説明

塩酸ブテナフィン含有水性貼付剤

【課題】保存安定性に優れ、かつ配合した塩酸ブテナフィンの皮膚及び爪等の貼付部位への貯留性に優れる、治療効果の高い水性貼付剤を提供すること。
【解決手段】塩酸ブテナフィン、サリチル酸グリコール及びプロピレングリコールを、水を含むゲル膏体中に配合したことを特徴とする塩酸ブテナフィン含有水性貼付剤であり、詳細には、塩酸ブテナフィンをサリチル酸グリコール及びプロピレングリコールの混合溶液に溶解させ、水を含むゲル中に分散させたことを特徴とする塩酸ブテナフィン含有水性貼付剤であり、特にサリチル酸グリコールとプロピレングリコールの混合比が1:2〜1:30である塩酸ブテナフィン含有水性貼付剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性貼付剤中に配合した塩酸ブテナフィンの貼付部位への付着性及び貯留性に優れ、かつ保存安定性にも優れ、長時間にわたって抗真菌効果を発揮する塩酸ブテナフィン含有水性貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
白癬やカンジダの治療には、種々の抗真菌剤を含む軟膏剤、クリーム剤、或いは液剤が開発され、市販されている。しかしながら、これらの剤形では、投与部位における薬物有効濃度持続時間が短いために、一日2〜3回の投与が必要であり、患者のコンプライアンスが低いのが現状であった。この欠点を補うために種々の抗真菌剤を含む経皮投与製剤が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1および特許文献2には、アクリル系粘着剤又はゴム系粘着剤に抗真菌剤を含有させた貼付剤が開示されている。また、特許文献3には硝酸オモコナゾール又は塩酸ブテナフィンを疎水性被膜成分剤及び溶剤からなる基剤に配合した爪白癬治療用組成物が開示されており、特許文献4には2種以上の水溶性の低い被膜形成剤、水、可塑剤、抗真菌剤及びアルコールを含有する外用剤が開示されている。さらに、特許文献5には、親水性被膜形成物質、抗真菌剤及び水を含有する製剤が開示されている。
さらに、抗真菌剤にサリチル酸グリコールを配合している外用組成物が特許文献6に開示されている。
【0004】
しかしながら、これらの製剤のなかで、アクリル系粘着剤又はゴム系粘着剤に抗真菌剤を含有させた貼付剤では、製剤からの薬物の放出性や貼付部位への浸透性が充分でなく、貼付部位に薬物を貯留させることが不充分であった。また、疎水性被膜形成物質および親水性被膜成分物質を用いたネイルラッカー或いはネイルエナメル製剤は、組成中に含有する溶剤を揮散させて被膜を形成させるため塗布部位での脱水状態が起こり、刺激性に問題があった。さらに製剤を剥離するときに、溶剤もしくは洗剤を使用する必要があるなど簡便性にも問題がある。
さらに、抗真菌剤の角質浸透性及び貯留性を高める目的でサリチル酸グリコールを配合した軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ゲルクリーム剤及び液剤等の製剤では、薬物の角質貯留性が低く、有効濃度持続時間も短いために十分な治療効果が得られていない等の問題点がある。
【0005】
ところで、抗真菌剤のなかでも、ベンジルアミン系抗真菌剤である塩酸ブテナフィンは、これまで、外用液剤、クリーム剤、軟膏剤或いはスプレー剤の形態で、皮膚真菌症の治療、或いは白癬の治療剤として臨床的に提供されているが、外用水性貼付剤は登場していない。
これは、塩酸ブテナフィンが水に対する溶解性が低く、水性貼付剤としてゲル膏体中に均一に分散させることが困難であり、また上記したように、アクリル系粘着剤又はゴム系粘着剤に抗真菌剤を含有させた貼付剤では、製剤からの有効成分である遊離型のブテナフィンの放出並びに貼付部位への浸透性が充分でないことによる。
【0006】
【特許文献1】特開平7−309755号公報
【特許文献2】特開平7−309756号公報
【特許文献3】特開平6−211651号公報
【特許文献4】特開平7−277975号公報
【特許文献5】特開平10−152433号公報
【特許文献6】特開平8−20527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の現状に鑑み、水性貼付剤中に配合した塩酸ブテナフィンの貼付部位への付着性及び貯留性に優れ、かつ保存安定性にも優れ、長時間にわたって抗真菌効果を発揮する塩酸ブテナフィン含有水性貼付剤を提供することを課題とする。
【0008】
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、塩酸ブテナフィンをサリチル酸グリコール及びプロピレングリコールの混合溶液に溶解させ、水を含むゲル膏体中に均一に分散させることによって、皮膚及び爪等の貼付部位への付着性が高く、保存安定性に優れると共に、塩酸ブテナフィンの貯留性も高く、長時間にわたって抗真菌効果を発揮する水性貼付剤が得られることを新規に見出し、本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、その基本は、塩酸ブテナフィン、サリチル酸グリコール及びプロピレングリコールを、水を含むゲル膏体中に配合したことを特徴とする塩酸ブテナフィン含有水性貼付剤である。
