説明

塩、レジスト組成物及びレジストパターンの製造方法

【課題】優れたラインエッジラフネス(LER)を有するパターンを形成することができるレジスト組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】式(I)で表される塩。


[式中、Q及びQは、それぞれ、フッ素原子又はペルフルオロアルキル基;L及びLは、2価の飽和炭化水素基を表し、該基中のメチレン基は、酸素原子等で置き換わっていてもよい;環Wは脂環式炭化水素を表し、該脂環式炭化水素中のメチレン基は、酸素原子等で置き換わっていてもよく、該脂環式炭化水素中の水素原子は、ヒドロキシル基、アルキル基等で置換されていてもよい;sは0〜3の整数;Rは脂肪族炭化水素基を表し、該基中のメチレン基は、酸素原子等で置き換わっていてもよい;R〜Rは、それぞれ、水素原子、アルキル基又は脂環式炭化水素基等を表す;Zは有機対イオンを表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸発生剤用の塩、レジスト組成物及びレジストパターンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、酸発生剤用の塩として、下記式で表される塩を酸発生剤として含有するレジスト組成物が記載されている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−74843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から知られる上記の酸発生剤を含むレジスト組成物を電子線用及びEUV用レジスト組成物として用いても、得られるパターンのラインエッジラフネス(LER)が必ずしも十分に満足できない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明を含む。
〔1〕式(I)で表される塩。

[式(I)中、
及びQは、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
は、炭素数1〜17の2価の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
は、炭素数1〜6の2価の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
環Wは、炭素数3〜36の脂環式炭化水素を表し、該脂環式炭化水素に含まれるメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよく、該脂環式炭化水素に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。
sは、0〜3の整数を表す。
は、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基を表し、該脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。sが2又は3である場合、複数存在するRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を表すか、或いは、R及びRが互いに結合して、それらが結合する炭素原子とともに炭素数3〜20の環を形成する。R及びRが互いに結合して形成される環、該アルキル基又は該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子、カルボニル基又はスルホニル基に置き換わっていてもよく、該脂環式炭化水素に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。
は、有機対イオンを表す。]
〔2〕前記環Wが、式(Ia1−1)で表される環、式(Ia1−2)で表される環又は式(Ia1−3)で表される環である〔1〕記載の塩。

[式(Ia1−1)、式(Ia1−2)及び式(Ia1−3)中、
環に含まれるメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよく、環に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。
*は結合手を表す。]
〔3〕前記Lが、*−CO−O−(CHt−(tは0〜6の整数を表す。*は、−C(Q)(Q)−の炭素原子との結合手を表す。)である〔1〕又は〔2〕記載の塩。
〔4〕前記Lが、*−CO−、*−(CH−CO−(CH−O−(CH−、−(CH−O−(uは0〜4の整数、vは0〜4、wは0〜4、xは1〜5の整数を表す。*は、酸素原子との結合手を表す。)である〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の塩。
〔5〕−C(R)(R)(R)が、式(I−R23−1)で表される環、式(I−R23−2)で表される環、式(I−R23−3)で表される環、式(I−R23−4)で表される環又は式(I−R23−5)で表される環である〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の塩。

[式(I−R23−1)、式(I−R23−2)、式(I−R23−3)、式(I−R23−4)及び式(I−R23−5)中、
は上記と同じ意味を表す。
環に含まれるメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよく、環に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。]
〔6〕前記Zが、アリールスルホニウムカチオンである〔1〕〜〔5〕のいずれか記載の塩。
〔7〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれか記載の塩を有効成分として含有する酸発生剤。
〔8〕上記〔7〕記載の酸発生剤と樹脂とを含有し、該樹脂は酸に不安定な基を有し、かつアルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸と作用してアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂であるレジスト組成物。
〔9〕さらに溶剤を含有する請求項8記載のレジスト組成物。
〔10〕さらに塩基性化合物を含有する〔8〕又は〔9〕記載のレジスト組成物。
〔11〕(1)上記〔8〕〜〔10〕のいずれか記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層に露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、及び
(5)加熱後の組成物層を現像する工程を含むレジストパターンの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
酸発生剤として本発明の塩を含むレジスト組成物を、電子線用及びEUV用レジスト組成物として用いれば、優れたラインエッジラフネス(LER)を有するレジストパターンを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
〈式(I)で表される塩〉
本発明の塩は、式(I)で表される(以下「塩(I)」という場合がある)。

[式(I)中、
及びQは、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
は、炭素数1〜17の2価の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
は、炭素数1〜6の2価の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
環Wは、炭素数3〜36の2価の脂環式炭化水素を表し、該脂環式炭化水素に含まれるメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよく、該脂環式炭化水素に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。
sは、0〜3の整数を表す。
は、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基を表し、該脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。sが2又は3である場合、複数存在するRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を表すか、或いは、R及びRが互いに結合して、それらが結合する炭素原子とともに炭素数3〜20の環を形成する。R及びRが互いに結合して形成される環、該アルキル基又は該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子、カルボニル基又はスルホニル基に置き換わっていてもよく、該脂環式炭化水素に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。
は、有機対イオンを表す。]
塩(I)のうち、正電荷を有するZで示される有機カチオンを除去してなる負電荷を有するものを「スルホン酸アニオン」ということがある。
【0008】
及びQのペルフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロsec−ブチル基、ペルフルオロtert−ブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基などが挙げられる。
式(I)においては、Q1及びQ2は、それぞれ独立に、トリフルオロメチル基又はフッ素原子であることが好ましく、ともにフッ素原子であることがより好ましい。
【0009】
の2価の飽和炭化水素基としては、直鎖及び分岐のアルカンジイル基、単環式又は多環式の2価の脂環式炭化水素基が挙げられ、これらの基のうち2種以上を組み合わせたものでもよい。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、ヘキサデカン−1,16−ジイル基、ヘプタデカン−1,17−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基及びプロパン−2,2−ジイル基等の直鎖状アルカンジイル基;
直鎖状アルカンジイル基に、アルキル基(特に、炭素数1〜4のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等)の側鎖を有したもの、例えば、ブタン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基、2−メチルプロパン−1,2−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、2−メチルブタン−1,4−ジイル基等の分岐状アルカンジイル基;
シクロブタン−1,3−ジイル基、シクロペンタン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,2−ジイル基、1−メチルシクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基、シクロオクタン−1,2−ジイル基、シクロオクタン−1,5−ジイル基等のシクロアルカンジイル基である単環式の2価の脂環式炭化水素基;
ノルボルナン−2,3−ジイル基、ノルボルナン−1,4−ジイル基、ノルボルナン−2,5−ジイル基、アダマンタン−1,2−ジイル基、アダマンタン−1,5−ジイル基、アダマンタン−2,6−ジイル基等の多環式の2価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。
また、後述する1価の脂環式炭化水素における任意の1つの水素原子を結合手としてものであってもよい。
【0010】
で表される2価の飽和炭化水素基に含まれるメチレン基が酸素原子又はカルボニル基で置き換わった基としては、例えば、以下の式(b1−1)〜式(b1−7)のいずれかで示される基が挙げられる。式(b1−1)〜式(b1−7)は、その左右を式(I)に合わせて記載しており、それぞれ*で示される2つの結合手のうち、左側の結合手はC(Q1)(Q2)の炭素原子と結合している。以下の式(b1−1)〜式(b1−7)の具体例も同様である。
【0011】

式(b1−1)〜式(b1−7)中、
b2は、単結合又は炭素数1〜15の2価の飽和炭化水素基を表す。
b3は、単結合又は炭素数1〜12の2価の飽和炭化水素基を表す。
b4は、炭素数1〜13の2価の飽和炭化水素基を表す。但しLb3及びLb4の合計炭素数の上限は13である。
b5は、炭素数1〜15の2価の飽和炭化水素基を表す。
b6は、単結合又は炭素数1〜15の2価の飽和炭化水素基を表す。
b7は、炭素数1〜15の2価の飽和炭化水素基を表す。但しLb6及びLb7の合計炭素数の上限は16である。
b8は、炭素数1〜14の2価の飽和炭化水素基を表す。
b9及びLb10は、それぞれ独立に、炭素数1〜11の2価の飽和炭化水素基を表す。但しLb9及びLb10の合計炭素数の上限は12である。
b11は、単結合又は炭素数1〜13の2価の飽和炭化水素基を表す。
b12は、炭素数1〜14の2価の飽和炭化水素基を表す。但しLb11及びLb12の合計炭素数の上限は14である。
【0012】
中でも、L1は、好ましくは式(b1−1)〜式(b1−4)のいずれかで示される基であり、より好ましくは式(b1−1)又は式(b1−3)で示される基であり、さらに好ましくは式(b1−1)で表される2価の基である。特に、Lb2が単結合又は炭素数1〜6の飽和炭化水素基である式(b1−1)で表される2価の基、即ち*−CO−O−(CH−(tは0〜6の整数を表し、*は、−C(Q)(Q)−との結合手を表す)であることが好ましく、単結合又はメチレン基である式(b1−1)で表される2価の基、即ち*−CO−O−がより好ましい。
【0013】
式(b1−1)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0014】
式(b1−2)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0015】
式(b1−3)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0016】
式(b1−4)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0017】
式(b1−5)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0018】
式(b1−6)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0019】
式(b1−7)で表される2価の基としては、例えば以下のものが挙げられる。

