説明

多価アルコールのエステル及び部分エステル

本発明は、多価アルコール(成分A)及びカルボン酸からなるエステル及び部分エステルであって、炭素原子数が24〜34の少なくとも一つのカルボン酸残基及び/またはカルボン酸混合物残基(成分B)及び炭素原子数が8〜22の少なくとも一つのカルボン酸残基及び/またはカルボン酸混合物残基(成分C)を含むことを特徴とする前記エステル及び部分エステル、並びにそれらの使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多価アルコールとカルボン酸からなるエステル及び部分エステル、並びにそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオールと、長鎖カルボン酸、特に脂肪酸とのエステルは、昔から知られており、そして工業的に広く使用されている。それの例は、脂肪酸の天然もしくは合成グリセリンエステル、ペンタエリトリトールテトラステアレート、ジグリセリンステアレート及びオレエート、ペンタエリトリトールモンタネート、トリメチロールプロパンモンタネート、及び他の多くの化合物である。
【0003】
このような化合物の多くは、プラスチックの加工に使用されており、時折、脂肪酸に基づく生成物とモンタンワックス酸に基づく生成物が一緒に使用される。なぜならば、これらは応用技術上の特性を互いに補完し合うからである。
【0004】
脂肪酸は、C8〜C18の鎖長の単一鎖化合物または鎖長分布に関して混合状態で使用される化合物であり、例外的なケースでは、C22飽和物及びC22不飽和物も使用される。
【0005】
非常に重要な材料であるモンタンワックス酸は、モンタンワックスの精製の際に生ずる、炭素原子数24〜34の長鎖カルボン酸の混合物である。
【0006】
これらの酸(すなわち脂肪酸及びモンタンワックス酸)の鎖長分布の故に、これらの酸の誘導体はプラスチック中で異なる挙動を示す。高極性の脂肪酸誘導体は、極性プラスチックにより馴染みがよくそしてより内的に作用し、他方、より長いアルキル鎖を有するモンタンワックス酸誘導体は、脂肪酸誘導体と比べると極性が低く、極性プラスチック中ではより外的に作用する。どちらの作用方式も、加工にとって望ましく必要なものである。
【0007】
脂肪誘導体は、モンタン誘導体と比べると分子量が小さいためにより極性が高い。“内的作用”及び“外的作用”とは、特に、PVCもしくは他のプラスチックの加工において滑剤の作用箇所に関して使用される用語である。内的剤は、溶融物中でもしくはPVCの場合にはポリマー粒中で作用し、他方、外的滑剤は、溶融物と加工具との界面で作用し、そして離型剤としても働く。非極性滑剤は極性プラスチック中では外的に作用し、極性滑剤は非極性プラスチック中では外的に作用し、また逆の場合も同じである。
【0008】
モンタンワックス誘導体は、普通、顕著な固有の色を示し、そのために透明な応用物には通常は使用できない。他方、脂肪酸エステルは固有色が僅かであるものの、鎖長が短いために、しばしば極性が高すぎ、そして高い温度負荷に曝された場合には移行性もしくは揮発性が大きすぎる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ、モンタンワックスの特性を有しながらも固有の色は僅かである材料、または脂肪誘導体の僅かな固有色を有しながらも、モンタンワックス誘導体の特性を有する材料がかなり以前から要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、双方のタイプのカルボン酸(脂肪酸及びモンタンワックス酸)を分子中に同時に含むエステルが、上記の所望の特性を有することがここに見出された。
【0011】
それゆえ、本発明の対象は、炭素原子数が24〜34の少なくとも一つのカルボン酸残基及び/またはカルボン酸混合物残基(成分B)と、炭素原子数が8〜22の少なくとも一つのカルボン酸残基及び/またはカルボン酸混合物残基(成分C)を含むことを特徴とする、冒頭に述べた種類のエステル及び部分エステルである。
【0012】
好ましくは、多価アルコールは、3〜12個のヒドロキシル基を有する。多価アルコールは、好ましくは、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、ジペンタエリトリトール、ジトリメチロールプロパン及び/またはこれらのエトキシル化された誘導体である。
【0013】
多価アルコールは、特に好ましくは、トリメチロールプロパン、グリセリン及び/またはペンタエリトリトールである。
【0014】
好ましくは、カルボン酸混合物残基(成分C)は8〜18個の炭素原子を含む。
【0015】
好ましくは、上記エステル及び部分エステルは、更に、少なくとも一つのジカルボン酸残基及び/またはジカルボン酸混合物残基(成分D)を含む。
