説明

変換装置並びに信号発生装置及び信号測定装置

【課題】入出力特性が互いに異なる複数の変換器の入出力特性を合致させることが可能な変換装置、及び当該変換装置を備える信号発生装置及び信号測定装置を提供する。
【解決手段】変換装置1は、入出力特性が互いに異なる複数のA/D変換器10a〜10nと、A/D変換器10a〜10nに共通する入出力特性を示す理想直線が設定されており、A/D変換器10a〜10nの全ての入出力特性が理想直線に合致するようにA/D変換器10a〜10nの各々から出力されるディジタル信号を補正する補正部20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号の変換を行う変換装置、並びに当該変換装置を備える信号発生装置及び信号測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
任意波形発生装置(所謂AWG(Arbitrary Waveform Generator))等の信号発生装置、及びオシロスコープ、ディジタイザ等の信号測定装置は、信号の変換を行う変換器が多用されている。例えば、上記の任意波形発生装置は、発生させるべき信号の経時変化を規定する波形パターンデータを記憶する波形メモリと、ディジタル信号をアナログ信号に変換する変換器(DAC)とを備えており、波形メモリから順次読み出される波形パターンデータをDACでアナログ信号に変換することで任意の波形を有する信号の発生が可能である。また、上記のオシロスコープは、アナログ信号をディジタル信号に変換する変換器(ADC)を備えており、測定すべき信号をディジタル信号に変換し、変換後のディジタル信号に対する種々の信号処理を行うことで、多様な波形表示が可能である。
【0003】
一般的に、上述したDACやADC等の変換器は、DCゲイン誤差、DCオフセット誤差、直線性誤差等の各種の誤差を少なからず有している。変換器が有する誤差のうち、DCゲイン誤差及びDCオフセット誤差は変換器に印加する電圧の調整等によって補正されるが、直線性誤差は補正されることが少ない。直線性誤差があると、変換器の入出力特性が非線形になるため、変換精度を高めるためには直線性誤差も補正することが望ましい。変換器の直線性誤差を補正する代表的な補正方法として、エンド・ポイント法とベスト・フィット法とが挙げられる。
【0004】
ここで、エンド・ポイント法は、変換器の入出力特性を示す入出力特性曲線の両端を結ぶ直線を理想直線に規定し、この理想直線に合致するように変換器の入出力特性を補正する方法である。これに対し、ベスト・フィット法は、変換器の入出力特性曲線に対して最小二乗法等を用いて理想直線を規定し、この理想直線に合致するように変換器の入出力特性を補正する方法である。図5は、変換器が有する直線性誤差の従来の補正方法を説明するための図であって、(a)はエンド・ポイント法を説明する図であり、(b)はベスト・フィット法を説明する図である。
【0005】
いま、図5に示す通り、入出力特性が入出力特性曲線C100で示される第1のADCと入出力特性が入出力特性曲線C200で示される第2のADCとを例に挙げる。エンド・ポイント法では、図5(a)に示す通り、第1のADCについては入出力特性曲線C100の両端P101,P102を結ぶ理想直線L101に合致するように入出力特性を補正し、第2のADCについては入出力特性曲線C200の両端P201,P202を結ぶ理想直線L102に合致するように入出力特性を補正する。これに対し、ベスト・フィット法では、図5(b)に示す通り、第1のADCについては最小二乗法を用いて得られた入出力特性曲線C100の理想直線L201に合致するように入出力特性を補正し、第2のADCについては最小二乗法を用いて得られた入出力特性曲線C200の理想直線L202に合致するように入出力特性を補正する。
【0006】
