塩化トリアジン誘導体、その製造方法およびその使用
【課題】水溶液中で高収率で脱水縮合反応を行うことが可能な固体の縮合剤を提供する。
【解決手段】ビス塩化トリアジン誘導体と、親水性化合物とを反応させて得られる固体の塩化トリアジン誘導体を得る。前記親水性化合物がメタノール、タウリン、塩化2−(アミノエチル)トリメチルアンモニウム、タウリンと塩化2−(アミノエチル)トリルメチルアンモニウムとの混合物からなる群から選択される1以上の化合物である。また、ビス塩化トリアジン誘導体と親水性化合物群から選択される1以上の化合物を用いる固体の塩化トリアジン誘導体の製造方法である。N−メチルモルホリンの存在下、水溶液中における親水性縮合剤としての固体の塩化トリアジン誘導体の使用。
【解決手段】ビス塩化トリアジン誘導体と、親水性化合物とを反応させて得られる固体の塩化トリアジン誘導体を得る。前記親水性化合物がメタノール、タウリン、塩化2−(アミノエチル)トリメチルアンモニウム、タウリンと塩化2−(アミノエチル)トリルメチルアンモニウムとの混合物からなる群から選択される1以上の化合物である。また、ビス塩化トリアジン誘導体と親水性化合物群から選択される1以上の化合物を用いる固体の塩化トリアジン誘導体の製造方法である。N−メチルモルホリンの存在下、水溶液中における親水性縮合剤としての固体の塩化トリアジン誘導体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化トリアジン誘導体、その製造方法およびその使用に関するものである。より詳しくは、本発明は、N-メチルモルホリンとの併用により、水溶液中でアミド結合の形成反応において有用な縮合剤として作用する、新規な塩化トリアジン誘導体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ペプチド合成におけるカルボキシ基とアミノ基との縮合によるアミド結合の形成用脱水縮合剤としては、カルボジイミド誘導体のような当業者に周知の縮合剤が用いられている。そして、そのような縮合反応においては、通常、過剰の縮合剤が用いられている。
【0003】
しかしながら、上記のような縮合剤を用いる溶液反応では、例え縮合反応が定量的に進行しても、目的化合物を単離するために、過剰の縮合剤または反応後の縮合剤と目的化合物とを分離精製する必要がある。
【0004】
このような目的化合物の分離精製には、通常、カラムクロマトグラフィー、液体高速クロマトグラフィー、蒸留または再結晶等の操作が煩雑な精製法が用いられている。
【0005】
そして、通常、上記の縮合反応後の分離・精製には、反応に要する以上の時間、手間および溶媒などが必要である。
【0006】
近年、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン(以下、塩化トリアジンともいう)とN-メチルモルホリン(以下、NMMともいう)との反応成績体であるモルホリニウム塩が、カルボキシ基と反応して活性化エステルを形成し、アミノ基とのペプチド結合の形成を促進することが見出されている(例えば、非特許文献1)。
【0007】
さらに、新しいタイプの脱水縮合剤として、2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジンとN-メチルモルホリンとを反応させて得られた4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン2-イル)-4-メチルモルホリニオ クロライド(以下、DMT-MMともいう)が、塩化メチレンまたは酢酸エチルのような非水性有機溶媒中のみならず、メタノールもしくはエタノールのようなアルコール中または水性アルコール中、さらには水溶液中でも高収率でアミド結合形成反応を促進することも見出されている(例えば、非特許文献2および3)。
【0008】
一方、近年、前記のような反応後の煩雑な精製法を解消すべく、固液反応に用いる目的で、不溶性の種々の反応用ポリマー(固体)担持型試薬が開発されており(例えば非特許文献4)、塩化トリアジンをポリスチレン-ポリエチレングリコール樹脂と結合させた、固体担持型縮合反応試薬も報告されている(例えば、非特許文献5)。
【0009】
また、最近、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンと、テトラエチレングリコールとを反応させ、テトラエチレンビス(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)エーテルとし、これにさらに、トリス(2-アミノエチル)アミンを反応させ、塩化トリアジン型ポリマー、またはそのN-メチルモルホリン付加物も固体複合反応剤として報告されている(例えば、非特許文献6および特許文献1)。
【0010】
これら、不溶性の反応用ポリマー担持型試薬は、反応後、溶媒による抽出または洗浄により目的物質を固体担持型試薬から容易に分離できるという特徴を有しているので、ロボティックな自動合成システムやコンビナトリアルケミストリーにおいて、その用途は飛躍的に広がっている。
【0011】
【非特許文献1】Z.J.Kaminskiら、J. Org. Chem., 1998, 63, 4248
【非特許文献2】M. Kunishimaら、Tetrahedron, 55 (1999), 13159-13170
【非特許文献3】M. Kunishimaら、Tetrahedron, 57 (2001), 1551-1558
【非特許文献4】Andreas Kirschningら、Angew. Chem. Int. Ed., 2001, 40, 650-679
【非特許文献5】S. Masalaら、Organic Letters, 1999, 1 (9), 1355-1357
【非特許文献6】M. Kunishimaら、Chem. Commun.、2698 (2005)
【特許文献1】特開2005−255672
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来、開発されてきた固体担持型試薬は、溶媒に不溶な固体と、試薬との反応により製造されるため、固体への試薬導入効率が悪い上に、反応収率の低下を防ぐために、過剰量の試薬が反応に用いられており、反応後に、残存する過剰の試薬の除去などの精製が必要であるなどの問題がある。
さらに、従来のトリアジン型ポリマーでは、水溶液中での脱水縮合反応の収率に問題があった。
【0013】
本発明は、水溶液中で、高収率で脱水縮合反応を行うことが可能で、かつ反応後に、縮合剤から反応生成物を容易に分離できる固体の縮合剤を提供することを課題とする。より詳しくは、上記のように、既に重合した樹脂または固体に縮合剤を結合させずに、固体の縮合剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ビス塩化トリアジン誘導体と、トリス(2-アミノエチル)アミンと、親水性化合物とを反応させて得られる固体の塩化トリアジン誘導体により上記の課題を解決する。
【0015】
すなわち、本発明によれば、次の、式(1'):
【化1】
[式中、R1はテトラエチレングリコジオキシ基を表す]
で表されるビス塩化トリアジン誘導体と、トリス(2-アミノエチル)アミンと、メタノール、ブチルアミン、タウリンおよび塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムからなる群から選択される1以上の親水性化合物とを反応させて得られる、一般式(1):
【0016】
【化2】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2はエチレン基を表し、Rはメトキシ基、n-ブチルアミノ基、2-スルホエチルアミノ基、塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を表すかまたはRは同一分子内で独立して2-スルホエチルアミノ基もしくは塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を表し、aは1〜10000を表し、bは0〜10000の整数を表す]
で表される、固体の塩化トリアジン誘導体が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、水溶液中で、N-メチルモルホリンの存在下、カルボン酸化合物とアミン化合物とを高収率で縮合可能で、かつ反応後分離が容易な固体の塩化トリアジン誘導体が提供される。
【0018】
より詳細には、本発明の固体の塩化トリアジン誘導体は、溶液反応により製造できるので、収率が高く、製造が容易であり、かつ原料が一般的な化合物であるため、製造コストを低く抑えることができる。さらに、本発明による固体の塩化トリアジン誘導体をアミド結合の形成反応に用いれば、高収率で縮合可能であるのみならず、反応後、単に公知の方法に従ってろ過して処理するだけで、縮合剤からアミド化合物を容易に分離でき、かつ高収率で得ることができるという利点がある。
【0019】
したがって、本発明による固体の塩化トリアジン誘導体は、アミド形成反応における縮合剤として、特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明による、ビス塩化トリアジン誘導体と、トリス(2-アミノエチル)アミンと、メタノール、ブチルアミン、タウリンおよび塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムからなる群から選択される1以上の親水性化合物とを反応させて得られる固体の塩化トリアジン誘導体は、反応を考慮した結果、例えば上記の一般式(1)の構造式で表されると考えられる。
【0021】
上記一般式(1)におけるaおよびbは、主に上記固体の塩化トリアジンの調製に用いられるビス塩化トリアジン誘導体と、トリス(2-アミノエチル)アミンと、親水性化合物との量により決定されるが、aは1〜10000の範囲、bは0〜10000の範囲をとり得るものと考えられる。なお、bが0である場合は、主鎖が直鎖状重合体であることを意味する。また、bが1以上の数である場合は、主鎖が直線状の重合体および分枝鎖状の重合体であるものと、いわゆるスターポリマーと称される重合体との混合物であると考えられる。
本発明においては、式(2)〜(6)で表される固体の塩化トリアジン誘導体も同様に、それぞれ部分推定構造式で示している。
【0022】
より具体的には、本発明によれば、前記親水性化合物がメタノールである、式(2):
【化3】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2、aおよびbは式(1)で定義したとおりである]
で表される固体の塩化トリアジン誘導体が提供される。
【0023】
また、本発明によれば、前記親水性化合物がn-ブチルアミンである、式(3):
【化4】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2、aおよびbは式(1)で定義したとおりである]
で表される固体の塩化トリアジン誘導体が提供される。
【0024】
また、本発明によれば、前記親水性化合物がタウリンである、式(4):
【化5】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2、aおよびbは式(1)で定義したとおりである]
で表される固体の塩化トリアジン誘導体が提供される。
【0025】
また、本発明によれば、前記親水性化合物が塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムである、式(5):
【化6】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2、aおよびbはおよび式(1)で定義したとおりである]
で表される記載の固体の塩化トリアジン誘導体が提供される。
【0026】
また、本発明によれば、前記親水性化合物がタウリンと塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムとの混合物である、式(6):
