説明

多価不飽和脂肪酸を含む固体脂肪組成物ならびにその使用および製造の方法

本発明は、飽和脂肪を有する油と少なくとも1種の長鎖多価不飽和脂肪酸を有する油とを含む、固体脂肪組成物を提供する。特に、固体脂肪組成物は、長鎖多価不飽和脂肪酸を高レベルでおよび乳化剤を低レベル〜存在しないレベルで有することができる。好ましい態様において、多価不飽和油は、脱ろう処理していない微生物油である。本発明はまた、このような組成物、ならびに該組成物を含む食料製造物、栄養学的製造物、および薬学的製造物を製造するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる2007年8月31日に出願された米国特許仮出願第60/969,536号に対して米国特許法第119条に基づく優先権の恩典を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、多価不飽和脂肪酸を含む固体脂肪組成物ならびにその使用および製造に関する。本発明の固体脂肪組成物は、微生物に由来する長鎖多価不飽和脂肪酸を含んでよい。本発明はまた、このような製造物、ならびに該組成物を含む食料製造物、栄養学的製造物、および薬学的製造物を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
食事性脂質は、総合的な健康的生活様式のために必要とされる必須栄養素である。脂質は、任意の食物のうちで最も凝縮したエネルギー供給源を提供する。脂質のカロリー値(9kcal/g)は、タンパク質および炭水化物のカロリー値(4kcal/g)の2倍の高さである。脂質は、食物の風味、色、におい、および口当たりに寄与するだけでなく、摂食後の満腹感も与える。脂質はまた、脂溶性ビタミンの運搬体として作用し、必須脂肪酸を供給する。必須脂肪酸は、主鎖構造中に2つまたはそれ以上の二重結合を有する多価不飽和脂肪酸(PUFA)である。必須脂肪酸には2つのグループ、すなわちω-3脂肪酸およびω-6脂肪酸がある。ω-3 PUFAは、動脈硬化および冠動脈性心疾患を予防するため、炎症状態を緩和するため、および腫瘍細胞の増殖を遅らせるために重要な食事性化合物であると認識されている。ω-6 PUFAは、ヒト身体において構造的脂質として働くだけでなく、プロスタグランジンおよびロイコトリエンなど炎症時のいくつかの因子の前駆体としても働く。ω-3 PUFAおよびω-6 PUFAの両方の重要なクラスは、長鎖ω-3 PUFAおよび長鎖ω-6 PUFAである。
【0004】
脂肪酸は、飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸に分類され、後者はさらに、一価不飽和脂肪酸および多価不飽和脂肪酸に細別される。飽和脂肪酸は、脂肪鎖中に炭素-炭素一重結合しか含まず、他の利用可能な結合はすべて水素原子に占められている。不飽和脂肪酸は、脂肪鎖中に炭素-炭素二重結合を含む。不飽和脂肪酸が分子中に1つの炭素-炭素二重結合を含む場合、これは一価不飽和と呼ばれる。PUFAは2つまたはそれ以上の炭素-炭素二重結合を含む。短鎖脂肪酸は約2〜約7炭素原子長であり、中鎖脂肪酸は約8〜約19炭素長である。これに対して、長鎖脂肪酸は、20〜24個またはそれ以上の炭素を有する。20個またはそれ以上の炭素を有する長鎖PUFA(LC-PUFA)が、本発明において特に対象となる。
【0005】
LC-PUFAは、脂肪酸炭素鎖中の最初の二重結合の位置によって2つの主な部類に分けることができ、n-3(またはω-3)ファミリーおよびn-6(またはω-6)ファミリーとして公知である。ω-3またはn-3という表記法は、PUFAのこのファミリーの最初の二重結合が分子のメチル末端から3つ目の炭素にあることを意味する。同じ原則がω-6またはn-6の表記法に当てはまる。LC-PUFAのうちで、それぞれ2個、3個、4個、5個、および6個の二重結合を含むリノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、およびドコサヘキサエン酸が関心対象である。ドコサヘキサエン酸(「DHA」)は、炭素22個の鎖長を有し、メチル末端から3番目の炭素から始まる6個の二重結合を有し、「22:6n-3」と呼ばれる。他の重要なω-3 LC-PUFAには、「20:5n-3」と呼ばれるエイコサペンタエン酸(「EPA」)および「22:5n-3」と呼ばれるω-3ドコサペンタエン酸(「DPA n-3」)が含まれる。重要なω-6 LC-PUFAには、「20:4n-6」と呼ばれるアラキドン酸(「ARA」)および「22:5n-6」と呼ばれるω-6ドコサペンタエン酸(「DPA n-6」)が含まれる。
【0006】
脂肪酸のω-3群およびω-6群の親化合物は、リノール酸(LA)およびα-リノレン酸(ALA)である。ヒトはLAおよびALAを合成することができず、食事からそれらを得なければならないため、LAおよびALAはヒトの健康のための必須脂肪酸であるとみなされている。体内で、これらの親化合物は、不飽和化(2つの水素原子を除去することによって余分な二重結合が挿入される)および延長(2つの炭素原子が付加される)を連続して交互に受けて代謝される。これは、不飽和化酵素および延長酵素(elongase)と呼ばれる一連の特別な酵素を必要とする。ω-6脂肪酸およびω-3脂肪酸の両方を代謝するこれらの酵素は同一であるため、2種のPUFAファミリーの間でこれらの酵素を得るための競合が起こると考えられている。鎖の延長および不飽和化は、脂肪酸分子のカルボキシ末端でのみ起こる。したがって、代謝変換はすべて、ω-3二重結合およびω-6二重結合を含む分子のω末端を改変することなく起こる。その結果として、ω-3酸およびω-6酸はヒト体内で相互転換できないため、これらは脂肪酸の2つの別々のファミリーである。
【0007】
過去20年に渡って、保健の専門家は、飽和脂肪が少なく多価不飽和脂肪が多い食事を推奨してきた。多数の消費者がこのアドバイスに従ってきたが、心臓疾患、癌、糖尿病、および衰弱を引き起こす多くの他の疾患の発病率は、絶え間なく増加し続けている。科学者らは、多価不飽和脂肪のタイプおよび供給源が、脂肪の総量と同じくらい重大な意味を持つということに同意している。最も一般的な多価不飽和脂肪は植物性物質に由来し、長鎖脂肪酸(最も具体的にはω-3 LC-PUFA)を欠いている。さらに、合成脂肪を作製するための多価不飽和脂肪の水素化により、ある種の健康障害の増加が起こり、いくつかの必須脂肪酸の欠乏が悪化した。実際、多くの医学的状態がω-3補充の恩恵を受けることが確認されている。これらには、座瘡、アレルギー、アルツハイマー、関節炎、アテローム性動脈硬化症、乳房嚢胞、癌、嚢胞性線維症、糖尿病、湿疹、高血圧、活動過剰、腸障害、腎機能障害、白血病、および多発性硬化症が含まれる。注目すべきことに、世界保健機関(World Health Organization)は、調製粉乳のω-3脂肪酸およびω-6脂肪酸を強化することを推奨した。
【0008】
慣例的に使用される多価不飽和脂肪酸は、かなりの量のω-6(すなわち18:2n-6)を含むがω-3はほとんどまたは全く含まない植物油に由来するものである。ω-6脂肪酸およびω-3脂肪酸は両方とも優良な健康のために必要であるが、約4:1のバランスで摂取することが推奨されている。ω-3の主要供給源は、アマニ油、魚油、および藻類油である。過去10年間に、アマニ油および魚油の製造が急速に成長した。どちらのタイプの油も、ω-3多価不飽和脂肪の好適な食事供給源とみなされている。アマニ油は、EPAもDHAもDPAもARAも含まないが、正しくは、身体がDPA n-3、EPA、およびDHAを作り出すのを可能にする構成要素(building block)であるα-リノレン酸(18:3n-3)を含む。しかしながら、特に健康障害のある者では、代謝変換速度が遅く不安定であり得るという証拠がある。魚油の脂肪酸組成のタイプおよびレベルは、個々の種およびそれらの食事によってかなり異なる。例えば、水産養殖によって育てられた魚は、野生の魚よりも低レベルのω-3脂肪酸を有する傾向がある。さらに、魚油は、魚において一般に存在する環境汚染物質を含むリスクがある。このようなω-3 LC-PUFAおよびω-6 LC-PUFA(鎖長が20を超える)の健康上の恩恵を考慮すると、食物にこのような脂肪酸を追加することが望ましいと考えられる。
【0009】
魚油およびある種の微生物油などの液体油は、高い含有率でLC-PUFAを含むことが公知である。しかしながら、多価不飽和の性質が原因で、これらの油は室温(すなわち20℃)で固体ではなく、その代わりに油または液体形態である。しかしながら、液体油が適用不可能なある種の食品用途では、PUFAの豊富な油の固体形態が、使用するのに望ましい。固体組成物を形成させるために、いくつかのアプローチが試みられた。不飽和油を固化させるために使用される一般的な工程は、半固体油を得るための、このような油の部分的または完全な水素化からなる。部分的な水素化工程は「トランス」脂肪酸の形成をもたらし、これらはいくつかの有害作用を有することが示されている。したがって、水素化工程を用いて不飽和油を固化させることにより、不飽和油の有益な特性が、「トランス」脂肪酸の形成のような極めて望ましくない有害な特性に置き換えられる。
【0010】
他の方法には、混合物が半固体油になるように、不飽和油を「硬い」脂肪または飽和脂肪と混合することが含まれる。その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2007/0003686号(特許文献1)は、飽和脂肪を有する油および長鎖多価不飽和脂肪酸を有する微生物油ならびに乳化剤を含む固体脂肪組成物を開示している。高レベルの多価不飽和脂肪を含む塗り広げられる半固体脂肪組成物を形成させるための他の方法には、高レベルの特定のタイプの乳化剤、または脂肪アルコールのような他の増粘剤を使用することが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0003686号
【発明の概要】
【0012】
本発明までは、固体脂肪もしくは半固体脂肪を含む組成物、または高レベルのPUFAを含むが、乳化剤および/もしくは他のタイプの増粘剤を外部から添加されていない食料製造物が当技術分野において欠けていた。このような組成物およびこのような組成物を形成させるための方法は極めて望ましいと考えられる。無害な材料、最小限の加工段階、および最小限の原材料在庫の使用を含む、このような組成物を製造するための低コストの方法を提供することがさらに望ましいと考えられる。
【0013】
本発明は、固体脂肪組成物を製造する際に外因性乳化剤を添加しない、固体脂肪組成物を製造するための方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:
a)飽和脂肪を含む油を、少なくとも1種のLC-PUFAを含む油と混合して、混合物を形成させる段階;および
b)この混合物を凝固させて、固体脂肪組成物を形成させる段階。
【0014】
本発明のいくつかの態様において、飽和脂肪を含む油は、微生物ステアリン、未分画パーム油、パームオレイン、パームステアリン、パーム中融点画分(mid fraction)、未分画パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、未分画綿実油、綿実オレイン、綿実ステアリン、ヤシ油、未分画シアバター油、シアバターステアリン、エステル交換されたパーム油ブレンド、エステル交換された綿実油ブレンド、魚油ステアリン、およびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0015】
本発明において使用するのに適した、好ましくは微生物油でよい、少なくとも1種のLC-PUFAを含む油は、脱ろう処理されなくてもよい。本発明のいくつかの態様において、油は飽和脂肪を含む。油は、限定されるわけではないが、ドコサヘキサエン酸、ω-3ドコサペンタエン酸またはω-6ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、およびエイコサペンタエン酸からなる群より選択される約5重量%〜約70重量%の間の少なくとも1種のLC-PUFAを含んでよい。
【0016】
本発明のいくつかの態様において、飽和脂肪を含む油および少なくとも1種のLC-PUFAを含む油は、混合前に加熱されない。
【0017】
本発明の方法によって製造される固体脂肪組成物は、限定されるわけではないが、食料製造物、栄養学的製造物、および/もしくは薬学的製造物でよいか、またはそれらの中に混和されてよい。本発明のいくつかの態様において、少なくとも1種のLC-PUFAを含む油と飽和脂肪を含む油の比率は、重量比で約1:9〜約9:1である。
【0018】
本発明による固体脂肪組成物を製造する方法は、飽和脂肪を含む油と少なくとも1種のLC-PUFAを含む油との混合物を脱臭する段階をさらに含んでよい。本発明のいくつかの態様において、固体脂肪組成物を製造する方法は、混合物をエステル交換する段階をさらに含む。
【0019】
本発明はまた、飽和脂肪を含む油と少なくとも1種のLC-PUFAを含む油との混合物を含む固体脂肪組成物を提供し、該混合物は室温で固体組成物であり、該混合物は外因性乳化剤を含まない。
【0020】
本発明のいくつかの態様において、固体脂肪組成物中の飽和脂肪を含む油は、微生物ステアリン、未分画パーム油、パームオレイン、パームステアリン、パーム中融点画分、未分画パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、未分画綿実油、綿実オレイン、綿実ステアリン、ヤシ油、未分画シアバター油、シアバターステアリン、エステル交換されたパーム油ブレンド、エステル交換された綿実油ブレンド、魚油ステアリン、およびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0021】
本発明のいくつかの態様において、固体脂肪組成物中の少なくとも1種のLC-PUFAを含む油は、脱ろう処理されていない。この油は飽和脂肪を含んでよい。本発明のいくつかの態様において、固体脂肪組成物は、ドコサヘキサエン酸、ω-3ドコサペンタエン酸またはω-6ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、およびエイコサペンタエン酸からなる群より選択される約5重量%〜約70重量%の間の少なくとも1種のLC-PUFAを含む油を有する。
【0022】
好ましくは、本発明の固体脂肪組成物はトランス脂肪酸を含まない。本発明のいくつかの態様において、固体脂肪組成物が有する、少なくとも1種のLC-PUFAを含む油と飽和脂肪を含む油の比率は、重量比で約1:9〜約9:1である。本発明の固体脂肪組成物は、限定されるわけではないが、食料製造物、栄養学的製造物、または薬学的製造物でよい。
【0023】
本発明はまた、以下の段階を含む、固体脂肪組成物を製造するための方法も提供する:
a)少なくとも1種のLC-PUFAを含むステアリンを、飽和脂肪を含む第2の油と混合して、混合物を形成させる段階;および
b)この混合物を凝固させて、固体脂肪組成物を形成させる段階。
本発明のいくつかの態様において、固体脂肪組成物を製造する際に外因性乳化剤は添加されない。
【0024】
本発明において使用するのに適したステアリンには、限定されるわけではないが、微生物ステアリン、魚油ステアリン、パームステアリン、パーム核ステアリン、綿実ステアリン、シアバターステアリン、およびそれらの組合せが含まれ得る。本発明のいくつかの態様において、飽和脂肪を含む第2の油は、未分画パーム油、パームオレイン、未分画パーム核油、パーム核オレイン、パーム中融点画分、ヤシ油、未分画シアバター油、未分画綿実油、綿実オレイン、エステル交換されたパーム油ブレンド、エステル交換された綿実油ブレンド、およびそれらの組合せからなる群より選択される。
【0025】
本発明はさらに、少なくとも1種のLC-PUFAを含むステアリン組成物と飽和脂肪を含む第2の油との混合物を含み、室温で固体である固体脂肪組成物も提供する。本発明のいくつかの態様において、ステアリンは、微生物ステアリン、魚油ステアリン、パームステアリン、パーム核ステアリン、綿実ステアリン、シアバターステアリン、およびそれらの組合せからなる群より選択される。本発明において使用するのに適した、飽和脂肪を含む第2の油には、限定されるわけではないが、未分画パーム油、パーム油オレイン、未分画パーム核油、パーム核油オレイン、パーム中融点画分、ヤシ油、未分画シアバター油、シアバターステアリン、未分画綿実油、綿実オレイン、エステル交換されたパーム油ブレンド、エステル交換された綿実油ブレンド、およびそれらの組合せが含まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明において使用するのに適した、飽和脂肪を含む油および少なくとも1種のLC-PUFAを含む油を作製するための様々な代替態様を例示する。
【図2】本発明において使用するのに適した、最小限の加工を施したPUFA油を作製するための様々な代替態様を例示する。
【図3】本発明のPUFA含有固体脂肪組成物を製造するための様々な代替態様を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
本発明によって教示される食料製造物組成物、栄養学的製造物組成物、および薬学的製造物組成物、ならびにそれらを製造するための方法により、栄養素、特にLC-PUFA、ならびにより具体的にはω-3 LC-PUFAおよびω-6 LC-PUFAの摂取量を増加させることが可能になり、このような製造物を摂取する者に健康上の恩恵を与え得る。本発明は、高品質PUFA含有固体脂肪製造物ならびにその使用および製造を提供する。本発明のいくつかの態様において、PUFA含有固体脂肪製造物は、最小限の加工によって調製された高品質PUFA含有油製造物を含み、改善された機能性、改善された安定性を有し、天然市場部門および/または有機市場部門を含む広範囲の用途に適合性がある。例えば、本発明のLC-PUFA含有固体脂肪組成物は、栄養学的製造物、食料製造物、ならびに/または薬学的製造物(医薬品および/もしくは治療薬)中でまたはそれらとして使用され得る。本発明のいくつかの態様において、本発明の製造物を製造するための油は、微生物バイオマスに由来するLC-PUFAを含む微生物油である。
【0028】
本発明のいくつかの態様において、少なくとも1種のLC-PUFAを含む油は、本発明の固体脂肪組成物を製造するための出発材料として使用され得る高品質PUFA含有油製造物である、最小限の加工を施した微生物油でよい。このような最小限の加工を施した微生物油を作製するための工程は、少なくとも1種のLC-PUFAを含む油含有画分を微生物バイオマスから抽出して微生物油を作製する段階を含む。微生物供給源ならびに微生物油中に回収するための栄養素および/またはLC-PUFAを含む微生物を増殖させるための方法は、当技術分野において公知である(Industrial Microbiology and Biotechnology, 第2版, 1999, American Society for Microbiology)。好ましくは、微生物は発酵槽において発酵培地中で培養される。本発明の方法および組成物は、LC-PUFAを産生する任意の産業的微生物に応用可能である。
【0029】
微生物供給源には、藻類、細菌、真菌(酵母を含む)、および/または原生生物などの微生物が含まれ得る。好ましい生物には、黄金藻類(ストラメノパイル(Stramenopile)界の微生物など)、緑藻類、珪藻類、渦鞭毛藻類(例えばクリプテコディニウム・コーニイ(Crypthecodinium cohnii)のようなクリプテコディニウム属のメンバーを含む渦鞭藻綱(Dinophyceae)目の微生物など)、酵母、ならびにモルティエラ・アルピナ(Mortierella alpina)およびモルティエラ・シュムッケリ節(Mortierella sect. schmuckeri)を非限定的に含む、ケカビ(Mucor)属およびモルティエラ(Mortierella)属の真菌からなる群より選択されるものが含まれる。微生物群ストラメノパイルのメンバーには、微細藻類および藻類様微生物が含まれ、次の微生物群が含まれる:ハマトレス(Hamatores)、プロテロモナス(Proteromonads)、オパリナ(Opalines)、デベロパイエラ(Develpayella)、ディプロフリス(Diplophrys)、ラビリンチュラ(Labrinthulids)、ヤブレツボカビ(Thraustochytrids)、ビオセシド(Biosecids)、卵菌綱(Oomycetes)、サカゲツボカビ綱(Hypochytridiomycetes)、コマチオン(Commation)、レチキュロスファエラ(Reticulosphaera)、ペラゴモナス(Pelagomonas)、ペラゴコッカス(Pelagococcus)、オリコラ(Ollicola)、アウレオコッカス(Aureococcus)、パルマ目(Parmales)、珪藻類(Diatoms)、黄緑藻類(Xanthophytes)、褐藻類(Phaeophytes)(褐藻(brown algae))、真正眼点藻類(Eustigmatophytes)、ラフィド藻類(Raphidophytes)、シヌリドス(Synurids)、アキソディネス(Axodines)(リゾクロムリナ目(Rhizochromulinaales)、ペディネラ目(Pedinellales)、ディクティオカ目(Dictyochales)を含む)、クリソメラ目(Chrysomeridales)、サルシノクリシス目(Sarcinochrysidales)、ミズオ目(Hydrurales)、ヒッバーディア目(Hibberdiales)、およびヒカリモ目(Chromulinales)。ヤブレツボカビには、シゾキトリウム属(種には、アグレガツム(aggregatum)、リムナセウム(limnaceum)、マングロベイ(mangrovei)、ミヌツム(minutum)、オクトスポルム(octosporum)が含まれる)、ヤブレツボカビ属(種には、アルジメンタレ(arudimentale)、アウレウム(aureum)、ベンチコラ(benthicola)、グロボスム(globosum)、キンネイ(kinnei)、モチブム(motivum)、ムルチルジメンタレ(multirudimentale)、パキデルマム(pachydermum)、プロリフェルム(proliferum)、ロゼウム(roseum)、ストリアツム(striatum)が含まれる)、ウルケニア(Ulkenia)属(種には、アモエボイデア(amoeboidea)、ケルグエレンシス(kerguelensis)、ミヌタ(minuta)、プロフンダ(profunda)、ラジアテ(radiate)、サイレンズ(sailens)、サルカリアナ(sarkariana)、シゾキトロプス(schizochytrops)、ビスルゲンシス(visurgensis)、ヨーケンシス(yorkensis)が含まれる)、アプラノキトリウム属(種には、ハリオチジス(haliotidis)、ケルグエレンシス(kerguelensis)、プロフンダ(profunda)、ストッキノイ(stocchinoi)が含まれる)、ジャポノキトリウム(Japonochytrium)属(種にはマリヌム(marinum)が含まれる)、アルソルニア(Althornia)属(種にはクロウチイ(crouchii)が含まれる)、およびエリナ(Elina)属(種には、マリサルバ(marisalba)、シノリフィカ(sinorifica)が含まれる)が含まれる。ラビリンチュラには、ラビリンチュラ属(種には、アルゲリエンシス(algeriensis)、コエノシスティス(coenocystis)、チャットニイ(chattonii)、マクロシスティス(macrocystis)、マクロシスティス・アトランティカ(macrocystis atlantica)、マクロシスティス・マクロシスティス(macrocystis macrocystis)、マリナ(marina)、ミヌタ(minuta)、ロスコフェンシス(roscoffensis)、バルカノビイ (valkanovii)、ビテリナ(vitellina)、ビテリナ・パシフィカ(vitellina pacifica)、ビテリナ・ビテリナ(vitellina vitellina)、ゾプフィ(zopfi)が含まれる)、ラビリントミキサ(Labyrinthomyxa)属(種にはマリナ(marina)が含まれる)、ラビリンチュロイデス(Labyrinthuloides)属(種には、ハリオチジス(haliotidis)、ヨーケンシス(yorkensis)が含まれる)、ディプロフリス属(種にはアルケリ(archeri)が含まれる)、ピロソルス(Pyrrhosorus)属*(種にはマリヌス(marinus)が含まれる)、ソロジプロフリス(Sorodiplophrys)属*(種にはステルコレア(stercorea)が含まれる)、クラミドミクサ(Chlamydomyxa)属*(種には、ラビリンチュロイデス(labyrinthuloides)、モンタナ(montana)が含まれる)が含まれる。(*=現時点では、これらの属の正確な分類学的位置付けに関する一般的な共通見解はない)。多種多様の微生物が本発明のための適切な材料供給源であり得るが、簡潔さ、便宜、および例示のために、本発明のこの詳細な説明では、ω-3多価不飽和脂肪酸および/またはω-6多価不飽和脂肪酸を含む脂質を産生できる微生物、特にDHA、DPA n-3、DPA n-6、EPA、またはARAを産生できる微生物を増殖させるための工程を考察する。その他の好ましい微生物は、ヤブレツボカビ(ウルケニアを含む)およびシゾキトリウムを含み、かつ、いずれもBarclayに発行され、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、同一出願人による米国特許第5,340,594号および同第5,340,742号に開示されているヤブレツボカビ目を含む、ヤブレツボカビ目のヤブレツボカビのような藻類である。より好ましくは、微生物は、ATCC番号20888、ATCC番号20889、ATCC番号20890、ATCC番号20891、およびATCC番号20892の識別特性を有する微生物からなる群より選択される。ウルケニアがヤブレツボカビ属とは別の属であるかどうかに関しては、専門家の間でいくらか意見の相違があるが、本出願のためには、ヤブレツボカビ属はウルケニアを含むものとする。また、モルティエラ・シュムッケリ節(例えば、ATCC 74371の識別特性を有する微生物を含む)およびモルティエラ・アルピナ(例えば、ATCC 42430の識別特性を有する微生物を含む)の株も好ましい。また、ATCC番号30021、30334〜30348、30541〜30543、30555〜30557、30571、30572、30772〜30775、30812、40750、50050〜50060、および50297〜50300の識別特性を有する微生物を含む、クリプテコディニウム・コーニイの株も好ましい。また、上記のいずれかに由来する変異株およびそれらの混合物も好ましい。油性微生物もまた、好ましい。本明細書において使用される場合、「油性微生物」は、細胞重量の20%超を脂質の形態で蓄積できる微生物と定義される。LC-PUFAを産生する遺伝的に改変された微生物もまた、本発明に適している。これらには、天然にLC-PUFAを産生する遺伝的に改変された微生物、ならびに天然にはLC-PUFAを産生しないが、そうなるように遺伝的に操作された微生物が含まれ得る。
【0030】
適切な生物は、自然環境からの収集を含めて、いくつかの利用可能な供給源から得ることができる。アメリカンタイプカルチャーコレクションは、現在、上記に特定した微生物の公的に入手可能な多くの株を収載している。本明細書において使用される場合、任意の微生物または任意の特定のタイプの生物には、野生株、変異体、または組換え型が含まれる。これらの生物を培養するための増殖条件は当技術分野において公知であり、これらの生物のうち少なくとも一部にとって適切な増殖条件は、例えば、いずれもその全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,130,242号、米国特許第5,407,957号、米国特許第5,397,591号、米国特許第5,492,938号、米国特許第5,711,983号、米国特許第5,882,703号、米国特許第6,245,365号、および米国特許第6,607,900号に開示されている。
【0031】
本発明において有用な微生物油は、当業者に公知である任意の適切な手段によって微生物供給源から回収することができる。例えば、油は、クロロホルム、ヘキサン、塩化メチレン、およびメタノールなどの溶媒を用いた抽出によって、または超臨界流体抽出法によって回収することができる。あるいは、いずれもその全体が参照により本明細書に組み入れられる、いずれも2001年1月19日に出願された「Solventless Extraction Process」という表題の米国特許第6,750,048号およびPCT特許出願番号US01/01806に記載されているような抽出技術を用いて、油を抽出することもできる。その他の抽出技術および/または精製技術は、2001年4月12日に出願された、「Method for the Fractionation of Oil and Polar Lipid-Containing Native Raw Materials」という表題のPCT特許出願番号PCT/IB01/00841;2001年4月12日に出願された、「Method for the Fractionation of Oil and Polar Lipid-Containing Native Raw Materials Using Water-Soluble Organic Solvent and Centrifugation」という表題のPCT特許出願番号PCT/IB01/00963;2001年5月14日に出願された、「Production and Use of a Polar Lipid-Rich Fraction Containing Stearidonic Acid and Gamma Linolenic Acid from Plant Seeds and Microbes」という表題の米国仮特許出願第60/291,484号;2001年5月14日に出願された、「Production and Use of a Polar-Lipid Fraction Containing Omega-3 and/or Omega-6 Highly Unsaturated Fatty Acids from Microbes, Genetically Modified Plant Seeds and Marine Organisms」という表題の米国仮特許出願第60/290,899号;2000年2月17日に出願され2002年6月4日に発行された、「Process for Separating a Triglyceride Comprising a Docosahexaenoic Acid Residue from a Mixture of Triglycerides」という表題の米国特許第6,399,803号;および2001年1月11日に出願された、「Process for Making an Enriched Mixture of Polyunsaturated Fatty Acid Esters」という表題のPCT特許出願番号US01/01010において教示されており、これらはすべてその全体が参照により本明細書に組み入れられる。抽出油を減圧下で蒸発させて、濃縮された油物質の試料を作製することができる。脂質を回収するためにバイオマスを酵素処理するための工程は、2002年5月3日に出願された、「HIGH-QUALITY LIPIDS AND METHODS FOR PRODUCING BY ENZYMATIC LIBERATION FROM BIOMASS」という表題の米国特許仮出願第60/377,550号;2003年5月5日に出願された、「HIGH-QUALITY LIPIDS AND METHODS FOR PRODUCING BY ENZYMATIC LIBERATION FROM BIOMASS」という表題のPCT特許出願PCT/US03/14177;2004年10月22日に出願された、「HIGH-QUALITY LIPIDS AND METHODS FOR PRODUCING BY LIBERATION FROM BIOMASS」という表題の同時係属中の米国特許出願第10/971,723号;いずれも「Process for extracting native products which are not water-soluble from native substance mixtures by centrifugal force」という表題の欧州特許公報第0 776 356号および米国特許第5,928,696号で開示されており、これらの文献はすべて、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0032】