上述したエンド・ポイント法及びベスト・フィット法の何れの補正方法も、個々の変換器の入出力特性を個別に補正する方法である。このため、これらの補正方法を用いて複数の変換器の入出力特性を補正する場合には、変換器の数だけ理想直線が規定されることになる。尚、以下の特許文献1には、個々の変換器の入出力特性を補正する技術に関するものではないが、変換特性が互いに異なる複数の変換器を備えており、これら変換器の各々から出力されるディジタル信号を周波数解析し、その解析結果から変換器の変換特性に応じた周波数成分を抽出して合成することにより、DC性能、ノイズ性能、歪み性能、スプリアス性能等の複数の性能を高いレベルで同時に満足することができる信号測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−122079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したエンド・ポイント法、ベスト・フィット法等の補正方法を用いれば、個々の変換器の直線性誤差を改善することはできる。しかしながら、前述した通り、変換器の各々について規定される理想直線は変換器毎に異なるため、複数の変換器の間で入出力特性に差が生ずる。すると、変換器の間における入出力特性の差の分だけ誤差が生ずるため、信号の発生精度や測定精度の低下を招くという問題がある。
【0009】
例えば、入出力特性が異なる変換器を備える信号発生装置と信号測定装置とを用いて直交変調器であるIQ変調器の特性を測定する場合を考える。かかる場合には、変換器の入出力特性の差に起因する誤差を有するI信号とQ信号とが信号発生装置から出力されてIQ変調器に印加され、またIQ変調器から出力される信号が信号測定装置に入力されて入出力特性の差がある複数の変換器によって変換されるため、最終的な測定誤差が大きくなってしまう。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、入出力特性が互いに異なる複数の変換器の入出力特性を合致させることが可能な変換装置、及び当該変換装置を備える信号発生装置及び信号測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の変換装置は、入出力特性が互いに異なる複数の変換器(10a〜10n、30a〜30n)を備えており、当該変換器を用いて信号の変換を行う変換装置(1、2)において、前記複数の変換器に共通する入出力特性を示す理想直線(L1)が設定されており、前記複数の変換器の全ての入出力特性が前記理想直線に合致するように前記変換器の各々に対して入出力される信号を補正する補正部(20、40)を備えることを特徴としている。
この発明によると、複数の変換器の全ての入出力特性が理想直線に合致するように、変換器の各々に対して入出力される信号が補正部によって補正される。
ここで、本発明の変換装置において、前記理想直線は、前記変換器に規格上の最小値を有する信号が入力される場合には前記変換器から規格上の最小値を有する信号が出力され、前記変換器に規格上の最大値を有する信号が入力される場合には前記変換器から規格上の最大値を有する信号が出力されるように設定されることを特徴としている。
また、本発明の変換装置は、前記複数の変換器が、ディジタル信号をアナログ信号に変換するディジタル/アナログ変換器(30a〜30n)であり、前記補正部が、前記理想直線を示す情報を記憶する記憶部(42)と、当該記憶部に記憶された情報に基づいて前記ディジタル/アナログに入力されるディジタル信号を補正する入力補正部(41)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の変換装置は、前記複数の変換器が、アナログ信号をディジタル信号に変換するアナログ/ディジタル変換器(10a〜10n)であり、前記補正部が、前記理想直線を示す情報を記憶する記憶部(22)と、当該記憶部に記憶された情報に基づいて前記アナログ/ディジタル変換器から出力されるアナログ信号を補正する出力補正部(21)とを備えることを特徴としている。
本発明の信号発生装置は、発生させるべき信号の経時変化を示すデータを記憶する記憶部と、当該記憶部から読み出されるデータをアナログ信号に変換して出力する変換部とを備える信号発生装置において、上記のディジタル/アナログ変換器等を備える変換装置を前記変換部として備えることを特徴としている。
本発明の信号測定装置は、測定すべき信号をディジタル信号に変換する変換部を備える信号測定装置において、上記のアナログ/ディジタル変換器等を備える変換装置を前記変換部として備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の変換器の全ての入出力特性が理想直線に合致するように、変換器の各々に対して入出力される信号を補正部で補正しているため、入出力特性が互いに異なる複数の変換器の入出力特性を合致させることが可能であるという効果が得られる。また、入出力特性が合致した複数の変換器を備えることによって、信号の発生精度や測定精度を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態による変換装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】補正部20に設定される理想直線の一例を示す図である。
