説明

塩基性反応条件下におけるアシル転位によって1,3−ジオキソラン−2−オン及びカルボン酸エステルを調製する方法

本発明は、一般式(3)の1,3-ジオキソラン-2-オンを調製する方法であって、塩基性反応条件下における一般式(1)の対応するエステルのエステル交換によって調製する方法に関する。更に本発明は、一般式(3)の1,3-ジオキソラン-2-オンの誘導体の形態の中間体の単離を伴って、又は、伴わずに、一般式(5)の2-ヒドロキシカルボン酸エステルを調製する方法であって、塩基性反応条件下における一般式(1)の対応するエステルのエステル交換によって調製する方法に、関連する。本発明の方法によって、反応が非常に穏やかな塩基性条件下で行われることが可能になり、高極性非プロトン性溶媒中での反応とは異なり、副反応物の生成がより少なく、かつ、より高い収量をもたらす。酸-及び/又は温度-感受性化合物を合成することが可能である。


(3)


(1)
(式中、R1〜R5が、請求の範囲及び明細書において示される意味を有する。)


(5)
(式中、R1、R2、及び、R6が、請求の範囲及び明細書において示される意味を有する。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(3)の1,3-ジオキソラン-2-オンを調製する方法であって、塩基性反応条件下における一般式(1)の対応するエステルのエステル交換によって調製する方法に関する。
【0002】
【化1】

(3)
【0003】
【化2】

(1)
(式中、R1〜R5は、請求の範囲及び明細書において示される意味を有する。)
更に本発明は、一般式(3)の1,3-ジオキソラン-2-オンの誘導体の形態の中間体の単離を伴って、又は、伴わずに、一般式(5)の2-ヒドロキシカルボン酸エステルを調製する方法であって、塩基性反応条件下における一般式(1)の対応するエステルのエステル交換によって調製する方法に、関連する。
【0004】
【化3】

(5)
(式中、R1、R2、及び、R6は、請求の範囲及び明細書において示される意味を有する。)
本発明の方法によって、反応を非常に穏やかな塩基性条件下で行うことが可能になり、高極性非プロトン性溶媒中での反応とは異なり、副反応物の生成がより少なく、かつ、より高い収量をもたらす。酸-及び/又は温度-感受性化合物を合成することが可能である。
ゼオライトタイプ4a及びtert.-アルコキシドの併用で、スコポリンを生じさせる転位をさほど起さずに、スコピンを用いたエステル交換が触媒される。
【背景技術】
【0005】
発明の背景
アセトニド、又は、1,3-ジオキソランの誘導体は、例えば、1,2-ジオール、ケトン、又は、アルデヒドから調製された環状ケタールである。先行技術として、酸触媒は、この反応を補助する及び/又は容易にすることが知られている。この環状ケタールは、合成において、それらの特異的性質を理由に、よく効果的に利用されうる有用な化合物である。
1,3-ジオキソラン-2-オンの特別な場合において、例えば、それらの中に構造的に含まれるカルボン酸官能基を、アシル化反応を補助するために活性化できる。この場合において、おそらく揮発性物質ケトン又はアルデヒドは、反応の副産物として出てくるので、反応平衡は、例えば、アルコールのアクリル化に対して良い影響を与える(「A new Synthesis of alpha-Hydroxycarboxylates and 2-Hydroxybenzoates」, Khalaj, Ali; Aboofazaeli, Rem; Iranian Journal of Chemistry & Chemical Engineering (1997), 16(1), 1-3を参照)。1,3-ジオキソラン-2-オンは、α-ヒドロキシカルボン酸の結晶化によって、いずれの場合にも、それら個々の官能性の保護基を結合し、それらをエーテル及びラクトン官能性に変換する。これは、時々、分子全体の安定性を決定的に向上させる。置換基のパターン及び意図する反応に応じて、分子における安定化又は活性化効果が顕著になり、かつ、利用されうる。
【0006】
α-ヒドロキシカルボン酸のための保護基としてケトン及びアルデヒドを用いることができる。定義された穏やかな条件下(酸性又は塩基性)で、その保護基は、1,3-ジオキソラン-2-オンから再び開裂されうるためである。
1,3-ジオキソラン-2-オンは、α-ヒドロキシカルボン酸エステル、及び、α-ヒドロキシカルボン酸アミドを調製するための公知の出発物質である(「Synthesis of alpha-Hydroxycarboxamides from Acetonids of alpha-Hydroxycarboxylicacids and Primary Amines」, Khalaj, A.; Nahid, E. , Synthesis (1985), (12), 1153-1155)。
ジオキソランを調製するための合成方法は、例えば、「Synthesis and Configuration of Aryl-Substituted 1,3-Dioxolan-4-ones」, Samoiloski, N.A.; Lapkin, LI.; Proshutinski, V.I.; Krutko, N.E.; Zhurnal Organicheskoi Khimii (1973), 9(6), 1145-1148に開示されている。1,3-ジオキソラン-2-オンを開裂して、2-ヒドロキシカルボン酸エステルを形成することは、既に文献に記載されている(「A new Synthesis of alpha-Hydroxycarboxylates and 2-Hydroxybenzoates」, Khalaj, Ali; Aboofazaeli, Reza; Iranian Journal of Chemistry & Chemical Engineering (1997), 16(1), 1-3を参照)。開裂は、酸性又は塩基性の触媒で、行われうる。
更に、多くの2-ヒドロキシカルボン酸エステルが、それらの薬理学的活性で知られており、その結果、それらを合成するより良い、単純な方法を開発するための手段が、絶えず求められている。α-ヒドロキシカルボン酸エステル自体が、他の薬理活性化合物を調製するための前駆体として使用されうることも知られている。この一つの例は、薬理活性があるアミノアルコールの2,2-ジアリールグリコール酸エステルであり、例えば、以下の化学式で示されるチオトロピウム塩が挙げられる:
【0007】
【化4】

(6)
(式中、X-は、アニオン、好ましくは、ブロミドを表す。)
チオトロピウム塩は、抗コリン作用薬として分類される。従来技術において、チオトロピウムブロミドは、特に、非常に強い抗コリン作用薬として記載されている。チオトロピウムブロミドは、例えば、EP418716A1で知られている。
【0008】
これまでに公表されたアセトニド/ジオキソラノンの全ての調製方法では、触媒として、強酸を使用している。従って、公知の方法の課題は、酸感受性化合物が、公知の従来の酸-触媒合成方法を用いて得ることができないことである。このことは、反応の使用を酸-安定性の原材料及び標的分子に限定する。チエニル置換グリコール酸との反応において、例えば、従来の調製方法は、この成分の不安定性のために使用できない。非常に多くの副反応物が得られ、時には、最終生成物を汚染し、そして、精製における相当な損失を招く有色の成分の形成を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明における課題は、従って、改良された穏やかで技術的に実施できる合成方法を提供することであり、該方法は、温度-感受性及び/又は酸-感受性官能基を有する1,3-ジオキソラン、又は、2-ヒドロキシカルボン酸エステルを合成する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の説明
第一の局面において、本発明は、式(3)の1,3-ジオキソラン-2-オンを調製する方法(反応1a)であって、式(1)の2-ヒドロキシカルボン酸エステルを、好適な塩基性触媒、好ましくは、tert.-アルコキシドの中から選択される触媒を添加して、好適な溶媒中で、ゼオライトの存在下で、一工程で、式(2)の化合物と、反応させる方法に関する。
【0011】
【化5】