【化7】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2、aおよびbは式(1)で定義したとおりであり、R'は同一分子内の互いに異なる位置では互いに独立して2-スルホエチルアミノ基または塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を表す]
で表される固体の塩化トリアジン誘導体が提供される。
【0027】
さらに、本発明によれば、 次の式(1'):
【化8】
[式中、R1はテトラエチレングリコジオキシ基を表す]
で表されるビス塩化トリアジン誘導体と、トリス(2-アミノエチル)アミンと、メタノール、ブチルアミン、タウリンおよび塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムからなる群から選択される1以上の親水性化合物とを用いることを特徴とする、一般式(1):
【0028】
【化9】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2はエチレン基を表し、Rはメトキシ基、n-ブチルアミノ基、2-スルホエチルアミノ基、塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を表すかまたはRは同一分子内で独立して2-スルホエチルアミノ基もしくは塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を表し、aは1〜10000を表し、bは0〜10000の整数を表す]
で表される、固体の塩化トリアジン誘導体の製造方法が提供される。
【0029】
本発明による固体の塩化トリアジン誘導体の製造に用いられる式(1'):
【化10】
[式中、R1はテトラエチレングリコジオキシ基を表す]
で表されるビス塩化トリアジン誘導体(テトラエチレングリコールビス(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル))は、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンとテトラエチレングリコールから、例えば前記特許文献1に記載の公知の方法に従って調製できる。
【0030】
したがって、本発明において用いられている用語「テトラエチレングリコジオキシ基」とは、基 −(OCH2CH2)4O− を意味する。
【0031】
本発明による固体の塩化トリアジン誘導体の製造に用いられる親水性化合物としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、タウリンおよび塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムなどが挙げられる。これらのうち、操作の簡便性、収率などの点からメタノール、n-ブチルアミン、タウリンおよび塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムなどがより好ましい。
【0032】
上記の親水性化合物は、それぞれ単独で用いることもできるが、これらの混合物として用いることもできる。
【0033】
上記の親水性化合物は、前記式(1')で表されるビス塩化トリアジン誘導体に対して1モル%〜75モル%の間、好ましくは5モル%〜50モル%の間の任意の量で好適に用いられる。
【0034】
これは上記ビス塩化トリアジン誘導体に対する上記の親水性化合物の使用量が1モル%以下の場合は、本発明による固体の塩化トリアジン誘導体とN-メチルモルホリンを用いる水溶液中での縮合反応によるアミド結合形成反応において、上記の固体の塩化トリアジン誘導体の親水性が低いため、縮合反応の収率が低下するためである。
【0035】
また、逆に、上記ビス塩化トリアジン誘導体に対する上記の親水性化合物の使用量が75モル%以上の場合は、本発明による固体の塩化トリアジン誘導体分子量の低下、すなわち重合度の低下に起因すると考えられる当該固体の塩化トリアジン誘導体の収率が低下するためである。
【0036】
前記一般式(1)または式(2)〜(6)で表される化合物は、前記式(1')で表されるビス塩化トリアジン誘導体と、トリス(2-アミノエチル)アミンと、前記親水性化合物のいずれか1つか、またはそれらの混合物とを反応させて得ることができる。
【0037】
この反応は、通常、溶媒中、塩基の存在下に室温で行なわれる。
上記の反応に用いられる溶媒としては、水、テトラヒドロフラン(THF)またはジオキサンまたはこれらの混液が挙げられる。
【0038】
上記の反応に用いられる塩基としては、NaHCO3、KaHCO3、Na2CO3、K2CO3、N-エチルジイソプロピルアミンまたはトリエチルアミン等を用いることができる。
【0039】
すなわち、前記一般式(1)または式(2)〜(6)で表される化合物は、例えば、NaHCO3、トリス(2-アミノエチル)アミンおよび前記親水性化合物を水に溶かして水溶液とし、この水溶液に、撹拌下、前記ビス塩化トリアジン誘導体のテトラヒドロフラン溶液を室温で加え、撹拌を継続すると反応生成物であるポリマー(固体の塩化トリアジン誘導体)を析出させることにより得られる。
【0040】
なお、上記のポリマーが析出しにくい場合には、反応終了後、必要に応じて水、THFまたはメタノールなどを反応混合物に添加してポリマーの析出を促進することもできる。
析出したポリマーは常法によりろ取し、洗浄した後、真空乾燥または水に懸濁して凍結乾燥に付される。
【0041】
本発明による固体の塩化トリアジン誘導体は、N-メチルモルホリンとの併用で、水溶液中、カルボキシ基とアミノ基の縮合反応における縮合剤として用いることができる(詳細な反応機構に関しては、例えば非特許文献2〜6を参照)。
【0042】
これらの縮合反応において用いられる溶媒としては、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、酢酸エチル、アセトニトリルおよび水などが挙げられるが、本発明による固体の塩化トリアジン誘導体は水溶液中でも高収率でアミド化合物を生成することが、本発明の特徴である。
【0043】
本発明による固体の塩化トリアジン誘導体を用い、N-メチルモルホリンの存在下にカルボキシ基とアミノ基とを縮合させるアミド化反応は、通常、室温で撹拌下に進行する。
【0044】
したがって、本発明による固体の塩化トリアジンは、N-メチルモルホリンの存在下、水溶液中において、アミド化反応用親水性縮合剤として好適に使用できる。
【実施例】
【0045】
以下の実施例は、本発明を説明するものであり、本発明を限定するものではない。
なお、実施例では、特に記載のない限り、以下の測定装置および試薬を用いた。
【0046】
赤外吸収測定装置:ニコレット社製、FT-IR AVATER360
NMRスペクトロメーター:ブルッカー社製、DPX400スペクトロメーター
電位差滴定装置:メトローム社製、Metrohm 794 Basic Titrino
トリス(2-アミノエチル)アミン(関東化学株式会社製)
テトラエチレングリコール(関東化学株式会社製)
2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン(関東化学株式会社製)
なお、市販品として容易に入手できる試薬については、上記への記載を割愛した。
【0047】
製造例1
ビス塩化トリアジン誘導体の調製
無水テトラヒドロフラン(THF)で洗浄した水素化ナトリウム(60%オイル分散型;9.11 g、実質量5.74 g、228 mmol)の無水THF(40 ml)懸濁液に、窒素雰囲気下0℃で、テトラエチレングリコール(23.2 g、119 mmol)を滴下し、同温度で1時間、さらに室温で1時間撹拌した。得られた反応混合物を-78℃に冷却し、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン(20.0 g、109 mmol)の無水THF(70 ml)溶液を滴下した。
【0048】
次に、混合物を-78℃、-40℃、0℃および室温でそれぞれ1時間ずつ撹拌した後、乾燥ジエチレングリコールジメチルエーテル(4 ml)を加えた。混合物を50℃で1時間撹拌した後、125℃まで加熱してTHFを留去し、同温度で16時間撹拌を継続した。反応終了後、反応混合物を0℃に冷却して30分放置した後、固体の化合物を吸引ろ取し、THF、水、THFで順次洗浄した。ろ取物を減圧乾燥して、クリーム色の目的物ビス塩化トリアジン誘導体(テトラエチレングリコールビス(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル))14.8 gを収率45%で得た。得られた化合物のIRスペクトルは、標品のものと完全に一致した。
【0049】
実施例1
ビス塩化トリアジン誘導体に対して50モル%メタノールを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(OMe50)の調製
ジイソプロピルエチルアミン(2.64 g、2.0当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(746 mg、0.5当量)、メタノール(163 mg、0.5当量)をTHF (5 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(5.0 g、1.0当量)のTHF (10 mL)溶液に-78℃で滴下した。滴下終了後、ドライアイス浴を取り除き、2時間撹拌した。この間、約1時間で反応溶液は室温に達した。
【0050】
この反応液にメタノール約20 mLを加え、35〜40℃で撹拌した。15時間後、ポリマーをろ過し、THF、水、THFの順に洗浄し、減圧乾燥して、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して50モル%のメトキシ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(OMe50) 3.16 gを収率61%で得た。
IR (KBr):ν = 3265, 2873, 1559, 1429, 1333, 1288, 1115, 1055, 806 cm-1。
【0051】
個体の塩化トリアジン誘導体の塩素価の測定
乾燥したポリマー(20 mg)を精密に量り、1 M NaNO3 (2 mL)を加えて20分間の振とう撹拌によりポリマーを洗浄し、ろ過した。ポリマーに0.2 M N-メチルモルホリン水溶液(2 mL)を加え、振とう撹拌し20分後、さらに1 M NaNO3 (3 mL)を加えて振とう撹拌を続けた。24時間後、ろ過し、ポリマーを1 M NaNO3 (2 mL)および水(5 mL ×3)でそれぞれ洗浄-ろ過を繰り返し、すべてのろ液をあわせて、0.01 M AgNO3水溶液により、電位差滴定装置を用いて滴定した。
滴定に要したAgNO3水溶液量から、次式:
塩素価(mmol / g) = AgNO3 (mL) × 0.01 ×1.005 (f ) / ポリマー(g)
に従い、塩素価を求めたところ、塩素価は3.031 mmol / g (2回平均値)であった。
【0052】
膨潤率の測定
2.5 mL シリンジ外筒にフィルターをセットし、実施例1で得られた乾燥したポリマー(0.5 mL程度)を入れ、軽くタップして詰める。内容積をシリンジの目盛りから読み取り、乾燥時体積V0とする。シリンジに通水して気泡を抜いた後、シリンジ上部まで水を貯めた状態で12時間静置する。静置後体積をV1とし、次式:
膨潤率(%)=(V1-V0)/ V0×100
より求めた乾燥時体積に対する体積増加分率を膨潤率として測定したところ、OME50の膨潤率は38%であった。
【0053】
以下の実施例で得られた固体の塩化トリアジン誘導体についても、それぞれ同様にして塩素価および膨潤率を求めた。
【0054】
実施例2
ビス塩化トリアジン誘導体に対して30モル%メタノールを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(OMe30)の調製
