説明

塩類溶解槽および電解装置

【課題】塩類溶解槽の換気設備の腐食、塩類補給時の塩類投入口からの塩素ガスの漏れ、塩類溶解槽から排出した塩素ガスによる装置筐体内の機器類の腐食等を防ぐことができる塩類溶解槽及び電解装置を提供する。
【解決手段】塩類溶解水を貯留する塩類溶解槽1は、塩類溶解水を電解して電解水を生成する電解槽2との間で該塩類溶解水を循環させる循環路としての導入管10および導出管11を備える。さらに塩類溶解槽1は、塩類溶解槽1の外部に配置されたブロア23と、塩類溶解槽1の外部にてブロア23の吐出口に連結されたダクト22と、塩類溶解槽1の塩類溶解水が浸からない上部空間からダクト22の内部へ延出するノズル21とをさらに備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩類を溶解させた水(以下、塩類溶解水)から電気分解によりアルカリ性と酸性の電解水をそれぞれ生成する電解装置に関し、特に、その塩類溶解水を収容する塩類溶解槽およびこれを備えた電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電解装置としては、例えば図6に示すように、電解槽60の本体内部を中間室Aとその両側の陽極室B及び陰極室Cにイオン交換膜62,63で分離し、陽極室B側のイオン交換膜62近傍に陽極64を、陰極室C側のイオン交換膜63近傍に陰極65を設け、中間室Aに食塩水タンク66から食塩水を循環供給して両電極64、65間にて電気分解し、それによってそれぞれ陽極室B及び陰極室Cに供給される水から酸性水及びアルカリ性水を生成させ、これらの電解水を取り出す装置が知られている。(特許文献1及び2等)
このような三室型の電解槽60においては、中間室Aに供給された食塩水などの塩類溶解水は電気分解により、中間室Aと陽極64の間に配置された陰イオン交換膜62を介して陽極室Bに陰イオンが供給され、また中間室Aと陰極65の間に配置された陽イオン交換膜63を介して陰極室Cに陽イオンが供給される。そのため、中間室Aから排出される塩類溶解水の塩濃度は低下している。この塩類溶解水の塩濃度は低下しているものの、まだ塩分は残っているため、その塩類溶解水をそのまま捨ててしまうと効率的でない。
【0003】
このため、中間室Aから排出される塩類溶解水を食塩水タンク66(以下、塩類溶解槽)に戻して循環させる方法が行われている。しかしこの場合、一般的には塩類濃度を再び高濃度にするために粉末状の塩類を加えているが、不足なく必要十分な濃度にするために、塩類溶解槽内に塩類を飽和濃度以上に加えておき、未溶解の塩類が常に残っている状態に塩類溶解槽内を管理している。
【0004】
上記のように塩類濃度が飽和濃度で管理されている状態において、塩類溶解槽内の塩類溶解水は塩類溶解槽と中間室Aとの間を循環する。この場合、陽極室で発生した有効塩素の一部が、拡散により中間室Aに移行し、塩類溶解槽に含有される。したがって、塩類溶解水のpH条件(中性〜酸性)によっては、塩類溶解槽内に塩素ガスが発生する。塩素ガスは微量でも臭いため、塩類溶解槽を密閉しておくが、そうしたとしても、塩類を追加補充する際に塩類溶解槽の一部、例えば上部を開けた際に塩類溶解槽周囲の雰囲気が臭くなってしまう。また、塩素ガスは濃度が高いと金属を腐食させてしまう。
【0005】
また、上記の中間室Aを設置せずに陽極室B及び陰極室Cをイオン交換膜で分離する二室型の電解槽も知られているが、この二室型においても、陽極室で生成される酸性水を必要としない場合、酸性水を塩類溶解槽に戻して循環させることが考えられる。そのため、この場合も上記の三室型と同じように塩類溶解槽内に塩素ガスが発生する。
【0006】
そこで従来、上で述べた塩素ガスの影響に鑑み、塩類溶解槽の上部を開放するか、もしくはシロッコファン(以下、ブロア)や軸流ファン(以下、ファン)などの換気装置を設置して、塩素ガス濃度を低下させる手段を講じることが考えられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−299457号公報
【特許文献2】特開2009−50797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ブロア又はファンを塩類溶解槽の排気方向下流側(例えば排気口)に設置すると、塩素ガスがブロア又はファンに吸込まれてそれを通過するため、ブロア又はファンが腐食してしまう。これに対して、ブロア又はファンを塩類溶解槽の排気方向上流側(例えば外気取込み口)に設置すると、ブロア又はファンの腐食は防げるが、塩類を追加補充する際に塩類溶解槽の一部、例えば上部を開けた際にその塩類投入口から塩類溶解槽内の塩素ガスが出てきてしまい臭い。また、塩類溶解槽を電解装置の筐体内に組み込んだ場合、塩素ガスが塩類投入口から電解装置の筐体内にも送出されて、該筐体内に配置されている機器類の金属部品が腐食してしまう。
