説明

外壁パネルの支持構造

【課題】パネルの4隅等を直接支持することによりパネルのみによって外壁面を構成するフレームレス工法において、縦目地及び横目地をきっちりと位置調整できるようにする。
【解決手段】コーナー部パネル支持装置3は面内水平方向、面内上下方向及び面外方向の3次元調整を可能とする。3次元調整構造は、方立2に縦方向の長孔5a、5bが形成された垂直板部5が固設され、前記垂直板部5の長孔5a、5bを挿通する中空ネジ部材22が設けられ、且つ前記垂直板部5の両側に夫々、前記中空ネジ部材5が挿通された挟持板20A、20Bが配設されるとともに、この挟持板20A、20Bの外側に夫々前記中空ネジ部材22に螺設された締結用ナット21が配設され、かつパネル支持装置3には、室内外方向に長い軸挿通孔10b、10cが形成されるとともに、該軸挿通孔10b、10cを通して前記中空ネジ部材22のねじ孔に挿入された軸部材11により連結された構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル等の外壁部分において、板ガラスなどのパネルを直接的に支持するカーテンウォール構造に係り、詳しくはフレーム枠状のパネル支持材を有さず、パネルの4隅等を直接支持することにより、パネルのみによって外壁面を構成するフレームレス工法における外壁パネルの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年はカーテンウォール構造の多様化によって、フレーム枠状のパネル支持材を有さず、パネル(主として板ガラス)の4隅、または4隅及び側縁の一部を直接支持することによりパネルのみによって外壁面を構成するフレームレス工法が普及しつつある。フレームレス工法のパネル支持構造としては、従来より種々の構造が提案されている。
【0003】
近時では例えば、下記特許文献1に、構造が簡単で施工及びパネルの交換が容易で、更にコスト低減を図ったパネル支持構造が提案されている。同パネルの支持構造は、図15及び図16に示されるように、建物構造体に設けた支持部材に固定される固定ブラケット50と、背面に前記固定ブラケット50に結合されるロッドを備えた上部ブラケット51、及び2分割されて該上部ブラケット51に着脱可能に装着される左右の下部ブラケット52A、52Bからなる正面が方形のブラケットと、平面がほぼ三角形状で前面側に外側に開口し前記面板の角部に挿入される面板挿入穴53a、及び背面側に内側に開口し前記ブラケット51,52A、52Bの角部に挿入されるブラケット挿入穴53bが設けられた複数の面板ファスナー53A〜53Dとを備えるものである。
【0004】
同特許文献1ではパネルの建込みに当たっては、面板Pの各角部に面板ファスナー53A〜53Dをそれぞれ装着し、面板Pの下部の面板ファスナー53A、53Bのブラケット挿入穴53bを、下段部に設けた上部ブラケット51の角部に挿入した後、面板Pを前方に傾けながら上端側面板ファスナ53C、53Dのブラケット挿入穴53aに、それぞれ下部ブラケット52A、52Bを挿入した後、面板Pをほぼ垂直に戻して、下部ブラケット52A、52Bを上部ブラケット51にボルトによって結合し固定を図ることが記載されている。
【特許文献1】特開2001−220848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1の支持構造の場合は、ブラケットを支持するロッドの螺入量を調整することにより室内外方向の位置調整を可能とし、同一平面内に揃えてパネルを設置できるようにしているが、パネル間の縦目地や横目地の位置調整ができず、目地ラインはパネル間でズレを生じ、外観的に歪んで見えるようになるなどの問題があった。
【0006】
