説明

増強されたADCC活性を伴う抗体に基づく治療薬

増強されたADCC活性を伴う抗体に基づく治療薬を生成するための方法を開示する。増強されたADCC活性は、本発明の抗体およびFc融合タンパク質上のオリゴマンノース型N−グリカンに帰する。また、癌、自己免疫疾患および他の疾患を処置する治療方法を含む、哺乳動物における細胞の標的化された死滅のためのかかる抗体に基づく治療薬を使用する方法についても開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年10月21日に出願された米国特許出願第60/728,947号(本明細書において参考として援用される)に対して優先権を主張する。
【0002】
本発明の技術分野は、一般的には、タンパク質糖鎖生物学、より詳細には、抗体エンジニアリングおよび産生ならびに、例えば、モノクローナル抗体およびIg融合タンパク質のような多様な抗体に基づく治療薬におけるグリコシル化の臨床上の意義に関する。
【背景技術】
【0003】
抗体に基づく治療薬、即ち、モノクローナル抗体(mAb)およびFc融合タンパク質は、現在、治療薬として「成熟」している。少なくとも18種のmAbおよび2種の融合分子が市場に存在し、150を超えるものが、現在、臨床治験中である(例えば、非特許文献1および非特許文献2を参照のこと)。これらの治療薬の適応症は様々であり、例えば、臓器移植(OKT3(登録商標)、Simulect(登録商標)、Zenapax(登録商標))、腫瘍学(Rituxan(登録商標)、Panorex(登録商標)、Herceptin(登録商標)、Mylotarg(登録商標)、Campath(登録商標)、Zevalin(登録商標)、Bexxar(登録商標)、Erbitux(登録商標)、Avastin(登録商標)、HuMax−CD4(登録商標))、感染性疾患(Synagis(登録商標))、炎症および自己免疫疾患(Humira(登録商標)、Amevive(登録商標)、Enbrel(登録商標))、ならびにアレルギー喘息(Xolair(登録商標))が挙げられる。かかる薬物の治療活性は、例えば、標的細胞におけるシグナル伝達事象を阻害することによる、アポトーシスの直接的誘導による、ならびにFc受容体への結合を介する抗体依存性細胞介在性細胞障害(ADCC)およびC1qへの結合を介する補体依存性細胞障害のような間接的免疫学的機構(両方の機構はまとめて「エフェクター機能」と呼ばれる)による、異なる作用機序により介在され得る。
【0004】
マウスmAbは、1975年にケーラー(Koehler)ら(非特許文献3)によって最初に作製された。臨床用途に承認された最初のmAbは、マウス抗体(OKT3(登録商標))である。しかし、マウス抗体のエフェクター機能、免疫原性、および薬物動態学的特性(それらのほとんどはIgG1またはIgG2a、場合によって、IgG2bである)は、一般的にヒトの治療用途には十分ではない。例えば、マウス抗体をヒト由来の細胞で試験する場合、ADCCのレベルは実質的にマウス細胞でのレベルより低い。さらなる研究により、抗体Fc領域がエフェクター機能の要因であり、ADCCの減少は、ヒト抗体と比較して、ヒトFcγ受容体に対するマウスIgG Fc領域の結合親和性が低いためであることが解明された。
【0005】
ヒトにおける減少した免疫原性および最適化されたエフェクター機能を伴う抗体に基づく治療薬を生成するために、多くの努力がなされてきた。結果として、キメラ、ヒト化および完全なヒトモノクローナル抗体ならびに抗体に基づく融合タンパク質が開発された。このサブクラスは所定のタイプの免疫介入にとって望ましい特徴(FcγR結合、血清中半減期)および機能的特性(ADCC、食作用、エンドサイトーシス、補体活性化)を示すため、ほとんどのキメラおよびヒト化抗体ならびに抗体に基づく融合分子はヒトIgG1から誘導されるFc領域を含有する。
【0006】
いくつかの抗体に基づく治療薬は、抗体エフェクター機構を利用することなく機能し得るが、他のものは免疫系を補充することにより標的細胞を死滅させることが必要であり得る。免疫系の補充が特定の治療薬に対して望まれる場合、IgG Fc部分を操作することによりエフェクター機能(例えば、IgG受容体および/または補体に対する改善された結合)が改善されることが、効果のある増強であり得る。
【0007】
抗体の一方の腕がFcγ受容体に結合する二重特異性抗体(例えば、非特許文献4を参照のこと);サイトカイン−IgG融合分子(例えば、IL−10−Fc、IL−15−Fc);およびFcγRへの結合の原因であるアミノ酸残基の変異(例えば、非特許文献5を参照のこと)を含む免疫系の補充を増強するためのいくつかの手法が模索されている。
【0008】
免疫グロブリンのグリコシル化は、エフェクター機能の必須な決定要素であり得る。したがって、特定のIgGのエフェクター機能を改変するための別のアプローチは、Fc領域のグリコシル化パターンを操作することである。
【0009】
IgG分子は、Fc領域におけるCH2ドメインのそれぞれの保存されたAsn297に共有結合したN−結合オリゴ糖を含有する。血清IgGのFc領域で見出されるオリゴ糖は、主として複合型のバイセクティンググリカンである。IgGグリコシル化パターンの種類として、末端シアル酸の結合、3番目のGlcNAc腕(分岐GlcNAc)、末端ガラクトシル化、およびα−1,6−結合コアフコシル化が挙げられる。オリゴ糖は、0個(G0)、1個(G1)、または2個(G2)のガラクトースを含有することができる(図1Aを参照のこと)。グリコシル化の正確なパターンは、IgGサブコンポーネント、特に、CH2およびCH3ドメインの構造特性に依存する(非特許文献6)。組み換えIgG mAbまたは融合分子を産生するために使用される細胞系統(多くはマウスおよびハムスター細胞系統に由来する)はまた、オリゴ糖鎖の合成にも影響を及ぼし得る。
【0010】
糖タンパク質のオリゴ糖部分は、最初に脂質結合オリゴ糖から生合成されてGlcManGlcNAc−ピロホスホリル−ドリコールが形成され、次いで、小胞体(ER)中のタンパク質に移行される(図1Bを参照のこと)。次いで、オリゴ糖部分は以下の順序で加工される。第一に、3個のすべてのグルコース(Glc)残基がグルコシダーゼIおよびIIにより取り除かれてManGlcNAc−タンパク質が産出される。ManGlcNAc構造は、多くのマンノース(Man)残基の除去によりさらに加工され得る。最初に、4個のα1,2−結合マンノースが除去されてManGlcNAc−タンパク質となり、次いで、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基の付加により伸長される。この新たな構造、GlcNAcManGlcNAc−タンパク質は、α1,3−およびα1,6−結合マンノースを取り除くマンノシダーゼIIの基質である。その後、他の糖、GlcNAc、ガラクトース、およびシアル酸が順に付加され、糖タンパク質で頻繁に見出される複合型の構造となる。
【0011】
いくらかの研究により、IgGグリコフォームとFcγRIII依存性ADCCとの間の関係が調べられている。
【0012】
ガラクトース−−ヒト化mAb IgG1(Campath(登録商標))からのほとんどのガラクトース残基の除去は、補体溶血活性の減少を生じたが、ADCCに対しては影響を及ぼさなかった(非特許文献7)。しかしながら、ヒト抗RhDモノクローナルIgGの高度にガラクトシル化された形態は、アガラクトシル形態よりもADCCのアッセイにおいて活性である(非特許文献8)。それゆえ、ADCCにおけるIgGオリゴ糖のガラクトシル化の影響については議論の余地がある。
【0013】
シアル酸−−末端シアル酸はADCCに対して影響を及ぼさないように思われる(非特許文献7)。
【0014】
N−アセチルグルコサミン−−いくつかの研究は、FcγRIIIおよびADCCに結合する時のバイセクティングGlcNAcの役割に着目している。キメラIgG1抗神経芽腫抗体のグリコシル化パターンが、β−1,4−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)をトランスフェクトされたCHO細胞において操作されている(非特許文献9;また、特許文献1についても参照のこと)。この酵素は、N−結合オリゴ糖へのバイセクティングGlcNAc残基の付加を触媒する。α1,6−フコシルトランスフェラーゼは、基質としてのバイセクティングN−グリカンを効率的に用いることができないため、バイセクティングGlcNAcは、N−グリカンのα−1,6−結合コアフコシル化を阻害する(非特許文献10)。この細胞系統において産生されるIgGはADCC活性の増加を示した。しかし、コアフコースと比較して、エフェクター機能に対するバイセクティングGlcNAcの寄与は依然として議論の余地がある(非特許文献11)。
【0015】
フコース−−分泌されるmAbは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)産生IgG1より低い程度のフコシル化されたオリゴ糖を有するため、ヒト化およびキメラIgG1 mAbは、より低いレベルのα−1,6−フコシルトランスフェラーゼを発現するラットハイブリドーマ細胞系統において産生されている(非特許文献11;また、特許文献2についても参照のこと)。これらの研究では、フコシル化されていないオリゴ糖は、ADCCを増強する時に、バイセクティングGlcNAcオリゴ糖より極めて重要な役割を果たすことが示されている。この報告は、IgG1のフコース欠損がC1q結合に影響を及ぼさないが、ヒトFcγRIIIAへの増加した結合を惹起し、より高いADCC活性を可能にした先の報告(非特許文献12)と一致する。
【0016】
Fc領域において明確なパターンのグリコシル化を伴う組み換えIgGを産生する細胞系統を操作する試みが行われている。例えば、高いレベルのヒトβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(GT)および/またはα−2,3−シアリルトランスフェラーゼ(ST)を発現するCHO細胞系統が作製されている。これらの細胞で産生されるIgGオリゴ糖の構造は、コントロールの細胞系統と比較してより高い同種性を示す。GTの過剰発現が末端GlcNAcの量を減少させる一方、STの過剰発現はオリゴ糖のシアリル化を増加させる(非特許文献13)。
【0017】
抗体に基づく治療薬を最適化し、特に、増強されたADCC活性を伴う抗体に基づく治療薬を製造するための方法を開発する必要性が継続して存在する。
【特許文献1】U.S. Patent No. 6,602,684
【特許文献2】European Patent Appln. Pub. No. 1176195
【非特許文献1】Holliger et al. (2005) Nature Biotech., 23:1126-1136
【非特許文献2】Theillaud (2005) Expert Opin. Biol. Ther., 5(Suppl. 1):S15-S27
【非特許文献3】Nature (1975) 256:495-497
【非特許文献4】Segal et al. (1999) Curr. Opin. Immunol., 11:558-562
【非特許文献5】Shields et al. (2001) J. Biol. Chem., 276:6591-6604
【非特許文献6】Lund et al. (2000) Eur. J. Biochem., 267:7246-7257
【非特許文献7】Boyd et al. (1995) Mol. Immunol., 32:1311-1318
【非特許文献8】Kumpel et al. (1994) Antibodies Hybridomas, 5:143-151
【非特許文献9】Umana et al. (1999) Nature Biotech., 17:176-180
【非特許文献10】Longmore et al. (1982) Carbohydrate Res., 100:365-392
【非特許文献11】Shinkawa et al. (2003) J. Biol. Chem., 278:3466-3473
【非特許文献12】Shields et al. (2002) J. Biol. Chem., 277:26733-26740
【非特許文献13】Weikert et al. (1999) Nature Biotech., 17:116-1121
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の要約)
本発明は、増強されたADCC活性を伴う治療用抗体およびFc融合タンパク質を作製する方法ならびにかかる治療薬を使用する方法を提供する。本発明は、完全なヒトであるか、またはそうでなければ、ヒト抗体、例えば、ヒト、ヒト化もしくはキメラ抗体のFcドメインおよびヒトFcドメインもしくはその機能的誘導体を伴うFc融合分子を含有する抗体に基づく治療薬に関する。好ましい具体例では、Fcドメインは、IgG、より好ましくはIgG1由来である。
【0019】
本発明の方法により作製される抗体およびFc融合タンパク質は、オリゴマンノース型N−グリカンを含み、さらに(複合型N−グリカンを含有する同じ抗体またはFc融合タンパク質と比較して)1つまたはそれ以上の以下の特性:
(a)より高いADCC活性;
(b)FcγRIIIA(および他の所定のFcγ受容体)に対するより高い結合親和性;
(c)標的に対する類似のまたはより高い結合特異性;
(d)標的に対する類似のまたはより高い結合親和性;ならびに
(e)マンノース受容体に対する類似のまたはより低い結合親和性
により特徴付けられる。
【0020】
本発明の抗体およびFc融合分子上のオリゴマンノース型N−グリカンは、Man5−9(GlcNAc)を含んでなる。かかるN−グリカンは、末端シアル酸、ガラクトース、またはGlcNAcを含有しない。好ましい具体例では、そのようなN−グリカンは、コアフコースを含有しない。好ましい具体例では、本発明の抗体またはFc融合タンパク質組成物は、主としてオリゴマンノース型オリゴ糖Man(GlcNAc)、Man(GlcNAc)、Man(GlcNAc)、およびMan(GlcNAc)の量の減少を伴うMan(GlcNAc)を含む一方、少量もしくは検出不能な量の複合体型および/またはハイブリッド型N−グリカンを含有する。
【0021】
本発明の抗体またはFc融合タンパク質を作製する1つの方法は、
(a)抗体またはFc融合タンパク質を発現するように操作された細胞を提供し;
(b)オリゴマンノース型N−グリカンを含んでなる抗体またはFc融合タンパク質の分泌を生じる条件下で細胞を培養し;次いで
(c)分泌される抗体またはFc融合タンパク質を回収すること
を含んでなる。
【0022】
本発明の抗体またはFc融合タンパク質を作製する別の方法は、
(a)抗体またはFc融合タンパク質を発現するように操作された細胞を提供し;
(b)オリゴマンノース型N−グリカンを含んでなる抗体またはFc融合タンパク質の発現を生じる条件下で細胞を培養し;次いで
(c)発現される抗体またはFc融合タンパク質を回収すること
を含んでなる。
【0023】