(3)
(式中、
1及びR2は、夫々互いに独立して、水素、又は、シクロアルキル、アリール若しくはヘテロアリール基を表し、ここで、いずれの場合にも、シクロアルキル、アリール若しくはヘテロアリール基が、一置換又は多置換されてもよく;
4及びR5は、夫々互いに独立して、水素、及び、C1-C6-アルキルの中から選択されるか、又は、
4及びR5は、一緒に、飽和の、又は、一価若しくは多価不飽和の炭素環、又は、S、N及びOから選択される1個以上のヘテロ原子を含むことができる複素環を形成し、それらの夫々は、互いに独立して一置換若しくは多置換されてもよく、一方で、R4及びR5双方は、同時に水素であってはならない。);
【0012】
【化6】

(1)
(式中、
1及びR2は、上記定義したとおりであり、
3は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソプロペニル、ブチル、N-スクシンイミド、N-フタルイミド、フェニル、ニトロフェニル、フルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ビニル、又は、2-アリルを表す。);
【0013】
【化7】

(2)
(式中、
4及びR5は、上記定義したとおりである。)
第二の局面において、更に本発明は、式(5)の化合物を調製する方法(反応1a+反応1b)であって、第1工程において、式(1)の2-ヒドロキシカルボン酸エステルを、好適な塩基性触媒、好ましくは、tert.-アルコキシドの中から選択される触媒を添加して、好適な溶媒中で、ゼオライトの存在下で、一工程で、式(2)の化合物と、反応させて、式(3)の化合物を形成し、第2工程(反応1b)において、式(3)の化合物を、好適な塩基性触媒、好ましくは、tert.-アルコキシドの中から選択される触媒を添加して、好適な溶媒中で、ゼオライトの存在下で、式(4)の化合物と、反応させて、式(5)の化合物を形成する方法に関する。
【0014】
【化8】

(5)
(式中、
1及びR2は、上記定義したとおりであり、
6は、有機基を表す。);
【0015】
【化9】

(1)
(式中、
1及びR2は、上記定義したとおりであり、
3は、R6と異なり、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソプロペニル、ブチル、N-スクシンイミド、N-フタルイミド、フェニル、ニトロフェニル、フルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ビニル、及び、2-アリルの中から選択される。);
【0016】
【化10】

(2)
(式中、
4及びR5は、上記定義したとおりである。);
【0017】
【化11】

(3)
(式中、
1、R2、R4、及び、R5は、上記で示される意味を有する。);
6-O-H
(4)
(式中、
6は、R3と異なる有機基を表す。)
【0018】
第三の局面において、更に本発明は、式(5)の化合物を調製する方法(反応2)であって、式(1)の2-ヒドロキシカルボン酸エステルを、一工程(反応2)で、式(2)の化合物、特にアセトン(溶媒として働く)、及び、式(4)の化合物と、好適な塩基性触媒、好ましくは、tert.-アルコキシドの中から選択される触媒を添加して、ゼオライトの存在下で、反応させて、式(5)の化合物を形成する方法に関する。
【0019】
【化12】

(5)
(式中、
1及びR2は、上記定義したとおりであり、
6は、上記定義したとおりである。);
【0020】
【化13】

(1)
(式中、
1及びR2及びR3は、上記定義したとおりである。);
6-O-H
(4)
(式中、
6は、R3と異なる有機基を表す。)
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
[用語の定義]
用語「アリール」又は「アリール基」は、6-〜10-員環の芳香族炭素環基を表し、例えば、フェニル及びナフチルを包含する。構成部分「アリール」を含む他の用語は、アリール部分について同じ意味を有する。これらの構成部分の例は、アリールアルキル、アリールオキシ、又は、アリールチオである。
用語「ヘテロアリール」又は「ヘテロアリール基」は、安定な5-〜8-員環基、好ましくは、5-若しくは6-員環の単環芳香族複素環基、又は、8-〜11-員環の二環式芳香族複素環基を表す。各複素環基は、炭素原子、及び、1〜4個のヘテロ原子(窒素、酸素、及び、硫黄から選択される)からなる。ヘテロアリールの例としては、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チエニル、フラニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾピラゾリル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチアゾリル、キナゾリニル、インダゾリル、及び、縮合ヘテロアリール、例えば、シクロペンテノピリジン、シクロヘキサノピリジン、シクロペンタノピリミジン、シクロヘキサノピリミジン、シクロペンタノピラジン、シクロヘキサノピラジン、シクロペンタノピリダジン、及び、シクロヘキサノピリダジンが挙げられる。
【0022】
用語「アルキル」及び「アルキル基」、並びに、他の基の一部であるアルキル基は、1〜6個の炭素原子を含む分岐又は非分岐アルキル基を表す。例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルが挙げられる。特に明記しない限り、上記の用語プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシルとしては、全ての可能性ある異性体が含まれる。例えば、用語プロピルは、2つの異性体n-プロピル基及びイソ-プロピル基を含み、用語ブチルは、異性体n-ブチル基、イソ-ブチル基、sec.-ブチル基、及び、tert.-ブチル基を表す。
用語「アルコキシ」又は「アルコキシ基」は、酸素原子を介して結合された1〜6個の炭素原子を含む分岐又は非分岐アルキル基を表す。例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシが挙げられる。特に明記しない限り、上記の用語には、全ての可能性ある異性体が含まれる。
例えば「フルオロフェニル」及び「ニトロフェニル」などの用語は、フッ素又はNO2で置換されたフェニル環を表す。これらは、全ての可能性ある異性体(オルト、メタ、又は、パラ)を含み、また、パラ-及びメタ-置換は、特別重要である。
【0023】
用語「炭素環」又は「シクロアルキル基」は、3〜6個の原子を含むシクロアルキル基を表し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及び、シクロヘキシルが挙げられる。
用語「複素環基」は、安定な5-〜8-員環基を意味するが、好ましくは、5-又は6-員環の単環複素環基又は8-〜11-員環の二環式複素環基を意味し、該基は、飽和でも不飽和でもよく、状況によって化学的に可能である場合には、芳香族であってもよい。各複素環基は、炭素原子、及び、1〜4個のヘテロ原子(窒素、酸素、及び、硫黄から選択される)からなる。複素環基の例としては、ピロリニル、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、1,2,5,6-テトラヒドロピリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラニル、チオピラニル、ピペラジニル、インドリニル、及び、1,2,3,3a,4,6a-ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロリルが挙げられる。
用語「窒素」及び「硫黄」、並びに、夫々の元素記号は、それらのあらゆる酸化型、及び、塩基性窒素原子の第4級形態も含む。
【0024】
[好適な態様]
本発明における方法の変形について、以下に詳細に記載する。それらは、以下の反応スキーム1に表される:
<反応スキーム1>
【0025】
【化14】

【0026】
基R1〜R6は、上記のように定義される。
反応1a:本発明の第一の局面に従った本発明における方法(反応1a)は、一般式(1)の2-ヒドロキシカルボン酸エステルを、式(2)の化合物と反応させて、一般式(3)の1,3-ジオキソラン-2-オンを形成することに関する。これは、以下の反応スキーム2において示される:
<反応スキーム2>
【0027】
【化15】