詳細には、塩酸ブテナフィンをサリチル酸グリコール及びプロピレングリコールの混合溶液に溶解させ、水を含むゲル膏体中に分散させたことを特徴とする塩酸ブテナフィン含有水性貼付剤である。
【0010】
より具体的には、本発明は、サリチル酸グリコールとプロピレングリコールの混合比が1:2〜1:30である塩酸ブテナフィン含有水性貼付剤であり、また、ゲル膏体中のプロピレングリコール量が2〜25重量%である塩酸ブテナフィン含有水性貼付剤である。
【0011】
また本発明は、別の態様として、塩酸ブテナフィンをサリチル酸グリコール及びプロピレングリコールの混合溶液に溶解する工程、及びその溶解液を、水を含むゲル膏体中に分散させる工程からなることを特徴とする塩酸ブテナフィン含有水性貼付剤の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、塩酸ブテナフィンの溶解剤としてサリチル酸グリコールを使用し、角質層への貯留性を高める目的で、更にプロピレングリコールを配合した水性貼付剤である。
本発明が提供する水性貼付剤にあっては、塩酸ブテナフィンに対する溶解剤としてサリチル酸グリコールを単独で使用した場合でも角質層への貯留性が認められるものであったが、プロピレングリコールと組み合わせることによって、より高い貯留性が認められ、さらに、プロピレングリコールを配合することによって、製剤自体の保存安定性も向上するものである。
【0013】
したがって、本発明により、塩酸ブテナフィンの皮膚及び爪等の貼付部位への貯留性に優れ、保存安定性にも優れた、治療効果の高い塩酸ブテナフィン含有水性貼付剤が提供される。これまで塩酸ブテナフィンを含有する水性貼付剤が開発されていなかった現状下で、白癬やカンジダの治療に効果的な治療剤を提供するものであり、その医療上の効果は多大なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明における有効成分である塩酸ブテナフィンは、ベンジルアミン系抗真菌剤であり、皮膚真菌症、或いは白癬の治療剤として、すでに臨床的に提供されている抗真菌剤である。この塩酸ブテナフィンは、塩酸塩の形態をとりながら、水に対する溶解性は極めて低いものである。
したがって、水性貼付剤としてゲル膏体中に塩酸ブテナフィンを溶解状態で均一に分散させるためには溶解剤を使用して、ゲル膏体中に溶解させる必要がある。
本発明が提供する水性貼付剤にあっては、塩酸ブテナフィンを溶解させる溶解剤として、サリチル酸グリコールを配合し、さらに角質層への貯留性を高める目的でプロピレングリコールを配合した場合に、極めて良好な水性貼付剤が調製されることを見出した。
本発明は、塩酸ブテナフィンに対する溶解剤として、サリチル酸グリコール及びプロピレングリコールの両者を使用する点に、一つの特徴がある。
【0015】
本発明者等の検討によれば、塩酸ブテナフィンに対する溶解剤であるサリチル酸グリコールの配合量は、0.5〜5重量%が好ましいものである。
サリチル酸グリコールの配合量が0.5重量%より少ない場合には、製造時において、主薬成分である塩酸ブテナフィンが均一に分散しないことによる作業性の低下、及び塩酸ブテナフィンの皮膚貯留性の低下等、好ましくない影響が出る。
また5重量%より多くなると、製剤自体の保存安定性の低下等がみられ、好ましくない影響が出る。
【0016】
本発明にあっては、溶解剤としてのサリチル酸グリコールに加え、プロピレングリコールを組み合わせることによって、サリチル酸グリコールを単独で用いる場合よりも角質層への薬物貯留性および保存安定性が向上することが判明した。
この場合におけるプロピレングリコールの配合量は2〜25重量%が好ましい。特に、ゲル膏体中のプロピレングリコール量を5〜15重量%にすると薬物貯留効果が高くなり、より好ましい。
【0017】
すなわち、ゲル膏体中のプロピレングリコール量が2重量%未満では、プロピレングリコールに対する塩酸ブテナフィンの溶解が不十分となり、ゲル膏体中に塩酸ブテナフィンを均一に分散させることが難しいために、塩酸ブテナフィンを安定的に水性貼付剤中に配合させることができない。また、塩酸ブテナフィンの皮膚貯留性の低下等、好ましくない影響が出る。
逆に、ゲル膏体中のプロピレングリコール量が25重量%を超えると、ゲル粘度の低下による保形性悪化現象、及びべとつき現象が見られ、水性貼付剤として成形することが不可能となる。
【0018】
本発明にあっては、溶解剤としてのサリチル酸グリコールに加え、プロピレングリコールを組み合わせるものであるが、この場合の両者の配合(混合)比にあっては、サリチル酸グリコール:プロピレングリコール=1:2〜1:30の範囲で配合するのが好ましく、より好ましくは、混合比が1:5〜1:15である。
混合比が1:2未満の場合には、塩酸ブテナフィンの保存安定性の低下、及び皮膚貯留性の低下等の好ましくない影響が出る可能性があり、混合比が1:30よりも大きい場合には、ゲル粘度低下による保型性悪化現象及びべとつき現象が見られ、好ましいものではない。
【0019】
本発明が提供する水性貼付剤において、ゲル膏体中の水分量は30〜90重量%が好ましく、より好ましくは40〜70重量%である。
