説明

多−接合太陽電池のスクリーニング方法

【課題】高太陽強度及び高温(HIHT)環境で操作される多−接合太陽電池のスクリーニング方法を説明する。
【解決手段】各太陽電池が、重なり合って積層された少なくとも2つのpn−接合(2,3,6)を備え、pn−接合の1つ(6)が、均一なpn−接合である。HIHT環境における有用性についてスクリーニングされる多数の太陽電池(100)が提供される。所定のバイアス電流(Isc)で均一なpn−接合のエレクトロルミネセンス(EL)画像が取得される。各太陽電池において、エレクトロルミネセンス画像内の空間的強度分布が分析され、HIHT環境内において電力を放出する可能性がある局部的強度変化(22)が存在するかどうかが決定される。エレクトロルミネセンス画像内に局部的強度変化(22)を有さない太陽電池が、第1群(A)に分類され、少なくとも1つの局部的強度変化(22)を有する太陽電池が、第2群(B)に分類される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度及び高温環境下で操作される多−接合太陽電池のスクリーニング方法に関するものであり、各太陽電池が、互いに重なりあって積層された少なくとも2つのpn−接合を備える。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、大面積デバイスであって、通常、数cmの範囲にあるそれらの横方向の寸法が、数10から100マイクロメートルの範囲にあるそれらの厚さよりも大きな大きさ程度であることを特徴とする。高度な太陽電池の極めて多くは、多−接合配置を特徴とし、複数のpn−接合が互いに重なりあって積層される。個々の接合のバンドギャップが、上端部から底部に向かって減少する。従って、各接合が、多くは、熱化損失を減少させ、結果として高効率となるスペクトルの一部のみに感応性がある。
【0003】
典型的な実施例が、図1の断面において図示されているようなIII−V族三重接合太陽電池である。典型的には、約100マイクロメートルの厚さである、単結晶ゲルマニウム(Ge)−ウェハー1が、成長基板として使用される。有機金属気相エピタキシー(MOVPE)によって、GalnP接合3と、トンネルダイオード,裏面電界等の複数の支持層と、が次に続くGaAs pn−接合2が、この基板上にエピタキシャル成長する。前面金属化部4及び背面金属化部5並びに(参照符号6で示される)拡散によるGe−ウェハー自体の活性化を用いることで、図1に示される構成が、電気的に3つの太陽電池の直列接続と類似する。pnドーピング(上部上がn)の順序は関係ない。
【0004】
太陽電池の大きな横方向の寸法のために、実際には、エピタキシャル成長が歪められた領域のない完全なMOVPE成長層を得ることは困難である。これらの領域は、成長欠陥と呼ばれる。多数のこれらの欠陥の電気的影響は極わずかであるが(参照符号7を参照)、参照符号8で示されたこれらのいくつかは、シャントのようなダイオードまたは抵抗として機能することが可能である。これに関連して、シャントのようなダイオードが、残りのセル領域よりも低い開回路電圧VOCを有する成長欠陥である。これらのシャントが、周囲の影響を受けないセル領域によって生成された電力を消失させる。これに対し、成長基板6は、真性欠陥を有さないと考えることが可能である。
【0005】
所定の太陽電池内のこれらのシャントを検出するために、空間的に解像された電気特性技術(spatially resolved electrical characterization technique)が必要である。
【0006】
太陽電池を局部的に特徴づけるための周知の技術が、エレクトロルミネセンスイメージングである。この方法が、図2に図示されている。太陽電池が、ある電流Iにおいて外部電源9で、順方向バイアスされる。例えばpn−接合2である所定の接合によって放射されたエレクトロルミネセンス放射線が、例えば、適当なフィルター11と組み合わせたSiまたはInGaAs CCDチップ10である適当な検出器を用いて記録される。太陽電池上の任意の位置xy(参照符号13を参照)において、放射されたルミネセンス強度が、局部的な接合電圧V(参照符号12を参照)に指数関数的に依存する。この極めて感応性の高い電圧依存のために、成長欠陥の位置が、容易に特定されることが可能である。例えば、pn−接合3である、直接的には像が取得されない接合内の欠陥でさえ、電気的な直列接続により像が取得された接合内の反対のコントラストとともに現れる。直列抵抗効果が極わずかであるならばいずれにおいても、前面金属化部4と背面金属化部5との間の外部電圧Vが一定であるため、例えば1つの接合内の局部的な電圧の減少が、残りの接合において自動的に高い電圧を引き起こす。しかしながら、欠陥が、それらの電気的影響に従って、分類されることは不可能である。
