外科手術接近システム
【課題】従来のシステムは、連続拡張接近システムに対する器具操作性を向上させるために設けられているが、拡張自在部の配備が外科手術標的部位に隣接する敏感な組織を不注意にも圧迫し、或いは、前記組織に衝突することがある。
【解決手段】本発明は、外科手術標的部位に接近するシステムであって、複数のブレードがハンドル組立体に着脱自在に連結された牽引子組立体を備え、前記複数のブレードは、閉位置に置かれたままで外科手術標的部位に同時に前進させることができ、その後で、選択的に開かれて、外科手術標的部位に至る個別に調整された手術回廊を設けるようにしたことを特徴としている。
【解決手段】本発明は、外科手術標的部位に接近するシステムであって、複数のブレードがハンドル組立体に着脱自在に連結された牽引子組立体を備え、前記複数のブレードは、閉位置に置かれたままで外科手術標的部位に同時に前進させることができ、その後で、選択的に開かれて、外科手術標的部位に至る個別に調整された手術回廊を設けるようにしたことを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、特許権者を同じくする同時係属出願である米国特許仮出願連続番号第60/506,136号(2003年9月25日出願)の国際特許出願であるとともに、該仮出願の優先権を主張するものであり、該仮出願の全文は、本件に完全に明示している訳ではないが完全に明示したが如く、引例に挙げることにより特に本件開示の一部をなすものとする。本願はまた、次に挙げる、本願の同時係属特許出願および同一譲受人に譲渡された特許出願を引例に挙げることにより、それぞれの全体を一部に組み入れたものとする。すなわち、2002年7月11日出願の「外科手術中に神経接近度、神経方向、および、神経病状を判断するためのシステムおよび方法(System and Method for Determining Nerve Proximity, Direction, and Pathology During Surgery)」という名称のPCT出願連続番号PCT/US02/22247号、2002年9月25日出願の「外科手術処置と査定を実施するためのシステムおよび方法(System and Methods for Performing Surgical Procedures and Assessments)」という名称のPCT出願連続番号PCT/US02/30617号、2002年10月30日出願の「経皮的椎弓根保全査定を実施するためのシステムおよび方法(System and Methods for Performing Percutaneous Pedicle Integrity Assessments)」という名称のPCT出願連続番号PCT/US02/35047号、2003年1月15日出願の「外科手術器具に対する神経方向を判断するためのシステムおよび方法(System and Methods for Determining Nerve Direction to a Surgical Instrument)」という名称のPCT出願連続番号PCT/US03/02056号である(総括的に、「ニューロ・ビジョン(Neuro Vision )PCT出願」と称する)。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、広義には、外科手術処置を実施するシステムに関するものである。特に、本発明は、外科手術処置を実施するために外科手術標的部位に接近(アクセス)するためのシステムに関連するものである。
【背景技術】
【0003】
医療界で顕著な趨勢は、観血を最小限にした技術または最小限の接近技術を選んで、伝統的な「切開」技術による外科手術を避ける方向にある。切開外科手術技術は、一般に、大きな切開部と大量の組織転移により外科手術標的部位に接近しなければならないのが通例であり、これが同時に多大な苦痛と、長期化する入院(嵩む医療費)と、患者集団内での高い感染罹患率とを生じるという点で望ましくない。観血が少なくて済む外科手術技術(いわゆる、「最小接近」技術および「観血を最小限に抑えた」技術など)が選択されつつあるのは、実質的に切開部の寸法をより小さくしながら、同時に、組織転移が相当に少なくて済むという要件で外科手術標的部位へ接近するという事実によるものである。これが、今度は、そのような処置に付随する苦痛、罹患率、それに、医療費を低減することになる。しかし、今日までに開発されてきた接近システムは、多数の点で医者集団の必要の全てを満たし損なっている。
【0004】
先行技術の外科手術接近システムに付随する欠点の1つは、特定の外科手術標的部位次第では、手術回廊を簡単に設けることができるうえに、時間を経ても簡単に維持管理できる、その簡便さに関連している。例えば、筋肉組織またはそれ以外の比較的強度のある組織の下または背後に位置する外科手術標的部位(具体例にすぎないが、脊柱に隣接する腰筋など)に接近している最中に、かかる組織を通して直接的に手術回廊確立用器具を前進させることはやりがいのある事であり、かつ/または、要らぬ効果または望ましくない結果(組織に応力を加える、組織に裂傷を与える等)となる恐れもあることが分かっている。(具体例にすぎないが)フォレイ(Foley)らに交付された米国特許第5,792,044号(特許文献1)の連続拡張システムなどのように、手術回廊を設けながら組織への外傷を緩和する或る程度の努力も取られているが、それにも関わらず、このような試みは比較的狭い手術回廊を基礎とする適用可能性については限りがある。より詳細に説明すると、いわゆる「作業カニューレ」の略円筒の本質に基づくと、器具の操作可能性の程度および/またはカニューレ内での角度設定の程度は一般に制限され、或いは、抑制され、外科手術標的部位が患者の体内の比較的深部である場合は特にそうなる。
この欠点を克服するために努力が企てられており、例えば、ディポート(DiPoto)に交付された米国特許第6,524,320号(特許文献2)などがあるが、この特許では、カニューレの遠位端に拡張自在部が設けられて、外科手術標的部位に隣接している断面積が他より大きくなっている領域を作っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,792,044号
【特許文献2】米国特許第6,524,320号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このシステムは連続拡張接近システムに対する器具操作性を向上させる(少なくとも患者体内の深部で)ために設けられているが、それでも、拡張自在部の配備が外科手術標的部位に隣接する敏感な組織を不注意にも圧迫してしまうことがある、或いは、該組織に衝突することがあるという点で欠点がある。例えば、神経構造および/または血管構造を有する解剖学的領域では、視認できないまま拡張が起こることで、拡張部が敏感な組織に衝突し、患者に対して神経および/または血管の妥協的損傷、破損、および/または、痛みを生じてしまうことがある。
【0007】
このことは、従来の外科手術接近システムについてまた別な欠点を際立たせてしまうが、すなわち、接触したり、衝突したりすれば、患者に神経損傷を生じかねない主要神経構造を有する組織内またはその付近に手術回廊を確立しようという果敢な取り組みのことである。そのような神経構造に接触することを恐れて、これまでのところ、神経構造がほとんど存在しないか、或いは、実質的に神経構造の量が他より少ない組織を貫いて手術回廊を確立することに対してはかなりの制約があり、これのせいで、所与の外科手術標的部位に接近することのできる方法の数は、実効的に、限られている。これは、具体例にすぎないが、脊髄関連の技術で見られることであり、腰筋における既存の神経根と神経叢構造が腰部脊椎に至る側方接近路または遠側方接近路(いわゆる、経腰筋アプローチ)を、事実上、不可能にしてきた。その代わり、脊椎関連の外科医は後方から脊柱に接近すること(他の処置の中でも、とりわけ、後腰椎体間癒着(PLIF)を実施するため)、或いは、前方から脊柱に接近すること(他の処置の中でも、とりわけ、前腰椎体間癒着(ALIF)を実施するため)については、かなり制約を受ける。
【0008】
後接近処置は、後骨構造(すなわち、椎弓板、脊椎間接突起、棘突起など)の一部を削減または切除して、標的部位(通例は椎間板空間を含む)に達するようにしなければならないことが多いという代価を払ってでも、他方向接近より短い距離だけ患者の体内を横断して、手術回廊を確立しようとする段階を含む。前接近処置は、外科手術標的部位に達するのに、骨構造を削減または切除することを含まないという点で、医者にとっては、比較的、簡単である。しかしながら、それにも関わらず、前接近処置が不利なのは、手術回廊を確立するのに、患者体内の遥かに長い距離を貫いて縦断する必要があり、手術回廊を設けるために多様な体内器官を邪魔にならない脇に移動させるにあたり、別な医者の支援を必要とすることが多いという点である。
【0009】
本発明は、先行技術の上述の欠点を排除し、或いは、かかる欠点の影響を少なくとも最小限に抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、接触または衝突があった場合には、患者に対して神経損傷を生じてしまう結果となりかねない神経構造を有する多様な組織のいずれであれ、該組織を貫く(または、該組織の付近に延びる)手術回廊を確立する前、確立する間、確立した後に神経構造が存在していること(および、任意として、神経組織までの距離、および/または、神経組織に対する方向)を看破する段階を含む新規な接近システムおよびそれに関連する方法を提供することにより、上記目的を達成する。脊椎外科手術における用途に関連して本件で詳しく説明されるが、本発明の接近システムは、重要な神経構造を有している組織の中を貫いて(または、該組織の付近を)通過させて手術回廊を確立するように図ったものであれば、何種類の付加的外科手術処置であれ、かかる外科手術処置における使用に適していることに、特に、注目するべきである。
【0011】
本発明の1つの広い局面によれば、接近システムは組織伸延組立体と組織牽引子(開創)組立体から構成されており、両組立体に神経構造が存在すること(および、任意で、神経構造までの距離および/または神経構造に対する方向)を検出する際に使用するための1個以上の電極が装備されている。組織伸延組立体(組織牽引子組立体の1個以上の電極に関連づけられている)は、初期段階として、患者の皮膚と外科手術部位との間の組織の領域を延展(伸延)させることができる。組織牽引子組立体は、第2段階として、この延展(伸延)領域に導入されて、手術回廊の外郭を定めて、確立することができる。手術回廊が確立されてしまうと、所与の外科手術処置次第で、多様な外科手術器具、装置、または、移植片がどんなものあれ、手術回廊内を通され、かつ/または、手術回廊内で操作される。電極(単数または複数)は、組織延展(伸延)および組織介開創の間、神経構造が存在していること(および、任意で、神経構造までの距離および/または神経構造に対する方向)を検出することで、接触または衝突した場合に、患者に対して神経損傷を生じかねない神経構造を有している多様な組織を貫いて(または、かかる組織の近辺に)手術回廊を確立することができるようにする。このような態様で、本発明の接近システムは、普通なら危険または望ましくないと思われる組織を縦断するために使用されて、所与の外科手術標的部位に接近する態様の種類を拡大することができるようにしている。
【0012】
組織伸延組立体は、必要な延展(伸延)を実施することができる構成要素であれば、何種類でも含むことができる。具体例にすぎないが、組織伸延組立体には、Kワイヤ、分岐構造の初期拡張器、従来型構造の(すなわち、非分岐構造の)1個以上の拡張器が設けられて必要な組織延展を実施し、その後で、残りの組織牽引子組立体を受け入れる。1個以上の電極が1個以上のKワイヤと拡張器に設けられて、組織延展の間、神経構造が存在していること(および、任意で、神経構造までの距離、および/または、神経構造に対する方向)を検出することができるようにしている。
【0013】
組織牽引子組立体は、必要な開創を実施することができる構成要素なら、何種類でも備えていてもよい。具体例にすぎないが、組織牽引子組立体は、ハンドル組立体から延びている1個以上の牽引子ブレードを備えている。ハンドル組立体は、牽引子組立体を開くように操作され、すなわち、牽引子ブレードが互いから分離して、外科手術標的部位に至る手術回廊を設けることができるようにする。好ましい実施形態では、これは、後牽引子ブレードを外科手術標的部位に関して固定位置に維持する(後牽引子ブレードを脊椎の後構成要素付近に出ている神経根に衝突させてしまうことを回避するため)ことにより達成されるが、同時に、また別な牽引子ブレード(すなわち、最も頭方向のブレードと最も尾方向のブレード)を後牽引子ブレードから(互いからも)離れる方向に移動または並進させて、出ている神経根の領域を侵すことのない態様で手術回廊を設けるようにしている。
【0014】
