説明

増殖性疾患の治療のための併用療法

チューブリン重合阻害剤およびmTOR阻害剤の医薬組成物、ならびにチューブリン重合阻害剤およびmTOR阻害剤の組み合わせによる増殖性疾患の治療方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増殖性疾患、特に癌の治療における、新規な化学物質の組み合わせ、およびそれらの使用方法全般に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、化学療法および/または放射線療法で治療されることが一般的である。そのような療法は、多くの場合、大量の腫瘍細胞の破壊に効果的であるが、その治療に抵抗性である腫瘍細胞を数多く残してしまうことが多い。このような抵抗性細胞は、増殖して、今度は治療に抵抗性である新しい腫瘍を形成し得る。化学療法薬の公知の組み合わせの使用は、多剤耐性(MDR)腫瘍細胞を発生させてきた。
【発明の概要】
【0003】
癌などの増殖性疾患の形態は、多因子性である。例えば、この40年間にわたる研究により、細胞毒性剤(または抗増殖剤)が、微小管構築(microtubule formulation)に干渉する抗代謝剤、DNAを架橋することができるアルキル化剤、DNA複製を阻止することでDNAアルキル化に干渉することができる白金系剤、抗腫瘍抗生剤、トポイソメラーゼ阻害剤などを含むことが認識されてきた。そのような疾患の治療では、MDR腫瘍細胞の効果的な治療、および望ましくない細胞毒性などの副作用の最小化を含む有益な効果をもたらす、異なる機構の薬物を組み合わせる場合がある(すなわち、併用療法)。しかし、この場合に困難なことは、組み合わせにおいてすべての公知の抗増殖剤が有用または有益な効果を提供するわけではないことであり、従って、多くの研究所では、現在、新規で有用な抗増殖性の組み合わせパートナーの開発に焦点を当てて研究が行われている。
【0004】
本発明は、(a)チューブリン重合阻害剤、および(b)mTOR阻害剤を含む、増殖性疾患を治療するための医薬組み合わせを提供する。
【0005】
本発明はまた、増殖性疾患を治療するための方法であって、それを必要とする患者に(a)チューブリン重合阻害剤、および(b)mTOR阻害剤を投与することを含む、方法も提供する。
【0006】
本発明はまた、増殖性疾患治療のための医薬の製造における、(a)チューブリン重合阻害剤、および(b)mTOR阻害剤の使用も提供する。
【0007】
本発明はまた、(b)mTOR阻害剤と組み合わせて用いられる、増殖性疾患治療のための医薬の製造における(a)チューブリン重合阻害剤の使用も提供する。
【0008】
本発明はまた、(a)チューブリン重合阻害剤と組み合わせて用いられる、増殖性疾患治療のための医薬の製造における(b)mTOR阻害剤の使用も提供する。
【0009】
本発明はさらに、(a)チューブリン重合阻害剤、および(b)mTOR阻害剤を含む医薬組成物を提供する。
【0010】
驚くべきことに、(a)チューブリン重合阻害剤、および(b)mTOR阻害剤を含む組み合わせを用いた増殖性疾患の治療における効果が、(a)または(b)いずれか単独で達成することができる効果よりも大きいことが見出された。すなわち、本発明の組み合わせが、付加効果または相乗効果を有することが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の組み合わせの提案される効果を示す概略図である。
【図2】実施例2の化合物とテムシロリムスとの組み合わせに対する、種々の癌細胞株についての組み合わせ指数値を示す表である。
【図3】実施例2で処理したヒト腎臓異種移植片の免疫化学分析を示す画像である。
【図4】CA4Pおよび本発明の実施例2の化合物の間での血管遮断(vascular shutdown)(腫瘍灌流の減少)の相対レベルに関して、化合物量(mg/kg)に対する灌流制御%を示すグラフである。
【図5】MDA‐MB‐231同所性胸部固形腫瘍を有するBalb/c nu/nuマウスにおける、実施例2の化合物の腫瘍成長阻害に関して、時間(日)に対する腫瘍体積比(第日/第1日)を示すグラフである。
【図6】実施例2およびmTOR阻害剤ラパマイシンで処理したCaki‐1異種移植片の時間(日)に対する腫瘍体積(mm)を示すグラフである(+/−SEM)。
【図7】実施例2およびmTOR阻害剤ラパマイシンで処理したCaki‐1異種移植片を有するマウスの生存について、時間(日)に対する生存率パーセントを示すグラフである。
【発明の具体的説明】
【0012】
本明細書およびそれに続く請求項全体を通して、特に断りのない限り、「含む(comprise)」の単語、ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」などの変形は、記載した整数、もしくは工程、または整数もしくは工程の群を含むが、その他の整数、もしくは工程、または整数もしくは工程の群のいずれも除外しないことを意味することは理解されるであろう。
【0013】
本明細書において、いずれの先行刊行物(もしくはそれから得られる情報)への言及、またはいずれの公知の事項への言及も、その先行刊行物(もしくはそれから得られる情報)または公知の事項が、本明細書に関する努力傾注分野における共通の一般的知識の一部を形成するということの認知、または承認、またはいずれの形態の示唆としても見なされるものではなく、そう見なされるべきでもない。
【0014】
組み合わせパートナー(a):チューブリン重合阻害剤(TPI)
本明細書で用いる「チューブリン重合阻害剤」の用語は、チューブリンと直接相互作用を起こしてチューブリン重合を阻害するあらゆる化合物を意味し、その結果として微小管の生理学的機能に干渉するものである。チューブリン重合阻害剤(TPI)は、微小管「不安定化」剤と称されることが多い。そのような化合物は、チューブリンポリマーを安定化し、チューブリンの解重合を阻害するタキサンおよびエポチロンのようなチューブリン相互作用化合物(すなわち、微小管安定化剤)とは対照的なものであるべきである。
【0015】
適切なTPIの例としては、以下が挙げられる:
(i)合成化合物
・ABT‐751(E7010,アボット(Abbott))
・MPC‐6827(Azixa(商標),ミリアドファーマソーティカルズ(Myriad Pharmaceuticals))
・AEZS‐112(ZEN‐012,エテルナゼンタリス(Eterna Zentaris))
・CYT997(サイトピア(Cytopia))
・MN‐029(デニブリン,メディシノバ/アンジオジーン(MediciNova/Angiogene))
・EPC2407(エピセプト(EpiCept))
・ZIO‐301(インジブリン(Indibulin),ジオファームオンコロジー(Ziopharm Oncology))
(ii)天然生成物誘導体
・ビンフルニン(ジャブロール(Javlor),ピエールファブレメディカメント(Pierre Fabre Medicament))、ならびにその他のビンカアルカロイド(例:ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビン)
・コンブレタスタチン
・CA4(Zybrestat(商標),オキシジーン(OXiGENE))
・Oxi4503(オキシジーン)
・AVE8062(AC7700,サノフィアベンティス(Sanofi Aventis))
・エリブリンメシレート(E7389,エイザイ(Eisai))
・ドラスタチン10(NCI)
・タシドチン(Tasidotin)(シンタドチン(synthadotin),ゲンザイム(Genzyme))
・2‐メトキシエストラジオール(2ME2またはPanzem(登録商標),エントレメド(EntreMed))
・E7974(エイザイ)
・NPI‐2358(ネレウスファーマソーティカルズ(Nereus Pharmaceuticals))
【0016】
微小管は、細胞骨格の重要な構成成分である繊維状ポリマーである。これらは、重合状態と解重合状態との間を変動する動的構造である。この特性により、微小管は、細胞の形状、接着、遊走、および増殖を調節することが可能となる。TPIは、微小管の重合プロセスを直接破壊し、その結果として、細胞形状の変化を引き起こし、細胞増殖を阻害する能力を持つ。このような特性は、癌治療のための治療薬として、および本発明の組み合わせにおいて、TPIを用いることの中核を成すものである。
【0017】
TPI化合物は、主として、腫瘍を通る血流を選択的に遮断するというその能力のために、癌の治療において重要である。チューブリン重合の阻害を標的とすることは、開発、および現時点での化学療法TPI剤の幅広い臨床使用を通して、非常に良く確認された抗癌治療手段である。
【0018】
TPIは、その特異的チューブリン結合部位に基づいて分類することができる。
【0019】
ビンカアルカロイドのチューブリンへの結合は、これらの化合物で見られるチューブリン不安定化活性を媒介する部位を定める。「ビンカ」部位は、チューブリンの不安定化を引き起こす数多くの化合物と直接結合することが示されている。
【0020】
チューブリンと結合するコルヒチンは、「ビンカ」部位の場合と同様に、チューブリンの不安定化を引き起こす独立した結合部位を定める。「ビンカ」部位へ結合するTPIは、抗癌化学療法として成功してきたが、それと比較して「コルヒチン」部位への結合物は、恐らくはコルヒチンによって得られる治療マージンが乏しいことにより、軽視されてきた。しかし、より最近になって、固形腫瘍内の血管の破壊を引き起こす能力を有する数多くの「コルヒチン」部位結合剤が報告されてきた。このようなTPIは、血管破壊剤(Vascular Disruption Agents)(VDA)と称される。VDA能を示す「コルヒチン」部位結合剤の多くは、コンブレタスタチン(CA4P、OXi‐4503、AVE‐8062)、コルヒチン(ZD6126)、およびフェニラヒスチン(NPI‐2358)などの天然物を主体とするものであるが、合成化合物もある(MN‐029およびEPC2407)。
【0021】
TPIがVDAとして作用するのは、微小管の完全性に干渉し、腫瘍血管の内側を覆う内皮細胞の細胞骨格変化を引き起こすからである。その結果、これらの通常は平形である細胞がより丸みを帯びた形状となり、細胞間の接触が喪失される。このようなイベントは、腫瘍血管を狭め、最終的には、血管を通る血流を遮断する。このような剤に付随する腫瘍選択性は、正常な脈管構造と比較して、腫瘍脈管構造が弱く、崩壊しやすいという事実によるものである。しかしながら、VDAに関連する数多くの用量規制毒性は、健康組織の血流の減少に起因するものである。
【0022】
好ましい態様によれば、TPIは、チューブリンのコルヒチン部位と結合することによって作用するTPIである。TPIがチューブリンのコルヒチン結合部位で作用するかどうかを判断するために用いることができるアッセイは、本技術分野にて公知であり、Ma, R et al, Cancer Chemother. Pharmacol., 2008, Sept 62(4) 559-68、に記載のものなどである。
【0023】
別の態様によれば、TPIは、コルヒチン結合部位で作用し、環状フラン(annulated furans)(例:ベンゾフラン、フロ[2,3‐d]ピリミジン‐2(1H)‐オンなど)、ベンゾチオフェン、およびインドール骨格構造を主体とするTPIであり、米国特許第7,456,214号、米国特許第7,429,681号、米国特許第7,071,190号、米国特許第6,849,656号、米国特許第5,886,025号、米国特許第6,162,930号、米国特許第6,350,777号、米国特許第5,340,062号、国際公開第06/084338号、国際公開第02/060872号、国際公開第07/087684号、および国際公開第08/070908号に開示されるものなどである。
【0024】
一つの態様によれば、TPIは、国際公開第06/084338号、国際公開第07/087684号、または国際公開第08/070908号に開示されるTPIから選択される。
【0025】
一つの態様によれば、TPIは、式(I)の化合物およびその塩から選択される:
【化1】

