説明

塵芥収集車

【課題】 全体的に低騒音で、積込装置や排出装置を適切な速度で動作させることができる塵芥収集車を提供する。
【解決手段】 油圧ポンプ22を駆動する交流モータ67の回転数を制御装置69により制御して、積込装置70を駆動するときは「中速」、投入箱駆動装置71を駆動するときは「低速」、排出板駆動装置72を駆動するときは「高速」の設定とする。これにより、油圧ポンプ22の吐出量を、駆動する装置に応じて変化させ、各装置を適切な速度で動作させる。また、それにより、無駄な油圧エネルギーを生じさせる必要がないため、全体的に低騒音となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ごみや粗大ごみ等の塵芥を効率よく積み込み、かつ、これをまとめて排出する機能を備えた塵芥収集車に関する。
【背景技術】
【0002】
塵芥収集車は、塵芥投入箱に投入された塵芥を効率よく塵芥収容箱に積み込むための積込装置と、塵芥収容箱に積み込まれた塵芥をまとめて排出する排出装置とを備えている。また、この排出装置は例えば、塵芥投入箱を上方に回動させて塵芥収容箱を開く投入箱駆動装置と、塵芥収容箱に積み込まれた塵芥を排出板の移動により押し出す排出板駆動装置とによって構成されている(例えば、特許文献1参照。)。積込装置、投入箱駆動装置及び排出板駆動装置の各シリンダには、共通の油圧ポンプから油圧が供給される。
【0003】
【特許文献1】実公昭63−23364号公報(第2〜第3頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の塵芥収集車では、積込装置、投入箱駆動装置及び排出板駆動装置の各シリンダに所望の速度で動作をさせるための油の最適流量が異なり、理想的には、投入箱駆動装置<積込装置<排出板駆動装置の順となる。ここで、最も流量の多い排出板駆動装置に合わせて油圧ポンプの吐出量を設定すると、積込装置や投入箱駆動装置については余分な圧油をリリーフ弁等によって逃がすような油圧回路を構成する必要がある。ところが、圧油を逃がす際の流体摩擦等による騒音や、油圧ポンプの騒音が生じ、しかも、積込装置は使用頻度が最も高いので、騒音が頻繁に発生する。このため、現実的には、このような油圧回路は採用し難い。他方、最も使用頻度の高い積込装置に合わせて油圧ポンプの吐出量を設定すると、排出板駆動装置は動作が遅くなる。
上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、全体的に低騒音で、積込装置や排出装置を適切な速度で動作させることができる塵芥収集車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の塵芥収集車は、塵芥収容箱と、前記塵芥収容箱に連接して設けられた塵芥投入箱と、電動モータと、前記電動モータにより駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプの油圧に基づいて、前記塵芥投入箱に投入された塵芥を前記塵芥収容箱に積み込む動作を行う積込装置と、前記油圧ポンプの油圧に基づいて、前記塵芥収容箱に収容された塵芥を排出するための動作を行う排出装置と、前記積込装置及び排出装置にそれぞれ動作開始信号を与える操作手段と、前記動作開始信号により開始される動作に対応した回転数で前記電動モータを回転させる制御装置とを備えたものである。
上記のように構成された塵芥収集車においては、制御装置によって、開始される動作に対応した回転数で電動モータを回転させることにより、油圧ポンプの吐出量を、駆動する装置に応じて変化させ、各装置を適切な速度で動作させることができる。また、それにより、無駄な油圧エネルギーを生じさせる必要がないため、全体的に低騒音となる。
【0006】
また、上記塵芥収集車において、排出装置は、塵芥投入箱を塵芥収容箱に対して開閉動作させる投入箱駆動装置を含み、制御装置は、電動モータの回転数を、積込装置の動作時よりも、投入箱駆動装置の動作時に小さくするようにしてもよい。
この場合、塵芥収容箱に対して塵芥投入箱を、ゆっくりと開動作させることができる。従って、開動作する塵芥投入箱と作業者との接触を防止して、より一層安全を確保することができる。
【0007】
また、上記塵芥収集車において、排出装置は、収容した塵芥を排出板の移動により押し出す排出板駆動装置を含み、制御装置は、電動モータの回転数を、積込装置の動作時よりも、排出板駆動装置の動作時に大きくするようにしてもよい。
この場合、迅速な排出動作及び、排出完了からの戻り動作を実現することができ、作業能率が改善される。
【0008】
また、上記塵芥収集車において、排出装置は、収容した塵芥を塵芥収容箱のダンプ動作により排出する収容箱駆動装置を含み、制御装置は、電動モータの回転数を、積込装置の動作時よりも、収容箱駆動装置の動作時に小さくするようにしてもよい。
この場合、比較的低速なダンプ動作により、最大ダンプ角度における塵芥収容箱の慣性力を小さく抑えることができる。従って、例えば複雑な2段階ダンプ制御を行わなくても、安全なダンプ動作及び戻り動作を行わせることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塵芥収集車によれば、制御装置によって、開始される動作に対応した回転数で電動モータを回転させることにより、油圧ポンプの吐出量を、駆動する装置に応じて変化させ、各装置を適切な速度で動作させることができる。また、それにより、無駄な油圧エネルギーを生じさせる必要がないため、全体的に低騒音となる。こうして、全体的に低騒音で、積込装置や排出装置を適切な速度で動作させることができる塵芥収集車を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の第1の実施形態による塵芥収集車を示す側断面図である。この塵芥収集車は、積込動作に圧縮行程を有するプレス式で、排出が押し出し式の構成である。
図において、この塵芥収集車1は、塵芥収容箱2と、その後部に連接する塵芥投入箱(テールゲートともいう。)3とを備えている。塵芥投入箱3の後方には、塵芥が投入される投入口3aが形成されており、また、この投入口3aを、上下にスライドして開閉する蓋3bが設けられている。塵芥投入箱3の前方下部には、塵芥を塵芥収容箱2に積み込むための開口部3dが形成されている。塵芥投入箱3は、上部に設けられた支点Pを中心に回動可能であり、これによって塵芥収容箱2に対しての開閉動作が可能である。塵芥投入箱3は、図の実線で示す位置では塵芥収容箱2を閉鎖し、図の二点鎖線で示すように上方へ回動したときは塵芥収容箱2を開放して塵芥を排出することができる状態とする。
【0011】