また、特許文献1では、効果の一つとして、パネルの交換が容易であるとするが、実際には面板Pの下端隅部に設けた面板ファスナー53A、53Bを上部ブラケット51に嵌合させた状態で、面板Pを前方に傾倒可能な構造とはなっておらず、仮に面板Pを無理に傾倒させると、面板Pや面板ファスナー53A、53Bに過大な曲げ応力が生じ、破損の危険性がある。すなわち、面板Pを容易に傾倒可能な構造としなければ、一部の面板が破損した場合、面板Pの交換を容易に行うことができないなどの問題があった。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、パネルの4隅等を直接支持することによりパネルのみによって外壁面を構成するフレームレス工法において、縦目地及び横目地をきっちりと位置調整できるようにした外壁パネルの支持構造を提供することにある。
【0008】
また、1枚毎に単独で、パネルの取付け(施工)及び取り外し(交換)が容易に行えるようにした外壁パネルの支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、建物の外壁部分に上下左右方向に隣接配置されるパネルを、パネルの隅部同士が突き合わされるコーナー交点部に配置されるとともに、パネルと構造支持体とを連結するコーナー部パネル支持装置によって支持するようにした外壁パネルの支持構造において、
前記コーナー部パネル支持装置は、面内水平方向、面内上下方向及び面外方向の3次元調整を可能としたことを特徴とする外壁パネルの支持構造が提供される。
【0010】
請求項2に係る本発明として、左右方向に隣接するパネル境界部に、パネルの中間側縁部を支持する側縁部パネル支持装置を設けるとともに、該側縁部パネル支持装置は、面内水平方向、面内上下方向及び面外方向の3次元調整を可能とした請求項1記載の外壁パネルの支持構造が提供される。
【0011】
請求項3に係る本発明として、前記コーナー部パネル支持装置及び側縁部パネル支持装置の各パネル支持装置における3次元調整構造は、構造支持体に縦方向の長孔が形成された垂直板部が固設され、前記垂直板部の長孔を挿通する中空ネジ部材が設けられ、且つ前記垂直板部の両側に夫々、前記中空ネジ部材が挿通された挟持板が配設されるとともに、この挟持板の外側に夫々前記中空ネジ部材に螺設された締結用ナットが配設され、かつパネル支持装置に、室内外方向に長い軸挿通孔が形成されるとともに、該軸挿通孔を通して前記中空ネジ部材のねじ孔に挿入された軸部材により連結された構造とされ、
前記パネル支持装置は、前記中空ネジ部材の左右方向位置を調整することにより面内水平方向の調整が可能とされ、前記垂直板部に形成された縦方向の長孔範囲内で前記中空ネジ部材を上下方向に移動させることにより面内上下方向の調整が可能とされ、かつ前記パネル支持装置に形成された前記軸挿通孔範囲内で室内外方向に移動調整されることにより面外方向位置の調整が可能とされる請求項1、2いずれかに記載の外壁パネルの支持構造が提供される。
【0012】
請求項4に係る本発明として、前記コーナー部パネル支持装置は、上段側に位置する左右2枚のパネルを支持する上部ファスナーと、下段側に位置する左右2枚のパネルをそれぞれ支持する左右一対の下部ファスナーとを備え、かつ上段側に位置する左右2枚のパネルの下端側隅部には前記上部ファスナーと係合可能なパネル下部金具が取り付けられるとともに、下段側に位置する左右2枚のパネルの上端側隅部には前記下部ファスナーと係合可能なパネル上部金具が取り付けられ、
前記上部ファスナーとパネル下部金具とは、係合部を中心として前記パネル下部金具と共にパネルが所定の角度範囲で傾倒可能とされ、前記下部ファスナーは、パネル上部金具に対する係合片を有するとともに、コーナー部パネル支持装置に対して着脱自在とされ、前記パネル上部金具は前記係合片が係合される係合溝を有する請求項1〜3いずれかに記載の外壁パネルの支持構造が提供される。
【0013】
請求項5に係る本発明として、前記パネル下部金具は、室外側にパネルの隅部が嵌合されるパネル嵌入溝部が形成されるとともに、室内側に前記上部ファスナーに係合可能な係合溝を有する部材である請求項4記載の外壁パネルの支持構造が提供される。
