説明

増幅回路

【課題】ドレインバイアスノードの電位を変化させた場合に、信号通過位相の変化を抑制することを課題とする。
【解決手段】増幅回路は、一次側インダクタが入力端子に接続され、二次側インダクタの中点がゲートバイアスノードに接続されるトランスフォーマー回路(101)と、ゲートが二次側インダクタの一端に接続され、ドレインが第1の出力端子に接続される第1のトランジスタ(104)と、ゲートが二次側インダクタの他端に接続され、ドレインが第2の出力端子に接続される第2のトランジスタ(105)と、第1の出力端子及びドレインバイアスノード間に接続される第1のインダクタ(110)と、第2の出力端子及びドレインバイアスノード間に接続される第2のインダクタ(111)と、トランスフォーマー回路の二次側インダクタに並列に接続され、ドレインバイアスノードの電位に応じて容量値が変化する可変容量(301,302)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
無線送信装置に使用される電力増幅率が変更可能な高周波電力増幅装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。消費電力低減のために、高周波電力増幅手段の動作点を変更しようとするとき、制御手段からバイアス電圧印加手段に対して高周波電力増幅手段に印加するバイアス電圧の変更が指令されるとともに、整合手段に対してインピーダンスの変更が指令される。出力整合手段のインピーダンスが変更されることにより、高周波電力増幅手段の交流負荷線がバイアス電圧変換後においても最も効率の良い増幅が行われるように自動的に設定され、電力のロスなく消費電力が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−175757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ドレインバイアスノードの電位を変化させた場合に、信号通過位相の変化を抑制することができる増幅回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
増幅回路は、一次側インダクタ及び二次側インダクタを含み、前記一次側インダクタが入力端子に接続され、前記二次側インダクタの中点がゲートバイアスノードに接続されるトランスフォーマー回路と、第1のゲートが前記トランスフォーマー回路の前記二次側インダクタの一端に接続され、第1のドレインが第1の出力端子に接続され、第1のソースが基準電位ノードに接続される第1の電界効果トランジスタと、第2のゲートが前記トランスフォーマー回路の前記二次側インダクタの他端に接続され、第2のドレインが第2の出力端子に接続され、第2のソースが前記基準電位ノードに接続される第2の電界効果トランジスタと、前記第1の電界効果トランジスタの前記第1のドレイン及びドレインバイアスノード間に接続される第1のインダクタと、前記第2の電界効果トランジスタの前記第2のドレイン及び前記ドレインバイアスノード間に接続される第2のインダクタと、前記トランスフォーマー回路の前記二次側インダクタに並列に接続され、前記ドレインバイアスノードの電位に応じて容量値が変化する可変容量とを有する。
【発明の効果】
【0006】
可変容量を設けることにより、ドレインバイアスノードの電位を変化させた場合に、信号通過位相の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】参考技術による増幅回路の構成例を示す回路図である。
【図2】ドレインバイアスノードの電位に対する信号通過位相の例を示すグラフである。
【図3】第1の実施形態による増幅回路の構成例を示す回路図である。
【図4】可変容量の容量値に対する信号通過位相を示すグラフである。
【図5】ドレインバイアスノードの電位に対するトータルの信号通過位相を示すグラフである。
【図6】第2の実施形態による増幅回路の構成例を示す回路図である。
【図7】図7(A)はインバータの構成例を示す回路図であり、図7(B)はインバータの入出力特性を示す図である。
【図8】第3の実施形態による増幅回路の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(参考技術)
図1は、参考技術による増幅回路の構成例を示す回路図である。増幅回路は、入力端子INに単相信号を入力し、第1の出力端子OUT1及び第2の出力端子OUT2から増幅した差動信号を出力する。トランスフォーマー回路101は、一次側インダクタ102及び二次側インダクタ103を有する。一次側インダクタ102は、入力端子IN及び基準電位ノード間に接続される。二次側インダクタ103の中点は、ゲートバイアスノードVGに接続される。トランスフォーマー回路101は、入力端子INの単相信号を差動信号に変換し、第1の電界効果トランジスタ104の第1のゲート及び第2の電界効果トランジスタ105の第2のゲートに差動信号を出力する。第1の電界効果トランジスタ104のゲート電圧と第2の電界効果トランジスタ105のゲート電圧は、相互に位相が反転した差動信号となる。