【0007】
それらの電気的影響に従って欠陥を分類することが可能であるIII−V族三重接合太陽電池に対するエレクロルミネセンスイメージングに基づく測定概念が、非特許文献1に開示されている。この方法を用いて、エレクトロルミネセンス放射線が、適当なフィルターを備えた平面検出器によって空間的に解像されて記録される。これが、3つの検出器10,16,17及び割り当てられたフィルター11,14,15を示す図3において概略的に図示されている。全ての検出器が、太陽電池の全体の領域の像を取得する。図3におい簡易化を目的として、これらが、互いに並列に図示されている。別の方法として、1つの検出器10,16から、次の検出器16,17に太陽電池を移動させることも可能である。数個のサブセル用、すなわち、互いに重なり合って積層されたpn−接合2,3,6の全体用の共通検出器を使用し、交換可能なフィルターによって1つの特定のサブセルの放出を選択することも実現可能である。
【0008】
さらに、太陽電池が、太陽電池の短絡電流以下またはこれを上回る、異なる注入電流I,I,...,I(参照符号18を参照)の範囲で、順方向バイアスされる。結果として、全ての接合の結合されたエレクトロルミネセンス強度から空間的に解像された全3つのpn−接合の結合電圧が、推測される。同等な単一の接合セルの局部的ダイオード特性を計算することを可能にするために、局部的電流密度もまた識別されなければならない。このため、底部セルpn−接合6が、MOVPEによって成長されないが、単結晶Ge−ウェハーをベースとするということが利用される。そのエレクトロルミネセンス特性及びダイオード特性が、空間的に均一であると考えることが出来る。これらの状況下で、底部セルの測定されたエレクトロルミネセンス強度が、局部的電流への出力法則依存性(power law dependence)に従い、底部セルエレクトロルミネセンス画像が、電流分布のマップとして機能する。このフレームワーク内において、セルの局部的ダイオード特性が、計算されることが可能であり、それらから、電流Iopの量、すなわち、所定の操作条件での太陽電池上の任意の位置xy(参照符号13を参照)において生成または放出された操作電流が、推測される。注入電流の範囲での全ての接合の高い動的解像度の画像を取得する必要があるため、データ取得時間が、数分の範囲であり、典型的には、10から15分の範囲である。
【0009】
数千の太陽電池が、太陽アレイに必要とされるため、このより緻密な方法は、費用が高く、この方法で各太陽電池をスクリーニングするためには時間がかかる。他の方法として、セルを、それらの目的とする高温高強度環境に露出させ、その後、電気的性能測定が行われるセルの直接的なスクリーニングが、例えば、スクリーニングが、大気中で行われる場合に、人為的な損傷を生じさせるリスクをもたらす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】C.G.Zimmermann著,「Performance Mapping of Multijunction Solar Cells Based on Electroluminescence」,IEEE ELECTRON DEVICE LETTERS,30巻,No.8,2009年8月,825−827頁
【非特許文献2】「Solar Constant and Air Mass Zero Solar Spectral Irradiance Tables」,American Society for Testing and Materials,Philadelphia,1992,Vol.ASTM−E 490−73a
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、宇宙空間で操作される多−接合太陽電池のより効果的なスクリーニング方法を提供することである。
【0012】
この目的は、請求項1の特徴に従う方法によって解決される。好ましい実施形態が、その従属する請求項に規定されている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によると、高太陽強度及び高温(HIHT)環境下で操作される多−接合太陽電池のスクリーニング方法が提供され、各太陽電池が、互いに重なり合って積層された少なくとも2つのpn−接合を備え、pn−接合の1つが、真性欠陥がないと考えられる均一なpn−接合である。本方法が、HIHT環境における有用性についてスクリーニングされる多数の太陽電池にを提供するステップと;多数の太陽電池の各太陽電池に対して、所定のバイアス電流での均一なpn−接合のエレクトロルミネセンス(EL)画像を取得し、HIHT環境において電力を放出する可能性のある局部的強度変化が存在するかどうかを決定するために、エレクトロルミネセンス画像内の空間的強度分布を分析するステップと;太陽電池を分類するステップであって、それらのエレクトロルミネセンス画像内に局部的な強度変化を有さない太陽電池が、第1群の太陽電池に分類され、それらのエレクトロルミネセンス画像内に少なくとも一つの局部的な強度変化を有する太陽電池が、さらなるスクリーニングのための第2群の太陽電池に分類され、第1群の太陽電池が、HIHT環境に適しており、第2群の太陽電池が、HIHT環境内において危機的なものとなる可能性があると考えられるステップを含む。
