説明

変位検出装置

【課題】簡易な構成で、ノイズレベルが低く、かつ感度が高い変位検出装置を提供する。
【解決手段】変位(振動)可能に支持された金属層14と、光学ガラス23の表面に設けられた金属層24とが所定のギャップgを介して互いに対向配置されている。発光素子30が所定の位置に固定されており、金属層24の裏面に対して、所定の波長の光を所定の角度θで射出するようになっている。受光素子40は、発光素子30から射出された光のうち反射光を検出するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動部材の変位を電気信号に変換する変位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のマイクロフォンでは、例えば、ダイヤフラムと電極(背極板)とによりコンデンサを構成したコンデンサ型のものや、光反射面を有するダイヤフラムと、光反射面に光を照射する光源と、光反射面で反射した光を検知する受光素子とからなる光学型のものがある。コンデンサ型のマイクロフォンでは、ダイヤフラムと電極との間に直流電圧がかけられており、ダイヤフラムの振動による静電容量の変化がそれに比例した電圧の変化として出力されるようになっている。光学型のマイクロフォンでは、ダイヤフラムの振動による光の変化がそれに比例した電圧の変化として出力されるようになっている(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−355893号公報
【特許文献2】特開2002−218595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のコンデンサ型のマイクロフォンでは、広いダイナミックレンジを実現することが容易ではなかった。そこで、従来では、ノイズレベルを低減するために、音響抵抗を低減したり、ギャップを広げたりすることが行われていた。しかし、音響抵抗を低減すると、ダイヤフラムと背極板との対向面積が小さくなり、それに伴って静電容量も小さくなるので、感度が悪くなってしまうという問題があった。また、ギャップを広げても、静電容量が小さくなるので、上記と同様、感度が悪くなってしまうという問題があった。
【0005】
また、上述の光学型のマイクロフォンでは、ダイヤフラムの振動を光の変化として捕らえるためには、フォーカスサーボ機構が必要であり、システムが複雑になってしまうという問題があった。
【0006】
なお、このような問題は、音響分野だけでなく、ダイヤフラムを利用して変位を検出する分野、例えば、圧力センサや加速度センサの分野においても同様に生じるものである。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成で、ノイズレベルが低く、かつ感度が高い変位検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の変位検出装置は、変位可能に支持された変位部と、変位部の変位に応じて変位部との間隙が変化する位置に配置された金属層を備えたものである。この変位検出装置は、さらに、金属層に向かって光を射出する発光素子と、発光素子から射出された光のうち金属層での反射光を検出する受光素子とを備えている。ここで、変位部は、少なくとも金属層と間隙を介して対向する対向面に、Ni、Fe、Al、Rh、Ti、Hf、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Co、Pd、Pt、あるいはこれらのうち少なくとも1つを含む合金を含んで構成されている。
【0009】
本発明の変位検出装置では、変位可能に支持された変位部のうち、少なくとも金属層と間隙を介して対向する対向面がNi、Fe、Al、Rh、Ti、Hf、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Co、Pd、Pt、あるいはこれらのうち少なくとも1つを含む合金を含んで構成されている。これにより、金属層の変位を反射光の光強度の変化として捉えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の変位検出装置によれば、金属層の変位を反射光の光強度の変化として捉えることができるようにした。これにより、出力信号のノイズレベルを低く抑えることができ、さらに、高感度を実現することができる。また、本発明では、金属層の変位を反射光の光強度の変化として捉える際に、フォーカスサーボ機構などの複雑なシステムを必要としないことから、簡易な構成で、低ノイズレベルおよび高感度を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係る変位検出装置の構成図である。
【図2】図1の変位検出装置の一変形例の構成図である。
【図3】変位部の金属層がNiからなるときの入射角と反射率との関係図である。
