説明

変性剤、変性共役ジエン系重合体の製造方法、変性共役ジエン系重合体、ゴム組成物および空気入りタイヤ

【課題】変性時の反応速度を向上することができる変性剤および該変性剤を用いた変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。また、該製造方法で製造した変性共役ジエン系重合体、該変性共役ジエン系重合体を配合したゴム組成物、および該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】有機金属型の活性部位を分子中に有する共役ジエン系重合体の該活性部位に反応させる変性剤であって、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を有するケイ素化合物からなることを特徴とする変性剤である。また、該変性剤を用いた変性共役ジエン系重合体の製造方法、該製造方法を用いて製造した変性共役ジエン系重合体、該変性共役ジエン系重合体を配合したゴム組成物、および該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を有するケイ素化合物(シラン化合物)からなる変性剤、および該変性剤を用いた変性共役ジエン系重合体の製造方法に関するものである。また、本発明は、該製造方法を用いて製造した変性共役ジエン系重合体、該変性共役ジエン系重合体を配合したゴム組成物、および該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ等の材料として使用した場合に高い低燃費性および耐摩耗性を実現することができる変性ポリマーとして、種々のポリマーが知られている。具体的には、(共)重合体鎖に結合したアミノ基およびアルコキシシリル基を有する共役ジオレフィン(共)重合ゴムや(例えば、特許文献1参照)、リビングアニオンエラストマーポリマーと、シラン−スルフィド修飾剤との反応生成物を含む鎖末端修飾エラストマーポリマー(例えば、特許文献2参照)等が知られている。
【0003】
そして、上述した変性ポリマーの製造においては、ヒドロカルビルオキシ基(アルコキシ基とも言う)を有するケイ素化合物が変性剤として使用されているが、当該変性剤のヒドロカルビルオキシ基には窒素原子が含まれていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第03/029299号
【特許文献2】国際公開第07/047943号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の変性剤を用いた変性ポリマーの製造方法には、変性時の反応速度が低いという点で改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の変性剤は、有機金属型の活性部位を分子中に有する共役ジエン系重合体の該活性部位に反応させる変性剤であって、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を有するケイ素化合物からなることを特徴とする。ここで、本発明において、重合体には単独重合体と共重合体とが含まれる。また、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基とは、一般式:−OR[式中、Rは一部が窒素で置換された炭化水素基である]で表される基である。更に、本発明において、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基の窒素部位はアンモニウム塩(N)の形であっても良い。
【0007】
ここで、本発明の変性剤は、前記ケイ素化合物が、下記一般式(I):
【化1】

[式中、m+n+k+h=4(但し、kは1〜4の整数であり、m、nおよびhは0〜3の整数である)であり、Aは、飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基、(チオ)エポキシ基、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル基、炭酸ジヒドロカルビルエステル基、ニトリル基、ピリジン基、(チオ)ケトン基、(チオ)アルデヒド基、アミド基、(チオ)カルボン酸エステル基、(チオ)カルボン酸エステルの金属塩、カルボン酸無水物残基、カルボン酸ハロゲン化合物残基、並びに加水分解可能な基を有する1級もしくは2級アミノ基またはメルカプト基の中から選択される少なくとも1種の官能基であり、hが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、Rは、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、mが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、Rは、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)であり、nが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、Rは、含窒素有機基であり、kが2以上の場合には、互いに同一もしくは異なり、或いは、一緒になって環を形成しており、Rは、炭素数1〜20の二価の炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、hが2以上の場合には同一でも異なっていてもよい]で表されるケイ素化合物であることが好ましい。
【0008】
更に、本発明の変性剤は、前記ケイ素化合物が、下記一般式(II):
【化2】

[式中、p+q+r=2(但し、qは1〜2の整数であり、pおよびrは0〜1の整数である)であり、Aは、NR15(R15は、一価の炭化水素基、加水分解可能な基または含窒素有機基である)、或いは、硫黄であり、Rは、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、Rは、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子であり、Rは、含窒素有機基であり、qが2の場合には、互いに同一もしくは異なり、或いは、一緒になって環を形成しており、Rは、炭素数1〜20の二価の炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基である]で表されるケイ素化合物であることが好ましい。
【0009】
そして、本発明の変性剤は、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を2つ以上有することが好ましい。ここで、上記一般式(I)および(II)においては、−ORおよび−ORが窒素含有ヒドロカルビルオキシ基に相当する。
【0010】
また、本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、有機金属型の活性部位を分子中に有する共役ジエン系重合体の該活性部位に変性剤を反応させて変性共役ジエン系重合体を製造する方法であって、前記変性剤が、上記変性剤の何れかであることを特徴とする。
【0011】
ここで、本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、前記活性部位が前記共役ジエン系重合体の末端にあることが好ましい。
【0012】
また、本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、前記共役ジエン系重合体の活性部位に変性剤を反応させた後に、周期律表の4A族、2B族、3B族、4B族および5B族のうち少なくとも一つに属する元素の化合物からなる縮合促進剤の存在下で縮合反応を行うことが好ましい。
【0013】
また、本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、前記共役ジエン系重合体が、C−LiまたはN−Liを含むアルカリ金属化合物を重合開始剤として、共役ジエン化合物単独または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させて得たものであることが好ましい。
【0014】
更に、本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、前記共役ジエン化合物が、1,3−ブタジエン、イソプレンおよび2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンの中から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、前記芳香族ビニル化合物がスチレンであることが好ましい。
【0016】
ここで、本発明の変性共役ジエン系重合体は、上記製造方法の何れかにより製造されたことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の変性共役ジエン系重合体は、下記一般式(III):
【化3】