ゲル膏体中の水分量が30重量%未満では、ゲル粘度が高くなりすぎてゲル膏体を支持体及びライナーに展延し貼付剤化する時の作業性が悪くなる。
また、逆にゲル膏体中の水分量が90重量%より多くなると、ゲル粘度の低下による保形性悪化現象、及びべとつき現象が見られ、貼付剤として成形することが不可能である。
【0020】
本発明の水性貼付剤の膏体であるゲル膏体を構成する上記以外の組成については、特に制限はなく、例えば、水溶性高分子、賦形剤、保湿剤、安定化剤、架橋剤などを適宜配合させたゲル膏体を調製することができる。
【0021】
そのような水溶性高分子としては、例えば、ゼラチン、加水分解ゼラチン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸部分中和物、ポリアクリル酸デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルメロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、N−ビニルアセトアミド共重合体等を単独又は2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0022】
前記水溶性高分子のゲル膏体中における配合量は、3〜20重量%であり、より好ましくは、5〜15重量%である。
配合量が3重量%未満では、ゲル粘度が低すぎて貼付剤として成形することが難しくなり、また、20重量%を越えると水溶性高分子がゲル中で十分に溶解せず、良好なゲル膏体が形成されない。
【0023】
賦形剤としては例えば、カオリン、酸化チタン、軽質無水ケイ酸、酸化亜鉛等を単独又は2種以上の組み合わせで用いることができ、その配合量は5〜60重量%が好ましい。
【0024】
保湿剤としては例えば、濃グリセリン、D−ソルビトール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ピロリドンカルボン酸塩等を単独又は2種以上の組み合わせで用いることができ、その配合量は15〜45重量%が好ましい。
【0025】
安定化剤としては例えば、エデト酸塩、パラオキシ安息香酸エステル、酒石酸等を単独又は2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0026】
架橋剤としては例えば、水酸化アルミニウム、アルミニウムグリシネート、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸金属塩などの多価金属化合物等を単独又は2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0027】
なお、本発明の水性貼付剤にあっては、必要に応じて吸収促進剤、防腐剤、抗酸化剤、可塑剤、乳化剤、界面活性剤等を配合させることができる。
【0028】
本発明における水性貼付剤の支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン等の多孔体、発泡体、織布、不織布、さらにはフィルムまたはシートと多孔体、発泡体、織布、不織布とのラミネート品等を用いることができる。
【0029】
また、ゲル膏体表面を被覆するプラスチックフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニルまたはこれらをシリコーンで離型処理したものを用いることができる。
【0030】
本発明が提供する水性貼付剤の製造方法は、特に限定はなく公知の製造方法で製造することができる。例えば、前記の様な構成で組成された、塩酸ブテナフィンを溶解状態で均一に分散含有するゲル膏体を支持体上に展延し、膏体組成表面をプラスチックフィルムで被覆することにより、塩酸ブテナフィンを含有する水性貼付剤を調製することができる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例及び試験例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
実施例1
20%ポリアクリル酸水溶液20g、酒石酸1.2g、濃グリセリン15g、カルメロースナトリウム5g、ポリアクリル酸部分中和物5g、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート0.07g、乾燥水酸化アルムニウムゲル0.015g、精製水の適量を均一に混合して含水ゲルを調整した。
次にサリチル酸グリコール2.5gとプロピレングリコール15gの混合液に塩酸ブテナフィン1.0g、メチルパラベン0.1g及びプロピルパラベン0.05gを溶解した後、先に調製した含水ゲル中に均一になるように分散し、貼付剤用ゲル膏体を得た。
このゲル膏体を伸縮性不織布上に展延し、膏体表面をポリエステルフィルムで被覆することにより貼付剤を作製した。
【0033】
実施例2〜5及び比較例1〜3
実施例1の調製法に準じて下記の表1に記載の組成成分(配合処方)により、実施例2〜5及び比較例1〜3の水性貼付剤を作製した。
なお、下記表1には実施例1の配合処方も一緒に記載した。
【0034】
【表1】