好ましい態様において、本発明において使用するのに適した微生物油は、前述の工程によって調製された高品質微生物粗製油である。魚バイオマスからの回収は典型的には調理およびヘキサン抽出を伴うため、ならびに油は汚染物質、他の望ましくない成分、および/または望ましくない脂肪酸プロファイルを含み得るため、このような油は、例えば、質の悪い粗製油を典型的に提供する魚油より優れた顕著な利点を有する。
【0033】
少なくとも1種のLC-PUFAを含む油は、少なくとも1種のLC-PUFAを含む。本発明の好ましいPUFAには、C20、C22、またはC24のω-3 PUFAまたはω-6 PUFAが含まれる。好ましくは、PUFAは、C20もしくはC22のω-3 PUFA、またはC20もしくはC22のω-6 PUFAを含む長鎖PUFA(LC-PUFA)である。本発明のLC-PUFAは、好ましくは少なくとも2つの二重結合、より好ましくは少なくとも3つの二重結合、およびさらにより好ましくは少なくとも4つの二重結合を含む。4つまたはそれ以上の不飽和炭素-炭素結合を有するPUFAはまた、高度不飽和脂肪酸またはHUFAと一般に呼ばれる。特に、LC-PUFAには、ドコサヘキサエン酸(脂肪酸全体の少なくとも約10、約20、約30、約35、約40、約50、約60、約70、もしくは約80重量パーセント)、ドコサペンタエン酸n-3(脂肪酸全体の少なくとも約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、もしくは約80重量パーセント)、ドコサペンタエン酸n-6(脂肪酸全体の少なくとも約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、もしくは約80重量パーセント)、アラキドン酸(脂肪酸全体の少なくとも約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、もしくは約80重量パーセント)、および/またはエイコサペンタエン酸(脂肪酸全体の少なくとも約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、もしくは約80重量パーセント)が含まれ得る。PUFAは、限定されるわけではないが、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、リン脂質、遊離脂肪酸、エステル化脂肪酸を含む天然脂質中で見出される一般的形態のいずれかで、またはこれらの脂肪酸の天然誘導体もしくは合成誘導体の形態(例えば、脂肪酸のカルシウム塩、エチルエステルなど)で存在してよい。好ましい態様において、微生物油含有画分は、画分中に少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、または少なくとも約95重量%のトリグリセリド型PUFAを含む。LC-PUFAという用語は、本発明で使用される場合、単一のω-3 LC-PUFA(DHAなど)を含む油、単一のω-6 LC-PUFA(ARAもしくはDPA n-6など)を含む油、または2種もしくはそれ以上のLC-PUFA(DHA、DPA n-6、ARA、およびEPAなど)の混合物を含む油の、いずれかを意味してよい。好ましい態様において、製造物は、少なくとも1種の他の栄養素と組み合わせてLC-PUFAを含む。
【0034】
LC-PUFAを含む油を抽出するための微生物バイオマスの使用に加えて、例えば、任意の高等植物に由来する植物、および特に消費用植物(作物植物および特に油を目的として使用される植物を含む)を含む、油料種子のような植物ベースの供給源もまた、LC-PUFAを抽出または回収するためのバイオマスとして使用することができる。植物バイオマスから抽出されたこのような油を、本明細書において開示するように加工および処理して、油製造物を製造することができる。このような植物には、例えば、キャノーラ、ダイズ、菜種、アマニ、トウモロコシ、ベニバナ、ヒマワリ、およびタバコが含まれ得る。他の好ましい植物には、薬学的物質、着香料、栄養補助物質、機能性食品成分、もしくは化粧用活性物質として使用される化合物を産生することが公知である植物、またはこれらの化合物/作用物質を産生するよう遺伝的に操作された植物が含まれる。PUFAを産生する植物には、PUFAを産生する遺伝子を発現するように遺伝的に操作されたもの、および天然にPUFAを産生するものが含まれる。このような遺伝子には、古典的な脂肪酸合成酵素経路に関与しているタンパク質をコードする遺伝子、またはPUFAポリケチド合成酵素(PKS)経路に関与しているタンパク質をコードする遺伝子が含まれ得る。古典的な脂肪酸合成酵素経路に関与している遺伝子およびタンパク質、ならびにそのような遺伝子によって形質転換された植物のような遺伝的に改変された生物は、例えば、NapierおよびSayanova, Proceedings of the Nutrition Society (2005), 64:387-393; Robert et al., Functional Plant Biology (2005) 32:473-479;または米国特許出願公開第2004/0172682号に記載されている。PUFA PKS経路、この経路に含まれる遺伝子およびタンパク質、ならびにPUFAの発現および産生のためにこのような遺伝子によって形質転換された遺伝的に改変された微生物および植物は、米国特許第6,140,486号;米国特許第6,566,583号;米国特許出願公開第20020194641号;米国特許第7,211,418号;米国特許出願公開第20050100995A1号;米国特許出願公開第20070089199号;PCT公開番号WO 05/097982;および米国特許出願公開第20050014231号に詳細に記載されており、各文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0035】
このような植物、および特に油料種子は、油を回収するための従来の方法によって、例えば、洗浄、脱ぷ、および粉砕によって処理することができる。次いで、これらの種子を圧搾して油を製造するか、または薄片状にした後などに溶媒と接触させて油を抽出することができる。適切な溶媒には、有機溶媒、水混和性溶媒、および水が含まれ得る。好ましい溶媒はヘキサンである。
【0036】
本発明の組成物および方法に適したPUFA含有油の別のバイオマス供給源には、動物供給源が含まれる。動物供給源の例には、水生動物(例えば、魚、海洋哺乳動物、ならびにオキアミ(krill)および他のオキアミ類(euphausid)などの甲殻類)、ならびに動物組織(例えば、脳、肝臓、眼など)および卵または乳などの畜産物が含まれる。このような供給源からPUFA含有油を回収するための技術は、当技術分野において公知である。
【0037】
本発明のいくつかの態様において、固体脂肪組成物を製造するために使用される油(微生物油など)は、精製、漂白、脱臭、脱ろう、もしくは冷却濾過などの処理、またはこれらの処理の組合せに供された。
【0038】
本発明のいくつかの態様において、有用なPUFA含有油製造物のさらなる特徴は、油含有画分に視覚的に影響を及ぼすのに少なくとも十分である飽和脂肪酸をそれらが含むことである。多くのPUFA含有油製造物は、室温(すなわち、20℃)で、例えば、油に濁りをもたらすことにより油に視覚的に影響を及ぼす形態の飽和脂肪酸を十分な量含む。いくつかのこのような製造物は、例えば、トリグリセリド形態の十分な飽和脂肪酸を含むため、飽和脂肪酸の存在が原因で実際にはペースト様である。従来の加工では、このような油製造物を脱ろう処理して飽和脂肪酸を除去するが、このような油製造物は、下記により詳細に考察するように、脱ろうせずに本発明において使用することができる。
【0039】
本発明の好ましい態様において、本発明において有用な油は、LC-PUFAを含む固体組成物または半固体組成物を製造するのに特に適した脂質プロファイルを有する。より具体的には、このような油は、高度不飽和化合物(例えば、4つ、5つ、またはそれ以上の不飽和点)中では比較的高濃度であり、飽和化合物中では比較的高濃度であり、かつ/または一価飽和化合物、二価飽和化合物、および三価飽和化合物中では比較的低濃度である。このような組成物は、飽和の観点から化合物の双峰分布、すなわち、多量の飽和化合物および多量の高度不飽和化合物を有し、不飽和が中程度量である化合物を少量有するものと特徴付けることができる。例えば、このような油は、4つまたはそれ以上の不飽和点を有する高度不飽和化合物を約20重量%より多く、約25重量%より多く、約30重量%より多く、約35重量%より多く、約40重量%より多く、約45重量%より多く、または約50重量%より多く有し得る。他の態様において、このような油は、5つまたはそれ以上の不飽和点を有する高度不飽和化合物を約20重量%より多く、約25重量%より多く、約30重量%より多く、約35重量%より多く、約40重量%より多く、約45重量%より多く、または約50重量%より多く有し得る。あるいはまたはさらに、このような油は、飽和化合物を約30重量%より多く、約35重量%より多く、約40重量%より多く、約45重量%より多く、または約50重量%より多く有し得る。あるいはまたはさらに、このような油は、一価飽和化合物、二価飽和化合物、または三価飽和化合物を約25重量%未満、約20重量%未満、約15重量%未満、約10重量%未満、または約5重量%未満有し得る。
【0040】
少なくとも1種のLC-PUFAを含む、最小限の加工を施した高品質PUFA含有油製造物の製造は、米国特許公報番号US-2007-003686-A1に記載されている油含有画分のような、本明細書において説明するようにして作製した抽出油含有画分を処理する段階をさらに含んでよい。このようなさらなる処理は、少なくとも1種のLC-PUFAを含む油製造物を製造するための真空蒸発の工程を非限定的に含んでよい。
【0041】
真空蒸発の工程は、高真空蒸発による脱溶媒化(desolventization)および/または乾燥を含んでよく、当技術分野において一般に公知である。この工程は、抽出油を好ましくは高温(例えば、約50℃〜約70℃)で真空条件に供する段階を含む。例えば、油は、約100mmHgの真空より高い、約70mmHgの真空より高い、および約50mmHgの真空より高い真空に供されてよい。本明細書において使用される場合、例えば、「約100mmHgの真空より高い真空」への言及は、例えば90mmHgまたは80mmHgの真空のようなより強力な真空を意味する。これらの条件下で、油よりも低い沸点を有する、抽出油中の任意の溶媒、水、または他の成分が追い出される。
【0042】
脱臭工程は当技術分野において一般に公知であり、存在し得る任意の低分子量成分を除去するために、抽出油を真空条件に供する段階を含む。典型的には、これらの成分は、高真空下、高温で、蒸気を噴霧することによって除去される。例えば、油は一般に、脱溶媒化に関して前述したものよりも高い真空に供される。具体的には、真空は、約50mmHgの真空よりも高い、約25mmHgの真空よりも高い、約12mmHgの真空よりも高い、約6mmHgの真空よりも高い真空でよく、典型的には、約12mmHgの真空〜約6mmHgの真空の間であるか、または約6mmHgの真空〜約1mmHgの真空の間であってよい。この工程はまた、存在し得る多くの過酸化物結合を破壊し、臭いを軽減または除去し、油の安定性の改善に寄与する。さらに、これらの条件下で、油よりも低い沸点を有する、抽出油中の溶媒、水、および/または他の成分が追い出される。脱臭は典型的には、約190℃〜約220℃の間の温度のような高温で実施される。
【0043】
本発明のいくつかの態様において、本発明において使用されるPUFA含有油は、ヒトおよび非ヒト動物による摂取に適している。すなわち、油の官能特性は、この製造物の摂取がヒトおよび非ヒト動物に許容されるようなものである。具体的には、油は、低濃度の遊離脂肪酸、リン、過酸化物価、アニシジン価、セッケン、および重金属を含み得る。前述の方法によってこの油を製造すると、この油を許容される商業的条件に合わせるのに必要な後加工の量が最小限になる。本発明において使用するのに適したPUFA含有油の製造に組み入れてよい具体的な改良には、溶媒脱ろう段階の排除、苛性物質による精製 (caustic refining)工程の排除、冷却濾過工程の排除、および可能であれば漂白工程の排除が含まれる。さらに、脱臭工程の代わりに高真空蒸発工程を用いてもよい。前述の工程の内容により、組成物が室温(すなわち、約20℃)で液体になるのを防ぐのに十分な飽和化合物の存在が保持されて、固体製造物または半固体製造物の製造が容易になる。前述の工程により、非常に高い回収率(95〜100%)で、粗製油、および特に粗製微生物油から、天然市場部門および/または有機市場部門に適合する食用油を製造することが可能になる。
【0044】
様々な態様において、溶媒脱ろう、苛性物質による精製工程、冷却濾過工程、および/または漂白工程という従来の加工段階の内の1つまたは複数に供することなく製造した油のような本発明において使用するのに適した油製造物は、低濃度の遊離脂肪酸を有する。油の遊離脂肪酸濃度の測定は、当技術分野において周知である。より具体的には、本発明において使用するのに適した油は、約0.5重量%未満、約0.1重量%未満、および約0.05重量%未満の遊離脂肪酸含有量を有することができる。
【0045】
様々な態様において、溶媒脱ろう、苛性物質による精製工程、冷却濾過工程、および漂白工程という従来の加工段階の内の1つまたは複数に供することなく製造した油のような本発明において使用するのに適した油製造物は、低いリン価を有する。油のリン価の測定は、当技術分野において周知である。より具体的には、本発明において使用するのに適した油は、約10ppm未満、約5ppm未満、および約0ppm未満のリン価を有することができる。
【0046】
様々な態様において、溶媒脱ろう、苛性物質による精製工程、冷却濾過工程、および漂白工程という従来の加工段階の内の1つまたは複数に供することなく製造した油のような本発明において使用するのに適した油製造物は、低い過酸化物価を有する。油の過酸化物価の測定は、当技術分野において周知である。より具体的には、本発明において使用するのに適した油は、約2meq/kg未満、約1meq/kg未満、および約0meq/kg未満の過酸化物価を有することができる。
【0047】
様々な態様において、溶媒脱ろう、苛性物質による精製工程、冷却濾過工程、および漂白工程という従来の加工段階の内の1つまたは複数に供することなく製造した油のような本発明において使用するのに適した油製造物は、低いアニシジン価を有する。油のアニシジン価の測定は、当技術分野において周知である。より具体的には、本発明において使用するのに適した油は、約5未満、約3未満、約2未満、約1未満、約0.5未満、約0.3未満、約0.1未満、および検出限界未満のアニシジン価を有することができる。
【0048】
様々な態様において、溶媒脱ろう、苛性物質による精製工程、冷却濾過工程、および漂白工程という従来の加工段階の内の1つまたは複数に供することなく製造した油のような本発明において使用するのに適した油製造物は、低濃度のセッケンを有する。油のセッケン濃度の測定は、当技術分野において周知である。より具体的には、本発明において使用するのに適した油は、約5重量%未満、約2.5重量%未満、および0重量%のセッケン含有量を有することができる。
【0049】
様々な態様において、溶媒脱ろう、苛性物質による精製工程、冷却濾過工程、および漂白工程という従来の加工段階の内の1つまたは複数に供することなく製造した油のような本発明において使用するのに適した油製造物は、低い重金属価を有する。油の重金属価の測定は、当技術分野において周知である。より具体的には、本発明において使用するのに適した油は、約1ppm未満、約0.5ppm未満、および好ましくは約0ppmのFe濃度;約1ppm未満、約0.2ppm未満、および好ましくは約0ppmのPb濃度;約0.1ppm未満、約0.04ppm未満、および好ましくは約0ppmのHg濃度;約0.1ppm未満、約0.01ppm未満、および好ましくは約0ppmのNi濃度;ならびに約1ppm未満、約0.2ppm未満、および好ましくは約0ppmのCu濃度を有することができる。
【0050】
少なくとも1種のLC-PUFAを有する最小限の加工を施した高品質PUFA含有油製造物を製造するための工程は、脱臭段階または高真空分画段階の前または後のいずれかに、油を漂白する段階を任意で含んでよいが、より一般的にはこれは、脱臭段階の前に行われる。油の漂白は当技術分野において周知であり、従来の工程で遂行され得る。具体的には、例えば、セッケン残存物を除去するためのシリカ吸着剤(Trysil 600(Grace Chemicals)など)および漂白用粘土を油に添加し、次いで濾過除去してよい。典型的には、シリカ吸着剤を漂白用粘土より前に添加する。
【0051】
少なくとも1種のLC-PUFAを有する高品質PUFA含有油製造物を製造するための工程は、LC-PUFA含有液体油画分およびLC-PUFA含有固体脂肪製造物を製造するための工程を含んでよい。このような工程は、本明細書において開示するように、高品質粗製油、および好ましくは微生物粗製油を、油製造物および関連する固体脂肪製造物に分画する段階を含む。このような粗製油製造物は、少なくとも1種のLC-PUFAおよび飽和脂肪酸を含む油含有画分をバイオマス、およびいくつかの態様においては微生物バイオマスから抽出することによって調製することができる。脱ろう、冷却濾過、真空蒸発、および/または他の手段によって油含有画分を処理して、少なくとも1種のLC-PUFAを含む液体油製造物および少なくとも1種のLC-PUFAを含む固体製造物を製造することができる。このような他の手段には、液体油画分を固体組成物から分離するための濾過が含まれ得る。
【0052】
吸着剤を含む場合がある固体画分成分は、固体/液体分離技術によって回収することができる。吸着剤および固体脂肪物質を加熱して固体脂肪物質を融解させることによって、任意の吸着剤を固体画分から分離することができる。次いで、融解した固体から、例えば濾過によって吸着剤を分離することができ、次いで、融解した固体を冷却によって再凝固させることができる。
【0053】
回収された固体画分は、高レベルのLC-PUFAを含むと考えられる。好ましい態様において、固体画分は、少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%のLC-PUFA、およびいくつかの態様においてはDHAを含む。本発明のいくつかの態様において、固体画分は、ステアリンを含む。透明油および固体はそれぞれ、例えば食品または食品添加物として使用され得る。
【0054】
本発明に従って製造される油製造物は、固体物質または半固体物質でよい。本明細書において使用される場合、「油」という用語には、室温で固体または半固体である物質、ならびに室温で液体である物質が含まれる。
【0055】
本明細書において使用される場合、「半固体油」という用語は、通常の室温で、半固体かつ流動性で、流すことができる脂肪製造物を意味する。
【0056】
本明細書において使用される場合、「固体」または「可塑性」脂肪製造物という用語は、約25℃の典型的な保存温度で、固体かつ非流動性で、流すことができない脂肪製造物を意味する。
【0057】
少なくとも1種のLC-PUFAを有する最小限の加工を施した高品質PUFA含有油製造物を製造するための工程は、脱臭段階または高真空分画段階のいずれかの後に、油をオレイン画分とステアリン画分に分画する段階を任意で含んでよい。オレイン画分とステアリン画分への油の分画を任意の粗製油または漂白もしくは脱臭した油に適用して、透明なオレイン画分および硬いステアリン画分を得ることができる。オレインおよびステアリンは、物理的特性が異なるため、異なる食品用途で使用され得る。従来の工程では、ステアリンはミセラ(miscella)の脱ろうおよび冷却濾過の副産物であり、処分されるため、約30%の損失が生じる。したがって、分画により、販売可能なステアリン画分の作製が可能になる。このタイプの分画の例は、実施例4で後述する。
【0058】
本発明はまた、LC-PUFA含有油の脱ろう(すなわち、冷却濾過、ミセラ脱ろうなど)からのLC-PUFA含有ステアリンの回収も提供する。本発明のいくつかの態様において、LC-PUFA含有ステアリンは、油の分画を行わずに、LC-PUFA含有油の脱ろうから回収される。本発明のいくつかの態様において、LC-PUFA含有ステアリンは、微生物ステアリンである。本明細書において使用される場合、「微生物ステアリン」とは、微生物油の分画または他の加工(ミセラ脱ろうおよび冷却濾過など)から回収されるステアリンを含む。
【0059】
本発明のいくつかの態様において、LC-PUFA含有ステアリンは、約15重量%〜約50重量%のLC-PUFAを含む。例えば、本発明のLC-PUFA含有ステアリンは、少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、または少なくとも約35重量%のLC-PUFA、および特にDHAを含み得る。このようなLC-PUFA含有ステアリンは、本発明の固体脂肪組成物を製造するのに適している。
【0060】
図1を参照して、少なくとも1種のLC-PUFAを含む飽和油脂を含む適切な油を製造する様々な代替方法を例示する。バイオマスまたは噴霧乾燥したバイオマスのような出発材料を、粗製油の抽出のために溶媒処理に供してよい。このような粗製油は、LC-PUFAを含むと考えられる。粗製油を、所望の油成分よりも低い沸点を有する粗製油中の抽出溶媒、水、および他の成分を除去する高真空蒸発に供してよい。あるいは、カロテノイドを除去するためなどの任意の漂白段階に粗製油を供してもよい。次いで、任意で処理した粗製油を、高真空下において高温で蒸気を油に噴霧することによる脱臭に供する。次いで、高真空蒸発または脱臭のいずれかによって製造した最終的な油製造物を、オレイン画分とステアリン画分への分画によって任意で処理してよい。
【0061】
図2を参照して、本発明において使用するのに適した最小限の加工を施したPUFA油を製造する様々な代替方法をフローシートによって例示する。最も基本的な形態において、この工程は、いくつかの態様においては微生物バイオマスであるバイオマスを含む低温殺菌した発酵ブロスから始まる段階を含む。酵素処理または機械的破壊などによって溶解させることによりブロスを前処理して、細胞から油を放出させる。次いで、前処理した発酵ブロスを、油を製造するための抽出段階に供する。次いで、この工程は、本明細書において説明するように脱臭段階を含む。代替の態様において、この工程は漂白段階も含み、その際、抽出油は脱臭段階の前に漂白に供される。さらに別の代替態様において、漂白段階の前および/または漂白段階と脱臭段階の間に、抽出油に対して脱ろう段階(すなわち冷却濾過)を実施してもよい。
【0062】
本明細書において説明する最小限の加工を施した油および結果として生じる製造物を製造するための工程は、いくつかの顕著な利点を有する。PUFA含有油製造物を製造する従来の方法と比べて、これらの工程により、コストが低下し、加工の必要が減少し、製造処理量が増加し、加工段階の安全性が増し、かつ廃棄物/副産物の流れが無くなる。さらに、本工程は、天然市場部門および/または有機市場部門と調和する。
【0063】
下記により完全に説明するように、本発明の高品質PUFA含有固体脂肪製造物は、様々な食料製造物および用途において使用され得る。固体脂肪製造物は、栄養学的製造物、食事製造物、医薬製造物、または薬学的製造物としてヒトに直接的に摂取されてよい。さらに、固体脂肪製造物は、栄養物摂取を改善するために、ヒトが摂取するための任意の公知のヒト用の食品または液体と組み合わせてもよい。また、固体脂肪製造物は、飼料としてまたは動物飼料への補助剤として動物に直接与えてもよい。この様式において、動物ベースの任意の食料製造物は、ヒトに摂取された場合に高い品質を有し得る。また、本発明の固体脂肪製造物の使用は、リポソーム、薬物担体、化粧品、ペット用食品、および水産養殖飼料に拡張することもできる。
【0064】
本発明のいくつかの態様において、本明細書において説明する油製造物を組み合わせてブレンドを作製することができる。例えば、クリプテコディニウム・コーニイに由来する最小限の加工を施した油を、モルティエラ・アルピナに由来する物理的に精製した油とブレンドしてよく、結果として生じるブレンドを本発明の固体脂肪組成物の製造において使用してよい。別の例として、本明細書において説明する油を用いたARA含有油とDHA含有油のブレンドは、ARAとDHAの様々な異なる比率で作製することができる。このようなブレンドは、約1:1〜約2:1のARA:DHA比を含んでよい。より具体的には、約1:1、1.25:1、1.5:1、1.75:1、または2:1のARA:DHA比を有するブレンドを作製することができる。
【0065】
図3を参照して、固体脂肪組成物を製造するための本発明の様々な代替態様を例示する。1つの態様において、半固体粗製油を粗製ステアリンと組み合わせて、混合物を形成させることができる。次いで、固体脂肪製造物を形成させる前に、この混合物を脱臭する。固体脂肪製造物を形成させる工程は、精製段階、漂白段階、および/またはエステル交換段階を任意で含んでよい。別の態様において、粗製ステアリンを脱臭し、固体脂肪製造物を形成させることができる。ステアリンのみから固体脂肪製造物を形成させる工程は、精製段階および/または漂白段階を任意で含んでよい。
【0066】
本発明のいくつかの態様において、固体脂肪組成物を製造するための方法は、飽和脂肪を含む油と少なくとも1種のLC-PUFAを含む油との混合物をエステル交換する段階をさらに含む。また、このようなエステル交換反応は、ステアリンと飽和脂肪を含む油との混合物に対して実施してもよい。このようなエステル交換を実施する方法は、化学的触媒または酵素で混合物を処理する段階を含む。
【0067】
典型的には、化学的エステル交換は、ナトリウムメトキシドもしくはナトリウムエトキシドまたはアルカリ金属を触媒として用いて実施することができる。いくつかの態様において、約0.05重量%〜約1.5重量%のナトリウムメトキシドまたはナトリウムエトキシドがエステル交換工程において使用され得る。いくつかの態様において、約0.1重量%〜約10重量%のアルカリ金属がエステル交換工程において使用され得る。いくつかの態様において、約0.05重量%〜約1.0重量%のナトリウムカリウム合金がエステル交換工程において使用され得る。好ましい態様において、化学的エステル交換の前に0.5〜2時間、90℃〜120℃の間の温度、5mmHg〜15mmHgの間の真空下で、油混合物を乾燥させる。いくつかの態様において、エステル交換反応は、約0.5時間〜約2時間の範囲の期間、約60℃〜約105℃の温度で実施することができる。
【0068】
酵素的エステル交換は、リパーゼを含む様々な酵素を用いて実施することができる。リパーゼは植物由来または微生物由来でよく、sn-1,3に特異的または非特異的でよい。いくつかの態様において、酵素的エステル交換は、約0.5時間〜約24時間の範囲の期間、約45℃〜約75℃の間の温度で実施される。エステル交換において使用するのに適した微生物リパーゼには、リゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)、カンジダ・アンタークチカ(Candida antarctica)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)、ゲオトリクム・カンディダム(Geotrichum Candidum)、リゾープス・デレマー(Rhizopus delemar)、リゾープス・オリザエ(Rhizopus oryzae)、およびサーモミセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)に由来するリパーゼが含まれる。
【0069】
本明細書において説明する高品質PUFA含有油製造物は、下記に詳細に説明する固体脂肪組成物のための出発材料として使用することができる。しかしながら、本発明の固体脂肪組成物のための出発材料は、本明細書において説明する最小限の加工を施した油製造物の使用に限定されないことが理解されるべきである。
【0070】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の固体脂肪組成物の好ましい態様において、乳化剤の添加を必要とせずに、飽和脂肪を含む油および少なくとも1種のLC-PUFAを含む油を混合し凝固させて、固体脂肪組成物を形成させ得ることを発見した。本明細書において使用される場合、「外因性乳化剤無し」という用語は、本発明の組成物を形成させるために乳化剤が添加されない組成物または工程を意味する。
【0071】
本発明のいくつかの態様において、脱ろう処理していない微生物由来ドコサヘキサエン酸含有油(DHA油)を含む、脱ろう処理していない形態のLC-PUFAに富む油を、本発明の固体脂肪組成物のための出発材料として使用することができる。本発明者らは、驚くべきことに、本発明の固体脂肪組成物の好ましい態様において、固体脂肪組成物が安定であり、乳化剤の使用を必要とせずに均質なままであることを発見した。その結果、このような組成物を製造するための工程は、油を水素化する必要、これらの油を乳化剤または増粘タイプの作用物質のような他の作用物質と混合することを回避することができる。典型的には、精製した油、すなわち、液体の魚油または微生物油を最初の粗製油として製造し、次いでこれを(リン脂質および遊離脂肪酸を除去する)精製段階および(色素を除去するための)漂白段階に供する。次いで、典型的には油を脱ろうして飽和脂肪を除去する。しかしながら、本発明のいくつかの態様において、脱ろうは、固体脂肪組成物を製造する際に出発材料として油を使用する前に必要とされない。さらに、前述したように脱ろう処理していない油種子油を、後述するように微生物油の代替手段として使用することもできる。
【0072】
本発明のいくつかの態様において、固体脂肪組成物を製造するための方法は、飽和脂肪を含む油と、少なくとも1種のLC-PUFAを含む油を混合して、混合物を形成させる段階を含む。次いで、この混合物を凝固させて固体脂肪組成物を形成させる。本発明の好ましい態様において、混合物および結果として生じる組成物は、約0.01重量%未満、約0.009重量%未満、約0.005重量%未満、または約0.002重量%未満の乳化剤を含む。本発明のいくつかの態様において、固体脂肪組成物を製造する際に外因性乳化剤は添加されない。
【0073】
本発明による固体脂肪組成物を製造する際に乳化剤を添加する必要が無くなることにより、製造のコストが減少し、製造工程が単純になる。理論に拘泥するものではないが、本発明者らは、少なくとも1種のLC-PUFAを含む油の量と飽和脂肪を含む油の量を適切な比率で使用することが、乳化剤が使用されない場合でも安定で均質な固体脂肪組成物を形成させるのに寄与すると考える。いくつかの態様において、少なくとも1種のLC-PUFAを含む油(例えば微生物油)の量と飽和脂肪を含む油(例えばステアリン)の量の比率は、重量比で約1:9〜約9:1、重量比で約1:6〜約6:1、または重量比で約1:3〜約3:1である。本発明のいくつかの態様において、少なくとも1種のLC-PUFAを含む油の量と飽和脂肪を含む油の量の比率は、重量比で約1:1、約3:1、または約6:1である。
【0074】
また、脱ろう処理していない油中に存在する飽和脂肪は、(脱ろう処理した液体油と比べて)、より濃密な粘稠性を油に与えると考えられる。また、固体脂肪組成物を製造するための本発明の方法は、そのような脱ろう処理していない油が粒子を伴う粘稠な液体油として現れる原因となる、脱ろう処理していない油が(トリグリセリドの結晶化が原因で)粒状になる傾向を抑える。室温で静置すると、脱ろう処理していない油は分離して、内部に固体を有する粘稠な液体油として現れる生成物を生じる。本明細書において説明する工程により、室温で静置しておいた場合に安定であり、明らかな分離が起こらない、均一な外観を有する滑らかな製造物が得られる。結果として生じる製造物は、ショートニングの粘稠性を有し得る。
【0075】
本明細書において使用される場合、「固体脂肪組成物」とは、室温(すなわち、25℃)で固体または半固体である組成物を意味する。脂肪および油の物理化学的特性には、それらの粘度および融解温度が含まれる。好ましくは、本発明の固体脂肪組成物は、少なくとも約30℃、少なくとも約35℃、少なくとも約40℃、および少なくとも約50℃の融解温度を有する。融解温度は、存在する異なる化学単位の数によって異なる。典型的には、いくつかのトリグリセリドの混合物は、個々のトリグリセリドの融点に基づいて予測されるよりも低い融点を有する。また、混合物は、その個々の成分の融解範囲よりも広い融解範囲を有する。モノグリセリドおよびジグリセリドは、脂肪酸組成が類似したトリグリセリドよりも高い融点を有する。好ましい態様において、固体脂肪組成物は、食料製品に塗り広げるのに十分な柔らかを維持する。好ましくは、室温において、組成物は粘性であり、流動性の速度は遅く、かつ/または、この製造物を製造するための出発材料よりも表面への粘着性が高い。
