説明

多値情報記録再生方法及び記録媒体

【課題】学習データの再生信号の低周波成分を抑圧して、安定したトラッキングサーボを実現することが可能な多値情報記録再生方法を提供する。
【解決手段】 符号間干渉の影響を検出するための学習の最小単位となる1セットのセル数をN、学習データ中でDSV(Digital Sum Value)を一定値とする長さを規定する自然数をkとする。このセル数Nと自然数kに対して、セル数2・N・kの単位を1ブロックとし、そのブロックが連続した構造を有すると共に、各ブロックにおいてDSVが一定値である学習データを、多値データに付加して記録媒体に記録する。多値データの再生時には学習データに基づき多値データのレベル判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多値情報を記録又は再生する多値情報記録再生方法及び記録媒体、特に、多値情報の検出に用いる学習データに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報量の増大に伴い、光ディスクの高記録密度化が求められている。この光ディスクの高記録密度化を行う方法としては、光ディスクの情報記録層における線記録密度を高めることやトラックの狭ピッチ化が挙げられる。これら高記録密度化に対応するための一方法として、光ディスクの情報記録層上に集光する光ビーム径を微小化することが挙げられる。
【0003】
光ビームのビーム径を微小化するには、光ディスクを記録再生する光ピックアップの集光光学系の対物レンズの開口数(NA:Numerical Aperture)を大きくすることや光ビームを短波長化することが挙げられる。
【0004】
高開口数の対物レンズを実現する手法としては、対物レンズに半球レンズを組み合わせて2枚のレンズ(2群レンズ)で対物レンズを構成する手法、或いは単レンズの高NA化がある。実用のドライブにも、従来のNA:0.6やNA:0.65の対物レンズから、NA:0.85へ高めた対物レンズが搭載されてきている。
【0005】
光ビームの短波長化に関しては、青紫色半導体レーザの実用化により光源として従来の赤色(波長650nm)半導体レーザから、青色(波長405nm)半導体レーザが採用出来るようになってきている。
【0006】
一方、光ビーム径の微小化によるアプローチとは異なる高密度化の方法として、従来の二値データによる記録ではなく、三値以上の多値データを記録する方法が考えられている。この方法を用いて、光ビーム径が同じ集光光学系の光ピックアップの下であっても、二値データ記録より多くのデータを記録する研究が進められている。
【0007】
この方法では、光記録媒体のトラック上に、仮想的に一定間隔のセルを設け、セル内の記録マークの面積を変えることにより多値情報を記録し、これら記録マークからの異なる再生反射光レベルの違いを検出し、再生を行う。
【0008】
ここで、仮想的に設けたセルの間隔が、光スポット径と同程度かそれよりも微小になると、記録マーク間の符号間干渉が無視出来なくなり、隣接マークの組み合わせに伴い各レベルに対する再生信号の値が分布を持つ。このような状況下では、固定した閾値では再生信号レベルを分離検出できない。
【0009】
そこで、このような場合においても記録された多値情報を正しく検出するため、特許文献1には以下の方法が開示されている。即ち、注目しているセルと、それに先行、後続するセルに、構成が既知である多値データパターンを記録する。次いで、この記録マークを再生し、前後セルの記録マークとの符号間干渉によるレベル変動の状況を記憶する学習動作を行う。そして、情報データ列からの再生信号と、記憶しておいた信号レベルを参照することによって、再生信号レベルを分離検出する。この注目セルに記録された記録マークと、注目セルの前後のセルに記録された記録マークとの符号間干渉の状況を検出するための、パターン構成が既知であるデータ列は学習データ列と呼ばれている。
【0010】
特許文献1には、注目セルに記録された記録マークへの符号間干渉に影響するのが、注目セルの前後のセルに記録された記録マークである系が述べられている。そして、データの多値度が8の場合が具体的に述べられており、学習に必要なパターンとして、8値データが3個連続する場合の全ての組み合わせ、000、001、…、776、777の8=512パターンが示されている。ここで、0、1、2、3、4、5、6、7の数値は、再生信号の8値レベルを対応させたデジタル値である。
