説明

変態プロセスの制御方法

本発明は、変態プロセスを制御するための方法であり、前記方法においては、装入原料の製品への変換が、結晶及び/又は結晶粒及び/又は相及び/又は細孔の表面に発し前記装入原料内に至る変態境界面に沿って行われ、1つ又は複数の化学元素が前記装入原料に放出され、及び/又は、組み入れられ、及び/又は置換されるとともに、前記装入原料の変換が、進行する変態境界面に沿って行われる。本発明によると、前記装入原料は、少なくとも視覚的分析、特に顕微鏡を用いた分析に基づき、その相及び/又は相の割合及び/又は相の形態、構造、組織及び/又は化学組成に関して識別される。これらの値に基づいて、前記プロセスにおける前記装入原料の変換を記述する、前記装入原料に関する参照関数が割り当てられ、前記変態プロセスのプロセスパラメータを決定するために用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変態プロセスの制御方法に関する。当該方法においては、装入原料の製品への変換が、結晶及び/又は結晶粒及び/又は相及び/又は細孔から装入原料への変態境界面に沿って行われる。このとき、装入原料の1つ以上の化学元素が放出され、及び/又は、組み入れられ、及び/又は置換され、装入原料の変換は、進行する変態境界面に沿って行われる。
【背景技術】
【0002】
例えば、この方法は、冶金学的プロセス、特に、プロセスガスを使用して、特に鉱石、添加剤、融剤、及び固形炭素担体などの装入原料に基づいて、金属及び/又は冶金学的半製材料及び/又は中間生成物を製造するための還元プロセスを制御するためにも利用できる。
【0003】
プロセスガスを用いた冶金学的プロセスは広く普及している。ここでは、例えばプロセスガスの還元電位又は酸化電位も、装入原料の変換に利用される。変換結果は、プロセスに際して生成された金属、冶金学的半製材料、もしくは中間生成物、又はそれらの混合物である。この種類の方法では、プロセスパラメータを装入原料に適応させる必要が生じる。変換は、その化学的、物理的、及び熱力学的特性に依存するからである。
【0004】
特許文献1からは、原料を高炉に装入する前にカメラで撮影し、粒度分布を分析することが知られている。ここでは、装入原料の識別ができない点が不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3‐257107号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. Szekely et al, Academic Press, New York 1976.
【非特許文献2】P. Danielsson, “Euclidean Distance Mapping”, Computer Graphics and Image Processing, vol.14, pp.227-248, 1980.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、装入原料の識別に基づく極力正確な変態プロセスの制御を可能とし、プロセスにおける装入原料のより効果的な変換を確立する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本課題は、請求項1の特徴部分に記載の、本発明に係る方法によって解決される。
【0009】
本発明に係る方法では、大抵は固形の装入原料が、少なくとも視覚的な、特に顕微鏡による分析に基づき、その相及び/又は相の割合及び/又は相の形態及び/又は化学組成に関して識別される。装入原料の識別は特に重要である。例えば化学的分析では、冶金学的プロセスにおける装入原料の挙動に関して不十分な説明しか得られないからである。特に装入原料の組成は、その成分に関しても重要である。なぜなら、このいわゆる相の成分によって、化学組成の他に例えば、力学的特性や熱力学的特性も決定されるので、変態プロセスは、鉱物学及び記載岩石学、特に装入原料の微細構造及び組織に大きく依存するからである。
【0010】
鉱物性装入原料の成分は、相もしくは鉱物によって決定される。当該相は大抵、特定の化学組成及び結晶構造を有する領域を備えている。「鉱物性原料」には、例えば石灰華に見られるガラスなどの人工的に製造された材料、ならびに概ね結晶構造を有さない石炭及びコークスも含まれるものと解される。相の形態及び空間的分布によって、冶金学的プロセスは非常に強く影響を受ける。これら変数の識別によって、プロセスにおける装入原料の変換を記述する、装入原料に関する参照関数が割り当てられ、冶金学的プロセスのプロセスパラメータを決定するために用いられる。
【0011】