好ましい具体例では、操作される細胞は、哺乳動物の細胞、例えば、CHO細胞、NS0細胞、またはマウスハイブリドーマ細胞である。操作される細胞は、N−グリカンの初期段階のプロセシングに必要な1つもしくはそれ以上のグリコシダーゼを欠損していてもよく、および/または培養条件は、これらのグリコシダーゼの1つもしくはそれ以上の活性が阻害されるようなものであってもよい。例えば、細胞は、α−グルコシダーゼI、α−グルコシダーゼII、およびα−マンノシダーゼIからなる群から選択される1つもしくはそれ以上のグリコシダーゼを欠損していてもよい。さらに、または代替的に、操作される細胞を、α−グルコシダーゼI、α−グルコシダーゼII、およびα−マンノシダーゼIからなる群から選択される1つもしくはそれ以上のグリコシダーゼのインヒビターと接触させてもよい。好ましい具体例では、インヒビターは、α−マンノシダーゼIのインヒビター、例えば、α−マンノシダーゼI特異的インヒビター、キフネンシンである。
【0024】
本発明は、本発明の抗体またはFc融合タンパク質を含んでなる薬学的組成物を哺乳動物に投与し、それによって、抗体がADCCを介して標的細胞の死滅を介在することにより哺乳動物における標的細胞を死滅させる方法をさらに提供する。標的細胞を死滅させる方法は、標的細胞の抗体指向性死滅が望ましい疾患、例えば、多様なタイプの癌、感染性疾患、ならびに炎症および自己免疫疾患を処置する方法を含む。
【0025】
(図面の簡単な説明)
図1Aは、IgGの多様なグリコフォームの略図を示す。Asn297に結合したIgG炭水化物の糖残基として、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、マンノース、ガラクトース、フコース、およびシアル酸(NeuAc)が挙げられる。IgGグリコフォームのバリエーションは、ガラクトース、NeuAc残基およびバイセクティングGlcNAcのコアGlcNAc2Man3GlcNAcへの結合に依存する。N−グリカンは、0個(G0)、1個(G1)または2個(G2)のガラクトース残基、ならびに還元末端上の第1のGlcNAcに結合した1個のフコースを含有してもよい(それぞれG0F、G1F、G2Fと表される)。しかし、ほとんどの哺乳動物細胞系統から発現される組換え抗体において見出される主要なN−グリカンはG0FおよびG1Fである。
【0026】
図1Bは、多様なインヒビターを用いるN−結合型グリコシル化経路の阻害を例示する。抗体におけるN−グリカンのプロセシングは、ERまたはGolgiの内腔内のグリコシダーゼまたはグリコシルトランスフェラーゼに特異的なインヒビターによって阻害され得る。OTはオリゴ糖トランスフェラーゼを表し;GlcaseIおよびIIはα−グルコシダーゼIおよびIIを表し;ManaseIおよびIIはα−マンノシダーゼIおよびIIを表し;GnT IおよびIIはGlcNAcトランスフェラーゼIおよびIIを表し;FTはα−1,6フコシルトランスフェラーゼを表し;GTはβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼを表す。
【0027】
図1Cは、ヒトIgGFcドメインの生来の配列のアラインメントを表し、多様なIgGアイソタイプ由来の配列間の差異を星印で標記する。
【0028】
図2は、精製されたTEM mAb AのSDS−PAGE、レクチンおよび抗体ブロッティングの結果を示す。還元サンプル緩衝液中5μgのTEM mAb Aサンプルの一定量を4〜20% SDS−PAGEゲルの各ウェルにアプライし、ゲルをクーマシーブルーで染色した(図2A)。レーン1はインヒビターを伴わずに処置した細胞由来のIgG1を表し;レーン2はマンノスタチンAで処置された細胞由来のIgG1を表し;レーン3はキフネンシンで処置された細胞由来のIgG1を表し;レーン4はNB−DNJで処置された細胞由来のIgG1を表す。図2Bは多様な抗体のレクチンブロッティングの結果を示す。タンパク質(1サンプルあたり0.5μg)を、図2Aについて記載のようにSDS−PAGEによって分離し、PVDF膜に移行させた。膜をビオチン化レンチルレクチンとブロットさせ、ストレプトアビジン−HRPで展開した。図2Cは、図2Bと同じ膜であって、ストリッピングし、HRPと抱合させた抗ヒトFab抗体を用いて再ブロットしたものを示す。
【0029】
図3は、TEM抗体由来の炭水化物のMALDI−TOF質量分析の結果を示す。インヒビターなし(A)、マンノスタチンA(B)、キフネンシン(C)およびNB−DNJ(D)で処置した細胞由来のTEM mAb A上の炭水化物、ならびにインヒビターなし(E)およびキフネンシン(F)で処置した細胞由来のTEM mAb B上の炭水化物を、MALDI−TOF MS分析を用いて分析した。
【0030】
図4は、キフネンシンを伴ってまたはキフネンシンを伴わずに処置した細胞由来のTEM mAb B上の2−アミノ安息香酸で標識されたN−グリカンのHPLCプロファイリングの結果を示す。多様なN−グリカン標準と比較した、キフネンシンを伴ってまたは伴わずに処置した細胞由来のTEM mAb B上の2−アミノ安息香酸で標識されたN−グリカンのHPLCプロファイル(A)。EndoH処置の前後にキフネンシンで処置した細胞由来のTEM mAb B上の2−アミノ安息香酸で標識されたN−グリカンのHPLCプロファイル(B)。
【0031】
図5は、インヒビターで処置した細胞由来のTEM mAbのADCC活性を示す。(A)インヒビターなし(コントロール)またはマンノスタチンA(インヒビター番号1)、キフネンシン(インヒビター番号2)、NB−DNJ(インヒビター番号3)で処置した細胞由来のTEM mAb AのADCC活性。(B)多様な抗体濃度でキフネンシンを伴わずに(コントロール)または伴って処置した細胞由来のTEM mAb AのADCC活性。(C)キフネンシンを伴わずに(コントロール)またはキフネンシンを伴って処置した細胞由来のTEM mAb BのADCC活性。抗DNPをネガティブコントロールとしてアッセイに含めた。
【0032】
図6Aは、フローサイトメトリー分析による標的細胞へのTEM mAb A結合を示す。インヒビターを伴わずに処置した細胞由来の抗体はコントロールとして標識される一方、マンノスタチンA(インヒビター番号1)、キフネンシン(インヒビター番号2)、およびNB−DNJ(インヒビター番号3)で処置した細胞由来の抗体はそれら自体として標識される。図6Bは、フローサイトメトリー分析による標的細胞へのTEM mAb B結合を示す。TEM抗体は、キフネンシンを伴わずに(コントロール)または伴って処置した細胞由来であり、一方でまた、抗DNPをネガティブコントロールとして含めた。
【0033】
図7は、可溶性ヒトFcγRIIIA(Val158)とキフネンシンで処置した細胞および非処置細胞から産生される抗体との間の相互作用の表面プラズモン共鳴分析の結果を示す。目的の領域を拡大してFcγRIIIAのフローを示した。
【0034】
図8は、マンノース受容体の炭水化物−結合ドメインとキフネンシンを伴ってまたは伴わずに処置した細胞由来の抗体との相互作用を示す。キフネンシンを伴ってまたは伴わずに処置したCHO細胞由来のTEM mAb Bのマンノース受容体の炭水化物−結合ドメインへの結合を、BIAcore(登録商標)を用いて測定した。マンノース末端糖タンパク質(「Man3糖タンパク質」)をポジティブコントロールとして使用した。
【0035】
図9は、キフネンシンを伴ってまたは伴わずにCHO細胞由来のTEM mAb Bの薬物動態解析の結果を示す。キフネンシンを伴ってまたは伴わずに処置したCHO細胞由来のTEM mAb Bをマウスに注入し、多様な時間ポイントで回収した血清中の抗体の量を、ELISAを用いて測定した。
【0036】
図10Aは、0〜2μg/mlキフネンシン(1もしくは3回の処置)を伴う培地中振盪フラスコにおいて増殖させたTEM mAb Bを発現するCHO細胞の生存率を示す。図10Bは、0〜2μg/mlキフネンシン(1もしくは3回の処置)を伴うまたは伴わない培地において増殖させたTEM mAb Bを発現するCHO細胞の細胞密度を示す。3×処置を、図10Aおよび10Bにおいて「sup.」として示す。
【0037】
図11は、11日間、多様な量のキフネンシンによって処置したCHO細胞由来のTEM抗体由来の炭水化物のマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間(MALDI−TOF)質量分析の結果を示す。キフネンシンを伴わずに(図11A)または次のようなキフネンシンの添加を伴って処置した細胞由来のTEM mAb B上の炭水化物:(図11B)0.5μg/mlを1回、(図11C)1μg/mlを1回、(図11D)1.5μg/mlを1回、(図11E)2μg/mlを1回、(図11F)0.5μg/mlを3回、(図11G)1μg/mlを3回、(図11H)1.5μg/mlを3回、および(図11I)2μg/mlを3回(図10を参照のこと)。11日間、インヒビター(図11J)または2μg/mlキフネンシン(図11K)を伴わずに処置した細胞由来のTEM mAb A上の炭水化物(図12もまた参照のこと)。
【0038】
図12Aは、11日間、2μg/mlキフネンシン(1Lスピナー培養における単回処置)を伴うまたは伴わない培地において増殖させたTEM mAb Aを発現するCHO細胞の生存率を示す。図12Bは、2μg/mlキフネンシン(1回添加)を伴うまたは伴わない培地において増殖させたTEM mAb Aを発現するCHO細胞の細胞密度を示す。
【0039】
図13は、キフネンシンを伴ってまたは伴わずに処置したHEK293細胞により発現される抗体CのADCC活性を示す。50:1(図13A)および100:1(図13B)のエフェクター細胞対標的細胞比において、ヒトPBMCをエフェクター細胞として使用し、抗体Cにより認識される抗原を発現する細胞を標的細胞として使用した。IgGを非特異的抗体コントロールとして使用した。
【0040】
図14は、FcγRIIIA(Val158)とキフネンシンを伴ってまたは伴わずに処置したHEK293細胞由来の抗体Cとの間の相互作用の表面プラズモン共鳴分析の結果を示す。可溶性ヒトFcγRIIIAをセンサーチップ上で捕捉し、抗体Cの固定化されたFcγRIIIAへの結合を測定した。
【0041】
図15は、キフネンシンで処置しなかったCHO細胞(図15A)由来または4ng/ml(図15B)、20ng/ml(図15C)、100ng/ml(図15D)、500ng/ml(図15E)、および2500ng/ml(図15F)のキフネンシンで処置したCHO細胞由来のTEM mAb Aの炭水化物のMALDI−TOF質量分析の結果を示す。
【0042】
図16は、多様な量:20ng/ml(図16A)、40ng/ml(図16B)、60ng/ml(図16C)、80ng/ml(図16D)、および100ng/ml(図16E)のキフネンシンで処置したCHO細胞由来のTEM mAb A由来の炭水化物のMALDI−TOF質量分析の結果を示す。
【0043】
図17は、多様な量のキフネンシンで処置したCHO細胞由来のTEM mAb AのADCC活性を示す。図17Aは、キフネンシン(kifunensisne)の非存在下または2500ng/mlキフネンシンの存在下で発現される抗体のADCC活性を示す。抗DNP抗体をネガティブコントロールとして含めた。図17Bは、20、40、60、80および100ng/mlキフネンシンで処置した細胞由来の同じ抗体のADCC活性を示す。
【0044】
図18は、3種の抗体濃度(0.006、0.06および0.55μg/ml)における非フコシル化グリカンの百分率と特異的細胞障害性との間の関係を示す。非フコシル化グリカンの百分率を、MALDI−TOF MSスペクトルにおけるそれぞれ個々のグリカンピークの面積を算出することによって見積もった。
【0045】
図19は、キフネンシンで処置した細胞由来または非処置細胞由来の抗体Dへの多様なFcγRの結合を評価するために用いられたELISA型アッセイからの結果を示す。図19Aは、抗体のFcγRIAへの結合を示す。図19Bは、抗体DのFcγRIIAへの結合を示す。図19Cは、抗体DのFcγRIIBへの結合を示す。
【0046】
(配列の簡単な説明)
配列番号1、2、3、および4は、それぞれヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4由来のFcドメインのアミノ酸配列である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
(発明の詳細な説明)
実施例に記載の実験では、抗体を発現するように操作されたCHOおよびハイブリドーマ細胞を、α−マンノシダーゼIインヒビター、キフネンシンの存在下で培養した。キフネンシンによる細胞の処置は、オリゴマンノース型N−グリカンを担持する抗体の産生を生じる一方、複合型N−グリカンの形成が阻止された。オリゴマンノース型グリカンを担持する抗体は、キフネンシン処置を伴わずに産生される同じ抗体と比較して、増強されたADCC活性を示した。それゆえ、オリゴマンノース型N−グリカンを担持する抗体およびFc融合タンパク質は、標的細胞のFc指向性死滅が望まれる多様な治療に有用である。
【0048】
したがって、本発明は、増強されたADCC活性を伴う治療用抗体およびFc融合タンパク質を作製する方法、ならびにかかる治療薬を使用する方法を提供する。
【0049】
本発明の抗体またはFc融合タンパク質を作製する1つの方法は、
(a)抗体またはFc融合タンパク質を発現するように操作された細胞を提供し;
(b)オリゴマンノース型N−グリカンを含んでなる抗体またはFc融合タンパク質の分泌を生じる条件下で細胞を培養し;次いで
(c)分泌される抗体またはFc融合タンパク質を回収すること
を含む。
【0050】
本発明の抗体またはFc融合タンパク質を作製する別の方法は、
(a)抗体またはFc融合タンパク質を発現するように操作された細胞を提供し;
(b)オリゴマンノース型N−グリカンを含んでなる抗体またはFc融合タンパク質の発現を生じる条件下で細胞を培養し;次いで
(c)発現される抗体またはFc融合タンパク質を回収すること
を含んでなる。
【0051】
代替的には、オリゴマンノース型N−グリカンを含んでなる抗体は、非グリコシル化抗体またはFc融合タンパク質および個別に合成されたオリゴ糖部分の化学的連結によって産生され得る。
【0052】
抗体およびFc融合タンパク質