ジイソプロピルエチルアミン(1.58 g、2.0当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(506 mg、0.57当量)、メタノール(59 mg、0.3当量)をTHF (4 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(3.0 g、1.0当量)のTHF (8 mL)溶液に-78℃で滴下した。滴下終了後、ドライアイス浴を取り除き、2時間撹拌した。この間、約1時間で反応溶液は室温に達した。メタノール約10 mLを加え、35〜40℃で撹拌した。15時間後、ポリマーをろ過し、THF、水、THFの順に洗浄し、減圧乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して30モル%のメトキシ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(OMe30) 1.60 gを収率51%で得た。
【0055】
塩素価 = 1.917 mmol / g (2回平均値)。
IR (KBr):ν= 3270, 2873, 1570, 1430, 1333, 1289, 1125, 1062, 807 cm-1
【0056】
実施例3
ビス塩化トリアジン誘導体に対して10モル%メタノールを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(OMe10)の調製
ジイソプロピルエチルアミン(1.58 g、2.0当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(564 mg、0.63当量)、メタノール(20 mg、0.1当量)をTHF (4 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(3.0 g、1.0当量)のTHF (8 mL)溶液に-78℃で滴下した。滴下終了後、ドライアイス浴を取り除き、2時間撹拌した。この間、約1時間で反応溶液は室温に達した。メタノール約10 mLを加え、35-40℃で撹拌した。15時間後、ポリマーをろ過し、THF、水、THFの順に洗浄し、減圧乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して10モル%のメトキシ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(OMe10) 1.50 gを収率48%で得た。
【0057】
塩素価 = 2.381 mmol / g (2回平均値)。
IR (KBr):ν = 3274, 2872, 1578, 1429, 1334, 1289, 1125, 1057, 806 cm-1
【0058】
実施例4
ビス塩化トリアジン誘導体に対して50モル%n-ブチルアミンを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(Bu50)の調製
ジイソプロピルエチルアミン(1.05 g、2.0当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(298 mg、0.5当量)、butylアミン(149 mg、0.5当量)をTHF (4 mL)に溶かし、テトラエチレングリコール ビス(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル) エーテル(5.0 g、1.0当量)のTHF (4 mL)溶液に-78℃で滴下する。 30分間-78℃で撹拌後、冷媒中からドライアイスを取り除き、徐々に室温まで温度上昇するようにした。24時間後、析出したポリマーをろ過し、THF、水、THFの順に洗浄し、減圧乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して50モル%のn-ブチルアミノ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(Bu50) 686 mgを収率32%で得た。
【0059】
塩素価 = 3.101 mmol / g (2回平均値)。
IR (KBr):ν = 2868, 1596, 1457, 1420, 1333, 1288, 1120, 1059, 978, 939, 873, 807 cm-1
【0060】
実施例5
ビス塩化トリアジン誘導体に対して5モル%タウリンを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(T5)の調製
NaHCO3 (3.47 g、4.1当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(970 mg、0.65当量)、タウリン(64 mg、0.05当量)を水(15 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(5.0 g、1.0当量)のTHF (10 mL)溶液を室温下で加え、激しく撹拌した。約40分後、析出するポリマーにより反応溶液が泥状となったところで水(5 mL)を加えた。開始から1.5時間後、ポリマーがゼリー状の固まりとなったためTHF (10 mL)を加え、強撹拌およびスパーテルで2 mm程度の粒に砕き、さらに撹拌し続けた。開始から5時間後、THF (10 mL)を加え、30分撹拌の後、篩(200メッシュ:75μm) にあけ、ろ過する。篩上のポリマーをTHF、水、1 M NaNO3 水溶液、水の順に洗浄し、水(50 mL)に懸濁させて、凍結乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して5モル%の2-スルホエチルアミノ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(T5) 3.44 gを収率65%で得た。
【0061】
塩素価 = 3.364 mmol / g (2回平均値)。
膨潤率(T5):水、50%
IR (KBr):ν = 2919, 2846, 1629, 1560, 1541, 1456, 1335, 1221, 1128, 1097, 1053, 807 cm-1.
【0062】
実施例6
ビス塩化トリアジン誘導体に対して30モル%タウリンを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(T30)の調製
NaHCO3 (1.47 g、4.3当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(337 mg、0.57当量)、タウリン(153 mg、0.3当量)を水(8 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(2.0 g、1.0当量)のTHF (4 mL)溶液を室温下で加え、激しく撹拌した。約4時間後、反応溶液をTHF (100 mL)に注ぎ、数分間撹拌後、メタノール(200 mL)を加えた。沈殿したポリマーをろ過し、THF、水、1 M NaNO3 水溶液、水の順に洗浄し、水(50 mL)に懸濁させて、凍結乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して30モル%の2-スルホエチルアミノ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(T30) 1.98 g を収率89%で得た。
【0063】
塩素価: 2.851 mmol / g (2回平均値)。
膨潤率:水、100%。
【0064】
実施例7
ビス塩化トリアジン誘導体に対して50モル%タウリンを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(T50)の調製
NaHCO3 (1.54 g、4.5当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(298 mg、0.5当量)、タウリン(255 mg、0.5当量)を水(8 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(2.0 g、1.0当量)のTHF (4 mL)溶液を室温下で加え、激しく撹拌した。約1時間後、水(8 mL)、THF (12 mL)を加え、スパーテルで2 mm程度の粒に砕き、さらに1時間撹拌し続けた。 反応混合物をTHF (100 mL)に注ぎ、メタノール(200 mL)を加えてポリマーを沈殿させ、ろ過する。ポリマーをTHF、水、1 M NaNO3 水溶液、水の順に洗浄し、水(50 mL)に懸濁させて、凍結乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して50モル%のメトキシ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(OMe50) 1.82 g を収率79%で得た。
【0065】
塩素価: 3.432 mmol / g (2回平均値)。
膨潤率:水、100%。
【0066】
実施例8
ビス塩化トリアジン誘導体に対して10モル%塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(N10)の調製
NaHCO3 (2.31 g、4.5当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(564 mg、0.63当量)、2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムクロリド 塩酸塩(107 mg、0.1当量)、を水(9 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(3.0 g、1.0当量)のTHF (6 mL)溶液を室温下で加え、激しく撹拌した。約15分後および1時間後に水(3 mL)をそれぞれ加えた。開始から2.5時間後、反応混合物を篩(200メッシュ:75μm) にあけ、ろ過する。篩上のポリマーをTHF、水、1 M NaNO3 水溶液、水の順に洗浄し、水(50 mL)に懸濁させて、凍結乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して50モル%のメトキシ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(N10) 2.93 gを収率91%で得た。
【0067】
塩素価 = 4.226 mmol / g (2回平均値)。
膨潤率:水、67%。
【0068】
実施例9
ビス塩化トリアジン誘導体に対して50モル%塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムメタノールを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(N50)の調製
NaHCO3 (2.31 g、4.5当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(448 mg、0.5当量)、2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムクロリド 塩酸塩(536 mg、0.5当量)、を水(9 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(3.0 g、1.0当量)のTHF (6 mL)溶液を室温下で加え、激しく撹拌した。約15分後および1時間後に水(3 mL)をそれぞれ加えた。開始から3時間後、反応混合物を篩(200メッシュ:75μm) にあけ、ろ過する。篩上のポリマーをTHF、水、1 M NaNO3 水溶液、水の順に洗浄し、水(50 mL)に懸濁させて、凍結乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して50モル%のメトキシ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(OMe50) 2.32 gを収率66%で得た。
【0069】
塩素価 = 4.280 mmol / g (2回平均値)。
膨潤率:水、50%
【0070】
実施例10
ビス塩化トリアジン誘導体に対して5モル%タウリンおよび5モル%塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(TN10)の調製
