説明

外断熱形成具、外断熱構造物およびその構築方法

【課題】 経済的かつ簡単に外断熱が形成できる外断熱形成具、外断熱構造物およびその構築方法を提供することである。
【解決手段】 外断熱形成具1は、断熱板2の上下部における複数の貫通孔6に位置決め具3がそれぞれ取り付けられ、これらの上部側の位置決め具3に上端支持筋4が挿入されるとともに、下部側の位置決め具3には下端支持材5が挿入され、該下端支持材5の両端部には支圧板10、11が設けられ、該支圧板11の一方が取外自在に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外断熱形成具、外断熱構造物およびその構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の外断熱は断熱性能が非常に優れているため、近年、特に注目を集めている。しかし、バルコニーや共用外廊下などの躯体から突出する部分の外断熱は施工が非常に煩雑になる他、完全な外断熱を形成することができないため、この部分から熱橋(ヒートブリッジ)が発生するという問題があった。このような問題を解決するために、図8に示すような突出部30の外断熱構造物31が知られている。これは躯体33との接続部において、端部が断熱材34で覆われたバルコニー32を梁35上面にボルト36で接合したものである。また、その他の外断熱構造物としては、例えば特開2004−346672号公報の発明がある。
【特許文献1】特開2004−346672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の外断熱構造物は、端部を断熱材で覆ったバルコニーを梁上面にボルト接合しているため、床高となって階高を大きくとれず、非経済的になるという問題があった。
【0004】
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、経済的かつ簡単に外断熱を形成することができる外断熱形成具、外断熱構造物およびその構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための本発明の外断熱形成具は、断熱板の上下部に複数の貫通孔が開口され、これら上部側の貫通孔に上端支持筋が挿入されるとともに、下部側の貫通孔には下端支持材が挿入され、該下端支持材の両端部には支圧板が設けられ、該支圧板の一方が取外自在であることを特徴とする。また上下部における複数の貫通孔には位置決め具が嵌合され、これら上部側の位置決め具に上端支持筋が挿入されるとともに、下部側の位置決め具には下端支持材が挿入されたことを含む。また位置決め具は筒体と、該筒体の両端部外周に形成された鍔片とからなり、該鍔片の一方が取外自在であることを含む。また位置決め具は耐火材であることを含む。また上端支持筋および下端支持材は防錆機能を備えたもの、または防錆処理されたものであり、該下端支持材は上端支持筋よりも大径であることを含むものである。
【0006】
また外断熱構造物は、躯体と、該躯体からの突出部との間に、断熱板の上下部に複数の貫通孔が開口され、これら上部側の貫通孔に上端支持筋が挿入されるとともに、下部側の貫通孔には下端支持材が挿入され、該下端支持材の両端部には支圧板が設けられ、該支圧板の一方が取外自在である外断熱形成具が設置され、該外断熱形成具の上端支持筋の一端側が躯体側の鉄筋に接続されるとともに、上端支持筋の他端側が突出部側の鉄筋に接続されたことを特徴とする。また上下部における複数の貫通孔には位置決め具が嵌合され、これら上部側の位置決め具に上端支持筋が挿入されるとともに、下部側の位置決め具には下端支持材が挿入されたことを含む。また位置決め具は、筒体と、該筒体の両端部外周に形成された鍔片とからなり、該鍔片の一方が取外自在であることを含む。また位置決め具は耐火材であることを含む。また上端支持筋および下端支持材は防錆機能を備えたもの、または防錆処理されたものであり、該下端支持材は上端支持筋よりも大径であることを含む。また突出部はバルコニー、共用外廊下、庇、パラペットであることを含むものである。
【0007】
