説明

外用医薬組成物

【課題】本発明は損傷や欠損を受けた患部の状態を改善又は治療する効果に優れ、要因となる疾患を効率よく改善又は治療する外用医薬組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、創傷治癒促進剤、ケラチン親和性の高い抗真菌剤及び保湿剤を含有する外用医薬組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種要因により損傷や欠損が生じた皮膚の状態を改善又は治療するための外用医薬組成物に関する。詳しくは、ひび、あかぎれ、あれ、角化症、乾皮症、さめ肌、湿疹、皮膚炎、虫さされ、水虫、たむし、いんきん、すり傷、切り傷、口内炎、口唇炎、口角炎、きれ痔、さけ痔等に伴う皮膚や粘膜などの損傷や欠損を改善又は治療することにより、要因となる皮膚疾患を効率よく改善又は治療する外用医薬組成物に関する。特に、上記要因により損傷や欠損を受けた患部の治癒効果を高めることにより健全な皮膚状態を取り戻し、各疾患に対して優れた改善効果又は治癒効果を発揮する外用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ひび、あかぎれ、あれ、角化症、乾皮症、さめ肌、湿疹、皮膚炎、虫さされ、水虫、たむし、いんきん、すり傷、切り傷、口内炎、口唇炎、口角炎、きれ痔、さけ痔等の疾患には、患部のあれ、ただれ、乾燥、ひびわれ、炎症等の損傷や欠損の症状を誘発する場合が多くある。
例えば湿疹、皮膚炎においては、まず何らかの刺激が原因となって軽いむくみを伴った赤い発疹が生じ、更に化膿した場合はただれになったりかさぶたが出来たりする。更に湿疹、皮膚炎をくり返すと皮膚が乾燥し、厚ぼったくなって硬くなりひびわれたりする。
角化症や乾皮症に代表される冬場の皮膚トラブルは、加齢による皮膚の水分及び角質細胞脂質の低下や石鹸などの過度使用により肌のブロック機能の破壊が原因となる。更に冬場は特に気温が低下し、空気中の水分も少なく乾燥状態になり、肌の水分も蒸発しやすくなる。この為に肌の新陳代謝機能が低下し、ターンオーバー機能が正常に働かなくなり、本来剥がれ落ちていくべき古い角質が肌表面に付着したままになり、カサカサやコチコチ状態になる。更に症状が進むと、ひび割れが生じ、あかぎれになったり出血したりする場合もある。
水虫の場合は、大きく分けて三つの症状に分けられる。先ず趾間型と呼ばれる水虫で一番多いタイプでは、足の指の間が赤く腫れ上がったり、皮が剥けたりする。次に白くふやけてジメジメし、赤く剥けてただれてくる。時にはただれて剥がれた皮のまわりでは、残った皮が硬くなってひび割れた状態になることもある。次に多い小水疱型の場合、小さな水ぶくれが集まりまわりが赤くなって皮が剥けてただれてくる。また角化型の場合は、ガサガサして角質が厚く硬くなり、ボロボロと皮が剥けたり、ひび割れてあかぎれのようになったりする。
きれ痔の場合は、太くて硬い便の通過により肛門が切れ、出血と激しい痛みが生じる疾患である。これが慢性化すると患部が潰瘍状になり、肛門が狭くなったり、排便障害を引き起こしたりする。
【0003】
従来から湿疹、皮膚炎、虫さされの治療には、ステロイド抗炎症剤、非ステロイド抗炎症剤、創傷治癒促進剤、保湿剤、生薬抽出物等が用いられている。しかしながらステロイド抗炎症剤は強力な抗炎症効果により十分な効果を発揮する反面、重篤な副作用も多く発生することが知られている。更にステロイド抗炎症剤の作用として、肉芽形成(組織修復)抑制作用があり、長期連用の場合はかえって症状を悪化させる場合があることも知られている。非ステロイド抗炎症剤、創傷治癒促進剤、保湿剤、生薬抽出物等は、軽度の症状に対しては効果を発揮するものの、一般的には重度の症状の改善に関しては十分な効果が得られていない。また非ステロイド抗炎症剤の中には、局所刺激や感作刺激性が高いものが多くあることが知られている。角化症や乾皮症の対処法としては、保湿剤、非ステロイド抗炎症剤、抗ヒスタミン剤を配合した皮膚外用剤が多く用いられている。しかしながら保湿剤は二次的には皮膚症状の悪化を改善するが、即効的に悪化している皮膚の状態を改善する効果は無いと考えられている。また、非ステロイド抗炎症剤、抗ヒスタミン剤も、皮膚の損傷や欠損を治癒する作用は無いと考えられており、主に角化症や乾皮症に付随する炎症やかゆみを抑えるために角化症や乾皮症の対処療法用の薬剤に配合されることがある。