基R1〜R5は、上記のように定義される。
【0028】
本発明の特に好適な態様において、R3は、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、及び、ブチルから選択され、特に好ましくはメチルである。
特に好ましくは、R1及びR2は、夫々、いずれの場合にも一置換又は多置換されてもよいヘテロアリール基から選択される。好ましい置換基は、フッ素、塩素、臭素、又は、ヨウ素のようなハロゲン原子、-CN、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、ヒドロキシ、又は、CF3である。最も特に好ましくは、R1及びR2双方は、同じヘテロアリール基を表し、特にR1及びR2双方は、チエニル基である。
好ましくは、R4及びR5は、独立して、C1-C6-アルキル、特に好ましくは、メチル、エチル、ブチル、及び、ペンチルから選択される。好適な態様において、R4及びR5双方は、同じ基を表すが、双方は同時に水素であってはならず、そして、特に好ましくは、R4及びR5双方は、メチルである。
【0029】
他の好適な態様において、R4及びR5は一緒に、飽和の又は不飽和の炭素環又は複素環を形成する。炭素環は、好ましくは、シクロヘキシル及びシクロペンチルから選択される。複素環基は、好ましくは、ピペリジニル、キヌクリジニル、トロピニル及びピロリジニルから選択され、いずれの場合にも、1個以上の置換基で置換されてもよい。これらは、好ましくは、フッ素、塩素、臭素、又は、ヨウ素のようなハロゲン原子、-CN、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、ヒドロキシ、CF3、及び、-O-COR’から選択され、ここで、R’はC1-C4-アルキル、ベンジル、及び、フェニルエチルの中から選択される基を表し、これは、いずれの場合にも、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、又は、メトキシで置換されてもよく、特に好ましくは、R4及びR5は一緒に、ピリジニル環を形成する。
4及びR5が、環系を形成する場合、芳香族炭素環又は複素環は、式(2)の化合物で形成されてもよい。例としては、ベンジル、ピロール、フラン、及び、チオフェンが挙げられる。1,3-ジオキソラン-2-オンを形成するための式(2)の化合物の反応の後、環系は、ジオキソランの2つの環状酸素の間の架橋炭素原子のために、その芳香族の性質を失う。
【0030】
本発明の特に好適な態様において、R4及びR5は、窒素原子(また第4級アンモニウム塩も可能)と一緒にピロール、ピロリン、ピロリジン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、及び、以下の構造から選択される複素環を形成し、それらは、1つ以上の基で、好ましくは、OH、F、メチル、エチル、メトキシ、及び、-O-COR’の中から選択される基で置換されてもよく、ここで、R’は、C1-C4-アルキル、ベンジル、及び、フェニルエチルの中から選択される基を表し、それらは、いずれの場合にもヒドロキシ、ヒドロキシメチル、又は、メトキシで置換されてもよい:
【0031】
【化16】

【0032】
式(2)の化合物は、特に制限されず、それらが1,3-ジオキソラン-2-オンの形成に干渉しないという条件で、既知のケトン、又は、アルデヒドを用いることができる。立体的に特に要求する基(sterically particularly demanding groups)は、それ故に好適でない。ケトンの例としては、シクロヘキサノン、及び、アセトンが挙げられる。アルデヒドの例としては、イソブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、N-メチル-1,4-ピペリドン、トロパノン、ピペリドン、及び、キヌクリジノンが挙げられる。
本発明において、特に穏やかな反応が可能である。なぜなら、触媒、好ましくはtert. アルコキシドの中から選択される触媒が、ゼオライトと一緒に使用されるためである。tert.-アルコキシドは、立体要求性のアルキル基を含むアルコキシドを意味し、アルキル基の中に少なくとも1つの第4級炭素中心がある。第4級炭素中心は、水素原子を含まない炭素中心を意味するが、3〜4個のアルキル基で置換される。3個のアルキル基で置換される炭素中心は、好ましくは、第4の置換基としてのアルコキシド基を含む。好適なtert.-アルコキシドは、好ましくは、アルカリ金属アルコキシド又はアルカリ土類金属アルコキシド、特に好ましくは、ナトリウム-tert.-ブトキシド又はカリウム-tert.-ブトキシド、又は、ナトリウム-tert.-アミラート又はカリウム-tert.-アミラートである。
【0033】
特に好適なゼオライトは、ナトリウム-含有アラモシリケート及びカリウム-含有アラモシリケートのようなアルカリ-含有アラモシリケート及びアルカリ土類-含有アラモシリケートからなる塩基性の分子篩の中から選択される分子篩であり、好ましくは、実験式Na12[(AlO212(SiO212] x H2O、又は、Na12Al12Si1236 x nH2O(nは好ましくは6未満である)を有する分子篩であり、分子篩タイプ4Aは、本発明において特に好適である。
式(1)の化合物を、式(2)の化合物と反応させて式(3)の化合物を得ることは、好ましくは、溶液中で行われる。一般的には、得られた溶液を、反応が完了するまで攪拌する。この作業を、周囲温度(おおよそ23℃)で行ってもよいし、25〜50℃の範囲の少し高い温度で行ってもよい。これは、反応物及び選択した触媒のタイプに依存する。反応は、塩基性反応条件下で行われ、周囲温度及びそれ以下でも作用する。好ましくは、反応は、約30℃の温度で、特に好ましくは、約0〜約30℃の範囲で穏やかな条件下で行われる。
用いられうる溶媒は、好ましくは、非プロトン性有機溶媒であり、好ましくは弱極性有機溶媒である。本発明において用いられる溶媒は、特に好ましくは、アセトン、ピリジン、アセトニトリル、及び、テトラヒドロフランであり、一方で、アセトン、アセトニトリル、及び、テトラヒドロフランが、好適である。式(2)の化合物が同時に反応物及び溶媒として働きうる場合、それは、特に有利であり得る。これは、例えば、アセトンが式(2)の化合物として使用される場合であり、式(1)のα-ヒドロキシカルボン酸エステルが、この溶媒中に可溶である場合に、特に有利である。
【0034】
一般的には、得られた溶液を、反応が完了するまで攪拌する。反応が終わってから、式(3)の化合物を溶液から単離する。得られた生成物は、必要に応じて、好適な溶媒から再結晶することで精製される。得られた生成物を、単離し、そして、真空乾燥してもよい。
本発明に従った方法(反応1a)は、選択的に行われ、副反応は十分に抑えられる。
本発明の特別に好適な態様において、本発明の方法によって、タイプA基本構造を有する1,3-ジオキソラン-2-オン、及び、タイプB基本構造を有する1,3-ジオキソラン-2-オンが生成される:
【0035】
【化17】