【0020】
の2価の飽和炭化水素基としては、Lで例示したものと同様のものが挙げられる。なかでも、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基などである。
【0021】
の2価の飽和炭化水素基に含まれるメチレン基が酸素原子又はカルボニル基で置き換わった基としては、*−CO−、*−(CH−CO−(CH−O−(CH−、−(CH−O−(uは0〜4の整数、vは0〜4、wは0〜4、xは1〜5の整数を表す。*は、酸素原子との結合手を表す。)
具体的には、*−CO−、*−CO−O−、*−CH−CO−O−、*−CO−CH−O−、*−CH−CO−O−CH−、*−CO−CH−O−CH−、*−CH−CH−O−等が挙げられる。
2としては、*−CO−O−、*−CO−、*−CH−CO−O−、*−CO−CH−O−が好ましく、*−CH−CO−O−がより好ましい。
【0022】
環Wの2価の脂環式炭化水素としては、上述した単環式又は多環式の脂環式炭化水素基と同様のものが挙げられ、なかでも、式(Ia1−1)で表される環、式(Ia1−2)で表される環又は式(Ia1−3)で表される環が好ましい。

[式(Ia1−1)、式(Ia1−2)及び式(Ia1−3)中、
環に含まれるメチレン基は酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよく、環に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。]
【0023】
環Wに置換されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、1−メチルエチル基(イソプロピル基)、1,1−ジメチルエチル基(tert−ブチル基)、2,2−ジメチルエチル基、プロピル基、1−メチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、ブチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−プロピルブチル基、ペンチル基、1−メチルペンチル基、ヘキシル基、1,4−ジメチルヘキシル基、ヘプチル基、1−メチルヘプチル基、オクチル基、メチルオクチル基、メチルノニル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の直鎖又は分岐のアルキル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘキトキシ基等が挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、上記と同様のものが挙げられる。なかでも、下記に示す基等が好ましい。

芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、p−メチルフェニル基、p−tert−ブチルフェニル基、p−アダマンチルフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、2,6−ジエチルフェニル基、2−メチル−6−エチルフェニル等のアリール基等が挙げられる。なかでも、フェニル基、ナフチル基等が好ましい。
【0024】
環Wにおける脂環式炭化水素に含まれるメチレン基が酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わった環としては、以下のものが挙げられる。

【0025】
の脂肪族炭化水素基としては、好ましくはアルキル基及び脂環式炭化水素基が挙げられ、これらの基のうち2種以上を組み合わせた脂肪族炭化水素基でもよい。このような基としては、以下のものが挙げられる。

【0026】
脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基が酸素原子又はカルボニル基に置き換わった基としては、以下に示すものが挙げられる。この場合、その置き換わった個数は最大2個程度である。

【0027】
、R及びRのアルキル基としては、上記と同様のものが挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などが挙げられる。
【0028】
−C(R)(R)(R)(*はLとの結合手を表す。)としては、下記に示すものが挙げられる。

【0029】
−C(R)(R)(R)におけるR及びRが互いに結合して形成する環としては、下記に示すものが挙げられる。*はLとの結合手を表す。このような環は、好ましくは炭素数3〜12である。

【0030】
及びRが互いに結合して形成される環又は該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基が、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基に置き換わったものとしては、下記に示すものが挙げられる。

【0031】
なかでも、−C(R)(R)(R)としては、式(I−R23−1)で表される環、式(I−R23−2)で表される環、式(I−R23−3)で表される環、式(I−R23−4)で表される環又は式(I−R23−5)で表される環であることが好ましく、式(I−R23−2)で表される環又は式(I−R23−3)で表される環であることがより好ましく、式(I−R23−3)で表される環であることがさらに好ましい。

[式(I−R23−1)、式(I−R23−2)、式(I−R23−3)、式(I−R23−4)及び式(I−R23−5)中、
は上記と同じ意味を表す。
環に含まれるメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよく、環に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。]
【0032】
塩(I)を構成するスルホン酸アニオンとしては、以下のものが挙げられる。

【0033】

【0034】
+で表される有機カチオンとしては、例えば、有機スルホニウムカチオン、有機ヨードニウムカチオン、有機アンモニウムカチオン、ベンゾチアゾリウムカチオン及び有機ホスホニウムカチオン等の有機オニウムカチオンが挙げられる。これらの中でも、有機スルホニウムカチオン及び有機ヨードニウムカチオンが好ましく、アリールスルホニウムカチオンがより好ましい。
【0035】
さらに好ましくは、以下の式(b2−1〜式(b2−4)のいずれかで表される有機カチオン〔以下、各式の番号に応じて、「カチオン(b2−1)」、「カチオン(b2−2)」、「カチオン(b2−3)」及び「カチオン(b2−4)」という場合がある。〕である。

【0036】
式(b2−1)〜式(b2−4)において、
b4、Rb5及びRb6は、それぞれ独立に、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。該アルキル基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数2〜4のアシル基又はグリシジルオキシ基で置換されていてもよく、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基で置換されていてもよい。また、Rb4とRb5が一緒になってイオウ原子を含む環を形成してもよい。
【0037】
b4とRb5が一緒になって形成してもよいイオウ原子を含む環としては、単環式、多環式、芳香族性、非芳香族性、飽和及び不飽和のいずれの環であってもよく、イオウ原子を1以上含むものであれば、さらに、1以上のイオウ原子及び/又は1以上の酸素原子を含んでいてもよい。該環としては、炭素数3〜18の環が好ましく、炭素数4〜13の環がより好ましい。
【0038】
b7及びRb8は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
m2及びn2は、それぞれ独立に0〜5の整数を表す。m2が2以上の場合、複数のRb7の全部又は一部は同じであってもよい。n2が2以上の場合、複数のRb8の全部又は一部は同じであってもよい。
【0039】
b9及びRb10は、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数3〜18の脂環式炭化水素基を表す。
b11は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。
b12は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の芳香族炭化水素基を表す。該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルキルカルボニルオキシ基で置換されていてもよい。
b9とRb10は、それらが結合する硫黄原子とともに互いに結合して3員環〜12員環(好ましくは3員環〜7員環)を形成していてもよく、Rb11とRb12は、それらが結合する−CH−CO−とともに3員環〜12員環(好ましくは3員環〜7員環)を形成していてもよい。
【0040】
b13〜Rb18は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
b11は、酸素原子又は硫黄原子を表す。
o2、p2、s2及びt2は、それぞれ独立に、0〜5の整数を表す。
q2及びr2は、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
u2は0又は1を表す。
o2が2以上であるとき、複数のRb13の全部又は一部は同じであってもよい。p2が2以上であるとき、複数のRb14の全部又は一部は同じであってもよい。q2が2以上であるとき、複数のRb15の全部又は一部は同じであってもよい。r2が2以上であるとき、複数のRb16の全部又は一部は同じであってもよい。s2が2以上であるとき、複数のRb15の全部又は一部は同じであってもよい。t2が2以上であるとき、複数のRb18の全部又は一部は同じであってもよい。
【0041】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基及び2−エチルヘキシル基が挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、単環式又は多環式のいずれでもよく、単環式の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などのシクロアルキル基が挙げられる。多環式の飽和炭化水素基としては、デカヒドロナフチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、メチルノルボルニル基、下記のような基等が挙げられる。*は、アダマンタン環又はシクロヘキサン環との結合手を表す。

芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、p−メチルフェニル基、p−tert−ブチルフェニル基、p−アダマンチルフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、2,6−ジエチルフェニル基、2−メチル−6−エチルフェニル等のアリール基等が挙げられる。
【0042】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基及びドデシルオキシ基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基及びブチリル基などが挙げら
れる。
アルキルカルボニルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、tert−ブチルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基及び2−エチルヘキシルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0043】
b9〜Rb12のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜12であり、特に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基及び2−エチルヘキシル基などが好ましい。
b9〜Rb11の脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数3〜18、より好ましくは炭素数4〜12であり、特に、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基、2−アルキルアダマンタン−2−イル基、1−(アダマンタン−1−イル)アルカン−1−イル基及びイソボルニル基などが好ましい。
b12の芳香族炭化水素基は、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−シクロへキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基、ビフェニリル基及びナフチル基などが好ましい。
b12の芳香族炭化水素基とアルキル基が結合したものは、典型的にはアラルキル基である。
【0044】
b9とRb10とが結合する硫黄原子とともに形成する環としては、例えば、チオラン−1−イウム環(テトラヒドロチオフェニウム環)、チアン−1−イウム環及び1,4−オキサチアン−4−イウム環などが挙げられる。
b11とRb12とが結合する−CH−CO−とともに形成する環としては、例えば、オキソシクロヘプタン環、オキソシクロヘキサン環、オキソノルボルナン環及びオキソアダマンタン環などが挙げられる。
【0045】
式(b2−1)〜式(b2−4)でそれぞれ表される有機対イオンとしては、具体的には、特開2010−204646号公報に記載されたカチオンが挙げられる。
中でも、カチオン(b2−1)が好ましく、以下の式(b2−1−1)で表される有機対イオン〔以下、「カチオン(b2−1−1)」という場合がある〕がより好ましく、トリフェニルスルホニウムカチオン(式(b2−1−1)中、v2=w2=x2=0である。)又はトリトリルスルホニウムカチオン(式(b2−1−1)中、v2=w2=x2=1であり、Rb19、Rb20及びRb21がいずれもメチル基である。)がさらに好ましい。
【0046】

式(b2−1−1)中、
b19、Rb20及びRb21は、それぞれ独立に、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18の脂環式炭化水素基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。Rb19〜Rb21から選ばれる2つが一緒になってヘテロ原子を有してもよい環を形成してもよい。
v2、w2及びx2は、それぞれ独立に0〜5の整数(好ましくは0又は1)を表す。
v2が2以上のとき、複数のRb19の全部又は一部は同じであってもよい。w2が2以上のとき、複数のRb20の全部又は一部は同じであってもよい。x2が2以上のとき、複数のRb21の全部又は一部は同じであってもよい。
【0047】
b19〜Rb21のアルキル基は、好ましくは炭素数が1〜12である。
脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数が4〜18である。
なかでも、Rb19、Rb20及びRb21は、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基である。
【0048】
カチオン(b2−1−1)としては、以下のカチオンが挙げられる。

【0049】

【0050】

【0051】
カチオン(b2−2)としては、以下のカチオンが挙げられる。

【0052】
カチオン(b2−3)としては、以下のカチオンが挙げられる。

【0053】
塩(I)は、スルホン酸アニオン及び有機対イオンの組合せであり、これらスルホン酸アニオンと有機対イオンとは任意に組み合わせることができる。
塩(I)としては、例えば、以下の表1に記載の塩が挙げられる。
【0054】
【表1−1】

【0055】
【表1−2】

【0056】
【表1−3】

【0057】
【表1−4】

【0058】
なかでも、以下に示す塩が好ましい。

【0059】

【0060】

【0061】

【0062】

【0063】
塩(I)で表される化合物のうち、例えば、Lが*−CO−O−CH−(*は、−C(Q)(Q)−との結合手を表す)、Lが*−CH−CO−O−(*は、−O−との結合手を表す)である式(b1)で表される塩は、式(b1−a)で表される塩と、式(b1−b)で表される化合物とを、溶剤中、触媒存在下で反応させることにより製造することができる。溶媒としては、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。触媒として、炭酸カリウム、ヨウ化カリウムなどが挙げられる。

(式中、Q、Q、環W、R、R、R、R、s及びZは、それぞれ前記と同義である。)
式(b1−b)で表される化合物としては、以下で表される化合物などが挙げられる。

【0064】
式(b1−a)で表される塩は、式(b1−c)で表される塩と、式(b1−d)で表される化合物とを、溶剤中、酸触媒存在下で反応させることにより製造することができる。溶媒としては、モノクロロベンゼンなどが挙げられる。触媒として、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。

(式中、Q、Q、環W、R、s及びZは、それぞれ前記と同義である。)
【0065】
式(b1−a)で表される塩は、例えば、特開2006−257078号公報に記載された方法で合成することができる。
式(b1−b)で表される化合物としては、フェノール、2,6−キシレノール等が挙げられる。
【0066】
<酸発生剤>
本発明の酸発生剤は、塩(I)を含有する。本発明の酸発生剤は、1種又は2種以上の塩(I)を含んでもよい。
また、本発明の酸発生剤は、さらに、塩(I)以外の、酸発生剤として公知の塩(例えば、塩(I)に含まれる有機対イオン及び公知のアニオン(塩(I)に含まれるスルホン酸アニオン以外のアニオン)からなる塩並びに塩(I)に含まれるスルホン酸アニオン及び公知のカチオン(塩(I)に含まれる有機対イオン以外のカチオン)からなる塩等)を含んでいてもよい。酸発生剤に含まれる塩(I)以外の塩を「酸発生剤(B)」という場合がある。
【0067】
塩(I)と併用する酸発生剤(B)としては、塩(I)に含まれるスルホン酸アニオン以外のスルホン酸アニオンと有機スルホニウムカチオンとからなる化合物が挙げられる。このようなスルホン酸アニオンとしては、特開2010−204646号公報に記載されたアニオンが挙げられる。例えば、式(B1−1)〜式(B1−20)で表されるものが挙げられる。なかでもトリアリールスルホニウムカチオンを含むものが好ましく、より好ましくはトリフェニルスルホニウムカチオンを含むもの又はトリトリルスルホニウムカチオンを含むものである。式(B1−1)、式(B1−2)、式(B1−3)、式(B1−6)、式(B1−7)、式(B1−11)、式(B1−12)、式(B1−13)及び式(B1−14)から選択される塩がさらに好ましい。
【0068】

【0069】

【0070】

【0071】

【0072】

【0073】
酸発生剤において、塩(I)の含有量は、酸発生剤全量100質量部に対して、5質量部以上であり、好ましくは10質量部以上(より好ましくは30質量部以上)、100質量部以下、好ましくは95質量部以下(より好ましくは90質量部以下)である。
また、酸発生剤においては、塩(I)と酸発生剤(B)との含有量の比(質量)は、例えば、5:95〜100:0、好ましくは5:95〜95:5、より好ましくは10:90〜90:10、さらに好ましくは15:85〜85:15、より一層好ましくは30:70〜70:30である。
【0074】
<レジスト組成物>
本発明のレジスト組成物は、上述した酸発生剤と樹脂(以下「樹脂(A)」という場合がある)とを含む。
また、レジスト組成物は、さらに塩基性化合物(以下「塩基性化合物(C)」という場合がある)及び溶剤(以下「溶剤(E)」という場合がある)が含有されていることが好ましい。
【0075】
<酸発生剤>
本発明のレジスト組成物においては、塩(I)の含有量は、後述する樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上(より好ましくは3質量部以上)、好ましくは40質量部以下(より好ましくは35質量部以下)である。
また、塩(I)と酸発生剤(B)とを含有する場合には、塩(I)と酸発生剤(B)との合計含有量は、樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上(より好ましくは3質量部以上)、好ましくは40質量部以下(より好ましくは35質量部以下)である。
【0076】
<樹脂(A)>
本発明のレジスト組成物に含有される樹脂(A)は、酸に不安定な基を有し、かつアルカリ水溶液に不溶又は難溶な樹脂であり、酸の作用によりアルカリ水溶液に可溶となる樹脂である。「酸の作用によりアルカリ水溶液で溶解し得る」とは、「酸との接触前にはアルカリ水溶液に不溶又は難溶であるが、酸との接触後にはアルカリ水溶液に可溶となる」ことを意味する。樹脂(A)は、酸に不安定な基を有するモノマー(以下「酸に不安定な基を有するモノマー(a1)」という場合がある)を重合することによって製造することができ、酸の作用によりアルカリ可溶となる。酸に不安定な基を有するモノマー(a1)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
なお、本明細書では、「(メタ)アクリル系モノマー」とは、「CH2=CH−CO−」又は「CH2=C(CH3)−CO−」の構造を有するモノマーの少なくとも1種を意味する。同様に「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル酸」とは、それぞれ「アクリレート及びメタクリレートの少なくとも1種」及び「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種」を意味する。
【0078】
〈酸に不安定な基を有するモノマー(a1)〉
「酸に不安定な基」とは、酸と接触すると脱離基が開裂して、親水性基(例えば、ヒドロキシ基又はカルボキシ基)を形成する基を意味する。酸に不安定な基としては、例えば、式(1)で表される基、式(2)で表される基などが挙げられる。
【0079】