また外断熱構造物の構築方法は、断熱板の上下部に複数の貫通孔が開口され、これら上部側の貫通孔に上端支持筋が挿入されるとともに、下部側の貫通孔には下端支持材が挿入され、該下端支持材の両端部には支圧板が設けられ、該支圧板の一方が取外自在である外断熱形成具を、建物の型枠における躯体と、該躯体からの突出部との境界部に設置した後、該躯体側の鉄筋を配筋して外断熱形成具の上端支持筋の一端側に接続するとともに、突出部側の鉄筋を配筋して上記上端支持筋の他端側に接続した後、前記型枠内にコンクリートを打設することを特徴とする。また上下部における複数の貫通孔には位置決め具が嵌合され、これら上部側の位置決め具に上端支持筋が挿入されるとともに、下部側の位置決め具には下端支持材が挿入されたことを含む。また位置決め具は筒体と、該筒体の両端部外周に形成された鍔片とからなり、該鍔片の一方が取外自在であることを含む。また位置決め具は耐火材であることを含む。また上端支持筋および下端支持材は防錆機能を備えたもの、または防錆処理されたものであり、該下端支持材は上端支持筋よりも大径であることを含むものである。
【発明の効果】
【0008】
上端支持筋と下端支持材とが位置決め具で断熱板に取り付けられた外断熱形成具により、外断熱構造物が簡単にできるようになる。また上端支持筋および下端支持材が防錆機能を備えたことにより、上端支持筋および下端支持材を錆から守る。また断熱板の下端支持材が上端支持筋よりも大径であることにより、突出部と躯体とを強固に接合することができる。また位置決め具は筒体と、該筒体の両端部外周に形成された鍔片とからなり、該鍔片の一方が取外自在であることにより、断熱板の貫通孔に簡単に取り付けることができるとともに、上端支持筋と下端支持材との位置決めも簡単にできる。また位置決め具が耐火材であることにより、上端支持筋と下端支持材とを耐火被覆して火災時に保護する。またバルコニー、共用外廊下、庇、パラペットの突出部と躯体とを外断熱形成具で強固に繋ぐことができるとともに、突出部からの熱橋を効果的に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本願発明の外断熱形成具、外断熱構造物およびその構築方法について説明する。はじめに外断熱形成具について説明し、その後に、この外断熱形成具を用いた外断熱構造物およびその構築方法について説明する。なお、各実施の形態において同じ構成は同じ符号を付して説明し、異なった構成は異なった符号を付して説明する。
【0010】
図1〜図3は、外断熱形成具の実施の形態を示すものであり、この外断熱形成具1は適宜厚さで平面矩形の断熱板2と、この断熱板2の上下部における位置決め具3によって取り付けられた上端支持筋4と下端支持材5とから構成されている。
【0011】
この断熱板2は無機系発泡材によって、例えばバルコニーなどの厚さと同じで、かつ自立できる幅に形成されたものであり、上部側の8つの貫通孔6と、下部側の3つの貫通孔6とに位置決め具3が嵌合されている。この位置決め具3は塩化ビニールなどの合成樹脂で形成された筒体7と、この筒体7の両端部外周に形成された鍔片8とから構成され、該鍔片8の一方は筒体7と一体形成されているが、他方は外周部の雄ネジ部9にねじ込まれて取外自在になっている。この上部側と下部側の位置決め具3とは同じ構成であり、単に径が異なっているだけである。
【0012】
この上部側の位置決め具3には、躯体からバルコニーなどの突出部に配筋される耐力筋と同径の上端支持筋4が挿入されている一方、下部側の位置決め具3には、前記の上端支持筋4よりも大径な下端支持材5が挿入されている。この下端支持材5は防錆機能を有するもの、または防錆処理を施したもの、例えばステンレス製のネジ節鉄筋であり、その両端部に支圧板10、11が設けられている。これら支圧板10の一方は一体形成されて内側面にテーパが形成されているが、他方の支圧板11はボルト12で取外自在になっている。
【0013】
また、上記の位置決め具3は耐火材で形成することもでき、この耐火材により断熱板2の貫通孔6における上端支持筋4と下端支持材5とが耐火被覆されるので火災などから保護される。この耐火材で形成された位置決め具3は材質のみが異なり、上記位置決め具3と同じ構成である。
【0014】