牽引子ブレードは、任意で、剛性の楔部材を受け入れるとともに、方向決めするように寸法設定されることで、牽引子ブレードの構造的安定性を補い、手術回廊が確立されてしまってからも、該回廊が小さくなることがなくなることを確実にし、或いはそれ以外に、牽引子ブレードの遠位端が転移された組織が及ぼす力に反応して「滑る」恐れがあるという制約、または他の態様で移動してしまう恐れがあるといったような制約がなくなることを確実にする。好ましい実施形態では、後牽引子ブレードのみに、上述のような楔部材が装備される。任意の局面で、後牽引子ブレードが設置された後で、しかも、牽引子が開いて十分に開創した位置へ移動する前に、この楔部材は椎間板空間内に前進させられる。剛性の楔部材は、椎間板空間内で配向されると、隣接する椎体を開創させるようにするのが好ましいが、これは、椎間板の高さを修復するように働く。楔部材はまた、椎間板空間内を十分な距離だけ前進するのが好ましいが(脊髄正中線を越えるのが好ましい)、これは、術後の脊柱側湾症を防止することと、保護障壁を形成すること(手術場に組織(神経根など)が移動して入り込むのを防止し、手術場の外側へ器具がうっかり出てしまうのを防止する)という、二重の目的に役立っている。
【0015】
牽引子ブレードは、任意で、外科手術部位またはその付近に光を伝搬または放射し、所与の外科手術処置中に外科手術標的部位、器具、および/または、医者が移植片を視認化するのを助ける機構が装備されていてもよい。一実施形態によれば、この機構は、1個以上の光源を牽引子ブレードに接続して、それぞれに端部が外科手術標的部位またはその近辺に光を放射できるようにしたものを備えているが、これに限定されるわけではない。また別な実施形態によれば、この機構は、好適な素材の牽引子ブレードの構造と、光が牽引子ブレードの壁を概ね直接透過して光を伝搬して外科手術標的部位またはその付近を照らすようにした配置を備えているが、これに限定されるわけではない。これを実施する方法として、透光特性(透明なポリカーボネート構造に関するもののような)を有している牽引子ブレードを設け、牽引子ブレードの壁の内側ほぼ全体に光を伝搬し(例えば、霜白状にツヤ消しすること、または、外部および/または内部の各部を不透明にすること等により)、最終的には光が牽引子ブレードの内部表面(または内側に面している表面)に沿った部分から外に出るようにする手段がある。出口部分は、光が外科手術標的部位の略中心に向かわせられるような構成であるのが最適であり、また、牽引子ブレードの内周全体または該内周に沿った一箇所以上の部分に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による外科手術接近システムの一部を形成している組織牽引子(開創)組立体(使用時)の斜視図である。
【図2】本発明による牽引子の後牽引子ブレードと併用するための楔部材の前面を例示した斜視図である。
【図3】本発明による牽引子の後牽引子ブレードと併用するための楔部材の背面を例示した斜視図である。
【図4】本発明による牽引子の頭方向牽引子ブレードと尾方向牽引子ブレードのうちの一方と併用するための狭い牽引子拡張部材の前面を例示した斜視図である。
【図5】本発明による牽引子の頭方向牽引子ブレードと尾方向牽引子ブレードのうちの一方と併用するための幅の狭い牽引子拡張部材の背面を例示した斜視図である。
【図6】本発明による牽引子の頭方向牽引子ブレードと尾方向牽引子ブレードのうちの一方と併用するための幅の広い牽引子拡張部材の前面を例示した斜視図である。
【図7】本発明による牽引子の頭方向牽引子ブレードと尾方向牽引子ブレードのうちの一方と併用するための幅の広い牽引子拡張部材の前面を例示した斜視図である。
【図8】牽引子ブレードを使わない、本発明の牽引子組立体の斜視部分展開図である。
【図9】本発明による外科手術接近システムの一部を形成し、外科手術標的部位(すなわち、軟骨輪)まで延展する際に使用するための初期伸延組立体の構成要素(すなわち、Kワイヤ、ハンドル付きの初期拡張カニューレ、初期拡張カニューレ内に収容される分離拡張器)と用途を例示した斜視図である。
【図10】初期拡張カニューレおよびハンドルが取り外されている初期伸延組立体のKワイヤおよび分離拡張器を例示した斜視図である。
【図11】本発明の一局面による概ね頭方向−尾方向様式で延展する用途での、本発明の分離拡張器を例示した、脊椎標的部位の背面図である。
【図12】本発明による患者の皮膚と外科手術標的部位の間の組織を更に開創するための二次伸延組立体の使用法を例示した側面図である。
【図13】ハンドル組立体がそこから3本の牽引子ブレードが張り出し(背面方向、最頭方向、および、最尾方向)、図12の二次伸延組立体(第1の閉位置にあるのが例示されている)を覆って配置されているのを示した側面図である。
【図14】ハンドル組立体がそこから3本の牽引子ブレードが張り出し(背面方向、最頭方向、および、最尾方向)、図12の二次伸延組立体が取り外されて楔部材が導入されている、本発明による牽引子組立体の側面図である。
【図15】第2の開位置(すなわち、開創位置)に来ることで、外科手術標的部位に至る手術回廊を設けている、本発明による牽引子組立体の斜視図である。
【図16】第2の開位置(すなわち、開創位置)に来ることで、外科手術標的部位に至る手術回廊を設けている、本発明による牽引子組立体の頂面図である。
【図17】第2の開位置(すなわち、開創位置)に来て(二次伸延組立体は取り外されている)、図4および図5と図6および図7の牽引子拡張部材が牽引子に連結されている、本発明による牽引子組立体の斜視図である。
【図18】第2の開位置(すなわち、開創位置)に来て(二次伸延組立体は取り外されている)、図4および図5と図6および図7の牽引子拡張部材が牽引子に連結されている、本発明による牽引子組立体の側面図である。
【図19】本発明による外科手術接近システムを利用して外科手術標的部位に至る手術回廊を設ける前、その最中、その後に神経監視を実施することができる具体的な神経監視システムの斜視図である。
【図20】図19に例示されている神経監視システムのブロック図である。
【図21】図19の神経監視システムの使用中に使用者に通信される具体的な特性および情報を例示したスクリーン表示の図である。
【図22】図19の神経監視システムの使用中に使用者に通信される具体的な特性および情報を例示したスクリーン表示の別な図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の利点の大半は添付の図面と関連させて本件明細書を読めば当業者には明白となり、添付図面では、同一構成要素には同一参照番号が付記されている。
本発明の例示の実施形態が以下に記載されている。明瞭にするために、本件明細書には実施形態の全特徴が記載されているわけではない。このような実施形態を開発するにあたり、無数の実施例固有の解決案を出して開発者の特殊な目標を達成しなければならず、例えば、システム関連の規制やビジネス関連の規制とのコンプライアンスを解決しなければならないが、これらは、実施例ごとに変わるものであることは、勿論、分かることである。更に、かかる開発努力は複雑かつ時間を要し、それでいて尚、本件開示のおかげで当業者が取組めば容易に請負える仕事であることも分かる。後段では主として脊椎外科手術に関連して説明してゆくが、本発明の外科手術接近システムは体内を通る何種類の異なる外科手術標的部位にでも接近できるような解剖学的設定なら、多数の設定で採用することができるということも、容易に分かる。本件に開示されている外科手術接近システムは、個別でも組合わせでも、その両方で特許権保護を保障する多様な進歩性に優れた特徴および構成要件を誇っている。
本発明は、外科手術標的部位に至る手術回廊を確立するために、従来の「切開」外科手術よりもむしろ観血がより少ない様式で外科手術標的部位に接近(アクセス)し、しかも、該標的部位を通らなければならない(または、その付近で延びていなければならない)神経構造に顧慮せずに接近する態様でそうする段階を含む。概して、これを達成するのに本発明の外科手術接近システムは、組織伸延組立体と組織開創組立体を設け、その両方に1個以上の電極を装備して、神経構造が存在していること(および、任意で、神経構造までの距離、および/または、神経構造に対する方向)を検出する用途に付すようにした手段を用いる。
【0018】
このような電極は、先に例として挙げた、本件と同時係属でかつ譲受人を同じくする「ニューロ・ビジョン(Neuro Vision )PCT出願」に例示および記載されているタイプのもののような神経監査システムと併用するために設けられるのが好ましいが、この出願の内容全体は、その全文が本件明細書に明示されている訳ではないが、全文が明示されている如くに、特に本件の一部をなすものとして、ここに援用する。概して、この神経監査システムは、神経が存在していることを検出するにあたり、器具に刺激信号を印加して、神経に付随する神経筋単位から発生した筋電図(EMG)信号が本発明の伸延システムおよび開創システムによって送られるのを監視することにより、組織の延展および開創の間、神経構造が存在していること(および、任意で、神経構造までの距離および/または神経構造に対する方向)を検出することができる。そうする際には、システムは、全体として(本発明の外科手術接近システムを備えている)、神経構造を有している多様な組織のいずれであれ、そこを貫通して(またはその付近に)手術回廊を形成するために使用されるが、特にこのような組織は、接触または衝突した場合には、患者に神経損傷を生じる結果となりかねない。このような態様で、本発明の接近システムを利用して、普通なら危険または望ましくないと思われる組織を縦断することで、所与の外科手術標的部位に接近する態様の種類を拡大することができる。
【0019】
本発明の組織伸延組立体(Kワイヤ、初期拡張器、初期拡張器内に配置された分離拡張器を備えている)は、患者の皮膚と所与の外科手術標的部位の間(標的椎間板の後ろ領域に沿っているのが好ましい)に延在している組織を延展させるために使用される。二次伸延組立体(すなわち、複数の連続拡張式カニューレ)は、任意で、初期伸延組立体の後で使用されて、組織を更に延展させることができる。一旦、延展されてしまうと、患者の体内に結果として生じる空隙または延展領域は、本発明の組織開創組立体を収容するのに十分な寸法になる。より詳細に説明すると、組織開創組立体(ハンドル組立体から張り出している複数の牽引子ブレードを備えている)は二次伸延組立体に相関的に前進させられて、第1の閉位置にある牽引子ブレードが二次伸延組立体の外装の上を伝って前進させられるようにすることができる。その時点で、ハンドル組立体が作動状態になって牽引子ブレードを第2の開位置すなわち(開創位置)に移動させて、外科手術標的部位に至る手術回廊を設けることができる。
【0020】
本発明の一局面によれば、このような開創の後で(または、その前に)、後楔部材(後牽引子ブレードと滑動自在に嵌合するのが好ましい)を前進させて、遠位楔部材延長部が椎間板空間の背部領域内に設置されるようにすることができる。これは、開創前に行われた場合は、開創プロセスの間に後牽引子ブレードが後方に移動しないことを確実にするのに役立つが、但し、残りの牽引子ブレード(すなわち、最頭方向ブレードと最尾方向ブレード)は移動することができて、手術回廊を作ることができる。この態様で後牽引子ブレードを固定することは、幾つかの重要な機能を果たす。まず第一に、楔部材の遠位端は隣接する椎体を延展させるように働くことで、椎間板の高さを修復する。該遠位端はまた、後牽引子ブレードを椎体に対して固定位置に堅固に接続する。後楔部材はまた、手術回廊内で使用される外科手術器具が前進により手術回廊の外にでることを不可能にし、外科手術の間中、出ている神経根とうっかり接触するのを防止することを確実にするのに役立つ。一旦、適切な開創状態になると、最頭方向牽引子ブレードと最尾方向牽引子ブレードが適所にロックされ、その後、牽引子拡張部材がそこに沿って前進させられ、器具または生物構造(すなわち、神経、血管など)が手術回廊に出入りするのを阻止することができる。手術回廊が確立されてしまうと、多様な外科手術器具、装置、移植片のどんなものであれ、所与の外科手術処置次第で、手術回廊内を通過させることができ、かつ/または、該回廊内で操作することができる。
【0021】
図1は、本発明による外科手術接近(アクセス)システムの一部を形成している組織開創(牽引子)組立体10を例示している。開創組立体10は複数の牽引子ブレードがハンドル組立体20から張り出している。具体例として、ハンドル組立体10には第1牽引子ブレード12、第2牽引子ブレード16、および、第3牽引子ブレード18が設けられている。牽引子組立体10は十分な開創形状すなわち「開」形状にあるのが例示されているが、同時に、牽引子ブレード12、16、18が互いから等距離に設置されて、それぞれの中間に外科手術標的部位(例えば、椎間板の軟骨輪など)まで延びている手術回廊15を形成する。3ブレード構造に関して後段に例示および説明するが、本発明の範囲から逸脱せずに、牽引子ブレードの数が増減する場合もあることは容易に分かる。更に、脊柱の外科手術標的部位へ略側方に近づくことに言及しながら本件の説明と例示を行うが(第1ブレード13は「後ろ」ブレードで、第2ブレード16は「最頭方向の」ブレードで、第3ブレード18は「最尾方向の」ブレードである)、本発明の牽引子組立体10は何種類の異なる外科手術標的接近法で用途を見出してもかまわないが、この中には、略後方標的接近、略後側方標的接近、略前方標的接近、略前側方標的接近などの接近法がある。
