説明

増強された吸収のための組成物および投与形態物

製薬学的因子の制御送達ならびにそのための方法、投与形態物および装置が開示される。特に、薬剤化合物の増大した吸収および制御送達のための製剤、投与形態物、方法および装置が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製薬学的薬剤(pharmaceutical agent)の制御送達ならびにそのための方法、投与形態物および装置に関する。特に、本発明は、薬剤化合物の増大吸収および制御送達のための製剤、投与形態物、方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の製薬開発において、塩基もしくは塩のような投与形態物の選択は、一方で最も安定な投与形態物を得ることに、そしてもう一方で上部胃腸(G.I.)管における最大吸収を与えることに基づく。大部分の薬剤投与形態物は投与形態物の即時放出のために設計されるので、投与形態物は上部G.I.管においてよく溶解されそして通常は小腸および大腸のG.I.環境(pH=約5〜7)において非常に解離される、すなわち、非常に荷電するように作られる。
【0003】
製薬開発はまた、典型的に、上部G.I.管における薬剤の吸収のためのはるかに大きい表面積のために、下部G.I管よりむしろ上部G.I.管における吸収のための薬剤形態も目標とする。下部G.I管は、上部G.I.管に存在する微絨毛を欠く。微絨毛の存在は、薬剤吸収のための表面積を非常に増加し、そして上部G.I.管は下部G.I.管より480倍の表面積を有する。上部および下部G.I.管の細胞特性の違いもまた、下部G.I.管における分子の不十分な吸収に寄与する。
【0004】
図1は、G.I管の上皮を横切る化合物の輸送の2つの一般的な経路を説明する。10a、10b、10cで表される個々の上皮細胞は、小腸および大腸に沿って細胞バリアーを形成する。個々の細胞は、結合12aおよび12bのような、水チャンネルもしくは密着結合により隔てられる。上皮を横切る輸送は、経細胞経路および傍細胞経路のいずれかもしくは両方を介して起こる。矢印14により図1において示される、輸送の経細胞経路は、受動拡散によるかもしくは担体媒介輸送による上皮細胞の壁および細胞体(body)を横切る化合物の移動を伴う。輸送の傍細胞経路は、矢印16により示されるような、個々の細胞間の密着結合を通る分子の移動を伴う。傍細胞輸送は特異性が低いが、一つにはそれはG.I.管の全長にわたって起こるので、はるかに大きい総合能力を有する。しかしながら、密着結合は、密着結合の有効な「密着性」の増加する近位から遠位への勾配を有して、G.I.管の長さに沿って異なる。従って、上部G.I.管における十二指腸は、下部G.I.管における結腸より「漏れやすい」上部G.I.管における回腸より「漏れやすい」(非特許文献1)。
【0005】
上部G.I.管における薬剤の典型的な滞留時間は約4〜6時間であるので、不十分な下部G.I.吸収を有する薬剤は、経口摂取後4〜6時間のみの期間の間に体により吸収される。投与した薬剤は、1日を通して比較的一定の濃度で患者の血流に存在することが医学上望ましいことが多い。わずかな下部G.I.管吸収を示す従来の製剤でこれを成し遂げるためには、患者は薬剤を1日に3〜4回服用する必要がある。患者へのこの不都合での実際の経験は、これが最適な処置プロトコルではないことを示唆する。従って、1日を通した長期の吸収で、そのような薬剤の1日1回の投与が達成されることが望ましい。
【0006】
一定投薬処置を提供するために、従来の製薬開発は様々な制御放出薬剤システムを示唆している。そのようなシステムは、投与後に長期間にわたって薬剤のそれらの積載量を放出することにより機能する。しかしながら、制御放出システムのこれらの従来の形態は、わずかな結腸吸収を示す薬剤の場合に有効でない。薬剤は上部G.I.管において吸収されるだけであるので、そして上部G.I.管における薬剤の滞留時間は4〜6時間だけで
あるので、提示される制御放出投与形態物が上部G.I.における投与形態物の滞留期間後にその積載量を放出できることは、体が上部G.I.滞留の4〜6時間を越えて制御放出薬剤を吸収し続けることを意味しない。代わりに、投与形態物が下部G.I.管に入った後に制御放出投与形態物により放出される薬剤は一般に吸収されず、そしてその代わりに体から排出される。
【0007】
これに応えてそしてこれを認めて、改善をもたらそうと試みられている。これらの試みは、典型的に、満足な結果を与えていない。
【0008】
従って、胃腸管の全体にわたって高い吸収を有することがこれまで知られていない薬剤の改善された吸収を成し遂げるために化合物、方法および製品を開発する必要がある。
【非特許文献1】Knauf,H.et al.,Klin.Wochenschr.,60(19):1191−1200(1982)
【発明の開示】
【0009】
[発明の要約]
1つの態様として、本発明は、薬剤部分および輸送部分(transport moiety)を含んでなる複合体を含んでなる物質に関する。
【0010】
別の態様として、本発明は、イオン形態の薬剤部分を準備すること;イオン形態の輸送部分を準備すること;水のものより低い誘電定数を有する溶媒の存在下で、薬剤部分と輸送部分を合わせて複合体を形成すること;および溶媒から複合体を分離することを含んでなる組成物を製造する方法に関する。
【0011】
1つの態様として、本発明は、イオン形態の薬剤部分を準備すること;イオン形態の輸送部分を準備すること;水のものより低い誘電定数を有する溶媒の存在下で、薬剤部分と輸送部分を合わせて複合体を形成すること;溶媒から複合体を分離すること;および処置を必要とする患者に分離した複合体を投与することを含んでなる処置の方法に関する。
【0012】
別の態様として、本発明は、薬剤部分および輸送部分の複合体を準備すること;および改善を必要とする患者に複合体を投与することを含んでなる薬剤部分の吸収を改善する方法に関する。
【0013】
[詳細な記述]
定義
本発明は、本明細書に提供される以下の定義、図面および典型的な開示を参照することにより最もよく理解される。
【0014】
「組成物」は、場合により追加の有効製薬学的成分と組み合わせた、そして場合により製薬学的に許容しうる担体、賦形剤、沈殿防止剤、界面活性剤、崩壊剤、結合剤、希釈剤、潤滑剤、安定剤、酸化防止剤、浸透圧剤(osmotic agent)、着色剤、可塑剤などのような不活性成分と組み合わせた、本発明の複合体の1つもしくはそれ以上を意味する。
【0015】
「複合体」は、強いイオン対結合(tight−ion pair bond)により会合している薬剤部分および輸送部分を含んでなる物質を意味する。薬剤部分−輸送部分複合体は、以下の関係:
ΔLogD=LogD(複合体)−LogD(ゆるいイオン対(loose−ion pair))0.15(式1)
[式中:
D、分配係数(見掛け分配係数)は、25℃で設定pH(典型的には約pH=5.0〜約pH=7.0)でオクタノールにおける薬剤部分および輸送部分の全ての種の水(脱イオン水)における同じ種に対する平衡濃度の比である。LogD(複合体)は、本明細書における教示に従って製造される薬剤部分と輸送部分の複合体について決定される。LogD(ゆるいイオン対)は、脱イオン水における薬剤部分と輸送部分の物理的混合物について決定される。LogDは実験的に決定することができ、もしくは市販されているソフトウェアパッケージ(例えば、ChemSilico,Inc.,Advanced Chemistry Development Inc.)を用いてゆるいイオン対について予測することができる。]
を特徴とする、オクタノール/水分配行動の違いにより薬剤部分と輸送部分のゆるいイオン対から区別することができる。
【0016】
例えば、推定複合体のオクタノール/水見掛け分配係数(D=Cオクタノール/C)(25℃で脱イオン水における)を決定し、そして25℃で脱イオン水における輸送部分と薬剤部分の1:1(mol/mol)の物理的混合物と比較することができる。推定複合体(D+T−)のLogDと1:1(mol/mol)の物理的混合物、D‖TのLogDとの間の差が0.15以上であると決定される場合、推定複合体は本発明の複合体であると確かめられる。
【0017】
好ましい態様として、ΔLogD0.20、そしてより好ましくはΔLogD0.25、さらにより好ましくはΔLogD0.35。
【0018】
「DPP IV」という用語は、本明細書において用いる場合、CD26としても知られているジペプチジルペプチダーゼIV(EC3.4.14.5)を意味するものとする。「DPP IVインヒビター」は、DPP−IVの酵素活性の阻害を示す分子を表すものとし、しかしながら、該分子はまた他のDPP酵素への阻害活性も有し得る。DPP IVインヒビターは、GLP−1、GIP、ペプチドヒスチジンメチオニン、サブスタンスP、神経ペプチドY、および典型的に2番目のアミノ末端位置においてアラニンもしくはプロリン残基を含有する他の分子が包含されるがこれらに限定されるものではない、基質分子の作用を維持する。本発明の文脈において、「DPP IVインヒビター」はまた、その活性代謝産物およびプロドラッグも含んでなるものとする。典型的なDPP IVインヒビターには、1−[[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル]−2−シアノ−(S)−ピロリジン;1−{N−(5,6−ジクロロニコチノイル)−L−オルニチニル}−3,3−ジフルオロピロリジン塩酸塩;およびWO2004032836;WO2004/024184;WO03/000250(これらは本明細書に引用することにより組み込まれる)に開示される;そして例えばWO98/19998、DE19616 486 A1、WO00/34241、WO95/15309、WO01/72290、WO01/52825、WO93/10127、WO99/25719、WO99/38501、WO99/46272、WO99/67278およびWO99/67279に開示される化合物が包含される。
【0019】
「投与形態物」は、それを必要とする患者への投与に適当な媒質、担体、賦形剤もしくは装置における製薬学的組成物を意味する。
【0020】
「薬剤」もしくは「薬剤部分」は、被験体に投与した場合にいくらかの薬理学的効果を与える薬剤、化合物もしくは因子、またはそのような薬剤、化合物もしくは因子の残基(residue)を意味する。複合体を形成することにおける使用のために、薬剤は酸性、塩基性もしくは両性イオン性構造要素、または酸性、塩基性もしくは両性イオン性残基構造要素(residual structural element)を含んでなる。本発明の態様として、酸性構造要素もしくは酸性残基構造要素を含んでなる薬剤部分は、塩基性構造要素もしくは塩基性残基構造要素を含んでなる輸送部分と複合体を形成する。本発明の態様として、塩基性構造要素もしくは塩基性残基構造要素を含んでなる薬剤部分は、酸性構造要素もしくは酸性残基構造要素を含んでなる輸送部分と複合体を形成する。本発明の態様として、両性イオン性構造要素もしくは両性イオン性残基構造要素を含んでなる薬剤部分は、酸性もしくは塩基性構造要素または酸性もしくは塩基性残基構造要素を含んでなる輸送部分と複合体を形成する。1つの態様として、酸性構造要素もしくは酸性残基構造要素のpKaは約7.0未満であり、好ましくは約6.0未満である。1つの態様として、塩基性構造要素もしくは塩基性残基構造要素のpKaは約7.0より大きく、好ましくは約8.0より大きい。両性イオン性構造要素もしくは両性イオン性残基構造要素は、輸送部分との複合体がどのようにして形成されるかにより、それらの個々の塩基性構造要素もしくは塩基性残基構造要素またはそれらの酸性構造要素もしくは酸性残基構造要素に関して分析される。
【0021】
「脂肪酸」は、一般式CH(C)COOH(式中、炭化水素鎖は飽和(x=2n、例えばパルミチン酸、CH1428COOH)もしくは不飽和(モノ不飽和では、x=2n−2、例えばオレイン酸、CH1630COOH)のいずれかである。)の有機酸の群のいずれかを意味する。
【0022】
「ガバペンチン」は、C17NOの分子式および171.24の分子量を有する1−(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸をさす。それは商標名ニューロンチン(Neurontin)で市販されている。その構造を図16Aに示す。
【0023】
「腸」もしくは「胃腸(G.I.)管」は、小腸(十二指腸、空腸および回腸)および大腸(上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸および直腸)からなる、胃の下部開口部から肛門まで広がる消化管の部分を意味する。
【0024】
「ゆるいイオン対」は、生理的pHでそして水性環境において、ゆるいイオン対の環境に存在し得る他のゆるく対合したもしくは遊離のイオンと容易に交換可能である1対のイオンを意味する。ゆるいイオン対は、同位体標識およびNMRもしくは質量分析を用いて、生理的pHでそして水性環境において、別のイオンとゆるいイオン対のメンバーとの交換に注目することにより実験的に見出すことができる。ゆるいイオン対はまた、逆相HPLCを用いて、生理的pHでそして水性環境において、イオン対の分離に注目することにより実験的に見出すこともできる。ゆるいイオン対はまた、「物理的混合物」と呼ばれることもでき、そして媒質にイオン対を一緒に物理的に混合することにより形成される。
【0025】
「下部胃腸管」もしくは「下部G.I.管」は、大腸を意味する。
【0026】
「患者」は、治療介入を必要とする動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトを意味する。
【0027】
「製薬学的組成物」は、それを必要とする患者への投与に適当な組成物を意味する。
【0028】
「プレガバリン」は、(S)−(+)−3−(アミノメチル)−5−メチルヘキサン酸をさす。プレガバリンはまた、(S)−3−イソブチルGABAもしくはCI−1008とも文献において呼ばれる。プレガバリンの構造を16Bに示す。
【0029】
「残基構造要素」は、別の化合物、化学基、イオン、原子などとの相互作用もしくは反応により改変される構造要素を意味する。例えば、カルボキシル構造要素(COOH)は、ナトリウムと相互作用してナトリウム−カルボン酸塩を形成し、COO−は残基構造要素である。
【0030】
「溶媒(1つもしくは複数)」は、様々な他の物質が完全にもしくは部分的に溶解されることができる物質を意味する。本発明において、好ましい溶媒には水性溶媒、および水のものより低い誘電定数を有する溶媒が包含される。好ましい溶媒は、水のものより低い誘電定数を有する。誘電定数は溶媒の極性の尺度であり、そして典型的な溶媒の誘電定数を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
溶媒の水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノールおよび酢酸は、電気陰性原子、典型的には酸素に結合している水素原子を有する極性プロトン性溶媒である。溶媒のアセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトンおよびアセトニトリルは双極性非プロトン性溶媒であり、そして1つの態様として、本発明の複合体を形成することにおける使用に好ましい。双極性非プロトン性溶媒はOH結合を含有しないが、典型的に、炭素と酸素もしくは窒素のいずれかとの間の多重結合による大きい結合双極子を有する。大部分の双極性非プロトン性溶媒は、C−O二重結合を含有する。水のものより低い誘電定数を有する溶媒は、本発明の複合体の形成において特に有用である。表1に記載する双極性非プロトン性溶媒は、水より少なくとも2倍低い誘電定数および水に近いかもしくはそれより大きい双極子モーメントを有する。
【0033】
「構造要素」は、(i)より大きい分子の一部であり、そして(ii)区別できる化学
官能基を有する化学基を意味する。例えば、化合物上の酸性基もしくは塩基性基は、構造要素である。
【0034】
「物質」は、特定の性質を有する化学物質を意味する。
【0035】
「強いイオン対」は、生理的pHでそして水性環境において、強いイオン対の環境に存在し得る他のゆるく対合したもしくは遊離のイオンと容易に交換可能ではない1対のイオンを意味する。強いイオン対は、同位体標識およびNMRもしくは質量分析を用いて、生理的pHでそして水性環境において、別のイオンと強いイオン対のメンバーとの交換がないことに注目することにより実験的に検出することができる。強いイオン対はまた、逆相HPLCを用いて、生理的pHでそして水性環境において、イオン対の分離がないことに注目することにより実験的に見出すこともできる。
【0036】
「輸送部分」は、薬剤部分と複合体を形成することができる化合物、もしくは形成している化合物の残基を意味し、ここで、輸送部分は、複合体を形成していない薬剤のものと比較して、上皮組織を横切る薬剤の輸送を改善する働きをする。輸送部分は、疎水性部分および酸性、塩基性もしくは両性イオン性構造要素、または酸性、塩基性もしくは両性イオン性残基構造要素を含んでなる。好ましい態様として、疎水性部分は炭化水素鎖を含んでなる。1つの態様として、塩基性構造要素もしくは塩基性残基構造要素のpKaは約7.0より大きく、好ましくは約8.0より大きい。両性イオン性構造要素もしくは両性イオン性残基構造要素は、薬剤部分との複合体がどのようにして形成されるかにより、それらの個々の塩基性構造要素もしくは塩基性残基構造要素またはそれらの酸性構造要素もしくは酸性残基構造要素に関して分析される。
【0037】
より好ましい態様として、輸送部分は、カルボン酸およびその塩が包含されるがこれらに限定されるものではない、製薬学的に許容しうる酸を含んでなる。態様として、輸送部分は脂肪酸もしくはその塩、ベンゼンスルホン酸もしくはその塩、安息香酸もしくはその塩、フマル酸もしくはその塩、またはサリチル酸もしくはその塩を含んでなる。好ましい態様として、脂肪酸もしくはそれらの塩は、6〜18個の炭素原子(C6〜C18)、より好ましくは8〜16個の炭素原子(C8〜C16)、さらにより好ましくは10〜14個の炭素原子(C10〜C14)、そして最も好ましくは12個の炭素原子(C12)を含んでなる。
【0038】
より好ましい態様として、輸送部分は、特にオクチル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびテトラデシル硫酸ナトリウムを包含する、アルキル硫酸(alkyl sulfate)(飽和もしくは不飽和のいずれか)およびカリウム、マグネシウムおよびナトリウム塩のようなそれらの塩を含んでなる。好ましい態様として、アルキル硫酸もしくはその塩は、6〜18個の炭素原子(C6〜C18)、より好ましくは8〜16個の炭素原子(C8〜C16)、さらにより好ましくは10〜14個の炭素原子(C10〜C14)、そして最も好ましくは12個の炭素原子(C12)を含んでなる。また適当であるのは、他の陰イオン界面活性剤である。
【0039】
別のより好ましい態様として、輸送部分は製薬学的に許容しうる第一級アミンもしくはその塩、特に第一級脂肪族アミン(飽和および不飽和の両方)もしくはその塩、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカイン、コリン、トロメタミン、メグルミン、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、亜鉛、水酸化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムを含んでなる。また有用であるのは、第二級もしくは第三級アミンおよびそれらの塩を含んでなる他の製薬学的に許容しうる化合物、ならびに陽イオン界面活性剤である。
【0040】
「上部胃腸管」もしくは「上部G.I.管」は、胃および小腸を包含する胃腸管の部分を意味する。
【0041】
複合体形成および特性化
不十分な吸収特性を有する多数の一般的な薬剤部分は、ある種の輸送部分といったん複合体を形成すると、上部GI管吸収もまた増大され得るが、著しく増大した吸収、特に下部G.I.管吸収を示すことが驚くべきことに見出された。本発明の複合体は、本発明の複合体と同じイオンを含んでなるゆるいイオン対(すなわち、複合体を形成していない形態)と比較した場合に改善された吸収を示すことはさらに驚くべきことである。
【0042】
これらの意外な結果は、塩基性構造要素もしくは塩基性残基構造要素を含んでなる薬剤部分を包含する、多くの種類の薬剤部分に当てはまることが見出された。本発明が当てはまるそのような薬剤部分の例には、メトホルミン、鉄、塩酸ラニチジン、塩酸セチリジン、コハク酸スマトリプタン、塩酸オキシコドン、塩酸トラマドール、塩酸シプロファキシシン(ciprofaxicin)、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)インヒビターおよび塩酸シメチジンが包含される。本発明の意外な結果はまた、両性イオン性構造要素もしくは両性イオン性残基構造要素を含んでなる薬剤部分にも当てはまる。本発明が当てはまるそのような薬剤部分の例は、ガバペンチンおよびレボドパである。本発明の意外な結果はまた、酸性構造要素もしくは酸性残基構造要素を含んでなる薬剤部分にも当てはまる。本発明が当てはまるそのような薬剤部分の例は、ラベプラゾールナトリウムである。
【0043】
本発明の好ましい態様の例を以下に提示する。提示するのは、メトホルミン、鉄およびガバペンチンとの複合体が形成される場合の好ましい態様である。
【0044】
機序の特定の理解によって拘束されることを望まないが、本発明者等は以下のように推論する:
ゆるいイオン対が極性溶媒環境に置かれると、極性溶媒分子はイオン結合により占められる空間にそれら自体を入れ、従って、結合したイオンを離れさせると推測される。遊離イオンに静電気的に結合した極性溶媒分子を含んでなる溶媒和殻が、遊離イオンの周りに形成されることができる。次に、この溶媒和殻は、遊離イオンが別の遊離イオンとのゆるいイオン対合イオン結合以外を形成するのを妨げる。極性溶媒に存在する多数のタイプの対イオンがある状況において、任意の既定のゆるいイオン対合は対イオン競合を比較的受けやすい可能性がある。
【0045】
この効果は、溶媒の誘電定数として表される極性が増加するにつれて一層顕著である。クーロンの法則に基づいて、誘電定数(e)の媒質における電荷(q1)および(q2)を有しそして距離(r)で隔てられた2個のイオン間の力は:
【0046】
【数1】