次に、塵芥投入箱3内に設けられている積込装置70について説明する。まず、塵芥投入箱3の左右の側壁3cには斜め上下に延びるガイドレール4が設けられており、スライダ5に取り付けられた左右一対二組のローラ6は、このガイドレール4内を斜め上下に移動することができる。スライダ5は、図示のような側面形状の左右の部材間を車幅方向に延びるプレート等(図示せず。)により接続して一体化したものである。また、スライダ5の下端部には、ピン7を介して押込板8が回動自在に取り付けられている。押込板8もまた、図示のような側面形状の左右の部材間を車幅方向に延びるプレート等(図示せず。)により接続して一体化したものである。
【0012】
一方、プッシュシリンダ9のシリンダ側端部はピン10により側壁3cに取り付けられており、ピストン側端部はピン11により、スライダ5の上端部に接続されている。他方、プレスシリンダ12のシリンダ側端部はピン13により押込板8に接続されており、ピストン側端部は上記ピン11により、スライダ5の上端部に接続されている。スライダ5は押込板8と共に、プッシュシリンダ9の伸長動作により斜めに上昇し、収縮動作により斜めに下降する。これによりスライダ5は、後述する一次圧縮及び押込に対応した往復動が可能である。また、押込板8は、プレスシリンダ12の伸長動作によりピン7を中心として時計回り方向に回動し、収縮動作により反時計回り方向に回動する。これにより押込板8は、後述する反転及び二次圧縮に対応した往復回動が可能である。
【0013】
図2の(a)は、図1から押込板8、プッシュシリンダ9及びプレスシリンダ12のみを抜き出した動作説明図である(但し、図面を見易くするためプッシュシリンダ9の位置を少しずらしている。)。押込板8は、(a)に示す位置を原位置として、プレスシリンダ12が収縮動作することにより「反転」の行程を行い、(b)に示す状態となる。次に押込板8は、プッシュシリンダ9が収縮動作することにより「一次圧縮」の行程を行い、(d)に示す状態となる。続いて押込板8は、プレスシリンダ12が伸長動作することにより「二次圧縮」の行程を行い、(c)に示す状態となる。最後に押込板8は、プッシュシリンダ9が伸長動作することにより「押込」の行程を行い、(a)に示す状態に戻る。このようにしてプッシュシリンダ9及びプレスシリンダ12が交互に動作することにより、押込板8は、1サイクルの行程動作(反転、一次圧縮、二次圧縮、押込)を行う。押込板8の先端部8aは、図示のように、動作軌跡が4点を結ぶ閉じた形状を描く。
【0014】
上記プッシュシリンダ9及びプレスシリンダ12の近傍には、それらの伸縮動作が伸長端及び収縮端に達したことをそれぞれ検知する近接スイッチ(14,15,16,17)が設けられている。第1近接スイッチ14は、プッシュシリンダ9の動作が伸長端に達したことを検知する。第2近接スイッチ15は、プレスシリンダ12に取り付けられたドグ12aを検知することにより、その動作が収縮端に達したことを検知する。第3近接スイッチ16は、プッシュシリンダ9の動作が収縮端に達したことを検知する。そして、第4近接スイッチ17は、プレスシリンダ12の動作が伸長端に達したことを検知する。なお、第1近接スイッチ14及び第3近接スイッチ16は塵芥投入箱3に対して固定的に取り付けられているが、第2近接スイッチ15及び第4近接スイッチ17はスライダ5側に取り付けられており、プッシュシリンダ9の伸縮動作に伴って移動する。
【0015】
図1に戻り、塵芥収容箱2の内部には、車体の前後方向に移動可能に排出板18が設けられている。テレスコ式のディスチャージシリンダ19の一端部19aは排出板18に接続され、他端部19bは塵芥収容箱2に接続されている。排出板18は、ディスチャージシリンダ19の伸縮により、図の実線で示す位置から二点鎖線で示す位置までの範囲で移動可能である。塵芥が空のとき排出板18は実線で示す位置にあり、その後方に塵芥を積み込む空間Sが確保されている。
上記ディスチャージシリンダ19は、これに接続された後述の油圧機器と共に、塵芥収容箱2に収容された塵芥を、排出板18の後方への移動により押し出す「排出板駆動装置」を構成している。
【0016】
図3は、塵芥収集車1の背面図である。塵芥投入箱3の左右両端に配置された一対のスイングシリンダ20は、上端が塵芥収容箱2(図1)側に取り付けられ、下端が塵芥投入箱3に取り付けられている。このスイングシリンダ20を伸長動作させると塵芥投入箱3が上方へ回動して塵芥収容箱2を開き、収縮動作するとこれを閉じる。
上記スイングシリンダ20は、これに接続された後述の油圧機器と共に、塵芥投入箱3を塵芥収容箱2に対して開閉動作させる「投入箱駆動装置」を構成している。
【0017】
図4は、上記プッシュシリンダ9、プレスシリンダ12、ディスチャージシリンダ19及びスイングシリンダ20に関する油圧回路図である。当該油圧回路は、タンク21、油圧ポンプ22、圧力制御弁23,28,29,30,33、プッシュシリンダ用電磁弁24、プレスシリンダ用電磁弁25、ディスチャージシリンダ用電磁弁26、スイングシリンダ用電磁弁(テールゲートロック用電磁弁を兼用。)27、切換弁31,32、逆止弁34〜39,43、フィルタ40,41、テールゲートロック(シリンダ)42及び圧力センサ44を図示のように接続して構成されている。圧力センサ44は、油圧ポンプ22の吐出油路の作動圧を常時検出し、その検出出力を後述のコントローラ(50)に提供する。
【0018】
押込板8が原位置(図2の(a))に停止しているとき、プッシュシリンダ9及びプレスシリンダ12は共に伸長状態にあり、対応する各電磁弁24,25は中立位置にある。プレスシリンダ用電磁弁25のソレノイド25sが励磁されると「反転」、ソレノイド25eが励磁されると「二次圧縮」、プッシュシリンダ用電磁弁24のソレノイド24sが励磁されると「一次圧縮」、ソレノイド24eが励磁されると「押込」、の各動作が行われる。
【0019】
また、排出板18が最も前進して停止しているとき(図1の実線)、ディスチャージシリンダ19は最も伸長した状態にあり、ディスチャージシリンダ用電磁弁26は中立位置にある。ディスチャージシリンダ用電磁弁26のソレノイド26eが励磁されると、ディスチャージシリンダ19は伸長動作する。また、ソレノイド26sが励磁されると、ディスチャージシリンダ19は収縮動作する。励磁オフでディスチャージシリンダ用電磁弁26が中立位置にあるときは、ディスチャージシリンダ19の両ポート19e,19sは封止された状態となる。但し、圧力制御弁29や切換弁31が開位置に動作すれば、ディスチャージシリンダ用電磁弁26が中立位置であってもディスチャージシリンダ19が収縮可能となり、排出板18は後退可能となる。
【0020】