(式中、
Xは、O、S、SO、SO、Se、SeO、SeO、またはNRを表し、ここで、Rは、H、O、所望により置換されていてよいアシル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいシクロアルケニル、所望により置換されていてよいシクロアルキル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、および所望により置換されていてよいスルホニルから選択され、
1AおよびR1Bは、各々独立して、H、カルボキシ、シアノ、ジハロメトキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、ペンタハロエチル、ホスホリルアミノ、ホスホノ、ホスフィニル、スルホ、トリハロエテニル、トリハロメタンチオ、トリハロメトキシ、トリハロメチル、所望により置換されていてよいアシル、所望により置換されていてよいアシルアミノ、所望により置換されていてよいアシルイミノ、所望により置換されていてよいアシルイミノキシ、所望により置換されていてよいアシルオキシ、所望により置換されていてよいアリールアルキル、所望により置換されていてよいアリールアルコキシ、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルケニルオキシ、所望により置換されていてよいアルコキシ、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアルキニルオキシ、所望により置換されていてよいアミノ、所望により置換されていてよいアミノアシル、所望により置換されていてよいアミノアシルオキシ、所望により置換されていてよいアミノスルホニル、所望により置換されていてよいアミノチオアシル、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいアリールオキシ、所望により置換されていてよいシクロアルケニル、所望により置換されていてよいシクロアルキル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、所望により置換されていてよいオキシアシル、所望により置換されていてよいオキシアシルアミノ、所望により置換されていてよいオキシアシルオキシ、所望により置換されていてよいオキシアシルイミノ、所望により置換されていてよいオキシスルフィニルアミノ、所望により置換されていてよいオキシスルホニルアミノ、所望により置換されていてよいオキシチオアシル、所望により置換されていてよいオキシチオアシルオキシ、所望により置換されていてよいスルフィニル、所望により置換されていてよいスルフィニルアミノ、所望により置換されていてよいスルホニル、所望により置換されていてよいスルホニルアミノ、所望により置換されていてよいチオ、所望により置換されていてよいチオアシル、所望により置換されていてよいチオアシルアミノを表すか、またはR1AおよびR1Bは、
一緒になって、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいシクロアルキル、もしくは所望により置換されていてよいシクロアルケニルを形成し;
1Cは、C1‐3アルコキシ、C1‐3アルキルチオ、C1‐3アルキルアミノ、またはC1‐3ジアルキルアミノを表し、
1Dは、ヒドロキシまたはアミノを表し、
Lは、C=O、O、S、SO、SO、Se、SeO、SeO、C=NZ’、もしくはNR’(ここで、Z’は、H、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアリール、もしくは所望により置換されていてよいアミノであり;およびここで、R’は、H、O、所望により置換されていてよいアシル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいシクロアルケニル、所望により置換されていてよいシクロアルキル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、もしくは所望により置換されていてよいスルホニルから選択される)を表し、
2A‐R2Eは、各々独立して、H、カルボキシ、シアノ、ジハロメトキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、ペンタハロエチル、ホスホリルアミノ、ホスホノ、ホスフィニル、スルホ、トリハロエテニル、トリハロメタンチオ、トリハロメトキシ、トリハロメチル、所望により置換されていてよいアシル、所望により置換されていてよいアシルアミノ、所望により置換されていてよいアシルイミノ、所望により置換されていてよいアシルイミノキシ、所望により置換されていてよいアシルオキシ、所望により置換されていてよいアリールアルキル、所望により置換されていてよいアリールアルコキシ、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルケニルオキシ、所望により置換されていてよいアルコキシ、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアルキニルオキシ、所望により置換されていてよいアミノ、所望により置換されていてよいアミノアシル、所望により置換されていてよいアミノアシルオキシ、所望により置換されていてよいアミノスルホニル、所望により置換されていてよいアミノチオアシル、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいアリールオキシ、所望により置換されていてよいシクロアルケニル、所望により置換されていてよいシクロアルキル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、所望により置換されていてよいオキシアシル、所望により置換されていてよいオキシアシルアミノ、所望により置換されていてよいオキシアシルイミノ、所望により置換されていてよいオキシアシルオキシ、所望により置換されていてよいオキシスルフィニルアミノ、所望により置換されていてよいオキシスルホニルアミノ、所望により置換されていてよいオキシチオアシル、所望により置換されていてよいオキシチオアシルオキシ、所望により置換されていてよいスルフィニル、所望により置換されていてよいスルフィニルアミノ、所望により置換されていてよいスルホニル、所望により置換されていてよいスルホニルアミノ、所望により置換されていてよいチオ、所望により置換されていてよいチオアシル、所望により置換されていてよいチオアシルアミノ、または所望により置換されていてよいチオア
シルオキシを表すか;または、R2AおよびR2B、R2BおよびR2C、R2CおよびR2D、ならびにR2DおよびR2Eのいずれかが、一緒になって、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいシクロアルキル、もしくは所望により置換されていてよいシクロアルケニルを形成し、ならびに、
Qは、H、CN、ハロゲン、トリアルキルシリル、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアシル、所望により置換されていてよいオキシアシル、所望により置換されていてよいアシルアミノ、所望により置換されていてよいアミノアシルアミノ、OR’’、SR’’、もしくはNR’’R’’(ここで、R’’は、各々独立して、H、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、所望により置換されていてよいアシル、および所望により置換されていてよいオキシアシルを表す)を表すか、または、NR’’’NR’’’(ここで、R’’’は、各々独立して、H、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアリール、および所望により置換されていてよいヘテロアリールを表す)を表す。
【0026】
ある態様によれば、R1A‐R1BおよびR2A‐R2Eは、独立して、以下の基から選択される:
アルキル基、好ましくはメチルおよびエチル;
置換アルキル基、好ましくは、1‐ヒドロキシエチル、1‐チオエチル、メトキシイミノメチル、エトキシイミノメチル、1‐(ヒドロキシイミノ)エチル、1‐(ヒドロキシイミノ)プロピル、1‐ヒドラジノエチル、1‐ヒドラジノプロピル、ヒドロキシイミノメチル、2‐オキソプロピル、2‐オキソブチル、3‐オキソブチル、3‐オキソペンチル、ニトロメチル、1‐ニトロメチル、および2‐ニトロエチル;
アシル基、好ましくは、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ベンゾイル(所望により、メチル、メトキシ、ハロゲン、ニトロ、トリフルオロメチル、またはシアノで置換されていてよい);
アルコキシ基、好ましくは、メトキシおよびエトキシ;
オキシアシル基、好ましくは、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル、イソブチルオキシカルボニル;
アシルオキシ基、好ましくは、アセトキシおよびプロピオキシ;
置換アリールアルキル基、好ましくは、1‐ヒドロキシベンジルおよび1‐チオベンジル;
スルフィニル基、好ましくは、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、ベンゼンスルフィニル(所望により、メチル、メトキシ、ハロゲン、ニトロ、トリフルオロメタン、またはシアノで置換されていてよい)、メトキシスルフィニル、エトキシスルフィニル;
スルホニル基、好ましくは、メチルスルホニル、エチルスルホニル、ベンゼンスルホニル(所望により、メチル、メトキシ、ハロゲン、ニトロ、トリフルオロメタン、またはシアノで置換されていてよい)、メトキシカルボ、トリフルオロメタン;
オキシアシルアミノ基、好ましくは、メトキシカルボニルアミド、およびエトキシカルボニルアミド;
オキシチオアシル基、好ましくは、メトキシチオカルボニルおよびエトキシチオカルボニル;
チオアシルオキシ基、好ましくは、チオノアセトキシおよびチオノプロピオノキシ;
スルフィニルアミノ基、好ましくは、メチルスルフィニルアミノ、エチルスルフィニルアミノおよびベンゼンスルフィニルアミノ(所望により、メチル、メトキシ、ハロゲン、ニトロ、トリフルオロメタン、またはシアノで置換されていてよい);
アミノ基;
置換アミノ基、好ましくは、L‐バリン、D‐バリン、L‐アラニン、D‐アラニン、アスパラギン酸、およびアラニルセリンの残基、N‐メチルアミノ、ならびにN,N’‐ジメチルアミノ;
スルホニルアミノ基、好ましくは、メチルスルホニルアミノ、エチルスルホニルアミノ、およびベンゼンスルホニルアミノ(所望により、メチル、メトキシ、ハロゲン、ニトロ、トリフルオロメタン、またはシアノで置換されていてよい);
オキシスルフィニルアミノ基、好ましくは、メトキシスルフィニルアミノおよびエトキシスルフィニルアミノ;
オキシスルホニルアミノ基、好ましくは、メトキシスルホニルアミノおよびエトキシスルホニルアミノ;
所望により置換されていてよいアルケニル基、好ましくは、1‐プロペニル、ビニル、ニトロビニル、シアノビニル、またはトリフルオロビニル、およびスチリル(所望により、メチル、メトキシ、ハロゲン、ニトロ、トリフルオロメタン、またはシアノで置換されていてよい);
アルキニル基、好ましくは、1‐プロピニル、エチニル、またはトリメチルシリルエチニル。
【0027】
一つの態様によれば、R2D、R2C、およびR2Bは、メトキシであり、Lは、カルボニル基(C=O)である。
【0028】
従って、本態様によれば、本発明のTPIは、式(Ia)で表される:
【化2】

(式中、
Xは、O、S、SO、SO、Se、SeO、SeO、またはNRを表し、ここで、Rは、H、O、所望により置換されていてよいアシル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいシクロアルケニル、所望により置換されていてよいシクロアルキル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、および所望により置換されていてよいスルホニルから選択され、
1AおよびR1Bは、各々独立して、H、カルボキシ、シアノ、ジハロメトキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、ペンタハロエチル、ホスホリルアミノ、ホスホノ、ホスフィニル、スルホ、トリハロエテニル、トリハロメタンチオ、トリハロメトキシ、トリハロメチル、所望により置換されていてよいアシル、所望により置換されていてよいアシルアミノ、所望により置換されていてよいアシルイミノ、所望により置換されていてよいアシルイミノキシ、所望により置換されていてよいアシルオキシ、所望により置換されていてよいアリールアルキル、所望により置換されていてよいアリールアルコキシ、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルケニルオキシ、所望により置換されていてよいアルコキシ、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアルキニルオキシ、所望により置換されていてよいアミノ、所望により置換されていてよいアミノアシル、所望により置換されていてよいアミノアシルオキシ、所望により置換されていてよいアミノスルホニル、所望により置換されていてよいアミノチオアシル、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいアリールオキシ、所望により置換されていてよいシクロアルケニル、所望により置換されていてよいシクロアルキル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、所望により置換されていてよいオキシアシル、所望により置換されていてよいオキシアシルアミノ、所望により置換されていてよいオキシアシルオキシ、所望により置換されていてよいオキシアシルイミノ、所望により置換されていてよいオキシスルフィニルアミノ、所望により置換されていてよいオキシスルホニルアミノ、所望により置換されていてよいオキシチオアシル、所望により置換されていてよいオキシチオアシルオキシ、所望により置換されていてよいスルフィニル、所望により置換されていてよいスルフィニルアミノ、所望により置換されていてよいスルホニル、所望により置換されていてよいスルホニルアミノ、所望により置換されていてよいチオ、所望により置換されていてよいチオアシル、所望により置換されていてよいチオアシルアミノを表すか、またはR1AおよびR1Bは、
一緒になって、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいシクロアルキル、もしくは所望により置換されていてよいシクロアルケニルを形成し、
1Cは、C1‐3アルコキシ、C1‐3アルキルチオ、C1‐3アルキルアミノ、またはC1‐3ジアルキルアミノを表し、
1Dは、ヒドロキシまたはアミノを表し、
2AおよびR2Eは、独立して、H、カルボキシ、シアノ、ジハロメトキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、ペンタハロエチル、ホスホリルアミノ、ホスホノ、ホスフィニル、スルホ、トリハロエテニル、トリハロメタンチオ、トリハロメトキシ、トリハロメチル、所望により置換されていてよいアシル、所望により置換されていてよいアシルアミノ、所望により置換されていてよいアシルイミノ、所望により置換されていてよいアシルイミノキシ、所望により置換されていてよいアシルオキシ、所望により置換されていてよいアリールアルキル、所望により置換されていてよいアリールアルコキシ、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルケニルオキシ、所望により置換されていてよいアルコキシ、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアルキニルオキシ、所望により置換されていてよいアミノ、所望により置換されていてよいアミノアシル、所望により置換されていてよいアミノアシルオキシ、所望により置換されていてよいアミノスルホニル、所望により置換されていてよいアミノチオアシル、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいアリールオキシ、所望により置換されていてよいシクロアルケニル、所望により置換されていてよいシクロアルキル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、所望により置換されていてよいオキシアシル、所望により置換されていてよいオキシアシルアミノ、所望により置換されていてよいオキシアシルオキシ、所望により置換されていてよいオキシアシルイミノ、所望により置換されていてよいオキシスルフィニルアミノ、所望により置換されていてよいオキシスルホニルアミノ、所望により置換されていてよいオキシチオアシル、所望により置換されていてよいオキシチオアシルオキシ、所望により置換されていてよいスルフィニル、所望により置換されていてよいスルフィニルアミノ、所望により置換されていてよいスルホニル、所望により置換されていてよいスルホニルアミノ、所望により置換されていてよいチオ、所望により置換されていてよいチオアシル、所望により置換されていてよいチオアシルアミノ、または所望により置換されていてよいチオア
シルオキシを表し;ならびに、
Qは、H、CN、ハロゲン、トリアルキルシリル、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアシル、所望により置換されていてよいオキシアシル、所望により置換されていてよいアシルアミノ、所望により置換されていてよいアミノアシルアミノ、OR’’、SR’’、もしくはNR’’R’’(ここで、R’’は、各々独立して、H、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、所望により置換されていてよいアシル、および所望により置換されていてよいオキシアシルを表す)を表すか、または、NR’’’NR’’’(ここで、R’’’は、各々独立して、H、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアリール、および所望により置換されていてよいヘテロアリールを表す)を表す。
【0029】
別の態様によれば、R1A、R1B、R2A、およびR2Eは、Hを表し、R1Cは、C1‐3アルコキシを表す。
【0030】
従って、本態様によれば、本発明のTPIは、式(Ib)で表される:
【化3】

(式中、
Xは、O、S、SO、SO、Se、SeO、SeO、またはNRを表し、ここで、Rは、H、O、所望により置換されていてよいアシル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいシクロアルケニル、所望により置換されていてよいシクロアルキル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、および所望により置換されていてよいスルホニルから選択され、
1Cは、C1‐3アルコキシを表し、
1Dは、ヒドロキシまたはアミノを表し、
Qは、H、CN、ハロゲン、トリアルキルシリル、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアシル、所望により置換されていてよいオキシアシル、所望により置換されていてよいアシルアミノ、所望により置換されていてよいアミノアシルアミノ、OR’’、SR’’、もしくはNR’’R’’(ここで、R’’は、各々独立して、H、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいアシル、および所望により置換されていてよいオキシアシルを表す)を表すか、または、NR’’’NR’’’(ここで、R’’’は、各々独立して、H、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアリール、および所望により置換されていてよいヘテロアリールを表す)を表す。
【0031】
好ましい態様によれば、R1Cは、メトキシを表す。
【0032】
式I、Ia、およびIbで表される化合物において、Xは、好ましくは、O、S、およびNRから選択される。より好ましくは、Xは、OまたはNRであり、最も好ましくは、Xは、Oである。
【0033】
従って、別の態様によれば、TPIは、式IIで表される:
【化4】