[式(1)中、Ra1〜Ra3は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を表すか、Ra1及びRa2は互いに結合して炭素数2〜20の2価の炭化水素基を形成する。*は結合手を表す。]

[式(2)中、Ra1’及びRa2’は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Ra3’は、炭素数1〜20の炭化水素基を表すか、Ra2’及びRa3’は互いに結合して炭素数2〜20の2価の炭化水素基を形成し、該炭化水素基及び2価の基に含まれるメチレン基は、酸素原子又は硫黄原子で置き換わっていてもよい。]
a1〜Ra3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、単環式又は多環式のいずれでもよく、単環式の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などのシクロアルキル基が挙げられる。多環式の飽和炭化水素基としては、デカヒドロナフチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、メチルノルボルニル基及び下記のような基等が挙げられる。式(1)では、脂環式炭化水素基の炭素数は、好ましくは炭素数3〜16である。

【0080】
a1及びRa2が互いに結合して2価の炭化水素基を形成する場合、−C(Ra1)(Ra2)(Ra3)基としては、下記の基が挙げられる。2価の炭化水素基の炭素数は、好ましくは炭素数3〜12である。

【0081】
式(1)で表される酸に不安定な基としては、例えば、1,1−ジアルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1〜Ra3がアルキル基である基、好ましくはtert−ブトキシカルボニル基)、2−アルキルアダマンタン−2−イルオキシカルボニル基(式(1)中、Ra1、Ra2及び炭素原子がアダマンチル基を形成し、Ra3がアルキル基である基)及び1−(アダマンタン−1−イル)−1−アルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1及びRa2がアルキル基であり、Ra3がアダマンチル基である基)などが挙げられる。
【0082】
a1’〜Ra3’の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。
アルキル基及び脂環式炭化水素基は、上記と同様のものが挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、p−メチルフェニル基、p−tert−ブチルフェニル基、p−アダマンチルフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、2,6−ジエチルフェニル基、2−メチル−6−エチルフェニル等のアリール基等が挙げられる。
2価の炭化水素基としては、Ra1及びRa2が互いに結合して形成する2価の炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0083】
好ましくは、Ra1’及びRa2’のうち少なくとも1つが水素原子である。
式(2)で表される基の具体例としては、以下の基が挙げられる。

【0084】
酸に不安定な基を有するモノマー(a1)は、好ましくは、酸に不安定な基と炭素−炭素二重結合とを有するモノマー、より好ましくは酸に不安定な基を有する(メタ)アクリル系モノマーである。
【0085】
酸に不安定な基を有する(メタ)アクリル系モノマーのうち、好ましくは、炭素数5〜20の脂環式炭化水素基を有するものが挙げられる。脂環式炭化水素基のような嵩高い構造を有するモノマー(a1)を重合して得られる樹脂を使用すれば、レジストの解像度を向上させることができる。
【0086】
酸に不安定な基と脂環式炭化水素基とを有する(メタ)アクリル系モノマーとして、好ましくは式(a1−1)で表される構造単位(以下、「構造単位(a1−1)」という場合がある)を誘導するモノマー(以下、「モノマー(a1−1)」という場合がある)又は式(a1−2)又は式(a1−2)で表される構造単位(以下、「構造単位(a1−2)」という場合がある)を誘導するモノマー(以下、「モノマー(a1−2)」という場合がある)が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】

[式(a1−1)及び式(a1−2)中、
a1及びLa2は、それぞれ独立に、−O−又は−O−(CH2k1−CO−O−を表し、k1は1〜7の整数を表し、*は−CO−との結合手を表す。
a4及びRa5は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
a6及びRa7は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜10の脂環式炭化水素基を表す。
m1は0〜14の整数を表す。
n1は0〜10の整数を表す。
n1’は0〜3の整数を表す。]
【0088】
a1及びLa2は、好ましくは、−O−又は−O−(CH2k1−CO−O−であり、より好ましくは−O−である。k1は、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1である。
a4及びRa5は、好ましくはメチル基である。
a6及びRa7のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。Ra6及びRa7のアルキル基は、好ましくは炭素数6以下である。
a6及びRa7の脂環式炭化水素基としては、単環式又は多環式のいずれでもよく、単環式の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などのシクロアルキル基が挙げられる。多環式の飽和炭化水素基としては、デカヒドロナフチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、メチルノルボルニル基及び下記のような基等が挙げられる。

脂環式炭化水素基は、好ましくは炭素数8以下、より好ましくは6以下である。
m1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
n1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
n1’は、好ましくは0又は1である。
【0089】
式(a1−1)で表されるモノマーとしては、例えば、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。下式(a1−1−1)〜(a1−1−6)で表されるモノマーが好ましく、下式(a1−1−1)〜(a1−1−3)で表されるモノマーがより好ましい。

【0090】
式(a1−2)で表されるモノマーとしては、例えば、1−エチルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキサン−1−イル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘプタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート、1−イソプロピルシクロペンタン−1−イル(メタ)アクリレート等が挙げられる。下式(a1−2−1)〜(a1−2−6)で表されるモノマーが好ましく、下式(a1−2−3)〜(a1−2−4)で表されるモノマーがより好ましく、下式(a1−2−3)で表されるモノマーがさらに好ましい。

【0091】
樹脂(A)における構造単位(a1−1)及び/又は構造単位(a1−2)の含有率は、樹脂(A)の全構造単位において、通常10〜95モル%であり、好ましくは15〜90モル%であり、より好ましくは20〜85モル%である。
【0092】
〈酸安定モノマー〉
樹脂(A)は、好ましくは、酸に不安定な基を有するモノマー(a1)と、酸に不安定な基を有さないモノマー(以下「酸安定モノマー」という場合がある)との共重合体である。酸安定モノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂(A)が酸に不安定な基を有するモノマー(a1)と酸安定モノマーとの共重合体である場合、酸に不安定な基を有するモノマー(a1)に由来する構造単位は、全構造単位100モル%に対して、好ましくは10〜80モル%、より好ましくは20〜60モル%である。また、アダマンチル基を有するモノマー(特に酸に不安定な基を有するモノマー(a1−1))に由来する構造単位の含有率は、好ましくは酸に不安定な基を有するモノマー(a1)に対して15モル%以上である。アダマンチル基を有するモノマーの比率が増えると、レジストのドライエッチング耐性が向上する。
【0093】
酸安定モノマーとしては、好ましくは、ヒドロキシ基又はラクトン環を有するモノマーが挙げられる。ヒドロキシ基を有する酸安定モノマー(以下「ヒドロキシ基を有する酸安定モノマー(a2)」という場合がある)又はラクトン環を含有する酸安定モノマー(以下「ラクトン環を有する酸安定モノマー(a3)」という場合がある)に由来する構造単位を有する樹脂を使用すれば、レジストの解像度及び基板への密着性を向上させることができる。
【0094】
〈ヒドロキシ基を有する酸安定モノマー(a2)〉
レジスト組成物をKrFエキシマレーザ露光(248nm)、電子線あるいはEUV光などの高エネルギー線露光に用いる場合、ヒドロキシ基を有する酸安定モノマー(a2)として、好ましくは、ヒドロキシスチレン類であるフェノール性ヒドロキシ基を有する酸安定モノマー(a2−0)を使用する。
一方、短波長のArFエキシマレーザ露光(193nm)などを用いる場合は、ヒドロキシ基を有する酸安定モノマー(a2)として、好ましくは、式(a2−1)で表されるヒドロキシアダマンチル基を有する酸安定モノマーを使用する。ヒドロキシ基を有する酸安定モノマー(a2)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0095】
フェノール性ヒドロキシ基を有するモノマー(a2−0)として、式(a2−0)で表されるp−又はm−ヒドロキシスチレンなどのスチレン系モノマーが挙げられる。
【0096】