それによって、装入原料の組成、装入原料の構造、ならびに相の形態に基づいて装入原料の影響を評価すること、及び、プロセスにおいて見込まれる装入原料の変換を、参照関数を通じて記述することが可能である。この記述によって、プロセスパラメータの適切な適応もしくは設定が可能になるので、目的に対応した装入原料の変換が設定可能になる。
【0012】
装入原料の詳細な分析に基づいて、当該装入原料の予想される挙動について調査が行われる。プロセスパラメータの設定はより容易になる。顕微鏡を用いた分析は、例えば冶金学的プロセス又は化学的プロセスなど、進行中の変態プロセスを点検するため、及び、装入原料の変換に関して介入するために用いられる。装入原料の組成を変えた場合は、プロセスパラメータの迅速な適応がつねに可能になる。
【0013】
本発明に係る方法の有利な一態様によると、プロセスパラメータは、参照関数によって裏打ちされたプロセス変数に基づいて決定され、それによって、参照関数によって記述される変換が高められ、特に最大化される。装入原料、参照関数、及びそれに関連するプロセス変数の分析によって、プロセスにおける装入原料の変換を高める、もしくは最大化することが可能である。なぜなら、装入原料を正確に認識することによって、プロセスの記述及びプロセスパラメータの最適な選択が可能になるからである。当該プロセス変数は、プロセス実行のために考慮されるパラメータである。装入原料に関して、プロセスもしくは装入原料の加工を記述する参照曲線に基づいて、対応するプロセス変数を呼び出すことができる。当該プロセス変数はプロセスパラメータのための基盤を形成するので、プロセスの最適化が可能になる。
【0014】
本発明に係る方法のさらなる好ましい一態様によると、装入原料の参照関数は、反応速度論を考慮し、場合によっては経験データを利用した、装入原料の変換に関する熱力学的シミュレーションによって求められる。こうしたシミュレーションは、例えば各粒子の気体‐固体反応に関するモデル式を用いて行われる。当該モデル式の古典的な代表例として、「シュリンキング‐コアモデル」(アッシュ‐コアモデル)又は「グレイン‐モデル」が挙げられる(非特許文献1)。
【0015】
当該変換は、例えば還元プロセスにおける鉱石の還元のように、プロセスガスを使用した転移であっても良い。装入原料の組成に関する正確な認識に基づいて、それ自身知られた熱力学的シミュレーションによって、変換の算定、もしくは予測が可能である。また、装入原料の正確な認識の他にも、プロセスパラメータ及び反応の動力学が考慮される。シミュレーションを経験データで補足し、より正確な結果を得ることが可能である。
【0016】
本発明に係る方法の有利な一態様によると、参照関数及び/又は裏打ちされたプロセス変数はあらかじめ算定され、データバンクに格納される。当該措置によって、次のプロセスのためにデータベースを構築することが可能である。当該データベースは、新しい装入原料もしくはそれらの組み合わせを用いる際、対応して適応させられるか、又は新たに算定される。このようにして、参照曲線もしくはプロセス変数のデータ記録が得られる。当該データ記録は、冶金学的プロセスの部分的範囲及び/又は作業範囲全体に及ぶか、もしくは必要に応じていつでも拡張可能である。
【0017】
本発明に係る方法の代替的な一態様によると、算定された参照関数は、熱力学的シミュレーションに基づいてさらに最適化され、データバンクに格納される。参照曲線を継続的に算定することによって、当該参照曲線を対応して最適化し、したがってプロセス変数によってプロセス全体を最適化することができるので、冶金学的プロセスの効果的な作業範囲は、装入原料のより広い範囲においても保証され得る。
【0018】
本発明に係る方法によると、変態プロセスのプロセスパラメータは、装入原料の完成製品への実際の変換の逸脱が、参照関数によって記述された装入原料の変換によって最小化されるように調整される。最適化された参照曲線に基づいて、参照曲線が最適なプロセスモードとして考慮されるように冶金学的プロセスを実施すること、及び、当該参照曲線が可能な限り正確に設定されるようにプロセスパラメータを選択することが可能である。参照曲線及び当該参照曲線に関連づけられたプロセス変数を通じて、冶金学的プロセスを容易に最適化することが可能である。
【0019】
顕微鏡で検査した装入原料及び/又は製品の大きさに基づいて、反応速度論を考慮し、場合によっては経験データを利用して、装入原料の変換に関する熱力学的シミュレーションをオンラインで行った後、これらのシミュレーション結果を参照関数と比較し、この比較に基づいて、偏差を最小限に抑えて、変態プロセスのプロセスパラメータの適応を行うとき、本発明に係る方法の有利な態様が得られる。オンラインで実施されるシミュレーションによって、参照曲線によって記述される、実際状況の理論状況からの逸脱を極めて迅速に算定し、それに対応してプロセスパラメータを適応させることが可能である。このとき、反応速度論を考慮しなければならない。なぜなら、熱力学的平衡はしばしば調整に比較的長い時間を必要とするので、実際に起こっている反応平衡が、理論上の熱力学的考察からは逸脱するからである。ここでもやはり、熱力学的シミュレーションの精度を向上させるためには、経験的パラメータを用いることに利点がある。