[式中、a+b+c+d+e=4(但し、aは1〜4の整数であり、b、c、dおよびeは0〜3の整数である)であり、Aは、飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基、(チオ)エポキシ基、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル基、炭酸ジヒドロカルビルエステル基、ニトリル基、ピリジン基、(チオ)ケトン基、(チオ)アルデヒド基、アミド基、(チオ)カルボン酸エステル基、(チオ)カルボン酸エステルの金属塩、カルボン酸無水物残基、カルボン酸ハロゲン化合物残基、加水分解可能な基を有する1級もしくは2級アミノ基またはメルカプト基、並びに活性プロトンを含んでいる1級もしくは2級アミノ基またはメルカプト基の中から選択される少なくとも1種の官能基であり、eが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、Rは、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、bが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、R11は、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子であり、dが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、R10は、含窒素有機基、或いは、窒素およびOH含有炭化水素基であり、cが2以上の場合には、互いに同一もしくは異なり、或いは、一緒になって環を形成しており、R12は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、eが2以上の場合には同一でも異なっていてもよい]で表されることを特徴とする。なお、本発明において、含窒素有機基の窒素部位はアンモニウム塩(N)の形であっても良い。
【0018】
更に、本発明の変性共役ジエン系重合体は、前記R10が、一般式:R16NR1718[式中、R16は炭素数1〜20の二価の炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、R17およびR18は、炭化水素基、1級もしくは2級アミン含有炭化水素基、加水分解可能な基で保護された1級もしくは2級アミンを有するアミン含有炭化水素基、水素または加水分解可能な基であり、互いに同一もしくは異なり、或いは、一緒になって環を形成している]で表されることが好ましい。
【0019】
また、本発明の変性共役ジエン系重合体は、下記一般式(IV):
【化4】

[式中、f+g+i+j=2(但し、fは1〜2の整数であり、g、iおよびjは0〜1の整数である)であり、Aは、NR15(R15は、一価の炭化水素基、加水分解可能な基、該加水分解可能な基が加水分解された基または含窒素有機基である)、或いは、硫黄であり、Rは、炭素数1〜20の二価の炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、R14は、含窒素有機基、或いは、窒素およびOH含有炭化水素基であり、R50は、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、R51は、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子である]で表されることを特徴とする。なお、本発明において、含窒素有機基の窒素部位はアンモニウム塩(N)の形であっても良い。
【0020】
そして、本発明のゴム組成物は、上記変性共役ジエン系重合体の何れかを含むことを特徴とする。
【0021】
ここで、本発明のゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体を15質量%以上含むゴム成分100質量部に対し、シリカおよび/またはカーボンブラックを合計で10〜120質量部配合したものであることが好ましい。
【0022】
また、本発明のゴム組成物は、前記変性共役ジエン系重合体15〜100質量%と、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、クロロプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴムおよびハロゲン化メチル基を有するスチレンとイソブチレンとの共重合体の中から選択される少なくとも1種のゴム成分85〜0質量%とからなるゴム成分を含むことが好ましい。
【0023】
そして、本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物の何れかを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、変性時の反応速度が高い変性剤および該変性剤を用いた変性共役ジエン系重合体の製造方法を提供することができる。また、該製造方法で製造した変性共役ジエン系重合体、該変性共役ジエン系重合体を配合したゴム組成物、および該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<変性剤>
本発明の変性剤は、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を有するケイ素化合物からなる。ここで、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基とは、一般式:−OR[式中、Rは窒素で置換された炭化水素基である]で表される基である。また、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を有するケイ素化合物とは、ケイ素に窒素含有ヒドロカルビルオキシ基が結合した構造(Si−OR)を有するケイ素化合物である。ここで、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基の窒素部位は、アンモニウム塩(N)の形であっても良い。
【0026】
このような窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を有するケイ素化合物としては、例えば下記一般式(I)および(II)で表される化合物を挙げることができる。
【化5】

[式中、m+n+k+h=4(但し、kは1〜4の整数であり、m、nおよびhは0〜3の整数である)であり、Aは、飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基、(チオ)エポキシ基、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル基、炭酸ジヒドロカルビルエステル基、ニトリル基、ピリジン基、(チオ)ケトン基、(チオ)アルデヒド基、アミド基、(チオ)カルボン酸エステル基、(チオ)カルボン酸エステルの金属塩、カルボン酸無水物残基、カルボン酸ハロゲン化合物残基、並びに加水分解可能な基を有する1級もしくは2級アミノ基またはメルカプト基の中から選択される少なくとも1種の官能基であり、hが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、Rは、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、mが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、Rは、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子であり、nが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、Rは、含窒素有機基であり、kが2以上の場合には、互いに同一もしくは異なり、或いは、一緒になって環を形成しており、Rは、炭素数1〜20の二価の炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、hが2以上の場合には同一でも異なっていてもよい]
【化6】

[式中、p+q+r=2(但し、qは1〜2の整数であり、pおよびrは0〜1の整数である)であり、Aは、NR15(R15は、一価の炭化水素基、加水分解可能な基または含窒素有機基である)、或いは、硫黄であり、Rは、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、Rは、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子であり、Rは、含窒素有機基であり、qが2の場合には、互いに同一もしくは異なり、或いは、一緒になって環を形成しており、Rは、炭素数1〜20の二価の炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基である]
【0027】
より具体的には、特に限定されることなく、下記一般式(V)〜(XIII)で表されるケイ素化合物を挙げることができる。
なお、式中、R20は一価の炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、mが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、R21は一価の炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン原子であり、nが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、R22は二価の炭化水素基、例えばエチレン基であり、R23およびR24は一価の炭化水素基、1級もしくは2級アミン含有炭化水素基、加水分解可能な基で保護された1級もしくは2級アミンを有するアミン含有炭化水素基、水素、加水分解可能な基または含窒素有機基、例えばメチル基であり、互いに同一もしくは異なり、或いは、一緒になって環を形成しており、R25、R26およびR27は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、Zは加水分解可能な基、例えばトリメチルシリル基(TMS)、TBDMS(tert−ブチルジメチルシリル)基であり、YはSZ例えばS(TMS)またはNZ例えばN(TMS)である。また、kは1以上の整数、mおよびnは0以上の整数であり、式(V)においてはm+n+k=4であり、式(VI)においてはm+n=2であり、式(VII)においてはm+n+k=3であり、式(VIII)においてはm+n=1であり、式(IX)および(XI)においてはm+n+k=2である。なお、kが2以上の場合にはR22、R23およびR24は同一でも異なっていてもよい。
【化7】

【化8】

【0028】
ここで、上述した一般式において、一価の炭化水素基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、二価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等の炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、炭素数7〜20のアラルキレン基などが挙げられ、一価の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、ベンジル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられ、加水分解可能な基としては、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基などが挙げられる。また、含窒素有機基としては、アミノプロピル基、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基などが挙げられる。なお、一般式(I)および(II)において含窒素有機基が一緒になって環を形成しているとは、例えば一般式(VI)、(VIII)、(X)、(XII)および(XIII)に示すように、ケイ素に直接結合した二つの酸素に対して三価の含窒素有機基が結合し、環を形成していることを意味する。
【0029】
ここで、上述した窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を有するケイ素化合物は、例えば以下のようにして製造することができる。
(ケイ素化合物の合成方法)
下記一般式(XIV):
【化9】