(式中、
1AおよびR1Bは、各々独立して、H、カルボキシ、シアノ、ジハロメトキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、ペンタハロエチル、ホスホリルアミノ、ホスホノ、ホスフィニル、スルホ、トリハロエテニル、トリハロメタンチオ、トリハロメトキシ、トリハロメチル、所望により置換されていてよいアシル、所望により置換されていてよいアシルアミノ、所望により置換されていてよいアシルイミノ、所望により置換されていてよいアシルイミノキシ、所望により置換されていてよいアシルオキシ、所望により置換されていてよいアリールアルキル、所望により置換されていてよいアリールアルコキシ、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルケニルオキシ、所望により置換されていてよいアルコキシ、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアルキニルオキシ、所望により置換されていてよいアミノ、所望により置換されていてよいアミノアシル、所望により置換されていてよいアミノアシルオキシ、所望により置換されていてよいアミノスルホニル、所望により置換されていてよいアミノチオアシル、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいアリールオキシ、所望により置換されていてよいシクロアルケニル、所望により置換されていてよいシクロアルキル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、所望により置換されていてよいオキシアシル、所望により置換されていてよいオキシアシルアミノ、所望により置換されていてよいオキシアシルオキシ、所望により置換されていてよいオキシアシルイミノ、所望により置換されていてよいオキシスルフィニルアミノ、所望により置換されていてよいオキシスルホニルアミノ、所望により置換されていてよいオキシチオアシル、所望により置換されていてよいオキシチオアシルオキシ、所望により置換されていてよいスルフィニル、所望により置換されていてよいスルフィニルアミノ、所望により置換されていてよいスルホニル、所望により置換されていてよいスルホニルアミノ、所望により置換されていてよいチオ、所望により置換されていてよいチオアシル、所望により置換されていてよいチオアシルアミノを表すか、またはR1AおよびR1Bは、
一緒になって、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいシクロアルキル、もしくは所望により置換されていてよいシクロアルケニルを形成し、
1Cは、C1‐3アルコキシ、C1‐3アルキルチオ、C1‐3アルキルアミノ、またはC1‐3ジアルキルアミノを表し、
1Dは、ヒドロキシまたはアミノを表し、
Lは、C=O、O、S、SO、SO、Se、SeO、SeO、C=NZ’、もしくはNR’を表し、ここでZ’は、H、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアリール、もしくは所望により置換されていてよいアミノであり;およびここで、R’は、H、O、所望により置換されていてよいアシル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいシクロアルケニル、所望により置換されていてよいシクロアルキル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、もしくは所望により置換されていてよいスルホニルから選択され、
2A‐R2Eは、各々独立して、H、カルボキシ、シアノ、ジハロメトキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、ペンタハロエチル、ホスホリルアミノ、ホスホノ、ホスフィニル、スルホ、トリハロエテニル、トリハロメタンチオ、トリハロメトキシ、トリハロメチル、所望により置換されていてよいアシル、所望により置換されていてよいアシルアミノ、所望により置換されていてよいアシルイミノ、所望により置換されていてよいアシルイミノキシ、所望により置換されていてよいアシルオキシ、所望により置換されていてよいアリールアルキル、所望により置換されていてよいアリールアルコキシ、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルケニルオキシ、所望により置換されていてよいアルコキシ、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアルキニルオキシ、所望により置換されていてよいアミノ、所望により置換されていてよいアミノアシル、所望により置換されていてよいアミノアシルオキシ、所望により置換されていてよいアミノスルホニル、所望により置換されていてよいアミノチオアシル、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいアリールオキシ、所望により置換されていてよいシクロアルケニル、所望により置換されていてよいシクロアルキル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、所望により置換されていてよいオキシアシル、所望により置換されていてよいオキシアシルアミノ、所望により置換されていてよいオキシアシルイミノ、所望により置換されていてよいオキシアシルオキシ、所望により置換されていてよいオキシスルフィニルアミノ、所望により置換されていてよいオキシスルホニルアミノ、所望により置換されていてよいオキシチオアシル、所望により置換されていてよいオキシチオアシルオキシ、所望により置換されていてよいスルフィニル、所望により置換されていてよいスルフィニルアミノ、所望により置換されていてよいスルホニル、所望により置換されていてよいスルホニルアミノ、所望により置換されていてよいチオ、所望により置換されていてよいチオアシル、所望により置換されていてよいチオアシルアミノ、または所望により置換されていてよいチオア
シルオキシを表すか;または、R2AおよびR2B、R2BおよびR2C、R2CおよびR2D、ならびにR2DおよびR2Eのいずれかが、一緒になって、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいシクロアルキル、もしくは所望により置換されていてよいシクロアルケニルを形成し、ならびに、
Qは、H、CN、ハロゲン、トリアルキルシリル、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアシル、所望により置換されていてよいオキシアシル、所望により置換されていてよいアシルアミノ、所望により置換されていてよいアミノアシルアミノ、OR’’、SR’’、もしくはNR’’R’’(ここで、R’’は、各々独立して、H、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいアシル、および所望により置換されていてよいオキシアシルを表す)を表すか、または、NR’’’NR’’’(ここで、R’’’は、各々独立して、H、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアリール、および所望により置換されていてよいヘテロアリールを表す)を表す。
【0034】
本態様によれば、Lは、カルボニル基(C=O)であることが好ましい。また、好ましくは、R2D、R2C、またはR2Bの少なくとも1つは、ヒドロキシまたはC1‐3アルコキシ基を表す。より好ましくは、X=Oの場合、Lは、カルボニル基であり、R2D、R2C、およびR2Bは、メトキシを表す。さらにより好ましくは、X=Oの場合、Lは、カルボニル基であり、R2D、R2C、およびR2Bは、メトキシを表し、R1A、R1B、R2A、R2Eは、Hである。
【0035】
さらに、式(I)、(Ia)、(Ib)、および(II)の化合物において、Qは、H、CN、所望により置換されていてよいC2‐4アルキニル、所望により置換されていてよいC2‐6アルケニル、所望により置換されていてよいC1‐4アルキル、ヒドロキシ、所望により置換されていてよいオキシアシル、NR’’R’’、SR’’(ここで、R’’は、各々独立して、H、所望により置換されていてよいC1‐4アルキル、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、所望により置換されていてよいヘテロアリールである)、NR’’’NR’’’(ここで、R’’’は、各々独立して、H、C1‐3アルキルである)、所望により置換されていてよいアシルアミノ、またはハロゲンを表すことが好ましい。
【0036】
ある態様によれば、Qは、独立して、以下の基から選択される:
H;
CN;
ハロゲン、好ましくは、BrまたはCl;
アルキル基、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル;
置換アルキル基、好ましくは、アミノ、オキシアシルアミノアルキル、およびオキシスルホニルアミノアルキル;
所望により置換されていてよいアルケニル、好ましくは、エテニル、2‐アルキルエテニル、2‐オキシアシルエテニル、2‐アミノアシルエテニル;
所望により置換されていてよいアルキニル、好ましくは、エチニル、2‐アルキルエチニル;
所望により置換されていてよいオキシアシル;
OR’’、好ましくは、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ;
NR’’R’’、好ましくは、NH、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロアリールアミノ、アミノアルキルアミノ、ヒドロキシアルキルアミノ、アルコキシアルキルアミノ、オキシアシルアルキルアミノ、オキシアシルアミノアルキルアミノ、グアニジノアルキルアミノ;
SR’’、好ましくは、アルキルチオ、アミノアルキルチオ、ヘテロアリールチオ、アミノアルキルチオ、ヒドロキシアルキルチオ、アルコキシアルキルチオ、オキシアシルアルキルチオ、オキシアシルアミノアルキルチオ、グアニジノアルキルチオ;
ヒドラジン。
【0037】
化学的定義
「アルキル」とは、直鎖状または分岐鎖状であってよく、ならびに好ましくは1から10個の炭素原子、またはより好ましくは1から6個の炭素原子、およびさらにより好ましくは1から3個の炭素原子を有する一価のアルキル基を意味する。そのようなアルキル基の例としては、メチル、エチル、n‐プロピル、iso‐プロピル、n‐ブチル、iso‐ブチル、n‐ヘキシルなどが挙げられる。
【0038】
「アルキレン」とは、好ましくは1から10個の炭素原子、より好ましくは1から6個の炭素原子、さらにより好ましくは1から3個の炭素原子を有する二価のアルキル基を意味する。そのようなアルキレン基の例としては、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)、およびプロピレン異性体(例:−CHCHCH−および−CH(CH)CH−)などが挙げられる。
【0039】
「アリール」とは、単一の環(例:フェニル)または複数の縮合環(例:ナフチルまたはアントリル)を有し、好ましくは6から14個の炭素原子を有する不飽和芳香族炭素環式基を意味する。アリール基の例としては、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。
【0040】
「アリーレン」とは、二価のアリール基を意味し、ここでアリール基は、上述の通りである。
【0041】
「アリールオキシ」とは、アリール−O−の基を意味し、ここでアリール基は、上述の通りである。
【0042】
「アリールアルキル」とは、アルキレン部分に1から10個の炭素原子を、アリール部分に6から10個の炭素原子を有することが好ましい、−アルキレン−アリール基を意味する。そのようなアリールアルキル基は、ベンジル、フェネチルなどで例示される。
【0043】
「アリールアルコキシ」とは、アリールアルキル−O−の基を意味し、ここでアリールアルキル基は、上述の通りである。そのようなアリールアルコキシ基は、ベンジルオキシなどで例示される。
【0044】
「アルコキシ」とは、アルキル−O−の基を意味し、ここでアルキル基は、上述の通りである。例としては、メトキシ、エトキシ、n‐プロポキシ、iso‐プロポキシ、n‐ブトキシ、tert‐ブトキシ、sec‐ブトキシ、n‐ペントキシ、n‐ヘキソキシ、1,2‐ジメチルブトキシなどが挙げられる。
【0045】
「アルケニル」とは、直鎖状または分岐鎖状であってよく、および好ましくは2から10個の炭素原子、より好ましくは2から6個の炭素原子を有し、および少なくとも1個、好ましくは1〜2個の炭素‐炭素二重結合を有する一価のアルケニル基を意味する。例としては、エテニル(−CH=CH)、n‐プロペニル(−CHCH=CH)、iso‐プロペニル(−C(CH)=CH)、ブト‐2‐エニル(−CHCH=CHCH)などが挙げられる。
【0046】
「アルケニルオキシ」とは、アルケニル−O−の基を意味し、ここでアルケニル基は、上述の通りである。
【0047】
「アルケニレン」とは、好ましくは2から8個の炭素原子、より好ましくは2から6個の炭素原子を有する二価のアルケニル基を意味する。例としては、エテニレン(−CH=CH−)およびプロペニレン異性体(例:−CHCH=CH−および−C(CH)=CH−)などが挙げられる。
【0048】
「アルキニル」とは、好ましくは2から10個の炭素原子、より好ましくは2から6個の炭素原子を有し、および少なくとも1個、好ましくは1〜2個の炭素‐炭素三重結合を有するアルキニル基を意味する。アルキニル基の例としては、エチニル(−C≡CH)、プロパルギル(−CHC≡CH)、ペント‐2‐イニル(−CHC≡CCH−CH)などが挙げられる。
【0049】
「アルキニルオキシ」とは、アルキニル−O−の基を意味し、ここでアルキニル基は、上述の通りである。
【0050】
「アルキニレン」とは、好ましくは2から8個の炭素原子、より好ましくは2から6個の炭素原子を有する二価のアルキニル基を意味する。例としては、エチニレン(−C≡C−)、プロピニレン(−CH−C≡C−)などが挙げられる。
【0051】
「アシル」とは、H−C(O)−、アルキル−C(O)−、シクロアルキル−C(O)−、アリール−C(O)−、ヘテロアリール−C(O)−、およびヘテロシクリル−C(O)−の基を意味し、ここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、本明細書で述べる通りである。
【0052】
「オキシアシル」とは、HOC(O)−、アルキル−OC(O)−、シクロアルキル−OC(O)−、アリール−OC(O)−、ヘテロアリール−OC(O)−、およびヘテロシクリル−OC(O)−の基を意味し、ここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、本明細書で述べる通りである。
【0053】
「アミノ」とは、−NRの基を意味し、ここで、Rは、各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、ここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルの各々は、本明細書で述べる通りである。
【0054】
「アミノアシル」とは、−C(O)NRの基を意味し、ここで、Rは、各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、ここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルの各々は、本明細書で述べる通りである。
【0055】
「アミノアシルアミノ」とは、−NRC(O)NRの基を意味し、ここで、Rは、各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、ここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルの各々は、本明細書で述べる通りである。
【0056】
「アシルアミノ」とは、−NRC(O)Rの基を意味し、ここで、Rは、各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、ここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルの各々は、本明細書で述べる通りである。
【0057】
「アシルオキシ」とは、−OC(O)−アルキル、−OC(O)−アリール、−C(O)O−ヘテロアリール、および−C(O)O−ヘテロシクリルの基を意味し、ここで、アルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、本明細書で述べる通りである。
【0058】
「アミノアシルオキシ」とは、−OC(O)NR−アルキル、−OC(O)NR−アリール、−OC(O)NR−ヘテロアリール、および−OC(O)NR−ヘテロシクリルの基を意味し、ここで、Rは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、ここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルの各々は、本明細書で述べる通りである。
【0059】
「オキシアシルアミノ」とは、−NRC(O)O−アルキル、−NRC(O)O−アリール、−NRC(O)O−ヘテロアリール、およびNRC(O)O−ヘテロシクリルの基を意味し、ここで、Rは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、ここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルの各々は、本明細書で述べる通りである。
【0060】
「オキシアシルオキシ」とは、−OC(O)O−アルキル、−O−C(O)O−アリール、−OC(O)O−ヘテロアリール、および−OC(O)O−ヘテロシクリルの基を意味し、ここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、本明細書で述べる通りである。
【0061】
「アシルイミノ」とは、−C(NR)−Rの基を意味し、ここで、Rは、各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、ここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルの各々は、本明細書で述べる通りである。
【0062】
「アシルイミノキシ」とは、−O−C(NR)−Rの基を意味し、ここで、Rは、各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、ここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルの各々は、本明細書で述べる通りである。
【0063】
「オキシアシルイミノ」とは、−C(NR)−ORの基を意味し、ここで、Rは、各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、ここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルの各々は、本明細書で述べる通りである。
【0064】
「シクロアルキル」とは、好ましくは3から8個の炭素原子を組み込んだ、単一の環または複数の縮合した環を有する環状アルキル基を意味する。そのようなシクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルなどの単一環構造、またはアダマンタニルなどの多環構造が挙げられる。
【0065】
「シクロアルケニル」とは、単一の環および少なくとも1つの内部不飽和点を有し、好ましくは4から8個の炭素原子を組み込んだ、環状アルケニル基を意味する。適切なシクロアルケニル基の例としては、例えば、シクロブト‐2‐エニル、シクロペント‐3‐エニル、シクロへキサ‐4‐エニル、シクロオクト‐3‐エニルなどが挙げられる。
【0066】
「ハロ」または「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを意味する。
【0067】
「ヘテロアリール」とは、芳香族性のヒュッケル則を満たし(すなわち、4n+2個のπ電子を含有)、好ましくは、環内に2から10個の炭素原子、および酸素、窒素、セレニウム、および硫黄から選択される1から4個のヘテロ原子(硫黄、セレニウム、および窒素の酸化物を含む)を有する、一価の芳香族ヘテロ環式基を意味する。そのようなヘテロアリール基は、単一の環を有していても(例:ピリジル、ピロリル、もしくはこれらのN‐オキシド、またはフリル)、または複数の縮合した環を有していてもよい(例:インドリジニル、ベンゾイミダゾリル、クマリニル、キノリニル、イソキノリニル、またはベンゾチエニル)。
【0068】
「ヘテロシクリル」とは、単一の環または複数の縮合した環を有し、好ましくは、環内に1から8個の炭素原子、および窒素、硫黄、酸素、セレニウム、またはリンから選択される1から4個のヘテロ原子を有する、一価の飽和または不飽和の基を意味する。最も好ましいヘテロ原子は、窒素である。
【0069】
ヘテロシクリルおよびヘテロアリール基の例としては、これらに限定されないが、オキサゾール、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソキサゾール、イソチアゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、フタルイミド、1,2,3,4‐テトラヒドロイソキノリン、4,5,6,7‐テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン、チアゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、テトラゾール、チアゾリジン、チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、モルホリノ、ピペリジニル、ピロリジン、テトラヒドロフラニル、トリアゾールなどが挙げられる。
【0070】
「ヘテロアリーレン」とは、二価のヘテロアリール基を意味し、ここで、ヘテロアリール基は、上述の通りである。
【0071】
「ヘテロシクリレン」とは、二価のヘテロシクリル基を意味し、ここで、ヘテロシクリル基は、上述の通りである。
【0072】
「チオ」とは、H−S−、アルキル−S−、シクロアルキル−S−、アリール−S−、ヘテロアリール−S−、およびヘテロシクリル−S−の基を意味し、ここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、本明細書で述べる通りである。
【0073】
「チオアシル」とは、H−C(S)−、アルキル−C(S)−、シクロアルキル−C(S)−、アリール−C(S)−、ヘテロアリール−C(S)−、およびヘテロシクリル−C(S)−の基を意味し、ここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、本明細書で述べる通りである。
【0074】
「オキシチオアシル」とは、HO−C(S)−、アルキルO−C(S)−、シクロアルキルO−C(S)−、アリールO−C(S)−、ヘテロアリールO−C(S)−、およびヘテロシクリルO−C(S)−の基を意味し、ここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、本明細書で述べる通りである。
【0075】
「オキシチオアシルオキシ」とは、HO−C(S)−O−、アルキルO−C(S)−O−、シクロアルキルO−C(S)−O−、アリールO−C(S)−O−、ヘテロアリールO−C(S)−O−、およびヘテロシクリルO−C(S)−O−の基を意味し、ここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、本明細書で述べる通りである。
【0076】
「ホスホリルアミノ」とは、−NR−P(O)(R**)(OR***)の基を意味し、ここで、Rは、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、もしくはアリールを表し、R**は、OR***を表すか、またはヒドロキシもしくはアミノであり、R***は、アルキル、シクロアルキル、アリール、もしくはアリールアルキルであり、ここで、アルキル、アミノ、アルケニル、アリール、シクロアルキル、およびアリールアルキルは、本明細書で述べる通りである。
【0077】
「チオアシルオキシ」とは、H−C(S)−O−、アルキル−C(S)−O−、シクロアルキル−C(S)−O−、アリール−C(S)−O−、ヘテロアリール−C(S)−O−、およびヘテロシクリル−C(S)−O−の基を意味し、ここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、本明細書で述べる通りである。
【0078】
「スルフィニル」とは、H−S(O)−、アルキル−S(O)−、シクロアルキル−S(O)−、アリール−S(O)−、ヘテロアリール−S(O)−、およびヘテロシクリル−S(O)−の基を意味し、ここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、本明細書で述べる通りである。
【0079】
「スルホニル」とは、H−S(O)−、アルキル−S(O)−、シクロアルキル−S(O)−、アリール−S(O)−、ヘテロアリール−S(O)−、およびヘテロシクリル−S(O)−の基を意味し、ここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルは、本明細書で述べる通りである。
【0080】
「スルフィニルアミノ」とは、H−S(O)−NR−、アルキル−S(O)−NR−、シクロアルキル−S(O)−NR−、アリール−S(O)−NR−、ヘテロアリール−S(O)−NR−、およびヘテロシクリル−S(O)−NR−の基を意味し、ここで、Rは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、ならびにここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルの各々は、本明細書で述べる通りである。
【0081】
「スルホニルアミノ」とは、H−S(O)−NR−、アルキル−S(O)−NR−、シクロアルキル−S(O)−NR−、アリール−S(O)−NR−、ヘテロアリール−S(O)−NR−、およびヘテロシクリル−S(O)−NR−の基を意味し、ここで、Rは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、ならびにここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルの各々は、本明細書で述べる通りである。
【0082】
「オキシスルフィニルアミノ」とは、HO−S(O)−NR−、アルキルO−S(O)−NR−、シクロアルキルO−S(O)−NR−、アリールO−S(O)−NR−、ヘテロアリールO−S(O)−NR−、およびヘテロシクリルO−S(O)−NR−の基を意味し、ここで、Rは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、ならびにここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルの各々は、本明細書で述べる通りである。
【0083】
「オキシスルホニルアミノ」とは、HO−S(O)−NR−、アルキルO−S(O)−NR−、シクロアルキルO−S(O)−NR−、アリールO−S(O)−NR−、ヘテロアリールO−S(O)−NR−、およびヘテロシクリルO−S(O)−NR−の基を意味し、ここで、Rは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、ならびにここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルの各々は、本明細書で述べる通りである。
【0084】
「アミノチオアシル」とは、RN−C(S)−の基を意味し、ここで、Rは、各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、ならびにここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルの各々は、本明細書で述べる通りである。
【0085】
「チオアシルアミノ」とは、H−C(S)−NR−、アルキル−C(S)−NR−、シクロアルキル−C(S)−NR−、アリール−C(S)−NR−、ヘテロアリール−C(S)−NR−、およびヘテロシクリル−C(S)−NR−の基を意味し、ここで、Rは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルであり、ならびにここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルの各々は、本明細書で述べる通りである。
【0086】
「アミノスルフィニル」とは、RN−S(O)−の基を意味し、ここで、Rは、各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロ環式であり、ならびにここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルの各々は、本明細書で述べる通りである。
【0087】
「アミノスルホニル」とは、RN−S(O)−の基を意味し、ここで、Rは、各々独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロ環式であり、ならびにここで、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルの各々は、本明細書で述べる通りである。
【0088】
本明細書にて、「所望により置換されていてよい」とは、基が、ヒドロキシ、アシル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルケニルオキシ、アルキニル、アルキニルオキシ、アミノ、アミノアシル、チオ、アリールアルキル、アリールアルコキシ、アリール、アリールオキシ、アシルアミノ、シアノ、ハロゲン、ニトロ、スルホ、ホスホノ、ホスホリルアミノ、ホスフィニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、オキシアシル、オキシム、オキシムエーテル、ヒドラゾン、−NHC(NH)NH、オキシアシルアミノ、オキシスルホニルアミノ、アミノアシルオキシ、トリハロメチル、トリアルキルシリル、ペンタフルオロエチル、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメタンチオ、トリフルオロエテニル、モノ‐およびジ‐アルキルアミノ、モノ‐およびジ‐(置換アルキル)アミノ、モノ‐およびジ‐アリールアミノ、モノ‐およびジ‐ヘテロアリールアミノ、モノ‐およびジ‐ヘテロシクリルアミノ、ならびにアルキル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロシクリルから選択される異なる置換基を有する非対称二置換アミン、などから選択される1もしくは2つ以上の基によってさらに置換または縮合(縮合多環式基を形成するように)されていても、されていなくてもよいことを意味するものと理解される。
【0089】
所望により置換されていてよいアミノ基はまた、アミノ酸およびペプチドの残基も含んでよい。
【0090】
式I、Ia、Ib、またはIIのTPI化合物は、参照することで本明細書に組み入れられる国際公開第02/060872号および国際公開第07/087684号に開示されるものを含む、公知の方法によって作製することができる。
【0091】
さらなる好ましい態様によれば、本発明の併用療法で用いるためのTPIは、式(III)の化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグである。
【化5】