タイプA
【0036】
【化18】

タイプB
【0037】
従来の酸-触媒方法(「Synthesis and Selective Activity of Cholinergic Agents with Rigid Skeletons」, Shoji Takemura, Yasuyoshi Miki, Mariko Hoshida, Mayumi Shibano, Aritomo Suzuki; Chem. Pharm. Bull. 29(10) 3019-3025 (1981)参照)によってタイプA及びタイプBのこれらの基本構造を調製することは、これまでできなかった。なぜなら、それら及びそれらのジチエニルグリコール酸前駆物質が、酸-感受性であるためである。それ故に、本発明における方法を用いて、この種類の化合物をこれからは得ることができる。
その結果、本発明は、酸-感受性2-ヒドロキシカルボン酸エステル(5)を調製するための方法にも関し、その中で、酸-感受性2-ヒドロキシカルボン酸エステル(1)は、出発物質として存在してもよい。
タイプBの1,3-ジオキソラン-2-オンは、驚いたことに、ムスカリン性受容体における抗コリン作用薬として、チオトロピウム塩と同様な方法で働き、そして、一定の疾患を治療するために、治療的に用いることもできる。具体的に説明すると、例えば、喘息又はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療に用いることができる。薬理学的に活性あるベンジル酸、及び、マンデル酸類似体は、例えば、「Synthesis and Selective Activity of Cholinergic Agents with Rigid Skeletons」, Shoji Takemura, Yasuyoshi Miki, Mariko Hoshida, Mayumi Shibano, Aritomo Suzuki; Chem. Pharm. Bull. 29(10) 3019-3025 (1998)に記載されている。
特に、式(610)の化合物:
【0038】
【化19】

(610)
(式中、X-は、一価の負電荷を備えるアニオンを表す。)は、極めて強力な抗コリン性活性物質である。例えば、このアニオンは、クロリド、ブロミド、ヨージド、スルファート、ホスファート、メタンスルホナート、ニトラート、マレアート、アセタート、シトラート、フマラート、タルトラート、オキサラート、スクシナート、ベンゾアート、又は、p-トルエンスルホナートであってもよい。
【0039】
また、他の局面において、本発明は、式(610)の化合物(式中、X-は、クロリド、ブロミド、ヨージド、スルファート、ホスファート、メタンスルホナート、ニトラート、マレアート、アセタート、シトラート、フマラート、タルトラート、オキサラート、スクシナート、ベンゾアート、又は、p-トルエンスルホナートを表し、窒素における置換基は、メチル、エチル、n-アルキル、イソ-アルキル、アルコキシアルキル、及び、ヒドロキシアルキルの中から選択され、チエニル基は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、-CN、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、ヒドロキシ、及び、CF3の中から選択される1つ以上の置換基を有してもよい。)に関する。
本発明に従って調製されうる1,3-ジオキソラン-2-オン化合物の他の用途は、例えば、薬理的に活性なカルボン酸エステル(例えば、チオトロピウム ブロミド)を調製するために合成の分野において存在する。これは、例えば、上述したようにタイプAの化合物から、又は、介してなされうる。
1,3-ジオキソラン-2-オンは、酸-感受性化合物、例えば酸-感受性カルボン酸エステル、例えば、メチル2,2-ジチエニルグリコラートが存在する場合、特に使用されうる。また、1,3-ジオキソラン-2-オンは、再び他の(例えば、薬理活性がある)カルボン酸エステル、又は、カルボン酸塩に転換されうる。
【0040】
本発明における方法(反応1a)は、高極性非プロトン性溶媒中の反応と比較して、副反応が更に少なく、その結果として収量が更に高い非常に穏やかな条件下での反応を行うことを可能にする。例えば、これは、細心の注意を要する酸不安定な系、及び/又は、温度感受性系を合成するために使用することができる。
<反応1b>
本発明における方法(反応1b)は、塩基性反応条件下で、一般式(3)の1,3-ジオキソラン-2-オンから出発する一般式(5)の2-又はα-ヒドロキシカルボン酸エステルの調製に更に関連する。この種類の反応は、先行分野で公知である。この反応を、以下の反応スキーム3において説明する:
<反応スキーム3>
【0041】
【化20】

基R1〜R6は、上記のように定義される。
【0042】
本発明において、式(3)の化合物を、好ましくは、一工程(反応1b)で、好適な塩基性触媒、好ましくは、tert.-アルコキシドの中から選択される触媒を添加して、好適な溶媒中で、ゼオライトの存在下で、式(4)の化合物と、反応させて、式(5)の化合物を形成する。
6-O-H
(4)
(式中、R6は、R3と異なる有機基を表す。)
【0043】
【化21】

(5)
(式中、R1、R2、及び、R6は、上記で示される意味を有する。)
【0044】
反応温度は、反応物及び選択した触媒のタイプに依存する。反応は、塩基性反応条件下で行われ、周囲温度及びそれ以下でも作用する。好ましくは、反応は、約30℃の温度で、特に好ましくは、約0〜約30℃の範囲で穏やかな条件下で行われる。
用いられうる溶媒は、好ましくは、非プロトン性有機溶媒であり、好ましくは弱極性有機溶媒である。本発明において用いられる溶媒は、特に好ましくは、アセトン、ピリジン、アセトニトリル、及び、テトラヒドロフランであり、一方で、アセトン、アセトニトリル、及び、テトラヒドロフランが、特に好適である。
更なる詳細については、例えば、「A new Synthesis of alpha-Hydroxycarboxylates and 2-Hydroxybenzoates」, Khalaj, Ali; Aboofazaeli, Reza; Iranian Journal of Chemistry & Chemical Engineering (1997), 16(1), 1-3を、参照のこと。
【0045】
<反応2>
本発明における方法(反応2)は、一般式(3)の1,3-ジオキソラン-2-オンの誘導体の形態の中間体を介して、塩基性反応条件下で、一般式(1)の対応するエステルのエステル交換によって行う、一般式(5)の2-ヒドロキシカルボン酸エステルの調製にも関する。式(3)の1,3-ジオキソラン-2-オンを、この場合において中間生成物として単離しないで、更に、直接処理して、新しいエステルを形成する。このことは、以下の反応スキーム4において示される。
<反応スキーム4>
【0046】
【化22】

基R1〜R6は、上記定義されたとおりである。
【0047】
ここで、エステルのエステル交換、又は、アシル基転移は、塩基性反応条件下で行われる。
中間生成物が、式(3)の1,3-ジオキソラン-2-オンの形態で単離される場合、使用される手段は、反応1a(反応1a→中間生成物の単離→反応1b)において上述したとおりであり、これは、反応1bが続きうる。
しかし、中間生成物が、式(3)の1,3-ジオキソラン-2-オンの形態で単離された場合に、本発明における方法(反応2)は、好ましくは、一工程(反応1a+反応1b=反応2)で行なわれる。このために、式(1)の化合物を、式(2)の化合物を用いて反応させ、式(4)の化合物を、実質的に一工程(「ワンポット法」)で反応させて、式(5)の化合物を形成する。
当然、上述したような反応1a及び反応1bは、中間生成物の単離を行わずに、連続して行われてもよい;しかしながら、このことはあまり望ましくない。
本発明の特に好適な態様において、R3は、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、及び、ブチル、特に好ましくは、メチル及びエチルから選択される。
【0048】
特に好ましいR1及びR2は、いずれの場合にも一置換又は多置換されてもよいヘテロアリール基から、いずれの場合にも選択される。好適な置換基は、フッ素、塩素、臭素、又は、ヨウ素のようなハロゲン原子、-CN、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、ヒドロキシ、又は、CF3である。最も特に好ましくは、R1及びR2双方は、同じヘテロアリール基を表し、そして、特にR1及びR2双方は、チエニル基である。
本発明の特に好適な態様において、R4及びR5は、窒素原子と一緒に、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、キヌクリジン、及び、以下の化合物から選択される複素環を形成し、それらは、1つ以上の基、好ましくは、OH、F、メチル、エチル、メトキシ、及び、-O-COR’の中から選択される基で置換されてもよく、ここで、R’は、C1-C4-アルキル、ベンジル、及び、フェニルエチルの中から選択される基を表し、それらは、いずれの場合にも、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、又は、メトキシによって置換されてもよい。
【0049】
【化23】