[式(a2−0)中、
a30は、水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
a31は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数2〜4のアシルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を表す。
maは0〜4の整数を表す。maが2以上の整数である場合、複数のRa31は同一であっても異なってもよい。]
【0097】
a30及びRa31のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基が挙げられ、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基であり、より好ましくは、炭素数1又は2のアルキル基であり、特に好ましくは、メチル基である。
a31のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘキトキシ基等が挙げられ、好ましくは、炭素数1〜4のアルコキシ基であり、より好ましくは、炭素数1又は2のアルコキシ基であり、特に好ましくは、メトキシ基である。
アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基及びブチリル基などが挙げら
れる。
アシルオキシ基としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基等が挙げられる。
maは、好ましくは、0〜2であり、より好ましくは、0又は1であり、特に好ましくは、0である。
【0098】
このようなフェノール性ヒドロキシ基を有するモノマーに由来する構造単位を有する共重合樹脂を得る場合は、該当する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとアセトキシスチレン及び/又は他の重合性モノマーとをラジカル重合した後、塩基を用いて脱アセチルすることによって得ることができる。
フェノール性ヒドロキシ基を有するモノマーとしては、例えば、特開2010−204634号公報に記載されたモノマーが挙げられる。下式(a2−0−1)及び(a2−0−2)で表されるモノマーが好ましい。樹脂(A)を製造する際には、これらにあるフェノール性ヒドロキシ基が適当な保護基で保護したものを用いることもできる。

【0099】
樹脂(A)が、酸安定モノマー(a2−0)に由来する構造単位を有する場合、その含有率は、樹脂の全単位において、通常5〜90モル%であり、好ましくは10〜85モル%であり、より好ましくは15〜80モル%である。
【0100】
ヒドロキシアダマンチル基を有する酸安定モノマーとして、式(a2−1)で表されるモノマーが挙げられる。

式(a2−1)中、
a3は、−O−又は−O−(CH2k2−CO−O−を表し、
k2は1〜7の整数を表す。*は−CO−との結合手を表す。
a14は、水素原子又はメチル基を表す。
a15及びRa16は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又はヒドロキシ基を表す。
o1は、0〜10の整数を表す。
【0101】
式(a2−1)では、La3は、好ましくは、−O−、−O−(CH2f1−CO−O−であり(前記f1は、1〜4の整数である)、より好ましくは−O−である。
a14は、好ましくはメチル基である。
a15は、好ましくは水素原子である。
a16は、好ましくは水素原子又はヒドロキシ基である。
o1は、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0又は1である。
【0102】
ヒドロキシアダマンチル基を有する酸安定モノマー(a2−1)としては、例えば、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。それぞれ下式(a2−1−1)〜(a2−1−6)で表されるモノマーが好ましく、それぞれ下式(a2−1−1)〜(a2−1−4)で表されるモノマーがより好ましく、それぞれ下式(a2−1−1)又は(a2−1−3)で表されるモノマーがさらに好ましい。

【0103】
樹脂(A)が式(a2−1)で表されるモノマーに由来する構造単位を含有する場合、その含有率は、樹脂(A)の全単位において、通常3〜45モル%であり、好ましくは5〜40モル%であり、より好ましくは5〜35モル%であり、さらに好ましくは5〜20モル%である。
【0104】
〈ラクトン環を有する酸安定モノマー(a3)〉
酸安定モノマー(a3)が有するラクトン環は、例えば、β−プロピオラクトン環、γ−ブチロラクトン環、δ−バレロラクトン環のような単環でもよく、単環式のラクトン環と他の環との縮合環でもよい。これらラクトン環の中で、好ましくは、γ−ブチロラクトン環、又は、γ−ブチロラクトン環と他の環との縮合環が挙げられる。
【0105】
ラクトン環を有する酸安定モノマー(a3)は、好ましくは、式(a3−1)、式(a3−2)又は式(a3−3)で表される。これらの1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0106】

式(a3−1)〜式(a3−3)中、
a4〜La6は、それぞれ独立に、−O−又は−O−(CH2k3−CO−O−を表す。
k3は1〜7の整数を表す。*は−CO−との結合手を表す。
a18〜Ra20は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
a21は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
p1は0〜5の整数を表す。
a22及びRa23は、それぞれ独立に、カルボキシ基、シアノ基又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
q1及びr1は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。
p1が2以上のとき、複数のRa21の全部又は一部は同じであってもよい。
q1が2以上のとき、複数のRa22の全部又は一部は同じであってもよい。
r1が2以上のとき、複数のRa23の全部又は一部は同じであってもよい。
【0107】
式(a3−1)〜式(a3−3)では、La4、La5及びLa6としては、La3で説明したものが挙げられる。
a4〜La6は、それぞれ独立に、−O−又は−O−(CH2k3−CO−O−であることが好ましく、より好ましくは−O−である。k3は、好ましくは1〜4の整数であり、より好ましくは1である。
a18〜Ra21は、それぞれ独立に、好ましくはメチル基である。
a22及びRa23は、それぞれ独立に、好ましくはカルボキシ基、シアノ基又はメチル基である。
p1〜r1は、それぞれ独立に、好ましくは0〜2、より好ましくは0又は1である。
【0108】
ラクトン環を有する酸安定モノマー(a3)としては、特開2010−204646号公報に記載されたモノマーが挙げられる。それぞれ下式(a3−1−1)〜(a3−1−4)、(a3−2−1)〜(a3−2−4)、(a3−3−1)〜(a3−3−4)で表されるモノマーが好ましく、それぞれ下式(a3−1−1)〜(a3−1−2)、(a3−2−3)〜(a3−2−4)で表されるモノマーがより好ましく、それぞれ下式(a3−1−1)又は(a3−2−3)で表されるモノマーがさらに好ましい。

【0109】
樹脂(A)がラクトン環を有する酸安定モノマー(a3)に由来する構造単位を含有する場合、その合計含有率は、樹脂(A)の全構造単位において、通常5〜70モル%であり、好ましくは10〜65モル%であり、より好ましくは15〜60モル%である。
また、モノマー(a3−1)に由来する構造単位、モノマー(a3−2)に由来する構造単位及びモノマー(a3−3)に由来する構造単位それぞれの含有量は、樹脂(A)の全構造単位(100モル%)に対して、5〜60モル%が好ましく、5〜50モル%の範囲がさらに好ましく、10〜50モル%の範囲がとりわけ好ましい。
【0110】
〈その他のモノマー(a4)〉
樹脂は、上述したモノマー以外のその他の公知のモノマー(a4)に由来する構造単位を有していてもよい。
【0111】
好ましくは、樹脂(A)は、少なくとも、酸に不安定な基を有するモノマー(a1)、ヒドロキシ基を有する酸安定モノマー(a2)及び/又はラクトン環を有する酸安定モノマー(a3)を重合させた共重合体である。この共重合体において、酸に不安定な基を有するモノマー(a1)は、より好ましくはアダマンチル基を有するモノマー(a1−1)及びシクロへキシル基を有するモノマー(a1−2)の少なくとも1種(さらに好ましくはアダマンチル基を有するモノマー(a1−1))であり、ヒドロキシ基を有する酸安定モノマー(a2)は、好ましくはヒドロキシアダマンチル基を有する酸安定モノマー(a2−1)であり、ラクトン環を有する酸安定モノマー(a3)は、より好ましくはγ−ブチロラクトン環を有する酸安定モノマー(a3−1)及びγ−ブチロラクトン環とノルボルナン環との縮合環を有する酸安定モノマー(a3−2)の少なくとも1種である。樹脂(A)は、公知の重合法(例えばラジカル重合法)によって製造できる。
【0112】
樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは2,500以上であり、より好ましくは3,000以上、さらに好ましくは4,000以上である。該重量平均分子量の上限は50,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、15,000以下がさらに好ましい。
樹脂(A)の含有率は、好ましくは、組成物の固形分中80質量%以上99質量%以下である。
なお本明細書において「組成物中の固形分」とは、後述する溶剤(E)を除いたレジスト組成物成分の合計を意味する。組成物中の固形分及びこれに対する樹脂(A)の含有率は、例えば、液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段で測定することができる。
【0113】
〈塩基性化合物(以下「塩基性化合物(C)」という場合がある)〉
本発明のレジスト組成物は、さらに、塩基性化合物(C)を含むことが好ましい。塩基性化合物(C)はクエンチャーとして作用する。
【0114】
塩基性化合物(C)は、好ましくは塩基性の含窒素有機化合物であり、例えばアミン及びアンモニウム塩が挙げられる。アミンとしては、脂肪族アミン及び芳香族アミンが挙げられる。脂肪族アミンとしては、第一級アミン、第二級アミン及び第三級アミンが挙げられる。塩基性化合物(C)として、好ましくは、式(C1)で表される化合物〜式(C8)で表される化合物が挙げられ、より好ましくは式(C1−1)で表される化合物が挙げられる。
【0115】