【0020】
本発明によれば、特に圧力、温度、プロセスガス好ましくは還元ガス及び/又は装入原料の体積流量、装入原料の粒度分布、プロセスにおける装入原料の滞留時間、ならびにプロセスガスの酸化度などのプロセスパラメータは、顕微鏡を用いた装入原料の分析結果に応じて適応させられる。したがって、プロセスへの介入は、プロセスパラメータの変更によって直接的に行われる。前もって定められた値域が維持される一方で、パラメータ相互の依存関係が考慮される。
【0021】
本発明に係る方法の可能な一態様によると、プロセスにおける装入原料の変換度は、還元度及び/又は装入原料の炭素含有量によって決定される。どちらの変数も明確に決定できるので、プロセスにおける装入原料の実際の変換は、一般的な技術的手段によって、測定技術的に認識可能である。
【0022】
本発明に係る方法の特別な一態様によると、転移度、特に還元度及び/又は炭素含有量は、装入原料における各相に関して個別に算定され、プロセスパラメータは、還元された装入原料の平均酸化度が最小化されるように選択される。この方策では、極力低く抑えられた酸化度によって、最適化された収率が可能になる。装入原料は大抵、量の割合の異なる様々な酸化物から構成されているので、冶金学的プロセスでは、装入原料の変換度が異なる結果になるからである。例えば、酸化物は様々な速さで還元され得る。このとき、平均酸化度によってこれら酸化物を一緒に最適化する利点は、全体の効率をより高くできることにある。このとき各酸化物の影響は、加重しても考慮され得る。
【0023】
本発明に係る方法の有利な一態様によると、顕微鏡を用いた分析は、単結晶及び/又は鉱物の結晶凝集体及び/又は装入原料の少なくとも1つの相を基に行われる。装入原料の挙動もしくはそのプロセス技術による変換は、存在している相及び当該相の形態、すなわちその形状的構成に著しく左右されることが明らかになっている。このとき、相の分析を、装入原料の表面に渡って平均して行うだけではなく、単結晶及び/又は同じ鉱物もしくは相の凝集体でも行うことが必要である。なぜなら、特に例えば変態速度は、個々の結晶の特性によって決定されるからである。
【0024】
本発明に係る方法の有利な一つの改良は、顕微鏡を用いた分析を、一重又は多重偏光を用いて一段階又は複数段階で行うことにある。偏光を用いた一段階又は複数段階の分析によって、全ての相をその結晶特性に基づいて識別すること、装入原料全体における相の形態及びモーダルプロポーション(Modalbestand)を調べること、さらには、化学組成を確定することが可能である。当該方法によって、装入原料もしくはその組成及び構造の確実かつ迅速な識別が可能になる。このとき、モーダルストックは、相の割合(%)によって表される装入原料の鉱物組成であると理解される。
【0025】
本発明に係る方法によると、非偏光ならびに異なる段階において異なる1つの偏光方向又は複数の偏光方向を有する偏光を用いた、顕微鏡による複数段階の分析が行われる。偏光子及び分析器を様々な位置に配置することによって、相が識別される一方で、異方性相において粒度が決定される。結晶の形態は、同一のカット面から作成された複数の顕微鏡画像と、偏光子及び分析器の様々な位置とを自動的に組み合わせて評価することによって確定される。
【0026】
同一のカット面の一連の画像を、何度か異なる位置において撮影する際に、分析器と偏光子とが使用される。画像はソフトウェアを用いて加工及び編集され、その結果、多数の異方性単結晶の幾何学的パラメータ、特に結晶粒界が決定される。
【0027】
本発明に係る方法の有利な一態様によると、識別された相の結晶の形態及び/又は相の形態、特に面積、周長、周の形態、周長比、空孔度、細孔の形態、細孔の数が調べられ、相パラメータの形で、参照関数の算定基盤として、データバンクに格納される。周長比は、面積と周長との比であると理解される。この値の逆数は、径深としても知られている。相の形態は、変換に際して大きな役割を果たす。なぜなら、形、空洞、又は亀裂によって、例えば拡散プロセス又はプロセス流体の内部表面への浸透が影響を受けるからである。したがって、形態、組織、構造を知ることが、装入原料のプロセス技術的変換を記述するための重要な前提となる。装入原料の変換に形態が与えるこのような影響は、経験データもしくは相互関係の形で、又は機能的相互関係としても考慮され得る。