【図3】補正部20で補正される前後のディジタル信号の積分非直線性誤差の一例を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態による変換装置の要部構成を示すブロック図である。
【図5】変換器が有する直線性誤差の従来の補正方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による変換装置並びに信号発生装置及び信号測定装置について詳細に説明する。
【0015】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による変換装置の要部構成を示すブロック図である。図1に示す通り、本実施形態の変換装置1は、複数のA/D変換器(アナログ/ディジタル変換器)10a〜10n(変換器)と補正部20とを備えており、A/D変換器10a〜10nの少なくとも1つを用いてアナログ信号をディジタル信号に変換する。尚、図1に示す高精度直流電圧源51及びCPU(中央処理装置)52は、A/D変換器10a〜10nの入出力特性を測定する際に用いられる。
【0016】
A/D変換器10a〜10nは、入力端が端子T11〜T1nにそれぞれ接続されており、端子T11〜T1nに入力されるアナログ信号をそれぞれディジタル信号に変換して補正部20に出力する。これらA/D変換器10a〜10nは、互いに異なる非線形の入出力特性を有する。このため、端子T11〜T1nに同じアナログ信号が入力されたとしても、必ずしもA/D変換器10a〜10nから同じ値のディジタル信号が出力されるとは限らない。
【0017】
補正部20は、出力補正部21とメモリ22(記憶部)とを備えており、A/D変換器10a〜10nの入出力特性が、A/D変換器10a〜10nに共通する入出力特性を示す理想直線に合致するようにA/D変換器10a〜10nから出力されるディジタル信号をそれぞれ補正する。ここで、上記の理想直線は、A/D変換器10a〜10nの入出力特性は考慮せずに、A/D変換器10a〜10nの規格に基づいてユーザによって設定される。
【0018】
例えば、上記の理想直線は、A/D変換器10a〜10nの入力端に規格上の最小値を有する信号が入力される場合にはA/D変換器10a〜10nの出力端から規格上の最小値を有する信号が出力され、且つA/D変換器10a〜10nの入力端に規格上の最大値を有する信号が入力される場合にはA/D変換器10a〜10nの出力端から規格上の最大値を有する信号が出力されるように設定される。尚、理想直線の設定方法は、以上の設定方法に限定されることはなく、必要に応じて他の設定方法を用いることも可能である。
【0019】
図2は、補正部20に設定される理想直線の一例を示す図である。尚、ここでは説明を簡単にするために、A/D変換器10a〜10nのうちのA/D変換器10a,10bのみについて考える。図2中に示した曲線C1はA/D変換器10aの入出力特性を示す入出力特性曲線C1であり、図2中に示した曲線C2はA/D変換器10bの入出力特性を示す入出力特性曲線である。
【0020】
また、図2中に示した直線L1は、A/D変換器10a,10bの入出力特性は考慮せずに設定された理想直線である。この理想直線L1は、入力電圧がA/D変換器10a,10bの規格上の最小入力電圧V1(例えば、−1[V])である場合に出力信号(出力コード)がA/D変換器10a,10bの規格上の最小出力信号D1(例えば、「0」)になる点P1と、入力電圧がA/D変換器10a,10bの規格上の最大入力電圧V2(例えば、+1[V])である場合に出力信号(出力コード)がA/D変換器10a,10bの規格上の最大出力信号D2(例えば、「65535」)になる点P2とを通る直線である。
【0021】
この理想直線は、A/D変換器10a,10bへの入力電圧をV、A/D変換器10a,10bからの出力信号(出力コード)をCとすると、以下の(1)式で表される。
V=a×C+b …(1)
尚、上記(1)式中のa,bは理想直線を定義する定数であって、定数aは理想直線の傾きを意味し、定数bはA/D変換器10a,10bに入力されるオフセット電圧を意味する。
