説明

増殖性疾患の治療に有用なベンゾチアゾール−3−オキシド

本発明は、増殖性疾患を治療するための薬剤を調製する際の、化学式1の化合物、又はその薬学的に許容できる塩の使用に関連する。
【化1】


(式中、R、R、R、及びRは、各々独立してH、NO、CF、SCF、CN、ハロ、OH、OR、NH、NHR、NR、N、COOH、COOR、CONH、CONHR、CONR、COH、COR、SR、SOR,SO、SOOH、SOOR、SONH、SONHR、SONR、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、但し、R、R、R、及びRの少なくとも1つは、H以外である;又はR及びR、R及びR、若しくはR及びRは、融合又は未融合で飽和又は不飽和の環系の部分を一緒に形成可能であり、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子を2つまで任意に含む;
はOH、OR、CN、CONH、CONHNH、CONHOH、CONHR、CONR10、NH、NHR、又はNR10であり;
、R、及びRの各々は独立してヒドロカルビルであるか、又はR、R、及びRのうちの2つは、飽和又は不飽和の環系の部分を一緒に形成し、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子を2つまで任意に含む;
及びR10の各々は独立してヒドロカルビルであるか、又はR及びR10は飽和若しくは不飽和の環系の部分を一緒に形成し、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子を2つまで任意に含む。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増殖性疾患を治療する際に、治療薬として複素環N−オキシドを使用することに関する。より具体的には、この使用に限定されることはないが、本発明は、ポロ様キナーゼ(PLK)を阻害することができる複素環N−オキシドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
薬理学的なPLK阻害の治療的可能性は、以下の文献に記載されている(Kraker et al., in : Annual Reports in Medicinal Chemistry; Academic Press: San Diego, CA, 1999; pp 247)。しかしながら、薬剤として有用といえる小分子PLK阻害剤の報告はほとんどない。
【0003】
今まで、唯一の特徴づけられた生化学的なPLK1阻害剤は、シトネミン(Scytonemin)、対称的なインドール海洋天然物(Stevenson et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 2002, 303, 858; Jacobs et al; 国際公開第2001/062900号パンフレット; University of California)である。シトネミンは、IC50値が約2μM(10μMのATP濃度で)の組換えPLK1により、CDC25Cのリン酸化を阻害する。阻害は明らかに可逆的であり、ATPに関するその機序は混合競合的モードである。同様の効果を、MYT1、CHK1、CDK1/サイクリンB、及びPKCを含む、他のSer/Thr及びThr/Tyr細胞周期キナーゼに対し観察した。シトネミンは、インビトロの多様なヒト細胞株で、顕著な抗増殖効果を有することを示した。
【0004】
特定の2−ベンゾチアゾール尿素誘導体は、プロティンキナーゼ阻害剤として当技術分野で開示されている(Cusack et al., 国際公開第2001/057008号パンフレット;BASF)。しかしながら、2−ベンゾチアゾール尿素誘導体がPLKを阻害したという証拠はどこにもない。また、抗菌性及び抗真菌性を有するベンゾチアゾール−3−オキシドの文献が報告されている(参照例、Wagner et al., Ger. Offen. 2136923, 36pp.; Bayer A.-G.: Germany, 1973)。しかし、また、ベンゾチアゾール−3−オキシドの生物活性が、一般的に、プロティンキナーゼ阻害を多少なりとも伴うという徴候はなく、PLK阻害の文献もない。
【特許文献1】国際公開第2001/062900号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2001/057008号パンフレット
【非特許文献1】Kraker et al., in : Annual Reports in Medicinal Chemistry; Academic Press: San Diego, CA, 1999; pp 247
【非特許文献2】Stevenson et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 2002, 303, 858
【非特許文献3】Wagner et al., Ger. Offen. 2136923, 36pp.; Bayer A.-G.: Germany, 1973
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、一連の増殖性疾患を治療するために、治療的応用を有する複素環N−オキシド化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様は、増殖性疾患を治療するための薬剤を調製する際の、化学式Iの化合物、又はその薬学的に許容できる塩の使用に関しており、
【化1】


式中、R、R、R、及びRは、各々独立してH、NO、CF、SCF、CN、ハロ、OH、OR、NH、NHR、NR、N、COOH、COOR、CONH、CONHR、CONR、COH、COR、SR、SOR,SO、SOOH、SOOR、SONH、SONHR、SONR、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、但し、R、R、R、及びRの少なくとも1つは、H以外である;又はR及びR、R及びR、又はR及びRは、融合又は未融合で飽和又は不飽和の環系の部分を一緒に形成可能であり、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子を2つまで任意に含む;
はOH、OR、CN、CONH、CONHNH、CONHOH、CONHR、CONR10、NH、NHR、又はNR10であり;
、R、及びRの各々は独立してヒドロカルビルであるか、又はR、R、及びRのうちの2つは、飽和又は不飽和の環系の部分を一緒に形成し、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子を2つまで任意に含む;
及びR10の各々は独立してヒドロカルビルであるか、又はR及びR10は飽和若しくは不飽和の環系の部分を一緒に形成し、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子を2つまで任意に含む。
【0007】
本発明の第二の態様は、上記で定義した化学式Iの化合物、及び、薬学的に許容できる希釈剤、賦形剤又は担体を含む医薬組成物に関しており、増殖性疾患を治療する際に使用する。
【0008】
本発明のさらなる態様は、選択した化学式Iの化合物、及び、薬学的に許容できる担体、希釈剤、又は賦形剤と混合した前記の化合物を含む医薬組成物に関する。
【0009】
本発明の他の態様は、上記で定義した化学式Iの化合物、又はその薬学的に許容できる塩を、PLKを阻害するのに充分な量で、それを必要とする対象に投与することを含むPLK依存性疾患の治療方法に関する。
【0010】
本発明の別の態様は、細胞においてPLKを阻害するように、上記で定義した化学式Iの化合物、又はその薬学的に許容できる塩のある量と前記細胞を接触させることを含む細胞でPLKを阻害する方法に関する。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、前記増殖性疾患の治療が行われるように、上記で定義した化学式Iの化合物、又はその薬学的に許容できる塩を、治療的に有効な量で、それを必要とする対象に投与することにより、PLKを阻害することを含む増殖性疾患を治療する方法に関する。
【0012】
本発明のさらなる態様は、PLKを阻害することが可能な更なる候補化合物を同定するためのアッセイにおける、上記で定義した化学式Iの化合物、又はその薬学的に許容できる塩の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本明細書で使用した用語「ヒドロカルビル」は、1つ以上の他の適切な置換基を任意に含んでいてもよく、少なくともC及びHを含む飽和若しくは不飽和、直鎖、分鎖、又は環状基に関連する。置換基の例には、ハロ、ヒドロキシ、CF、CN、アミノ及びニトロなどがある。ヒドロカルビル基が2つ以上のCを含む場合、この炭素が互いに結合することは求められない。例えば、少なくとも2つの炭素が、適切な元素又は基によって結合することもある。ヒドロカルビル基はヘテロ原子を含むこともある。適切なヘテロ原子とは、硫黄、窒素、酸素、リン、及びケイ素などであり、当業者に明らかといえる。ヒドロカルビル基は、アリール基又はアルキル基であることが好ましい。
【0014】
本明細書で使用した用語「アルキル」には、直鎖及び分鎖アルキル基の両方が含まれる。アルキル基は、置換(モノ−若しくはポリ−)又は非置換のこともある。適切な置換基には、例えば、OH、COOH、ハロ、アルコキシ、ニトロ、CN、CF、又は環状基などがある。アルキル基は、C1〜20アルキル基であることが好ましく、より好ましくはC1〜15アルキル基、さらにより好ましくはC1〜12アルキル基、さらになお好ましくはC1〜6アルキル基、さらになお一層好ましくはC1〜3アルキル基である。特に好ましいアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルなどがある。
【0015】
本明細書で使用した用語「ヘテロアルキル」には、1つ以上のヘテロ原子を有する上記で定義したアルキル基を含む。