【0014】
請求項6に係る本発明として、前記パネル上部金具は、室外側にパネルの隅部が嵌合されるパネル嵌入溝部が形成されるとともに、室内側に下部ファスナーに係合可能な係合溝を有する部材である請求項4記載の外壁パネルの支持構造が提供される。
【0015】
請求項7に係る本発明として、前記側縁部パネル支持装置は、左右に位置する2枚のパネルを支持する中間部ファスナーを備えるとともに、左右に位置するパネルの側縁部にはそれぞれ前記中間部ファスナーと係合可能なパネル側縁金具が取り付けられ、
前記中間部ファスナーは、前記パネル側縁金具に対する係合片を有するとともに、側縁部パネル支持装置に対して着脱自在とされ、前記パネル側縁金具は前記係合片が係合される係合溝を有する請求項4〜6いずれかに記載の外壁パネルの支持構造が提供される。
【発明の効果】
【0016】
以上詳説のとおり請求項1〜請求項7記載の本発明によれば、パネルの4隅等を直接支持することによりパネルのみによって外壁面を構成するフレームレス工法において、コーナー部パネル支持装置は、面内水平方向、面内上下方向及び面外方向の3次元調整可能としたため、同一平面内に揃えてパネルを設置できることはもちろんの事、パネル間の縦目地及び横目地の位置、幅調整が可能となり、目地ラインにズレを生じさせることなく直線に調整できるようになる。
【0017】
また、請求項4〜7記載の本発明によれば、1枚毎に単独でパネルの取付け(施工)及び取り外し(交換)が容易に行えるようになるため、施工時に任意の手順によりパネルの取付けが行えるようになる。従って、例えばビル壁面の真ん中から施工を開始できるようになるし、或いは所定箇所を開口のままとしておき、材料や資材の搬入口として活用した後、最後に該搬入口部のパネル取付を行うことができる。さらに、任意位置のパネルを単独で取り外しできるため、破損した際や一部のデザイン変更のために所定のパネルのみを簡単に交換できるようになる。
【0018】
さらに、パネル間の層間変位にも追従可能な構造であるため、地震時にパネルに過大な応力が発生することがなく、パネルの破損を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0020】
(パネルの支持構造)
図1は本発明に係るカーテンウォールの要部姿図、図2はその斜視図、図3はコーナー部パネル支持装置3の拡大矢視図、図4は側縁部パネル支持装置4の拡大斜視図である。
【0021】
図1に示されるように、本カーテンウォール構造1は、ビル等の建物の外壁部において、上下左右方向に隣接配置される板ガラスからなるパネルP、P…が、フレーム枠状のパネル支持材を用いることなく、各パネルP、P…の隅部が突き合うコーナー交点部に配設されたコーナー部パネル支持装置3、3…及び中間側縁部(1点〜3点程度)に配設された側縁部パネル支持装置4、4…によって支持されることにより、実質的にパネルP、P…のみによって外壁を構成するようにしたものである。
【0022】
以下、具体的に前記カーテンウォール構造1について詳述すると、
図2〜図5等に示されるように、建物の室外側部分に、水平方向に間隔をおいて方立2,2…が配設され、この方立2の室外側面に、上下方向に所定の間隔を空けて、ブラケット状の垂直板部5、5…が溶接等によって複数固設され、これら垂直板部5,5…にコーナー部パネル支持装置3、3…、側縁部パネル支持装置4,4…、が取り付けられ、パネルP、P…の各隅角部及び側縁部を支持するようになっている。
【0023】
前記コーナー部パネル支持装置3は、図5に示されるように、主に、前記垂直板部5に対してボルト11によって連結されるとともに、室外側面に上部ファスナー部10aを備える支持装置本体10と、該支持装置本体10の下部側位置にボルト12によって締結される左右一対の下部ファスナー13A、13Bと、パネルPの下端側隅部に夫々設けられるパネル下部金具14A、14Bと、パネルPの上端側隅部に夫々設けられるパネル上部金具15A、15Bとから構成されている。
