説明

増殖性疾患の処置に有用なピロロピリミジン誘導体

【課題】増殖性疾患治療薬の提供。
【解決手段】式Iで表される化合物。


〔式中、Rはヘテロ環式ラジカルまたは非置換もしくは置換芳香族性ラジカルであり;GはC−C−アルキレン、−C(=O)−、またはC−C−アルキレン−C(=O)−(ここで、該カルボニル基はピペラジン部分に結合している)であり;Qは−NH−または−O−である。ただし、Gが−C(=O)−であるとき、Qは−O−またはC−C−アルキレン−C(=O)−であり;そしてXは存在しないか、またはC−C−アルキレンのいずれかである。ただし、ヘテロ環式ラジカルRは、Xが存在しないとき、環炭素原子を介して結合している。〕の化合物またはその塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン誘導体およびその製造法、このような誘導体を含む医薬組成物およびこのような誘導体のとりわけ腫瘍のような増殖性疾患の処置用医薬組成物の製造のための − 単独または1個以上の他の薬学的活性化合物と組み合わせた − 使用に関する。
【発明の概要】
【0002】
本発明は、式I
【化1】

〔式中、
はヘテロ環式ラジカルまたは非置換もしくは置換芳香族性ラジカルであり;
GはC−C−アルキレン、−C(=O)−、またはC−C−アルキレン−C(=O)−(ここで、該カルボニル基はピペラジン部分に結合している)であり;
Qは−NH−または−O−である。ただし、Gが−C(=O)−であるとき、Qは−O−またはC−C−アルキレン−C(=O)−であり;そして
Xは存在しないか、またはC−C−アルキレンのいずれかである。ただし、ヘテロ環式ラジカルRは、Xが存在しないとき、環炭素原子を介して結合している。〕
の7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン誘導体または該化合物の塩に関する。
【0003】
前記および後記で使用する一般的用語は、好ましくは、特記されない限り、本明細書の開示の範囲内で下記意味を有する:
化合物、塩などについて複数表現を用いているとき、これはまた単独の化合物、塩などを意味すると取るべきである。
【0004】
互変異性体を形成できる式Iの化合物が記載されているとき、またこのような式Iの化合物の互変異性体も含むことを意味する。特に、例えば2−ヒドロキシ−ピリジルラジカルを含む式Iの化合物で互変異性が起こる。このような化合物において、2−ヒドロキシ−ピリジルラジカルはまたピリド−2(1H)−オン−イルとして存在できる。
【0005】
所望により存在し得る式Iの化合物の不斉炭素原子は、(R)、(S)または(R,S)立体配置で存在してよく、好ましくは(R)または(S)立体配置である。二重結合または環の置換基は、cis−(=Z−)またはtrans−(=E−)形で存在してよい。本化合物は、故に、異性体の混合物または好ましくは純粋異性体として存在し得る。
【0006】
接頭辞“低級”は、最大7個まで(7個を含む)、とりわけ最大4個まで(4個を含む)の炭素原子を有するラジカルを意味し、当該ラジカルは非分枝であるか、一箇所もしくは複数箇所分枝で分枝している。
【0007】
低級アルキルは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシルまたはn−ヘプチルである。
低級アルコキシは、例えばエトキシまたはメトキシ、とりわけメトキシである。
【0008】
置換低級アルキルは、好ましくは上記で定義の低級アルキルであって、例えばアミノ、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N−低級アルカノイルアミノ、N,N−ジ−低級アルカノイルアミノ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイル、低級アルカノイルオキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−低級アルキル−カルバモイル、N,N−ジ−低級アルキル−カルバモイル、アミジノ、グアニジノ、ウレイド、メルカプト、低級アルキルチオ、ハロゲンまたはヘテロ環式ラジカルのような1個以上、好ましくは1個の置換基が存在し得る。
【0009】
ヘテロ環式ラジカルは、とりわけ20個までの炭素原子を含み、そして、好ましくは4または8環員および1個から3個の好ましくは窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロ原子を有する飽和または不飽和単環式ラジカルであるか、または、例えば、1個または2個の例えばベンゼンラジカルのような炭素環式ラジカルが記載の単環式ラジカルに縮環(縮合)している、二または三環式ラジカルである。ヘテロ環式ラジカルが縮合した炭素環式ラジカルを含むならば、ヘテロ環式ラジカルはまた式Iの分子の残りに、縮合した炭素環式ラジカルの環原子を介して結合してよい。該ヘテロ環式ラジカル(存在するならば、縮合した炭素環式ラジカル(複数もある)を含む)は、所望により、1個以上、好ましくは1個または2個の、例えば非置換もしくは置換低級アルキル、アミノ、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N−低級アルカノイルアミノ、N,N−ジ−低級アルカノイルアミノ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイル、低級アルカノイルオキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−低級アルキル−カルバモイル、N,N−ジ−低級アルキル−カルバモイル、アミジノ、グアニジノ、ウレイド、メルカプト、低級アルキルチオ、またはハロゲンのようなラジカルで置換されていてよい。
【0010】
最も好ましくはヘテロ環式ラジカルは、ピロリジニル、ピペリジル、低級アルキル−ピペラジニル、ジ−低級アルキル−ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロピラニル、ピリジル、ヒドロキシもしくは低級アルコキシで置換されているピリジル、またはベンゾジオキソリル、とりわけピロリジニル、ピペリジル、低級アルキル−ピペラジニル、ジ−低級アルキル−ピペラジニルまたはモルホリニルである。
【0011】
ヘテロ環式ラジカルRは、Xが存在しないならば、それがQに環炭素原子を介して結合している以外、ヘテロ環式ラジカルについて上記で定義の通りである。好ましくはヘテロ環式ラジカルRは、ベンゾジオキソリル、ヒドロキシもしくは低級アルコキシで置換されているピリジル、またはとりわけ好ましくはハロゲンおよび低級アルキルで置換されているインドリルである。Rが、ヒドロキシで置換されたピリジルであるならば、該ヒドロキシ基は、好ましくは環窒素原子に隣接した環炭素原子に結合する。
【0012】
非置換もしくは置換芳香族性ラジカルRは、20個までの炭素原子を有し、そして非置換であるかまたは置換されており、例えばいずれの場合も非置換もしくは置換フェニルである。好ましくは非置換芳香族性ラジカルRはフェニルである。置換芳香族性ラジカルRは、好ましくは非置換もしくは置換低級アルキル、アミノ、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N−低級アルカノイルアミノ、N,N−ジ−低級アルカノイルアミノ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルカノイル、低級アルカノイルオキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−低級アルキル−カルバモイル、N,N−ジ−低級アルキル−カルバモイル、アミジノ、グアニジノ、ウレイド、メルカプト、低級アルキルチオおよびハロゲンから成る群から互いに独立して選択される1個以上の置換基で置換されたフェニルである。最も好ましくは置換芳香族性ラジカルRは、低級アルキル、アミノ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ハロゲンおよびベンジルオキシから成る群から互いに独立して選択される1個以上のラジカルで置換されたフェニルである。
【0013】
ハロゲンは主にフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード、とりわけフルオロ、クロロまたはブロモである。
−C−アルキレンは分枝または非分枝であってよく、特にC−C−アルキレンである。
【0014】
−C−アルキレンGは好ましくはC−C−アルキレン、最も好ましくはメチレン(−CH−)である。
GがC−C−アルキレンではないならば、それは好ましくは−C(=O)−である。
【0015】
−C−アルキレンXは好ましくはC−C−アルキレン、最も好ましくはメチレン(−CH−)またはエタン−1,1−ジイル(−CH(CH)−)である。
Qは好ましくは−NH−である。
【0016】
塩はとりわけ式Iの化合物の薬学的に許容される塩である。
