外観検査装置及び外観検査方法
【課題】物体の外観異常を容易に検査する。
【解決手段】外観検査装置1は、物体10の画像を取得する画像取得部2と、画像に二値化処理を施して二値化画像を取得する二値化部3aと、二値化画像に基づき物体10の外観異常の有無を判定する異常判定部3bと、を備えている。異常判定部3cは、二値化画像におけるX方向に並ぶ複数の画素ごとにおいてX方向存在量とX方向変化量とをそれぞれ算出すると共に、二値化画像におけるY方向に並ぶ複数の画素ごとにおいてY方向存在量とY方向変化量とをそれぞれ算出し、そして、複数のX方向存在量の総和、複数のX方向変化量の総和、複数のY方向存在量の総和、及び複数のY方向変化量の総和のそれぞれが、予め設定されたX方向存在量基準値、X方向変化量基準値、Y方向存在量基準値、及びY方向変化量基準値のそれぞれに対し不一致の場合、外観異常が有ると判定する。
【解決手段】外観検査装置1は、物体10の画像を取得する画像取得部2と、画像に二値化処理を施して二値化画像を取得する二値化部3aと、二値化画像に基づき物体10の外観異常の有無を判定する異常判定部3bと、を備えている。異常判定部3cは、二値化画像におけるX方向に並ぶ複数の画素ごとにおいてX方向存在量とX方向変化量とをそれぞれ算出すると共に、二値化画像におけるY方向に並ぶ複数の画素ごとにおいてY方向存在量とY方向変化量とをそれぞれ算出し、そして、複数のX方向存在量の総和、複数のX方向変化量の総和、複数のY方向存在量の総和、及び複数のY方向変化量の総和のそれぞれが、予め設定されたX方向存在量基準値、X方向変化量基準値、Y方向存在量基準値、及びY方向変化量基準値のそれぞれに対し不一致の場合、外観異常が有ると判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の外観を検査するための外観検査装置及び外観検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の外観検査装置としては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。このような外観検査装置では、物体の表面(被検査面)に光源から光を照射して所定の明暗パターンを形成し、当該表面の画像をCCDカメラで取得する。そして、取得した画像に基づいて表面上に存在する表面欠陥(例えば、凹凸欠陥、塗料ブツ、キズ及び汚れ等)を検出し、これにより、物体の外観異常を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−63959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような外観検査装置では、複雑な画像処理や演算が必要であり、また、光源等の設定条件が厳しいものとなる場合がある。さらに、検査対象となる物体の違いによって調整や閾値設定が困難になってしまう問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、物体の外観異常を容易に検査することができる外観検査装置及び外観検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、本発明に係る外観検査装置は、物体の外観を検査するための外観検査装置であって、物体の画像を取得する画像取得部と、画像取得部で取得した画像に二値化処理を施し、複数の画素が第1値又は第2値で構成された二値化画像を取得する二値化処理部と、二値化処理部で取得した二値化画像に基づいて、物体の外観異常の有無を判定する異常判定部と、を備え、異常判定部は、二値化画像における一方向に並ぶ複数の画素ごとにおいて、第1値の数としての一方向存在量と、一方向に隣接する2つの画素が第1値及び第2値の間で変化する数としての一方向変化量と、をそれぞれ算出すると共に、二値化画像における一方向と直交する他方向に並ぶ複数の画素ごとにおいて、第1値の数としての他方向存在量と、他方向に隣接する2つの画素が第1値及び第2値の間で変化する数としての他方向変化量と、をそれぞれ算出し、算出した複数の一方向存在量の総和、複数の一方向変化量の総和、複数の他方向存在量の総和、及び複数の他方向変化量の総和のそれぞれが、予め設定された一方向存在量基準値、一方向変化量基準値、他方向存在量基準値、及び他方向変化量基準値のそれぞれに対し不一致の場合、外観異常が有ると判定すること、を特徴とする。なお、例えば存在量としては、「白又は黒の何れかの画素の数」が挙げられ、例えば変化量としては、「白から黒、又は黒から白に画素の分布が変わる回数」が挙げられる。
【0007】
この本発明の外観検査装置では、物体の画像に二値化処理を施し、複数の画素が二値化され単純化された二値化画像を取得する。そして、この二値化画像の第1値及び第2値についての空間分布を、一方向存在量と一方向変化量と他方向存在量と他方向変化量として単純化して算出し、これにより、物体の外観異常を判定する。つまり、複雑な画像処理や演算を要せず、外観検査に係る異常判定をシンプルなものにして精度よく実施できる。加えて、物体の表面に明暗パターンを形成する必要もなく、ひいては光源等の設定や調整も不要となる。従って、本発明によれば、物体の外観異常を容易に検査することが可能となる。
【0008】
このとき、異常判定部は、正常な物体の二値化画像についての複数の一方向存在量の総和、複数の一方向変化量の総和、複数の他方向存在量の総和、及び複数の他方向変化量の総和のそれぞれを、一方向存在量基準値、一方向変化量基準値、他方向存在量基準値、及び他方向変化量基準値のそれぞれとして予め設定する場合がある。
【0009】
また、物体には加工部が形成されており、異常判定部は、加工部の位置ズレ異常の有無を判定する位置ズレ判定部を有し、位置ズレ判定部は、二値化画像における一方向に並ぶ複数の画素ごとにおいて、当該複数の画素に関する他方向の座標値により一方向存在量又は一方向変化量を除した値としての一方向比をそれぞれ算出すると共に、二値化画像における他方向に並ぶ複数の画素ごとにおいて、当該複数の画素に関する一方向の座標値により他方向存在量又は他方向変化量を除した値としての他方向比をそれぞれ算出し、算出した複数の一方向比の総和、及び他方向比の総和のそれぞれが、予め設定された一方向比基準値、及び他方向比基準値のそれぞれに対し不一致の場合、加工部の位置ズレ異常が有ると判定すること、が好ましい。この場合、物体の加工部の位置ズレ異常を容易に検査することが可能となる。
【0010】
このとき、異常判定部は、正常な物体の二値化画像についての複数の一方向比の総和、及び複数の他方向比の総和のそれぞれを、一方向比基準値、及び他方向比基準値のそれぞれとして予め設定する場合がある。
【0011】
また、二値化処理部は、画像取得部で取得した画像についての階調に関する明度分布を取得し、明度分布において、明度が最も高い第1ピーク値のときの第1階調と、明度が第1ピーク値の次に高い第2ピーク値のときの第2階調と、を導出し、第1及び第2階調の間の値を、二値化処理を行うための閾値となる二値化レベルとして、画像に二値化処理を施すこと、が好ましい。ここで、画像において、物体の表面本来の部分における明度と、加工部や表面欠陥等(以下、単に「加工部等」という)における明度とでは、階調が互いに異なるピーク値をそれぞれ有することが見出される。よって、本発明のように、明度が第1及び第2ピーク値のときの第1及び第2階調を導出し、これらの間の値を二値化レベルとして二値化処理を施すと、加工部等を好適に識別可能な二値化画像を取得することができる。
【0012】
また、本発明に係る外観検査方法は、物体の外観を検査するための外観検査方法であって、物体の画像を取得する画像取得工程と、画像取得工程で取得した画像に二値化処理を施し、複数の画素が第1値又は第2値で構成された二値化画像を取得する二値化処理工程と、二値化処理工程で取得した二値化画像に基づいて、物体の異常の有無を判定する異常判定工程と、を備え、異常判定工程では、二値化画像における一方向に並ぶ複数の画素ごとにおいて、第1値の数としての一方向存在量と、一方向に隣接する2つの画素が第1値及び第2値の間で変化する数としての一方向変化量と、をそれぞれ算出すると共に、二値化画像における一方向と直交する他方向に並ぶ複数の画素ごとにおいて、第1値の数としての他方向存在量と、他方向に隣接する2つの画素が第1値及び第2値の間で変化する数としての他方向変化量と、をそれぞれ算出し、算出した複数の一方向存在量の総和、複数の一方向変化量の総和、複数の他方向存在量の総和、及び複数の他方向変化量の総和のそれぞれが、予め設定された一方向存在量基準値、一方向変化量基準値、他方向存在量基準値、及び他方向変化量基準値のそれぞれに対し不一致の場合、異常が有ると判定すること、を特徴とする。
【0013】
この本発明の外観検査方法では、物体の画像に二値化処理を施し、複数の画素が二値化され単純化された二値化画像を取得する。そして、この二値化画像の第1値及び第2値についての空間分布を、一方向存在量と一方向変化量と他方向存在量と他方向変化量として単純化して算出し、これにより、物体の外観異常を判定する。つまり、複雑な画像処理や演算を要せず、外観検査に係る異常判定をシンプルなものにして精度よく実施できる。加えて、物体の表面に明暗パターンを形成する必要もなく、ひいては光源等の設定や調整も不要となる。従って、本発明においても、物体の外観異常を容易に検査できるという上記効果が奏される。
【0014】
このとき、一方向存在量基準値、一方向変化量基準値、他方向存在量基準値、及び他方向変化量基準値を予め設定する第1前処理工程を備え、第1前処理工程では、正常な物体の二値化画像についての複数の一方向存在量の総和、複数の一方向変化量の総和、複数の他方向存在量の総和、及び複数の他方向変化量の総和のそれぞれを、一方向存在量基準値、一方向変化量基準値、他方向存在量基準値、及び他方向変化量基準値のそれぞれとして予め設定する場合がある。
【0015】
また、物体には加工部が形成されており、異常判定工程は、加工部の位置ズレ異常の有無を判定する位置ズレ判定工程を有し、位置ズレ判定工程では、二値化画像における一方向に並ぶ複数の画素ごとにおいて、当該複数の画素に関する他方向の座標値により一方向存在量又は一方向変化量を除した値としての一方向比をそれぞれ算出すると共に、二値化画像における他方向に並ぶ複数の画素ごとにおいて、当該複数の画素に関する一方向の座標値により他方向存在量又は他方向変化量を除した値としての他方向比をそれぞれ算出し、算出した複数の一方向比の総和、及び他方向比の総和のそれぞれが、予め設定された一方向比基準値、及び他方向比基準値のそれぞれに対し不一致の場合、加工部の位置ズレ異常が有ると判定すること、が好ましい。この場合、物体の加工部の位置ズレ異常を容易に検査することが可能となる。
【0016】