【0014】
本発明の方法は、約50℃の温度であり、AM0スペクトル(非特許文献2)において詳述されているような一つの太陽の放射照度である宇宙空間内の通常の操作条件下において、局部的な成長欠陥が関連のないものであるという判断に基づいている。これに対し、高太陽強度及び高温(HIHT環境)を特徴とするさらに極端な環境下において、太陽電池が、局部的な過熱、すなわち、局部的ホットスポットによって電気的に破壊されうる。HIHT環境は、例えば、約250℃の温度であり、5倍のAM0スペクトルであることを特徴とする。これらの環境パラメータが、例えば水星である太陽系の内惑星に対する宇宙ミッションに一般的である。破損した全ての太陽電池が、電流が放出された局部的領域を有することが発見された。上記操作条件下において、局部的に放出された電流が、局部的な温度上昇をもたらす。順に、これが、欠陥の関連パラメータを下げ、例えば、さらには大きな電流の放出とともに、開回路電圧Vocがさらにいっそう下がる。従って、最終的には、太陽電池が、正のフィードバックループで破壊される。特に、太陽電池のサブセットが、直列に相互接続され(いわゆるセルストリング)、所望のバス電圧に達するため、太陽アレイにおいて、この方法におけるHIHT環境下において影響を受けやすい、任意の太陽電池を除外することは必要不可欠である。従って、任意の太陽電池の損失が、全体のストリングの損失をもたらす。さらに、ホットスポットの熱的効果が、さらにいっそう深刻な結果をともなう1つの太陽アレイの絶縁不良をもたらす。
【0015】
この知識に基づき、本発明による多−接合太陽電池のスクリーニング方法が、第1ステップにおいて、それらの太陽電池を分離するのみである単純化されたスクリーニングプロセスを使用し、均一なpn−接合のそれらのエレクトロルミネセンス画像の少なくとも1つの局部的強度変化がそれらから発見され、そのような局部的強度変化が生じない。電力が局部的に放出されないため、それらのエレクトロルミネセンス画像においてそのような局部的強度変化を有さない太陽電池が、HIHT環境での使用に対し危機的なものとならないことが見出されている。他の太陽電池は危機的なものとなる場合があり、従って、さらに細かなスクリーニングプロセスにさらされる。結果として、大量の太陽電池のスクリーニングが、短時間で、従来技術において提示されているような擬似HIHT環境への露出と比較して人工的な損傷が入り込むリスクを有さずに実行されることが可能である。従って、本発明のスクリーニング方法が、費用効率が高く、時間が節約される。
【0016】
好ましい実施形態によると、均一なpn接合のエレクトロルミネセンス画像における空間的な強度分布を分析するステップが、全体のエレクトロルミネセンス画像またはそのサブ領域の平均強度Φavを計算し、標準偏差σを計算するステップと;エレクトロルミネセンス画像の各ピクセルxyに対して、このピクセルにおける強度Φxyが、しきい強度Φthよりも大きいかどうかを比較するステップであって、Φth=Φav+nσであり、nが、所定の定数であるステップと;及び、強度Φxyが、しきい強度Φthよりも大きく、互いに隣接する局部的な強度変化を形成するように、それらのピクセルxyを指定するステップを含む。それらの高い効率のために宇宙空間において使用されることが好ましい三重接合太陽電池に対してn=6が十分であることが明らかになっている。
【0017】
さらなる好ましい実施形態によると、エレクトロルミネセンス画像内の空間的な強度分布を分析するステップが、画像処理システムによって実行される。
【0018】
さらなる好ましい実施形態によると、均一なpn−接合が、単結晶のウェハーであり、特に、ゲルマニウム(Ge)−ウェハーであり、少なくとも1つのさらなるpn−接合がそれ上に成長される。少なくとも1つのさらなるpn−接合の成長が、有機金属気相エピタキシー(MOVPE)を用いてなされうる。
【0019】
さらなる好ましい実施形態によると、所定温度まで加熱されるスクリーニングプロセスの間、太陽電池が、温度制御板上に配置される。原則として、スクリーニングプロセスの間に選択された温度が、関連性がない。しかしながら、スクリーニングプロセスの間においては、室温が、最も単純である。