このような塩は、例えば、酸付加塩として、好ましくは有機または無機酸と、塩基性窒素原子を有する式Iの化合物から形成され、とりわけ薬学的に許容される塩である。
【0017】
カルボキシまたはスルホのような陰性に荷電したラジカルが存在するとき、塩はまた塩基と形成され得、例えば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩、またはアンモニアもしくは三級モノアミンのような適当な有機アミンとのアンモニウム塩のような金属またはアンモニウム塩である。
【0018】
同じ分子内に塩基性基および酸性基が存在するとき、式Iの化合物はまた分子内塩を形成し得る。
【0019】
単離または精製目的で、薬学的に許容されない塩、例えばピクリン酸塩または過塩素酸塩を使用することも可能である。薬学的に許容される塩または遊離化合物(必要が生じたら、医薬組成物の形で)が治療的使用を達成し、故に、これらが好ましい。
【0020】
遊離形と、例えば、本化合物の精製または同定に、中間体として使用できる塩を含む塩の形の化合物の密接な関係の観点から、前記および後記で、遊離化合物に対する全ての言及は、適切であり、予測される限り、また対応する塩も言及することは理解すべきである。
【0021】
式Iの化合物は価値ある、薬理学的に有用な特性を有する。特にそれらは、薬理学的関心事である、特異的阻害活性を示す。それらは、とりわけタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤としておよび/または(さらに)セリン/スレオニンタンパク質キナーゼとして有効である;それらは、例えば、上皮細胞増殖因子受容体(EGF−R)およびErbB−2キナーゼのチロシンキナーゼ活性の強力な阻害を示す。これら2種のタンパク質チロシンキナーゼ受容体は、それらのファミリーメンバーErbB−3およびErbB−4と共に、ヒト細胞を含む多数の哺乳類細胞、とりわけ上皮性細胞、免疫系の細胞ならびに中枢および末梢神経系の細胞の、シグナル伝達に重要な役割を有する。例えば、様々な細胞型で、受容体関連タンパク質チロシンキナーゼのEGF誘発活性化は、細胞分裂に、故に細胞集団の増殖に必須である。最も重要なことに、EGF−R(HER−1)および/またはErbB−2(HER−2)の過剰発現が、多くのヒト腫瘍の相当な分画において観察されている。EGF−Rは、例えば、非小細胞肺癌、扁平上皮癌腫(頭頚部)、乳房、胃、卵巣、結腸および前立腺癌ならびに神経膠腫において過剰発現することが判明した。ErbB−2は、扁平上皮癌腫(頭頚部)、乳房、胃、および卵巣癌ならびに神経膠腫において過剰発現することが判明した。
【0022】
EGF−Rのチロシンキナーゼ活性の阻害に加えて、式Iの化合物はまた、様々な程度で、栄養素が介在するシグナル伝達に関与する他のタンパク質チロシンキナーゼ、特に、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)受容体ファミリー(例えばKDR、Flt−1、Flt−3)だけでなく、ablキナーゼ、とりわけv−abl、Srcファミリー由来のキナーゼ、とりわけc−Src、LckおよびFyn、ErbB−3(HER−3)およびErbB−4(HER−4)のようなEGF受容体ファミリーの他のメンバー、CSF−1、Kit、FGF受容体およびサイクリン依存性キナーゼCDK1およびCDK2を阻害し、これら全てヒト細胞を含む哺乳類細胞で増殖制御および変換に役割を有する。
【0023】
EGF−Rチロシンキナーゼ活性の阻害は、既知の方法を使用して、例えばEGF−受容体の組み換え細胞内ドメイン[EGF-R ICD;例えば、E. McGlynn et al., Europ. J. Biochem. 207, 265-275(1992)参照]を使用して、証明できる。阻害剤無しのコントロールと比較して、式Iの化合物は、酵素活性を、例えば0.0005から0.5μM、とりわけ0.001から0.1μMの濃度で50%阻害する(IC50)。
【0024】
EGF−Rチロシンキナーゼ活性の阻害と同時にまたはその代わりに、式Iの化合物はまたErbB−2のようなこの受容体のファミリーの他のメンバーを阻害する。阻害活性(IC50)は、大凡0.001から0.5μMの範囲である。ErbB−2チロシンキナーゼ(HER−2)の阻害は、例えば、EGF−Rタンパク質チロシンキナーゼに使用した方法に準じて決定できる[C. House et al., Europ. J. Biochem. 140, 363-367(1984)参照]。ErbB−2キナーゼは単離でき、その活性は、それ自体既知の手段で、例えばT. Akiyama et al., Science 232, 1644(1986)に従って決定する。
【0025】
驚くべきことに、式Iの化合物は、とりわけまたVEGF受容体ファミリーのチロシンキナーゼ活性を非常に強力に阻害する。本発明の化合物は、EGF−およびVEGF−受容体ファミリーメンバーの非常に有効な二重阻害剤である。KDRおよびFlt−1の阻害ならびにHUVECSの増殖因子誘発増殖の阻害に関して、J. Wood et al., Cancer Res. 60, 2178-2189(2000)参照。式Iの化合物は、例えば約1nMから約1μM、とりわけ約5nMから約0.5μMのIC50でKDRチロシンキナーゼ活性を阻害する。
【0026】
EGF−RのEGF誘発リン酸化に対する式Iの化合物の作用は、ヒトA431上皮性癌腫細胞系において、ELISAの手段により決定でき、これはU. Trinks et al., J. Med. Chem. 37:7, 1015-1027(1994)に記載されている。この試験(EGF−R ELISA)で、式Iの化合物は、大凡0.001から1μMのIC50を示す。
【0027】
式Iの化合物は、EGF−R過剰発現NCI−H596非小細胞肺癌腫細胞の増殖を、大凡0.01から1μMのIC50で強力に阻害する[例えばW. Lei, et al., Anticancer Res. 19(1A), 221-228(1999)参照]。同じ範囲の活性で、式Iの化合物はまたErbB−2過剰発現BT474ヒト乳癌細胞を強力に阻害する。試験法はT. Meyer et al., Int. J. Cancer 43, 851(1989)から適合させる。式Iの化合物の阻害活性は、簡単に言うと、下記の通り測定する:NCI−H596細胞(10000/マイクロタイタープレートウェル)を96ウェルマイクロタイタープレートに移す。試験化合物[ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解]を、DMSOの最終濃度が1%(v/v)を超えないような方法で、一連の濃度(希釈シリーズ)で添加する。添加後、プレートを3日間インキュベートし、その間、試験化合物無しのコントロール培養は、少なくとも3回の細胞分裂サイクルに付すことができる。NCI−H596細胞の増殖を、メチレンブルー染色の手段により測定する:インキュベーション後、細胞をグルタールアルデヒドで固定し、水で洗浄し、0.05%メチレンブルーで染色する。洗浄工程後、染色を3%HClで溶出し、マイクロタイターのウェルあたりの光学密度(OD)を、Titertek Multiskan(Titertek, Huntsville, AL, USA)を使用して、665nmで測定する。IC50値を、式:
IC50=[(OD試験−OD開始)/(ODコントロール−OD開始)]×100
の式を使用して、コンピューターを利用したシステムにより決定する。
【0028】
これらの実験でのIC50値を、阻害剤無しのコントロールを使用して得られるよりも50%低い細胞数をもたらす、当該試験化合物の濃度とする。式Iの化合物は、大凡0.01から1μMのIC50で阻害活性を示す。
【0029】
式Iの化合物はまた、インビボで腫瘍細胞の増殖阻害を、例えば、下記試験により示される通り示す:試験は、雌BALB/cヌードマウス(Bomholtgard, Denmark)に移植された、ヒト扁平上皮肺癌腫細胞系NCI−H596[ATCC HTB 178;American Type Culture Collection, Rockville, Maryland, USA;Santon, J.B., et al., Cancer Research 46, 4701-4705(1986)およびOzawa, S., et al., Int. J. Cancer 40, 706-710(1987)参照]の増殖阻害に基づく。その癌腫は、EGF−Rの発現の程度と相関する増殖を示す。腫瘍は、細胞[100μl リン酸緩衝化食塩水(PBS)または培地中、最少2×10細胞]の担持マウス(4−8匹マウス)への皮下(s.c.)注射後に確立する。注射は、マウスの尾と頭の中程の左脇腹にs.c.で行う。得られる腫瘍を、最少3連続移植で、処置の開始前に連続的に継代する。この間に、腫瘍増殖速度は安定化する。腫瘍は12回以上継代してはならない。治療実験のために、大まかに25mgの腫瘍断片を、13ゲージトロカール針を使用して、Forene(登録商標)(Abbott, Schwitzerland)麻酔下、動物の左脇腹にs.c.に移植する。腫瘍増殖および体重を週に2回モニターする。全ての処置を、腫瘍が100から250mmの容積に達したときに開始する。腫瘍容積を、既知の式長さ×直径×π/6を使用して計算する[Evans, B.D., et al., Brit. J. Cancer 45, 466-8(1982)参照]。抗腫瘍活性をT/C%(処置動物の腫瘍容積平均増加をコントロール動物の腫瘍容積平均増加で割り、100倍する)として示す。3から100mg/kgの活性成分で、腫瘍増殖の明瞭な、例えば50未満のT/C%値の阻害が見られる。
