説明

外転型の電動機

【課題】磁極部の変位を抑制可能な外転型の電動機を提供する。
【解決手段】外転型の電動機1は、ステータ2と、ステータ2の径方向外側に配置される略円環状のロータ10と、を備える。ロータ10は、ロータカップ14の縁部14aの軸方向他端側に設けられ、磁極部9の軸方向他端側への変位を規制する略円環状の第2の端面板43と、を備える。第2の端面板43は、縁部14aの内周面14cに取り付けられてロータヨーク11と軸方向で当接する円環部43aと、円環部43aから径方向内側に突出し、磁極部9の軸方向他端側への変位を規制する凸部43bと、周方向に隣り合う前記磁極部9間に位置する円環部43aの内周面43cから軸方向一端側に向かって延びる延出部43dと、を有する。延出部43dは、周方向両側面43gが磁極部9と当接して、磁極部9の周方向への変位を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外転型の電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外転型の電動機としては、複数の永久磁石をロータヨークの内周面に配置し、ロータの径方向内側に対向配置したステータのコイルに通電して、コイルが発生する回転磁界によってロータを回転させるように構成したものが知られている。
【0003】
例えば、図14に示すように、特許文献1に記載の外転型の電動機100においては、ケーシング121には、該ケーシング121内に一部を突入させるスリーブ122が固定されており、図示しないエンジンのクランクシャフト123が、軸受124およびオイルシール125をスリーブ122との間に介在させてスリーブ122内に同軸に配置される。クランクシャフト123の端部には碗状に形成されるロータヨーク126が同軸に締着されており、ロータヨーク126の内周にはマグネット128が固着され、ロータヨーク126には冷却用ファン129が固着される。スリーブ122の端部には、ステータ130がボルト131で固定されており、ロータヨーク126に設けられたマグネット128は、ステータ130との間にわずかなエアギャップを形成するようにしてステータ130を同軸に囲繞する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−175396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の外転型の電動機100においては、ロータヨーク126の内周にマグネット128を固着しているのみであるため、ロータヨーク126回転中にマグネット128が位置ずれを起こし、脱落してしまう虞がある。
【0006】
本発明は、前述した課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、磁極部の変位を抑制可能な外転型の電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、
ステータ(例えば、後述の実施形態におけるステータ2)と、
前記ステータの径方向外側に配置される略円環状のロータ(例えば、後述の実施形態におけるロータ10)と、
を備える外転型の電動機(例えば、後述の実施形態における外転型の電動機1)であって、
前記ロータは、
径方向に磁化され且つ周方向で交互に磁化方向を反転させるように、周方向に所定の間隔で配置された複数の磁極部(例えば、後述の実施形態における磁極部9)と、
回転シャフト(例えば、後述の実施形態における回転シャフト13)に連結されるとともに軸方向一端側を径方向に延び、該磁極部の径方向外側に円環状の縁部(例えば、後述の実施形態における縁部14a)が設けられたロータカップ(例えば、後述の実施形態におけるロータカップ14)と、
前記縁部の内周面(例えば、後述の実施形態における内周面14c)に固定された略円環状のロータヨーク(例えば、後述の実施形態におけるロータヨーク11)と、
前記縁部の軸方向他端側に設けられ、前記磁極部の軸方向他端側への変位を規制する略円環状の端面板(例えば、後述の実施形態における第2の端面板43)と、を備え、
前記端面板は、
前記縁部の内周面に取り付けられて前記ロータヨークと軸方向で当接する円環部(例えば、後述の実施形態における円環部43a)と、
該円環部から径方向内側に突出し、前記磁極部の軸方向他端側への変位を規制する凸部(例えば、後述の実施形態における凸部43b)と、
周方向に隣り合う前記磁極部間に位置する前記円環部の内周面(例えば、後述の実施形態における内周面43c)から軸方向一端側に向かって延びる延出部(例えば、後述の実施形態における延出部43d)と、を有し、
前記延出部は、周方向両側面(例えば、後述の実施形態における周方向両側面43g)が前記磁極部と当接して、前記磁極部の周方向への変位を規制する
ことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の構成に加えて、
前記延出部は、非磁性材料からなる
ことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の構成に加えて、
前記端面板は、前記円環部と、前記凸部と、前記延出部と、が非磁性材料から一体形成される
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、ロータカップの縁部に設けられた端面板は、凸部によって磁極部の軸方向他端側への変位を規制し、延出部によって磁極部の周方向への変位を規制する。このように、磁極部の変位を端面板によって規制することが可能となる。
【0011】
請求項2及び3の発明によれば、磁極部の周方向への変位を規制する延出部が、非磁性材料からなるので、ロータ回転中の延出部における渦損失を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の外転型の電動機の断面図である。