【0020】
さらなる好ましい実施形態によると、エレクトロルミネセンス画像の取得が、約2000ピクセル/cmの解像度を有し及び/または約1:10000の動的解像度を有する検出器を用いて実施される。
【0021】
さらなる好ましい実施形態によると、均一なpn−接合以外のpn−接合によって放射されたエレクトロルミネセンス放射線を遮るために、一組のフィルターが使用される。結果として、均一なpn−接合によって放射されたエレクトロルミネセンス放射線のみが、検出され、処理される。これが、ある程度の局部的な電流密度である均一なpn−接合のエレクトロルミネセンス画像のみを取得することを可能にする。空間的な強度の局部的な強度変化を考慮した場合、少なくとも1つのさらなるpn−接合におけるシャントが、検出されることが可能である。サブセルの電気的直列接続により、すなわち、pn−接合の全体により、これらが、全ての層における電流分布に影響を及ぼす。
【0022】
さらなる好ましい実施形態によると、所定のバイアス電流が、太陽電池の短絡電流に近い順方向電流であり、太陽電池の均一なpn−接合のエレクトロルミネセンス画像を取得するために、太陽電池が十分なエレクトロルミネセンス放射線を放射し、これが、バイアス電流による損傷を受けない。
【0023】
さらなる好ましい実施形態によると、スクリーニング方法が、太陽電池の第2群の太陽電池をスクリーニングするステップをさらに含む。これが、所定のバイアス電流の範囲の及び各太陽電池の全てのpn−接合のエレクトロルミネセンス画像を取得するステップと;第2群の太陽電池の各太陽電池に対して、太陽電池が、所定のセル操作電圧にて太陽電池が生成する電流Iopの空間的な電流分布マップを形成し、最低値の電流を有する隣接するピクセルxyの群のピクセルxyを特定するステップと;最低値の電流に基づきHIHT環境に適さない第3群の太陽電池にそれらの太陽電池を分類するステップをさらに含む。
【0024】
この第2のさらなる詳細なスクリーニングステップが、スクリーニングされた太陽電池の全pn−接合のエレクトロルミネセンス放射線について検討する。隣接するピクセルの群又はピクセルの電流の最低値を分析することにより、スクリーニングされた太陽電池が、HIHT環境に適しているか否かを決定することが可能である。
【0025】
さらなる好ましい実施形態によると、最低値の電流を有するピクセルxyを特定するステップが、最低値の電流が、負であるか否かを決定するステップを含む。最低値の電流が負ではない場合、電流が放出されず、太陽電池が、HIHT環境に適した第4群の太陽電池に分類される。これに対し、最低値の電流が負である場合、第2スクリーニングステップが、負のlop値の全体に渡る太陽電池のサブセットを選択し、サブセットの全太陽電池を疑似HIHT環境に露出させるステップと;電気的性能が劣化した太陽電池を決定するステップと;負のしきい電流であり、該しきい電流を上回る場合に電気的劣化が生じないしきい電流を決定するステップと:しきい電流lthよりも小さな操作電流(lop<lth)を有する太陽電池を第3群に分類し、lop>lthである太陽電池を第4群に分類するステップと、を含む。スクリーニング方法のこの最後のステップを実行した後で、各太陽電池が、HIHT環境に適しているか否かが確実に分類されるため、スクリーニングプロセスが終了する。
【0026】
本発明が、添付の図面を参照することにより、さらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来技術において周知の三重−接合太陽電池を示す。
【図2】エレクトロルミネセンスイメージングによる図1に従う太陽電池を局部的に特徴付けるための測定配置を示す。
【図3】従来技術による改善された測定配置を示す。
【図4】本発明によるエレクトロルミネセンスイメージングに基づくスクリーニングプロセスを示す。
【図5】多−接合太陽電池の均一なpn−接合のエレクトロルミネセンス画像を示す。
【図6】高太陽強度及び高温(HIHT)環境に対するそれらの感応性に従う多−接合太陽電池のスクリーニングのためのさらなる測定配置を示す。
【図7】本発明によるスクリーニング方法の基礎ステップを図示した略図である。
【図8】本発明によるスクリーニングプロセスの任意的なステップを図示した略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明による多−接合太陽電池のスクリーニングプロセスが、図1を参照し既に詳細に説明された三重接合太陽電池を参照することにより説明される。しかしながら、本発明は、三重−接合太陽電池に限定されるものではないことが理解されるべきである。
