説明

塩化ビニル系樹脂組成物

【課題】電気絶縁性、耐銅汚染性及び温水浸漬時の通電性が改善され、電線被被覆材料として好適な塩化ビニル系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】塩化ビニル系樹脂100質量部に、(a)ハイドロタルサイト化合物0.01〜10質量部、(b)有機酸亜鉛塩0.01〜5質量部及び(c)N,N−ビス〔3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン0.001〜10質量部を含有してなる塩化ビニル系樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ビニル系樹脂組成物に関し、詳しくは、電気絶縁性、耐銅汚染性及び温水浸漬後の通電性に優れた電線被覆材料として好適な塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は、優れた電気絶縁性、耐アーク性、耐トラッキング性、耐電圧性を有していることから、ゴム、ポリオレフィン等に比較して絶縁材料として非常に重要なものである。しかしながら、塩化ビニル系樹脂は、熱的および酸化的劣化によりその優れた諸特性の低下をきたし、実際上、使用に耐えなくなる。また、電線被覆用途に用いた場合には、銅線に接触し、銅イオンの触媒作用によって塩化ビニル系樹脂の酸化劣化が促進されるという銅汚染性の問題を有していた。
【0003】
このような銅イオンによる悪影響を防止するため、ベンゾトリアゾール化合物などの重金属不活性化剤を使用することが知られていた。例えば、特許文献1には、ニトロ基、ハロゲン基またはアルコキシル基を有するベンゾトリアゾール化合物を用いて塩化ビニル系樹脂の熱による色相安定化法が提案されており、特許文献2には、ジアルキルフタレート、塩素化パラフィン、クレー及びベンゾトリアゾール系化合物を配合してなる軟質ポリ塩化ビニル系樹脂組成物が提案されている。
【0004】
しかし、これらのベンゾトリアゾール化合物を単独で塩化ビニル系樹脂に使用した場合には、その効果が小さく、また比較的多量に配合する必要があり、着色性を低下したり、あるいは被覆材と銅線とが粘着するなどの問題があった。そのため、特許文献3には、ベンゾトリアゾール化合物とβ−ジケトン化合物を組み合わせて使用することが提案されている。また、特許文献4には、サリチル酸アマイド化合物を重金属不活性化剤として使用することが提案されている。さらに、N,N−ビス〔3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジンは、重金属不活性化剤として公知な化合物である。
【特許文献1】特公昭47−41735号公報
【特許文献2】特開昭56−147839号公報
【特許文献3】特開平10−308122号公報
【特許文献4】特開昭47−39141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3記載の方法では、着色性を低下したり、あるいは被覆材と銅線とが粘着するなどの問題に対しては効果があるものの、周辺環境によって満足できる効果が得られないという欠点があった。また、特許文献4の方法では、サリチル酸アマイド化合物を単独で使用した場合には、その効果が小さく、また比較的多量に配合する必要があり、着色性を低下したり、絶縁性を低下するなどの問題があった。
【0006】
さらに、N,N−ビス〔3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジンを単独で用いた場合には耐熱性を低下させるなどの欠点を有していた。
【0007】
さらにまた、塩化ビニル系樹脂組成物を電線被覆材料として使用するに際し、これまで温水浸漬時の通電性が問題となってきたが、未だこれを解決する方法は見つかっていないのが現状である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、電気絶縁性、耐銅汚染性及び温水浸漬時の通電性が改善され、電線被被覆材料として好適な塩化ビニル系樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、塩化ビニル系樹脂に対し、ハイドロタルサイト化合物、有機酸亜鉛塩及び特定のヒドラジド化合物を含有する塩化ビニル系樹脂組成物が、上記目的を達成し得ることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂100質量部に、(a)ハイドロタルサイト化合物0.01〜10質量部、(b)有機酸亜鉛塩0.01〜5質量部及び(c)N,N−ビス〔3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン0.001〜10質量部を含有してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電気絶縁性、耐銅汚染性及び温水浸漬時の通電性が改善され、電線被被覆材料として好適な塩化ビニル系樹脂組成物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明に使用される塩化ビニル系樹脂としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などその重合方法は特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニリトル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−各種ビニルエーテル共重合体などの塩素含有樹脂、およびそれら相互のブレンド品あるいは他の塩素を含まない合成樹脂、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリリレート共重合体、ポリエステルなどとのブレンド品、ブロック共重合体、グラフト共重合体などを挙げることができる。
【0013】
本発明に使用される(a)ハイドロタルサイト化合物としては、下記一般式(I)で表される、マグネシウムとアルミニウム、または亜鉛、マグネシウム及びアルミニウムからなる複塩化合物が好ましく用いられ、また、結晶水を脱水したものであってもよい。
【0014】
MgxZnAl2・(OH)2x+2y+4・(CO31-z/2(ClO4)・mH2O (I)
(式中、x、y及びzは各々下記式、
0≦y/x<10、2≦x+y<20、0≦z≦2
で表される条件を満足する数を示し、mは0または任意の整数を示す)
【0015】