【0022】
メモリ22は、以上のA/D変換器10a〜10nに共通する入出力特性を示す理想直線を定義する定数a,b、及びA/D変換器10a〜10nの入出力特性を示す入出力特性曲線を定義するパラメータを記憶する。ここで、A/D変換器10a〜10nの入出力特性を示す入出力特性曲線(例えば、図2中の入出力特性曲線C1,C2)は、以下の(2)式で近似することができる。
V=a0+a1×C+a2×C+…+a6×C …(2)
【0023】
尚、上記(2)式中のa0〜a6はA/D変換器10a〜10nの入出力特性を示す入出力特性曲線を定義するパラメータであり、その値がメモリ22に記憶される。尚、上記の(2)式では、6次の多項式を用いてA/D変換器10a〜10nの入出力特性を示す入出力特性曲線を近似しているが、入出力特性曲線を近似する式としては6次の多項式に制限されることはなく、例えば3次以上の多項式を用いることが可能である。
【0024】
出力補正部21は、メモリ22に記憶された理想直線を定義する定数a,b及びA/D変換器10a〜10nの入出力特性を示す入出力特性曲線を定義するパラメータa0〜a6を用いて、A/D変換器10a〜10nの入出力特性が理想直線に合致するようにA/D変換器10a〜10nから出力されるディジタル信号をそれぞれ補正する。ここで、出力補正部21によって補正されたディジタル信号をCAとすると、補正後のディジタル信号CAは以下の(3)式で表される。
CA=(V−b)/a
=(a0+a1×C+a2×C+…+a6×C−b)/a …(3)
【0025】
尚、図1では図示を簡略化するために、A/D変換器10a〜10nに対して1つの出力補正部21が設けられている構成を図示しているが、A/D変換器10a〜10nの各々に出力補正部21が設けられている構成であっても良い。また、図1では、出力補正部21とは別にメモリ22を備える構成を図示しているが、メモリ22が出力補正部21の内部に設けられた構成であっても良い。
【0026】
高精度直流電圧源51は、A/D変換器10a〜10nの入出力特性を測定するために必要な十分な高い精度を有する直流電圧を出力するものであり、A/D変換器10a〜10nの入出力特性を測定する際に端子T11〜T1nの何れかに接続される。CPU52は、A/D変換器10a〜10nのうち、入力端に高精度直流電圧源51が接続されたA/D変換器から出力されるディジタル信号を用いてそのA/D変換器の入出力特性曲線の近似式を求める(上記(2)式中のパラメータa0〜a6)を求める。
【0027】
A/D変換器10a〜10nの入出力特性を測定する手順は以下の通りである。まず、端子T11〜T1nのうち、入出力特性を測定すべきA/D変換器の入力端が接続された端子に高精度直流電圧源51を接続する。ここでは、A/D変換器10aが接続された端子T11に高精度直流電圧源51が接続されるとする。次に、高精度直流電圧源51から直流電圧の出力を開始して、A/D変換器10aから出力されるディジタル信号を順次メモリ22に記憶する。
【0028】
具体的には、A/D変換器10aの規格上の最小入力電圧と最大入力電圧とで規定される電圧範囲を所定の数(例えば、数十程度)で分割して得られる電圧値を電圧変化量として高精度直流電圧源51に設定する。そして、A/D変換器10aの規格上の最小入力電圧から最大入力電圧まで、電圧値が電圧変化量の分ずつ変化する直流電圧を順次出力させ、各々の直流電圧が入力されたときにA/D変換器10aから出力されるディジタル信号をメモリ22に順次記憶する。
【0029】
次に、メモリ22に記憶されたディジタル信号を順次読み出し、CPU52を用いてA/D変換器10aの入出力特性曲線の近似式を求める。これにより、前述した(2)式中のパラメータa0〜a6が求められる。そして、これらパラメータa0〜a6とユーザによって設定された理想直線を定義する定数a,b(前述した(1)式中の定数)がメモリ22に記憶される。A/D変換器10aの入出力特性の測定が終了すると、高精度直流電圧源51を端子T12から端子T1nまで順次接続し、同様の処理によってA/D変換器10b〜10nの入出力特性を測定する。
【0030】
変換装置1の通常の使用状態では、端子T11〜T1nの少なくとも1つに変換すべき信号が入力される。尚、この状態においては、高精度直流電圧源51は端子T11〜T1nの何れにも接続されることはない。端子T11〜T1nから入力された信号は、A/D変換器10a〜10nでディジタル信号にそれぞれ変換され、変換されたディジタル信号は出力補正部21に入力される。