水虫の治療には各種抗真菌剤が用いられている。近年、抗菌力が高く且つ患部への浸透性や貯留性の高い抗真菌剤が開発され、1日1回の投与でも治療効果を発揮する抗真菌剤も開発されている。
また、きれ痔、さけ痔の治療には炎症を抑えるためにステロイド抗炎症剤、痛みを抑えるために局所麻酔剤等が用いられることが多いが、前述のようにステロイド抗炎症剤には肉芽形成(組織修復)抑制作用があり、局所麻酔剤には感作刺激性があり損傷や欠損を受けた患部には相応しくない場合があることも知られている。
【0004】
また、アラントイン又はアラントイン類縁物質、パンテノール又はパンテノール類縁物質はそれぞれ詳細な作用機序は異なるものの、皮膚組織修復作用や抗炎症作用を目的として、医薬品や化粧品等に配合されることが多い。医薬品としては、ステロイド抗炎症剤、非ステロイド抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、保湿剤等の佐薬成分として配合され、湿疹、皮膚炎、虫さされ等に伴う付随症状の改善又は治療効果が期待されている。しかしながらその効果は、未だ満足できるものではない。例えば第2720246号特許公報には、アラントイン又はその誘導体、パンテノール類縁物質であるパントテン酸又はその誘導体を単独或いは同時に配合した皮膚外用剤の効果は満足できるものではないことから、トレハロースを配合することにより相乗的に効果が亢進されることが記載されている。更にパンテノールは、ファルネソール及び/又はその誘導体と配合することによりその効果が亢進することが報告されている(第3104938号特許公報)。
【0005】
一方、抗真菌剤は、水虫、ぜにたむし、いんきんたむし、カンジダ症、澱風、脂漏性皮膚炎、爪白癬などの疾患に用いられている。近年効果の優れた抗真菌剤が開発されてきており、その中でもケラチン親和性の高い抗真菌剤が効果の面で優れており、近年幅広く用いられるようになってきた。従来までの抗真菌剤は1日2〜3回の塗布が必要であったが、ケラチン親和性の高い抗真菌剤は皮膚角質層での貯留性が高く、1日1回の塗布でも十分な効果が認められ、コンプライアンスの向上に役立っている。その効果は、細胞膜合成阻害などの作用機序などによるものであることが知られている。
一方特表2005-529875に、ピリミジン系抗真菌剤であるシクロピロクスオラミンに、創傷治癒の効果があることが報告されており、アラントインやパンテノール類縁物質と組み合わせた医薬組成物も例示されているが、シクロピロクスオラミンとアラントインやパンテノール類縁物質との組み合わせによる効果については何ら記載されていない。また組織修復剤と抗真菌剤の組み合わせに関しては、既に商品化された例があり、特開2005-104924には抗真菌剤、特にモルホリン系化合物、ベンジルアミン系化合物、イミダゾール系化合物から選ばれる抗真菌剤とビタミンA類及び/又はビタミンE類、及びトコフェロール及び/又はレチノールを組み合わせて抗真菌剤の殺菌効果を高めた医薬組成物の例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】第2720246号特許公報
【特許文献2】第3104938号特許公報
【特許文献3】特表2005-529875号公報
【特許文献4】特開2005-104924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的の一つは、各種要因により損傷や欠損を受けた患部の状態を改善又は治療する効果に優れ、要因となる疾患を効率よく改善又は治療する外用医薬組成物を提供することである。また本発明は、創傷治療促進剤の創傷治癒効果を高める方法を提供することも目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、創傷治癒促進剤にケラチン親和性の高い抗真菌剤を配合すると、各種要因により損傷や欠損を受けた患部の状態を改善又は治療する効果を相乗的に亢進させることを見出した。次にこれらに保湿剤を配合することにより、その効果を更に相乗的に亢進させることを見出した。
従って、本発明は、創傷治癒促進剤、ケラチン親和性の高い抗真菌剤及び保湿剤を含有する外用医薬組成物である。本発明の外用医薬組成物は、患部の状態を改善又は治療する効果が増強されている。