NaHCO3 (3.86 g、4.5当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(940 mg、0.63当量)、2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムクロリド 塩酸塩(89 mg、0.05当量)、タウリン(64 mg、0.05当量)を水(15 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(5.0 g、1.0当量)のTHF (10 mL)溶液を室温下で加え、激しく撹拌した。1時間後、水 (10 mL)、THF (10 mL)を加え、更に10分後、水 (10 mL)を加えた。開始から1.5時間後、反応混合物を篩(200メッシュ:75μm) にあけ、ろ過する。篩上のポリマーをTHF、水、1 M NaNO3 水溶液、水の順に洗浄し、水(50 mL)に懸濁させて、凍結乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して5モル%2-スルホエチルアミノ基および5モル%塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(TN10) 4.46 g を収率84%で得た。
【0071】
塩素価 = 2.661 mmol / g (2回平均値)。
膨潤率:水、78%。
【0072】
実施例11
ビス塩化トリアジン誘導体に対して15モル%タウリンおよび15モル%塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(TN30)の調製
NaHCO3 (3.86 g、4.5当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(843 mg、0.57当量)、2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムクロリド 塩酸塩(268 mg、0.15当量)、タウリン(192 mg、0.15当量)を水(15 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(5.0 g、1.0当量)のTHF (15 mL)溶液を室温下で加え、激しく撹拌した。1.5時間後、析出するポリマーにより反応溶液が泥状となったところで水(10 mL)、THF (5 mL)を加えた。開始から2時間後、強撹拌により2〜3 mm程度の粒状となった。開始から3時間後、THF (10 mL)を加え、30分撹拌の後、篩(200メッシュ:75μm) にあけ、ろ過する。篩上のポリマーをTHF、水、1 M NaNO3 水溶液、水の順に洗浄し、水(50 mL)に懸濁させて、凍結乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して5モル%2-スルホエチルアミノ基および5モル%塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(TN30) 4.89 gを収率88%で得た。
【0073】
塩素価 = 2.033 mmol / g (2回平均値)。
膨潤率:水、50%。
【0074】
実施例12
ビス塩化トリアジン誘導体に対して25モル%タウリンおよび25モル%塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(TN50)の調製
NaHCO3 (3.86 g、4.5当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(746 mg、0.5当量)、2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムクロリド 塩酸塩(447 mg、0.25当量)、タウリン(319 mg、0.25当量)を水(15 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(5.0 g、1.0当量)のTHF (15 mL)溶液を室温下で加え、激しく撹拌した。1.5時間後、析出するポリマーにより反応溶液が泥状となったところで水(10 mL)、THF (5 mL)を加えた。開始から2時間後、強撹拌により2〜3 mm程度の粒状となった。開始から3時間後、THF (10 mL)を加え、30分撹拌の後、篩(200メッシュ:75μm) にあけ、ろ過する。篩上のポリマーをTHF、水、1 M NaNO3 水溶液、水の順に洗浄し、水(50 mL)に懸濁させて、凍結乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して25モル%2-スルホエチルアミノ基および25モル%塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(TN50) 3.22 gを収率58%で得た。
【0075】
塩素価 = 3.315 mmol / g (2回平均値)。
膨潤率:水、50%。
【0076】
試験例1
固体の塩化トリアジン誘導体(OMe50)を用いた水溶液中でのアミド化反応
4-スルホ安息香酸一カリウム(10 mg、1.0当量)、エチルアミン 塩酸塩(6.8 mg、2.0当量)およびN-メチルモルホリン(NMM) (29.5 mg、7.0当量)を溶かした水溶液(2.0 mL)をポリマー試薬(固体の塩化トリアジン誘導体)(10.0当量;ポリマーの塩素価より算出)に加え、室温下で12時間振とう撹拌した。反応液をろ過し、1 M NaNO3 (2 mL)、1 M K2CO3 (2 mL)、水(5 mL×2)でポリマーを洗浄したろ液とあわせ、凍結乾燥した。精密に秤量したマレイン酸を内部標準物質として残渣に加え、NMRにより収率を算出したところ、アミド化反応の収率は100%であった。
【0077】
試験例2〜12
実施例2〜12で得られた各固体の塩化トリアジン誘導体について上記試験例1と全く同様にして、各アミド化反応の収率をそれぞれ測定した。その結果を以下の表に示す。
【0078】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施例1で得られた固体の塩化トリアジン誘導体(OMe50)の膨潤率の測定を表す模式図である。
【図2】実施例1で得られた塩化トリアジン誘導体(OMe50)のIRスペクトルである。
【図3】実施例2で得られた塩化トリアジン誘導体(OMe30)のIRスペクトルである。
【図4】実施例3で得られた塩化トリアジン誘導体(OMe10)のIRスペクトルである。
【図5】実施例4で得られた塩化トリアジン誘導体(Bu50)のIRスペクトルである。
【図6】実施例5で得られた塩化トリアジン誘導体(T5)のIRスペクトルである。
【図7】実施例6で得られた塩化トリアジン誘導体(T30)のIRスペクトルである。
【0080】
【図8】実施例7で得られた塩化トリアジン誘導体(T50)のIRスペクトルである。
【図9】実施例8で得られた塩化トリアジン誘導体(N10)のIRスペクトルである。
【図10】実施例9で得られた塩化トリアジン誘導体(N50)のIRスペクトルである。
【図11】実施例10で得られた塩化トリアジン誘導体(TN10)のIRスペクトルである。
【図12】実施例11で得られた塩化トリアジン誘導体(TN30)のIRスペクトルである。
【図13】実施例12で得られた塩化トリアジン誘導体(TN50)のIRスペクトルである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化トリアジン誘導体、その製造方法およびその使用に関するものである。より詳しくは、本発明は、N-メチルモルホリンとの併用により、水溶液中でアミド結合の形成反応において有用な縮合剤として作用する、新規な塩化トリアジン誘導体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ペプチド合成におけるカルボキシ基とアミノ基との縮合によるアミド結合の形成用脱水縮合剤としては、カルボジイミド誘導体のような当業者に周知の縮合剤が用いられている。そして、そのような縮合反応においては、通常、過剰の縮合剤が用いられている。
【0003】
しかしながら、上記のような縮合剤を用いる溶液反応では、例え縮合反応が定量的に進行しても、目的化合物を単離するために、過剰の縮合剤または反応後の縮合剤と目的化合物とを分離精製する必要がある。
【0004】
このような目的化合物の分離精製には、通常、カラムクロマトグラフィー、液体高速クロマトグラフィー、蒸留または再結晶等の操作が煩雑な精製法が用いられている。
【0005】
そして、通常、上記の縮合反応後の分離・精製には、反応に要する以上の時間、手間および溶媒などが必要である。
【0006】
近年、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン(以下、塩化トリアジンともいう)とN-メチルモルホリン(以下、NMMともいう)との反応成績体であるモルホリニウム塩が、カルボキシ基と反応して活性化エステルを形成し、アミノ基とのペプチド結合の形成を促進することが見出されている(例えば、非特許文献1)。
【0007】
さらに、新しいタイプの脱水縮合剤として、2-クロロ-4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジンとN-メチルモルホリンとを反応させて得られた4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン2-イル)-4-メチルモルホリニオ クロライド(以下、DMT-MMともいう)が、塩化メチレンまたは酢酸エチルのような非水性有機溶媒中のみならず、メタノールもしくはエタノールのようなアルコール中または水性アルコール中、さらには水溶液中でも高収率でアミド結合形成反応を促進することも見出されている(例えば、非特許文献2および3)。
【0008】
一方、近年、前記のような反応後の煩雑な精製法を解消すべく、固液反応に用いる目的で、不溶性の種々の反応用ポリマー(固体)担持型試薬が開発されており(例えば非特許文献4)、塩化トリアジンをポリスチレン-ポリエチレングリコール樹脂と結合させた、固体担持型縮合反応試薬も報告されている(例えば、非特許文献5)。
【0009】
また、最近、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンと、テトラエチレングリコールとを反応させ、テトラエチレンビス(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)エーテルとし、これにさらに、トリス(2-アミノエチル)アミンを反応させ、塩化トリアジン型ポリマー、またはそのN-メチルモルホリン付加物も固体複合反応剤として報告されている(例えば、非特許文献6および特許文献1)。
【0010】
これら、不溶性の反応用ポリマー担持型試薬は、反応後、溶媒による抽出または洗浄により目的物質を固体担持型試薬から容易に分離できるという特徴を有しているので、ロボティックな自動合成システムやコンビナトリアルケミストリーにおいて、その用途は飛躍的に広がっている。
【0011】
【非特許文献1】Z.J.Kaminskiら、J. Org. Chem., 1998, 63, 4248
【非特許文献2】M. Kunishimaら、Tetrahedron, 55 (1999), 13159-13170
【非特許文献3】M. Kunishimaら、Tetrahedron, 57 (2001), 1551-1558
【非特許文献4】Andreas Kirschningら、Angew. Chem. Int. Ed., 2001, 40, 650-679
【非特許文献5】S. Masalaら、Organic Letters, 1999, 1 (9), 1355-1357
【非特許文献6】M. Kunishimaら、Chem. Commun.、2698 (2005)
【特許文献1】特開2005−255672
