【0059】
上記連結装置49は、上記第1、第2作動アクチュエータ46,47を支持し、上記アーム軸心34に平行な方向で上記支持アーム24の突出端側22に向かって往、復移動D,E可能となるよう上記固定部26に支持される可動台50と、上記固定部26に支持され上記可動台50を往、復移動D,Eさせるよう駆動する空気圧シリンダである連結アクチュエータ51と、上記第1、第2駆動軸40,41の上記支持アーム24の基部側21の端部に上記作動アクチュエータ46,47の各出力軸を解除可能に同時に連結させる第1、第2カップリング52,53とを備えている。この連結は、上記「所定位置」において、上記連結アクチュエータ51の駆動により上記可動台50と共に上記第1、第2作動アクチュエータ46,47が往移動Dしたときに可能とされる。
【0060】
そして、上記第1、第2カップリング52,53により、上記第1、第2駆動軸40,41に上記第1、第2作動アクチュエータ46,47が連結された状態(図3)で、上記第1、第2作動アクチュエータ46,47をそれぞれ駆動させれば、これらの各駆動力は、上記第1、第2カップリング52,53、第1、第2駆動軸40,41、および各連動機構42,43を介し上記第1、第2回動部36,38に伝達される。すると、上記第1回動部36が回動Bすると共に、第2回動部38が回動Cし、つまり、上記支持アーム24が作動して、上記第2回動部38に上記ハンガー23を介し支持されているワーク2の姿勢が所望状態に変化させられる。
【0061】
一方、上記連結アクチュエータ51の駆動により、上記可動台50と共に上記第1、第2作動アクチュエータ46,47を復移動Eさせる。すると、上記第1、第2カップリング52,53が連結解除動作して、上記第1、第2駆動軸40,41に対する上記第1、第2作動アクチュエータ46,47の連結が解除される。ここで、図示しないが、上記支持アーム24の回動A時など、上記「所定位置」以外の場合には、上記第1、第2駆動軸40,41は、上記第1、第2軸心44,45回りでのそれぞれ所定回動位置に保持されるようになっている。これにより、支持アーム24の回動A時には、上記第1、第2回動部36,38の各回動B,Cが阻止されて、上記支持アーム24の突出端側22に支持されたワーク2は一定姿勢に保持される。
【0062】
図4,6において、上記ハンガー23は、縦方向に延び、その下部が上記第2回動部38にそのほぼ第2軸心37上で嵌脱可能に嵌合される主ハンガー62と、この主ハンガー62の長手方向の中途部に突設され、上記第2回動部38の上端面に接合するフランジ63と、上記ワーク2に固着され、このワーク2から下方に向けて突設され、その突出端部が上記主ハンガー62の上端部に嵌脱可能に嵌合される副ハンガー64と、上記第2回動部38に対する上記第2軸心37回りでの上記主ハンガー62の自由な回動を阻止する位置決め部材65と、上記主ハンガー62に対する上記第2軸心37回りでの上記副ハンガー64の自由な回動を阻止する不図示の位置決め部材とを備えている。
【0063】
上記位置決め部材65は、上記第2回動部38の上端面に形成されたV字状溝と、上記フランジ63に形成され上記溝に嵌脱可能に嵌入されるV字状突起とを備えている。上記溝は、上記第2回動部38の上端面に複数(4つ)形成されている。また、上記突起は、上記フランジ63の下面に複数(4つ)形成されている。
【0064】
図1,2,5,6において、前記移載装置18は、上記静止側部材3である床上に支持される基台67と、縦向きの軸心68回りに回動F、上昇動作Gおよび下降動作H可能となるようこの基台67に支持される昇降台69と、この昇降台69に支持され、上記ハンガー23を把持可能とする一対のハンド70,71とを備えている。
【0065】
上記移載装置18の元の状態(図1,2,5中実線)から、上記昇降台69の回動F、上昇動作Gおよび下降動作Hと、各ハンド70,71の開閉動作とにより、これら各ハンド70,71は、上記搬送装置17の支持部17aと支持アーム24の第2回動部38とにそれぞれ支持された各ハンガー23のフランジ63の下方近傍に配置可能とされる(図5,6中二点鎖線)。この状態から、上記昇降台69を上昇動作Gさせれば、上記ハンド70,71が上記フランジ63を持ち上げることにより上記各ハンガー23が持ち上げられる。
【0066】
