説明

外観検査装置における外観検査方法

【課題】複数層に形成された検査対象物の各形成状態を検査する場合において、品質上問題の生じる可能性の低い領域や検査不可能な領域について、虚報の出やすい領域を除外したり、あるいは閾値を緩くしたり、判定アルゴリズムを変更したりすることで虚報を抑えられるようにする。
【解決手段】配線パターン21やパッド22、レジスト23、シルク24を形成したプリント基板2を検査する場合、配線パターン21やパッド22、レジスト23、シルク24の設計データで囲まれた領域を膨張処理し、これによって生成された配線パターン21やパッド22の設計データに対する膨張領域と、レジスト23の設計データに対する膨張領域とを重ね合わせる。そして、その重ね合わさった重複領域43を他の内側領域41や外側境界領域42における検査方法と異なる判定アルゴリズムで検査する。あるいは、その重複領域43については、検査を行わないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の形成状態を検査する外観検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、外観検査装置を用いて物品の形成状態を検査する場合、画像取得手段を用いて検査対象物の画像(以下、「被検査画像」という)を取得し、これと、あらかじめ記憶手段に記憶されている基準データとを比較することによって判定を行う。これをプリント基板を検査する場合について説明すると、プリント基板を検査する場合、まず、表面に設けられた配線パターンやパッド、レジスト、シルクなどの画像を取得し、その画像をA/D変換して画像メモリに格納する。ここで、配線パターンやパッド、レジスト、シルクなどを検査する場合は、取得された画像から所定の輝度幅毎の画像を抽出し、配線パターンやパッド、レジスト、シルクごとの各検査領域の画像を抽出する。より具体的には、低輝度領域からレジストの塗布された領域を抽出し、また、高輝度領域からシルクの印刷された領域を抽出する。そして、このように抽出された検査領域に対応して設けられた基準データを用い、その検査領域ごとに独自の検査手法や閾値などを用いて検査を行うようにしている。
【0003】
ところで、このような外観検査を行う場合、CADデータを用いて検査する方法が各種提案されている(特許文献1〜特許文献6)。このうち、下記の特許文献1に記載された検査方法を図12を用いて説明すると、CADデータを用いて検査する場合、まず、検査対象物の画像を取得し、その画像から配線パターンなどのエッジを抽出する。一方、記憶手段には、あらかじめその検査対象物を形成する際に使用されたCADデータを第一のマスタパターンとして記憶させておく。そして、このCADデータで(第一のマスタパターン)を縮小処理することで第二のマスタパターンM1を生成し、また、そのCADデータ(第一のマスタパターン)を膨張処理することで第三のマスタパターンM2を生成する。なお、ここで膨張処理して第三のマスタパターンM2を生成する場合において、隣接して複数の配線パターンが設けられている場合は、その膨張処理されたそれぞれの間における領域(すなわち、配線パターンの存在しない部分)が第三のマスタパターンM2の領域となる。そして、このように各マスタパターンM1、M2を記憶させた状態で、これらのマスタパターンM1、M2とエッジ画像を位置合わせし、それぞれ重なり合った部分を抽出し、この重なり合った部分を不良部分として検出する。図12においては、縮小処理領域内で重なった部分90が欠けを示しており、また、膨張領域の外側領域と重なった部分91が突起を示している。そして、この重なった領域を欠けや突起の存在する不良箇所として判定するようにしている。
【特許文献1】特開平10−141930号公報
【特許文献2】特開2006−030518号公報
【特許文献3】特開2002−298124号公報
【特許文献4】特開2002−039962号公報