【0030】
式Iの化合物は、栄養素が介在するシグナル伝達に関与する他のタンパク質チロシンキナーゼ、例えばとりわけv−ablキナーゼ(例えば0.01から5μMのIC50)のようなablキナーゼ、とりわけc−srcキナーゼ(例えば0.1から10μMのIC50)のようなsrcキナーゼのファミリー由来のキナーゼおよびセリン/スレオニンキナーゼ、例えばタンパク質キナーゼCを阻害し得て、これら全てヒト細胞を含む哺乳類細胞で増殖制御および変換に関与する。
【0031】
v−ablチロシンキナーゼの上記阻害は、N. Lydon et al., Oncogene Research 5, 161-173(1990)およびJ. F. Geissler et al., Cancer Research 52, 4492-4498(1992)の方法により決定する。これらの方法において、[Val]−アンギオテンシンIIおよび[γ−32P]−ATPを基質として使用する。
【0032】
EGF−Rまたは記載の他のタンパク質チロシンキナーゼのチロシンキナーゼ活性を阻害する式Iの化合物は、故に、例えば、良性または悪性腫瘍の処置に有用である。式Iの化合物は、例えば脱制御されたEGF−Rおよび/またはErbB−2活性の腫瘍を同時に阻害でき、ならびに、VEGFにより誘発された固形腫瘍の脈管化を阻害できる。この組み合わせ活性は、改善された抗腫瘍効果に至る(WO02/41882も参照)。さらに、二重阻害剤の使用は、組み合わせ療法と比較して薬剤−薬剤相互作用の危険性を減少させ、さらに、総薬剤負荷を減少させる。式Iの化合物は、腫瘍増殖の減速ができ、または腫瘍緩解を行うことができ、ならびに腫瘍転移巣の形成および微小転移巣の増殖の抑制ができる。それらは、とりわけ上皮過増殖(乾癬)の場合に、上皮性特性の新生物、例えば乳癌腫、および白血病の処置に使用できる。加えて、式Iの化合物は、数個の、とりわけ、個々のタンパク質チロシンキナーゼおよび/または(さらに)セリン/スレオニンタンパク質キナーゼが関与する免疫系の障害の処置に使用できる;式Iの化合物は、また、数個の、とりわけ、単独のタンパク質チロシンキナーゼおよび/または(さらに)セリン/スレオニンタンパク質キナーゼによるシグナル伝達が関与する、中枢または末梢神経系の障害の処置に使用できる。
【0033】
一般に、本発明はまた、記載のタンパク質キナーゼの阻害のための式Iの化合物の使用、特に、EGF−およびVEGF−受容体ファミリーメンバーの二重阻害のためのそれらの使用に関する。
【0034】
本発明の化合物は、単独でまたは他の薬理学的活性化合物と組み合わせて、例えばポリアミン合成の酵素の阻害剤、タンパク質キナーゼCの阻害剤、他のチロシンキナーゼの阻害剤、サイトカイン、負の増殖制御因子、例えばTGF−βまたはIFN−β、アロマターゼ阻害剤、抗エストロゲンおよび/または細胞増殖抑制剤と共に使用できる。
【0035】
後記の式Iの化合物の好ましい群において、前記の一般的定義からの置換基の定義を、合理的に使用して、例えば、より一般的な定義をより具体的な定義に、または、とりわけ好ましいと特徴付けられる定義に置き換え得る。
【0036】
がヘテロ環式ラジカルまたは非置換もしくは置換芳香族性ラジカルであり;
GがC−C−アルキレンであり;
Qが−NH−または−O−であり;そして
Xが存在しないか、またはC−C−アルキレンのいずれかである。ただし、ヘテロ環式ラジカルRは、Xが存在しないとき、環炭素原子を介して結合している;
式Iの化合物またはその塩が好ましい。
【0037】
がヘテロ環式ラジカルまたは非置換もしくは置換芳香族性ラジカルであり;
GがC−C−アルキレンであり;
Qが−NH−であり;そして
Xが存在しないか、またはC−C−アルキレンのいずれかである。ただし、ヘテロ環式ラジカルRは、Xが存在しないとき、環炭素原子を介して結合している;
式Iの化合物またはその塩がさらに好ましい。
【0038】
が20個までの炭素原子を含むヘテロ環式ラジカルまたは20個までの炭素原子を有する非置換もしくは置換芳香族性ラジカルであり;
GがC−C−アルキレンであり;
Qが−NH−であり;そして
Xが存在しないか、またはC−C−アルキレンのいずれかである。ただし、ヘテロ環式ラジカルRは、Xが存在しないとき、環炭素原子を介して結合している;
式Iの化合物またはその塩が特に好ましい。
【0039】
がフェニル、ベンゾジオキソリル、ヒドロキシもしくは低級アルコキシで置換されているピリジル、ハロゲンおよび低級アルキルで置換されているインドリル、または低級アルキル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ハロゲンおよびベンジルオキシから成る群から互いに独立して選択される1個以上のラジカルで置換されているフェニルであり;
Gが−CH−または−C(=O)−であり;
Qが−NH−または−O−である。ただし、Gが−C(=O)−であるとき、Qは−O−であり;そして
Xが存在しないか、−CH−または−CH(CH)−のいずれかである。ただし、置換ピリジルまたはインドリルRは、Xが存在しないとき、環炭素原子を介して結合している;
式Iの化合物またはその塩がさらに特に好ましい。
【0040】
がフェニル、ベンゾジオキソリル、ヒドロキシもしくは低級アルコキシで置換されているピリジル、または低級アルキル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、ハロゲンおよびベンジルオキシから成る群から互いに独立して選択される1個以上のラジカルで置換されているフェニルであり;
Gが−CH−であり;
Qが−NH−であり;そして
Xが存在しないか、−CH−または−CH(CH)−のいずれかである。ただし、置換ピリジルRは、Xが存在しないとき、環炭素原子を介して結合している;
式Iの化合物またはその塩がさらにまた特に好ましい。
【0041】
−C−アルキレンGが3位または4位、最もとりわけ4位でフェニル環に結合している式Iの化合物もまた特に好ましい。
【0042】
下記実施例に記載の式Iの化合物、またはその塩、とりわけ薬学的に許容される塩がさらに最も特に好ましい。
【0043】
またとりわけ好ましいのは、− 上記のチロシンキナーゼ阻害アッセイで − HER−1、HER−2およびKDRを、300nM未満、最も好ましくは100nM未満のIC50値で阻害する式Iの化合物である。
【0044】
非常に特に好ましいのは、EGF受容体ファミリーの少なくとも1個のメンバーと、VEGF受容体ファミリーの少なくとも1個のメンバーのチロシンキナーゼ活性を共に、上記のチロシンキナーゼ阻害アッセイに基づいて、0.5nMから0.5μM、とりわけ1nMから300nMの範囲のIC50値で阻害する(EGF−およびVEGF−受容体ファミリーメンバーの二重阻害)、式Iの化合物である。
【0045】
とりわけ好ましいのは、さらにまたGがC−C−アルキレンである式Iの化合物である。なぜなら、このような化合物のアミン基が、これらの化合物の薬学的に許容される塩の形成を可能にし、これは一般に増加した溶解性および改善された物理化学的特性に至るからである。
【0046】
好ましい態様において、本発明は、単離された式Iの化合物、とりわけ単離された化合物((R)−1−フェニル−エチル)−[6−(4−ピペラジン−1−イルメチル−フェニル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル]−アミン、またはその塩、とりわけ薬学的に許容される塩に関する。
【0047】
用語“単離された”化合物は、化合物がその本来の環境(例えば、それが自然に存在するならば、例えば、他の化合物の投与によりこのような化合物を産生するヒトまたは動物身体を含む自然環境)から除かれていることを意味する。例えば、その自然環境中で自然に存在する化合物は単離されていないが、自然系で共存するいくつかのまたは全ての物質から分離された同じ化合物は、それがその後に自然系に再導入されてさえ、単離されている。このような化合物は、組成物の一部であり得て、このような組成物がその自然環境の要素ではないため、まだ単離されている。故に、本化合物は、それが見られる自然環境と比較して少なくとも部分的に精製されており、故に、自然の産物ではない。
【0048】
重要な態様において、単離された化合物は、その医薬適用への、とりわけ、医薬組成物の製造への使用が可能であるために、十分な純度である。
【0049】
式Iの化合物またはその塩は、既知の方法により(例えば2003年2月20日公開のWO03/013541A1参照)、とりわけ
a)GがC−C−アルキレンである式Iの化合物の製造のために、式II
【化2】