【0050】
本発明におけるこの好適な方法変形(反応2)において、式(3)の化合物は、アセトンから選択される。それは、同時に溶媒及び化合物(3)として働く非プロトン性溶媒である。しかしながら、例えばアセトニトリルのようなその他の非プロトン性溶媒を更に用いることができる。しかしながら、これは望ましくない。
特に穏やかな反応が、本発明において達成される。なぜなら、触媒、好ましくは、tert.-アルコキシドの中から選択される触媒が、ゼオライトと一緒に使用されるためである。tert.-アルコキシドは、立体要求性のアルキル基を含むアルコキシドを意味し、アルキル基の中に、少なくとも1つの第4級炭素中心がある。第4級炭素中心は、水素原子を含まないが、3〜4個のアルキル基によって置換された炭素中心を意味する。3個のアルキル基によって置換された炭素中心は、好ましくは、第4の置換基としてアルコキシド基を含む。好適なtert.-アルコキシドは、好適には、アルカリ金属アルコキシド又はアルカリ土類金属アルコキシドであり、特に好ましくは、ナトリウム-tert.-ブトキシド、若しくは、カリウム-tert.-ブトキシド、又は、ナトリウム-tert.-アミラート、若しくは、カリウム-tert.-アミラートである。
【0051】
特に好ましいゼオライトは、ナトリウム-含有アラモシリケート及びカリウム-含有アラモシリケートのようなアルカリ-含有アラモシリケート及びアルカリ土類-含有アラモシリケートからなる塩基性の分子篩の中から選択される分子篩であり、好ましくは、実験式Na12[(AlO212(SiO212] x H2O、又は、Na12Al12Si1236 x nH2O(nは好ましくは6未満である)を有する分子篩であり、分子篩タイプ4Aは、本発明において特に好適である。
本発明におけるエステル交換反応に使用される反応媒体が、アセトン/tert.-アルコキシド、又は、アセトニトリル/アセトン/tert-アルコキシドの組合せである場合に、それが、特に有利であることが実証されている。ゼオライトの存在も、通常生じるアセトン又はアセトニトリルの自己縮合反応を防ぐ。その上、ゼオライトの使用によって、効果的に、遊離アルコールを平衡状態にさせないようにできる。
式(4)のアルコールは、限定されないが、実際には、第1級又は第2級アルコールに限定される。化学反応のために、実質的には、当業者に公知の第1級又は第2級アルコールを使用できる。なぜなら、形成されるアルコールを除去することによって生じる反応平衡のシフトの結果、反応がこれらのアルコールのいずれかと一緒に起こるためである。アルコールの反応性は、第1級アルコールにおいて最も高い。第3級アルコールは、この反応に関与しない。
【0052】
式(4)のアルコールにおける基R6は、実質的に自由に選択できる有機基を表し、これは、反応後に、生成された式(5)の2-ヒドロキシカルボン酸エステルにおけるエステル交換基を構成する。好適な最終産物は、従って、アルコールの選択によって決定できる。有機基R6としては、例えば、分岐または非分岐アルキル、飽和の又は不飽和の炭素環基、複素環基、二環式基、三環式基、縮合環状系、及び、多くの他のもの、並びに、それらの組合せでありうる。複素環の例は、用語の定義において示される。
6に使用されうる特に好適な複素環は、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、スコピン、N-メチルスコピニウム、及び、以下の化合物から選択され、それらは、1つ以上の基、好ましくは、OH、F、メチル、エチル、メトキシ、及び、-O-COR’の中から選択される1つの基で置換されてもよく、ここで、R’は、C1-C4-アルキル、ベンジル、及び、フェニルエチルの中から選択される基を表し、それらは、いずれの場合にも、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、又は、メトキシによって置換されてもよい。
【0053】
【化24】

【0054】
従って、アルコールは、それが反応を妨げる官能基を含まない条件で、かつ、それが第3級アルコールではない条件で、本発明の範囲を限定しない。
tert.-アルコキシド含浸ゼオライトからなる触媒併用を利用した新しい製造方法の特別に有利な点は、例えば、塩基性感受性スコピンに関係する。反応条件は非常に穏やかであるため、対応するスコポリンへの転位を避けることができる。
式(4)R6-OHの化合物の代わりに、式(4’)R6-NH2の化合物も、対応する2-ヒドロキシカルボン酸アミドを調製するために用いることができる。このことは本発明の反応1b及び反応2に適用され、一方で、アミンが使用される場合、記載されたアルコールと同じ溶媒及び条件を使用できる。次いで、式(4’)R6-NH2の化合物との反応1bのための反応スキーム5が、以下のようにして達成される。
<反応スキーム5>
【0055】
【化25】

次いで、式(4’)R6-NH2の化合物を用いる反応2のための反応スキーム6が、以下のように達成される:
<反応スキーム6>
【0056】
【化26】

基R1〜R6は、上記のように定義される。
【0057】
式(5)又は(5’)の化合物を形成するために、式(2)の化合物及び式(4)又は(4’)の化合物と、式(1)の化合物は、選択した触媒のタイプに応じて、25〜50℃の範囲の少し高い温度で反応を行われうる。反応は、塩基性反応条件下で行われ、周囲温度(おおよそ23℃)か、それより低い温度で作用する。好ましくは、反応は、約30℃の温度、特に好ましくは約0〜約30℃の範囲の温度で、穏やかな条件下で行われる。得られた溶液を、一般的に、反応が完了するまで攪拌する。反応が終了してから、式(5)又は(5’)の化合物を溶液から単離する。得られた生成物は、必要に応じて、好適な溶媒から再結晶化により精製される。得られた生成物は、単離され、真空で乾燥させてもよい。
本発明における方法(反応2)は、選択的に行われ、副反応は十分に抑制される。
本発明における方法(反応2)は、反応が非常に穏やかな条件下で行われることを可能にし、それは、高極性非プロトン溶媒における反応と比較して、更に少ない副反応の要因となる。溶媒としてのアセトンの使用は、最も特別な利点をもたらす。なぜなら、化学平衡で形成されるメタノールの親和性(分子内相互作用)が、DMF又はNMPのような他の溶媒と比較して非常に低いためである。従って、アセトン中で混合する間に内温性(endothermy)が維持され、一方でメタノールをDMFに混合した場合に、外温性(exothermy)が生じる。公知の方法と比較して、著しく良い収量が得られる。反応は、例えば、細心の注意を要する酸-不安定な系、及び/又は、温度感受性系を合成するために用いることもできる。
【0058】
特別好ましくは、2-ヒドロキシカルボン酸エステル、特に好ましくは、2-ヒドロキシカルボン酸メチルエステル、又は、2-ヒドロキシカルボン酸アミドは、本発明の方法(方法1b、方法1a+反応1b又は反応2)によって調製される。中間体の単離を行うことなく、これらを記載された塩基性反応条件を保ちつつ一工程で得られる(反応1a+反応1b=反応2)。
本発明のエステル交換方法(反応2)は、式(4)の化合物がヘキサフルオロリン酸の第4級アンモニウム塩として用いることができるアルコールである場合、これらの塩はアセトンに溶解できるので、特に有利であることが証明されている。従って、例えば、チオトロピウム化合物は非常に簡単に良い収量で調製される。
別の局面において、本発明は、従って、化合物(6)のチオトロピウム塩を調製する方法であって、式(1)の化合物を、一工程で、化学式(7)の式R6-OHの化合物と、式(2)の化合物と一緒に、好ましくはアセトンから、ゼオライトの存在下でtert.-アルコキシドの形態の塩基性触媒を添加して、反応させて、式(8)の化合物を形成し、式(8)の化合物を、単離することなく、塩Kat+-と反応させることで、式(6)の化合物に転化し、ここで、Kat+は、Li+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、及び、第4級Nを含む有機カチオン(例えば、N,N-ジアルキルイミダゾリウム、テトラアルキルアンモニウム)の中から選択されるカチオンを表し、X-は、下記で示される意味を有してもよい方法に関する。
【0059】
【化27】