また、塵芥投入箱3が閉鎖されているとき(図1の実線)、スイングシリンダ20は最も収縮した状態にあり、スイングシリンダ用電磁弁27は中立位置にあり、切換弁32は図示の位置にある。スイングシリンダ用電磁弁27のソレノイド27eが励磁されるとテールゲートロック42がロック解除方向に動作し、スイングシリンダ20が伸長動作して塵芥投入箱3が上方回動する。ソレノイド27eが消磁され、かつ、切換弁32が励磁されると、塵芥投入箱3の自重によりスイングシリンダ20内の作動油が切換弁32及びスイングシリンダ用電磁弁27を介してタンク21に戻され、これにより、スイングシリンダ20が収縮動作して塵芥投入箱3が下方回動する。また、塵芥投入箱3が下方回動端に達した後、スイングシリンダ用電磁弁27のソレノイド27sが励磁されると、テールゲートロック42がロック動作し、塵芥投入箱3がロックされる。その後、ソレノイド27sは消磁されるが、逆止弁43によりテールゲートロック42のロック状態は維持される。
【0021】
図5は、上記各シリンダを動作させるための制御ブロック図である。各ソレノイド24e,24s,25e,25s,26e,26s,27e,27s及び切換弁32は、コントローラ50によって励磁・消磁される。なお、各ソレノイド等のブロックの名称は、機能で表示している。コントローラ50には、図示の各機能スイッチ(SWと表記。以下同様。)51〜59及び、前述の第1〜第4近接スイッチ14〜17から入力信号が与えられる。また、メインランプ60及びロックランプ61がコントローラ50の出力により点灯する。
【0022】
上記各機能スイッチのうち、メインスイッチ51、テールゲートスイッチ52、かき出しスイッチ53、排出板スイッチ54、メインランプ60及びロックランプ61は、図6に示す、運転席(キャブ)のスイッチボックスSB1に設けられている。図6において、メインスイッチ51は、「積込」、「OFF」、「排出」のいずれかの位置に保持することができるスイッチであり、「OFF」から「積込」位置に操作することで積込動作が可能である。「排出」位置ではディスチャージシリンダ19やスイングシリンダ20を動作させることができる。テールゲートスイッチ52は、「上」に操作すると塵芥投入箱3が上昇し、「下」に操作すると下降する。また、手を離すと「OFF」の中立位置に戻るタイプのスイッチである。排出板スイッチ54は、「排出」に操作するとディスチャージシリンダ19が伸長動作して排出板18が後退し、「戻り」に操作すると排出板18が原位置に戻る。また、手を離すと「OFF」の中立位置に戻るタイプのスイッチである。
【0023】
かき出しスイッチ53は、「自動」又は「手動」の選択スイッチであり、「自動」位置では、塵芥投入箱3を上方端まで回動させると自動的に積込と同様の動作が行われ、塵芥投入箱3の底に残っている塵芥を排出することができる。メインランプ60は、スイッチボックスSB1の各スイッチ操作が可能な状態のとき点灯している。ロックランプ61は、前述のテールゲートロック42がロック状態のとき点灯している。
【0024】
一方、図3において、車体後方の左側部及び右側部にそれぞれ、スイッチボックスSB2及びSB3が設けられている。スイッチボックスSB2の正面には、積込動作を開始させるための積込スイッチ55、積込動作を停止させるための停止スイッチ57、上昇スイッチ58、反転スイッチ59、連絡ブザー62が、側面には積込動作の「連続」又は「1サイクル」のどちらかを選択するための連単切換スイッチ56がそれぞれ設けられている。なお、停止スイッチ57は右側のスイッチボックスSB3にも設けられている。上昇スイッチ58、反転スイッチ59、連絡ブザー62については、緊急時にのみ用いるスイッチ等であり、詳細な説明は省略する。
【0025】
次に、上記油圧ポンプ22を駆動する塵芥収集車のシステム構成について、図7のブロック図を参照して説明する。ここまで説明した構造を、油圧ポンプ22とその負荷として簡略化してみると、負荷とは、塵芥投入箱3に投入された塵芥を塵芥収容箱2に積み込む動作を行う積込装置70と、塵芥投入箱3を塵芥収容箱2に対して開閉動作(上下回動)させる投入箱駆動装置71と、収容した塵芥を排出板18の移動により押し出す排出板駆動装置72とである。なお、投入箱駆動装置71及び排出板駆動装置72は、塵芥収容箱2に収容された塵芥を排出するための動作を行う点では共通しており、両者で排出装置73を構成しているともいえる。
【0026】
一方、塵芥収集車のエンジン63には、発電機64が接続されている。発電機64の出力電圧は、整流器65を介してインバータ66(ゲート制御回路も含む。)に供給される。インバータ66には、油圧ポンプ22を駆動するための交流モータ(誘導電動機)67が接続されている。交流モータ67は回転数センサ68を備えており、その出力は前述のコントローラ50に入力される。また、コントローラ50には、前述のようにメインスイッチ51、積込スイッチ55、テールゲートスイッチ52、排出板スイッチ54、停止スイッチ57等から操作信号、及び、圧力センサ44から油圧ポンプ22の吐出側管路の油圧に相当する信号がそれぞれ入力される。コントローラ50及びインバータ66は、これらの信号に基づいて、回転数センサ68の出力をフィードバック信号として用いながら、交流モータ67の回転数制御を行う制御装置69を構成している。塵芥の積込、塵芥投入箱3の駆動、排出板18の駆動は、エンジン63を例えばアイドリング状態として、そのときの発電機64の出力電圧を整流した直流電圧を、インバータ66により、コントローラ50から指示された周波数の交流電圧に変換して交流モータ67に供給し、これにより油圧ポンプ22を運転して圧油を供給することにより行われる。
【0027】
次に、上記積込装置70、投入箱駆動装置71及び排出板駆動装置72の動作に関してコントローラ50により行われる制御内容について、図8及び図9のフローチャートを参照して説明する。図8及び図9は1つのフローチャートを2枚の図に分けたもので、図中のA,Bで相互につながっている。まず、積込装置70が動作する場合の処理の流れについて説明する。積込装置70を動作させる場合、メインスイッチ51は「積込」位置に操作される。
【0028】
図8のステップS1においてコントローラ50は、メインスイッチ51が「積込」か否かを判定し、ここでは「積込」であるのでステップS2に進む。ステップS2においてコントローラ50は、積込スイッチ55を有効(入力を受け付ける。)、テールゲートスイッチ52及び排出板スイッチ54を共に無効(入力を受け付けない。)とする。この状態で、積込スイッチ55がオン操作(プッシュ)されるのを待ち(S1〜S3の繰り返し。)、オン操作されると、コントローラ50は、インバータ66に所定の周波数の交流電力を出力させ、これによりインバータ66を含む制御装置69は、交流モータ67を「中速」に相当する所定の回転数N2で回転させる(ステップS4)。
【0029】