[式中、R28、R29、R30およびR31のうち少なくとも1つはアルコキシ基またはハロゲン原子であり、残りは任意の有機基である]で表されるような、アルコキシ基を一つ以上有するケイ素化合物に対し、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-(ジエチルアミノ)エタノール、2-(ジメチルアミノ)プロパノール、2-(ジエチルアミノ)プロパノール、N-メチルジエタノールアミン等のアミン化合物を加え、更に触媒としてp-トルエンスルホン酸、塩酸等の酸や、チタンテトラn-ブトキシド等のチタンアルコキシドを添加し、加熱して、アルコキシ基またはハロゲン原子の一つ以上を一価の窒素含有ヒドロカルビルオキシ基で置換、或いは、隣接する(例えばR28とR29の位置関係にある)二つのアルコキシ基またはハロゲン原子を二価の窒素含有ヒドロカルビルオキシ基で置換する(この場合、生成物においてヒドロカルビルオキシ基は環を形成する)ことで合成できる。
【0030】
なお、アルコキシ基またはハロゲン原子を一つ以上有するケイ素化合物は、任意にTMS(トリメチルシリル)基で保護した後に上記アミン化合物を加えてアルコキシ基またはハロゲン原子を置換しても良い。ここで、ケイ素化合物をTMS基で保護する方法としては、例えば国際公開第2008/050854号に記載されているような既知の方法を用いることができる。
【0031】
このようなケイ素化合物を変性剤として用いれば、ケイ素化合物中の窒素含有ヒドロカルビルオキシ基が脱離し易いので、重合体の活性部位との反応が促進され、変性反応の速度が増大する。
【0032】
<変性共役ジエン系重合体の製造方法>
本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、有機金属型の活性部位を分子中に有する共役ジエン系重合体の該活性部位に上記変性剤を反応させるものである。なお、変性剤を用いた変性反応は、既知の反応条件下で行うことができる。
【0033】
ここで、本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法においては、変性反応の後に、例えば国際公開第2008/050845号に記載されているチタン化合物からなる既知のチタン系縮合促進剤、または、例えば国際公開第2008/050851号に記載されている周期律表の4A族(Tiを除く)、2B族、3B族および5B族のうち少なくとも一つに属する元素の化合物からなる既知の縮合促進剤、或いは、4B族に属する元素(例えばSn)の化合物からなる縮合促進剤を用いて、変性剤として用いたケイ素化合物が関与する縮合反応を行っても良い。このようにすれば、カーボンブラックおよびシリカ等の充填剤との相互作用に優れ、充填剤の分散性を改善することができ、低発熱性、破壊特性、耐摩耗性などに優れた変性共役ジエン系重合体を製造することができる。なお、縮合促進剤は、変性反応後に添加することが好ましいが、変性反応の前に添加しても良い。なお、これらの縮合促進剤は、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基が存在する場合、効果的に縮合反応を起こし易い。
【0034】
本発明の製造方法において用いられる有機金属型の活性部位を有する共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物(ジエン系モノマー)を単独で重合して、或いは、共役ジエン化合物と他のモノマー(例えば芳香族ビニル化合物)とを共重合して得られるものである。そして、その重合方法には特に制限はなく、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法の何れも用いることができるが、特に溶液重合法を用いることが好ましい。また、重合形式は回分式と連続式の何れであっても良い。なお、活性部位は、共役ジエン系重合体の末端にあることが好ましい。活性部位が共役ジエン系重合体の末端にある場合、得られる変性共役ジエン系重合体の低ロス性が優れているからである。
【0035】
共役ジエン系重合体の分子中に存在する有機金属型の活性部位の金属は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選択される1種の金属であることが好ましく、リチウムであることが特に好ましい。従って、溶液重合法においては、例えばリチウム化合物を重合開始剤とし、共役ジエン化合物単独または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させることにより、有機金属型の活性部位を有する共役ジエン系重合体を製造することができる。なお、ハロゲン含有単量体を混在させ、重合体中のハロゲン原子を有機金属化合物によって活性化(リチオ化)して活性部位としても良い。
【0036】
ここで、上記共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらの中でも、1,3−ブタジエン、イソプレンおよび2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンが特に好ましい。
【0037】
また、上記芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロへキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらの中でも、スチレンが特に好ましい。
【0038】
重合開始剤のリチウム化合物としては、特に制限は無いが、有機リチウム化合物(C−Liを含むアルカリ金属化合物)およびリチウムアミド化合物(N−Liを含むアルカリ金属化合物)を用いることができる。そして、有機リチウム化合物を用いた場合には、重合開始末端に炭化水素基を有し、且つ他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。また、リチウムアミド化合物を用いた場合には、重合開始末端に窒素含有基を有し、且つ他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。
【0039】
ここで、上記有機リチウム化合物としては、炭素数1〜20の炭化水素基を有するものが好ましく、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロへキシルリチウム、シクロベンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物などが挙げられる。これらの中でも、n−ブチルリチウムおよびsec−ブチルリチウムが特に好ましい。
【0040】
また、リチウムアミド化合物としては、例えばリチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジヘキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ−2−エチルへキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム−N−メチルピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミドなどが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックに対する相互作用効果および重合開始能の観点から、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミドなどの環状リチウムアミドが好ましく、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジドおよびリチウムピペリジドが特に好ましい。なお、これらのリチウムアミド化合物は、二級アミンとリチウム化合物とから予め調製したものを用いることができるが、重合系中(in−situ)で調製したものを用いても良い。
【0041】
ここで、上記重合開始剤の使用量は、好ましくは単量体100g当たり0.2〜20ミリモルの範囲である。そして、上記リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によって共役ジエン系重合体を製造する方法としては、特に制限されることなく既知の方法を用いることができる。具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶媒中において、共役ジエン化合物または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを、上記リチウム化合物を重合開始剤として、所望に応じてランダマイザーの存在下でアニオン重合させることにより、目的の共役ジエン系重合体が得られる。
【0042】
そして、本発明の変性共役ジエン系重合体の製造方法では、上記共役ジエン系重合体の活性部位と、上述した変性剤とが反応して、変性共役ジエン系重合体が生成する。具体的には、変性共役ジエン系重合体の生成反応の一例を下記式(XV)に示すように、変性剤(窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を有するケイ素化合物)から窒素含有ヒドロキシカルビルオキシ基(式中、R32として示されている)が脱離し、共役ジエン系重合体の活性部位にシリル基(ケイ素化合物から窒素含有ヒドロカルビルオキシ基が脱離して生じた変性基)が付加する。なお、本発明の変性剤においては、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基の脱離能が高いので、変性反応が迅速に進む。
【化10】