【0022】
牽引子(リトラクタ)ブレード12、16、18は多様な付加的特長または付加的構成要素が装備されていてもよい。具体例にすぎないが、後牽引子ブレード12には楔部材22が装備されている(図2および図3により明瞭に例示されている)。楔部材22は隣接する椎体を延展するように働き(それにより、椎間板の高さを修復し)、外科手術標的部位に対して牽引子組立体10を固着するのを助け、保護障壁を形成して器具または生物構造(すなわち、神経、血管など)が手術回廊に出入りするのを阻止する。残余の牽引子ブレード(最頭方向ブレード16と最尾方向ブレード18)は各々に、図4および図5に例示されている幅の狭い牽引子拡張部材24か、または、図6および図7に例示されている幅の広い牽引子拡張部材25のような牽引子拡張部材が装備されている。牽引子拡張部材24、25は最頭方向ブレード16および最尾方向ブレード18から伸張して、器具または生物構造(すなわち、神経、血管など)が手術回廊15に出入りするのを阻止する。
【0023】
本発明によれば、牽引子ブレード12、16、18、楔部材22、および/または、牽引子拡張部材24、25のいずれかまたは全部に、1個以上の電極39が設けられており(それぞれの遠位領域に設けられるのが好ましい)、この電極は、具体例として、「ニューロ・ビジョン(Neuro Vision )PCT出願」に例示および記載されている種類のもののような神経監視システムと併用するように装備されている。楔部材22および/または牽引子拡張部材24、25にも、各々に、牽引子ブレード12、16、18それぞれと選択的かつ着脱自在に係合する機構が装備されている。具体例にすぎないが、これは、楔部材22および/または牽引子拡張部材24、25のタブ部材27が牽引子ブレード12、16、18の内向き面に沿って対応するラチェット状の溝(図1に参照番号29と示されている)と嵌合することができるような構造にすることにより達成される。楔部材22および/または牽引子拡張部材24、25は各々に、具体例にすぎないが、断面形状が概ね鳩の尾の形状になった、1対の嵌合部材37が設けられている。嵌合部材37の寸法は、牽引子ブレード12、16、18それぞれの受容部と嵌合するように設定されている。好ましい実施形態では、楔部材22および/または牽引子拡張部材24、25は各々に、挿入器具(図示せず)と嵌合するようにした細長いスロット43が設けられている。タブ部材27にも、各々に細長い歯部材49が装備されており、この部材が、牽引子ブレード12、16、18の内面に沿って設けられた対応する溝29の内側で噛合する。
【0024】
ハンドル組立体20は任意の個数の機構に連結されるが、この機構は、手術台に搭載された連接アームを使用すること等によって、手術部位に対して固定関係でハンドル組立体20を堅固に整合させるためのものである。ハンドル組立体20の第1アーム部材26および第2アーム部材28は、全体で参照番号30と図示されている連結機構により、ヒンジで連結されている。最頭方向牽引子ブレード16は第1アーム部材26の端部に堅固に(略垂直に)連結されている。最尾方向牽引子ブレード18は、第2アーム部材28の端部に堅固に(略垂直に)連結されている。後牽引子ブレード12は並進部材17に堅固に(略垂直に)連結されているが、この部材は、概ね参照番号14と例示されている連結組立体によってハンドル部材20に連結されている。連結組立体14は、1対の手動ノブ部材36を設けたローラー部材34を備えており、このローラー部材34は、使用者による手動動作によって回転させられると、そこに設けられた歯35を並進部材17のラチェット状溝37の内側に噛合させる。従って、ノブ36の手動動作により、並進部材17は第1アーム部材26および第2アーム部材28と相対運動させられる。
【0025】
ハンドル拡張部材31、33(図8)を使用することにより、アーム26、28が同時に開かされ、最頭方向牽引子ブレード16と最尾方向牽引子ブレード18が互いから離れる方向に移動する。この態様で、手術回廊15の寸法および/または形状は、並進部材17がアーム26、28に対して操作される程度に依存して、特別仕立てにすることができる。すなわち、手術回廊15は、何種類の好適な断面形状を設けるように調整されてもよく、例えば、略円形断面、略楕円形断面、および/または、長円断面などがあるが、これらに限定されるわけではない。任意の光発射装置39が1個以上の牽引子ブレード12、16、18に連結されて、光を手術回廊15に向けることができる。
【0026】
図9は、初期伸延組立体40が本発明による外科手術接近システムの一部を形成しているのを例示している。初期伸延組立体40はKワイヤ42、ハンドル46を設けた初期拡張カニューレ44、および、初期拡張カニューレ44内に収容されている分離拡張器48を備えている。使用に際して、Kワイヤ42および分離拡張器48は初期拡張カニューレ44の内部に配置されており、組立体40の全体が外科手術標的部位(すなわち、軟骨輪)に向けて組織内を前進させられる。ここでもまた、これを達成する際には、上述の神経検出および/または方向付け特性を採用するのが好ましい。初期拡張組立体40が前進させられて、分離拡張器48と初期拡張器44の遠位端が椎間板空間内に位置決めされた後で(図9)、初期拡張器44とハンドル46が取り外されることで(図10)、分離拡張器48とKワイヤ42を適所に残存させる。図11に例示されているように、その後、分離拡張器48は分離されて、半分体48a、48bそれぞれが互いに離隔され、標的部位に対して概ね頭方向−尾方向の態様で組織を延展させる。その後、分離拡張器48は緩められて(拡張器の半分体48a、48bを一緒に合わせることができる)、拡張器半分体48a、48bが前−後平面に配置されるように回転させられる。拡張器半分体48a、48bは、このような態様で、一旦、回転させられてしまうと、再度分離させられて、概ね前−後の態様で組織を延展させる。拡張器半分体48a、48bは、本発明によれば、各々に1個上の電極が設けられて(それぞれの遠位領域に設けられるのが好ましい)、この電極は、具体例として、「ニューロ・ビジョン(Neuro Vision )PCT出願」に例示および記載されているような種類のもののような神経監視システムと併用するために装備される。
【0027】
この初期延展に続いて、二次延展を任意で行うことができるが、図12に例示されているように、連続拡張システム50などを利用できる。本発明によれば、連続拡張システム50はKワイヤ42、初期拡張器44、および、1個以上の補足拡張器52、54を備えているが、これらは外科手術標的部位まで組織を更に拡張させる目的がある。再度、二次伸延組立体50の構成要素は(すなわち、Kワイヤ42、初期拡張器44、および、補足拡張器52、54)各々に1個以上の電極が設けられており(それぞれの遠位領域に設けられるのが好ましい)、電極は、具体例として、「ニューロ・ビジョン(Neuro Vision )PCT出願」に例示および記載されている種類のもののような神経監視システムと併用するために装備されている。
【0028】
図13に例示されているように、その後、本発明の開創組立体10は連続拡張システム50の外部に沿って前進させられる。これは、牽引子ブレード12、16、18を第1の閉位置に維持することにより達成される(牽引子ブレード12から16は、概ね、互いに対して当接し合う位置にある)。連続拡張組立体50は、外科手術標的部位まで前進させられてしまうと、取り外されて、楔部材22が後牽引子ブレード12と係合して、図14に例示されているように、ブレードの遠位端が延びて椎間板空間に入る。この時点で、ハンドル組立体20が作動されて、図15および図16に略記されているように、牽引子ブレード16、18を第2の開位置すなわち「開創」位置へ移動させることができる。見てのとおり、このプロセスの間、後牽引子ブレード12は同じ通常位置に留まることができるため、最頭方向牽引子ブレード14と最尾方向牽引子ブレード16は後牽引子ブレード12から離れる方向に移動する。この時点で、幅の狭い牽引子拡張部材24と幅の広い牽引子拡張部材25は最尾方向牽引子ブレード18および最頭方向牽引子ブレード16とそれぞれに係合状態になるが、これは図17および図18に例示されているとおりである。
【0029】
上述のように、組織延展段階および/または組織開創段階の間、神経構造が存在していること(および、任意で、組織構造までの距離および/または組織構造に対する方向)を検出するために、延展構成要素および/または開創構成要素(本件で先に記載されたものを含むが、それらに限定されない)は何種類でも装備することができる。これは次の段階を採用することで達成される。すなわち、(1)1個以上の刺激電極が多様な延展構成要素および/または開創構成要素に設けられ、(2)刺激源(例えば、電圧または電流など)が刺激電極に連結され、(3)多様な構成要素が外科手術標的部位に向けて前進させられ、或いは、外科手術標的部位またはその付近に維持されると、刺激電極から刺激信号が発信され、(4)刺激信号により組織内の神経または神経構造に付随する筋肉が刺激を受けているか否かを判定するように患者が監視される。神経が刺激を受けている場合は、神経構造が延展構成要素および/または開創構成要素に極めて近接した位置にあることを示すものである。
【0030】
神経監視段階は、何種類の好適な態様で達成されてもよく、例えば、組織中によく見られる神経構造に付随する筋肉群が目に見て取れる痙攣を起こしているのを確認するといった態様があるが、これに限定されるわけではなく、その他にも、市場で入手できる「従来からの」筋電図(EMG)システム(すなわち、通例は神経生理学者が操作する)などの(これに限定されないが)、何種類の監視システムによって達成されてもよい。このような監視段階は、前段で引例に挙げた本件の特許権者が同一である同時係属の「ニューロ・ビジョン(Neuro Vision )PCT出願」に例示および記載されている外科医が駆動するタイプのEMG監視システムによっても実行することができる。いずれの場合でも(目視による監視、従来のEMG監視、および/または、外科医が駆動するEMG監視)、本発明の接近システムを使って、普通なら危険で望ましくないと思われる組織を縦断することで、所与の外科手術標的部位に接近する態様の種類を拡大するのが有利である。
【0031】
図19および図20は、具体例にすぎないが、本発明の外科手術接近システム10と併用するのに好適な「ニューロ・ビジョン(Neuro Vision )PCT出願」に開示されているタイプの監視システム120を例示している。監視システム120は、制御装置122、患者モジュール124、筋電図ハーネス126、および、患者モジュール124に接続された帰電極128、患者モジュール124と本発明の外科手術接近システム(図1の牽引子組立体10および図9ないし図12の伸延組立体40、50)の間に電気通信を確立するためのケーブル132を備えている。より詳細に説明すると、電気通信は、具体例にすぎないが、掌サイズの刺激制御装置152を設けることによって達成されるが、この刺激制御装置は、1個以上のコネクタ156a、156b、156cに刺激信号(掌サイズの刺激制御装置152に設けられた手動式ボタンの動作により発生する)を選択的に供与することができる。コネクタ156a、156b、156cは、掌サイズの刺激制御装置152と(具体例にすぎないが)Kワイヤ42、拡張器44、48、52、54、牽引子ブレード12、16、18、および/または、楔部材22、24、25(一括して、「外科手術接近器具」と称する)に設けられた刺激電極との間に電気通信を確立するのに好適である。
【0032】
次に、監視システム120を使用するために、このような外科手術接近器具はコネクタ156a、156b、および/または、156cに接続されなければならないが、この時点で、使用者は制御装置122から特定の外科手術接近器具に送る刺激信号(電流信号が好ましい)を選択的に発信開始することができる。手術回廊を確立する前、その間、および/または、その後に上記のような外科手術接近器具に設けられた電極を刺激することで、外科手術接近器具に近接して延びている神経、または、該器具の比較的近位に在る神経を消極し、刺激を受けた神経に付随する神経筋単位において反応を発生させる。
【0033】