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来、開発されてきた固体担持型試薬は、溶媒に不溶な固体と、試薬との反応により製造されるため、固体への試薬導入効率が悪い上に、反応収率の低下を防ぐために、過剰量の試薬が反応に用いられており、反応後に、残存する過剰の試薬の除去などの精製が必要であるなどの問題がある。
さらに、従来のトリアジン型ポリマーでは、水溶液中での脱水縮合反応の収率に問題があった。
【0013】
本発明は、水溶液中で、高収率で脱水縮合反応を行うことが可能で、かつ反応後に、縮合剤から反応生成物を容易に分離できる固体の縮合剤を提供することを課題とする。より詳しくは、上記のように、既に重合した樹脂または固体に縮合剤を結合させずに、固体の縮合剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ビス塩化トリアジン誘導体と、トリス(2-アミノエチル)アミンと、親水性化合物とを反応させて得られる固体の塩化トリアジン誘導体により上記の課題を解決する。
【0015】
すなわち、本発明によれば、次の、式(1'):
【化1】
[式中、R1はテトラエチレングリコジオキシ基を表す]
で表されるビス塩化トリアジン誘導体と、トリス(2-アミノエチル)アミンと、メタノール、ブチルアミン、タウリンおよび塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムからなる群から選択される1以上の親水性化合物とを反応させて得られる、一般式(1):
【0016】
【化2】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2はエチレン基を表し、Rはメトキシ基、n-ブチルアミノ基、2-スルホエチルアミノ基、塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を表すかまたはRは同一分子内で独立して2-スルホエチルアミノ基もしくは塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を表し、aは1〜10000を表し、bは0〜10000の整数を表す]
で表される、固体の塩化トリアジン誘導体が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、水溶液中で、N-メチルモルホリンの存在下、カルボン酸化合物とアミン化合物とを高収率で縮合可能で、かつ反応後分離が容易な固体の塩化トリアジン誘導体が提供される。
【0018】
より詳細には、本発明の固体の塩化トリアジン誘導体は、溶液反応により製造できるので、収率が高く、製造が容易であり、かつ原料が一般的な化合物であるため、製造コストを低く抑えることができる。さらに、本発明による固体の塩化トリアジン誘導体をアミド結合の形成反応に用いれば、高収率で縮合可能であるのみならず、反応後、単に公知の方法に従ってろ過して処理するだけで、縮合剤からアミド化合物を容易に分離でき、かつ高収率で得ることができるという利点がある。
【0019】
したがって、本発明による固体の塩化トリアジン誘導体は、アミド形成反応における縮合剤として、特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明による、ビス塩化トリアジン誘導体と、トリス(2-アミノエチル)アミンと、メタノール、ブチルアミン、タウリンおよび塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムからなる群から選択される1以上の親水性化合物とを反応させて得られる固体の塩化トリアジン誘導体は、反応を考慮した結果、例えば上記の一般式(1)の構造式で表されると考えられる。
【0021】
上記一般式(1)におけるaおよびbは、主に上記固体の塩化トリアジンの調製に用いられるビス塩化トリアジン誘導体と、トリス(2-アミノエチル)アミンと、親水性化合物との量により決定されるが、aは1〜10000の範囲、bは0〜10000の範囲をとり得るものと考えられる。なお、bが0である場合は、主鎖が直鎖状重合体であることを意味する。また、bが1以上の数である場合は、主鎖が直線状の重合体および分枝鎖状の重合体であるものと、いわゆるスターポリマーと称される重合体との混合物であると考えられる。
本発明においては、式(2)〜(6)で表される固体の塩化トリアジン誘導体も同様に、それぞれ部分推定構造式で示している。
【0022】
より具体的には、本発明によれば、前記親水性化合物がメタノールである、式(2):
【化3】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2、aおよびbは式(1)で定義したとおりである]
で表される固体の塩化トリアジン誘導体が提供される。
【0023】
また、本発明によれば、前記親水性化合物がn-ブチルアミンである、式(3):
【化4】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2、aおよびbは式(1)で定義したとおりである]
で表される固体の塩化トリアジン誘導体が提供される。
【0024】
また、本発明によれば、前記親水性化合物がタウリンである、式(4):
【化5】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2、aおよびbは式(1)で定義したとおりである]
で表される固体の塩化トリアジン誘導体が提供される。
【0025】
また、本発明によれば、前記親水性化合物が塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムである、式(5):
【化6】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2、aおよびbはおよび式(1)で定義したとおりである]
で表される記載の固体の塩化トリアジン誘導体が提供される。
【0026】
また、本発明によれば、前記親水性化合物がタウリンと塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムとの混合物である、式(6):
【化7】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2、aおよびbは式(1)で定義したとおりであり、R'は同一分子内の互いに異なる位置では互いに独立して2-スルホエチルアミノ基または塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を表す]
で表される固体の塩化トリアジン誘導体が提供される。
【0027】
さらに、本発明によれば、 次の式(1'):
【化8】
[式中、R1はテトラエチレングリコジオキシ基を表す]
で表されるビス塩化トリアジン誘導体と、トリス(2-アミノエチル)アミンと、メタノール、ブチルアミン、タウリンおよび塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムからなる群から選択される1以上の親水性化合物とを用いることを特徴とする、一般式(1):
【0028】
【化9】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2はエチレン基を表し、Rはメトキシ基、n-ブチルアミノ基、2-スルホエチルアミノ基、塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を表すかまたはRは同一分子内で独立して2-スルホエチルアミノ基もしくは塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を表し、aは1〜10000を表し、bは0〜10000の整数を表す]
で表される、固体の塩化トリアジン誘導体の製造方法が提供される。
【0029】
本発明による固体の塩化トリアジン誘導体の製造に用いられる式(1'):
【化10】
[式中、R1はテトラエチレングリコジオキシ基を表す]
で表されるビス塩化トリアジン誘導体(テトラエチレングリコールビス(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル))は、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンとテトラエチレングリコールから、例えば前記特許文献1に記載の公知の方法に従って調製できる。
【0030】
したがって、本発明において用いられている用語「テトラエチレングリコジオキシ基」とは、基 −(OCH2CH2)4O− を意味する。
【0031】
本発明による固体の塩化トリアジン誘導体の製造に用いられる親水性化合物としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、タウリンおよび塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムなどが挙げられる。これらのうち、操作の簡便性、収率などの点からメタノール、n-ブチルアミン、タウリンおよび塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムなどがより好ましい。
【0032】
上記の親水性化合物は、それぞれ単独で用いることもできるが、これらの混合物として用いることもできる。
【0033】
上記の親水性化合物は、前記式(1')で表されるビス塩化トリアジン誘導体に対して1モル%〜75モル%の間、好ましくは5モル%〜50モル%の間の任意の量で好適に用いられる。
【0034】
これは上記ビス塩化トリアジン誘導体に対する上記の親水性化合物の使用量が1モル%以下の場合は、本発明による固体の塩化トリアジン誘導体とN-メチルモルホリンを用いる水溶液中での縮合反応によるアミド結合形成反応において、上記の固体の塩化トリアジン誘導体の親水性が低いため、縮合反応の収率が低下するためである。
【0035】
また、逆に、上記ビス塩化トリアジン誘導体に対する上記の親水性化合物の使用量が75モル%以上の場合は、本発明による固体の塩化トリアジン誘導体分子量の低下、すなわち重合度の低下に起因すると考えられる当該固体の塩化トリアジン誘導体の収率が低下するためである。
【0036】
前記一般式(1)または式(2)〜(6)で表される化合物は、前記式(1')で表されるビス塩化トリアジン誘導体と、トリス(2-アミノエチル)アミンと、前記親水性化合物のいずれか1つか、またはそれらの混合物とを反応させて得ることができる。
【0037】
この反応は、通常、溶媒中、塩基の存在下に室温で行なわれる。
上記の反応に用いられる溶媒としては、水、テトラヒドロフラン(THF)またはジオキサンまたはこれらの混液が挙げられる。
【0038】
上記の反応に用いられる塩基としては、NaHCO3、KaHCO3、Na2CO3、K2CO3、N-エチルジイソプロピルアミンまたはトリエチルアミン等を用いることができる。
【0039】
すなわち、前記一般式(1)または式(2)〜(6)で表される化合物は、例えば、NaHCO3、トリス(2-アミノエチル)アミンおよび前記親水性化合物を水に溶かして水溶液とし、この水溶液に、撹拌下、前記ビス塩化トリアジン誘導体のテトラヒドロフラン溶液を室温で加え、撹拌を継続すると反応生成物であるポリマー(固体の塩化トリアジン誘導体)を析出させることにより得られる。
【0040】
なお、上記のポリマーが析出しにくい場合には、反応終了後、必要に応じて水、THFまたはメタノールなどを反応混合物に添加してポリマーの析出を促進することもできる。
析出したポリマーは常法によりろ取し、洗浄した後、真空乾燥または水に懸濁して凍結乾燥に付される。
【0041】
本発明による固体の塩化トリアジン誘導体は、N-メチルモルホリンとの併用で、水溶液中、カルボキシ基とアミノ基の縮合反応における縮合剤として用いることができる(詳細な反応機構に関しては、例えば非特許文献2〜6を参照)。
【0042】
これらの縮合反応において用いられる溶媒としては、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、酢酸エチル、アセトニトリルおよび水などが挙げられるが、本発明による固体の塩化トリアジン誘導体は水溶液中でも高収率でアミド化合物を生成することが、本発明の特徴である。