【0009】
上記の場合でも臭くないようにする為にブロア又はファンの風量を多くして臭くない濃度まで塩素ガスを希釈する方法が考えられるが、この方法では塩類溶解槽内の塩類溶液が風により波立つ。その結果、防風板を設置するなど工夫しても塩類溶解水が塩類溶解槽の内壁に飛び散って、内壁に塩類の析出が起こり、結晶成長した塩類がその内壁を伝って塩類溶解槽の外側へ漏出して塩類の無駄が発生する。さらには、塩類溶解槽を電解装置の筐体内に組み込んだ場合、塩素ガスが塩類投入口から電解装置の筐体内にも飛び散って、装置筐体内の機器類の金属部品が腐食してしまう。
【0010】
そこで本発明の目的は、上述した課題を解決することができる塩類溶解槽及びこれを備えた電解装置を提供することにある。すなわち、その目的の一例は、塩類溶解槽内で塩素ガスが発生する場合に塩類溶解槽の換気設備であるブロア又はファン等が腐食しないこと、塩類補給時に塩類溶解槽の塩類投入口から塩素ガスが漏れないこと、塩類溶解槽を電解装置の筐体内に組み込んだ場合塩類溶解槽から排出した塩素ガスで装置筐体内の機器類の金属部品を腐食させないこと、等である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、塩類溶解水を貯留する塩類溶解槽であって、該塩類溶解水を電解して電解水を生成する電解槽との間で該塩類溶解水を循環させる循環路を備えた該塩類溶解槽に係わるものである。そして、この塩類溶解槽において、本発明の一の態様は、塩類溶解槽の外部に配置されたブロアと、該塩類溶解槽の外部にて該ブロアの吐出口に連結された第1管路と、該塩類溶解槽の塩類溶解水が浸からない上部空間から該第1管路の内部へ延在している第2管路とをさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塩類溶解槽内で発生した塩素ガスをブロアに通さないで排出できるため、ブロアを腐食させないことが可能である。また、塩類溶解槽の上部空間から第1管路の内部へ第2管路を延出させたことで、第2管路の先端位置でブロアからの風の流速が早まって圧力が下がる構成となり、塩類溶解槽内で発生した塩素ガスを第2管路より吸い出すことが出来る。これにより、塩類補給時に塩類溶解槽の塩類投入口から塩素ガスが漏れないようにすることが出来る。さらに、第2管路より吸い出された塩素ガスはブロアからの風で希釈されて第1管路より排出されるので、塩類溶解槽を電解装置の筐体内に組み込んだ場合、装置筐体内の機器類の金属部品を腐食させないことが可能である。そのため、電解装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る塩類溶解槽を適用した電解装置の概略構成を示す正面図。
【図2】本発明の具体的な実施例による塩類溶解槽の側断面図。
【図3】本発明の具体的な実施例による塩類溶解槽の上面図。
【図4】図2及び図3に示したノズルとダクトの詳細図。
【図5】本発明の他の実施形態に係る電解装置を説明するための側面模式図及び上面模式図。
【図6】従来の電解装置を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る塩類溶解槽を適用した電解装置の概略構成を示す正面図である。
【0016】
本実施形態の電解装置は、図1に示すように、電解される食塩水等の塩類溶解水を貯留する塩類溶解槽1と、該塩類溶解水を電解して電解水を生成する三室型の電解槽2とを備える。三室型の電解槽2は、電解槽本体3と、この本体3内部を中央の中間室4とその両側の陽極室5及び陰極室6に分離する2枚のイオン交換膜7A,7Bと、陽極室5の内側であって一方のイオン交換膜7Aの近傍に設けられた液体通過可能な陽極8と、陰極室6の内側であって他方のイオン交換膜7Bの近傍に設けられた液体通過可能な陰極9とを備える。
【0017】
中間室4の底部又は側面下部には、塩類溶解水を塩類溶解槽1の底部又は側面下部から中間室4内へ導入する導入管10が接続され、中間室4の天井部又は側面上部には、塩類溶解水を中間室4の内部から塩類溶解槽1内へ導出する導出管11が接続され、これによって、塩類溶解水の循環経路が構成されている。導入管10及び導出管11のいずれか一方に、塩類溶解槽1と中間室4との間で塩類溶解水を循環させる循環ポンプ12が設けられている。なお、塩類溶解槽1に対する導出管11の接続箇所は、塩類溶解槽1内の塩類溶解水が直接流れ出るように塩類溶解槽1の塩類溶解水水面下近傍の側壁に配置されている。