【特許文献1】特開2003−45035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の従来技術には、学習データ列に関し、学習に必要なパターンについては言及されているが、具体的なデータ列の構成については開示されていない。ここで、例えば、データ多値度が8の場合、学習に必要なパターン、000、001、…、776、777を、この順序で実際に記録して学習を行うとすれば、以下に述べる課題が生じる。
【0012】
この課題を図14を用いて説明する。図14(a)はユーザ情報データの再生信号波形911、912と、上述の学習データパターンを順次並べていく学習データ列の再生信号波形92を示す。図14(b)、図14(c)は再生信号再生時のサーボに使用する信号帯域での和信号93とトラッキングエラー信号94を示す。
【0013】
図14(a)の再生信号はサーボに使用する信号帯域以下のローパスフィルタを通すと図14(b)の信号となることから、学習データ列部においてサーボ信号帯域以下の低周波数帯成分を含んだ信号となっている。この再生信号低周波数成分が図14(c)に示す様にトラッキングエラー信号にオフセットとして重畳し、トラッキングサーボ信号の外乱となる現象が確認出来る。
【0014】
図15は図14(a)の学習データの再生信号波形92の先頭部分と末尾部分を拡大して示す図である。図中921、922、923は、それぞれ、8値レベル記録マーク「000、001、…、007」、「010、011、…、017」、「020、021、…、027」に対応する再生信号波形である。また、924、925、926は、それぞれ、「750、751、…、757」、「760、761、…、767」、「770、771、…、777」に対応する再生信号波形である。
【0015】
本発明の目的は、学習データの再生信号の低周波成分を抑圧して、安定したトラッキングサーボを実現することが可能な多値情報記録再生方法及び記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、多値データに、符号間干渉の影響を検出するための学習の最小単位となる1セットのセル数Nと、学習データ中でDSV(Digital Sum Value)を一定値とする長さを規定する自然数kに対して、セル数2・N・kの単位を1ブロックとし、そのブロックが連続した構造を有すると共に、各ブロックにおいてDSVが一定値である学習データを付加して記録媒体に記録する。また、多値データの再生時には学習データに基づき多値データのレベル判定を行う。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、学習データ列の再生信号低周波成分を抑圧して安定したトラッキングサーボを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、発明を実施するための最良の形態について図面を参照して具体的に説明する。図1は本発明に係る多値情報記録再生装置の一実施形態を示すブロック図である。図中10は光ディスク等の光記録媒体、14は光記録媒体10に光ビームを照射して情報の記録又は再生を行う光ピックアップである。19は光記録媒体10を回転駆動するスピンドルモータである。
【0019】
スピンドルモータ19により光記録媒体10を回転させながら、光ピックアップ14中の図示しないLD(レーザダイオード)からレーザビームを照射することによって光記録媒体10に情報の記録又は再生を行う。
【0020】
まず、具体的な記録方法について説明する。ユーザ情報データaを記録データ生成回路11により多値レベルデータに変換し、その所定量の単位毎に予め決められた多値レベルの学習パターンデータ(学習データ)bを付加することによってデジタルデータ列cを形成する。このデジタルデータ列cから記録パルス生成回路12により記録パルスの光量とタイミング信号を生成する。これをLD駆動回路13に供給し、光ピックアップ14中のLDからレーザビームを出射して、光記録媒体10上に記録マークを形成する。
【0021】
次に、再生方法について説明する。光ピックアップ14中のLDから再生用レーザビームを光記録媒体10に照射し、光記録媒体10により反射された反射光を光ピックアップ14中のフォトディテクタ(図示せず)により検出する。得られた反射光レベル信号dを再生信号処理回路15によりサンプリングし、波形等化の処理を施すと共にユーザ情報データ部分eと学習データ部分fを識別する。