【図4】変位部の金属層がAgからなるときの入射角と反射率との関係図である。
【図5】変位部の金属層が種々の金属からなるときのギャップの幅と反射率との関係図である。
【図6】図1の光学ガラスの形状の一例を表す構成図である。
【図7】図1の変位検出装置における、金属層の変位と反射光の光強度の変位との関係図である。
【図8】図1の変位検出装置における、金属層の変位と反射光の光強度の変位との関係図である。
【図9】比較例に係る変位検出装置における、金属層の変位と反射光の光強度の変位との関係図である。
【図10】比較例に係る変位検出装置における、金属層の変位と反射光の光強度の変位との関係図である。
【図11】本発明の一適用例に係るマイクロフォンの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。

1.実施の形態(変位検出装置)
2.適用例(マイクロフォン)
【0013】
<実施の形態>
図1は、本発明の一実施の形態に係る変位検出装置1の概略構成を表したものである。この変位検出装置1は、音、圧力、加速度などを検出することの可能なものであり、例えば、図1に示したように、変位部10、光学素子20、発光素子30および受光素子40を備えている。変位検出装置1は、さらに、受光素子40からの出力信号を処理する信号処理部(図示せず)を備えている。
【0014】
(変位部10)
変位部10は、外部から伝播してきた音や、外部の圧力、変位検出装置1にかけられた加速度によって変位(振動)可能に支持されたものである。変位部10は、例えば、図1に示したように、支持基板11と、金属層12とを含んで構成されており、板状の形状となっている。なお、変位部10は、図示しないが、板状の形状とは異なる形状、例えば、球形状となっていてもよい。また、金属層12が自立できる程度の剛性を有している場合には、変位部10に支持基板11が設けられていなくてもよい。
【0015】
支持基板11は、高分子フィルムや合成樹脂板などによって構成されている。支持基板11は、外部から伝播してきた音や、外部の圧力、変位検出装置1にかけられた加速度に応じた変位が生じるようになっていることが好ましい。
【0016】
金属層12は、支持基板11の、光学素子20側の表面に形成されたものである。金属層12は、支持基板11の表面のうち、少なくとも金属層24(後述)との対向領域に形成されており、例えば、図1に示したように、金属層24との対向領域を含む領域に形成されている。なお、金属層12は、例えば、図2に示したように、金属層24との対向領域にだけ形成されていてもよい。金属層12は、Au、AgまたはCuとは異なる金属材料、例えば、Ni、Fe、Al、Rh、Ti、Hf、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Co、Pd、Pt、あるいはこれらのうち少なくとも1つを含む合金によって構成されている。金属層12は、例えば、蒸着やスパッタリングなどによって成膜されたものである。また、金属層12は、入射光が透過しない十分な厚さ(例えば100nm以上)を持っている。なお、金属層12がNiやステンレスなどからなり、薄くても十分な強度を有し、自立できる程度の剛性を有している場合には、変位部10に支持基板11が設けられていなくてもよい。
【0017】
金属層12の材料として上記の材料を用いた場合には、金属層12の材料としてAu、AgまたはCuを用いた場合と比べて、入射光と表面プラズモンとの結合効率が低く、表面プラズモンが励起し難い。また、金属層12の材料として挙げた上記の材料は、発光素子30の光が臨界角以上の所定の角度θで金属層24に入射したときの反射率がギャップgの幅dの変位に対して直線的に変化するギャップgの幅dの範囲が、変位部10のうち少なくとも金属層24との対向面にAu、AgまたはCuを用いた場合のそれよりも広くなるような材料である。これは、金属層12の材料として上記の材料を用いた場合には、ギャップの広い変化幅において反射率の直線性が良いことを意味している。なお、ギャップgは、空気で満たされていてもよいし、空気以外の気体や液体で満たされていてもよい。
【0018】
ここで、表面プラズモンの励起とは、ある波数で入射した光によって金属層24の表面の自由電子が集団的に振動することを指している。本実施の形態では、表面プラズモンを励起させることで反射光強度が著しく減少する現象を利用する。金属層12と金属層24とのギャップgの幅dのわずかな変化で共鳴状態が変化することから、ギャップgの幅dまたは金属層24の変位(振動)を特定することができる。
【0019】