【0092】
式(III)の化合物(2‐メチル‐7‐ヒドロキシ‐3‐(3,4,5‐トリメトキシベンゾイル)‐6‐メトキシベンゾフラン)は、PCT/AU2007/000101(国際公開第07/087684号)に記載の合成方法によって作製することができる。
【0093】
式I、Ia、Ib、II、またはIIIの化合物は、強力なチューブリン重合阻害剤(TPI)であることが観察された。式I、Ia、Ib、II、およびIIIの化合物の重要な一面は、特定のC‐6およびC‐7置換基とC‐2 Q基(特にC‐2 メチル)との組み合わせであり、これが、他の構造的に関連するTPI化合物と比較した場合に、より大きな効力と選択性を付与するものと考えられる。これらの化合物において、選択性は、VDAの攻撃を受けた場合の腫瘍脈管構造の崩壊しやすい性質に単に依存するのではなく、腫瘍内皮細胞と正常内皮細胞とを区別するVDAの能力によるものである。健康な組織に見られる正常内皮細胞は、「無活動」状態であり、腫瘍内皮細胞は、「活性化」状態である。ほとんどのVDAは、これらの2つの状態を区別せず、例えば、コンブレタスタチンA4(CA4)は、無活動および活性化状態の内皮細胞に対して同等の効力を有する。しかし、式I、Ia、Ib、II、および特にIIIの化合物は、正常内皮細胞(無活動)よりも腫瘍内皮細胞(活性化)に対して選択性を示す。
【0094】
本発明のTPI、および式I、Ia、Ib、II、またはIIIの化合物は、その薬理学的に許容される塩として対象に投与してよいことは理解される。適切な薬理学的に許容される塩としては、これらに限定されないが、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸、および臭化水素酸などの薬理学的に許容される無機酸の塩、または酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、乳酸、ムチン酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸、および吉草酸などの薬理学的に許容される有機酸の塩が挙げられる。
【0095】
塩基塩としては、これらに限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、およびアルキルアンモニウムなどの薬理学的に許容されるカチオンによって形成されるものが挙げられる。特に、本発明は、その範囲内に、リン酸基のナトリウムもしくはカリウム塩を例とするカチオン性塩、またはアルキルエステル(例:メチル、エチル)を含む。
【0096】
本発明のTPIまたは式I、Ia、Ib、II、およびIIIの化合物のプロドラッグであるいずれの化合物もまた、本発明の範囲および趣旨に含まれることも理解される。「プロドラッグ」の用語は、その最も広い意味で用いられ、インビボにて本発明の化合物(例えば、式I、Ia、Ib、II、およびIIIの化合物)に変換される誘導体を包含する。そのような誘導体は、当業者であれば容易に思いつくものであり、例えば、酢酸もしくはリン酸のエステルなど、遊離のヒドロキシ基(例えば、C‐7位、またはR1D)がエステルに変換された化合物、または遊離のアミノ基(例えば、C‐7位、またはR1D)がアミド(例:α‐アミノ酸アミド)に変換された化合物が挙げられる。アシル化を例とする化合物のエステル化の手順は、本技術分野にて公知であり、適切な触媒または塩基の存在下にて、適切なカルボン酸、無水物、または塩化物にて化合物を処理することを挙げることができる。特に好ましいプロドラッグは、二ナトリウムリン酸エステルである。本発明の化合物の二ナトリウムリン酸エステル(特に、式IIIの化合物のC‐7二ナトリウムリン酸エステル)は、化合物の溶解性を向上させるのに有用であり得る。このことは、例えば、生理食塩水などの穏和な媒体による化合物の送達を可能にし得るものである。二ナトリウムリン酸エステルは、Pettit, G.R., et al, Anticancer Drug Des., 1995, 10, 299に記載の方法に従って作製することができる。プロドラッグ(およびその作製)が概説されたその他のテキストとしては:Design of Prodrugs, 1985, H. Bundgaard (Elsevier);The Practice of Medicinal Chemistry, 1996, Camille G. Wermuth et al., Chapter 31 (Academic Press);および、A Textbook of Drug Design and Development, 1991, Bundgaard et al., Chapter 5, (Harwood Academic Publishers)、が挙げられる。
【0097】
式I、Ia、Ib、II、およびIIIの化合物(またはその塩もしくはプロドラッグ)は、遊離化合物または溶媒和物(例:水和物)のいずれかとしての結晶の形態であってよく、いずれの形態も本発明の範囲内であることが意図される。溶媒和の方法は、本技術分野にて一般的に公知である。
【0098】
組み合わせパートナー(b):mTOR阻害剤
mTORは、主として翻訳開始の制御に関与する細胞内セリン/スレオニンキナーゼである。PI3K/Akt‐依存性リン酸化が、TSC1/TSC2複合体のタンパク質産物であるツベリンを通してシグナルを送り、mTORの活性化が誘発される。mTORは、続いて、下流の標的をリン酸化し、タンパク質翻訳の開始を引き起こす。従って、mTORの活性化を阻害し、その下流標的の下方制御を引き起こす剤はいずれも、本明細書で用いる「mTOR阻害剤」の意味に包含される。
【0099】
適切なmTOR阻害剤としては、以下が挙げられる:
BEZ235(NVP‐BEZ235)、デフォロリムス(AP23573、MK‐8669)、PI‐103、ラパマイシン(シロリムス、ラパミューン)、テムシロリムス(Toricel、CCI‐779)、エベロリムス(アフィニトール、RAD001、サーティカン)、ABT578、SAR543、およびAP23841。
【0100】
いずれのmTOR組み合わせパートナーも、その適切性は、送達モードに依存する場合が多い。テムシロリムスおよびエベロリムス(いずれもラパマイシンの類似体)は、ラパマイシンと比較して優れた溶解特性を有するように開発され、そのために、これらは静脈内投与(テムシロリムス)および経口投与(エベロリムス)に適する。
【0101】
増殖性疾患
本明細書で用いる「増殖性疾患」の用語は、いずれの腫瘍性疾患をも広く包含するものであり、潜在的に悪性であるもの(前癌性)、または悪性(癌性)であるものが含まれる。従って、この用語は、腫瘍の治療を包含する。
【0102】
従って、「腫瘍」の用語は、一般的に、悪性癌性または前癌性の細胞成長のいずれをも定めるために用いられ、白血病、ならびにメラノーマ、結腸癌、肺癌、卵巣癌、皮膚癌、乳癌、膵臓癌、咽頭癌、脳癌、前立腺癌、CNS癌、および腎臓癌などの癌腫、さらにはその他の癌を挙げることができる。
【0103】
好ましい態様によれば、組み合わせは、腫瘍の治療に用いることができ、特に以下の腫瘍である:乳腺癌、脳神経膠芽腫、結腸直腸腺癌、肺癌、卵巣腺癌、膵臓腺癌、前立腺癌、腎細胞腺癌、および咽頭扁平上皮癌。
【0104】
好ましい態様では、本発明は、腎臓癌、特に転移性腎細胞癌の治療のための(a)および(b)の組み合わせを提供する。
【0105】
(a)および(b)の組み合わせ
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、パートナー(a)および(b)は、組み合わせて作用させることで、癌細胞の死滅をより良好に引き起こすものと考えられる。図1に示すように、TPIは、非常に血管の多い腫瘍に対して低酸素/細胞毒性ストレスを引き起こし、一方mTOR阻害は、同時に、HIF1aの主導による血管新生/生存反応を抑制して、有益な付加効果または相乗効果をもたらすものと想定される。
【0106】
本発明は、従って、(a)チューブリン標的剤の効果量を、(b)mTOR阻害剤の効果量と組み合わせて投与することを含む、腫瘍を治療する方法を提供する。
【0107】
一つの態様によれば、以下の組み合わせが特に好ましい:
【0108】
【表1】