【0016】
好ましくは、前記ジカルボン酸残基及び/またはジカルボン酸混合物残基は、アジピン酸、ドデカン二酸またはダイマー脂肪酸などの化合物から誘導される。
【0017】
好ましくは、本発明のエステル及び部分エステルは、5〜25の酸価を有する。
【0018】
好ましくは、本発明のエステル及び部分エステルは、5〜400のヒドロキシル価を有する(DGF法M−IV−6(57)の定義によるヒドロキシル価)。
【0019】
特に好ましくは、本発明のエステル及び部分エステルは、5〜150のヒドロキシル価を有する。
【0020】
更に本発明は、本発明のエステル及び部分エステルを、加工助剤としてまたはプラスチックの加工の際に使用する方法にも関する。
【0021】
好ましくは、プラスチックは熱可塑性プラスチックである。
【0022】
特に好ましくは、熱可塑性プラスチックは、ポリビニルクロライド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドまたはポリプロピレンである。
【0023】
本発明のエステル及び部分エステルは、顔料用の分散助剤として並びにプラスチックの加工の際の滑剤としても使用することができる。
【0024】
これらは微粒物(Mikronisate)の製造にも使用することができる。
【0025】
一般的に知られているように、多価アルコールとカルボン酸とを反応させてエステルとする際には、様々なエステル化度を有するエステルの混合物が常に生ずる。三つもしくはそれ以上のアルコール官能基を有するアルコール、例えばトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、グリセリン、ソルビトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリトリトール、ジグリセリンもしくはポリグリセリンを使用した際は、二段階方法において及び酸触媒の存在下に、先ず高分子量酸(成分B)の部分エステルを製造し、次いで遊離のヒドロキシル基の全てもしくは一部を、より反応性の高い低分子量酸(成分C)と反応させることができる。それにより、8〜22個の炭素原子及び24〜34個の炭素原子を有する目的の各カルボン酸が組み込まれたポリオールエステルもしくは部分エステルが得られる。
【0026】
ポリオール及び異なるカルボン酸分子(例えば脂肪酸もしくはモンタンワックス酸)からなりかつなお遊離のヒドロキシ官能基を含む混合エステルを、二価カルボン酸(成分D)、例えばアジピン酸、ドデカン二酸もしくはダイマー脂肪酸と反応させて、オリゴマーを得ることができる。
【0027】
この原理は、二価のアルコールには働かない。なぜならば、この場合は、常に、一種のカルボン酸しか含まないジエステルが必然的に生じるからである。
【0028】
エステル化にSn含有触媒を使用した場合は、反応は、単一段階方法で行うこともできる。
【実施例】
【0029】
本発明のエステル及び部分エステルの製造例
例1: トリメチロールプロパン(TMP)混合エステル
手順:
モンタンワックス酸(1.5モル)を100℃で溶融しそしてこの温度でトリメチロールプロパン(1モル)及び70%濃度メタンスルホン酸(0.2重量%)を加え、次いで120℃に加熱した。この混合物をN2で不活性化し、反応水を留去しながら3時間攪拌し、次いで獣脂肪酸(1.2モル)を加え、そして酸価が12未満に低下するまでエステル化した。触媒を30%濃度NaOHで中和し、最終生成物を乾燥しそして濾過した。
例2: グリセリン混合エステル
モンタンワックス酸(1.1モル)及び獣脂肪酸(1.2モル)を100℃で溶融しそしてこの温度でグリセリン(1モル)及びFascat2001(0.1重量%)を加え、次いで190℃に加熱した。この混合物をN2で不活性化し、酸価が15未満に低下するまで反応水を留去しながら攪拌し、次いで120℃に冷却し、そして濾過した。
例3: ペンタエリトリトール混合エステル
モンタンワックス酸(1.5モル)及び獣脂肪酸(2モル)を100℃で溶融し、そしてこの温度でペンタエリトリトール(1モル)及びFascat2001(0.1重量%)を加え、次いで190℃に加熱した。この混合物をN2で不活性化し、反応水を留去しながら酸価が20未満に低下するまで攪拌し、次いで120℃に冷却し、そして濾過した。
例4: ペンタエリトリトールコンプレックスエステル
モンタンワックス酸(1.1モル)及び獣脂肪酸(2モル)を100℃で溶融し、そしてこの温度でペンタエリトリトール(1モル)及びFascat2001(0.1重量%)を加え、次いで190℃に加熱した。この混合物をN2で不活性化し、反応水の留去下に酸価が40未満に低下するまで攪拌し、次いでアジピン酸と混合し、そして酸価が20未満に低下するまでエステル化し、次いで120℃に冷却しそして濾過した。
【0030】
【表1】