すると、上記各ハンガー23は上記搬送装置17の支持部17aと支持アーム24の第2回動部38からそれぞれ離脱させられる。ここで、上記各ハンド70,71を閉動作させれば、これら各ハンド70,71により、上記ハンガー23の主ハンガー62の下部が把持される(図6中一点鎖線)。この状態から上記昇降台69を180°回動Fさせると、搬送装置17から離脱させられた未塗装のワーク2と、支持アーム24から離脱させられた既塗装のワーク2との各位置が互いに入れ替えられる。
【0067】
次に、上記昇降台69を上記ハンド70,71と共に下降動作Hさせれば、各主ハンガー62の下端部が上記支持部17aと第2回動部38とに嵌合させられる。ここで、上記各ハンド70,71を開動作させれば、これら各ハンド70,71による各ハンガー23の把持が解除され、これら各ハンガー23の主ハンガー62の下部が上記支持部17aと第2回動部38とに嵌合支持される。また、この際、上記ハンガー23は、上記第2回動部38に対しその第2軸心37回りの所定位置に上記位置決め部材65により位置決めされる。これにより、上記既塗装のワーク2が搬送装置17の支持部17aに支持される一方、未塗装のワーク2が上記支持アーム24の第2回動部38に支持される。この状態から、上記昇降台69は、上昇動作Gかつ回動Fさせられて元の状態(図1,2,5中実線)に戻される。
【0068】
次に、上記搬送装置17を次工程に向けて所定ピッチだけ搬送動作させ、かつ、上記支持アーム24を所定角(90°)だけ回動Aさせる。すると、上記搬送装置17の支持部17aに支持された上記既塗装のワーク2が次工程に向かって所定ピッチだけ搬送され、かつ、上記支持アーム24に支持された未塗装のワーク2が次の塗装機7に対向するよう回動Aさせられる。また、この際、上記搬送装置17の上記支持部17aに後続する次の支持部17aに支持された未塗装のワーク2と、上記支持アーム24に後続する次の支持アーム24に支持された既塗装のワーク2とが上記移載装置18を挟んで対向させられる。以下、上記した搬送装置17、支持アーム24、および移載装置18の動作が繰り返し可能とされている。
【0069】
図1,2において、上記回動装置20および支持アーム24の基部側21を収容し、これら回動装置20および支持アーム24の基部側21と、上記塗装機7、支持アーム24の突出端側22およびこの突出端側22に支持されるワーク2との間を仕切る仕切体75が設けられている。この仕切体75の平面断面視(図2)で、この仕切体75は上記回動装置20および支持アーム24の基部側21を囲繞する円筒形状となるよう形成されている。この仕切体75は、上記回動装置20の軸心27上にほぼ位置している。
【0070】
上記仕切体75は、その上部を構成する上筒状体76と、この上筒状体76の下方に少し離れて位置する下筒状体77とを備えている。これら上筒状体76の下縁部と下筒状体77の上縁部との間には環状間隙78が形成され、この環状間隙78を上記各支持アーム24の長手方向の中途部が回動A可能に貫通している。
【0071】
上記上筒状体76の高さ方向の中途部におけるこの上筒状体76の外周面には、この外周面の周方向に沿って同レベルの上水溜め枡79が形成されている。また、上記下筒状体77の上端部には、この下筒状体77の周方向の全体にわたり同レベルの下水溜め枡80が形成されている。上記上水溜め枡79に水81を供給する水ポンプ82が設けられている。
【0072】
上記軸心27上に配置され、上記環状間隙78を閉じる円環形状の仕切り板83が設けられている。上記各支持アーム24の固定アーム33の長手方向の中途部は、それぞれ上記仕切り板83を貫通している。そして、この仕切り板83は、上記固定アーム33に支持され、上記各支持アーム24と共に上記軸心27回りに回動A可能とされている。上記仕切り板83の上縁部は上記下筒状体77の下縁部よりも上記支持アーム24の基部側21寄りに位置し、上記仕切り板83の下縁部は上記下水溜め枡80内に向かって延びている。
【0073】
上記ブース4の内面と仕切体75の外面との間の円環形状の空間84を、上記軸心27回りの周方向で、上記各塗装機7側の一部空間84aと、移載装置18側の他部空間84bとに仕切る一対の仕切り壁88が設けられている。これら各仕切り壁88には、上記各支持アーム24の回動Aと、これら支持アーム24に支持された各ワーク2の回動Aとをそれぞれ許容する不図示の切り欠きが形成されている。上記上水溜め枡79は、上記一部空間84aに対応するよう設けられ、上記空間84の他部空間84bには設けられていない。
【0074】
上記一部空間84aの底部を閉じる底板85が設けられ、この底板85の外縁部には、この外縁部に沿って同レベルの他の水溜め枡86が形成されている。この他の水溜め枡86にも上記水ポンプ82により水81が供給される。上記底板85には複数カ所(3カ所)に排水口87が形成され、この排水口87は不図示の処理設備に連通させられている。