【0109】
上記の態様において、好ましくは、プロドラッグの形態は、式IIIの化合物のC‐7二ナトリウムリン酸エステルである。
【0110】
「効果量」とは、投与を、そのような治療を必要とする哺乳類(特にヒト)に行った場合、各組み合わせパートナーの量が、特定の増殖性疾患の治療をもたらすのに十分であることを意味することを意図している。従って、例えば、組み合わせパートナー(a)の化合物(またはその薬理学的に許容される塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグ)の治療効果量は、標的とする疾患が低減、または軽減されるように、mTOR阻害剤の活性に相乗効果を与えるか、またはその活性を増強するのに十分な量である(またはその逆も同様)。
【0111】
これには、所望される効果の少なくとも部分的な達成、または、治療される特定の疾患(例:腫瘍)の発症の遅延、または進行の阻止、または発病もしくは進行の完全な停止、もしくは逆転を挙げることができる。
【0112】
増殖性疾患に罹患する患者に対するオープンラベル用量漸増試験(open-label, dose escalation studies)などの臨床試験としては、本組み合わせの活性成分の相乗効果を示す試験を挙げることができる。有益な効果および/または相乗効果は、それ自体が当業者に公知であるこのような試験の結果から直接決定することができる。このような試験ではまた、活性成分を用いた単独療法と本発明の組み合わせの効果を比較することもできる。好ましくは、組み合わせパートナー(a)の用量は、最大耐用量(MTD)に達するまで増大させてよく、剤(b)は、固定用量で投与される。別の選択肢として、組み合わせパートナー(a)を固定用量で投与し、剤(b)の用量を増大させる。各患者は、剤(a)の用量を、毎日または断続的のいずれかで受けてよい。治療の効果は、そのような試験において、例えば6、12、18、または24週間後に、9週間ごとの症状スコアを評価することによって、決定することができる。
【0113】
本発明の医薬組み合わせの投与では、例えば、症状の軽減、症状の進行の遅延、または症状の阻止に関する、付加的または相乗的治療効果を例とする有益な効果を得ることができるだけでなく、さらなる驚くべき有益な効果を得ることもできる。そのようなその他の効果としては、本発明の組み合わせに用いられる薬理活性成分の1つのみを適用する単独療法と比較しての、副作用の減少、クオリティオブライフの改善、または罹患率の低下を挙げることができる。
【0114】
本発明のさらなる有益性は、組み合わせに用いられる活性成分の用量を減少させることができるということである。用量は、減少させることが必要であるだけでなく、頻度を下げて適用することも可能であり、これによって、副作用の発生またはその重篤度を抑制することができる。
【0115】
「投与」の用語は、単一の患者への組み合わせパートナーの共投与に関連し、これらの剤が必ずしも同じ投与経路または同時に投与されるものではない治療レジメンを含むことが意図される。従って、組み合わせパートナー(a)および(b)は、一緒に、順に、または別々に、1つの組み合わせた単位剤形で、または2つの別々の単位剤形で投与してよい。単位剤形はまた、パートナー(a)(またはその塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグ)およびパートナー(b)の両方を含む医薬組成物などの固定された組み合わせであってもよい。
【0116】
特に、本発明の組み合わせの組み合わせパートナーの各々の治療効果量は、同時に、またはいずれの順番でもよい順次にて投与してよく、成分は、別々に、または固定された組み合わせとして投与してもよい。例えば、本発明に従う増殖性疾患を予防または治療する方法は:(i)遊離の形態または薬理学的に許容される塩の形態のパートナー(a)の投与;および(ii)遊離の形態または薬理学的に許容される塩の形態のパートナー(b)の投与を、同時に、またはいずれの順番でもよい順次に、本明細書で述べる量に対応する一日投与量または間欠投与量を例とする、合わせての治療効果量、好ましくは相乗効果量にて行うことを含んでよい。本発明の組み合わせの個々の組み合わせパートナーは、治療の過程での異なる時点にて別々に投与してよく、または分割された、もしくは単一の組み合わせの形態で同時に投与してもよい。さらに、投与するという用語はまた、インビボにて組み合わせパートナー自体に変換される組み合わせパートナーのプロドラッグの使用も包含する。本発明は、従って、そのような同時または交互治療のレジメンすべてを包含するものとして理解されるべきであり、「投与する」の用語は、それに応じて解釈されるべきである。
【0117】
従って、組み合わせパートナーは、増殖性疾患の治療(例:腫瘍治療)に用いるために、「各部分のキット」として提供してよいことは理解されるであろう。キットは、組み合わせパートナーが、特定の治療での使用についての説明書と共に、共投与用に別々に提供されるパッケージを含んでよい。
【0118】
本発明の組み合わせに用いられる各組み合わせパートナーの効果用量は、用いられる特定の化合物もしくは医薬組成物、投与モード、治療される病態、治療される病態の重症度、に応じて様々であり得る。従って、本発明の組み合わせの投与レジメンは、投与経路、ならびに患者の腎および肝機能を含む種々の因子に従って選択される。当業者である医師であれば、病態進行の軽減、阻止、または停止に要する単一の活性成分の効果量を容易に決定し、処方することができる。
【0119】
組み合わせパートナー(a)および(b)の1日量は、当然、選択された化合物、治療される特定の病態、および所望される効果を例とする種々の因子に応じて様々である。しかし、一般的には、剤(a)の投与を、単一用量または分割用量として、1日あたり約0.05から20mg/kg、特には1日あたり1から20mg/kg、例えば1日あたり0.4から16mg/kgの1日投与率で行うことにより、満足の行く結果が得られる。組み合わせパートナー(a)および(b)は、従来のいずれの経路で投与してもよく、特には、例えば錠剤、カプセル剤、飲用溶液剤(drink solutions)の形態による経口を例とする経腸投与であり、または例えば注射溶液もしくは懸濁液の形態による非経口投与である。経口投与用の適切な単位剤形は、約0.02から50mgの活性成分を、1もしくは2つ以上の薬理学的に許容されるその希釈剤またはキャリアと共に含み、通常は、0.1から30mg、および2から25mg、4から20mgの例えば組み合わせパートナー(a)または(b)である。
【0120】
組み合わせパートナー(b)は、0.5から1000mgの範囲の1日量でヒトに投与してよい。経口投与用の適切な単位剤形は、約0.1から500mgの活性成分を、1もしくは2つ以上の薬理学的に許容されるその希釈剤またはキャリアと共に含み、好ましくは、5〜50mg/日、より好ましくは5〜20mg/日、最も好ましくは約7〜12mg/日である。既知のmTOR阻害剤を送達するための方法および投与レジメンは、当業者には公知であろう。
【0121】
例えば、投与レジメンは、指定された用量レベルのTPI(例:式IIIの化合物)を、第1日および8日(21日サイクル中)に静脈内投与で添加し、mTOR阻害剤は、経口1日量(例:約10mg/日)として投与することを含んでよい。本態様によれば、式(III)の化合物は、4から16mg/mのレベルで投与してよい。
【0122】
本発明の医薬組み合わせの投与では、例えば腫瘍成長の阻止に関する、付加的または相乗的治療効果を例とする有益な効果が得られるだけでなく、さらなる驚くべき有益な効果も得られ、例えば、本発明の組み合わせに用いられる薬理活性成分の1つのみを適用する単独療法と比較しての、副作用の減少、クオリティオブライフの改善、または罹患率の低下である。
【0123】
さらなる有益性は、本発明の組み合わせに用いられる活性成分の用量を減少させることができるということであり、例えば、用量を減少させることが多くの場合必要であるだけでなく、投与頻度を下げても適用され、または用量減少によって、副作用の発生を抑制することができるということである。このことは、治療を受ける患者の所望、要求に従うものである。
【0124】
パートナー(a)および(b)の組み合わせは、独立して、または一緒に、1もしくは2つ以上の薬理学的に許容されるキャリアと、および所望により1もしくは2つ以上のその他の従来の医薬補助剤と組み合わせてよく、投与は、錠剤、カプセル剤、カプレット剤などの形態での経口投与を例とする経腸投与、または、滅菌注射溶液もしくは懸濁液の形態での腹腔内または静脈内投与を例とする非経口投与によって行なってよい。経腸および非経口用組成物は、従来の手段によって作製することができる。
【0125】
本発明に従う組み合わせパートナー(a)およびパートナー(b)を別々に投与するための、または固定された組み合わせ(すなわち、組成物)で投与するための医薬組成物は、本技術分野で公知の方法で作製することができ、哺乳類(恒温動物)、特にヒトへの経口または直腸内などの経腸投与、および非経口投与に適するものであり、例えば上述したように、少なくとも1つの薬理活性組み合わせパートナーのみの治療効果量を含むか、またはそれを、特に経腸もしくは非経口投与に適する1つ以上の薬理学的に許容されるキャリア、もしくは希釈剤と組み合わせて含む。
【0126】
適切な医薬組成物は、例えば、約0.1%から約99.9%、好ましくは約1%から約60%の1もしくは複数の活性成分を含有する。
【0127】
組成物は、適切ないずれのキャリア、希釈剤、または賦形剤を含有してもよい。これらには、すべての従来の溶媒、分散媒、充填剤、固体キャリア、コーティング、抗真菌および抗菌剤、皮膚浸透剤、界面活性剤、等張および吸収剤などが含まれる。本発明の組成物はまた、その他の補助生理活性剤も含んでよいことは理解されるであろう。
【0128】
キャリアは、組成物の他の成分と適合し、対象に対して有害ではないという意味で、薬理学的に「許容される」ものでなければならない。組成物は、経口、直腸内、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、経膣、または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、および皮内を含む)投与に適するものを含有する。組成物は、都合よく単位剤形として提供することができ、製薬分野で公知のいかなる方法で作製してもよい。そのような方法は、活性成分を、1もしくは2つ以上の副成分を構成するキャリアと接触させることを含む。一般的に、組成物は、活性成分と、液体キャリアまたは微細に粉砕した固体キャリアまたはその両方とを、均一におよび密接に接触させ、その後必要に応じて生成物を成形することによって作製される。
【0129】
経口投与に適する本発明の組成物は、各々が所定量の活性成分を含有するカプセル剤、サッシェ剤、もしくは錠剤などの別々の単位として;粉末剤もしくは顆粒剤として;水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として;または、水中油型液体エマルジョンもしくは油中水型液体エマルジョンとして提供してよい。活性成分はまた、ボーラス剤、舐剤、またはペースト剤として提供してもよい。
【0130】
錠剤は、圧縮または成型により、所望により1もしくは2つ以上の副成分と共に作製することができる。圧縮錠剤は、粉末または顆粒などの易流動性の形態の活性成分を、所望によりバインダー(例:不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例:デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性または分散剤と混合して、適切な機械で圧縮することによって作製することができる。成型錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤された粉末化配合物の混合物を、適切な機械で成型することによって作製することができる。錠剤は、所望により、コーティングまたは刻印入れを行ってよく、および、その中の活性成分の徐放または放出制御が得られるように製剤してもよく、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを種々の比率で用いることで所望される放出プロファイルが提供される。錠剤は、所望により、胃以外の腸の一部で放出が行われるように、腸溶コーティングを備えていてもよい。
【0131】
口腔内の局所投与に適する組成物としては、通常はスクロースおよびアカシアもしくはトラガントガムである香味ベースに活性成分を含むロゼンジ剤;ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアラビアガムなどの不活性ベースに活性成分を含むパステル剤;ならびに、適切な液体キャリアに活性成分を含む口腔洗浄剤が挙げられる。
【0132】
皮膚への局所投与に適する組成物は、適切ないずれかのキャリアまたはベースに溶解または懸濁された化合物を含んでよく、ローション、ジェル、クリーム、ペースト、軟膏などの形態であってよい。適切なキャリアとしては、ミネラル油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、乳化ワックス、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2‐オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が挙げられる。経皮パッチも、本発明の化合物の投与に用いてよい。
【0133】
直腸内投与用の組成物は、例えばカカオバター、グリセリン、ゼラチン、またはポリエチレングリコールを含む適切なベースを有する坐薬として提供してよい。
【0134】
膣内投与に適する組成物は、活性成分に加えて、本技術分野にて適切であることが公知であるキャリアを含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ジェル、ペースト、フォーム、またはスプレー製剤として提供してよい。
【0135】
非経口投与に適する組成物は、抗酸化剤、バッファー、殺菌剤、および組成物を意図されるレシピエントの血液と等張性にする溶質、を含有してよい水性および非水性等張性滅菌注射溶液;ならびに、懸濁剤および増粘剤を含有してよい水性および非水性滅菌懸濁液を含む。組成物は、アンプルおよびバイアルを例とするユニットドーズまたはマルチドーズ密封容器で提供してよく、使用の直前に注射用水を例とする滅菌液体キャリアを添加するだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存してもよい。即時注射溶液および懸濁液は、既述した種類の滅菌粉末、顆粒、および錠剤から作製することができる。
【0136】
好ましい単位用量組成物は、活性成分の、本明細書にて上述した1日量、もしくは単位1日サブ用量、またはその適切な画分を含有するものである。
【0137】
上記で特に述べた活性成分に加えて、本発明の組成物は、対象となる組成物の種類を考慮して本技術分野における従来のその他の剤を含んでよいことは理解されるべきであり、例えば、経口投与に適するものである場合、バインダー、甘味剤、増粘剤、香味剤、崩壊剤、コーティング剤、保存剤、滑沢剤、および/または遅延剤などのさらなる剤を含んでよい。適切な甘味剤としては、スクロース、ラクトース、グルコース、アスパルテーム、またはサッカリンが挙げられる。適切な崩壊剤としては、トウモロコシデンプン、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸、またはカンテンが挙げられる。適切な香味剤としては、ペッパーミントオイル、シラタマノキのオイル、チェリー、オレンジ、またはラズベリー香料が挙げられる。適切なコーティング剤としては、アクリル酸および/もしくはメタクリル酸および/もしくはこれらのエステルのポリマーまたはコポリマー、ワックス、脂肪アルコール、ゼイン、シェラック、またはグルテンが挙げられる。適切な保存剤としては、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、アルファ‐トコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、または亜硫酸水素ナトリウムが挙げられる。適切な滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、またはタルクが挙げられる。適切な遅延剤としては、グリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレートが挙げられる。
【0138】
当業者であれば、本明細書で述べる本発明は、具体的に述べた事項以外の変形および改変が可能であることは理解されるであろう。本発明は、その趣旨および範囲に含まれるそのような変形および改変のすべてを含むと理解されるべきである。本発明はまた、本明細書にて個々にもしくはまとめて言及または示唆された工程、特徴、組成物、および化合物のすべて、ならびに前記の工程または特徴のいずれか2もしくは3つ以上のあらゆる組み合わせも含む。
【0139】
本発明の特定の態様を、単なる例示の目的であり、上述した普遍性の範囲を限定することを意図するものではない以下の実施例を参照して、これから説明する。
【実施例】
【0140】
合成プロトコル
2‐ブロモ‐7‐アセトキシ‐3‐(3,4,5‐トリメトキシベンゾイル)‐6‐メトキシベンゾフランの製造
【0141】
【化6】