【0047】
[式中、εは空間(space)の誘電率の定数である]
である。この式は、溶液におけるゆるいイオン対の安定性への誘電定数(ε)の重要性を示す。高い誘電定数(ε=80)を有する水溶液において、静電気引力は、水分子がイオン結合を攻撃しそして反対の荷電イオンを分離する場合に著しく減少される。
【0048】
従って、高い誘電定数溶媒分子は、いったんイオン結合の近くに存在すると、その結合を攻撃し、そして最終的にそれを壊す。次に、結合していないイオンは、溶媒において自由に動き回ることができる。これらの特性は、ゆるいイオン対を定義する。
【0049】
強いイオン対は、ゆるいイオン対と異なって形成され、そしてその結果としてゆるいイオン対と異なる特性を有する。強いイオン対は、2つのイオン間の結合空間における極性溶媒分子の数を減らすことにより形成される。これは、これらのイオンが密接に寄ることを可能にし、そしてゆるいイオン対結合より著しく強いが、なおイオン結合と考えられる結合をもたらす。本明細書にさらに十分に開示されるように、強いイオン対は、イオン間の極性溶媒の取り込みを減らすために水より低い極性の溶媒を用いて得られる。
【0050】
ゆるいイオン対および強いイオン対のさらなる説明は、D.Quintanar−Guerrero et al.,Applications of the Ion Pair Concept to Hydrophilic Substances with Special Emphasis on Peptides,Pharm.Res.14(2):119−127(1997)を参照。
【0051】
ゆるいイオン対合と強いイオン対合との間の違いはまた、クロマトグラフィー法を用いて認められることもできる。逆相クロマトグラフィーを用いて、ゆるいイオン対は、強いイオン対を分離しない条件下で容易に分離されることができる。
【0052】
本発明の結合はまた、相互に対する陽イオンおよび陰イオンの強さを選択することにより一層強くすることもできる。例えば、溶媒が水である場合、陽イオン(塩基)および陰イオン(酸)を相互に一層強く引き付けるように選択することができる。より弱い結合が所望される場合には、より弱い引力を選択することができる。
【0053】
生体膜の部分は、そのような膜を横切る分子輸送を理解する目的のために脂質二重層として一次近似にモデル化することができる。脂質二重層部分を横切る輸送は(能動輸送体などと対照的に)、不利な分配(unfavorable portioning)のためにイオンにとって望ましくない。様々な研究者は、そのようなイオンの電荷中和が膜透過輸送を増大できることを提示している。
【0054】
「イオン対」理論において、イオン性薬剤部分は輸送部分対イオンと対合して電荷を「埋め」、そして得られるイオン対が脂質二重層をより進みやすくする。この方法は、特に腸上皮を横切る経口投与した薬剤の吸収を増大することに関して、かなりの量の注目および研究を生み出している。
【0055】
イオン対合は多数の注目および研究を生み出しているが、必ずしも多数の成功を生み出しているとは限らない。例えば、2つの抗ウイルス化合物のイオン対は、経細胞輸送へのイオン対の効果によって増加した吸収をもたらさず、むしろ単層完全性への影響によってであることが見出された。著者等は、インビボ系に存在する他のイオンによる競合が対イオンの有益な効果を打ち消し得るので、イオン対の形成は、荷電した親水性化合物の経上皮輸送を増大するための戦略としてあまり効率的ではない可能性があると結論を下した。J.Van Gelder et al.,“Evaluation of the Potential of Ion Pair Formation to Improve the Oral Absorption of two Potent Antiviral Compounds,AMD3100 and PMPA”,Int.J.of Pharmaceutics 186:127−136(1999)。他の著者等は、イオン対での吸収実験が必ずしも明確な機序を示しているとは限らないと記載している。D.Quintanar−Guerrero et al.,Applicatio
ns of the Ion Pair Concept to Hydrophilic Substances with Special Emphasis on Peptides,Pharm.Res.14(2):119−127(1997)。
【0056】
これらのイオン対吸収実験での問題は、それらが強いイオン対よりむしろゆるいイオン対を用いて行われたことであることを本発明者等は意外にも見出した。実際に、当該技術分野において開示される多数のイオン対吸収実験は、ゆるいイオン対と強いイオン対を明確に区別さえしていない。イオン対を製造する開示された方法を実際に見直しそしてそのような開示された製造方法がゆるいイオン対に関し強いイオン対にではないことに留意することによりゆるいイオン対は開示されることを当業者は識別しなければならない。ゆるいイオン対は対イオン競合を、そしてゆるいイオン対を結合するイオン結合の溶媒媒介(例えば水媒介)切断を比較的受けやすい。従って、イオン対の薬剤部分が腸上皮細胞膜壁に到達する場合に、それは輸送部分とゆるいイオン対において会合しているかもしくはそうでない可能性がある。膜壁の近くに存在するイオン対の可能性は、イオンを一緒に維持するイオン結合によりも2つの個々のイオンの局所濃度に依存し得る。腸上皮細胞膜壁に近づく場合に結合している2つの部分がない場合、複合体を形成していない薬剤部分の吸収の速度は、複合体を形成していない輸送部分により影響を受けない可能性がある。従って、ゆるいイオン対は、薬剤部分だけの投与と比較して吸収への限られた影響のみを有する可能性がある。
【0057】
対照的に、本発明の複合体は、水のような極性溶媒の存在下でより安定である結合を保有する。従って、本発明者等は、複合体を形成することにより、薬剤部分と輸送部分は、これらの部分が膜壁の近くにある時にイオン対として会合している可能性が高いと推論した。この会合は、これらの部分の電荷が埋められ、そして得られるイオン対が細胞膜をより進みやすくする可能性を増大する。
【0058】
1つの態様として、複合体は薬剤部分と輸送部分との間の強いイオン対結合を含んでなる。本明細書に説明されるように、強いイオン対結合はゆるいイオン対結合より安定であり、従って、薬剤部分と輸送部分は、これらの部分が膜壁の近くにある時にイオン対として会合している可能性を増大する。この会合は、これらの部分の電荷が埋められ、そして強いイオン対結合複合体が細胞膜をより進みやすくする可能性を増大する。
【0059】
本発明の複合体は、下部G.I管においてだけでなく、一般に経細胞輸送を改善するものであるので、下部G.I.管だけでなく、G.I.管の全体にわたって複合体を形成していない薬剤部分に対して吸収を改善できることに注目すべきである。例えば、薬剤部分が、主に上部G.I.に存在する能動輸送体の基質である場合、該薬剤部分から形成される複合体は、依然としてその輸送体の基質であることができる。従って、全輸送は、輸送体によりもたらされる輸送フラックスに加えて本発明により提供される改善された経細胞輸送の合計であることができる。1つの態様として、本発明の複合体は、上部G.I.管、下部G.I.管、および上部G.I.管と下部G.I.管の両方における改善された吸収を提供する。
【0060】
本発明の複合体は、様々な薬剤および輸送部分で構成されることができる。一般的に言えば、本発明の複合体を形成するために薬剤部分が最初に選択され、そして次に適切な輸送部分が選択される。当業者は、輸送部分の毒性および耐容性、薬剤部分の構造要素もしくは構造要素残基の極性、薬剤部分の構造要素もしくは構造要素残基の強さ、輸送部分の構造要素もしくは構造要素残基の強さ、輸送部分の可能な治療上の利点が包含されるがこれらに限定されるものではない、輸送部分を選択することにおける多数の因子を考慮することができる。ある種の好ましい態様として、輸送部分の疎水性部分は疎水性鎖、より好ましくはアルキル鎖を含んでなる。このアルキル鎖は、極性溶媒分子による攻撃からイオ
ン結合を立体的に防御することによって複合体の安定性を促進するのに役立つことができる。
【0061】
好ましい態様として、輸送部分は、6〜18個の炭素原子(C6〜C18)、より好ましくは8〜16個の炭素原子(C8〜C16)、さらにより好ましくは10〜14個の炭素原子(C10〜C14)、そして最も好ましくは12個の炭素原子(C12)を有する、アルキル硫酸もしくはそれらの塩を含んでなる。他の好ましい態様として、輸送部分は、6〜18個の炭素原子(C6〜C18)、より好ましくは8〜16個の炭素原子(C8〜C16)、さらにより好ましくは10〜14個の炭素原子(C10〜C14)、そして最も好ましくは12個の炭素原子(C12)を有する、脂肪酸もしくはそれらの塩を含んでなる。
【0062】
本発明の複合体は様々な組成物、特に製薬学的組成物に導入することができる。1つの態様として、本発明は本発明の複合体および製薬学的に許容しうる担体を含んでなる組成物を含んでなる。別の態様として、本発明は本発明の複合体および製薬学的に許容しうる担体を含んでなる製薬学的組成物を含んでなる。本発明の組成物、製薬学的組成物および投与形態物における複合体および他の成分の量は、薬理学的および同様の必要条件に基づいて、当業者により決定されることができる。そのような組成物の調合は、製粉、混合、押し出し、圧縮、コーティングなどを包含する、通常の製薬学的実務に従って行われることができる。
【0063】
本発明の複合体は、一般的な指針に従って製造されることができる。以下に記載する実施例において開示されるような鉄複合体について例示される戦略のような追加の戦略を用いることができる。
【0064】
第一に、薬剤部分は、それが複合体の一部(強いイオン対結合)を形成する酸性構造要素もしくは酸性残基構造要素を含んでなるかどうかについて評価される必要がある。そうである場合、次の評価は、該構造要素が酸性もしくは酸性残基であるかどうかである。酸性残基が存在する場合、次の段階はそれが強酸もしくは弱酸の残基であるかどうかを決定することである。「弱酸」は、約10−4未満の酸解離定数を有する化合物である。典型的に、そして本明細書において用いる場合、弱酸は、水に溶解した場合に、弱酸性の溶液、すなわち、約3〜6の間のpH値を有する溶液を形成する化合物である。典型的な弱酸には、ギ酸、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸およびその置換された形態が包含される。「強酸」は、典型的に、1より大きい酸解離定数を有する化合物をさす。残基が強酸の特性を示す場合、薬剤部分の酸性形態になるようにイオン交換を用いて薬剤部分を処理することができ、それを次に通常の化学技術を用いて単離する。1つの態様として、イオン交換の間に使用する溶媒は、水と有機溶媒の混合物を含んでなる。残基が弱酸のものである場合、周囲pHを下げそして薬剤部分の酸性形態になるようにpH滴定を用いて薬剤部分を処理することができ、それを次に通常の化学技術を用いて水性媒質から単離する。
【0065】
次に、薬剤部分の酸性形態を、薬剤部分の酸性形態になるように本明細書に記載のとおり処理される酸性構造要素もしくは酸性残基構造要素として最初に存在しようと、水より低い誘電定数を有する溶媒の存在下で輸送部分(これはその塩基性形態で存在することができる)と反応させる。適当な輸送部分は、本明細書に開示されるものを含んでなり、そして好ましくは陽イオン界面活性剤、もしくはアミンおよびその塩を含んでなる。次に、複合体を溶媒から分離する。
【0066】
構造要素が塩基性もしくは塩基性残基である場合、次の段階は、それが強塩基もしくは弱塩基の残基であるかどうかを決定することである。典型的に、そして本明細書において
用いる場合、弱塩基は、水に溶解した場合に、弱塩基性溶液、すなわち、約8〜11の間のpH値を有する溶液を形成する化合物である。「強塩基」は、典型的に、水溶液において非常に解離される塩基性化合物をさす。残基が強塩基のものである場合、薬剤部分の塩基性形態になるようにイオン交換を用いて薬剤部分を処理することができ、それを次に通常の化学技術を用いて単離する。1つの態様として、イオン交換の間に使用する溶媒は、水と有機溶媒の混合物を含んでなる。残基が弱塩基のものである場合、周囲pHを上げて薬剤部分の塩基性形態になるようにpH滴定を用いて薬剤部分を処理することができ、それを次に通常の化学技術を用いて水性媒質から単離する。
【0067】
次に、薬剤部分の塩基性形態を、薬剤部分の塩基性形態になるように本明細書に記載のとおり処理される塩基性構造要素もしくは塩基性残基構造要素として最初に存在しようと、水より低い誘電定数を有する溶媒の存在下で輸送部分(これはその酸性形態で存在することができる)と反応させる。適当な輸送部分は、本明細書に開示されるものを含んでなり、そして好ましくは脂肪酸およびそれらの塩、陰イオン界面活性剤、もしくはカルボキシル基を含有する他の製薬学的賦形剤を含んでなる。次に、複合体を溶媒から分離する。
【0068】
構造要素が両性イオンもしくは両性イオン性残基である場合、次の段階は酸性もしくは塩基性基が輸送部分上の相補的イオンと複合体を形成する基であるかどうかを決定することである。輸送部分と結合することにより複合体を形成しない基は、ブロックすることができる。非結合構造要素もしくは残基構造要素をブロックする好ましい方法は、非結合構造要素がイオン化されないように環境pHを調整することである。例えば、酸性構造要素をブロックするためには、酸性構造要素はイオン化されないが、塩基性構造要素はイオン化されるように環境pHを下げる。塩基性構造要素のブロッッキングには、塩基性構造要素はイオン化されないが、酸性構造要素はイオン化されるようにpHを上げる。いったん所望の構造要素がブロックされると、薬剤部分を単離し、そして次に水より低い誘電定数を有する溶媒の存在下で輸送部分と反応させる。次に、複合体を溶媒から分離する。
【0069】
両性イオン性構造要素もしくは両性イオン性残基構造要素の別のスキームとして、輸送部分は、酸性もしくは塩基性基が輸送分子上の相補的イオンと複合体を形成する基であるかどうかにより、輸送部分の酸性もしくは塩基性形態になるようにイオン交換を用いて処理されることができる。輸送部分と結合することにより複合体を形成しない基は、ブロックすることができる。次に、輸送部分の酸性もしくは塩基性形態を水のものより低い誘電定数を有する水性媒質、もしくは水性媒質と溶媒との混合物において薬剤部分のイオン化形態と反応させて、複合体を形成することができる。次に、複合体を通常の化学技術を用いて水性媒質もしくは混合物から分離する。
【0070】
別のスキームとして、薬剤部分および輸送部分の対イオンの異なる溶解度を利用することができる。例えば、対イオンで構成されるゆるいイオン対が水に不溶性である場合には、それは沈殿して出て、薬剤部分および輸送部分を溶液中に残す。次に、水のものより低い誘電定数を有する溶媒を用いて複合体を形成するかもしくは抽出することができる。この戦略の例は、以下の鉄実施例の一部として提供される。
【0071】
様々な溶媒を本発明における使用のために選択することができる。溶媒は、一つにはその中に溶解される薬剤部分および/もしくは輸送部分の物理的性質に基づいて選択することができる。メタノールは典型的な溶媒であり;他の溶媒もまた適当である。例えば、脂肪酸はクロロホルム、ベンゼン、シクロヘキサン、エタノール(95%)、酢酸およびアセトンに可溶性である。これらの溶媒におけるカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸の溶解度(g/L単位)を表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
1つの態様として、複合体の形成に使用する溶媒は水より低い、そして好ましくは水の誘電定数より少なくとも2倍低い、より好ましくは水のものより少なくとも3倍低い誘電定数を有する溶媒である。
【0074】