[式中、R32は窒素含有ヒドロカルビルオキシ基であり、R33、R34およびR35は任意の有機基である。なお、R33、R34およびR35のうち少なくとも一つ以上が窒素含有ヒドロカルビルオキシ基であっても良い。]
【0043】
ここで、上記一例において、変性剤が窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を2つ以上有する場合、即ち、R33、R34およびR35のうち少なくとも一つ以上が窒素含有ヒドロカルビルオキシ基である場合には、分子中にヒドロカルビルオキシ基が一つ以上残っている変性共役ジエン系重合体と、分子中にヒドロカルビルオキシ基が残っていない変性共役ジエン系重合体とが生成し得る。
【0044】
より具体的には、例えばR33、R34およびR35のうち一つが窒素含有ヒドロカルビルオキシ基である場合には、ケイ素に共役ジエン系重合体が二つ結合した変性共役ジエン系重合体と、ケイ素に共役ジエン系重合体が一つ結合した変性共役ジエン系重合体との混合物が生成し得る。また、例えばR33、R34およびR35の全てが窒素含有ヒドロカルビルオキシ基である場合には、ケイ素に対して共役ジエン系重合体が四つ結合した変性共役ジエン系重合体と、三つ結合した変性共役ジエン系重合体と、二つ結合した変性共役ジエン系重合体と、一つ結合した変性共役ジエン系重合体との混合物が生成し得る。
【0045】
ここで、生成した変性共役ジエン系重合体においては、ケイ素に結合した共役ジエン系重合体の数が多いほど、分子量の大きい変性共役ジエン系重合体を得ることができる。即ち、ゴム成分として用いた場合に混練り時にトルクをかけ易く、充填剤が分散し易い変性共役ジエン系重合体を得ることができる。一方、生成した変性共役ジエン系重合体中に窒素含有ヒドロカルビルオキシ基が残っている場合、シリカやカーボンブラックなどの充填剤との反応性が高い変性共役ジエン系重合体を得ることができる。即ち、シリカやカーボンブラックを配合してゴム組成物として用いた場合に、低ロス性および耐摩耗性を向上したゴム組成物を提供し得る変性共役ジエン系重合体を得ることができる。従って、上記の特性を有する種々の変性共役ジエン系重合体を得るという観点から、変性剤は窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を二つ以上有していることが好ましい。また、低ロス性および耐摩耗性を向上したゴム組成物を提供するという観点からは、変性共役ジエン系重合体は窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を1つ以上有していることが好ましい。即ち、一般式(III)においてはcが1以上であることが好ましく、一般式(IV)においてはgが1以上であることが好ましい。
【0046】
なお、生成した変性共役ジエン系重合体中に残る窒素含有ヒドロカルビルオキシ基の数は、重合開始剤の量(活性部位の数)と、変性剤の量とを調整することにより制御することができ、例えば、重合開始剤の量に対して変性剤の量を少なくすれば、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基の数が少ない、即ち共役ジエン系重合体が多く結合した変性共役ジエン系重合体を得ることができる。因みに、生成した変性共役ジエン系重合体中に残る窒素含有ヒドロカルビルオキシ基の数は、変性反応を行う時間を調整することによっても制御することができる。
【0047】
<変性共役ジエン系重合体>
上述した製造方法により得られた変性共役ジエン系重合体としては、例えば下記一般式(III)
【化11】

[式中、a+b+c+d+e=4(但し、aは1〜4の整数であり、b、c、dおよびeは0〜3の整数である)であり、Aは、飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基、(チオ)エポキシ基、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル基、炭酸ジヒドロカルビルエステル基、ニトリル基、ピリジン基、(チオ)ケトン基、(チオ)アルデヒド基、アミド基、(チオ)カルボン酸エステル基、(チオ)カルボン酸エステルの金属塩、カルボン酸無水物残基、カルボン酸ハロゲン化合物残基、加水分解可能な基を有する1級もしくは2級アミノ基またはメルカプト基、並びに活性プロトンを含んでいる1級もしくは2級アミノ基またはメルカプト基の中から選択される少なくとも1種の官能基であり、eが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、Rは、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、bが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、R11は、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子であり、dが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、R10は、含窒素有機基、或いは、窒素およびOH含有炭化水素基であり、cが2以上の場合には、互いに同一もしくは異なり、或いは、一緒になって環を形成しており、R12は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、eが2以上の場合には同一でも異なっていてもよい]、
および下記一般式(IV)
【化12】