【0022】
この学習データ部分fから学習パターンテーブル16を作成し、ユーザ情報データ部分eと学習パターンテーブル16を参照し、多値レベル判定回路17により多値ユーザ情報データ列gを得る。これを二値データ変換回路18により二値データに変換し、再生情報データhを生成する。
【0023】
次に、上述の図1の構成について更に詳しく説明する。記録パルス生成回路12により処理されるデジタルデータcの概念図を図2に示す。デジタルデータcは上述の様にユーザ情報データ211(212)の所定量の単位毎に学習データ22が付加され、学習データとユーザ情報データが交互に繰り返されたデータ列となる。
【0024】
このデータ列に基づき記録マークが光ピックアップ14中のLDから出射するレーザビームにより光記録媒体10に記録される。多値データはトラック上に仮想的に設けられたセルの中での、無記録セルと(多値度−1)レベルで大きさの異なる記録マークによって表される。以下、これら記録マークからの多段に異なる再生反射光レベルは、0、1、…、(多値度−1)のデジタル値に対応させるものとする。
【0025】
図3は光記録媒体上に記録された記録マークの概念図を示す。ここでは一例としてデータの多値度が8の場合を示す。図3(a)は8値レベルを示すデータ列、図3(b)は図3(a)の多値レベルに対応する記録マークを示す。光記録媒体のトラック上に仮想的に設けられたセル32の中に未記録状態も含め8種の大きさの異なる(記録マークの長さ或いは面積が異なる)記録マーク33が形成される。セル32は一定間隔である。これら記録マークは8値レベルデータ列31の情報に対応している。図3において、記録マークの形状は大きさの違いを概念的に表現したものであり、実際の物理形状を正しく反映したものではない。
【0026】
このように光記録媒体上に形成されたマークに対し、再生レーザ光を照射した時のセルと光スポット径の大小関係を表す概念図が図4である。ここでは、一例として、セル長200nm、トラックピッチ320nm、光スポット径400nmの場合の例を示す。この時、注目セル41に記録された記録マークと、先行するセル42、後続するセル43に記録された記録マークが符号間干渉を起こす。そして、注目セル41に記録されたマークに対応した再生信号レベルが、前後2セルに記録されたマークの組み合わせに応じた分布を持つ。
【0027】
このように再生信号レベルが分布を持った状況下で、再生信号レベルを正しく分離検出するため、背景技術で述べた様に注目セルとそれに先行、後続するセルに、構成が既知である多値データパターンを記録する。次いで、その記録マーク列を再生し、前後セルの記録マークとの符号間干渉によるレベル変動の状況を記憶する学習動作を行う。そして、情報データ列からの再生信号と、この記憶しておいた信号レベルを参照することで、再生信号レベルを正しく分離検出できる。
【0028】
図4に示す系では、注目セルの記録マークと符号間干渉するのが隣接する前後のセルの記録マークであるため、学習すべきパターンは3セルを1セットとしたものとなる。この3セルのセット毎に3個の8値データの取り得るパターンの記録マークを記録し、それらについて学習を行う。
【0029】
そして、情報データ列からの再生信号と、この記憶しておいた信号レベルを参照することによって再生信号レベルを分離検出することが出来る。上述のようなレベル判定参照用の学習データに基づく学習に関しては、例えば、特許文献1等に詳しく記載されている。
【0030】
以上説明した構成、原理により、再生時に記録マーク間に符号間干渉がある場合でも、記録された多値情報をより正しく検出することが出来る。
【0031】
このような構成の下、本実施形態では、符号間干渉の影響を検出するための学習の最小単位となる1セットのセル数をN、学習データ列中でDSV(Digital Sum Value)を一定値とする長さを規定する自然数をkとする。そのセル数Nと自然数kに対し、学習パターンデータbとして以下のようなデータ列を用いる。即ち、上記のセル数Nと自然数kに対し、セル数2・N・kの単位を1ブロックとし、そのDSVを一定値としたブロック(以下、DSV一定値ブロックという)が連続した構造を有するデータ列を用いる。
【0032】
そうすることで、学習データの再生信号低周波成分を抑圧して安定したトラッキングサーボを実現した多値情報記録再生方法を実現するものである。
【0033】