【0028】
本発明に係る方法の特に適した一態様によると、装入原料の単結晶又は結晶クラスタを顕微鏡で分析する際に、単結晶又は結晶クラスタの表面までのユークリッド距離が算出され、色に陰影をつけた画像、特にグレースケール画像に変換されるとともに、当該距離から同心状シェルのモデルが構成される。当該シェルの数は、変態プロセスにおける装入原料の変換時間の基準になる。ユークリッド距離の算出及び距離基準の作成は、ダニエルソンなどに基づいて行われた(非特許文献2)。
【0029】
例えば酸化物、鉱石、鉄鉱石などの固体状装入原料の変態又は転移は、装入原料の粒子の反応性表面から始まる。つまり、粒子の表面及び当該表面と結合している細孔から始まる。当該プロセスの場合さしあたり単純化して、相の還元が、略一定の速度で、それぞれの表面に対して垂直に、したがって粒子の奥へと一定のペースで進行すると考えられる。つまり、この同心状シェルのモデルによって、転移の進行の記述が可能になる。
【0030】
したがって、粒子中の所定の位置の、それぞれの結晶粒表面からの距離は、変態プロセスにおける転移時点の基準となる。変態プロセスの進行は、測定された面積、周長、周長比に基づき、それぞれ特定の厚さのシェルを差し引くことによって記述される。時間毎のシェルの数及び/又はシェルの厚さは、各相の転移速度に関連している。全てのシェルが差し引かれた場合、粒子が完全に変換されたことを意味する。この進行は、それぞれの転移の経過、したがって変態プロセスの経過をも特徴付ける曲線として表現される。
【0031】
本発明によると、各シェルの厚さは、単純化された算定の場合には一定であるが、単純化されていない算定の場合には、表面からの距離が増加するにつれて小さくなり、装入原料と変態プロセスとに左右される。当該厚さは実験によって算定される。変態速度が異なる複数の異なる相が装入原料内に出現した場合、さしあたり全ての相について同じ厚さのシェルを想定し、その後で複数のシェルを統合することによって相対的な変態速度を考慮することが時にはより容易である。この場合、変態速度が最も遅い相のシェルは、1ピクセルの厚さか、又はまとめられた最小の厚さを有する。
【0032】
本発明に係る方法のさらなる有利な一態様によると、顕微鏡による分析及び参照関数との比較に基づいて、装入原料又は装入原料の混合物の変態プロセスに対する適性が評価され、各装入原料に関して、最大許容割合が算出される。各装入原料を高すぎる割合において使用してはならないことが明らかになっている。装入原料の変換が不十分になるか、又は、プロセス時間が著しく延長されるからである。例えば、マグネタイトなどの特定の酸化鉄の存在下で、酸化物又は例えば鉄鉱石の還元を行うと、還元結果は不十分なものになる。それゆえ、各相の割合は、化学的又は冶金学的プロセスなどの、変態プロセスにおける変換の指標として用いられる。その結果、特定の組成における装入原料の適性を事前に評価することができる。装入原料の視覚的な分析に基づいた場合でも、量に関する記述を行い、最大許容割合を決定することが可能である。
【0033】
本発明に係る方法の特別な一態様によると、当該評価に基づき、当該装入原料は、特に様々な装入原料の混合によって適合させられる。その粒度分布及び/又は組成が変更されるので、装入原料の許容割合を超過することはない。装入原料を形成する、一般的に存在する多数の鉱石、添加剤、融剤、及び固形炭素担体に基づいて、組成を適合させることができるので、例えば各相の最大許容割合を超過することはない。
【0034】
本発明に係る方法の代替的な一態様によると、装入原料の適性に関する2つの基準は、プロセスでの変換中に付着し合う結晶粒及び/又は崩壊する結晶粒の一定の含有量を下回ることである。例えば冶金学的プロセスなどの場合、変態プロセスにおいて付着し合う結晶粒が出現すると、大抵はプロセスの妨げとなる。変換が減少することに加えて、例えば変換が不十分な領域も出現するので、装入原料の幾分かの部分の品質が低下するからである。また、結晶粒の崩壊によって、粉塵の割合が著しく増加するので、例えば冶金学的プロセスにおける粉塵による損失が著しく増大し得る。それゆえ、どちらの影響も回避されなければならず、冶金学的プロセスの質に関する良い基準となる。例えば、装入原料の変換程度又は還元プロセスにおける還元程度は、それによって影響を受ける、もしくは決定されるからである。
【0035】
本発明に係る方法の有利な一態様によると、変態プロセスは、金属、特に銑鉄、及び/又は冶金学的半製材料、及び/又は中間生成物を、プロセスガスを用いて生成するための還元プロセスである。
【0036】