第1の電界効果トランジスタ104は、第1のゲートがトランスフォーマー回路101の二次側インダクタ103の一端に接続され、第1のドレインが第1の出力端子OUT1に接続され、第1のソースが基準電位ノードに接続される。第2の電界効果トランジスタ105は、第2のゲートがトランスフォーマー回路101の二次側インダクタ103の他端に接続され、第2のドレインが第2の出力端子OUT2に接続され、第2のソースが基準電位ノードに接続される。第1の整合回路108は第1のインダクタ110を有し、第2の整合回路109は第2のインダクタ111を有する。第1のインダクタ110は、第1の電界効果トランジスタ104の第1のドレイン及びドレインバイアスノードVDD1間に接続される。第2のインダクタ111は、第2の電界効果トランジスタ105の第2のドレイン及びドレインバイアスノードVDD1間に接続される。
【0009】
増幅回路では、直流バイアス電力をRF(高周波)出力電力に変換するときに高い電力変換効率が求められる。RF出力電力が小さい場合には、電力変換効率が低下するため、ドレインバイアスノードVDD1の電位を下げることによって効率を上げることができる。しかし、ドレインバイアスノードVDD1の電位を変化させた場合、第1の電界効果トランジスタ104のゲート−ドレイン間寄生容量106及び第2の電界効果トランジスタ105のゲート−ドレイン間寄生容量107がドレインバイアスノードVDD1の電位変化に伴って変化し、信号通過位相が変化する。
【0010】
図2は、ドレインバイアスノードVDD1の電位に対する信号通過位相の例を示すグラフである。信号通過位相は、入力信号に対する出力信号の位相である。ドレインバイアスノードVDD1の電位が高くなるほど、信号通過位相が大きくなる(遅れる)。ドレインバイアスノードVDD1の電位変化に対して、信号通過位相が一定であれば、問題がない。しかし、位相変調の無線送信装置に増幅回路を使用する場合、ドレインバイアスノードVDD1の電位変化に対して、信号通過位相が変化してしまうと、データを正しく復号することが困難であり、データエラーが発生する可能性が高くなる。
【0011】
そこで、以下、電力変換効率を向上させるためにドレインバイアスノードVDD1の電位を変化させた場合に、信号通過位相の変化を抑制することができる増幅回路を、第1〜第3の実施形態として説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図3は、第1の実施形態による増幅回路の構成例を示す回路図である。増幅回路は、例えば無線送信装置の高出力増幅回路であり、入力端子INに高周波数の単相信号を入力し、第1の出力端子OUT1及び第2の出力端子OUT2から増幅した高周波数の差動信号を出力する。図3の増幅回路は、図1の増幅回路に対して、第1の可変容量301、第2の可変容量302及び調整回路303を追加したものである。
【0013】
トランスフォーマー回路101は、一次側インダクタ102及び二次側インダクタ103を有する。一次側インダクタ102は、入力端子IN及び基準電位ノード(グランド電位ノード)間に接続される。二次側インダクタ103の中点(センタータップ)は、ゲートバイアスノードVGに接続される。ゲートバイアスノードVGには、一定の直流ゲートバイアス電位が供給される。トランスフォーマー回路101は、入力端子INの単相信号を差動信号に変換し、第1の電界効果トランジスタ104の第1のゲート及び第2の電界効果トランジスタ105の第2のゲートに差動信号を出力する。第1の電界効果トランジスタ104のゲート電圧と第2の電界効果トランジスタ105のゲート電圧は、相互に位相が反転した差動信号となる。第1の電界効果トランジスタ104は、第1のゲートがトランスフォーマー回路101の二次側インダクタ103の一端に接続され、第1のドレインが第1の出力端子OUT1に接続され、第1のソースが基準電位ノードに接続される。第2の電界効果トランジスタ105は、第2のゲートがトランスフォーマー回路101の二次側インダクタ103の他端に接続され、第2のドレインが第2の出力端子OUT2に接続され、第2のソースが基準電位ノードに接続される。第1の整合回路108は第1のインダクタ110を有し、第2の整合回路109は第2のインダクタ111を有する。第1のインダクタ110は、第1の電界効果トランジスタ104の第1のドレイン及びドレインバイアスノードVDD1間に接続される。第2のインダクタ111は、第2の電界効果トランジスタ105の第2のドレイン及びドレインバイアスノードVDD1間に接続される。第1の電界効果トランジスタ104は、第1のゲートに入力された信号を増幅し、第1のドレインから出力する。第2の電界効果トランジスタ105は、第2のゲートに入力された信号を増幅し、第2のドレインから出力する。第1の出力端子OUT1及び第2の出力端子OUT2からは、相互に位相が反転した差動信号が出力される。無線送信装置の場合、出力端子OUT1及びOUT2の差動信号は、後段のトランスフォーマー回路により単相信号に変換され、アンテナを介して無線送信される。