[式中、f+g+i+j=2(但し、fは1〜2の整数であり、g、iおよびjは0〜1の整数である)であり、Aは、NR15(R15は、一価の炭化水素基、加水分解可能な基、該加水分解可能な基が加水分解された基または含窒素有機基である)、或いは、硫黄であり、Rは、炭素数1〜20の二価の炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、R14は、含窒素有機基、或いは、窒素およびOH含有炭化水素基であり、R50は、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、R51は、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子である]で表されるものを挙げることができる。
ここで、シリカ等の充填剤との反応性を向上させて低ロス性を向上させるという観点からは、一般式(III)のaの値は1〜3であることが好ましく、一般式(IV)のfの値は1であることが好ましい。
【0048】
より具体的には、上述した一般式(I)〜(II)、(V)〜(XIII)で表される変性剤から少なくとも一つのヒドロカルビルオキシ基が脱離し、該ヒドロカルビルオキシ基が脱離した部位に共役ジエン系重合体が結合した変性共役ジエン系重合体を挙げることができる。
【0049】
ここで、上記一般式(III)および(IV)においては、aおよびfの数が大きいほど、ケイ素に結合した共役ジエン系重合体の数が多くなり、変性共役ジエン系重合体の分子量が大きくなる。なお、変性剤中に1級もしくは2級アミノ基またはメルカプト基を保護する加水分解可能な基、例えばTMS基などが存在していた場合、生成した変性共役ジエン系重合体において該加水分解可能な基は、未加水分解状態で存在していても良いし、加水分解された状態で存在していても良い。
【0050】
そして、上記一般式(III)および(IV)においては、変性共役ジエン系重合体をゴム組成物に用いた場合の低ロス性を更に向上させるという観点から、R10およびR14が、一般式:R16NR1718[式中、R16は炭素数1〜20の二価の炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、R17およびR18は、炭化水素基、1級もしくは2級アミン含有炭化水素基、加水分解可能な基で保護された1級もしくは2級アミンを有するアミン含有炭化水素基、水素または加水分解可能な基であり、互いに同一もしくは異なり、或いは、一緒になって環を形成している]で表されることが好ましい。なお、低ロス性を更に向上させるという観点からは、R17およびR18の少なくとも一方が、1級もしくは2級アミン含有炭化水素基、加水分解可能な基で保護された1級もしくは2級アミンを有するアミン含有炭化水素基、水素または加水分解可能な基であることが更に好ましい。因みに、R10およびR14中のN(窒素)部分は、アンモニウム塩(N)であっても良い。
【0051】
なお、本発明の変性剤を用いて変性共役ジエン系共重合体を製造するに際しては、前記一般式(IX)で表されるようなケイ素化合物を変性剤として用いた場合、ヒドロカルビルオキシ基の脱離反応だけでなく、開環反応が生じることもある。具体的には、一例として一般式(IX)においてk=2、mおよびn=0、R23=R24、25がトリメチレン(プロピレン)の場合を考えると、以下の2種類の変性共役ジエン系重合体が生成することが考えられる。ここで、開環反応を起こした変性共役ジエン系重合体は、活性プロトンを含む1級アミノ基を有していることとなる。
【化13】

【0052】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上記変性共役ジエン系重合体を含むものである。ここで、本発明のゴム組成物は、ゴム成分として上記変性共役ジエン系重合体を15質量%以上含むことが好ましく、30質量%以上含むことが更に好ましい。変性共役ジエン系重合体が15質量%未満では、所望の物性(低ロス性など)を有するゴム組成物を得難いからである。
【0053】
ここで、本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、変性共役ジエン系重合体と他のゴム成分とを併用しても良く、変性共役ジエン系重合体と併用する他のゴム成分としては、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、クロロプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴムおよびハロゲン化メチル基を有するスチレンとイソブチレンとの共重合体の中から選択される少なくとも1種のゴム成分が挙げられる。なお、変性共役ジエン系重合体の有する物性を十分に発揮させるという観点から、ゴム成分は、変性共役ジエン系重合体15〜100質量%、好ましくは30〜100質量%と、上記少なくとも1種のゴム成分85〜0質量%、好ましくは70〜0質量%とからなることが好ましい。
【0054】
また、本発明のゴム組成物は、充填剤としてシリカやカーボンブラックを含有することが好ましい。ここで。ゴム成分に対して添加するシリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどを挙げることができ、カーボンブラックとしては、SRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられる。そして、本発明のゴム組成物は、充填剤の添加により十分な補強効果を得るという観点から、シリカおよびカーボンブラックの合計の配合量が、変性共役ジエン系重合体を15質量%以上含むゴム成分100質量部に対して10〜120質量部となるようにすることが好ましい。
【0055】
なお、本発明のゴム組成物には、所望に応じて、通常用いられている添加剤、例えば加硫剤、加硫促進剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸などを更に配合することができる。そして、本発明のゴム組成物は、ロールやバンバリーミキサーなどを用いて上記ゴム成分と、任意に、シリカ、カーボンブラックおよび添加剤とを混練りすることによって得ることができる。
【0056】
<空気入りタイヤ>
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物をトレッド部、ベース部、サイドウォール部などの何れか1箇所以上に用いて既知の方法で製造したものである。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0058】
<共役ジエン系重合体の製造例>
乾燥し、窒素置換した容積800mLの耐圧ガラス容器に、1,3−ブタジエンのシクロヘキサン溶液およびスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3−ブタジエンが60g、スチレンが15gとなるように加えた。そして、そこに2,2−ジテトラヒドロフリルプロパンを0.70mmol、n−ブチルリチウムを0.70mmol加えた後、50℃の温水浴中で1.5時間重合反応を行い、リチウム型の活性部位を末端に有するスチレン−ブタジエン共重合体を得た。なお、この際の重合転化率はほぼ100%であった。
【0059】
<変性剤の合成例1>
(変性剤A〜O)
以下に示す、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を有さないケイ素化合物(変性剤A〜O)を既知の方法で合成した。
【化14】

【化15】

【0060】
<変性剤の合成例2>
(変性剤a〜q)
以下に示す、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を有するケイ素化合物を下記の方法で合成した。なお、出発物質となるケイ素化合物に対するTMS基での保護は、前述したように、国際公開第2008/050854号に記載されている既知の方法で行った。
【化16】