本発明に係る方法のさらなる有利な一態様によると、装入原料は、炭酸塩及びケイ酸塩の鉱物、石灰、石炭、及び/又はコークス、及び/又は鉱石、特に鉄鉱石、及び/又は鉱石塊、特にペレット、焼結鉱もしくは焼結された鉱石、及び/又は冶金学的半製材料、特に海綿鉄、あるいはそれらの混合物である。装入原料の結晶特性に基づき、当該装入原料は、本発明に係る顕微鏡を用いた分析によって良好に識別されるので、当該方法は、多数の装入原料に関して利用可能である。
【0037】
以下、還元プロセスの例を用いて、本発明をさらに説明するが、当該例に限定されるものではない。還元プロセスは大抵、例えば酸化物などの装入原料の還元による変換に基づいている。当該装入原料は、高温において、高温の還元ガスもしくは還元性ガス混合物を用いて処理される。このとき、装入原料の変換は、特に使用されるユニットにおけるプロセスにおけるプロセス圧、温度、還元ガス及び/又は装入原料の体積流量、装入原料の粒度分布、プロセスにおける装入原料の滞留時間、プロセスガスの酸化度ならびに装入原料の化学的及び鉱石‐岩石学的組成、に左右される。例えば、変換の可能性は、処理される装入原料の成分の形態にも著しく左右されることが知られている。化学的組成の他に、例えば酸化物などの結晶構造及び形態もしくは各相の割合の分布も重要な影響因子である。
【0038】
実験から明らかになっているように、酸化鉄の特定の形態においては、その他の化学的組成が存在しない場合、明らかに還元可能性が低下する。さらに、各相の成分の存在は、総じて類似の化学的組成を意味するが、還元可能性に関しては大きな影響を与える。つまり、還元可能性を低下させ、又は例えば装入原料の崩壊傾向を増大させる。
【0039】
つまり、装入原料の組成を認識すること、及び、装入原料を正確に識別することは、最適なプロセス実行もしくは冶金学的プロセスの制御にとって大きな意味を持つ。顕微鏡による識別は、単結晶、結晶凝集体、及び相に基づいて行われるので、当該装入原料に関する参照関数に基づいて、冶金学的プロセスの制御に関する情報が考慮され得る。このとき、各相が識別されるだけではなく、当該相の形態も考慮され得ると有利である。特に、装入原料の適性を評価することが可能であるとともに、例えば他の装入原料を混入することによって当該装入原料を調整し、各装入原料の最大許容値もしくは当該装入原料の割合を超過しないようにすることができる。
【0040】
例えば完成製品で測定された変数などの経験的に算定された変数と組み合わせることによって、プロセス制御に際して基準値として用いられるパラメータを得ることができる。経験データを補足する熱力学的シミュレーションによって、参照関数の形で関数関係を算定することも可能なので、反応速度論を考慮して熱力学的シミュレーションを記述することが可能である。このような参照関数によって、装入原料のプロセス経過を非常に正確かつ確実に予測することが可能になる。それゆえ、参照関数は前もって、冶金学的プロセスの作業範囲もしくは当該プロセスにおいて加工されるべき装入原料に関して算定され、プロセス制御のために格納されるので、当該参照関数はつねに関数関係及び経験データを用いることができる。
【0041】
別の選択肢として、反応速度論を考慮してオンラインで、つまりプロセスが進行している間に、熱力学的シミュレーションを行うことも考えられる。これによって、装入原料の変換シミュレーションに基づいて、プロセスを最適化するための介入、又は障害が発生した際の介入を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】装入原料の粒子における反応前線の進行を概略的に示した図である。
【図2】装入原料の粒子のシェルのモデルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、前進する反応前線における変態プロセスの進行を概略的に示した図である(矢印で示す)。粒子1は、内側表面5、6、7を有する細孔2、3、4を備えており、当該細孔は部分的に粒子表面8にまで達し得る。
【0044】
転移又は還元などの反応は、粒子の反応性表面から進行する。すなわち、粒子表面8及び粒子表面8に連通する細孔4などの細孔から進行する。このとき、反応は、第1の近似値において一定の速度で、及び、それぞれの粒子表面又は内側表面に対して垂直に、したがって粒子の奥に向かって一定のペースで進行する。
【0045】
図2は、装入原料の粒子の同心状シェルのモデルを示した図であり、当該モデルは、同心状の輪を用いて反応の進行を表現している。
【0046】
粒子は同心状のシェルとして表されており、シェルは様々なグレースケールにおいて記述されている。当該モデルに基づいて、装入原料の粒子に関して、変態プロセスもしくは反応前線の進行を記述することが可能である。同心状シェルのモデルは、亀裂や細孔などの内側表面を含む粒子の正確な形態を考慮している。
