説明

外用製剤

【課題】非ステロイド性抗炎症剤を含有する外用剤を収納するにあたり、外用剤中に析出物や分離などが生じず、容器内面層の剥離がなく、異臭の発生もおこらない容器に、当該外用剤を収納した外用製剤を提供する。
【解決手段】ナイロン樹脂を少なくとも材料の一部とする容器に、非ステロイド性抗炎症剤を含有する外用剤が収納されてなる外用製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非ステロイド性抗炎症剤を含有する外用剤を容器に収納するにあたり、外用剤中に析出物や分離が生じず、容器内面層の剥離が生じず、異臭の発生もおこらない容器に、当該外用剤を収納した外用製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
液剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲルクリーム剤、ゲル剤など外用剤等は、チューブ容器に収納されたものが衛生的で使用性(硬さなどに依らず、チューブを押すだけで、必要な量を塗布することができるなどの塗布し易さやボトルのようにかさばらないなどの持ち運び易さなど)に優れているため、広く使用されている。チューブ容器の材質としては、アルミニウムなどの金属製のものと、樹脂製のものとに大別できるが、金属製のものはチューブ内容物との相互作用(内容成分のチューブ内面への吸着など)が少なく、気密性の高さ、使用時のエアバック(内容物吐出後の空気の戻りのこと。エアバックすることで、酸化による変色などにより、内容物の安定性が悪くなることがある。)が少ないというメリットはあるものの、押し出しや折り曲げによるチューブ形状の変形や破れ、また破れに基づく内容物の汚染、さらには破れた切り口により指などを負傷する恐れがある。
【0003】
一方、樹脂製のものは、弾力性や復元性を有するため、金属製のようにチューブの変形や破れが生じにくく、さらには加工性、耐水性(耐腐食性)、印刷適合性などのメリットはあるが、チューブ内面層への内容物中の有効成分の吸着、分離、析出物の発生、内面層の剥離や異臭の発生など、内容物の安定性に影響を与えることがある。
【0004】
外用剤中の成分と容器との関係については、脂溶性ビタミンを含有する半固形剤をチューブ容器に収容した際に、脂溶性ビタミンの容器への吸着を抑制するため、容器胴部をアルミニウム箔を基体とし、内部空間側にポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニルなどを積層したシートで構成した容器に充填することが知られている(特許文献1)。
しかしながら、非ステロイド性抗炎症剤を含有する外用剤を容器に収納した場合における、当該外用剤の安定性と容器の材料との関係を示した報告はない。
【特許文献1】特開2005−343834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが、非ステロイド性抗炎症剤を含有する外用剤を種々の樹脂フィルムで積層された容器に収納して安定性を検討したところ、特許文献1等で広く使用されているポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートを内部空間層に用いた容器に収納した場合には、析出物や分離が生じることが判明した。
従って、本発明は、非ステロイド性抗炎症剤を含有する外用剤を収納するにあたり、外用剤中に析出物や分離などが生じず、容器内面層の剥離がなく、異臭の発生もおこらない容器に、当該外用剤を収納した外用製剤を提供することを課題とする。すなわち、脂溶性ビタミンの容器への吸着抑制を課題とする前掲特許文献1と、非ステロイド性抗炎症剤を含有する外用剤の容器における析出物や分離発生抑制等を課題とする本発明とでは、技術的思想が明確に相違するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、非ステロイド性抗炎症剤を含有する外用剤を収納すべき容器について、その材料につき種々の検討を行ったところ、全く意外にもナイロン樹脂を少なくとも材料の一部とする容器を用いると、外用剤中における経時的に生じる析出物や分離が抑制されることを見出した。そして、容器内面層の剥離もなく、異臭の発生もおこらないなどの優れた性質を備えていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明はナイロン樹脂を少なくとも材料の一部とする容器に非ステロイド性抗炎症剤を含有する外用剤が収納されてなる外用製剤を提供するものである。