また、本発明は、創傷治癒促進剤とケラチン親和性の高い抗真菌剤とを組み合わせて配合することを含む、前記創傷治癒促進剤の創傷治癒効果を増強する方法でもある。さらに、本発明は、創傷治癒促進剤とケラチン親和性の高い抗真菌剤および保湿剤とを組み合わせて配合することを含む、前記創傷治癒促進剤の創傷治癒効果を増強する方法でもある。
【0009】
より具体的には、本発明は、創傷治癒促進剤がアラントイン及び/又はアラントイン類縁物質、パンテノール及び/又はパンテノール類縁物質、レチノール及び/又はレチノール類縁物質、トコフェロール及び/又はトコフェロール類縁物質及びアズレン及び/又はアズレン類縁物質からなる群より選ばれる、上記外用医薬組成物である。
さらに、本発明は、ケラチン親和性の高い抗真菌剤がビフォナゾール、ケトコナゾール、ネチコナゾール塩酸塩、ラノコナゾール、ルリコナゾール、テルビナフィン塩酸塩、ブテナフィン塩酸塩、アモロルフィン塩酸塩からなる群より選ばれる、上記いずれかの外用医薬組成物でもある。
また、本発明は、保湿剤としてグリセリン、尿素、ヒアルロン酸及びそれらの塩、水素添加大豆リン脂質、セラミド、乳酸及びそれらの塩、ピロリドンカルボン酸及びそれらの塩からなる群より選ばれる上記いずれかの外用医薬組成物でもある。
さらに、本発明には、前記創傷治癒促進剤の創傷治癒効果を増強する方法が含まれ、前記方法は創傷治癒促進剤とケラチン親和性の高い抗真菌剤とを組み合わせて配合することを含む。また、本発明は、保湿剤を更に添加することを含む、前記方法でもある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の外用医薬組成物は、創傷治癒促進剤、ケラチン親和性の高い抗真菌剤及び保湿剤を含む。
創傷治癒促進剤としては、各種作用により皮膚組織活性化作用を有する有効成分であれば、特に限定されない。具体的には、創傷治癒促進剤にはアラントイン及び/又はアラントイン類縁物質、パンテノール及び/又はパンテノール類縁物質、レチノール及び/又はレチノール類縁物質、トコフェロール及び又はトコフェロール類縁物質、及びアズレン及びアズレン類縁物質が含まれる。
アラントイン又はアラントイン類縁物質は、創傷治癒・抗炎症作用を有する有効成分である。アラントイン類縁物質とは、ヒダントイン骨格を持ち創傷治癒・抗炎症作用を有する有効成分であり、具体的には、アラントイン類縁物質にはアラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウムが含まれるが、これらに限定されない。パンテノール及びパンテノール類縁物質は、創傷治癒作用を有する有効成分である。パンテノール類縁物質とは、創傷治癒作用を有する有効成分であり、パンテノールのエステルやパントテン酸の塩類が含まれる。具体的には、パンテノール類縁物質には、パントテニルエチルエーテル、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アセチルパンテニルエチルエーテルが含まれるが、これらに限定されない。アズレン及びアズレン類縁物質は、創傷治癒・抗炎症作用を有する有効成分である。アズレン類縁物質とは、アズレン骨格を持ち創傷治癒・抗炎症作用を有する有効成分であり、具体的にはジメチルイソプロピルアズレン、アズレンスルホン酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない。レチノール及びレチノール類縁物質は、上皮組織の維持・成長促進作用により創傷治癒を促進する有効成分である。レチノール類縁物質とは、レチノールのエステルが含まれる。具体的には、レチノール類縁物質には、レチノール酢酸エステル、レチノールパルミチン酸エステルが含まれるが、これらに限定されない。トコフェロール及びトコフェロール類縁物質は、末梢循環障害改善作用により創傷治癒を促進する有効成分である。トコフェロール類縁物質とは、トコフェロールのエステルやその塩類が含まれる。具体的には、トコフェロール類縁物質には、トコフェロールコハク酸エステルカルシウム、トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールニコチン酸エステルが含まれるが、これらに限定されない。
【0011】
