説明

塩調味料の着色方法

【課題】本発明は、塩調味料に対して自然な色合いで均一な顕色効果を得ることができる塩調味料の着色方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】切花を水切りして十分に水を吸い上げさせて花首のみを切断して冷凍する。冷凍した花を凍結乾燥し、凍結乾燥した花を塩調味料と一緒に粉砕処理して塩調味料に着色する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の花を凍結乾燥させて作成した着色料により塩調味料に着色する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食用赤色2号等の各種合成着色料は、耐光性に優れ、鮮やかな色に食品を着色できることから、各種食品の着色料として使用されている。しかしながら、近年食品の安全性に対する意識が高まっており、合成着色料を使用した食品は敬遠される傾向が大きくなってきている。そのため、天然物を用いた着色料に対する需要が高まっている。
【0003】
こうした天然物を用いた着色料としては、例えば、特許文献1では、植物体を、pH1.0〜6.5の酸性条件下で水又は含水アルコールで抽出後、吸着処理、イオン交換処理、酸処理及び膜分離処理よりなる群から選択される少なくとも1種の処理を行って得られる色素を用いて調味料に着色する着色方法が記載されている。また、特許文献2では、植物の花を乾燥した後粉砕して、絵の具、塗料、着色合成樹脂、染色材の着色料として使用する点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−201454号公報
【特許文献2】特開2003−012955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1では、植物体を抽出処理及び吸着処理等の複雑な処理を行う必要があり、また特定の植物体のみを用いて赤色や赤紫色等の限られた色しか着色できないため、様々な色を着色するような汎用性に欠ける。また、特許文献2では、花を直接乾燥させて着色料として用いているが、十分な顕色効果を得ることができない。
【0006】
そこで、本発明は、植物の花を凍結乾燥させて着色料として塩調味料に用いることで自然な色合いで均一な顕色効果を得ることができる塩調味料の着色方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る塩調味料の着色方法は、切花から得られた食用の花を冷凍した後凍結乾燥し、凍結乾燥した花を塩調味料と一緒に粉砕処理して塩調味料に着色することを特徴とする。さらに、塩調味料1kgに対して凍結乾燥した花を1g〜15g配合して粉砕処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記の構成を備えることで、植物の花が有する自然な色合いで塩調味料を均一に着色するとともに鮮やかな色を発色する顕色効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。植物の花を凍結乾燥する場合、花に茎の付いた状態の生花を準備し、生花の茎を水切りして水分を吸い上げさせる。生花に十分水分が上がったら速やかに生花を花首で切断し、トレイ等の容器に並べて容器全体をビニール袋等の密閉用袋に収容する。密閉用袋に収容した状態で24時間以上冷凍した後冷凍した状態のまま公知の真空凍結乾燥機に収容する。凍結乾燥時の温度は30℃以下に設定し、72時間以上かけて乾燥させる。乾燥させた後も乾燥状態が保持されるように保管しておく。
【0010】
本発明に使用される塩調味料は、食塩、特にミネラル分の多く含有する天然の塩が好ましく、海水又は岩塩から生成された食塩が好適である。また、これらの食塩を他の調味料と混合した塩調味料を用いることができる。また、食塩から抽出される苦汁といったミネラル分を多く含む食品添加物についても用いることができる。
【0011】
本発明の着色料に用いられる植物の花は、食用に適するものであれば、使用することができ、特に限定されない。例えば、バラ、ミント、ラベンダー、キンギョソウ、マローブルー、マローブラック、マリーゴールド、紅花(サフラワー)、よもぎ、カーネーション、トレニア、なでしこ、パンジー、ハイビスカス、ローズヒップ、なつめ、コスモス、椿、バジル、ヤグルマギク、菊、くちなし、菜の花、さくら、ブルーベリー、ラズベリー、エリカ、エルダー、カモミール、オレンジフラワー、チューリップ、スイトピー、ゆり、ブロッコリー、ほうれんそう、にんじん、トマト、ピーマン、パプリカ、いちご、りんご、なし、西洋梨、キウイフルーツ、イチジク、柿、バナナ、オレンジ、みかん、ゆず、レモン、グレープフルーツ、ブドウ、もも、パイナップル、すもも、あんず、しそ、お茶、マンゴーといった植物が挙げられる。凍結乾燥した花は、塩調味料1kgに対する凍結乾燥した花の配合量は、花の種類によって異なるが、1g〜15g配合するとよい。より好ましくは1g〜10gがよい。同じ品種の花でも季節・色目・産地などにより着色の程度に違いが生じるので、使用する花に合わせて配合量を決めればよい。