【0029】
約100マイクロメートルの厚さの単結晶Ge−ウェハー1が、成長基板として使用される。有機金属気相エピタキシー(MOVPE)によって、GalnPpn−接合3と、トンネルダイオード,裏面電界等の複数の支持層と、が次に続くGaAs pn−接合2が、この基板上にエピタキシャル成長する。太陽電池の前面上において、前面金属化部4が設けられる。さらに、背面金属化部5が、太陽電池の裏面上に設けられる。Ge−ウェハー自体が、参照符号6で図示される拡散によって活性化される。この構成が、3つの太陽電池の電気的な直列接続と類似する。
【0030】
既に説明したように、太陽電池の大きな横の寸法のために、実際上、エピタキシャル成長が歪んだ領域のないMOVPE成長層を完全に得ることは極めて困難である。これらの領域が、成長欠陥であり、参照符号7及び8で図示される。多くのこれらの欠陥は、電気的な影響が極わずかであるが、これらのいくつかは、シャントのようなダイオード又は抵抗として機能することが可能である。
【0031】
スクリーニングされた三重−接合太陽電池が、例えば、約250℃の温度であり、5倍のAM0スペクトルであることを特徴とする高太陽強度及び高温(HIHT)環境で操作されることが可能であるかどうかを調べるために、太陽電池の均一なpn−接合6の1つのエレクトロルミネセンス画像が、所定のバイアス電流Iscで取得される。電流Iscが、好ましくは、太陽電池のほぼ短絡電流程度である。
【0032】
図4が、本発明による多数の三重−接合太陽電池をスクリーニングするための基本的な配置を示す。例えばCCD−チップである検出器17が、太陽電池の均一なpn−接合6のエレクトロルミネセンス画像を取得する。検出器17が、コンピューター20と接続され、このコンピューター20は、各エレクトロルミネセンス画像を分析し、さらなる試験なしに、太陽電池がHIHT環境において使用されることが可能であるかどうか、またはさらなるスクリーニングが必要であるかを決定するためのものである。均一なpn−接合6のエレクトロルミネセンス放射線のみが、検出器17によって記録されることを確保するために、適切なフィルター15が、その前面に設けられる。
【0033】
実質的に局部的な電流密度のマップである、エレクトロルミネセンス画像の分析が、大きな局部的強度変化(いわゆる輝点(bright spots))を示す場合、セルが、HIHT環境で操作された場合に、電流が放出される可能性がある。このような輝点または局部的強度変化が、図5に示されている。図5が、三重接合太陽電池の底部セル、すなわちpn−接合6のサブ領域23のエレクトロルミネセンス画像を図示する。局部的強度変化が、参照符号22で図示されている。
【0034】
局部的強度変化を有さない太陽電池が、典型的には大多数が、HIHT環境において危機的なものではない。太陽電池がHIHTに危機的であるか否かを調べるために、コンピューター20を用いて、各エレクトロルミネセンス画像の自動的な分析が行われる。
【0035】
局部的強度変化または輝点22が、その最大のエレクトロルミネセンス強度があるしきい値Φthを上回るという事実によって、定量的な項目で特徴付けられ、上記しきいΦthが、全体の画像のまたはそのサブ領域23の平均強度Φav及び標準偏差σによって決定される:
Φth=Φav+nσ
【0036】
Ge−ウェハーをベースとした太陽電池において、n=6が適用可能である。n=6は、他の電池技術に対しても適切な値であると思われる。
【0037】
第2の任意のスクリーニングステップにおいて、HIHT損傷の影響を受けやすいであろうものと特定された全ての太陽電池が、定量的な完全な特性評価を受け、放出される電流に対する所定のしきい値に基づいて分類される。少数のセルが、疑似環境負荷、すなわち、宇宙空間内のHIHT環境に曝されるスクリーニング試験に基づいてしきい値が決定される。従って、スクリーニングプロセスが、実験的に、任意の電池技術及び任意の所定のHIHT環境に適合されることが可能である。
【0038】
図6が、上記の任意の第2スクリーニングステップを実施するためのスクリーニング配置を示す。図4の配置に加え、これが、さらに2つの検出器16,10及び適切なフィルター14,11を備え、付加的に、特定のpn−接合2及び3の各々の放射を選択する。全ての検出器10,16,17が、さらなるコンピューター50と接続される。図示された実施例において、多−接合太陽電池のpn−接合の数と対応する3つの検出器10,16,17が、図示されている。検出器の数が、原則として、pn−接合の数と対応しなければならないことが理解される。これは、本発明の方法が、pn−接合の数を自由に選択する多−接合太陽電池に適用されることが可能であるためである。さらに、このスクリーニング配置が、異なる、所定のバイアス電流Isc19を提供するための手段を備える。