ケラチン親和性の高い抗真菌剤は、ケラチンとの親和性が高いため、経皮投与により抗真菌作用を発揮する有効成分である。好ましくは、本発明で使用するケラチン親和性の高い抗真菌剤は、患部での貯留性に優れて、1日約1回の塗布で効果が認められる有効成分である。具体的には、ケラチン親和性の高い抗真菌剤にはイミダゾール系抗真菌剤であるビフォナゾール、ケトコナゾール、ネチコナゾール塩酸塩、ラノコナゾール、ルリコナゾール、アリルアミン系抗真菌剤であるテルビナフィン塩酸塩、ベンジルアミン系抗真菌剤であるブテナフィン塩酸塩及びモルホリン系抗真菌剤であるアモロルフィン塩酸塩が含まれる。ケラチンに対する親和性は常法に従ってin vitroで各抗真菌剤のケラチンに対する吸着性を測定することによって評価することができる。例えば、内田らは、テルビナフィンのケラチン親和性に関する検討をヒト毛髪由来のケラチン粉末を用いて行っており(日本真菌学会雑誌、34(2), 207-212, 1993)、彼らの方法に準じて抗真菌剤のケラチン親和性を評価することができる。抗真菌剤のケラチン親和性はpHや薬剤:ケラチンの濃度比に影響されるが、一般に、健常皮膚の正常pH範囲であるpH5.0付近において、薬剤:ケラチンの濃度比が1:1,000の場合にケラチンへの吸着率が30%以上である抗真菌剤はケラチン親和性の高い抗真菌剤と考えられる。
保湿剤としては、各種作用により保湿作用を有する有効成分であれば、特に限定されない。具体的には、保湿剤としてグリセリン、尿素、ヒアルロン酸及びそれらの塩類、水素添加大豆リン脂質、セラミド、乳酸及びそれらの塩類、ピロリドンカルボン酸及びそれらの塩類が含まれる。
【0012】
本発明の外用医薬組成物中、上述の創傷治癒促進剤は用いる創傷治癒促進剤によるが、全体の0.01〜10質量%、好ましくは0.03〜5質量%とすることができる。ケラチン親和性の高い抗真菌剤は用いる抗真菌剤にもよるが全体の0.1〜5質量%、好ましくは0.5〜2質量%とすることができる。保湿剤は、用いる保湿剤にもよるが全体の0.001〜80質量%、好ましくは0.01〜50質量%とすることができる。
本発明の外用医薬組成物において、創傷治癒促進剤、ケラチン親和性の高い抗真菌剤及び保湿剤はそれぞれ2種以上を配合することもできるが、その場合はそれぞれについての総量が上述した範囲となるように配合するのが好ましい。
【0013】
損傷や欠損への効果判定の実験モデルとして、皮膚を切除する欠損創、焼灼による熱傷、メスなどによる切創モデルが用いられている。例えば、山浦らは幼牛の血液より得られた組織呼吸賦活物質ソルコセリルを主とした軟膏、ゼリー剤の評価でRonsenらの方法に準じた切創モデルを応用し、ソルコセリルの治癒促進効果を確かめている。(応用薬理22(4)565-579(1981))。また、創耐測定装置も安価に作ることができ再現性の良い結果を得ている。従って、本発明の皮膚外用剤の治療効果はこれらのいずれの方法によっても評価することが出来るが、切創モデル使用して山浦らの方法に準じて行うのが好ましい。
具体的には、本発明の外用医薬組成物の治療効果は例えば、以下のようにして評価することが出来る。ラットの除毛背部皮膚に正中線で左右対称に長さ15mmの切創をハサミ等で作製し、切創の中央部各1箇所を絹製縫合糸で縫合し、効果を評価すべき試験組成物の適切量、例えば30〜70mgを縫合直後より1日1〜2回、切創部皮膚の左右いずれかに数時間、例えば6時間程度適用する。適用後、ラットは直ちに円筒形金網に移し、検体の経口摂取を防止する。これらの操作を数日間、例えば4〜6日間繰り返し、最終日の前日に抜糸を行い、最終日の翌日に炭酸ガス安楽死させ、切創部皮膚を短冊状に切り取り創耐張力を測定することによって治療効果を評価することが出来る。創耐張力(TS)は例えば山浦(応用薬理 22(4) 565-579(1981))の装置を改良した装置で測定する。すなわち短冊状に切り取った切創部皮膚の片側を固定し、反対部に重量を徐々に加え引っ張り、開口するまで必要な重量を求める。効果の評価は、以下の式(I)により算出することによって行うことができる。より具体的には、式(I)に従って、各試験組成物について治癒促進率を基に算出し、例えば治癒促進率が15%未満の場合に「治癒促進効果無し」と、治癒促進率が15%以上25%未満の場合に「やや治癒促進効果有り」、治癒促進率が25%以上の場合に「治癒促進効果あり」と判定することが出来る。対照としては、実際には何も適用せずに組成物を塗布する擬似操作のみを行った実験群を使用することができる。
【0014】