【0016】
本明細書で使用した用語「シクロアルキル」は、置換(モノ−若しくはポリ−)又は非置換であってもよい環状アルキル基に関連する。適切な置換基には、OH、COOH、ハロ、アルコキシ、ニトロ、CN、CF、又は環状基などがある。
【0017】
同様に、本明細書で使用した用語「シクロヘテロアルキル」は、置換(モノ−若しくはポリ−)又は非置換であってもよい環状ヘテロアルキル基に関連する。適切な置換基には、OH、COOH、ハロ、アルコキシ、ニトロ、CN、CF、又は環状基などがある。
【0018】
本明細書で使用した用語「アリール」は、C6〜10芳香族、置換(モノ−若しくはポリ−)又は非置換基に関連し、例えばフェニル、ナフチルなどを含む。この場合も先と同様に、適切な置換基には、OH、COOH、ハロ、アルコキシ、ニトロ、CN、CF、又は環状基などがある。
【0019】
本明細書で使用した用語「ヘテロアリール」は、1つ以上のヘテロ原子を有するC4〜10芳香族、置換(モノ−若しくはポリ−)又は非置換基に関連する。ヘテロアリール基は、ピロール、ピラゾール、ピリミジン、ピラジン、ピリジン、キノリン、チオフェン、及びフランであることが好ましい。この場合も先と同様に、適切な置換基には、OH、COOH、ハロ、アルコキシ、ニトロ、CN、CF、又は環状基などがある。
【0020】
本明細書で使用した語句「薬剤の調製」には、更なる抗増殖剤に対するスクリーニングプログラムにおける、又はそのような薬剤のいずれかの調製工程におけるその使用に加えて、薬剤として、化学式Iの化合物を直接使用することが含まれる。
【0021】
本発明の好ましい一実施態様では:
、R、R、及びRは、各々独立してH、NO、CF、SCF、CN、ハロ、OH、OR、NH、NHR、NR、N、COOH、COOR、CONH、CONHR、CONR、COH、COR、SR、SOR,SO、SOOH、SOOR、SONH、SONHR、SONR、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、但し、R、R、R、及びRの少なくとも1つは、H以外である;又はR及びR、R及びR、若しくはR及びRは、融合又は未融合で飽和又は不飽和の環系の部分を一緒に形成可能であり、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子を2つまで任意に含む;
はOH、OR、CN、CONH、CONHNH、CONHOH、CONHR、CONR10、NH、NHR、又はNR10であり;
、R、R、R、及びR10の各々は独立してヒドロカルビルであるか、又はR、R、及びRのうちの2つは、飽和又は不飽和の環系の部分を一緒に形成することもある。
【0022】
好ましい一実施態様では、R、R、R、及びRが、各々独立してH、NO、CF、SCF、CN、ハロ、OH、OR、NH、NHR、NR、N、COOH、COOR、CONH、CONHR、CONR、COH、COR、SR、SOR,SO、SOOH、SOOR、SONH、SONHR、SONR、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールである。
【0023】
好ましい一実施態様では、R、R、及びRの各々は独立してヒドロカルビルであるか、又はR、R、及びRのうちの2つは、飽和環系の部分を一緒に形成し、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子を2つまで任意に含む。
【0024】
好ましい一実施態様では、R及びR10の各々は独立してヒドロカルビルであるか、又はR及びR10は飽和環系の部分を一緒に形成し、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子を2つまで任意に含む。
【0025】
特に好ましい一実施態様では、R、R、及びRの各々は独立してヒドロカルビルであるか、又はR、R、及びRのうちの2つは、飽和環系の部分を一緒に形成する。
【0026】
他の特に好ましい一実施態様では、R及びR10の各々は独立してヒドロカルビルであるか、又はR及びR10は飽和環系の部分を一緒に形成する。
【0027】
、R、R、R及びR10の各々が、独立してヒドロカルビルである場合には、ヒドロカルビル基は、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、アルキル基であることはより好ましい。
【0028】
が、OH、CN、CONH、CONHNH、CONHOH、又はCONR10であることはより好ましい。
【0029】
好ましくは、RがCONR10である場合には、R及びR10は、飽和環系の部分を一緒に形成し、N、O、及びSから選択するヘテロ原子を2つまで任意に含む。より好ましくは、R及びR10は、飽和環系の部分を一緒に形成する。さらにより好ましくは、R及びR10は、ピロリジン環の部分を一緒に形成する。即ち、RはCO−ピロリジンである。
【0030】
特に好ましい一実施態様では、Rを、CONH、CO−ピロリジン、CONHNH、CONHOH、CN、及びOHから選択する。
【0031】
本発明のより好ましい実施態様では、R、R、R、及びRは、各々独立してH、NO、CF、SCF、又はハロである。
【0032】
特に好ましい一実施態様では、Rを、CF、F、SCF、及びHから選択する。
【0033】
特に好ましい他の実施態様では、R及びRは共にHである。
【0034】
特に好ましい別の実施態様では、RはNOである。
【0035】
特に好ましい一実施態様では、化学式Iの化合物は以下から選択される:
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド;
(7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−イル)−ピロリジン−1−イル−メタノン;
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸ヒドラジド;
5−シアノ−7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド;
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸ヒドロキシアミド;
5−フルオロ−7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド;
5−フルオロ−7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸
ヒドロキシアミド;
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−カルボニトリル;
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−オール;及び
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチルスルファニル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド。
【0036】
より一層好ましくは、化学式Iの化合物はPLKの阻害を可能とする。この化合物により、適切なキナーゼアッセイで測定されるようにPLK1を阻害できることは好ましい。適切なアッセイの詳細は、付随の実施例にて見出すことができる。化学式Iの化合物のIC50値を、好ましくは100μM未満の、より好ましくは50μM未満の、さらにより好ましくは25μM未満のPLK1キナーゼアッセイで示す。さらに好ましくは、化学式Iの化合物は、以下から選択される:
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド;
5−シアノ−7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド;
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−カルボニトリル;及び
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチルスルファニル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド。
【0037】
化学式Iの化合物のIC50値を、より好ましくは10μM未満の、さらに好ましくは5μM未満のPLK1キナーゼアッセイで示す。極めて好ましい実施態様では、化学式Iの化合物は、以下から選択される:
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド;及び
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチルスルファニル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド。
【0038】
さらになお好ましくは、化学式Iの化合物のIC50値を1μM未満のPLK1キナーゼアッセイで示す。極めて好ましい一実施態様では、化学式Iの化合物は、ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチルスルファニル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミドである。
【0039】
化学式Iの化合物により、適切なアッセイで測定されるように抗増殖効果を提示可能であることはさらに一層好ましい。適切なアッセイの詳細は、付随の実施例にて見出すことができる。好ましくは、化学式Iの化合物のIC50値を、A549、HELA、MCF−7、又はU2OSの細胞株を使用する100μM未満の、より好ましくは50μM未満の、さらにより好ましくは25μM未満の、さらに一層好ましくは10μM未満のMTTアッセイで示す。好ましくは、化合物は以下から選択される:
(7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−イル)−ピロリジン−1−イル−メタノン;