【特許文献5】特開平6−288739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際にプリント基板を製造する場合、配線パターンやパッド、レジスト、シルクなどの位置がCADデータの位置からずれることがある。これを図5を用いて説明すると、図9における最上図は、正常なレジストの開口部に正常なパッドが存在する状態を示した図である。この図9において、23はレジストの塗布領域、23aはそのレジスト23の塗布されていない開口部、22はその開口部23aに設けられたパッド、21aはそのパッド22と配線パターン21の連結部分となるネックを示している。このようなプリント基板を製造する場合、実際には、図9(b)に示すように、レジスト23の開口部23aの位置がずれてしまってネック21aがなくなったり、あるいは、ネック21aの位置や長さが変化してしまうことがある。そして、このようにネック21aの存在しないパッド22近傍の形成状態を検査しようとすると、露出した金属の面積(画素数)が少なくなることから不良と判定されてしまう可能性が高い。しかしながら、実際には、レジスト23の開口部23aからパッド22が露出していれば、使用上問題ないため、その後の目視検査によって良品と修正されることになる。
【0005】
また、別の例を図11に示すと、図11(a)は、配線パターン21の上にレジスト23が塗布され、さらに、その上にシルク24が印刷された状態を示している。このように多層にわたって形成されたプリント基板において、配線パターン21の形成状態を検査する場合、シルク24の下層の配線パターン21の画像を正確に取得することができないため、その形成状態を検査することができない。一方、このシルク24の下層の配線パターン21をCADデータを用いて割り出し、そのCADデータに基づく配線パターン21の領域内で検査しようとすると、シルク24の印刷された領域について配線パターン21の判定方法で検査してしまうことになって、不良と判定されてしまう可能性が高くなる。
【0006】
そこで、本発明は上記課題に着目して、複数層に形成された検査対象物の各形成状態を検査する場合において、品質上問題の生じる可能性の低い領域や検査不可能な領域について、虚報の出やすい領域を除外したり、あるいは閾値を緩くしたり、判定アルゴリズムを変更したりすることで虚報を抑えられるようにした外観検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、複数の設計データを用いて製造された物品の各形成状態を判定する場合において、各設計データで囲まれた領域を膨張処理することによって膨張領域を生成し、その生成された一の膨張領域と他の設計データによる膨張領域とを重ね合わせる。そして、物品から取得された画像のうち、その重ね合わされた重複領域について、他の領域で用いられる判定方法と異なる判定方法で判定を行い、もしくは、その物品から取得された画像のうち重複領域については判定を行わないようにする。
【0008】
また、このような発明の一態様として、複数の設計データのうち、一の設計データで囲まれた領域を膨張処理して第一膨張領域を生成するとともに、他の一の設計データで囲まれた領域を膨張処理して第二膨張領域を生成し、この第一膨張領域と第二膨張領域を重ね合わせて重複領域を抽出する。そして、物品から取得された画像における第一膨張領域については第一の判定方法で判定を行い、物品から取得された画像のうち当該重複領域については第一の判定方法と異なる第二の判定方法で判定を行うようにする。もしくは、その物品から取得された画像のうち、重複領域について判定を行わないようにする。
【0009】
そして、好ましくは、膨張領域を生成する場合、製造基準で示された製造誤差の範囲内で膨張処理を行うようにする。
【0010】
このようにすれば、製造時に各層でずれが生じた場合であっても、そのずれの生ずる可能性の高い領域について閾値を緩くしたり、判定アルゴリズムを変えたり、あるいは、判定処理を行わないようにしたりすることによって、虚報を減らすことができるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の設計データを膨張処理してそれぞれを重ね合わせ、その重複領域について、他の領域で用いられる判定方法と異なる判定方法で判定を行い、もしくは、その物品から取得された画像のうち重複領域について判定を行わないようにしたので、製造時に各層における形成位置がずれた場合であっても、製造誤差の範囲内での虚報を減らして検査を行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態における外観検査装置1の概要を示したものであり、図2は、その外観検査装置1の機能ブロック図を示したものである。
【0013】