治癒促進率=(検体のTS−対照部のTS)/対照部のTSx100 (I)
【0015】
本発明の外用医薬組成物は、上述の、創傷治癒促進剤、ケラチン親和性の高い抗真菌剤、保湿剤を常法に従って各種基剤成分と配合することにより調製することが出来る。基剤として使用し得る材料のいずれも本発明の外用医薬組成物の調製のために用いることが出来る。そのような基剤の例には、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、ゲル化炭化水素、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素;ステアリン酸、ミリスチン酸及びオレイン酸等の高級脂肪酸;セタノール、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコール等の高級脂肪アルコール;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロプル及びアジピン酸ジイソプロピル等の脂肪酸エステル油;トリイソオクタン酸グリセリン及びトリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル等の多価アルコール脂肪酸エステル;モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、テトラステアリン酸ポリオキシエチレン(60)ソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(60)ソルビット、ポリオキシエチレン(60)ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリコール(4EO)、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(10EO)、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテル等の非イオン性界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム及びセチル硫酸ナトリウム等のイオン性界面活性剤;プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール及びポリエチレングリコール等の多価アルコール;カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリル化デンプン300及びポリビニルピロリドン等の高分子化合物;ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム及びリン酸水素ナトリウム等のpH調整剤;エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン及び酢酸エチル等の有機溶剤;塩化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム及びエデト酸ナトリウム等の安定化剤;メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウム等の防腐剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本発明の外用医薬組成物を調製する場合は、上記成分及び水等の媒体を混合して調製するが、その配合割合に特に制限は無く、例えば、水0〜80質量%、炭化水素0〜99質量%、高級脂肪酸0〜25質量%、高級脂肪アルコール0〜25質量%、脂肪酸エステル油0〜50質量%、多価アルコール脂肪酸エステル0〜30質量%、界面活性剤0〜10質量%、多価アルコール0〜90質量%、高分子化合物0〜10質量%、pH調整剤0〜10質量%、有機溶剤0〜99質量%、安定化剤0〜10質量%、防腐剤0〜5質量%である。