制御装置122はタッチスクリーン表示器140とベース142を備えており、これらが、監視システム120を制御するのに不可欠な処理能力(ソフトウエアおよび/またはハードウエア)を一括して備えている。制御装置122は、神経に関連する外科手術部材の位置に従って音声を発する音声再生装置118を備えている。患者モジュール124はデータケーブル144を介して制御装置122に接続されるが、これは、制御装置122と患者モジュール124の間に電気接続と電気通信(ディジタル式および/またはアナログ式)を編成する。制御装置122の主たる機能として、タッチスクリーン表示器140を介してユーザ指令を受け取ること、外科手術接近器具に設けられた刺激電極を始動すること、規定のアルゴリズムに従って信号データを処理すること、受け取ったパラメータと処理データを表示すること、および、システムの状況を監視して障害状態を報告すること等が挙げられる。タッチスクリーン表示器140は、使用者に情報を通信し、かつ、使用者から指示を受け取ることができるグラフィカル・ユーザ・インターフェイス(GUI)を装備しているのが好ましい。表示器140および/またはベース142は患者モジュールのインターフェイス回路(ハードウエアおよび/またはソフトウエア)を備えており、このインターフェイス回路は刺激源に指令を送り、ディジタル化信号やそれ以外の情報を患者モジュール124から受信し、EMG反応を処理して筋肉群ごとに特性情報を抽出し、表示器140を介して操作者に処理済みのデータを表示して見せる。
【0034】
1つの実施形態では、外科手術標的部位に至る手術回廊を設ける前、その最中、および/または、その後に、監視システム120は、1個以上のKワイヤ42、拡張器44、48、52、54、牽引子ブレード12、16、18、および/または、楔部材22、24、25に対する神経の方向を判断することができる。監視システム120がこれを達成する方法として、制御装置122と患者モジュール124を協働させて、上記の器具に設けられた1個以上の刺激電極に刺激信号を送信する手段がある。患者体内(特に、神経構造を標的とする)外科手術接近システム10の位置次第では、刺激信号は、外科手術接近システム10に隣接する神経、または、システムの概ね近位に在る神経を消極させる。これにより、筋肉群を刺激し、EMG反応を発生するが、この反応はEMGハーネス126により検知することができる。システム120の神経方向機能は、EMGハーネス126を介してシステム120によって監視される多様な神経筋単位が発生した反応を査定する動作に基づいている。
【0035】
神経に付随する神経筋単位を監視して(EMGハーネス126と記録電極127を介して)、その結果として生じたEMG反応を査定する(制御装置122を介して)ことにより、外科手術接近システム10はそのような神経が存在していること(および、任意で、神経までの距離および/または神経に対する方向)を検出することができる。これは、そのような神経の周囲または神経を越えた領域を活発に通り抜けて特定の外科手術標的部位に至る手術回廊を安全かつ再生可能に形成する能力に加えて、手術回廊が確立されてしまった後で神経構造が移動して外科手術接近システム10と接触することが絶対無いように監視する能力を提供する。例えば、脊椎外科手術では、このことが特に有利となるのは次の点においてである。すなわち、外科手術接近システム10は、後側方経腰筋の態様で椎間標的部位に至る手術回廊を確立して脊柱の骨の後ろ構成要素を回避するのに特に好適である。
【0036】
図21および図22は、図19および図20を参照しなから例示および記載されている監視システムの神経方向特性の一実施形態を例示する、具体的なスクリーン表示(表示器140に表せる)である。このようなスクリーン表示は、理解が簡単になる形式で医者に多様な女王を連絡することを意図している。このような情報としては、機能の表示180(この場合は、「方向」)、患者の絵表示181、監視されている神経筋単位レヴェル182、表示されている神経筋単位に付随する神経または神経群183、使用中の器具の名前184(この場合は、拡張器46、48)、使用中の器具の寸法185、刺激閾電流186、器具の神経に対する相対方向を得理事するための基準点を提供するための、使用中の器具の絵表示187(この場合は、拡張器44、48の断面図)、刺激電極に印加されている刺激電流188、使用者に対する指示189(この場合は、「前進」および/または「停止」)、器具から神経に向かう方向を示す矢印190(図22の場合)が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるわけではない。この情報は、何種類の好適な態様で通信されてもよく、例えば、視覚表示(英数文字、発光素子、および/または、絵図など)の使用や音声再生通信(スピーカー素子など)があるが、これらに限定されない。拡張カニューレを特に照会しているのが図示されているが(例えば、参照番号184で表示)、初期伸延組立体40(すなわち、Kワイヤ42や拡張器44、48)および/または牽引子ブレード12、16、18、および/または、楔部材22、24、25等のような、本発明の外科手術接近システム10を形成する多様な器具のいずれか、または、その全部を使用している間、表示器140によく似た情報を提示することが本発明の一部であることは、容易に認識できる。
【0037】
上述の説明および図面から明らかなように、本発明は、従来の「切開」外科手術よりも観血の少ない態様で外科手術標的部位を横断して進むという目標を達成し、更に、外科手術標的部位に至る手術回廊を確立するために貫通しなければならない(または、付近を通らなければならない)神経構造とは無関係に、上記のような外科手術標的部位に接近することができるようにする態様で、目標を達成する。更に、本発明は、手術回廊が確立されてしまった後で実施される処置手順の間、外科手術標的部位に隣接する組織または領域で神経監視段階を実施することができるようにする。本発明の外科手術接近システムは、本件に記載されている脊椎への応用より以上に、または、脊椎への応用を超越して、広範な外科手術応用例または医療応用例で利用することができる。そのような脊椎への応用として、各種器具、装置、移植片、および/または、複合体が外科手術標的部位内またはその隣接部位に導入される処置であって、例えば、椎間板切除、癒着(PLIF、ALIF、TLIF、および、側方接近路または遠側方接近路を介して実施される癒着と、例えば、骨代替品(同種異系移植片や自家移植片など)、セラミック構造、金属構造、および/または、プラスチック構造(メッシュ構造など)、および/または、骨形態発生タンパク質などの複合物の導入を含む癒着)、椎間板全置換等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
更に、本発明の外科手術接近システムは、神経または神経構造を含む組織を貫通する、または、組織の付近に位置する手術回廊を確立しながら、神経または神経構造に接触する恐れを排除または相当に低減することにより、「より観血の少ない」態様で、より多数の外科手術標的部位に接近する可能性を拡大している。そうする際に、本発明の外科手術接近システムは、患者のケアを改善するとともに(「より観血の少ない」接近と、手術回廊の確立前、確立中、確立後に神経に接触する危険を低減または排除したおかげで、痛みを減らすことによる)、医療費を低減することができる(「より観血の少ない」接近に基づき入院期間を短縮し、神経監視に基づき、より多数の部位を好適な外科手術標的部位にすることによる)相当な進歩を示している。総じて、これらの事柄が、国内外ともに、患者集団に利用できるケアの全体的標準を大いに向上させることにつながる。
【0039】
本発明に関連する方法の一例として、以下のものをあげることができる。
〔態様1〕
外科手術標的部位に接近する方法であって、
外科手術標的部位に複数の牽引子ブレードを、概ね閉位置のままで、同時に導入する段階と、
牽引子ブレードを選択的に移動させて、外科手術標的部位に至る個別に調整された手術回廊を設ける段階と、
を含むことを特徴とする方法。
〔態様2〕
Kワイヤと、Kワイヤの上を伝って滑動自在に伝送することができる少なくとも1個の拡張器とを使うことで、所期延展回廊を設ける段階を更に含むことを特徴とする、上記態様1に記載の方法。
〔態様3〕
二次伸延組立体を使うことで、前記初期延展回廊から伸延して、二次延展回廊を設ける段階を更に含むことを特徴とする、上記態様1に記載の方法。
〔態様4〕
二次伸延を実施する前記段階は、より大型のカニューレを連続して使用する連続拡張により達成されることを特徴とする、上記態様3に記載の方法。
〔態様5〕
上記態様1に記載の方法において、制御装置を設ける段階を更に含んでおり、前記制御装置は、前記少なくとも1個の刺激電極を電気的に刺激し、刺激によって消極された神経の反応を検知し、検知された反応に基づいて、外科手術付属器具から神経に向かう方向を判定し、その方向を使用者に連絡することができることを特徴とする方法。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、特許権者を同じくする同時係属出願である米国特許仮出願連続番号第60/506,136号(2003年9月25日出願)の国際特許出願であるとともに、該仮出願の優先権を主張するものであり、該仮出願の全文は、本件に完全に明示している訳ではないが完全に明示したが如く、引例に挙げることにより特に本件開示の一部をなすものとする。本願はまた、次に挙げる、本願の同時係属特許出願および同一譲受人に譲渡された特許出願を引例に挙げることにより、それぞれの全体を一部に組み入れたものとする。すなわち、2002年7月11日出願の「外科手術中に神経接近度、神経方向、および、神経病状を判断するためのシステムおよび方法(System and Method for Determining Nerve Proximity, Direction, and Pathology During Surgery)」という名称のPCT出願連続番号PCT/US02/22247号、2002年9月25日出願の「外科手術処置と査定を実施するためのシステムおよび方法(System and Methods for Performing Surgical Procedures and Assessments)」という名称のPCT出願連続番号PCT/US02/30617号、2002年10月30日出願の「経皮的椎弓根保全査定を実施するためのシステムおよび方法(System and Methods for Performing Percutaneous Pedicle Integrity Assessments)」という名称のPCT出願連続番号PCT/US02/35047号、2003年1月15日出願の「外科手術器具に対する神経方向を判断するためのシステムおよび方法(System and Methods for Determining Nerve Direction to a Surgical Instrument)」という名称のPCT出願連続番号PCT/US03/02056号である(総括的に、「ニューロ・ビジョン(Neuro Vision )PCT出願」と称する)。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、広義には、外科手術処置を実施するシステムに関するものである。特に、本発明は、外科手術処置を実施するために外科手術標的部位に接近(アクセス)するためのシステムに関連するものである。
【背景技術】
【0003】
医療界で顕著な趨勢は、観血を最小限にした技術または最小限の接近技術を選んで、伝統的な「切開」技術による外科手術を避ける方向にある。切開外科手術技術は、一般に、大きな切開部と大量の組織転移により外科手術標的部位に接近しなければならないのが通例であり、これが同時に多大な苦痛と、長期化する入院(嵩む医療費)と、患者集団内での高い感染罹患率とを生じるという点で望ましくない。観血が少なくて済む外科手術技術(いわゆる、「最小接近」技術および「観血を最小限に抑えた」技術など)が選択されつつあるのは、実質的に切開部の寸法をより小さくしながら、同時に、組織転移が相当に少なくて済むという要件で外科手術標的部位へ接近するという事実によるものである。これが、今度は、そのような処置に付随する苦痛、罹患率、それに、医療費を低減することになる。しかし、今日までに開発されてきた接近システムは、多数の点で医者集団の必要の全てを満たし損なっている。
【0004】
先行技術の外科手術接近システムに付随する欠点の1つは、特定の外科手術標的部位次第では、手術回廊を簡単に設けることができるうえに、時間を経ても簡単に維持管理できる、その簡便さに関連している。例えば、筋肉組織またはそれ以外の比較的強度のある組織の下または背後に位置する外科手術標的部位(具体例にすぎないが、脊柱に隣接する腰筋など)に接近している最中に、かかる組織を通して直接的に手術回廊確立用器具を前進させることはやりがいのある事であり、かつ/または、要らぬ効果または望ましくない結果(組織に応力を加える、組織に裂傷を与える等)となる恐れもあることが分かっている。(具体例にすぎないが)フォレイ(Foley)らに交付された米国特許第5,792,044号(特許文献1)の連続拡張システムなどのように、手術回廊を設けながら組織への外傷を緩和する或る程度の努力も取られているが、それにも関わらず、このような試みは比較的狭い手術回廊を基礎とする適用可能性については限りがある。より詳細に説明すると、いわゆる「作業カニューレ」の略円筒の本質に基づくと、器具の操作可能性の程度および/またはカニューレ内での角度設定の程度は一般に制限され、或いは、抑制され、外科手術標的部位が患者の体内の比較的深部である場合は特にそうなる。