【0031】
出力補正部21は、メモリ22に記憶された理想直線を定義する定数a,b及びA/D変換器10a〜10nの入出力特性を示す入出力特性曲線を定義するパラメータa0〜a6を読み出し、A/D変換器10a〜10nの入出力特性が理想直線に合致するようにA/D変換器10a〜10nから出力されたディジタル信号をそれぞれ補正する。かかる補正によって、A/D変換器10a〜10nから出力されるディジタル信号は、前述した(3)式で示されるディジタル信号に補正され、これにより入出力特性が互いに異なるA/D変換器10a〜10nの入出力特性を理想直線で示される入出力特性に合致させることができる。
【0032】
図3は、補正部20で補正される前後のディジタル信号の積分非直線性誤差の一例を示す図である。尚、図3では、A/D変換器10aから出力されるディジタル信号及び補正部20で補正されたディジタル信号の積分非直線性誤差の一例を示している。図3に示す通り、A/D変換器10aから出力されるディジタル信号の積分非直線性誤差は、入力電圧が−0.5[V]付近又は+0.3[V]付近である場合にほぼ零になるものの、−0.5〜+0.3[V]付近の電圧範囲内である場合には負の方向に大きくなり、−0.5〜+0.3[V]付近の電圧範囲外である場合には正の方向に大きくなる変化を示す。
【0033】
これに対し、補正部20で補正されたディジタル信号の積分非直線性誤差は、−0.7〜+0.7[V]の電圧範囲において零付近の値をとり、A/D変換器10aから出力されるディジタル信号のように入力電圧に応じて積分非直線性誤差が大きく変化することはない。尚、図3ではA/D変換器10aに関する積分非直線性誤差のみを図示しているが、A/D変換器10b〜10nから出力されるディジタル信号を補正部20で補正することによって、図3に示す補正後の積分非直線性誤差と同様の積分非直線性誤差を有するディジタル信号が得られる。
【0034】
以上説明した通り、本実施形態では、A/D変換器10a〜10nの入出力特性が、A/D変換器10a〜10nに共通する入出力特性を示す理想直線に合致するようにA/D変換器10a〜10nから出力されるディジタル信号をそれぞれ補正する補正部20を備えている。このため、入出力特性が互いに異なるA/D変換器10a〜10nの入出力特性を合致させることができる。
【0035】
尚、本実施形態の変換装置1は、オシロスコープ、ディジタイザ等の信号測定装置が備える変換部(測定すべき信号をディジタル信号に変換する変換部)として用いることができる。上述の通り、本実施形態の変換装置1は、入出力特性が互いに異なるA/D変換器10a〜10nの入出力特性を合致させることができるため、信号測定装置の測定精度を向上させることができる。
【0036】
〔第2実施形態〕
図4は、本発明の第2実施形態による変換装置の要部構成を示すブロック図である。図4に示す通り、本実施形態の変換装置2は、複数のD/A変換器(ディジタル/アナログ変換器)30a〜30n(変換器)と補正部40とを備えており、D/A変換器30a〜30nの少なくとも1つを用いてディジタル信号をアナログ信号に変換する。尚、図4に示す高精度直流測定器53は、D/A変換器30a〜30nの入出力特性を測定する際に用いられる。
【0037】
D/A変換器30a〜30nは、出力端が端子T21〜T2nにそれぞれ接続されており、補正部40から出力されるディジタル信号をアナログ信号に変換して端子T21〜T2nからそれぞれ出力する。これらD/A変換器30a〜30nは互いに異なる非線形の入出力特性を有する。このため、D/A変換器30a〜30nに同じ値のディジタル信号が入力されたとしても、必ずしもD/A変換器30a〜30nから同じ電圧値を有する信号が出力されるとは限らない。
【0038】
補正部40は、入力補正部41とメモリ42(記憶部)とを備えており、D/A変換器30a〜30nの入出力特性が、D/A変換器30a〜30nに共通する入出力特性を示す理想直線に合致するようにD/A変換器30a〜30nに入力されるディジタル信号をそれぞれ補正する。尚、本実施形態においても、上記の理想直線は、D/A変換器30a〜30nの入出力特性は考慮せずに、D/A変換器30a〜30nの規格に基づいてユーザによって設定され、その設定方法は第1実施形態と同様の方法を用いることができる。
【0039】