5−シアノ−7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド;
5−フルオロ−7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド;
5−フルオロ−7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸
ヒドロキシアミド;
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−カルボニトリル;及び
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチルスルファニル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド。
【0040】
治療的な応用
化学式Iの化合物は、抗増殖活性を有することが発見されたことにより、癌、白血病、及び、乾癬や再狭窄のような制御不能な細胞増殖を伴う他の疾患など、増殖性疾患の治療に使用できると考えられている。本明細書で定義するように、本発明の範囲内での抗増殖効果は、例えば、細胞株A549、HELA、MCF−7、又はU2OSのいずれかを使用して、インビトロ全細胞アッセイにおける細胞増殖を阻害する能力により提示されることもある。実施の方法を含むこれらのアッセイは、付随の実施例においてより詳細に述べられる。このようなアッセイを使用することで、化合物が抗増殖であるかどうかを本発明との関連で決定することもできる。
【0041】
本発明の一態様は、ゆえに、増殖性疾患を治療する際における化学式Iで表わされる1つ以上の化合物の使用に関連する。増殖性疾患は癌又は白血病であることが好ましい。増殖性疾患という用語は、本明細書では広い意味で使用され、細胞周期の制御が必要とされる任意の疾患、例えば、再狭窄や心筋症などの心血管疾患、糸球体腎炎や関節リウマチなどの自己免疫疾患、乾癬などの皮膚疾患、マラリア、気腫、及び脱毛症などの抗炎症、抗真菌、抗寄生虫疾患が含まれる。これらの疾患では、本発明の化合物は、必要に応じて目的とする細胞内で、アポトーシスを誘発するか、又は静止状態を維持することもある。
【0042】
本発明の好ましい一実施態様では、増殖性疾患は癌である。
【0043】
他の好ましい実施態様では、増殖性疾患は糸球体腎炎である。
【0044】
さらに他の好ましい実施態様では、増殖性疾患は関節リウマチである。
【0045】
別の好ましい実施態様では、増殖性疾患は乾癬である。
【0046】
別の好ましい実施態様では、増殖性疾患は慢性閉塞性肺疾患である。
【0047】
本発明の化合物は、細胞周期における任意のステップ又は段階、例えば、核膜の形成、細胞周期の休止期(G0)からの脱却、G1進行、染色体脱凝縮、核膜の破壊、START、DNA複製の開始、DNA複製の進行、DNA複製の終止、中心体の複製、G2進行、有糸分裂や減数分裂機能の活性化、染色体凝縮、中心体の分離、微小管の核形成、紡錘糸の形成と紡錘体機能、微小管モータータンパク質との相互作用、染色分体の分裂及び分離、有糸分裂機能の不活化、収縮環の形成、及び細胞質分裂機能を阻害することもある。特に、本発明の化合物は、染色質結合、複製複合体の形成、複製ライセンシング、リン酸化又は他の二次修飾活性、タンパク質分解、微小管結合、アクチン結合、セプチン結合、微小管組織化中心核形成活性、及び細胞周期信号伝達経路の要素との結合などの一定の遺伝子機能に影響を及ぼすこともある。
【0048】
本発明の一実施態様では、化学式Iの化合物は、少なくとも1つのPLK酵素を阻害するのに充分な量で投与する。
【0049】
ポロ様キナーゼ(PLKs)は、セリン/トレオニンプロティンキナーゼのファミリーを構成する。ポロ遺伝子座での有糸分裂のキイロショウジョウバエ変異体は、紡錘体の異常を示し(Sunkel et al., J. Cell Sci., 1988,89,25)、ポロは、有糸分裂キナーゼをコードすることが判明している(Llamazares et al., Genes Dev., 1991, 5, 2153)。ヒトでは、3つの緊密に関連するPLKが存在する(Glover et al., Genes Dev., 1998, 12, 3777)。これらは、高度に相同のアミノ末端基触媒キナーゼドメインを有し、そのカルボキシル末端は、2つ又は3つの保存領域、ポロボックスを含む。ポロボックスの機能は、いまだに完全に理解されてはいないが、これらは、細胞内コンパートメントへのPLKのターゲッティング(Lee et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998, 95, 9301; Leung et al., Nat. Struct. Biol., 2002, 9, 719)、他のタンパク質との相互作用の仲介(Kauselmann et al., EMBO J., 1999, 18, 5528)に関与しているか、又は自己制御ドメインの一部分を構成することもある(Nigg, Curr. Opin. Cell Biol., 1998, 10, 776)。さらには、ポロボックス依存性PLK1活性は、適正な中期/後期遷移及び細胞質分裂に必要とされる(Yuan et al., Cancer Res., 2002, 62, 4186; Seong et al., J. Biol. Chem., 2002, 277, 32282)。
【0050】
研究により、ヒトPLKは、有糸分裂のいくつかの基本的な局面を制御することが判明している(Lane et al., J. Cell. Biol., 1996, 135, 1701; Cogswell et al., Cell Growth Differ., 2000, 11, 615)。特に、PLK1活性は、後期G2/前期の早い時期における中心体の機能的成熟、及び続いて起こる双極性紡錘体の形成に必要であると考えられている。細胞PLKsの減少により、低分子干渉RNA(siRNA)技術を介して、このタンパク質が多くの有糸分裂のプロセス及び細胞質分裂の完了に必要であるということもまた確認されている(Liu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2002, 99, 8672)。
【0051】
本発明のさらに好ましい実施態様では、化学式Iの化合物はPLK1を阻害するのに充分な量で投与する。
【0052】
3つのヒトPLKのうち、PLK1は最もよく特徴づけられており、これは、有糸分裂の開始(Toyoshima-Morimoto et al., Nature, 2001, 410, 215; Roshak et al., Cell. Signalling, 2000, 112, 405)、DNA−損傷チェックポイント活性化(Smits et al., Nat. Cell Biol., 2000, 2, 672; van Vugt et al., J. Biol. Chem., 2001, 276, 41656)、後期促進複合体の調節(Sumara et al., Mol. Cell, 2002, 9,515; Golan et al., J. Biol. Chem., 2002, 277, 15552; Kotani et al., Mol. Cell, 1998, 1, 371)、プロテアソームのリン酸化(Feng et al., Cell Growth Differ., 2001, 12, 29)、中心体の複製及び成熟(Dai et al., Oncogene, 2002, 21, 6195)を含む多くの細胞分裂周期の作用を制御する。
【0053】
特に、有糸分裂の開始には、M期促進因子(MPF)、サイクリン依存性キナーゼCDK1及びB型サイクリンとの複合体(Nurse, Nature, 1990,344, 503)の活性化を必要とする。後者は細胞周期のS期及びG2期に蓄積され、WEE1、MIK1、及びMYT1キナーゼによるMPF複合体のリン酸化阻害を促進する。G2期の最終時には、二重特異性のホスファターゼCDC25Cによる脱リン酸化に応答して、MPFを活性化する(Nigg, Nat. Rev. Mol. Cell Biol., 2001, 2. 21)。分裂間期では、サイクリンBは細胞質に局在し、(Hagting et al., EMBO J., 1998, 17, 4127)、その後、前期においてリン酸化され、この事象により核転座が誘発される(Hagting et al., Curr. Biol., 1999, 9, 680; Yang et al., j. Biol. Chem., 2001, 276, 3604)。前期での活性MPFの核内蓄積は、M期事象を開始するために重要であると考えられる(Takizawa et al., Curr. Opin. Cell Biol., 2000, 12, 658)。しかしながら、核のMPFは、CDC25Cが妨げない限りにおいて、WEE1により不活性に保たれる。ホスファターゼCDC25C自体も、分裂間期に細胞質に局在し、前期では核中に蓄積している(Seki et al., Mol. Biol. Cell, 1992, 3, 1373; Heald et al., Cell, 1993, 74, 463; Dalal et al., Mol. Cell. Biol., 1999, 19, 4465)。サイクリンB(Toyoshima-Morimoto et al., Nature, 2001, 410, 215)及びCDC25C(Toyoshima-Morimoto et al., EMBO Rep., 2002, 3, 341)の両方の核への侵入は、PLK1(Roshak et al., Cell. Singnalling, 2000, 12, 405)によるリン酸化を介して促進される。このキナーゼはM期開始の重要な調節因子である。
【0054】
特に好ましい一実施態様では、化学式Iの化合物は、PLK1のATP拮抗性阻害剤である。
【0055】