【0076】
本発明のいくつかの態様において、固体脂肪組成物は、約20℃〜約60℃の間の滴点を有する。例えば、本発明の固体脂肪組成物は、少なくとも約30℃、少なくとも約40℃、または少なくとも約50℃の滴点を有し得る。本発明のいくつかの態様において、固体脂肪組成物は、約20℃〜約40℃の間の凝固点を有する。例えば、本発明の固体脂肪組成物は、少なくとも約20℃、少なくとも約25℃、または少なくとも約30℃の凝固点を有し得る。本発明のいくつかの態様において、固体脂肪組成物は、約50〜約250の間のヨウ素価を有し得る。例えば、本発明の固体脂肪組成物は、少なくとも約100、少なくとも約150、または少なくとも約200のヨウ素価を有し得る。本発明のいくつかの態様において、固体脂肪組成物は、約150〜約275の間のけん化価を有し得る。例えば、本発明の固体脂肪組成物は、約160〜約260の間、170〜約240の間、約180〜約220の間、または約185〜約215の間のけん化価を有し得る。本発明のいくつかの態様において、本発明の固体脂肪組成物は、約0.5ppm未満のヒ素、約0.04ppm未満の銅、約0.1ppm未満の鉄、約0.2ppm未満の鉛、および約0.04ppm未満の水銀を有する。本発明のいくつかの態様において、本発明の固体脂肪組成物の固体脂肪含有量プロファイルは、10.0℃において、約10%〜約50%の間、約12%〜約48%の間、または約15%〜約45%の間;21.1℃において、約5%〜約35%の間、約7%〜約30%の間、または約10%〜約25%の間;26.7℃において、約2%〜約25%の間、約4%〜約24%の間、または約6%〜約20%の間;33.3℃において、0%〜約20%の間、約2%〜約18%の間、または約3%〜約16%の間;および37.8℃において、0%〜約15%の間、約2%〜約14%の間、または約0.5%〜約12%の間である。
【0077】
固体脂肪組成物を製造するために本発明の方法において使用される油には、少なくとも1種のLC-PUFAを含む油が含まれる。いくつかの態様において、少なくとも1種のLC-PUFAを含む油は微生物油である。微生物供給源、ならびに回収するための栄養素および/またはLC-PUFAを微生物油中に含む微生物を増殖させるための方法は、本発明の最小限の加工を施した油の説明において上記に詳述したように、当技術分野において公知である。このような微生物供給源および方法は、本発明の固体脂肪組成物の出発材料としての微生物油の製造に適している。実際、前述の最小限の加工を施した油は、固体脂肪組成物を製造するための好ましい出発材料である。しかしながら、後述するような多種多様な他の微生物油出発材料が、本発明の固体脂肪組成物のための出発材料として使用され得ることが理解されるべきである。1つの特に好ましい態様において、微生物油は、2001年4月12日に出願され、WO 01/76715として公開された、「Method for the Fractionation of Oil and Polar Lipid-Containing Native Raw Materials」という表題のPCT特許出願番号PCT/IB01/00841、および2001年4月12日に出願され、WO 01/76385として公開された、「Method for the Fractionation of Oil and Polar Lipid-Containing Native Raw Materials Using Water-Soluble Organic Solvent and Centrifugation」という表題のPCT特許出願番号PCT/IB01/00963における開示に従って製造される油であり、これらの文献の内容全体が参照により本明細書に組み入れられる。これらの2つの PCT出願における開示では、Friolex工程と一般に呼ばれ得る微生物油回収工程を説明している。
【0078】
本発明において使用するのに適した微生物油は、少なくとも1種のLC-PUFAを含む。本発明の好ましいPUFAには、C20、C22、またはC24のω-3 PUFAまたはω-6 PUFAが含まれる。好ましくは、PUFAは、C20もしくはC22のω-3 PUFA、またはC20もしくはC22のω-6 PUFAを含むLC-PUFAである。本発明のLC-PUFAは、少なくとも2つの二重結合、および好ましくは3つの二重結合、およびさらにより好ましくは少なくとも4つの二重結合を含む。4つまたはそれ以上の不飽和炭素-炭素結合を有するPUFAはまた、高度不飽和脂肪酸またはHUFAと一般に呼ばれる。特に、LC-PUFAには、ドコサヘキサエン酸(脂肪酸全体の少なくとも約10、約20、約30、約35、約40、約50、約60、約70、もしくは約80重量パーセント)、ドコサペンタエン酸n-3(脂肪酸全体の少なくとも約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、もしくは約80重量パーセント)、ドコサペンタエン酸n-6(脂肪酸全体の少なくとも約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、もしくは約80重量パーセント)、アラキドン酸(脂肪酸全体の少なくとも約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、もしくは約80重量パーセント)、および/またはエイコサペンタエン酸(脂肪酸全体の少なくとも約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、もしくは約80重量パーセント)が含まれ得る。PUFAは、限定されるわけではないが、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、リン脂質、遊離脂肪酸、エステル化脂肪酸を含む天然脂質中で見出される一般的形態のいずれかで、またはこれらの脂肪酸の天然誘導体もしくは合成誘導体の形態(例えば、脂肪酸のカルシウム塩、エチルエステルなど)で存在してよい。好ましい態様において、微生物油は、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、および少なくとも約95重量%のトリグリセリド型PUFAを油中に含む。LC-PUFAという用語は、本発明で使用される場合、単一のω-3 LC-PUFA、例えばDHAを含む油、単一のω-6 LC-PUFA、例えばARAもしくはDPA n-6を含む油、または2種もしくはそれ以上のLC-PUFA、例えば、DHA、DPA n-6、ARA、およびEPAの混合物を含む油の、いずれかを意味してよい。好ましい態様において、製造物は、少なくとも1種の他の栄養素と組み合わせてLC-PUFAを含む。
【0079】
本発明の好ましい態様において、固体脂肪組成物を製造するために本発明の方法で使用される少なくとも1種のLC-PUFAを含む油は、約5重量%〜約70重量%のLC-PUFAを含んでよい。例えば、いくつかの態様において、油は、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約20重量%のLC-PUFA、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約35重量%のLC-PUFA、少なくとも約40重量%、少なくとも約45重量%、および少なくとも約50重量%のLC-PUFAを含んでよい。また、このような態様は、約30重量%未満、約35重量%未満、約40重量%未満、約45重量%未満、約50重量%未満、約55重量%未満、約60重量%未満、約65重量%未満、および約70重量%未満のLC-PUFAを有することができる。
【0080】
固体脂肪組成物を製造するために本発明の方法において使用される油は、少なくとも1種のLC-PUFAを含む油に加えて、飽和脂肪を任意で含んでよい。典型的には、飽和脂肪は、LC-PUFAまたはLC-PUFAの混合物よりも高い融点を有する。このような飽和脂肪は、外部から油に添加することができる。添加するのに好ましい外部から添加される飽和脂肪には、部分水素化植物油、完全水素化油、部分水素化豚脂、および非トランス熱帯油などの「硬い脂肪」が含まれる。例えば、パーム油およびパーム核油ならびにそれらの画分(パームオレインおよびパーム核オレインならびにパームステアリンおよびパーム核ステアリン)が使用され得る。組成物が、外部から添加された脂肪を含む場合、LC-PUFA油は脱ろうされてもされなくてもよい。外部から添加される脂肪の好ましい量は、出発材料の固体性および/または粘度の程度、ならびに組成物中で望ましい固体性および/または粘度および/または塗布粘稠性の所望の程度に応じて、当業者によって決定され得る。外部から添加される脂肪は、約20重量%〜約60重量%、約30重量%〜約50重量%、および約35重量%〜約45重量%の量で添加され得る。
【0081】
好ましい態様において、少なくとも1種のLC-PUFAを含む油中の飽和脂肪は、外部から添加されず、油中に天然に存在する。例えば、LC-PUFAを含む微生物油は、当技術分野において公知の任意の手段によって抽出された未加工油でよい。このような油において、微生物油中の飽和脂肪の量は、約20重量%〜約60重量%、約30重量%〜約50重量%、および約35重量%〜約45重量%であり得る。
【0082】
本発明の好ましい態様において、使用される少なくとも1種のLC-PUFAを含む油は、脱ろうされておらず(すなわち未分画)、したがって飽和脂肪を含む。脱ろうとは、植物油を含む多くの油中に低温で現れる沈降物(典型的には、高融点の固体飽和脂肪)を除去する工程を意味し、この工程は、最も典型的には、冷蔵庫内温度で液体画分が濁るのを避けるために、濾過によって結晶化物質の量を減らす(removal)段階を含む。このような技術は、異なる融点を有する2つまたはそれ以上の画分に油を分離する段階を含む。分離された液体画分および固体画分は、物理的特性および化学的特性の顕著な相違を示す。適切な技術は当技術分野において公知であり、典型的には次の3つの段階を含む:(i)液体油を超飽和まで冷却して、結晶化のための核を形成させる段階、(ii)徐冷却による結晶の漸進的な増大、および(iii)液相と結晶相の分離。これらの技術には、例えば、従来の脱ろう、界面活性剤分画、および溶媒脱ろうが含まれ得る。従来の脱ろうは、融解温度が最も高いトリグリセリドが、混合物の入っていない(neat)液体または融解した脂肪から冷却中に優先的に結晶化する、乾燥分別結晶を含む。乾燥分画工程の原理は、化学物質を添加せずに、制御された条件下で油を冷却することに基づいている。液相および固相は、機械的手段によって分離される。界面活性剤分画の原理は、溶媒を添加せずに、制御された条件下で油を冷却することに基づく乾燥分画と類似している。続いて、界面活性剤水溶液を添加した後に、遠心分離によって液相と固相が分離される。低温下のトリグリセリドは一般に、溶媒が無い場合よりも溶媒がある場合の方がより安定な結晶を形成するため、トリグリセリドの結晶形成を促進するために溶媒(典型的にはアセトン)脱ろうが使用される。溶媒の助けを借りた分画では、極性溶媒または非極性溶媒のいずれかを用いて、濾過中の系の粘度を低下させてよい。次いで、得られた画分を、蒸留によって溶媒から遊離させる。したがって、脱ろうされていない微生物油とは、脱ろう工程にも分画工程にも供されていない微生物油である。
【0083】
さらなる好ましい態様において、少なくとも1種のLC-PUFAを含む油は、水素化も部分的水素化もされない。水素化は当技術分野において公知であり、触媒の存在下で液体脂肪に水素ガスを化学的に添加する工程を含む。この工程により、脂肪分子中の不飽和脂肪酸の二重結合の内の少なくとも一部が一重結合に変換され、それによって脂肪の飽和度が上昇する。水素化の程度、すなわち変換された二重結合の総数により、水素化脂肪の物理的特性および化学的特性が決定される。部分的に水素化された油は、脂肪酸中にかなりの不飽和度をしばしば保持する。また、水素化によって、1つまたは複数の二重結合が脂肪酸鎖中の新たな位置に移動した、いくつかのシス二重結合のトランス配置への変換が起こる。現在の研究では、トランス脂肪酸は、飽和脂肪酸とほぼ同じ程度まで総コレステロールおよび心疾患リスクを上昇させる場合があり、したがって食事に望ましくないことが示唆されている。本発明により、水素化も部分的水素化も必要とせずに、固体脂肪製造物を形成させることが可能になる。
【0084】
本発明において使用される、飽和脂肪を含む油は、固体形態、半固体形態、または液体形態でよい。飽和脂肪を含む様々な油が、本発明の固体脂肪組成物を製造するために適切に使用され得る。いくつかの態様において、飽和脂肪を含む油には、微生物ステアリン、未分画パーム油、パームオレイン、パームステアリン、パーム中融点画分、未分画パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、未分画綿実油、綿実オレイン、綿実ステアリン、ヤシ油、未分画シアバター油、シアバターステアリン、エステル交換されたパーム油ブレンド、エステル交換された綿実油ブレンド、魚油ステアリン(メンヘーデン油ステアリンなど)、およびそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されるわけではない。本発明の好ましい態様において、飽和脂肪を含む油は、水素化も部分的水素化もされない。
【0085】
本発明の方法は、安定な固体脂肪組成物を製造する際に乳化剤の使用を必要としない。しかしながら、乳化剤は、一定の態様において任意で使用され得る。本発明と共に使用するのに適した乳化剤には、モノグリセリド、ジグリセリド、モノ/ジグリセリドの組合せ、レシチン、ラクチル化(lactylated)モノ-ジグリセリド、ポリグリセロールエステル、スクロース脂肪酸エステル、ステロイル(steroyl)ラクチル酸ナトリウム、ステロイルラクチル酸カルシウム、およびそれらの組合せが含まれる。いくつかの態様において、乳化剤は、モノ/ジグリセリドの組合せである。いくつかの態様において、乳化剤は、約0.01重量パーセント〜約2.0重量パーセントの間の量で、約0.025重量パーセント〜約1.0重量パーセントの間の量で、および約0.05重量パーセント〜約0.2重量パーセントの間の量で混合物中に存在する。本発明の好ましい態様において、乳化剤は、0.01重量%未満、0.009重量%未満、0.005重量%未満、または0.002重量%未満で存在する。本発明の特に好ましい態様において、固体脂肪組成物を製造する際に外因性乳化剤は添加されない。
【0086】
乳化剤は、混合物中の様々な成分間の安定性を提供して、均質な組成物を維持するように作用し得ることが示唆されている。安定性を欠くと、油の分離または油と水相の分離が起こる場合がある。また、乳化剤は、乳化のほかに機能的な特質も提供することができ、これには、空気混和、デンプンおよびタンパク質の錯化、水和、結晶改変、可溶化、および分散が含まれる。しかしながら、本発明者らは驚くべきことに、本明細書において説明するように、乳化剤を使用せずに安定で均質な固体脂肪組成物を製造できることを発見した。
【0087】
飽和脂肪を含む油および少なくとも1種のLC-PUFAを含む油を混合する物理的段階は、当技術分野において公知である任意の従来の混合様式で実施してよい。組成物は、混合を実現するために、例えば、均質な液体溶液を得るために混合される。飽和脂肪を含む油および/または少なくとも1種のLC-PUFAを含む油は、これらの組成物が完全に液状となり、互いに混和するように、(例えば、少なくとも約40℃まで)加熱することが可能である。しかしながら、本発明者らは、混合前の油の加熱は、均質な固体脂肪組成物を形成させるのに不必要であることを発見した。理論に拘泥するわけではないが、本発明者らは、少なくとも後続の脱臭段階から加熱することにより、油混合物の均質化が促進されて均質な固体脂肪製造物が形成し、したがって混合前の油の加熱は不必要であると考える。したがって、好ましい態様において、飽和脂肪を含む油および/または少なくとも1種のLC-PUFAを含む油は、混合前に加熱されない。混合前の油の加熱を回避可能であることは、固体脂肪組成物の製造工程を単純化し、エネルギーおよび資源の保存に寄与するため、有利である。
【0088】
本発明の方法はまた、飽和脂肪を含む油と少なくとも1種のLC-PUFAを含む油との混合物を凝固させて、固体脂肪組成物を形成させる段階を含む。例えば、混合物が室温を上回る態様において、混合物は室温まで放冷されてよい。あるいは、室温まで、例えば室温より低い温度まで、混合物を能動的に冷却してもよい。例えば、組成物を約25℃〜約30℃の間まで冷却して凝固させることができる。能動的であろうと受動的であろうと、冷却段階の間、混合物を混合または撹拌してよい。この様式において、冷却は、層状の組成物を作り出さずに均一な冷却を実現できるように、制御され得る。好ましくは、このような冷却条件は、脂肪の結晶構造を(すなわち、分子が固体段階で配向する様式)所望のレベルに到達させて、その結果、所望の製造物の可塑性、機能性、および安定性を得るように調整される。一般に、β-プライム(prime)結晶は、滑らかなクリーム状の粘稠性をもたらす。典型的にはβ結晶の方がβ-プライム結晶よりも大きく、粗く、粒状であり、典型的には望ましさが劣る。したがって、好ましい態様において、冷却工程は、混合物中のトリグリセリドを安定なβ-プライム配置に至らしめて、滑らかな粘稠性を有する製造物を生成するように制御される。このような好ましい結晶化が起こるのを可能にする冷却方法には、約1℃/分〜約20℃/分の間、約5℃/分〜約15℃/分の間、および約10℃/分の速度で混合物を冷却することが含まれる。好ましくは、固体脂肪組成物中の脂肪および/または油の少なくとも約50重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、または少なくとも約100重量%が、β-プライム結晶配置である。
【0089】
好ましい態様において、本発明の固体脂肪組成物は、均質な質感を有し、したがって、均一な外観および粘稠性を有する。これらの態様の別の特徴は、組成物が安定であり、静置時に分離もせず、さもなければ、好ましくは長期間に渡って均質な質感を失いもしないことである。したがって、組成物は、静置時に不均一な外観も粘稠性も呈さない。好ましい態様において、本発明の組成物は、少なくとも約1日、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、および少なくとも約4週間、分離もせず、さもなければ、均質な質感を失いもせずに室温で未変化であることができる。
【0090】
本発明の固体脂肪組成物は、LC-PUFAの豊富な供給源である。いくつかの態様において、固体脂肪組成物は、少なくとも約15重量パーセント、少なくとも約20重量パーセント、少なくとも約25重量パーセント、または少なくとも約30重量パーセントの少なくとも1種のLC-PUFA、特にドコサヘキサエン酸を含む。本発明の好ましい態様において、固体脂肪組成物はトランス脂肪酸を含まない。
【0091】
本発明はまた、少なくとも1種のLC-PUFAを含むステアリン組成物と飽和脂肪を含む第2の油との混合物を含み、室温で固体である固体脂肪組成物も提供する。本発明のいくつかの態様において、このような固体脂肪組成物を製造するための方法は、少なくとも1種のLC-PUFAを含むステアリンを、飽和脂肪を含む第2の油と混合して、混合物を形成させる段階、およびこの混合物を凝固させて、固体脂肪組成物を形成させる段階を含む。適切なステアリンには、微生物ステアリン、魚油ステアリン、パームステアリン、パーム核ステアリン、綿実ステアリン、シアバターステアリン、およびそれらの組合せが含まれるがそれらに限定されるわけではない。本発明において使用するのに適している、飽和脂肪を含む第2の油には、未分画パーム油、パームオレイン、未分画パーム核油、パーム核オレイン、パーム中融点画分、ヤシ油、未分画シアバター油、未分画綿実油、綿実オレイン、エステル交換されたパーム油ブレンド、エステル交換された綿実油ブレンド、およびそれらの組合せがるがそれらに限定されるわけではない。本明細書において説明する乳化剤は、本発明のこのような固体脂肪組成物を形成させる際に任意で使用され得る。
【0092】
また、本発明の組成物は、いくつかの付加的な機能的成分も含んでよい。例えば、本発明の組成物は、例えば、タンパク質、単純糖質および複合糖質、固体、および微粒子を含むマイクロカプセル化物(microencapsulant)をさらに含んでよい。好ましいマイクロカプセル化物には、細胞微粒子;アカシアゴム;マルトデキストリン;疎水性に改変したデンプン;アルギナート、カルボキシメチルセルロース、およびグアールゴムを含む多糖類;オクチル置換デンプンのような疎水性に改変した多糖類;乳清タンパク質単離物、ダイズタンパク質、およびカゼイン酸ナトリウムを含むタンパク質;ならびにそれらの組合せが含まれる。さらに、本発明の組成物は、例えば、陰イオン性作用物質、陽イオン性作用物質、非イオン性作用物質、両性作用物質、非水溶性乳化剤、微粉粒子、および天然に存在する物質を含む表面活性剤を含んでよい。陰イオン性作用物質には、カルボン酸、硫酸エステル、アルカンスルホン酸、アルキル芳香族スルホン酸、種々の陰イオン性親水基が含まれる。陽イオン性作用物質には、アミン塩、アンモニウム化合物、他の窒素含有塩基、および窒素非含有塩基が含まれる。非イオン性作用物質には、可溶化基に対するエーテル結合、エステル結合、アミド結合、種々の結合、および複数の結合が含まれる。両性作用物質には、アミノおよびカルボキシ、アミノおよび硫酸エステル、アミノおよびアルカンスルホン酸、アミノおよび芳香族スルホン酸、ならびに塩基性基および酸性基の種々の組合せが含まれる。非水溶性乳化剤には、イオン性親水基および非イオン性親水基が含まれる。微粉粒子には、粘土および炭素を含む任意の微粉砕された非可溶化粒子が含まれる。天然に存在する物質には、アルギナート、セルロース誘導体、水溶性ゴム、脂質およびステロール、リン脂質、脂肪酸、アルコール、タンパク質、アミノ酸、ならびに界面活性剤が含まれる。また、本発明の組成物は、親水性コロイドを含んでもよい。他の任意の成分には、多糖類のような増粘剤が含まれる。増粘剤は、組成物の粘度を増加させるために使用される成分である。このような態様において、付加的な機能的成分は、混合段階の進行中に添加される。
【0093】
1つの態様において、固体脂肪組成物はショートニングである。典型的には、ショートニングに添加されている水または水性成分は皆無もしくはそれに近く、ショートニングは高レベルの脂肪を含む。あるいは、固体脂肪組成物は、マーガリン、スプレッド、マヨネーズ、またはサラダドレッシングなどの製造物であってもよい。このような製造物は、脂肪および/または油を、水および/または乳製品、適切な食用タンパク質、塩、着香料および着色料、ならびにビタミンAおよびビタミンDなどの他の成分とブレンドすることによって調製される。マーガリンは典型的には、少なくとも80%の脂肪を含む。マヨネーズおよびサラダドレッシングは、それぞれ65%以上および30%以上の植物油、および乾燥全卵または乾燥卵黄を典型的に含む半固体脂肪性食品である。塩、砂糖、香辛料、調味料、酢、レモン果汁、および他の成分を加えて、これらの製造物を完成させる。
【0094】
したがって、本発明の組成物は、付加的な成分もさらに含んでよい。好ましい付加的な成分には、抗酸化剤、着香料、風味増強剤、甘味料、色素、ビタミン、ミネラル、プレバイオティック化合物、プロバイオティック化合物、治療用成分、薬用成分、機能性食品成分、加工成分(processing ingredient)、およびそれらの組合せが含まれる。
【0095】
特に好ましい態様において、付加的な成分は抗酸化剤である。抗酸化剤は当技術分野において公知であり、発酵もしくは脂質加工による微生物油の製造における任意の時点、または本発明の工程の進行中に添加してよい。抗酸化剤は、結果として生じる製造物を酸化劣化から保護するのに役立ち得る。適切な抗酸化剤は、当業者によって選択され得る。好ましい抗酸化剤には、パルミチン酸アスコルビル、トコフェロール、クエン酸、アスコルビン酸、第3ブチルヒドロキノン(TBHQ)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル(PG)、ローズマリー抽出物、レシチン、葉酸、ならびにそれらの混合物および塩が含まれる。当技術分野において通常である量の抗酸化剤が、製造物に含まれてよい。
【0096】
脂質を含む組成物の酸化状態および安定性は、当技術分野において公知のいくつかの方法で測定することができ、これらの技術の多くの説明は、American Oil Chemist's Societyならびに他の情報源から入手可能である。製造物の酸化安定性を定量する1つの方法は、熱分解に供した際に試料から発生する導電性化学種(揮発性の分解生成物)の量を測定するランシマット(Rancimat)値を測定することによる。好ましい態様において、本発明の組成物のランシマット値は、温度91.6℃で少なくとも約10時間、少なくとも約15時間、少なくとも約20時間、および少なくとも約25時間である。
【0097】
好ましい態様において、本発明の製造物(高品質PUFA含有油製造物および固体脂肪組成物を含む)は、酸化的分解を最小限にするための適切な条件下で保存される。例えば不活性ガス雰囲気による周囲空気の置換など、このような保存条件をもたらす多くの方法が当技術分野において公知であり、本発明と共に使用するのに適している。酸化的分解を減少させるか、または最小限にするための好ましい方法は、窒素(N2)雰囲気もしくはアルゴン雰囲気または窒素と二酸化炭素が混在した雰囲気下で製造物を保存することである。好ましくは、包装製造物は窒素下で包装される。製造物を含む容器中に窒素ガス雰囲気を作り出すための方法は、当技術分野において公知である。他の好ましい態様において、混合物が冷えつつある時に、混合物中に窒素を通気して酸化に対する追加保護を提供することにより、製造物の酸化的安定性および/または化学的安定性を増大させることもできる。
【0098】
別の好ましい態様において、本発明の製造物は、薬学的に許容される賦形剤および/または追加された薬学的に活性な作用物質(すなわち、治療的活性成分もしくは医薬的活性成分またはそれらの組合せ)を含んでよい。この態様は、低い水溶性を有する薬学的に活性な作用物質にとって特に有利である。このような薬学的製造物は、LC-PUFAのような有益な栄養素と共に、治療的に活性な成分を提供するという利点を有する。薬学的に許容される賦形剤の例には、水、リン酸緩衝化生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、血清含有溶液、ハンクス液、他の水性の生理学的平衡液、油、エステル、およびグリコールが含まれるが、それらに限定されるわけではない。本発明の薬学的に活性な作用物質には、非限定的に、スタチン、血圧降下剤、抗糖尿病剤、抗認知症剤、抗うつ剤、抗肥満剤、食欲抑制剤、ならびに記憶力および/または認知機能を増強するための作用物質が含まれる。別の好ましい態様において、本発明の製造物は、機能性食品成分、食品添加物、または他の成分などの食品成分を含んでよい。
【0099】
本発明の製造品は、食料製造物、栄養学的製造物、もしくは薬学的製造物として単独で使用されてよく、または、食料製造物、栄養学的製造物、もしくは薬学的製造物に混和もしくは添加されてもよい。第1の態様において、本発明の製造物は、本発明の油製造物および食品成分を含む食料製造物である。製造物は、油および/もしくはショートニングおよび/もしくはスプレッド、ならびに/または飲料、ソース、乳製品食品(ミルク、ヨーグルト、チーズ、およびアイスクリームなど)および焼いた食品中の他の脂肪成分などの食品成分として直接使用してよく;あるいは、栄養学的製造物として、例えば、栄養補助剤(カプセル型または錠剤型);ヒトがその肉もしくは製造物を消費する任意の動物のための飼料もしくは飼料補助剤;非限定的にイヌ、ネコ、およびウマを含む任意の伴侶動物用の飼料もしくは飼料補助剤;ベビーフードおよび調製粉乳を含む食品補助剤として使用してもよい。「動物」という用語は動物界に属する任意の生物を意味し、非限定的に、鶏肉、食肉、海産物、牛肉、豚肉、または子羊肉が由来する任意の動物を含む。海産物は、非限定的に、魚、エビ、および貝に由来する。「製造物」という用語には、非限定的に卵、乳、または他の製造物を含む、このような動物に由来する食肉以外の任意の製造物が含まれる。このような動物に給餌する場合、LC-PUFAのような栄養素をこのような動物の肉、乳、卵、または他の製造物中に混合して、これらの栄養素の含有量を増加させることができる。さらに、このような動物に給餌した場合、LC-PUFAのような栄養素は動物の全般的健康を改善し得る。
【0100】
本発明の組成物は、焼いた食品、ビタミン補助剤、食事補助剤、粉末飲料などの広範囲の製造物に、様々な製造段階で添加することができる。本発明の組成物を用いて、多数の完成した粉末状食料製造物または半ば完成した粉末状食料製造物を製造することができる。
【0101】
本発明の製造物を含む食料製造物の一部分のリストには、パン生地;衣用生地;例えば、ケーキ、チーズケーキ、小型の円いパン、トルティーヤ、パイ、カップケーキ、クッキー、バー、パン、ロールパン、ビスケット、マフィン、ペストリー、スコーン、およびクルトンなどの品目を含む焼いた食品品目;液体食料製造物、例えば飲料、栄養ドリンク、調製粉乳、液状の食事、フルーツジュース、マルチビタミンシロップ、食事代用品、薬用食品、およびシロップ;半固体食料製造物、例えば、ベビーフード、ヨーグルト、チーズ、シリアル、パンケーキミックス;エネルギーバーを含む食品バー;加工肉;アイスクリーム;冷菓;フローズンヨーグルト;ワッフルミックス;サラダドレッシング;ならびに代用卵ミックスが含まれる。また、焼いた食品、例えば、クッキー、クラッカー、甘い食品、スナックケーキ、パイ、グラノーラ/スナックバー、およびトースターペストリー;塩味のスナック、例えば、ポテトチップ、コーンチップ、トルティーヤチップ、押出しスナック、ポップコーン、プレッツェル、ポテトクリスプ、およびナッツ;特製スナック、例えば、ディップ、ドライフルーツスナック、食肉スナック、ポークラインズ、健康食品バー、および餅/コーンケーキ;ならびに菓子スナック、例えば、キャンディーならびにクッキーおよびケーキの中身も含まれる。
【0102】
本発明の別の製造物態様は医療用食品である。医療用食品には、医師の監督のもとで外部から摂取または投与される製剤中に存在し、かつ、認められた科学原則に基づいて、それに対する特有の栄養必要量が医学的評価によって確立されている疾患または病態の特定の食事管理用に意図されている食品が含まれる。
【0103】
本発明は、特定の方法、製造物、および生物に関して開示されるが、当業者には利用可能であると考えられるすべてのこのような代用、修正、および最適化を含む、本明細書において開示される教示に従って獲得でき、かつ有用であるようなすべての方法、製造物、および生物を含むと意図される。脂肪酸および他の成分の供給源および量または範囲が本明細書において使用される場合、その中のすべての組合せおよび下位の組合せならびに個々の態様が含まれると意図される。以下の実施例および試験結果は例示のために提供され、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0104】
実施例
実施例1:高品質粗製油の調製
DHA油の豊富なシゾキトリウム微生物を発酵槽内で増殖させて、発酵ブロスを得た。発酵ブロスを回収し、シゾキトリウム細胞を溶解するプロテアーゼであるAlcalase(登録商標)2.4と接触させた。結果として生じる溶解細胞混合物は、乳濁液であり、これを27%イソプロパノール水溶液と接触させた。この混合物を撹拌によって混合し、次いで遠心分離に供して、二相を有する実質的に乳化されていない生成物を得た。重液相は消費された発酵ブロスの成分を含み、軽液相はいくらかのイソプロパノールおよび水と共にDHAの豊富な油を含んでいた。軽液相を乾燥させて、高品質粗製油を得た。
【0105】
実施例2:藻類油の最小限の加工
本実施例は、本発明による最小限の加工を施した油の製造について例示する。
【0106】
最小限の加工を施した油を大規模に製造した。シゾキトリウム微生物から実施例1で説明したようにして製造した、DHA含有高品質粗製油200kgを、窒素下で65℃〜70℃まで加熱した。次いで、約0.2%(油に対するw/w)の50%クエン酸溶液を油に添加し、窒素下で30〜45分間混合した。続いて、油中に存在する任意の不純物を除去するために、0.2〜0.5%(油に対するw/w)の濾過助剤を油に添加し、濾過した。次いで、180kg/時間の供給速度で、210℃で油を脱臭した。次いで、脱臭した油にトコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、およびローズマリー抽出物を追加した。各工程段階における油の特徴を表1に示す。「PV」という用語は過酸化物価を意味し;「FFA」という用語は遊離脂肪酸を意味し;「p-AV」という用語はp-アニシジン価を意味する。この工程の回収率は98%を超えた。
【0107】
(表1)