また、本発明は、ナイロン樹脂を少なくとも材料の一部とする、非ステロイド性抗炎症剤を含有する外用剤収納用容器及び非ステロイド性抗炎症剤を含有する外用剤を収納する外用製剤の製造のための、ナイロン樹脂を少なくとも材料の一部とする容器の使用を提供するものである。さらには、本発明はナイロン樹脂を少なくとも材料の一部とする容器に非ステロイド性抗炎症剤を含有する外用剤(なお、当該外用剤には脂溶性ビタミンは含まない)が収納されてなる外用製剤に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の外用製剤は、析出物や分離が抑制され、容器内面層の剥離がなく、異臭の発生もおこらない。従って、品質が向上した非ステロイド性抗炎症剤含有外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明にかかる外用剤は、非ステロイド性抗炎症剤を含有する外用剤であれば、特に制限されない。非ステロイド性抗炎症剤としては、例えば、メフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸等のフェナム酸系、アセメタシン、インドメタシン、インドメタシンファルネシル、エドトラク、ジクロフェナクナトリウム、ジクロフェナクカリウム、スリンダク、ナブトメン、フェンブフェン、プログルメタシンマレイン酸塩、モフェゾラク等のアリール酢酸系、アミノブロフェン、イブプロフェン、オキサプロジン、ケトプロフェン、ザルトプロフェン、チアプロフェン酸、ナプロキセン、フルルビプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、フェノプロフェンカルシウム、プラノプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム等のプロピオン酸系、アンピロキシカム、テノキシカム、ピロキシカム、メロキシカム、ロルノキシカム等のオキシカム系等の酸性抗炎症剤が挙げられる。このうち、インドメタシン、ケトプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、ピロキシカム、フェルビナク、フルルビプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム等を配合した外用剤において効果が優れており、さらにインドメタシンを配合した外用剤において、特に効果が優れている。
これらの非ステロイド性抗炎症剤の含有量は、用いる薬剤によって異なるが、外用剤中に0.1〜10質量%が好ましく、さらに0.2〜5質量%が好ましい。抗炎症剤がインドメタシンの場合は、0.5〜2質量%が特に好ましい。
【0010】
本発明にかかる外用剤とは、非ステロイド性抗炎症剤を含有する外用剤であって、外用に適した剤形であれば、特に限定されるべきものではないが、例えば、液剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲルクリーム剤やゲル剤などの剤形が挙げられる。
【0011】
以下、本発明における外用剤の各剤形につき説明する。液剤、クリーム剤、ゲルクリーム剤及びゲル剤は、アルコール、ゲル化剤、油分、水、及び界面活性剤などを含有する。
【0012】
本発明において、アルコールは、好ましくは低級アルコール、より好ましくは炭素数1〜3のアルコールが挙げられる。炭素数1〜3のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等が挙げられる。中でもイソプロパノールがより好ましい。
【0013】
本発明において、液剤におけるアルコール含量は、外用剤中に通常25〜60質量%、好ましくは30〜55質量%である。クリーム剤におけるアルコール含量は、外用剤中に通常0〜25質量%、好ましくは0〜10質量%である。ゲルクリーム剤におけるアルコール含量は、外用剤中に通常25〜60質量%、好ましくは30〜50質量%、特に好ましくは30〜40質量%である。ゲル剤におけるアルコール含量は、外用剤中に通常25〜60質量%、より好ましくは30〜55質量%である。
【0014】
本発明において、ゲル化剤は、例えば、カルボキシビニルポリマーなどのアクリル酸系高分子、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース系高分子、ポリビニルアルコール等が挙げられる。本発明において、液剤におけるゲル化剤の含有量は、外用剤中に通常0〜5質量%、より好ましくは0.05〜5質量%である。クリーム剤におけるゲル化剤の含有量は、外用剤中に通常0〜5質量%、より好ましくは0.05〜2質量%である。ゲルクリーム剤におけるゲル化剤の含有量は、外用剤中に通常0.01〜5質量%、より好ましくは0.05〜5質量%、特に好ましくは0.5〜2.5質量%である。ゲル剤におけるゲル化剤の含有量は、外用剤中に通常0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜5質量%である。
【0015】
本発明において、油分は、例えば、スクワラン、流動パラフィン等の炭化水素類や、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル及びミリスチン酸オクチルドデシル等のエステル類等が挙げられる。本発明において、液剤における油分の含量は、外用剤中に通常0〜10質量%、より好ましくは1〜8質量%である。クリーム剤における油分の含量は、外用剤中に通常5〜30質量%、より好ましくは7〜30質量%である。ゲルクリーム剤における油分の含量は、外用剤中に通常5〜30質量%、より好ましくは7〜30質量%、特に好ましくは7〜20質量%である。ゲル剤における油分の含量は、外用剤中に通常0〜10質量%、より好ましくは1〜8質量%である。