【0075】
上記空間84の一部空間84aにおいて、上記上水溜め枡79に供給された後、この上水溜め枡79から溢れた水81は、上筒状体76の外周面を覆うようほぼ層流状にて流下させられる。この上筒状体76の外面を流下した後の水81は、上記環状間隙78を閉じる仕切り板83の外面を流下させられると共に、上記環状間隙78を閉じるよう流下して、この環状間隙78をシールした後、上記下水溜め枡80に流入させられる。上記上筒状体76と仕切り板83との各外周面を流下する水81と、環状間隙78を閉じるよう流下する水81とによりウォータカーテン89が形成されている。
【0076】
上記仕切り板83の外面を流下し、かつ、環状間隙78を閉じるウォータカーテン89に対し、上記支持アーム24の突出端側22寄りから近接対面する他の仕切り板90が上記支持アーム24の長手方向の中途部に取り付けられている。上記他の仕切り板90は円形鍔形状をなし、その下端部は、上記下水溜め枡80内に向かって延びている。
【0077】
前記仕切り板83は、上記ウォータカーテン89を形成する水81の一部が上記環状間隙78を通り上記回動装置20の回動体28や支持アーム24の基部側21に向かって飛散することを防止する。一方、上記他の仕切り板90は上記水81の一部が上記支持アーム24の突出端側22やワーク2に向かって飛散することを防止する。
【0078】
なお、上記仕切り板83に代え、上記環状間隙78を閉じるウォータカーテン89に対し、上記支持アーム24の基部側21寄りから近接対面する円形鍔形状の更に他の仕切り板を設け、この仕切り板を上記支持アーム24の長手方向の中途部に取り付けてもよい。また、上記他の仕切り板90は、仕切り板83と同じように上記軸心27上に位置する円環形状となるよう形成してもよい。
【0079】
また、上記下水溜め枡80は設けなくてもよい。この場合、上記仕切り板83、他の仕切り板90、および更に他の仕切り板の各下端部は、上記下筒状体77の上縁部よりも、上記支持アーム24の突出端側22寄りに配置される。
【0080】
上記空間84の一部空間84aにおいて、上記下水溜め枡80に流入した後、この下水溜め枡80から溢れた水81は、上記下筒状体77の外周面と、これに連設される底板85の上面とを覆うようほぼ層流状にて流下させられ、その後、上記排水口87から排水させられる。また、上記他の水溜め枡86に供給された後、この他の水溜め枡86から溢れた水81は、上記底板85の上面を覆うようほぼ層流状にて流下させられ、その後、上記排水口87から排水させられる。
【0081】
また、上記空間84の他部空間84bにおいて、上記仕切り板83から滴下する水81を流入させる樋90aが設けられている。この樋90aに流入させられた水81は、上記樋90aを通し上記一部空間84aに向けて流動させられ、上記排水口87から排出される。
【0082】
上記塗装機7により上記ワーク2に向かって噴霧される塗料6の噴霧方向は上記仕切体75、かつ、斜め下方に向かうこととされている。この際、上記ワーク2から逸れた噴霧塗料6は、上記仕切体75の外面や底板85の上面を覆う水81の層に衝突して、上記仕切体75や底板85に付着することが防止される。そして、上記塗料6は、水81と共に処理設備に送られる。
【0083】
上記空間84の一部空間84aを換気する換気装置91が設けられている。この換気装置91は、上記一部空間84aの上端部を閉じるよう設けられ、その多数の通気孔が給気口92とされる通気天井93と、この通気天井93を通し上記一部空間84aに空気94を供給するブロア95と、上記一部空間84aの下端部に達した空気94を不図示の処理設備に向けてブース4の外部に排気可能とする排気口96とを備えている。上記通気天井93を通過して上記一部空間84aを下方に向かって流動する空気94の流量は、平面視で各部ほぼ均等とされている。上記排水口87と排気口96とは互いに兼用されている。
【0084】
上記塗装装置1によるワーク2の塗装作業につき説明する。
【0085】
まず、上記塗装装置1による塗装作業の前工程から、上記ブース4に向かって搬送装置17により搬送されてきた未塗装のワーク2が、上記移載装置18によって、この移載装置18に対向するワーク支持装置8の支持アーム24に移載されて支持される。この場合、この支持アーム24の第1、第2駆動軸40,41と各作動アクチュエータ46,47との連結は解除されている。そして、上記回動装置20の回動体28と共に上記支持アーム24が所定角度(90°)だけ回動Aさせられて、この支持アーム24に支持された未塗装のワーク2が第1の塗装機7(I)に対向させられ、この塗装機7(I)により塗装される。