本内容でのATP拮抗作用とは、PLK触媒作用、即ち、ATP結合を損傷するか、又は破壊するように、酵素活性部位で可逆的又は不可逆的に結合することにより、ATPから高分子PLK基質へのリン酸転移を弱めるか、又は妨げる阻害化合物の効果に関連する。
【0056】
他の好ましい実施態様では、化学式Iの化合物を、PLK2及び/又はPLK3を阻害するのに充分な量で投与する。
【0057】
哺乳類のPLK2(SNKとしても知られている)並びにPLK3(PRK及びFNKとしても知られている)は、前初期遺伝子産物であることをもともと示している。PLK3キナーゼ活性は、後期S期及びG2期に現れてピークに達する。さらに、DNA損傷チェックポイント活性、及び重度の酸化ストレスのときにも活性化する。PLK3はまた、細胞内の微小管動力及び中心体機能の調節において重要な役割を担う。脱調節PLK3の発現は、結果として細胞周期の停止及びアポト−シスを誘発する(Wang et al., Mol. Cell. Biol., 2002, 22, 3450)。PLK2は、3つのPLKのうちでほとんど理解されていない相同物である。PLK2及びPLK3の両方は、付加的で重要な有糸分裂後機能を有することもある(Kauselmann et al., EMBO J., 1999, 18, 5528)。
【0058】
本発明の別の態様は、上記で定義した化学式Iの化合物、又はその薬学的に許容できる塩を、PLKを阻害するのに充分な量で、それを必要とする対象に投与することを含むPLK依存性疾患を治療する方法を提供する。
【0059】
好ましくは、本発明のこの態様では、化学式Iの化合物、又はその薬学的に許容できる塩を、PLK1阻害するのに充分な量で投与する。
【0060】
PLK依存性疾患は増殖性疾患であることが好ましい。
【0061】
本発明の更なる態様は、細胞においてPLKを阻害するように、化学式Iの化合物、又はその薬学的に許容できる塩のある量と前記細胞を接触させることを含む、細胞中でPLKを阻害する方法に関連する。
【0062】
本発明のさらに別の態様は、前記増殖性疾患の治療が行われるように、化学式Iの化合物、又はその薬学的に許容できる塩を、治療的に有効な量で、それを必要とする対象に投与することにより、PLKを阻害することを含む増殖性疾患を治療する方法に関連する。
【0063】
医薬組成物
本発明の好ましい一実施態様では、化学式Iの化合物を、薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤、又は担体と組み合せて投与する。
【0064】
本発明の化合物(薬学的に許容できる塩、エステル、及び薬学的に許容できる溶媒和物を含む)を、単体で投与することもできるが、これらは通常、特にヒトの治療に対しては、薬学的な担体、賦形剤、又は希釈剤と混合して投与する。医薬組成物は、ヒト及び動物薬におけるヒト又は動物の使用のためにあるといえる。
【0065】
本明細書に記載される様々な異なる形態の医薬組成物に対する適切な賦形剤の例は、「Handbook of Pharmaceutical Excipients, 2nd Edition, (1994), Edited by A Wade and PJ Weller」で見出すことができる。
【0066】
治療的使用のために許容できる担体又は希釈剤は、薬学分野ではよく知られており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。
【0067】
適切な担体の例には、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、及びソルビトールなどが含まれる。適切な希釈剤の例には、エタノール、グリセロール及び水が含まれる。
【0068】
薬学的な担体、賦形剤、又は希釈剤の選択については、所定の投薬方法及び薬務基準を考慮して選ぶことができる。医薬組成物には、担体、賦形剤、又は希釈剤として、又はそれらに添加して、任意の適切な結合剤、滑剤、懸濁剤、コーティング剤、可溶化剤が含まれることもある。
【0069】
適切な結合剤の例には、デンプン;ゼラチン;グルコースなどの天然の糖;無水ラクトース;フリーフローラクトース;βラクトース;コーン甘味剤;アカシア、トラガカント、又はアルギン酸ナトリウムなどの天然及び合成ゴム;カルボキシメチルセルロース;及びポリエチレン・グリコールが含まれる。
【0070】
適切な滑剤の例には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、及び塩化ナトリウムなどが含まれる。
【0071】
保存料、安定剤、染料、及び着香料でさえも、医薬組成物として提供されることがある。保存料には、例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルがある。酸化防止剤及び懸濁剤も医薬組成物として使用されることもある。
【0072】
塩/エステル
化学式Iの化合物は、塩又はエステル、特には、薬学的に許容できる塩又はエステルとして存在することができる。
【0073】
本発明の化合物の薬学的に許容できる塩には、適切な酸付加塩又は塩基塩が含まれる。適切な薬学的な塩の総説はBerge et al, J Pharm Sci, 66, 1-19 (1977)で見出すことができる。例えば、塩は、例として硫酸、リン酸、又はハロゲン化水素酸が挙げられる鉱酸などの強無機酸により;酢酸のような非置換若しくは置換(例えばハロゲンによる)である1〜4個の炭素原子を有するアルカンカルボン酸などの強有機カルボン酸により;飽和若しくは不飽和ジカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、若しくはテトラフタル酸により;ヒドロキシカルボン酸、例えば、アスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、又はクエン酸により;アミノ酸、例えば、アスパラギン酸若しくはグルタミン酸により;安息香酸により;又は、メタン−、若しくはp−トルエンスルホン酸のような非置換若しくは置換(例えば、ハロゲンによる)である(C〜C)−アルキル−、又はアリール−スルホン酸などの有機スルホン酸により、形成される。
【0074】
エステルは、エステル化される官能基に応じて、有機酸又はアルコール/水酸化物のどちらかを使用して形成される。有機酸には、酢酸のような非置換又は置換(例えば、ハロゲンによる)である1〜12個の炭素原子を有するアルカンカルボン酸などのカルボン酸;飽和若しくは不飽和ジカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、若しくはテトラフタル酸;ヒドロキシカルボン酸、例えば、アスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、若しくはクエン酸;アミノ酸、例えば、アスパラギン酸若しくはグルタミン酸;安息香酸;又は、メタン−、若しくはp−トルエンスルホン酸のような非置換若しくは置換(例えば、ハロゲンによる)である(C〜C)−アルキル−、若しくはアリール−スルホン酸などの有機スルホン酸、が含まれる。適切な水酸化物には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの無機水酸化物が含まれる。アルコールには、非置換又は置換(例えば、ハロゲンによる)であってもよい1〜12個の炭素原子を有するアルカンアルコールが含まれる。
【0075】
光学異性体/互変異性体
本発明のこれまで述べてきたすべての態様において、本発明には、それが適切な場合において、化学式Iの化合物の光学異性体及び互変異性体がすべて含まれる。当業者であれば、光学的性質(1つ以上のキラル炭素原子)又は互変異性体の特性を有する化合物を認知するはずである。対応する光学異性体及び/又は互変異性体は、当技術分野で公知の方法により単離/調製することができる。
【0076】
立体及び幾何異性体
化学式Iで表わされる特定の化合物のいくつかは、立体異性体及び/又は幾何異性体として存在することもある。例えば、1つ以上の不斉及び/又は幾何学的中心を有することがあるため、2つ以上の立体異性体及び/又は幾何学的形態で存在することがある。本発明は、阻害剤における個々の立体異性体及び幾何異性体、並びにその混合物のすべての使用を意図している。特許請求の範囲で使用した用語にはこれらの形態が含まれ、提供される前記形態は(同じ程度である必要性はないが)適切な機能活性を保持する。
【0077】
また、本発明には、化合物又はその薬学的に許容できる塩の適切な同位体変形物がすべて含まれる。本発明の薬剤又はその薬学的に許容できる塩の同位体変形物は、少なくとも1つの原子が同じ原子番号を有するが原子量が天然で通常見られる原子量とは異なる原子により置換されている変形物として定義される。薬剤及びその薬学的に許容できる塩に組入れ可能な同位体の例には、H、H、13C、14C、15N、17O、18O、31P、32P、35S、18F、及び36Clのように水素、炭素、窒素、酸素、リン、イオウ、フッ素、及び塩素の同位体が含まれる。薬剤及びその薬学的に許容できる塩の特定の同位体変形物には、例えば、H又は14Cなどの放射性同位体が組み込まれており、薬剤及び/又は基質の組織分布研究において有用である。トリチウム化した同位体即ちH、及び炭素14同位体即ち14Cの同位体は、調製及び検出が容易であるために特に好ましい。さらに、重水素化同位体即ちHのような同位体による置換は、より大きな代謝安定性、例えば、インビボ半減期の増加又は投与量の減少に伴う特定の治療的な利点を提供するため、ある環境下において好ましいこともある。本発明の薬剤及びその薬学的に許容できる塩の同位体変形物は、通常、適切な試薬の適切な同位体変形物を使用して、従来の方法により調製することができる。
【0078】
溶媒和物
本発明は、また、本発明における化合物の溶媒和物形態の使用を含む。特許請求の範囲で使用した用語にはこれらの形態が含まれる。
【0079】
多形体
さらに本発明は、様々な結晶形態、多形形態、及び無水や含水形態における本発明の化合物に関する。化学合成物は、そのような化合物の合成的調製で使用する溶媒から精製及び/又は単離する方法を少し変えることによりこのような形態のいずれかの形態で、単離可能であることは、医薬品産業界において確立されている。