メモリ42は、以上のD/A変換器30a〜30nに共通する入出力特性を示す理想直線を定義する定数及びD/A変換器30a〜30nの入出力特性を示す入出力特性曲線を定義するパラメータを記憶する。尚、メモリ42に記憶される定数は第1実施形態で説明した定数a,bと同様の定数であり、メモリ42に記憶されるパラメータは第1実施形態で説明した(2)式中のパラメータa0〜a6と同様のパラメータである。
【0040】
入力補正部41は、メモリ42に記憶された理想直線を定義する定数及びD/A変換器30a〜30nの入出力特性を示す入出力特性曲線を定義するパラメータを用いて、D/A変換器30a〜30nの入出力特性が理想直線に合致するように、CPU54から出力されてD/A変換器30a〜30nに入力されるディジタル信号をそれぞれ補正する。尚、図4では図示を簡略化するために、D/A変換器30a〜30nに対して1つの入力補正部41が設けられている構成を図示しているが、D/A変換器30a〜30nの各々に入力補正部41が設けられている構成であっても良い。また、図1では、入力補正部41とは別にメモリ42を備える構成を図示しているが、メモリ42が入力補正部41の内部に設けられた構成であっても良い。
【0041】
高精度直流測定器53は、D/A変換器30a〜30nの入出力特性を測定するために必要な十分な高い精度で直流信号を測定する測定器であり、D/A変換器30a〜30nの入出力特性を測定する際に端子T21〜T2nの何れかに接続される。CPU54は、D/A変換器30a〜30nから出力させるべきアナログ信号を指示するディジタル信号を出力する。また、高精度直流測定器53の測定結果を用いて、出力端に高精度直流測定器53が接続されたD/A変換器の入出力特性曲線の近似式を求める(上記(2)式中のパラメータa0〜a6)を求める。
【0042】
D/A変換器30a〜30nの入出力特性を測定する手順は以下の通りである。まず、端子T21〜T2nのうち、入出力特性を測定すべきD/A変換器の入力端が接続された端子に高精度直流測定器53を接続する。ここでは、D/A変換器30aが接続された端子T21に高精度直流測定器53が接続されるとする。次に、CPU54からのディジタル信号の出力を開始して、D/A変換器30aから出力されるディジタル信号を順次高精度直流測定器53で測定する。
【0043】
具体的には、D/A変換器30aの規格上の最小入力信号と最大入力信号とで規定される範囲(数値範囲)を所定の数(例えば、数十程度)で分割して得られる値を変化量としてCPU54に設定する。そして、D/A変換器30aの規格上の最小入力信号から最大入力信号まで、値が変化量の分ずつ変化するディジタル信号を順次出力させ、各々のディジタル信号が入力されたときにD/A変換器30aから出力されるディジタル信号を高精度直流測定器53で順次測定する。
【0044】
次に、高精度直流測定器53の測定結果を順次読み出し、CPU54を用いてD/A変換器30aの入出力特性曲線の近似式を求める。これにより、前述した(2)式中のパラメータa0〜a6と同様のパラメータが求められる。そして、求められたパラメータとユーザによって設定された理想直線を定義する定数(前述した(1)式中の定数a,bと同様の定数)がメモリ42に記憶される。D/A変換器30aの入出力特性の測定が終了すると、高精度直流測定器53を端子T22から端子T2nまで順次接続し、同様の処理によってD/A変換器30b〜30nの入出力特性を測定する。
【0045】
変換装置2の通常の使用状態では、高精度直流測定器53は端子T21〜T2nの何れにも接続されることはない。この状態で、D/A変換器30a〜30nから出力させるべきアナログ信号を指示するディジタル信号がCPU54から出力されると、補正部40の入力補正部41に入力される。入力補正部41は、メモリ42に記憶された理想直線を定義する定数及びD/A変換器30a〜30nの入出力特性を示す入出力特性曲線を定義するパラメータを読み出し、D/A変換器30a〜30nの入出力特性が理想直線に合致するようにCPU54から出力されたディジタル信号をそれぞれ補正する。
【0046】
以上の補正によって、入出力特性が互いに異なるD/A変換器30a〜30nの入出力特性を理想直線で示される入出力特性に合致させることができる。入力補正部41で補正されたディジタル信号はD/A変換器30a〜30nでアナログ信号にそれぞれ変換され、変換されたアナログ信号は端子T21〜T2nを介して外部にそれぞれ出力される。