上記ハイドロタルサイト化合物は、天然物であってもよく、また合成品であってもよい。該合成品の合成方法としては、特公昭46−2280号公報、特公昭50−30039号公報、特公昭51−29129号公報、特公平3−36839号公報、及び特開昭61−174270号公報などに記載の公知の方法を例示することができる。また、本発明においては、上記ハイドロタルサイト化合物は、その結晶構造、結晶粒子径などに制限されることなく使用することが可能である。
【0016】
また、上記ハイドロタルサイト化合物は、その表面をステアリン酸のごとき高級脂肪酸、オレイン酸アルカリ金属塩のごとき高級脂肪酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩のごとき有機スルホン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステルまたはワックスなどで被覆したものも使用できる。
【0017】
これらハイドロタルサイト化合物の含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部であり、0.01質量部未満の含有では、十分な熱安定性を供与することができず、10質量部を超えて含有した場合には、無駄であるばかりではなく、着色性を低下するおそれがあるため好ましくない。
【0018】
本発明に使用される(b)有機酸亜鉛塩としては、カルボン酸、有機リン酸類またはフェノール類の亜鉛塩などが用いられ、該カルボン酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、2−エチルヘキシル酸、カプリン酸、ネオデカン酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、クロロステアリン酸、12−ケトステアリン酸、フェニルステアリン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレイン酸、オレイン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、エルカ酸、ブラシジン酸および類似酸ならびに獣脂脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、桐油脂肪酸、大豆油脂肪酸及び綿実油脂肪酸などの天然に産出する上記の酸の混合物、安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、エチル安息香酸、イソプロピル安息香酸、トルイル酸、キシリル酸、サリチル酸、5−t−オクチルサリチル酸、ナフテン酸、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられ、また、該有機リン酸類としては、例えば、モノまたはジオクチルリン酸、モノまたはジドデシルリン酸、モノまたはジオクタデシルリン酸、モノまたはジ−(ノニルフェニル)リン酸、ホスホン酸ノニルフェニルエステル、ホスホン酸ステアリルエステルなどが挙げられ、また、該フェノール類としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、シクロヘキシルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフエノールなどが挙げられ、これらは正塩、酸性塩、塩基性塩あるいは過塩基性錯体であってもよい。
【0019】
上記有機酸亜鉛塩の含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.01〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部であり、0.01質量部未満の含有では、着色性改善効果が不十分であり、5質量部を超えて含有した場合には、無駄であるばかりではなく熱安定性を低下するおそれがあるため好ましくない。
【0020】
本発明に使用される(c)N,N−ビス〔3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジンとしては、イルガノックスMD1024(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株))などとして市販されているものを使用することができる。
【0021】
上記ヒドラジド化合物の含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、0.001〜10質量部、好ましくは0.01〜5質量部である。該含有量が0.001質量部未満では電気絶縁性、銅汚染性及び温水浸漬後の通電性などの改善効果が十分に発揮されず、10質量部よりも多い場合には、無駄であるばかりでなく、熱安定性、着色性などを低下するおそれがあるため、好ましくない。
【0022】
また、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物には、可塑剤((d)成分)を配合することができる。かかる(d)可塑剤としては、塩化ビニル系樹脂組成物に通常用いられているものを任意に使用することができ、例えば、ジブチルフタレート、ブチルヘキシルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルテレフタレートなどのフタレート系可塑剤;ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(ブチルジグリコール)アジペートなどのアジペート系可塑剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリ(ブトキシエチル)ホスフェート、オクチルジフェニルホスフェートなどのホスフェート系可塑剤;多価アルコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどと、二塩基酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などとを用い、必要により一価アルコール、モノカルボン酸をストッパーに使用したポリエステル系可塑剤;その他、テトラヒドロフタル酸系可塑剤、アゼライン酸系可塑剤、セバチン酸系可塑剤、ステアリン酸系可塑剤、クエン酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ビフェニレンポリカルボン酸系可塑剤などが挙げられる。
【0023】
上記(d)可塑剤の配合量は、任意の量を使用することができるが、好ましくは、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、10〜100質量部、特に好ましくは20〜80質量部の範囲で使用される。
【0024】