【0039】
スクリーニングされた太陽電池が、温度制御板30上に配置される。測定が行われる温度に制限はない。しかしながら、室温でのスクリーニングが、最も単純である。
【0040】
本発明のスクリーニング方法が、図7及び8を参照することによりさらに詳細に説明される。図7が、第1の基本的なスクリーニングステップに対する略図を示す。図8が、任意の第2のスクリーニングステップに対する手段を図示する。本発明によるスクリーニング方法を実施するために、太陽電池の均一なpn−接合6が、真性欠陥を有さないことが必要であり、そのダイオード特性が、全体にわたって均一であると考えることが可能である。さらに、このpn−接合が、順方向バイアス下で検出可能なエレクトロルミネセンス放射線を放射しなければならない。
【0041】
最初に、(ステップ100)HIHT環境における有用性についてスクリーニングされる全てのセルが、提供されなければならない。ステップ110において、これらが、温度制御板30上に配置される。これらが、図6に示されるエレクトロルミネセンス測定配置において、(検出器17の性能及びセルの大きさに応じて)連続して及び/または並列に配置されることが可能である。検出器17の解像度に応じて、各pn−接合のエレクトロルミネセンス画像を、別々に記録するために、並列である複数のセルをスクリーニングすることが可能でありうる。典型的には、適切な検出器の解像度の値が、約2000ピクセル/cmである。太陽電池が、電源9に接続され、電流Isc(参照符号19を参照)で順方向バイアスされる。実際上、選択された電流Iscが、太陽電池の短絡電流に近い電流である。他の設定も可能であり、唯一の要求は、太陽電池が、一側面上で、十分なエレクトロルミネセンス放射線を放射し、過剰の電流によって損傷されないことである。
【0042】
検出器17、すなわち、カメラ/CCDチップによって、空間的に解像された、エレクトロルミネセンスが記録される(ステップ120)。カメラシステムの選択が、放射されたエレクトロルミネセンスのスペクトル範囲内において、カメラが十分な感応性を有さなければならないというという事項に基づいて決定される。図6に示された三重−接合セル内のGe−サブセルに対して、HgCdTeカメラが、最も適切である。さらに、理想的には1:10000を超える高い動的解像度が有利である。他の全てのpn−接合2,3によって放射されたエレクトロルミネセンス放射線を遮るために、フィルター15又は一組のフィルターが、使用される。太陽電池内のpn−接合の数に応じて、短経路の、長経路のまたはバンドパスフィルターが、必要とされる。Ge−サブセルの実施例において、1550nmの長経路のフィルターが使用される。さらに、全体の測定配置が、全ての外部光を遮る筐体内である場合、有利でありうる。これが、図6において参照符号40で図示されている。
【0043】
ステップ130によると、コンピューター20上の画像処理システムによって、記録された画像が自動的にまたは手動で分析される。全体の太陽電池のまたはそのサブ領域の平均画像強度Φav及び標準偏差σが計算される(ステップ131)。画像内の各ピクセルxyに対して、このピクセル内の強度Φxyが、Φav+nσによって与えられるしきい値Φthを上回るかどうかの比較が行われる(ステップ132)。一般的には、特にGe−ベースの三重−接合セルの場合、n=6が、適切である。この要求を満たし、互いに隣接して配置される全てのピクセルが、局部的強度変化である、いわゆる“輝点”と呼ばれる1つのサブアセンブリを形成する(ステップ133)。少なくとも1つの輝点を特徴とする太陽電池が、HIHT環境において危機的なものとなる可能性があるB群のセルに分類される(ステップ140)。他のセルが、A群に分類される。これらの太陽電池が、いずれのHIHT環境において危機的なものではない(ステップ150)。
【0044】
図8が、HIHT環境において危機的なものとなる可能性があるこれらの太陽電池に対する任意の第2スクリーニングステップを示す。従って、B群のこれらの太陽電池のみが、さらにスクリーニングされる(ステップ300)。この測定配置において、全ての残りのpn−接合及び適切なフィルター11,14に対する付加的な検出器10,16が使用される。検出器のスペクトル感度に応じて、任意の所定のpn−接合の放射が、全ての残りの接合の放射を遮るフィルターの適切な選択によって分離される限り、同じ検出器が、異なるpn−接合に対して使用されうる。太陽電池が、全ての検出器10,16,17の視界内にあり、または1つの検出器から次に移動されうる。検出器10,16が、例えば、1:10000を超える高い動的解像度を有していなければならない。中間のセル2としてGaAs及び上端のセル3としてのGaInPを備えた三重−接合セルに対して、16ビットSi CCDカメラを共に備えた800nmの長経路フィルター及び700nmに切断された短経路フィルターが使用される。