【0014】
第1の可変容量301は、第1の電界効果トランジスタ104の第1のゲート及びノードN1間に接続される。第2の可変容量302は、第2の電界効果トランジスタ105の第2のゲート及びノードN1間に接続される。第1の可変容量301及び第2の可変容量302の直列接続回路は、トランスフォーマー回路101の二次側インダクタ103に並列に接続される。調整回路303は、ドレインバイアスノードVDD1の電位に応じた電位をノードN1に供給する。第1の可変容量301及び第2の可変容量302は、ノードN1の電位に応じて容量値が変化する。すなわち、第1の可変容量301及び第2の可変容量302は、ドレインバイアスノードVDD1の電位に応じて容量値が変化する。
【0015】
増幅回路では、直流バイアス電力をRF出力電力に変換するときに高い電力変換効率が求められる。RF出力電力が小さい場合には、電力変換効率が低下するため、ドレインバイアスノードVDD1の電位を下げることによって効率を上げることができる。これに対し、RF出力電力が大きい場合には、雑音特性を向上させるため、ドレインバイアスノードVDD1の電位を上げる必要がある。このように、小さい電力を出力端子OUT1及びOUT2から出力する場合にはドレインバイアスノードVDD1の電位を低くし、大きい電力を出力端子OUT1及びOUT2から出力する場合にはドレインバイアスノードVDD1の電位を高くすることにより、電力変換効率及び雑音特性を向上させることができる。例えば、この増幅回路は、無線送信装置に使用され、増幅された信号はアンテナを介して基地局に無線送信される。無線送信装置から近い基地局へ信号を送信する場合には、ドレインバイアスノードVDD1に低い直流バイアス電位を供給し、小電力の送信信号を出力端子OUT1及びOUT2から出力する。これに対し、無線送信装置から遠い基地局へ信号を送信する場合には、ドレインバイアスノードVDD1に高い直流バイアス電位を供給し、大電力の送信信号を出力端子OUT1及びOUT2から出力する。
【0016】
インダクタ110及び111は、ドレインバイアスノードVDD1に接続され、ショートインダクタとして機能し、ハイパスフィルタ110を構成する。出力端子OUT1及びOUT2の信号周波数が高いときには、インダクタ110及び111のインピーダンスが極めて大きくなり、高周波数の信号はハイパスフィルタを通過し、出力端子OUT1及びOUT2から出力される。これに対し、出力端子OUT1及びOUT2の信号周波数が低いときには、インダクタ110及び111のインピーダンスが小さくなり、高周波数の信号はハイパスフィルタにより遮断され、出力端子OUT1及びOUT2の信号が減衰する。
【0017】
ここで、ドレインバイアスノードVDD1の電位を変化させた場合、第1の電界効果トランジスタ104のゲート−ドレイン間寄生容量106及び第2の電界効果トランジスタ105のゲート−ドレイン間寄生容量107がドレインバイアスノードVDD1の電位変化に伴って変化し、信号通過位相が変化する。図2に示したように、ドレインバイアスノードVDD1の電位が高くなるほど、信号通過位相が大きくなる(遅れる)。ドレインバイアスノードVDD1の電位変化に対して、信号通過位相が一定であれば、問題がない。しかし、位相変調の無線送信装置に増幅回路を使用する場合、ドレインバイアスノードVDD1の電位変化に対して、信号通過位相が変化してしまうと、データを正しく復号することが困難であり、データエラーが発生する可能性が高くなる。本実施形態では、可変容量301及び302を設けることにより、信号通過位相の変化を低減させる。
【0018】
図4は、可変容量301及び302の容量値に対する信号通過位相を示すグラフである。横軸は可変容量301及び302の容量値であり、縦軸は信号通過位相である。トランスフォーマー回路101の二次側インダクタ103は、ゲートバイアスノードVGに接続され、ショートインダクタとして機能するので、可変容量301及び302の容量値の変化により信号通過位相が変化する。可変容量301及び302の容量値が大きくなるほど、信号通過位相は小さくなる(進む)。可変容量301及び302により位相制御された信号が第1の電界効果トランジスタ104の第1のゲート及び第2の電界効果トランジスタ105の第2のゲートに入力される。本実施形態では、可変容量301及び302の容量値の変化によって信号通過位相が変わる特性を用いて、図2の信号通過位相の特性を相殺することによって、トータルの信号通過位相の変化を抑制する。具体的には、調整回路303は、ドレインバイアスノードVDD1の電位が低いときには可変容量301及び302の容量値が小さくなり、ドレインバイアスノードVDD1の電位が高いときには可変容量301及び302の容量値が大きくなるように、ノードN1の電位を制御する。可変容量301及び302は、ドレインバイアスノードVDD1の電位が高くなるほど容量値が大きくなる。これにより、信号通過位相は、図2の特性とは逆に、ドレインバイアスノードVDD1の電位が高くなるほど小さくなる(進む)。すなわち、図4の特性は、図2の特性に対して逆特性になる。ドレインバイアスノードVDD1の電位が低いときには、図2の特性により信号通過位相が小さくなり、図4の特性により信号通過位相が大きくなる。これに対し、ドレインバイアスノードVDD1の電位が高いときには、図2の特性により信号通過位相が大きくなり、図4の特性により信号通過位相が小さくなる。図2の信号通過位相の特性と図4の信号通過位相の特性が相殺され、トータルの信号通過位相はドレインバイアスノードVDD1の電位が変化してもほぼ一定になる。これにより、通信時のデータエラー等を防止することができる。