外観検査装置1の概要について図1を用いて説明すると、この外観検査装置1は、検査対象物であるプリント基板2をステージ11上に載置させるピックアップ機構12と、ステージ11上に載置されたプリント基板2を搬送し、その途中で表面画像を取得する画像取得部13とを備えてなる。この画像取得部13は、プリント基板2に光を照射する発光部13aと、その反射光を受光する受光部13bとを備え、プリント基板2に斜めから光を照射し、その反射光をプリント基板2の真上で受光する。14は回収部であり、良品と判定されたプリント基板2と不良と判定されたプリント基板2とに振り分けて回収する。
【0014】
このような外観検査装置1において、画像取得部13によって取得された画像は、A/D変換され、図2に示す画像メモリ30に一旦格納される。そして、この画像メモリ30に格納された画像から配線パターン21やパッド22、レジスト23、シルク24などの各検査領域の画像が抽出される。一方、記憶手段33には、プリント基板2を製造する際に使用されたCADデータなどの設計データを格納しておき、配線パターン21やパッド22の第一の設計データ、レジスト23の塗布領域を示す第二の設計データ、シルク24の印刷領域を示す第三の設計データを格納しておく。そして、これらの各設計データを拡大・収縮処理し、他の種類の設計データを拡大・収縮処理した領域と重なり合った重複領域43や、拡大・縮小処理によって得られた複数の領域を抽出し、検査対象物から取得された画像について、これらの重複領域43などごとに検査方法を変えて検査するようにしたものである。以下に、本実施の形態における外観検査装置1の詳細について説明する。なお、次に述べる各手段は、外観検査装置1に組み込まれたCPUやROM、RAMなどの記憶装置に格納されたプログラムと協働して実現される。
【0015】
図2において、画像取得手段31は、受光部13bによって取得された画像をA/D変換し、256階調の輝度値で表された画像として画像メモリ30に記憶される。このとき、画像メモリ30に格納される画像は、配線パターン21やパッド22、レジスト23、シルク24などの混在した画像である。ここで、取得された画像のうち、シルク24が最も高い輝度となり、次いで、露出した配線パターン21やパッド22、配線パターン21上に塗布されたレジスト23領域、基材上に塗布されたレジスト23が順に低い輝度となる。
【0016】
画像抽出手段32は、この画像取得手段31によって取得された画像をもとにノイズを除去した各検査領域の画像を抽出する。各検査領域の画像を抽出する場合、例えば、第一の輝度幅から比較的明るい検査領域の画像を抽出し、また、第二の輝度幅から中間的な輝度を有する検査領域の画像を抽出する。また、第三の輝度幅から比較的暗い検査領域の画像を抽出する。より具体的には、第一の輝度幅として、輝度200から輝度255までの高輝度幅の画素を抽出してシルク24を含む画像を抽出し、また、第二の輝度幅として、輝度150から輝度210までの輝度幅の画素を抽出して露出した配線パターン21やパッド22などの金属を含む画像を抽出する。また、第三の輝度幅として、輝度80から輝度120までの輝度幅の画素を抽出してレジスト23が塗布された配線パターン21を含む画像を抽出し、また、第四の輝度幅として、輝度20から輝度60までの輝度幅の画素を抽出し、プリント基板2上に塗布されたレジスト23を含む画像を生成する。なお、これらの輝度値や輝度幅についてはこれらの値に限定されるものではなく、金属色やレジストの色、シルクの色などによって変更される。
【0017】
この画像抽出手段32によって図3(a)に示すようなレジスト23の開口部23aにパッド22が存在している画像を取得する場合、開口部23aの縁部23bが光の照射角度によって反射してしまい、パッド22と同じ輝度の有する図3(b)に示すような画像が取得されることがある。そして、この画像をそのままパッド22の検査領域の画像として検査したのでは、開口部23aの縁部23bをパッド22と認識してしまい、欠陥があると判定されてしまうことになる。そこで、このように抽出された画像から縁部23bのノイズを除去すべく設計データを使用する。
【0018】
記憶手段33には、あらかじめプリント基板2の各製造工程で使用された複数の設計データが格納される。この設計データには、例えば、配線パターン21やパッド22などの金属領域を形成するための第一の設計データと、レジスト23の塗布領域を設定するための第二の設計データと、シルク24を印刷するための第三の設計データなどがあるが、これ以外に、スルーホールを形成するための設計データや、スリットを形成するための設計データを含むようにしてもよい。