特に、より低い誘電溶媒相および水相が混合物に存在する態様において、溶媒は、一つには溶媒/分子相互作用に基づいて選択することができる。好ましい溶媒は薬剤部分もしくは輸送部分のいずれとも反応せず、そしていったん複合体が形成されると複合体から分離するのが比較的容易である。複合体の疎水性と比較した、溶媒の相対的親水性もまた重要であり得る。溶媒が、複合体の疎水性と比較して、あまりに親水性である場合には、複合体は水相から離れそして溶媒相に入ることができない。複合体は、それが形成されるにつれて、より低い誘電溶媒層(存在する場合)に入ることができる必要があるが、遊離イオン(かなり高い極性を有する)は、より低い誘電溶媒相(存在する場合)から好ましくは排除されるべきである。
【0075】
複合体が沈殿物である場合には、複合体は濾過、洗浄および乾燥により単離される。複合体が溶解している場合には、1つもしくはそれ以上の方法を利用することができる:(1)真空条件下での溶媒の蒸発、(2)結晶化、もしくは(3)溶媒抽出、続いて蒸発。これらの操作が行われる条件は、当業者により最適化されることができる。
典型的な投与形態物および使用の方法
本発明の複合体は、それを必要とする患者に投与することができる。態様として、本発明の複合体は、それを必要とする患者に投与可能な投与形態物に調合される。好ましい態様として、複合体は組成物、より好ましくは製薬学的組成物に調合され、それを投与形態物は含んでなる。
【0076】
本明細書に記述される複合体は、G.I.管における、そして特に下部G.I.管における増大した吸収速度を提供する。複合体を用いる投与形態物および処置の方法ならびにその増大した結腸吸収をここで記述する。以下に記述する投与形態物は単に例となることが理解される。
【0077】
様々な投与形態物が、本発明の複合体での使用に適している。複合体により成し遂げられる増大した下部G.I.管吸収のために、1日1回の投与が少なくとも約12、好ましくは少なくとも約15時間、より好ましくは少なくとも18時間、そしてさらにより好ましくは少なくとも約20時間にわたって治療効能をもたらすことを可能にする投与形態物が提供される。投与形態物は、薬剤部分の所望の用量を送達する任意の設計に従って構成されそして調合されることができる。典型的に、投与形態物は経口で投与可能であり、そして通常の錠剤もしくはカプセル剤として大きさに従って分類されそして成形される。経口で投与可能な投与形態物は、様々な異なる方法の1つに従って製造することができる。例えば、投与形態物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,pp.1682−1685(1990)に記述されているような、リザーバー装置もしくはマトリックス装置のような拡散システム、封入溶解システム(例えば、「タイニータイムピル(tiny time pill)」およびビーズを包含する)およびマトリックス溶解システムのような溶解システム、ならびに組み合わせ拡散/溶解システムおよびイオン交換樹脂システムとして製造されることができる。
【0078】
本発明の実施における1つの重要な考慮すべき事項は、投与形態物により送達される複合体の物理的状態である。ある態様として、本発明の複合体はペーストもしくは液体状態であることができ、その場合、固形投与形態物は本発明の実施における使用に適当でない可能性がある。そのような場合、ペーストもしくは液体状態の物質を送達することができる投与形態物が使用されるべきである。あるいはまた、ある種の態様として、物質の融点を上げるために異なる輸送部分を使用することができ、従って、本発明の複合体が固形で存在する可能性を高くする。
【0079】
本発明での使用に適当な投与形態物の特定の例は、浸透圧性(osmotic)投与形態物である。浸透圧性投与形態物は、一般に、液体の自由拡散を可能にするが薬剤もしくは存在する場合に浸透圧剤(1つもしくは複数)のは可能にしない半透性の壁により、少なくとも部分的に、形成されるコンパートメントに液体を吸収する駆動力を生み出すために浸透圧を利用する。浸透圧システムの利点は、それらの作用がpHに依存せず、従って、投与形態物が胃腸管を通過しそして著しく異なるpH値を有する異なる微小環境に入る場合でさえ長期間にわたって浸透圧で決定される速度で持続することである。そのような投与形態物の概説は、Santus and Baker,“Osmotic drug delivery:a review of the patent literature,”Journal of Controlled Release,35:1−21(1995)に見出される。浸透圧性投与形態物はまた、各々本明細書にそれらの全部が組み込まれる、以下の米国特許にも詳細に記述されている:第3,845,770号;第3,916,899号;第3,995,631号;第4,008,719号;第4,111,202号;第4,160,020号;第4,327,725号;第4,519,801号;第4,578,075号;第4,681,583号;第5,019,397号;および第5,156,850号。
【0080】
基本浸透圧ポンプ投与形態物と当該技術分野において呼ばれる、典型的な投与形態物を図2に示す。断面図において示される投与形態物20はまた、基本浸透圧ポンプとも呼ばれ、そして内部コンパートメント24を取り囲みそして封入する半透性の壁22を含んでなる。内部コンパートメントは、選択した賦形剤と混合した複合体28を含んでなる、本明細書において薬剤層26と呼ばれる単一成分層を含有する。賦形剤は、壁22を通して外部環境から液体を引き込みそして液体の吸収の際に送達可能な複合体製剤を形成する浸透圧活性勾配を与えるように適合される。賦形剤には、本明細書において薬剤担体30とも呼ばれる適当な沈殿防止剤、結合剤32、潤滑剤34、およびオスマジェント(osm
agent)36と呼ばれる浸透圧活性剤(osmotically active agent)を包含することができる。これらの成分の各々の典型的な物質を以下に提供する。
【0081】
浸透圧性投与形態物の半透性の壁22は、水および生体液のような外部液の通過に透過性であるが、内部コンパートメント中の成分の通過に実質的に不透過性である。壁を形成するために有用な物質は本質的に非侵食性であり、そして投与形態物の寿命の間ずっと生体液に実質的に不溶性である。半透性の壁を形成するための代表的なポリマーには、セルロースエステル、セルロースエーテルおよびセルロースエステル−エーテルのような、ホモポリマーおよびコポリマーが包含される。壁の液体透過性を調節するためにフラックス調節剤(flux−regulating agent)を壁形成物質と混合することができる。例えば、水のような液体への透過性の著しい増加をもたらす因子は本質的に親水性であることが多く、一方、水への著しい透過性減少をもたらすものは本質的に疎水性である。典型的なフラックス調節因子には、多価アルコール、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンジオール、アルキレングリコールのポリエステルなどが包含される。
【0082】
作用中に、浸透圧活性因子の存在に起因する壁22を横切る浸透圧勾配は、胃液が壁を通して吸収されること、薬剤層の膨潤、および内部コンパートメント内での送達可能な複合体製剤(例えば、溶液、懸濁液、スラリーもしくは他の流動性を有する組成物)の形成をもたらす。送達可能な複合体製剤は、液体が内部コンパートメントに入り続けるにつれて出口38を通して放出される。製剤が投与形態物から放出されると同時に、液体は内部コンパートメントに吸収され続け、それにより持続放出を推進する。このようにして、本発明の複合体は長期間にわたって持続的にそして継続して放出される。
【0083】
図3は、別の典型的な浸透圧性投与形態物の略図である。このタイプの投与形態物は、米国特許第4,612,008号;第5,082,668号および第5,091,190号に詳細に記述されており、それらは本明細書に引用することにより組み込まれる。簡潔に言えば、断面で示される投与形態物40は、内部コンパートメント44を特定する半透性の壁42を有する。内部コンパートメント44は、薬剤層46および押し出し層(push layer)48を有する2層構造の圧縮されたコアを含有する。以下に記述されるように、押し出し層48は、押し出し層が使用中に膨張するにつれて、薬剤層を形成する物質が出口ポート50のような1つもしくはそれ以上の出口ポートを介して投与形態物から排出されるように投与形態物内に置かれる置換組成物である。押し出し層は、図3において説明されるように、薬剤層と接触する層状配置で置かれることができ、または押し出し層と薬剤層を分離する1つもしくはそれ以上の介在層を有することができる。
【0084】
薬剤層46は、図2に関して上記に説明するもののような、選択した賦形剤と混合した複合体を含んでなる。典型的な投与形態物は、複合体、担体としてポリ(エチレンオキシド)、オスマジェントとして塩化ナトリウム、結合剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース、そして潤滑剤としてステアリン酸マグネシウムを含んでなる薬剤層を有することができる。
【0085】
押し出し層48は、オスモポリマー(osmopolymer)と当該技術分野において呼ばれる、水性もしくは生体液を吸収しそして膨潤する1つもしくはそれ以上のポリマーのような浸透圧活性成分(1つもしくは複数)を含んでなる。オスモポリマーは、水および水性の生体液と相互作用しそして高度に膨潤するかもしくは膨張する、典型的には2〜50倍の容量増加を示す膨潤性親水性ポリマーである。オスモポリマーは、架橋されていないかもしくは架橋されていることができ、そして好ましい態様としてオスモポリマーは少なくとも軽く架橋されて使用中に投与形態物から容易に出るには大きすぎそしてもつれ合ったポリマー網目を作る。オスモポリマーとして使用することができるポリマーの例は、浸透圧性投与形態物を詳細に記述する上記の参考文献に提供される。典型的なオスモポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)のようなポリ(アルキレンオキシド)、およびポリ(アルカリカルボキシメチルセルロース)(ここで、アルカリはナトリウム、カリウムもしくはリチウムである)である。結合剤、潤滑剤、酸化防止剤および着色剤のような追加の賦形剤もまた押し出し層に含むことができる。使用中に、液体が半透性の壁を横切って吸収されるにつれて、オスモポリマー(1つもしくは複数)は膨潤し、そして薬剤層を押して出口ポート(1つもしくは複数)を介した投与形態物からの薬剤の放出をもたらす。
【0086】
押し出し層はまた、結合剤と呼ばれる成分を含むこともでき、それは典型的に、ポリ−n−ビニルアミド、ポリ−n−ビニルアセトアミド、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ−n−ビニルカプロラクトン、ポリ−n−ビニル−5−メチル−2−ピロリドンなどのような、セルロースもしくはビニルポリマーである。押し出し層はまた、ステアリン酸ナトリウムもしくはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、そして成分の酸化を防ぐために酸化防止剤を含むこともできる。代表的な酸化防止剤には、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、2および3ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシアニソールの混合物およびブチル化ヒドロキシトルエンが包含されるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
オスマジェントもまた、浸透圧性投与形態物の薬剤層および/もしくは押し出し層に導入することができる。オスマジェントの存在は、半透性の壁を横切る浸透圧活性勾配を構築する。代表的なオスマジェントには、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウムなどのような塩、ならびにラフィノース、ショ糖、グルコース、ラクトースおよび炭水化物のような糖が包含される。
【0088】
引き続き図2もしくは3を参照して、投与形態物は、場合により、用量に従って投与形態物をカラーコーディングするためにまたは本発明の複合体もしくは別の薬剤の即時放出を与えるためにオーバーコート(示されない)を含むことができる。
【0089】
使用中に、水は壁を横切りそして押し出し層および薬剤層中に流れる。押し出し層は液体を吸収し、そして膨潤し始め、そしてその結果として薬剤層44を押し進め、出口オリフィスを通してそして胃腸管中に層中の物質が排出されるようにする。押し出し層48は、液体を吸収しそして膨潤し続け、従って、投与形態物が胃腸管にある期間にわたって薬剤層から本発明の複合体を継続的に排出するように設計される。このようにして、投与形態物は、12〜20時間の期間にわたって、もしくは投与形態物のG.I.管通過の実質的に全期間を通して胃腸管への複合体の持続供給を与える。複合体は上部および下部G.I.管の両方において容易に吸収されることができるので、投与形態物の投与は、G.I.管における投与形態物通過の12〜20時間の期間にわたって血流中への薬剤部分の送達を与える。
【0090】
1つの態様として、本発明の投与形態物は、薬剤の第二の形態が上部G.I.管における吸収用に利用可能でありそして複合体が下部G.I.管における吸収用に与えられるように本発明の複合体および薬剤部分の第二の形態(ゆるいイオン対塩のような)を含んでなる。これは、G.I.管の全体にわたる吸収を最適化するために異なる特性が必要とされる状況において最適な吸収を容易にすることができる。
【0091】
本発明の複合体および薬剤部分の第二の形態(ゆるいイオン対塩のような)を含んでなる特定の典型的な投与形態物を図4に示す。このタイプの3層構造の投与形態物は、米国特許第5,545,413号;第5,858,407号;第6,368,626号および第5,236,689号に詳細に記述されており、これらは本明細書に引用することによ
り組み込まれる。浸透圧性投与形態物60は、ゆるいイオン対として存在する薬剤部分塩の第一の層64、本発明の複合体の形態で存在する薬剤部分を含んでなる第二の層66、および押し出し層と呼ばれる第三の層68を含んでなる3層構造のコア62を有する。3層構造の投与形態物は、ゆるいイオン対塩として存在する85.0wt%の薬剤部分塩、100,000の分子量の10.0wt%のポリエチレンオキシド、約35,000〜40,000の分子量を有する4.5wt%のポリビニルピロリドンおよび0.5wt%のステアリン酸マグネシウムの第一の層を有するように製造される。第二の層は、93.0wt%の複合体、5,000,000の分子量の5.0wt%のポリエチレンオキシド、約35,000〜40,000の分子量を有する1.0wt%のポリビニルピロリドンおよび1.0wt%のステアリン酸マグネシウムを含んでなる。
【0092】
押し出し層は、63.67wt%のポリエチレンオキシド、30.00wt%の塩化ナトリウム、1.00wt%の酸化第二鉄、5.00wt%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、0.08wt%のブチル化ヒドロキシトルエンおよび0.25wt%のステアリン酸マグネシウムからなる。半透性の壁は、39.8%のアセチル含有量を有する80.0wt%の酢酸セルロースおよび20.0wt%のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーを含んでなる。
【0093】
図2〜4に示されるもののような投与形態物の溶解速度は、実施例6に記載される方法に従って決定することができる。一般に、投与形態物からの製剤の放出は、水性環境との接触後に始まる。図2に例示される投与形態物において、出口オリフィスに隣接する層に存在する薬剤部分−輸送部分複合体の放出は、水性環境との接触後に放出され、そして装置の寿命の間続く。図4に例示される投与形態物は、出口オリフィスに隣接する薬剤層に存在する薬剤部分塩の初期放出を与え、続いて薬剤部分−輸送部分複合体の放出が起こる。この投与形態物は、通過の最初の8時間にほぼ対応する、上部G.I.管における通過中に薬剤部分塩を放出するように設計されると理解される。複合体は、摂取後約8時間より長い時間にほぼ対応する、下部G.I.管を投与形態物が通る場合に放出される。この設計は、複合体により提供される増加した下部G.I.管吸収を利用する。