【0019】
図5は、ドレインバイアスノードVDD1の電位に対するトータルの信号通過位相を示すグラフである。横軸はドレインバイアスノードVDD1の電位を示し、縦軸は増幅回路のトータルの信号通過位相を示す。特性501は本実施形態の図3の増幅回路の特性を示し、特性502は図1の増幅回路の特性を示す。特性502は、図1の増幅回路において可変容量301及び302がないため、図2の信号通過位相特性と同じになり、ドレインバイアスノードVDD1の電位が変化すると、信号通過位相が大きく変化してしまう。これに対し、特性501は、図3の増幅回路において可変容量301及び302を設けているので、図2の信号通過位相特性と図4の信号通過位相特性が合成され、ドレインバイアスノードVDD1の電位が変化しても信号通過位相は変化が極めて小さく、ほとんど変化しない。図3の増幅回路の特性501は、図1の増幅回路の特性502と比較して、ドレインバイアスノードVDD1の電位変化による信号通過位相の変化が抑制されていることが分かる。
【0020】
図3の増幅回路は、小さなサイズの補正回路(可変容量301,302及び調整回路303)で信号通過位相の変化を抑制することができるため、回路面積の増大及び補正回路における信号損失を抑制することができる。
【0021】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態による増幅回路の構成例を示す回路図である。図6の増幅回路は、図3の増幅回路の第1の可変容量301、第2の可変容量302及び調整回路303の例を示したものである。以下、本実施形態が第1の実施形態と異なる点を説明する。第1のダイオード601は、図3の第1の可変容量301の一例であるバラクタダイオードであり、アノードがノードN1に接続され、カソードが第1の電界効果トランジスタ104の第1のゲートに接続される。第2のダイオード602は、図3の第1の可変容量302の一例であるバラクタダイオードであり、アノードがノードN1に接続され、カソードが第2の電界効果トランジスタ105の第2のゲートに接続される。インバータ603は、図3の調整回路303の一例であり、入力端子がドレインバイアスノードVDD1に接続され、出力端子がノードN1に接続される。
【0022】
図7(A)は、図6のインバータ603の構成例を示す回路図である。インバータ603は、第3の電界効果トランジスタ701、第1の抵抗702及び第2の抵抗703を有する。第3の電界効果トランジスタ701は、第3のゲートがドレインバイアスノードVDD1に接続され、第3のドレインがノードN1に接続される。第1の抵抗702は、第3の電界効果トランジスタ701の第3のソース及び基準電位ノード間に接続される。第2の抵抗703は、電源電位ノードVDD2及びノードN1間に接続される。
【0023】
図7(B)は、インバータ603の入出力特性を示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は電位を示す。時間経過に伴って、入力のドレインバイアスノードVDD1の電位が徐々に増加すると、出力のノードN1の電位が徐々に減少する。インバータ603は、ドレインバイアスノードVDD1の電位を反転させた電位をノードN1に出力する。すなわち、インバータ603は、ドレインバイアスノードVDD1の電位が低いときにはノードN1の電位を高くし、ドレインバイアスノードVDD1の電位が高いときにはノードN1の電位を低くする。第1のダイオード701及び第2のダイオード702は、ノードN1の電位が高いときには容量値が小さくなり、ノードN1の電位が低いときには容量値が大きくなる。これにより、ドレインバイアスノードVDD1の電位が高くなるほど、図4に示すように、第1のダイオード701及び第2のダイオード702は容量値が大きくなり、信号通過位相が小さくなる。
【0024】
ドレインバイアスノードVDD1の電位が低いときには図2の特性により信号通過位相が小さくなるため、ノードN1の電位を高くすることにより、ダイオード601及び602の容量値が小さくなり、図4の特性により信号通過位相が大きくなる。これに対し、ドレインバイアスノードVDD1の電位が高いときには図2の特性により信号通過位相が大きくなるため、ノードN1の電位を低くすることにより、ダイオード601及び602の容量値が大きくなり、図4の特性により信号通過位相が小さくなる。これにより、ドレインバイアスノードVDD1のノードの電位が変化しても、トータルの信号通過位相の変化を抑制することができる。