【0108】
実施例3a:物理的精製
本実施例は、本発明による最小限の加工を施した油の製造について例示する。
【0109】
高品質粗製油(実施例1で説明したようにして製造;FFA<0.3%、リン<10ppm、PV<2meq/kg)約600kgを、窒素および/または真空下で50〜55℃まで加熱した。約0.2%(w/w)の50%クエン酸を添加し、窒素および/または真空下で、50〜55℃で15分間、油を保持した。トリシル(Trisyl) 600(0.1%〜3%(w/w)、通常は0.25%)を添加し、窒素および/または真空下で、温度を50〜55℃の間で15分間維持した。Tonsil Supreme FF漂白用粘土(0.1%〜4%(w/w)、通常は0.5%未満)を添加し、油を90〜95℃まで加熱し、真空(>24インチHg(''Hg))下で30分間保持した。次いで、セライト(0.1〜0.5%(w/w)、通常は0.2%)を添加し、Sparklerフィルターに通して油を濾過した。次いで、210〜225℃および流速180〜225kg/hrで油を脱臭した。脱臭後、抗酸化剤を添加した。この工程により、室温で半固体である油が得られた。
【0110】
この工程による油の収率は約92〜97%の範囲であった。抗酸化剤を用いたこれらの実行に関する品質データを表2に示す。
【0111】
(表2)