ギャップgの幅dを変化させることで共鳴状態が変化する。例えば、図3に示したように、金属層12がNiによって構成されている場合には、ギャップgの幅dが小さくなるにつれて、共鳴角が大きくなる。また、例えば、図3に示したように、金属層12がNiによって構成されている場合には、入射角度を固定した上で、ギャップgの幅dを変化させた場合には、ギャップgの幅dが小さくなるにつれて、反射率がゆるやかに大きくなる。この特徴は、金属層12がFe、Al、Rh、Ti、Hf、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Co、Pd、Pt、あるいはこれらのうち少なくとも1つを含む合金によって構成されている場合にも当てはまる。一方、金属層12がAu、AgまたはCuによって構成されている場合には、例えば、図4に示したように、ギャップgの幅dが小さくなるにつれて、反射率が急峻に大きくなる。つまり、金属層12がNi、Fe、Al、Rh、Ti、Hf、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Co、Pd、Pt、あるいはこれらのうち少なくとも1つを含む合金によって構成されている場合と、金属層12がAu、AgまたはCuによって構成されている場合とでは、反射率の変化が大きく異なる。金属層12がAu、AgまたはCuによって構成されている場合には、結合効率が低下しないので、図4に示したように、共鳴が維持されたまま、共鳴角が変化する。そのため、この場合には、固定角度での検出が困難である。
【0020】
上記の特徴について説明するにあたって、まず、例えば、図5に示したように、金属層12の材料として、3つのグループを想定する。1つ目のグループ(第1グループG1)には、Ni、Fe、およびこれらのうち少なくとも1つを含む合金が含まれる。2つ目のグループ(第2グループG2)には、Al、Rh、Ti、Hf、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Co、Pd、Pt、およびこれらのうち少なくとも1つを含む合金が含まれる。3つ目のグループ(第3グループG3)には、Au、AgまたはCuが含まれる。
【0021】
例えば、図4に示したように、金属層12が第1グループG1の材料によって構成されている場合には、反射率が0.2から0.8まで変化するときのギャップgの幅dの変化量Δd1は、おおよそ450nmである。また、例えば、図4に示したように、金属層12が第2グループG2の材料によって構成されている場合には、反射率が0.2から0.8まで変化するときのギャップgの幅dの変化量Δd2は、おおよそ400nmである。また、例えば、図4に示したように、金属層12が第3グループG3の材料によって構成されている場合には、反射率が0.2から0.8まで変化するときのギャップgの幅dの変化量Δd3は、おおよそ100nmである。なお、金属層12が第3グループG3の材料の1つであるAgによって構成されている場合には、入射角度を固定した上で、ギャップgの幅dを変化させたときに、例えば、図5に示したように、ギャップgの幅dが小さくなるにつれて、反射率が急峻に大きくなることがわかる。
【0022】
このように、金属層12が第1グループG1または第2グループG2の材料によって構成されている場合には、金属層12が第3グループG3の材料によって構成されている場合と比べて、反射率が0.2から0.8まで変化するときのギャップgの幅dの変化量がおおよそ4倍大きく、反射率がゆるやかに変化していることがわかる。従って、金属層12は、発光素子30の光L1が臨界角以上の所定の角度で金属層24に入射したときの反射率がギャップgの幅dの変位に対して直線的に変化するギャップgの幅dの範囲が、変位部10のうち少なくとも金属層24との対向面にAu、AgまたはCuを用いた場合のそれよりも広い材料によって構成されている、といえる。
【0023】
(光学素子20)
光学素子20は、変位部10と所定の間隙gを介して対向する位置に配置されたものである。光学素子20は、表面プラズモンを励起するための光学系であり、いわゆるクレッチマン配置となっている。光学素子20は、例えば、図1に示したように、プリズム21、マッチングオイル22、光学ガラス23および金属層24を有している。
【0024】
プリズム21は、発光素子30から射出された光を金属層24の表面に導くためのものであり、かつ金属層24で反射された光を受光素子40に導くものである。プリズム21は、例えば、屈折率1.4以上の誘電体材料によって構成されている。プリズム21は、棒状の光学素子、例えば、半円柱形状のプリズムによって構成されている。なお、プリズム21は、発光素子30から射出された光が金属層24の表面に表面プラズモン共鳴角で入射することの可能な形状および屈折率を有していればよく、上述した半円柱形状とは異なる形状となっていてもよい。例えば、発光素子30から射出された光が垂直に入射する平面と、金属層24で反射された光が垂直に入射する平面とを含む多角柱形状のプリズムとなっていてもよい。
【0025】