[式(C1)中、Rc1、Rc2及びRc3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基及び該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよく、該芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。]
【0116】

[式(C1−1)中、Rc2及びRc3は、上記と同じ意味を表す。
c4は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。
m3は0〜3の整数を表し、m3が2以上のとき、複数のRc4は、互いに同一でも異なってもよい。]
【0117】

[式(C2)、式(C3)及び式(C4)中、Rc5、Rc6、Rc7及びRc8は、それぞれ独立に、Rc1と同じ意味を表す。
c9は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6の脂環式炭化水素基又は炭素数2〜6のアルカノイル基を表す。
n3は0〜8の整数を表し、n3が2以上のとき、複数のRc9は、互いに同一でも異なってもよい。]
【0118】

[式(C5)及び式(C6)中、Rc10、Rc11、Rc12、Rc13及びRc16は、それぞれ独立に、Rc1と同じ意味を表す。
c14、Rc15及びRc17は、それぞれ独立に、Rc4と同じ意味を表す。
o3及びp3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表し、o3又はp3が2以上であるとき、それぞれ、複数のRc14及びRc15は互いに同一でも異なってもよい。
c1は、炭素数1〜6のアルカンジイル基、−CO−、−C(=NH)−、−S−又はこれらを組合せた2価の基を表す。]
【0119】

[式(C7)及び式(C8)中、Rc18、Rc19及びRc20は、それぞれ独立に、Rc4と同じ意味を表す。
q3、r3及びs3は、それぞれ独立に0〜3の整数を表し、q3、r3及びs3が2以上であるとき、それぞれ、複数のRc18、Rc19及びRc20は互いに同一でも異なってもよい。
c2は、単結合又は炭素数1〜6のアルカンジイル基、−CO−、−C(=NH)−、−S−又はこれらを組合せた2価の基を表す。]
【0120】
式(C1)〜式(C8)においては、アルキル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシ基、アルカンジイル基は、上述したものと同様のものが挙げられる。
アルカノイル基としては、アセチル基、2−メチルアセチル基、2,2−ジメチルアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、2,2−ジメチルプロピオニル基等が挙げられる。
【0121】
式(C1)で表される化合物としては、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミン、アニリン、ジイソプロピルアニリン、2−,3−又は4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジペンチルアミン、メチルジヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、メチルジヘプチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、メチルジデシルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン等が挙げられ、好ましくはジイソプロピルアニリンが挙げられ、特に好ましくは2,6−ジイソプロピルアニリンが挙げられる。
【0122】
式(C2)で表される化合物としては、ピペラジン等が挙げられる。
式(C3)で表される化合物としては、モルホリン等が挙げられる。
式(C4)で表される化合物としては、ピペリジン及び特開平11−52575号公報に記載されているピペリジン骨格を有するヒンダードアミン化合物等が挙げられる。
式(C5)で表される化合物としては、2,2’−メチレンビスアニリン等が挙げられる。
式(C6)で表される化合物としては、イミダゾール、4−メチルイミダゾール等が挙げられる。
式(C7)で表される化合物としては、ピリジン、4−メチルピリジン等が挙げられる。
式(C8)で表される化合物としては、1,2−ジ(2−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(2−ピリジル)エテン、1,2−ジ(4−ピリジル)エテン、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン、1,2−ジ(4−ピリジルオキシ)エタン、ジ(2−ピリジル)ケトン、4,4’−ジピリジルスルフィド、4,4’−ジピリジルジスルフィド、2,2’−ジピリジルアミン、2,2’−ジピコリルアミン、ビピリジン等が挙げられる。
【0123】
アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3−(トリフルオロメチル)フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムサリチラート及びコリン等が挙げられる。
【0124】
塩基性化合物(C)の含有率は、レジスト組成物の固形分量を基準に、好ましくは、0.01〜5質量%程度であり、より好ましく0.01〜3質量%程度であり、特に好ましく0.01〜1質量%程度である。
【0125】
〈溶剤(以下「溶剤(E)」という場合がある〉
本発明のレジスト組成物は、溶剤(E)を含むことが好ましい。溶剤(E)の含有率は、例えば、レジスト組成物中90質量%以上、好ましくは92質量%以上、より好ましくは94質量%以上で含有されており、例えば、99.9質量%以下、好ましくは99質量%以下で含有されている。
溶剤(E)の含有率は、例えば液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィー等の公知の分析手段で測定できる。
【0126】
溶剤(E)としては、例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル類;乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチルのようなエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノンのようなケトン類;γ−ブチロラクトンのような環状エステル類;等を挙げることができる。溶剤(E)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0127】
〈その他の成分(以下「その他の成分(F)」という場合がある)〉
本発明のレジスト組成物は、必要に応じて、その他の成分(F)を含有していてもよい。成分(F)に特に限定はなく、レジスト分野で公知の添加剤、例えば、増感剤、溶解抑止剤、界面活性剤、安定剤、染料等を利用できる。
【0128】
<レジスト組成物の調製方法>
レジスト組成物は、式(I)で表される塩及び樹脂(A)、任意に溶剤(E)、塩基性化合物(C)及び/又はその他の成分(F)等を混合することで調製することができる。混合順は任意であり、特に限定されるものではない。混合する際の温度は、10〜40℃の範囲から、樹脂などの種類や樹脂等の溶剤(E)に対する溶解度等に応じて適切な温度範囲を選ぶことができる。混合時間は、混合温度に応じて選べばよく、0.5〜24時間が好ましい。なお、混合手段は特に限定されず、攪拌混合などを用いることができる。
【0129】
このように、式(I)で表される塩及び樹脂(A)並びに必要に応じて用いられる溶剤(E)、塩基性化合物(C)又は成分(F)等の各々を好ましい含有量で混合した後は、孔径0.003〜0.2μm程度のフィルターを用いてろ過等することにより、本レジスト組成物を調製することができる。
【0130】
〈レジストパターンの製造方法〉
本発明のレジストパターンの製造方法は、
(1)本発明のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層に露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、及び
(5)加熱後の組成物層を現像する工程を含む。
【0131】
レジスト組成物の基体上への塗布は、スピンコーター等、通常、用いられる装置によって行うことができる。
【0132】
塗布後の組成物を乾燥させて溶剤を除去する。乾燥は、例えば、ホットプレート等の加熱装置を用いた加熱手段(いわゆるプリベーク)、あるいは減圧装置を用いた減圧手段により、或いはこれらの手段を組み合わることにより行われる。この場合の温度は、例えば、50〜200℃程度が好ましい。また、圧力は、1〜1.0×10Pa程度が好ましい。
【0133】
得られた組成物層は、通常、露光機を用いて露光する。露光機は、液浸露光機であってもよい。この際、通常、求められるパターンが形成されたマスク(フォトマスク)を介して露光が行われる。露光光源としては、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、F2エキシマレーザ(波長157nm)のような紫外域のレーザ光を放射するもの、固体レーザ光源(YAG又は半導体レーザ等)からのレーザ光を波長変換して遠紫外域または真空紫外域の高調波レーザ光を放射するもの等、種々のものを用いることができる。また、露光機は、電子線、超紫外光(EUV)を照射するものであってもよい。本明細書において、これらの放射線を照射することを総称して「露光」という場合がある。
【0134】
露光後の組成物層は、脱保護基反応を促進するための加熱処理(いわゆるポストエキスポジャーベーク)が行われる。加熱温度としては、通常50〜200℃程度、好ましくは70〜150℃程度である。
加熱後の組成物層を、現像装置を用いて、通常、アルカリ現像液を利用して現像する。
ここで用いられるアルカリ現像液は、この分野で用いられる各種のアルカリ性水溶液であればよい。例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドや(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液等が挙げられる。
現像後、超純水でリンスし、基板及びパターン上に残った水を除去することが好ましい。
【0135】
〈用途〉
本発明のレジスト組成物は、KrFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、ArFエキシマレーザ露光用のレジスト組成物、電子線(EB)照射用のレジスト組成物又はEUV露光機用のレジスト組成物あるいは液浸露光用のレジスト組成物として好適であり、半導体の微細加工に有用である。
【実施例】
【0136】
実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。例中、含有量ないし使用量を表す「%」及び「部」は、特記しないかぎり質量基準である。樹脂(A)の組成比(樹脂(A)製造に用いた各モノマーに由来する構造単位の、樹脂(A)に対する共重合比)は、重合終了後の反応液における未反応モノマー量を、液体クロマトグラフィーを用いて測定し、得られた結果から重合に用いられたモノマー量を求めることにより算出した。また重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求めた値である。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの分析条件は下記のとおりである。
装置 :HLC−8120GPC型(東ソー社製)
カラム:TSKgel Multipore HXL-M x 3+guardcolumn(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μl
分子量標準:標準ポリスチレン(東ソー社製)
【0137】
化合物の構造は、質量分析(LCはAgilent製1100型、MASSはAgilent製LC/MSD型)を用い、分子ピークを測定することで確認した。以下の実施例ではこの分子ピークの値を「MASS」で示す。
【0138】
実施例1:式(I1)で表される塩の合成