抗体は、免疫グロブリンとして公知のタンパク質のクラスに属する。無傷(intact)な抗体は、典型的に、それぞれ約25kDaの2本の軽鎖およびそれぞれ約50kDaの2本の重鎖からなる四量体のグリコシル化タンパク質である。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、抗体は、主要な5つのクラス:A、D、E、G、およびMに割り当てることができ、これらのいくらかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、ヒトでは:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2などに分けられ得る。重および軽鎖は各々、特定のアイソタイプのすべての抗体に共通のC末端定常領域、および抗体に特異的な結合を付与するN末端可変領域を含有する。本明細書で用いられる用語「抗体」は、それらの供給源または産生の方法にかかわらずモノクローナル抗体を意味し、例えば、単特異性、多重特異性(例えば、二重特異性)、ヒト化、ヒト、キメラ、組み換え、ハイブリッド、変異型、およびCDRグラフト化抗体を含む。例えば、Rituxan(登録商標)、Simulect(登録商標)、Remicade(登録商標)、およびErbitux(登録商標)はキメラ抗体であり;Campath(登録商標)、Zanapax(登録商標)、Synagis(登録商標)、Herceptin(登録商標)、Mylotarg(登録商標)、Xolair(登録商標)、およびAvastin(登録商標)はヒト化抗体であり;Humira(登録商標)およびHumax−CD4(登録商標)は完全なヒト抗体である。それはまた、かかる分子が免疫グロブリンのFc領域に連結される限り、scFvの部分のような抗体分子の部分も含む。本明細書で用いられる用語「ポリクローナル抗体」は、組み換え的に産生されるポリクローナル抗体を意味する。ポリクローナル(Polycolonal)抗体が、本明細書に記載されるごとき他の抗体に類似の本発明の方法および組成物において用いられてもよい。
【0053】
これらの多様なタイプの抗体を作製する一般的な方法は周知であり、例えば、Antibody Engineering by Borrebaeck (editor), Oxford University Press, 2nd ed., 1995; Antibody Engineering: Methods and Protocols (Methods in Molecular Biology) by Lo (ed.), Humana Press, 2003; および Antibody Engineering (Springer Lab Manuals) by Kontermann et al. (eds.), Springer; 1st ed., 2001 に記載されている。
【0054】
用語「Fcドメイン」、「Fc部分」、および「Fc領域」は、ヒト抗体重鎖のC末端フラグメント、例えば、γ鎖の約アミノ酸(aa)230〜約aa447または他のタイプの抗体重鎖(例えば、ヒト抗体のα、δ、εおよびμ)におけるその対応配列、あるいはその天然に存在するアロタイプを指す。他で特定しない限り、免疫グロブリンに対して一般的に受け入れられているKabatのアミノ酸番号付けを、本開示を通して使用する(Kabat et al. (1991) Sequences of Protein of Immunological Interest, 5th ed., United States Public Health Service, National Institute of Health, Bethesda, MD を参照のこと)。用語「非ヒトFcドメイン」、「非ヒトFc部分」、および「非ヒトFc領域」は、(例えば、マウス、ラット、ヤギ、またはウサギ由来の)非ヒト抗体重鎖の対応するC末端フラグメントを指す。非ヒトFcドメインは、本明細書に記載のヒトFcドメインに類似の本発明の方法および組成物において用いられ得る。
【0055】
図1Cは、IgG1(配列番号1)、IgG2(配列番号2)、IgG3(配列番号3)、およびIgG4(配列番号4)由来のヒトFcドメインの配列を表す。配列は、これらのFcドメインの間で約91〜94%の同一性を示す。IgG1、IgG2A、IgG2B、およびIgG3由来のヒトFcドメインとマウスFcドメインとの比較は、約61〜68%の同一性を示す。
【0056】
免疫グロブリンG(IgG)Fc受容体(FcγR)は、IgG抗体の細胞エフェクター機能を介在する。Fc領域におけるアミノ酸残基のサブセットは、FcγRへの結合に関与する。FcγRIIIへの結合の増加を示すアミノ酸配列の変異型はまた、増強されたADCC活性を有することが実証されている(Shields et al. (2001) J. Biol. Chem., 276:6591-6604)。ヒトFcγRIIIAでは、このサブセットは、例えば、次のものを含む:(1)Lys274−Arg301およびTyr407−Arg416(Sarmay et al. (1984) Mol. Immunol., 21:43-51 および Gergely et al. (1984) Biochem. Soc. Trans., 12:739-743);(2)Leu234−Ser239、Asp265−Glu269、Asn297−Thr299、およびAla327−Ile332(Sondermann et al. (2000) Nature, 406:267-273、ならびに(3)T256、K290、S298、E333、K334、A339(Shields et al. (2001) J. Biol. Chem., 276:6591-6604; また、U.S. Patent Application No. 2004/0228856 において開示された変異型についても参照のこと)。例えば、Fc変異型T256A、K290A、S298A、E333A、K334A、A339Tは、生来の配列と比較して、増強されたADCC活性を有するものとして記載されている(例えば、Shields、上掲を参照のこと)。さらに、多くのアミノ酸がADCC機能を喪失することなく変異されうる。
【0057】
したがって、操作されたFcドメインは、例えば、上記で特定するような天然に存在するFcドメインの部分的または変異型アミノ酸配列のみを含有してもよい。それゆえ、本開示内容の目的のために、用語「Fcドメイン」およびその同系物は、天然に存在する形態だけではなく、操作されたFcドメインも指す。例えば、Fcドメインは、配列番号n(ここで、n=1、2、3、もしくは4)の全長にわたって配列番号nに少なくとも80%、85%、90%、95%、または100%同一である配列を含んでもよい。
【0058】
本発明の方法では、抗体に基づく治療薬は、完全なヒトであるか、またはそうでなければ、ヒト抗体、例えば、ヒト化もしくはキメラ抗体のFcドメインおよびヒトFcドメインもしくはその機能的誘導体(例えば、1つもしくはそれ以上のFc受容体、例えばFcγRIIIAに結合する誘導体)を伴うFc融合分子を含有する。誘導体は、例えば、保存的置換が行われた、および/または非必須アミノ酸が欠失された生来の配列を含む。
【0059】
好ましい具体例では、抗体またはFc部分は、IgG1に由来する。しかし、本発明はまた、IgG、IgA、IgD、IgEおよびIgMを含む他のクラスの抗体、ならびに例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2のようなアイソタイプによって実施することもできる。例えば、IgG4は、エフェクター機能を活性化する能力を制限する一方、IgAは、ADCCの強力なアクチベーターである。いずれの場合においても、抗体またはFc融合分子のADCC活性は、本発明の方法を用いて増強することができる。
【0060】
抗体のその抗原に対する特異性またはFc融合タンパク質の非Fc部分のその標的に対する特異性は、特定の適用要件によって変動するであろう。例えば、Enbrel(登録商標)は、TNF受容体(p75)の受容体−結合ドメインを含有し、Amevive(登録商標)は、LFA−3のCD2−結合ドメインを含む、それぞれ、ヒトFcドメインに融合されている。例えば、Fcドメインは、酵素、毒素、増殖因子、ケモカイン、またはサイトカインに連結されてもよい。さらに、Fc融合タンパク質は、抗体ヒンジ領域および/またはリンカーを含んでもよい。
【0061】
細胞および培養条件
本発明のいくつかの方法では、抗体またはFc融合体を発現するように操作された細胞が提供される。好ましい具体例では、操作された細胞は、(例えば、生きている動物の部分であること(「インビボ」)の対照として)細胞培養において増殖される。例えば、細胞は、哺乳動物細胞、例えば、CHO細胞またはヒト細胞またはマウスハイブリドーマ細胞であってもよい。抗体およびFc融合タンパク質の発現に用いられ得る他のタイプの細胞の例として、マウス骨髄腫細胞(例えば、NS0)、ヒト胚性腎細胞(例えば、HEK293)、サル腎細胞(例えば、COS)、ヒト上皮癌細胞(例えば、HeLa)、ヒト線維肉腫細胞(例えば、HT−1080)、ベビーハムスター腎臓細胞、酵母細胞、昆虫細胞などが挙げられる(例えば、Fernandez et al. (eds.) Gene Expression Systems, Academic Press, 1999 を参照のこと)。本発明および適切な培養条件に適合するいずれの細胞を使用してもよい。
【0062】
操作される細胞は、N−グリカンの初期段階のプロセシングに必要な1つもしくはそれ以上のグリコシダーゼを欠損していてもよく、および/または培養条件は、これらのグリコシダーゼの1つもしくはそれ以上の活性が阻害されるようなものであってもよい。これらの条件の1つまたは両者の結果として、オリゴ糖合成がオリゴマンノース型の種に切り換えられる。
【0063】
例えば、細胞は、α−グルコシダーゼI、α−グルコシダーゼII、およびα−マンノシダーゼIからなる群から選択される1つもしくはそれ以上のグリコシダーゼを欠損していてもよい。目的のグリコシダーゼを欠損する細胞は、例えば、Tymms et al. (eds.) Gene Knockout Protocols (Methods in Molecular Biology), Humana Press, 1st ed., 2001; および Joyner (ed.) Gene Targeting: A Practical Approach, Oxford University Press, 2nd ed., 2000 に記載の方法を用いて操作されうる。例えば、グリコシダーゼ欠損細胞は、Stanley et al. (1975) Biochemistry, 72(9):3323-3327 に記載されるように、レクチン選択を用いて操作され得る。
【0064】
加えて、または、代替的に、操作される細胞は、α−グルコシダーゼI、α−グルコシダーゼII、およびα−マンノシダーゼIからなる群から選択される1つもしくはそれ以上のグリコシダーゼのインヒビターと接触されていてもよい。これらの酵素のインヒビターは、例えば、小分子または低分子干渉RNA(siRNA)であってもよい。
【0065】
siRNAは、転写後の遺伝子サイレンシングを介して目的のグリコシダーゼを阻害する短い(20〜25nt)二本鎖RNAである。グリコシダーゼ特異的siRNAは、U.S. Patent No. 6,506,559 に記載のように、および/または他の適切な方法(例えば、Appasani (ed.) RNA Interference Technology: From Basic Science to Drug Development, Cambridge University Press, 1st ed., 2005; および Uei-Ti et al. (2004) Nucleic Acids Res., 32(3):936-948 を参照のこと)を用いて調製され、使用されてもよい。
【0066】
小分子α−グルコシダーゼIインヒビターの例として、カスタノスペルミン(Pan et al. (1983) Biochemistry, 22:3975-3984)、デオキシノジリマイシン(DNJ; Hettkamp et al. (1984) Eur. J. Biochem., 142:85-90)ならびにそのN−アルキルおよびN−アルケニル誘導体(例えば、N−ブチル−DNJ);2,5−ジヒドロメチル(dihydromethil)−3,4−ジヒドロキシピロリジン(DMDP; Elbein et al. (1984) J. Biol. Chem., 259:12409-12413);ならびにオーストラリン(Molyneux et al. (1988) J. Nat. Prod., 51:1198-1206)が挙げられる。
【0067】
小分子α−グルコシダーゼIIインヒビターの例として、DNJならびにそのN−アルキルおよびN−アルケニル誘導体;ならびにMDL25637が挙げられる(Hettkamp et al. (1984) Eur. J. Biochem., 142:85-90; Kaushal et al. (1988) J. Biol. Chem., 263:17278-17283)。
【0068】
小分子α−マンノシダーゼIインヒビターの例として、デオキシマンノジリマイシン(DMJ; Legler et al. (1984) Carbohydr. Res., 128:61-72)およびその誘導体(例えば、Bosch et al. (1985) Virology, 143:342-346 に記載のN−メチル誘導体)、1,4−ジデオキシ−1,4−イミノ−D−マンニトール(DIM; Fleet et al. (1984) J. Chem. Soc. Chem. Commun., 1240-1241 およびPalmarzyk et al. (1985) Arch. Biochem. Biophys., 243:35-45)、ならびにキフネンシン(Elbein (1990) J. Biol. Chem., 265:15599-15605)が挙げられる。
【0069】
好ましい具体例では、操作される細胞は、α−マンノシダーゼIインヒビター、キフネンシンの存在下で培養される。特定の具体例では、キフネンシンは、0.01〜100μg/ml、0.01〜75μg/ml、0.01〜50μg/ml0.01〜40μg/ml、0.01〜30μg/ml、0.01〜20μg/ml、0.1〜10μg/ml、0.1〜2.0μg/ml、または1〜0.5μg/mlの濃度で、少なくとも12、24、48、72時間、または4、7、10、20日間もしくはそれ以上の期間、あるいは継続的に使用され得る。非制限的例示的具体例では、CHOまたはハイブリドーマ細胞は、10日間を超えて約0.5〜10μg/mlキフネンシンと共にインキュベートされる。
【0070】
産生される抗体の特徴
本発明の方法によって作製される抗体およびFc融合タンパク質はオリゴマンノース型N−グリカンを含んでなり、(複合型N−グリカン(「野生型」)を伴う同じ抗体またはFc融合タンパク質と比較して)1つもしくはそれ以上の以下の特性によってさらに特徴付けられる:
(a)より高いADCC活性;
(b)FcγRIIIA(および一定の他のFcγ受容体)に対するより高い結合親和性;
(c)標的に対する実質的に同じかまたはより良好な結合特異性;
(d)標的に対する実質的に同じかまたはより高い結合親和性;ならびに
(e)マンノース受容体に対する実質的に同じかまたはより低い結合親和性。
【0071】