【0094】
図5A〜5Cは、当該技術分野において既知でありそして本明細書に引用することにより特に組み込まれる米国特許第5,534,263号:第5,667,804号;および第6,020,000号に記述されている、別の典型的な投与形態物を説明する。簡潔に言えば、図5Aに胃腸管への摂取の前の投与形態物80の断面図を示す。投与形態物は、複合体を含んでなる円筒状の形をしたマトリックス82を含んでなる。マトリックス82の末端84、86は、好ましくは、摂取の容易さを保証するために丸いそして凸状の形である。バンド88、90および92は、円筒状マトリックスを同心円状に取り囲み、そして水性環境において比較的不溶性である物質でできている。適当な物質は上記の特許にそして以下の実施例6に記載される。
【0095】
投与形態物80の摂取後に、バンド88、90、92の間のマトリックス82の領域は、図5Bに例示されるように、侵食し始める。マトリックスの侵食は、G.I.管の流体環境への複合体の放出を開始する。図5Cに例示されるように、投与形態物がG.I.管を通過し続けるにつれて、マトリックスは侵食し続ける。ここでは、マトリックスの侵食は、投与形態物が壊れて3つの断片94、96、98になるほどまで進んでいる。侵食は、断片の各々のマトリックス部分が完全に侵食するまで続く。バンド94、96、98はその後にG.I.管から排出される。
【0096】
図2〜5に記述される投与形態物は、G.I.管への本発明の部分複合体の送達を成し遂げるために設計されそしてそうすることができる様々な投与形態物の単に例となることが理解される。製薬学的技術分野における当業者は、適当である他の投与形態物を同定す
ることができる。
【0097】
本発明の複合体、組成物および投与形態物は、様々な適応症を処置することにおいて有用である。一般に、本発明の複合体、組成物および投与形態物を用いて処置できる適応症の数は、本発明の実施において有用な薬剤部分の数と同じである。1つの態様として、本発明は、本発明の複合体を含んでなる組成物もしくは投与形態物を投与することにより患者における、疾患もしくは障害のような、適応症を処置する方法を提供し、該複合体は薬剤部分と輸送部分の間のハイブリッド結合もしくは強いイオン対結合を特徴とする。1つの態様として、複合体および製薬学的に許容しうる賦形剤を含んでなる組成物は、経口投与によって患者に投与される。
【0098】
投与される用量は、一般に、投与形態物および所望の結果を考慮に入れて、患者の年齢、体重および症状に合わせて調整される。一般に、本発明の複合体を含んでなる投与形態物および組成物は、複合体を形成していない薬剤部分の典型的な即時放出形態の次数の範囲内の(within an order of magnitude)薬剤部分の量を与える量で投与することができる。複合体により提供される増大した吸収のために、複合体の用量は、複合体を形成していない薬剤部分で従来の治療に典型的に推奨されるものより低い可能性があることが多い。典型的な用量は、約0.01マイクログラムの薬剤部分〜約5000mgの薬剤部分である、好ましくは約1マイクログラムの薬剤部分〜約2500mgの薬剤部分である、より好ましくは約10マイクログラムの薬剤部分〜約2000mgの薬剤部分である、さらにより好ましくは約100マイクログラムの薬剤部分〜約1500mgの薬剤部分である、そしてさらにより好ましくは約500マイクログラムの薬剤部分〜約1000mgの薬剤部分である量の薬剤部分を含んでなることができる。典型的な用量は、約0.01マイクログラムの本発明の複合体〜約5000mgの本発明の複合体である、好ましくは約1マイクログラムの本発明の複合体〜約2500mgの本発明の複合体である、より好ましくは約10マイクログラムの本発明の複合体〜約2000mgの本発明の複合体である、さらにより好ましくは約100マイクログラムの本発明の複合体〜約1500mgの本発明の複合体である、そしてさらにより好ましくは約500マイクログラムの本発明の複合体〜約1000mgの本発明の複合体である量の本発明の複合体を含んでなることができる。
【0099】
前述の事項から、本発明の様々な目的および特徴がどのようにして達成されるかを理解することができる。強いイオン対結合もしくはハイブリッド結合により結合される薬剤部分および輸送部分を含んでなる複合体は、複合体を形成していない薬剤部分に認められるものに対して、薬剤部分の増大した結腸吸収を提供することができる。複合体は、溶媒に可溶化した、脂肪酸のような輸送部分と薬剤部分を反応させる、新規な方法から製造され、溶媒は水より低い極性であり、より低い極性は、例えば、より低い誘電定数により明らかである。この反応は、薬剤部分と輸送部分の間で複合体の形成をもたらし、ここで、これら2つの種は、イオン結合ではないそして共有結合ではないが、強いイオン対結合である結合により会合している。
【0100】
本発明は、薬剤部分および輸送部分を含んでなる複合体を含んでなる物質に関する。好ましい態様として、輸送部分は酸性、塩基性もしくは両性イオン性構造要素;または輸送部分においてイオンと対合する酸性、塩基性もしくは両性イオン性残基構造要素を含んでなる。好ましい態様として、輸送部分は脂肪酸もしくはその塩、ベンゼンスルホン酸もしくはその塩、安息香酸もしくはその塩、フマル酸もしくはその塩、またはサリチル酸もしくはその塩を含んでなる。他の好ましい態様として、脂肪酸もしくはその塩はC6〜C18脂肪酸もしくはその塩を含んでなり、より好ましくはC6〜C18脂肪酸もしくはその塩はC12脂肪酸もしくはその塩を含んでなる。好ましい態様として、輸送部分はアルキル硫酸もしくはその塩を含んでなり、より好ましくはアルキル硫酸もしくはその塩はC6〜C18アルキル硫酸もしくはその塩を含んでなり、さらにより好ましくはC6〜C18アルキル硫酸もしくはその塩はラウリル硫酸ナトリウムである。好ましい態様として、輸送部分は製薬学的に許容しうる第一級、第二級もしくは第三級アミンまたはその塩を含んでなる。より好ましい態様として、薬剤部分は酸性、塩基性もしくは両性イオン性構造要素;または塩を形成するためにイオンと対合する酸性、塩基性もしくは両性イオン性残基構造要素を含んでなる。本発明はさらに、該物質および不活性成分を含んでなる組成物に、そして組成物を含んでなる投与形態物に関する。本発明は、処置を必要とする患者に該物質を投与することを含んでなる、疾患もしくは症状を処置する方法に関する。好ましい態様として、該物質は経口、静脈内、皮下、筋肉内、経皮、動脈内、関節内もしくは皮内経路によって投与される。
【0101】
本発明は、イオン形態の薬剤部分を準備すること;イオン形態の輸送部分を準備すること;水のものより低い誘電定数を有する溶媒の存在下で、薬剤部分と輸送部分を合わせて複合体を形成すること;および溶媒から複合体を分離することを含んでなる組成物を製造する方法に関する。好ましい態様として、輸送部分は酸性、塩基性もしくは両性イオン性構造要素;または輸送部分においてイオンと対合する酸性、塩基性もしくは両性イオン性残基構造要素を含んでなる。好ましい態様として、薬剤部分は酸性、塩基性もしくは両性イオン性構造要素;または輸送部分においてイオンと対合する酸性、塩基性もしくは両性イオン性残基構造要素を含んでなる。好ましい態様として、薬剤部分は酸性構造要素もしくは酸性残基構造要素を含んでなり;そして薬剤部分は薬剤部分の酸性形態を得るために処理される。好ましい態様として、薬剤部分は塩基性構造要素もしくは塩基性残基構造要素を含んでなり;そして薬剤部分は薬剤部分の塩基性形態を得るために処理される。好ましい態様として、薬剤部分は両性イオン性構造要素もしくは両性イオン性残基構造要素を含んでなり;そして両性イオン性構造要素もしくは両性イオン性残基構造要素の非結合構造要素もしくは残基構造要素は、薬剤部分と輸送部分を反応させる前にブロックされる。
【0102】
本発明は、イオン形態の薬剤部分を準備すること;イオン形態の輸送部分を準備すること;水のものより低い誘電定数を有する溶媒の存在下で、薬剤部分と輸送部分を合わせて複合体を形成すること;溶媒から複合体を分離すること;および処置を必要とする患者に分離した複合体を投与することを含んでなる処置の方法に関する。好ましい態様として、輸送部分は酸性、塩基性もしくは両性イオン性構造要素;または塩を形成するためにイオンと対合する酸性、塩基性もしくは両性イオン性残基構造要素を含んでなる。好ましい態様として、薬剤部分は酸性、塩基性もしくは両性イオン性構造要素;または塩を形成するためにイオンと対合する酸性、塩基性もしくは両性イオン性残基構造要素を含んでなる。好ましい態様として、薬剤部分は酸性構造要素もしくは酸性残基構造要素を含んでなり;そして薬剤部分は薬剤部分の酸性形態を得るために処理される。好ましい態様として、薬剤部分は塩基性構造要素もしくは塩基性残基構造要素を含んでなり;そして薬剤部分は薬剤部分の塩基性形態を得るために処理される。好ましい態様として、薬剤部分は両性イオン性構造要素もしくは両性イオン性残基構造要素を含んでなり;そして両性イオン性構造要素もしくは両性イオン性残基構造要素の非結合構造要素もしくは残基構造要素は、薬剤部分と輸送部分を反応させる前にブロックされる。好ましい態様として、複合体は経口、静脈内、皮下、筋肉内、経皮、動脈内、関節内もしくは皮内経路によって投与される。
【0103】
本発明はさらに、薬剤部分および輸送部分の複合体を準備すること;および改善を必要とする患者に複合体を投与することを含んでなる薬剤部分の吸収を改善する方法に関する。好ましい態様として、複合体は経口投与され、そして改善された吸収は改善された経口吸収を含んでなる。好ましい態様として、改善された経口吸収は改善された下部胃腸管吸収を含んでなる。好ましい態様として、改善された経口吸収は改善された上部胃腸管吸収を含んでなる。好ましい態様として、複合体は経皮投与され、そして改善された吸収は改善された経皮吸収である。好ましい態様として、複合体は皮下投与され、そして改善された吸収は改善された皮下吸収である。
【0104】
本発明の特徴および利点が記述されそして指摘されているが、本発明の態様に適用される場合に、本明細書に記載の方法における様々な改変、変更、付加および省略を本発明の精神からそれることなしに行うことができることを医学技術分野の当業者は理解する。
【0105】
[実施例]
以下の実施例は、請求する発明を例証するものであり、そしていかなる方法によっても限定するものではない。
【0106】
メトホルミン
メトホルミンは、N,N−ジメチルイミドジカルボンイミド酸ジアミドをさし、そしてC11の分子式、129.17の分子量を有する。該化合物は、塩酸メトホルミンとして市販されている。図6は、メトホルミンの化学構造を示す。
【実施例1】
【0107】
メトホルミン−輸送部分複合体の製造
材料
塩酸メトホルミン 13.0g
ラウリン酸 16.0g
メタノール 675mL
アセトン 300mL
脱塩水 14mL
陰イオン性樹脂(Amberlyst A−26(OH)) 108g
【0108】
メトホルミン塩基の製造
イオン交換カラムに陰イオン性樹脂、Amberlyst A−26(OH)を充填し、そして正味重量を得た。
【0109】
カラムを乾燥させないように注意して、カラムを最初に脱イオン(DI)水ですすぎ(バックフラッシュ)、そして次に2%v/vのDI水を含有するメタノールですすいだ。
【0110】
塩酸メトホルミンを2容量%のDI水を含有する365mLのメタノールを含んでなる溶離剤に溶解した。
【0111】
分液漏斗を用いて段階3の溶液を滴下してカラムに通し、そして溶出液を集めた。通した総塩酸メトホルミンは、イオン交換樹脂の平衡化点(限度容量)より少ないと計算された。カラムをほぼ等容量の溶離剤ですすいだ。メトホルミン塩基の合計690mLの溶出液を集めた。
【0112】
合わせた溶出液を40℃の外部温度で真空下で蒸発乾固させ、濃縮段階の最後に65℃に上げて全ての残留する水を除いた。この濃縮段階は、メトホルミン塩基の不安定な性質のために最も迅速な方法で行われた。
【0113】
複合体形成
ラウリン酸−アセトン溶液(16.0gのラウリン酸を300mLのアセトンに溶解する)を調製した。上記の段階5からの濃縮したメトホルミン塩基をアセトンの数回の洗浄を用いて溶解し、そしてこれらの洗浄液を濾過助剤の存在下で直ちに濾過してあらゆる転化されていない塩酸メトホルミンを除いた。濾液をエルレンマイヤーフラスコに集め、そして攪拌しながら、分液漏斗を用いて、ラウリン酸−アセトン溶液を速い滴下で加えた。
メトホルミンラウレートは、沈殿して出てきた。攪拌を周囲温度(20〜25℃)で一晩続けた。
【0114】
溶媒および沈殿したメトホルミンラウレートの混合物をブフナー漏斗を通して濾過した。濾過ケーキを4x200mLのアセトンですすぎ、そして次に真空吸引下で1時間乾燥させた。濾過ケーキを濾紙からこすり落とし、そして秤量した。融点を毛細管において決定した。最終乾燥を周囲温度で3時間真空オーブンにおいて行った。
【0115】
上記の方法は、150〜153℃の融点を有するメトホルミンラウレートの複合体の形成をもたらした。塩酸メトホルミンの融点は、225℃として報告される。総収率=使用した塩酸メトホルミンおよびラウリン酸の化学量論的量から計算される理論量に対して75%。
【0116】
図8Aは、メトホルミン−輸送部分複合体の製造の一般的合成反応スキームを示す。図8Bは、メトホルミン−輸送部分複合体の製造の一般的合成反応スキームを示し、ここで、輸送部分はカルボキシル基を含む。図8Cは、本実施例において説明されるような、メトホルミン−脂肪酸複合体の製造の合成反応スキームを示す。
【実施例2】
【0117】
メトホルミン−輸送部分複合体の特性化
HPLC特性化
実施例1に記載のとおり形成されるメトホルミン−ラウレート複合体を分析するために逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)を用いた。比較のために、メトホルミンHClの、ラウリン酸ナトリウムの、そしてメトホルミンHClとラウリン酸ナトリウムの物理的混合物のHPLCトレースもまた生成せしめた。逆相は、蒸発光散乱検出器を有するHewlett Packard 1100液体クロマトグラフ上でそしてC3カラム(Agilest Zorbas SB C3,5μm,3.0x75mm)を用いて行った。水:アセトニトリル 50:50 v:vの移動相を用いた。カラム温度は40℃であり、そして流速は0.5mL/分であった。
【0118】
結果を図9A〜9Dに示す。塩酸メトホルミンのトレースは図9Aに示され、そして1.1分での単一のピークが認められる。ラウリン酸の塩形態、ラウリン酸ナトリウムは、約3〜4分の間に単一の幅広いピークとして溶出する(図9B)。水におけるメトホルミンHClとラウリン酸ナトリウムの1:1モル混合物は、2つのピーク、塩酸メトホルミンに対応する1.1分での1つのピークおよびラウリン酸ナトリウムの約2.7〜4分の間のもう1つのピークとして溶出する(図9C)。図9Dは、実施例1における方法により形成される複合体のHPLCトレースを示し、ここで、3.9〜4.5分の間に溶出する単一のピークが認められる。HPLCトレースは、メトホルミン塩基およびラウリン酸で構成される複合体が水におけるこれら2つの成分の物理的混合物と異なることを示す。トレースはまた、複合体がHPLC分析用の溶媒系(水:アセトニトリル 50:50 v:v)に供される場合に解離しないことも示す。
【0119】
オクタノール/水分配係数
メトホルミン−ラウレート複合体を特性化する別の研究において、複合体のオクタノール/水分配係数(D=Cオクタノール/C)を測定し、そしてメトホルミンHCl、塩酸メトホルミン:ラウリル硫酸ナトリウムの1:1(mol/mol)混合物および塩酸メトホルミン:ラウリン酸ナトリウムの1:1(mol/mol)混合物と比較した。結果を表3に示す。
【0120】
【表3】