【0016】
本発明において、界面活性剤とは、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が挙げられ、特に非イオン性界面活性剤が好ましい。非イオン性界面活性剤の具体例としては、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、エチレングリコールモノ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、メチルグルコシド脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド等の多価アルコール脂肪酸エステル又は多価アルコールアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンフィトスタノール、ポリオキシエチレンコレステロール、ポリオキシエチレンコレスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシエチレンエーテル;ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンメチルグルコシド脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン植物油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のエーテルエステル等が挙げられ、特にグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが好ましい。グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルにおける脂肪酸の炭素数は、12〜18、特に18であるのが好ましい。また、非イオン性界面活性剤のHLBが2〜18が好ましく、特に3〜17が好ましい。例えば、グリセリン脂肪酸エステルのHLBが3〜10が好ましく、特に4〜8が好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルのHLBが2〜10が好ましく、特に3〜6が好ましい。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのHLBが9〜18が好ましく、特に14〜17が好ましい。
【0017】
本発明において、液剤の界面活性剤の含有量は、外用剤中に通常0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%である。クリーム剤の界面活性剤の含有量は、外用剤中に通常0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%である。ゲルクリーム剤の界面活性剤の含有量は、外用剤中に通常0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%である。ゲル剤の界面活性剤の含有量は、外用剤中に通常0〜10質量%、より好ましくは0〜5質量%である。
本発明において、液剤の水の含有量は、外用剤中に通常20〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。クリーム剤の水の含有量は、外用剤中に通常20〜90質量%、より好ましくは40〜80質量%である。ゲルクリーム剤の水の含有量は、外用剤中に通常20〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%、特に好ましくは40〜50質量%である。ゲル剤の水の含有量は、外用剤中に通常20〜60質量%、より好ましくは30〜50質量%である。
【0018】
なお、本発明にかかる外用剤は、非ステロイド性抗炎症剤以外の薬効成分や各種任意成分を所望に応じて含有させることが可能である。例えば、pH調節剤、保存剤、安定化剤及び湿潤剤等を含有することが可能である。
【0019】
ここで、他の薬効成分としては特に限定されず、例えば、抗ヒスタミン剤、他の抗炎症剤、鎮痒剤、抗真菌剤、角質軟化剤、収斂・皮膚保護剤、局所麻酔剤、保湿剤、清涼化剤等が挙げられる。これらの他の有効成分は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
抗ヒスタミン剤としては、例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン、ラウリル硫酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸イソチペジル等が挙げられる。
他の抗炎症剤としては、例えば、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、吉草酸酢酸プレドニゾロン、ジフルプレドナート、吉草酸酢酸ジフルコルトロン、フルオシノロンアセトニド、フルドキシコルチド、フルオシノニド、ハルシノニド、アムシノニド、ピバル酸フルメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、吉草酸デキサメタゾン、プロピオン酸デキサメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、酪酸クロベタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、酢酸ジフロラゾン、酪酸プロピオン酸ベタメタゾン等が挙げられる。