【0045】
電流18、すなわち、I,I,...,Iの範囲にてセルを自動的に順方向バイアスし、所定の操作電圧で太陽電池によって生成される電流の空間的な分布マップを形成するために、コンピューター50が使用される。詳細な手段が、参照により組み込まれる非特許文献1に概説されている。
【0046】
ステップ310によると、B群の太陽電池が、測定システム内に配置され、注入電流の範囲で全てのpn−接合の画像が、取得される(ステップ320)。ステップ330に従い、太陽電池の所定の操作電圧での電流Iopのマップが、自動的にまたは手動で計算される。各太陽電池において、最低値のIopを有する隣接するピクセルまたはピクセルxy(すなわち、Iopマップの基本ユニット)が特定される(ステップ340)。電流が放出されず、この結果、これらのセルが、HIHT環境に対して感応性を示さないため、負のIop値が存在しない太陽電池が、すぐにスクリーニングから除外される(ステップ341)。これらの分類は任意のステップである。
【0047】
広い範囲の負のIop値を特徴とする太陽電池のサブセットが選択され(ステップ342)、関連する特定のHIHT環境に露出される(ステップ343)。これらのセルから、しきい値Ithが決定され、しきい電流Ith(Ith<0)より低い場合は劣化し、一方、Ithよりも大きい場合、これらが影響を受けないことを特徴とする。このしきい値が決定された後、Iop<Ithである任意のピクセルが存在するかどうか、B群の全ての(残りの)太陽電池が検査される。このステップが、コンピューター50によって自動的に実施される。これらのセルが、C群を形成し(ステップ350)、特定のHIHT環境内で機能しなくなる(ステップ360)。ステップ370に従い、B群(B’群)の全ての他のセルが、所定のHIHT環境内で使用されることが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 ウェハー
2,3 pn−接合
4 前面金属化部
5 背面金属化部
6 拡散領域
7 電気的影響が極わずかである欠陥
8 電気的影響のある欠陥
9 電源
10,16,17 検出器
11,14,15 フィルター
12 接合電圧
13 xy−位置
18 注入電流
19 電流Isc
20,50 コンピューター
22 局部的強度変化
23 画像
30 温度制御板
40 筐体
100,110,120,130,131,132,133,140,150,300,310,320,330,340,341,342,343,344,350,360,370 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高太陽強度及び高温(HIHT)環境において操作される多−接合太陽電池のスクリーニング方法であって、
前記各太陽電池が、互いに重なり合って積層された少なくとも2つのpn−接合(2,3,6)を備え、
前記pn−接合の1つ(6)が、真性欠陥が存在しないとされる完全に均一なpn−接合であり、
前記方法が、
HIHT環境における有用性についてスクリーニングされる多数の太陽電池(100)を提供するステップと;
前記多数の太陽電池における各太陽電池において、
所定のバイアス電流(Isc)で前記均一なpn−接合のエレクトロルミネセンス(EL)画像を取得するステップ(120)と;
前記エレクトロルミネセンス画像内の空間的強度分布を分析するステップ(130)であって、HIHT環境内において電力を放出する可能性がある局部的強度変化(22)が存在するかどうかを決定するステップと;
前記太陽電池を分類するステップ(140,150)であって、それらのエレクトロルミネセンス画像内に局部的強度変化(22)を有さない太陽電池が、第1群(A)の太陽電池に分類され、それらのエレクトロルミネセンス画像内に少なくとも1つの局部的強度変化(22)を有する太陽電池が、さらなるスクリーニングのための第2群(B)の太陽電池に分類され、前記第1群(A)の太陽電池が、HIHT環境に適しており、前記第2群(B)の太陽電池が、HIHT環境において危機的なものとなる可能性があるとされるステップと;
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記エレクトロルミネセンス画像内の空間的強度分布を分析するステップ(130)が、
前記エレクトロルミネセンス画像全体またはそのサブ領域の平均強度Φav及び標準偏差σを計算するステップと;
前記エレクトロルミネセンス画像の各ピクセル(xy)において、所定のピクセル内の強度Φxyが、しきい強度Φthよりも大きいかどうかを比較するステップであって、Φth=Φav+nσであり、nが所定の定数であるステップと;