【化17】

(変性剤a)
容積50mLのナスフラスコに、テトラエトキシシラン30mmol、2−(ジメチルアミノ)エタノール60mmol、チタンテトラn−ブトキシド0.15gを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱した。気泡が発生しなくなった後、滴下ロートにて2−(ジメチルアミノ)エタノール60mmolを10分かけて滴下し、更に30分間加熱した。その後、ロータリーエバポレーターを用い、温度85℃、圧力45mmHgでエタノールを除去して、ケイ素化合物を得た。
(変性剤b)
容積50mLのナスフラスコにトリエトキシメチルシラン30mmol、2−(ジメチルアミノ)エタノール30mmol、チタンテトラn−ブトキシド0.15gを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱した。気泡が発生しなくなった後、滴下ロートにて2−(ジメチルアミノ)エタノール30mmolを10分かけて滴下し、更に30分間加熱した。その後、ロータリーエバポレーターを用い、温度85℃、圧力45mmHgでエタノールを除去して、ケイ素化合物を得た。
(変性剤c)
容積200mLのナスフラスコに、ジメチルジエトキシシラン30mmol、N−メチルジエタノールアミン30mmol、チタンテトラn−ブトキシド0.15g、キシレン100mLを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱し、ジムロートコンデンサーを取り付けて11時間還流を行った。その後、圧力20hPa、温度40℃にてロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、更に、ロータリーポンプ(10Pa)とコールドトラップ(ドライアイス+エタノール)にて残存する揮発分を除去して、ケイ素化合物を得た。
(変性剤d)
容積200mLのナスフラスコに、テトラエトキシシラン30mmol、N−メチルジエタノールアミン60mmol、チタンテトラn−ブトキシド0.15g、キシレン100mLを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱し、ジムロートコンデンサーを取り付けて11時間還流を行った。その後、圧力20hPa、温度40℃にてロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、更に、ロータリーポンプ(10Pa)とコールドトラップ(ドライアイス+エタノール)にて残存する揮発分を除去して、ケイ素化合物を得た。
(変性剤e)
容積50mLのナスフラスコに、N,N−(ジトリメチルシリル)−アミノプロピルトリエトキシシラン30mmol、2−(ジメチルアミノ)エタノール60mmol、チタンテトラn−ブトキシド0.15gを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱した。気泡が発生しなくなった後、滴下ロートにて2−(ジメチルアミノ)ペンタノール30mmolを10分かけて滴下し、更に30分間加熱した。その後、ロータリーエバポレーターを用い、温度85℃、圧力45mmHgでエタノールを除去して、ケイ素化合物を得た。
(変性剤f)
容積200mLのナスフラスコに、変性剤E30mmol、N−メチルジエタノールアミン30mmol、チタンテトラn−ブトキシド0.15g、キシレン100mLを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱し、ジムロートコンデンサーを取り付けて11時間還流を行った。その後、圧力20hPa、温度40℃にてロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、更に、ロータリーポンプ(10Pa)とコールドトラップ(ドライアイス+エタノール)にて残存する揮発分を除去して、ケイ素化合物を得た。
(変性剤g)
容積50mLのナスフラスコに、変性剤F30mmol、2−(ジメチルアミノ)エタノール90mmol、チタンテトラn−ブトキシド0.15gを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱した。気泡が発生しなくなった後、ロータリーエバポレーターを用い、温度85℃、圧力45mmHgでエタノールを除去して、ケイ素化合物を得た。
(変性剤h)
容積50mLのナスフラスコに、変性剤G30mmol、2−(ジメチルアミノ)エタノール30mmol、チタンテトラn−ブトキシド0.15gを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱した。気泡が発生しなくなった後、ロータリーエバポレーターを用い、温度85℃、圧力45mmHgでエタノールを除去して、ケイ素化合物を得た。
(変性剤i)
容積200mLのナスフラスコに、N,N−(ジトリメチルシリル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン30mmol、N−メチルジエタノールアミン30mmol、チタンテトラn−ブトキシド0.15g、キシレン100mLを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱し、ジムロートコンデンサーを取り付けて11時間還流を行った。その後、圧力20hPa、温度40℃にてロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、更に、ロータリーポンプ(10Pa)とコールドトラップ(ドライアイス+エタノール)にて残存する揮発分を除去して、ケイ素化合物を得た。
(変性剤j)
容積50mLのナスフラスコに、N,N−(ジメチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン30mmol、2−(ジメチルアミノ)エタノール60mmol、チタンテトラn−ブトキシド0.15gを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱した。気泡が発生しなくなった後、滴下ロートにて2−(ジメチルアミノ)エタノール30mmolを10分かけて滴下し、更に30分間加熱した。その後、ロータリーエバポレーターを用い、温度85℃、圧力45mmHgでエタノールを除去して、ケイ素化合物を得た。
(変性剤k)
容積50mLのナスフラスコに、N,N−(ジメチル)−アミノプロピルメチルジクロロシラン30mmol、2−(ジメチルアミノ)エタノール30mmol、チタンテトラn−ブトキシド0.15gを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱した。気泡が発生しなくなった後、ロータリーエバポレーターを用い、温度85℃、圧力45mmHgでエタノールを除去して、ケイ素化合物を得た。
(変性剤l)
容積50mLのナスフラスコに、変性剤K30mmol、2−(ジメチルアミノ)エタノール30mmol、チタンテトラn−ブトキシド0.15gを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱した。気泡が発生しなくなった後、滴下ロートにて2−(ジメチルアミノ)エタノール30mmolを10分かけて滴下し、更に30分間加熱した。その後、ロータリーエバポレーターを用い、温度85℃、圧力45mmHgでエタノールを除去して、ケイ素化合物を得た。
(変性剤m)
容積50mLのナスフラスコに、変性剤L30mmol、2−(ジメチルアミノ)エタノール30mmol、チタンテトラn−ブトキシド0.15gを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱した。気泡が発生しなくなった後、ロータリーエバポレーターを用い、温度85℃、圧力45mmHgでエタノールを除去して、ケイ素化合物を得た。
(変性剤n)
容積50mLのナスフラスコに、変性剤M30mmol、2−(ジメチルアミノ)エタノール30mmol、チタンテトラn−ブトキシド0.15gを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱した。気泡が発生しなくなった後、滴下ロートにて2−(ジメチルアミノ)エタノール30mmolを10分かけて滴下し、更に30分間加熱した。その後、ロータリーエバポレーターを用い、温度85℃、圧力45mmHgでエタノールを除去して、ケイ素化合物を得た。
(変性剤o)
容積50mLのナスフラスコに、変性剤O30mmol、2−(ジメチルアミノ)エタノール30mmol、チタンテトラn−ブトキシド0.15gを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱した。気泡が発生しなくなった後、ロータリーエバポレーターを用い、温度85℃、圧力45mmHgでエタノールを除去して、ケイ素化合物を得た。
(変性剤p)
容積200mLのナスフラスコに、変性剤M30mmol、N−メチルジエタノールアミン30mmol、チタンテトラn−ブトキシド0.15g、キシレン100mLを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱し、ジムロートコンデンサーを取り付けて11時間還流を行った。その後、圧力20hPa、温度40℃にてロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、更に、ロータリーポンプ(10Pa)とコールドトラップ(ドライアイス+エタノール)にて残存する揮発分を除去して、ケイ素化合物を得た。
(変性剤q)
容積200mLのナスフラスコに、下記化合物
【化18】