鎮痒剤としては、例えば、クロタミトン、サリチル酸メチル等が挙げられる。
【0021】
抗真菌剤としては、例えば、硝酸ミコナゾール、ビフォナゾール、塩酸クロコナゾール、クロトリマゾール、硝酸エコナゾール、硝酸イソコナゾール、硝酸オキシコナゾール、硝酸スルコナゾール、ケトコナゾール、塩酸ネチコナゾール、ナイスタチン、ピマリシン、シッカニン、トリコマイシン、バリオチン、トルシクラート、トルナフテート、塩酸ブテナフィン、テルビナフィン、複合ウンデシレン酸、シクロピロクスオラミン、エキサラミド、ハロプロジン、フェニルヨードウンデシレン酸等が挙げられる。
角質軟化剤としては、例えば、サリチル酸、尿素等が挙げられる。
収斂・皮膚保護剤としては、例えば、グアイアズレン、ポビドンヨード、ヘパリン類似物質等が挙げられる。
【0022】
局所麻酔剤としては、例えば、アミノ安息香酸エステル、塩酸オキシブプロカイン、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル、塩酸ブピバカイン、塩酸プロカイン、塩酸メビバカイン、塩酸ロピバカイン水和物、オキセサゼイン、ピペリジノアセチルアミノ安息香酸エチル、リドカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。
保湿剤としては、例えば、尿素、ヘパリン類似物質、ピロリドンカルボン酸、コラーゲン、γ−オリザノール、γ−リノレイン酸、リノール酸、スクワレン、スクワラン、グリセリン、ポリエチレングリコール、コレステロール、トリグリセリド、セラミド、脂溶性ビタミン(ビタミンA類、ビタミンD類、ビタミンE類等)等が挙げられる。
【0023】
清涼化剤としては、ウイキョウ油、カンフル、ケイヒ油、ゲラニオール、ハッカ油、ベルガモット油、ボルネオール、メントール等が挙げられる。
【0024】
pH調節剤としては、クエン酸、リン酸、酒石酸、乳酸などの有機酸、塩酸などの無機酸、水酸化ナトリウムなどの水酸化アルカリ、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンなどのアミン類等が挙げられる。
保存剤としては、バラオキシ安息香酸エステル類、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。
安定化剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エデト酸塩等が挙げられる。
【0025】
また、湿潤剤としては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、オレイルアルコール、1,3−ブチレングリコール、イソプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。
【0026】
本発明における外用剤のpHは、皮膚刺激等の点から、通常pH4〜8、好ましくはpH5〜7である。なお、pHは例えば外用剤1質量部に水10質量部を加えてよく振り混ぜてから、pHメーター(例えば、堀場製作所:F−24)を用いて25℃で測定すればよい。
【0027】
本発明において、液剤は、ゲル化剤を膨潤後、アルコール、油分、水及び界面活性剤を含む溶解相と撹拌混合させることで調製することができる。クリーム剤は、油分、アルコール及び脂溶性の界面活性剤を含む油相成分と、水溶性の界面活性剤及びゲル化剤を含む水相成分を60〜80℃に加熱後、乳化混合し、冷却することで調製することができる。ゲルクリーム剤は、油分、アルコール及び脂溶性の界面活性剤を含む油相成分と、水溶性の界面活性剤及びゲル化剤を含む水相成分を60〜80℃に加熱後、乳化混合し、冷却することで調製することができる。ゲル剤は、ゲル化剤を膨潤後、アルコール、油分、水及び界面活性剤を含む溶解相と撹拌混合させることで調製することができる。
【0028】
本発明においては、非ステロイド性抗炎症剤を含有する外用剤は、ナイロン樹脂を少なくとも材料の一部とする容器、好ましくはナイロン樹脂を材料の一部とする積層シートを有する容器に収納される。容器の形状は、医薬品、医薬部外品、化粧品等の分野で通常用いられているものであれば特に限定されないが、例えば、チューブ、袋、ボトル、ジャー、ポット、リップクリーム用等の筒状の容器等が挙げられる。好ましくはチューブが挙げられる。チューブの場合、少なくとも容器胴部が、ナイロン樹脂を材料の一部とする積層シートを有することが好ましい。本発明にかかる容器は、ナイロン樹脂を少なくとも材料の一部として、押出チューブ成形やサイドシーム溶着等の公知の方法にて製造することができる。また、チューブの場合、チューブ頭部にメンブランを設けてもよい。
【0029】