この状態からコントローラ50は積込装置70を作動開始させ、積込装置70により前述の積込のサイクル動作が行われる(ステップS5)。動作開始直後は通常、停止スイッチ57はオン操作されていないためコントローラ50はステップS6からS7に進み、1サイクルが終了するのを待ち(ステップS7のノーでS5〜S7の繰り返し。)、1サイクル終了するとステップS8に進んで積込モードが「連続」か否かを判定する。この積込モードとは、連単切換スイッチ56(図3,図5)の設定であり、「連続」の場合には、処理はステップS5に戻って、以後、停止スイッチ57が停止操作されるまで積込装置70の連続動作が行われる。停止操作が行われた場合、又は、ステップS8において「連続」でなかった場合には、コントローラ50は、積込装置70を動作停止として(ステップS9)、ステップS1に戻る。
【0030】
上記積込装置70の動作中における交流モータ67の回転数制御は、図10のPQ線図従って行われる。図10において、横軸は圧力センサ44によって検出される作動圧P[Pa]を表し、縦軸は油圧ポンプ22の吐出量Q[m/秒]を表す。なお、吐出量Qは油圧ポンプ22の回転数すなわち交流モータ67の回転数に比例する。PQ線図には、3つのパターンがあるが、積込装置70に対しては、図中に「積込装置」と表示した中速設定に従って回転数制御が行われる。
【0031】
具体的には、圧力センサ44から入力される信号によって表される作動圧をP[Pa]、回転数センサ68から入力される信号によって表される回転数を吐出量換算してQ[m/秒]とすると、P≦P2(10.8MPa)のとき、Q=Q2(0.83×10−3/秒(50リットル/分))とする。従って、前述の回転数N2とは、この吐出量Q2が得られる油圧ポンプ22の回転数であり、交流モータ67の回転数である。このような中速設定の制御により、積込装置70の動作に最適の吐出量を提供することができる。
【0032】
なお、作動圧PがP2を超えると、作動圧Pの増大に反比例して吐出量(回転数)を減少させる。これにより吐出量減少中の出力PQは一定値となる。
すなわち、P=P2のときの出力はP2・Q2であり、図に示す数値より以下の値となる。これは、中速設定における最大出力でもある。
P2・Q2=10.8×10×0.83×10−3
=9.0×10[W]=9.0[kW]
従って、P2<PのときのQは、
Q=(9.0×10)/P ...(1)
と表され、制御装置69は、この式(1)のQに相当する回転数で交流モータ67を回転させる。但し、作動圧PがP3(18MPa)に達したときは、コントローラ50は交流モータ67を停止させる。
【0033】
次に、投入箱駆動装置71が動作する場合の処理の流れについて説明する。投入箱駆動装置71を動作させる場合、メインスイッチ51は「排出」位置に操作される。
図8のステップS1においてコントローラ50は、メインスイッチ51が「積込」か否かを判定し、ここではノーであるので図9のステップS10に進む。ステップS10においてコントローラ50は、メインスイッチ51が「排出」か否かを判定し、ここではイエスであるのでステップS11に進む。ステップS11においてコントローラ50は、積込スイッチ55を無効、テールゲートスイッチ52及び排出板スイッチ54を共に有効とする。この状態でコントローラ50は、テールゲートスイッチ52又は排出板スイッチ54がオン操作されるのを待ち(S13,S20の繰り返し。)、ステップS13においてテールゲートスイッチ52が「上」又は「下」に操作されると、同時動作を防止すべく排出板スイッチ54を無効とする(ステップS14)。そして、コントローラ50は、インバータ66に所定の周波数の交流電力を出力させ、これによりインバータ66を含む制御装置69は、交流モータ67を「低速」に相当する所定の回転数N1で回転させる(ステップS15)。
【0034】
この状態からコントローラ50は投入箱駆動装置71を作動開始させ(ステップS16)、塵芥投入箱3が上方(又は下方)に回動する。そして、テールゲートスイッチ52が「OFF」になると、コントローラ50は、投入箱駆動装置71を動作停止とする(ステップS18)。その後、コントローラ50は排出板スイッチ54を有効として(ステップS19)、ステップS1に戻る。
【0035】
上記投入箱駆動装置71の動作中における交流モータ67の回転数制御は、図10のPQ線図において、図中に「投入箱」と表示した低速設定に従って行われる。
具体的には、圧力センサ44から入力される信号によって表される作動圧をP[Pa]、回転数センサ68から入力される信号によって表される回転数を吐出量換算してQ[m/秒]とすると、P<P3(18MPa)のとき、Q=Q1(0.50×10−3/秒(30リットル/分))とする。従って、前述の回転数N1とは、この吐出量Q1が得られる油圧ポンプ22の回転数であり、交流モータ67の回転数である。このような低速設定の制御により、積込装置70の動作と比較して、塵芥投入箱3の開動作(上方回動)を低速にすることができる。仮に積込装置70と同じ中速設定にした場合には、作業者が、比較的早い速度で開動作(上方回動)する塵芥投入箱3を避けきれず、これと接触する可能性があるが、低速設定では塵芥投入箱3がゆっくりと開動作するため、接触が防止でき、より一層安全性を確保することができる。なお、作動圧PがP3(18MPa)に達したときは、コントローラ50は交流モータ67を停止させる(通常は、このような事態は生じない。)。
【0036】
なお、塵芥投入箱3の閉動作(下方回動)は、切換弁32(図4)を動作させて、作動油をスイングシリンダ20からタンク21に戻すことにより行われるので、例えばスイングシリンダ用電磁弁27の中立位置内に設ける絞りによって調整可能である。
【0037】
次に、排出板駆動装置72が動作する場合の処理の流れについて説明する。排出板駆動装置72を動作させる場合、メインスイッチ51は「排出」位置に操作される。
図8のステップS1においてコントローラ50は、メインスイッチ51が「積込」か否かを判定し、ここではノーであるので図9のステップS10に進む。ステップS10においてコントローラ50は、メインスイッチ51が「排出」か否かを判定し、ここではイエスであるのでステップS11に進む。ステップS11においてコントローラ50は、積込スイッチ55を無効、テールゲートスイッチ52及び排出板スイッチ54を共に有効とする。この状態でコントローラ50は、テールゲートスイッチ52又は排出板スイッチ54がオン操作されるのを待ち(S13,S20の繰り返し。)、ステップS20において排出板スイッチ54が「排出」又は「戻り」に操作されると、同時動作を防止すべくテールゲートスイッチ52を無効とする(ステップS21)。そして、コントローラ50は、インバータ66に所定の周波数の交流電力を出力させ、これによりインバータ66を含む制御装置69は、交流モータ67を「高速」に相当する所定の回転数N3で回転させる(ステップS22)。