【0121】
複合体は0.44のLogD、塩酸メトホルミンと比較して著しい増加を有し、複合体がメトホルミンの塩形態よりオクタノールに有利に分配することを示唆した。複合体はまた、脂肪酸塩における塩酸メトホルミンの物理的混合物と比較して高いLogDも有した。LogDのこの違いは、メトホルミン−脂肪酸の複合体がこれら2種の物理的混合物、すなわち、単純イオン対ではなく、別の形態のものであることをさらに裏付ける。図7は、メトホルミンHClのpHの関数としてのオクタノール/水分配係数の対数のプロットである。
【0122】
解離特性
メトホルミン−脂肪酸複合体を脂肪酸のカプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸およびオレイン酸を用いて実施例1に記載の方法に従って製造した。メトホルミンおよびコハク酸の複合体もまた製造した。複合体を融点および溶解度により特性化し、そしてデータを表4Aに要約する。さらに、水溶液
【数2】

における様々な複合体の伝導率を23℃でCDM83伝導率計(Radiometer Copenhagen)で測定した。値を表4Bに要約し、そして図10Aにグラフで示す。
【0123】
【表4】

【0124】
【表5】

【0125】
図10Aは、メトホルミンHCl(丸)、サクシネート(逆三角形)、カプレート(正方形)、ラウレート(ひし形)、パルミテート(三角形)およびオレエート(八角形)と複合体を形成したメトホルミンのメトホルミン濃度の関数としてのマイクロジーメンス/センチメートル(μS/cm)単位の伝導率を示す。メトホルミンHClは、全ての濃度で最も高い伝導率を有した。複合体は、塩酸メトホルミンより低い伝導率を有し、増加する脂肪酸炭素数とともに減少する伝導率は明らかであった。
【0126】
図10Bは、式3から決定される、メトホルミン濃度の関数としての複合体の各々の非イオン化薬剤のパーセントを示す。メトホルミンHCl(丸)は完全にイオン化され、一方、メトホルミン−サクシネート(逆三角形)は約80%イオン化される。複合体のメトホルミン−カプレート(正方形)およびメトホルミン−ラウレート(ひし形)は約50%イオン化され、そしてメトホルミン−パルミテート(三角形)およびメトホルミン−オレエート(八角形)は約30%イオン化される。この場合もまた、このデータは、イオン対の塩酸メトホルミンとメトホルミン−脂肪酸複合体の間の違いを立証する。
【実施例3】
【0127】
経口強制飼養ラットモデルを用いるインビボ下部G.I.管吸収
8匹のラットを2つの処置群に無作為に選んだ。12〜24時間絶食させた後に、第一群には塩酸メトホルミンの40mg/kgの遊離塩基同等物を経口強制飼養により与えた。第二群には、実施例1に記載のとおり製造した、メトホルミンラウレート複合体の40mg/kgの遊離塩基同等物を経口強制飼養により与えた。血液サンプルを経口強制飼養後15分、30分、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、6時間および8時間で尾静脈から採取した。メトホルミン血漿濃度をLC/MS/MSにより分析した。
【0128】
結果を図11に示す。経口強制飼養によりメトホルミンHClを与えたラットにおける血漿濃度(丸)は、約4080ng/mLのCmaxで、処置後約1時間で最大の血漿濃度に達した。メトホルミン−ラウレート複合体で経口強制飼養により処置したラット(ひし形)は、約5090ng/mLのCmaxで、処置後約1時間で最大の血漿濃度を有した。複合体で処置したラットの血漿濃度は、処置後1〜8時間の期間における全ての試験点で一層高かった。データの分析により、複合体の形態で投与した場合のメトホルミンの相対的生物学的利用能は、メトホルミンHClとして投与した場合のメトホルミンの生物学的利用能(100%の生物学的利用能)に対して、151%であることが示された。
【0129】
研究の最後に、ラットを安楽死させ、そして炎症の兆候を探すために試験動物のG.I
.管の肉眼的評価を行った。複合体でもしくはメトホルミンHClで処置したラットにおける炎症は認められなかった。
【実施例4】
【0130】
ラットにおける洗浄結紮(flushed ligated)結腸モデルを用いたインビボ吸収
製剤を試験するために「結腸内結紮モデル」として一般に知られている動物モデルを用いた。絶食させ麻酔をかけた0.3〜0.5kgのスプラーグ−ドーリーオスラットの外科的準備は、以下のように進行した。近位結腸の断片を単離し、そして結腸から糞便物質を洗い流した。カテーテルを内腔に置きそして試験製剤の送達のために皮膚の上に露出させながら断片を両端で縛った。結腸内容物を流し出し、そして結腸を動物の腹部に戻した。実験設定によっては、臨床状況における実際の結腸環境をより正確にシミュレートするために、断片に1mL/kgの20mMリン酸ナトリウムバッファー、pH7.4を満たした後に試験製剤を加えた。
【0131】
ラットを外科的準備の後にそして各試験製剤にさらす前に約1時間にわたって平衡化させた。メトホルミンHClもしくはメトホルミン−脂肪酸複合体を10mgのメトホルミンHCl/ラットもしくは10mgのメトホルミン複合体/ラットの投薬量で結腸内ボーラスとして投与した。脂肪酸のカプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸およびオレイン酸で、そしてコハク酸ダイマー(succinate acid dimer)で、実施例1に記載のとおり製造したメトホルミン−脂肪酸複合体でラットを処置した。血液サンプルを試験製剤の投与後0、15、30、60、90、120、180および240分で頸静脈カテーテルから取得し、そして血液メトホルミン濃度について分析した。以下の表5〜10は、各時間点でナノグラム/ミリリットル単位で測定される血漿において検出されるメトホルミン塩基の濃度を各複合体についてそして各ラットについて示す。
【0132】
【表6】

【0133】
【表7】

【0134】
【表8】

【0135】
【表9】

【0136】
【表10】

【0137】
【表11】

【0138】
比較のために、2mg/kgラット体重の投薬量のメトホルミンHClを3匹の試験ラットの血流中に直接静脈内注入した。血液サンプルをメトホルミン塩基の分析のために4時間の期間にわたって定期的に採取した。結果を表11に示す。
【0139】
【表12】