【0025】
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態による増幅回路の構成例を示す回路図である。図8の増幅回路は、図3の増幅回路の第1の可変容量301及び第2の可変容量302の他の例を示したものである。以下、本実施形態が第1の実施形態と異なる点を説明する。複数の容量801,802及びスイッチ803は、図3の第1の可変容量301及び第2の可変容量302の一例である。容量801,802及びスイッチ803は、直列に接続される。複数の容量801,802及びスイッチ803の直列接続回路は、トランスフォーマー回路101の二次側インダクタ103に対して、並列に接続される。調整回路303は、ドレインバイアスノードVDD1のノードの電位をアナログからデジタルに変換し、そのデジタル値に応じてスイッチ803をオンさせる。スイッチ803がオンする数が多いほど、可変容量301及び302の容量値が大きくなる。調整回路303は、ドレインバイアスノードVDD1の電位が低いときにはスイッチ803がオンする数を少なくし、可変容量301及び302の容量値を小さくし、図4に示すように、信号通過位相を大きくする。これに対し、調整回路303は、ドレインバイアスノードVDD1の電位が高いときにはスイッチ803がオンする数を多くし、可変容量301及び302の容量値を大きくし、図4に示すように、信号通過位相を小さくする。本実施形態も第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0026】
第1〜第3の実施形態によれば、ドレインバイアスノードVDD1の電位を変化させることにより、増幅回路の電力変換効率及び雑音特性を向上させることができる。ドレインバイアスノードVDD1の電位を変化させると、図2の信号通過位相特性が発生するが、可変容量301及び302を設けることにより、図4の信号通過位相特性を得ることができる。図2の信号通過位相特性と図4の信号通過位相特性が相殺し、ドレインバイアスノードVDD1の電位を変化させても、信号通過位相の変化が抑制される。以上のように、可変容量301,302を設けることにより、ドレインバイアスノードVDD1の電位を変化させた場合に、信号通過位相の変化を抑制することができる。
【0027】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0028】
101 トランスフォーマー回路
102 一次側インダクタ
103 二次側インダクタ
104 第1の電界効果トランジスタ
105 第2の電界効果トランジスタ
106,107 ゲート−ドレイン間寄生容量
108 第1の整合回路
109 第2の整合回路
110 第1のインダクタ
111 第2のインダクタ
301 第1の可変容量
302 第2の可変容量
303 調整回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側インダクタ及び二次側インダクタを含み、前記一次側インダクタが入力端子に接続され、前記二次側インダクタの中点がゲートバイアスノードに接続されるトランスフォーマー回路と、
第1のゲートが前記トランスフォーマー回路の前記二次側インダクタの一端に接続され、第1のドレインが第1の出力端子に接続され、第1のソースが基準電位ノードに接続される第1の電界効果トランジスタと、
第2のゲートが前記トランスフォーマー回路の前記二次側インダクタの他端に接続され、第2のドレインが第2の出力端子に接続され、第2のソースが前記基準電位ノードに接続される第2の電界効果トランジスタと、
前記第1の電界効果トランジスタの前記第1のドレイン及びドレインバイアスノード間に接続される第1のインダクタと、
前記第2の電界効果トランジスタの前記第2のドレイン及び前記ドレインバイアスノード間に接続される第2のインダクタと、
前記トランスフォーマー回路の前記二次側インダクタに並列に接続され、前記ドレインバイアスノードの電位に応じて容量値が変化する可変容量と
を有することを特徴とする増幅回路。
【請求項2】
前記可変容量は、ダイオードであることを特徴とする請求項1記載の増幅回路。
【請求項3】
さらに、前記ドレインバイアスノード及び前記可変容量間に接続されるインバータを有することを特徴とする請求項1又は2記載の増幅回路。
【請求項4】
前記可変容量は、複数の容量及びスイッチの直列接続回路を有し、前記複数の容量及びスイッチの直列接続回路が並列に接続されていることを特徴とする請求項1記載の増幅回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−129635(P2012−129635A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277303(P2010−277303)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】