【0018】
陽極室5及び陰極室6の底部又は側面下部には、水道水等の水を陽極室5及び陰極室6の中に供給する給水管13が接続されている。さらに、陽極室5の天井部又は側面上部には酸性水を取り出す配管14が接続され、陰極室6の天井部又は側面上部にはアルカリ性水を取り出す配管15が接続されている。
【0019】
塩類溶解槽1の中には、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)等の塩類が水に飽和濃度以上に十分に加えられた塩類溶解水が収容されている。そして、塩類溶解槽1内の未溶解の塩類が槽底の導入管10の入口を塞がないように、塩類溶解槽1内の底面より高い位置に、未溶解の塩類の塊16を捕らえるが塩類溶解水を通過させる大きさの孔が形成された板17が配置されている。また、塩類溶解槽1の側壁の上部には、塩類溶解層1内に塩類を投入するための塩類投入口(不図示)がある。
【0020】
塩類溶解槽1の側壁には、水道水等の水を塩類溶解槽1内に供給する供給管18が接続されている。塩類溶解槽1内への水の供給は、塩類溶解槽1内の塩類溶解水の水面位置を監視して行なわれる。このため、塩類溶解水の水面が所定のレベルにあることを検出する液面レベルセンサ19が備えられている。塩類溶解槽1内から塩素ガス等を含む気体を吸い出していることにより塩類溶解槽1内の塩類溶解水が蒸発するため、塩類溶解水が減り、塩類溶解槽1内に水を補給する必要が生じる。この水の補給は、液面レベルセンサ19が塩類溶解水の液面を検知したタイミングで供給管18の止水バルブ20を一定時間開放することにより行われる。この止水バルブ20の開放時間は調整可能である。
【0021】
このような電解装置では、塩類溶解槽1内の塩類溶解水は、塩類溶解槽1と中間室4との間を循環する。この場合、陽極室5で発生した有効塩素の一部が、拡散により中間室4に移行し、塩類溶解水に含有される。したがって、塩類溶解水のpH条件(中性〜酸性)によっては、塩類溶解槽1内に塩素ガスが発生する。あるいは、上記の構成の電解装置を電解アルカリ水製造装置として使用する場合、ハロゲン化物イオンを含有しない塩類、例えば炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸水素カリウム(KaHCO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)等が使用されている。この場合には、塩類溶解槽1内の塩類溶解水は、塩類溶解槽1と中間室4との間を循環することによって、陽極室5で発生した炭酸ガスや生臭いオゾンガスの一部が、拡散により中間室4に移行し、塩類溶解水に含有される。
【0022】
また、この場合は陽極水を必要としなければ、陽極室5の入口にも分岐して中間室出口水をつなぎ、陽極室5の出口を塩類溶解槽1への導入管に合流させることもできる。さらには陰イオン交換膜を取り除き、陽極室5と中間室4を一室にすることもできる。
【0023】
上記のような塩類溶解槽1内に発生する塩素ガスや、炭酸ガス、オゾンガス等の濃度を低減するため、塩類溶解槽1の外部に、塩素ガス等を排気するための第1管路としてのダクト22が配置され、さらに、塩類溶解水が浸からない塩類溶解槽1の上部空間に面した側壁には、塩素ガス等を含む気体を吸い出すための第2管路であるノズル21が設けられている。ノズル21の先端がダクト22の側壁を貫通してダクト22内部に入り込むことで、ノズル21とダクト22が連通している。ダクト22の一端部はブロア(即ち、シロッコファン)23の吐出口と接続されている。ダクト22の途中の流路断面積が、ダクト22内に入り込んだノズル21の先端によって絞られているため、ブロア23に矢印Aのように吸込まれた空気がブロア23の吐出口を経てダクト22を通るとき、ノズル21の先端付近の絞り部で圧力が下がる。このことにより、塩類溶解槽1内の塩素ガス等を含む気体がノズル21を通ってダクト22に吸い出されて、ブロア23による風と一緒にダクト22により矢印Bのように装置外へ排出される。
【0024】