このとき、一方向比基準値、及び他方向比基準値を予め設定する第2前処理工程を備え、第2前処理工程では、正常な物体の二値化画像についての複数の一方向比の総和、及び複数の他方向比の総和のそれぞれを、一方向比基準値、及び他方向比基準値のそれぞれとして予め設定する場合がある。
【0017】
また、二値化処理工程では、画像取得部で取得した画像についての階調に関する明度分布を取得し、明度分布において、明度が最も高い第1ピーク値のときの第1階調と、明度が第1ピーク値の次に高い第2ピーク値のときの第2階調と、を導出し、第1及び第2階調の間の値を、二値化処理を行うための閾値となる二値化レベルとして、画像に二値化処理を施すこと、が好ましい。この場合、上述したように、画像において物体の表面本来の部分における明度と加工部等における明度とでは、階調が互いに異なるピーク値をそれぞれ有することから、本発明のように、明度が第1及び第2ピーク値のときの第1及び第2階調を導出し、これらの間の値を二値化レベルとして二値化処理を施すと、加工部等を好適に識別可能な二値化画像を取得することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、物体の外観異常を容易に検査することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一実施形態に係る外観検査装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】一実施形態に係る外観検査装置による外観検査方法を示すフローチャートである。
【図3】基準画像の一例を示す図である。
【図4】明度のヒストグラムの一例を示す図である。
【図5】基準二値化画像の一例を示す図である。
【図6】検査用画像の一例を示す図である。
【図7】検査用二値化画像の一例を示す図である。
【図8】検査用二値化画像の他の一例を示す図である。
【図9】検査用二値化画像のさらに他の一例を示す図である。
【図10】検査用二値化画像の別の一例を示す図である。
【図11】検査用二値化画像のさらに別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る外観検査装置の構成を示す概略ブロック図である。図1に示すように、外観検査装置1は、物体10の外観を検査し、外観異常を判別するものである。本実施形態の外観検査装置1は、例えば抵抗スポット溶接痕である加工部Z(図3参照)が形成された物体10の表面10aを検査する。物体10としては、特に限定されるものではなく、車両(鉄道車両、軌道、リニアモータ、自動車等)における窓ガラスや外壁等が挙げられる。
【0022】
この外観検査装置1は、画像取得部2、画像解析部3及び報知部4を備えている、画像取得部2は、物体10の表面10aのデジタル画像(以下、単に「画像」という)を取得するための撮像部である。この画像取得部2は、画像解析部3に接続されており、取得した画像を画像解析部3に出力する。画像取得部2としては、CCDカメラ、デジタルカメラ及びスキャナ等が用いられている。
【0023】
画像解析部3は、画像取得部2で取得した画像に二値化処理を施して二値化画像を取得する二値化部(二値化処理部)3aと、二値化画像に基づいて物体10の外観異常の有無を判定する異常判定部3bと、加工部Zの位置ズレ異常の有無を判定する位置ズレ判定部3cと、を含んで構成されている。この画像解析部3は、報知部4に接続されており、異常が有りと判定した場合に異常報知指令を報知部4に出力する。画像解析部3としては、パソコンのECUが利用され、例えばCPU、ROM及びRAM等を含んで構成されている。
【0024】
報知部4は、画像解析部3から出力された異常報知指令に基づいて検査者に異常を報知通知)するものである。報知部4としては、例えばスピーカ、ブザー、警告灯、パソコンのディスプレイ(モニタ)等が利用されている。
【0025】
次に、図2のフローチャートを参照しつつ、上述した外観検査装置1によって物体10の外観を検査する外観検査方法について説明する。なお、ここでは、一例として、加工部Zが形成されている物体10の外観を検査する場合を例示する。
【0026】
まず、前処理工程として、外観異常を判定するための基準値(X方向存在量基準値αx、X方向変化量基準値βx、Y方向存在量基準値αy、及びY方向変化量基準値βy)を算出する。これと共に、加工部Zの位置ズレ異常を判定するための基準値(X方向比基準値γx、及びY方向比基準値γy)を算出する。
【0027】
すなわち、加工部Zが正常に形成された物体10を、画像取得部2によって撮像する。これにより、物体10において正常な加工部Zを含む表面10aのデジタル画像である基準画像を取得する(S1)。図3に示すように、ここでの基準画像11では、正常な加工部Zとして、正円リング状の抵抗スポット溶接痕が表面10aに形成されている。
【0028】
続いて、画像解析部3により、基準画像11の明度のヒストグラムを導出する(S2)。具体的には、図4に示すように、画像11についてグレースケール画像を作成し、各ピクセルの明度(明るさ)を求め、256階調に関する明度分布を基準ヒストグラム12として求める。このとき、各ピクセルの明度は、例えば「明度=0.299×R成分+0.587×G成分+0.144×B成分」とする式で求められる。ここでの基準ヒストグラム12では、横軸に階調が示されており、当該階調は、0から255までの256階調で表現されている。また、縦軸に明度が示されており、当該明度は、ピクセル(px)で表現されている。
【0029】
続いて、基準ヒストグラム12において、明度が最も高い第1ピーク値P1のときの第1階調12Hと、明度が第1ピーク値P1の次に高い第2ピーク値P2のときの第2階調12Lと、を導出する。そして、これら第1及び第2階調12H,12Lの中央値12Mを、二値化処理を行うための閾値となる二値化レベルとして設定する(S3)。続いて、設定した二値化レベルに基づいて基準画像11に二値化処理を施し、複数の画素が1値(第1値)又は0値(第2値)のみで構成された二値化画像である基準二値化画像13を取得する(S4)。
【0030】
図5は、基準二値化画像の一例を示す図である。図中では、基準二値化画像13は、その画素Gが12行11列の非正方行列とされている。この基準二値化画像13では、その図示左上の隅位置が画素Gの座標基準に設定され(つまり、原点(0,0)とされ)、図示左右方向がX方向にされ、図示上下方向がX方向に直交するY方向(他方向)に設定されている。また、図中では、説明の便宜上、基準二値化画像13に加工部Zの画像を重ねて現わすものとする。これらについては、図7〜11において同様である。図5に示すように、基準二値化画像13では、加工部Zに対応する画素Gが1値となり、その他の画素Gが0値となっているのがわかる。
【0031】
続いて、画像解析部3により、基準二値化画像13におけるX方向に並ぶ複数の画素G(以下、「X画素群」という)ごとにおいて、1値の数としてのX方向存在量Axと、X方向に隣接する2つの画素Gが1値及び0値の間で変化する数としてのX方向変化量Bxと、をそれぞれ算出する(S5)。換言すると、X列に並ぶ複数の画素Gのうちで1値の数をX方向存在量Axとし、X列に並ぶ複数の画素GをX方向一方側から他方側に順に見たときに1値→0値(又は、0値→1値)となる数をX方向変化量Bxとする。
【0032】
例えば図5中の例に示すX画素群Gx1では、1値の数が5つ存在し、よって、X方向存在量Axは「5」となる。また、X画素群Gx1では、0から1に変化する箇所と、1から0に変化する箇所と、がそれぞれ1箇所ずつ存在し、よって、X方向変化量Bxは「2」となる。
【0033】
また上記S5では、基準二値化画像13におけるY方向に並ぶ複数の画素G(以下、「Y画素群」という)ごとにおいて、1値の数としてのY方向存在量Ayと、Y方向に隣接する2つの画素Gが1値及び0値の間で変化する数としてのY方向変化量Byと、をそれぞれ算出する。換言すると、Y列に並ぶ複数の画素Gのうちで1値の数をY方向存在量Ayとし、Y列に並ぶ複数の画素GをY方向一方側から他方側に順に見たときに1値→0値(又は、0値→1値)となる数をY方向変化量Byとする。
【0034】
例えば図5中の例に示すY画素群Gy1では、1値の数が6つ存在し、よって、X方向存在量Ayは「6」となる。また、X画素群Gy1では、0から1に変化する箇所と、1から0に変化する箇所と、がそれぞれ1箇所ずつ存在し、よって、Y方向変化量Byは「2」となる。
【0035】
さらにまた、上記S5では、複数のX画素群において、Y方向の座標値によりX方向存在量Axを除した値としてのX方向比Cxをそれぞれ算出する。また、複数のY画素群において、X方向の座標値によりY方向存在量Ayを除した値としてのY方向比Cyをそれぞれ算出する。換言すると、X方向存在量Axと当該X方向存在量AxについてのY方向の位置情報(Y座標)との比を、X方向比Cxとする。また、Y方向存在量Ayと当該Y方向存在量AyについてのX方向の位置情報(X座標)との比を、Y方向比Cyとする。
【0036】
例えば、図5中の例に示すX画素群Gx1では、そのY座標値「2」によりX方向存在量Ax「5」を除した「2.5」が、X方向比Cxとなる。一方、Y画素群Gy1では、そのX座標値「2」によりY方向存在量Ay「6」を除した「3」が、Y方向比Cyとなる。
【0037】
続いて、複数のX方向存在量Axの総和ΣAxをX方向存在量基準値αxと設定し、複数のY方向存在量Ayの総和ΣAyをY方向存在量基準値αyと設定する。また、複数のX方向変化量Bxの総和ΣBxをX方向変化量基準値βxと設定し、複数のY方向変化量Byの総和ΣByをY方向変化量基準値βyと設定する。そして、複数のX方向比Cxの総和ΣCxをX方向比基準値γxと設定し、複数のY方向比Cyの総和ΣCyをY方向比基準値γyと設定する(S6)。
【0038】
次に、本工程として、上記S6にて設定した各基準値を用い、検査用の物体10の外観を検査する。すなわち、まず、検査用の物体10を画像取得部2によって撮像し、加工部Zを含む表面10aのデジタル画像である検査用画像を取得する(S11)。図6に例示する検査用画像21では、例えば溶接条件の悪化により、加工部Zが図示左右方向に潰れるたような楕円形状になっている。
【0039】
続いて、上記S2〜S4と同様にして、画像解析部3により、検査用画像21の明度のヒストグラムを導出し、二値化レベルを設定し、当該二値化レベルに基づいて検査用画像21に二値化処理を施し、検査用二値化画像23を取得する(S12〜S14)。
【0040】
図7は、検査用二値化画像の一例を示す図である。図7に示すように、この検査用二値化画像23は、上記図6の検査用画像21に対応する例であり、ここでは、楕円形状の加工部Zに対応する画素Gが1値となり、その他の画素Gが0値となっている。
【0041】