「ADCC活性」は、ADCC反応を誘導する抗体またはFc融合タンパク質の能力を意味する。ADCCは、FcRを発現する抗原非特異的細胞障害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が標的細胞の表面に結合した抗体を認識し、続いて、標的細胞の溶解を引き起こす(即ち、「死滅させる」)細胞介在性反応である。主要なメディエーター細胞はナチュラルキラー(NK)細胞である。NK細胞はFcγRIIIのみを発現し、FcγRIIIAは活性化受容体であり、FcγRIIIBは阻害受容体であり;単球はFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する(Ravetch et al. (1991) Annu. Rev. Immunol., 9:457-92)。ADCC活性は、インビトロアッセイ、例えば、実施例ならびに Shields et al. (2001) J. Biol. Chem., 276:6591-6604 に記載のような末梢血単核細胞(PBMC)および/またはNKエフェクター細胞を用いる51Cr遊離アッセイ、あるいは別の適切な方法を用いて直接評価することができる。ADCC活性は、標的細胞の溶解が最大の半分である抗体またはFc融合タンパク質の濃度として表されてもよい。したがって、いくつかの具体例では、溶解レベルが野生型コントロールによる最大の半分のレベルと同じである本発明の抗体またはFc融合タンパク質の濃度は、野生型コントロール自体の濃度より少なくとも2、3、5、10、20、50、100倍低い。さらに、例えば、TEM mAb Aのようないくつかの具体例では、本発明の抗体またはFc融合タンパク質は、野生型コントロールと比較して、より高い最大標的細胞溶解を示してもよい。例えば、本発明の抗体またはFc融合タンパク質の最大標的細胞溶解は、野生型コントロールより10%、15%、20%、25%もしくはそれ以上高くてもよい。
【0072】
抗体またはFc融合タンパク質のその標的ならびにFc受容体およびマンノース受容体への結合親和性は、実施例に記載のような表面プラズモン共鳴および/または Shields et al. (2001) J. Biol. Chem., 276:6591-6604 に記載のようなELISAまたは他の適切な方法を用いて測定されてもよい。いくつかの具体例では、FcγRIIIAに対する抗体またはFc融合タンパク質の結合定数Kは、野生型コントロールのそれより少なくとも2、5、10、50倍もしくはそれ以上大きくてもよい。本発明の抗体またはFc融合タンパク質のその標的(例えば、抗原)に対する結合定数Kは、野生型コントロールと実質的に同じ(すなわち、±50%)かまたはそれより大きくてもよい。いくつかの具体例では、本発明の抗体またはFc融合タンパク質のマンノース受容体に対する結合定数Kは、野生型コントロールと実質的に同じ(すなわち、±50%)かまたはそれ未満の可能性がある。
【0073】
いくつかの具体例では、本発明の抗体またはFc融合タンパク質の一定の薬物動態学的パラメータが野生型コントロールのそれらと同じかもしくはより良好である。例えば、いくつかの具体例では、消失半減期(t1/2)および/または濃度曲線下面積(AUC)は、野生型コントロールと実質的に同じ(すなわち、±50%)またはそれより大きくてもよい。薬物動態学的パラメータは、ヒトにおいて、または(例えば、実施例に記載のような)適切な動物モデルまたは他の方法(例えば、Shargel et al. (1995) Applied Biopharmaceutics and Pharmacokinetics, 4th ed., McGraw-Hill/Appleton を参照のこと)を用いて測定することができる。
【0074】
抗体またはFc融合タンパク質の結合特異性は、例えば、実施例に記載のようなフローサイトメトリー、ウエスタンブロッティング、または別の適切な方法により調べられ得る。いくつかの具体例では、本発明の抗体またはFc融合タンパク質は、標的細胞の表面上で発現されるヒト標的タンパク質(抗体の場合、ヒト抗原)に対して指向される。いくつかの具体例では、それは、可溶性抗原に対して指向されてもよい。他のいくつかの具体例では、本発明の抗体またはFc融合タンパク質は、病原性の標的(例えば、ウイルスまたは細菌タンパク質)に対して指向される。抗体またはFc融合タンパク質は、ヒト標的に対して特異的であるか、または他の種由来の対応する標的と交差反応するかのいずれかであってもよい。
【0075】
本発明の抗体およびFc融合分子上のオリゴマンノース型N−グリカンは、Man(GlcNAc)、Man(GlcNAc)、Man(GlcNAc)、Man(GlcNAc)、およびMan(GlcNAc)からなる群から選択される1つもしくはそれ以上のオリゴマンノース型オリゴ糖を含んでなる。
【0076】
したがって、好ましい具体例では、本発明の抗体およびFc融合タンパク質の組成物は、主に、減少したもしくは検出不能な量のオリゴマンノース型N−グリカンMan(GlcNAc)、Man(GlcNAc)、Man(GlcNAc)、およびMan(GlcNAc)を伴うMan(GlcNAc)を含有する一方、少量(例えば、すべてのN−グリカンに対して10%未満)もしくは検出不能な量の(例えば、G0、G1、G2、G0F、G1F、G2F、およびG0F−Gnのような)複合型N−グリカンを含有する。
【0077】
いくつかの具体例では、本発明の方法により生成される組成物は、(すべてのN−グリカンに対してモル比で)少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、90%もしくはそれ以上のオリゴマンノース型グリカンMan5−9(GlcNAc)を含有する。いくつかの具体例では、本発明の組成物におけるMan5−9(GlcNAc)は実質的にフコシル化されていない、すなわち、それらは(すべてのN−グリカンに対してモル比で)30%、25%、20%、15%、10%、5%、1%未満またはそれ以下のフコースを含有する。いくつかの具体例では、該組成物は、(すべてのN−グリカンに対してモル比で)30%、20%、10%、5%、1%未満もしくはそれ以下のMan(GlcNAc)および/またはMan(GlcNAc)グリカンを含有する。いくつかの具体例では、該組成物は、少量(すなわち、すべてのN−グリカンに対してモル比で10%未満)または検出不能な量のMan(GlcNAc)を含有する。いくつかの具体例では、該組成物は、(すべてのN−グリカンに対してモル比で)80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、1%未満またはそれ以下の複合型グリカンを含有する。
【0078】
グリカン組成物は、例えば、実施例に記載のようなレクチンブロッティング、HPLCおよび/または質量分析ならびに/あるいは例えば、Townsend et al. (1997) Techniques in Glybiology, CRC Press に記載のごとき他の方法を用いて測定することができる。
【0079】
使用
本発明は、本発明の抗体またはFc融合タンパク質を哺乳動物に投与し、それにより抗体がADCCを介して標的細胞の死滅を介在することを含んでなる、哺乳動物における標的細胞を死滅させる方法をさらに提供する。本発明の方法における標的細胞は、癌細胞、感染細胞、免疫系の細胞(例えば、B細胞もしくはT細胞)、または細胞の死滅が所望される他の任意の細胞であってもよい。抗体またはFc融合タンパク質が投与される哺乳動物は、ヒト、または、別の種、例えばげっ歯類であってもよい。
【0080】
標的細胞を死滅させる方法として、本発明の抗体またはFc融合タンパク質を含んでなる薬学的組成物を哺乳動物に投与することによる、標的細胞の抗体指向性死滅が望まれる疾患を処置する方法が挙げられる。抗体またはFc融合タンパク質に加えて、薬学的組成物は薬学上許容される賦形剤を含んでなる。薬学的組成物の製剤化は、意図される投与経路、有効成分の生物学的活性および他のパラメータに依存して変動する(例えば、Rowe et al. (2003) Handbook of Pharmaceutical Excipients, 4th ed., APhA Publications を参照のこと)。
【0081】
本発明の抗体に基づく治療薬は、標的細胞の抗体指向性死滅が望まれるいずれかの疾患または病態に広範に適用可能である。本発明の組成物によって処置すべき疾患および病態として、多様なタイプの癌、感染性疾患、炎症性および免疫介在性疾患(自己免疫疾患を含む)、腎疾患、移植(例えば、幹細胞または臓器移植)などが挙げられる。
【0082】
本発明の組成物による処置に影響を受け得る癌の例として、白血病、リンパ腫、骨髄腫および造血系由来の他の癌、黒色腫および皮膚の他の癌、ならびに腎臓、胸部、肺、骨、結腸、直腸、子宮、頚部、卵巣、膵臓、前立腺、精巣、膀胱、胃、脳、および甲状腺の癌が挙げられるが、これらだけに限定されない。さらなる癌としては、U.S. Patent No. 6,359,193 の表1に列挙されたものが挙げられる。
【0083】
本発明の組成物による処置に影響を受け得る感染性疾患の例として、ウイルス感染(例えば、RSV、HCV、およびウエストナイルウイルス)が挙げられる。
【0084】
本発明の組成物による処置に影響を受け得る炎症性および免疫介在性疾患の例として、関節リウマチ(RA)、乾癬、全身性エリテマトーデス(SLE)およびループス腎炎、インスリン依存性糖尿病(IDDM;I型糖尿病)、炎症性腸疾患(IBD)、移植片対宿主病(GVHD)、セリアック病、自己免疫性甲状腺疾患、シェーグレン症候群、自己免疫性胃炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性皮膚病、自己免疫性拡張型心筋症、心筋炎、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症(MG)、血管炎(例えば、高安動脈炎およびウェゲナー肉芽腫症)、筋肉の自己免疫疾患、精巣の自己免疫疾患、自己免疫性卵巣疾患、ならびに自己免疫性ぶどう膜炎が挙げられる。
【0085】
本発明の組成物による処置に影響を受け得るさらなる障害として、線維症(例えば、腎線維症)、アジソン病、シドナム舞踏病(Syndenham’s chorea)、大腸炎、多発性筋肉痛、悪性貧血、および悪性貧血が挙げられる。
【0086】
「投与」は、特定の送達システムに何ら限定されず、非経口(皮下、静脈内、骨髄内、関節内、筋肉内、または腹腔内注入を含む)、局所、経皮、および経口を含んでもよい。投与は、単回投薬または反復投与で行ってもよい。抗体およびFc融合タンパク質は、他の治療用薬剤との組み合わせで投与してもよい。例えば、癌を処置する時に、抗体およびFc融合タンパク質が、化学療法剤(例えば、PCT Application Pub. No. WO 2005/050200 を参照のこと)、放射線および他の処置(例えば、Schwartz et al. (ed.) Combination Cancer Therapy: Modulators and Potentiators, Humana Press, 2005 を参照のこと)と組み合わされてもよい。
【0087】
最も一般的には、抗体およびFc融合タンパク質は、0.1〜50mg/kg、例えば、1〜10μg/kgでの1週間に1回の投与、緩徐な静脈内(IV)輸注による投薬によって、外来施設において投与される。適切な治療有効用量、投与経路および投薬計画は、問題の特定の抗体の生物学的活性に基づいて医師により決定され;市販の抗体についての例示的用量は、2005 Physicians’Desk Reference (PDR) Thomson Healthcare, 59th ed., 2004; および Remington: The Science and Practice of Pharmacy, eds. Gennado et al., 20th ed, Lippincott, Williams & Wilkins, 2000 において見出すことができる。
【0088】
以下の実施例は、本発明の例示的な具体例を提供する。実施例は、いかなる方法においても本発明を制限するものではない。
【0089】
実施例
実施例1:細胞の処置および抗体の精製
TEM mAb A、腫瘍血管関連抗原に対する抗体を発現するハイブリドーマ細胞を、低IgGを含む1%ウシ胎児血清(Invitrogen Corp.)、5μg/mlウシインスリン、5μg/mlヒトトランスフェリン、0.01mMエタノールアミンおよび25nM亜セレン酸ナトリウムを含有する培地で増殖させた。細胞を、次のインヒビター:20μg/mlマンノスタチンA、および0.5mM NB−DNJで4日間、1回処置し;0および2日目に2μg/mlキフネンシンで2回処置するか;またはインヒビターなし(「コントロール」)で培養した。
【0090】
TEM mAb B、腫瘍血管関連抗原に対する異なる抗体を発現するCHO細胞を、4mMグルタミンを含むCD−CHO培地において増殖させた。細胞を3日間培養する一方、0および2日目に2μg/mlキフネンシンで処置するかまたはキフネンシンを伴わずに(「コントロール」)培養した。培地中の抗体を、プロテインA Sepharose(登録商標)カラムを用いて精製した。カラムに充填した後、カラムを15カラム容積のPBS緩衝液、pH7.1、またはHEPES緩衝液、pH8.0で広範に洗浄し、抗体を、50mMコハク酸ナトリウム緩衝液、pH3.0もしくはpH3.75で溶離した。溶離液を、チューブ内に、画分あたり1mlにおいて、1Mトリス緩衝液、pH8.0で回収した。精製した抗体を、PBS緩衝液、pH7.2に緩衝液交換し、A280を用いてタンパク質濃度を調べた。抗体の精製度を4〜20%SDS−PAGE上で評価し、クーマシーブルーで染色した。TEM mAb Aでは、90%を超える精製度が観察された(図2A)。TEM mAb Bでは、同様の結果が得られた。
【0091】
実施例2:レクチンブロッティング
実施例1に記載のように精製した抗体サンプルを4〜20%SDS−PAGE上で分離し、PVDF膜に移した。膜を、0.5M NaCl、1mM CaCl、1mM MgCl、1%BSAおよび0.5%Tween20を含有する50mMトリス緩衝液、pH7.4中のビオチン化レンチルレクチン(α−1,6結合フコースに特異的なレクチン)と共に1時間インキュベートさせた。その後、膜を洗浄し、同じ緩衝液中のストレプトアビジン−HRPと共にインキュベートさせ、次いで、化学発光(chemoluminescent)試薬を用いて展開した。
【0092】
TEM mAb Aについての結果を図2Bに示す。結果は、キフネンシンで処置した細胞由来の抗体が、α−1,6−結合フコシル化構造を伴うN−グリカンの含有がかなり少なかったことを示す。(TEM mAb Bサンプルでも、同様の結果が観察された。)
【0093】
同一の膜を、ストリッピング緩衝液(Pierce)を用いてストリッピングし、抗ヒトFab−HRP抗体と共にインキュベートし、化学発光(chemoluminescent)試薬を使用して展開した。結果(図2C)により、抗体サンプルの等価な充填(loading)が確認された。
【0094】
実施例3:オリゴ糖のMALDI−TOF質量スペクトル分析
実施例1に記載されるごとく精製された抗体由来のN−結合グリカンを、PNGase Fで遊離させた。10kDaフィルターを介するろ過後、ろ液を、DowexAG−50(H)、AG501、およびC18ziptipで連続的に処置した。サンプルの一定量を標的、続いてsDHBマトリックスに適用した。Voyager−DE PRO Biospectrometry Workstation(Applied Biosystems,Foster City、カリフォルニア州、米国)を陽イオンおよび反射モードで使用して、MALDI−TOF質量スペクトルを得た。
【0095】
実施例1に記載されるように、TEM mAb Aの分析の結果を、図3および表1に示す。
【0096】
(表1)
【表1】