この上端支持筋4と下端支持材5とは、それぞれ上下の位置決め具3に挿入して断熱板2からの突出長さを決めた後に、位置決め具3内に接着剤13を充填して固定する。この突出長さとは、断熱板2の両面から突出した長さであり、躯体側が長く突出し、突出部側がこれよりも短く突出している。なお、この上端支持筋4は8本、下端支持材5は3本に限定されるものではなく、これ以下またはこれ以上の本数であっても良い。
【0015】
図3は、外断熱形成具1の組立方法を示したものであり、工場や現場において行うものである。はじめに断熱板2の上下の貫通孔6に位置決め具3を取り付ける。これは一方の鍔片8を取り外した筒体7を貫通孔6に挿入し、該筒体7の雄ネジ部9に前記鍔片8をねじ込んで取り付ける。次に、上部側の位置決め具3に上端支持筋4を挿入して、位置決めをした後、位置決め具3内に接着剤13を充填して固定する。次に、一方の支圧板11を取り外した下端支持材5を下側の位置決め具3に挿入するとともに、前記支圧板11を下端支持材5の端部にボルト12で取り付けた後、位置決め具3内に接着剤13を充填して、外断熱形成具1を組立形成する。
【0016】
なお、上記の外断熱形成具1の実施の形態においては、上端支持筋4と下端支持材5とを位置決め具3に挿入したが、これらの上端支持筋4と下端支持材5とを、貫通孔6に直接挿入した外断熱形成具(図示せず)を形成することもできる。
【0017】
また図4および図5は、上記の外断熱形成具1を使用した外断熱構造物14の実施の形態を示したものである。この外断熱構造物14は鉄筋コンクリート造の共同住宅であり、この共同住宅の躯体15と、この躯体15から突出した突出部16であるバルコニー17との境界部に外断熱形成具1が設置されて、バルコニー17側からの熱橋を防いでいる。
【0018】
この外断熱形成具1の断熱板2における上端支持筋4の一端部が、躯体15側のスラブ筋18と溶接接合されているとともに、他端部がバルコニーの上端筋19と溶接接合されている。また下端支持材5は一方が梁20内に埋設され、他方がバルコニー17内に埋設されて、該バルコニー17を支持している。また梁20の前面(外側)に断熱材21が貼り付けられた躯体15の外面を覆う外断熱構造物1を構成している。
【0019】
なお、上記の実施の形態において突出部16はバルコニー17として説明したが、このバルコニー17を共有外廊下、庇またはパラペットとすることもできる。また上記の実施の形態においては上端支持筋4と下端支持材5とが位置決め具3に挿入された外断熱形成具1を使用したが、これらの上端支持筋4と下端支持材5とが貫通孔6に直接挿入された外断熱形成具(図示せず)を使用することもできる。
【0020】
次に、外断熱構造物の構築方法を図6および図7に基づいて説明する。この外断熱構造物の構築方法は、鉄筋コンクリート造の共同住宅の躯体15とバルコニー17との境界部に上記の外断熱形成具1を設置するものである。
【0021】
まず、現場において、外断熱形成具1を上記と同じ方法で組立形成する。この外断熱形成具1は、鉄筋コンクリート造の共同住宅の躯体15とバルコニー17との境界部に設置する数だけ組立形成する。
【0022】
次に、図6に示すように、型枠22における躯体15とバルコニー17との境界部、すなわち型枠22内に設置された梁前面の断熱材21上面に、外断熱形成具1を横方向に連続して並べ、断熱板2同士を密接させて接続する(図示せず)。この断熱板2で躯体15とバルコニー17とが完全に遮断されるが、これらを一体的に接合するために、断熱板2の上端支持筋4と下端支持材5との一端側が躯体15側の梁筋23内に配筋されるとともに、他端側が突出部16側に配筋されている。
【0023】
次に、図7に示すように、躯体側の型枠22にスラブ筋24を配筋して上端支持筋4の一端側に溶接接合するとともに、バルコニー側の型枠22に鉄筋25を配筋して、その上端筋26を上端支持筋4の他端側に溶接接合する。そして、これらの鉄筋の配筋が完了した後に、型枠22内にコンクリート27を打設すると、図4に示すような外断熱構造物14が構築される。
【0024】