【0019】
膨張処理手段34aは、この記憶手段33に格納された複数の設計データを読み出し、各設計データで囲まれた領域の膨張処理を行う。この膨張処理では、配線パターン21やパッド22、レジスト23、シルク24などの領域を外側に向けて製造基準で示された許容製造誤差分だけ膨張処理して膨張領域を生成する。図3および図4に、この膨張処理を行った状態について示す。図3や図4において、斜線で囲まれた領域は第一の輝度幅から取得されたプリント基板2の画像であり、22はパッド、21はパッド22のネック21aに形成された配線パターン、27はその配線パターン21に形成された太り、28は配線パターン21に形成された細り28である。また、25はパッド22に形成された突起、26はパッド22の欠けである。ここで、太り27とは、相対的に他の部分よりも長い幅において厚くなった部分をいい、細り28とは、長い幅において他の部分よりも薄くなった部分をいう。また、突起25とは、短い幅において他の部分よりも突出した部分をいい、欠け26とは、短い幅において他の部分より内側に切れ込んだ部分をいう。図4(a)において、23bで囲まれた領域はレジスト23の開口部23aの縁部23bで反射した領域を示しており、また、図中の破線は、第一の設計データである配線パターン21やパッド22の領域を膨張処理した膨張領域(以下、第一膨張領域22aという)を示している。図4aから分かるように、第一輝度幅によって取得された画像と第一膨張領域22aの画像を位置合わせすると、図4(a)に示すように、第一膨張領域22aの内側領域が実際のパッド22の領域を囲むことになり、レジスト23の開口部23aの縁部23bはその内側領域から除外された状態となる。
【0020】
収縮処理手段34bは、記憶手段33に格納された設計データを読み出し、設計データで囲まれた領域を収縮処理する。この収縮処理では、配線パターン21やパッド22、レジスト23、シルク24などの領域を内側に向けて製造基準で示された許容製造誤差分だけ内側に収縮させて収縮領域を生成する。図4において、太い破線で囲まれた領域は、第一の設計データである配線パターン21やパッド22の領域を縮小処理した領域(以下、第一縮小領域22bという)を示している。
【0021】
位置合わせ手段35は、配線パターン21やパッド22を含む第一輝度領域と配線パターン21とパッド22のみからなる第一設計データを膨張処理した第一膨張領域22aとの位置合わせ処理を行う。同様に、レジスト23やシルク24を含む第n輝度領域(n=1、2、3…)の画像とレジスト23やシルク24からなる第m設計データ(m=1,2、3…)を膨張処理した第m膨張領域との位置合わせ処理を行う。この位置合わせに際しては、検査対象であるプリント基板2の図示しない基準マークを抽出し、その基準マークを用いて第n輝度領域の画像と第m膨張領域を有する画像との位置合わせする。また、プリント基板2が膨張もしくは縮小している場合は、第n輝度領域の画像を膨張もしくは縮小処理してから位置合わせを行う。
【0022】
そして、重複領域抽出手段36では、このように位置合わせ処理が行われた画像から、第n輝度領域の画像と第m膨張領域の内側領域の重複領域43を抽出する。図4(a)の例では、第一輝度領域のうちパッド22やそのネック21aからなる画像と、第一設計データにおける配線パターン21やパッド22の第一膨張領域22aの画像とが重なっているので、図4(b)に示すように縁部23bの画像が除去された画像が抽出される。このときパッド22に突起25や欠け26、あるいは、パッド22のネック21aに太り27や細り28が存在していても、膨張処理された第一膨張領域22aの範囲内にそれらの突起25や欠け26、太り27や細り28が存在する場合は、その突起25なども抽出することができる。ただし、膨張範囲を小さくしておくと、突起25がその膨張領域からはみ出てしまうため、不良と判定できる範囲を超える大きさで膨張させるようにする。膨張処理を行うに際して、例えば、小さな突起25や太り27に対しても厳しく不良とする場合は、比較的膨張率を小さく設定しておいてノイズによる影響を小さくする。また、多少の位置ずれなどに対しても良品と判定すべき場合は、膨張率を大きく設定しておき、その大きな膨張領域内での良否を判定する。すなわち、各設計データごとに膨張範囲を変えるようにしておく。
【0023】