本発明の皮膚外用剤には、創傷治癒促進剤、ケラチン親和性の高い抗真菌剤及び保湿剤のほかに以下の薬物を配合することも可能であるが、これらに限定されない。ジフェンヒドラミン及びその塩類、クロルフェニラミン及びその塩類、イソチペンジル及びその塩類、ジフェニルイミダゾール等の抗ヒスタミン剤、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン酪酸エステル及びプレドニゾロン吉草酸酢酸エステル等のステロイド剤、ブフェキサマク、ウフェナマート、イブプロフェンピコノール、インドメタシン、ケトプロフェン、フェルビナク、ピロキシカム、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸及びその塩類、トウキエキス及びシコンエキス等の抗炎症剤、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、エルゴカルシフェロール、タカルシトール等の脂溶性ビタミン、アスコルビン酸、ピリドキシン塩酸塩、ニコチン酸アミド等の水溶性ビタミン、イソプロピルメチルフェノール、クロルヘキシジン塩酸塩、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、セトリミド等の殺菌剤、リドカイン及びその塩類、ジブカイン及びその塩類、プロカイン及びその塩類、テトラカイン及びその塩類、アミノ安息香酸エチル等の局所麻酔剤、l-メントール、dl-カンフル、ハッカ油及びボルネオール等の清涼化剤、ナファゾリン塩酸塩、テトラヒドロゾリン塩酸塩及びメチルエフェドリン塩酸塩等の血管収縮剤、ニコチン酸ベンジル、ノニル酸ワニリルアミド及びトウガラシチンキ等の引赤剤等を配合することができる。
【0017】
以下の実施例において、本発明の外用医薬組成物の製造方法及びその治療効果についてより詳細に説明する。本発明の外用医薬組成物は、通常の軟膏剤、クリーム剤、乳剤、ゲル剤、外用液剤、ラッカー剤、エアゾール剤、貼付剤、パップ剤、坐剤、注入剤の製造方法に従って製造することが出来る。
【実施例1】
【0018】
アラントイン、水素添加大豆リン脂質、テルビナフィン塩酸塩、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス及び白色ワセリンを加熱混合し均一にし、これを更に冷却攪拌して以下の組成の軟膏剤を得た。
【0019】

【実施例2】
【0020】
アラントイン、水素添加大豆リン脂質、ケトコナゾール及びプラスチベースを加熱混合し均一にし、これを更に冷却攪拌して以下の組成の軟膏剤を得た。
【0021】

【実施例3】
【0022】
ラノコナゾール、ジフェンヒドラミン、ポリオキシエチレンモノステアレート、ミリスチン酸イソプロピル及びジイソプロパノールアミンを加熱溶解して均一にする。次ぎに精製水の一部及びグリセリンにカルボキシビニルポリマーを分散した液に加え、攪拌して乳化させ、アラントインを精製水の一部に加熱溶解した液を加え、冷却攪拌して以下の組成のクリーム剤を得た。
【0023】

【実施例4】
【0024】
パンテノール、テルビナフィン塩酸塩、1,3-ブチレングリコール及びエタノールを攪拌し均一溶解し、これに尿素を精製水に溶解した液を加え、攪拌して以下の組成の外用液剤を得た。
【0025】

【実施例5】
【0026】
パンテノール、グリセリン、ネチコナゾール塩酸塩、ポリエチレングリコール400及びエタノールを攪拌し均一に溶解して以下の組成の外用液剤を得た。
【0027】

【実施例6】
【0028】
パンテノール、グリセリン、ビフォナゾール及びジフェンヒドラミンをエタノールの一部に攪拌溶解した。次ぎにエタノールの一部にヒプロメロースを均一に分散させた溶液に、カルボキシビニルポリマーを精製水に分散した溶液を加え、攪拌した後、ジイソプロパノールアミンを加えゲル基剤を調製した。これに前述のエタノール溶液を加え、均一に攪拌して以下の組成のゲル剤を得た。
【0029】

【実施例7】
【0030】
パンテノール、グリセリン、ラノコナゾール、クロルフェニラミンマレイン酸塩及びトウキエキスをグリセリンに加え攪拌し均一にした。次ぎにカルボキシビニルポリマーをマクロゴール400に分散した溶液を加え、攪拌した後、ジイソプロパノールアミン及び精製水を加え、均一に攪拌して以下の組成のゲル剤を得た。
【0031】

【実施例8】
【0032】
ジメチルイソプロピルアズレン、グリセリン、テルビナフィン塩酸塩、酢酸エチル及びエタノールを攪拌し均一溶解し、これにピロキシリンを加え、攪拌して以下の組成のラッカー剤を得た。
【0033】

【実施例9】
【0034】
創傷治癒促進剤及びケラチン親和性の高い抗真菌剤の相乗効果
創傷治癒促進剤及びケラチン親和性の高い抗真菌剤を含む外用医薬組成物とそれぞれ単独で含む外用医薬組成物の治癒効果を比較した。