【0035】
比較例4
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体20g、水素添加ロジングリセリンエステル20g、脂環族飽和炭化水素樹脂20g、ポリブテン15g、ジブチルヒドロキシトルエン1.0g、流動パラフィン18gをトルエン36gに溶解させる。得られた粘着剤溶液に塩酸ブテナフィン1.0gをサリチル酸グリコール5.0gに溶解させた溶液を混合し、塗工液を得た。
これをポリエステルフィルム上に乾燥後の厚みが100μmとなるように塗工し、乾燥後、支持体として80μmポリエチレンフィルムを貼り合わせてテープ剤を得た。
下記表2にその組成成分を記載する。
【0036】
【表2】

【0037】
比較例5
塩酸ブテナフィンをサリチル酸グリコール、ハッカ油、2%水酸化ナトリウム液及びラウロマクロゴールの混合液に約70〜80℃に加温して溶解し、その溶解液に、白色ワセリン、ステアリルアルコール、パラオキシ安息香酸ブチル及びパラオキシ安息香酸エチルを加え、水浴上で加温溶解し、よくかき混ぜ、約70〜80℃に保ち、これにあらかじめ他の成分を精製水に溶解して約70〜80℃に加温した液を加え、固まるまでかき混ぜてクリーム剤を得た。
表3にその組成成分を記載する。
【0038】
【表3】

【0039】
試験例1接着持続性試験
上記で作製した実施例1〜5と比較例1〜5の各製剤を指爪に8時間貼付し、接着状態とべたつき状態を以下の基準に従って評価した。
<接着状態の評価基準>
○:接着性高い
△:接着性低い(一部剥がれる)
×:接着性なし(容易に剥がれる)
【0040】
<べたつきの評価基準>
○:べたつきなし
△:べたつきが少し感じられる
×:べたつきがはっきり感じられる
【0041】
その結果を表4に示した。表中に示した結果からも判明するように、実施例1〜5の水性貼付剤は、接着性も良く、べたつきの少ない製剤であった。
【0042】
【表4】

【0043】
試験例2薬物分散性
上記で作製された水性貼付剤である実施例1〜5及び比較例1〜3のゲル膏体中の薬物分散性を目視及び偏光顕微鏡にて確認した。
その結果を下記表5に示した。
【0044】
【表5】

【0045】
比較例2及び3の貼付剤にあっては、目視状態において薬物の凝集による結晶の析出が見られ、分散性が非常に悪く、薬物をゲル膏体中に均一に分散することが出来なかった。
それに対して、本発明のサリチル酸グリコール及びプロピレングリコール含有する実施例1〜5の水性貼付剤は、薬物の凝集が見られず、ゲル膏体中における薬物の良好な分散性が認められた。
【0046】
試験例3薬物貯留性試験(その1)
7週齢雄性ウィスターラットの腹部摘出皮膚をフランツ型拡散セルに装着した。この上に直径19mmに打ち抜かれた実施例1〜3と比較例1〜4の貼付剤および市販クリームA(塩酸ブテナフィン濃度:1%)を貼り合わせた。レセプター溶液としてpH7.4リン酸緩衝液・ポリエチレングリコール400混液(6:4)を用いた。投与8時間後に各製剤を剥離し、ラット皮膚中に蓄積しているブテナフィン量を高速液体クロマトグラフィー法にて測定した。
その結果を下記表6に示した。
表中に示した結果からも判明するように、本発明の実施例1〜3の水性貼付剤にあっては、比較例1〜4の製剤と比較して、ラット皮膚中におけるブテナフィンの高い貯留性を示しており、特に実施例1及び2の水性貼付剤にあっては優れたものであった。
【0047】
【表6】