【0024】
前記支持装置本体10は、詳細には図8に示されるように、平面視で断面略コ字状を成す部材であり、室外側面に断面L字状に形成された上部ファスナー10aを備えるとともに、室外側寄りの下部側面に下部ファスナー13A、13Bの一端を固定するためのネジ孔10dが形成されている。また、室内側寄りの両側面には、室内外方向に長い長孔(軸挿通孔)10b、10cが上下部に夫々形成されるとともに、外側面はズレ止めのために鉛直方向に沿って細かい凹凸条(ギザ)が形成されている。
【0025】
前記上部ファスナー部10aは、上部側パネルP、Pを共通的に支持する部材で、その断面形状は、先端部(係合面)が凸形状とされ、パネル下部金具14A、14Bの係合溝14dが嵌合された状態で、パネルPがパネル下部金具14A、14Bと共に係合部を回転中心として所定の角度範囲、具体的には数度の角度範囲で傾倒可能となっている。
【0026】
また、前記支持装置本体10は、垂直板部5との連結部位において、面内水平方向、面内上下方向及び面外方向の3次元調整が可能となっている。
【0027】
図7に示されるように、前記垂直板部5には上下部にそれぞれ縦方向に長い長孔5a、5bが形成されるとともに、両側面には後述する挟持板20A、20Bのズレ止めを図るために水平方向に沿って細かい凹凸条(ギザ)が形成されている。
【0028】
前記垂直板部5の両側面にはそれぞれ挟持板20A、20Bが配置されるようになっている。この挟持板20A、20Bは、上下部にそれぞれ丸孔20a、20bが形成されるとともに、前記垂直板部5に対する当接面にはズレ止めのために水平方向に沿って細かい凹凸条(ギザ)が形成されている。
【0029】
外面及び内面に夫々ネジが切られた中空ネジ部材22,22を、前記挟持板20A、20Bの丸孔20a、20bおよび前記垂直板部5の長孔5a、5bを挿通させるようにして配置し、前記挟持板20A、20Bの外面側において締結用ナット21,21により挟み付けるようにして固定を図る。なお、前記中空ネジ部材22の頭部にはワッシャ状のガイド板22aが設けられ、先端部には同形状のガイド板23が螺設されるようになっている。なお、図9に示されるように、前記中空ネジ部材22にガイド板23を取り付けた状態で、その長手寸法は前記支持装置本体10の凹部10eの内寸法に整合するようになっている。
【0030】
一方、前記支持装置本体10の取付は、図8に示されるように、凹部10e内に垂直板部5部分を挿入し、外側面に夫々矩形ワッシャ24をあてがい、この矩形ワッシャー24の丸孔24a、支持装置本体10の長孔10b,10cを通して、中空ネジ部材22の中空ネジ孔にボルト11を螺入し締結する。なお、前記矩形ワッシャー24の当接面にはズレ止めのために鉛直方向に沿って細かい凹凸条(ギザ)が形成されている。
【0031】
以上詳説した支持装置本体5部において、3次元方向の調整を行うには、前記中空ネジ部材22の左右方向位置を調整することにより面内水平方向の調整を行い、前記締結用ナット21、21を緩め、前記垂直板部5に形成された縦方向の長孔5a、5b範囲内で前記中空ネジ部材22を上下方向に移動させることにより面内上下方向の調整を行う。これら面内水平方向位置と上下方向位置を調整した後、締結用ナット21,21を締結し挟持板20A、20Bにより垂直板部5を挟み付けるようにして固定した後、支持装置本体10に形成された軸挿通孔10b、10cの範囲内で室内外方向に移動調整することにより面外方向位置の調整を行うようにする。
【0032】
一方、前記下部ファスナー13A、13Bは、図6及び図9に示されるように、パネル境界線(縦目地)を境に対称形状を成す左右一対の部材で、水平方向に向けた係合片13aを有する形状を成している。また、基端部にボルト孔13bを有し、前記支持装置本体10のネジ孔10dにボルト12によって着脱自在に取付けできるようになっている。
【0033】