【0080】
プロドラッグ
本発明はさらに、プロドラッグ形態での本発明化合物を含む。そのようなプロドラッグとは、通常、ヒト又は哺乳動物である対象に投与すると修飾が逆戻り可能となるように、1つ以上の適切な基を修飾している化学式Iの化合物である。このような逆戻りは、一般的に、このような対象に生来存在する酵素により行われるが、第2の薬剤をこのようなプロドラッグと一緒に投与して、インビボで逆戻りを行うことは可能である。そのような修飾の例には、エステル(例えば、上記のいずれか)が含まれ、逆戻りは、エステラーゼなどで行われこともある。他のこのようなシステムは当業者によく知られているはずである。
【0081】
投与
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、経膣、非経口、筋肉内、腹腔内、動脈内、髄腔内、気管支内、皮下、皮内、静脈内、経鼻、口腔内、又は舌下の投与経路で適用されることもある。
【0082】
経口投与では、圧縮錠剤、丸薬、錠剤、ゲル剤(gellues)、点滴剤、及びカプセル剤が特に使用される。これらの組成物には、一用量当り1〜250mg、より好ましくは10〜100mgの活性成分が含まれることが好ましい。
【0083】
他の投与形態には、静脈内、動脈内、髄腔内、皮下、皮内、腹腔内、又は筋肉内に注射が可能で、滅菌又は滅菌可能な溶液で調製される液剤又は乳剤が含まれる。本発明の医薬組成物は、坐剤、膣座剤、懸濁剤、乳剤、ローション剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、スプレー剤、液剤、又は粉剤の形態のこともある。
【0084】
経皮投与の別の方法は、皮膚用パッチ剤の使用による。例えば、活性成分をポリエチレングリコール又は流動パラフィンの水性乳剤からなるクリ−ムに組み入れることができる。活性成分は、また、1〜10重量%濃度で、白色ワックス又は白色軟性パラフィン基剤からなる軟膏に、必要に応じて安定剤及び保存料などと一緒に組み入れることができる。
【0085】
注射剤形態には、一用量当り10〜1000mg、好ましくは10〜250mgの活性成分が含まれる。
【0086】
組成物は、単位用量形態、即ち、一単位投与量、又は多単位若しくは副次的単位の単位投与量からなる個別量の形態で調製されることもある。
【0087】
用量
当技術分野において通常の技術を有する者は、過度の実験を行うことなく、本組成物のひとつに適切な投与量を容易に決めて、対象に対して投与することができる。一般には、医師が、個々の患者に最適な実際の用量を決めることになり、その用量は、用いられる特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性及び作用時間、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与方法及び時期、排泄の程度、薬剤の組合せ、特定の病状の重症度、並びに個々の受けている治療などの様々な要因により異なる。本明細書に記載される用量は一般的な平均例である。当然のことながら、高い用量又は低い用量の範囲で有利となる個々の例も有り、そのような用量は本発明の範囲内である。
【0088】
必要に応じて薬剤を、0.1〜10mg/体重kg、より好ましくは0.1〜1mg/体重kgなどの0.01〜30mg/体重kgの用量で投与できる。
【0089】
一般的な実施態様では、10〜150mg/日で、悪性腫瘍の患者に1回以上投与する。
【0090】
組合せ
特に好ましい実施形態では、化学式Iで表わされる1つ以上の化合物を、1つ以上の他の抗増殖剤、例えば市販の抗癌剤があるが、それらと併用して投与する。そのような場合は、本発明の化合物を、連続して、同時に、又は順次1つ以上の抗癌剤と一緒に投与することができる。
【0091】
一般的に抗癌剤は、組み合せて使用する場合に、より効果的となる。特に併用療法は、主要な毒性、作用機序、及び耐性機序の重複を避けるために望ましい。さらにまた、ほとんどの薬剤は、最短投薬間隔で、最大耐量で、投与することが望ましい。化学療法薬を併用することの主な利点は、生化学的相互作用を介して、付加的効果又は可能な相乗効果を促進し、また、他の場合では、単独剤による初回化学療法に反応したであろう初期腫瘍細胞における耐性の出現が減少することでもある。薬剤の組合せを選択する際に生化学的相互作用を利用する一例は、ロイコボリンの投与により示され、5−フルオウラシルの活性細胞内代謝物とその標的であるチミジル酸生成酵素との結合を増大させて、その細胞毒性効果を増大させる。
【0092】
癌や白血病の現在の治療では、多くの組合せが使用されている。医療行為のより広範な論評は、E. E. Vokes 及び H. M. Golomb編、Springer出版の“Oncologic Therapies”で見出すことができる。
【0093】
有益な組合せは、最初に特定の癌又はその癌に由来する細胞株を治療する際に、有用であると知られているか、有用であると思われる薬剤と共に被検化合物の増殖阻害活性を研究することにより提示されることもある。この方法は、投薬順序即ち、その前に、それと同時に、又はその後に、を決定するために使用することもできる。このようなスケジューリングは、本明細書で定義されるすべての周期作用薬の特徴であるといえる。
【0094】
化合物
本発明は化学式Iの化合物にも関する。
【0095】
さらに詳細には、本発明は、以下から選択される化学式Iの化合物に関する:
(7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−イル)−ピロリジン−1−イル−メタノン;
5−フルオロ−7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド;
5−フルオロ−7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸
ヒドロキシアミド;及び
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチルスルファニル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド。
【0096】
化学合成
本発明の化合物は、当技術分野で知られた方法により調製することができる。特に、ベンゾチアゾール−3−オキシド1は、チオグリコール酸エステル3との反応により、Zがハロゲンやトシルなど適切な離脱基であるニトロベンゼン2から得ることができる。そのような芳香族求核置換は、R及び/又はRが反応を活性化する置換基の場合には、容易に行うことができる。あるいは、パラジウム−触媒置換が行われることがある(Migita et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 1980, 53, 1385)。過剰な第3アミン塩基の影響により、最初に形成されたチオアニソール付加体は、ベンゾチアゾール−3−オキシドカルボン酸エステル4に自然に環化するか、又は熱により環化は誘発される(Wagner et al., Chem. Ber., 1973, 106, 640)。エステル基は様々な方法で変化し、目的とする置換基Rが得られる。このようにカルボキサミド(1、R=CONR)は、ニトリル(1、R=CN)又はアルコール(1、R=OH)に順に変化する対応アミンでエステル5を処理することにより調製することができる(Wagner et al., Chem. Ber., 1976, 109, 611)。カルボン酸ヒドロキサミド(1、R=CONHOH)及びヒドラジド(1、R=CONHNH)は、同様に得ることができる。
【化2】

【0097】
アッセイ
本発明の他の態様は、1つ以上のポロ様キナーゼの活性に影響を及ぼす他の候補化合物を同定するためのアッセイで、前記で定義された化学式Iの化合物、又はその薬学的に許容できる塩の使用に関する。
【0098】
好ましくは、このアッセイにより、1つ以上のポロ様キナーゼを阻害できる候補化合物を同定することができる。
【0099】
さらに好ましくは、このアッセイは、競合結合アッセイである。
【0100】
本明細書で使用されるように、「候補化合物(candidate compound)」という用語には、天然であるか否かにかかわらず、任意の適切な源から得られ又は調製可能である化合物が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0101】
候補化合物は、有機小分子又は特に新規のリード化合物のような、他の化合物と同様に、ペプチドを含んでいてもよいライブラリー化合物から設計され又は得られることもある。例として、候補化合物としては、天然物質、生体高分子、あるいは、細菌、真菌類、又は動物(特に哺乳類)の細胞若しくは組織などの生体物質から調製された抽出物のこともあり、有機又は無機の分子、合成候補化合物、半合成候補化合物、構造的又は機能的模倣薬、ペプチド、ペプチド模倣薬、誘導体化された候補化合物、総タンパクから分割したペプチドなどがあり、あるいは、ペプチド合成装置若しくは組換え技術を使用すること又はその組合せのいずれかなどの合成的に合成されたペプチド、組換え候補化合物、天然又は非天然候補化合物、融合タンパク質又はその同等物及び変異体、誘導体、あるいはその組合せのこともある。候補化合物は、例えば、DNA組換え技術又は化学合成技術などの方法により修飾されたPLKの公知阻害剤のような、PLK調節物質である化合物のこともある。
【0102】
一般的に、候補化合物は、DNA組換え技術及び/又は化学合成技術により調製される。
【0103】
PLKと相互作用可能な候補化合物がいったん同定されると、PLKの調節ができるように、候補化合物を選択及び/若しくは修飾するため、並びに/又は既存の化合物を修飾するための、さらなるステップが実施されることもある。
【0104】
好ましくは、候補化合物は、本発明における化合物の従来型SAR修飾により調製される。
【0105】