式(I1−a)で表される塩19.92部、式(I1−b)で表される化合物6.06部及びモノクロロベンゼン100部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、トリフルオロ酢酸1.49部を添加し、125℃で、2時間還流した。得られた反応物を濃縮した。得られた濃縮物に、クロロホルム215.10部及びイオン交換水71.70部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置し、分液し、有機層を回収した。回収された有機層に、イオン交換水71.70部を仕込み23℃で30分間攪拌した。分液することにより有機層を回収した。この水洗の操作をさらに6回行った。得られた有機層に活性炭2.45部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、アセトニトリル51.75部を添加して溶解し、濃縮し、tert−ブチルメチルエーテル129.30部を加えて攪拌し、上澄液を除去し、濃縮した。得られた濃縮物に、アセトニトリル40部を添加して溶解し、濃縮し、酢酸エチル131.05部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。得られた濃縮物に、アセトニトリル30部を添加して溶解し、濃縮し、tert−ブチルメチルエーテル78.63部を加えて攪拌し、ろ過することにより、式(I1−c)で表される塩15.25部を得た。
【0139】

式(I1−c)で表される塩1.00部、ジメチルホルムアミド10部及び式(I1−d)で表される化合物0.40部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、炭酸カリウム0.11部及びヨウ化カリウム0.03部を添加し、100℃で、12時間攪拌した。得られた反応物を23℃まで冷却し、クロロホルム115.38部及び1%シュウ酸水溶液57.69部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置し、分液し、有機層を回収した。回収された有機層に、イオン交換水57.69部を仕込み23℃で30分間攪拌した。分液することにより有機層を回収した。この水洗の操作をさらに5回行った。得られた有機層に活性炭1.19部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル12.50部を加えて攪拌し、上澄液を除去し、得られた残渣に、アセトニトリル10部を添加して溶解し、濃縮し、酢酸エチル10.10部を加えて、23℃で12時間攪拌した。これをろ過することにより、式(I1)で表される塩0.59部を得た。
【0140】
MASS(ESI(+)Spectrum):M 263.1
MASS(ESI(−)Spectrum):M 663.3
【0141】
実施例2:式(I3)で表される塩の合成

式(I1−c)で表される塩1.00部、ジメチルホルムアミド10部及び式(I3−d)で表される化合物0.36部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、炭酸カリウム0.11部及びヨウ化カリウム0.03部を添加し、100℃で、12時間攪拌した。得られた反応物を23℃まで冷却し、クロロホルム100部及び1%シュウ酸水溶液50部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置し、分液し、有機層を回収した。回収された有機層に、イオン交換水50部を仕込み23℃で30分間攪拌した。これを分液することにより有機層を回収した。この水洗の操作をさらに5回行った。得られた有機層に活性炭1.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル15部を加えて攪拌し、上澄液を除去し、得られた残渣に、アセトニトリル10部を添加して溶解し、濃縮した。これに酢酸エチル10部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。得られた残渣をアセトニトリルに再溶解し、濃縮することにより、式(I3)で表される塩0.43部を得た。
【0142】
MASS(ESI(+)Spectrum):M 263.1
MASS(ESI(−)Spectrum):M 637.2
【0143】
実施例3:式(I7)で表される塩の合成

式(I1−c)で表される塩1.00部、ジメチルホルムアミド10部及び式(I3−d)で表される化合物0.38部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、炭酸カリウム0.11部及びヨウ化カリウム0.03部を添加し、100℃で、12時間攪拌した。得られた反応物を23℃まで冷却し、クロロホルム100部及び1%シュウ酸水溶液50部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置し、分液し、有機層を回収した。回収された有機層に、イオン交換水50部を仕込み23℃で30分間攪拌した。分液することにより有機層を回収した。この水洗の操作をさらに5回行った。得られた有機層に活性炭1.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル15部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。得られた残渣に、アセトニトリル10部を添加して溶解し、濃縮した。これに、酢酸エチル10部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。得られた残渣をアセトニトリルに再溶解し、濃縮することにより、式(I7)で表される塩0.49部を得た。
【0144】
MASS(ESI(+)Spectrum):M 263.1
MASS(ESI(−)Spectrum):M 651.2
【0145】
実施例4:式(I49)で表される塩の合成

式(I49−a)で表される塩10.95部、式(I49−b)で表される塩8.96部、アセトニトリル100部及びイオン交換水50部を仕込み、23℃で15時間攪拌した。得られた反応マスを濃縮した後、クロロホルム100部で抽出した。回収された有機層を濃縮することにより、式(I49−c)で表される塩14.63部を得た。

式(I49−c)で表される塩13.03部、アセトニトリル100部、式(I49−d)で表される化合物(商品名:カルボニルジイミダゾール 東京化成製)11.05部を仕込み、23℃で30分間攪拌した後、50℃に昇温し、さらに2時間攪拌した。得られた反応物を23℃まで冷却した後、ろ過して、式(I49−e)で表される塩14.73部を得た。

式(I49−e)で表される塩4.32部、式(I49−f)で表される化合物1.82部及びアセトニトリル50部を仕込み、23℃で5時間攪拌した。得られた混合物を濃縮し、クロロホルム30部及びイオン交換水15部を加えた後、分液操作により、有機層を回収した。回収された有機層をイオン交換水15部で洗浄した後、得られた有機層を濃縮した。得られた濃縮物にアセトニトリル20部を添加して溶解した後、濃縮し、更に酢酸エチル20部を添加した。得られた溶液を濃縮した後、メチル−tert−ブチルエーテル20部を添加し、これを攪拌した後、2層に分離したので上澄み液を除去して下層を取り出し、これを濃縮した。得られた濃縮液に、酢酸エチル20部を添加して、攪拌した後、2層に分離したので上澄み液を除去し、下層を取り出してこれを濃縮することにより、式(I49−g)で表される塩4.27部を得た。

式(I49−g)で表される塩1.81部、式(I49−h)で表される化合物0.61部及びモノクロロベンゼン10部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、トリフルオロ酢酸0.15部を添加し、125℃で、2時間還流した。得られた反応物を濃縮した。得られた濃縮物に、クロロホルム30部及びイオン交換水10部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置し、分液し、有機層を回収した。回収された有機層に、イオン交換水10部を仕込み23℃で30分間攪拌した。分液することにより有機層を回収した。この水洗の操作をさらに6回行った。得られた有機層に活性炭0.50部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、アセトニトリル5部を添加して溶解し、濃縮し、tert−ブチルメチルエーテル15部を加えて攪拌し、上澄液を除去し、濃縮した。得られた濃縮物に、アセトニトリル4部を添加して溶解し、濃縮し、酢酸エチル15部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。得られた濃縮物に、アセトニトリル3部を添加して溶解し、濃縮することにより、式(I49−i)で表される塩1.22部を得た。
【0146】

