説明

塩酸イミダプリル含有錠剤

【課題】塩酸イミダプリルを長期間安定に保持することができる錠剤を提供すること。
【解決手段】塩酸イミダプリルと製剤上の添加物からなる錠剤であって、滑沢剤が金属イオンを含まないことを特徴とする錠剤を提供する。
この製剤上の添加物中、滑沢剤として硬化油、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、カルナウバロウ又はサラシミツロウが、賦形剤として乳糖、D−マンニトール、エリスリトール又はトレハロースが、結合剤としてポリビニルアルコール(部分ケン化物)、メチルセルロース又はプルランが、崩壊剤としてはカルメロースが、それぞれ好適に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩酸イミダプリル(日本医薬品一般的名称)を長期間安定に含有することができる錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
塩酸イミダプリルは、ACE阻害剤として高血圧症の患者にに使用されている有用な医薬であるが、空気中の湿気の影響を受けて加水分解し易い性質を有している。そこで、その保存安定性を改善した製剤がいくつか提案されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3232687号公報
【特許文献2】特開2004−346066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、塩酸イミダプリルを長期間安定に保持することができる錠剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、塩酸イミダプリルの錠剤化に関する検討過程で、滑沢剤として繁用されているステアリン酸マグネシウムを使用すると、塩酸イミダプリルが予想外に高い比率で加水分解することを見出した。ところが驚くべきことに、ステアリン酸マグネシウムに代えて硬化油を使用すると、顕著にその加水分解が抑えられ、長期保存可能な塩酸イミダプリル含有錠剤を得ることができることを見出した。そこで本発明者は、さらに検討を加え、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明によれば、
(1)塩酸イミダプリルと製剤上の添加物からなる錠剤であって、滑沢剤が金属イオンを含まないことを特徴とする錠剤、
(2)滑沢剤が、硬化油、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、カルナウバロウ又はサラシミツロウである前記(1)に記載の錠剤、
(3)製剤上の添加物として含んでいてもよい水溶性賦形剤が、乳糖、D−マンニトール、エリスリトール又はトレハロースである前記(1)に記載の錠剤、
(4)製剤上の添加物として含まれる結合剤がポリビニルアルコール(部分ケン化物)、メチルセルロース又はプルランである前記(1)に記載の錠剤、
(5)製剤上の添加剤として含まれる崩壊剤がカルメロースである前記(1)に記載の錠剤を提供することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の錠剤によれば、安定性に問題がある塩酸イミダプリルを長期間安定に保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の活性薬剤である塩酸イミダプリルは、白色の結晶であり、製剤化に際しては、その平均粒子径を1〜50μm程度に粉末化したものが好適である。
【0009】
本発明における塩酸イミダプリルと製剤上の添加物との混合割合は、特に限定されないが、好ましい組成を示せば次の通りである。
塩酸イミダプリル 1重量部
金属イオンを含まない滑沢剤 0.05〜3重量部
水溶性賦形剤 5〜40重量部
結合剤 0.05〜5重量部
崩壊剤 0.05〜5重量部
なお、本発明の錠剤は、前述の成分の他に、必要に応じ、着色剤、矯味剤等の製剤上の添加物を使用して製造してもよい。
【0010】
本発明の錠剤は、通常の方法、例えば第十四改正日本薬局方の製剤総則に記載されている方法により、容易に製造をすることができる。
【実施例1】
【0011】
実施例1
塩酸イミダプリル30g(平均粒子径:約20μm)及び乳糖430.8gを流動層造粒機(パウレック製:MP−01型)に入れ、5重量%のポリビニルアルコール(部分ケン化物)水溶液192gを噴霧し、流動層造粒法にて造粒した。これに硬化油9.6gを加え混合後、混合物をロータリー式打錠機(菊水製作所製:Virgo型)で圧縮成型し、下記組成の錠剤を得た。
[成 分] [1錠当たりの重量(mg)]
塩酸イミダプリル 5.0
乳糖 71.8
ポリビニルアルコール(部分ケン化物) 1.6
硬化油 1.6
合計 80.0
【0012】
実施例2