検査領域分割手段37は、あらかじめ記憶手段33に格納されている各種設計データをそれぞれ膨張・収縮処理させることによって重なり具合や膨張・収縮に応じた複数の領域に分割する。この膨張・収縮処理では、先の膨張処理手段34aや収縮処理手段34bを用いて処理される。この検査領域の分割方法について図5を用いて説明する。図5(a)において、細い破線は配線パターン21やパッド22の領域を外側に向けて膨張処理した領域であり、太い破線は、配線パターン21やパッド22の領域を内側に向けて収縮処理した領域である。また、23bは、レジストの塗布領域を外側に向けて(開口部の内側に向けて)膨張処理した領域である。そして、検査領域分割手段37では、これらの膨張・収縮処理された領域から、配線パターン21やパッド22の膨張領域とレジスト23の膨張領域の重なった領域と(図5(b))、配線パターン21やパッド22を膨張処理した領域から縮小処理した領域を除去したリング状の領域(図5(c))と、配線パターン21やパッド22を縮小処理した内側の領域(図5(d))などに分割する。
【0024】
判定手段38は、このように分割された各領域について固有の判定プログラムを用いて判定を行う。ここで、固有の判定プログラムとは、判定処理を行うためのアルゴリズムが異なる場合だけでなく、良否判定の際の閾値を変更する場合、あるいは、判定をまったく行わない場合も含むものである。判定処理を行う場合、好ましくは、配線パターン21やパッド22の内側領域41(図5(d))に対しては比較的緩い基準で判定を行い、また、配線パターン21やパッド22の外側境界領域42(図5(c))については比較的厳しい基準で判定を行う。このように外側境界領域42について厳しい基準で判定するのは、配線パターン21やパッド22の境界部分に突起が存在すれば、他の配線パターン21などと短絡を生じる可能性が高いからである。また、パッド22のネック21aの領域(図5(b))については、レジスト23の塗布ずれによって面積が大きく変化するため、比較的緩い基準で判定を行うようにする。
【0025】
配線パターン21やパッド22の内側領域41を判定する場合について説明すると、まず、被検査画像と第一膨張領域との内側における重複領域43を抽出し、その抽出によって得られた画像における輝度と画素数のヒストグラムを生成する。この生成されたヒストグラムを図6に示すと、図6において、横軸は輝度を示しており、P1は配線パターン21やパッド22の領域を抽出する際に使用された第一輝度幅の下側輝度値、P4はその第一輝度幅における上側輝度値を示している。このヒストグラムにおいては、輝度平均を中心として正規分布をなしているが、配線パターン21やパッド22に欠け26や細り28を有している場合は、ヒストグラムが全体的に暗い側へシフトする。そして、このシフト具合に応じて配線パターン21やパッド22の形成状態を判定すべく、あらかじめ記憶手段33に暗い側における基準画素数(第一の基準画素数S1)を少なくとも記憶させておき、この輝度幅内における画素数と比較する。そして、被検査画像におけるその輝度幅の画素数が基準画素数S1よりも多い場合は欠陥があると判定する。図6(b)においては、パッド22の表面に多くのスリ傷が存在してヒストグラムが暗い側へシフトした状態を示している。
【0026】
次に、図5(c)におけるパッド22の外側境界領域42(リング状の領域)の判定方法を説明する。外側境界領域42を検査する場合、まず、図7(a)に示すように、第一の設計データを縮小処理した境界部分から法線方向22cに沿った輝度と位置に関するグラフを生成する。これにより、図7(b)に示すように、パッド22に突起が存在する場合は、外側方向へ正常な状態よりも高輝度の状態が長くなり、一方、パッド22に欠けが存在すると、外側方向への高輝度の状態が短くなる。そこで、このように外側領域については、特に形状を判定できるようにすべく、図7(b)におけるグラフの変曲点を検出し、正常な状態における変曲点の位置Xよりも一定の距離δ以上変曲点の位置がずれている場合は欠陥があると判定する。
【0027】