〔式中、Halはハロゲンであり、GはC−C−アルキレンであり、そしてR、QおよびXは、式Iの化合物に関して定義の通りの意味を有する〕
の化合物をピペラジンと反応させるか;
【0050】
b)Gが−C(=O)−またはC−C−アルキレン−C(=O)−(ここで、該カルボニル基はピペラジン部分に結合している)である、式Iの化合物の製造のために、式III
【化3】

〔式中、置換基および記号は、式Iの化合物に関して定義の通りの意味を有する。〕
の化合物をピペラジンと反応させるか;または
【0051】
c)GがC−C−アルキレンである式Iの化合物の製造のために、Gが−C(=O)−またはC−C−アルキレン−C(=O)−(ここで、該カルボニル基はピペラジン部分に結合している)である式Iの化合物を還元剤と反応させて、GがC−C−アルキレンである対応する化合物を産生し;
【0052】
ここで、工程a)からc)の出発化合物に存在し、かつ反応への参加を意図しない官能基は必要であれば保護された形で存在し、存在する保護基を開裂し、ここで、該出発化合物はまた塩形成基が存在し、かつ塩形での反応が可能であるならば塩の形で存在してもよく;
そして、望むのであれば、このようにして得た式Iの化合物を他の式Iの化合物に変換し、遊離の式Iの化合物を塩に変換し、得られた式Iの化合物の塩を遊離化合物もしくは他の塩に変換し、および/または式Iの化合物の異性体混合物を個々の異性体に分離する
ことにより製造できる。
【0053】
変法の記載
工程a)について:
式IIの化合物とピペラジン(好ましくはとりわけN−tert−ブトキシカルボニル−ピペラジンのように、その窒素環原子の一個で保護されている)の間の反応は、好ましくは適当な不活性溶媒、とりわけN,N−ジメチルホルムアミド中、炭酸カリウムのような塩基の存在下、室温(RT)から100℃の温度で行う。あるいは、式IIの化合物とピペラジン(好ましくはN−tert−ブトキシカルボニル−ピペラジンのように保護された形)の間の反応は、適当な溶媒、例えばエタノールのような低級アルコール中、例えばNaIのような適当な触媒の存在下、好ましくは用いる溶媒の還流温度で行う。式IIの化合物中、Halは好ましくはクロロである。
【0054】
工程b)について:
式IIIの化合物とピペラジン(好ましくはとりわけN−tert−ブトキシカルボニル−ピペラジンのように、その窒素環原子の一個で保護されている)の間の反応は、好ましくはN,N−ジメチルホルムアミドのような適当な不活性溶媒中、および不活性、例えばアルゴンまたは窒素雰囲気下、ジエチル−シアノホスホネートの存在下で、好ましくは約0℃で行う。
【0055】
工程c)について:
工程c)で使用する還元剤は、好ましくは水素化アルミニウムリチウムまたはジイソブチル−アルミニウムハイドライドである。本反応は、好ましくはWO03/013541A1の実施例79または141に各々記載の条件下で行う。
【0056】
付加的工程段階
所望により行う付加的工程段階において、反応に参加すべきではない出発化合物に存在する官能基は、保護されていない形で存在してよく、または、例えば、1個以上の保護基で保護されていてよい。保護基を、次いで、当業者に既知の方法の一つ、とりわけ、実施例に記載の方法に従い、完全にまたは一部除去する。
【0057】
保護基、およびそれらを挿入および除去する方法は、例えば、“Protective Groups in Organic Chemistry”, Plenum Press, London, New York 1973、および“Methoden der organischen Chemie”, Houben-Weyl, 4th edition, Vol. 15/1, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart 1974およびTheodora W. Greene, “Protective Groups in Organic Synthesis”, John Wiley & Sons, New York 1981に記載されている。保護基の特徴は、それらが、容易に、すなわち望まない二次反応の発生無しに、例えば加溶媒分解、還元、光分解またはあるいは生理学的条件下で除去できることである。
【0058】
式Iの最終生成物は、しかしながら、他の式Iの最終生成物の製造のための出発物質において保護基として使用できる置換基も含み得る。故に、本明細書の範囲内で、内容から他に解釈すべきでない限り、式Iの特定の所望の最終生成物の構成要素ではない、容易に除去できる基のみを“保護基”と呼ぶ。
【0059】
一般的方法条件
ここに記載の全ての工程段階は、それ自体既知の反応条件下、好ましくは具体的に記載の反応条件下、溶媒または希釈剤(好ましくは使用する溶媒に対して不活性であり、それらを溶解する溶媒または希釈剤)の非存在下、または、通常存在下、触媒、縮合剤または中和剤、例えばイオン交換体、例えばH形態の、例えばカチオン交換体の存在下または非存在下、反応および/または反応体の性質に依存して、低温、常温または高温、例えば約−100℃から約190℃、好ましくは約−80℃から約150℃、例えば−80から−60℃、RT、−20から40℃、0から100℃または使用する溶媒の沸点で、大気圧下または密封容器中、適当であれば加圧下、および/または不活性雰囲気下、例えばアルゴンまたは窒素雰囲気下で行うことができる。
【0060】
本発明は、工程の任意の段階で中間体として得られる化合物を出発物質として使用して残りの工程段階を行うか、または、任意の段階で工程を中断するか、または、出発物質を反応条件下で形成させるか、または該出発物質を反応性誘導体の形で使用するか、または、本発明の工程により得られる化合物を本工程条件下で製造してさらにインサイチュで処理する工程の形にも関する。好ましい態様において、上記で好ましいとして記載した化合物に至るこのような出発物質から出発する。
【0061】
好ましい態様において、式Iの化合物は実施例に記載の方法および工程段階に従い製造する。
【0062】
その塩を含む式Iの化合物は、また水和物の形で得ることができ、または、それらの結晶は、例えば結晶化に使用した溶媒を含み得る(溶媒和物として存在)。
【0063】
出発物質
新規出発物質および/または中間体、ならびにそれらの製造法は、同様に、本発明の対象である。好ましい態様において、このような出発物質を使用し、好ましい化合物を得ることができるように反応条件を選択する。
【0064】
上記工程a)からc)で使用する出発物質は既知であるか、既知の方法により製造できるか(EP682027、WO97/02266、WO97/27199、WO98/07726およびWO03/013541A1も参照)、または商業的に入手できる;特に、それらは、実施例に記載の方法を使用して製造できる。
【0065】
出発物質の製造において、反応に参加しない既存の官能基は、必要であれば、保護すべきである。好ましい保護基、その挿入および除去は、上記または実施例に記載されている。各出発物質および短寿命中間体の代わりに、それらの塩も、塩形成基が存在し、塩での反応も可能であるならば、反応に使用してよい。出発物質なる用語を前記および後記で使用するとき、合理的であり、可能である限り、その塩も常に含む。
【0066】
式IIの化合物は、例えば式IV
【化4】