【0112】
脱臭した油のFFAは、抗酸化剤添加の前および後に測定した。抗酸化剤を添加した後に、FFAの有意な増加(約2倍)が観察された。
【0113】
実施例3b:物理的精製(透明油)
本実施例は、本発明による最小限の加工を施した液体油および関連する固体脂肪製造物の製造について例示する。
【0114】
高品質粗製油(実施例1で説明したようにして製造;FFA<0.3%、リン<12ppm、PV<2meq/kg)約1200kgを、窒素および/または真空下で50〜55℃まで加熱した。約0.2%(w/w)の50重量%クエン酸を添加し、窒素および/または真空下で、50〜55℃で15分間、油を保持した。次いで、窒素および/または真空下で、様々な保持時間(0〜12時間)および撹拌機速度(4〜16rpm)を用いて、油を約55℃〜約35℃まで冷却した。この時点でセライト(0.1〜0.5%(w/w)、通常は0.2%)を添加し、Sparklerフィルターに通して油を濾過した。油を窒素および/または真空下で加熱し、様々な保持時間(0〜12時間)および撹拌機速度(4〜16rpm)を用いて約50℃〜約30℃まで冷却して、冷却濾過段階を繰り返した。セライト(0.1〜0.5%(w/w)、通常は0.2%)を再び添加し、Sparklerフィルターに通して油を濾過した。次に、トリシル 600(0.1%〜3%(w/w)、通常は0.25%)を添加し、窒素および/または真空下で、温度を50〜55℃の間で15分間維持した。Tonsil Supreme FF漂白用粘土(0.1%〜4%(w/w)、通常は0.5%未満)を添加し、油を90〜95℃まで加熱し、真空(>24インチHg)下で30分間保持した。セライト(0.1〜0.5%(w/w)、通常は0.2%)を添加し、Sparklerフィルターに通して油を濾過した。次いで、窒素および/または真空下で、様々な保持時間(0〜12時間)および撹拌機速度(4〜16rpm)を用いて、油を約40℃〜約20℃まで再度冷却した。セライト(0.1〜0.5%(w/w)、通常は0.2%)を添加し、Sparklerフィルターに通して油を濾過した。次いで、210〜225℃および流速180〜225kg/hrで油を脱臭した。脱臭後、抗酸化剤を添加した。これにより、室温で透明である油が得られる。この工程による油の収率は約55〜60%の範囲である。抗酸化剤を用いたこれらの実行に関する品質データを表3に示す。
【0115】
(表3)