続いて、画像解析部3により、検査用二値化画像23におけるX画素群ごとにおいて、X方向存在量Axと、X方向変化量Bxと、をそれぞれ算出する(S15)。図7中の例に示すX画素群Gx2では、1値の数が5つ存在し、よって、X方向存在量Axは「5」となる。また、X画素群Gx1では、0から1に変化する箇所と、1から0に変化する箇所と、がそれぞれ1箇所ずつ存在し、よって、X方向変化量Bxは「2」となる。
【0042】
また上記S15では、検査用二値化画像23におけるY画素群ごとにおいて、Y方向存在量Ayと、Y方向変化量Byと、をそれぞれ算出する。図7中の例に示すY画素群Gy2では、1値の数が存在せず、よって、X方向存在量Ayは「0」となる。また、X画素群Gy2では、0から1に変化する箇所及び1から0に変化する箇所が存在せず、よって、Y方向変化量Byは「0」となる。
【0043】
さらにまた、上記S15では、複数のX画素群においてX方向比Cxをそれぞれ算出すし、複数のY画素群においてY方向比Cyをそれぞれ算出する。図7中の例に示すX画素群Gx2では、そのY座標値「2」によりX方向存在量Ax「5」を除した「2.5」が、X方向比Cxとなる。一方、Y画素群Gy2では、そのX座標値「2」によりX方向存在量Ax「0」を除した「0」が、X方向比Cxとなる。
【0044】
続いて、存在量Ax,Ay及び変化量Bx,Byに基づいて外観異常を判定する。具体的には、複数のX方向存在量Axを合計し、X方向存在量Axの総和ΣAxを算出すると共に、複数のX方向変化量Bxを合計し、X方向変化量Bxの総和ΣBxを算出する。また、複数のY方向存在量Ayを合計し、Y方向存在量Ayの総和ΣAyを算出すると共に、複数のY方向変化量Byを合計し、Y方向変化量Byの総和ΣByを算出する。そして、これら総和ΣAx,ΣBx,ΣAy,ΣByが、上記6にて予め設定した基準値αx,βx,αy,βyに対し、それぞれ一致するか否かを判定する(S16)。
【0045】
上記S16において、総和ΣAx,ΣBx,ΣAy,ΣByのそれぞれが基準値αx,βx,αy,βyと一致しない場合、「外観異常有り」として、報知部4によりその旨の報知を実施する(S17)。
【0046】
図7の例では、Y方向存在量の総和ΣAyが「32」であり、Y方向存在量基準値αyの「36」(図5参照)と一致していない。また、Y方向変化量の総和ΣByが「28」であり、Y方向存在量基準値αyの「32」(図5参照)と一致していない。よって、この場合、加工部Zの外観異常が判定され、報知されることとなる。このように、本実施形態では、加工部Zの外観異常が存在する場合、かかる外観異常が精度よく検出され報知される。
【0047】
他方、上記S16において、総和ΣAx,ΣBx,ΣAy,ΣByのそれぞれが基準値αx,βx,αy,βyと一致する場合、加工部Zの位置ズレ異常を判定する。具体的には、複数のX方向比Cxを合計し、X方向比Cxの総和ΣCxを算出すると共に、複数のY方向比Cyを合計し、Y方向比Cyの総和ΣCyを算出する。そして、これら総和ΣCx,ΣCyが、上記6にて予め設定した基準値γx,γyに対しそれぞれ一致するか否かを判定する(S18)。
【0048】
上記S19において、総和ΣCx,ΣCyのそれぞれが基準値γx,γyと一致しない場合、「位置ズレ有り」として、報知部4によりその旨の報知を実施する(S19)。他方、総和ΣCx,ΣCyのそれぞれが基準値γx,γyと一致する場合、物体10の外観に異常が存在しないと判断し、報知部4により正常である旨の報知を実施する(S20)。
【0049】
図8は、検査用二値化画像の他の一例を示す図である。ここでの物体10では、加工部Zに位置ズレが生じており、図8に示すように、取得した検査用二値化画像23に加工部Zの図示左側への位置ズレが生じている。この図8に示す例では、Y方向比の総和ΣCyが「12.6」であり、Y方向比基準値γyの「8.1」(図5参照)と一致していない。よって、この場合、上記S18,S19において加工部Zの位置ズレ異常が判定され、報知されることとなる。このように、本実施形態では、加工部Zの位置ズレ異常が存在する場合、かかる位置ズレが精度よく検出され報知される。
【0050】
以上、本実施形態では、物体10の検査用画像21を取得し、この検査用画像21に二値化処理を施すことにより、複数の画素が二値化され単純化された検査用二値化画像23を取得する。そして、この検査用二値化画像23の1値及び0値についての空間分布を、X方向存在量AxとX方向変化量BxとY方向存在量AyとY方向変化量Byとして単純化して算出することにより、物体10の外観異常を判定する。つまり、複雑な画像処理や演算を要せず、外観検査に係る異常判定をシンプルなものにして精度よく実施できる。さらには、光源等により物体10を照らす必要もなく、物体10の表面10aに明暗パターンを形成する必要もなく、ひいては光源等の設定や調整も不要となる。従って、本実施形態によれば、物体10の外観異常を容易に検査することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態では、上述したように、検査用二値化画像23の1値及び0値についての空間分布のズレを、X方向比Cx及びY方向比Cyとして単純化して算出し、これにより、加工部Zの位置ズレ異常を判定している。よってこの場合、物体10の加工部Zの位置ズレ異常を容易に検査することが可能となる。
【0052】
ところで、画像11,21において、物体10の表面本来の部分における明度と、それ以外の加工部等における明度とでは、階調が互いに異なるピーク値をそれぞれ有することが見出される。この点、本実施形態では、上述したように、二値化画像13,23を取得する際、画像21の階調に関する明度分布をヒストグラム12,22として取得し、その第1及び第2ピーク値P1,P2の第1及び第2階調12L,12Hの中央値12Mを二値化レベルとし、画像11,21に二値化処理を施している。よって、加工部等を好適に識別可能な二値化画像13,23を取得することができる。換言すると、複数の画素において加工部等に対応する画素が精度よく1値となるような二値化画像13,23を取得できる。特に、このように中央値12Mを二値化レベルに設定することで、二値化画像13,23では表面10a部分と加工部等の部分とが好適に区別され易くなる。
【0053】
なお、上記においては、外観異常として加工部Zの変形を検査する例を説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば以下に示すように、「加工部Zの欠け」、「汚れ又はキズ」、「未加工」等の外観異常を検査することもできる。
【0054】
図9は、検査用二値化画像のさらに他の一例を示す図である。ここでの物体10では、加工部Zに欠けが生じており、図9に示すように、取得した検査用二値化画像23には、図示右上部分が欠けた加工部Zが現れている。
【0055】
この図9に示す例では、X方向存在量の総和ΣAxが「26」及びY方向存在量の総和ΣAyが「26」であり、X方向存在量基準値αxの「34」及びY方向存在量基準値αyの「36」に対してそれぞれ一致していない(図5参照)。また、X方向変化量の総和ΣBxが「28」及びY方向変化量の総和ΣByが「26」であり、X方向存在量基準値αxの「36」及びY方向存在量基準値αyの「32」に対してそれぞれ一致していない(図5参照)。よって、この場合でも、上記S16,S17において加工部Zの外観異常が判定され、報知されることとなる。
【0056】
図10は、検査用二値化画像の別の一例を示す図である。ここでの物体10では、加工部Zに汚れ(又は、キズ)が生じており、図10に示すように、取得した検査用二値化画像23には、リング状の略中央部分に汚れZa(又は、キズZa)を有する加工部Zが現れている。
【0057】
この図10に示す例では、X方向存在量の総和ΣAxが「35」及びY方向存在量の総和ΣAyが「37」であり、X方向存在量基準値αxの「34」及びY方向存在量基準値αyの「36」に対してそれぞれ一致していない(図5参照)。また、X方向変化量の総和ΣBxが「38」及びY方向変化量の総和ΣByが「34」であり、X方向存在量基準値αxの「36」及びY方向存在量基準値αyの「32」に対してそれぞれ一致していない(図5参照)。よって、この場合でも、上記S16,S17において加工部Zの外観異常が判定され、報知されることとなる。
【0058】
図11は、検査用二値化画像のさらに別の一例を示す図である。ここでの物体10では、加工部Zが形成されておらず(未加工)、図10に示すように、取得した検査用二値化画像23には、加工部Zが現れていない。
【0059】
この図11に示す例では、X方向存在量の総和ΣAxが「0」及びY方向存在量の総和ΣAyが「0」であり、X方向存在量基準値αxの「34」及びY方向存在量基準値αyの「36」に対してそれぞれ一致していない(図5参照)。また、X方向変化量の総和ΣBxが「0」及びY方向変化量の総和ΣByが「0」であり、X方向存在量基準値αxの「36」及びY方向存在量基準値αyの「32」に対してそれぞれ一致していない(図5参照)。よって、この場合でも、上記S16,S17において加工部Zの外観異常が判定されて報知されることとなる。
【0060】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、第1及び第2階調12L,12Hの中央値12Mを二値化レベルとして設定したが、これに代えて、第1及び第2ピーク値P1,P2の平均値における明度のときの階調を二値化レベルとして設定してもよい。要は、二値化レベルは、第1及び第2階調12L,12Hの間の値であればよい。
【0061】
また、明度のヒストグラム12,22には、2つのピーク値(つまり、第1及び第2ピーク値P1,P2)が現れているが、3つ以上のピーク値が現れる場合、これらのピーク値の上位2つが第1及び第2ピーク値となる。また、物体10は、可視光に対し透明なガラス等の透明体であってもよいし、可視光に対し不透明(不透過)な金属等の不透明体であってもよい。これら何れの場合でも、本発明では物体10の外観を検査できる。
【0062】
また、上記実施形態では、Y方向の座標値でX方向存在量Axを除してなるX方向比Cxをそれぞれ算出したが、X方向比Cxは、Y方向の座標値でX方向変化量Bxを除した値としてもよい。同様に、上記実施形態では、X方向の座標値でY方向存在量Ayを除してなるY方向比Cyをそれぞれ算出したが、Y方向比Cyは、X方向の座標値でY方向変化量Byを除した値としてもよい。つまり、X方向比Cx及びY方向比Cyは、存在量に基づき算出してもよいし、変化量に基づき算出してもよい。
【0063】