〔式中、GはC−C−アルキレンであり、そしてR、QおよびXは、式Iの化合物に関して定義の通りの意味を有する。〕
の化合物と、例えばチオニルハロゲニド、好ましくは塩化チオニルを、ピリジンの存在下または非存在下、不活性溶媒中、例えばトルエン中またはアセトニトリルとジオキサンの1:1混合物中、好ましくは−10から0℃でまたはRTで反応させることにより製造できる。
【0067】
式IVの化合物は、例えば式V
【化5】

〔式中、Rは低級アルキル、とりわけメチルまたはエチルであり、そしてR、QおよびXは、式Iの化合物に関して定義の通りの意味を有する。〕
の化合物と水素化アルミニウムリチウムを、不活性溶媒、とりわけエーテル、例えばテトラヒドロフランのような環状エーテル中、好ましくは用いる溶媒の還流温度で反応させることにより製造できる。あるいは、式IVの化合物は、式Vの化合物とジイソブチル−アルミニウムハイドライドを、不活性溶媒中、例えばテトラヒドロフラン中またはジクロロメタンとジオキサンの1:1混合物中、好ましくはRTで反応させることにより製造し得る。
【0068】
Qが−NH−である式Vの化合物は、例えば式VI
【化6】

〔式中、Halはハロゲン、好ましくはクロロであり、そしてRは上記で式Vの化合物に関して定義の通りの意味である。〕
の化合物と、式HN−X−R〔式中、RおよびXは、式Iの化合物に関して定義の通りの意味を有する。〕の化合物を、(i)アルコール、とりわけn−ブタノールのような低級アルコールのような適当な溶媒中、好ましくは用いる溶媒の沸点で、または(ii)例えばWO03/013541A1の実施例133のステップ133.1に記載のもののような、Buchwald反応条件に従った、触媒条件下で、反応させることにより製造できる。
【0069】
Qが−O−である式Vの化合物は、例えば好ましくはピロロ−ピリミジン部分をN保護されている式VIの化合物と、式HO−X−R〔式中、RおよびXは、式Iの化合物に関して定義の通りの意味を有する。〕の化合物を、N,N−ジメチルホルムアミドのような適当な不活性溶媒中、および炭酸カリウムのような塩基の存在下、高温で、好ましくは100℃付近で反応させることにより製造できる。
【0070】
あるいは、式VIの化合物のカルボン酸エステルを最初に対応するアルコールに、例えば式IVの化合物について上記の条件下で還元し、次いで、式HN−X−Rの化合物と、例えばQが−NH−である式Vの化合物の製造について上記の条件下で反応させるか、または式HO−X−Rの化合物と、例えばQが−O−である式Vの化合物の製造について上記の条件下で反応させるかのいずれかにより、製造できる。
【0071】
式IIIの化合物は、例えば式Vの化合物とLiOHを、好ましくはジオキサンと水の混合物中、高温で、好ましくはWO03/013541A1の実施例141のステップ141.4に記載の条件下で反応させることにより製造できる。
【0072】
残りの出発物質は既知であるか、既知工程に従い製造できるか、または、商業的に入手可能である;または特に、それらは実施例に記載の方法を使用して製造できる。
【0073】
医薬組成物、方法、および使用
本発明は、活性成分として式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を含み、とりわけ最初に記載の疾患の処置に使用できる、医薬組成物に関する。温血動物、とりわけヒトへの、経腸投与用、例えば経鼻、バッカル、直腸、または、とりわけ、経口投与用、および非経腸投与用、例えば静脈内、筋肉内または皮下投与用の組成物がとりわけ好ましい。本組成物は、活性成分を単独で、または、好ましくは、薬学的に許容される担体と共に含む。活性成分の投与量は、処置すべき疾患および種、その年齢、体重および個々の状態、個々の薬物動態データ、および投与の形態に依存する。
【0074】
本発明はまた、インビボで式Iの化合物それ自体に変換する、式Iの化合物のプロドラッグにも関する。式Iの化合物に対する全ての言及は、故に、また適当であり、予測される限り、式Iの化合物の対応するプロドラッグも含むと理解すべきである。
【0075】
本発明はまた、ヒトまたは動物身体の予防的またはとりわけ治療的処置法に使用するための、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、それ自体または医薬組成物の形の使用、その製造法(とりわけ腫瘍処置用組成物の形の)および増殖性疾患、主に腫瘍疾患、とりわけ上記のものの処置法に関する。
【0076】
本発明はまた、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を活性要素(活性成分)として含む医薬組成物の製造法、ならびにその製造のための、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用にも関する。
【0077】
所望により、該医薬組成物はまた、さらなる活性成分、例えば細胞増殖抑制剤を含んでよく、および/または既知の治療法、例えばホルモンもしくは放射線の投与と組み合わせて使用してよい。
【0078】
タンパク質チロシンキナーゼの阻害、とりわけEGF−およびVEGF−受容体ファミリーメンバーの二重阻害に応答する疾患、とりわけ新生物疾患を有する温血動物、とりわけヒトまたは商業的に有用な哺乳動物に投与するのに適した、タンパク質チロシンキナーゼの阻害、とりわけEGF−およびVEGF−受容体ファミリーメンバーの二重阻害のために有効な量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を、少なくとも1個の薬学的に許容される担体と共に含む、医薬組成物が好ましい。
【0079】
処置を必要とする、とりわけこのような疾患を有する、温血動物、とりわけヒトまたは商業的に有用な哺乳動物の新生物および他の増殖性疾患の予防またはとりわけ治療的管用の、活性成分として、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を該疾患に対して予防的またはとりわけ治療的に活性である量で含む、医薬組成物も同様に好ましい。
【0080】
本医薬組成物は、大凡1%から大凡95%の活性成分を含み、好ましい態様に含まれる単回投与形態は、大凡20%から大凡90%の活性成分を含み、好ましい態様に含まれる単回投与タイプではない形態は、大凡5%から大凡20%の活性成分を含む。単位投与形態は、例えば、被覆および非被覆錠、アンプル、バイアル、坐薬またはカプセルである。例は、約0.05gから約1.0gの活性物質を含む、カプセルである。
【0081】
本発明の医薬組成物は、それ自体既知の方法で、例えば慣用の混合、造粒、コーティング、溶解または凍結乾燥工程の手段により製造できる。
【0082】
本発明は、同様に、上記の病的状態の一つ、とりわけタンパク質チロシンキナーゼの阻害、とりわけEGF−およびVEGF−受容体ファミリーメンバーの二重阻害に応答する疾患、とりわけ対応する新生物疾患の処置のための工程または方法に関する。式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を、それ自体でまたは医薬組成物の形で、予防的にまたは治療的に、好ましくは、該疾患に対して有効な量で、このような処置を必要とする哺乳動物、例えば、例えばヒトに投与し、本化合物は、とりわけ医薬組成物の形で使用する。約70kgの体重の個体の場合、1日投与量は、大凡0.1gから大凡5g、好ましくは大凡0.5gから大凡2gの本発明の化合物である。
【0083】
本発明は、とりわけまた式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、とりわけ好ましいと考えられる式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、それ自体または少なくとも1個の薬学的に許容される担体との医薬組成物の形の、上記の疾患の1個以上、好ましくはタンパク質チロシンキナーゼの阻害、とりわけEGF−およびVEGF−受容体ファミリーメンバーの二重阻害に応答する疾患、とりわけ新生物疾患の、特に該疾患がタンパク質チロシンキナーゼの阻害、とりわけEGF−およびVEGF−受容体ファミリーメンバーの二重阻害に応答するときの、治療的およびまた予防的管理のための使用に関する。
【0084】
本発明は、とりわけまた式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、とりわけ好ましいと考えられる式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩の、上記の疾患の1個以上、とりわけ新生物疾患、特に該疾患がタンパク質チロシンキナーゼの阻害、とりわけEGF−およびVEGF−受容体ファミリーメンバーの二重阻害に応答するときの、治療的およびまた予防的管理用医薬組成物の製造のための使用に関する。
【0085】
式Iの化合物はまた、他の抗増殖剤と組み合わせて有利に使用し得る。このような抗増殖剤は、アロマターゼ阻害剤、抗エストロゲン、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、微小管活性化剤、アルキル化剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、COX−2阻害剤、MMP阻害剤、mTOR阻害剤、抗新生物代謝拮抗剤、白金化合物、タンパク質キナーゼ活性を低下させる化合物およびさらなる抗血管形成化合物、ゴナドレリンアゴニスト、抗アンドロゲン、ベンガミド、ビスホスホネート、抗増殖性抗体およびテモゾロミド(TEMODAL(登録商標))を含むが、これらに限定されない。