【0116】
フィルターに残留した物質は、例えば加熱および濾過によって処理して、漂白用粘土からその固体物質を分離することができる。フィルターに残留した物質を加熱すると、固体が融解すると考えられる。次いで、融解した固体を例えば濾過によって粘土から分離させ、次いで、冷却によってこれを再凝固させることができる。回収された固体は、大部分がDHAであるPUFAを約20〜30%含む。透明油および固体は、例えば食品または食品添加物として使用され得る。
【0117】
実施例3c:物理的精製/シリカ精製
本実施例は、本発明による最小限の加工を施した油の製造について例示する。
【0118】
高品質粗製油(実施例1で説明したようにして製造;FFA<0.8%、リン<10ppm、PV<2meq/kg)約100gを、窒素下で50〜55℃まで加熱した。約0.2%(w/w)の50重量%クエン酸を添加し、窒素および/または真空下で、50〜55℃で15分間、油を保持した。続いて、0.5%〜1.25%(w/w)のシリカ(Brightsorb F100)を添加し、油を真空下で85℃まで加熱した。30分間の保持時間の経過後、Tonsil Supreme FF漂白用粘土(0.5%(w/w))を添加し、油を90〜95℃まで加熱し、真空(>24インチHg)下で30分間保持した。次いでセライト(0.1〜0.5%(w/w)、通常は0.2%)を添加し、60〜65℃まで冷却した後にブフナー漏斗を用いて油を真空濾過した。これらの試験の収率は95〜96%の間であった。これらの試験の品質結果を表4に示す。最終製造物は半固体油であった。この製造物はまた、脱臭および/または漂白されてもよく、半固体油のままであると考えられる。
【0119】
(表4)

【0120】
実施例3d:改良した、苛性物質による精製
本実施例は、本発明による最小限の加工を施した油の製造について例示する。
【0121】
高品質粗製油(実施例1で説明したようにして製造;FFAは最大0.8%まで、リン<12ppm、PV<2meq/kg)約600kgを、窒素および/または真空下で50〜55℃まで加熱した。約0.2%(w/w)の50重量%クエン酸を添加し、窒素および/または真空下で、50〜55℃で15分間、油を保持した。この時点で、0.1%〜0.5%(w/w)の50%苛性物質(caustic)を油に添加し、60〜65℃で15〜30分間保持した(これは、標準使用量の約2分の1〜10分の1の苛性である)。次いで、油を遠心分離して、油からセッケンを除去した。トリシル 600(0.1%〜3%(w/w)、通常は0.25%)を添加し、窒素および/または真空下で、温度を50〜55℃の間で15分間維持した。Tonsil Supreme FF漂白粘土(0.1%〜4%(w/w)、通常は0.5%またはそれ以下)を添加し、油を90〜95℃まで加熱し、真空(>24インチHg)下で30分間保持した。セライト(0.1〜0.5%(w/w)、通常は0.2%)を添加し、Sparklerフィルターに通して油を濾過した。次いで、210〜225℃および流速180〜225kg/hrで油を脱臭した。脱臭後、抗酸化剤を添加した。この工程により、半固体の液体が得られた。
【0122】
この工程による油の収率は約81〜91%の範囲である。抗酸化剤を用いたこれらの実行に関する品質データを表5に示す。
【0123】
(表5)