また、本発明は、表面10aに加工部Zが形成されていない物体10を検査対象とし、表面10aのキズや汚れ等の表面欠陥のみを検知することも可能である。なお、この場合、図11に示す検査用二値化画像23が基準二値化画像(正常データ)とされ、当該基準二値化画像から基準値が設定される。また、加工部Zは、上記実施形態のものに限定されず、種々の形状・態様のものであってもよい。
【0064】
ここで、上記実施形態では、加工部Zの位置ズレの有無を判定(上記S18)に加え、算出したX方向比Cx及びY方向比Cyそれぞれの大きさ(偏り)に基づくことで、加工部Zの位置ズレの方向を判定することが可能となる。
【0065】
具体的には、以下に示すように、X方向比Cxに下限閾値Lx及び上限閾値Hxを設定し、X方向比Cxが下限閾値Lxよりも小さい場合には、加工部Zが右方向に位置ズレしたと判別し、X方向比Cxが上限閾値Hxよりも大きい場合には、加工部Zが左方向に位置ズレしたと判別する。また、Y方向比Cyに下限閾値Ly及び上限閾値Hyを設定し、Y方向比Cyが下限閾値Lyよりも小さい場合には、加工部Zが下方向に位置ズレしたと判別し、Y方向比Cyが上限閾値Hyよりも大きい場合には、加工部Zが上方向に位置ズレしたと判別する。その結果、これらを合わせると、加工部Zの位置ズレを「上」「下」「左」「右」「左上」「右上」「左下」「右下」の8方向により判定することができる。
X方向比Cx<下限閾値Lx → 右方向の位置ズレ
上限閾値Hx<X方向比Cx → 左方向の位置ズレ
Y方向比Cy<下限閾値Ly → 下方向の位置ズレ
上限閾値Hy<Y方向比Cy → 上方向の位置ズレ
【0066】
これら下限閾値Lx,Ly及び上限閾値Hx,Hyは、基準二値化画像13等に基づいて適宜設定することができる。例えば、図5に示す基準二値化画像13の場合であってX方向比Cx及びY方向比Cyが存在量に基づき算出されるときには、X方向比CxとY方向比Cyと位置ズレ方向とは、下表1に示す関係となる。これにより、上限閾値Hxを10.0、下限閾値Lxを7.0、上限閾値Hyを10.0、及び下限閾値Lyを6.0とすることで、加工部Zの位置ズレ方向を判定できることがわかる。
【表1】
【0067】
一方、図5に示す基準二値化画像13の場合であってX方向比Cx及びY方向比Cyが変化量に基づき算出されるときには、X方向比CxとY方向比Cyと位置ズレ方向とは、下表2に示す関係となる。これにより、上限閾値Hxを8.0、下限閾値Lxを5.5、上限閾値Hyを8.0、及び下限閾値Lyを5.5とすることで、加工部Zの位置ズレ方向を判定できることがわかる。
【表2】
【符号の説明】
【0068】
1…外観検査装置、2…画像取得部、3a…二値化部(二値化処理部)、3b…異常判定部、3c…位置ズレ判定部、10…物体、11…(画像)、12…基準ヒストグラム(ヒストグラム)、12H…第1階調、12L…第2階調、13…基準二値化画像(二値化画像)、21…(画像)、22…検査用ヒストグラム(ヒストグラム)、23…検査用二値化画像(二値化画像)、Ax…X方向存在量(一方向存在量)、Ay…Y方向存在量(他方向存在量)、Bx…X方向変化量(一方向変化量)、By…Y方向変化量(他方向変化量)、Cx…X方向比(一方向比)、Cy…Y方向比(他方向比)、P1…第1ピーク値、P2…第2ピーク値、Z…加工部、αx…X方向存在量基準値(一方向存在量基準値)、αy…Y方向存在量基準値(他方向存在量基準値)、βx…X方向変化量基準値(一方向変化量基準値)、βy…Y方向変化量基準値(他方向変化量基準値)、γx…X方向比基準値(一方向比基準値)、γy…Y方向比基準値(他方向比基準値)、ΣAx…X方向存在量の総和(一方向存在量の総和)、ΣAy…Y方向存在量の総和(他方向存在量の総和)、ΣBx…X方向変化量の総和(一方向変化量の総和)、ΣBy…Y方向変化量の総和(他方向変化量の総和)、ΣCx…(一方向比の総和)、ΣCy…(他方向比の総和)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の外観を検査するための外観検査装置及び外観検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の外観検査装置としては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。このような外観検査装置では、物体の表面(被検査面)に光源から光を照射して所定の明暗パターンを形成し、当該表面の画像をCCDカメラで取得する。そして、取得した画像に基づいて表面上に存在する表面欠陥(例えば、凹凸欠陥、塗料ブツ、キズ及び汚れ等)を検出し、これにより、物体の外観異常を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−63959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような外観検査装置では、複雑な画像処理や演算が必要であり、また、光源等の設定条件が厳しいものとなる場合がある。さらに、検査対象となる物体の違いによって調整や閾値設定が困難になってしまう問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、物体の外観異常を容易に検査することができる外観検査装置及び外観検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、本発明に係る外観検査装置は、物体の外観を検査するための外観検査装置であって、物体の画像を取得する画像取得部と、画像取得部で取得した画像に二値化処理を施し、複数の画素が第1値又は第2値で構成された二値化画像を取得する二値化処理部と、二値化処理部で取得した二値化画像に基づいて、物体の外観異常の有無を判定する異常判定部と、を備え、異常判定部は、二値化画像における一方向に並ぶ複数の画素ごとにおいて、第1値の数としての一方向存在量と、一方向に隣接する2つの画素が第1値及び第2値の間で変化する数としての一方向変化量と、をそれぞれ算出すると共に、二値化画像における一方向と直交する他方向に並ぶ複数の画素ごとにおいて、第1値の数としての他方向存在量と、他方向に隣接する2つの画素が第1値及び第2値の間で変化する数としての他方向変化量と、をそれぞれ算出し、算出した複数の一方向存在量の総和、複数の一方向変化量の総和、複数の他方向存在量の総和、及び複数の他方向変化量の総和のそれぞれが、予め設定された一方向存在量基準値、一方向変化量基準値、他方向存在量基準値、及び他方向変化量基準値のそれぞれに対し不一致の場合、外観異常が有ると判定すること、を特徴とする。なお、例えば存在量としては、「白又は黒の何れかの画素の数」が挙げられ、例えば変化量としては、「白から黒、又は黒から白に画素の分布が変わる回数」が挙げられる。
【0007】
この本発明の外観検査装置では、物体の画像に二値化処理を施し、複数の画素が二値化され単純化された二値化画像を取得する。そして、この二値化画像の第1値及び第2値についての空間分布を、一方向存在量と一方向変化量と他方向存在量と他方向変化量として単純化して算出し、これにより、物体の外観異常を判定する。つまり、複雑な画像処理や演算を要せず、外観検査に係る異常判定をシンプルなものにして精度よく実施できる。加えて、物体の表面に明暗パターンを形成する必要もなく、ひいては光源等の設定や調整も不要となる。従って、本発明によれば、物体の外観異常を容易に検査することが可能となる。
【0008】
このとき、異常判定部は、正常な物体の二値化画像についての複数の一方向存在量の総和、複数の一方向変化量の総和、複数の他方向存在量の総和、及び複数の他方向変化量の総和のそれぞれを、一方向存在量基準値、一方向変化量基準値、他方向存在量基準値、及び他方向変化量基準値のそれぞれとして予め設定する場合がある。
【0009】
また、物体には加工部が形成されており、異常判定部は、加工部の位置ズレ異常の有無を判定する位置ズレ判定部を有し、位置ズレ判定部は、二値化画像における一方向に並ぶ複数の画素ごとにおいて、当該複数の画素に関する他方向の座標値により一方向存在量又は一方向変化量を除した値としての一方向比をそれぞれ算出すると共に、二値化画像における他方向に並ぶ複数の画素ごとにおいて、当該複数の画素に関する一方向の座標値により他方向存在量又は他方向変化量を除した値としての他方向比をそれぞれ算出し、算出した複数の一方向比の総和、及び他方向比の総和のそれぞれが、予め設定された一方向比基準値、及び他方向比基準値のそれぞれに対し不一致の場合、加工部の位置ズレ異常が有ると判定すること、が好ましい。この場合、物体の加工部の位置ズレ異常を容易に検査することが可能となる。
【0010】
このとき、異常判定部は、正常な物体の二値化画像についての複数の一方向比の総和、及び複数の他方向比の総和のそれぞれを、一方向比基準値、及び他方向比基準値のそれぞれとして予め設定する場合がある。
【0011】
また、二値化処理部は、画像取得部で取得した画像についての階調に関する明度分布を取得し、明度分布において、明度が最も高い第1ピーク値のときの第1階調と、明度が第1ピーク値の次に高い第2ピーク値のときの第2階調と、を導出し、第1及び第2階調の間の値を、二値化処理を行うための閾値となる二値化レベルとして、画像に二値化処理を施すこと、が好ましい。ここで、画像において、物体の表面本来の部分における明度と、加工部や表面欠陥等(以下、単に「加工部等」という)における明度とでは、階調が互いに異なるピーク値をそれぞれ有することが見出される。よって、本発明のように、明度が第1及び第2ピーク値のときの第1及び第2階調を導出し、これらの間の値を二値化レベルとして二値化処理を施すと、加工部等を好適に識別可能な二値化画像を取得することができる。
【0012】
また、本発明に係る外観検査方法は、物体の外観を検査するための外観検査方法であって、物体の画像を取得する画像取得工程と、画像取得工程で取得した画像に二値化処理を施し、複数の画素が第1値又は第2値で構成された二値化画像を取得する二値化処理工程と、二値化処理工程で取得した二値化画像に基づいて、物体の異常の有無を判定する異常判定工程と、を備え、異常判定工程では、二値化画像における一方向に並ぶ複数の画素ごとにおいて、第1値の数としての一方向存在量と、一方向に隣接する2つの画素が第1値及び第2値の間で変化する数としての一方向変化量と、をそれぞれ算出すると共に、二値化画像における一方向と直交する他方向に並ぶ複数の画素ごとにおいて、第1値の数としての他方向存在量と、他方向に隣接する2つの画素が第1値及び第2値の間で変化する数としての他方向変化量と、をそれぞれ算出し、算出した複数の一方向存在量の総和、複数の一方向変化量の総和、複数の他方向存在量の総和、及び複数の他方向変化量の総和のそれぞれが、予め設定された一方向存在量基準値、一方向変化量基準値、他方向存在量基準値、及び他方向変化量基準値のそれぞれに対し不一致の場合、異常が有ると判定すること、を特徴とする。
【0013】