この排気構成では、塩素ガス等を含む気体はブロア23を通らないのでブロア23の腐食は起こらない。また、塩類を塩類溶解槽1内に追加補充する際に塩類溶解槽1の塩類投入口(不図示)を開けたとしても、ノズル21から塩類溶解槽1内の塩素ガス等が吸い出しているので塩類投入口から塩素ガス等が出ることはなく、塩類を追加補充する人にとって臭くない。さらに、塩類溶解槽1内に発生した塩素ガス等を含む気体を吸い出す構造なので、塩類溶解槽1内の塩類溶解水の水面が波立たない。結果、塩類溶解槽1の内壁面に塩類溶解水が飛び散って塩類が析出するおそれが無い。したがって、塩類が結晶成長して塩類溶解槽1の側壁の塩類投入口から装置周囲へ漏出して塩類の無駄が生じたり、装置周囲の機器類の金属部品を腐食させたりするおそれも無い。また、塩類溶解槽1内の塩素ガス等を含む気体をブロア23による風と一緒に装置外へ排出するので、排出する塩素ガスを臭くない濃度まで希釈することができる。
【0025】
図1では塩類溶解槽1の構成を模式的に示したが、図2及び図3にその塩類溶解槽1の具体的な実施例を示す。図2はその側断面図、図3はその上面図である。また図4は図2及び図3に示したノズル21とダクト22の詳細図((a)はノズル側の側面図、(b)はダクト入口側の側面図、(c)は上面図)である。これらの図に示すように、塩類溶解槽1の上部の側壁には、塩素ガス等を含む気体を吸い出すためのノズル21が該側壁の外側面より突出するように設けられている。ノズル21の先端がダクト22の側壁を貫通してダクト22の内部に飛び出した状態で、ノズル21とダクト22が接続されている。そして、このダクト22の一端の開口部がブロア23の吐出口部と接合されている。ダクト22の内部にノズル21の先端部を飛び出させたことによってダクト22の途中で流路断面積の一部が絞られた構造になっている。
【0026】
さらに具体的には、ダクト22は四角柱状の角筒からなる。ノズル21のダクト22外側の部分も四角柱状の角筒からなり、当該部分の外壁面がダクト22の一側面に垂直で且つ、当該部分の上下壁面がダクト22の上下壁面と平行になるように、ノズル21がダクト22に接合されている。そして、ダクト22内部に飛び出したノズル22の先端は、ノズル22の内側流路に対してブロア23からの風を遮る遮蔽板24と、遮蔽板24のブロア吐出口側とは反対側に設けられたノズル22の開口部25とを有する構造である。遮蔽板24は、ノズル22のブロア23側の側壁からダクト22の内部へ延出するように設けられ、ブロア23からの風の吹出し方向に対して下流側に斜めに傾けて構成されている。開口部25は、ノズル21が接続されたダクト22の内壁面から遮蔽板24の上端及び下端のそれぞれに亘るようにノズル21の上壁及び下壁を延長することで形成されている。
【0027】
このようなノズル先端構造によれば、ブロア23の吐出口からの風がダクト22内に入って遮蔽板24を通ったとき、遮蔽板24の箇所で流路断面積が絞られているために風の流速が上昇する。そのため、遮蔽板24での絞り部を通過する前より通過後の圧力が下がる、いわゆるエゼクター効果が得られ、これにより、塩類溶解槽1内の塩素ガス等を含む気体がノズル先端の開口部25を通ってダクト22内へ吸い出されて、ブロア23による風と一緒にダクト22の外へ排出される。
【0028】
図2乃至図4に示した実施例の構造について、以下の数値で設計した。
【0029】
塩類溶解槽1の寸法:(水面より上の気相スペース)横幅144mm×奥行144mm×高さ121mm
ダクト22の寸法 :(内寸)横幅35mm×高さ60mm×長さ82mm
ダクト22の断面積 :2100mm2
ノズル21の先端寸法:(外寸)遮蔽板24[横幅17mm×高さ24mm、傾斜角45度]
(内寸)開口部25[横幅14mm×高さ18mm]
ノズル21の断面積 :324m2
こうした寸法のノズル21及びダクト22等の構成において、ブロア23の吐出口の吐出風量を0.390m3/minに設定したところ、ダクト22内の風速は4.4m/s、ノズル21内の風速は8.6m/s、塩類溶解槽1内からの吸出し風量は0.17 m3/min、ダクト22の出口風量は0.56m3/min、となった。
【0030】
塩類溶解槽1内からの吸出し風量:0.17 m3/minに対して、ダクト22の出口風量が0.56m3/min であるので、塩類溶解槽1内の塩素ガス等を含む気体は、約3.3倍(=0.56÷0.17)で希釈されてダクト22の外へ排出される。
【0031】
また、図2に示すように、ダクト22先端の風出口の前に、気体の流れを遮る向きで配置された板26を設けるとさらに良い。このような板26を設けることにより、ダクト22の外へ排出される塩素ガス等を含む気体は板26に衝突して拡散されるので、当該塩素ガス等を含む気体をさらに希釈することができる。