m/z値は[M+Na]イオンに対するものである。
【0097】
データは、キフネンシンで処置した細胞由来のTEM抗体が、主に、主要なN−グリカンとしてフコースを伴わないManGlcNAc(Man9)、ManGlcNAc(Man8)およびManGlcNAc(Man7)を含有した(図3Cおよび3F)一方、コントロール細胞由来の同じ抗体における主要なN−グリカンがGlcNAcManGlcNAcFuc(G0F)およびGalGlcNAcManGlcNAcFuc(G1F)を含む0または1個のガラクトースを伴うフコシル化二分岐種であった(図3Aおよび3E)ことを示す。マンノスタチンAで処置した細胞由来のTEM mAb Aにおける炭水化物は、コントロール抗体において見出されるそれらに類似した(図3B)。しかし、NB−DNJで処置した細胞由来のTEM mAb Aでは、有意な量のGlcManGlcNAc(Man9Glc)が存在した(図3D)。データは、キフネンシンが複合型構造に対するグリコシル化を阻止する時に、NB−DNJよりも有効であることを示す。マンノスタチンAで処置した細胞において発現される抗体では、グリコシル化の変化は生じなかった。
【0098】
実施例4:2−アミノ安息香酸で標識されたN−グリカンのHPLC分析
分析を、若干の変更を伴って、Anumula et al. (1998) Glycobiology, 8:685-694 に記載のように行った。200μgの抗体から遊離させたN−グリカンを、Biodialyzerにより一晩精製した。物質の半分を2−アミノ安息香酸で標識し、GlycoClean Sカートリッジ(Prozyme)で浄化した。いくつかのN−グリカン標準もまた、2−アミノ安息香酸で標識した。2−アミノ安息香酸で標識されたグリカンを、蛍光検出器(励起波長230nmおよび蛍光波長425nm)を具備するHP1100システムを用いてAsahipak NH2P−50 4Dカラム(4.6×250mm,Phenomenex)上で分離した。カラムを、70%溶媒A(アセトニトリル中2%酢酸および1%阻害型テトラヒドロフラン)において平衡化した。2−アミノ安息香酸で標識されたグリカンを、30〜50%溶媒B(水中5%酢酸、3%トリエチルアミン、および1%阻害型テトラヒドロフラン)の直線勾配を、60分間にわたって、1ml/分の流速で使用して、50℃で溶出させた。95%溶媒Bおよび30%溶媒Bを用いる以後の洗浄によりカラムを浄化し、再平衡化した。最終注入量を、20μgの抗体から遊離されるグリカンのプールと等量にした。
【0099】
蛍光で標識されたN−グリカンのHPLC分析の結果により、MALDI−TOF質量分析の結果(実施例3)が確認された。コントロールTEM mAb Bについて、HPLCの第1のピークはG0F標準と整合した(図4A)。他の2つの残りのピークは、G1FおよびG2Fと推定される。キフネンシンで処置した細胞由来のTEM mAb Bのスペクトルにおいて、最後および主要なMALDIピークがMan9標準と整合した。しかし、抗体由来の推定されたMan7およびMan8ピークは、Man7およびMan8標準と整合しなかった。Man7およびMan8標準とサンプルピークとの間の溶出時間の差異は、構造の異なる異性体の組成に起因するであろう。キフネンシンで処置した細胞由来のTEM mAb B由来の蛍光で標識されたN−グリカンのEndoH消化は、Man9、Man8およびMan7ピークの消失を生じ、それらのオリゴマンノース構造の同一性が確認された(図4B)。
【0100】
実施例5:ADCCアッセイ
異なるインヒビターで処置した細胞由来の抗体サンプルを、ADCCについて、次のとおりに分析した。標的細胞、TEM抗原を伴うSKOV3またはMDA231を含む乳癌細胞系統を、増殖培地で再懸濁し、5%COの37℃インキュベーター中において、1〜2時間、Na51CrOで標識した。次いで、細胞を洗浄し、RPMI培地で再懸濁し、100:1または200:1のエフェクター:標的比で、多様な濃度の抗体およびエフェクター細胞を混合した。エフェクター細胞は、Ficoll−Hypaque勾配遠心分離を用いて調製した末梢血単核細胞(PBMC)であった。細胞および抗体を、4〜18時間、37℃で、5%COである加湿インキュベーターにおいてインキュベートした。インキュベーション後、無傷(intact)な細胞を、遠心分離によって取り出すかまたは界面活性剤を用いて溶解させた。実験的放出(E)、自然放出(S、エフェクター細胞および抗体を伴わない標的からの放出)、ならびに全溶解物(T、界面活性剤で処置した標的細胞からの放出)由来の上清における放射能を、放射カウンターを用いて調べた。特異的溶解パーセントを、次のとおりに算出した:[(E−S)/(T−S)]*100。
【0101】
多様なインヒビターの存在下で発現されるハイブリドーマ細胞由来のTEM mAb A抗体のADCCアッセイの結果を図5Aに示す。データは、キフネンシン(インヒビター番号2)で処置したハイブリドーマ細胞由来のTEM mAb Aが、抗体サンプルの間で最も高いADCC活性を有したことを示す。NB−DNJ(インヒビター番号3)で処置した細胞由来の抗体は、キフネンシン処置細胞由来の同じ抗体より低いADCC活性を示したが、残りのすべてのサンプルと比較して、より高い活性を示した。マンノスタチンA(インヒビター番号1)で処置した細胞由来のTEM mAb AのADCC活性は、コントロールサンプルと同程度であった。結果は、ADCC活性が抗体のグリコシル化パターンと相関関係にあることを示した。
【0102】
同様のADCCアッセイを、キフネンシン(インヒビター番号2)処置細胞ならびに非処置コントロール細胞により産生されるTEM mAb Aにより行った。結果(図5B)は、インヒビターを伴わずに処置したハイブリドーマ細胞(コントロール)由来の抗体と比較して、キフネンシンで処置した細胞由来の抗体では、ADCC活性は10〜100倍の増加を示した。別の同様のADCCアッセイを、キフネンシンで処置したCHO細胞および非処置コントロール由来のTEM mAb Bにおいて行った。結果(図5C)は、キフネンシン処置細胞由来のTEM mAb Bが、コントロールより高いADCC活性を伴う抗体を産生したことを示した。
【0103】
実施例6:フローサイトメトリー分析
FACS(登録商標)アッセイを行うことにより、標的細胞上の抗原に対するTEM mAb AおよびTEM mAb Bの結合を調べた。実施例5に記載のように、2×105標的細胞を、多様なインヒビターで処置した細胞由来の抗体と共にインキュベートした。インキュベート溶液は、5%ウシ胎児血清および5%ヤギ血清を伴うPBS中に1〜10μg/ml抗体を含有した。結合した抗体を、FITC標識ヤギ抗ヒトFcによって検出し、FACS Calibur(Becton Dickinson)を使用して分析した。
【0104】
FACS(登録商標)分析の結果は、ADCC活性の差異(実施例5を参照のこと)にかかわらず、TEM mAb A(図6A)およびTEM mAb B(図6B)が、キフネンシンを伴ってまたは伴わずに産生されたかどうかに関係なく、細胞表面抗原に等しく良好に結合したことを示す。
【0105】
実施例7:Fc受容体およびマンノース受容体結合
ADCC活性は、Fc受容体、特に、FcγRIIIAに対する抗体または抗体−抗原複合体の結合と相関関係があるため、抗体とFcγRIIIAとの相互作用を、表面プラズモン共鳴を用いて調べた。TEM mAb BをTEM抗原と一緒にCM5チップ上に固定化した。次いで、可溶性の組み換えヒトFcγRIIIA(Val158)を、BIAcore(登録商標)3000バイオセンサーユニットに注入して結合をモニターした。
【0106】
結果(図7)は、インヒビターの非存在下で発現させた同じ抗体と比較して、キフネンシンの存在下で発現させたTEM mAb Bへのより高いFcγRIIIAの結合を示した。キフネンシン処置細胞由来の抗体のFc受容体への結合の増大は、これらの抗体のADCC活性の増強と相関関係にあった。
【0107】
マンノース受容体を介するインビボのクリアランスは、かなり迅速であることが公知である。したがって、マンノース受容体に対するTEM mAb Bの結合を表面プラズモン共鳴(BIAcore(登録商標))を用いて調べた。炭水化物認識ドメイン(CRD)4−7およびHPCタグを含有する可溶性マンノース受容体を、CM5 BIAcore表面(200RU)に固定化した。抗体を、10mM CaClおよび0.005% surfactantP20を含有するHBS結合緩衝液(10mM HEPES、pH7.0、150mM NaCl)において100nMに希釈し、BIAcore(登録商標)3000バイオセンサーユニットに注入して結合をモニターした。マンノース末端グルコセレブロシダーゼ(100nM)をポジティブコントロールとして含めた。
【0108】
マンノース受容体結合実験の結果(図8)は、キフネンシン処置またはキフネンシン非処置細胞のいずれか由来の抗体の結合が、コントロール(Man(GlcNAc)のようなオリゴマンノース型N−グリカンを有するタンパク質(「Man3糖タンパク質」)よりかなり低かったことを示した。これらの結果は、インビボで投与される場合、オリゴマンノース型グリカンを担持する抗体がマンノース受容体により急速に浄化されないであろうことを示唆する。
【0109】
実施例8:抗体親和性分析
以下の通りの表面プラズモン共鳴(BIAcore(登録商標))を用いて、キフネンシンの存在下で発現されるTEM mAb Bの結合親和性を、インヒビターの非存在下で発現される抗体と比較した。固定化された抗原を担持するCM5チップを用いて抗体の親和性を測定した。0.005%surfactantP20ランニング緩衝液を含有するHBS−EPまたはPBSを用いて異なる濃度に希釈した抗体を、5分間2回または3回で注入し、続いて、5分の解離を行った。40mM HClを用いて表面を再生させた。次いで、1:1結合モデルを使用してデータを適合した。
【0110】
結果(表2)は、1:1結合モデルを使用してデータを適合した場合、キフネンシンの存在または非存在下で発現されるTEM mAb Bの同程度の親和性を示した。センサーグラムは、試験した各濃度の両方のサンプルについてほぼ同一の結合曲線を示した。これらの結果は、FACSを用いた標的細胞上の抗原への抗体結合に関するデータ(実施例6)に一致した。
【0111】
(表2)
【表2】