塩酸イミダプリル30g(平均粒子径:約20μm)及び乳糖430.8gを流動層造粒機(パウレック製:MP−01型)に入れ、5重量%ポリビニルアルコール(部分ケン化物)水溶液192gを噴霧し、流動層造粒法にて造粒した。これにグリセリン脂肪酸エステル9.6gを加え混合後、混合物をロータリー式打錠機(菊水製作所製:Virgo型)で圧縮成型し、下記組成の錠剤を得た。
[成 分] [1錠当たりの重量(mg)]
塩酸イミダプリル 5.0
乳糖 71.8
ポリビニルアルコール(部分ケン化物) 1.6
グリセリン脂肪酸エステル 1.6
合計 80.0
【0013】
実施例3
塩酸イミダプリル30g(平均粒子径:約20μm)及びD−マンニトール430.8gを流動層造粒機(パウレック製:MP−01型)に入れ、5重量%プルラン水溶液192gを噴霧し、流動層造粒法にて造粒した。これに硬化油9.6gを加え混合後、混合物をロータリー式打錠機(菊水製作所製:Virgo型)で圧縮成型し、下記組成の錠剤を得た。
[成 分] [1錠当たりの重量(mg)]
塩酸イミダプリル 5.0
D−マンニトール 71.8
プルラン 1.6
硬化油 1.6
合計 80.0
【0014】
実施例4
塩酸イミダプリル30g(平均粒子径:約20μm)及び乳糖416.4gを流動層造粒機(パウレック製:MP−01型)に入れ、5重量%ポリビニルアルコール(部分ケン化物)水溶液288gを噴霧し、流動層造粒法にて造粒した。これにカルメロース9.6g及び硬化油9.6gを加え混合後、混合物をロータリー式打錠機(菊水製作所製:Virgo型)で圧縮成型し、下記組成の錠剤を得た。
[成 分] [1錠当たりの重量(mg)]
塩酸イミダプリル 5.0
乳糖 71.8
ポリビニルアルコール(部分ケン化物) 2.4
カルメロース 1.6
硬化油 1.6
合計 80.0
【0015】
比較例1
塩酸イミダプリル30g(平均粒子径:約20μm)及び乳糖430.8gを流動層造粒機(パウレック製:MP−01型)に入れ、5重量%ポリビニルアルコール(部分ケン化物)水溶液192gを噴霧し、流動層造粒法にて造粒した。これにステアリン酸マグネシウム9.6gを加え混合後、混合物をロータリー式打錠機(菊水製作所製:Virgo型)で圧縮成型し、下記組成の錠剤を得た。
[成 分] [1錠当たりの重量(mg)]
塩酸イミダプリル 5.0
乳糖 71.8
ポリビニルアルコール(部分ケン化物) 1.6
ステアリン酸マグネシウム 1.6
合計 80.0
【0016】
試験例1(苛酷試験での錠剤中の塩酸イミダプリル残存率)
(1)試験方法
実施例1〜4の錠剤及び比較例1で得た錠剤について各OO錠をとり、それぞれ開放した硝子瓶に収容し、恒温槽に入れ、温度60℃、相対湿度75%の条件下に保存した。保存開始から7日経過後、各錠剤中の塩酸イミダプリルの残存量を高速液体クロマトグラフィーにより測定した。その測定結果から、それぞれ残存百分率(%)を算出し、下記の結果を得た。
保存開始時(%) 7日経過後(%)
実施例1 99.8 99.6
実施例2 99.7 99.5
実施例3 99.4 99.4
実施例4 99.7 99.4
比較例1 99.9 93.9
以上の結果から、本発明に係る実施例1〜4の錠剤は、比較例1の錠剤と比べ、塩酸イミダプリルを極めて効果的に安定に保持し得ることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0017】
塩酸イミダプリルは、腎障害を伴なう高血圧症等の治療に有用な医薬であるが、安定性に問題がある。しかし、本発明によれば、塩酸イミダプリルを長期間安定に保持することができる錠剤を、医療現場に提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩酸イミダプリルと製剤上の添加物からなる錠剤であって、滑沢剤が金属イオンを含まないことを特徴とする錠剤。
【請求項2】
滑沢剤が、硬化油、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、カルナウバロウ又はサラシミツロウである請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
製剤上の添加物として含んでいてもよい水溶性賦形剤が、乳糖、D−マンニトール、エリスリトール又はトレハロースである請求項1に記載の錠剤。
【請求項4】
製剤上の添加物として含まれる結合剤がポリビニルアルコール(部分ケン化物)、メチルセルロース又はプルランである請求項1に記載の錠剤。
【請求項5】
製剤上の添加物として含まれる崩壊剤がカルメロースである請求項1に記載の錠剤。

【公開番号】特開2007−284390(P2007−284390A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114335(P2006−114335)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(593030071)大原薬品工業株式会社 (40)
【Fターム(参考)】