この欠点を克服するために努力が企てられており、例えば、ディポート(DiPoto)に交付された米国特許第6,524,320号(特許文献2)などがあるが、この特許では、カニューレの遠位端に拡張自在部が設けられて、外科手術標的部位に隣接している断面積が他より大きくなっている領域を作っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,792,044号
【特許文献2】米国特許第6,524,320号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このシステムは連続拡張接近システムに対する器具操作性を向上させる(少なくとも患者体内の深部で)ために設けられているが、それでも、拡張自在部の配備が外科手術標的部位に隣接する敏感な組織を不注意にも圧迫してしまうことがある、或いは、該組織に衝突することがあるという点で欠点がある。例えば、神経構造および/または血管構造を有する解剖学的領域では、視認できないまま拡張が起こることで、拡張部が敏感な組織に衝突し、患者に対して神経および/または血管の妥協的損傷、破損、および/または、痛みを生じてしまうことがある。
【0007】
このことは、従来の外科手術接近システムについてまた別な欠点を際立たせてしまうが、すなわち、接触したり、衝突したりすれば、患者に神経損傷を生じかねない主要神経構造を有する組織内またはその付近に手術回廊を確立しようという果敢な取り組みのことである。そのような神経構造に接触することを恐れて、これまでのところ、神経構造がほとんど存在しないか、或いは、実質的に神経構造の量が他より少ない組織を貫いて手術回廊を確立することに対してはかなりの制約があり、これのせいで、所与の外科手術標的部位に接近することのできる方法の数は、実効的に、限られている。これは、具体例にすぎないが、脊髄関連の技術で見られることであり、腰筋における既存の神経根と神経叢構造が腰部脊椎に至る側方接近路または遠側方接近路(いわゆる、経腰筋アプローチ)を、事実上、不可能にしてきた。その代わり、脊椎関連の外科医は後方から脊柱に接近すること(他の処置の中でも、とりわけ、後腰椎体間癒着(PLIF)を実施するため)、或いは、前方から脊柱に接近すること(他の処置の中でも、とりわけ、前腰椎体間癒着(ALIF)を実施するため)については、かなり制約を受ける。
【0008】
後接近処置は、後骨構造(すなわち、椎弓板、脊椎間接突起、棘突起など)の一部を削減または切除して、標的部位(通例は椎間板空間を含む)に達するようにしなければならないことが多いという代価を払ってでも、他方向接近より短い距離だけ患者の体内を横断して、手術回廊を確立しようとする段階を含む。前接近処置は、外科手術標的部位に達するのに、骨構造を削減または切除することを含まないという点で、医者にとっては、比較的、簡単である。しかしながら、それにも関わらず、前接近処置が不利なのは、手術回廊を確立するのに、患者体内の遥かに長い距離を貫いて縦断する必要があり、手術回廊を設けるために多様な体内器官を邪魔にならない脇に移動させるにあたり、別な医者の支援を必要とすることが多いという点である。
【0009】
本発明は、先行技術の上述の欠点を排除し、或いは、かかる欠点の影響を少なくとも最小限に抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、接触または衝突があった場合には、患者に対して神経損傷を生じてしまう結果となりかねない神経構造を有する多様な組織のいずれであれ、該組織を貫く(または、該組織の付近に延びる)手術回廊を確立する前、確立する間、確立した後に神経構造が存在していること(および、任意として、神経組織までの距離、および/または、神経組織に対する方向)を看破する段階を含む新規な接近システムおよびそれに関連する方法を提供することにより、上記目的を達成する。脊椎外科手術における用途に関連して本件で詳しく説明されるが、本発明の接近システムは、重要な神経構造を有している組織の中を貫いて(または、該組織の付近を)通過させて手術回廊を確立するように図ったものであれば、何種類の付加的外科手術処置であれ、かかる外科手術処置における使用に適していることに、特に、注目するべきである。
【0011】
本発明の1つの広い局面によれば、接近システムは組織伸延組立体と組織牽引子(開創)組立体から構成されており、両組立体に神経構造が存在すること(および、任意で、神経構造までの距離および/または神経構造に対する方向)を検出する際に使用するための1個以上の電極が装備されている。組織伸延組立体(組織牽引子組立体の1個以上の電極に関連づけられている)は、初期段階として、患者の皮膚と外科手術部位との間の組織の領域を延展(伸延)させることができる。組織牽引子組立体は、第2段階として、この延展(伸延)領域に導入されて、手術回廊の外郭を定めて、確立することができる。手術回廊が確立されてしまうと、所与の外科手術処置次第で、多様な外科手術器具、装置、または、移植片がどんなものあれ、手術回廊内を通され、かつ/または、手術回廊内で操作される。電極(単数または複数)は、組織延展(伸延)および組織介開創の間、神経構造が存在していること(および、任意で、神経構造までの距離および/または神経構造に対する方向)を検出することで、接触または衝突した場合に、患者に対して神経損傷を生じかねない神経構造を有している多様な組織を貫いて(または、かかる組織の近辺に)手術回廊を確立することができるようにする。このような態様で、本発明の接近システムは、普通なら危険または望ましくないと思われる組織を縦断するために使用されて、所与の外科手術標的部位に接近する態様の種類を拡大することができるようにしている。
【0012】
組織伸延組立体は、必要な延展(伸延)を実施することができる構成要素であれば、何種類でも含むことができる。具体例にすぎないが、組織伸延組立体には、Kワイヤ、分岐構造の初期拡張器、従来型構造の(すなわち、非分岐構造の)1個以上の拡張器が設けられて必要な組織延展を実施し、その後で、残りの組織牽引子組立体を受け入れる。1個以上の電極が1個以上のKワイヤと拡張器に設けられて、組織延展の間、神経構造が存在していること(および、任意で、神経構造までの距離、および/または、神経構造に対する方向)を検出することができるようにしている。
【0013】
組織牽引子組立体は、必要な開創を実施することができる構成要素なら、何種類でも備えていてもよい。具体例にすぎないが、組織牽引子組立体は、ハンドル組立体から延びている1個以上の牽引子ブレードを備えている。ハンドル組立体は、牽引子組立体を開くように操作され、すなわち、牽引子ブレードが互いから分離して、外科手術標的部位に至る手術回廊を設けることができるようにする。好ましい実施形態では、これは、後牽引子ブレードを外科手術標的部位に関して固定位置に維持する(後牽引子ブレードを脊椎の後構成要素付近に出ている神経根に衝突させてしまうことを回避するため)ことにより達成されるが、同時に、また別な牽引子ブレード(すなわち、最も頭方向のブレードと最も尾方向のブレード)を後牽引子ブレードから(互いからも)離れる方向に移動または並進させて、出ている神経根の領域を侵すことのない態様で手術回廊を設けるようにしている。
【0014】
牽引子ブレードは、任意で、剛性の楔部材を受け入れるとともに、方向決めするように寸法設定されることで、牽引子ブレードの構造的安定性を補い、手術回廊が確立されてしまってからも、該回廊が小さくなることがなくなることを確実にし、或いはそれ以外に、牽引子ブレードの遠位端が転移された組織が及ぼす力に反応して「滑る」恐れがあるという制約、または他の態様で移動してしまう恐れがあるといったような制約がなくなることを確実にする。好ましい実施形態では、後牽引子ブレードのみに、上述のような楔部材が装備される。任意の局面で、後牽引子ブレードが設置された後で、しかも、牽引子が開いて十分に開創した位置へ移動する前に、この楔部材は椎間板空間内に前進させられる。剛性の楔部材は、椎間板空間内で配向されると、隣接する椎体を開創させるようにするのが好ましいが、これは、椎間板の高さを修復するように働く。楔部材はまた、椎間板空間内を十分な距離だけ前進するのが好ましいが(脊髄正中線を越えるのが好ましい)、これは、術後の脊柱側湾症を防止することと、保護障壁を形成すること(手術場に組織(神経根など)が移動して入り込むのを防止し、手術場の外側へ器具がうっかり出てしまうのを防止する)という、二重の目的に役立っている。
【0015】
牽引子ブレードは、任意で、外科手術部位またはその付近に光を伝搬または放射し、所与の外科手術処置中に外科手術標的部位、器具、および/または、医者が移植片を視認化するのを助ける機構が装備されていてもよい。一実施形態によれば、この機構は、1個以上の光源を牽引子ブレードに接続して、それぞれに端部が外科手術標的部位またはその近辺に光を放射できるようにしたものを備えているが、これに限定されるわけではない。また別な実施形態によれば、この機構は、好適な素材の牽引子ブレードの構造と、光が牽引子ブレードの壁を概ね直接透過して光を伝搬して外科手術標的部位またはその付近を照らすようにした配置を備えているが、これに限定されるわけではない。これを実施する方法として、透光特性(透明なポリカーボネート構造に関するもののような)を有している牽引子ブレードを設け、牽引子ブレードの壁の内側ほぼ全体に光を伝搬し(例えば、霜白状にツヤ消しすること、または、外部および/または内部の各部を不透明にすること等により)、最終的には光が牽引子ブレードの内部表面(または内側に面している表面)に沿った部分から外に出るようにする手段がある。出口部分は、光が外科手術標的部位の略中心に向かわせられるような構成であるのが最適であり、また、牽引子ブレードの内周全体または該内周に沿った一箇所以上の部分に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による外科手術接近システムの一部を形成している組織牽引子(開創)組立体(使用時)の斜視図である。
【図2】本発明による牽引子の後牽引子ブレードと併用するための楔部材の前面を例示した斜視図である。
【図3】本発明による牽引子の後牽引子ブレードと併用するための楔部材の背面を例示した斜視図である。
【図4】本発明による牽引子の頭方向牽引子ブレードと尾方向牽引子ブレードのうちの一方と併用するための狭い牽引子拡張部材の前面を例示した斜視図である。
【図5】本発明による牽引子の頭方向牽引子ブレードと尾方向牽引子ブレードのうちの一方と併用するための幅の狭い牽引子拡張部材の背面を例示した斜視図である。
【図6】本発明による牽引子の頭方向牽引子ブレードと尾方向牽引子ブレードのうちの一方と併用するための幅の広い牽引子拡張部材の前面を例示した斜視図である。
【図7】本発明による牽引子の頭方向牽引子ブレードと尾方向牽引子ブレードのうちの一方と併用するための幅の広い牽引子拡張部材の前面を例示した斜視図である。
【図8】牽引子ブレードを使わない、本発明の牽引子組立体の斜視部分展開図である。
【図9】本発明による外科手術接近システムの一部を形成し、外科手術標的部位(すなわち、軟骨輪)まで延展する際に使用するための初期伸延組立体の構成要素(すなわち、Kワイヤ、ハンドル付きの初期拡張カニューレ、初期拡張カニューレ内に収容される分離拡張器)と用途を例示した斜視図である。
【図10】初期拡張カニューレおよびハンドルが取り外されている初期伸延組立体のKワイヤおよび分離拡張器を例示した斜視図である。
【図11】本発明の一局面による概ね頭方向−尾方向様式で延展する用途での、本発明の分離拡張器を例示した、脊椎標的部位の背面図である。
【図12】本発明による患者の皮膚と外科手術標的部位の間の組織を更に開創するための二次伸延組立体の使用法を例示した側面図である。
【図13】ハンドル組立体がそこから3本の牽引子ブレードが張り出し(背面方向、最頭方向、および、最尾方向)、図12の二次伸延組立体(第1の閉位置にあるのが例示されている)を覆って配置されているのを示した側面図である。
【図14】ハンドル組立体がそこから3本の牽引子ブレードが張り出し(背面方向、最頭方向、および、最尾方向)、図12の二次伸延組立体が取り外されて楔部材が導入されている、本発明による牽引子組立体の側面図である。
【図15】第2の開位置(すなわち、開創位置)に来ることで、外科手術標的部位に至る手術回廊を設けている、本発明による牽引子組立体の斜視図である。
【図16】第2の開位置(すなわち、開創位置)に来ることで、外科手術標的部位に至る手術回廊を設けている、本発明による牽引子組立体の頂面図である。
【図17】第2の開位置(すなわち、開創位置)に来て(二次伸延組立体は取り外されている)、図4および図5と図6および図7の牽引子拡張部材が牽引子に連結されている、本発明による牽引子組立体の斜視図である。
【図18】第2の開位置(すなわち、開創位置)に来て(二次伸延組立体は取り外されている)、図4および図5と図6および図7の牽引子拡張部材が牽引子に連結されている、本発明による牽引子組立体の側面図である。
【図19】本発明による外科手術接近システムを利用して外科手術標的部位に至る手術回廊を設ける前、その最中、その後に神経監視を実施することができる具体的な神経監視システムの斜視図である。