本明細書で使用されるように、「従来型SAR修飾(conventional SAR modification)」という用語は、化学的誘導体化の方法により所定の化合物を変更するための、当技術分野において知られている標準的な方法に関連する。
【0106】
このように一態様では、同定された化合物は、他の化合物を開発するためのモデル(例えば、テンプレート)として作用することもある。このような試験で用いられた化合物は溶液中で遊離しているか、固体担体に添付しているか、細胞表面上に位置しているか、又は細胞内に位置していることもある。活性の停止、又は化合物と試験される薬剤の間に結合複合体の形成が測定されることもある。
【0107】
本発明のアッセイは、多くの薬剤を試験するスクリーニングであることも可能である。一態様では、本発明のアッセイ方法は高性能のスクリーニングである。
【0108】
本発明は、また、化合物を結合可能にする中和抗体が、特異的に候補化合物と競合して化合物と結合する、競合薬スクリーニングアッセイの使用を意図する。
【0109】
スクリーニングのための他の技術は、物質への適切な結合親和性を有する薬剤のハイスループット・スクリーニング(HTS)を提供し、国際公開第84/03564号パンフレットで詳細に記載されている方法を基本とする。
【0110】
本発明のアッセイ方法は、定量アッセイと同様に、被検化合物の小規模及び大規模のスクリーニングのいずれにおいても適切であろうと期待される。
【0111】
本発明の一態様は、以下のステップを含む方法に関する。
(a)上記のアッセイ方法を行い;
(b)ポロ様キナーゼに結合することが可能な候補化合物を1つ以上同定し;及び
(c)ある程度の量の前記1つ以上の候補化合物を調製する。
【0112】
本発明の他の態様は、以下のステップを含む方法を提供する。
(a)上記のアッセイ方法を行い;
(b)ポロ様キナーゼに結合することが可能な候補化合物を1つ以上同定し;及び
(c)前記1つ以上の候補化合物を含む医薬組成物を調製する。
【0113】
本発明の別の態様は、以下のステップを含む方法を提供する。
(a)上記のアッセイ方法を行い;
(b)ポロ様キナーゼに結合することが可能な候補化合物を1つ以上同定し;
(c)ポロ様キナーゼに結合することが可能な前記候補化合物を1つ以上修飾し;
(d)上記のアッセイ方法を行い;
(e)前記候補化合物を1つ以上含む医薬組成物を選択的に調製する。
【0114】
本発明は、また、上記の方法により同定された候補化合物に関する。
【0115】
さらに本発明の他の態様は、上記の方法により同定された候補化合物を含む医薬組成物に関する。
【0116】
本発明の別の態様は、増殖性疾患を治療する際に使用する医薬組成物を調製する場合の、上記の方法により同定された候補化合物の使用に関する。
【0117】
上記の方法を使用して、1つ以上のポロ様キナーゼの阻害剤として有用な候補化合物をスクリーニングすることもできる。
【0118】
本発明をさらに、実施例により記載する。
[実施例]
【実施例1】
【0119】
本発明の化合物の例は表1に記載されている。構造1の既知化合物は記載されている方法(Wagner et al., Chem. Ber., 1973, 106, 604; ibid. 1974, 107, 305; ibid, 1976, 109, 611)で調製し、新規の化学組成を有する化合物(1b、1f、1g、及び1j)も同様に調製した。
【0120】
化合物1a〜1e及び1h〜1jに対しては、トリエチルアミン(1.1eq)を、10〜20℃で、エタノール(3mL)中、適切な2−クロロ−1,3−ジニトロ−ベンゼン前駆体(1eq)及びメルカプト−酢酸エチルエステル(1eq)の懸濁液に添加した。反応の開始は発熱により示された。混合液をさらに3時間氷浴上で攪拌した。沈殿した7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸エチルエステル生成物を濾過により収集し、メタノールから再結晶させた。
【0121】
化合物1f〜1gに対しては、4−フルオロ−2,6−ジニトロフェノール(1eq)を、トルエン(5mL)中に溶解し、塩化トシル(1.1eq)を添加し、続いてピリジン(1.1eq)を添加した。混合液を室温で12時間攪拌した。濾過後、濾液を真空中で蒸発させ、トルエン−4−スルホン酸4−フルオロ−2,6−ジニトロ−フェニルエステルの残留物を、上記で述べたように、メルカプト−酢酸エチルエステル反応中さらに精製することなしに使用した。
【0122】
適切な7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸エチルエステル生成物を、過剰の水酸化アンモニウム(1a、1d、1f、及び1jに対して)、ピロリジン(1bに対して)、ヒドラジン(1cに対して)又はヒドロキシルアミン(1e及び1g)と、メタノール中、室温で4時間さらに反応させた。生成物を濾過し、水及びメタノールで洗浄し、乾燥し、メタノールから再結晶させた。
【0123】
化合物1hを、ピリジン中、数時間にわたる過剰オキシ塩化リン溶液での連続処理により1aから得た。水で希釈後、生成物を濾過し、水で洗浄し、乾燥し、メタノールから再結晶させた。
【0124】
化合物1iを、メタノール液中、過剰な水溶性水酸化ナトリウム溶液での処理により1hから得た。室温で3時間攪拌後、その澄明な液は酸性であり、沈殿した生成物を濾過し、水及びメタノールで洗浄し、乾燥し、メタノールから再結晶させた。
【0125】
表1の化合物の分析データは以下の通りである。融点(mp)は訂正せず。HPLCアッセイを、Vydac 218TP54(4.5×250mm)C18逆相シリカカラムを使用して実施した。0.1%トリフルオロ酢酸溶液中、10〜70%アセトニトリルの直線勾配を使用して1mL/minの流速で、20分かけて溶出した。純度は、クロマトグラフのピーク積分(λ=254nmでモニタリング)で得た。H-NMRスペクトルは電界強度500MHzで得られ、化学シフトは内部標準テトラメチルシランに関連してp.p.m.で表現した。
【0126】
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド(1a)
1H-NMR (DMSO-d6) δ. 8.76 (2H, s, Ar-H and NH), 8.96 (1H, s, Ar-H), 9.36 (1H, s, NH); mp 222-223℃; HPLC: tR 13.75 min (100 %)。
【0127】
(7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−イル)−ピロリジン−1−イル−メンタノン(1b)
1H-NMR (CDCl3) δ. 2.04 (4H, t, J=3.5 Hz, CH2), 3.76 (4H, dt, J=18.0, 3.5 Hz, CH2), 8.21 (1H, s, Ar-H), 8.84 (1H, s, Ar-H); mp 176-178℃; HPLC: tR 14.17 min (100 %)。
【0128】
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸ヒドラジド(1c)
1H-NMR (DMSO-d6) δ. 5.20 (2H, s, NH2), 8.88 (1H, s, Ar-H), 8.95 (1H, s, Ar-H), 11.20 (1H, s, NH); mp 229-230℃; HPLC: tR11.96 min (100 %)。
【0129】
5−シアノ−7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド(1d)
1H-NMR (DMSO-d6) δ. 8.86 (1H, s, NH), 9.16 (1H, s, Ar-H), 9.22 (1H, s, Ar-H), 9.33 (1H, s, NH); mp 255-258℃; HPLC: tR9.30 min (78 %)。
【0130】
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸ヒドロキシアミド(1e)
1H-NMR (DMSO-d6) δ. 8.86, 8.96 (2H, s, Ar-H), 10.17, 12.13 (2H, s, OH and NH); mp 230-231℃; MS: m/z (%) 346 (MNa+, 100) and 324 (MH+, 63); HPLC: tR 12.33 min (94 %)。
【0131】
5−フルオロ−7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド(1g)
1H-NMR (DMSO-d6) δ. 8.59, 8.79 (2H, s, Ar-H), 10.16, 12.17(2H, s, OH and NH); mp 224-225℃; HPLC: tR 8.62 min (100 %)。
【0132】
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−カルボニトリル(1h)
1H-NMR (DMSO-d6) δ. 8.91 (1H, s, Ar-H), 9.02 (1H, s, Ar-H); mp 188-189℃; HPLC: tR 15.60 min (100 %)。
【0133】
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−オール(1i)
1H-NMR (DMSO-d6) δ. 7.88 (1H, s, Ar-H), 8.35 (1H, s, Ar-H); mp 181-183℃; HPLC: tR 16.37 min (85 %)。
【0134】
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチルスルファニル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド(1j)
1H-NMR (DMSO-d6) δ. 8.82, 8.85, 8.90 (3H, s, Ar-H and NH), 9.35 (1H, s, NH); mp 255-256℃; HPLC: tR 15.79 min (100 %)。