前記強度Φxyが、しきい強度Φthよりも大きく、互いに隣接する、局部的強度変化(22)を形成するこれらのピクセル(xy)を指定するステップと;
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
三重接合(TJ)太陽電池に対して、n=6であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エレクトロルミネセンス画像内の空間的強度分布を分析するステップ(130)が、画像処理システム(20)によって実行されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記均一なpn−接合(6)が、単結晶ウェハーであり、特に、ゲルマニウム(Ge)−ウェハーであり、少なくとも1つのさらなるpn−接合が、前記ウェハー上に成長されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
所定の温度まで加熱されるスクリーニングプロセスの間、前記太陽電池が、温度制御板(30)上に配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記エレクトロルミネセンス画像を取得するステップ(120)が、約2000ピクセル/cmの解像度を有する及び/または約1:10000を超える動的解像度を有する検出器(17)を用いて実施されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記均一なpn−接合(6)以外のpn−接合(2,3)によって放射されたエレクトロルミネセンス放射線を遮るために、一組のフィルター(15)が使用されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記所定のバイアス電流(Isc)が、前記太陽電池の短絡電流に近い順方向電流であり、前記太陽電池が、前記太陽電池の均一なpn−接合のエレクトロルミネセンス画像を取得するステップ(120)に対し十分なエレクトロルミネセンス放射線を放射し、前記バイアス電流(Isc)によって損傷されないことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2群(B)の太陽電池における前記太陽電池をスクリーニングするステップをさらに含み、
前記スクリーニングするステップが、
所定のバイアス電流(Isc)の範囲で各太陽電池の全pn−接合のエレクトロルミネセンス画像を取得するステップ(320)と;
前記第2群(B)の太陽電池における各太陽電池において、
所定のセル操作電圧(Vop)で前記太陽電池が生成する電流(Iop)の空間的電流分布マップを形成するステップ(330)と;
最低値の電流(Iop)を有する隣接するピクセル(xy)の群またはピクセル(xy)を特定するステップ(340)と;
前記最低値の電流(Iop)に基づき、それらの前記太陽電池を、HIHT環境に適さない第3群(C)の太陽電池に分類するステップ(350,360,370)と;
を含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
最低値の電流(Iop)を有するピクセル(xy)を特定するステップ(340)が、前記最低値の電流(Iop)が負であるか否かを決定するステップ(341)を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記最低値の電流(Iop)が、負でない場合、HIHT環境に適した第4群(B’)の太陽電池に、前記太陽電池を分類することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記最低値の電流(Iop)が、負である場合、
負のIop値の全範囲に渡る太陽電池のサブセットを選択するステップ(342)と;
擬似HIHT環境に前記サブセットの全太陽電池を露出させるステップ(343)と;
電気的性能が劣化した太陽電池を決定するステップ(343)と;
負であるしきい電流(Ith)を決定するステップ(344)であって、前記しきい電流を上回ると電気的劣化が生じないステップと;
しきい値(Ith)よりも小さな操作電流(Iop)(Iop<Ith)を有する太陽電池を前記第3群(C)に分類し、Iop>Ithである太陽電池を第4群(B’)に分類するステップ(350,370)を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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