この本発明の外観検査方法では、物体の画像に二値化処理を施し、複数の画素が二値化され単純化された二値化画像を取得する。そして、この二値化画像の第1値及び第2値についての空間分布を、一方向存在量と一方向変化量と他方向存在量と他方向変化量として単純化して算出し、これにより、物体の外観異常を判定する。つまり、複雑な画像処理や演算を要せず、外観検査に係る異常判定をシンプルなものにして精度よく実施できる。加えて、物体の表面に明暗パターンを形成する必要もなく、ひいては光源等の設定や調整も不要となる。従って、本発明においても、物体の外観異常を容易に検査できるという上記効果が奏される。
【0014】
このとき、一方向存在量基準値、一方向変化量基準値、他方向存在量基準値、及び他方向変化量基準値を予め設定する第1前処理工程を備え、第1前処理工程では、正常な物体の二値化画像についての複数の一方向存在量の総和、複数の一方向変化量の総和、複数の他方向存在量の総和、及び複数の他方向変化量の総和のそれぞれを、一方向存在量基準値、一方向変化量基準値、他方向存在量基準値、及び他方向変化量基準値のそれぞれとして予め設定する場合がある。
【0015】
また、物体には加工部が形成されており、異常判定工程は、加工部の位置ズレ異常の有無を判定する位置ズレ判定工程を有し、位置ズレ判定工程では、二値化画像における一方向に並ぶ複数の画素ごとにおいて、当該複数の画素に関する他方向の座標値により一方向存在量又は一方向変化量を除した値としての一方向比をそれぞれ算出すると共に、二値化画像における他方向に並ぶ複数の画素ごとにおいて、当該複数の画素に関する一方向の座標値により他方向存在量又は他方向変化量を除した値としての他方向比をそれぞれ算出し、算出した複数の一方向比の総和、及び他方向比の総和のそれぞれが、予め設定された一方向比基準値、及び他方向比基準値のそれぞれに対し不一致の場合、加工部の位置ズレ異常が有ると判定すること、が好ましい。この場合、物体の加工部の位置ズレ異常を容易に検査することが可能となる。
【0016】
このとき、一方向比基準値、及び他方向比基準値を予め設定する第2前処理工程を備え、第2前処理工程では、正常な物体の二値化画像についての複数の一方向比の総和、及び複数の他方向比の総和のそれぞれを、一方向比基準値、及び他方向比基準値のそれぞれとして予め設定する場合がある。
【0017】
また、二値化処理工程では、画像取得部で取得した画像についての階調に関する明度分布を取得し、明度分布において、明度が最も高い第1ピーク値のときの第1階調と、明度が第1ピーク値の次に高い第2ピーク値のときの第2階調と、を導出し、第1及び第2階調の間の値を、二値化処理を行うための閾値となる二値化レベルとして、画像に二値化処理を施すこと、が好ましい。この場合、上述したように、画像において物体の表面本来の部分における明度と加工部等における明度とでは、階調が互いに異なるピーク値をそれぞれ有することから、本発明のように、明度が第1及び第2ピーク値のときの第1及び第2階調を導出し、これらの間の値を二値化レベルとして二値化処理を施すと、加工部等を好適に識別可能な二値化画像を取得することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、物体の外観異常を容易に検査することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一実施形態に係る外観検査装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】一実施形態に係る外観検査装置による外観検査方法を示すフローチャートである。
【図3】基準画像の一例を示す図である。
【図4】明度のヒストグラムの一例を示す図である。
【図5】基準二値化画像の一例を示す図である。
【図6】検査用画像の一例を示す図である。
【図7】検査用二値化画像の一例を示す図である。
【図8】検査用二値化画像の他の一例を示す図である。
【図9】検査用二値化画像のさらに他の一例を示す図である。
【図10】検査用二値化画像の別の一例を示す図である。
【図11】検査用二値化画像のさらに別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る外観検査装置の構成を示す概略ブロック図である。図1に示すように、外観検査装置1は、物体10の外観を検査し、外観異常を判別するものである。本実施形態の外観検査装置1は、例えば抵抗スポット溶接痕である加工部Z(図3参照)が形成された物体10の表面10aを検査する。物体10としては、特に限定されるものではなく、車両(鉄道車両、軌道、リニアモータ、自動車等)における窓ガラスや外壁等が挙げられる。
【0022】
この外観検査装置1は、画像取得部2、画像解析部3及び報知部4を備えている、画像取得部2は、物体10の表面10aのデジタル画像(以下、単に「画像」という)を取得するための撮像部である。この画像取得部2は、画像解析部3に接続されており、取得した画像を画像解析部3に出力する。画像取得部2としては、CCDカメラ、デジタルカメラ及びスキャナ等が用いられている。
【0023】
画像解析部3は、画像取得部2で取得した画像に二値化処理を施して二値化画像を取得する二値化部(二値化処理部)3aと、二値化画像に基づいて物体10の外観異常の有無を判定する異常判定部3bと、加工部Zの位置ズレ異常の有無を判定する位置ズレ判定部3cと、を含んで構成されている。この画像解析部3は、報知部4に接続されており、異常が有りと判定した場合に異常報知指令を報知部4に出力する。画像解析部3としては、パソコンのECUが利用され、例えばCPU、ROM及びRAM等を含んで構成されている。
【0024】
報知部4は、画像解析部3から出力された異常報知指令に基づいて検査者に異常を報知通知)するものである。報知部4としては、例えばスピーカ、ブザー、警告灯、パソコンのディスプレイ(モニタ)等が利用されている。
【0025】
次に、図2のフローチャートを参照しつつ、上述した外観検査装置1によって物体10の外観を検査する外観検査方法について説明する。なお、ここでは、一例として、加工部Zが形成されている物体10の外観を検査する場合を例示する。
【0026】
まず、前処理工程として、外観異常を判定するための基準値(X方向存在量基準値αx、X方向変化量基準値βx、Y方向存在量基準値αy、及びY方向変化量基準値βy)を算出する。これと共に、加工部Zの位置ズレ異常を判定するための基準値(X方向比基準値γx、及びY方向比基準値γy)を算出する。
【0027】
すなわち、加工部Zが正常に形成された物体10を、画像取得部2によって撮像する。これにより、物体10において正常な加工部Zを含む表面10aのデジタル画像である基準画像を取得する(S1)。図3に示すように、ここでの基準画像11では、正常な加工部Zとして、正円リング状の抵抗スポット溶接痕が表面10aに形成されている。
【0028】
続いて、画像解析部3により、基準画像11の明度のヒストグラムを導出する(S2)。具体的には、図4に示すように、画像11についてグレースケール画像を作成し、各ピクセルの明度(明るさ)を求め、256階調に関する明度分布を基準ヒストグラム12として求める。このとき、各ピクセルの明度は、例えば「明度=0.299×R成分+0.587×G成分+0.144×B成分」とする式で求められる。ここでの基準ヒストグラム12では、横軸に階調が示されており、当該階調は、0から255までの256階調で表現されている。また、縦軸に明度が示されており、当該明度は、ピクセル(px)で表現されている。
【0029】
続いて、基準ヒストグラム12において、明度が最も高い第1ピーク値P1のときの第1階調12Hと、明度が第1ピーク値P1の次に高い第2ピーク値P2のときの第2階調12Lと、を導出する。そして、これら第1及び第2階調12H,12Lの中央値12Mを、二値化処理を行うための閾値となる二値化レベルとして設定する(S3)。続いて、設定した二値化レベルに基づいて基準画像11に二値化処理を施し、複数の画素が1値(第1値)又は0値(第2値)のみで構成された二値化画像である基準二値化画像13を取得する(S4)。
【0030】
図5は、基準二値化画像の一例を示す図である。図中では、基準二値化画像13は、その画素Gが12行11列の非正方行列とされている。この基準二値化画像13では、その図示左上の隅位置が画素Gの座標基準に設定され(つまり、原点(0,0)とされ)、図示左右方向がX方向にされ、図示上下方向がX方向に直交するY方向(他方向)に設定されている。また、図中では、説明の便宜上、基準二値化画像13に加工部Zの画像を重ねて現わすものとする。これらについては、図7〜11において同様である。図5に示すように、基準二値化画像13では、加工部Zに対応する画素Gが1値となり、その他の画素Gが0値となっているのがわかる。
【0031】
続いて、画像解析部3により、基準二値化画像13におけるX方向に並ぶ複数の画素G(以下、「X画素群」という)ごとにおいて、1値の数としてのX方向存在量Axと、X方向に隣接する2つの画素Gが1値及び0値の間で変化する数としてのX方向変化量Bxと、をそれぞれ算出する(S5)。換言すると、X列に並ぶ複数の画素Gのうちで1値の数をX方向存在量Axとし、X列に並ぶ複数の画素GをX方向一方側から他方側に順に見たときに1値→0値(又は、0値→1値)となる数をX方向変化量Bxとする。
【0032】
例えば図5中の例に示すX画素群Gx1では、1値の数が5つ存在し、よって、X方向存在量Axは「5」となる。また、X画素群Gx1では、0から1に変化する箇所と、1から0に変化する箇所と、がそれぞれ1箇所ずつ存在し、よって、X方向変化量Bxは「2」となる。
【0033】
また上記S5では、基準二値化画像13におけるY方向に並ぶ複数の画素G(以下、「Y画素群」という)ごとにおいて、1値の数としてのY方向存在量Ayと、Y方向に隣接する2つの画素Gが1値及び0値の間で変化する数としてのY方向変化量Byと、をそれぞれ算出する。換言すると、Y列に並ぶ複数の画素Gのうちで1値の数をY方向存在量Ayとし、Y列に並ぶ複数の画素GをY方向一方側から他方側に順に見たときに1値→0値(又は、0値→1値)となる数をY方向変化量Byとする。
【0034】
例えば図5中の例に示すY画素群Gy1では、1値の数が6つ存在し、よって、X方向存在量Ayは「6」となる。また、X画素群Gy1では、0から1に変化する箇所と、1から0に変化する箇所と、がそれぞれ1箇所ずつ存在し、よって、Y方向変化量Byは「2」となる。
【0035】
さらにまた、上記S5では、複数のX画素群において、Y方向の座標値によりX方向存在量Axを除した値としてのX方向比Cxをそれぞれ算出する。また、複数のY画素群において、X方向の座標値によりY方向存在量Ayを除した値としてのY方向比Cyをそれぞれ算出する。換言すると、X方向存在量Axと当該X方向存在量AxについてのY方向の位置情報(Y座標)との比を、X方向比Cxとする。また、Y方向存在量Ayと当該Y方向存在量AyについてのX方向の位置情報(X座標)との比を、Y方向比Cyとする。