【図20】図19に例示されている神経監視システムのブロック図である。
【図21】図19の神経監視システムの使用中に使用者に通信される具体的な特性および情報を例示したスクリーン表示の図である。
【図22】図19の神経監視システムの使用中に使用者に通信される具体的な特性および情報を例示したスクリーン表示の別な図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の利点の大半は添付の図面と関連させて本件明細書を読めば当業者には明白となり、添付図面では、同一構成要素には同一参照番号が付記されている。
本発明の例示の実施形態が以下に記載されている。明瞭にするために、本件明細書には実施形態の全特徴が記載されているわけではない。このような実施形態を開発するにあたり、無数の実施例固有の解決案を出して開発者の特殊な目標を達成しなければならず、例えば、システム関連の規制やビジネス関連の規制とのコンプライアンスを解決しなければならないが、これらは、実施例ごとに変わるものであることは、勿論、分かることである。更に、かかる開発努力は複雑かつ時間を要し、それでいて尚、本件開示のおかげで当業者が取組めば容易に請負える仕事であることも分かる。後段では主として脊椎外科手術に関連して説明してゆくが、本発明の外科手術接近システムは体内を通る何種類の異なる外科手術標的部位にでも接近できるような解剖学的設定なら、多数の設定で採用することができるということも、容易に分かる。本件に開示されている外科手術接近システムは、個別でも組合わせでも、その両方で特許権保護を保障する多様な進歩性に優れた特徴および構成要件を誇っている。
本発明は、外科手術標的部位に至る手術回廊を確立するために、従来の「切開」外科手術よりもむしろ観血がより少ない様式で外科手術標的部位に接近(アクセス)し、しかも、該標的部位を通らなければならない(または、その付近で延びていなければならない)神経構造に顧慮せずに接近する態様でそうする段階を含む。概して、これを達成するのに本発明の外科手術接近システムは、組織伸延組立体と組織開創組立体を設け、その両方に1個以上の電極を装備して、神経構造が存在していること(および、任意で、神経構造までの距離、および/または、神経構造に対する方向)を検出する用途に付すようにした手段を用いる。
【0018】
このような電極は、先に例として挙げた、本件と同時係属でかつ譲受人を同じくする「ニューロ・ビジョン(Neuro Vision )PCT出願」に例示および記載されているタイプのもののような神経監査システムと併用するために設けられるのが好ましいが、この出願の内容全体は、その全文が本件明細書に明示されている訳ではないが、全文が明示されている如くに、特に本件の一部をなすものとして、ここに援用する。概して、この神経監査システムは、神経が存在していることを検出するにあたり、器具に刺激信号を印加して、神経に付随する神経筋単位から発生した筋電図(EMG)信号が本発明の伸延システムおよび開創システムによって送られるのを監視することにより、組織の延展および開創の間、神経構造が存在していること(および、任意で、神経構造までの距離および/または神経構造に対する方向)を検出することができる。そうする際には、システムは、全体として(本発明の外科手術接近システムを備えている)、神経構造を有している多様な組織のいずれであれ、そこを貫通して(またはその付近に)手術回廊を形成するために使用されるが、特にこのような組織は、接触または衝突した場合には、患者に神経損傷を生じる結果となりかねない。このような態様で、本発明の接近システムを利用して、普通なら危険または望ましくないと思われる組織を縦断することで、所与の外科手術標的部位に接近する態様の種類を拡大することができる。
【0019】
本発明の組織伸延組立体(Kワイヤ、初期拡張器、初期拡張器内に配置された分離拡張器を備えている)は、患者の皮膚と所与の外科手術標的部位の間(標的椎間板の後ろ領域に沿っているのが好ましい)に延在している組織を延展させるために使用される。二次伸延組立体(すなわち、複数の連続拡張式カニューレ)は、任意で、初期伸延組立体の後で使用されて、組織を更に延展させることができる。一旦、延展されてしまうと、患者の体内に結果として生じる空隙または延展領域は、本発明の組織開創組立体を収容するのに十分な寸法になる。より詳細に説明すると、組織開創組立体(ハンドル組立体から張り出している複数の牽引子ブレードを備えている)は二次伸延組立体に相関的に前進させられて、第1の閉位置にある牽引子ブレードが二次伸延組立体の外装の上を伝って前進させられるようにすることができる。その時点で、ハンドル組立体が作動状態になって牽引子ブレードを第2の開位置すなわち(開創位置)に移動させて、外科手術標的部位に至る手術回廊を設けることができる。
【0020】
本発明の一局面によれば、このような開創の後で(または、その前に)、後楔部材(後牽引子ブレードと滑動自在に嵌合するのが好ましい)を前進させて、遠位楔部材延長部が椎間板空間の背部領域内に設置されるようにすることができる。これは、開創前に行われた場合は、開創プロセスの間に後牽引子ブレードが後方に移動しないことを確実にするのに役立つが、但し、残りの牽引子ブレード(すなわち、最頭方向ブレードと最尾方向ブレード)は移動することができて、手術回廊を作ることができる。この態様で後牽引子ブレードを固定することは、幾つかの重要な機能を果たす。まず第一に、楔部材の遠位端は隣接する椎体を延展させるように働くことで、椎間板の高さを修復する。該遠位端はまた、後牽引子ブレードを椎体に対して固定位置に堅固に接続する。後楔部材はまた、手術回廊内で使用される外科手術器具が前進により手術回廊の外にでることを不可能にし、外科手術の間中、出ている神経根とうっかり接触するのを防止することを確実にするのに役立つ。一旦、適切な開創状態になると、最頭方向牽引子ブレードと最尾方向牽引子ブレードが適所にロックされ、その後、牽引子拡張部材がそこに沿って前進させられ、器具または生物構造(すなわち、神経、血管など)が手術回廊に出入りするのを阻止することができる。手術回廊が確立されてしまうと、多様な外科手術器具、装置、移植片のどんなものであれ、所与の外科手術処置次第で、手術回廊内を通過させることができ、かつ/または、該回廊内で操作することができる。
【0021】
図1は、本発明による外科手術接近(アクセス)システムの一部を形成している組織開創(牽引子)組立体10を例示している。開創組立体10は複数の牽引子ブレードがハンドル組立体20から張り出している。具体例として、ハンドル組立体10には第1牽引子ブレード12、第2牽引子ブレード16、および、第3牽引子ブレード18が設けられている。牽引子組立体10は十分な開創形状すなわち「開」形状にあるのが例示されているが、同時に、牽引子ブレード12、16、18が互いから等距離に設置されて、それぞれの中間に外科手術標的部位(例えば、椎間板の軟骨輪など)まで延びている手術回廊15を形成する。3ブレード構造に関して後段に例示および説明するが、本発明の範囲から逸脱せずに、牽引子ブレードの数が増減する場合もあることは容易に分かる。更に、脊柱の外科手術標的部位へ略側方に近づくことに言及しながら本件の説明と例示を行うが(第1ブレード13は「後ろ」ブレードで、第2ブレード16は「最頭方向の」ブレードで、第3ブレード18は「最尾方向の」ブレードである)、本発明の牽引子組立体10は何種類の異なる外科手術標的接近法で用途を見出してもかまわないが、この中には、略後方標的接近、略後側方標的接近、略前方標的接近、略前側方標的接近などの接近法がある。
【0022】
牽引子(リトラクタ)ブレード12、16、18は多様な付加的特長または付加的構成要素が装備されていてもよい。具体例にすぎないが、後牽引子ブレード12には楔部材22が装備されている(図2および図3により明瞭に例示されている)。楔部材22は隣接する椎体を延展するように働き(それにより、椎間板の高さを修復し)、外科手術標的部位に対して牽引子組立体10を固着するのを助け、保護障壁を形成して器具または生物構造(すなわち、神経、血管など)が手術回廊に出入りするのを阻止する。残余の牽引子ブレード(最頭方向ブレード16と最尾方向ブレード18)は各々に、図4および図5に例示されている幅の狭い牽引子拡張部材24か、または、図6および図7に例示されている幅の広い牽引子拡張部材25のような牽引子拡張部材が装備されている。牽引子拡張部材24、25は最頭方向ブレード16および最尾方向ブレード18から伸張して、器具または生物構造(すなわち、神経、血管など)が手術回廊15に出入りするのを阻止する。
【0023】
本発明によれば、牽引子ブレード12、16、18、楔部材22、および/または、牽引子拡張部材24、25のいずれかまたは全部に、1個以上の電極39が設けられており(それぞれの遠位領域に設けられるのが好ましい)、この電極は、具体例として、「ニューロ・ビジョン(Neuro Vision )PCT出願」に例示および記載されている種類のもののような神経監視システムと併用するように装備されている。楔部材22および/または牽引子拡張部材24、25にも、各々に、牽引子ブレード12、16、18それぞれと選択的かつ着脱自在に係合する機構が装備されている。具体例にすぎないが、これは、楔部材22および/または牽引子拡張部材24、25のタブ部材27が牽引子ブレード12、16、18の内向き面に沿って対応するラチェット状の溝(図1に参照番号29と示されている)と嵌合することができるような構造にすることにより達成される。楔部材22および/または牽引子拡張部材24、25は各々に、具体例にすぎないが、断面形状が概ね鳩の尾の形状になった、1対の嵌合部材37が設けられている。嵌合部材37の寸法は、牽引子ブレード12、16、18それぞれの受容部と嵌合するように設定されている。好ましい実施形態では、楔部材22および/または牽引子拡張部材24、25は各々に、挿入器具(図示せず)と嵌合するようにした細長いスロット43が設けられている。タブ部材27にも、各々に細長い歯部材49が装備されており、この部材が、牽引子ブレード12、16、18の内面に沿って設けられた対応する溝29の内側で噛合する。
【0024】
ハンドル組立体20は任意の個数の機構に連結されるが、この機構は、手術台に搭載された連接アームを使用すること等によって、手術部位に対して固定関係でハンドル組立体20を堅固に整合させるためのものである。ハンドル組立体20の第1アーム部材26および第2アーム部材28は、全体で参照番号30と図示されている連結機構により、ヒンジで連結されている。最頭方向牽引子ブレード16は第1アーム部材26の端部に堅固に(略垂直に)連結されている。最尾方向牽引子ブレード18は、第2アーム部材28の端部に堅固に(略垂直に)連結されている。後牽引子ブレード12は並進部材17に堅固に(略垂直に)連結されているが、この部材は、概ね参照番号14と例示されている連結組立体によってハンドル部材20に連結されている。連結組立体14は、1対の手動ノブ部材36を設けたローラー部材34を備えており、このローラー部材34は、使用者による手動動作によって回転させられると、そこに設けられた歯35を並進部材17のラチェット状溝37の内側に噛合させる。従って、ノブ36の手動動作により、並進部材17は第1アーム部材26および第2アーム部材28と相対運動させられる。
【0025】
ハンドル拡張部材31、33(図8)を使用することにより、アーム26、28が同時に開かされ、最頭方向牽引子ブレード16と最尾方向牽引子ブレード18が互いから離れる方向に移動する。この態様で、手術回廊15の寸法および/または形状は、並進部材17がアーム26、28に対して操作される程度に依存して、特別仕立てにすることができる。すなわち、手術回廊15は、何種類の好適な断面形状を設けるように調整されてもよく、例えば、略円形断面、略楕円形断面、および/または、長円断面などがあるが、これらに限定されるわけではない。任意の光発射装置39が1個以上の牽引子ブレード12、16、18に連結されて、光を手術回廊15に向けることができる。
【0026】
図9は、初期伸延組立体40が本発明による外科手術接近システムの一部を形成しているのを例示している。初期伸延組立体40はKワイヤ42、ハンドル46を設けた初期拡張カニューレ44、および、初期拡張カニューレ44内に収容されている分離拡張器48を備えている。使用に際して、Kワイヤ42および分離拡張器48は初期拡張カニューレ44の内部に配置されており、組立体40の全体が外科手術標的部位(すなわち、軟骨輪)に向けて組織内を前進させられる。ここでもまた、これを達成する際には、上述の神経検出および/または方向付け特性を採用するのが好ましい。初期拡張組立体40が前進させられて、分離拡張器48と初期拡張器44の遠位端が椎間板空間内に位置決めされた後で(図9)、初期拡張器44とハンドル46が取り外されることで(図10)、分離拡張器48とKワイヤ42を適所に残存させる。図11に例示されているように、その後、分離拡張器48は分離されて、半分体48a、48bそれぞれが互いに離隔され、標的部位に対して概ね頭方向−尾方向の態様で組織を延展させる。その後、分離拡張器48は緩められて(拡張器の半分体48a、48bを一緒に合わせることができる)、拡張器半分体48a、48bが前−後平面に配置されるように回転させられる。拡張器半分体48a、48bは、このような態様で、一旦、回転させられてしまうと、再度分離させられて、概ね前−後の態様で組織を延展させる。拡張器半分体48a、48bは、本発明によれば、各々に1個上の電極が設けられて(それぞれの遠位領域に設けられるのが好ましい)、この電極は、具体例として、「ニューロ・ビジョン(Neuro Vision )PCT出願」に例示および記載されているような種類のもののような神経監視システムと併用するために装備される。