aオン速度;オフ速度;会合速度;解離速度
【0112】
実施例9:薬物動態解析
キフネンシンの存在または非存在下で発現されるTEM mAb Bを注入したマウスを用いて薬物動態解析を行った。尾静脈を介して、BALB/c系マウスにTEM mAb Bを5mg/kgで注入した。1グループあたりマウス10匹とした。注入後1、6時間ならびに1、2、および7日に血液を採取し、凍結させた。血清中のTEM mAb Bの量を抗ヒト抗体によるELISAを用いて測定した。
【0113】
結果を図9に表す。キフネンシンを伴ってまたは伴わずに処置した細胞由来のTEM mAb Bサンプルの見かけ上の消失半減期における有意な差異はなかった。注入後7日目のマウスの血清において、両方の抗体の量にほとんど差異は観察されなかった。結果は、インビトロでのマンノース受容体結合データ(実施例7)および薬物動態学に基づいて、TEM mAb上のオリゴマンノース型グリカンが、マンノース受容体を介する有意なクリアランスに寄与しないことを示唆する。
【0114】
実施例10:バッチ培養における抗体の産生
多様な量のキフネンシンで処置したまたは非処置のバッチ培養由来のTEM mAb Bの産生を評価した。振盪フラスコ中のCHO細胞を、単回または3回の添加(4日間離して)で、0、0.5、1、1.5、または2μg/mlで処置し、11日間培養した。細胞生存率(トリパンブルーを使用する)および細胞の数を少なくとも1日おきに評価した。
【0115】
0.5〜2μg/ml濃度における1回のキフネンシン処置を伴う培養における11日間の抗体VPR(体積産生速度)は、同じ量のインヒビターによる3回の処置におけるそれと同等であった。結果は、同程度の量の抗体が異なる条件下で産生されることを示した(表3)。細胞生存率は異なる条件で同等であった(図10A)一方、細胞密度は、キフネンシン処置細胞でより低かった。キフネンシンの3回添加による細胞の処置は、非処置コントロールまたは1回のキフネンシン処置のそれよりかなり低い細胞密度を生じた(図10Bおよび表3)。
【0116】
同様に、バッチ培養におけるTEM mAb Aの産生についてのキフネンシンの影響も試験した。細胞を、1Lスピナー中で2μg/mlキフネンシン(単回添加)を伴うまたは伴わない培地中で11日間培養した。(トリパンブルーを用いる)細胞生存率および細胞の数を少なくとも1日おきに評価した。
【0117】
(表3)
【表3】