本発明において、ナイロン樹脂としては、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9T、ナイロンM5T、ナイロンMXD6やこれらのナイロンの共重合体等を挙げられる。ナイロン樹脂層は、1種のみの単層でもよいが、異なった複数のナイロン樹脂を積層した多層としてもよい。また、複数を積層する場合、他の材質の樹脂を介してもよい。容器がチューブや袋等であって、積層シートを用いる場合、ナイロン樹脂層の厚みとしては、5〜50μmが好ましく、特に10〜30μmが好ましい。また、ナイロン樹脂層としては、スーパーニール(三菱樹脂株式会社製)、エンブロンM(ユニチカ株式会社製)、ハイラミナー(クリロン化成株式会社製)、ヘプタックス(グンゼ株式会社製)等の市販されているフィルムを用いてもよい。
【0030】
積層シートとしては、例えば、金属箔、ガスバリア性樹脂等を芯材とし、芯材の両側に接着層を介して、フィルム層を有し、少なくとも内面層側のフィルム層にはナイロン樹脂層が介在しているものを挙げられる。
【0031】
本発明において、金属箔としては、アルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔、合金箔(アルミニウム合金箔等)等が挙げられ、ガスバリア性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。
【0032】
本発明において、接着層としてはエチレン−アクリル酸共重合体やエチレン−メタアクリル酸共重合体等のエチレン−カルボン酸共重合体、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン)等が挙げられる。接着層の厚みとしては、5〜100μmが好ましく、特に20〜80μmが好ましい。
【0033】
本発明において、ナイロン樹脂以外のフィルム層の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ1,4−シクロヘキシルジメチレンテレスタレート、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート等が挙げられ、フィルム層としては、1種のみ、又はこれらの材質の複数を積層したものを用いることができる。
【0034】
容器がチューブや袋の場合において、積層シートを筒巻き等して、重ね合わせ部分を熱溶着して胴部等を製造する(サイドシーム溶着)場合、重ね合わせ部分となる積層シートの最内面層側と最外面層側が同一の材質とすることが好ましい。加工性や熱溶着性等からポリエチレン(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等)又はポリプロピレンが好ましい。フィルム層の厚みとしては、20〜200μmが好ましく、特に40〜180μmが好ましい。なお、ナイロン樹脂層はフィルム層の一部分として存在する。フィルム層中のナイロン樹脂層の厚みとしては、前述したとおり、5〜50μmが好ましく、特に10〜30μmが好ましい。
【0035】
本発明にかかる積層シートは、押出ラミネート成形やカレンダー成形等の公知の方法にて製造することができるが、東洋紡績株式会社、ユニチカ株式会社、出光ユニテック株式会社、三菱樹脂株式会社等のメーカーに製造を委託することなどによっても得ることができる。
【0036】
本発明の容器への外用剤の収納方法は、特に制限されず、例えば、注出口の反対側の開口部から外用剤を容器に注入し、開口部を熱や高周波溶融などにより封止すること等によって達成できる。また、ボトル、ジャー、ポット、リップなどは注出口から充填し、キャップで密栓などすることで達成できる。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明がこれら実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【0038】
<製造例1>ゲルクリーム剤
(1)インドメタシン1g、l−メントール3g、ミリスチン酸オクチルドデシル5g、アジピン酸ジイソプロピル5g、モノステアリン酸グリセリン2g、モノステアリン酸ソルビタン0.5g及びモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン1.5gを約70℃に加温・溶解させ、均一になるまで混合した。
(2)カルボキシビニルポリマー1g及びヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 0.5gを約70℃の熱水39gに分散させた後、ステップ(1)に添加し、良く混合し乳化させた。
(3)イソプロパノール35gをステップ(2)に添加し、良く混合し均一に分散させた。
(4)1%エデト酸ナトリウム水溶液1g及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液1gをステップ(3)に添加し、良く混合した。
(5)ジイソプロパノールアミン0.5gを水4gに添加し攪拌溶解させ、ステップ(4)に添加し、冷却しながら良く分散させ、ゲルクリーム剤を得た。
【0039】
<評価>