【0027】
この初期延展に続いて、二次延展を任意で行うことができるが、図12に例示されているように、連続拡張システム50などを利用できる。本発明によれば、連続拡張システム50はKワイヤ42、初期拡張器44、および、1個以上の補足拡張器52、54を備えているが、これらは外科手術標的部位まで組織を更に拡張させる目的がある。再度、二次伸延組立体50の構成要素は(すなわち、Kワイヤ42、初期拡張器44、および、補足拡張器52、54)各々に1個以上の電極が設けられており(それぞれの遠位領域に設けられるのが好ましい)、電極は、具体例として、「ニューロ・ビジョン(Neuro Vision )PCT出願」に例示および記載されている種類のもののような神経監視システムと併用するために装備されている。
【0028】
図13に例示されているように、その後、本発明の開創組立体10は連続拡張システム50の外部に沿って前進させられる。これは、牽引子ブレード12、16、18を第1の閉位置に維持することにより達成される(牽引子ブレード12から16は、概ね、互いに対して当接し合う位置にある)。連続拡張組立体50は、外科手術標的部位まで前進させられてしまうと、取り外されて、楔部材22が後牽引子ブレード12と係合して、図14に例示されているように、ブレードの遠位端が延びて椎間板空間に入る。この時点で、ハンドル組立体20が作動されて、図15および図16に略記されているように、牽引子ブレード16、18を第2の開位置すなわち「開創」位置へ移動させることができる。見てのとおり、このプロセスの間、後牽引子ブレード12は同じ通常位置に留まることができるため、最頭方向牽引子ブレード14と最尾方向牽引子ブレード16は後牽引子ブレード12から離れる方向に移動する。この時点で、幅の狭い牽引子拡張部材24と幅の広い牽引子拡張部材25は最尾方向牽引子ブレード18および最頭方向牽引子ブレード16とそれぞれに係合状態になるが、これは図17および図18に例示されているとおりである。
【0029】
上述のように、組織延展段階および/または組織開創段階の間、神経構造が存在していること(および、任意で、組織構造までの距離および/または組織構造に対する方向)を検出するために、延展構成要素および/または開創構成要素(本件で先に記載されたものを含むが、それらに限定されない)は何種類でも装備することができる。これは次の段階を採用することで達成される。すなわち、(1)1個以上の刺激電極が多様な延展構成要素および/または開創構成要素に設けられ、(2)刺激源(例えば、電圧または電流など)が刺激電極に連結され、(3)多様な構成要素が外科手術標的部位に向けて前進させられ、或いは、外科手術標的部位またはその付近に維持されると、刺激電極から刺激信号が発信され、(4)刺激信号により組織内の神経または神経構造に付随する筋肉が刺激を受けているか否かを判定するように患者が監視される。神経が刺激を受けている場合は、神経構造が延展構成要素および/または開創構成要素に極めて近接した位置にあることを示すものである。
【0030】
神経監視段階は、何種類の好適な態様で達成されてもよく、例えば、組織中によく見られる神経構造に付随する筋肉群が目に見て取れる痙攣を起こしているのを確認するといった態様があるが、これに限定されるわけではなく、その他にも、市場で入手できる「従来からの」筋電図(EMG)システム(すなわち、通例は神経生理学者が操作する)などの(これに限定されないが)、何種類の監視システムによって達成されてもよい。このような監視段階は、前段で引例に挙げた本件の特許権者が同一である同時係属の「ニューロ・ビジョン(Neuro Vision )PCT出願」に例示および記載されている外科医が駆動するタイプのEMG監視システムによっても実行することができる。いずれの場合でも(目視による監視、従来のEMG監視、および/または、外科医が駆動するEMG監視)、本発明の接近システムを使って、普通なら危険で望ましくないと思われる組織を縦断することで、所与の外科手術標的部位に接近する態様の種類を拡大するのが有利である。
【0031】
図19および図20は、具体例にすぎないが、本発明の外科手術接近システム10と併用するのに好適な「ニューロ・ビジョン(Neuro Vision )PCT出願」に開示されているタイプの監視システム120を例示している。監視システム120は、制御装置122、患者モジュール124、筋電図ハーネス126、および、患者モジュール124に接続された帰電極128、患者モジュール124と本発明の外科手術接近システム(図1の牽引子組立体10および図9ないし図12の伸延組立体40、50)の間に電気通信を確立するためのケーブル132を備えている。より詳細に説明すると、電気通信は、具体例にすぎないが、掌サイズの刺激制御装置152を設けることによって達成されるが、この刺激制御装置は、1個以上のコネクタ156a、156b、156cに刺激信号(掌サイズの刺激制御装置152に設けられた手動式ボタンの動作により発生する)を選択的に供与することができる。コネクタ156a、156b、156cは、掌サイズの刺激制御装置152と(具体例にすぎないが)Kワイヤ42、拡張器44、48、52、54、牽引子ブレード12、16、18、および/または、楔部材22、24、25(一括して、「外科手術接近器具」と称する)に設けられた刺激電極との間に電気通信を確立するのに好適である。
【0032】
次に、監視システム120を使用するために、このような外科手術接近器具はコネクタ156a、156b、および/または、156cに接続されなければならないが、この時点で、使用者は制御装置122から特定の外科手術接近器具に送る刺激信号(電流信号が好ましい)を選択的に発信開始することができる。手術回廊を確立する前、その間、および/または、その後に上記のような外科手術接近器具に設けられた電極を刺激することで、外科手術接近器具に近接して延びている神経、または、該器具の比較的近位に在る神経を消極し、刺激を受けた神経に付随する神経筋単位において反応を発生させる。
【0033】
制御装置122はタッチスクリーン表示器140とベース142を備えており、これらが、監視システム120を制御するのに不可欠な処理能力(ソフトウエアおよび/またはハードウエア)を一括して備えている。制御装置122は、神経に関連する外科手術部材の位置に従って音声を発する音声再生装置118を備えている。患者モジュール124はデータケーブル144を介して制御装置122に接続されるが、これは、制御装置122と患者モジュール124の間に電気接続と電気通信(ディジタル式および/またはアナログ式)を編成する。制御装置122の主たる機能として、タッチスクリーン表示器140を介してユーザ指令を受け取ること、外科手術接近器具に設けられた刺激電極を始動すること、規定のアルゴリズムに従って信号データを処理すること、受け取ったパラメータと処理データを表示すること、および、システムの状況を監視して障害状態を報告すること等が挙げられる。タッチスクリーン表示器140は、使用者に情報を通信し、かつ、使用者から指示を受け取ることができるグラフィカル・ユーザ・インターフェイス(GUI)を装備しているのが好ましい。表示器140および/またはベース142は患者モジュールのインターフェイス回路(ハードウエアおよび/またはソフトウエア)を備えており、このインターフェイス回路は刺激源に指令を送り、ディジタル化信号やそれ以外の情報を患者モジュール124から受信し、EMG反応を処理して筋肉群ごとに特性情報を抽出し、表示器140を介して操作者に処理済みのデータを表示して見せる。
【0034】
1つの実施形態では、外科手術標的部位に至る手術回廊を設ける前、その最中、および/または、その後に、監視システム120は、1個以上のKワイヤ42、拡張器44、48、52、54、牽引子ブレード12、16、18、および/または、楔部材22、24、25に対する神経の方向を判断することができる。監視システム120がこれを達成する方法として、制御装置122と患者モジュール124を協働させて、上記の器具に設けられた1個以上の刺激電極に刺激信号を送信する手段がある。患者体内(特に、神経構造を標的とする)外科手術接近システム10の位置次第では、刺激信号は、外科手術接近システム10に隣接する神経、または、システムの概ね近位に在る神経を消極させる。これにより、筋肉群を刺激し、EMG反応を発生するが、この反応はEMGハーネス126により検知することができる。システム120の神経方向機能は、EMGハーネス126を介してシステム120によって監視される多様な神経筋単位が発生した反応を査定する動作に基づいている。
【0035】
神経に付随する神経筋単位を監視して(EMGハーネス126と記録電極127を介して)、その結果として生じたEMG反応を査定する(制御装置122を介して)ことにより、外科手術接近システム10はそのような神経が存在していること(および、任意で、神経までの距離および/または神経に対する方向)を検出することができる。これは、そのような神経の周囲または神経を越えた領域を活発に通り抜けて特定の外科手術標的部位に至る手術回廊を安全かつ再生可能に形成する能力に加えて、手術回廊が確立されてしまった後で神経構造が移動して外科手術接近システム10と接触することが絶対無いように監視する能力を提供する。例えば、脊椎外科手術では、このことが特に有利となるのは次の点においてである。すなわち、外科手術接近システム10は、後側方経腰筋の態様で椎間標的部位に至る手術回廊を確立して脊柱の骨の後ろ構成要素を回避するのに特に好適である。
【0036】
図21および図22は、図19および図20を参照しなから例示および記載されている監視システムの神経方向特性の一実施形態を例示する、具体的なスクリーン表示(表示器140に表せる)である。このようなスクリーン表示は、理解が簡単になる形式で医者に多様な女王を連絡することを意図している。このような情報としては、機能の表示180(この場合は、「方向」)、患者の絵表示181、監視されている神経筋単位レヴェル182、表示されている神経筋単位に付随する神経または神経群183、使用中の器具の名前184(この場合は、拡張器46、48)、使用中の器具の寸法185、刺激閾電流186、器具の神経に対する相対方向を得理事するための基準点を提供するための、使用中の器具の絵表示187(この場合は、拡張器44、48の断面図)、刺激電極に印加されている刺激電流188、使用者に対する指示189(この場合は、「前進」および/または「停止」)、器具から神経に向かう方向を示す矢印190(図22の場合)が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるわけではない。この情報は、何種類の好適な態様で通信されてもよく、例えば、視覚表示(英数文字、発光素子、および/または、絵図など)の使用や音声再生通信(スピーカー素子など)があるが、これらに限定されない。拡張カニューレを特に照会しているのが図示されているが(例えば、参照番号184で表示)、初期伸延組立体40(すなわち、Kワイヤ42や拡張器44、48)および/または牽引子ブレード12、16、18、および/または、楔部材22、24、25等のような、本発明の外科手術接近システム10を形成する多様な器具のいずれか、または、その全部を使用している間、表示器140によく似た情報を提示することが本発明の一部であることは、容易に認識できる。
【0037】
上述の説明および図面から明らかなように、本発明は、従来の「切開」外科手術よりも観血の少ない態様で外科手術標的部位を横断して進むという目標を達成し、更に、外科手術標的部位に至る手術回廊を確立するために貫通しなければならない(または、付近を通らなければならない)神経構造とは無関係に、上記のような外科手術標的部位に接近することができるようにする態様で、目標を達成する。更に、本発明は、手術回廊が確立されてしまった後で実施される処置手順の間、外科手術標的部位に隣接する組織または領域で神経監視段階を実施することができるようにする。本発明の外科手術接近システムは、本件に記載されている脊椎への応用より以上に、または、脊椎への応用を超越して、広範な外科手術応用例または医療応用例で利用することができる。そのような脊椎への応用として、各種器具、装置、移植片、および/または、複合体が外科手術標的部位内またはその隣接部位に導入される処置であって、例えば、椎間板切除、癒着(PLIF、ALIF、TLIF、および、側方接近路または遠側方接近路を介して実施される癒着と、例えば、骨代替品(同種異系移植片や自家移植片など)、セラミック構造、金属構造、および/または、プラスチック構造(メッシュ構造など)、および/または、骨形態発生タンパク質などの複合物の導入を含む癒着)、椎間板全置換等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