パネルPの下側隅部に設置されるパネル下部金具14A、14Bは、室外側にパネルPの隅部が嵌合されるパネル嵌入溝部14cが形成されるとともに、室内側に前記上部ファスナー10aに対して係合可能なように下方側に係合溝14dを臨ませた部材である。なお、前記パネル嵌入溝14c内にはパネルPを取り囲むように定形ゴム材26が内装され、パネルPの緩衝材としての機能の他、パネルPを一旦差し込んだならばパネル下部金具14A、14Bが容易に抜脱しないようになっている。
【0034】
一方、パネル上部金具15A、15Bは、室外側にパネルPの隅部が嵌合されるパネル嵌入溝部15cが形成されるとともに、室内側に下部ファスナー13A、13Bが係止される係合溝15dを有する部材であり、前記係合溝15dに、前記下部ファスナー13A、13Bの係合片13aが挿入されパネルPが支持されるようになっている。
【0035】
次に、パネルPの中間側縁部を支持する側縁部パネル支持装置4は、図6に示されるように、主に、前記垂直板部5に対してボルト11によって連結される支持装置本体16と、該支持装置本体16の室外側寄り位置にボルト12によって締結される左右一対の中間部ファスナー17A、17Bと、パネルPの側縁部に設けられるパネル側縁金具18A、18Bとから構成されている。
【0036】
前記中間部ファスナー17A、17Bは、パネル境界線を境に対称形状を成す左右一対の部材であり、室外側に水平方向に向けた係合片17aを有する形状を成している。また、基端部にボルト孔17bを有し、ボルト12によって着脱自在に取付けできるようになっている。
【0037】
前記パネル側縁金具18A、18Bは、室外側にパネルPの側縁部が嵌合されるパネル嵌入溝部18cが形成されるとともに、室内側に前記中間部ファスナー17A、17Bが係止される係合溝18dを有する部材であり、前記係合溝18dに前記中間部ファスナー17A、17Bの係合片17aが横方向から挿入されパネルPが支持されるようになっている。なお、前記パネル嵌入溝18c内にはパネルPを取り囲むように定形ゴム材26が内装され、パネルPの緩衝材としての機能の他、パネルPを一旦差し込んだならば、パネル側縁金具18A、18Bが容易に抜脱しないようになっている。
【0038】
前記支持装置本体16における3次元調整機構は前記コーナー部パネル支持装置3と同様であるため、説明は省略する。
【0039】
(パネルの建込み手順)
次に、パネルPの建込み手順について詳述する。
【0040】
パネルPの建込みに先立って、コーナー部パネル支持装置3部位においては、支持装置本体10を方立2の垂直板部5に前述した要領によって取付け、面内水平方向、面内上下方向及び面外方向の3次元調整を行い、側縁部パネル支持装置4部位においても、支持装置本体16を方立2の垂直板部5に取付け、面内水平方向、面内上下方向及び面外方向の3次元調整を行っておく。
【0041】
パネルPの建込みは、図5に示されるように、予めパネルPの上端側隅部に前記パネル上部金具15A、15Bを取り付けるとともに、下端側隅部に前記パネル下部金具14A、14Bを取り付け、更にパネルPの中間側縁部にパネル側縁金具18A、18Bを取り付けておく。また、前記パネル上部金具15A、15Bに下部ファスナー13A、13Bを仮固定しておくとともに、前記パネル側縁金具18A、18Bに中間部ファスナー17A、17Bを仮固定しておく。仮固定は、隙間にバックアップ材26を詰めることにより行う。
【0042】
以上の準備工程を終えたならば、図11に示されるように、パネルPをクレーン(図示せず)によって、取付け対象壁面部に持ち込んだならば、前記コーナー部パネル支持装置3の上部ファスナー10aに対し、パネル下端側隅部に取付けられたパネル下部金具14A、14Bを係合させるようにしながら、パネル自重をコーナー部パネル支持装置3に預ける(図12参照)。
【0043】