【0038】
この状態からコントローラ50は排出板駆動装置72を作動開始させ(ステップS23)、排出板18が移動して塵芥の排出、又は排出完了からの戻り動作が行われる。そして、排出板スイッチ54が「OFF」になると、コントローラ50は、排出板駆動装置72を動作停止とする(ステップS25)。その後、コントローラ50はテールゲートスイッチ52を有効として(ステップS26)、ステップS1に戻る。
【0039】
上記排出板駆動装置72の動作中における交流モータ67の回転数制御は、図10のPQ線図において、図中に「排出板」と表示した高速設定に従って行われる。
具体的には、圧力センサ44から入力される信号によって表される作動圧をP[Pa]、回転数センサ68から入力される信号によって表される回転数を吐出量換算してQ[m/秒]とすると、P≦P1(7.7MPa)のとき、Q=Q3(1.17×10−3/秒(70リットル/分))とする。従って、前述の回転数N3とは、この吐出量Q3が得られる油圧ポンプ22の回転数であり、交流モータ67の回転数である。このような高速設定の制御により、積込装置70の動作と比較して、排出板18の移動を高速にすることができる。仮に積込装置70と同じ中速設定にした場合には、排出動作や戻り動作が遅く、排出に時間がかかるが、高速設定では迅速な排出動作及び戻り動作を実現することができる。
【0040】
なお、作動圧PがP1を超えると、作動圧Pの増大に反比例して吐出量(回転数)を減少させる。これにより吐出量減少中の出力PQは一定値となる。
すなわち、P=P1のときの出力はP1・Q3であり、図に示す数値より以下の値となる。これは、高速設定における最大出力でもある。
P1・Q3=7.7×10×1.17×10−3
=9.0×10[W]=9.0[kW]
従って、P1<PのときのQは、
Q=(9.0×10)/P ...(2)
と表され、制御装置69は、この式(2)のQに相当する回転数で交流モータ67を回転させる。なお、式(2)は、式(1)と同一である。
また、作動圧PがP3(18MPa)に達したときは、コントローラ50は交流モータ67を停止させる。
【0041】
なお、メインスイッチ51が「OFF」の状態であるときは、図8のステップS1において判定はノー、さらに、図9のステップS10においても判定はノーとなり、コントローラ50はステップS12に進む。ここで、コントローラ50は、積込スイッチ55、テールゲートスイッチ52及び排出板スイッチ54をすべて無効とし、以後、メインスイッチ51が「積込」又は「排出」に操作されるのを待つ状態となる。
【0042】
以上のように交流モータ67の回転数すなわち油圧ポンプ22の吐出量を、駆動する装置に応じて変化させる構成により、各装置を適切な速度で動作させることができる。また、それにより、無駄な油圧エネルギーを生じさせる必要がないため、全体的に低騒音となる。従って、全体的に低騒音で、積込装置や排出装置を適切な速度で動作させることができる塵芥収集車を提供することができる。
【0043】
なお、図10のPQ線図に代えて、図11に示すものを用いてもよい。図11に示すPQ線図では、排出板駆動装置72用の高速設定及び積込装置70用の中速設定においても、P<P3の全範囲において、吐出量Qを一定とする。この場合も、各装置を適切な速度で動作させることができる。
但し、図10のPQ線図においては、高速、中速、低速のいずれの設定においても、最大出力は同一値(9kW)であるが、図11のPQ線図では、中速設定及び高速設定の最大出力が低速設定の最大出力(9kW)を上回る。すなわち、高速設定では、
P3・Q3=18×10×1.17×10−3
=21.0×10[W]=21.0[kW]
となる。また、中速設定では、
P3・Q2=18×10×0.83×10−3
=14.9×10[W]=14.9[kW]
となる。従って、高出力モータが必要となり、積込装置70や排出板駆動装置72の負荷が大きくなった場合には、装置の作動音が大きくなる。従って、騒音防止の点では図10のPQ線図による制御が、より好ましい。但し、負荷が大きくならない限りは、図11のPQ線図による制御でも低騒音に寄与する。
【0044】
次に、第2の実施形態による塵芥収集車について説明する。
図12は、第2の実施形態による塵芥収集車の側断面図である。この塵芥収集車は、積込が回転板式で、排出がダンプ式の構成であり、従って、積込装置としての構成及び、排出装置としての構成の一部は第1の実施形態と異なるが、投入箱駆動装置としてのスイングシリンダ20等は、第1の実施形態と同様である。
図において、この塵芥収集車1は、第1の実施形態と同様に、塵芥収容箱2と、塵芥投入箱3とを備え、塵芥投入箱3の後方には、塵芥が投入される投入口3aが形成されており、また、この投入口3aを、上下にスライドして開閉する蓋3bが設けられている。塵芥投入箱3の前方下部には、塵芥を塵芥収容箱2に積み込むための開口部3dが形成されている。塵芥投入箱3は、上部に設けられた支点(図示せず。)を中心に回動可能であり、これによって塵芥収容箱2に対して開閉動作が可能である。
【0045】
図12において、塵芥投入箱3の左右の側壁3cには押込シリンダ81のシリンダ側基端部81aが軸着されており、これにより押込シリンダ81は回動可能である。また、押込板82は、図示のような側面形状の左右の部材間を車幅方向に延びるプレート等(図示せず。)により接続して一体化したものであり、側壁3cに取り付けられた支軸83を中心として回動可能である。押込板82の上端部と押込シリンダ81のピストンロッド先端部とは、ピン84により互いに接続されており、これにより、押込シリンダ81が伸長動作すると、当該押込シリンダ81自身が反時計回り方向に回動しながら押込板82を時計回り方向に回動させ、図の実線で示す状態となる。また、その状態から押込シリンダ81が収縮動作すると、当該押込シリンダ81自身が時計回り方向に回動しながら押込板82を反時計回り方向に回動させ、図の二点鎖線で示す状態となる。
【0046】
一方、図示の側面形状で車幅方向に延びる回転板85は、側壁3cに対して軸周りに回転自在に取り付けられた支軸86を中心に、回転自在である(時計回り方向が通常回転方向である。)。塵芥投入箱3の内部底面3eは、回転板85の先端の回動軌跡に沿って円弧状に形成されている。
【0047】
上記のように構成された積込装置170においては、塵芥投入箱3内に塵芥が投入されると、回転板85は塵芥をかき込みながら図示の位置(ほぼ9時の位置)まで上昇する。そして、回転板85が図示の位置に来たとき、押込板82が二点鎖線の位置から実線の位置まで時計回り方向に回動して、回転板85の上に載っている塵芥を塵芥収容箱2に押し込む。その後、押込板82は、回転板85が12時の位置を超える頃から反時計回り方向に回動し始め、次の押込動作開始までには元の位置に戻っている。このような周期的動作が、1サイクル又は連続サイクルで行われる。