【0047】
以上説明した通り、本実施形態では、D/A変換器30a〜30nの入出力特性が、D/A変換器30a〜30nに共通する入出力特性を示す理想直線に合致するようにD/A変換器30a〜30nに入力されるディジタル信号をそれぞれ補正する補正部40を備えている。このため、入出力特性が互いに異なるD/A変換器30a〜30nの入出力特性を合致させることができる。
【0048】
尚、本実施形態の変換装置2は、発生させるべき信号の経時変化を示すデータを記憶する記憶部と、この記憶部から読み出されるデータをアナログ信号に変換して出力する変換部とを備えるAWG等の信号発生装置の変換部として用いることができる。上述の通り、本実施形態の変換装置2は、入出力特性が互いに異なるD/A変換器30a〜30nの入出力特性を合致させることができるため、信号の発生精度を向上させることができる。
【0049】
以上、本発明の一実施形態による半導体試験装置について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、互いに異なる非線形の入出力特性を有するA/D変換器10a〜10nを備える変換装置1及び互いに異なる非線形の入出力特性を有するD/A変換器30a〜30nを備える変換装置2について説明した。しかしながら、A/D変換器やD/A変換器に加えて非線形性を有するオペアンプ等の回路が設けられていても本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1,2 変換装置
10a〜10n A/D変換器
20 補正部
21 入力補正部
22 メモリ
30a〜30n D/A変換器
40 補正部
41 入力補正部
42 メモリ
L1 理想直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入出力特性が互いに異なる複数の変換器を備えており、当該変換器を用いて信号の変換を行う変換装置において、
前記複数の変換器に共通する入出力特性を示す理想直線が設定されており、前記複数の変換器の全ての入出力特性が前記理想直線に合致するように前記変換器の各々に対して入出力される信号を補正する補正部を備えることを特徴とする変換装置。
【請求項2】
前記理想直線は、前記変換器に規格上の最小値を有する信号が入力される場合には前記変換器から規格上の最小値を有する信号が出力され、前記変換器に規格上の最大値を有する信号が入力される場合には前記変換器から規格上の最大値を有する信号が出力されるように設定されることを特徴とする請求項1記載の変換装置。
【請求項3】
前記複数の変換器は、ディジタル信号をアナログ信号に変換するディジタル/アナログ変換器であり、
前記補正部は、前記理想直線を示す情報を記憶する記憶部と、当該記憶部に記憶された情報に基づいて前記ディジタル/アナログに入力されるディジタル信号を補正する入力補正部とを備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の変換装置。
【請求項4】
前記複数の変換器は、アナログ信号をディジタル信号に変換するアナログ/ディジタル変換器であり、
前記補正部は、前記理想直線を示す情報を記憶する記憶部と、当該記憶部に記憶された情報に基づいて前記アナログ/ディジタル変換器から出力されるアナログ信号を補正する出力補正部とを備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の変換装置。
【請求項5】
発生させるべき信号の経時変化を示すデータを記憶する記憶部と、当該記憶部から読み出されるデータをアナログ信号に変換して出力する変換部とを備える信号発生装置において、
請求項3記載の変換装置を前記変換部として備えることを特徴とする信号発生装置。
【請求項6】
測定すべき信号をディジタル信号に変換する変換部を備える信号測定装置において、
請求項4記載の変換装置を前記変換部として備えることを特徴とする信号測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−271173(P2010−271173A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123109(P2009−123109)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】