【0086】
上記第1の塗装機7(I)による塗装作業の際、上記支持アーム24の第1、第2駆動軸40,41と上記各作動アクチュエータ46,47とは、上記連結装置49により互いに連動連結されて上記支持アーム24が作動させられ、ワーク2が所望姿勢とされることにより、このワーク2の塗装状態の品質が向上させられる。一方、上記支持アーム24に後続する他の支持アーム24には、上記搬送装置17により搬送されてきた後続の未塗装のワーク2が、上記移載装置18により、移載されて支持される。
【0087】
上記支持アーム24に支持されたワーク2に対する第1の塗装機7(I)による塗装作業が完了すれば、上記支持アーム24の第1、第2駆動軸40,41と各作動アクチュエータ46,47との連結が解除される。そして、上記回動装置20の回動体28と共に上記支持アーム24が所定角度(90°)だけ回動Aさせられる。すると、この支持アーム24に支持されたワーク2が第2の塗装機7(II)に対向させられ、この塗装機7(II)により再び、塗装される。また、この際、上記他の支持アーム24に支持された未塗装のワーク2が上記第1の第1の塗装機7(I)に対向させられ、この第1の塗装機7(I)により塗装される。
【0088】
以下、上記と同様の塗装作業が繰り返される。そして、最終的に第3の塗装機7(III)により塗装されたワーク2は、上記移載装置18により、上記搬送装置17の支持部17aに移載されて支持され、次工程に搬送される。なお、一つのワーク2に対する上記各塗装機7(I)(II)(III)による各塗装作業では、上記ワーク2の主たる塗装部位と塗装条件とが互いに相違している。
【0089】
上記構成によれば、回動装置20および支持アーム24の基部側21を収容し、これら回動装置20および支持アーム24の基部側21と、上記塗装機7、支持アーム24の突出端側22およびこの突出端側22に支持されるワーク2との間を仕切る仕切体75を設けている。
【0090】
このため、上記支持アーム24の突出端側22に支持されたワーク2に対し、塗装機7により塗料6を噴霧して塗装作業をする場合、上記ワーク2から逸れて塗装に供されなかった噴霧塗料6が上記回動装置20や支持アーム24の基部側21に無用に付着する、ということは上記仕切体75によって防止される。
【0091】
よって、上記回動装置20や支持アーム24の基部側21に付着する塗料6についての洗浄作業は不要であると共に、無用に付着する塗料6によって上記回動装置20における回動体28の回動が阻害される、ということが防止されて、回動体28の円滑な回動が長期にわたり維持される。この結果、上記塗装装置1に対する保守作業が、より容易にできる。
【0092】
また、前記したように、静止側部材3に支持されて上記支持アーム24の突出端側22に支持されたワーク2の姿勢を変化させるようこの支持アーム24を作動可能とする作動アクチュエータ46,47と、上記回動体28の上記縦向きの軸心27回りの回動Aにより、上記支持アーム24が上記作動アクチュエータ46,47に対する所定位置に位置したとき、上記支持アーム24と上記作動アクチュエータ46,47とを互いに連結、連結解除可能とする連結装置49とを設けている。
【0093】
このため、上記支持アーム24の突出端側22に支持されたワーク2につき塗装作業をする場合に、前記したように塗装機7により塗料6を自在に噴霧することと、上記作動アクチュエータ46,47によりワーク2の姿勢を所望状態に変化させるよう支持アーム24を作動させることとにより、上記ワーク2の塗装状態の品質をより向上させることができる。
【0094】
そして、上記したように作動アクチュエータ46,47を設けた場合において、上記塗装作業の前、後に上記支持アーム24を回動Aさせようとする場合には、上記連結装置49により支持アーム24と作動アクチュエータ46,47との連結を解除させればよい。このようにすると、上記支持アーム24の回動Aに伴って上記作動アクチュエータ46,47が回動Aする、ということが防止されて、静止側部材3と作動アクチュエータ46,47との間に架設される電気配線などにねじれの生じることが防止される。よって、上記配線などの構造を簡単にできることから、上記ワーク2の塗装状態の品質の向上が、簡単な構成で達成される。
【0095】