【0048】
一方、塵芥収容箱2の床下にはダンプシリンダ87が設けられており、そのシリンダ側基端部87aは車体フレームFに軸着されている。また、ピストンロッド側先端部87bは塵芥収容箱2の下面に軸着されている。塵芥収容箱2は、支軸88を中心としてダンプ動作(上方へ回動)が可能な構造となっている。第1の実施形態と同様に塵芥投入箱3を上方回動させて塵芥収容箱2を開いた後、収縮動作状態のダンプシリンダ87を伸長動作させると、塵芥収容箱2が支軸88を中心として時計回り方向に回動し、収容した塵芥をダンプ排出することができる。
【0049】
図13は、上記押込シリンダ81、ダンプシリンダ87、スイングシリンダ20及び、回転板85を回転させる油圧モータ89に関する油圧回路図である。当該油圧回路は、タンク21、油圧ポンプ22、押込シリンダ用電磁弁93、油圧モータ用電磁弁94、ダンプシリンダ用電磁弁95、スイングシリンダ用電磁弁(テールゲートロック用電磁弁を兼用。)27、切換弁32、テールゲートロック(シリンダ)42、圧力センサ44、その他圧力制御弁96〜99、逆止弁43,100〜105、フィルタ40等を図示のように接続して構成されている。圧力センサ44は、油圧ポンプ22の吐出油路の作動圧を常時検出し、その検出出力を、第1の実施形態と同様に、コントローラ50に提供する。
【0050】
上記押込板82は、押込シリンダ用電磁弁93のソレノイド93sが励磁されると図12の二点鎖線の位置にあり、ソレノイド93eが励磁されると実線の押込位置にある。油圧モータ89は、油圧モータ用電磁弁94のソレノイド94nが励磁されると正転し、回転板85を図12の時計回り方向に回転させる。ソレノイド94rが励磁されると逆転する。また、ダンプシリンダ87は、ダンプシリンダ用電磁弁95のソレノイド95eが励磁されると伸長動作し、ソレノイド95sが励磁されると収縮動作する。スイングシリンダ20及びテールゲートロック42に関する動作は第1の実施形態と同様である。
【0051】
上記のように構成された第2の実施形態の塵芥収集車1は、第1の実施形態と同様に、各ソレノイド27e,27s,93e,93s,94n,94r,95e,95s及び切換弁32が、コントローラ50によって励磁・消磁されることにより、積込(回転+押込)、投入箱駆動(回動)、収容箱駆動(ダンプ)の各動作が行われる。回転板85と押込板82との同期は、それぞれの位置を位置センサ(リミットスイッチ、近接スイッチ等)で検出して、コントローラ50により、回転板85の動きに押込板82を同期させる形で制御が行われる。
【0052】
また、操作スイッチ類も第1の実施形態とほぼ同様に設けられており、このうち、メインスイッチ51、テールゲートスイッチ52、かき出しスイッチ53、排出板スイッチ54、メインランプ60及びロックランプ61は、図14に示す、運転席(キャブ)のスイッチボックスSB1に設けられている。図6との違いは、排出板スイッチ54(図6)に代えてダンプスイッチ110が設けられている点である。ダンプスイッチ110は、「上」に操作すると塵芥収容箱3がダンプ動作し、「下」に操作すると戻る。また、手を離すと「OFF」の中立位置に戻るタイプのスイッチである。
【0053】
次に、上記油圧ポンプ22を駆動する第2の実施形態による塵芥収集車のシステム構成について、図15のブロック図を参照して説明する。図7との違いは、油圧ポンプ22の負荷が、塵芥投入箱3に投入された塵芥を塵芥収容箱2に積み込む動作を行う回転板式の積込装置170と、塵芥投入箱3を塵芥収容箱2に対して開閉動作(上下回動)させる投入箱駆動装置171(これは第1の実施形態の投入箱駆動装置71と実質的に同じ。)と、収容した塵芥をダンプ動作により排出する収容箱駆動装置172とである点、及び、コントローラ50への入力として排出板スイッチ54(図7)に代えてダンプスイッチ110を設けた点である。なお、投入箱駆動装置171及び収容箱駆動装置172は、塵芥収容箱2に収容された塵芥を排出するための動作を行う点では共通しており、両者で排出装置173を構成しているともいえる。
【0054】
次に、上記積込装置170、投入箱駆動装置171及び収容箱駆動装置172の動作に関してコントローラ50により行われる制御内容について、図16及び図17のフローチャートを参照して説明する。図16及び図17は1つのフローチャートを2枚の図に分けたもので、図中のA,Bで相互につながっている。まず、積込装置170が動作する場合の処理の流れについて説明する。積込装置170を動作させる場合、メインスイッチ51は「積込」位置に操作される。
【0055】
図16のステップS1においてコントローラ50は、メインスイッチ51が「積込」か否かを判定し、ここでは「積込」であるのでステップS2に進む。ステップS2においてコントローラ50は、積込スイッチ55を有効、テールゲートスイッチ52及びダンプスイッチ110を共に無効とする。この状態で、積込スイッチ55がオン操作されるのを待ち(S1〜S3の繰り返し。)、オン操作されると、コントローラ50は、インバータ66に所定の周波数の交流電力を出力させ、これによりインバータ66を含む制御装置69は、交流モータ67を「中速」に相当する所定の回転数N2で回転させる(ステップS4)。
【0056】
この状態からコントローラ50は積込装置170を作動開始させ、積込装置170により前述の積込のサイクル動作が行われる(ステップS5)。動作開始直後は通常、停止スイッチ57はオン操作されていないためコントローラ50はステップS6からS7に進み、1サイクルが終了するのを待ち(ステップS7のノーでS5〜S7の繰り返し。)、1サイクル終了するとステップS8に進んで積込モードが「連続」か否かを判定する。この積込モードとは、連単切換スイッチ56の設定であり、「連続」の場合には、処理はステップS5に戻って、以後、停止スイッチ57が停止操作されるまで積込装置170の連続動作が行われる。停止操作が行われた場合、又は、ステップS8において「連続」でなかった場合には、コントローラ50は、積込装置170を動作停止として(ステップS9)、ステップS1に戻る。
【0057】
上記積込装置170の動作中における交流モータ67の回転数制御は、図18のPQ線図従って行われる。図18において、横軸は圧力センサ44によって検出される作動圧P[Pa]を表し、縦軸は油圧ポンプ22の吐出量Q[m/秒]を表す。なお、吐出量Qは油圧ポンプ22の回転数すなわち交流モータ67の回転数に比例する。PQ線図には、2つのパターンがあるが、積込装置170に対しては、図中に「積込装置」と表示した中速設定に従って回転数制御が行われる。
【0058】