マッチングオイル22は、プリズム21と光学ガラス23とを互いに光学的に接合するためのものである。光学ガラス23は、金属層24のうち光入射側の面に接すると共に金属層24を支持する光透過性部材であり、例えば、屈折率1.4以上の誘電体材料によって構成されている。る。この光学ガラス23は、金属層11と金属層24との対向面積を規定するものであり、例えば、図6(A)に示したように、金属層24と接する面23Aが平坦となった板状のガラス(光透過性部材)によって構成されている。なお、面23Aが、例えば、図6(B)に示したように、金属層12側に突出した曲面となっていてもよい。この場合には、面23Aが凸状となっていることで、面23Aと金属層12との位置関係に傾きがあった場合であっても、許容度が増す。
【0026】
金属層24は、通常の表面プラズモン共鳴法に用いられる薄膜からなり、例えば、金(Au)または銀(Ag)を蒸着した薄膜によって構成されている。金属薄膜は、例えば、数十nm程度の厚さとなっている。
【0027】
光学素子20は、また、例えば、図1に示したように、発光素子30と金属層24(またはプリズム21)との間に、コリメートレンズ25、偏光板26およびピンホール27を発光素子30側から順に有している。光学素子20は、さらに、例えば、図1に示したように、受光素子40と金属層24(またはプリズム21)との間に、ピンホール28を有している。コリメートレンズ25、偏光板26およびピンホール27は、発光素子30から射出される光の光軸上に配置されている。ピンホール28および受光素子40は、発光素子30から射出された光のうち金属層24で反射された光の光軸上に配置されている。コリメートレンズ25、偏光板26、ピンホール27およびピンホール28は、プリズム21、マッチングオイル22、光学ガラス23および金属層24と共に、所定の位置に固定されている。従って、これらプリズム21、マッチングオイル22、光学ガラス23、金属層24、コリメートレンズ25、偏光板26、ピンホール27およびピンホール28は全て、変位検出装置1の使用時に回動や走査がなされるものではない。
【0028】
コリメートレンズ25は、発散性ビームを平行ビームに変換するものである。偏光板26は、入射光のうち、特定の方向の偏光成分だけを透過し、それ以外の成分を吸収するものである。偏光板26は、例えば、発光素子30から射出された光のうちp偏光成分だけを透過し、s偏光成分を吸収するようになっている。ピンホール27は、発光素子30から射出された光のビーム径を制御するものであり、例えば円形状の開口を有している。ピンホール28は、発光素子30から射出された光のうち金属層24で反射された光のビーム径を制御するものであり、例えば円形状の開口を有している。ピンホール28は反射光ビームのうち、θSPRでの反射光減衰による暗線上の光強度を選択的に検出する役割を有している。すなわちギャップdが減少するにしたがって最も近接している暗線上の位置の光強度が増大するので、受光素子40(後述)がこの点の光を選択的に検出するようになっている。なお、θSPRとは、対向金属が無限遠にある場合に表面プラズモン共鳴が励起する角度のことを意味している。
【0029】
(発光素子30)
発光素子30は、金属層24の裏面(光学ガラス23との接触面)に向かって、所定の波長の光を所定の角度θで射出するものである。角度θは、全反射条件となる角度、すなわち、臨界角以上の角度となっている。発光素子30の光を所定の角度θで金属層24の裏面に入射させたときに、金属層24の表面(変位部10側の面)に誘起されるエバネッセント波の波数が表面プラズモンの波数と一致させることができる。発光素子30から射出される光の波長は、上記の波数を与える値になっている。発光素子30は、例えば、レーザダイオード(LD: Laser Diode)、ガスレーザ、固体レーザなどの単一波長の光源によって構成されている。発光素子30は、金属層24への光入射角が一定となるように、所定の位置に固定されている。
【0030】
(受光素子40)
受光素子40は、発光素子30から射出された光のうち反射光を検出するものである。受光素子40は、例えば、フォトダイオード(PD: Photo Diode)によって構成されている。受光素子40は、発光素子30と同様、所定の位置に固定されている。
【0031】
(動作)
次に、本実施の形態の変位検出装置1の動作の一例について説明する。本実施の形態では、発光素子30から入射光L1がプリズム21、マッチングオイル22、光学ガラス23を経由して金属層24に全反射条件で入射する。その際、入射光L1の一部は、金属層24を透過し、プリズム21とは反対側の表面に到達し、この表面にエバネッセント波を発生させる。エバネッセント波の波数が表面プラズモンの波数と一致する入射角度で表面プラズモン共鳴が励起される。
【0032】