30mmol、N−メチルジエタノールアミン30mmol、チタンテトラn−ブトキシド0.15g、キシレン100mLを計量した。次に、乾燥窒素を流しつつ(0.2L/min)、マグネティックスターラーで撹拌しながら温度145〜150℃のオイルバスにて加熱し、ジムロートコンデンサーを取り付けて11時間還流を行った。その後、圧力20hPa、温度40℃にてロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、更に、ロータリーポンプ(10Pa)とコールドトラップ(ドライアイス+エタノール)にて残存する揮発分を除去して、ケイ素化合物を得た。
【0061】
<変性共役ジエン系重合体の製造例1>
上記共役ジエン系重合体の製造例において重合した、リチウム型の活性部位を末端に有するスチレン−ブタジエン共重合体の重合反応系に対し、上記変性剤A、B、D〜F、H、I、K、M、O、a〜g、i、j、lおよびn〜qを0.63mmol添加し、50℃で30分間変性反応を行い、変性スチレン−ブタジエン共重合体を得た。
<変性共役ジエン系重合体の製造例2>
上記共役ジエン系重合体の製造例において重合した、リチウム型の活性部位を末端に有するスチレン−ブタジエン共重合体の重合反応系に対し、上記変性剤iを0.63mmol添加し、50℃で30分間変性反応を行った。その後、縮合促進剤としてTi(EHO)を3.78mmol添加し、更に50℃で60分間変性反応を行い、変性スチレン−ブタジエン共重合体を得た。なお、Ti(EHO)とはテトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン(Ti(OCHCH(C)C)である。
<変性共役ジエン系重合体の製造例3>
上記共役ジエン系重合体の製造例において重合した、リチウム型の活性部位を末端に有するスチレン−ブタジエン共重合体の重合反応系に対し、上記変性剤B、C、E、G、H、J、L、M、O、a〜c、f、h、i、k、m、oおよびpを0.63mmol添加し、50℃で15分間変性反応を行い、変性スチレン−ブタジエン共重合体を得た。
<変性共役ジエン系重合体の製造例4>
変性反応の条件を25℃で30分間とした以外は、製造例3と同様にして変性スチレン−ブタジエン共重合体を得た。
【0062】
上記変性共役ジエン系重合体の製造例1〜4で製造した変性スチレン−ブタジエン共重合体および未変性のスチレン−ブタジエン共重合体(共役ジエン系重合体の製造例で製造した共重合体の活性部位をイソプロパノールで処理したもの)につき、ポリマーの分子特性(結合スチレン量、ビニル粘度、ムーニー粘度)および変性剤の消費率を下記の方法で測定した。結果を表1〜6に示す。
(結合スチレン量の測定)
共重合体の結合スチレン量は、H-NMRスペクトルの積分比から算出した。
(ビニル結合量の測定)
共重合体のビニル結合量は、赤外法を用いて測定した。
(ムーニー粘度)
共重合体のムーニー粘度は、JIS K6300−1994に準拠して、温度100℃で測定した。この値が小さい程、加工性に優れることを示す。
(変性剤消費率)
変性剤の消費率は、ガスクロマトグラフィーを用いて未反応物の量を測定することにより算出した。この値が大きいほど、変性反応が迅速に進んでいることを示す。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
【表5】

【0068】
【表6】

【0069】
<ゴム組成物の製造例>
変性共役ジエン系重合体の製造例1〜4で製造した変性スチレン−ブタジエン共重合体および未変性のスチレン−ブタジエン共重合体と、表7および表8の第1ステージに示す添加剤とを表7および表8に示す配合処方でバンバリーミキサーを用いて混練りした。その後、表7および表8の第2ステージに示す添加剤を表7および表8に示す配合処方で更に加えてバンバリーミキサーで混練りし、ゴム組成物を得た。なお、表7および表8に示す配合処方の単位は、「質量部」である。そして、温度160℃で20分間加硫して得られたゴム組成物を加硫した後、以下の方法で加硫したゴム組成物のtanδおよび耐摩耗性を評価した。結果を表9〜17に示す。
(tanδの評価)
上島製作所製スペクトロメーター(動的粘弾性測定試験機)を用い、周波数52Hz、初期歪10%、測定温度50℃、動歪1%で、加硫ゴムのtanδを測定し、比較例31〜34および実施例36〜41については比較例30の、比較例36〜39および実施例42〜47については比較例35の、比較例40、42および実施例48〜51については比較例41の、比較例44および実施例52〜55については比較例43の、実施例56については比較例45の、比較例46、48および実施例57〜60については比較例47の、比較例49および実施例61〜64については比較例50の、比較例51、53〜54および実施例65〜68については比較例52の、比較例56〜60および実施例69〜75については比較例55の、比較例62および実施例76〜77については比較例61の、実施例78については比較例63の、比較例65および実施例79〜80については比較例64のtanδの値を100として指数表示した。指数値が小さい程、tanδが低く、ゴム組成物が低発熱性であることを示す。
(耐摩耗性の評価)
JIS K6264−2:2005に準拠し、ランボーン型摩耗試験機を用いて、室温、スリップ率25%の条件で試験を行い、比較例31〜34および実施例36〜41については比較例30の、比較例36〜39および実施例42〜47については比較例35の、比較例40、42および実施例48〜51については比較例41の、比較例44および実施例52〜55については比較例43の、実施例56については比較例45の、比較例46、48および実施例57〜60については比較例47の、比較例49および実施例61〜64については比較例50の、比較例51、53〜54および実施例65〜68については比較例52の、比較例56〜60および実施例69〜75については比較例55の、比較例62および実施例76〜77については比較例61の、実施例78については比較例63の、比較例65および実施例79〜80については比較例64の摩耗量の逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れることを示す。
【0070】
【表7】

【0071】
【表8】

【0072】
*1 製造例1〜4で製造した変性スチレン−ブタジエン共重合体または未変性のスチレン−ブタジエン共重合体
*2 JSR社製「IR2200」
*3 富士興産社製「アロマックス#3」
*4 三菱化学社製「ダイヤブラックN234」、ISAF−HS
*5 三菱化学社製「ダイヤブラックN339」、HAF−HS
*6 三菱化学社製「ダイヤブラックE」、FEF
*7 東ソーシリカ社製「AQ」
*8 デグッサ社製「Si69」
*9 大内新興化学工業社製「ノクラック6C」
*10 大内新興化学工業社製「ノクセラーD」
*11 大内新興化学工業社製「ノクセラーDM」
*12 大内新興化学工業社製「ノクセラーNS−F」
【0073】
【表9】