体積産生速度;ピーク細胞密度の1日における生存細胞;特異的産生速度
【0118】
結果は、同程度の細胞生存率および細胞数を示した(図12)。キフネンシンでは、コントロールと比較して抗体力価の約60%の増加が観察された。MALDI−TOF質量スペクトル分析の結果はまた、キフネンシンで処置した細胞由来のTEM mAb Aにおける主要な種としてMan8およびMan9を含むN−グリカンの存在を示した(図11K)。これらの培養から精製されるTEM mAb Bの炭水化物は、用いられるキフネンシンの量にかかわらず同定度のMan9およびMan8を含むN−グリカンを含有した(図11および表4)。0.5μg/ml濃度における1回のキフネンシン処置は、オリゴマンノース型構造の産生を生じるのに十分であった。
【0119】
キフネンシン処置は、細胞生存率または抗体産生に影響を及ぼさなかった。細胞増殖は、特に、高用量および複数回のキフネンシン処置、振盪フラスコ中のCHO細胞において遅延されたが、スピナー培養ではそうではなかったことから、キフネンシン処置は、抗体発現および/または分泌効率の増加を生じうることが示唆される。
【0120】
(表4)
【表4】

【表5】

m/z値は[M+Na]イオンに対するものである。
【0121】
実施例11:キフネンシンで処置された細胞において産生される抗体の増強されたADCC活性およびより高いFcγRIIIA結合のさらなる実施例
小細胞肺癌抗原(抗体C)に対する抗体を、キフネンシンを伴ってまたは伴わずに処置した細胞において産生させた。抗体のcDNAを、HEK293細胞に一時的にトランスフェクトした。2日目に培地を取り除き、2μg/mlキフネンシンを伴うまたはキフネンシンを伴わない新鮮な培地をT−150 三層フラスコに添加した。3日間の細胞のキフネンシンによる処置後に培地を回収した。抗体を150〜200mlの培地から精製した。抗体の純度を4〜20%勾配SDS−PAGEを用いて分析した一方、グリコシル化をレクチンブロットを用いて調べた。SDS−PAGE分析の結果は、抗体サンプルの高い精製度を示した。キフネンシンの存在下で発現させた抗体に存在するα−1,6−結合フコースはかなり少なかった。MALDI−TOF MS分析は、キフネンシンの存在下で発現される抗体Cにおけるフコースを伴わないMan9およびMan8へのグリカンの完全な修飾を示した。
【0122】
2つのサンプルのADCC活性を、標的細胞として腫瘍抗原を内在的に発現する細胞を用いて測定した。エフェクター細胞(ヒトPBMC)および標的細胞を50:1または100:1の比で5時間インキュベートすることによりアッセイを行った。図13Aおよび13B各々に示す結果は、低抗体濃度におけるキフネンシンの存在下で発現される抗体CのADCC活性の有意な増強を示す。
【0123】
キフネンシンで処置された抗体CのFcγRIIIA結合を、BIAcoreを用いて測定した。HPC4でタグ化された可溶性ヒトFcγRIIIA(Val158)を、1mM CaClを含有するHBS−P緩衝液中で30μg/mlに希釈し、14,500RU抗HPC4チップに3分間、5μl/分で注入した。すべての抗体を、同じ緩衝液で100nMに希釈し、可溶性FcγRIIIAの1分間の捕捉後、注入し、続いて、30μl/分で3分間の解離に供した。表面を、2パルスのHBS−P緩衝液中5mM EDTAで再生した。BIAcore(登録商標)分析の結果は、コントロール抗体と比較して、キフネンシンの存在下で発現される抗体のより高いFcγRIIIA結合を示した(図14)。結果は観察されたADCCの増強と一致する。修飾された抗体はより緩徐なオフ速度を示す(図14を参照のこと)。
【0124】
実施例12:キフネンシン濃度の滴定
抗体機能上の混合されたオリゴマンノースおよび複合型グリカンの影響を調べるために、TEM mAb Aを発現する細胞を多様な量のキフネンシンで処置した。第1の実験では、TEM mAb Aを発現するCHO細胞クローンを、0、4、20、100、500および2500ng/mlのキフネンシンで11日間処置した。培地を回収し、プロテインAカラムを用いて抗体を精製した。タンパク質のピークを含む画分をプールし、PBSに対して透析した。
【0125】
6つの抗体サンプルの精製度を、還元条件下で4〜20%勾配SDS−PAGEを用いて確認し、続いて、クマシーブルーで染色した。確認された結果から、これらの抗体が純粋であることが確認された。
【0126】
これらの6つのサンプルに対し、MALDI−TOF MS分析を行った(図15A〜15Fに示す)。結果は、20ng/mlキフネンシンで処置した細胞由来の抗体において少量のオリゴマンノース構造(Man5/Man6)のみを示した一方、100ng/mlキフネンシンは完全なオリゴマンノース構造を生じた。
【0127】
二回目の滴定実験を、より狭い範囲のキフネンシン濃度、具体的には、20〜100ng/mlで行った。11日間の処置後、各処置条件に由来する50mlの培地を回収し、抗体を精製した。ピークを含有する画分をプールし、反復遠心分離を伴うCentricon(登録商標)フィルターを用いてPBSへの緩衝液交換を行った。TEM mAb A抗体サンプルの一定量を4〜12%NuPAGEにアプライし、精製度を確認するためにクーマシーブルーで染色した。
【0128】
これらのサンプルに対して行われたMALDI−TOF MSの結果を図16A〜16Eに示す。20および100ng/mlのキフネンシンで処置した細胞由来の抗体のグリカン構造が第1の滴定実験で観察されたものと類似した一方で、40および60ng/ml濃度のキフネンシン処置は混合されたオリゴマンノースおよび複合型グリカンを有する抗体を生じた。
【0129】
さらに、ADCCアッセイを行った。結果は、第1の滴定実験において、いずれのインヒビターを伴わずに産生される抗体と比較して、2500ng/mlキフネンシンで処置した細胞由来の抗体ではより高いADCC活性を示した(図17A)。第2の滴定実験由来の5つのサンプルを比較した場合、60、80および100ng/mlキフネンシンの存在下で発現される抗体は、20および40ng/mlキフネンシンで処置した細胞由来の抗体より高いADCC活性を示した。図17Bを参照のこと。
【0130】
第2の滴定実験におけるそれぞれのキフネンシン処置由来の抗体におけるフコシル化および非フコシル化グリカンの量を、MALDI−TOF MSスペクトルにおけるそれぞれの個々のグリカンのピーク面積を算出することにより見積もった。非フコシル化グリカンパーセントを、特異的標的細胞溶解パーセントに対してプロットし、図18に示す。結果は、80%を超える非フコシル化グリカンを伴うTEM mAb Aが相対的に高いADCC活性を有することを示唆する。
【0131】
要約すると、≧80ng/mlのキフネンシンで処置した細胞由来の抗体は、フコースを伴わないオリゴマンノース構造のみを示した。キフネンシン濃度を60ng/mlに、次いで、さらに20ng/mlに低下させると、抗体は、フコースを伴う複合型グリカンの量の増加を示した。より高いADCC活性が60ng/mlもしくはそれ以上のキフネンシン濃度で達成され、今度は、80%を超える非フコシル化グリカンを産生した。
【0132】
実施例13:ヒトFc受容体のキフネンシンで処置した細胞由来の抗体に対する結合
多様な組み換えヒトFcγ受容体(FcγRI、FcγRIIAおよびFcγRIIB)に対するキフネンシン改変抗体D、別の抗腫瘍抗体の結合を、ELISA型結合アッセイを用いて分析した。96ウェルマイクロタイタープレートを、以下の濃度:0.5μg/mlのFcγRI、2.5μg/mlのFcγRIIA、および2μg/mlのFcγRIIBにおけるR&Dシステム由来のFcγ受容体でコートした。ウェルを0.1%Tween20を含有するPBSで3回洗浄し、次いで、PBS/1%BSAで室温において1時間ブロックした。0〜100μg/mlの範囲のキフネンシンを伴ってまたは伴わずに処置した細胞由来の抗体Dを含む抗体をウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。抗体濃度を100μg/mlから開始し、1:2連続希釈を用いた。0.1%Tween20を含有するPBSでプレートを3回洗浄した。結合した抗体を、1%BSAを含有するPBSにおけるヤギ抗ヒトFab−HRP(1:1500)との室温での1時間のインキュベーションを用いて検出した。次いで、プレートを洗浄し、TMB(BioFX lab)により、FcγRIおよびFcγRIIBでは15分間ならびにFcγRIIAでは30分間展開した。反応を2M HSOで停止させ、吸光度を450nmで読み取った。キフネンシンを伴ってまたは伴わずに処置した細胞由来の抗体Dは、低い親和性の受容体、FcγRIIAおよびFcγRIIBと比較して、高い親和性のFcγRIに強く結合した。図19A〜19Cに提示する結果は、キフネンシン処置がFcγRIIAおよびFcγRIIBに対する抗体結合を改善し得るが、FcγRIに対する抗体結合は改善しないことを示唆した。
【0133】
特許請求の範囲を含む本明細書で用いられる成分、細胞培養、処置条件などの数量を表現するすべての数字は、文脈の前後関係により他の表現を必要としない限り、用語「約」によって修飾されるものと理解すべきである。本明細書中の具体例は、本発明の具体例の例示を提供するものであって、本発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。本開示において引用されるすべての刊行物、特許、特許出願、および生物学的配列は、それらの全体を出典明示により援用するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】図1Aは、IgGの多様なグリコフォームの略図を示す。Asn297に結合したIgG炭水化物の糖残基として、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、マンノース、ガラクトース、フコース、およびシアル酸(NeuAc)が挙げられる。IgGグリコフォームのバリエーションは、ガラクトース、NeuAc残基およびバイセクティングGlcNAcのコアGlcNAc2Man3GlcNAcへの結合に依存する。N−グリカンは、0個(G0)、1個(G1)または2個(G2)のガラクトース残基、ならびに還元末端上の第1のGlcNAcに結合した1個のフコースを含有してもよい(それぞれG0F、G1F、G2Fと表される)。しかし、ほとんどの哺乳動物細胞系統から発現される組換え抗体において見出される主要なN−グリカンはG0FおよびG1Fである。 図1Bは、多様なインヒビターを用いるN−結合型グリコシル化経路の阻害を例示する。抗体におけるN−グリカンのプロセシングは、ERまたはGolgiの内腔内のグリコシダーゼまたはグリコシルトランスフェラーゼに特異的なインヒビターによって阻害され得る。OTはオリゴ糖トランスフェラーゼを表し;GlcaseIおよびIIはα−グルコシダーゼIおよびIIを表し;ManaseIおよびIIはα−マンノシダーゼIおよびIIを表し;GnT IおよびIIはGlcNAcトランスフェラーゼIおよびIIを表し;FTはα−1,6フコシルトランスフェラーゼを表し;GTはβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼを表す。 図1Cは、ヒトIgGFcドメインの生来の配列のアラインメントを表し、多様なIgGアイソタイプ由来の配列間の差異を星印で標記する。
【図2】図2は、精製されたTEM mAb AのSDS−PAGE、レクチンおよび抗体ブロッティングの結果を示す。還元サンプル緩衝液中5μgのTEM mAb Aサンプルの一定量を4〜20% SDS−PAGEゲルの各ウェルにアプライし、ゲルをクーマシーブルーで染色した(図2A)。レーン1はインヒビターを伴わずに処置した細胞由来のIgG1を表し;レーン2はマンノスタチンAで処置された細胞由来のIgG1を表し;レーン3はキフネンシンで処置された細胞由来のIgG1を表し;レーン4はNB−DNJで処置された細胞由来のIgG1を表す。図2Bは多様な抗体のレクチンブロッティングの結果を示す。タンパク質(1サンプルあたり0.5μg)を、図2Aについて記載のようにSDS−PAGEによって分離し、PVDF膜に移行させた。膜をビオチン化レンチルレクチンとブロットさせ、ストレプトアビジン−HRPで展開した。図2Cは、図2Bと同じ膜であって、ストリッピングし、HRPと抱合させた抗ヒトFab抗体を用いて再ブロットしたものを示す。
【図3】図3は、TEM抗体由来の炭水化物のMALDI−TOF質量分析の結果を示す。インヒビターなし(A)、マンノスタチンA(B)、キフネンシン(C)およびNB−DNJ(D)で処置した細胞由来のTEM mAb A上の炭水化物、ならびにインヒビターなし(E)およびキフネンシン(F)で処置した細胞由来のTEM mAb B上の炭水化物を、MALDI−TOF MS分析を用いて分析した。
【図4】図4は、キフネンシンを伴ってまたはキフネンシンを伴わずに処置した細胞由来のTEM mAb B上の2−アミノ安息香酸で標識されたN−グリカンのHPLCプロファイリングの結果を示す。多様なN−グリカン標準と比較した、キフネンシンを伴ってまたは伴わずに処置した細胞由来のTEM mAb B上の2−アミノ安息香酸で標識されたN−グリカンのHPLCプロファイル(A)。EndoH処置の前後にキフネンシンで処置した細胞由来のTEM mAb B上の2−アミノ安息香酸で標識されたN−グリカンのHPLCプロファイル(B)。
【図5】図5は、インヒビターで処置した細胞由来のTEM mAbのADCC活性を示す。(A)インヒビターなし(コントロール)またはマンノスタチンA(インヒビター番号1)、キフネンシン(インヒビター番号2)、NB−DNJ(インヒビター番号3)で処置した細胞由来のTEM mAb AのADCC活性。(B)多様な抗体濃度でキフネンシンを伴わずに(コントロール)または伴って処置した細胞由来のTEM mAb AのADCC活性。(C)キフネンシンを伴わずに(コントロール)またはキフネンシンを伴って処置した細胞由来のTEM mAb BのADCC活性。抗DNPをネガティブコントロールとしてアッセイに含めた。
【図6】図6Aは、フローサイトメトリー分析による標的細胞へのTEM mAb A結合を示す。インヒビターを伴わずに処置した細胞由来の抗体はコントロールとして標識される一方、マンノスタチンA(インヒビター番号1)、キフネンシン(インヒビター番号2)、およびNB−DNJ(インヒビター番号3)で処置した細胞由来の抗体はそれら自体として標識される。図6Bは、フローサイトメトリー分析による標的細胞へのTEM mAb B結合を示す。TEM抗体は、キフネンシンを伴わずに(コントロール)または伴って処置した細胞由来であり、一方でまた、抗DNPをネガティブコントロールとして含めた。
【図7】図7は、可溶性ヒトFcγRIIIA(Val158)とキフネンシンで処置した細胞および非処置細胞から産生される抗体との間の相互作用の表面プラズモン共鳴分析の結果を示す。目的の領域を拡大してFcγRIIIAのフローを示した。
【図8】図8は、マンノース受容体の炭水化物−結合ドメインとキフネンシンを伴ってまたは伴わずに処置した細胞由来の抗体との相互作用を示す。キフネンシンを伴ってまたは伴わずに処置したCHO細胞由来のTEM mAb Bのマンノース受容体の炭水化物−結合ドメインへの結合を、BIAcore(登録商標)を用いて測定した。マンノース末端糖タンパク質(「Man3糖タンパク質」)をポジティブコントロールとして使用した。
【図9】図9は、キフネンシンを伴ってまたは伴わずにCHO細胞由来のTEM mAb Bの薬物動態解析の結果を示す。キフネンシンを伴ってまたは伴わずに処置したCHO細胞由来のTEM mAb Bをマウスに注入し、多様な時間ポイントで回収した血清中の抗体の量を、ELISAを用いて測定した。
【図10】図10Aは、0〜2μg/mlキフネンシン(1もしくは3回の処置)を伴う培地中振盪フラスコにおいて増殖させたTEM mAb Bを発現するCHO細胞の生存率を示す。図10Bは、0〜2μg/mlキフネンシン(1もしくは3回の処置)を伴うまたは伴わない培地において増殖させたTEM mAb Bを発現するCHO細胞の細胞密度を示す。3×処置を、図10Aおよび10Bにおいて「sup.」として示す。
【図11】図11は、11日間、多様な量のキフネンシンによって処置したCHO細胞由来のTEM抗体由来の炭水化物のマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間(MALDI−TOF)質量分析の結果を示す。キフネンシンを伴わずに(図11A)または次のようなキフネンシンの添加を伴って処置した細胞由来のTEM mAb B上の炭水化物:(図11B)0.5μg/mlを1回、(図11C)1μg/mlを1回、(図11D)1.5μg/mlを1回、(図11E)2μg/mlを1回、(図11F)0.5μg/mlを3回、(図11G)1μg/mlを3回、(図11H)1.5μg/mlを3回、および(図11I)2μg/mlを3回(図10を参照のこと)。11日間、インヒビター(図11J)または2μg/mlキフネンシン(図11K)を伴わずに処置した細胞由来のTEM mAb A上の炭水化物(図12もまた参照のこと)。
【図12】図12Aは、11日間、2μg/mlキフネンシン(1Lスピナー培養における単回処置)を伴うまたは伴わない培地において増殖させたTEM mAb Aを発現するCHO細胞の生存率を示す。図12Bは、2μg/mlキフネンシン(1回添加)を伴うまたは伴わない培地において増殖させたTEM mAb Aを発現するCHO細胞の細胞密度を示す。
【図13】図13は、キフネンシンを伴ってまたは伴わずに処置したHEK293細胞により発現される抗体CのADCC活性を示す。50:1(図13A)および100:1(図13B)のエフェクター細胞対標的細胞比において、ヒトPBMCをエフェクター細胞として使用し、抗体Cにより認識される抗原を発現する細胞を標的細胞として使用した。IgGを非特異的抗体コントロールとして使用した。
【図14】図14は、FcγRIIIA(Val158)とキフネンシンを伴ってまたは伴わずに処置したHEK293細胞由来の抗体Cとの間の相互作用の表面プラズモン共鳴分析の結果を示す。可溶性ヒトFcγRIIIAをセンサーチップ上で捕捉し、抗体Cの固定化されたFcγRIIIAへの結合を測定した。
【図15】図15は、キフネンシンで処置しなかったCHO細胞(図15A)由来または4ng/ml(図15B)、20ng/ml(図15C)、100ng/ml(図15D)、500ng/ml(図15E)、および2500ng/ml(図15F)のキフネンシンで処置したCHO細胞由来のTEM mAb Aの炭水化物のMALDI−TOF質量分析の結果を示す。
【図16】図16は、多様な量:20ng/ml(図16A)、40ng/ml(図16B)、60ng/ml(図16C)、80ng/ml(図16D)、および100ng/ml(図16E)のキフネンシンで処置したCHO細胞由来のTEM mAb A由来の炭水化物のMALDI−TOF質量分析の結果を示す。
【図17】図17は、多様な量のキフネンシンで処置したCHO細胞由来のTEM mAb AのADCC活性を示す。図17Aは、キフネンシン(kifunensisne)の非存在下または2500ng/mlキフネンシンの存在下で発現される抗体のADCC活性を示す。抗DNP抗体をネガティブコントロールとして含めた。図17Bは、20、40、60、80および100ng/mlキフネンシンで処置した細胞由来の同じ抗体のADCC活性を示す。
【図18】図18は、3種の抗体濃度(0.006、0.06および0.55μg/ml)における非フコシル化グリカンの百分率と特異的細胞障害性との間の関係を示す。非フコシル化グリカンの百分率を、MALDI−TOF MSスペクトルにおけるそれぞれ個々のグリカンピークの面積を算出することによって見積もった。
【図19】図19は、キフネンシンで処置した細胞由来または非処置細胞由来の抗体Dへの多様なFcγRの結合を評価するために用いられたELISA型アッセイからの結果を示す。図19Aは、抗体のFcγRIAへの結合を示す。図19Bは、抗体DのFcγRIIAへの結合を示す。図19Cは、抗体DのFcγRIIBへの結合を示す。
【図1−1】