また、上記作動アクチュエータ46,47と連結装置49とを上記仕切体75を基準として上記支持アーム24の基部側21寄りに配置している。
【0096】
このため、上記塗装機7により噴霧された塗料6のうち、上記ワーク2の塗装に供されなかった噴霧塗料6が上記作動アクチュエータ46,47や連結装置49に無用に付着する、ということは上記仕切体75によって防止される。
【0097】
よって、上記作動アクチュエータ46,47や連結装置49に付着する塗料6についての洗浄作業は不要であると共に、無用に付着する塗料6によって上記作動アクチュエータ46,47や連結装置49の作動が阻害される、ということが防止されて、これら作動が長期にわたり維持される。この結果、上記塗装装置1に対する保守作業が、より容易にできる。
【0098】
また、前記したように、仕切体75の平面断面視で、この仕切体75が上記回動装置20および支持アーム24の基部側21を囲繞する筒形状となるようにしている。
【0099】
このため、上記仕切体75は、上記回動体28や支持アーム24の基部側21の回動A軌跡を覆うものとして可及的に小型に成形できる。よって、その分、上記支持アーム24の突出端側22に支持されたワーク2に対する塗装作業の作業空間を広くできる。この結果、ワーク2の姿勢変化の自由度を、より向上させることができるなど、ワーク2の塗装状態の品質を、より向上させることができる。
【0100】
また、前記したように、仕切体75の一部分をウォータカーテン89で構成し、このウォータカーテン89を上記支持アーム24の長手方向の中途部が貫通するようにしている。
【0101】
このため、上記支持アーム24は上記仕切体75を貫通するものではあるが、この貫通部分は上記ウォータカーテン89によってシールされる。よって、上記ワーク2の塗装に供されなかった噴霧塗料6が上記回動装置20や支持アーム24の基部側21に無用に付着することは、より確実に防止される。この結果、塗装装置1に対する保守作業が、更に確実に容易にできる。
【0102】
また、前記したように、塗装機7により上記ワーク2に向かって噴霧される塗料6の噴霧方向が上記仕切体75に向かうようにしている。
【0103】
このため、上記支持アーム24の突出端側22に支持されたワーク2に対し、塗装機7により塗料6を噴霧して塗装作業をする場合、上記ワーク2から逸れて塗装に供されなかった噴霧塗料6の多くは、上記仕切体75に向かわされる。よって、上記噴霧塗料6が上記支持アーム24に隣り合う他の支持アーム24の突出端側22に支持された他のワーク2に直接向かってこれを無用に塗装する、ということが防止される。この結果、各ワーク2の塗装状態の品質を、より確実に向上させることができる。
【0104】
また、前記したように、ブース4の内面と仕切体75の外面との間の空間84に向かって外部の空気94を供給する給気口92を上記空間84の上部に形成し、この空間84の空気94を外部に排気する排気口96を上記空間84の底部に形成している。
【0105】
このため、上記空間84を換気しようとしてこの空間84に供給された空気94は、上記空間84の上部から底部に向かって下方に流動する。ここで、上記塗装作業時には、通常、塗装機7による塗料6の噴霧方向は、斜め下方を含んで下方に向かうこととされる。つまり、上記空気94の流動方向と上記噴霧方向とは順方向となって、上記噴霧塗料6が上記空気94によって乱されるということが防止される。よって、上記空間84の換気をする場合でも、所望の塗装作業ができて、上記ワーク2の塗装状態の品質を向上させることができる。
【0106】
また、前記したように、ブース4の外部に設置されて、ワーク2を搬送可能とする搬送装置17と、この搬送装置17により搬送されてきたワーク2を上記支持アーム24に支持させるようこのワーク2を上記搬送装置17から支持アーム24に移載可能とする一方、この支持アーム24に支持されていたワーク2を上記搬送装置17により搬送可能とさせるようこのワーク2を上記支持アーム24から搬送装置17に移載可能とする移載装置18とを設けている。
【0107】
このため、上記ワーク2の塗装に供されなかった噴霧塗料6が上記搬送装置17に無用に付着することは、上記ブース4によって防止される。よって、この点でも、上記塗装装置1に対する保守作業が、より容易にできる。
【0108】
なお、以上は図示の例によるが、上記各アクチュエータは電動、油圧、空気圧、ソレノイドなど、いずれであってもよい。また、上記移載装置18は上記のようなロボット14であってもよい。また、上記仕切体75は上記回動装置20の回動体28のみなど一部分のみを収容するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】塗装装置の全体側面断面図である。