以下、本発明の特徴である再生信号の低周波成分が抑圧され、効率化された学習データ列の構成に関して説明する。本発明は、上述の課題を解決するため学習データ列を一定セル単位でのDSVが一定値となるように構成する。この際、符号間干渉の影響を検出するための学習の最小単位となる、1セットのパターンの全てを効率的に含む一形態として次の様なデータ並びを考える。即ち、学習の最小単位となる1セットセル数Nが3の場合ならば、パターン「000」に対してはパターン「777」を、パターン「001」に対してはパターン「776」を、というようにする。つまり、小さいレベルを含むパターンと大きいレベルを含むパターンを順次組み合わせていくデータ並びとする。
【0034】
この様な学習データ列構成を考えるため、以下、学習の最小単位となる1セット(セル数N)に対し、2セットを合わせた単位で考える。上記例で考えれば、「000777」、「001776」、…、というデータ並びでは、学習の最小単位となる1セットセル数3に対し、その2倍である6セル単位でDSVを一定値21としている。このように学習の最小単位となる1セットに対し、小さいレベルを含む1セットと大きいレベルを含む1セットを組み合わせることでDSVを一定値とすることが出来る。
【0035】
まず、学習の最小単位となる1セットのセル数Nについて説明する。符号間干渉の影響を検出するための学習の最小単位となる1セットは、注目セルと、注目セルの記録マークと符号間干渉するマークの記録された隣接セルの個数の合計であれば良い。これは光ピックアップ光学系とセル長の関係から定める。
【0036】
例えば、セル長200nmで、現行のBlu−Rayディスクの光ピックアップ系で再生する場合には、図4の様に注目セルの記録マークと符号間干渉するのが前後2セルの記録マークであるため、学習の最小単位となる1セットのセル数は3セルとする。また、よりセル長が短く、注目セルの記録マークと符号間干渉するのが前後4セルの記録マークである場合には、学習の最小単位となる1セットのセル数は5セルとする。44は光スポット(φ400nm)を示す。
【0037】
更に、同じ系(セル長、光学系)であっても、再生方式や学習データ列の記録方式によって学習の最小単位となるセル数は異なる。例えば、後述するセル間値を用いた再生を行う場合を考える。その際には、セル長200nmで、現行のBlu−Rayディスクの光学系で再生する場合でも、図5に示す様に注目しているセル境界の前後2セル51に記録された記録マークが符号間干渉するため、学習の最小単位となる1セットのセル数は2セルである。
【0038】
また、後述する符号間干渉の影響を検出するパターンに新たに符号間干渉の影響を低減するための特有の多値レベルデータ(ダミーセルデータ)を加えて学習データ列を構成する場合には、学習の最小単位は以下のように定める。即ち、学習の最小単位は、符号間干渉の影響を検出するパターンと、ダミーセルデータを合わせたものとする。つまり符号間干渉の影響を検出するための学習の最小単位となる1セットのセル数Nは符号間干渉の影響を検出するパターンが記録されたセル数に符号間干渉の影響を低減するための多値レベル値をとるダミーセルデータが記録されたセル数を加えた合計数である。
【0039】
更に、このようにダミーセルデータを付加する例では、符号間干渉の影響を検出するパターンは、後述する様に注目セルと、注目セルの記録マークと符号間干渉するマークの記録されたセルの合計数以下のデータ数の単位としてもよい。
【0040】
例として、セル長160nmで、現行のBlu−Rayディスクの光学系で再生し、符号間干渉の影響を検出するパターンとして、符号間干渉の影響の及ぶ5セルの単位ではなく3セル単位でのパターンを考える場合について説明する。このとき、学習データ列中、符号間干渉の影響を検出するパターンに1つのダミーセルデータが付加されている場合には、学習の最小単位となる1セットのセル数は3+1=4セルとなる。
【0041】
次に、DSVを一定値とする長さに関して説明する。本発明の課題である学習デ―タの再生信号がトラッキングエラー信号の外乱となる現象は、学習データの再生信号が低周波数成分を持つことが原因である。そこで、再生信号にどの程度の周波数帯の成分が含まれている時に再生信号のトラッキングエラー信号への重畳が問題となるかを図6を用いて説明する。
【0042】
図6(a)は図9或いは図14の信号を記録した記録ストラテジと同一のストラテジ(レベル0〜7の各レベルの記録パワー、記録パルス幅)で記録した「0…0、7…7」の繰り返し信号の再生波形61を示す。図6(b)は信号再生時のトラッキングエラー信号62を示す。トラッキングエラー信号62には、「0…0、7…7」繰り返し信号の重畳が確認出来る。