このゲルクリーム剤35gを表1に示す各種チューブ容器(40mL;実施例1、比較例1〜3)に収容し、60℃で1週間保存した後の製剤の状態を確認し、析出物、分離、内面層の剥離、臭いについての評価を行った。析出物及び分離は、チューブ容器を切り開き、目視により析出物の有無を確認した。析出物が認められたものを×で、析出物が認められなかったものを○で示した。また、分離が認められたものを×で、分離が認められなかったものを○で示した。内面層の剥離は目視により確認した。剥離が認められたものを×で、剥離が認められなかったものを○で示した。臭いは、官能評価により確認した。異臭が認められたものを×で、異臭が認められなかったものを○で示した。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
<結果>
内面をポリエチレンのみをフィルム層としたチューブにおいて、析出物、分離及び異臭が認められた(比較例1)。内面をポリエチレンとポリエチレンテレフタレートでフィルム層としたチューブにおいて、析出物及び異臭が認められた(比較例2)。内面をポリエチレンとエチレン−ビニルアルコール共重合体でフィルム層としたチューブにおいて、析出物、分離、フィルム層の剥離及び異臭のいずれもが認められた(比較例3)。しかしながら、ナイロン樹脂を含むフィルム層を用いたチューブにおいては、析出物、分離、フィルム層の剥離及び異臭はいずれも認められず、良好な製剤であることが確認された(実施例1)。
【0042】
<製造例2>ゲル剤
(1)カルボキシビニルポリマー1g及びヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 0.5gを約70℃の熱水39gに分散させた。
(2)インドメタシン1g、l−メントール3g及びアジピン酸ジイソプロピル3gをイソプロパノール45gに約50℃で加温・溶解させた後、ステップ(1)に添加し、良く混合させた。
(3)1%エデト酸ナトリウム水溶液1g及び2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液1gをステップ(2)に添加し、良く混合させた。
(4)ジイソプロパノールアミン0.5gを水5gに添加し攪拌溶解させ、ステップ(3)に添加し、良く分散させ、ゲル剤を得た。
得られたゲル剤を実施例1と同じチューブ容器に収容し、析出物、分離、内面層の剥離、臭いについて、評価した。結果、析出物、分離、フィルム層の剥離及び異臭のいずれも認められず、良好な製剤であることが確認された。
【0043】
<製造例3>クリーム剤
(1)カルボキシビニルポリマー1g、1%エデト酸ナトリウム水溶液1g及び10%亜硫酸水素ナトリウム水溶液1gを約75℃の熱水59gに分散させた。
(2)l−メントール3g、ミリスチン酸オクチルドデシル10g、アジピン酸ジイソプロピル5g、モノステアリン酸グリセリン2g、モノステアリン酸ソルビタン0.5g、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン1g及びパラベン0.2gを約75℃に加温・溶解させ、均一になるまで混合させた後、ステップ(1)に添加し、良く混合し乳化させた。
(3)インドメタシン1gを、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン0.1gを溶解させた水10gに分散させ、ステップ(2)を冷却したところに添加し、良く混合し均一に分散させた。
(4)水酸化ナトリウム0.1gを水5gに添加し攪拌溶解させ、ステップ(3)に添加し、冷却しながら良く分散させ、クリーム剤を得た。
得られたクリーム剤を実施例1と同じチューブ容器に収容し、析出物、分離、内面層の剥離、臭いについて、評価した。結果、析出物、分離、フィルム層の剥離及び異臭のいずれも認められず、良好な製剤であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナイロン樹脂を少なくとも材料の一部とする容器に、非ステロイド性抗炎症剤を含有する外用剤が収納されてなる外用製剤。
【請求項2】
ナイロン樹脂を材料の一部とする積層シートを有する容器に、非ステロイド性抗炎症剤を含有する外用剤が収納されてなる外用製剤。
【請求項3】
積層シートが金属箔を含むものである請求項2記載の外用製剤。
【請求項4】
容器がチューブである請求項1〜3いずれか1項記載の外用製剤。
【請求項5】
外用剤が液剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲルクリーム剤又はゲル剤から選ばれるものである請求項1〜4のいずれか1項記載の外用製剤。
【請求項6】
非ステロイド性抗炎症剤がインドメタシンである請求項1〜5のいずれか1項記載の外用製剤。
【請求項7】
ナイロン樹脂を少なくとも材料の一部とする、非ステロイド性抗炎症剤を含有する外用剤収納用容器。
【請求項8】
非ステロイド性抗炎症剤を含有する外用剤を収納する外用製剤の製造のための、ナイロン樹脂を少なくとも材料の一部とする容器の使用。

【公開番号】特開2009−285423(P2009−285423A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144343(P2008−144343)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】