具体的には、圧力センサ44から入力される信号によって表される作動圧をP[Pa]、回転数センサ68から入力される信号によって表される回転数を吐出量換算してQ[m/秒]とすると、図10の積込装置のPQ線図と同様に、P≦P2(10.8MPa)のとき、Q=Q2(0.83×10−3/秒(50リットル/分))とする。従って、前述の回転数N2とは、この吐出量Q2が得られる油圧ポンプ22の回転数であり、交流モータ67の回転数である。このような中速設定の制御により、積込装置170の動作に最適の吐出量を提供することができる。
【0059】
なお、作動圧PがP2を超えると、作動圧Pの増大に反比例して吐出量(回転数)を減少させる。これにより吐出量減少中の出力PQは一定値となる。この点も、図10の積込装置のPQ線図と同様であり、また、作動圧PがP3(18MPa)に達したときは、コントローラ50は交流モータ67を停止させる。
【0060】
次に、投入箱駆動装置171が動作する場合の処理の流れについて説明する。投入箱駆動装置171を動作させる場合、メインスイッチ51は「排出」位置に操作される。
図16のステップS1においてコントローラ50は、メインスイッチ51が「積込」か否かを判定し、ここではノーであるので図17のステップS10に進む。ステップS10においてコントローラ50は、メインスイッチ51が「排出」か否かを判定し、ここではイエスであるのでステップS11に進む。ステップS11においてコントローラ50は、積込スイッチ55を無効、テールゲートスイッチ52及びダンプスイッチ110を共に有効とする。この状態でコントローラ50は、テールゲートスイッチ52又はダンプスイッチ110がオン操作されるのを待ち(S13,S20の繰り返し。)、ステップS13においてテールゲートスイッチ52が「上」又は「下」に操作されると、同時動作を防止すべくダンプスイッチ110を無効とする(ステップS14)。そして、コントローラ50は、インバータ66に所定の周波数の交流電力を出力させ、これによりインバータ66を含む制御装置69は、交流モータ67を「低速」に相当する所定の回転数N1で回転させる(ステップS15)。
【0061】
この状態からコントローラ50は投入箱駆動装置171を作動開始させ(ステップS16)、塵芥投入箱3が上方(又は下方)に回動する。そして、テールゲートスイッチ52が「OFF」になると、コントローラ50は、投入箱駆動装置171を動作停止とする(ステップS18)。その後、コントローラ50はダンプスイッチ110を有効として(ステップS19)、ステップS1に戻る。
【0062】
上記投入箱駆動装置171の動作中における交流モータ67の回転数制御は、図18のPQ線図において、図中に「ダンプ 投入箱」と表示した低速設定に従って行われる。
具体的には、圧力センサ44から入力される信号によって表される作動圧をP[Pa]、回転数センサ68から入力される信号によって表される回転数を吐出量換算してQ[m/秒]とすると、P<P3(18MPa)のとき、Q=Q1(0.50×10−3/秒(30リットル/分))とする。従って、前述の回転数N1とは、この吐出量Q1が得られる油圧ポンプ22の回転数であり、交流モータ67の回転数である。このような低速設定の制御により、積込装置170の動作と比較して、塵芥投入箱3の開動作(上方回動)を低速にすることができる。これにより、第1の実施形態と同様に、優れた安全性を確保することができる。なお、作動圧PがP3(18MPa)に達したときは、コントローラ50は交流モータ67を停止させる(通常は、このような事態は生じない。)。
【0063】
次に、収容箱駆動装置172が動作する場合の処理の流れについて説明する。収容箱駆動装置172を動作させる場合、メインスイッチ51は「排出」位置に操作される。
図16のステップS1においてコントローラ50は、メインスイッチ51が「積込」か否かを判定し、ここではノーであるので図17のステップS10に進む。ステップS10においてコントローラ50は、メインスイッチ51が「排出」か否かを判定し、ここではイエスであるのでステップS11に進む。ステップS11においてコントローラ50は、積込スイッチ55を無効、テールゲートスイッチ52及びダンプスイッチ110を共に有効とする。この状態でコントローラ50は、テールゲートスイッチ52又はダンプスイッチ110がオン操作されるのを待ち(S13,S20の繰り返し。)、ステップS20においてダンプスイッチ110が「上」又は「下」に操作されると、同時動作を防止すべくテールゲートスイッチ52を無効とする(ステップS21)。そして、コントローラ50は、インバータ66に所定の周波数の交流電力を出力させ、これによりインバータ66を含む制御装置69は、交流モータ67を「低速」に相当する所定の回転数N1で回転させる(ステップS22)。
【0064】
この状態からコントローラ50は収容箱駆動装置172を作動開始させ(ステップS23)、塵芥収容箱2がダンプ動作して塵芥の排出、又は排出完了からの戻り動作が行われる。そして、ダンプスイッチ110が「OFF」になると、コントローラ50は、収容箱駆動装置172を動作停止とする(ステップS25)。その後、コントローラ50はテールゲートスイッチ52を有効として(ステップS26)、ステップS1に戻る。
【0065】
上記収容箱駆動装置172の動作中における交流モータ67の回転数制御は、図18のPQ線図において、図中に「ダンプ 投入箱」と表示した低速設定に従って、前述の投入箱駆動装置171の場合と同様に行われる。
このような低速設定の制御により、積込装置170の動作と比較して、ダンプ動作を低速にすることができる。仮に積込装置170と同じ中速設定又はそれ以上にした場合には、比較的速いダンプ動作が行われ、短時間で最大ダンプ角度(例えば約45度)に達する。ところが、最大ダンプ角度に達するまでに塵芥が順調に排出されなかった場合には、重心の後方移動に加えて、塵芥収容箱2が傾動停止した瞬間の慣性力により車両全体の重量バランスが後方に大きく偏り、車両が後転することがある。このような事態を避けるべく、従来、ダンプ中間角度で一旦ダンプ動作を中断し、再操作でさらに最大ダンプ角度まで傾動するようないわゆる2段階ダンプ制御を行わせていたが、本実施形態のような低速設定では元々慣性力が小さく、上記のような事態を生じないので、複雑な2段階ダンプ制御を行わなくても、安全なダンプ動作及び戻り動作を行わせることができる。
【0066】
以上のように交流モータ67の回転数すなわち油圧ポンプ22の吐出量を、駆動する装置に応じて変化させる構成により、各装置を適切な速度で動作させることができる。また、それにより、無駄な油圧エネルギーを生じさせる必要がないため、全体的に低騒音となる。従って、全体的に低騒音で、積込装置や排出装置を適切な速度で動作させることができる塵芥収集車を提供することができる。
【0067】