次いで、図13に示されるように、パネルPを垂直状態まで傾動させ、下部ファスナー13A、13Bを支持装置本体10に対しボルト12によって締結するとともに、中間部ファスナー17A、17Bを支持装置本体16に対しボルト12によって締結する。上記要領によって、任意の順序でパネルPを外壁部に建て込むようにする。
【0044】
以上、パネルの建込み方法について説明したが、一部のパネルPが破損した場合の交換については、逆の手順によって破損パネルを撤去することができる。すなわち、パネルPが下端側を回転中心として傾倒可能な構造となっているため、下部ファスナー13A、13Bのボルト12及び中間部ファスナー17A、17Bのボルト12を取り外したならば、パネルPの上端側を室外方向に傾け、そのまま上方に引き抜くことにより撤去が可能である。
【0045】
ところで、本発明に係るカーテンウォール構造1においては、コーナー部パネル支持装置3部位においては、上部ファスナー10aにパネルPの自重を預け上方向に移動可能とされ、かつ上下方向移動に関し、図5に示されるように、パネルPの上端側では、パネル上部金具15A、15Bと下部ファスナー13A、13Bとの間に鉛直方向の変位を許容するように間隙Mが形成されるとともに、側縁部パネル支持装置4部位においては、パネル側縁金具18A、18Bと中間部ファスナー17A、17Bとの間に鉛直方向の変位を許容するように間隙Mが形成され、さらに水平方向に関しては、図9及び図10に示されるように、パネルPの上端側では、パネル上部金具15A、15Bと下部ファスナー13A、13Bとの間に水平方向の変位を許容するように間隙Mが形成されるとともに、側縁部パネル支持装置4部位においては、パネル側縁金具18A、18Bと中間部ファスナー17A、17Bとの間に水平方向の変位を許容するように間隙Mが形成され、パネルPの層間変位に追従可能な構造となっている。従って、図14に示されるように、地震時に層間変位を起こすことにより、パネルPに過大な応力が発生することがなく、パネル破損を未然に防止できる構造となっている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係るカーテンウォールの要部姿図である。
【図2】カーテンウォールの要部斜視図である。
【図3】コーナー部パネル支持装置3の拡大斜視図である。
【図4】側縁部パネル支持装置4の拡大斜視図である。
【図5】図2のV−V線矢視図(縦断面図)である。
【図6】コーナー部パネル支持装置3および側縁部パネル支持装置4の分解斜視図である。
【図7】コーナー部パネル支持装置3の3次元調整機構を示す、方立2に固設した垂直板部5部分の分解斜視図である。
【図8】支持装置本体10取付部分の分解斜視図である。
【図9】コーナー部パネル支持装置3のファスナー取付部を示す横断面図(図5のIX−IX線矢視図)である。
【図10】側縁部パネル支持装置4のファスナー取付部を示す横断面図(図5のX−X線矢視図)である。
【図11】パネルの建込み手順を示す図(その1)である。
【図12】パネルの建込み手順を示す図(その2)である。
【図13】パネルの建込み手順を示す図(その3)である。
【図14】層間変位に対する挙動図である。
【図15】従来のパネル支持装置を示す斜視図である。
【図16】その側面図である。
【符号の説明】
【0047】
1…カーテンウォール構造、2…方立、3…コーナー部パネル支持装置、4…側縁部パネル支持装置、5…垂直板部、10・16…支持装置本体、10a…上部ファスナー部、10c…長孔(軸挿通孔)、11・12…ボルト、13A・13B…下部ファスナー、14A・14B…パネル下部金具、15A・15B…パネル上部金具、17A・17B…中間ファスナー、18A・18B…パネル側縁金具、20A・20B…挟持板、21…締結用ナット、22…中空ネジ部材、24…矩形ワッシャ、P…パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁部分に上下左右方向に隣接配置されるパネルを、パネルの隅部同士が突き合わされるコーナー交点部に配置されるとともに、パネルと構造支持体とを連結するコーナー部パネル支持装置によって支持するようにした外壁パネルの支持構造において、