【0142】
工程1:2‐t‐ブチルジメチルシリル‐3‐(t‐ブチルジメチルシリルオキシメチレン)‐6‐メトキシ‐7‐イソプロポキシベンゾフラン(ラロックカップリング(Larock coupling))
乾燥ジメチルホルムアミド(5mL)中の2‐イソプロポキシ‐3‐メトキシ‐5‐ヨードフェノール(4.41mmol)、1‐(tert‐ブチルジメチルシリル)‐3‐(tert‐ブチルジメチルシリルオキシ)プロピン(1.5g、5.28mmol)、塩化リチウム(189mg、4.45mmol)、および炭酸ナトリウム(2.34g、22.08mmol)の懸濁液を、100℃にて、窒素の排気と再充填により脱酸素を4回行った。酢酸パラジウム(135mg、0.60mmol)を添加し、反応容器を窒素で2回脱気した。次に、反応混合物をこの温度にて4時間(tlc)攪拌し、真空蒸留によって溶媒を除去した。残渣を酢酸エチル(75mL)に溶解し、よく攪拌し、ろ過し、トリエチルアミン(5mL)で処理した。この溶液をシリカゲル(10g)上へ濃縮し、フラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル、溶離液=ヘキサン/ジエチルエーテル/トリエチルアミン;95:5:1%)で精製して、表題の化合物を黄色オイルとして得た(1.45g、96%);H NMR(300MHz,CDCl)δ 7.24(d,1H,J=8.45Hz),6.88(d,1H,J=8.47Hz),4.80(s,2H,CH),4.73(m,1H),3.88(s,3H,OMe),1.36(d,6H,J=6.17Hz),0.94(s,9H),0.92(s,9H),0.35(s,6H),0.12(s,6H)。
【0143】
工程2:2‐t‐ブチルジメチルシリル‐3‐ホルミル‐6‐メトキシ‐7‐イソプロポキシベンゾフラン
メタノール(100mL)中の2‐t‐ブチルジメチルシリル‐3‐(t‐ブチルジメチルシリルオキシメチレン)‐6‐メトキシ‐7‐イソプロポキシベンゾフラン(2.69mmol)の溶液へ、濃塩酸(200μL)を添加し、この反応物を30分間(tlcでモニタリング)攪拌し、トリエチルアミン(2mL)で反応停止し、真空蒸留によって溶媒を除去した。残渣をジクロロメタン(20mL)に溶解し、水(10mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、真空下で濃縮し、トルエン(20mL)と共に共蒸留した。粗生成物を乾燥ジクロロメタン(4mL)に溶解し、コリンズ試薬の攪拌溶液(乾燥ジクロロメタン(30mL)中の三酸化クロム(1.01g)、ピリジン(1.65mL))へ添加した。この懸濁液を10分間攪拌し、ろ過し、残渣をジエチルエーテル(20mL)で洗浄した。ろ液をシリカ(10g)上へ濃縮し、フラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル、溶離液=ヘキサン/ジエチルエーテル/トリエチルアミン(90:9:1)で精製して、表題の化合物を淡黄色オイルとして得た(503mg、48%);H NMR(300MHz,CDCl)δ 10.25(s,1H,CHO),7.79(d,1H,J=8.45Hz),6.98(d,1H,J=8.46Hz),4.65(m,1H),3.89(s,3H,OMe),1.35(d,6H,J=6.17Hz),0.97(s,9H),0.45(s,6H)。
【0144】
工程3:2‐t‐ブチルジメチルシリル‐3‐(3,4,5‐トリメトキシベンゾイル)‐6‐メトキシ‐7‐イソプロポキシベンゾフラン
乾燥テトラヒドロフラン(1mL)中の3,4,5‐トリメトキシヨードベンゼン(377mg、1.27mmol)の攪拌溶液へ、窒素下、−78℃にて、n‐ブチルリチウム(795μL、1.59mmol、シクロヘキサン中の2M溶液)を添加し、この反応混合物をこの温度にて40分間攪拌した。この後、乾燥テトラヒドロフラン(1mL)中の2‐t‐ブチルジメチルシリル‐3‐ホルミル‐6‐メトキシ‐7‐イソプロポキシベンゾフラン(1.07mmol)の溶液を、この反応物へシリンジピペットにより滴下した。この反応混合物を−60℃にて20分間攪拌し、次に0℃まで加温し、10分間攪拌し、飽和塩化アンモニウム溶液(2mL)で反応停止し、酢酸エチル(20mL)で希釈した。有機層を水(10mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、真空下で溶媒を除去することで残渣が得られ、これをトルエンと共に共蒸留した。粗生成物(908mg)を乾燥テトラヒドロフラン(10mL)に溶解し、2,3‐ジクロロ‐5,6‐ジシアノ‐1,4‐ベンゾキノン(900mg、1.59mmol)を添加して処理した。この反応混合物を室温にて16時間(tlcでモニタリング)攪拌し、次にシリカ(10g)へ充填し、フラッシュクロマトグラフィ(シリカゲル、溶離液=ヘキサン/ジエチルエーテル/トリエチルアミン、90:9:1)で精製して、表題の化合物を淡黄色オイルとして得た(498mg、69%);H NMR(300MHz,CDCl)δ 7.14(s,2H,ベンゾイル Hs),6.81(d,1H,J=8.64Hz),6.77(d,1H,J=8.64Hz) 4.74(m,1H),3.93(s,3H,OMe),3.86(s,3H,OMe),3.78(s,6H,2×OMe),1.39(d,6H,J=6.14Hz),1.01(s,9H),0.26(s,6H)。
【0145】
工程4:2‐(tert‐ブチルジメチルシリルオキシ)‐7‐アセトキシ‐3‐(3,4,5‐トリメトキシベンゾイル)‐6‐メトキシベンゾフラン
乾燥DCM(2mL)中の2‐(t‐ブチルジメチルシリルオキシ)‐7‐イソプロポキシ‐3‐(3,4,5‐トリメトキシベンゾイル)‐6‐メトキシ‐ベンゾフラン(160mg、0.31mmol)の攪拌溶液へ、窒素下、室温にて、固体三塩化アルミニウム(83mg、0.62mmol)を添加し、この反応混合物を15分間(tlcでモニタリング)攪拌した。この反応物を、飽和塩化アンモニウム溶液で反応停止し、ジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を留去し、トルエンとの共沸によって水を除去して、残渣を乾燥させた。粗生成物をピリジン(2mL)に溶解し、無水酢酸(1mL)を添加し、反応混合物を室温にて2時間攪拌した。溶媒を真空留去し、残渣をシリカゲル(1g)へ充填し、カラムクロマトグラフィ(シリカゲル、溶離液 ヘキサン:ジエチルエーテル;80:20)で精製した(134mg、84%);H NMR(300MHz,CDCl)δ 7.14(s,2H,ベンゾイル Hs),6.98(d,1H,J=8.72Hz),6.85(d,1H,J=8.72Hz),3.93(s,3H,OMe),3.86(s,3H,OMe),3.80(s,6H,2×OMe),2.41(s,3H),0.99(s,9H),0.25(s,6H)。
【0146】
工程5:2‐ブロモ‐7‐アセトキシ‐3‐(3,4,5‐トリメトキシベンゾイル)‐6‐メトキシベンゾフラン
1,2‐ジクロロエタン(1mL)中の2‐t‐ブチルジメチルシリル‐7‐アセトキシ‐3‐(3,4,5‐トリメトキシベンゾイル)‐6‐メトキシベンゾフラン(120mg、0.44mmol)の攪拌溶液へ、窒素下、室温にて、臭素(12μl、0.44mmol)を滴下し、この反応混合物をこの温度にて10分間攪拌した。この後、反応物を、飽和チオ硫酸ナトリウム溶液で反応停止し、酢酸エチル(20mL)で抽出し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、溶媒を真空留去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶離液=ヘキサン:ジエチルエーテル;8:2〜7:3)で精製して、表題の化合物を無色結晶固体として得た(91mg、81%);H NMR(300MHz,CDCl)δ 7.40(d,1H,J=8.70Hz),7.14(s,2H,ベンゾイル‐Hs),6.98(d,1H,J=8.75Hz),3.94(s,3H,OMe),3.89(s,3H,OMe),3.86(s,6H,2×OMe),2.43(s,3H);13C NMR(75MHz,CDCl)δ 187.95(CO),167.71,152.75,149.54,147.49,142.59,131.92,131.80,123.91,121.84,119.89,117.72,109.89,106.92,60.69,56.61,56.00,20.09。
【0147】
実施例1
2‐メチル‐7‐ヒドロキシ‐3‐(3,4,5‐トリメトキシベンゾイル)‐6‐メトキシベンゾフランの製造
【0148】
【化7】

【0149】
製造法A
1,4‐ジオキサン(2mL)中の2‐ブロモ‐7‐アセトキシ‐3‐(3,4,5‐トリメトキシベンゾイル)‐6‐メトキシベンゾフラン(20mg、0.042mmol)、メチルボロン酸(40mg、0.67mmol)の攪拌溶液へ、90℃にて、テトラキス‐トリフェニルホスフィンパラジウム(11mg、0.01mmol)を添加し、続いて蒸留水(0.5mL)中の炭酸水素ナトリウム(40mg、0.48mmol)の溶液を添加した。この反応混合物は5分後に赤色に変色した。2時間後(tlc)、この反応混合物を室温まで戻し、飽和塩化アンモニウム(2mL)を添加し、ジクロロメタン(20mL)で希釈した。有機層を分離し、水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、溶媒を真空留去した。残渣をPTLC(溶離液=ジクロロメタン/メタノール、1:1)で精製して、表題の化合物(反応の過程でアセテートが開裂)を綿毛状白色固体として得た;(3mg、19%)。
【0150】
製造法B(根岸カップリング)
乾燥THF(1.5mL)中の臭化亜鉛(592mg、2.63mmol)の攪拌溶液へ、0℃にて、メチルリチウムの溶液(ジエチルエーテル中の1.6M溶液、2.6mL、4.15mmol)を添加し、この反応混合物を2時間攪拌した。固体の2‐ブロモ‐7‐アセトキシ‐3‐(3,4,5‐トリメトキシベンゾイル)‐6‐メトキシベンゾフラン(300mg、0.63mmol)を添加し、真空下でエーテルを除去し、残りの懸濁液へ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム触媒(21mg)および触媒量のヨウ化銅(I)を添加した。この反応混合物を室温にて36時間(tlcでモニタリング)攪拌し、飽和塩化アンモニウム溶液で反応停止し、ジクロロメタン(10mL)で抽出し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、溶媒を真空留去し、生成物を、シリカゲルカラム(溶離液=ヘキサン/酢酸エチル;8:2)で精製した。生成物をメタノールで結晶化した(106mg、46%);H NMR(300MHz,CDCl)δ 7.09(s,2H,ベンゾイル Hs),6.93(d,1H,J=8.54Hz),6.83(d,1H,J=8.56Hz),5.70(bs,1H,OH),3.93(s,3H,OMe),3.92(s,3H,OMe),3.83(s,6H,2×OMe),2.54(s,3H,2‐Me)。
【0151】
実施例2
6‐メトキシ‐2‐メチル‐3‐(3,4,5‐トリメトキシベンゾイル)ベンゾフラン‐7‐イルリン酸二ナトリウムの製造
【0152】
【化8】