【0036】
例えば、図5中の例に示すX画素群Gx1では、そのY座標値「2」によりX方向存在量Ax「5」を除した「2.5」が、X方向比Cxとなる。一方、Y画素群Gy1では、そのX座標値「2」によりY方向存在量Ay「6」を除した「3」が、Y方向比Cyとなる。
【0037】
続いて、複数のX方向存在量Axの総和ΣAxをX方向存在量基準値αxと設定し、複数のY方向存在量Ayの総和ΣAyをY方向存在量基準値αyと設定する。また、複数のX方向変化量Bxの総和ΣBxをX方向変化量基準値βxと設定し、複数のY方向変化量Byの総和ΣByをY方向変化量基準値βyと設定する。そして、複数のX方向比Cxの総和ΣCxをX方向比基準値γxと設定し、複数のY方向比Cyの総和ΣCyをY方向比基準値γyと設定する(S6)。
【0038】
次に、本工程として、上記S6にて設定した各基準値を用い、検査用の物体10の外観を検査する。すなわち、まず、検査用の物体10を画像取得部2によって撮像し、加工部Zを含む表面10aのデジタル画像である検査用画像を取得する(S11)。図6に例示する検査用画像21では、例えば溶接条件の悪化により、加工部Zが図示左右方向に潰れるたような楕円形状になっている。
【0039】
続いて、上記S2〜S4と同様にして、画像解析部3により、検査用画像21の明度のヒストグラムを導出し、二値化レベルを設定し、当該二値化レベルに基づいて検査用画像21に二値化処理を施し、検査用二値化画像23を取得する(S12〜S14)。
【0040】
図7は、検査用二値化画像の一例を示す図である。図7に示すように、この検査用二値化画像23は、上記図6の検査用画像21に対応する例であり、ここでは、楕円形状の加工部Zに対応する画素Gが1値となり、その他の画素Gが0値となっている。
【0041】
続いて、画像解析部3により、検査用二値化画像23におけるX画素群ごとにおいて、X方向存在量Axと、X方向変化量Bxと、をそれぞれ算出する(S15)。図7中の例に示すX画素群Gx2では、1値の数が5つ存在し、よって、X方向存在量Axは「5」となる。また、X画素群Gx1では、0から1に変化する箇所と、1から0に変化する箇所と、がそれぞれ1箇所ずつ存在し、よって、X方向変化量Bxは「2」となる。
【0042】
また上記S15では、検査用二値化画像23におけるY画素群ごとにおいて、Y方向存在量Ayと、Y方向変化量Byと、をそれぞれ算出する。図7中の例に示すY画素群Gy2では、1値の数が存在せず、よって、X方向存在量Ayは「0」となる。また、X画素群Gy2では、0から1に変化する箇所及び1から0に変化する箇所が存在せず、よって、Y方向変化量Byは「0」となる。
【0043】
さらにまた、上記S15では、複数のX画素群においてX方向比Cxをそれぞれ算出すし、複数のY画素群においてY方向比Cyをそれぞれ算出する。図7中の例に示すX画素群Gx2では、そのY座標値「2」によりX方向存在量Ax「5」を除した「2.5」が、X方向比Cxとなる。一方、Y画素群Gy2では、そのX座標値「2」によりX方向存在量Ax「0」を除した「0」が、X方向比Cxとなる。
【0044】
続いて、存在量Ax,Ay及び変化量Bx,Byに基づいて外観異常を判定する。具体的には、複数のX方向存在量Axを合計し、X方向存在量Axの総和ΣAxを算出すると共に、複数のX方向変化量Bxを合計し、X方向変化量Bxの総和ΣBxを算出する。また、複数のY方向存在量Ayを合計し、Y方向存在量Ayの総和ΣAyを算出すると共に、複数のY方向変化量Byを合計し、Y方向変化量Byの総和ΣByを算出する。そして、これら総和ΣAx,ΣBx,ΣAy,ΣByが、上記6にて予め設定した基準値αx,βx,αy,βyに対し、それぞれ一致するか否かを判定する(S16)。
【0045】
上記S16において、総和ΣAx,ΣBx,ΣAy,ΣByのそれぞれが基準値αx,βx,αy,βyと一致しない場合、「外観異常有り」として、報知部4によりその旨の報知を実施する(S17)。
【0046】
図7の例では、Y方向存在量の総和ΣAyが「32」であり、Y方向存在量基準値αyの「36」(図5参照)と一致していない。また、Y方向変化量の総和ΣByが「28」であり、Y方向存在量基準値αyの「32」(図5参照)と一致していない。よって、この場合、加工部Zの外観異常が判定され、報知されることとなる。このように、本実施形態では、加工部Zの外観異常が存在する場合、かかる外観異常が精度よく検出され報知される。
【0047】
他方、上記S16において、総和ΣAx,ΣBx,ΣAy,ΣByのそれぞれが基準値αx,βx,αy,βyと一致する場合、加工部Zの位置ズレ異常を判定する。具体的には、複数のX方向比Cxを合計し、X方向比Cxの総和ΣCxを算出すると共に、複数のY方向比Cyを合計し、Y方向比Cyの総和ΣCyを算出する。そして、これら総和ΣCx,ΣCyが、上記6にて予め設定した基準値γx,γyに対しそれぞれ一致するか否かを判定する(S18)。
【0048】
上記S19において、総和ΣCx,ΣCyのそれぞれが基準値γx,γyと一致しない場合、「位置ズレ有り」として、報知部4によりその旨の報知を実施する(S19)。他方、総和ΣCx,ΣCyのそれぞれが基準値γx,γyと一致する場合、物体10の外観に異常が存在しないと判断し、報知部4により正常である旨の報知を実施する(S20)。
【0049】
図8は、検査用二値化画像の他の一例を示す図である。ここでの物体10では、加工部Zに位置ズレが生じており、図8に示すように、取得した検査用二値化画像23に加工部Zの図示左側への位置ズレが生じている。この図8に示す例では、Y方向比の総和ΣCyが「12.6」であり、Y方向比基準値γyの「8.1」(図5参照)と一致していない。よって、この場合、上記S18,S19において加工部Zの位置ズレ異常が判定され、報知されることとなる。このように、本実施形態では、加工部Zの位置ズレ異常が存在する場合、かかる位置ズレが精度よく検出され報知される。
【0050】
以上、本実施形態では、物体10の検査用画像21を取得し、この検査用画像21に二値化処理を施すことにより、複数の画素が二値化され単純化された検査用二値化画像23を取得する。そして、この検査用二値化画像23の1値及び0値についての空間分布を、X方向存在量AxとX方向変化量BxとY方向存在量AyとY方向変化量Byとして単純化して算出することにより、物体10の外観異常を判定する。つまり、複雑な画像処理や演算を要せず、外観検査に係る異常判定をシンプルなものにして精度よく実施できる。さらには、光源等により物体10を照らす必要もなく、物体10の表面10aに明暗パターンを形成する必要もなく、ひいては光源等の設定や調整も不要となる。従って、本実施形態によれば、物体10の外観異常を容易に検査することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態では、上述したように、検査用二値化画像23の1値及び0値についての空間分布のズレを、X方向比Cx及びY方向比Cyとして単純化して算出し、これにより、加工部Zの位置ズレ異常を判定している。よってこの場合、物体10の加工部Zの位置ズレ異常を容易に検査することが可能となる。
【0052】
ところで、画像11,21において、物体10の表面本来の部分における明度と、それ以外の加工部等における明度とでは、階調が互いに異なるピーク値をそれぞれ有することが見出される。この点、本実施形態では、上述したように、二値化画像13,23を取得する際、画像21の階調に関する明度分布をヒストグラム12,22として取得し、その第1及び第2ピーク値P1,P2の第1及び第2階調12L,12Hの中央値12Mを二値化レベルとし、画像11,21に二値化処理を施している。よって、加工部等を好適に識別可能な二値化画像13,23を取得することができる。換言すると、複数の画素において加工部等に対応する画素が精度よく1値となるような二値化画像13,23を取得できる。特に、このように中央値12Mを二値化レベルに設定することで、二値化画像13,23では表面10a部分と加工部等の部分とが好適に区別され易くなる。
【0053】
なお、上記においては、外観異常として加工部Zの変形を検査する例を説明したが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば以下に示すように、「加工部Zの欠け」、「汚れ又はキズ」、「未加工」等の外観異常を検査することもできる。
【0054】
図9は、検査用二値化画像のさらに他の一例を示す図である。ここでの物体10では、加工部Zに欠けが生じており、図9に示すように、取得した検査用二値化画像23には、図示右上部分が欠けた加工部Zが現れている。
【0055】
この図9に示す例では、X方向存在量の総和ΣAxが「26」及びY方向存在量の総和ΣAyが「26」であり、X方向存在量基準値αxの「34」及びY方向存在量基準値αyの「36」に対してそれぞれ一致していない(図5参照)。また、X方向変化量の総和ΣBxが「28」及びY方向変化量の総和ΣByが「26」であり、X方向存在量基準値αxの「36」及びY方向存在量基準値αyの「32」に対してそれぞれ一致していない(図5参照)。よって、この場合でも、上記S16,S17において加工部Zの外観異常が判定され、報知されることとなる。
【0056】
図10は、検査用二値化画像の別の一例を示す図である。ここでの物体10では、加工部Zに汚れ(又は、キズ)が生じており、図10に示すように、取得した検査用二値化画像23には、リング状の略中央部分に汚れZa(又は、キズZa)を有する加工部Zが現れている。
【0057】
この図10に示す例では、X方向存在量の総和ΣAxが「35」及びY方向存在量の総和ΣAyが「37」であり、X方向存在量基準値αxの「34」及びY方向存在量基準値αyの「36」に対してそれぞれ一致していない(図5参照)。また、X方向変化量の総和ΣBxが「38」及びY方向変化量の総和ΣByが「34」であり、X方向存在量基準値αxの「36」及びY方向存在量基準値αyの「32」に対してそれぞれ一致していない(図5参照)。よって、この場合でも、上記S16,S17において加工部Zの外観異常が判定され、報知されることとなる。
【0058】
図11は、検査用二値化画像のさらに別の一例を示す図である。ここでの物体10では、加工部Zが形成されておらず(未加工)、図10に示すように、取得した検査用二値化画像23には、加工部Zが現れていない。
【0059】