1)試験組成物および比較組成物の調製
以下の組成物を調製した。各組成物の配合は表1に示した。表中の各成分に対する数値は組成物全体に対する各成分の質量%である。
【0035】
試験組成物1:創傷治癒促進剤としてアラントインを含み、ケラチン親和性の高い抗真菌剤としてテルビナフィン塩酸塩を含む外用医薬組成物を調製した。配合量及びその他の基剤成分は、表1に示す。調製方法は、まずカルボキシビニルポリマーを精製水に分散し加熱した。別にテルビナフィン塩酸塩、セタノール、ステアリルアルコール、トリイソオクタン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60及びジイソプロパノールアミンを加熱し均一溶解した。これを先に加熱したカルボキシビニルポリマー分散液に攪拌しながら加え、乳化物を調製した。次ぎに、精製水の残余にアラントインを加えて加熱して溶解した液を得られた乳化物に加え、冷却してクリーム剤を得た。
【0036】
試験組成物2:創傷治癒促進剤としてパンテノールを含むこと以外は試験組成物1の調製と同様の操作を行い、クリーム剤を得た。
試験組成物3:ケラチン親和性の高い抗真菌剤としてビフォナゾールを含むこと以外は試験組成物2の調製と同様の操作を行い、クリーム剤を得た。
【0037】
比較組成物1:テルビナフィン塩酸塩を含まないこと以外は試験組成物1の調製と同様の操作を行い、クリーム剤を得た。
比較組成物2:テルビナフィン塩酸塩を含まないこと以外は試験組成物2の調製と同様の操作を行い、クリーム剤を得た。
比較組成物3:アラントインを含まないこと以外は試験組成物1の調製と同様の操作を行い、クリーム剤を得た。
【0038】
2)各組成物の治癒促進率の測定
次ぎに、調製した各試験組成物の治癒効果を測定した。
ラットの除毛背部皮膚に正中線で左右対称に長さ15mmの切創をハサミで作成し、切創の中央部各1箇所を絹製縫合糸で縫合し、検体50mgを縫合直後より1日1回、切創皮膚の左右いずれか片方に6時間適用した。適用後、ラットは直ちに円筒形金網に移し、各試験組成物の経口摂取を防止した。これらの操作を5日間繰り返し、4日目の適用後に抜糸を行い、6日目に炭酸ガス安楽死させ、切創部皮膚を短冊状に切り取り創耐張力測定用とした。創耐張力(TS)は山浦(応用薬理22(4) 565-579(1981))の装置を改良した装置で測定した。すなわち短冊状に切り取った切創部皮膚の片側を固定し、反対部に重量を徐々に加えて引っ張り、開口するまで必要な重量を求めた。
治癒効果は、以下の式(I)により算出する治癒促進率を各組成物について計算して比較した。対照としては、実際には何も適用せずに組成物を塗布する疑似操作のみを行った実験群を使用した。
治癒促進率=(検体のTS−対照部のTS)/対照部のTS×100 (I)
式(I)に従って算出した治癒促進率が15%未満の場合に「治癒促進効果なし」と、治癒促進率が15%以上25%未満の場合に「やや治癒促進効果有り」、治癒促進率が25%以上の場合に「治癒促進効果あり」と判定した。
結果を以下の表1に示す。表中、各成分に関する数値は組成物に対する各成分の質量%である。
【0039】
表1.ラット損傷皮膚モデルにおける治癒促進効果
(創傷治癒促進剤とケラチン親和性の高い抗真菌剤の組み合わせ効果)

【0040】
創傷治癒促進剤単独では、式(I)によって算出された治癒促進率から「治癒促進効果なし」と判定された。またケラチン親和性の高い抗真菌剤単独でも、ほとんど治癒促進効果が認められず「治癒促進効果なし」と判定された。しかし、創傷治癒促進剤にケラチン親和性の高い抗真菌剤を配合することにより、治癒促進率が高くなり相乗的な効果の増強が確認された。
【実施例10】
【0041】
保湿剤の治癒促進率に対する効果
創傷治癒促進剤及びケラチン親和性の高い抗真菌剤を含む外用医薬組成物に保湿剤を加えて、実施例9に記載した方法を用いて治癒促進率に対する影響を調べた。各組成物の配合成分を治癒促進率と共に表2に示した。表中の各成分に関する数値は組成物全体に対する各成分の質量%である。
【0042】