【0140】
表5〜10の結果を図12にグラフで示す。図12は、メトホルミンHCl(丸)、サクシネート(ひし形)、パルミテート(三角形)、オレエート(逆三角形)、カプレート(正方形)およびラウレート(八角形)と複合体を形成したメトホルミンの時間単位の時間の関数としてのラットにおけるng/mL単位のメトホルミン血漿濃度を示す。最も高い血漿濃度は、ラウリン酸(丸)からそしてカプリン酸(正方形)で製造した複合体から得られた。パルミチン酸(三角形)およびオレイン酸(逆三角形)との複合体は、ラウリン酸およびカプリン酸との複合体から得られるものより低いが、メトホルミンHClによりもしくはメトホルミンサクシネートにより与えられる血漿濃度より高いメトホルミン血漿濃度を達成した。
【0141】
表12は、相対的Cmax(メトホルミンHClの血漿濃度に対する各複合体のメトホルミン塩基の最大血漿濃度)および結紮結腸ヘの挿管によって与えられたメトホルミンHClの生物学的利用能に対して(第四縦列)そして静脈内に与えられたメトホルミンHClの生物学的利用能に対して(第三縦列)正規化した各複合体の相対的生物学的利用能を示す。
【0142】
【表13】

【0143】
HCl塩のものに対して、メトホルミン−パルミテート複合体で得られる生物学的利用能のほぼ5倍の増加により明らかなように、メトホルミンはメトホルミン−輸送部分複合体の形態で下部G.I.管への吸収に提供される場合に著しく増大される。オレエート複合体は、HCl塩のものに対して生物学的利用能の14倍の改善をもたらした。メトホルミン−カプレート複合体は、HCl塩のものに対して生物学的利用能のほとんど18倍の改善を与えた。メトホルミン−ラウレート複合体は、HCl塩のものに対して生物学的利用能の20倍より大きい改善をもたらした。従って、本発明は、メトホルミンおよび輸送部分で構成される複合体を含んでなる化合物を意図し、ここで、該複合体は、メトホルミン血漿濃度から決定されるメトホルミン生物学的利用能により明らかなように、下部G.I.管におけるメトホルミンHClの吸収に対して下部G.I.管吸収の少なくとも5倍の増加、より好ましくは少なくとも15倍の増加、そしてより好ましくは少なくとも20倍の増加を与える。従って、メトホルミンは、メトホルミン−輸送部分複合体の形態で投与する場合に、血中へのメトホルミンの著しく増大した下部G.I.管吸収を与える。
【実施例5】
【0144】
ラットにおける洗浄結紮結腸モデルを用いたインビボ吸収
メトホルミンHClとラウリン酸ナトリウムの物理的混合物(1:1のモル比)として与えられる場合のメトホルミンの生物学的利用能に対する複合体の形態で与えられる場合のメトホルミンの生物学的利用能を比較するために実施例4に記載の洗浄結紮結腸モデルを用いて別の研究を行った。2つの試験製剤(メトホルミン−ラウレート複合体および1:1のモル比のメトホルミンHCl:ラウリン酸ナトリウム)のもしくはメトホルミンHClの様々な用量を結紮結腸に挿管した。血漿サンプルをメトホルミン濃度について分析し、そして静脈内投与したメトホルミンの生物学的利用能に対して生物学的利用能を決定した。結果を図13に示す。
【0145】
図13は、メトホルミンHClとラウリン酸ナトリウムの物理低混合物の(丸)、そしてメトホルミンラウレート複合体の(正方形)mg塩基/kg単位のメトホルミン用量の関数としての生物学的利用能パーセントを示す。複合体は、物理的混合物より少ない変動で高い生物学的利用能を有した。
【0146】
図14は、結紮結腸への挿管によって(丸)もしくは静脈内に(三角形)投与したメトホルミンHClと比較した複合体(ひし形)の薬物動態を説明するために、実施例3における表5、11および12からのデータを示す。複合体は、薬剤の塩形態より高い結腸吸収を与え、そして静脈内投与より長く続く血液濃度を有する。
【実施例6】
【0147】
メトホルミン−輸送部分複合体を含んでなる投与形態物の製造
メトホルミンHClの層およびメトホルミン−ラウレート複合体の層を含んでなる投与形態物を以下のように製造した。
【0148】
10グラムの塩酸メトホルミン、100,000の分子量の1.18gのポリエチレンオキシドおよび約38,000の分子量を有する0.53gのポリビニルピロリドンを通常のミキサーにおいて20分間乾式混合して均質な混合物を生成せしめた。次に、3成分乾式混合物に、ミキサーが連続して混ぜ合わせながら、4mLの変性無水アルコールをゆっくりと加えた。混合をさらに5〜8分間続けた。混合した湿式組成物を16メッシュふるいに通し、そして室温で一晩乾燥させた。次に、乾式顆粒を16メッシュふるいに通し、そして0.06gのステアリン酸マグネシウムを加え、そして全ての成分を5分間乾式混合した。新たな顆粒は、投与形態物における初期用量層としての調合の準備が完了した。顆粒は、85.0wt%の塩酸メトホルミン、100,000の分子量の10.0wt%のポリエチレンオキシド、約35,000〜40,000の分子量を有する4.5wt%のポリビニルピロリドンおよび0.5wt%のステアリン酸マグネシウムを含んでなった。
【0149】
投与形態物におけるメトホルミン−ラウレート層を以下のように製造した。最初に、実施例1に記載のとおり製造した、9.30グラムのメトホルミンラウレート複合体、5,000,000の分子量の0.50gのポリエチレンオキシド、約38,000の分子量を有する0.10gのポリビニルピロリドンを通常のミキサーにおいて20分間乾式混合して均質な混合物を生成せしめた。次に、5分間連続して混合しながら混合物に変性無水エタノールをゆっくりと加えた。混合した湿式組成物を16メッシュふるいに通し、そして室温で一晩乾燥させた。次に、乾式顆粒を16メッシュふるいに通し、そして0.10gのステアリン酸マグネシウムを加え、そして全ての成分を5分間乾式混合した。組成物は、93.0wt%のメトホルミンラウレート、5,000,000の分子量の5.0wt%のポリエチレンオキシド、約35,000〜40,000の分子量を有する1.0wt%のポリビニルピロリドンおよび1.0wt%のステアリン酸マグネシウムを含んでなった。
【0150】
浸透圧ポリマーヒドロゲル組成物を含んでなる押し出し層を以下のように製造した。最初に、7,000,000の分子量を含んでなる58.67gの製薬学的に許容しうるポリエチレンオキシド、5gのカーボポル974P、30gの塩化ナトリウムおよび1gの酸化第二鉄を別個に40メッシュふるいを通して選別した。選別した成分を9,200の分子量の5gのヒドロキシプロピルメチルセルロースと混合して均質な混合物を生成せしめた。次に、5分間連続して混合しながら混合物に50mLの変性無水アルコールをゆっくりと加えた。次に、0.080gのブチル化ヒドロキシトルエンを加え、続いてさらに混合した。新たに製造した顆粒を20メッシュふるいに通し、そして室温(周囲)で20時間乾燥させた。乾式した成分を20メッシュふるいに通し、そして0.25gのステアリン酸マグネシウムを加え、そして全ての成分を5分間混合した。最終組成物は、58.7wt%のポリエチレンオキシド、30.0wt%の塩化ナトリウム、5.0wt%のカーボポル、5.0wt%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、1.0wt%の酸化第二鉄、0.25wt%のステアリン酸マグネシウムおよび0.08wt%のブチル化ヒドロキシトルエンを含んでなった。
【0151】
3層投与形態物を以下のように製造した。最初に、118mgの塩酸メトホルミン組成物をパンチ・金型セットに加えそして詰め、次に427mgのメトホルミンラウレート組成物を第二の層として金型セットに加え、そして再度詰めた。次に、272mgのヒドロゲル組成物を加え、そして3層を9/32インチ(0.714cm)の直径のパンチ金型セットに1.0トン(1000kg)の圧縮力下で圧縮し、密接な3層構造のコア(錠剤)を形成した。
【0152】
39.8%のアセチル含有量を有する80.0wt%の酢酸セルロースおよび7680〜9510の分子量を有する20.0%のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーを含んでなる半透性の壁形成組成物は、これらの成分を80:20 wt/wt組成物においてアセトンに溶解して5.0%の固体溶液を作ることにより製造した。溶液容器をこの段階の間温水浴に置くことにより、成分の溶解は加速された。壁形成組成物を3層構造のコア上にそして周りに噴霧して93mgの厚さの半透性の壁を生成せしめた。
【0153】
次に、40mil(1.02mm)の出口オリフィスを半透性の壁付き3層構造錠剤にレーザードリルで開けて送達装置の外部とメトホルミン層の接触を与えた。投与形態物を乾燥させてあらゆる残留溶媒および水を除いた。
【0154】
投与形態物のインビトロ溶解速度は、37℃で恒温水槽においてUSPタイプVII槽インデクサー(bath indexer)に取り付けられている金属コイルサンプルホルダーに投与形態物を置くことにより決定した。放出媒質のアリコートをクロマトグラフィーシステムに注入して各試験間隔の間に人工胃液(AGF)をシミュレートする媒質に放出される薬剤の量を定量した。3個の投与形態物を試験し、そして平均溶解速度を図15Bに示し、ここで、mg/時間単位のメトホルミンの放出速度を時間単位の時間の関数として示す。水性環境との接触後4時間で、投与形態物は、その後の12時間にわたってほぼ均一な量の薬剤を放出し始め、薬剤の放出は、水性環境との接触後16時間より大きい時間で減少し始める。出口オリフィスに隣接する薬剤層に存在する塩酸メトホルミンの放出は、最初に放出される。水性環境との接触後約8時間で、メトホルミン−輸送部分複合体の放出が起こり、そしてさらに8時間にわたって実質的に一定の速度で続く。この投与形態物は、破線の棒で示されるような、通過の最初の8時間にほぼ対応する、上部G.I.管における通過中に塩酸メトホルミンを放出するように設計されると理解される。メトホルミン−輸送部分複合体は、図15において点付きの棒で示されるような、摂取後約8時間より長い時間にほぼ対応する、下部G.I.管を通って投与形態物が移動するにつれて放出される。この設計は、複合体により提供される下部G.I.管における増加した吸収を利用する。
ガバペンチン
【実施例7】
【0155】
ガバペンチン−ラウリルサルフェート複合体の製造
1.25mLの脱イオン水中0.5mLの36.5%塩酸(5mmol HCl)の溶液を調製した。
【0156】
2.5mmolのガバペンチン(0.86g)を段階1の溶液に加えた。混合物を室温で10分間攪拌した。塩酸ガバペンチンが形成された。
【0157】
3.5mmolのラウリル硫酸ナトリウム(1.4g)を段階2の水溶液に加えた。混合物を室温で20分間攪拌した。ガバペンチンとラウリル硫酸のゆるいイオン対が形成された。
【0158】
4.50mLのジクロロメタンを段階3の溶液に加えた。混合物を室温で2時間攪拌した。
【0159】
5.段階4の混合物を分液漏斗に移し、そして3時間沈降させた。2相、ジクロロメタンの下相および水の上相が形成された。
【0160】
6.段階5の上相および下相を分離した。下側のジクロロメタン相を回収し、そしてジクロロメタンを室温で蒸発乾固させ、続いて40℃で真空オーブンにおいて4時間乾燥させた。ガバペンチン−ラウリルサルフェートの複合体(1.9g)が得られた。全収率は、ガバペンチンおよびラウリル硫酸ナトリウムの初期量から計算される理論量に対して87%であった。
【0161】
図16Cは、ガバペンチン−アルキルサルフェート複合体の製造の合成反応スキームを示す。
【実施例8】
【0162】
ガパペンチン−ラウリルサルフェート複合体の特性化
実施例7に記載のとおり形成されたガバペンチン−ラウリルサルフェート複合体を分析するためにフーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いた。FTIRスペクトルは、減衰全反射(ATR)付属品および液体N2冷却したMCT(テルル化カドミウム水銀)検出器からなるPerkin−Elmer Spectrum 2000 FTIR分光計システムを用いることにより得られた。ガバペンチン、ラウリル硫酸ナトリウムの、そしてガバペンチンとラウリル硫酸ナトリウムの物理的混合物のFTIRスキャンもまた生成せしめた。ガバペンチン、ラウリル硫酸ナトリウムの、そしてガバペンチンとラウリル硫酸ナトリウムの1:1モル比の物理的混合物(2つの成分をメタノールに溶解し、そして固体フィルムとして空気中で乾燥させた)のFTIR/ATRスペクトルもまた生成せしめ、そして結果を17A〜17Dに示す。ガバペンチンのスペクトルは図17Aに示され、そしてNHおよびCOO部分に対応するピークが示される。ラウリル硫酸ナトリウムのスペクトルは図17Bに示され、そしてS−O部分に対応する主要なダブレットピークが1300〜1200cm−1の間に認められる。水におけるガバペンチンHClとラウリル硫酸ナトリウムの1:1モル混合物は図17Cに示され、そしてガバペンチンに特有の明確なパターンの減衰は明らかであり、そしてラウリル硫酸ナトリウムからのS−Oピーク(1300〜1200cm−1)の広がりが認められる。図17Dは、実施例7における方法により形成される複合体のFTIRスペクトルを示し、ここで、ガバペンチンのCOO−基に対応する2つのピークは消失し、そしてガバペンチンラウリルサルフェート複合体におけるCOOH基のピークで置き換えられ、COO−の電荷ブロッキングを示唆した。ガバペンチンのN−H部分の変形は、ガバペンチンラウリルサルフェートのスペクトルにおける15cm−1のシフトにより認められた。N−H結合のバンドのこのシフトは、得られる複合体におけるN−H基のプロトン化を示唆する。ラウリル硫酸ナトリウムのスペクトルにおけるS−O吸収を示す1250cm−1のピークは、ガバペンチン複合体のスペクトルにおいて示されるように30cm−1シフトされ、ラウリル硫酸ナトリウムの硫酸基とガバペンチンとの相互作用を示唆した。FTIRスキャンは、ガバペンチンで構成される複合体が2つの成分の物理的混合物と異なることを示した。
【実施例9】
【0163】
ラットにおける洗浄結紮結腸モデルを用いたインビボ結腸吸収
「洗浄結紮結腸モデル」もしくは「結腸内結紮モデル」として一般に知られている動物モデルを用いた。絶食させた、0.3〜0.5kgのスプラーグ−ドーリーオスラットに麻酔をかけ、そして近位結腸の断片を単離した。結腸から糞便物質を洗い流した。カテーテルを内腔に置きそして試験製剤の送達のために皮膚の上に露出させながら断片を両端で縛った。結腸内容物を流し出し、そして結腸を動物の腹部に戻した。実験設定によっては、臨床状況における実際の結腸環境をより正確にシミュレートするために、断片に1mL/kgの20mMリン酸ナトリウムバッファー、pH7.4を満たした後に試験製剤を加えた。
【0164】
ラット(n=3)を外科的準備の後にそして各試験製剤にさらす前に約1時間にわたって平衡化させた。ガバペンチン−ラウリルサルフェート複合体もしくはガバペンチンを結腸内ボーラスとして投与し、そして10mgのガバペンチン−ラウリルサルフェート複合体/ラットもしくは10mgのガバペンチン/ラットで送達した。頸静脈カテーテルから得られる血液サンプルを0、15、30、60、90、120、180および240分で採取し、そしてガバペンチン濃度について分析した。4時間の試験期間の最後に、ラットをペントバルビタールの過剰摂取で安楽死させた。各ラットからの結腸断片を切り取り、そして腸間膜反対側縁に沿って縦方向に開いた。各断片を炎症について肉眼的に観察し、そしてあらゆる異常に注意した。切り取った結腸を方眼紙上に置き、そして結腸表面積を概算するために測定した。試験ラットのいずれかの粘膜における肉眼で見える組織病理学的変化はなかった。
【0165】
ラットのコントロール群(n=3)を1mg/ラットの用量で静脈内にガバペンチンで処置した、血液サンプルをガバペンチン濃度の分析のために上記に示す同じ時間で採取した。
【0166】
各試験動物のガバペンチン血漿濃度および各試験群における動物の平均血漿濃度を表13〜15に示す。
【0167】
【表14】