また、配線パターン21やパッド22の拡大領域とレジスト23の拡大領域の重なった領域(図5(b))については、次のようにして判定処理を行う。すなわち、ネック21a近傍の重複領域43については、開口部23aにおける基材領域の輝度を40±20、レジスト23の輝度を100±20、露出した配線パターン21やパッド22の輝度を180±20とした場合、その重複領域43内に基材部分の輝度である輝度(40±20)の画素が一定数以上あるか否かを検出する。具体的には、図8に示すように、重複領域43についてヒストグラムを生成し、輝度20から輝度60までの画素数を計数する。そして、あらかじめ、基準となる画素数を記憶させておき、その基準画素数よりも輝度20から輝度60までの画素数が多い場合は、ネック21aの銅パターンが少ない、すなわち、パターン切れであると判定する。これにより、正常なレジスト23の塗布状態(図9(a))から位置がずれたとしても(図9(b))、比較的緩い判定基準で判定するので虚報を減らすことができる。
【0028】
そして、出力手段39は、このように各種判定プログラムによって判定された各領域ごとの判定結果をその座標位置とともに報知可能に出力する。
【0029】
次に、このように構成された外観検査装置1における検査方法について、図10のフローチャートを用いて説明する。
【0030】
まず、プリント基板2を検査する場合、あらかじめ各種設計データを記憶手段33に格納しておき(ステップT1)、また、この設計データに基づく領域を拡大・縮小処理し(ステップT2)、他の設計データに基づく拡大・縮小領域と重ね合わせて(ステップT3)複数の分割領域を生成する(ステップT4)。そして、各分割領域に応じて固有の判定プログラムを格納する(ステップT5)。
【0031】
そして、このように事前に分割領域や判定プログラムを設定した状態で、プリント基板2を検査する場合、検査対象となるプリント基板2から表面画像を取得し(ステップS1)、A/D変換して一旦画像メモリ30に格納する(ステップS2)。そして、第n輝度幅(n=1、2…)内の輝度の画像をそれぞれ抽出する(ステップS3)。これにより、第一輝度幅からシルク24や他の白い輝度を有する画像を抽出し、また、第二輝度幅からパッド22や露出した配線パターン21などのようにシルク24より輝度の低い画像を抽出し、さらに、第三輝度幅からレジスト23の塗布された配線パターン21を含む輝度の画像を抽出する。また、第四輝度幅からプリント基板2の基材上に塗布されたレジスト23の画像を抽出する。このとき、各輝度幅から概ねシルク24や配線パターン21、パッド22、レジスト23の塗布された配線パターン21、基材上のレジスト23の画像を抽出することができるが、パッド22のスリ傷やレジスト23の塗布状態、シルク24の印刷の厚み、あるいは、光の照射角度によってノイズが含まれることになる。
【0032】
次に、このように抽出された各検査領域(シルク24の領域、配線パターン21やパッド22の領域、レジスト23の塗布された配線パターン21の領域、基板上のレジスト23の領域)からノイズを除去して目的の検査領域を抽出すべく、記憶手段33に格納されていた設計データのうち、検査領域に対応する第n設計データを読み出し(ステップS4)、これを膨張処理する(ステップS5)。そして、この膨張処理された画像と検査対象物から取得された第n輝度幅の画像との位置合わせした後(ステップS6)、重複領域43を抽出する(ステップS7)。これにより、図3(a)に示すように、レジスト23の開口部23aにパッド22が存在する場合、図4(b)に示すように、開口部23aの縁部23bのノイズが除去される。
【0033】
次に、このようにノイズを除去した画像について、先に設定データから得られた分割領域を当てはめ(ステップS8)、その分割された各領域における検査対象物の画像を取得する(ステップS9)。そして、分割領域ごとに独自の判定プログラムに基づいて検査を行い(ステップS10)、例えば、パッド22の内側領域41についてはスリ傷の程度を検査し、パッド22の外側境界領域42については突起の有無などの形状を検査し、パッド22のネック21aについては、銅パターンの面積の大きさなどを検査する。そして、これらの各分割領域ごとに独自の判定プログラムで良否の判定処理を行い、その結果を出力する(ステップS11)。
【0034】
<第二の実施の形態>
次に、第二の実施の形態において、レジスト23の上にシルク24が印刷されている場合における配線パターン21の検査方法について説明する。
【0035】
図11において、21は配線パターンであり、その上にレジスト23が塗布され、さらにその上にシルク24が印刷された状態を示している。このように配線パターン21の上にシルク24が印刷されている場合、その下層に設けられたレジスト23や配線パターン21を後から検査することができない。一方、シルク24の印刷状態や色によっては、レジスト23下層の配線パターン21とほぼ同じ輝度になることがある。このように、印刷状態の悪いシルク24とレジスト23下層の配線パターン21がほぼ同じ輝度になれば、第三の輝度幅で取得された画像にノイズが含まれることになり、虚報として出力されてしまうことになる。