【0153】
工程1:ジベンジル6‐メトキシ‐2‐メチル‐3‐(3,4,5‐トリメトキシベンゾイル)ベンゾフラン‐7‐イルリン酸:
無水アセトニトリル2.5ml中の0.081g(0.22mmol)の(7‐ヒドロキシ‐6‐メトキシ‐2‐メチルベンゾフラン‐3‐イル)(3,4,5‐トリメトキシフェニル)メタノン、0.086g(0.261mmol)の四臭化炭素、および0.063ml(0.283mmol)の亜リン酸ジベンジルの混合物に、0.046mlの無水トリエチルアミンを、窒素雰囲気下、0℃にて滴下した。得られた混合物を室温にて2時間攪拌し、次に酢酸エチルで20mlに希釈し、鹹水で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、ろ過し、減圧下にて蒸発乾固させた。残渣を、フラッシュカラムクロマトグラフィ(ジクロロメタン/酢酸エチル、9:1)で精製して、無色フォームとして表題の化合物を得た(0.13g、94%);H NMR(CDCl)δ 2.42(s,3H,Me‐2);3.83(s,1H,OMe);3.93(s,3H,OMe);5.33(m,4H,CHPh);6.89(d,芳香族CH,J=8.7Hz);7.21(dd,1H,芳香族CH,J=8.72Hz;J=1.2Hz);7.08(s,2H,芳香族CH);7.29‐7.43(m,10H,芳香族CH)。
【0154】
工程2:6‐メトキシ‐2‐メチル‐3‐(3,4,5‐トリメトキシベンゾイル)ベンゾフラン‐7‐イルリン酸二ナトリウム:
無水アセトニトリル1ml中の0.122g(0.193mmol)の工程1からの生成物の攪拌溶液に、0.075ml(0.58mmol)のブロモトリエチルシランを、窒素雰囲気下、−5℃にて添加した。得られた混合物を0℃にて1時間攪拌し、次に真空蒸発乾固させた。この残渣を無水メタノールで5mlに希釈し、ナトリウムメトキシドを添加することで溶液のpHを約10まで引き上げた。得られた混合物を減圧下で蒸発させた後、固体残渣を無水イソプロパノール(4×1.5ml)および無水エタノール (3×1.5ml)で洗浄し、真空乾燥させて、無色固体として表題の化合物0.062g(収率65%)を得た;H NMR(DO)δ 2.37(s,3H,Me‐2);3.76(s,6H,OMe);3.79(s,3H,OMe);3.82(s,3H,OMe);4.66(s,HO);6,93(d,1H,芳香族CH,J=8.6Hz);7.04(d,1H,芳香族CH,J=8.6Hz);7.10(s,2H,芳香族CH)。
【0155】
生物学的データ
(A)(i)組み合わせパートナー(a)に関するインビトロ研究
表1:化合物に関するインビトロデータ:これらは、スルホローダミンB(SRB)またはSystmex細胞カウント(CC)アッセイを用いた、化合物の成長阻害研究の結果である。IC50は、正味の細胞成長を50%阻害するのに要する濃度である。
【0156】
【表2−1】

【表2−2】

【表2−3】

【表2−4】

【表2−5】

【表2−6】

【表2−7】

【表2−8】

【表2−9】

【表2−10】

特に断りのない限り、癌細胞株はMCF‐7である。
癌細胞株は、MDA‐MB‐231である。
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC) 腫瘍型活性化内皮細胞(Tum)および正常無活動型内皮細胞(Norm)
【0157】
生物学的実験の全般的な説明
チューブリン重合アッセイ: チューブリン重合阻害アッセイは、蛍光系検出キット(#BK011、サイトスケルトン(Cytoskeleton))を用い、製造元の説明書に従って行った。試験化合物を、1×バッファー1(バッファー1:80mM ピペラジン‐N,N’‐ビス[2‐エタンスルホン酸]セキナトリウム塩(sequisodium salt);2mM 塩化マグネシウム;0.5mM エチレングリコール‐ビス(b‐アミノ‐エチルエーテル)N,N,N’,N’‐四酢酸、pH6.9、10uM 蛍光レポーター)中に20% グリセロールおよび1mM GTPを含有する2mg/mlのチューブリン溶液へ添加した。蛍光を、1分間隔、42分間にわたって測定した。蛍光の増加は、チューブリン重合の増加を示す。モノマーチューブリンサブユニットと比較して、重合したチューブリンに対する蛍光レポーターの親和性は、10倍大きい。結果は、チューブリン重合に密接して従う蛍光シグナルである。
【0158】
増殖アッセイ−無活動内皮: ヒト臍帯静脈内皮細胞(CC‐2519、クロネティクス(Clonetics))を、96ウェルプレート中のEBM2(CC‐3156、クロネティクス)+0.5%FBS(CC‐4101A、クロネティクス)+GA‐1000(CC‐4381A、クロネティクス)へ、15000細胞/ウェルにて播種し、3つの反復サンプルを作製した。細胞を、37℃、5%COにて一晩培養した。続いて、培地を、化合物またはネガティブコントロールを含む新しい培地に置換した。細胞を48時間培養した。MTTアッセイを行い、細胞数の変化を測定した。簡潔に述べると、20μlのMTT試薬を、100μlのEBM2+0.5%FBSを含む細胞に添加し、37℃にて2時間インキュベートした。吸光度は492nmにて測定した。
【0159】
増殖アッセイ−活性化内皮: ヒト臍帯静脈内皮細胞(CC‐2519、クロネティクス)を、96ウェルプレート中のEGM2(CC‐3162、クロネティクス)へ、2500細胞/ウェルにて播種し、3つの反復サンプルを作製した。細胞を、37℃、5%COにて一晩培養した。続いて、培地を、化合物またはネガティブコントロールを含む新しい培地に置換した。細胞を48時間培養した。MTTアッセイを行い、細胞数の変化を測定した。簡潔に述べると、20μlのMTT試薬を、100μlのEGM2を含む細胞に添加し、37℃にて2時間インキュベートした。吸光度は492nmにて測定した。
【0160】
(ii) 組み合わせパートナー(a)に関するインビボ研究
血管破壊アッセイ: メス胸腺欠損BALB/c‐nu/nuマウス(ヌードマウス)を本研究に用いた。マウスは6〜8週齢であり、アニマルリソースセンター(Animal Resource Centre),パース,ウェスタンオーストラリア州、から購入し、数日間馴化させた。すべての動物は無病原菌条件下にて飼育し、サウスオーストラリア州のフリンダーズ大学(Flinders University)およびNH&MRCのガイドライン、ならびに科学的目的のための動物の管理および使用のためのオーストラリア実務規範(Australian Code of Practice for the care and use of animals for scientific purposes)に従って管理した。ヒト乳癌MDA MB 231を、ヌードマウスの乳腺脂肪体にて同所性異種移植片として成長させた。各マウスに対して、乳腺脂肪体のすぐ上部、右前肢の下部に、50μlのダルベッコPBS中2×10の細胞を皮下注射した。腫瘍は、直径100〜150mmに達した時(移植後3週間)に、処理用に選択した。試験化合物(実施例2)を生理食塩水に溶解し、総体積400ul、150mg/kg〜1mg/kgの範囲の濃度にて静脈内注射した。腫瘍を有する動物には、試験化合物注射の24時間後に、10mg/kg Hoechst33342を静脈内注射した。Hoechst33342注射の1分後に動物を安楽死させた。腫瘍を組織化学的分析のために回収した。腫瘍の全断面にわたるHoechst33342の染色量を評価することにより、腫瘍灌流分析を行った。凍結した腫瘍生検の10ミクロン片を、紫外光フィルター下にて観察した。4×対物レンズを用い、腫瘍片の全領域が表されるように8ビット単色画像を連続して取り込んだ。単色画像の共通領域を重ね合わせることにより、全腫瘍片のコンポジット画像を作成した。同じ腫瘍片のヘマトキシリンおよびエオシン‐Y染色を行い、非腫瘍領域を認識した。非腫瘍領域を、Hoechst33342コンポジット画像上でマッピングし、定量分析から除外した。Hoechst33342染色のピクセル領域および腫瘍領域の全ピクセル領域を測定することによって定量を行った。灌流は、全腫瘍領域に対するHoechst33342染色領域のパーセントで表した(図4参照)。
【0161】
腫瘍成長阻害: MDA‐MB‐231固形同所性腫瘍を有するBalb/c nu/nuマウスを、実施例2の化合物の40mg/kgで処理した。動物には、実施例2の処理を合計2サイクル、静脈内投与によって行った。各サイクルは、8日間の投与、およびこれに続く3週間の非投与期間とした。初期腫瘍体積に対する比として表される腫瘍成長を、合計で72日間にわたって示す。
【0162】
腫瘍の成長ならびに動物の健康状態を、処理の第1日の後、72日間までモニタリングした。本実験で見られる結果(図5参照)は、2サイクルの実施例2で処理した動物における腫瘍成長阻害を明らかに示している。実施例2処理動物(n=64)および媒体処理動物(n=20)の間での腫瘍成長の有意差が、第4日という早い段階から(p<0.001;独立t検定;Prism(登録商標)分析)第70日までの間にわたって観察された。
【0163】
(B)(i)(a)および(b)の組み合わせについてのインビトロ研究
チューブリン標的VDA剤の前臨床評価から、これらの化合物が、腫瘍の血流を破壊し、腫瘍の低酸素および壊死を増加させることができることが実証された。このような効果は、動物モデルにおいて腫瘍成長のある程度の低減をもたらす。VDA作用に起因する血管損傷からの腫瘍の回復は、処理後の48時間以内に発生する。さらに、血管破壊は、腫瘍カプセルを取り囲み、VDA作用の影響を受けていない正常血管によって支持されていると思われる腫瘍塊の外側細胞周縁部(outer cellular rim)を残してしまう。この生存した周縁部が、やがて腫瘍の血管再生およびVDA剤の作用からの回復を補助するものであると仮定することは妥当である。発明者らは、VDA作用の効果からの腫瘍の回復は、癌細胞の生存および血管新生の誘発を補助する分子経路によって引き起こされているものと仮定した。発明者らは、数多くの組織学的分析を行って、腫瘍微小環境の成分の完全性に対する実施例2に起因する損傷を評価し、腫瘍回復に関与している可能性の高いタンパク質の上方制御の情報を得た。発明者らの分析には、VEGF、リン酸化mTOR、低酸素誘導因子1アルファ(Hif‐1α)、および低酸素誘導因子2アルファ(Hif‐2α)の発現、アポトーシスのレベル、内皮細胞の完全性、ならびに基底膜タンパク質ラミニンの評価が含まれていた。発明者らの観察から、実施例2による処理の24〜30時間後に、腫瘍内皮細胞の破壊の証拠となる内皮細胞マーカーおよびCD31での染色の減少、ならびに基底膜完全性の分解の証拠であるラミニン染色の著しい低下が発生していることが示される。さらに、発明者らの分析より、腫瘍内でのアポトーシス細胞数の著しい増加が示された。最も重要なことには、抗ヒトVEGF抗体での染色の劇的な増加が明らかであった。矢印で示される生存周縁部領域付近でのリン酸化mTOR(ser2448)、Hif‐1α、およびHif‐2αの発現の増加、ならびに壊死領域での内皮細胞の喪失(図3で矢印で示される)が、実施例2で処理した腫瘍で見られる。
【0164】
実施例2誘発の壊死腫瘍領域を取り囲む生存周縁部でのリン酸化mTORの上方制御という新規な発見から、実施例2(および同様のTPI剤)による処理をmTORタンパク質の阻害剤と組み合わせることにより、長期間にわたる血管遮断効果をもたらして腫瘍をより長い間の低酸素に曝露し、それによって腫瘍成長の抑制を高める結果となる相乗効果が示されるという最新の仮説が引き出される。
【0165】
さらに、チューブリン標的剤に固有である癌細胞増殖を抑制するという特性が、このクラスの剤に関する第二の抗癌機構を提供する。発明者らは、実施例2とmTOR阻害剤テムシロリムスとの併用処理を数多くの細胞株に対して行い、インビトロにて癌細胞株増殖を抑制するという付加的効果が得られることを実証した。血管新生誘発という示された役割に加えて、mTORはまた、癌細胞の代謝および生存の重要な推進因子でもある。mTOR阻害剤は、細胞分裂停止を誘発するものであり、多くの癌状態での臨床使用について、数多くが承認されている。従って、チューブリンとmTORを同時に標的とすることは、治療の有益性を向上させる可能性が高い。
【0166】
腫瘍血管支持の破壊および直接の癌細胞増殖の抑制を介する、mTORとTPI剤との考え得る治療併用性という二重モードは、TPIクラスのチューブリン標的化合物に独特のものである。対照的に、DMXAAまたはASA404(5,6‐ジメチルキサンテノン‐4‐酢酸)を例とするVDA活性を有する非TPI剤は、癌細胞に対して抗増殖作用を示さない。
【0167】
免疫組織化学的分析−方法(図3)
6から8週齢のメスBALB/c nu/nuマウスに、腎臓癌を表すヒト癌細胞株Caki‐1を皮下注射した。細胞は、ダルベッコPBS(シグマ‐アルドリッチ)に再懸濁し、5×10細胞を皮下注射した。腫瘍を700mmの平均サイズまで成長させた後に処理を行った。実施例2の処理は、32mg/kgの用量レベルによる単一の静脈内注射から構成した。媒体コントロールとして、生理食塩水処理も含めた。投与の24時間後に動物を安楽死させ、腫瘍を切除して組織学的分析を行った。腫瘍の凍結切片を調製し、リン酸化mTOR(ser2448)、Hif‐1α、Hif‐2α、およびCD31特異的抗体でプローブした。抗体染色は、3,3’‐ジアミノベンジジン(褐色染色)を用いて視覚化し、切片は、マイヤーヘマトキシリンで対比染色した。
【0168】
インビトロ増殖アッセイを用いた実施例2とmTOR阻害剤との組み合わせの評価
ヒト癌細胞株を用いて、実施例2との組み合わせに適する剤の評価を行った。
【0169】
評価する化合物の存在下におけるインビトロでの細胞増殖測定に基づく分析を行った。96ウェルプレートに平均500〜2000細胞/ウェルで細胞を播種し、一晩接着させた後、試験化合物を添加した。細胞増殖は、試験物質の存在下での培養を48〜72時間行ったのちに評価した。細胞の処理は、実施例2と評価する化合物との組み合わせ、またはこれらの剤各々の単独で行った。テトラゾリウムに基づく比色アッセイ(MTS)によって増殖測定を行った。代謝活性細胞は、CellTiter96(登録商標)Aqueous One Solution(プロメガ社(Promega Corp.),マジソン,ウィスコンシン州,米国)を用い、製造元の説明書に従って測定し、吸光度は492nmで読み取った。各化合物濃度での吸光度の読み取りは、対応する媒体コントロール培養物に対して標準化した。用量反応S字曲線をデータにフィットさせ、増殖が50%低減された濃度を、Graph Pad Prism4ソフトウェア(サンディエゴ,米国)を用いて算出した。
【0170】
組み合わせ指数値
ヒト癌細胞株(細胞株リスト:Caki‐1、A498、Calu‐6、SKOV‐3、A4549)を用いて、インビトロでの併用処理の評価を行った。細胞を、実施例2およびテムシロリムスにより72時間同時に処理し、単一剤および組み合わせの両方からのED50ならびにED75データを、定量ソフトウェアCalcuSynを用いて分析し、組み合わせ指数(CI)、および相乗効果あり、付加効果あり、または付加効果なしの組み合わせとして分類される効果を決定した(Chou TC. Theoretical basis, experimental design, and computerized simulation of synergism and antagonism in drug combination studies. Pharmacol Rev.2006 Sep;58(3):621-81)。結果を図2に表として示す。
【0171】
細胞培養物および細胞株
癌細胞株には、Calu‐6、A549、A498、Caki‐1、およびSk‐OV‐3(ATCC,マナサス,バージニア州,米国)を含めた。Calu‐6細胞は、10% FCS、2mM ペニシリン‐ストレプトマイシン‐グルタミン(Gibco(登録商標))、10mM ヘペス緩衝溶液(Gibco(登録商標))、1mM ピルビン酸ナトリウム溶液(Gibco(登録商標))、および0.1mM 非必須アミノ酸溶液(Gibco(登録商標))を含有するMEM培地(Gibco(登録商標))で培養した。SK‐OV‐3細胞は、10% FCS、2mM ペニシリン‐ストレプトマイシン‐グルタミン、および10mM ヘペス緩衝溶液を含有するDMEM/F12(Gibco(登録商標))培地で培養した。A549細胞は、10% FCSおよび2mM ペニシリン‐ストレプトマイシン‐グルタミンを含有するF12K(Gibco(登録商標))培地で培養した。A498細胞は、10% FCSおよび2mM ペニシリン‐ストレプトマイシン‐グルタミンを含有するMEM培地(Gibco(登録商標))で培養した。Caki‐1細胞は、0% FCSおよび2mM ペニシリン‐ストレプトマイシン‐グルタミンを含有するMcCoys 5a(Gibco(登録商標))培地で培養した。
【0172】
インビボ(マウス)アッセイを用いた実施例2とmTOR阻害剤との組み合わせの評価
6から8週齢のメスBALB/c nu/nuマウスに、腎臓癌由来のヒト細胞株caki‐1を皮下接種し、固形腫瘍を発生させた。腫瘍を150mmの平均サイズまで成長させた後、処理を開始した。腫瘍体積(単位は立方ミリメートル)を、週に2から3回測定した。動物には、28日サイクルの第1日および第8日に、実施例2を32mg/kgで静脈内投与し、および/または1週間サイクルの第2日および第5日に、ラパマイシンを1mg/kgで腹腔内投与した。腫瘍の成長および動物の健康状態を、研究の期間にわたってモニタリングした。
【0173】
腫瘍の成長は、mmでの平均腫瘍体積として表し、媒体処理動物の90%までが依然として生存している時点までグラフで示す。生存率は、依然として生存している動物のパーセントとして示し、研究の終了までのデータを示す。
【0174】
剤のこの投与計画において、単独療法のみ(実施例2またはラパマイシン)、または媒体コントロールと比較して、併用療法のグループ(実施例2+ラパマイシン)では腫瘍体積の減少(図6)および生存率の上昇(図7)の傾向が見られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)チューブリン重合阻害剤および(b)mTOR阻害剤を含む、増殖性疾患を治療するための医薬組み合わせ。
【請求項2】
増殖性疾患を治療する方法であって、それを必要とする患者に、(a)チューブリン重合阻害剤および(b)mTOR阻害剤を投与することを含む、方法。
【請求項3】
増殖性疾患の治療のための医薬の製造における、(a)チューブリン重合阻害剤および(b)mTOR阻害剤の使用。
【請求項4】
(b)mTOR阻害剤と組み合わせて用いられる、増殖性疾患の治療のための医薬の製造における、(a)チューブリン重合阻害剤の使用。
【請求項5】
(a)チューブリン重合阻害剤と組み合わせて用いられる、増殖性疾患の治療のための医薬の製造における、(b)mTOR阻害剤の使用。
【請求項6】
(a)チューブリン重合阻害剤および(b)mTOR阻害剤を含む、医薬組成物。
【請求項7】
前記チューブリン重合阻害剤が、式(Ib)の化合物またはその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組み合わせ、方法、使用または組成物:
【化1】