【0168】
【表15】

【0169】
【表16】

【0170】
図18は、時間の関数として各試験群における平均ガバペンチン濃度を示す。静脈内に投与したガバペンチン(三角形)は高い初期血漿濃度を与え、最初の15分にわたって大幅に減少する濃度を有する。ガバペンチンが結腸内ボーラスとして投与される場合(丸)、薬剤のゆっくりとした吸収が起こる。対照的に、薬剤がガバペンチン−ラウリルサルフェート複合体の形態で下部G.I.管に投与される場合(ひし形)、薬剤の迅速な取り込みが起こり、Cmaxは挿管後1時間で認められる。
【0171】
本研究からの薬物動態パラメーターを表16に示す。曲線下の面積(AUC)は、ガバペンチン投与の各々について1mgのガバペンチン/ラットに基づいて時間ゼロから時間無限まで決定され、ここで、時間無限は対数線形減少を仮定することにより概算された。ガバペンチンの生物学的利用能は、薬剤の静脈内投与によりもたらされるガバペンチン濃度のパーセントとして表される。
【0172】
【表17】

【0173】
ガバペンチンおよびラウリル硫酸の複合体により提供される増大した結腸吸収は、純薬剤(neat drug)に対して複合体の形態で下部G.I.管に投与した場合の薬剤の著しく改善された生物学的利用能から明らかである。ガバペンチン−ラルリルサルフェート複合体は、純薬剤のものに対して生物学的利用能の13倍の改善を与えた。従って、本発明は、ガバペンチン(もしくはプレガバリン)および輸送部分で構成される複合体を含んでなるか、それから本質的になるか、もしくはそれからなる化合物を意図し、ここで、該複合体は、ガバペンチン(もしくはプレガバリン)血漿濃度から決定されるガバペンチン(もしくはプレガバリン)生物学的利用能により明らかなように、ガバペンチン(もしくはプレガバリン)の結腸吸収に対して結腸吸収の少なくとも5倍の増加、より好ましくは少なくとも10倍の増加、そしてより好ましくは少なくとも12倍の増加を与える。従って、ガバペンチン(もしくはプレガバリン)は、ガバペンチン(もしくはプレガバリン)−輸送部分複合体の形態で投与する場合に、血中へのガバペンチン(もしくはプレガバリン)の著しく増大した結腸吸収を与える。
【実施例10】
【0174】
インビボ吸収
28匹のラットを7つの試験群(n=4)に無作為に選んだ。ガバペンチンもしくは実施例1Aに記載のとおり製造したガバペンチン−ラウリルサルフェート複合体を5mg/ラット、10mg/ラットおよび20mg/ラットの投薬量でラットの十二指腸の起始部にカテーテルによって挿管した。残りの試験群には1mg/kgのガバペンチンを静脈内に与えた。
【0175】
血液サンプルを4時間の期間にわたって各動物から採取し、そしてガバペンチン含有量について分析した。結果を表17〜22にそして図19A〜19Cに示す。
【0176】
【表18】

【0177】
【表19】

【0178】
【表20】

【0179】
【表21】

【0180】
【表22】

【0181】
【表23】

【0182】
図19Aは、静脈内に(三角形)そして5mg(丸)、10mg(正方形)および20mg(ひし形)の投与量で十二指腸に投与した、純ガパペンチンで処置した動物におけるng/mL単位のガバペンチン血漿濃度を示す。用量増加に伴って増加する血液濃度が、十二指腸への挿管によって薬剤を与えた動物について認められた。もちろん、静脈内に処置した動物のより低い血漿薬剤濃度(三角形)は、より低い薬剤用量のためである。
【0183】
図19Bは、静脈内に(三角形)そして5mg(丸)、10mg(正方形)および20mg(ひし形)の投与量で十二指腸に直接ガバペンチン−ラウリルサルフェート複合体を与えた動物の結果を示す。ガバペンチン−ラウリルサルフェート複合体を与えた動物の絶対血液濃度は、ガバペンチンで処置した動物より低いが、おそらく一つには飽和されていないL−アミノ酸輸送システムおよび/もしくは複合体により提供される他の機序による増大した輸送のために、複合体からのガバペンチンの吸収は純薬剤の吸収に対して増大されることをデータは示す。これは、図6Aおよび6Bにおける5mgと10mgの用量間のそして10mgと20mgの用量間の血液濃度の比較から明らかであり、ここで、増加した用量での血液濃度の増加は、複合体の形態で投与するガバペンチンではより大きい。
【0184】
図19Cは、ラットの十二指腸に純薬剤として(逆三角形)もしくはガバペンチンラウリルサルフェート複合体として(丸)投与したガバペンチンの生物学的利用能パーセントを示す。生物学的利用能パーセントは、静脈内に投与したガバペンチンに対して決定される。20mgの投与量で、ガバペンチン−ラウリルサルフェート複合体は、純薬剤より高い生物学的利用能を示した。より高い用量で増加した生物学的利用能は、複合体により提供される増大した吸収に起因すると思われ、ここで、G.I.管における取り込みは、複合体のL−アミノ酸輸送系による取り込みに限定されず、経細胞および傍細胞機序によっても起こっている。
【0185】
表23は、0〜4時間の曲線下の面積を決定し、そして1mg用量のガバペンチン/kgラットに正規化した、研究からの薬物動態分析を示す。ガバペンチン(iv)の4時間点に関するデータは、最初の3時間に測定されるデータからの対数線形減少を仮定する。生物学的利用能パーセントは、静脈内投与したガバペンチンの生物学的利用能に対してである。
【0186】
【表24】

【0187】
AUCおよび生物学的利用能データは、用量が増加するにつれて、ガバペンチンの結腸吸収は、薬剤がガバペンチン−輸送部分複合体の形態で与えられる場合に改善されることを示す。
【実施例11】
【0188】
プレガバリン−輸送部分複合体の製造
1.25mLの脱イオン水中0.5mLの36.5%塩酸(5mmol HCl)の溶液を調製する。
【0189】
2.5mmolのプレガバリン(0.80g)を段階1の溶液に加える。混合物を室温で10分間攪拌する。塩酸プレガバリンが形成される。
【0190】
3.5mmolのラウリル硫酸ナトリウム(1.4g)を段階2の水溶液に加える。混合物を室温で20分間攪拌する。
【0191】
4.50mLのジクロロメタンを段階3の溶液に加える。混合物を室温で2時間攪拌する。
【0192】
5.段階4の混合物を分液漏斗に移し、そして3時間沈降させる。2相、ジクロロメタンの下相および水の上相が形成される。
【0193】
6.段階5の上相および下相を分離する。下側のジクロロメタン相を回収し、そしてジクロロメタンを室温で蒸発乾固させ、続いて40℃で真空オーブンにおいて4時間乾燥させる。プレガバリン−ラウリルサルフェートの複合体(2.1g)が得られる。
【0194】
図16Dは、プレガバリン−アルキルサルフェート複合体の製造の合成反応スキームを示す。
【実施例12】
【0195】
ラットにおける洗浄結紮結腸モデルを用いたインビボ結腸吸収
「結腸内結紮モデル」として一般に知られている動物モデルを用いる。絶食させた、0.3〜0.5kgのスプラーグ−ドーリーオスラットに麻酔をかけ、そして近位結腸の断片を単離する。結腸から糞便物質を洗い流す。カテーテルを内腔に置きそして試験製剤の送達のために皮膚の上に露出させながら断片を両端で縛る。結腸内容物を流し出し、そして結腸を動物の腹部に戻す。実験設定によっては、臨床状況における実際の結腸環境をより正確にシミュレートするために、断片に1mL/kgの20mMリン酸ナトリウムバッファー、pH7.4を満たした後に試験製剤を加える。
【0196】
ラット(n=3)を外科的準備の後にそして各試験製剤にさらす前に約1時間にわたって平衡化させる。プレガバリン−ラウリルサルフェート複合体もしくはプレガバリンを結腸内ボーラスとして投与し、そして10mgのプレガバリン/ラットで送達する。頸静脈カテーテルから得られる血液サンプルをプレガバリン濃度の分析のために0、15、30、60、90、120、180および240分で採取する。4時間の試験期間の最後に、ラットをペントバルビタールの過剰摂取で安楽死させる。各ラットからの結腸断片を切り取り、そして腸間膜反対側縁に沿って縦方向に開く。各断片を炎症について肉眼的に観察し、そしてあらゆる異常に注意する。切り取った結腸を方眼紙上に置き、そして結腸表面積を概算するために測定する。
【0197】
ラットのコントロール群(n=3)を1mg/ラットの用量で静脈内にガバペンチンで処置する。血液サンプルを上記に示す同じ時間で採取する。
【実施例13】
【0198】
プレガバリンのインビボ吸収
28匹のラットを7つの試験群(n=4)に無作為に選ぶ。水における、プレガバリンもしくは実施例1Bに記載のとおり製造したプレガバリン−ラウリルサルフェート複合体を5mg/ラット、10mg/ラットおよび20mg/ラットの投薬量でラットの十二指腸の起始部にカテーテルによって挿管する。残りの試験群には1mg/kgのプレガバリンを静脈内に与える。
【0199】
血液サンプルを4時間の期間にわたって各動物から採取し、そしてプレガバリン含有量について分析する。用量、AUCおよび生物学的利用能は、実施例10においてガバペンチンに対して使用したのと同様の計算を用いて決定する。
【0200】