【0043】
「0…0、7…7」繰り返し信号は、「0…0、7…7」の一単位毎のDSVが一定である。この再生信号に対するトラッキングエラー信号の振幅を見ることで、記録盤面上でのDSVを一定値とする長さと、再生信号のトラッキングエラー信号への重畳の関係を知ることが出来る。
【0044】
従って、再生信号の周波数成分と、再生信号のトラッキングエラー信号への重畳の関係を知ることが出来る。以下、図6(b)に示す様に三角波形状の信号振幅値(矢印で示す振幅値A)を、再生信号の重畳したトラッキングエラー信号の振幅63とし、この大きさを測定することで再生信号のトラッキングエラー信号への重畳度合を評価する。
【0045】
図6(c)は「0…0、7…7」繰り返し信号の「0…0、7…7」一単位の長さ、即ちDSVを一定値とする長さを変化させた時の対応する再生信号の重畳したトラッキングエラー信号の振幅を示すグラフである。横軸はDSVを一定値とする長さ、縦軸は「0…0、7…7」繰り返し信号が重畳したトラッキングエラー信号振幅のトラック溝横断時のトラッキングエラー信号振幅に対する規格化値を示す。
【0046】
図6(c)のグラフより「0…0、7…7」繰り返し信号のトラッキングエラー信号への重畳は、DSVを一定値とする長さに対し、単調に増加することが分かる。従って、本発明の課題である学習デ―タの再生信号がトラッキングサーボ信号の外乱となる現象を解決するためには、DSVを一定値とする長さは短く設定することが望ましい。
【0047】
しかし、一般にトラッキングエラー信号は、トラッキングエラー信号に基づいたアクチュエータ起動による光スポットのトラック追従によって追従しきれないサーボ残差を持っている。そして、このサーボ残差よりも上記重畳が小さい範囲では、この再生信号のトラッキングエラー信号への重畳は本発明の課題の解決に問題がないと考えられる。
【0048】
以下、このサーボ残差と再生信号の重畳の大小関係と、それに依るトラッキングサーボ安定性に関して説明する。図7(a)は再生信号の重畳のないトラッキングエラー信号波形を示す。図7(b)は本発明の課題である学習データの再生信号が重畳した図14(c)のトラッキングエラー信号94の波形を示す。これら図7(a)、(b)は、図14の時間軸スケールの25倍のスケールで表す。
【0049】
図7(a)から再生信号の重畳がないトラッキングエラー信号でも変動(サーボ残差)を持っていることが分かり、再生信号の重畳がこの元々存在する変動以下である場合には、上述した様に本発明の課題の解決に問題がないと考えられる。これに対し、図7(b)に示す波形には学習データの再生信号92によるサーボ残差を超えた重畳があり、安定したトラッキングサーボの妨げとなる。図6(c)のグラフ中には、このサーボ残差72と、図14の学習データの再生信号92の重畳したトラッキングエラー信号振幅95が対応する値を示している。
【0050】
上記説明した、再生信号のトラッキングエラー信号への重畳がサーボ残差以下となる条件は、図6(c)のグラフよりDSVを一定値とする長さが30μm程度以下であることと分かる。従って、本発明のDSV一定値ブロックの記録盤面上での物理長は、30μm程度以下に設定することが望ましい。この長さでDSVを一定値とした学習データの再生信号は、現行のBlu−Rayディスクのサーボ系での一倍速(4.92m/s)の線速の下で周波数成分に換算すると、約160kHzに相当する。
【0051】
上述の説明では学習の最小単位となる1セット(セル数N)に対し、2セットを合わせた単位でDSVを一定とする学習データ列構成を述べた。この様な学習データ列構成でのDSV一定値ブロックの記録盤面上での物理長は、セル長200nm、N=3の場合で、0.2×2×3=1.2μmである。これは、上述の再生信号のトラッキングエラー信号への重畳がサーボ残差以下となる条件に対し、25倍程度短い長さでDSVを一定値としていることになる。
【0052】
従って、学習の最小単位となる1セット(セル数N)に対し、2セットを合わせた単位でDSVを一定とするのではなく、以下の様な単位でDSVを一定としてもよい。即ち、学習の最小単位となる1セットに対し、4セット、6セット、…を単位と考えてDSVを一定値としても、上述の再生信号のトラッキングエラー信号への重畳がサーボ残差以下となる条件を満たしていれば本発明の課題の解決に問題はない。
【0053】