【0124】
実施例3e:改良した、苛性物質による精製/遠心分離無し
本実施例は、本発明による最小限の加工を施した油の製造について例示する。
【0125】
高品質粗製油(実施例1で説明したようにして製造;FFA<0.3%、リン<10ppm、PV<2meq/kg)約100gを、窒素および/または真空下で50〜55℃まで加熱した。約0.2%(w/w)の50重量%クエン酸を添加し、窒素および/または真空下で、50〜55℃で15分間、油を保持した。この時点で、0.4%(w/w)の50%苛性溶液を油に添加し、60〜65℃で15〜30分間保持した(これは、標準使用量の約2分の1〜10分の1の苛性溶液である)。次いで、トリシル 600(1.5%(w/w))を添加し、窒素および/または真空下で、温度を50〜55℃の間で15分間維持した。セライト(0.2%(w/w))を油に添加し、ブフナー漏斗を用いてこれを真空濾過した。濾過した油にTonsil Supreme FF漂白用粘土(1.0%(w/w))を添加し、これを90〜95℃まで加熱し、真空(>24インチHg)下で30分間保持した。セライト(0.2%(w/w))を添加し、ブフナー漏斗を用いて油を真空濾過した。この試験の品質結果を表6に示す。最終製造物は半固体油であった。この製造物はまた、脱臭および/または漂白されてもよく、半固体油のままであると考えられる。
【0126】
(表6)

【0127】
実施例4:粗製藻類油の乾燥分画
本実施例は、本発明による、シゾキトリウム微生物によって産生されたDHA含有粗製藻類油のオレイン画分とステアリン画分への乾燥分画を例示する。
【0128】
液体オレイン画分および固体ステアリン画分を作製するために、本発明による乾燥分画工程に粗製油350kgを供した。容器中で撹拌しながら60〜70℃まで粗製藻類油を加熱することにより、その中に含まれる結晶相すべてが確実に融解するようにした。次いで、撹拌機の速度を毎分40回転まで上げて、予冷段階の間に材料を20〜30℃まで急速に冷却した。この段階に出来る限り高い熱伝達係数を得るために、冷却液、本実施例では水を使用した。冷却液の温度は、核形成温度を大きく下回らないようにした。
【0129】
後続の核形成段階を撹拌容器内で行い、撹拌機速度を毎分20回転まで下げることによって開始した。冷却液と油の温度差を調節することにより、初期の油温度20〜30℃から結晶化温度である約12〜14℃まで、油をさらに冷却した。結晶化温度に達したら、撹拌機速度を毎分15回転まで下げた。残存する油の所望の曇り点に達し、結晶間にオレイン画分が存在する状態となった直後に懸濁液を濾過装置に移すことによって、結晶化を終結させた。オレイン画分の曇り点をモニターするために、結晶化段階の間に懸濁試料の試験濾過を実施した。
【0130】
結晶懸濁液を濾過装置に移した後、濾布を通して液相を押し出した。フィルターチャンバーの体積の機械的減少によって生じさせ、かつゆっくりと増加させた、ゆっくりと増加する圧縮圧力をフィルターチャンバーに課した。最終的な濾過圧力は10バールに達した。濾過後、分離された画分を計量した。オレイン収量は、濾液の重量である。ステアリン収量は、フィルター上に残存した結晶塊の重量である。測定したオレイン画分およびステアリン画分の収率を表7に示す。供給材料、オレイン画分、およびステアリン画分の組成を表8に示す。
【0131】
(表7)

【0132】
(表8)

【0133】
本明細書において説明し上記の実施例において例示した最小限の加工方法のいずれかによって、または当技術分野において公知である任意の方法によって、オレイン(液体)画分およびステアリン(固体または半固体)画分をさらに加工して、脱臭した油を製造してもよい。
【0134】
実施例5:
以下の実施例は、粗製半固体油およびDHA-ステアリン(質量比1:1)から固体脂肪製造物を形成させるための工程を示す。
【0135】
シゾキトリウム微生物によって産生され脱ろう工程の副産物であるDHA含有の粗製DHA-ステアリン約1kgを真空濾過して、脱ろう工程で導入された濾過助剤を除去した。次いで、濾過したDHA-ステアリン約400gをシゾキトリウム微生物によって産生されたDHA含有半固体粗製油400gと混合した。次いで、この油混合物を窒素下で50〜55℃まで加熱した。約0.2%(w/w)の50重量%クエン酸を添加し、窒素下で、50〜55℃で15分間、この油混合物を保持した。15分後、油混合物を60〜65℃まで加熱した。この時点で、0.45%(油に対するw/w)の苛性溶液(50%苛性溶液および軟水、w/w比1:3)をこの油混合物に添加し、60〜65℃で15分間保持した。60〜65℃で15分間経過後、この油混合物を80℃まで加熱し、次いで遠心分離して、油混合物からセッケンを除去した。次に、トリシル 600(0.25%(w/w))を添加し、窒素および/または真空下で、温度を50〜55℃の間で15分間維持した。続いて、Tonsil Supreme FF漂白用粘土(0.5%(w/w))を添加し、油を90〜95℃まで加熱し、真空(>24インチHg)下で30分間保持した。次いで、Celpure(0.1%w/w)を添加し、真空下で油を濾過した。次いで、油を210℃で30分間、脱臭した。脱臭後、抗酸化剤を添加した。これにより、室温で固体である均質な製造物が得られる。30〜40℃まで冷却した後、結果として生じる結晶化した脂肪を容器に移し、保存した。最終製造物の品質の特徴は以下のとおりである。
【0136】
(表9)実施例5の最終製造物の物理的特性および化学的特性

【0137】
実施例6:
9名の訓練されたパネリストが、0〜15のスケール(0は検出されない強度であり、15は非常に高い強度である)を用いた記述的な感覚的分析方法を用いて、実施例5で製造した最終製造物の感覚的評価を実施した。製造物は、全般的に芳香が弱く(low intensity)、青野菜(green)/豆に(beany)似た匂い(note)および草の匂いが弱かった。この製造物の芳香物質(aromatics)は、全般的に低中度の強度であり、草の匂いが優勢で、青野菜/豆に似た匂いは弱かった。草の後味も同様に注目された。芳香および芳香物質において、魚臭い匂いも絵の具の匂いも検出されなかった。全般的に、芳香および芳香物質ならびに強度の両方とも、許容範囲内である。結果を下記の表10に示す。
【0138】
(表10)実施例5の最終製造物の感覚的スコア

【0139】
実施例7:
以下の実施例は、粗製半固体油および粗製パーム核ステアリン(質量比1:1)から固体脂肪製造物を形成させるための工程を示す。
【0140】
シゾキトリウム微生物によって産生されたDHA含有半固体粗製油約125gを、粗製パーム核ステアリン(PKS)125gと混合した。次いで、この油混合物を窒素下で70℃まで加熱した。約0.1%(w/w)の50重量%クエン酸を添加し、窒素下で、70℃で10分間、この油を保持した。10分後、0.6%(油に対するw/w)の苛性溶液(50%苛性溶液および軟水、w/w比1:3)をこの油に添加し、70℃で5分間保持した。70℃で5分間保持した後、油を遠心分離して、油からセッケンを除去した。次に、トリシル 600(0.1%(w/w))を添加し、窒素および/または真空下で、温度を50〜55℃の間で10分間維持した。続いて、Tonsil Supreme FF漂白用粘土(0.1%(w/w))を添加し、油を90℃まで加熱し、真空(>24インチHg)下で15分間保持した。次いで、Celpure(0.1%(w/w))を添加し、真空下で油を濾過した。次いで、油を210℃で30分間、3%噴霧蒸気(sparge steam)によって脱臭した。脱臭後、抗酸化剤を添加した。これにより、室温で固体である均質な製造物が得られる。30〜40℃まで冷却した後、結果として生じる結晶化した脂肪を次いで容器に移し、保存した。最終製造物の品質特徴および物理的特性を表11に示す。
【0141】
(表11)実施例7の最終製造物の物理的特性および化学的特性

【0142】
実施例8:
以下の実施例は、粗製半固体油および粗製パーム核ステアリン(質量比3:1)から固体脂肪製造物を形成させるための工程を示す。
【0143】
シゾキトリウム微生物によって産生されたDHA含有半固体粗製油約500gを、粗製パーム核ステアリン(PKS)166.6gと混合した。次いで、この油混合物を窒素下で70℃まで加熱した。約0.1%(w/w)の50重量%クエン酸を添加し、窒素下で、70℃で10分間、この油を保持した。10分後、0.6%(油に対するw/w)の苛性溶液(50%苛性溶液および軟水、w/w比1:3)をこの油に添加し、70℃で5分間保持した。70℃で5分間保持した後、油を遠心分離して、油からセッケンを除去した。次に、トリシル 600(0.1%(w/w))を添加し、窒素および/または真空下で、温度を50〜55℃の間で10分間維持した。続いて、Tonsil Supreme FF漂白用粘土(0.1%(w/w))を添加し、油を90℃まで加熱し、真空(>24インチHg)下で15分間保持した。次いで、Celpure(0.1%(w/w))を添加し、真空下で油を濾過した。次いで、油を210℃で30分間、3%噴霧蒸気によって脱臭した。脱臭後、抗酸化剤を添加した。これにより、室温で固体である均質な製造物が得られる。30〜40℃まで冷却した後、結果として生じる結晶化した脂肪を容器に移し、保存した。最終製造物の品質特徴および物理的特性を表12に示す。
【0144】
(表12)実施例8の最終製造物の物理的特性および化学的特性

【0145】
実施例9:
以下の実施例は、粗製半固体油および粗製パーム核ステアリン(質量比6:1)から固体脂肪製造物を形成させるための工程を示す。
【0146】
シゾキトリウム微生物によって産生されたDHA含有半固体粗製油約150gを、粗製パーム核ステアリン(PKS)25gと混合した。次いで、この油混合物を窒素下で70℃まで加熱した。約0.1%(w/w)の50重量%クエン酸を添加し、窒素下で、70℃で10分間、この油を保持した。10分後、0.6%(油に対するw/w)の苛性溶液(50%苛性溶液および軟水、w/w比1:3)をこの油に添加し、70℃で5分間保持した。70℃で5分間保持した後、油を遠心分離して、油からセッケンを除去した。次に、トリシル 600(0.1%(w/w))を添加し、窒素および/または真空下で、温度を50〜55℃の間で10分間維持した。続いて、Tonsil Supreme FF漂白用粘土(0.1%(w/w))を添加し、油を90℃まで加熱し、真空(>24インチHg)下で15分間保持した。次いで、Celpure(0.1%(w/w))を添加し、真空下で油を濾過した。次いで、油を210℃で30分間、3%噴霧蒸気によって脱臭した。脱臭後、抗酸化剤を添加した。これにより、室温で固体である均質な製造物が得られる。30〜40℃まで冷却した後、結果として生じる結晶化した脂肪を次いで容器に移し、保存した。最終製造物の品質特徴および物理的特性を表13に示す。
【0147】
(表13)実施例9の最終製造物の物理的特性および化学的特性

【0148】
実施例10:
以下の実施例は、粗製半固体油および粗製パームステアリン(質量比1:1)から固体脂肪製造物を形成させるための工程を示す。
【0149】
シゾキトリウム微生物によって産生されたDHA含有半固体粗製油約250gを、粗製パームステアリン(PS)250gと混合した。次いで、この油混合物を窒素下で70℃まで加熱した。約0.1%(w/w)の50重量%クエン酸を添加し、窒素下で、70℃で10分間、この油を保持した。10分後、0.6%(油に対するw/w)の苛性溶液(50%苛性溶液および軟水、w/w比1:3)をこの油に添加し、70℃で5分間保持した。70℃で5分間保持した後、油を遠心分離して、油からセッケンを除去した。次に、トリシル 600(0.1%(w/w))を添加し、窒素および/または真空下で、温度を50〜55℃の間で10分間維持した。続いて、Tonsil Supreme FF漂白用粘土(0.5%(w/w))を添加し、油を90℃まで加熱し、真空(>24インチHg)下で15分間保持した。次いで、Celpure(0.1%(w/w))を添加し、真空下で油を濾過した。次いで、油を210℃で30分間、3%噴霧蒸気によって脱臭した。脱臭後、抗酸化剤を添加した。これにより、室温で固体である均質な製造物が得られる。30〜40℃まで冷却した後、結果として生じる結晶化した脂肪を容器に移し、保存した。最終製造物の品質特徴および物理的特性を表14に示す。
【0150】
(表14)実施例10の最終製造物の物理的特性および化学的特性

【0151】
実施例11:
以下の実施例は、粗製半固体油および粗製パームステアリン(質量比6:1)から固体脂肪製造物を形成させるための工程を示す。
【0152】
シゾキトリウム微生物によって産生されたDHA含有半固体粗製油約900gを、粗製パームステアリン(PS)150gと混合した。次いで、この油混合物を窒素下で70℃まで加熱した。約0.1%(w/w)の50重量%クエン酸を添加し、窒素下で、70℃で10分間、この油を保持した。10分後、0.6%(油に対するw/w)の苛性溶液(50%苛性溶液および軟水、w/w比1:3)をこの油に添加し、70℃で5分間保持した。70℃で5分間保持した後、油を遠心分離して、油からセッケンを除去した。次に、トリシル 600(0.1%(w/w))を添加し、窒素および/または真空下で、温度を50〜55℃の間で10分間維持した。続いて、Tonsil Supreme FF漂白用粘土(0.5%(w/w))を添加し、油を90℃まで加熱し、真空(>24インチHg)下で15分間保持した。次いで、Celpure(0.1%w/w)を添加し、真空下で油を濾過した。次いで、油を210℃で30分間、3%噴霧蒸気によって脱臭した。脱臭後、抗酸化剤を添加した。これにより、室温で固体である均質な製造物が得られる。30〜40℃まで冷却した後、結果として生じる結晶化した脂肪を容器に移し、保存した。最終製造物の品質特徴および物理的特性を表15に示す。
【0153】
(表15)実施例11の最終製造物の物理的特性および化学的特性

【0154】
実施例12:
以下の実施例は、粗製半固体油およびエステル交換されたパーム油ブレンド(質量比1:1)から固体脂肪製造物を形成させるための工程を示す。
【0155】
シゾキトリウム微生物によって産生されたDHA含有半固体粗製油約500gを、AarhusKarlshamn USA Inc. (Port Newark, N.J.)から入手したエステル交換されたパーム油ブレンド(Cisao81-36;パーム油およびパーム核油に由来するエステル交換された製品)500gと混合した。次いで、この油混合物を窒素下で70℃まで加熱した。約0.1%(w/w)の50重量%クエン酸を添加し、窒素下で、70℃で10分間、この油を保持した。10分後、0.6%(油に対するw/w)の苛性溶液(50%苛性溶液および軟水、w/w比1:3)をこの油に添加し、70℃で5分間保持した。70℃で5分間保持した後、油を遠心分離して、油からセッケンを除去した。次に、トリシル 600(0.1%(w/w))を添加し、窒素および/または真空下で、温度を50〜55℃の間で10分間維持した。続いて、Tonsil Supreme FF漂白用粘土(0.5%(w/w))を添加し、油を90℃まで加熱し、真空(>24インチHg)下で15分間保持した。次いで、Celpure(0.1%(w/w))を添加し、真空下で油を濾過した。次いで、油を210℃で30分間、3%噴霧蒸気によって脱臭した。脱臭後、抗酸化剤を添加した。これにより、室温で固体である均質な製造物が得られる。30〜40℃まで冷却した後、結果として生じる結晶化した脂肪を容器に移し、保存した。最終製造物の品質特徴および物理的特性を表16に示す。
【0156】
(表16)実施例12の最終製造物の物理的特性および化学的特性