【0086】
本明細書で使用する用語“アロマターゼ阻害剤”は、エストロゲン産生、すなわち、基質アンドロステンジオンおよびテストステロンから、各々エストロンおよびエストラジオールへの変換を阻害する化合物に関する。本用語は、ステロイド、とりわけエキセメスタンおよびフォルメスタンおよび、特に、非ステロイド、とりわけアミノグルテチミド、ボロゾール、ファドロゾール、アナストロゾールおよび、非常にとりわけ、レトロゾールを含むが、これらに限定されない。エキセメスタンは、例えば、商品名AROMASINTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。フォルメスタンは、例えば、商品名LENTARONTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。ファドロゾールは、例えば、商品名AFEMATMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。アナストロゾールは、例えば、商品名ARIMIDEXTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。レトロゾールは、例えば、商品名FEMARATMまたはFEMARTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。アミノグルテチミドは、例えば、商品名ORIMETENTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。
アロマターゼ阻害剤である抗新生物剤を含む本発明の組み合わせは、特にホルモン受容体陽性乳房腫瘍の処置に有用である。
【0087】
本明細書で使用する用語“抗エストロゲン”は、エストロゲンの作用とエストロゲン受容体レベルで拮抗する化合物に関する。本用語は、タモキシフェン、フルベストラント、ラロキシフェンおよびラロキシフェンヒドロクロライドを含むが、これらに限定されない。タモキシフェンは、例えば、商品名NOLVADEXTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。ラロキシフェンヒドロクロライドは、例えば、商品名EVISTATMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。フルベストラントは、US4,659,516に記載の通りに製剤でき、または、それは、例えば、商品名FASLODEXTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。
【0088】
本明細書で使用する用語“トポイソメラーゼI阻害剤”は、トポテカン、イリノテカン、9−ニトロカンプトテシンおよび巨大分子カンプトテシン接合PNU−166148(WO99/17804の化合物A1)を含むが、これらに限定されない。イリノテカンは、例えば、商品名CAMPTOSARTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。トポテカンは、例えば、商品名HYCAMTINTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。
【0089】
本明細書で使用する用語“トポイソメラーゼII阻害剤”は、アントラサイクリン類ドキソルビシン(リポソーム製剤、例えばCAELYXTMを含む)、エピルビシン、イダルビシンおよびネモルビシン(nemorubicin)、アントラキノン類ミトキサントロンおよびロソキサントロン、およびポドフィロトキシン類エトポシドおよびテニポシドを含むが、これらに限定されない。エトポシドは、例えば、商品名ETOPOPHOSTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。テニポシドは、例えば、商品名VM 26-BRISTOLTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。ドキソルビシンは、例えば、商品名ADRIBLASTINTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。エピルビシンは、例えば、商品名FARMORUBICINTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。イダルビシンは、例えば、商品名ZAVEDOSTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。ミトキサントロンは、例えば、商品名NOVANTRONTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。
【0090】
用語“微小管活性化剤”は、タキサン類パクリタキセルおよびドセタキセル、ビンカアルカロイド、例えば、ビンブラスチン、とりわけビンブラスチンスルフェート、ビンクリスチン、とりわけビンクリスチンスルフェート、およびビノレルビン、ディスコデルモライドならびにエポチロンBおよびDのようなエポチロンを含むが、これらに限定されない、微小管安定化および微小管脱安定化剤に関する。ドセタキセルは、例えば、商品名TAXOTERETMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。ビンブラスチンスルフェートは、例えば、商品名VINBLASTIN R.P.TMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。ビンクリスチンスルフェートは、例えば、商品名FARMISTINTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。ディスコデルモライドは、例えば、US5,010,099に記載の通りに得ることができる。
【0091】
本明細書で使用する用語“アルキル化剤”は、シクロホスファミド、イフォスファミドおよびメルファランを含むが、これらに限定されない。シクロホスファミドは、例えば、商品名CYCLOSTINTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。イフォスファミドは、例えば、商品名HOLOXANTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。
【0092】
用語“ヒストンデアセチラーゼ阻害剤”は、ヒストンデアセチラーゼを阻害し、かつ抗増殖性活性を有する化合物に関する。
【0093】
用語“ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤”は、ファルネシルトランスフェラーゼを阻害し、かつ抗増殖性活性を有する化合物に関する。
【0094】
用語“COX−2阻害剤”は、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))およびルミラコキシブ(COX189)のような、シクロオキシゲナーゼ・タイプ2酵素(COX−2)を阻害し、かつ抗増殖性活性を有する化合物に関する。
【0095】
用語“MMP阻害剤”は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)を阻害し、かつ抗増殖性活性を有する化合物に関する。
【0096】
用語“mTOR阻害剤”は、シロリムス(Rapamune(登録商標))、エベロリムス(CerticanTM)、CCI−779およびABT578のような、ラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)を阻害し、かつ抗増殖性活性を有する化合物に関する。
【0097】
用語“抗新生物代謝拮抗剤”は、5−フルオロウラシル、テガフール、カペシタビン、クラドリビン、シタラビン、フルダラビンホスフェート、フルオロウリジン、ゲムシタビン、6−メルカプトプリン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、エダトレキサートおよびこのような化合物の塩、およびさらにZD1694(RALTITREXEDTM)、LY231514(ALIMTATM)、LY264618(LOMOTREXOLTM)およびOGT719を含むが、これらに限定されない。
【0098】
本明細書で使用する用語“白金化合物”は、カルボプラチン、シスプラチンおよびオキサリプラチンを含むが、これらに限定されない。カルボプラチンは、例えば、商品名CARBOPLATTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。オキサリプラチンは、例えば、商品名ELOXATINTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。
【0099】