(式中、
Xは、O、S、SO、SO、Se、SeO、SeO、またはNRを表し、ここで、Rは、H、O、所望により置換されていてよいアシル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいシクロアルケニル、所望により置換されていてよいシクロアルキル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、および所望により置換されていてよいスルホニルから選択され、
1Cは、C1‐3アルコキシを表し、
1Dは、ヒドロキシまたはアミノを表し、
Qは、H、CN、ハロゲン、トリアルキルシリル、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアシル、所望により置換されていてよいオキシアシル、所望により置換されていてよいアシルアミノ、所望により置換されていてよいアミノアシルアミノ、OR’’、SR’’、もしくはNR’’R’’(ここで、R’’は、各々独立して、H、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいアシル、および所望により置換されていてよいオキシアシル)を表すか、または、NR’’’NR’’’(R’’’は、各々独立して、H、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアリール、および所望により置換されていてよいヘテロアリールを表す)を表す)。
【請求項8】
前記チューブリン重合阻害剤が、式(II)の化合物またはその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組み合わせ、方法、使用または組成物:
【化2】

(式中、
1AおよびR1Bは、各々独立して、H、カルボキシ、シアノ、ジハロメトキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、ペンタハロエチル、ホスホリルアミノ、ホスホノ、ホスフィニル、スルホ、トリハロエテニル、トリハロメタンチオ、トリハロメトキシ、トリハロメチル、所望により置換されていてよいアシル、所望により置換されていてよいアシルアミノ、所望により置換されていてよいアシルイミノ、所望により置換されていてよいアシルイミノキシ、所望により置換されていてよいアシルオキシ、所望により置換されていてよいアリールアルキル、所望により置換されていてよいアリールアルコキシ、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルケニルオキシ、所望により置換されていてよいアルコキシ、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアルキニルオキシ、所望により置換されていてよいアミノ、所望により置換されていてよいアミノアシル、所望により置換されていてよいアミノアシルオキシ、所望により置換されていてよいアミノスルホニル、所望により置換されていてよいアミノチオアシル、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいアリールオキシ、所望により置換されていてよいシクロアルケニル、所望により置換されていてよいシクロアルキル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、所望により置換されていてよいオキシアシル、所望により置換されていてよいオキシアシルアミノ、所望により置換されていてよいオキシアシルオキシ、所望により置換されていてよいオキシアシルイミノ、所望により置換されていてよいオキシスルフィニルアミノ、所望により置換されていてよいオキシスルホニルアミノ、所望により置換されていてよいオキシチオアシル、所望により置換されていてよいオキシチオアシルオキシ、所望により置換されていてよいスルフィニル、所望により置換されていてよいスルフィニルアミノ、所望により置換されていてよいスルホニル、所望により置換されていてよいスルホニルアミノ、所望により置換されていてよいチオ、所望により置換されていてよいチオアシル、所望により置換されていてよいチオアシルアミノを表すか、またはR1AおよびR1Bは、
一緒になって、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいシクロアルキル、もしくは所望により置換されていてよいシクロアルケニルを形成し、
1Cは、C1‐3アルコキシ、C1‐3アルキルチオ、C1‐3アルキルアミノ、またはC1‐3ジアルキルアミノを表し、
1Dは、ヒドロキシまたはアミノを表し、
Lは、C=O、O、S、SO、SO、Se、SeO、SeO、C=NZ’、もしくはNR’を表し、ここで、Z’は、H、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアリール、もしくは所望により置換されていてよいアミノであり、かつ、R’は、H、O、所望により置換されていてよいアシル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいシクロアルケニル、所望により置換されていてよいシクロアルキル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、もしくは所望により置換されていてよいスルホニルから選択され、
2A‐R2Eは、各々独立して、H、カルボキシ、シアノ、ジハロメトキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、ペンタハロエチル、ホスホリルアミノ、ホスホノ、ホスフィニル、スルホ、トリハロエテニル、トリハロメタンチオ、トリハロメトキシ、トリハロメチル、所望により置換されていてよいアシル、所望により置換されていてよいアシルアミノ、所望により置換されていてよいアシルイミノ、所望により置換されていてよいアシルイミノキシ、所望により置換されていてよいアシルオキシ、所望により置換されていてよいアリールアルキル、所望により置換されていてよいアリールアルコキシ、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルケニルオキシ、所望により置換されていてよいアルコキシ、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアルキニルオキシ、所望により置換されていてよいアミノ、所望により置換されていてよいアミノアシル、所望により置換されていてよいアミノアシルオキシ、所望により置換されていてよいアミノスルホニル、所望により置換されていてよいアミノチオアシル、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいアリールオキシ、所望により置換されていてよいシクロアルケニル、所望により置換されていてよいシクロアルキル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、所望により置換されていてよいオキシアシル、所望により置換されていてよいオキシアシルアミノ、所望により置換されていてよいオキシアシルイミノ、所望により置換されていてよいオキシアシルオキシ、所望により置換されていてよいオキシスルフィニルアミノ、所望により置換されていてよいオキシスルホニルアミノ、所望により置換されていてよいオキシチオアシル、所望により置換されていてよいオキシチオアシルオキシ、所望により置換されていてよいスルフィニル、所望により置換されていてよいスルフィニルアミノ、所望により置換されていてよいスルホニル、所望により置換されていてよいスルホニルアミノ、所望により置換されていてよいチオ、所望により置換されていてよいチオアシル、所望により置換されていてよいチオアシルアミノ、または所望により置換されていてよいチオア
シルオキシを表すか、または、R2AおよびR2B、R2BおよびR2C、R2CおよびR2D、ならびにR2DおよびR2Eのいずれかが、一緒になって、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいシクロアルキル、もしくは所望により置換されていてよいシクロアルケニルを形成し、ならびに、
Qは、H、CN、ハロゲン、トリアルキルシリル、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアシル、所望により置換されていてよいオキシアシル、所望により置換されていてよいアシルアミノ、所望により置換されていてよいアミノアシルアミノ、OR’’、SR’’、もしくはNR’’R’’(ここで、R’’は、各々独立して、H、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいヘテロシクリル、所望により置換されていてよいアリール、所望により置換されていてよいヘテロアリール、所望により置換されていてよいアシル、および所望により置換されていてよいオキシアシルを表す)を表すか、または、NR’’’NR’’’(ここで、R’’’は、各々独立して、H、所望により置換されていてよいアルキル、所望により置換されていてよいアルケニル、所望により置換されていてよいアルキニル、所望により置換されていてよいアリール、および所望により置換されていてよいヘテロアリールを表す)を表す)。
【請求項9】
前記チューブリン重合阻害剤が、式(III)の化合物またはその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組み合わせ、方法、使用または組成物:
【化3】


【請求項10】
前記式(III)の化合物が、以下の式の化合物である、請求項9に記載の組み合わせ、方法、使用または組成物:
【化4】


【請求項11】
前記mTOR阻害剤が、BEZ235(NVP‐BEZ235)、デフォロリムス(AP23573、MK‐8669)、PI‐103、ラパマイシン(シロリムス、ラパミューン)、テムシロリムス(Toricel、CCI‐779)、エベロリムス(アフィニトール、RAD001、サーティカン)、ABT578、SAR543、およびAP23841から選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組み合わせ、方法、使用または組成物。
【請求項12】
前記mTOR阻害剤がエベロリムスまたはテムシロリムスである、請求項11に記載の組み合わせ、方法、使用または組成物。
【請求項13】
前記mTOR阻害剤がエベロリムスである、請求項11に記載の組み合わせ、方法、使用または組成物。
【請求項14】
前記mTOR阻害剤がラパマイシンである、請求項11に記載の組み合わせ、方法、使用または組成物。
【請求項15】
前記増殖性疾患が、腎臓癌、卵巣癌および肺癌から選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の組み合わせ、方法、使用または組成物。
【請求項16】
前記増殖性疾患が腎臓癌である、請求項15に記載の組み合わせ、方法、使用または組成物。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−502439(P2013−502439A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525817(P2012−525817)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001097
【国際公開番号】WO2011/022772
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(502386053)バイオノミックス リミテッド (13)
【Fターム(参考)】