このとき、本実施の形態では、金属層24と所定の間隙gを介して金属層12が設けられているので、間隙gの幅dの変化により共鳴条件が変化する。この共鳴条件は金属層12の材料によって異なる。本実施の形態では、金属層12が、上述した第1グループG1または第2グループG2に含まれる高損失の金属材料によって構成されているので、結合効率が低くなる。そのため、表面プラズモン共鳴のQ値が低いので、例えば、図5に示したように、間隙gの幅dの変化に対する反射率の変化が緩やかとなる。
【0033】
本実施の形態の変位検出装置1は、間隙gの幅dの変化に対する反射率の変化がゆるやかとなる特徴を有していることから、例えば、外部から音が伝播してきたり、変位検出装置1に加速度がかけられたりして、変位部10(金属層12)が振動した場合には、例えば、図7に示したように、変位部10の振動に応じて反射光L2の光強度が緩やかに振動する。また、例えば、図7に示したように、間隙gの幅dの振幅の中心値が大きく異なっていても、間隙gの幅dの振幅がほぼ等しい場合には、反射率の振幅もほぼ等しくなる。また、例えば、外部の圧力の大きさに応じて変位部10が変位した場合には、例えば、図8に示したように、変位部10の変位に応じて反射光L2の光強度が変位する。また、例えば、図8に示したように、間隙gの幅dが変化する前の幅dの値が大きく異なっていても、間隙gの幅dの変化量がほぼ等しい場合には、反射率の変化量もほぼ等しくなる。
【0034】
このように、本実施の形態では、変位部10(金属層12)の変位を反射光の光強度の変化として捉えることができる。これにより、出力信号のノイズレベルを低く抑えることができ、さらに、高感度を実現することができる。また、本実施の形態では、変位部10(金属層12)の変位を反射光の光強度の変化として捉える際に、フォーカスサーボ機構や、発光素子30を走査する機構などの複雑なシステムを必要としない。さらに、本実施の形態では、発光素子30が固定されていることから、受光素子40は、発光素子30を走査させたときのような大面積の受光面を必要とせず、PDで十分である。従って、本実施の形態では、簡易な構成で、低ノイズレベルおよび高感度を実現することができる。
【0035】
ところで、金属層12が、上述した第3グループG3に含まれる低損失の金属材料によって構成されている場合(比較例)には、結合効率が高くなる。そのため、表面プラズモン共鳴のQ値が高いので、例えば、図5に示したように、間隙gの幅dの変化に対する反射率の変化が急峻となる。これにより、例えば、外部から音が伝播してきたり、変位検出装置1に加速度がかけられたりして、変位部10(金属層12)が振動した場合には、例えば、図9に示したように、変位部10の振動に応じて反射光L2の光強度が微小にしか振動しなかったり、変位部10の振動に応じて反射光L2の光強度が高振幅で振動したりする。このように、比較例では、間隙gの幅dの振幅がほぼ等しい場合であっても、間隙gの幅dの振幅の中心値が大きく異なる場合には、反射率の振幅が大きく異なってしまう。また、例えば、外部の圧力の大きさに応じて変位部10が変位した場合には、例えば、図10に示したように、変位部10の変位に応じて反射光L2の光強度が微小にしか変位しなかったり、変位部10の振動に応じて反射光L2の光強度が大きく変位したりする。このように、比較例では、間隙gの幅dの変化量がほぼ等しい場合であっても、間隙gの幅dが変化する前の幅dの値が大きく異なる場合には、反射率の変化量が大きく異なってしまう。従って、比較例では、ダイナミックレンジが極めて小さいことがわかる。なお、比較例において、間隙gの幅dの振幅の中心値に応じて、反射率の振幅を補正したり、間隙gの幅dが変化する前の幅dの値に応じて、反射率の変化量を補正したりすることにより、ダイナミックレンジを広げることも可能である。しかし、そのようにした場合には、間隙gの幅dの振幅の中心値や、間隙gの幅dが変化する前の幅dの値によって、分解能が大きく異なってしまう。
【0036】
一方、本実施の形態では、間隙gの幅dの振幅の中心値が大きく異なる場合であっても、間隙gの幅dの変化量がほぼ等しいときには、反射率の振幅もほぼ等しくなる。また、間隙gの幅dが変化する前の幅dの値が大きく異なる場合であっても、間隙gの幅dの変化量がほぼ等しいときには、反射率の変化量もほぼ等しくなる。従って、本実施の形態では、間隙gの幅dの振幅の中心値や、間隙gの幅dが変化する前の幅dの値に依らず、分解能が常にほぼ等しいので、反射率の振幅や変化量を補正する必要がない。従って、簡易な構成で、大きなダイナミックレンジを実現することができる。
【0037】
なお、本実施の形態において、信号処理部に、光強度と金属層12の変位量との対応を記述したLUT(Look-Up Table)を設け、間隙gの幅dの振幅の中心値に応じて、反射率の振幅を補正したり、間隙gの幅dが変化する前の幅dの値に応じて、反射率の変化量を補正したりしてもよい。このようにした場合であっても、間隙gの幅dの振幅の中心値や、間隙gの幅dが変化する前の幅dの値に依らず、分解能が常にほぼ等しいので、間隙gの幅dの振幅の中心値や、間隙gの幅dが変化する前の幅dの値によって、分解能が大きく異なってしまうことがないからである。