なお、この外断熱構造物の構築方法の実施の形態は、バルコニー17を対象として説明したが、共有外廊下、庇またはパラペットを対象とした場合でも同じ方法で形成する。また上記の実施の形態においては、上端支持筋4と下端支持材5とを位置決め具3に挿入した外断熱形成具1を使用したが、これらの上端支持筋4と下端支持材5とを貫通孔6に直接挿入した外断熱形成具(図示せず)を使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】外断熱形成具の斜視図である。
【図2】外断熱形成具の断面図である。
【図3】(1)〜(3)は外断熱形成具の組み立てを示す断面図である。
【図4】外断熱構造物の断面図である。
【図5】外断熱構造物の要部の拡大断面図である。
【図6】外断熱構造物の構築方法の断面図である。
【図7】鉄筋を配筋した外断熱構造物の構築方法の断面図である。
【図8】従来の外断熱構造物の断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 外断熱形成具
2 断熱板
3 位置決め具
4 上端支持筋
5 下端支持材
6 貫通孔
7 筒体
8 鍔片
9 雄ねじ部
10、11 支圧板
12、36 ボルト
13 接着剤
14、31 外断熱構造物
15、33 躯体
16、30 突出部
17、32 バルコニー
18 スラブ筋
19 上端筋
20、35 梁
21、34 断熱材
22 型枠
23 梁筋
24 スラブ筋
25 鉄筋
26 上端筋
27 コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱板の上下部に複数の貫通孔が開口され、これら上部側の貫通孔に上端支持筋が挿入されるとともに、下部側の貫通孔には下端支持材が挿入され、該下端支持材の両端部には支圧板が設けられ、該支圧板の一方が取外自在であることを特徴とする外断熱形成具。
【請求項2】
上下部における複数の貫通孔には位置決め具が嵌合され、これら上部側の位置決め具に上端支持筋が挿入されるとともに、下部側の位置決め具には下端支持材が挿入されたことを特徴とする請求項1に記載の外断熱形成具。
【請求項3】
位置決め具は、筒体と、該筒体の両端部外周に形成された鍔片とからなり、該鍔片の一方が取外自在であることを特徴とする請求項2に記載の外断熱形成具。
【請求項4】
位置決め具は、耐火材で形成されたことを特徴とする請求項2または3に記載の外断熱形成具。
【請求項5】
上端支持筋および下端支持材は防錆機能を備えたもの、または防錆処理されたものであり、該下端支持材は上端支持筋よりも大径であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の外断熱形成具。
【請求項6】
躯体と、該躯体からの突出部との間に、請求項1〜5のいずれかの外断熱形成具が設置され、該外断熱形成具の上端支持筋の一端側が躯体側の鉄筋に接続されるとともに、上端支持筋の他端側が突出部側の鉄筋に接続されたことを特徴とする外断熱構造物。
【請求項7】
突出部はバルコニー、共用外廊下、庇、パラペットであることを特徴とする請求項6に記載の外断熱構造物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかの外断熱形成具を、建物の型枠における躯体と、該躯体からの突出部との境界部に設置した後、該躯体側の鉄筋を配筋して外断熱形成具の上端支持筋の一端側に接続するとともに、突出部側の鉄筋を配筋して上記上端支持筋の他端側に接続した後、前記型枠内にコンクリートを打設することを特徴とする外断熱構造物の構築方法。
【請求項9】
突出部はバルコニー、共用外廊下、庇、パラペットであることを特徴とする請求項8に記載の外断熱構造物の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−207364(P2006−207364A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225176(P2005−225176)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000228350)日本カイザー株式会社 (14)
【Fターム(参考)】