(6)
(式中、
-は、一価の負電荷を備えるアニオン、好ましくは、クロリド、ブロミド、ヨージド、スルファート、ホスファート、メタンスルホナート、ニトラート、マレアート、アセタート、シトラート、フマラート、タルトラート、オキサラート、スクシナート、ベンゾアート、p-トルエンスルホナート、及び、トリフルオロメタンスルホナートの中から選択されるアニオンを表してもよい。)
【0060】
【化28】

(1)
(式中、
1及びR2双方は、チエニルを表し、
3は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソプロペニル、ブチル、-N-スクシンイミド、-N-フタルイミド、フェニル、ニトロフェニル、フルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ビニル、及び、2-アリルの中から選択される基を表す。)
【0061】
【化29】

(7)
(式中、
-は、ヘキサフルオロホスファートを表す。)
【0062】
【化30】

(8)
(式中、
基Y-は、上記で示される意味を有する。)
【0063】
調製された2-ヒドロキシカルボン酸エステルの反応において、同時にヘキサフルオロホスファートの第4級アンモニウム塩であるエステルを、リチウム塩によって他の塩に転化しうることが、特に有利であると分かっている。この手段において、生成物は、結晶化沈降によって例えば単離することができ、次いで、好適な溶媒から再結晶化されうる。
ヘキサフルオロホスファートの第4級アンモニウム塩としては、本発明において、一般式(9)によって表される化合物を意図する:
【0064】
【化31】

(9)
式中、R1、R2、R3、及び、R4は、対応する有機基を表す。これらは、例えば、以下の一般式(9’)のアンモニウム塩を、好適な溶媒の中で塩Kat+PF6-と反応させることによって調製される:
【0065】
【化32】

(9’)
【0066】
ここで、Kat+は、Li+、Na+、K+、Mg2+、及び、Ca2+の中から選択されるカチオンを表す。
第4級アンモニウム化合物の塩、例えば式(9’)の塩は、一般に、水及びアルコールに容易に溶解できる。しかしながら、それらは、例えば、アセトン、アセトニトリル、炭化水素、ハロ炭素水素、又は、エーテルのような低極性有機溶媒中で溶解することが、極めて難しい。第4級アンモニウム化合物を用いた化学反応は、それ故に、現時点では水、アルコール、又は、強極性非プロトン性溶媒、例えば、DMF(ジメチルホルムアミド)又はNMP(N-メチルピロリジン)の中での反応に限定される。しかしながら、第4級アンモニウム化合物の式(9)の対応するヘキサフルオロホスファートへの転化によって、例えば、アセトンのような低極性非プロトン性溶媒が用いられうる。
一旦ヘキサフルオロホスファートを、所望の変形アンモニウムヘキサフルオロホスファートを形成するために反応させると、ヘキサフルオロホスファートは、例えば、リチウム塩(例えばLiBrのような)を用いて他のアニオンで再び置き換えられうる。
【0067】
本発明の有利な点は、広範囲にわたる。
本発明における方法(反応1a)は、反応を非常に穏やかな塩基性条件下で行うことを可能にし、このことは、高極性非プロトン性溶媒における反応よりも少ない副反応と高い収量をもたらす。酸-感受性及び/又は温度-感受性化合物を合成することが可能である。
本発明において、エステル交換は、一工程(反応2)において行われうる。本発明においてエステル交換反応のために用いられる反応媒質が、アセトン/tert.-アルコキシド、又は、アセトニトリル/アセトン/tert.-アルコキシドの組合せである場合に、特に有利であると証明されている。ゼオライトの存在も、通常生じるアセトン又はアセトニトリルの自己縮合反応を抑制する。その上、ゼオライトの使用によって、効果的に、遊離アルコールを平衡状態にさせないようにできる。
多くの薬理学的に効果的な2-ヒドロキシカルボン酸エステルが存在するので、これらの化合物、及び、前駆体(それらは、1,3-ジオキソラン-2-オンの形態を有しうる)の簡単で新規の製造方法は、特に有利である。なぜなら、特に、酸触媒条件の制限を取り除き、合成条件が非常に穏やかになるためである。
【0068】
2-ヒドロキシカルボン酸エステルに加えて、2-ヒドロキシカルボン酸アミドも、本発明に従って調製することができる。
本発明において、タイプBの1,3-ジオキソラン-2-オンは、抗コリン性薬としても同定されている。特に、式(610)の化合物は、極めて強力な抗コリン性活性物質である。更に、本発明において調製されうる1,3-ジオキソラン-2-オン化合物は、薬理学的に活性あるカルボン酸エステル、例えばチオトロピウム ブロミドを調製するための出発物質として用いられうる。これは、例えば、上述したようなタイプAの化合物から、又は、介してなされうる。
以下の実施例は、例示の手段で行われる合成の方法を説明する働きをする。それらは、可能な手段の例示として純粋に意図され、それらの内容に本発明を限定しない。
【実施例】
【0069】
[反応1aに関連する合成例]
〔一般手法〕
2-ヒドロキシカルボン酸エステル(30mmol)を、過剰量の対応するケトン/アルデヒドの中に溶解し、次いで、タイプNa12A112Si1236 x nH2O(孔のサイズ4Å)(6〜24g)のゼオライト、及び、触媒量のtert.-アルコキシドと混合し、反応が終わるまで20〜23℃で攪拌した。
以下の化合物が、上記の一般手法と同様にして得られた:
【0070】

【0071】
例7では、THFを溶媒として用いた。
例9では、シクロヘキサノンを等モル比で用いた。
例1〜4及び6では、生成物をシクロヘキサン/酢酸エチル(9:1)で分取クロマトグラフィーによって精製した。
例2では、結晶を水から得た。
例1及び3では、結晶をシクロヘキサンから得た。
〔合成例〕
【0072】
【化33】