「鉄」という用語は、その酸化状態のいずれかのそして任意の塩と組み合わせた鉄(Fe)を含んでなる。「第一鉄」は、+2の電荷を有する鉄をさす(Fe2+、Fe++、鉄(II)とも当該技術分野において表示される)。「第二鉄」は、+3の電荷を有する鉄をさす(Fe3+、Fe+++、鉄(III)とも当該技術分野において表示される)。典型的な第一鉄塩および第二鉄塩には、硫酸、フマル酸、コハク酸、グルコン酸第一鉄および第二鉄などが包含されるが、これらに限定されるものではない。
【0201】
図20は、鉄−脂肪酸複合体の製造の合成反応スキームを示す。
【実施例14】
【0202】
鉄−脂肪酸複合体の製造
第一鉄−脂肪酸複合体を形成するために以下の段階を実施する。反応は、図20A〜20Cに説明される。
【0203】
1.9.15グラムのFeSO・7HOをビーカーにおいて300mLのメタノールに溶解した。
【0204】
2.14.64グラムのラウリン酸ナトリウム(ラウリン酸ナトリウム)を別のビーカーにおいて300mLのメタノールに溶解した。
【0205】
3.段階1の溶液を段階2の溶液に滴下して加えた。混合物を室温で1〜5時間攪拌してNaSOの沈殿物を生成せしめた。溶液を一晩攪拌した。
【0206】
4.段階3からの沈殿物を#42ワットマン濾紙を用いて真空濾過によって除き;濾液を漏斗に取った。沈殿物をメタノールで3回洗浄し;濾液を漏斗に取った。
【0207】
5.段階4の濾液の溶液を結晶皿に置き、そしてフード中に置いて溶媒を蒸発させた。ベージュ色の沈殿物が生じた。沈殿物を真空フィルター上に置き、そして残留溶媒を真空濾過によって除いた。濾過ケーキを結晶皿に置き、そして真空オーブン中に一晩置いて乾燥させた。
【0208】
沈殿物の融点は、38〜38℃の間であると決定された。
【実施例15】
【0209】
ラットにおける洗浄結紮結腸モデルを用いたインビボ結腸吸収
鉄−輸送部分複合体の下部G.I.吸収および生物学的利用能を「結腸内結紮モデル」として一般に知られている動物モデルを用いて評価する。絶食させ麻酔をかけた0.3〜0.5kgのスプラーグ−ドーリーオスラットの外科的準備は、以下のように進行する。近位結腸の断片を単離し、そして結腸から糞便物質を洗い流す。カテーテルを内腔に置きそして試験製剤の送達のために皮膚の上に露出させながら断片を両端で縛る。結腸内容物を流し出し、そして結腸を動物の腹部に戻す。実験設定によっては、臨床状況における実際の結腸環境をより正確にシミュレートするために、断片に1mL/kgの20mMリン酸ナトリウムバッファー、pH7.4を満たした後に試験製剤を加える。
【0210】
ラットを外科的準備の後にそして各鉄−輸送部分複合体にさらす前に約1時間にわたって平衡化させる。試験化合物を結腸内ボーラスとして投与し、そして10mgの鉄(Fe+2/ラットとして)で送達する。血液サンプルを0、15、30、60、90、120、180および240分で頸静脈カテーテルから取得し、そして血液鉄濃度について分析する。4時間の試験期間の最後に、ラットをペントバルビタールの過剰摂取で安楽死させる。各ラットからの結腸断片を切り取り、そして腸間膜反対側縁に沿って縦方向に開く。各断片を炎症について肉眼的に観察し、そしてあらゆる異常に注意する。切り取った結腸を方眼紙上に置き、そして結腸表面積を概算するために測定する。
【0211】
上記の方法を用いて硫酸第一鉄塩の、そして第一鉄−ラウレート複合体、第一鉄−カプレート複合体、第一鉄−オレエート複合体および第一鉄−パルミテート複合体の吸収を評価する。
【実施例16】
【0212】
28匹のラットを7つの試験群(n=4)に無作為に選ぶ。硫酸第一鉄もしくは実施例11に記載のとおり製造した第一鉄−ラウレート複合体を5mg/ラット、10mg/ラットおよび20mg/ラットの投薬量でラットの十二指腸の起始部にカテーテルによって挿管する。残りの試験群には1mg/kgの硫酸第一鉄を静脈内に与える。
ジペプチジルペプチダーゼIVインヒビター
DPP IVインヒビターは、DPP−IVの酵素活性を阻害する化合物であり、しかしながら、これらの化合物はまた、他のDPP酵素への阻害活性も有し得る。膨大な数のDPP−IVインヒビターが同定されており、そして4つの典型的な化合物を図21A〜21Dに示す。
【0213】
図21Aは、LAF−237として同定された化合物(Villhauer,E.B.et al.,Journal of Medicinal Chemistry,46,2774−2789(2003))、DPP IVインヒビター1−[[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル]−2−シアノ−(S)−ピロリジンの構造を示す。図21Bは、本明細書に引用することにより組み込まれる、WO2004032836に詳細に記述されるアミノアシルトリアゾロピラジンDPP IVインヒビターの構造を示す。図21Cは、WO2004/024184に記述される、別の典型的なDPP IVインヒビターの構造を示す。図21Dは、本明細書に引用することにより組み込まれる、WO03/000250に記述されている、DPP IVインヒビター、1−[N−(5,6−ジクロロニコチノイル)−L−オルニチニル]−3,3−ジフルオロピロリジン塩酸塩の構造を示す。この化合物はまた、本明細書において「ジフルオロピロリジン化合物」とも呼ばれる。
【0214】
DPP IVインヒビターとの複合体を以下のように製造する。
【実施例17】
【0215】
DPP IVインヒビター−脂肪酸複合体の製造
ジフルオロピロリジンDPP IVインヒビターを用いた複合体の製造
オレイン酸−アセトン溶液(16.0gのオレイン酸を100mLのアセトンに溶解する)を調製する。
【0216】
ジフルオロピロリジン化合物(図21D)として同定される遊離塩基として22.0グラムのDPP IVインヒビターを200mLのアセトンに溶解する。
【0217】
攪拌しながら、DPP IVインヒビターを含有する溶液にオレイン酸−アセトン溶液を滴下して加える。攪拌を周囲温度(20〜25℃)で一晩続ける。ジフルオロピロリジン化合物−オレエート複合体が沈殿する。
【0218】
溶媒および沈殿したジフルオロピロリジン化合物−オレエート複合体の混合物をブフナー漏斗を通して濾過する。濾過ケーキを4x200mLのアセトンですすぎ、そして次に真空吸引下で1時間乾燥させる。濾過ケーキを濾紙からこすり落とし、そして秤量する。シアノピロリジンDPP IVインヒビターを用いた複合体の製造
1.オレイン酸−アセトン溶液(16.0gのオレイン酸を100mLのアセトンに溶解する)を調製する。
【0219】
2.シアノピロリジン化合物(図21A)として同定される遊離塩基として16.9グラムのDPP IVインヒビターを200mLのアセトンに溶解する。
【0220】
3.攪拌しながら、DPP IVインヒビターを含有する溶液にオレイン酸−アセトン溶液を滴下して加える。攪拌を周囲温度(20〜25℃)で一晩続ける。シアノピロリジン化合物−オレエート複合体が形成される。
【0221】
4.シアノピロリジン化合物−オレエート複合体を、複合体の形態により、濾過もしくは抽出のような適当な技術を用いて溶液から回収する。
ホモフェニルアラニンDPP IVインヒビターを用いた複合体の製造
オレイン酸−アセトン溶液(16.0gのオレイン酸を100mLのアセトンに溶解する)を調製する。
【0222】
ホモフェニルアラニン化合物(図21B)として同定される遊離塩基として22.7グラムのDPP IVインヒビターを200mLのアセトンに溶解する。
【0223】
攪拌しながら、DPP IVインヒビターを含有する溶液にオレイン酸−アセトン溶液を滴下して加える。攪拌を周囲温度(20〜25℃)で一晩続ける。ホモフェニルアラニン化合物−オレエート複合体が形成される。
【0224】
ホモフェニルアラニン化合物−オレエート複合体を、複合体の形態により、濾過もしくは抽出のような適当な技術を用いて溶液から回収する。
【図面の簡単な説明】
【0225】
以下の図面は正確な縮尺で描かれず、そして本発明の様々な態様を説明するために記載される。
【図1】G.I.管の上皮を通した薬剤の2つの輸送経路を説明する、胃腸管の上皮細胞の図である。
【図2】基本浸透圧ポンプ投与形態物の図を示す。
【図3】浸透圧性投与形態物の図を示す。
【図4】3層浸透圧性投与形態物の図を示す。
【図5A−5C】制御放出投与形態物の図を示す。
【図6】メトホルミンの化学構造を示す。
【図7】メトホルミンHClのpHの関数としてのオクタノール/水分配係数の対数のプロットである。
【図8A】メトホルミン−輸送部分複合体の製造の一般的合成反応スキームを示す。
【図8B】メトホルミン−輸送部分複合体の製造の一般的合成反応スキームを示し、ここで、輸送部分はカルボキシル基を含む。
【図8C】メトホルミン−脂肪酸複合体の製造の合成反応スキームを示す。
【図9A−9D】メトホルミンHCl(図9A)、ラウリン酸ナトリウム(図9B)、およびメトホルミンHCl、ラウリン酸ナトリウムの物理的混合物(図9C)、およびメトホルミン−ラウレート複合体(図9D)のHPLCトレースである。
【図10A−10B】メトホルミンHCl(丸)、サクシネート(逆三角形)、カプレート(正方形)、ラウレート(ひし形)、パルミテート(三角形)およびオレエート(八角形)と複合体を形成したメトホルミンのメトホルミン濃度の関数としての、マイクロジーメンス/センチメートル(μS/cm)単位の伝導率(図10A)および非イオン化薬剤のパーセント(図10B)のプロットである。
【図11】ラットへの化合物の経口強制飼養後のメトホルミンHCl(丸)およびメトホルミン−ラウレート複合体(ひし形)の時間単位の時間の関数としてのラットにおけるng/mL単位のメトホルミン血漿濃度を示す。
【図12】洗浄結紮結腸モデルを用いた、メトホルミンHCl(丸)、サクシネート(ひし形)、パルミテート(三角形)、オレエート(逆三角形)、カプレート(正方形)およびラウレート(八角形)と複合体を形成したメトホルミンの時間単位の時間の関数としてのラットにおけるng/mL単位のメトホルミン血漿濃度を示す。
【図13】洗浄結紮結腸モデルを用いたラット血漿におけるメトホルミンHClとラウリン酸ナトリウムの物理的混合物の(丸)、そしてメトホルミンラウレート複合体の(正方形)、mg塩基/kg単位のメトホルミン用量の関数としての生物学的利用能パーセントを示す。
【図14】2mg/kgの塩酸メトホルミンの静脈内投与後の(三角形)そして洗浄結紮結腸モデルを用いた10mg/ラット用量の塩酸メトホルミン(丸)もしくはメトホルミンラウレート複合体(ひし形)の投与後の時間単位の時間の関数としてのラットにおけるng/mL単位のメトホルミン塩基血漿濃度のプロットである。
【図15】本発明の投与形態物の時間単位の時間の関数としてのmg/時間単位のメトホルミンの平均放出速度を示す。
【図16A】ガバペンチンの構造を示す。
【図16B】プレガバリンの化学構造を示す。
【図16C】ガバペンチン−アルキルサルフェート複合体の製造の合成反応スキームを示す。
【図16D】プレガバリン−アルキルサルフェート複合体の製造の合成反応スキームを示す。
【図17A−17D】ガバペンチン(図17A)、ラウリル硫酸ナトリウム(図17B)、ガバペンチンとラウリル硫酸ナトリウムの物理的混合物(ゆるいイオン対)(図17C)およびガバペンチン−ラウリルサルフェート複合体(図17D)のFTIRスキャンである。
【図18】静脈内に(三角形)そして結紮結腸に挿管によって(丸)投与したガバペンチンの、そして結紮結腸に挿管によって投与したガバペンチンラウリルサルフェート複合体の(ひし形)時間単位の時間の関数としてのラットにおけるng/mL単位のガバペンチン血漿濃度を示す。
【図19A】静脈内に(三角形)そして5mg(丸)、10mg(正方形)および20mg(ひし形)の投与量で十二指腸に投与したガパペンチンの時間単位の時間の関数としてのラットにおけるng/mL単位のガバペンチン血漿濃度を示す。
【図19B】静脈内に(三角形)そして5mg(丸)、10mg(正方形)および20mg(ひし形)の投与量で十二指腸にガバペンチンラウリルサルフェート複合体を投与した後の時間単位の時間の関数としてのラットにおけるng/mL単位のガバペンチン血漿濃度を示す。
【図19C】ラットの十二指腸へのガバペンチンの(逆三角形)もしくはガバペンチンラウリルサルフェート複合体の(丸)投与後の用量の関数としてのパーセント単位のガバペンチン生物学的利用能のプロットである。
【図20A−20C】鉄−脂肪酸複合体の製造の合成反応スキームを示す。
【図21A−21D】典型的なDPP IVインヒビターの構造を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤部分および輸送部分(transport moiety)を含んでなる複合体を含んでなる物質。
【請求項2】
輸送部分が酸性、塩基性もしくは両性イオン性構造要素;または塩を形成するためにイオンと対合する酸性、塩基性もしくは両性イオン性残基構造要素(residual structural element)を含んでなる請求項1の物質。
【請求項3】
輸送部分が脂肪酸もしくはその塩、ベンゼンスルホン酸もしくはその塩、安息香酸もしくはその塩、フマル酸もしくはその塩、またはサリチル酸もしくはその塩を含んでなる請求項2の物質。
【請求項4】
脂肪酸もしくはその塩がC6〜C18脂肪酸もしくはその塩を含んでなる請求項3の物質。
【請求項5】
C6〜C18脂肪酸もしくはその塩がC12脂肪酸もしくはその塩を含んでなる請求項4の物質。
【請求項6】
輸送部分がアルキル硫酸(alkyl sulfate)もしくはその塩を含んでなる請求項2の物質。
【請求項7】
アルキル硫酸もしくはその塩がC6〜C18アルキル硫酸ナトリウムもしくはその塩を含んでなる請求項6の物質。
【請求項8】
C6〜C18アルキル硫酸ナトリウムもしくはその塩がラウリル硫酸ナトリウムを含んでなる請求項7の物質。
【請求項9】
輸送部分が製薬学的に許容しうる第一級、第二級もしくは第三級アミンまたはその塩を含んでなる請求項2の物質。
【請求項10】
薬剤部分が酸性、塩基性もしくは両性イオン性構造要素;または塩を形成するためにイオンと対合する酸性、塩基性もしくは両性イオン性残基構造要素を含んでなる請求項1の物質。
【請求項11】
請求項1の物質および不活性成分を含んでなる組成物。
【請求項12】
請求項11の組成物を含んでなる投与形態物。
【請求項13】
処置を必要とする患者に請求項1の物質を投与することを含んでなる、疾患もしくは症状の処置方法。
【請求項14】
物質が経口、静脈内、皮下、筋肉内、経皮、動脈内、関節内もしくは皮内経路によって投与される請求項13の方法。
【請求項15】
イオン形態の薬剤部分を準備し;
イオン形態の輸送部分を準備し;
水の誘電定数より低い誘電定数を有する溶媒の存在下で、薬剤部分と輸送部分を合わせて複合体を形成せしめ;そして
溶媒から複合体を分離する
ことを含んでなる組成物の製造方法。
【請求項16】
輸送部分が酸性、塩基性もしくは両性イオン性構造要素;または塩を形成するためにイオンと対合する酸性、塩基性もしくは両性イオン性残基構造要素を含んでなる請求項15の方法。
【請求項17】
薬剤部分が酸性、塩基性もしくは両性イオン性構造要素;または塩を形成するためにイオンと対合する酸性、塩基性もしくは両性イオン性残基構造要素を含んでなる請求項15の方法。
【請求項18】
薬剤部分が酸性構造要素もしくは酸性残基構造要素を含んでなり;そして薬剤部分が薬剤部分の酸性形態を得るために処理される請求項17の方法。
【請求項19】
薬剤部分が塩基性構造要素もしくは塩基性残基構造要素を含んでなり;そして薬剤部分が薬剤部分の塩基性形態を得るために処理される請求項17の方法。
【請求項20】
薬剤部分が両性イオン性構造要素もしくは両性イオン性残基構造要素を含んでなり;そして両性イオン性構造要素もしくは両性イオン性残基構造要素の非結合構造要素もしくは残基構造要素が、薬剤部分と輸送部分を反応させる前にブロックされる請求項15の方法。
【請求項21】
イオン形態の薬剤部分を準備し;
イオン形態の輸送部分を準備し;
水の誘電定数より低い誘電定数を有する溶媒の存在下で、薬剤部分と輸送部分を合わせて複合体を形成せしめ;
溶媒から複合体を分離し;そして
処置を必要とする患者に分離した複合体を投与する
ことを含んでなる処置方法。
【請求項22】
輸送部分が酸性、塩基性もしくは両性イオン性構造要素;または塩を形成するためにイオンと対合する酸性、塩基性もしくは両性イオン性残基構造要素を含んでなる請求項21の方法。
【請求項23】
薬剤部分が酸性、塩基性もしくは両性イオン性構造要素;または塩を形成するためにイオンと対合する酸性、塩基性もしくは両性イオン性残基構造要素を含んでなる請求項21の方法。
【請求項24】
薬剤部分が酸性構造要素もしくは酸性残基構造要素を含んでなり;そして薬剤部分が薬剤部分の酸性形態を得るために処理される請求項23の方法。
【請求項25】
薬剤部分が塩基性構造要素もしくは塩基性残基構造要素を含んでなり;そして薬剤部分が薬剤部分の塩基性形態を得るために処理される請求項23の方法。
【請求項26】
薬剤部分が両性イオン性構造要素もしくは両性イオン性残基構造要素を含んでなり;そして両性イオン性構造要素もしくは両性イオン性残基構造要素の非結合構造要素もしくは残基構造要素が、薬剤部分と輸送部分を反応させる前にブロックされる請求項23の方法。
【請求項27】
複合体が経口、静脈内、皮下、筋肉内、経皮、動脈内、関節内もしくは皮内経路によって投与される請求項21の方法。
【請求項28】
薬剤部分および輸送部分の複合体を準備し;そして
改善を必要とする患者に複合体を投与する
ことを含んでなる薬剤部分の吸収を改善する方法。
【請求項29】
複合体が経口投与され、そして改善された吸収が改善された経口吸収を含んでなる請求項28の方法。
【請求項30】
改善された経口吸収が改善された下部胃腸管吸収を含んでなる請求項29の方法。
【請求項31】
改善された経口吸収が改善された上部胃腸管吸収を含んでなる請求項29の方法。
【請求項32】
複合体が経皮投与され、そして改善された吸収が改善された経皮吸収を含んでなる請求項28の方法。
【請求項33】
複合体が皮下投与され、そして改善された吸収が改善された皮下吸収を含んでなる請求項28の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A−9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図17A−17D】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図21D】
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【公表番号】特表2007−509973(P2007−509973A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538323(P2006−538323)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/036040
【国際公開番号】WO2005/041925
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(503073787)アルザ・コーポレーシヨン (113)
【Fターム(参考)】