このような長さ単位でDSVを一定値とする構成を簡潔に表現するため、以下、学習の最小単位となる1セット(セル数N)に対し、2セットを合わせた単位のk(自然数)倍の個数のセルの単位を1ブロックと定義する。また、ブロック長を、ブロックに含まれるセル数と定義する。
【0054】
本発明では、この様に定義した「ブロック」を単位としてDSVが一定となるよう学習データ列を構成する。前述の様に、DSVが一定となるブロックをDSV一定値ブロックと呼ぶ。自然数kはDSVを一定値とする長さを規定する意味を持つ。
【0055】
このDSV一定値ブロックの長さを規定する自然数kは、学習データの再生信号のトラッキングエラー信号への重畳がサーボ残差以下となる条件を満たす範囲で、任意の値に設定してよい。この範囲の上限に対応するDSV一定値ブロックの記録盤面上での物理長は上述の様に30μm程度である。
【0056】
このことから、例えば、現行のBlu−Rayディスクの系では、セル長200nm、N=3の場合で、30/(0.2×2×3)=25程度、セル長160nm、N=3の場合で、30/(0.16×2×3)≒31程度に設定するのが望ましい。
【0057】
以上のように本発明は、符号間干渉の影響を検出するための学習の最小単位となる1セットのセル数Nと、学習データ中でDSV(Digital Sum Value)を一定値とする長さを規定する自然数kとする。このセル数Nと自然数kに対して、セル数2・N・kの単位を1ブロックとし、そのブロックが連続した構造を有すると共に、各ブロックにおいてDSVが一定値である学習データを、多値データに付加して記録媒体に記録する。そして、多値データの再生時には学習データに基づき多値データのレベル判定を行う。自然数kは、学習データの再生信号のトラッキングエラー信号への重畳が、トラッキングエラー信号のサーボ残差以下となる条件を満たすものとする。
【実施例】
【0058】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0059】
(実施例1)
実施例1では、データの多値度が8、注目セルの記録マークと符号間干渉するのが前後2セルの記録マークとなる状況で、学習の最小単位となる1セットのセル数Nは3、DSV一定値ブロックの長さ規定としてk=1である場合を示す。そして、後述する結合セクションの存在しない場合を示す。
【0060】
図8は実施例1のブロック長2・N=6、DSV一定値21である多値データ系列(学習データ列)を示す。ここで、“/”はDSV一定値ブロックの境界を意味する。また、表現上、ブロックの先頭データの値に応じて改行して表記し、更に、後述するブロック群に関し、先頭データの値の異なるものを図中囲むことによって表現している。
【0061】
このデータ列は、合計528個の多値レベルデータから構成され、DSV一定値ブロック88個、後述する結合セクション0個からなる。従って、このデータ列は全てのデータがDSV一定値ブロックで埋め尽くされた例となっている。つまり、学習データは、DSVが一定のブロックのみからなる。
【0062】
このデータ列は、前述の小さいレベルを含むパターンと大きいレベルを含むパターンを順次組み合わせていく形態として、特に、以下のような組み合わせ方としている。即ち、各ブロック内の1番目と4番目、2番目と5番目、3番目と6番目の多値レベルデータの和がそれぞれ7となる様な組み合わせ方としている。但し、後述するように先頭データ0,1,2,3の各ブロック群についてブロック群の末尾ブロックにおいては、重複パターンの削除を効率的に行う目的から、この様な組み合わせ方としていない。
【0063】
このデータ列において、先頭セルから1セルずつずらしながら3セル毎のパターンを抽出していくと、8値データが3個連続する場合の全ての組み合わせ512パターンが出現する。
【0064】
図9は本実施例の学習データの再生信号波形とトラッキングサーボ信号の波形を示す。図9(a)はユーザ情報データの再生信号波形811、812と、本実施例の学習データ列の再生信号波形82を示す。図9(b)、図9(c)は再生信号再生時のサーボに使用する信号帯域での和信号83とトラッキングエラー信号84を示す。
【0065】
また、図10は図9(a)に示す学習データの再生信号波形82の詳細を示す。図中821、822、823は、それぞれ、8値レベル記録マーク「000777、…、006771」、「010767、…、016761」、「111666、…、115662」に対応する再生信号波形である。また、824、825は、それぞれ、8値レベル記録マーク「222555、…、224553」、「333444、334344」に対応する再生信号波形である。