更に、本発明の外科手術接近システムは、神経または神経構造を含む組織を貫通する、または、組織の付近に位置する手術回廊を確立しながら、神経または神経構造に接触する恐れを排除または相当に低減することにより、「より観血の少ない」態様で、より多数の外科手術標的部位に接近する可能性を拡大している。そうする際に、本発明の外科手術接近システムは、患者のケアを改善するとともに(「より観血の少ない」接近と、手術回廊の確立前、確立中、確立後に神経に接触する危険を低減または排除したおかげで、痛みを減らすことによる)、医療費を低減することができる(「より観血の少ない」接近に基づき入院期間を短縮し、神経監視に基づき、より多数の部位を好適な外科手術標的部位にすることによる)相当な進歩を示している。総じて、これらの事柄が、国内外ともに、患者集団に利用できるケアの全体的標準を大いに向上させることにつながる。
【0039】
本発明に関連する方法の一例として、以下のものをあげることができる。
〔態様1〕
外科手術標的部位に接近する方法であって、
外科手術標的部位に複数の牽引子ブレードを、概ね閉位置のままで、同時に導入する段階と、
牽引子ブレードを選択的に移動させて、外科手術標的部位に至る個別に調整された手術回廊を設ける段階と、
を含むことを特徴とする方法。
〔態様2〕
Kワイヤと、Kワイヤの上を伝って滑動自在に伝送することができる少なくとも1個の拡張器とを使うことで、所期延展回廊を設ける段階を更に含むことを特徴とする、上記態様1に記載の方法。
〔態様3〕
二次伸延組立体を使うことで、前記初期延展回廊から伸延して、二次延展回廊を設ける段階を更に含むことを特徴とする、上記態様1に記載の方法。
〔態様4〕
二次伸延を実施する前記段階は、より大型のカニューレを連続して使用する連続拡張により達成されることを特徴とする、上記態様3に記載の方法。
〔態様5〕
上記態様1に記載の方法において、制御装置を設ける段階を更に含んでおり、前記制御装置は、前記少なくとも1個の刺激電極を電気的に刺激し、刺激によって消極された神経の反応を検知し、検知された反応に基づいて、外科手術付属器具から神経に向かう方向を判定し、その方向を使用者に連絡することができることを特徴とする方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術標的部位に接近するシステムであって、
複数のブレードがハンドル組立体に着脱自在に連結された牽引子組立体を備えており、複数のブレードは、閉位置に置かれたままで外科手術標的部位に同時に前進させることができ、その後で、選択的に開かれて、外科手術標的部位に至る個別に調整された手術回廊を設けるようにしたことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記システムは伸延組立体を更に備えており、前記牽引子ブレードを外科手術標的部位まで前進させる前に、外科手術標的部位に至る延展回廊を設けるようにしたことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記伸延組立体は、Kワイヤと少なくとも1個の拡張器からなる初期伸延組立体を有しており、拡張器は初期延展を実施するためにKワイヤ上を伝って滑動自在に伝送することができることを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記システムは二次伸延組立体を更に備えており、前記初期延展回廊を二次延展回廊まで伸延し、前記牽引子ブレードは二次延展回廊を通して前進させられて、外科手術標的部位に至るようにしたことを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
少なくとも1個の前記伸延組立体と少なくとも1個の牽引子ブレードは、それぞれが少なくとも1個の刺激電極を備えていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムは制御装置を更に備えており、制御装置は前記少なくとも1個の刺激電極を電気的に刺激し、刺激によって消極された神経の反応を検知し、検知された反応に基づいて、少なくとも1個の前記伸延システムと少なくとも1個の前記牽引子ブレードから神経に向かう方向を判定し、その方向を使用者に連絡することができることを特徴とする、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記システムは前記消極された神経に接続されている筋肉の筋神経反応を検知するような構成の電極を更に備えており、電極は前記制御装置に筋神経反応を送信するように作動することができることを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記Kワイヤは、その遠位先端部に第1の刺激電極を備えていることを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項9】
外科手術標的部位に至る手術回廊を確立するための前記システムは、脊椎の標的部位に接近するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
外科手術標的部位に至る手術回廊を確立するための前記システムは、側方経腰筋接近路を介して前記手術回廊を確立するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムは、少なくとも1個の前記初期伸延組立体と少なくとも1個の前記牽引子ブレードに接続されているハンドルを更に備えており、ハンドルには少なくとも1個のボタンが設けられて、前記制御装置から前記少なくとも1個の刺激電極へ送る電気刺激を開始するようにしたことを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項12】
前記制御装置には、筋肉の筋電図(EMG)反応を表示するように作動することができる表示器が設けられていることを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項13】
前記制御装置には、使用者から指令を受け取るように作動することができるタッチスクリーン表示器が設けられていることを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項14】
前記刺激電極は、少なくとも1個の前記伸延組立体と少なくとも1個の前記牽引子ブレードのそれぞれの遠位端付近に設置されていることを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項15】
外科手術標的部位に接近する方法であって、
外科手術標的部位に複数の牽引子ブレードを、概ね閉位置のままで、同時に導入する段階と、
牽引子ブレードを選択的に移動させて、外科手術標的部位に至る個別に調整された手術回廊を設ける段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項1】
外科手術標的部位に接近するシステムであって、
複数のブレードがハンドル組立体に着脱自在に連結された牽引子組立体を備えており、複数のブレードは、閉位置に置かれたままで外科手術標的部位に同時に前進させることができ、その後で、選択的に開かれて、外科手術標的部位に至る個別に調整された手術回廊を設けるようにしたことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記システムは伸延組立体を更に備えており、前記牽引子ブレードを外科手術標的部位まで前進させる前に、外科手術標的部位に至る延展回廊を設けるようにしたことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記伸延組立体は、Kワイヤと少なくとも1個の拡張器からなる初期伸延組立体を有しており、拡張器は初期延展を実施するためにKワイヤ上を伝って滑動自在に伝送することができることを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記システムは二次伸延組立体を更に備えており、前記初期延展回廊を二次延展回廊まで伸延し、前記牽引子ブレードは二次延展回廊を通して前進させられて、外科手術標的部位に至るようにしたことを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
少なくとも1個の前記伸延組立体と少なくとも1個の牽引子ブレードは、それぞれが少なくとも1個の刺激電極を備えていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムは制御装置を更に備えており、制御装置は前記少なくとも1個の刺激電極を電気的に刺激し、刺激によって消極された神経の反応を検知し、検知された反応に基づいて、少なくとも1個の前記伸延システムと少なくとも1個の前記牽引子ブレードから神経に向かう方向を判定し、その方向を使用者に連絡することができることを特徴とする、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記システムは前記消極された神経に接続されている筋肉の筋神経反応を検知するような構成の電極を更に備えており、電極は前記制御装置に筋神経反応を送信するように作動することができることを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記Kワイヤは、その遠位先端部に第1の刺激電極を備えていることを特徴とする、請求項3に記載のシステム。
【請求項9】
外科手術標的部位に至る手術回廊を確立するための前記システムは、脊椎の標的部位に接近するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
外科手術標的部位に至る手術回廊を確立するための前記システムは、側方経腰筋接近路を介して前記手術回廊を確立するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムは、少なくとも1個の前記初期伸延組立体と少なくとも1個の前記牽引子ブレードに接続されているハンドルを更に備えており、ハンドルには少なくとも1個のボタンが設けられて、前記制御装置から前記少なくとも1個の刺激電極へ送る電気刺激を開始するようにしたことを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項12】
前記制御装置には、筋肉の筋電図(EMG)反応を表示するように作動することができる表示器が設けられていることを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項13】
前記制御装置には、使用者から指令を受け取るように作動することができるタッチスクリーン表示器が設けられていることを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項14】
前記刺激電極は、少なくとも1個の前記伸延組立体と少なくとも1個の前記牽引子ブレードのそれぞれの遠位端付近に設置されていることを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項15】
外科手術標的部位に接近する方法であって、
外科手術標的部位に複数の牽引子ブレードを、概ね閉位置のままで、同時に導入する段階と、
牽引子ブレードを選択的に移動させて、外科手術標的部位に至る個別に調整された手術回廊を設ける段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2010−57968(P2010−57968A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284152(P2009−284152)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【分割の表示】特願2006−528306(P2006−528306)の分割
【原出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(506042058)ヌヴァシヴ インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【分割の表示】特願2006−528306(P2006−528306)の分割
【原出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(506042058)ヌヴァシヴ インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】
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