【0135】
【表1】


【実施例2】
【0136】
完全長のヒトCDC25Cクローンを、PCRによりHeLa mRNAから単離して、BamHI−HindIIIフラグメント上でpRsetAに挿入した。CDC25Cのアミノ末端断片(残基1−300をコードしている)を、このベクターから切り取り、pET28a(NcoIとBamHIの間の部位)に挿入した。発現をT7プロモーターで制御し、コードしたタンパク質はカルボキシル基末端においてHisタグを含んでいた。発現実験に際し、ベクターを、大腸菌株BRL(DE3)pLysSに形質転換した。CDC25Cは、BL21(DE3)RIL細菌細胞内で発現し、37℃で、LB培地において濁度600nm(OD600nm)が0.6に到達するまで成長した。発現を1mMのIPTGで誘導し、細菌培養菌を3時間かけてさらに成長させた。細菌を遠心分離で採取し、細胞ペレットをpH7.5の50mMトリス及び10%スクロース中で再浮遊させ、急速冷凍し、使用する時まで−70℃で保存した。CDC25Cプロティンの封入体を大腸菌から精製した。封入体を緩衝液(pH8.0の50mMトリス、2mMのEDTA、100mMのNaCl、0.5%トリトンX−100)中で単離した。6M尿素の存在下で変性後、尿素をゆっくり透析することで、タンパク質をリフォールディングした。タンパク質は、pH8.0の25mMトリス、100mMのNaCl、1mMのDTT、1mMのEDTA、及び10%グリセロール中に、使用する時まで−70℃で保存した。
【0137】
完全長のヒトPLK1(XM_047240)(アミノ酸1−603)クローンを、制限酵素の部位を組み込んでいるプライマーを使用して、胎児肺cDNAライブラリーから増幅した。5’プライマー(gccgctagcgacgatgacgataagatgagtgctgcagtgactgcagggaagc)には、ATG開始コドンに先立って、Nhel部位が含まれた。3’プライマー(ggaattcttaggaggccttgagacgg)には、EcoR1部位に先立って終止コドンを組み込んだ。PCR産物は、バキュロウイルス発現ベクターpSSP1のNhel/EcoR1部位にクローンされた。このベクターへのクローニングは、PLK1コンストラクトのアミノ末端でのHisタグ融合をもたらした。継代数20代未満のSf9細胞を、1.5×10個/mMの細胞密度で、培養量が300mLとなるように分裂して戻した。細胞は対数増殖期の発現のためにのみ使用した。PLK1バキュロウイルス(P2の増殖による)を、感染多重度3になるように添加した。これは各々の昆虫細胞の3ウイルス粒子に相当する。フラスコを、27℃、回転数100r.p.m.で48時間インキュベーションした。収集では、細胞密度と生存度を測定し、培養物を振動数2500r.p.m.で5分間沈降させ、氷冷リン酸緩衝生理食塩水で洗浄した。洗浄液を先程と同じスピードで再沈降させ、ペレットを即座に冷凍した。PLK1プロティンは金属親和性カラムで精製した。昆虫細胞ペレットを、緩衝液(pH8.0の10mMトリス、150mMのNaCl、5mMのβ−メルカプトエタノール、1mMのPMSF、1mMのベンゾアミジン、20mMのイミダゾール、及びプロテアーゼ阻害混合物(Sigma)中で溶解し、洗浄前の上清をNiNTAアガロース(Qiagen)上に乗せた。親和性カラムを溶解緩衝液で洗浄し、結合プロティンを同じ緩衝液中で250mMのイミダゾールにより溶出した。pH7.5の25mMトリス−塩酸、100mMのNaCl、1mMのDTT、1mMのPMSF、1mMのベンゾアミジン、プロテアーゼ阻害混合物(Sigma)及び10%グリセロールでの一晩にわたる透析後、精製したタンパク質を使用する時まで−70℃で保存した。
【実施例3】
【0138】
25mMのβ−グリセロリン酸、5mMのEGTA、1mMのDTT及び1mMのNaVOを補充した、pH7.5の20mMトリス−塩酸緩衝液中で、CDC25C(2μg/ウェル)をPLK1(1μg/ウェル)でインキュベーションすることにより、96ウェルプレートフォーマットを使用して、PLK1プロティンキナーゼアッセイを実施した。アッセイ緩衝液中における被検化合物の連続希釈を追加した。100μMのATP及び0.5μCiの[γ−32P]−ATPを添加することで反応を開始した。反応混合液を30℃で1時間インキュベーションしてから、75mMのオルトリン酸溶液で停止させ、96ウェルP81濾板(Whatman)の上に移動して乾燥させた。CDC25Cリン酸化の程度は、パッカード・トップカウントのプレート読取機を使用してシンチレーション計数により判断した。
アッセイの生データを非線形回帰分析パラメータにより分析し、IC50値は方程式:y=A+((B−A)/(1+((C/x)^D)))、(但し、Yは阻害%、Aは阻害最小値、Bは阻害最高値、CはEC50、及びDは傾斜因子を表す。)を使用して決定した。
【0139】
細胞増殖アッセイは、ヒト腫瘍細胞株(the American Type Culture collection, 10801 University Boulevard, Manessas, VA 20110-2209, USAより入手)を使用して行った。標準的な72時間MTT(チアゾリルブルー;3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウム ブロミド)アッセイを行った(Loveland et al, Biochem. Int., 1992, 27, 501; Haselsberger et al, Anti Cancer Drugs, 1996, 7, 331)。即ち、倍加時間に応じて細胞を96ウェルプレートに播種し、37℃で一晩にわたりインキュベーションした。被検化合物をDMSO中で調製し、1/3希釈系列を100μLの細胞培地で調製し、細胞に添加(3回行った)し、37℃で72時間インキュベーションした。MTTを、細胞培地で5mM/mLのストックとして調製し、濾過滅菌した。培地を細胞から除去後、200μLのPBSで洗浄した。その後、MTT溶液を、各ウェルに20μL添加し、37℃の暗所で4時間インキュベーションした。MTT溶液を除去し、細胞を200μLのPBSで再洗浄した。MTT染料を各ウェルに200μLのDMSOと共に攪拌して可溶化した。吸光度は540nmであり、曲線フィッティングソフトウエア(GraphPad Prism version 3.00 for Windows, GraphPad Software, San Diego California USA)を使用してデータを分析し、IC50値(細胞成長を50%阻害する被検化合物の濃度)を決定した。
【0140】
本発明の例化合物に対する阻害データを表2にまとめた。
【0141】
【表2】

【0142】
本発明の態様の様々な変更形態及び変形形態は、本発明の範囲及び精神から逸脱することはなく、当業者にとっては明らかであろう。本発明を具体的な好ましい実施態様に関連して記載しているが、請求されているように本発明は、そのような具体的な実施態様に不当に制限されるものではないことを理解されたい。実際、関連分野の当業者には明らかである本発明を実施するための態様の様々な変更は、本発明の特許請求の範囲内に含まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増殖性疾患を治療するための薬剤を調製する際の、化学式Iの化合物、又はその薬学的に許容できる塩の使用。
【化1】


(式中、R、R、R、及びRは、各々独立してH、NO、CF、SCF、CN、ハロ、OH、OR、NH、NHR、NR、N、COOH、COOR、CONH、CONHR、CONR、COH、COR、SR、SOR,SO、SOOH、SOOR、SONH、SONHR、SONR、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、但し、R、R、R、及びRの少なくとも1つは、H以外である;又はR及びR、R及びR、若しくはR及びRは、融合又は未融合で飽和又は不飽和の環系の部分を一緒に形成可能であり、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子を2つまで任意に含む;
はOH、OR、CN、CONH、CONHNH、CONHOH、CONHR、CONR10、NH、NHR、又はNR10であり;
、R、及びRの各々は独立してヒドロカルビルであるか、又はR、R、及びRのうちの2つは、飽和又は不飽和の環系の部分を一緒に形成し、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子を2つまで任意に含む;
及びR10の各々は独立してヒドロカルビルであるか、又はR及びR10は飽和若しくは不飽和の環系の部分を一緒に形成し、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子を2つまで任意に含む。)
【請求項2】
、R、R、及びRが、各々独立してH、NO、CF、SCF、CN、ハロ、OH、OR、NH、NHR、NR、N、COOH、COOR、CONH、CONHR、CONR、COH、COR、SR、SOR,SO、SOOH、SOOR、SONH、SONHR、SONR、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであることを特徴とする請求項1記載の使用。
【請求項3】
、R、及びRの各々は独立してヒドロカルビルであるか、又はR、R、及びRのうちの2つは、飽和環系の部分を一緒に形成し、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子を2つまで任意に含むことを特徴とする請求項1又は2記載の使用。
【請求項4】
及びR10の各々は独立してヒドロカルビルであるか、又はR及びR10は、飽和環系の部分を一緒に形成し、N、O、及びから選択されるヘテロ原子を2つまで任意に含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の使用。