本明細書で使用する用語“タンパク質キナーゼ活性を低下させる化合物およびさらなる抗血管形成化合物”は、例えば血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、c−Src、タンパク質キナーゼC、血小板由来増殖因子(PDGF)、Bcr−Ablチロシンキナーゼ、c−kit、Flt−3およびインシュリン様増殖因子I受容体(IGF−IR)およびサイクリン依存性キナーゼ(CDK)を低下させる化合物、およびタンパク質キナーゼ活性低下以外の他の作用機構を有する抗血管形成化合物を含むが、これらに限定されない。
【0100】
VEGFの活性を低下させる化合物は、とりわけVEGF受容体、とりわけVEGF受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害する化合物、およびVEGFに結合する化合物であり、特にWO98/35958(記載の式Iの化合物)、WO00/09495、WO00/27820、WO00/59509、WO98/11223、WO00/27819、WO01/55114、WO01/58899およびEP0769947に一般的におよび具体的に記載のこのような化合物、タンパク質およびモノクローナル抗体;M. Prewett et al in Cancer Research 59(1999)5209-5218、F. Yuan et al in Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 93, pp. 14765-14770, December 1996、Z. Zhu et al in Cancer Res. 58, 1998, 3209-3214、およびJ. Mordenti et al in Toxicologic Pathology, vol. 27, no. 1, pp 14-21, 1999により記載の;WO00/37502およびWO94/10202に記載のもの;M. S. O'Reilly et al, Cell 79, 1994, 315-328により記載のAngiostatinTM;およびM. S. O'Reilly et al, Cell 88, 1997, 277-285により記載のEndostatinTMであり;
【0101】
EGFの活性を低下させる化合物は、とりわけEGF受容体、とりわけEGF受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害する化合物、およびEGFに結合する化合物であり、特にWO97/02266(記載の式IVの化合物)、EP0564409、WO99/03854、EP0520722、EP0566226、EP0787722、EP0837063、WO98/10767、WO97/30034、WO97/49688、WO97/38983および、とりわけ、WO96/33980に記載の化合物であり;
【0102】
c−Srcの活性を低下させる化合物は、下記で定義の通りにc−Srcタンパク質チロシンキナーゼ活性を阻害する化合物、およびWO97/07131およびWO97/08193に記載のもののようなSH2相互作用阻害剤を含むが、これらに限定されず;
c−Srcタンパク質チロシンキナーゼ活性を阻害する化合物は、ピロロピリミジン、とりわけピロロ[2,3−d]ピリミジン、プリン、ピラゾピリミジン、とりわけピラゾ[3,4−d]ピリミジン、ピラゾピリミジン、とりわけピラゾ[3,4−d]ピリミジンおよびピリドピリミジン、とりわけピリド[2,3−d]ピリミジンの構造クラスに属する化合物を含むが、これらに限定されない。好ましくは、本用語は、WO96/10028、WO97/28161、WO97/32879およびWO97/49706に記載の化合物に関し;
【0103】
タンパク質キナーゼCの活性を低下させる化合物は、とりわけEP0296110に記載のスタウロスポリン誘導体(医薬製剤はWO00/48571に記載)であり、この化合物はタンパク質キナーゼC阻害剤であり;
タンパク質キナーゼ活性を低下させ、また本発明の化合物と組み合わせて使用し得るさらに具体的な化合物は、イマチニブ(Gleevec(登録商標)/Glivec(登録商標))、PKC412、IressaTM(ZD1839)、PKI166、PTK787、ZD6474、GW2016、CHIR−200131、CEP−7055/CEP−5214、CP−547632およびKRN−633であり;
タンパク質キナーゼ活性低下以外の他の作用機構を有する抗血管形成化合物は、例えばサリドマイド(THALOMID)、セレコキシブ(Celebrex)、SU5416およびZD6126を含むが、これらに限定されない。
【0104】
本明細書で使用する用語“ゴナドレリンアゴニスト”は、アバレリクス、ゴセレリンおよびゴセレリンアセテートを含むが、これらに限定されない。ゴセレリンはUS4,100,274に記載され、例えば、商品名ZOLADEXTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。アバレリクスは、例えば、US5,843,901に記載の通りに製剤できる。
【0105】
本明細書で使用する用語“抗アンドロゲン”は、ビカルタミド(CASODEXTM)を含むが、これに限定されず、これは、例えばUS4,636,505に記載の通り製剤できる。
【0106】
用語“ベンガミド”は、抗増殖性特性を有する、ベンガミドおよびその誘導体に関する。
【0107】
本明細書で使用する用語“ビスホスホネート”は、エチドロン酸、クロドロン酸、チルドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、イバンドロン酸、リセドロン酸およびゾレドロン酸を含むが、これらに限定されない。“エチドロン酸”は、例えば、商品名DIDRONELTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。“クロドロン酸”は、例えば、商品名BONEFOSTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。“チルドロン酸”は、例えば、商品名SKELIDTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。“パミドロン酸”は、例えば、商品名AREDIATMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。“アレンドロン酸”は、例えば、商品名FOSAMAXTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。“イバンドロン酸”は、例えば、商品名BONDRANATTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。“リセドロン酸”は、例えば、商品名ACTONELTMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。“ゾレドロン酸”は、例えば、商品名ZOMETATMの下に、例えば、市販されている形で、投与できる。
【0108】
本明細書で使用する用語“抗増殖性抗体”は、トラスツマブ(HerceptinTM)、トラスツマブ−DM1、エルロチニブ(TarcevaTM)、ベバシズマブ(AvastinTM)、リツキシマブ(Rituxan(登録商標))、PRO64553(抗CD40)および2C4抗体を含むが、これらに限定されない。
【0109】
AMLの処置のために、式Iの化合物を、標準白血病療法と組み合わせて、とりわけAMLの処置に使用される療法と組み合わせて使用できる。特に、式Iの化合物は、例えばファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤および/またはダウノルビシン、アドリアマイシン、Ara−C、VP−16、テニポシド、ミトキサントロン、イダルビシン、カルボプラチンおよびPKC412のようなAMLの処置に使用される他の薬剤と組み合わせて投与できる。
【0110】
コード番号、一般名または商品名により同定した活性剤の構造は、標準概論“The Merck Index”の現行版またはデータベース、例えばPatents International(例えばIMS World Publications)から取り得る。
【0111】
式Iの化合物と組み合わせて使用できる上記化合物は、上記で引用した文献のような、文献に記載の通りに製造および投与できる。
【実施例】
【0112】
下記実施例は、その範囲を限定することなく、本発明を説明するために提供する。
温度は摂氏度で測定する。特記されない限り、反応はRTで行う。
【0113】
各物質が移動した距離と溶離剤選択が移動した距離の比率を示すR値は、各々記載の溶媒系を使用して、薄層クロマトグラフィーにより、シリカゲル薄層プレート(Merck, Darmstadt, Germany)上で決定する。
【0114】
HPLC条件:
カラム:逆相材C18-Nucleosil(5μm平均粒子サイズ、オクタデシルシランで共有結合的に誘導体化したシリカゲル、Macherey & Nagel, Dueren, Germany)が充填された(250X4.6mm)。215nmのUV吸収で検出。保持時間(t)は分で示す。流速:1ml/分。
勾配:b)中20%→100%a)、14分+5分100%a)。a):アセトニトリル+0.05%トリフルオロ酢酸(TFA);b):水+0.05%TFA。
【0115】
使用する短縮形および略語は下記定義を有する:
【表1】