【0074】
【表10】

【0075】
【表11】

【0076】
【表12】

【0077】
【表13】

【0078】
【表14】

【0079】
【表15】

【0080】
【表16】

【0081】
【表17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機金属型の活性部位を分子中に有する共役ジエン系重合体の該活性部位に反応させる変性剤であって、窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を有するケイ素化合物からなることを特徴とする、変性剤。
【請求項2】
前記ケイ素化合物が、下記一般式:
【化1】

[式中、m+n+k+h=4(但し、kは1〜4の整数であり、m、nおよびhは0〜3の整数である)であり、
は、飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基、(チオ)エポキシ基、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル基、炭酸ジヒドロカルビルエステル基、ニトリル基、ピリジン基、(チオ)ケトン基、(チオ)アルデヒド基、アミド基、(チオ)カルボン酸エステル基、(チオ)カルボン酸エステルの金属塩、カルボン酸無水物残基、カルボン酸ハロゲン化合物残基、並びに加水分解可能な基を有する1級もしくは2級アミノ基またはメルカプト基の中から選択される少なくとも1種の官能基であり、hが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、
は、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、mが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、
は、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子であり、nが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、
は、含窒素有機基であり、kが2以上の場合には、互いに同一もしくは異なり、或いは、一緒になって環を形成しており、
は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、hが2以上の場合には同一でも異なっていてもよい]で表されるケイ素化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の変性剤。
【請求項3】
前記ケイ素化合物が、下記一般式:
【化2】

[式中、p+q+r=2(但し、qは1〜2の整数であり、pおよびrは0〜1の整数である)であり、
は、NR15(R15は、一価の炭化水素基、加水分解可能な基または含窒素有機基である)、或いは、硫黄であり、
は、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、
は、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子であり、
は、含窒素有機基であり、qが2の場合には、互いに同一もしくは異なり、或いは、一緒になって環を形成しており、
は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基である]で表されるケイ素化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の変性剤。
【請求項4】
窒素含有ヒドロカルビルオキシ基を2つ以上有することを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の変性剤。
【請求項5】
有機金属型の活性部位を分子中に有する共役ジエン系重合体の該活性部位に変性剤を反応させて変性共役ジエン系重合体を製造する方法であって、
前記変性剤が、請求項1〜4の何れかに記載の変性剤であることを特徴とする、変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項6】
前記活性部位が前記共役ジエン系重合体の末端にあることを特徴とする、請求項5に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項7】
前記共役ジエン系重合体の活性部位に変性剤を反応させた後に、周期律表の4A族、2B族、3B族、4B族および5B族のうち少なくとも一つに属する元素の化合物からなる縮合促進剤の存在下で縮合反応を行うことを特徴とする、請求項5または6に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項8】
前記共役ジエン系重合体が、C−LiまたはN−Liを含むアルカリ金属化合物を重合開始剤として、共役ジエン化合物単独または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させて得たものであることを特徴とする、請求項5〜7の何れかに記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項9】
前記共役ジエン化合物が、1,3−ブタジエン、イソプレンおよび2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンの中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項8に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項10】
前記芳香族ビニル化合物がスチレンであることを特徴とする、請求項8または9に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項11】
請求項5〜10の何れかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする、変性共役ジエン系重合体。
【請求項12】
下記一般式:
【化3】

[式中、a+b+c+d+e=4(但し、aは1〜4の整数であり、b、c、dおよびeは0〜3の整数である)であり、
は、飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基、(チオ)エポキシ基、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル基、炭酸ジヒドロカルビルエステル基、ニトリル基、ピリジン基、(チオ)ケトン基、(チオ)アルデヒド基、アミド基、(チオ)カルボン酸エステル基、(チオ)カルボン酸エステルの金属塩、カルボン酸無水物残基、カルボン酸ハロゲン化合物残基、加水分解可能な基を有する1級もしくは2級アミノ基またはメルカプト基、並びに活性プロトンを含んでいる1級もしくは2級アミノ基またはメルカプト基の中から選択される少なくとも1種の官能基であり、eが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、
は、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、bが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、
11は、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子であり、dが2以上の場合には同一でも異なっていてもよく、
10は、含窒素有機基、或いは、窒素およびOH含有炭化水素基であり、cが2以上の場合には、互いに同一もしくは異なり、或いは、一緒になって環を形成しており、
12は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、eが2以上の場合には同一でも異なっていてもよい]で表されることを特徴とする、変性共役ジエン系重合体。
【請求項13】
前記R10が、一般式:R16NR1718[式中、R16は炭素数1〜20の二価の炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、R17およびR18は、炭化水素基、1級もしくは2級アミン含有炭化水素基、加水分解可能な基で保護された1級もしくは2級アミンを有するアミン含有炭化水素基、水素または加水分解可能な基であり、互いに同一もしくは異なり、或いは、一緒になって環を形成している]で表されることを特徴とする、請求項12に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項14】
下記一般式:
【化4】

[式中、f+g+i+j=2(但し、fは1〜2の整数であり、g、iおよびjは0〜1の整数である)であり、
は、NR15(R15は、一価の炭化水素基、加水分解可能な基、該加水分解可能な基が加水分解された基または含窒素有機基である)、或いは、硫黄であり、
は、炭素数1〜20の二価の炭化水素基または炭素数6〜18の二価の芳香族炭化水素基であり、
14は、含窒素有機基、或いは、窒素およびOH含有炭化水素基であり、
50は、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基または炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基であり、
51は、炭素数1〜20の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜18の一価の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子である]で表されることを特徴とする、変性共役ジエン系重合体。
【請求項15】
請求項11〜14の何れかに記載の変性共役ジエン系重合体を含むことを特徴とする、ゴム組成物。
【請求項16】
前記変性共役ジエン系重合体を15質量%以上含むゴム成分100質量部に対し、シリカおよび/またはカーボンブラックを合計で10〜120質量部配合したことを特徴とする、請求項15に記載のゴム組成物。
【請求項17】
前記変性共役ジエン系重合体15〜100質量%と、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、クロロプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴムおよびハロゲン化メチル基を有するスチレンとイソブチレンとの共重合体の中から選択される少なくとも1種のゴム成分85〜0質量%とからなるゴム成分を含む請求項15または16に記載のゴム組成物。
【請求項18】
請求項15〜17の何れかに記載のゴム組成物を用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。


【公開番号】特開2010−270212(P2010−270212A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122609(P2009−122609)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】