3g(12mmol)のメチル ジチエニルグリコラート、5g(12mmol)のN-メチル-4-ピペリドン、3gのタイプNa12A112Si1236 x nH2Oのゼオライト、及び、20mgのKOtBuを、一緒に混合した。15時間後、室温で200mlのトルエンを添加し、ゼオライトをろ過し、ろ液を500mlの水で3回洗浄し、そして、50mlの希塩酸で2回抽出した。水性抽出物をKHCO3溶液と混合し、200mlのトルエンで向流抽出した。蒸発の後、混合物をジイソプロピルエーテルから結晶化し、洗浄し、乾燥させた。収量:1.3g(融点:102〜103℃)の化合物609
1.1g(3.2mmol)の化合物609を、30mlのアセトニトリルに溶解し、1.5mol当量(5mmol)のヨウ化メチルと混合した。3時間後、混合物を50mlのエーテルと混合し、ろ過し、エーテルで洗浄し、乾燥させた。収量:1.5g(融点:229〜230℃)
【0073】
[反応2の合成例]
中間生成物の単離をせずに、エステルの直接単離をしたエステル交換
〔一般手法〕
0.12molのカルボン酸エステル、及び、0.1molのアルコールのアセトン溶液を、90gのタイプNa12A112Si1236 x nH2O(タイプ4A)のゼオライト、及び、1mmolの第3級アルコキシドと混合し、0〜30℃の温度範囲で攪拌した。化学平衡に達してから、固体画分をろ過し、ろ液を後の反応に用いた。
同時にヘキサフルオロホスファートの第4級アンモニウム塩であるエステルのために、リチウムブロミド溶液(8.7gのLiBrを含む100mlアセトン)の添加によって、結晶化沈降によって、ブロミドを単離し、次いで、メタノールから再結晶化させた。
【0074】
〔合成例〕
<実施例1>
スコピン(9-メチル-3-オキサ-9-アザ-トリシクロ[3.3.1.02.4]ノナン-7-オール)、及び、メチル ジチエニルグリコラートからの9-メチル-3-オキサ-9-アザ-トリシクロ[3.3.1.02.4]ノナ-7-イル ヒドロキシ-チオフェン-2-イル-チオフェン-3-イル-アセタートの調製
収量:20%(HPLC表面)、HPLCによるRRT(対照物質を用いて)によって同一性を確定
特別な利点:これらの条件下で、スコピンは、スコポリンを形成する転位がおこらない。
メチルブロミドを導入することによって、対応する第4級アンモニウムブロミドが得られ、これは、ろ過され、水から再結晶化された。
収量:10%(最適化せず)
【0075】
<実施例2>
ブロミドとしての3-(2-ヒドロキシ-2-チオフェン-2-イル-2-チオフェン-3-イル-アセトキシ)-8,8-ジメチル-8-アゾニア-ビシクロ[3.2.1]オクタンの調製
N-メチルトロピニウム PF6、及び、メチル ジチエニルグリコラートを、アセトン中に溶解し、一般手法に従って処理した。
TLCによるRRT(対照物質を用いて)によって同一性を確定
【0076】
<実施例3>
7-(2-ヒドロキシ-2,2-ジフェニル-アセトキシ)-9,9-ジメチル-3-オキサ-9-アゾニア-トリシクロ[3.3.1.02.4]ノナンの調製
メチル ベンジラート、及び、N-メチルスコピニウム ヘキサフルオロホスファートをアセトンに溶解し、一般手法に従って処理した。反応が終わってから、生成物をアセトン酸リチウムブロミド溶液の添加によって結晶化し、メタノールから再結晶化した。
a)ブロミド:収量(最適化せず)57%
融点:178〜182℃、TLCによるRRT(対照物質を用いて)によって同一性を確認
b)ヘキサフルオロホスファート:ブロミドからナトリウム ヘキサフルオロホスファートを含む水を用いて沈殿することによる:82%、融点:178〜182℃、TLCによるRRT(対照物質を用いて)によって同一性を確認
【0077】
<実施例4>
9,9-ジメチル-7-(9-ヒドロキシ-9H-フルオレン-9-カルボニルオキシ)-3-オキサ-9-アゾニウム-トリシクロ[3.3.1.02.4]ノナン ブロミドの調製
メチル 9-ヒドロキシ-フルオレン-9-カルボキシラート、及び、N-メチルスコピニウム ヘキサフルオロホスファートをアセトン中に溶解し、一般手法に従って処理した。反応が終わってから、生成物をアセトン酸リチウムブロミド溶液の添加によって結晶化し、メタノールから再結晶化した。
a)ブロミド:収量(最適化せず)46%
融点:238〜241℃
b)ヘキサフルオロホスファート:ブロミドからナトリウム ヘキサフルオロホスファートを含む水を用いて沈殿することによる:70%、融点:265〜271℃(分解)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(3)の1,3-ジオキソラン-2-オンを調製する方法であって、
式(1)の2-ヒドロキシカルボン酸エステルを、
好適な塩基性触媒、好ましくは、tert.-アルコキシドの中から選択される触媒を添加して、好適な溶媒中で、ゼオライトの存在下で、一工程で、式(2)の化合物と、反応させる方法。
【化1】

(3)
(式中、
1及びR2は、夫々互いに独立して、水素、又は、アリール若しくはヘテロアリール基を表し、ここで、いずれの場合にも、アリール若しくはヘテロアリール基は、一置換又は多置換されてもよく;
4及びR5は、夫々互いに独立して、水素、及び、C1-C6-アルキルの中から選択されるか、又は、
4及びR5は、一緒に、飽和の、又は、一価若しくは多価不飽和の炭素環、又は、S、N及びOから選択される1個以上のヘテロ原子を含むことができる複素環を形成し、それらの夫々は、互いに独立して一置換若しくは多置換されてもよく、一方で、R4及びR5双方は、同時に水素であってはならない。);
【化2】

(1)
(式中、
1及びR2は、上記定義したとおりであり、
3は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソプロペニル、ブチル、N-スクシンイミド、N-フタルイミド、フェニル、ニトロフェニル、フルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ビニル、又は、2-アリルを表す。);
【化3】

(2)
(式中、
4及びR5は、上記定義したとおりである。)
【請求項2】
式(5)の化合物を調製する方法であって、
第1工程において、
式(1)の2-ヒドロキシカルボン酸エステルを、
好適な塩基性触媒を添加して、好適な溶媒中で、ゼオライトの存在下で、一工程で、式(2)の化合物と、反応させて、式(3)の化合物を形成し、
第2工程において、
式(3)の化合物を、
好適な塩基性触媒を添加して、好適な溶媒中で、ゼオライトの存在下で、式(4)の化合物と、反応させて、式(5)の化合物を形成する方法。
【化4】

(5)
(式中、
1及びR2は、請求項1のように定義され;
6は、有機基を表す。);
【化5】

(1)
(式中、
1及びR2は、請求項1のように定義され;
3は、R6と異なり、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソプロペニル、ブチル、N-スクシンイミド、N-フタルイミド、フェニル、ニトロフェニル、フルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ビニル、及び、2-アリルの中から選択される。);
【化6】

(2)
(式中、
4及びR5は、上記定義したとおりである。);
【化7】

(3)
(式中、
1、R2、R4、及び、R5は、上記で示される意味を有する。);
6-O-H
(4)
(式中、
6は、R3と異なる有機基を表す。)
【請求項3】
式(5)の化合物を調製する方法であって、
式(1)の2-ヒドロキシカルボン酸エステルを、
一工程で、式(2)の化合物、及び、式(4)の化合物と、
好適な塩基性触媒を添加して、好適な溶媒中で、ゼオライトの存在下で、反応させて、式(5)の化合物を得る方法。
【化8】