【図2】図1のA−A線断面矢視図である。
【図3】本発明に係る第1実施形態のロータの部分斜視図である。
【図4】図3のB−B線におけるロータの断面図である。
【図5】図3に示すロータの正面部である。
【図6】図3に示すロータの第2の端面板を示す部分斜視図である。
【図7】比較例に係るロータの部分斜視図である。
【図8】図7のC−C線におけるロータの断面図である。
【図9】図7のD−D線におけるロータの断面図である。
【図10】本発明の第1の変形例に係るロータの部分斜視図である。
【図11】本発明の第2の変形例に係るロータの断面図である。
【図12】本発明の第3の変形例に係るロータの断面図である。
【図13】本発明の第4の変形例に係るロータの断面図である。
【図14】従来の外転型の電動機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【0014】
(第1実施形態)
図1及び図2に示すように、本実施形態の外転型の電動機1は、軸心Oを中心として、モータハウジング21にボルト22により固定されたステータ2と、ステータ2の径方向外側に僅かなエアギャップSを介して対向配置され、軸心O周りに回転可能な略円環状のロータ10とを備えて構成される。
【0015】
ステータ2は、ステータコア3と複数のコイル4とを備える。ステータコア3は、複数の電磁鋼板が軸方向(図1において紙面と垂直方向)に積層されて構成され、円環状の支持部3aから径方向外側に向かって放射状に突出形成された複数のティース3bを有する。支持部3aの内側には、ボルト穴3cをそれぞれ有する複数の凸部3dが設けられ、ボルト穴3cに挿通されるボルト22により、ステータコア3がモータハウジング21に固定されている。コイル4は、巻線6を、絶縁特性を有する合成樹脂などで形成されたインシュレータ7を介してステータコア3のティース3bの周囲に巻回することで形成される。
【0016】
ロータ10は、径方向に磁化され且つ周方向で交互に磁化方向を反転させるように、周方向に所定の間隔で配置された複数の磁極部9と、回転シャフト13に連結されるとともに軸方向一端側(図1において紙面奥側、図2において右側)を径方向に延び、磁極部9の径方向外側に円環状の縁部14aが設けられた縁付円盤状のロータカップ14と、ロータカップ14の縁部14aの内周面14cに固定され、磁極部9を径方向外側から保持し、略円環状の電磁鋼板を軸方向に積層することによって構成されたロータヨーク11と、を備えており、軸方向他端側(図1において紙面手前側、図2において左側)が開口するように形成される。
【0017】
複数の磁極部9は、径方向に磁化され且つ周方向で交互に磁化方向を反転させるように、周方向に所定の間隔で配置され、略矩形状の一対の磁石12から構成されており、これらの一対の磁石12は、ロータヨーク11の内周面11bに例えば接着剤で固定されている。具体的には、一対の磁石12がロータヨーク11の内周面11bに固定されて構成された磁極部9aにおいて、その径方向外側がN極とすると、所定の間隔を介して磁極部9aと隣り合う磁極部9bは、その径方向外側がS極となるように一対の磁石12がロータヨーク11の内周面11bに固定されて構成される。なお、磁極部9は必ずしも一対の磁石から構成される必要はなく、1つの磁石から構成されてもよい。
【0018】
回転シャフト13は、玉軸受23により、モータハウジング21に対して回転自在に支承されており、ステータ2が発生する回転磁界によってロータ10が軸心O周りに回転駆動される。回転シャフト13とステータ2との間には、回転シャフト13の磁極位置を検出するレゾルバ24が配設されている。
【0019】
ロータカップ14は非磁性材料からなり、回転シャフト13の軸方向一端側に連結し径方向に延びる軸連結部14bの径方向外側端部から縁部14aが軸方向他端側に延設されて形成されている。
【0020】
図3及び図4に示すように、ロータカップ14の縁部14aの内周面14cには、ロータヨーク11を挟んで軸方向一端側及び軸方向他端側に第1の端面板41及び第2の端面板43が固定されている。第1,第2の端面板41,43は、非磁性材料からなり、好ましくはSUS304やSUS305等のオーステナイト系ステンレス鋼から構成される。
【0021】
第1の端面板41は略円環状に形成されており、ロータヨーク11の軸方向一端側面11fとロータカップ14の軸連結部14bとに挟まれるように固定されている。第1の端面板41の内周面41aは、軸連結部14bの内周面14dと滑らかに接続し、1つの面を形成している。また、第1の端面板41の内周面41aは、ロータヨーク11の内周面11bよりも径方向内側に位置するように形成されており、磁石12の軸方向一端側への変位を規制する。
【0022】
図3〜図6に示すように、第2の端面板43は、ロータカップ14の縁部14aの内周面14cに取り付けられてロータヨーク11の軸方向他端側面11gと軸方向で当接する略円環状の円環部43aと、円環部43aから径方向内側へ突出し、磁石12の軸方向他端側への変位を規制する断面略半円状の複数の凸部43bと、周方向に隣り合う磁極部9間に位置する円環部43aの内周面43cから軸方向一端側に向かって延びる延出部43dと、を有しており、これら円環部43aと凸部43bと延出部43dとが非磁性材料から一体形成される。
【0023】
延出部43dは、外周面43eが周方向に隣り合う磁極部9間に位置するロータヨーク11の内周面11bに当接するように軸方向に延びており、内周面43fが傾斜して形成される。また、延出部43dの軸方向幅は、ロータヨーク11の軸方向幅よりも小さくなるように形成されており、径方向幅は、軸方向一端側に向かうに従って小さくなるように形成される。また、延出部43dは、周方向両側面43gが磁極部9(磁石12)と当接するように形成されており、磁極部9の周方向への変位を規制している。
【0024】