【0036】
そこで、第二の実施の形態では、第一の実施の形態と同様に、膨張処理手段34を用いて配線パターン21の設計データを膨張処理するとともにシルク24の設計データを膨張処理し(図11(b))、配線パターン21の膨張領域からシルク24の膨張領域を除去する。そして、この除去処理された設計データと被検査画像の第三の輝度幅で取得された画像とを位置合わせした後、それぞれの重ね合わさった内側の重複領域43を抽出する。すると、図11(c)に示すように、シルク24の除去された配線パターン21の領域のみが抽出される。そして、この抽出された配線パターン21の領域からヒストグラムを生成し、このヒストグラムにおける低輝度側における一定輝度幅の画素数と、高輝度側の一定輝度幅の画素数を計数するとともに、あらかじめ記憶手段33に基準となる第一の基準画素数S1と第二の基準画素数S2とを記憶させておき、これらを比較する。そして、低輝度側における一定輝度幅の画素数が第一の基準画素数よりも多い場合、または、高輝度側の一定輝度幅の画素数が第二の基準画素数よりも多い場合は欠陥があると判定する。このとき、シルク24の下側は検査されないことになるが、シルク24のもともと検査することができないために、この検査不可領域を虚報として出力しないようにする。
【0037】
このように上記実施の形態によれば、第一から第四の設計データを用いて製造されたプリント基板2における配線パターン21やパッド22、レジスト23、シルク24の各形成状態を判定する場合において、第一の設計データで囲まれた領域を膨張処理し、これによって生成された一の膨張領域と、第二の設計データによる膨張領域とを重ね合わせ、その重複領域43を他の内側領域41や外側境界領域42における検査方法と異なる検査方法で検査するようにしたので、製造時にレジスト23の塗布位置がずれた場合であっても、そのずれの生ずる可能性の高い領域の緩く検査することで、虚報を減らすことができるようになる。
【0038】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0039】
例えば、上記第一の実施の形態では、重複領域43について比較的判定基準の緩い検査方法で検査するようにしたが、この重複領域43については、第二の実施の形態と同様に、検査を行わないようにすることもできる。
【0040】
また、上記実施の形態では、各領域について検査する方法を述べたが、この検査方法に限定されるものではなく、種々の検査方法で検査することができる。
【0041】
さらに、上記実施の形態では、プリント基板2を検査する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、複数層にわたって製造されるような物品であれば、どのようなものに対しても適用することができる。
【0042】
加えて、上記実施の形態では、各設計データの膨張領域の重複する領域について検査方法を変えるようにしたが、これに限らず、収縮処理された領域と他の拡大された領域、あるいは、収縮処理された領域と他の収縮処理された領域との重ね合った領域について検査方法を変えるようにしてもよい。すなわち、一の設計データの拡大・縮小領域と他の一の設計データの拡大・縮小領域の組み合わせ4パターンについて検査方法を変更するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施の形態を示す外観検査装置の概要を示す図
【図2】同形態における機能ブロックを示す図
【図3】同形態におけるプリント基板の表面のレジスト開口部分を示す図
【図4】図3におけるパッドの領域を膨張処理した状態を示す図
【図5】同形態における設計データから分割領域を生成する状態を示す図
【図6】同形態における内側領域の検査に使用されるヒストグラムを示す図
【図7】同形態における外側境界領域の検査に使用される位置−輝度を示す図
【図8】同形態におけるネックの重複領域の検査に使用されるヒストグラムを示す図
【図9】同形態におけるレジストの開口部がずれた状態を示す図
【図10】同形態における外観検査装置の処理を示すフローチャート
【図11】本発明の他の実施の形態を示す重複領域を除外した検査を示す図