【0012】
凍結乾燥した花は、乾燥を保持した状態で塩調味料と一緒に市販の粉砕機を用いて10秒程度粉砕する。粉砕処理において塩調味料により凍結乾燥した花の色が引き出されるようになるので、色合いをみながら粉砕処理を行うようにすればよい。そして、粉砕処理した塩調味料は、時間が経過するにつれて色が濃くなり、鮮やかな色合いで均一に発色する顕色効果が表出するようになる。
【0013】
こうした現象は、花に含まれる色素であるアントシアニンが関係していると考えられる。アントシアニンは、花色を決めている骨格部分に糖が結合した構造をしており、骨格部分がOH化されたりメチル化されたりすることで、ペラルゴニジン型のアントシアニンはオレンジ赤、シアニジン型は赤、デルフィニジン型は紫から青、といったようにいろいろな花の色を作り出すことが知られている。そして、アントシアニンは、金属イオンと結合した錯体を形成することでさらに多様な色を表出する特性を備えることが報告されている。したがって、本発明に係る着色方法においても塩調味料に含まれるミネラル分と凍結乾燥した花に含まれるアントシアニンが反応して顕色効果が得られたものと考えられる。そして、天然物である花の色素をそのまま用いているので、自然な色合いで着色することができる。また、粉砕処理により塩調味料全体に均一に花の粉末が付着して均一な色合いを表出するようになる。
【実施例】
【0014】
<実施例1>
ラベンダー、マローブルー、バラ、スペアミント、ナデシコ、ヨモギ、カーネーション、トレニア、キンギョソウ、コスモスをそれぞれ水切りして、花首を−30℃〜−40℃で24時間冷凍し、真空凍結乾燥機(共和真空技術株式会社製)で72時間凍結乾燥して凍結乾燥した花を得た。塩調味料としてチベット高原天然塩(株式会社ローヤル製)を用いた。塩調味料1kgに対して、凍結乾燥した花を1g〜10gの配合量で粉砕機(株式会社東京ユニコム製)に一緒に投入して10秒間粉砕処理した。得られた塩調味料は、花によって異なる色合いに均一に着色されていた。そして、時間が経過するにつれて着色した色が濃くなり、鮮やかな色合いで均一に着色された塩調味料が得られた。
【0015】
<実施例2>
実施例1と同様の花を用いて凍結乾燥した花を作成し、塩調味料として海水から生成した天然塩(株式会社日本海水製)を用いて実施例1と同様に粉砕処理して着色した塩調味料を得た。得られた塩調味料は実施例1とは異なる色合いに着色されていたが、時間が経過するとともに均一な濃い色に着色されていた。
【0016】
実施例1で用いた天然塩は、実施例2で用いた天然塩に比べてマグネシウム、カルシウム、カリウムといったミネラル成分を多く含んでおり、こうしたミネラル成分の含有量の違いにより発色に差が生じたものと考えられる。
【0017】
<比較例>
実施例1と同様の花を温風乾燥したものを用いて実施例1と同様に塩調味料と一緒に粉砕処理した。得られた塩調味料は、塩の粒子の表面に花の粉末が付着しているのみで均一な色合いに着色した状態になることはなかった。また、花を茹でた後ドライ加工したものを用いて実施例1と同様に塩調味料と一緒に粉砕処理した。得られた塩調味料は、塩の粒子の表面に花の粉末が付着しているのみで均一な色合いに着色した状態になることはなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切花から得られた食用の花を冷凍した後凍結乾燥し、凍結乾燥した花を塩調味料と一緒に粉砕処理して塩調味料に着色することを特徴とする塩調味料の着色方法。
【請求項2】
塩調味料1kgに対して凍結乾燥した花を1g〜15g配合して粉砕処理することを特徴とする請求項1に記載の着色方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の着色方法により着色された塩調味料。

【公開番号】特開2012−157292(P2012−157292A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19356(P2011−19356)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(310002938)株式会社Full Cast Win (1)
【Fターム(参考)】