【0032】
この板26については以下の数値で設計した。
【0033】
ダクト22の先端(風出口)から板26までの距離 :27mm
板26(四角形)の寸法 :横幅70mm×高さ100mm
ダクト22の先端と板26との間の開口部面積 :9180mm2
こうした寸法でダクト出口に板26を設け、上記したようにブロア23の吐出口の吐出風量を0.390m3/minに設定したところ、ダクト22の先端と板26との間の開口部から出る風量は1.68 m3/min となった。この風量はダクト22の出口風量:0.56m3/minに対して3倍(=1.68÷0.56)であるので、ダクト22から出る塩素ガス等を含む気体も3倍に希釈されて発散される。
【0034】
上記のように、図2乃至図4に示した構成によれば、塩類溶解槽1内の塩素ガス濃度が4ppmのときに、ダクト22の出口での塩素ガス濃度は1.2ppmとなり、さらに、板26による風出口での塩素ガス濃度は0.4ppm となった。すなわち、塩類溶解槽1内に発生した塩素ガスの濃度を格段に低下させて、塩類溶解槽1の塩類投入口とは別の開口部よりガス排気を行なうことができる。このため、不快の塩素ガスの臭いを塩類補給者に直接嗅がせるおそれが無いだけでなく、塩類溶解槽1周囲の人が塩素ガス臭を知覚しにくくなる。また、塩類溶解槽1周囲の機器類の金属部品を腐食するおそれも無くなる。このような効果は、搬送容易な小型の電解装置を実現すべく、上で述べたような塩類溶解槽1および電解槽2を筐体の内部に組み込んだ場合に有効に発揮される。
【0035】
そこで、以下では、塩類溶解槽1および電解槽2を筐体の内部に組み込んだ電解装置の例を説明する。このような構成の電解装置を示したのが図5であり、同図(a)はその電解装置の背面模式図、同図(b)はその電解装置の上面模式図を示している。
【0036】
図5に示した電解装置は、3つの部屋P,Q,Rに仕切られた筐体27を備えており、一つの部屋Pは筐体27の下部空間から構成され、残りの二つの部屋Q,Rは筐体27の上部空間を二つに分けて構成されている。筐体27の上部空間を分けた二つの部屋Q,Rに塩類溶解槽1と電気制御装置がそれぞれ配置され、筐体27の下部空間の部屋Pに電解槽2が配置されている。電気制御装置は、電解槽2や筐体27内の電気機器等を制御する電気基板28とこれを冷却するファン(軸流ファン)29とを含む。電気基板28は、筐体27の上部空間を2つに仕切る壁に固定され、この壁に対向する筐体27の側壁にファン29が配置されている。
【0037】
前記電気制御装置が配置された部屋Rの床には貫通穴30が設けられている。塩類溶解槽1が配置された部屋Qの床にも貫通穴31が設けられており、特に、塩類溶解槽1に備わるブロア23の外気取り込み口付近に貫通穴31は配置されている。それぞれの貫通穴30,31は、電解槽2が配置された部屋Pに繋がっている。
【0038】
部屋Q内の塩類溶解槽1に備わるダクト22の出口は筐体27の外側に配置されている。このダクト22の出口前方にダクト22からの排気ガスを拡散させる板26が位置するように、板26は筐体27の外側壁に固定されている。
【0039】
このような電解装置では、図5中に矢印で示すように、ファン29により部屋Rに取り込まれた外気が電気基板28を冷却し、さらに貫通穴30を通って、電解槽2が配置された部屋Pに流れ込む。部屋Pを流れる空気は電解槽2および電磁弁を冷却して、塩類溶解槽1が配置された部屋Qに貫通穴31を通って流れ込む。更には万が一、電解槽などから塩素ガスが僅かに漏れた場合、塩素ガスは空気より重たく、装置内の下部に溜まるおそれがあるため、その場合でも微量塩素ガスの滞留による金属機器類の腐食の防止の為に、それを排気できる排気口32が、筐体27の部屋Pの側壁に設けられている。塩類溶解槽1のブロア23は、貫通穴31より部屋Qに進入してきた空気を取り込み、ダクト22内へ送風する。ブロア23による風がダクト22内を通るとき、上で述べたように、塩類溶解槽1内の塩素ガス等を含む気体がノズル21を通ってダクト22内へ吸い出されて、ブロア23による風と一緒に筐体27の外へ排出される。さらに、筐体27の外へ排出される塩素ガス等を含む気体は板26に衝突して拡散される。
【0040】
尚、この電解装置では、ファン29による外気取込み量の方がブロア23による外気取込み量よりも大きく設定されている。このように設定すると筐体27の内部が正圧状態に保たれるので、筐体27の組立時に出来る隙間から塵埃が筐体27内に入るのを防止することができる。