試験組成物4:創傷治癒促進剤としてパンテノールを含み、ケラチン親和性の高い抗真菌剤としてテルビナフィン塩酸塩を含む外用医薬組成物を調製した。まずテルビナフィン塩酸塩、セタノール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、ポリオキシエチレン(40)セチルエーテル及びジイソプロパノールアミンを加熱し均一溶解した。別にパンテノール及びクエン酸を精製水に溶解し加熱した。これを先に加熱した油相に攪拌しながら加え乳化物を調製した。次ぎにこの乳化物を冷却してクリーム剤を得た。
【0043】
試験組成物5:創傷治癒促進剤としてパンテノールを含み、ケラチン親和性の高い抗真菌剤としてテルビナフィン塩酸塩及び保湿剤としてグリセリンを含む外用医薬組成物を調製した。まずテルビナフィン塩酸塩、セタノール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、ポリオキシエチレン(40)セチルエーテル及びジイソプロパノールアミンを加熱し均一溶解した。別にパンテノール、グリセリン及びクエン酸を精製水に溶解し加熱した。これを先に加熱した油相に攪拌しながら加え乳化物を調製した。次ぎに冷却し、クリーム剤を得た。
【0044】
試験組成物6:保湿剤として乳酸を含むこと以外は試験組成物5の調製と同様の操作を行い、クリーム剤を得た。
試験組成物7:保湿剤として水素添加大豆リン脂質を含むこと以外は試験組成物5の調製と同様の操作を行い、クリーム剤を得た。
試験組成物8:保湿剤として尿素を含むこと以外は試験組成物5の調製と同様の操作を行い、クリーム剤を得た。
試験組成物9:創傷治癒促進剤としてアラントインを含み、ケラチン親和性の高い抗真菌剤としてブテナフィン塩酸塩を含むこと以外は試験組成物5の調製と同様の操作を行い、クリーム剤を得た。
試験組成物10:ケラチン親和性の高い抗真菌剤としてケトコナゾールを含むこと以外は試験組成物9の調製と同様の操作を行い、クリーム剤を得た。
【0045】
比較組成物4:創傷治癒促進剤及びケラチン親和性の高い抗真菌剤を含まないこと以外は試験組成物5の調製と同様の操作を行い、クリーム剤を得た。
比較組成物5:ケラチン親和性の高い抗真菌剤を含まないこと以外は試験組成物5の調製と同様の操作を行い、クリーム剤を得た。
【0046】
表2.ラット損傷皮膚モデルにおける治癒促進効果(保湿剤との組み合わせ効果)

【0047】
表2続き

【0048】
保湿剤単独では、治癒促進率から「治癒促進効果なし」と判定された。しかし創傷治癒促進剤とケラチン親和性の高い抗真菌剤の組み合わせに更に保湿剤を配合することにより、治癒促進率が高くなり相乗的な効果の増強が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、パンテノール、パンテニルエチルエーテル、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウムおよびアセチルパンテニルエチルエーテルからなる群より選ばれる創傷治癒促進剤、
ii)テルビナフィン塩酸塩、ブテナフィン塩酸塩、ケトコナゾールおよびビフォナゾールからなる群より選ばれるケラチン親和性の高い抗真菌剤、及び
iii)保湿剤、
を含有することを特徴とする外用医薬組成物。
【請求項2】
(a)i)アラントイン、及び
ii)テルビナフィン塩酸塩、ブテナフィン塩酸塩、または、ケトコナゾール、及び、
iii)保湿剤、
または、
(b)i)パンテノール、
ii)フォナゾール、及び、
iii)保湿剤、
を含有することを特徴とする請求項1記載の外用医薬組成物。
【請求項3】
保湿剤がグリセリン、尿素、ヒアルロン酸及びそれらの塩、水素添加大豆リン脂質、セラミド、乳酸及びそれらの塩、ピロリドンカルボン酸及びそれらの塩からなる群より選ばれる請求項1または2記載の外用医薬組成物。
【請求項4】
創傷を有する疾患の治療に使用するための請求項1〜3のいずれか1項記載の外用医薬組成物。

【公開番号】特開2012−126733(P2012−126733A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−58174(P2012−58174)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【分割の表示】特願2006−249250(P2006−249250)の分割
【原出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000150028)株式会社池田模範堂 (8)
【Fターム(参考)】