【0157】
実施例13:
以下の実施例は、粗製半固体油とDHA-ステアリン(質量比1:1)のエステル交換を介して固体脂肪製造物を形成させるための工程を示す。
【0158】
シゾキトリウム微生物によって産生され脱ろう工程の副産物であるDHA含有の粗製DHA-ステアリン約300gを真空濾過して、脱ろう工程で導入された濾過助剤を除去した。シゾキトリウム微生物によって産生されDHA含有の半固体粗製油約300gを0.2%(油に対するw/w)Celpure濾過助剤と混合し、真空濾過して、油から水分を取り除いた。次いで、濾過したDHA-ステアリン約225gを、シゾキトリウム微生物によって産生され濾過したDHA含有の半固体粗製油225gと混合した。次いで、この油混合物を真空下で90℃まで加熱し、高真空下で30分間保持した。30分後、油混合物を80℃まで冷却した。この時点で、1.5%(油に対するw/w)のナトリウムエトキシド溶液(変性エタノール中21重量%溶液;6.75g)を油に添加し、窒素下、80℃で30分間保持した。次に、80℃まで予熱しておいた3%(w/w)の水を添加し、5分間混合した。次いで、油混合物を遠心分離して、油からセッケンを除去した。次に、トリシル 600(0.5%(w/w))を添加し、窒素下で、温度を50〜55℃の間で15分間維持した。続いて、Tonsil Supreme FF漂白用粘土(1.5%(w/w))を添加し、油を90℃まで加熱し、真空(>24インチHg)下で15分間保持した。次いで、Celpure(0.1%(w/w))を添加し、真空下で油を濾過した。次いで、油を210℃で30分間、脱臭した。脱臭後、抗酸化剤を添加した。これにより、室温で固体である均質な製造物が得られる。30〜40℃まで冷却した後、結果として生じる結晶化した脂肪を容器に移し、保存した。最終製造物の品質特徴および物理的特性を表17に示す。
【0159】
(表17)実施例13の最終製造物の物理的特性および化学的特性

【0160】
実施例14:
以下の実施例は、油ブレンドのエステル交換を介して固体脂肪製造物を形成させるための工程を示す。
【0161】
シゾキトリウム微生物によって産生されDHAを含有する脱臭済み半固体油約180gおよび脱臭済み液体油24gを、脱臭済みパーム油48gおよび脱臭済みパームステアリン48gと混合した。次いで、この油混合物を真空下で90〜110℃まで加熱し、高真空下で30〜120分間保持した。30〜120分後、油混合物を80〜100℃まで冷却した。この時点で、1.0〜1.5%(油に対するw/w)のナトリウムエトキシド溶液(変性エタノール中21重量%溶液)を油に添加し、窒素下、80〜100℃で30分間保持した。次に、80〜100℃まで予熱しておいた3%(w/w)の水を添加し、5〜10分間混合した。次いで、油混合物を遠心分離して、油からセッケンを除去した。次に、トリシル 600(0.5%(w/w))を添加し、窒素下で、温度を50〜55℃の間で15分間維持した。続いて、Tonsil Supreme FF漂白用粘土(1.5%(w/w))を添加し、油を90℃まで加熱し、真空(>24インチHg)下で15〜30分間保持した。次いで、Celpure(0.1%(w/w))を添加し、真空下で油を濾過した。次いで、油を210℃で30分間、脱臭した。脱臭後、抗酸化剤を添加した。これにより、室温で固体である均質な製造物が得られる。30〜35℃まで冷却した後、結果として生じる結晶化した脂肪を容器に移し、保存した。最終製造物の品質特徴および物理的特性を表18に示す。
【0162】
(表18)実施例14の最終製造物の物理的特性および化学的特性

【0163】
実施例15:
以下の実施例は、脱臭済み半固体油と脱臭済みパームステアリン(質量比4:1)を物理的にブレンドすることによって固体脂肪製造物を形成させるための工程を示す。
【0164】
シゾキトリウム微生物によって産生された脱臭済みDHA含有の半固体油約160gを、脱臭済みパームステアリン40gと混合した。次いで、この油混合物を65℃まで加熱し、15分間撹拌した。15分後、油混合物を30〜35℃まで冷却した。これにより、室温で固体である均質な製造物が得られる。30〜35℃まで冷却した後、結果として生じる結晶化した脂肪を容器に移し、保存した。最終生成物の品質特徴および物理的特性を表19に示す。
【0165】
(表19)実施例15の最終製造物の物理的特性および化学的特性

【0166】
実施例16:
以下の実施例は、脱臭済み半固体油と脱臭済みパームステアリン(質量比5:1)を物理的にブレンドすることによって固体脂肪製造物を形成させるための工程を示す。
【0167】
シゾキトリウム微生物によって産生され脱臭済みDHA含有の半固体油約250gを、脱臭済みパームステアリン50gと混合した。次いで、この油混合物を65℃まで加熱し、15分間撹拌した。15分後、油混合物を30〜35℃まで冷却した。これにより、室温で固体である均質な製造物が得られる。30〜35℃まで冷却した後、結果として生じる結晶化した脂肪を容器に移し、保存した。最終製造物の品質特徴および物理的特性を表20に示す。
【0168】
(表20)実施例16の最終製造物の物理的特性および化学的特性

【0169】
実施例17:
以下の実施例は、脱臭済み半固体油と脱臭済みパーム核ステアリン(質量比5:1)を物理的にブレンドすることによって固体脂肪製造物を形成させるための工程を示す。
【0170】
シゾキトリウム微生物によって産生され脱臭済みDHA含有の半固体油約250gを脱臭済みパーム核ステアリン50gと混合した。次いで、この油混合物を60℃まで加熱し、15分間撹拌した。15分後、油混合物を30〜35℃まで冷却した。これにより、室温で固体である均質な製造物が得られる。30〜35℃まで冷却した後、結果として生じる結晶化した脂肪を容器に移し、保存した。最終製造物の品質特徴および物理的特性を表21に示す。
【0171】
(表21)実施例17の最終製造物の物理的特性および化学的特性

【0172】
実施例18:
以下の実施例は、脱臭済み半固体油と脱臭済みパーム核ステアリン(質量比9:1)を物理的にブレンドすることによって固体脂肪製造物を形成させるための工程を示す。
【0173】
シゾキトリウム微生物によって産生され脱臭済みDHA含有の半固体油約900gを脱臭済みパーム核ステアリン100gと混合した。次いで、この油混合物を60℃まで加熱し、15分間撹拌した。15分後、油混合物を30〜35℃まで冷却した。これにより、室温で固体である均質な製造物が得られる。30〜35℃まで冷却した後、結果として生じる結晶化した脂肪を容器に移し、保存した。最終製造物の品質特徴および物理的特性を表22に示す。
【0174】
(表22)実施例18の最終製造物の物理的特性および化学的特性

【0175】
実施例19:
以下の実施例は、脱臭済み半固体油と脱臭済みCisao 81-36(エステル交換されたパーム油ブレンド)を質量比9:1で物理的にブレンドすることによって固体脂肪製造物を形成させるための工程を示す。
【0176】
シゾキトリウム微生物によって産生され脱臭済みDHA含有の半固体油約900gを、脱臭済みCisao 81-36 100gと混合した。次いで、この油混合物を60℃まで加熱し、15分間撹拌した。15分後、油混合物を30〜35℃まで冷却した。これにより、室温で固体である均質な製造物が得られる。30〜35℃まで冷却した後、結果として生じる結晶化した脂肪を容器に移し、保存した。最終製造物の品質特徴および物理的特性を表23に示す。
【0177】
(表23)実施例19の最終製造物の物理的特性および化学的特性

【0178】
実施例20:
以下の実施例は、異なる油を物理的にブレンドすることによって固体脂肪製造物を形成させるための工程を示す。
【0179】
シゾキトリウム微生物によって産生されDHAを含有する脱臭済み半固体油約120gおよび脱臭済み液体油16gを、脱臭済みパーム油32gおよび脱臭済みパームステアリン32gと混合した。次いで、この油混合物を70℃まで加熱し、15分間撹拌した。15分後、油混合物を30〜35℃まで冷却した。これにより、室温で固体である均質な製造物が得られる。30〜35℃まで冷却した後、結果として生じる結晶化した脂肪を容器に移し、保存した。最終製造物の品質特徴および物理的特性を表24に示す。
【0180】
(表24)実施例21の最終製造物の物理的特性および化学的特性

【0181】
実施例21:
以下の実施例は、粗製魚油およびパーム油(質量比1:3)から固体脂肪製造物を形成させるためのベンチスケールの工程を示す。
【0182】
粗製メンヘーデン油約75gおよび粗製パーム油225gを混合した。次いで、この油混合物を窒素下で50〜55℃まで加熱した。約0.2%(油に対するw/w)の50重量%クエン酸を油に添加し、窒素下で、50〜55℃で15分間、この油を保持した。15分後、油混合物を65〜70℃まで加熱した。この時点で、5.0%(油に対するw/w)の苛性溶液(50%苛性溶液および軟水、w/w比1:3)を油に添加し、65〜70℃で15分間保持した。65〜70℃で15分間保持した後、油混合物を遠心分離して、油からセッケンを除去した。次に、トリシル 600(0.1%(w/w))を添加し、窒素下で、温度を50〜55℃の間で15分間維持した。続いて、Tonsil Supreme FF漂白用粘土(1.0%(w/w))を添加し、油を90℃まで加熱し、真空(>24インチHg)下で15分間保持した。次いで、Celpure(0.1%(w/w))を添加し、真空下で油を濾過した。次いで、油を210℃で30分間、脱臭した。脱臭後、抗酸化剤を添加した。これにより、室温で固体である均質な製造物が得られる。30〜35℃まで冷却した後、結果として生じる結晶化した脂肪を容器に移し、保存した。最終製造物の品質特徴および物理的特性を表25に示す。
【0183】
(表25)実施例21の最終製造物の物理的特性および化学的特性

【0184】
本発明の原理、好ましい態様、および実施形態を上記明細書において説明した。脂肪酸および他の成分の供給源および量または範囲が本明細書において使用される場合、その中のすべての組合せおよび下位の組合せならびに個々の態様が含まれると意図される。しかしながら、本明細書において保護されると意図される本発明は、開示される特定の形態は制限的ではなく例示的とみなされるべきであるため、これらに限定されると解釈されるべきではない。当業者は、本発明の精神から逸脱することなく、変化および変更を加えることができる。したがって、上記の発明を実施するための最良の形態は、本質的に例示的なものとみなされるべきであり、添付の特許請求の範囲において説明される本発明の範囲および精神を限定するものとみなされるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体脂肪組成物を製造する際に外因性乳化剤を添加しない、固体脂肪組成物を製造するための方法であって、
以下の段階を含む方法:
a)飽和脂肪を含む油を、少なくとも1種のLC-PUFAを含む油と混合して、混合物を形成させる段階;および
b)該混合物を凝固させて、該固体脂肪組成物を形成させる段階。
【請求項2】
前記の飽和脂肪を含む油が、微生物ステアリン、未分画パーム油、パームオレイン、パームステアリン、パーム中融点画分(mid fraction)、未分画パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、未分画綿実油、綿実オレイン、綿実ステアリン、ヤシ油、未分画シアバター油、シアバターステアリン、エステル交換されたパーム油ブレンド、エステル交換された綿実油ブレンド、魚油ステアリン、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記の少なくとも1種のLC-PUFAを含む油が脱ろう処理されていない、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記の少なくとも1種のLC-PUFAを含む油が飽和脂肪を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記の少なくとも1種のLC-PUFAを含む油が、ドコサヘキサエン酸、ω-3ドコサペンタエン酸またはω-6ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、およびエイコサペンタエン酸からなる群より選択される約5重量%〜約70重量%の間の少なくとも1種のLC-PUFAを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記の飽和脂肪を含む油および前記の少なくとも1種のLC-PUFAを含む油が、混合する段階の前に加熱されない、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記固体脂肪組成物が、食料製造物、栄養学的製造物、および薬学的製造物からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記の少なくとも1種のLC-PUFAを含む油と前記の飽和脂肪を含む油の比率が重量比で約1:9〜約9:1である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記混合物を脱臭する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記混合物をエステル交換する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記の少なくとも1種のLC-PUFAを含む油が、微生物供給源、植物供給源、および動物供給源からなる群より選択される供給源に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記の少なくとも1種のLC-PUFAを含む油が微生物供給源に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
混合物が室温で固体であり、かつ
該混合物が外因性乳化剤を含まない、
飽和脂肪を含む油と少なくとも1種のLC-PUFAを含む油とを含む混合物
を含む、固体脂肪組成物。
【請求項14】
前記の飽和脂肪を含む油が、微生物ステアリン、未分画パーム油、パームオレイン、パームステアリン、パーム中融点画分、未分画パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、未分画綿実油、綿実オレイン、綿実ステアリン、ヤシ油、未分画シアバター油、シアバターステアリン、エステル交換されたパーム油ブレンド、エステル交換された綿実油ブレンド、魚油ステアリン、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項13記載の固体脂肪組成物。
【請求項15】
前記の少なくとも1種のLC-PUFAを含む油が脱ろう処理されていない、請求項13記載の固体脂肪組成物。
【請求項16】
前記の少なくとも1種のLC-PUFAを含む油が飽和脂肪を含む、請求項13記載の固体脂肪組成物。
【請求項17】
前記の少なくとも1種のLC-PUFAを含む油が、ドコサヘキサエン酸、ω-3ドコサペンタエン酸またはω-6ドコサペンタエン酸、アラキドン酸、およびエイコサペンタエン酸からなる群より選択される約5重量%〜約70重量%の間の少なくとも1種のLC-PUFAを含む、請求項13記載の固体脂肪組成物。
【請求項18】
トランス脂肪酸を含まない、請求項13記載の固体脂肪組成物。
【請求項19】
前記の少なくとも1種のLC-PUFAを含む油と前記の飽和脂肪を含む油の比率が、重量比で約1:9〜約9:1である、請求項13記載の固体脂肪組成物。
【請求項20】
食料製造物、栄養学的製造物、および薬学的製造物からなる群より選択される、請求項13記載の固体脂肪組成物。
【請求項21】
前記の少なくとも1種のLC-PUFAを含む油が、微生物供給源、植物供給源、および動物供給源からなる群より選択される供給源に由来する、請求項13記載の固体脂肪組成物。
【請求項22】
前記の少なくとも1種のLC-PUFAを含む油が微生物供給源に由来する、請求項13記載の固体脂肪組成物。
【請求項23】
以下の段階を含む、固体脂肪組成物を製造するための方法:
a)少なくとも1種のLC-PUFAを含むステアリンを、飽和脂肪を含む第2の油と混合して、混合物を形成させる段階;および
b)該混合物を凝固させて、固体脂肪組成物を形成させる段階。
【請求項24】
前記固体脂肪組成物を製造する際に外因性乳化剤を添加しない、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記ステアリンが、微生物ステアリン、魚油ステアリン、パームステアリン、パーム核ステアリン、綿実ステアリン、シアバターステアリン、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記の飽和脂肪を含む第2の油が、未分画パーム油、パームオレイン、未分画パーム核油、パーム核オレイン、パーム中融点画分、ヤシ油、未分画シアバター油、未分画綿実油、綿実オレイン、エステル交換されたパーム油ブレンド、エステル交換された綿実油ブレンド、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項23記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1種のLC-PUFAを含むステアリン組成物と飽和脂肪を含む第2の油との混合物を含み、
室温で固体である、
固体脂肪組成物。
【請求項28】
前記ステアリンが、微生物ステアリン、魚油ステアリン、パームステアリン、パーム核ステアリン、綿実ステアリン、シアバターステアリン、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項27記載の固体脂肪組成物。
【請求項29】
前記の飽和脂肪を含む第2の油が、未分画パーム油、パームオレイン、未分画パーム核油、パーム核オレイン、パーム中融点画分、ヤシ油、未分画シアバター油、シアバターステアリン、未分画綿実油、綿実オレイン、エステル交換されたパーム油ブレンド、エステル交換された綿実油ブレンド、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項27記載の固体脂肪組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−538128(P2010−538128A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523155(P2010−523155)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/074790
【国際公開番号】WO2009/029793
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(508004410)マーテック バイオサイエンシーズ コーポレーション (26)
【Fターム(参考)】