この図11に示す例では、X方向存在量の総和ΣAxが「0」及びY方向存在量の総和ΣAyが「0」であり、X方向存在量基準値αxの「34」及びY方向存在量基準値αyの「36」に対してそれぞれ一致していない(図5参照)。また、X方向変化量の総和ΣBxが「0」及びY方向変化量の総和ΣByが「0」であり、X方向存在量基準値αxの「36」及びY方向存在量基準値αyの「32」に対してそれぞれ一致していない(図5参照)。よって、この場合でも、上記S16,S17において加工部Zの外観異常が判定されて報知されることとなる。
【0060】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、第1及び第2階調12L,12Hの中央値12Mを二値化レベルとして設定したが、これに代えて、第1及び第2ピーク値P1,P2の平均値における明度のときの階調を二値化レベルとして設定してもよい。要は、二値化レベルは、第1及び第2階調12L,12Hの間の値であればよい。
【0061】
また、明度のヒストグラム12,22には、2つのピーク値(つまり、第1及び第2ピーク値P1,P2)が現れているが、3つ以上のピーク値が現れる場合、これらのピーク値の上位2つが第1及び第2ピーク値となる。また、物体10は、可視光に対し透明なガラス等の透明体であってもよいし、可視光に対し不透明(不透過)な金属等の不透明体であってもよい。これら何れの場合でも、本発明では物体10の外観を検査できる。
【0062】
また、上記実施形態では、Y方向の座標値でX方向存在量Axを除してなるX方向比Cxをそれぞれ算出したが、X方向比Cxは、Y方向の座標値でX方向変化量Bxを除した値としてもよい。同様に、上記実施形態では、X方向の座標値でY方向存在量Ayを除してなるY方向比Cyをそれぞれ算出したが、Y方向比Cyは、X方向の座標値でY方向変化量Byを除した値としてもよい。つまり、X方向比Cx及びY方向比Cyは、存在量に基づき算出してもよいし、変化量に基づき算出してもよい。
【0063】
また、本発明は、表面10aに加工部Zが形成されていない物体10を検査対象とし、表面10aのキズや汚れ等の表面欠陥のみを検知することも可能である。なお、この場合、図11に示す検査用二値化画像23が基準二値化画像(正常データ)とされ、当該基準二値化画像から基準値が設定される。また、加工部Zは、上記実施形態のものに限定されず、種々の形状・態様のものであってもよい。
【0064】
ここで、上記実施形態では、加工部Zの位置ズレの有無を判定(上記S18)に加え、算出したX方向比Cx及びY方向比Cyそれぞれの大きさ(偏り)に基づくことで、加工部Zの位置ズレの方向を判定することが可能となる。
【0065】
具体的には、以下に示すように、X方向比Cxに下限閾値Lx及び上限閾値Hxを設定し、X方向比Cxが下限閾値Lxよりも小さい場合には、加工部Zが右方向に位置ズレしたと判別し、X方向比Cxが上限閾値Hxよりも大きい場合には、加工部Zが左方向に位置ズレしたと判別する。また、Y方向比Cyに下限閾値Ly及び上限閾値Hyを設定し、Y方向比Cyが下限閾値Lyよりも小さい場合には、加工部Zが下方向に位置ズレしたと判別し、Y方向比Cyが上限閾値Hyよりも大きい場合には、加工部Zが上方向に位置ズレしたと判別する。その結果、これらを合わせると、加工部Zの位置ズレを「上」「下」「左」「右」「左上」「右上」「左下」「右下」の8方向により判定することができる。
X方向比Cx<下限閾値Lx → 右方向の位置ズレ
上限閾値Hx<X方向比Cx → 左方向の位置ズレ
Y方向比Cy<下限閾値Ly → 下方向の位置ズレ
上限閾値Hy<Y方向比Cy → 上方向の位置ズレ
【0066】
これら下限閾値Lx,Ly及び上限閾値Hx,Hyは、基準二値化画像13等に基づいて適宜設定することができる。例えば、図5に示す基準二値化画像13の場合であってX方向比Cx及びY方向比Cyが存在量に基づき算出されるときには、X方向比CxとY方向比Cyと位置ズレ方向とは、下表1に示す関係となる。これにより、上限閾値Hxを10.0、下限閾値Lxを7.0、上限閾値Hyを10.0、及び下限閾値Lyを6.0とすることで、加工部Zの位置ズレ方向を判定できることがわかる。
【表1】
【0067】
一方、図5に示す基準二値化画像13の場合であってX方向比Cx及びY方向比Cyが変化量に基づき算出されるときには、X方向比CxとY方向比Cyと位置ズレ方向とは、下表2に示す関係となる。これにより、上限閾値Hxを8.0、下限閾値Lxを5.5、上限閾値Hyを8.0、及び下限閾値Lyを5.5とすることで、加工部Zの位置ズレ方向を判定できることがわかる。
【表2】
【符号の説明】
【0068】
1…外観検査装置、2…画像取得部、3a…二値化部(二値化処理部)、3b…異常判定部、3c…位置ズレ判定部、10…物体、11…(画像)、12…基準ヒストグラム(ヒストグラム)、12H…第1階調、12L…第2階調、13…基準二値化画像(二値化画像)、21…(画像)、22…検査用ヒストグラム(ヒストグラム)、23…検査用二値化画像(二値化画像)、Ax…X方向存在量(一方向存在量)、Ay…Y方向存在量(他方向存在量)、Bx…X方向変化量(一方向変化量)、By…Y方向変化量(他方向変化量)、Cx…X方向比(一方向比)、Cy…Y方向比(他方向比)、P1…第1ピーク値、P2…第2ピーク値、Z…加工部、αx…X方向存在量基準値(一方向存在量基準値)、αy…Y方向存在量基準値(他方向存在量基準値)、βx…X方向変化量基準値(一方向変化量基準値)、βy…Y方向変化量基準値(他方向変化量基準値)、γx…X方向比基準値(一方向比基準値)、γy…Y方向比基準値(他方向比基準値)、ΣAx…X方向存在量の総和(一方向存在量の総和)、ΣAy…Y方向存在量の総和(他方向存在量の総和)、ΣBx…X方向変化量の総和(一方向変化量の総和)、ΣBy…Y方向変化量の総和(他方向変化量の総和)、ΣCx…(一方向比の総和)、ΣCy…(他方向比の総和)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の外観を検査するための外観検査装置であって、
前記物体の画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部で取得した前記画像に二値化処理を施し、複数の画素が第1値又は第2値で構成された二値化画像を取得する二値化処理部と、
前記二値化処理部で取得した前記二値化画像に基づいて、前記物体の外観異常の有無を判定する異常判定部と、を備え、
前記異常判定部は、
前記二値化画像における一方向に並ぶ複数の前記画素ごとにおいて、前記第1値の数としての一方向存在量と、前記一方向に隣接する2つの前記画素が前記第1値及び前記第2値の間で変化する数としての一方向変化量と、をそれぞれ算出すると共に、
前記二値化画像における前記一方向と直交する他方向に並ぶ複数の前記画素ごとにおいて、前記第1値の数としての他方向存在量と、前記他方向に隣接する2つの前記画素が前記第1値及び前記第2値の間で変化する数としての他方向変化量と、をそれぞれ算出し、
算出した複数の前記一方向存在量の総和、複数の前記一方向変化量の総和、複数の前記他方向存在量の総和、及び複数の前記他方向変化量の総和のそれぞれが、予め設定された一方向存在量基準値、一方向変化量基準値、他方向存在量基準値、及び他方向変化量基準値のそれぞれに対し不一致の場合、外観異常が有ると判定すること、を特徴とする外観検査装置。
【請求項2】
前記異常判定部は、正常な前記物体の前記二値化画像についての複数の前記一方向存在量の総和、複数の前記一方向変化量の総和、複数の前記他方向存在量の総和、及び複数の前記他方向変化量の総和のそれぞれを、前記一方向存在量基準値、前記一方向変化量基準値、前記他方向存在量基準値、及び前記他方向変化量基準値のそれぞれとして予め設定すること、を特徴とする請求項1記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記物体には加工部が形成されており、
前記異常判定部は、前記加工部の位置ズレ異常の有無を判定する位置ズレ判定部を有し、
前記位置ズレ判定部は、
前記二値化画像における前記一方向に並ぶ複数の前記画素ごとにおいて、当該複数の画素に関する前記他方向の座標値により前記一方向存在量又は前記一方向変化量を除した値としての一方向比をそれぞれ算出すると共に、
前記二値化画像における前記他方向に並ぶ複数の前記画素ごとにおいて、当該複数の画素に関する前記一方向の座標値により前記他方向存在量又は前記他方向変化量を除した値としての他方向比をそれぞれ算出し、
算出した複数の前記一方向比の総和、及び前記他方向比の総和のそれぞれが、予め設定された一方向比基準値、及び他方向比基準値のそれぞれに対し不一致の場合、前記加工部の位置ズレ異常が有ると判定すること、を特徴とする請求項1又は2記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記位置ズレ判定部は、正常な前記物体の前記二値化画像についての複数の前記一方向比の総和、及び複数の前記他方向比の総和のそれぞれを、前記一方向比基準値、及び前記他方向比基準値のそれぞれとして予め設定すること、を特徴とする請求項3記載の外観検査装置。
【請求項5】
前記二値化処理部は、
前記画像取得部で取得した前記画像についての階調に関する明度分布を取得し、
前記明度分布において、前記明度が最も高い第1ピーク値のときの第1階調と、前記明度が前記第1ピーク値の次に高い第2ピーク値のときの第2階調と、を導出し、
前記第1及び第2階調の間の値を、前記二値化処理を行うための閾値となる二値化レベルとして、前記画像に前記二値化処理を施すこと、を特徴とする請求項1〜4の何れか一項記載の外観検査装置。
【請求項6】
物体の外観を検査するための外観検査方法であって、
前記物体の画像を取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程で取得した前記画像に二値化処理を施し、複数の画素が第1値又は第2値で構成された二値化画像を取得する二値化処理工程と、
前記二値化処理工程で取得した前記二値化画像に基づいて、前記物体の外観異常の有無を判定する異常判定工程と、を備え、
前記異常判定工程では、
前記二値化画像における一方向に並ぶ複数の前記画素ごとにおいて、前記第1値の数としての一方向存在量と、前記一方向に隣接する2つの前記画素が前記第1値及び前記第2値の間で変化する数としての一方向変化量と、をそれぞれ算出すると共に、
前記二値化画像における前記一方向と直交する他方向に並ぶ複数の前記画素ごとにおいて、前記第1値の数としての他方向存在量と、前記他方向に隣接する2つの前記画素が前記第1値及び前記第2値の間で変化する数としての他方向変化量と、をそれぞれ算出し、
算出した複数の前記一方向存在量の総和、複数の前記一方向変化量の総和、複数の前記他方向存在量の総和、及び複数の前記他方向変化量の総和のそれぞれが、予め設定された一方向存在量基準値、一方向変化量基準値、他方向存在量基準値、及び他方向変化量基準値のそれぞれに対し不一致の場合、外観異常が有ると判定すること、を特徴とする外観検査方法。