式(I49−i)で表される塩0.92部、ジメチルホルムアミド10部及び式(I49−j)で表される化合物0.40部を仕込み、23℃で30分間攪拌した後、炭酸カリウム0.11部及びヨウ化カリウム0.03部を添加し、100℃で、12時間攪拌した。得られた反応物を23℃まで冷却した後、クロロホルム120部及び1%シュウ酸水溶液60部を加え、23℃で30分間攪拌した。その後、静置し、分液し、有機層を回収した。回収された有機層に、イオン交換水60部を仕込み23℃で30分間攪拌した。分液することにより有機層を回収した。この水洗の操作をさらに5回行った。得られた有機層に活性炭1.19部を仕込み、23℃で30分間攪拌し、ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた濃縮物に、tert−ブチルメチルエーテル150部を加えて攪拌し、上澄液を除去し、得られた残渣に、アセトニトリル10部を添加して溶解し、濃縮し、酢酸エチル10部を加えて攪拌し、上澄液を除去し、得られた残渣に、アセトニトリル10部を添加して溶解し、濃縮することにより、式(I49)で表される塩0.48部を得た。
【0147】
MASS(ESI(+)Spectrum):M 207.1
MASS(ESI(−)Spectrum):M 663.3
【0148】
[樹脂A1の合成]
メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル39.7g(0.16モル)とp−アセトキシスチレン103.8g(0.64モル)とをイソプロパノール265gに溶解して、溶液を窒素雰囲気下で75℃まで昇温した。この溶液に、ラジカル開始剤としてジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)11.05g(0.048モル)をイソプロパノール22.11gに溶解した液を滴下した。得られた反応液を12時間加熱還流した。その後、反応液を大量のメタノールに注いで重合物を沈殿ろ過した。得られたメタクリル酸2−エチル−2−アダマンチルとp−アセトキシスチレンとの共重合体は250g(メタノール含有)であった。
得られた共重合体250gと4−ジメチルアミノピリジン10.3g(0.084モル)とをメタノール202gに加えて20時間加熱還流し、冷却した。その後、反応液を氷酢酸7.6g(0.126モル)で中和して、大量の水に注いで沈殿させた。析出した重合物をろ別し、アセトンに溶解させ、大量の水に注いで沈殿させる操作を3回繰り返して精製、ろ過した。得られたメタクリル酸2−エチル−2−アダマンチルとp−ヒドロキシスチレンの共重合体は95.9gであった。重量平均分子量は約8.6×10(GPCポリスチレン換算)であり、共重合比は約20:80であった。この樹脂を樹脂A1とする。
【0149】
[樹脂A2の合成]
メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル及びp−アセトキシスチレンの使用量を59.6g(0.24モル)及び90.8g(0.56モル)に変更したこと以外は、樹脂A1の合成と同様の操作を行って、メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチルとp−ヒドロキシスチレンとの共重合体102.8gを得た。重量平均分子量は約8.2×10(GPCポリスチレン換算)であり、共重合比は約30:70であった。この樹脂を樹脂A2とする。
【0150】
(レジスト組成物の調製)
以下の各成分を混合して溶解し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト液を調製した。
【0151】
【表2】

【0152】
<樹脂>
A1:樹脂A1
A2:樹脂A2
<酸発生剤>
I−1:式(I1)で表される塩
I−3:式(I3)で表される塩
I−7:式(I7)で表される塩
I−49:式(I49)で表される塩
B1−11:特開2008−74843号公報の実施例に従って合成

<塩基性化合物:クエンチャー>
C1:2,6−ジイソプロピルアニリン
C2:テトラブチルアンモニウムヒドロキシド
<溶剤>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 400.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 100.0部
γ−ブチロラクトン 5.0部
【0153】
(電子線用レジスト組成物としての評価)
シリコンウェハを、ダイレクトホットプレート上にて、ヘキサメチルジシラザンを用いて90℃で60秒処理し、上記のレジスト液を乾燥(プリベーク)後の膜厚が0.06μmとなるようにスピンコートした。その後、ダイレクトホットプレート上にて、表2の「PB」欄に示す温度で60秒間プリベークした。レジスト膜を形成したそれぞれのウェハに、電子線描画機〔(株)日立製作所製の「HL−800D 50keV」を用い、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを露光した。
露光後、ホットプレート上にて表2の「PEB」欄に示す温度で60秒間ポストエキスポジャーベークを行い、さらに2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行い、レジストパターンを得た。
シリコン基板上のもので現像後のパターンを走査型電子顕微鏡で観察した。
【0154】
ラインエッジラフネス評価(LER):80nmのラインアンドスペースパターンが1:1となる露光量で露光したリソグラフィプロセス後のレジストパターンの壁面を走査型電子顕微鏡で観察した。側壁の凹凸の触れ幅が5nm以下であるものを○、5nmを超えるものを×とした。その結果を表3に示す。カッコ内の数値は、触れ幅(nm)である。
【0155】
【表3】

【0156】
(EUV用レジスト組成物としての評価)
シリコンウェハを、ダイレクトホットプレート上にて、ヘキサメチルジシラザンを用いて90℃で60秒処理した上で、表2のレジスト液を乾燥(プリベーク)後の膜厚が0.05μmとなるようにスピンコートした。
その後、ダイレクトホットプレート上にて、表2の「PB」欄に示す温度で60秒間プリベークした。レジスト膜を形成したウェハに、EUV露光機を用い、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを露光した。
露光後、ホットプレート上にて表2の「PEB」欄に示す温度で60秒間ポストエキスポジャーベークを行い、さらに2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行い、レジストパターンを得た。
シリコン基板上のもので現像後のパターンを走査型電子顕微鏡で観察した。
【0157】
ラインエッジラフネス評価(LER):50nmのラインアンドスペースパターンが1:1となる露光量で露光したリソグラフィプロセス後のレジストパターンの壁面を走査型電子顕微鏡で観察した。側壁の凹凸の触れ幅が5nm以下であるものを○、5nmを超えるものを×とした。その結果を表4に示す。カッコ内の数値は、触れ幅(nm)である。
【0158】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明の塩を、酸発生剤として、レジスト組成物に用いることにより、電子線用及びEUV用等のレジスト組成物として、優れたラインエッジラフネス(LER)を有するパターンを形成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される塩。

[式(I)中、
及びQは、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
は、炭素数1〜17の2価の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
は、炭素数1〜6の2価の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置き換わっていてもよい。
環Wは、炭素数3〜36の2価の脂環式炭化水素を表し、該脂環式炭化水素に含まれるメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよく、該脂環式炭化水素に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。
sは、0〜3の整数を表す。
は、炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基を表し、該脂肪族炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基に置き換わっていてもよい。sが2又は3である場合、複数存在するRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数3〜20の脂環式炭化水素基を表すか、或いは、R及びRが互いに結合して、それらが結合する炭素原子とともに炭素数3〜20の環を形成する。R及びRが互いに結合して形成される環、該アルキル基又は該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子、カルボニル基又はスルホニル基に置き換わっていてもよく、該脂環式炭化水素に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。
は、有機対イオンを表す。]
【請求項2】
前記環Wが、式(Ia1−1)で表される環、式(Ia1−2)で表される環又は式(Ia1−3)で表される環である請求項1記載の塩。

[式(Ia1−1)、式(Ia1−2)及び式(Ia1−3)中、
環に含まれるメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよく、環に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数3〜12の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。
*は結合手を表す。]
【請求項3】
前記Lが、*−CO−O−(CHt−(tは0〜6の整数を表す。*は、−C(Q)(Q)−の炭素原子との結合手を表す。)である請求項1又は2記載の塩。
【請求項4】
前記Lが、*−CO−、*−(CH−CO−(CH−O−(CH−、−(CH−O−(uは0〜4の整数、vは0〜4、wは0〜4、xは1〜5の整数を表す。*は、酸素原子との結合手を表す。)である請求項1〜3のいずれか記載の塩。
【請求項5】
−C(R)(R)(R)が、式(I−R23−1)で表される環、式(I−R23−2)で表される環、式(I−R23−3)で表される環、式(I−R23−4)で表される環又は式(I−R23−5)で表される環である請求項1〜4のいずれか記載の塩。

[式(I−R23−1)、式(I−R23−2)、式(I−R23−3)、式(I−R23−4)及び式(I−R23−5)中、
は上記と同じ意味を表す。
環に含まれるメチレン基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基又はスルホニル基で置き換わっていてもよく、環に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。]
【請求項6】
前記Zが、アリールスルホニウムカチオンである請求項1〜5のいずれか記載の塩。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の塩を有効成分として含有する酸発生剤。
【請求項8】
請求項7記載の酸発生剤と樹脂とを含有し、該樹脂は酸に不安定な基を有し、かつアルカリ水溶液に不溶又は難溶であり、酸と作用してアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂であるレジスト組成物。
【請求項9】
さらに溶剤を含有する請求項8記載のレジスト組成物。
【請求項10】
さらに塩基性化合物を含有する請求項8又は9記載のレジスト組成物。
【請求項11】
(1)請求項8〜10のいずれか記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物を乾燥させて組成物層を形成する工程、
(3)組成物層に露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、及び
(5)加熱後の組成物層を現像する工程、
を含むレジストパターンの製造方法。

【公開番号】特開2012−229205(P2012−229205A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−85119(P2012−85119)
【出願日】平成24年4月4日(2012.4.4)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】