【図1−2】

【図1−3】

【図2−1】

【図2−2】

【図3−1】

【図3−2】

【図4−1】

【図4−2】

【図5−1】

【図5−2】

【図5−3】

【図6−1】

【図6−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴマンノース型N−グリカンを含んでなるモノクローナル抗体またはFc融合タンパク質を含んでなる薬学的組成物。
【請求項2】
モノクローナル抗体またはFc融合タンパク質が、ヒト抗体に由来するFcドメインを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
モノクローナル抗体がヒトのまたはヒト化されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
モノクローナル抗体がヒト抗原に対して指向される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
Fcドメインの由来するヒト抗体が、IgG、IgA、IgD、IgE、およびIgMからなる群から選択されるクラスのものである、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
Fcドメインの由来するヒト抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4からなる群から選択されるアイソタイプのものである、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
Fcドメインが、配列番号n(ここで、n=1、2、3、または4)の全長にわたって配列番号nに少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでなる、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
Fcドメインが、配列番号1の全長にわたって配列番号1に少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含んでなる、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
オリゴマンノース型N−グリカンが、Man(GlcNAc)、Man(GlcNAc)、Man(GlcNAc)、Man(GlcNAc)、およびMan(GlcNAc)からなる群から選択されるオリゴ糖を含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
組成物中のすべてのN−グリカンの少なくとも20%が、Man5―9(GlcNAc)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
抗体またはFc融合タンパク質が、複合型N−グリカンを伴う同じ抗体またはFc融合タンパク質と比較して、より高いADCC活性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
抗体またはFc融合タンパク質が、複合型N−グリカンを伴う同じ抗体またはFc融合タンパク質と比較して、FcγRIIIAに対するより高い結合親和性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
(a)抗体またはFc融合タンパク質を発現するように操作された細胞を提供し;
(b)オリゴマンノース型N−グリカンを含んでなる抗体またはFc融合タンパク質の分泌を生じる条件下で細胞を培養し;次いで
(c)分泌された抗体またはFc融合タンパク質を回収すること
を含んでなる、請求項1に記載の薬学的組成物を作製する方法。
【請求項14】
操作された細胞が、α−グルコシダーゼI、α−グルコシダーゼII、およびα−マンノシダーゼIからなる群から選択されるグリコシダーゼを欠損している、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
操作された細胞が、α−グルコシダーゼI、α−グルコシダーゼII、およびα−マンノシダーゼIからなる群から選択されるグリコシダーゼのインヒビターと接触される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
インヒビターが、カスタノスペルミン、DNJ、N−アルキル−DNJ、DMDP、およびオーストラリンからなる群から選択されるグルコシダーゼIインヒビターである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
インヒビターが、DNJ、N−アルキル−DNJ、N−アルケニル−DNJ、およびMDL25637からなる群から選択されるグルコシダーゼIインヒビターである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
インヒビターがα−マンノシダーゼIの特異的インヒビターである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
α−マンノシダーゼIの特異的インヒビターがキフネンシンである、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
インヒビターが、DMJ、N−メチル−DMJ、DIM、およびキフネンシンからなる群から選択されるα−マンノシダーゼIインヒビターである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
(a)抗体またはFc融合タンパク質を発現するように操作された細胞を提供し;
(b)キフネンシンの存在下で細胞を培養し;次いで
(c)分泌される抗体またはFc融合タンパク質を回収すること
を含み、抗体またはFc融合タンパク質がIgG1に由来するFcドメインを含んでなる、抗体またはFc融合タンパク質を作製する方法。
【請求項22】
哺乳動物細胞がハイブリドーマ、CHO細胞またはNS0細胞である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
細胞が0.01〜20μg/mlのキフネンシンの存在下でインキュベートされる、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
哺乳動物に請求項1に記載の薬学的組成物を投与し、それにより標的細胞を死滅させることを含んでなる、哺乳動物における標的細胞を死滅させる方法。
【請求項25】
標的細胞が癌細胞、感染細胞、または免疫系の細胞である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
哺乳動物がヒトである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
哺乳動物が、癌、感染性疾患、炎症性疾患、および免疫介在性疾患からなる群から選択される疾患にかかっている、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
標的細胞のADCC介在性の死滅が所望される疾患の処置のための医薬品の製造におけるオリゴマンノース型N−グリカンを含んでなるモノクローナル抗体またはFc融合タンパク質の使用。

【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19−1】
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【図19−2】
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【公表番号】特表2009−512697(P2009−512697A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536643(P2008−536643)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/060113
【国際公開番号】WO2007/048122
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(500579888)ジェンザイム・コーポレーション (34)
【Fターム(参考)】