【0116】
出発物質:4−{4−[4−((R)−1−フェニル−エチルアミノ)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−6−イル]−ベンジル}−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
【化7】

1.6g(4mmol)[6−(4−クロロメチル−フェニル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル]−((R)−1−フェニル−エチル)−アミン(製造に関しては、WO03/013541A1の実施例9、ステップ9.3参照)の50ml DMF溶液を、1.56g(8.4mmol)N−BOC−ピペラジンおよび2.76g(20mmol)無水炭酸カリウムで処理し、混合物を65℃で1時間加熱する。反応混合物を冷却し、無機塩を濾過(Hyflo Super Cel(登録商標);Fluka, Buchs, Switzerland)により除去する。DMFを減圧下蒸発させ、残渣を最初にジクロロメタン/エタノール95:5および次いでジクロロメタン/エタノール9:1を使用するフラッシュクロマトグラフィーを通して精製する。表題化合物を固体として得る;m.p.244−246℃;MS−ES:(M+H)=513;TLC R(ジクロロメタン/エタノール9:1)0.46。
【0117】
実施例1:((R)−1−フェニル−エチル)−[6−(4−ピペラジン−1−イルメチル−フェニル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル]−アミン
【化8】

4−{4−[4−((R)−1−フェニル−エチルアミノ)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−6−イル]−ベンジル}−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(1.8g、3.5mmol)を150mLのジオキサンに穏やかに加温しながら溶解する。この溶液に、4N 塩酸のジオキサン溶液(Aldrich, Buchs, Switzerland)(5mL、20mmol)を添加し、混合物を50から60℃で1時間撹拌する。得られる懸濁液を75mLのメタノールで希釈し、さらに1時間、還流下で撹拌し、その後混合物を冷却して、溶媒を蒸発させる。残渣を希塩酸に溶解し、酢酸エチルで洗浄する。水性相を固体炭酸カリウムで塩基性となるまで処理し、蒸発させる。無機塩を含む残渣を、1%濃アンモニア含有ジクロロメタン/メタノール7:3を使用したフラッシュクロマトグラフィーで精製する。純粋フラクションを酢酸エチルに取り込み、水および塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて、表題化合物を固体として得た;m.p。240−242℃;MS−ES:(M+H)=413;TLC R(1%濃アンモニア含有ジクロロメタン/メタノール7:3)0.35;HPLC t=6.86分。
【0118】
実施例2:乾燥充填カプセル
各々実施例1の化合物0.25gを活性成分として含む5000個のカプセルを下記の通り製造する:
【表2】

製造法:記載の物質を粉砕し、0.6mmメッシュサイズの篩いを通す。混合物の0.33g分を、ゼラチンカプセルにカプセル充填機を使用して導入する。
【0119】
実施例3:軟カプセル
各々実施例1の化合物0.05gを活性成分として含む5000個の軟ゼラチンカプセルを下記の通り製造する:
【表3】

製造法:活性成分を粉砕し、PEG400(約380から約420のMを有するポリエチレングリコール、Fluka, Switzerland)およびTween(登録商標)80(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、Atlas Chem. Ind. Inc., USA、Fluka, Switzerlandから調達)に溶解し、湿式粉砕機で、約1から3μmの粒子サイズまで挽く。次いで、混合物の0.43g分を、軟ゼラチンカプセルにカプセル充填機を使用して導入する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離形または塩形の、式I
【化1】

[式中、
はフェニル、ベンゾジオキソリル、ヒドロキシもしくは炭素数7個までのアルコキシで置換されているピリジル、ハロゲンおよび炭素数7個までのアルキルで置換されているインドリル、または炭素数7個までのアルキル、ヒドロキシ、炭素数7個までのアルコキシ、ハロゲンおよびベンジルオキシから成る群から互いに独立して選択される1個以上の基で置換されているフェニルであり;
Gは−CH−または−C(=O)−であり;
Qは−NH−または−O−であり(ただし、Gが−C(=O)−であるとき、Qは−O−である);そして
Xは存在しないか、−CH−または−CH(CH)−である(ただし、Rの置換ピリジルまたはインドリルは、Xが存在しないとき、環炭素原子を介して結合している)。]
で示される化合物。
【請求項2】
がフェニル、ベンゾジオキソリル、ヒドロキシもしくは炭素数7個までのアルコキシで置換されているピリジル、または炭素数7個までのアルキル、ヒドロキシ、炭素数7個までのアルコキシ、ハロゲンおよびベンジルオキシから成る群から互いに独立して選択される1個以上の基で置換されているフェニルであり;
Gが−CH−であり;
Qが−NH−であり;そして
Xが存在しないか、−CH−または−CH(CH)−である(ただし、Rの置換ピリジルは、Xが存在しないとき、環炭素原子を介して結合している)、
請求項1記載の化合物。
【請求項3】
((R)−1−フェニル−エチル)−[6−(4−ピペラジン−1−イルメチル−フェニル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル]−アミンまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
ヒトまたは動物の処置に使用するための、請求項1から3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の化合物を、少なくとも1個の薬学的に許容される担体と共に含む、医薬組成物。
【請求項6】
疾患処置用医薬組成物の製造のための、請求項1から4のいずれかに記載の式Iの化合物の使用。
【請求項7】
タンパク質チロシンキナーゼの阻害に応答する疾患の処置用医薬組成物の製造のための、請求項1から4のいずれかに記載の式Iの化合物の使用。
【請求項8】
請求項1記載の式IにおいてGが−CH−である化合物の製造法であって、
式II
【化2】

[式中、Halはハロゲンであり、Gは−CH−であり、そしてR、QおよびXは、請求項1に定義の通りの意味を有する。]
で示される化合物をピペラジンと反応させることを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項1記載の式IにおいてGが−C(=O)−である化合物の製造法であって、
式III’
【化3】

[式中、R、QおよびXは、請求項1に定義の通りの意味を有する。]
で示される化合物をピペラジンと反応させることを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項1記載の式IにおいてGが−CH−である化合物の製造法であって、
Gが−C(=O)−である式Iの化合物を還元剤と反応させることを特徴とする、方法。

【公開番号】特開2012−131795(P2012−131795A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−8681(P2012−8681)
【出願日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【分割の表示】特願2006−550122(P2006−550122)の分割
【原出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】