SZ=DIN53402に従う酸価
VZ=DIN53401に従うけん化価
FH=流動硬度(Fliesshaerte)
Tp=DIN51801/2に従う滴点℃
SV=DIN51562に従う100℃における溶融粘度
上記の方法により製造した材料を、様々なプラスチックの加工において試験した。これらは、純粋なモンタンワックス誘導体と比較して、性能に重大な損失なく色特性に関して改善を示した。
応用試験
【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

表3〜5の測定及び測定結果には、次の処方を使用した(重量%)。
【0033】
【表4】

【0034】
【表5】

【0035】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価アルコール(成分A)とカルボン酸からなるエステル及び部分エステルであって、炭素原子数が24〜34の少なくとも一つのカルボン酸残基及び/またはカルボン酸混合物残基(成分B)と、炭素原子数が8〜22の少なくとも一つのカルボン酸残基及び/またはカルボン酸混合物残基(成分C)を含むことを特徴とする、上記エステル及び部分エステル。
【請求項2】
多価アルコールが3〜12個のヒドロキシル基を有することを特徴とする、請求項1のエステル及び部分エステル。
【請求項3】
多価アルコールが、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、ジペンタエリトリトール、ジトリメチロールプロパン及び/またはこれらのエトキシル化された誘導体であることを特徴とする、請求項1または2のエステル及び部分エステル。
【請求項4】
多価アルコールが、トリメチロールプロパン、グリセリン及び/またはペンタエリトリトールであることを特徴とする、請求項1〜3の一つまたはそれ以上のエステル及び部分エステル。
【請求項5】
脂肪酸残基または脂肪酸混合物残基(成分C)が8〜18個の炭素原子を含むことを特徴とする、請求項1〜4の一つまたはそれ以上のエステル及び部分エステル。
【請求項6】
少なくとも一つのジカルボン酸残基及び/またはジカルボン酸混合物残基(成分D)を更に含むことを特徴とする、請求項1〜5の一つまたはそれ以上のエステル及び部分エステル。
【請求項7】
ジカルボン酸残基及び/またはジカルボン酸混合物残基が、アジピン酸、ドデカン二酸またはダイマー脂肪酸などの化合物から誘導されることを特徴とする、請求項1〜5の一つまたはそれ以上のエステル及び部分エステル。
【請求項8】
5〜25の酸価を有することを特徴とする、請求項1〜7の一つまたはそれ以上のエステル及び部分エステル。
【請求項9】
5〜400のヒドロキシル価を有することを特徴とする、請求項1〜8の一つまたはそれ以上のエステル及び部分エステル。
【請求項10】
5〜150のヒドロキシル価を有することを特徴とする、請求項1〜9の一つまたはそれ以上のエステル及び部分エステル。
【請求項11】
加工助剤としてまたはプラスチックの加工の際に、請求項1〜10のエステル及び部分エステルを使用する方法。
【請求項12】
プラスチックが熱可塑性プラスチックであることを特徴とする、請求項11の使用方法。
【請求項13】
熱可塑性プラスチックが、ポリビニルクロライド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドまたはポリプロピレンであることを特徴とする、請求項11または12の使用方法。
【請求項14】
顔料の分散助剤として請求項1〜9のエステル及び部分エステルを使用する方法。
【請求項15】
微粒物の製造のために請求項1〜9のエステル及び部分エステルを使用する方法。

【公表番号】特表2006−501337(P2006−501337A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−540666(P2004−540666)
【出願日】平成15年9月22日(2003.9.22)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010502
【国際公開番号】WO2004/031121
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(597109656)クラリアント・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング (115)
【Fターム(参考)】