このように、ロータカップ14の縁部14aに設けられた第2の端面板43は、凸部43bによって磁極部9の軸方向他端側への変位を規制し、延出部43dによって磁極部9の周方向への変位を規制するので、磁極部9を接着剤等で固着しただけの場合に比べ、磁極部9の変位抑制の効果を高めることが可能となる。
【0025】
(比較例)
ここで、比較例に係るロータ10Aを、図7〜9に示す。なお、このロータ10Aは、本発明の第1実施形態のロータ10と基本的構成を同一としているため、同一部分には同一符号を付して説明を簡略化又は省略し、相違部分のみ詳述する。
【0026】
比較例に係るロータ10Aの第2の端面板43Aは、第1の端面板41と略等しい略円環形状に形成されており、第1実施形態のロータ10が備えていた凸部43b及び延出部43dを有していない。また、ロータヨーク11の内周面11bには、磁極部9(磁石12)の周方向への変位を規制するために、周方向に所定の間隔で一対ずつ径方向内側に突出する複数の段部11cが形成されている。
【0027】
このように構成された比較例のロータ10Aでは、ロータヨーク11が電磁鋼板を積層することによって形成されているため、ロータ回転の際、磁極部9の周方向への変位を規制するロータヨーク11の段部11cにおいて渦損失が発生し、モータ効率が悪化する虞がある。
【0028】
これに対し、本実施形態では、磁極部9の周方向への変位を規制する延出部43dが非磁性材料からなるため、延出部43dにおける渦損失を低減することが可能となる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態の外転型の電動機1によれば、ロータカップ14の縁部14aに設けられた第2の端面板43は、凸部43bによって磁極部9の軸方向他端側への変位を規制し、延出部43dによって磁極部9の周方向への変位を規制する。このように、磁極部9の変位を第2の端面板43によって規制することが可能となる。
【0030】
さらに、磁極部9の周方向への変位を規制する延出部43dは非磁性材料からなるので、ロータ回転中においても、延出部43dにおける渦損失を低減することが可能となる。
【0031】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、上述の実施形態においては、第2の端面板43は、円環部43aと凸部43bと延出部43dとが非磁性材料から一体形成されるとしたが、必ずしもこれに限定されず、少なくとも延出部43dが非磁性材料からなればよい。
【0032】
また、上述の実施形態において、第2の端面板43のそれぞれの凸部43bは、1つの磁石12と対向するように形成されるとしたが(図3参照。)、これに限定されず、図10に示すように、それぞれ一対の磁石12と対向するように形成することで、1つの凸部43bによって一対の磁石12の軸方向他端側への変位を規制するようにしてもよい。
【0033】
なお、延出部43dは、図11に示すように、その軸方向幅をロータヨーク11の軸方向幅と略同一とし、軸方向一端側端部が第1の端面板41と当接するように形成してもよい。
【0034】
また、延出部43dは、図12に示すように、その軸方向幅をロータヨーク11の軸方向幅と略同一とし、その内周面43fが軸方向に対して水平となるように形成してもよい。
【0035】
また、延出部43dは、図13に示すように、その軸方向幅をロータヨーク11の軸方向幅と略同一とし、径方向幅が軸方向一端側に向かうに従って大きくなり、その内周面43fが傾斜するように形成してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 外転型の電動機
2 ステータ
9 磁極部
10 ロータ
11 ロータヨーク
12 磁石
13 回転シャフト
14 ロータカップ
14a 縁部
14c 内周面
43 第2の端面板(端面板)
43a 円環部
43c 内周面
43b 凸部
43d 延出部
43g 周方向両側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
前記ステータの径方向外側に配置される略円環状のロータと、
を備える外転型の電動機であって、
前記ロータは、
径方向に磁化され且つ周方向で交互に磁化方向を反転させるように、周方向に所定の間隔で配置された複数の磁極部と、
回転シャフトに連結されるとともに軸方向一端側を径方向に延び、該磁極部の径方向外側に円環状の縁部が設けられたロータカップと、
前記縁部の内周面に固定された略円環状のロータヨークと、
前記縁部の軸方向他端側に設けられ、前記磁極部の軸方向他端側への変位を規制する略円環状の端面板と、を備え、
前記端面板は、
前記縁部の内周面に取り付けられて前記ロータヨークと軸方向で当接する円環部と、
該円環部から径方向内側に突出し、前記磁極部の軸方向他端側への変位を規制する凸部と、
周方向に隣り合う前記磁極部間に位置する前記円環部の内周面から軸方向一端側に向かって延びる延出部と、を有し、
前記延出部は、周方向両側面が前記磁極部と当接して、前記磁極部の周方向への変位を規制する
ことを特徴とする外転型の電動機。
【請求項2】
前記延出部は、非磁性材料からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の外転型の電動機。
【請求項3】
前記端面板は、前記円環部と、前記凸部と、前記延出部と、が非磁性材料から一体形成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の外転型の電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−244704(P2012−244704A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110654(P2011−110654)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】