【0043】
本発明による固体の塩化トリアジン誘導体を用い、N-メチルモルホリンの存在下にカルボキシ基とアミノ基とを縮合させるアミド化反応は、通常、室温で撹拌下に進行する。
【0044】
したがって、本発明による固体の塩化トリアジンは、N-メチルモルホリンの存在下、水溶液中において、アミド化反応用親水性縮合剤として好適に使用できる。
【実施例】
【0045】
以下の実施例は、本発明を説明するものであり、本発明を限定するものではない。
なお、実施例では、特に記載のない限り、以下の測定装置および試薬を用いた。
【0046】
赤外吸収測定装置:ニコレット社製、FT-IR AVATER360
NMRスペクトロメーター:ブルッカー社製、DPX400スペクトロメーター
電位差滴定装置:メトローム社製、Metrohm 794 Basic Titrino
トリス(2-アミノエチル)アミン(関東化学株式会社製)
テトラエチレングリコール(関東化学株式会社製)
2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン(関東化学株式会社製)
なお、市販品として容易に入手できる試薬については、上記への記載を割愛した。
【0047】
製造例1
ビス塩化トリアジン誘導体の調製
無水テトラヒドロフラン(THF)で洗浄した水素化ナトリウム(60%オイル分散型;9.11 g、実質量5.74 g、228 mmol)の無水THF(40 ml)懸濁液に、窒素雰囲気下0℃で、テトラエチレングリコール(23.2 g、119 mmol)を滴下し、同温度で1時間、さらに室温で1時間撹拌した。得られた反応混合物を-78℃に冷却し、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン(20.0 g、109 mmol)の無水THF(70 ml)溶液を滴下した。
【0048】
次に、混合物を-78℃、-40℃、0℃および室温でそれぞれ1時間ずつ撹拌した後、乾燥ジエチレングリコールジメチルエーテル(4 ml)を加えた。混合物を50℃で1時間撹拌した後、125℃まで加熱してTHFを留去し、同温度で16時間撹拌を継続した。反応終了後、反応混合物を0℃に冷却して30分放置した後、固体の化合物を吸引ろ取し、THF、水、THFで順次洗浄した。ろ取物を減圧乾燥して、クリーム色の目的物ビス塩化トリアジン誘導体(テトラエチレングリコールビス(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル))14.8 gを収率45%で得た。得られた化合物のIRスペクトルは、標品のものと完全に一致した。
【0049】
実施例1
ビス塩化トリアジン誘導体に対して50モル%メタノールを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(OMe50)の調製
ジイソプロピルエチルアミン(2.64 g、2.0当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(746 mg、0.5当量)、メタノール(163 mg、0.5当量)をTHF (5 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(5.0 g、1.0当量)のTHF (10 mL)溶液に-78℃で滴下した。滴下終了後、ドライアイス浴を取り除き、2時間撹拌した。この間、約1時間で反応溶液は室温に達した。
【0050】
この反応液にメタノール約20 mLを加え、35〜40℃で撹拌した。15時間後、ポリマーをろ過し、THF、水、THFの順に洗浄し、減圧乾燥して、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して50モル%のメトキシ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(OMe50) 3.16 gを収率61%で得た。
IR (KBr):ν = 3265, 2873, 1559, 1429, 1333, 1288, 1115, 1055, 806 cm-1。
【0051】
個体の塩化トリアジン誘導体の塩素価の測定
乾燥したポリマー(20 mg)を精密に量り、1 M NaNO3 (2 mL)を加えて20分間の振とう撹拌によりポリマーを洗浄し、ろ過した。ポリマーに0.2 M N-メチルモルホリン水溶液(2 mL)を加え、振とう撹拌し20分後、さらに1 M NaNO3 (3 mL)を加えて振とう撹拌を続けた。24時間後、ろ過し、ポリマーを1 M NaNO3 (2 mL)および水(5 mL ×3)でそれぞれ洗浄-ろ過を繰り返し、すべてのろ液をあわせて、0.01 M AgNO3水溶液により、電位差滴定装置を用いて滴定した。
滴定に要したAgNO3水溶液量から、次式:
塩素価(mmol / g) = AgNO3 (mL) × 0.01 ×1.005 (f ) / ポリマー(g)
に従い、塩素価を求めたところ、塩素価は3.031 mmol / g (2回平均値)であった。
【0052】
膨潤率の測定
2.5 mL シリンジ外筒にフィルターをセットし、実施例1で得られた乾燥したポリマー(0.5 mL程度)を入れ、軽くタップして詰める。内容積をシリンジの目盛りから読み取り、乾燥時体積V0とする。シリンジに通水して気泡を抜いた後、シリンジ上部まで水を貯めた状態で12時間静置する。静置後体積をV1とし、次式:
膨潤率(%)=(V1-V0)/ V0×100
より求めた乾燥時体積に対する体積増加分率を膨潤率として測定したところ、OME50の膨潤率は38%であった。
【0053】
以下の実施例で得られた固体の塩化トリアジン誘導体についても、それぞれ同様にして塩素価および膨潤率を求めた。
【0054】
実施例2
ビス塩化トリアジン誘導体に対して30モル%メタノールを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(OMe30)の調製
ジイソプロピルエチルアミン(1.58 g、2.0当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(506 mg、0.57当量)、メタノール(59 mg、0.3当量)をTHF (4 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(3.0 g、1.0当量)のTHF (8 mL)溶液に-78℃で滴下した。滴下終了後、ドライアイス浴を取り除き、2時間撹拌した。この間、約1時間で反応溶液は室温に達した。メタノール約10 mLを加え、35〜40℃で撹拌した。15時間後、ポリマーをろ過し、THF、水、THFの順に洗浄し、減圧乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して30モル%のメトキシ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(OMe30) 1.60 gを収率51%で得た。
【0055】
塩素価 = 1.917 mmol / g (2回平均値)。
IR (KBr):ν= 3270, 2873, 1570, 1430, 1333, 1289, 1125, 1062, 807 cm-1
【0056】
実施例3
ビス塩化トリアジン誘導体に対して10モル%メタノールを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(OMe10)の調製
ジイソプロピルエチルアミン(1.58 g、2.0当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(564 mg、0.63当量)、メタノール(20 mg、0.1当量)をTHF (4 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(3.0 g、1.0当量)のTHF (8 mL)溶液に-78℃で滴下した。滴下終了後、ドライアイス浴を取り除き、2時間撹拌した。この間、約1時間で反応溶液は室温に達した。メタノール約10 mLを加え、35-40℃で撹拌した。15時間後、ポリマーをろ過し、THF、水、THFの順に洗浄し、減圧乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して10モル%のメトキシ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(OMe10) 1.50 gを収率48%で得た。
【0057】
塩素価 = 2.381 mmol / g (2回平均値)。
IR (KBr):ν = 3274, 2872, 1578, 1429, 1334, 1289, 1125, 1057, 806 cm-1
【0058】
実施例4
ビス塩化トリアジン誘導体に対して50モル%n-ブチルアミンを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(Bu50)の調製
ジイソプロピルエチルアミン(1.05 g、2.0当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(298 mg、0.5当量)、butylアミン(149 mg、0.5当量)をTHF (4 mL)に溶かし、テトラエチレングリコール ビス(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル) エーテル(5.0 g、1.0当量)のTHF (4 mL)溶液に-78℃で滴下する。 30分間-78℃で撹拌後、冷媒中からドライアイスを取り除き、徐々に室温まで温度上昇するようにした。24時間後、析出したポリマーをろ過し、THF、水、THFの順に洗浄し、減圧乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して50モル%のn-ブチルアミノ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(Bu50) 686 mgを収率32%で得た。
【0059】
塩素価 = 3.101 mmol / g (2回平均値)。
IR (KBr):ν = 2868, 1596, 1457, 1420, 1333, 1288, 1120, 1059, 978, 939, 873, 807 cm-1
【0060】
実施例5
ビス塩化トリアジン誘導体に対して5モル%タウリンを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(T5)の調製
NaHCO3 (3.47 g、4.1当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(970 mg、0.65当量)、タウリン(64 mg、0.05当量)を水(15 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(5.0 g、1.0当量)のTHF (10 mL)溶液を室温下で加え、激しく撹拌した。約40分後、析出するポリマーにより反応溶液が泥状となったところで水(5 mL)を加えた。開始から1.5時間後、ポリマーがゼリー状の固まりとなったためTHF (10 mL)を加え、強撹拌およびスパーテルで2 mm程度の粒に砕き、さらに撹拌し続けた。開始から5時間後、THF (10 mL)を加え、30分撹拌の後、篩(200メッシュ:75μm) にあけ、ろ過する。篩上のポリマーをTHF、水、1 M NaNO3 水溶液、水の順に洗浄し、水(50 mL)に懸濁させて、凍結乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して5モル%の2-スルホエチルアミノ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(T5) 3.44 gを収率65%で得た。
【0061】
塩素価 = 3.364 mmol / g (2回平均値)。
膨潤率(T5):水、50%
IR (KBr):ν = 2919, 2846, 1629, 1560, 1541, 1456, 1335, 1221, 1128, 1097, 1053, 807 cm-1.