【図2】塗装装置の全体平面断面図である。
【図3】図2の部分拡大部分破断図である。
【図4】図3で示したものの部分側面断面図である。
【図5】図2の部分拡大図である。
【図6】図5のVI−VI線矢視部分断面図である。
【符号の説明】
【0110】
1 塗装装置
2 ワーク
3 静止側部材
4 ブース
6 塗料
7 塗装機
8 ワーク支持装置
17 搬送装置
18 移載装置
20 回動装置
21 基部側
22 突出端側
23 ハンガー
24 支持アーム
26 固定部
27 軸心
28 回動体
29 回動アクチュエータ
46 作動アクチュエータ
47 作動アクチュエータ
49 連結装置
75 仕切体
81 水
84 空間
85 底板
87 排水口
89 ウォータカーテン
90a 樋
91 換気装置
92 給気口
93 通気天井
94 空気
96 排気口
A 回動
B 回動
C 回動
D 往移動
E 復移動
F 回動
G 上昇動作
H 下降動作

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対し塗料を噴霧可能とする塗装機と、ブースの内部に収容され、上記ワークを支持してこのワークを上記塗装機の噴霧方向に対向可能とさせるワーク支持装置とを設け、このワーク支持装置が、縦向きの軸心回りに回動可能とされる回動体を有する回動装置と、上記回動体から径方向外方に突出し、その突出端側に上記ワークを支持して上記回動体と共に回動する支持アームとを備えた塗装装置において、
上記回動装置および支持アームの基部側を収容し、これら回動装置および支持アームの基部側と、上記塗装機、支持アームの突出端側およびこの突出端側に支持されるワークとの間を仕切る仕切体を設けたことを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
静止側部材に支持されて上記支持アームの突出端側に支持されたワークの姿勢を変化させるようこの支持アームを作動可能とする作動アクチュエータと、上記回動体の上記縦向きの軸心回りの回動により、上記支持アームが上記作動アクチュエータに対する所定位置に位置したとき、上記支持アームと上記作動アクチュエータとを互いに連結、連結解除可能とする連結装置とを設け、上記作動アクチュエータと連結装置とを上記仕切体を基準として上記支持アームの基部側寄りに配置したことを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項3】
上記仕切体の平面断面視で、この仕切体が上記回動装置および支持アームの基部側を囲繞する筒形状となるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項4】
上記仕切体の一部分をウォータカーテンで構成し、このウォータカーテンを上記支持アームの長手方向の中途部が貫通するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項5】
上記塗装機により上記ワークに向かって噴霧される塗料の噴霧方向が上記仕切体に向かうようにしたことを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項6】
上記ブースの内面と仕切体の外面との間の空間に向かって外部の空気を供給する給気口を上記空間の上部に形成し、この空間の空気を外部に排気する排気口を上記空間の底部に形成したことを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項7】
上記ブースの外部に設置されて、ワークを搬送可能とする搬送装置と、この搬送装置により搬送されてきたワークを上記支持アームに支持させるようこのワークを上記搬送装置から支持アームに移載可能とする一方、この支持アームに支持されていたワークを上記搬送装置により搬送可能とさせるようこのワークを上記支持アームから搬送装置に移載可能とする移載装置とを設けたことを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−136398(P2007−136398A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336421(P2005−336421)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】