【請求項5】
ヒドロカルビル基が、アルキル基又はアリール基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の使用。
【請求項6】
が、OH、CN、CONH、CONHNH、CONHOH、又はCONR10であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の使用。
【請求項7】
及びR10が、飽和環系の部分を一緒に形成することを特徴とする請求項6記載の使用。
【請求項8】
がCONH、CO−ピロリジン、CONHNH、CONHOH、CN、及びOHから選択されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の使用。
【請求項9】
、R、R、及びRが、各々独立してH、NO、CF、SCF又はハロであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の使用。
【請求項10】
が、CF、F、SCF、及びHから選択されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の使用。
【請求項11】
及びRが、ともにHであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載の使用。
【請求項12】
がNOであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか記載の使用。
【請求項13】
前記化学式Iの化合物が、以下の
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド;
(7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−イル)−ピロリジン−1−イル−メタノン;
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸ヒドラジド;
5−シアノ−7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド;
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸ヒドロキシアミド;
5−フルオロ−7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド;
5−フルオロ−7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸
ヒドロキシアミド;
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−カルボニトリル;
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−オール;及び
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチルスルファニル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド
から選択されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか記載の使用。
【請求項14】
化学式Iの化合物が、以下の
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド;
5−シアノ−7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド;
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−カルボニトリル;及び
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチルスルファニル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド
から選択されることを特徴とする請求項13記載の使用。
【請求項15】
化学式Iの化合物が、以下の
(7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−イル)−ピロリジン−1−イル−メタノン;
5−シアノ−7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド;
5−フルオロ−7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド;
5−フルオロ−7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸
ヒドロキシアミド;
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−カルボニトリル;及び
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチルスルファニル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド
から選択されることを特徴とする請求項13記載の使用。
【請求項16】
増殖性疾患が癌であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか記載の使用。
【請求項17】
増殖性疾患が糸球体腎炎であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか記載の使用。
【請求項18】
増殖性疾患が関節リウマチであることを特徴とする請求項1〜15のいずれか記載の使用。
【請求項19】
増殖性疾患が乾癬であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか記載の使用。
【請求項20】
増殖性疾患が慢性閉塞性肺疾患であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか記載の使用。
【請求項21】
前記化学式Iの化合物を、少なくとも1つのPLK酵素を阻害するのに充分な量で投与することを特徴とする請求項1〜20のいずれか記載の使用。
【請求項22】
PLK酵素がPLK1であることを特徴とする請求項21記載の使用。
【請求項23】
前記化学式Iの化合物を、薬学的に許容できる賦形剤、希釈剤、又は担体と組み合せて投与することを特徴とする請求項1〜22のいずれか記載の使用。
【請求項24】
前記化学式Iの化合物を、更なる抗増殖剤と組み合せて投与することを特徴とする請求項1〜23のいずれか記載の使用。
【請求項25】
請求項1〜15のいずれかで定義した化学式Iの化合物を対象に投与することを含む増殖性疾患を治療する方法。
【請求項26】
増殖性疾患を治療する際に使用する、請求項1〜15のいずれかで定義した化学式Iの化合物、及び薬学的に許容できる希釈剤、賦形剤、又は担体を含む医薬組成物。
【請求項27】
以下の
(7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチル−ベンゾチアゾール−2−イル)−ピロリジン−1−イル−メタノン;
5−フルオロ−7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド;
5−フルオロ−7−ニトロ−3−オキシ−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸
ヒドロキシアミド;及び
7−ニトロ−3−オキシ−5−トリフルオロメチルスルファニル−ベンゾチアゾール−2−カルボン酸アミド
から選択される化合物。
【請求項28】
薬学的に許容できる希釈剤、賦形剤、又は担体と混合した請求項27記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項29】
請求項1〜15のいずれかで定義した化学式Iの化合物、又はその薬学的に許容できる塩を、PLKを阻害するのに充分な量で、それを必要とする対象に投与することを含むPLK依存性疾患を治療する方法。
【請求項30】
化学式Iの化合物、又はその薬学的に許容できる塩を、PLK1を阻害するのに充分な量で投与することを特徴とする請求項29記載の方法。
【請求項31】
PLK依存性疾患が増殖性疾患であることを特徴とする請求項29又は30記載の方法。
【請求項32】
細胞においてPLKを阻害するように、請求項1〜15のいずれかで定義した化学式Iの化合物、又はその薬学的に許容できる塩のある量と前記細胞を接触させること含む細胞でPLKを阻害する方法。
【請求項33】
増殖性疾患の治療が行われるように、請求項1〜15のいずれかで定義した化学式Iの化合物、又はその薬学的に許容できる塩を、治療的に有効な量で、それを必要とする対象に投与することにより、PLKを阻害することを含む増殖性疾患を治療する方法。
【請求項34】
PLKを阻害することが可能な更なる候補化合物を同定するためのアッセイにおける、請求項1〜15のいずれかで定義した化学式Iの化合物の使用。
【請求項35】
前記アッセイが競合結合アッセイであることを特徴とする請求項34記載の使用。

【公表番号】特表2006−518361(P2006−518361A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502204(P2006−502204)
【出願日】平成16年1月27日(2004.1.27)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000327
【国際公開番号】WO2004/067000
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
WINDOWS
【出願人】(598059000)サイクラセル・リミテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】Cyclacel Limited
【Fターム(参考)】