(5)
(式中、
1及びR2は、請求項1のように定義され、
6は、請求項2のように定義される。);
【化9】

(1)
(式中、
1及びR2及びR3は、請求項1のように定義される。);
【化10】

(2)
(式中、
4及びR5は、上記定義されたとおりである。)
6-O-H
(4)
(式中、
6は、R3と異なる有機基を表す。)
【請求項4】
2-ヒドロキシカルボン酸アミドを調製するために、化合物R6-OHの代わりに化合物R6-NH2が選択される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
約0〜約30℃の範囲の温度で反応が行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
tert.-アルコキシドが、アルカリ金属アルコキシド及びアルカリ土類金属アルコキシド、好ましくは、ナトリウム-tert.-ブトキシド及びカリウム-tert.-ブトキシド、並びに、ナトリウム-tert.-アミラート及びカリウム-tert.-アミラートの中から選択される、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ゼオライトが、アルカリ-含有アラモシリケート及びアルカリ土類-含有アラモシリケート、好ましくは、ナトリウム-含有アラモシリケート及びカリウム-含有アラモシリケートから選択され、特に、実験式Na12[(AlO212(SiO212] x H2O、又は、Na12Al12Si1236 x nH2O(nは好ましくは6未満である)を有する分子篩であり、分子篩タイプ4Aは、本発明において特に好適である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ケトン、ニトリル、又は、複素芳香族基、好ましくは、アセトン、ピリジン、又は、アセトニトリルが、溶媒として使用される、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
3が、メチル、エチル、プロピル、及び、ブチルの中から、特に好ましくは、メチル、及び、エチルの中から選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
1及びR2が、夫々、フッ素、塩素、臭素、又は、ヨウ素のようなハロゲン原子、-CN、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、ヒドロキシ、又は、CF3によって一置換又は多置換されてもよいヘテロアリール基の中から、夫々選択される、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
同じヘテロアリール基が、R1及びR2に使用される、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
チエニル基が、いずれの場合にも、R1及びR2に使用される、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
4及びR5が、独立してC1-C6-アルキル、特に好ましくは、メチル及びエチルの中から選択され、そして、最も特に好ましくは、R4及びR5双方が、メチルである、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
4及びR5が一緒に、飽和の炭素環又は複素環を形成し、
それらは、いずれの場合にも、フッ素、塩素、臭素、又は、ヨウ素のようなハロゲン原子、-CN、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、ヒドロキシ、CF3、又は、-O-COR’によって、一置換又は多置換されてもよく、
ここで、R’は、C1-C4-アルキル、ベンジル、及び、フェニルエチルの中から選択される基を表し、それらは、いずれの場合にも、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、又は、メトキシによって置換されてもよく、特に好ましくは、R4及びR5が一緒に、ピリジニル環を形成する、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
4及びR5が、窒素原子と一緒に、ピロール、ピロリン、ピロリジン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、
【化11】

から選択される複素環を形成し、
それらは、1つ以上の基、好ましくは、OH、F、メチル、エチル、メトキシ、及び、-O-COR’の中から選択される基で置換されてもよく、
ここで、R’は、C1-C4-アルキル、ベンジル、及び、フェニルエチルの中から選択される基を表し、それらは、いずれの場合にも、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、又は、メトキシによって置換されてもよい、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
式(3)の化合物の中間体の単離を伴って、又は、伴わずに、反応が行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
式(4)の化合物が、
ヘキサフルオロリン酸の第4級アンモニウム塩の形態で使用される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項18】
酸感受性の2-ヒドロキシカルボン酸エステルが、出発物質として、及び/又は、最終産物として存在する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
化合物(6)のチオトロピウム塩を調製する方法であって、
式(1)の化合物を、一工程で、
式(7)の化合物と、式(2)の化合物と一緒に、好ましくはアセトンと一緒に、
ゼオライトの存在下でtert.-アルコキシドの形態の塩基性触媒を添加して、反応させて、式(8)の化合物を形成して、
式(8)の化合物を、塩Kat+-と反応させることで、単離することなく、式(6)の化合物に転化し、
ここで、Kat+は、Li+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、及び、第4級Nを含む有機カチオン(例えば、N,N-ジアルキルイミダゾリウム、テトラアルキルアンモニウム)の中から選択されるカチオンを表し、X-は、下記で示される意味を有してもよい、方法。
【化12】

(6)
(式中、
-は、一価の負電荷を備えるアニオン、好ましくは、クロリド、ブロミド、ヨージド、スルファート、ホスファート、メタンスルホナート、ニトラート、マレアート、アセタート、シトラート、フマラート、タルトラート、オキサラート、スクシナート、ベンゾアート、p-トルエンスルホナート、及び、トリフルオロメタンスルホナートの中から選択されるアニオンを表してもよい。)
【化13】

(1)
(式中、
1及びR2双方は、2-チエニルを表し、
3は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソプロペニル、ブチル、-N-スクシンイミド、-N-フタルイミド、フェニル、ニトロフェニル、フルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、ビニル、及び、2-アリルの中から選択される基を表す。)
【化14】

(7)
(式中、
-は、ヘキサフルオロホスファートを表す。)
【化15】

(8)
(式中、
基Y-は、上記で示される意味を有する。)
【請求項20】
ヘキサフルオロホスファートの第4級アンモニウム塩の形態で得られた、式(5)の2-ヒドロキシカルボン酸エステルを、非プロトン性溶媒中、好ましくは、アセトン中でのリチウム塩の添加による結晶化沈降によって、反応媒体から単離してもよい、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
タイプA基本構造を有する1,3-ジオキソラン-2-オン、及び、タイプB基本構造を有する1,3-ジオキソラン-2-オン。
【化16】

タイプA
【化17】

タイプB
【請求項22】
抗コリン性活性物質としての、請求項21に記載のタイプB基本構造を有する1,3-ジオキソラン-2-オンの使用。
【請求項23】
喘息、COPD、又は、ムスカリン性受容体の阻害によって治療されうる他の疾患を治療するための薬剤の調製用の、請求項21に記載のタイプB基本構造を有する1,3-ジオキソラン-2-オンの使用。
【請求項24】
式(610)の化合物。
【化18】

(610)
(式中、X-は、クロリド、ブロミド、ヨージド、スルファート、ホスファート、メタンスルホナート、ニトラート、マレアート、アセタート、シトラート、フマラート、タルトラート、オキサラート、スクシナート、ベンゾアート、又は、p-トルエンスルホナートを表し、
ここで、窒素における置換基は、アルキル、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、及び、イソプロピルの中から選択され、チエニル基が、フッ素、塩素、臭素、又は、ヨウ素のようなハロゲン原子、-CN、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、ヒドロキシ、及び、CF3の中から選択される1つ以上の置換基を有してもよい。)
【請求項25】
抗コリン性活性物質としての請求項24に記載の式(610)の化合物の使用。
【請求項26】
喘息、COPD、又は、ムスカリン性受容体の阻害によって治療されうる他の疾患を治療するための薬剤の調製用の、請求項24に記載の式(610)の化合物の使用。
【請求項27】
式(7)のスコピンのエステル化のための、エステル交換触媒としてのゼオライトタイプ4Aと併用したtert.-アルコキシドの使用。

【公表番号】特表2010−540414(P2010−540414A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524457(P2010−524457)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061618
【国際公開番号】WO2009/037111
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(503137975)ベーリンガー インゲルハイム ファルマ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (129)
【Fターム(参考)】