【0041】
以上、本発明について具体的な態様を開示して説明したが、本発明は、上で述べた実施形態に限定されるものはなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で様々な変更をすることが可能である。例えば、三室型の電解槽2を備えた電解装置を例示したが、本発明に係る塩類溶解槽1は二室型の電解槽を備えた電解装置に適用することも可能である。特に、上述した電解槽2の構成要素に関して中間室4を設置せずに陽極室5及び陰極室6をイオン交換膜で分離してなる二室型の電解槽を備えた電解装置であって、陽極室5で生成される酸性水を塩類溶解槽1に循環させる方式の電解装置に、上述した構成の塩類溶解槽1を適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 塩類溶解槽
2 三室型の電解槽
3 電解槽本体
4 中間室
5 陽極室
6 陰極室
7A,7B イオン交換膜
8 陽極
9 陰極
10 導入管
11 導出管
12 循環ポンプ
13 給水管
14,15 配管
16 未溶解塩類の塊
17 板
18 供給管
19 液面レベルセンサ
20 止水バルブ
21 ノズル(第2管路)
22 ダクト(第1管路)
23 ブロア
24 遮蔽板
25 ノズル開口部
26 板
27 筐体
28 電気基板
29 ファン
30,31 貫通穴
32 排気口
P,Q,R 部屋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩類溶解水を貯留する塩類溶解槽であって、該塩類溶解水を電解して電解水を生成する電解槽との間で該塩類溶解水を循環させる循環路を備えた前記塩類溶解槽において、
前記塩類溶解槽の外部に配置されたブロアと、
前記塩類溶解槽の外部にて前記ブロアの吐出口に連結された第1管路と、
前記塩類溶解槽の前記塩類溶解水が浸からない上部空間から前記第1管路の内部へ延在している第2管路と、
をさらに備えたことを特徴とする塩類溶解槽。
【請求項2】
請求項1に記載の塩類溶解槽において、
前記第1管路の内部に出ている前記第2管路の先端は、
前記第2管路の、前記ブロアの吐出口側の側壁から前記第1管路の内部へ延出し、前記第2管路の内側流路に対して前記ブロアからの風を遮る遮蔽板と、
該遮蔽板の、前記ブロアの吐出口側とは反対側に設けられた前記第2管路の開口部とを有することを特徴とする塩類溶解槽。
【請求項3】
請求項2に記載の塩類溶解槽において、
前記遮蔽板は、前記ブロアの吐出口側とは反対の方向に斜めに延びていることを特徴とする塩類溶解槽。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の塩類溶解槽において、
前記第1管路の風出口の前に、該風出口からの気体の流れを遮る向きで配置された板をさらに備えたことを特徴とする塩類溶解槽。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の塩類溶解槽において、
前記塩類溶解槽の前記塩類溶解水が浸からない上部空間に面した壁に、前記塩類溶解槽内に塩類を追加補充するときだけ開放される塩類投入口が設けられていることを特徴とする塩類溶解槽。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の塩類溶解槽において、
前記塩類溶解水に溶解される塩類はハロゲン化物イオンを含有する塩類であることを特徴とする塩類溶解槽。
【請求項7】
請求項6に記載の塩類溶解槽において、
前記塩類が塩化ナトリウムもしくは塩化カリウムであることを特徴とする塩類溶解槽。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の塩類溶解槽と、
前記塩類溶解槽から供給される塩類溶解水を直接又は希釈して電解する電解槽と、
を備えた電解装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電解装置において、
前記電解槽が三室型であることを特徴とする電解装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−46773(P2012−46773A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187133(P2010−187133)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】