【0038】
<適用例>
以下に、上記実施の形態の変位検出装置1の一適用例について説明する。本適用例に係るマイクロフォン2は、外部から伝播してきた音を検出するために、上記実施の形態の変位検出装置1を用いたものである。マイクロフォン2は、空気圧の変動である空気の疎密波を変動部10が受けて、変動部10の振動を、金属層24からの反射光の光強度の変化として検出するものである。
【0039】
マイクロフォン2は、例えば、図10に示したように、変位検出装置1と、変位検出装置1の変動部10を変位(振動)可能に支持する指示部60と、光学素子20、発光素子30および受光素子40からなる光学セット50を指示する指示部70とを備えている。マイクロフォン2は、従来のコンデンサマイクに必要な背極板の代わりに変位検出装置1を有し、変動部10の振動を静電容量の変化として検出する代わりに、金属層24からの反射光の光強度の変化として検出するようになっている。これにより、コンデンサマイクの静電容量を確保するために必要とされた金属蒸着の量を大幅に少なくすることができるので、振動系の質量を軽減することができる。その結果、高域周波数特性が向上する。また、従来のコンデンサマイクで必要であった背極板が不要となるので、背極板によって加えられる空気抵抗に起因する音響抵抗をなくすることができる。これにより、熱振動ノイズを低減することができる。従って、本適用例では、出力信号のノイズレベルが低く、しかも、高いダイナミックレンジを実現することができる。また、マイクロフォン2では、フォーカスサーボ機構や、発光素子30を走査する機構などの複雑なシステムを必要としない。さらに、発光素子30が固定されていることから、受光素子40は、発光素子30を走査させたときのような大面積の受光面を必要とせず、PDで十分である。従って、本適用例では、小型で、しかも低ノイズレベルおよび高感度のマイクロフォンを実現することができる。
【符号の説明】
【0040】
1…変位検出装置、2…マイクロフォン、10…変位部、11…支持基板、12,24…金属層、20…光学素子、21…プリズム、22…マッチングオイル、23…光学ガラス、25…コリメートレンズ、26…偏光板、27,28…ピンホール、30…発光素子、40…受光素子、50…光学セット、60,70…支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変位可能に支持された変位部と、
前記変位部の変位に応じて前記変位部との間隙が変化する位置に配置された金属層と、
前記金属層に向かって光を射出する発光素子と、
前記発光素子から射出された光のうち前記金属層での反射光を検出する受光素子と
を備え、
前記変位部は、少なくとも前記金属層と前記間隙を介して対向する対向面にNi、Fe、Al、Rh、Ti、Hf、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Co、Pd、Pt、あるいはこれらのうち少なくとも1つを含む合金を含んで構成されている
変位検出装置。
【請求項2】
前記金属材料は、前記発光素子の光が臨界角以上の所定の角度で前記金属層に入射したときの反射率が前記間隙の変位に対して直線的に変化する間隙の範囲が、前記対向面にAu、AgまたはCuを用いた場合のそれよりも広い材料である
請求項1に記載の変位検出装置。
【請求項3】
前記金属層のうち光入射側の面に接すると共に前記金属層を支持する光透過性部材を備えた
請求項1または請求項2に記載の変位検出装置。
【請求項4】
前記光透過性部材のうち前記金属層と接する面が、前記変位部側に突出した曲面となっている
請求項3に記載の変位検出装置。
【請求項5】
前記発光素子は、前記金属層への光入射角が一定となるように固定されている
請求項1または請求項2に記載の変位検出装置。
【請求項6】
前記光入射角は臨界角以上である
請求項5に記載の変位検出装置。
【請求項7】
前記受光素子からの出力信号を処理する信号処理部を備え、
前記信号処理部は、光強度と前記金属層の変位量との対応を記述したLUT(Look-Up Table)を有する
請求項5または請求項6に記載の変位検出装置。
【請求項8】
前記受光素子は、フォトダイオード(PD: Photo Diode)である
請求項1または請求項2に記載の変位検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−35647(P2011−35647A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179735(P2009−179735)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】