【0048】
試験例4薬物貯留性試験(その2)
実施例1〜3と比較例1〜4の貼付剤、または不織布上に市販クリームAを所定量展延したものを、それぞれφ19mmに打ち抜き、ブタ爪に貼り合わせた。
25℃/60%RH下で48時間静置後、製剤を慎重に取り外し、爪表面をメタノールで湿らしたガーゼで拭き取った後、爪中に貯留しているブテナフィン量を高速液体クロマトグラフィー法にて測定した。
結果を表7に示した。
本発明の貼付剤である実施例1〜3の製剤は、比較例1〜4の製剤及び市販クリームAよりもブタ爪中のブテナフィン貯留量が高いものであった。
【0049】
【表7】

【0050】
試験例5薬物安定性試験
本発明の実施例1〜3の水性貼付剤を5×5cmに裁断した後、遮光性の気密容器に入れ、温度40℃及び50℃の各条件下で保存した。
各測定日に保存条件下に保存した気密容器から製剤を取り出し、メタノール加熱還流抽出を行った。十分に冷却後、抽出液を液体クロマトグラフィー法にて測定し、対初期薬物含有量を評価した。
その結果を表8(40℃保存下)及び表9(50℃保存下)に示した。
表中に示した結果からも判明するように、本発明の実施例1〜3の水性貼付剤は、各保存条件下のいずれにおいても、保存安定性に優れる製剤であった。
【0051】
【表8】

【0052】
【表9】

【0053】
試験例6薬物貯留性試験(その3)
塩酸ブテナフィンをプロピレングリコール、及び50%プロピレングリコール水溶液に溶かし、1%溶液を調製した。この各1%溶液をブタ爪に滴加した後、25℃/60%RH下で24時間静置後、溶液を慎重に取り除き、ブタ爪表面をメタノールで湿らしたガーゼで拭き取った後、ブタ爪中に貯留しているブテナフィン量を高速液体クロマトグラフィー法にて測定した。
その結果を下記表10に示した。
表中に示した結果から判明するように、塩酸ブテナフィンに関しては、プロピレングリコールのみに溶解した溶液よりも、50%水溶液に調製した方が、ブタ爪中における塩酸ブテナフィンの貯留性を有意に増加させることが示された。
【0054】
【表10】

【0055】
試験例7薬物放出試験
実施例1と比較例5で作製した製剤からの塩酸ブテナフィンの放出性を評価した。
試験方法しては、USP Apparatus 5(Paddle over Disk)を用い、試験液は40%ポリエチレングリコール水溶液を用いた。
その結果を図1に示した。
図中に示した結果から、本発明の水性貼付剤である実施例1の貼付剤は、塩酸ブテナフィンの放出量、放出速度ともに、比較例5の製剤(クリーム剤)より上回っており、本発明の水性貼付剤は有用性の高い貼付剤であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明により、保存安定性に優れ、かつ配合した塩酸ブテナフィンの皮膚及び爪等の貼付部位への貯留性に優れた、白癬やカンジダ等に対する治療効果の高い水性貼付剤を提供される。
これまで、塩酸ブテナフィンを含有する水性貼付剤が登場していない現状下において、その医療上の効果は多大なものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の試験例7に従う、塩酸ブテナフィンの放出試験の結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩酸ブテナフィン、サリチル酸グリコール及びプロピレングリコールを、水を含むゲル膏体中に配合したことを特徴とする塩酸ブテナフィン含有水性貼付剤。
【請求項2】
塩酸ブテナフィンをサリチル酸グリコール及びプロピレングリコールの混合溶液に溶解させ、水を含むゲル膏体中に分散させたことを特徴とする請求項1に記載の塩酸ブテナフィン含有水性貼付剤。
【請求項3】
サリチル酸グリコールとプロピレングリコールの混合比が1:2〜1:30である請求項1又は2に記載の塩酸ブテナフィン含有水性貼付剤。
【請求項4】
ゲル膏体中のプロピレングリコール量が2〜25重量%である請求項1、2又は3に記載の塩酸ブテナフィン含有水性貼付剤。
【請求項5】
塩酸ブテナフィンをサリチル酸グリコール及びプロピレングリコールの混合溶液に溶解する工程、及びその溶解液を、水を含むゲル膏体中に分散させる工程からなることを特徴とする塩酸ブテナフィン含有水性貼付剤の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−249348(P2009−249348A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100041(P2008−100041)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000215958)帝國製薬株式会社 (44)
【Fターム(参考)】