また、本発明の塩化ビニル系組成物には、更に、通常塩化ビニル系樹脂用添加剤として用いられている各種の添加剤、例えば、亜鉛以外の有機酸金属塩、有機ホスファイト化合物、フェノール系または硫黄系抗酸化剤、エポキシ化合物、ポリオール類、β−ジケトン化合物、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等を配合することもできる。
【0025】
上記亜鉛以外の有機酸金属塩を併用することができ、該有機酸金属塩を構成しうる金属種としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、ストロンチウム、カドミウム、錫、セシウム、アルミニウムなどの金属種が挙げられ、有機酸種としては、カルボン酸、有機リン酸類またはフェノール類が挙げられ、これらは正塩、酸性塩、塩基性塩あるいは過塩基性錯体であってもよい。
【0026】
上記有機ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)・1,4−シクロヘキサンジメチルジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、フェニル−4,4’−イソプロピリデンジフェノール・ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12〜C15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、水素化−4,4’−イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス〔4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)〕・1,6−ヘキサンジオール・ジホスファイト、テトラトリデシル・4,4’−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)・1,1,3−トリス(2−メチル−5−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスファイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール・2,4,6−トリ第三ブチルフェノールモノホスファイトなどが挙げられる。
【0027】
上記フェノール系抗酸化剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン−ビス〔β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−ブチルフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコールビス〔β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。
【0028】
上記硫黄系抗酸化剤としては、例えば、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステルなどのジアルキルチオジプロピオネート類およびペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)などのポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類などが挙げられる。
【0029】
上記エポキシ化合物としては、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化桐油、エポキシ化魚油、エポキシ化牛脂油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化サフラワー油などのエポキシ化動植物油、エポキシ化ステアリン酸メチル、エポキシ化ステアリン酸ブチル、エポキシ化ステアリン酸2−エチルヘキシル、エポキシ化ステアリン酸ステアリル、エポキシ化ポリブタジエン、トリス(エポキシプロピル)イソシアヌレート、エポキシ化トール油脂肪酸エステル、エポキシ化アマニ油脂肪酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジエポキサイド、ジシクロヘキセンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどのエポキシ化合物などが挙げられる。また、ここでエポキシ化大豆油の如き可塑剤としても使用されるエポキシ化合物を使用する場合には、剛性を低下するために前記(d)可塑剤と併せて25質量部を超えて使用することはできない。
【0030】
上記ポリオール化合物としては、例えば、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールまたはジペンタリスリトールのステアリン酸ハーフエステル、ビス(ジペンタエリスリトール)アジペート、グリセリン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0031】
上記β−ジケトン化合物としては、例えば、アセチルアセトン、トリアセチルメタン、2,4,6−ヘプタトリオン、ブタノイルアセチルメタン、ラウロイルアセチルメタン、パルミトイルアセチルメタン、ステアロイルアセチルメタン、フェニルアセチルアセチルメタン、ジシクロヘキシルカルボニルメタン、ベンゾイルホルミルメタン、ベンゾイルアセチルメタン、ジベンゾイルメタン、オクチルベンゾイルメタン、ビス(4−オクチルベンゾイル)メタン、ベンゾイルジアセチルメタン、4−メトキシベンゾイルベンゾイルメタン、ビス(4−カルボキシメチルベンゾイル)メタン、2−カルボキシメチルベンゾイルアセチルオクチルメタン、デヒドロ酢酸、シクロヘキサン−1,3−ジオン、3,6−ジメチル−2,4−ジオキシシクロヘキサン−1カルボン酸メチル、2−アセチルシクロヘキサノン、ジメドン、2−ベンゾイルシクロヘキサンなどが挙げられる。また、これらβ−ジケトン化合物の金属塩も使用することができ、該β−ジケトン金属塩を提供し得る金属種としては、例えば、リチウム、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム等のアルカリ土類金属;亜鉛、アルミニウム、錫、アルキル錫などが挙げられる。
【0032】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)などの2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステルなどの2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリドなどの置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレートなどのシアノアクリレート類などが挙げられる。