【0062】
実施例6
ビス塩化トリアジン誘導体に対して30モル%タウリンを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(T30)の調製
NaHCO3 (1.47 g、4.3当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(337 mg、0.57当量)、タウリン(153 mg、0.3当量)を水(8 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(2.0 g、1.0当量)のTHF (4 mL)溶液を室温下で加え、激しく撹拌した。約4時間後、反応溶液をTHF (100 mL)に注ぎ、数分間撹拌後、メタノール(200 mL)を加えた。沈殿したポリマーをろ過し、THF、水、1 M NaNO3 水溶液、水の順に洗浄し、水(50 mL)に懸濁させて、凍結乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して30モル%の2-スルホエチルアミノ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(T30) 1.98 g を収率89%で得た。
【0063】
塩素価: 2.851 mmol / g (2回平均値)。
膨潤率:水、100%。
【0064】
実施例7
ビス塩化トリアジン誘導体に対して50モル%タウリンを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(T50)の調製
NaHCO3 (1.54 g、4.5当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(298 mg、0.5当量)、タウリン(255 mg、0.5当量)を水(8 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(2.0 g、1.0当量)のTHF (4 mL)溶液を室温下で加え、激しく撹拌した。約1時間後、水(8 mL)、THF (12 mL)を加え、スパーテルで2 mm程度の粒に砕き、さらに1時間撹拌し続けた。 反応混合物をTHF (100 mL)に注ぎ、メタノール(200 mL)を加えてポリマーを沈殿させ、ろ過する。ポリマーをTHF、水、1 M NaNO3 水溶液、水の順に洗浄し、水(50 mL)に懸濁させて、凍結乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して50モル%のメトキシ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(OMe50) 1.82 g を収率79%で得た。
【0065】
塩素価: 3.432 mmol / g (2回平均値)。
膨潤率:水、100%。
【0066】
実施例8
ビス塩化トリアジン誘導体に対して10モル%塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(N10)の調製
NaHCO3 (2.31 g、4.5当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(564 mg、0.63当量)、2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムクロリド 塩酸塩(107 mg、0.1当量)、を水(9 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(3.0 g、1.0当量)のTHF (6 mL)溶液を室温下で加え、激しく撹拌した。約15分後および1時間後に水(3 mL)をそれぞれ加えた。開始から2.5時間後、反応混合物を篩(200メッシュ:75μm) にあけ、ろ過する。篩上のポリマーをTHF、水、1 M NaNO3 水溶液、水の順に洗浄し、水(50 mL)に懸濁させて、凍結乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して50モル%のメトキシ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(N10) 2.93 gを収率91%で得た。
【0067】
塩素価 = 4.226 mmol / g (2回平均値)。
膨潤率:水、67%。
【0068】
実施例9
ビス塩化トリアジン誘導体に対して50モル%塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムメタノールを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(N50)の調製
NaHCO3 (2.31 g、4.5当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(448 mg、0.5当量)、2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムクロリド 塩酸塩(536 mg、0.5当量)、を水(9 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(3.0 g、1.0当量)のTHF (6 mL)溶液を室温下で加え、激しく撹拌した。約15分後および1時間後に水(3 mL)をそれぞれ加えた。開始から3時間後、反応混合物を篩(200メッシュ:75μm) にあけ、ろ過する。篩上のポリマーをTHF、水、1 M NaNO3 水溶液、水の順に洗浄し、水(50 mL)に懸濁させて、凍結乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して50モル%のメトキシ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(OMe50) 2.32 gを収率66%で得た。
【0069】
塩素価 = 4.280 mmol / g (2回平均値)。
膨潤率:水、50%
【0070】
実施例10
ビス塩化トリアジン誘導体に対して5モル%タウリンおよび5モル%塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(TN10)の調製
NaHCO3 (3.86 g、4.5当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(940 mg、0.63当量)、2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムクロリド 塩酸塩(89 mg、0.05当量)、タウリン(64 mg、0.05当量)を水(15 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(5.0 g、1.0当量)のTHF (10 mL)溶液を室温下で加え、激しく撹拌した。1時間後、水 (10 mL)、THF (10 mL)を加え、更に10分後、水 (10 mL)を加えた。開始から1.5時間後、反応混合物を篩(200メッシュ:75μm) にあけ、ろ過する。篩上のポリマーをTHF、水、1 M NaNO3 水溶液、水の順に洗浄し、水(50 mL)に懸濁させて、凍結乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して5モル%2-スルホエチルアミノ基および5モル%塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(TN10) 4.46 g を収率84%で得た。
【0071】
塩素価 = 2.661 mmol / g (2回平均値)。
膨潤率:水、78%。
【0072】
実施例11
ビス塩化トリアジン誘導体に対して15モル%タウリンおよび15モル%塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(TN30)の調製
NaHCO3 (3.86 g、4.5当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(843 mg、0.57当量)、2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムクロリド 塩酸塩(268 mg、0.15当量)、タウリン(192 mg、0.15当量)を水(15 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(5.0 g、1.0当量)のTHF (15 mL)溶液を室温下で加え、激しく撹拌した。1.5時間後、析出するポリマーにより反応溶液が泥状となったところで水(10 mL)、THF (5 mL)を加えた。開始から2時間後、強撹拌により2〜3 mm程度の粒状となった。開始から3時間後、THF (10 mL)を加え、30分撹拌の後、篩(200メッシュ:75μm) にあけ、ろ過する。篩上のポリマーをTHF、水、1 M NaNO3 水溶液、水の順に洗浄し、水(50 mL)に懸濁させて、凍結乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して5モル%2-スルホエチルアミノ基および5モル%塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(TN30) 4.89 gを収率88%で得た。
【0073】
塩素価 = 2.033 mmol / g (2回平均値)。
膨潤率:水、50%。
【0074】
実施例12
ビス塩化トリアジン誘導体に対して25モル%タウリンおよび25モル%塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムを使用した固体の塩化トリアジン誘導体(TN50)の調製
NaHCO3 (3.86 g、4.5当量)、トリス(2-アミノエチル)アミン(746 mg、0.5当量)、2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムクロリド 塩酸塩(447 mg、0.25当量)、タウリン(319 mg、0.25当量)を水(15 mL)に溶かし、製造例1で得られたビス塩化トリアジン誘導体(5.0 g、1.0当量)のTHF (15 mL)溶液を室温下で加え、激しく撹拌した。1.5時間後、析出するポリマーにより反応溶液が泥状となったところで水(10 mL)、THF (5 mL)を加えた。開始から2時間後、強撹拌により2〜3 mm程度の粒状となった。開始から3時間後、THF (10 mL)を加え、30分撹拌の後、篩(200メッシュ:75μm) にあけ、ろ過する。篩上のポリマーをTHF、水、1 M NaNO3 水溶液、水の順に洗浄し、水(50 mL)に懸濁させて、凍結乾燥し、分子内に前記ビス塩化トリアジンに対して25モル%2-スルホエチルアミノ基および25モル%塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を有するポリマー化合物である固体の塩化トリアジン誘導体(TN50) 3.22 gを収率58%で得た。
【0075】
塩素価 = 3.315 mmol / g (2回平均値)。
膨潤率:水、50%。
【0076】
試験例1
固体の塩化トリアジン誘導体(OMe50)を用いた水溶液中でのアミド化反応
4-スルホ安息香酸一カリウム(10 mg、1.0当量)、エチルアミン 塩酸塩(6.8 mg、2.0当量)およびN-メチルモルホリン(NMM) (29.5 mg、7.0当量)を溶かした水溶液(2.0 mL)をポリマー試薬(固体の塩化トリアジン誘導体)(10.0当量;ポリマーの塩素価より算出)に加え、室温下で12時間振とう撹拌した。反応液をろ過し、1 M NaNO3 (2 mL)、1 M K2CO3 (2 mL)、水(5 mL×2)でポリマーを洗浄したろ液とあわせ、凍結乾燥した。精密に秤量したマレイン酸を内部標準物質として残渣に加え、NMRにより収率を算出したところ、アミド化反応の収率は100%であった。