前記コーナー部パネル支持装置は、面内水平方向、面内上下方向及び面外方向の3次元調整を可能としたことを特徴とする外壁パネルの支持構造。
【請求項2】
左右方向に隣接するパネル境界部に、パネルの中間側縁部を支持する側縁部パネル支持装置を設けるとともに、該側縁部パネル支持装置は、面内水平方向、面内上下方向及び面外方向の3次元調整を可能とした請求項1記載の外壁パネルの支持構造。
【請求項3】
前記コーナー部パネル支持装置及び側縁部パネル支持装置の各パネル支持装置における3次元調整構造は、構造支持体に縦方向の長孔が形成された垂直板部が固設され、前記垂直板部の長孔を挿通する中空ネジ部材が設けられ、且つ前記垂直板部の両側に夫々、前記中空ネジ部材が挿通された挟持板が配設されるとともに、この挟持板の外側に夫々前記中空ネジ部材に螺設された締結用ナットが配設され、かつパネル支持装置に、室内外方向に長い軸挿通孔が形成されるとともに、該軸挿通孔を通して前記中空ネジ部材のねじ孔に挿入された軸部材により連結された構造とされ、
前記パネル支持装置は、前記中空ネジ部材の左右方向位置を調整することにより面内水平方向の調整が可能とされ、前記垂直板部に形成された縦方向の長孔範囲内で前記中空ネジ部材を上下方向に移動させることにより面内上下方向の調整が可能とされ、かつ前記パネル支持装置に形成された前記軸挿通孔範囲内で室内外方向に移動調整されることにより面外方向位置の調整が可能とされる請求項1、2いずれかに記載の外壁パネルの支持構造。
【請求項4】
前記コーナー部パネル支持装置は、上段側に位置する左右2枚のパネルを支持する上部ファスナーと、下段側に位置する左右2枚のパネルをそれぞれ支持する左右一対の下部ファスナーとを備え、かつ上段側に位置する左右2枚のパネルの下端側隅部には前記上部ファスナーと係合可能なパネル下部金具が取り付けられるとともに、下段側に位置する左右2枚のパネルの上端側隅部には前記下部ファスナーと係合可能なパネル上部金具が取り付けられ、
前記上部ファスナーとパネル下部金具とは、係合部を中心として前記パネル下部金具と共にパネルが所定の角度範囲で傾倒可能とされ、前記下部ファスナーは、パネル上部金具に対する係合片を有するとともに、コーナー部パネル支持装置に対して着脱自在とされ、前記パネル上部金具は前記係合片が係合される係合溝を有する請求項1〜3いずれかに記載の外壁パネルの支持構造。
【請求項5】
前記パネル下部金具は、室外側にパネルの隅部が嵌合されるパネル嵌入溝部が形成されるとともに、室内側に前記上部ファスナーに係合可能な係合溝を有する部材である請求項4記載の外壁パネルの支持構造。
【請求項6】
前記パネル上部金具は、室外側にパネルの隅部が嵌合されるパネル嵌入溝部が形成されるとともに、室内側に下部ファスナーに係合可能な係合溝を有する部材である請求項4記載の外壁パネルの支持構造。
【請求項7】
前記側縁部パネル支持装置は、左右に位置する2枚のパネルを支持する中間部ファスナーを備えるとともに、左右に位置するパネルの側縁部にはそれぞれ前記中間部ファスナーと係合可能なパネル側縁金具が取り付けられ、
前記中間部ファスナーは、前記パネル側縁金具に対する係合片を有するとともに、側縁部パネル支持装置に対して着脱自在とされ、前記パネル側縁金具は前記係合片が係合される係合溝を有する請求項4〜6いずれかに記載の外壁パネルの支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−57299(P2006−57299A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239179(P2004−239179)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【Fターム(参考)】