なお、図18のPQ線図に代えて、図19に示すものを用いてもよい。図19に示すPQ線図では、積込装置170用の中速設定においても、P<P3の全範囲において、吐出量Qを一定とする。この場合も、各装置を適切な速度で動作させることができる。
一方、図18のPQ線図においては、中速、低速のいずれの設定においても、最大出力は同一値(9kW)であるが、図19のPQ線図では、中速設定の最大出力が低速設定の最大出力(9kW)を上回る。すなわち、中速設定では、
P3・Q2=18×10×0.83×10−3
=14.9×10[W]=14.9[kW]
となる。従って、高出力モータが必要となり、積込装置170の負荷が大きくなった場合には、装置の作動音が大きくなる。従って、騒音防止の点では図18のPQ線図が、より好ましい。但し、負荷が大きくならない限りは、図19のPQ線図による制御でも低騒音に寄与する。
【0068】
なお、上記各実施形態では交流モータ67を用いたが、交流モータに限らず電動モータであれば使用可能であり、例えばブラシレス直流モータを用いて、コントローラ50に駆動されるインバータ66によって電圧・電流を変化させることにより、モータの回転数制御を行うことも可能である。
また、図10,11,18,19に示すPQ線図における圧力設定や吐出量設定は一例にすぎず、設定値は必要に応じて選択することができる。
【0069】
なお、上記各実施形態において吐出量は交流モータの回転数に相当する量として扱い、回転数センサ68により吐出量相当の回転数を検出しているが、回転数センサに代えて油圧ポンプ22の吐出量を直接検出する流量センサを設け、その出力をフィードバック信号として用いながら、モータの回転数制御により所望の吐出量を得るように構成してもよい。
また、上記各実施形態ではエンジンを駆動して発電機から電源供給しているが、エンジンを止めてバッテリ(図示せず。)から制御装置69に電源供給することも可能である。
【0070】
なお、上記第1の実施形態では排出板移動による排出、第2の実施形態ではダンプ動作による排出としたが、互いに逆の排出方式を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施形態による塵芥収集車を示す側断面図である。
【図2】図1から押込板、プッシュシリンダ及びプレスシリンダのみを抜き出した動作説明図である。
【図3】上記第1の実施形態による塵芥収集車の背面図である。
【図4】上記第1の実施形態による塵芥収集車の油圧回路図である。
【図5】上記第1の実施形態による塵芥収集車において各シリンダを動作させるための制御ブロック図である。
【図6】運転席(キャブ)に設けられる、上記第1の実施形態による塵芥収集車のスイッチボックスの正面図である。
【図7】油圧ポンプを駆動する上記第1の実施形態による塵芥収集車のシステム構成を示すブロック図である。
【図8】上記第1の実施形態による塵芥収集車のコントローラにより実行される処理のフローチャート(1/2)である。
【図9】上記第1の実施形態による塵芥収集車のコントローラにより実行される処理のフローチャート(2/2)である。
【図10】上記第1の実施形態による塵芥収集車のコントローラにより実行される回転数制御の根拠となるPQ線図である。
【図11】上記第1の実施形態による塵芥収集車における他のPQ線図の例である。
【図12】本発明の第2の実施形態による塵芥収集車を示す側断面図である。
【図13】上記第2の実施形態による塵芥収集車の油圧回路図である。
【図14】運転席(キャブ)に設けられる、上記第2の実施形態による塵芥収集車のスイッチボックスの正面図である。
【図15】油圧ポンプを駆動する上記第2の実施形態による塵芥収集車のシステム構成を示すブロック図である。
【図16】上記第2の実施形態による塵芥収集車のコントローラにより実行される処理のフローチャート(1/2)である。
【図17】上記第2の実施形態による塵芥収集車のコントローラにより実行される処理のフローチャート(2/2)である。
【図18】上記第2の実施形態による塵芥収集車のコントローラにより実行される回転数制御の根拠となるPQ線図である。
【図19】上記第2の実施形態による塵芥収集車における他のPQ線図の例である。
【符号の説明】
【0072】
1 塵芥収集車
2 塵芥収容箱
3 塵芥投入箱
22 油圧ポンプ
52 テールゲートスイッチ(操作手段)
54 排出板スイッチ(操作手段)
55 積込スイッチ(操作手段)
67 交流モータ(電動モータ)
69 制御装置
70 積込装置
71 投入箱駆動装置
72 排出板駆動装置
73 排出装置
110 ダンプスイッチ(操作手段)
170 積込装置
171 投入箱駆動装置
172 収容箱駆動装置
173 排出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塵芥収容箱と、
前記塵芥収容箱に連接して設けられた塵芥投入箱と、
電動モータと、
前記電動モータにより駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプの油圧に基づいて、前記塵芥投入箱に投入された塵芥を前記塵芥収容箱に積み込む動作を行う積込装置と、
前記油圧ポンプの油圧に基づいて、前記塵芥収容箱に収容された塵芥を排出するための動作を行う排出装置と、
前記積込装置及び排出装置にそれぞれ動作開始信号を与える操作手段と、
前記動作開始信号により開始される動作に対応した回転数で前記電動モータを回転させる制御装置と
を備えたことを特徴とする塵芥収集車。
【請求項2】
前記排出装置は、前記塵芥投入箱を前記塵芥収容箱に対して開閉動作させる投入箱駆動装置を含み、
前記制御装置は、前記電動モータの回転数を、前記積込装置の動作時よりも、前記投入箱駆動装置の動作時に小さくする請求項1記載の塵芥収集車。
【請求項3】
前記排出装置は、収容した塵芥を排出板の移動により押し出す排出板駆動装置を含み、
前記制御装置は、前記電動モータの回転数を、前記積込装置の動作時よりも、前記排出板駆動装置の動作時に大きくする請求項1又は2に記載の塵芥収集車。
【請求項4】
前記排出装置は、収容した塵芥を前記塵芥収容箱のダンプ動作により排出する収容箱駆動装置を含み、
前記制御装置は、前記電動モータの回転数を、前記積込装置の動作時よりも、前記収容箱駆動装置の動作時に小さくする請求項1又は2に記載の塵芥収集車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2006−16197(P2006−16197A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198323(P2004−198323)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000163095)極東開発工業株式会社 (215)
【Fターム(参考)】