【請求項7】
前記一方向存在量基準値、前記一方向変化量基準値、前記他方向存在量基準値、及び前記他方向変化量基準値を予め設定する第1前処理工程を備え、
前記第1前処理工程では、
正常な前記物体の前記二値化画像についての複数の前記一方向存在量の総和、複数の前記一方向変化量の総和、複数の前記他方向存在量の総和、及び複数の前記他方向変化量の総和のそれぞれを、前記一方向存在量基準値、前記一方向変化量基準値、前記他方向存在量基準値、及び前記他方向変化量基準値のそれぞれとして予め設定すること、を特徴とする請求項6記載の外観検査方法。
【請求項8】
前記物体には加工部が形成されており、
前記異常判定工程は、前記加工部の位置ズレ異常の有無を判定する位置ズレ判定工程を有し、
前記位置ズレ判定工程では、
前記二値化画像における前記一方向に並ぶ複数の前記画素ごとにおいて、当該複数の画素に関する前記他方向の座標値により前記一方向存在量又は前記一方向変化量を除した値としての一方向比をそれぞれ算出すると共に、
前記二値化画像における前記他方向に並ぶ複数の前記画素ごとにおいて、当該複数の画素に関する前記一方向の座標値により前記他方向存在量又は前記他方向変化量を除した値としての他方向比をそれぞれ算出し、
算出した複数の前記一方向比の総和、及び前記他方向比の総和のそれぞれが、予め設定された一方向比基準値、及び他方向比基準値のそれぞれに対し不一致の場合、前記加工部の位置ズレ異常が有ると判定すること、を特徴とする請求項6又は7記載の外観検査方法。
【請求項9】
前記一方向比基準値、及び前記他方向比基準値を予め設定する第2前処理工程を備え、
前記第2前処理工程では、
正常な前記物体の前記二値化画像についての複数の前記一方向比の総和、及び複数の前記他方向比の総和のそれぞれを、前記一方向比基準値、及び前記他方向比基準値のそれぞれとして予め設定すること、を特徴とする請求項8記載の外観検査方法。
【請求項10】
前記二値化処理工程では、
前記画像取得部で取得した前記画像についての階調に関する明度分布を取得し、
前記明度分布において、前記明度が最も高い第1ピーク値のときの第1階調と、前記明度が前記第1ピーク値の次に高い第2ピーク値のときの第2階調と、を導出し、
前記第1及び第2階調の間の値を、前記二値化処理を行うための閾値となる二値化レベルとして、前記画像に前記二値化処理を施すこと、を特徴とする請求項6〜9の何れか一項記載の外観検査方法。
【請求項1】
物体の外観を検査するための外観検査装置であって、
前記物体の画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部で取得した前記画像に二値化処理を施し、複数の画素が第1値又は第2値で構成された二値化画像を取得する二値化処理部と、
前記二値化処理部で取得した前記二値化画像に基づいて、前記物体の外観異常の有無を判定する異常判定部と、を備え、
前記異常判定部は、
前記二値化画像における一方向に並ぶ複数の前記画素ごとにおいて、前記第1値の数としての一方向存在量と、前記一方向に隣接する2つの前記画素が前記第1値及び前記第2値の間で変化する数としての一方向変化量と、をそれぞれ算出すると共に、
前記二値化画像における前記一方向と直交する他方向に並ぶ複数の前記画素ごとにおいて、前記第1値の数としての他方向存在量と、前記他方向に隣接する2つの前記画素が前記第1値及び前記第2値の間で変化する数としての他方向変化量と、をそれぞれ算出し、
算出した複数の前記一方向存在量の総和、複数の前記一方向変化量の総和、複数の前記他方向存在量の総和、及び複数の前記他方向変化量の総和のそれぞれが、予め設定された一方向存在量基準値、一方向変化量基準値、他方向存在量基準値、及び他方向変化量基準値のそれぞれに対し不一致の場合、外観異常が有ると判定すること、を特徴とする外観検査装置。
【請求項2】
前記異常判定部は、正常な前記物体の前記二値化画像についての複数の前記一方向存在量の総和、複数の前記一方向変化量の総和、複数の前記他方向存在量の総和、及び複数の前記他方向変化量の総和のそれぞれを、前記一方向存在量基準値、前記一方向変化量基準値、前記他方向存在量基準値、及び前記他方向変化量基準値のそれぞれとして予め設定すること、を特徴とする請求項1記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記物体には加工部が形成されており、
前記異常判定部は、前記加工部の位置ズレ異常の有無を判定する位置ズレ判定部を有し、
前記位置ズレ判定部は、
前記二値化画像における前記一方向に並ぶ複数の前記画素ごとにおいて、当該複数の画素に関する前記他方向の座標値により前記一方向存在量又は前記一方向変化量を除した値としての一方向比をそれぞれ算出すると共に、
前記二値化画像における前記他方向に並ぶ複数の前記画素ごとにおいて、当該複数の画素に関する前記一方向の座標値により前記他方向存在量又は前記他方向変化量を除した値としての他方向比をそれぞれ算出し、
算出した複数の前記一方向比の総和、及び前記他方向比の総和のそれぞれが、予め設定された一方向比基準値、及び他方向比基準値のそれぞれに対し不一致の場合、前記加工部の位置ズレ異常が有ると判定すること、を特徴とする請求項1又は2記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記位置ズレ判定部は、正常な前記物体の前記二値化画像についての複数の前記一方向比の総和、及び複数の前記他方向比の総和のそれぞれを、前記一方向比基準値、及び前記他方向比基準値のそれぞれとして予め設定すること、を特徴とする請求項3記載の外観検査装置。
【請求項5】
前記二値化処理部は、
前記画像取得部で取得した前記画像についての階調に関する明度分布を取得し、
前記明度分布において、前記明度が最も高い第1ピーク値のときの第1階調と、前記明度が前記第1ピーク値の次に高い第2ピーク値のときの第2階調と、を導出し、
前記第1及び第2階調の間の値を、前記二値化処理を行うための閾値となる二値化レベルとして、前記画像に前記二値化処理を施すこと、を特徴とする請求項1〜4の何れか一項記載の外観検査装置。
【請求項6】
物体の外観を検査するための外観検査方法であって、
前記物体の画像を取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程で取得した前記画像に二値化処理を施し、複数の画素が第1値又は第2値で構成された二値化画像を取得する二値化処理工程と、
前記二値化処理工程で取得した前記二値化画像に基づいて、前記物体の外観異常の有無を判定する異常判定工程と、を備え、
前記異常判定工程では、
前記二値化画像における一方向に並ぶ複数の前記画素ごとにおいて、前記第1値の数としての一方向存在量と、前記一方向に隣接する2つの前記画素が前記第1値及び前記第2値の間で変化する数としての一方向変化量と、をそれぞれ算出すると共に、
前記二値化画像における前記一方向と直交する他方向に並ぶ複数の前記画素ごとにおいて、前記第1値の数としての他方向存在量と、前記他方向に隣接する2つの前記画素が前記第1値及び前記第2値の間で変化する数としての他方向変化量と、をそれぞれ算出し、
算出した複数の前記一方向存在量の総和、複数の前記一方向変化量の総和、複数の前記他方向存在量の総和、及び複数の前記他方向変化量の総和のそれぞれが、予め設定された一方向存在量基準値、一方向変化量基準値、他方向存在量基準値、及び他方向変化量基準値のそれぞれに対し不一致の場合、外観異常が有ると判定すること、を特徴とする外観検査方法。
【請求項7】
前記一方向存在量基準値、前記一方向変化量基準値、前記他方向存在量基準値、及び前記他方向変化量基準値を予め設定する第1前処理工程を備え、
前記第1前処理工程では、
正常な前記物体の前記二値化画像についての複数の前記一方向存在量の総和、複数の前記一方向変化量の総和、複数の前記他方向存在量の総和、及び複数の前記他方向変化量の総和のそれぞれを、前記一方向存在量基準値、前記一方向変化量基準値、前記他方向存在量基準値、及び前記他方向変化量基準値のそれぞれとして予め設定すること、を特徴とする請求項6記載の外観検査方法。
【請求項8】
前記物体には加工部が形成されており、
前記異常判定工程は、前記加工部の位置ズレ異常の有無を判定する位置ズレ判定工程を有し、
前記位置ズレ判定工程では、
前記二値化画像における前記一方向に並ぶ複数の前記画素ごとにおいて、当該複数の画素に関する前記他方向の座標値により前記一方向存在量又は前記一方向変化量を除した値としての一方向比をそれぞれ算出すると共に、
前記二値化画像における前記他方向に並ぶ複数の前記画素ごとにおいて、当該複数の画素に関する前記一方向の座標値により前記他方向存在量又は前記他方向変化量を除した値としての他方向比をそれぞれ算出し、
算出した複数の前記一方向比の総和、及び前記他方向比の総和のそれぞれが、予め設定された一方向比基準値、及び他方向比基準値のそれぞれに対し不一致の場合、前記加工部の位置ズレ異常が有ると判定すること、を特徴とする請求項6又は7記載の外観検査方法。
【請求項9】
前記一方向比基準値、及び前記他方向比基準値を予め設定する第2前処理工程を備え、
前記第2前処理工程では、
正常な前記物体の前記二値化画像についての複数の前記一方向比の総和、及び複数の前記他方向比の総和のそれぞれを、前記一方向比基準値、及び前記他方向比基準値のそれぞれとして予め設定すること、を特徴とする請求項8記載の外観検査方法。
【請求項10】
前記二値化処理工程では、
前記画像取得部で取得した前記画像についての階調に関する明度分布を取得し、
前記明度分布において、前記明度が最も高い第1ピーク値のときの第1階調と、前記明度が前記第1ピーク値の次に高い第2ピーク値のときの第2階調と、を導出し、
前記第1及び第2階調の間の値を、前記二値化処理を行うための閾値となる二値化レベルとして、前記画像に前記二値化処理を施すこと、を特徴とする請求項6〜9の何れか一項記載の外観検査方法。
【図1】
【図2】
【図4】
【図11】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図4】
【図11】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−122965(P2012−122965A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276033(P2010−276033)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【Fターム(参考)】
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