【0047】
装入原料の粒子が、変態速度の異なる様々な相から構成されている場合、さしあたり全ての相について、シェルの厚さが同じであると想定することができる。相対的な変態速度は、複数のシェルを統合することによって考慮することができる。この場合、最も変態速度が遅い相は、シェルの厚さが最小である。
【符号の説明】
【0048】
1 粒子
2 細孔
3 細孔
4 細孔
5 内側表面
6 内側表面
7 内側表面
8 粒子表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変態プロセスを制御するための方法であって、
前記方法においては、特に酸化物である装入原料の製品への変換が、結晶及び/又は結晶粒及び/又は相及び/又は細孔の表面に発し前記装入原料内に至る、少なくとも1つの変態境界面に沿って、特にプロセス流体を用いて行われ、
前記装入原料中の1つ以上の化学元素が放出され、及び/又は、組み入れられ、及び/又は置換されるとともに、前記装入原料の変換が、進行する変態境界面に沿って行われる方法において、
前記装入原料及び製品は、少なくとも顕微鏡を用いた分析に基づき、その相及び/又は相の割合及び/又は相の形態、構造、組織及び/又は化学組成に関して識別され、
これらの変数に基づいて、前記プロセスにおける前記装入原料の変換を記述する、前記装入原料に関する参照関数が割り当てられ、前記変態プロセスのプロセスパラメータを決定するために用いられることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記プロセスパラメータが、前記参照関数によって裏打ちされたプロセス変数に基づいて決定され、それによって、前記参照関数によって記述される変換が高められ、特に最大化されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記装入原料の前記参照関数は、反応速度論を考慮し、場合によっては経験データを利用した、前記装入原料の変換に関する熱力学的シミュレーションによって求められることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記参照関数及び/又は裏打ちされた前記プロセス変数は、あらかじめ算定されてデータバンクに格納されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
算定された前記参照関数は、熱力学的シミュレーションに基づいてさらに最適化され、前記データバンクに格納されることを特徴とする請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記変態プロセスの前記プロセスパラメータは、前記装入原料の完成製品への実際の変換の逸脱が、前記参照関数によって記述された前記装入原料の変換によって最小化されるように調整されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
顕微鏡を用いて調べられた前記装入原料及び/又は前記製品の変数に基づいて、前記反応速度論を考慮し、場合によっては経験データを利用して、前記装入原料の変換に関する熱力学的シミュレーションをオンラインで行い、これらのシミュレーション結果を前記参照関数と比較し、この比較に基づいて、偏差を最小限に抑えて、前記変態プロセスの前記プロセスパラメータの適応を行うことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
特に圧力、温度、プロセスガス好ましくは還元ガス及び/又は前記装入原料の体積流量、前記装入原料の粒度分布、前記プロセスにおける装入原料の滞留時間、ならびに前記プロセスガスの酸化度などの、前記プロセスパラメータは、顕微鏡を用いた分析によって識別された前記装入原料に応じて適応させられることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記プロセスにおける前記装入原料の変換の程度、特に転移度は、還元度及び/又は前記装入原料の炭素含有量によって決定されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記還元度及び/又は前記炭素含有量は、前記装入原料における各相に関して個別に算定され、前記プロセスパラメータは、還元された前記装入原料の平均酸化度が最小化されるように選択されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記顕微鏡を用いた分析は、単結晶及び/又は鉱物の結晶凝集体及び/又は前記装入原料の少なくとも1つの相を基に行われることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記顕微鏡を用いた分析は、非偏向及び/又は偏向の電磁波、特に光、及び/又は電子顕微鏡を用いて、一段階又は複数段階で行われることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