【図12】従来における配線パターンの検査方法を示す図
【符号の説明】
【0044】
1・・・外観検査装置
11・・・ステージ
12・・・ピックアップ
13・・・画像取得部
14・・・発光部
14a・・・受光部
14b・・・回収部
2・・・プリント基板
21・・・配線パターン
21a・・・ネック
22・・・パッド
23・・・レジスト
23a・・・開口部
23b・・・縁部
24・・・シルク
25・・・突起
26・・・欠け
27・・・太り
28・・・細り
30・・・画像メモリ
31・・・画像取得手段
32・・・第一の画像抽出手段
33・・・記憶手段
34・・・膨張処理手段
35・・・位置合わせ手段
36・・・重複領域抽出手段
37・・・判定手段
41・・・外側境界領域
42・・・内側領域
43・・・重複領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の設計データを用いて製造された物品の各形成状態を判定する外観検査装置で使用される外観検査方法において、
前記各設計データで囲まれた領域を膨張処理させることによって膨張領域を生成するステップと、
当該生成された一の膨張領域と他の設計データの膨張領域とを重ね合わせることによってそれぞれの膨張領域の重複領域を抽出するステップと、
前記物品から取得された画像における当該重複領域について、他の領域で用いられる判定方法と異なる判定方法で判定を行うステップとを備えたことを特徴とする外観検査方法。
【請求項2】
複数の設計データを用いて製造された物品の各形成状態を判定する外観検査装置で使用される外観検査方法において、
前記各設計データで囲まれた領域を膨張処理させることによって膨張領域を生成するステップと、
当該生成された一の膨張領域と他の設計データの膨張領域とを重ね合わせることによってそれぞれの膨張領域の重複領域を抽出するステップと、
前記物品から取得された画像のうち、当該重複領域を除く他の領域について判定を行うステップとを備えたことを特徴とする外観検査方法。
【請求項3】
複数の設計データを用いて製造された物品の各形成状態を判定する外観検査装置で使用される外観検査方法において、
前記複数の設計データのうち、いずれか一の設計データで囲まれた領域を膨張処理して第一膨張領域を生成するステップと、
前記複数の設計データのうち、他の一の設計データで囲まれた領域を膨張処理して第二膨張領域を生成するステップと、
前記生成された第一膨張領域と第二膨張領域を重ね合わせることによって重複領域を抽出するステップと、
前記物品から取得された画像のうち、前記第一膨張領域の中から前記重複領域を除外した領域について第一の判定方法で判定するステップと、
前記物品から取得された画像のうち、前記重複領域について前記第一の判定方法と異なる第二の判定方法で判定を行うステップと、
を備えたことを特徴とする外観検査方法。
【請求項4】
複数の設計データを用いて製造された物品の各形成状態を判定する外観検査装置で使用される外観検査方法において、
前記複数の設計データのうち、いずれか一の設計データで囲まれた領域を膨張処理して第一膨張領域を生成するステップと、
前記複数の設計データのうち、他の一の設計データで囲まれた領域を膨張処理して第二膨張領域を生成するステップと、
前記生成された第一膨張領域と第二膨張領域を重ね合わせることによって重複領域を抽出するステップと、
前記物品から取得された画像のうち、前記第一膨張領域の中から前記重複領域を除外した領域について第一の判定方法で判定するステップと、
を備えたことを特徴とする外観検査方法。
【請求項5】
前記膨張処理が、製造基準で示された製造誤差の範囲内で膨張処理を行うものである請求項1から5のいずれか1項に記載の外観検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−298436(P2008−298436A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141406(P2007−141406)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、経済産業省、独立行政法人情報処理推進機構の委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(597028081)株式会社メガトレード (27)
【Fターム(参考)】