【0033】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラエチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ〕ウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ〕ウンデカンなどのヒンダードアミン化合物が挙げられる。
【0034】
充填剤の具体例としては炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナけい酸ナトリウム、ハイドロカルマイト、けい酸アルミニウム、けい酸マグネシウム、けい酸カルシウム、ゼオライト等のけい酸金属塩、活性白土、タルク、クレイ、ベンガラ、アスベスト、三酸化アンチモンなどである。
【0035】
また、本発明の組成物には、通常塩化ビニル系樹脂に使用される安定化助剤を添加することができる。かかる安定化助剤としては、例えば、ジフェニルチオ尿素、アニリノジチオトリアジン、メラミン、安息香酸、ケイヒ酸、p−第三ブチル安息香酸、ゼオライト、過塩素酸塩などが挙げられる。
【0036】
その他、本発明の組成物には、必要に応じて通常塩化ビニル系樹脂に使用される添加剤、例えば、架橋剤、帯電防止剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、滑剤、難燃剤、防曇剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、発泡剤、金属不活性剤、離型剤、顔料、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤等を配合することができる。
【0037】
また、本発明の組成物は、塩化ビニル系樹脂の加工方法には限定されずに使用することが可能であり、例えば、ロール加工、押出成型加工、溶融流延法、加圧成型加工等に好適に使用することができる。
【0038】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、好ましくは電線被覆用途に使用する。かかる塩化ビニル系樹脂組成物が電気絶縁性、耐銅汚染性及び温水浸漬後の通電性に優れているため、電線被覆用途に使用した場合に、電線の機能を損なわずに十分な保護ができる。
【実施例】
【0039】
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例によって制限を受けるものではない。
【0040】
実施例1−1〜1−3、比較例1−1〜1−5
下記配合処方に、表1記載の試験化合物を加えてベース樹脂を調製し、該ベース樹脂を予備混練し、ロール条件170℃、30rpmで7分間ロール上で混練した後、190℃で5分間プレスして厚さ1mmのシートを作製した。得られたロールシートを190℃のギヤーオーブン中に90分間放置して、目視により着色性を評価した。評価は10段階で1がほとんど着色のない状態を表し、数値が大きいものほど着色が激しいことを示す。また、210℃のギヤーオーブンに入れて黒化するまでの時間(熱安定性、単位:分)を測定した。さらに、印加電圧500V、温度30℃、湿度42%の条件にて体積抵抗率(VR値:電気絶縁性、単位:Ω・cm)を測定した。得られた結果を表1に併記する。
【0041】
また、ロールシートに銅箔をサンドして180℃で5分間プレスして厚さ1mmの積層フィルム(銅箔サンドシート)を作製し、これを60℃、湿度80%の恒温恒湿槽に入れて、1か月後の塩化ビニルフィルムの着色性を目視によって判定し、耐銅汚染性を評価した。評価基準は1〜10の10段階で、1がほとんど着色のない状態を表し、数値の増大に伴って着色が大きくなることを示す。さらにこの銅箔サンドシートを用いて、UL規格のTHWN−2に準じて90℃温水中に6ヶ月浸漬したシートの通電性を確認した。○は通電性が良好な場合を示し、×は通電性が悪い場合を示す。得られた結果を表1に併記する。
【0042】
(配合処方) 質量部
塩化ビニル樹脂(重合度1000) 100
トリノニルトリメリテート 50
テトラキス(3−4−ヒドロキシ−3,5−ジ第三
ブチルフェニル)プロピオニルオキシメチル)メタン 0.5
ジベンゾイルメタン 0.1
ステアリン酸カルシウム 0.6
【0043】
【表1】

*1:協和化学(株)製;ハイドロタルサイト
*2:チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製;N,N−ビス〔3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン
【0044】
上記実施例より明らかなように、ハイドロタルサイト化合物とステアリン酸亜鉛を組合せて使用した場合(比較例1−1)には、耐銅汚染性、通電性が劣るものである。ここに、銅汚染性防止剤として知られるベンゾトリアゾールを添加した場合(比較例1−1、2)には耐銅汚染性、通電性は改善されるものの電気絶縁性(VR値)の低下が見られる。また、本発明の特定のヒドラジド化合物を使用した場合であってもステアリン酸亜鉛のみと組合せた場合(比較例1−4)には、耐銅汚染性、通電性は改善されるものの熱安定性が著しく低下し、ハイドロタルサイト化合物のみと組合せた場合(比較例1−5)には、着色性が著しく低下する。これに対し、ハイドロタルサイト化合物、ステアリン酸亜鉛及び本発明の特定のヒドラジド化合物を組合せて用いることによって、着色性、熱安定性に対する悪影響が少なく、電気絶縁性、耐銅汚染性、通電性を改善することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂100質量部に、(a)ハイドロタルサイト化合物0.01〜10質量部、(b)有機酸亜鉛塩0.01〜5質量部及び(c)N,N−ビス〔3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン0.001〜10質量部を含有してなることを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項2】
電線被覆用途に使用する請求項1記載の塩化ビニル系樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−132807(P2009−132807A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310284(P2007−310284)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】