顕微鏡を用いた前記複数段階の分析は、非偏光ならびに、異なる段階において異なる1つの偏光方向又は複数の偏光方向を有する偏光を用いて行われることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
識別された相の結晶の形態及び/又は相の形態、特に面積、周長、周の形態、周長比、空孔度、細孔の形態、細孔の数が調べられ、相パラメータの形態において、前記参照関数の算定基盤として、データバンクに格納されることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
装入原料の単結晶又は結晶クラスタ又は相を顕微鏡を用いて分析する際に、前記単結晶又は前記結晶クラスタ又は相の表面に関して、距離基準、特にユークリッド距離が算出されて、色に陰影をつけた画像、又はグレースケール画像に変換されるとともに、距離基準に基づく間隔から同心状シェルのモデルが構成され、
前記シェルの数は変態時間の基準となり、前記シェルの厚さは、前記変態プロセスにおける前記装入原料及び前記装入原料の相の変換速度の基準となり、前記シェルの厚さに関しては、さらなる算定ステップにおいて、必要であれば複数の薄いシェルを再びより厚いシェルに統合することも可能であることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
各シェルの厚さは、単純化された算定において一定であるか、又は、前記表面からの距離が増加するにつれて小さくなり、前記装入原料と前記変態プロセスとに左右され、変態速度の基準となる前記厚さは、実験において算定されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記顕微鏡による分析及び前記参照関数との比較に基づいて、装入原料又は装入原料の混合物の変態プロセスに対する適性が評価され、各装入原料に関して、最大許容割合が算出されることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記装入原料は、前記評価に基づき、特に様々な装入原料の混合によって適合させられ、前記装入原料の粒度分布及び/又は組成が変更されるので、前記装入原料の許容割合を超過することはないことを特徴とする請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
装入原料の前記適性に関する2つの基準は、前記プロセスにおいて変換中に付着し合う結晶粒及び/又は崩壊する結晶粒の一定の含有量を下回ることであることを特徴とする請求項14から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
装入原料の適性は、事前に実施された還元実験及びその際に得られた還元度に基づいて決定されることを特徴とする請求項14から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記変態プロセスは、金属及び/又は冶金学的半製材料及び/又は中間生成物をプロセスガスを用いて生成するための還元プロセスであることを特徴とする請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記装入原料は、炭酸塩及びケイ酸塩の鉱物、石灰、石炭、及び/又はコークス、及び/又は鉱石、特に鉄鉱石、及び/又は鉱石塊、特にペレット、焼結鉱もしくは焼結された鉱石、及び/又は冶金学的半製材料、特に海綿鉄、あるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−522128(P2011−522128A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512055(P2011−512055)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055545
【国際公開番号】WO2009/146994
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(595031362)シーメンス・ファオアーイー・メタルズ・テクノロジーズ・ゲーエムベーハー (23)
【Fターム(参考)】