【0077】
試験例2〜12
実施例2〜12で得られた各固体の塩化トリアジン誘導体について上記試験例1と全く同様にして、各アミド化反応の収率をそれぞれ測定した。その結果を以下の表に示す。
【0078】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施例1で得られた固体の塩化トリアジン誘導体(OMe50)の膨潤率の測定を表す模式図である。
【図2】実施例1で得られた塩化トリアジン誘導体(OMe50)のIRスペクトルである。
【図3】実施例2で得られた塩化トリアジン誘導体(OMe30)のIRスペクトルである。
【図4】実施例3で得られた塩化トリアジン誘導体(OMe10)のIRスペクトルである。
【図5】実施例4で得られた塩化トリアジン誘導体(Bu50)のIRスペクトルである。
【図6】実施例5で得られた塩化トリアジン誘導体(T5)のIRスペクトルである。
【図7】実施例6で得られた塩化トリアジン誘導体(T30)のIRスペクトルである。
【0080】
【図8】実施例7で得られた塩化トリアジン誘導体(T50)のIRスペクトルである。
【図9】実施例8で得られた塩化トリアジン誘導体(N10)のIRスペクトルである。
【図10】実施例9で得られた塩化トリアジン誘導体(N50)のIRスペクトルである。
【図11】実施例10で得られた塩化トリアジン誘導体(TN10)のIRスペクトルである。
【図12】実施例11で得られた塩化トリアジン誘導体(TN30)のIRスペクトルである。
【図13】実施例12で得られた塩化トリアジン誘導体(TN50)のIRスペクトルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式(1'):
【化1】
[式中、R1はテトラエチレングリコジオキシ基を表す]
で表されるビス塩化トリアジン誘導体と、トリス(2-アミノエチル)アミンと、メタノール、ブチルアミン、タウリンおよび塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムからなる群から選択される1以上の親水性化合物とを反応させて得られる、一般式(1):
【化2】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2はエチレン基を表し、Rはメトキシ基、n-ブチルアミノ基、2-スルホエチルアミノ基、塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を表すかまたはRは同一分子内で独立して2-スルホエチルアミノ基もしくは塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を表し、aは1〜10000を表し、bは0〜10000の整数を表す]
で表される、固体の塩化トリアジン誘導体。
【請求項2】
前記親水性化合物がメタノールである、式(2):
【化3】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2、aおよびbは式(1)で定義したとおりである]
で表される請求項1に記載の固体の塩化トリアジン誘導体。
【請求項3】
前記親水性化合物がn-ブチルアミンである、式(3):
【化4】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2、aおよびbは式(1)で定義したとおりである]
で表される請求項1に記載の固体の塩化トリアジン誘導体。
【請求項4】
前記親水性化合物がタウリンである、式(4):
【化5】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2、aおよびbは式(1)で定義したとおりである]
で表される請求項1に記載の固体の塩化トリアジン誘導体。
【請求項5】
前記親水性化合物が塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムである、式(5):
【化6】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2、aおよびbはおよび式(1)で定義したとおりである]
で表される請求項1に記載の固体の塩化トリアジン誘導体。
【請求項6】
前記親水性化合物がタウリンと塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムとの混合物である、式(6):
【化7】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2、aおよびbは式(1)で定義したとおりであり、R'は同一分子内の互いに異なる位置では互いに独立して2-スルホエチルアミノ基または塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を表す]
で表される請求項1に記載の固体の塩化トリアジン誘導体。
【請求項7】
次の式(1'):
【化8】
[式中、R1はテトラエチレングリコジオキシ基を表す]
で表されるビス塩化トリアジン誘導体と、トリス(2-アミノエチル)アミンと、メタノール、ブチルアミン、タウリンおよび塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムからなる群から選択される1以上の親水性化合物とを用いることを特徴とする、一般式(1):
【化9】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2はエチレン基を表し、Rはメトキシ基、n-ブチルアミノ基、2-スルホエチルアミノ基、塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を表すかまたはRは同一分子内で独立して2-スルホエチルアミノ基もしくは塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を表し、aは1〜10000を表し、bは0〜10000の整数を表す]
で表される、固体の塩化トリアジン誘導体の製造方法。
【請求項8】
N-メチルモルホリンの存在下、水溶液中における親水性縮合剤としての請求項1〜6のいずれか一つに記載の化合物の使用。
【請求項1】
次の式(1'):
【化1】
[式中、R1はテトラエチレングリコジオキシ基を表す]
で表されるビス塩化トリアジン誘導体と、トリス(2-アミノエチル)アミンと、メタノール、ブチルアミン、タウリンおよび塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムからなる群から選択される1以上の親水性化合物とを反応させて得られる、一般式(1):
【化2】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2はエチレン基を表し、Rはメトキシ基、n-ブチルアミノ基、2-スルホエチルアミノ基、塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を表すかまたはRは同一分子内で独立して2-スルホエチルアミノ基もしくは塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を表し、aは1〜10000を表し、bは0〜10000の整数を表す]
で表される、固体の塩化トリアジン誘導体。
【請求項2】
前記親水性化合物がメタノールである、式(2):
【化3】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2、aおよびbは式(1)で定義したとおりである]
で表される請求項1に記載の固体の塩化トリアジン誘導体。
【請求項3】
前記親水性化合物がn-ブチルアミンである、式(3):
【化4】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2、aおよびbは式(1)で定義したとおりである]
で表される請求項1に記載の固体の塩化トリアジン誘導体。
【請求項4】
前記親水性化合物がタウリンである、式(4):
【化5】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2、aおよびbは式(1)で定義したとおりである]
で表される請求項1に記載の固体の塩化トリアジン誘導体。
【請求項5】
前記親水性化合物が塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムである、式(5):
【化6】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2、aおよびbはおよび式(1)で定義したとおりである]
で表される請求項1に記載の固体の塩化トリアジン誘導体。
【請求項6】
前記親水性化合物がタウリンと塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムとの混合物である、式(6):
【化7】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2、aおよびbは式(1)で定義したとおりであり、R'は同一分子内の互いに異なる位置では互いに独立して2-スルホエチルアミノ基または塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を表す]
で表される請求項1に記載の固体の塩化トリアジン誘導体。
【請求項7】
次の式(1'):
【化8】
[式中、R1はテトラエチレングリコジオキシ基を表す]
で表されるビス塩化トリアジン誘導体と、トリス(2-アミノエチル)アミンと、メタノール、ブチルアミン、タウリンおよび塩化2-(アミノエチル)トリメチルアンモニウムからなる群から選択される1以上の親水性化合物とを用いることを特徴とする、一般式(1):
【化9】
[式中、R1は式(1')で定義したとおりであり、R2はエチレン基を表し、Rはメトキシ基、n-ブチルアミノ基、2-スルホエチルアミノ基、塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を表すかまたはRは同一分子内で独立して2-スルホエチルアミノ基もしくは塩化2-トリメチルアンモニオエチルアミノ基を表し、aは1〜10000を表し、bは0〜10000の整数を表す]
で表される、固体の塩化トリアジン誘導体の製造方法。
【請求項8】
N-メチルモルホリンの存在下、水溶液中における親水性縮合剤としての請求項1〜6のいずれか一つに記載の化合物の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−214473(P2008−214473A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53028(P2007−53028)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年10月28日 社団法人 日本薬学会近畿支部発行の「第56回 日本薬学会近畿支部総会・大会 講演要旨集」に発表
【出願人】(800000057)財団法人新産業創造研究機構 (99)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年10月28日 社団法人 日本薬学会近畿支部発行の「第56回 日本薬学会近畿支部総会・大会 講演要旨集」に発表
【出願人】(800000057)財団法人新産業創造研究機構 (99)
【Fターム(参考)】
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