【0066】
本発明の課題は、上述のように図14(a)或いは図15の学習データパターンを順次並べていく学習データ列の再生信号は、サーボに使用する信号帯域と同程度の低周波数帯の成分を持った信号となっていることである。それに対し、本実施例の学習データの再生信号は、図10に示す様に低周波数成分の抑圧された信号となっている。
【0067】
これにより、本実施例の学習データ列の再生においては、学習データパターンを順次並べていく学習データ列の再生時に対し、図9に示す様に学習データ再生のトラッキングエラー信号への影響が低減されている。
【0068】
また、学習データパターンを順次並べていく「000、001、…、776、777」のデータ列は、512×3=1536個の多値レベルデータからなるデータ列となる。それに対し、本実施例のデータ列は合計528個の多値レベルデータで必要なパターンを網羅出来ている。これは、本実施例のデータ列の構成では、1536セルのデータ列において先頭セルから1セルずつずらしながら3セル単位でのパターンを抽出していく際に、以前出現したパターンからなるブロックを削除したことによる。
【0069】
つまり、本発明において、学習データは、データ列の先頭から学習の最小単位となる1セットのセル数のNセル単位でのパターンを抽出する際に、以前出現したパターンからなるブロックが削除されている。
【0070】
以下、重複するデータの削除方法に関して説明する。なお、複数のブロックの集まりをブロック群と呼び、ブロック群の長さをブロック群に含まれるセル数と定義する。本実施例のデータ列構成において、先頭データが0であるブロック群では、「000777、001776、…」のように各ブロック内の前半部分に、先頭が0であり、小さいレベルを含むパターンから順次並べている。
【0071】
次に、先頭データが1であるブロック群においても、先頭データが0であるブロック群に倣い「100677、101676、…」のような並びのデータ列を考える。すると、これらのブロックに含まれる「100」、「006」、「067」、「677」、「771」、「710」、「101」、「016」、「167」、「676」、…のパターンは全て、それより以前の先頭データ0のブロック群に含まれている。
【0072】
本実施例のデータ列構成では、このような重複データ列からなるブロックを削除する。先頭データが2、3のブロック群となるにつれ、図8に示す様にそれ以前のデータ列に含まれていないパターンを含むブロックは少なくなる。また、本実施例では、先頭データ0、1、2、3の各ブロック群について、ブロック群の末尾ブロックは重複パターンの削除を効率的に達成するため、以下のようなデータ並びとしている。即ち、上述の様に「000」に対しては「777」を組み合わせるという、ブロック内の1番目と4番目、2番目と5番目、3番目と6番目の多値レベルデータの和がそれぞれ7となる様な組み合わせ方とせず、「007077」等のデータ並びとしている。
【0073】
以上の様に本実施例のデータ列は、DSVを6セル単位で一定値とすることにより、学習データの再生信号低周波数成分を抑圧でき、安定したトラッキングサーボを実現することが可能となる。また、本実施例のデータ列はデータ量が低減されており、学習に使用するセル数の面でも効率的となる。
【0074】
ここで、特開2006−147077号公報には、光ビーム径中心がセルとその後続セルの境界に来た時に再生信号をサンプリングしたセル間値に基づいてそのセル間値を得た前後のセルの多値情報を判定する多値情報再生方法が開示されている。上述の図5はこのセル間値を用いた再生を行う場合のセルと、サンプリングポイントの概念図を示すものである。ここでは、一例としてセル長200nm、トラックピッチ320nm、光スポット径400nmの場合を示す。
【0075】
この方法の学習動作は以下の通りである。まず、セル間値を得るセル境界の前後のセルに、構成が既知である多値データパターンを記録する。次に、この記録マークを再生し、セル境界の前後の異なるレベルの記録マークの組み合わせに応じた、再生信号のセル間値レベルを記憶する学習動作を行う。そして、情報データ列の再生信号からサンプリングしたセル間値と、記憶しておいたセル間値レベルを参照することによって情報データ列中のそのセル間値を得た前後のセルの多値情報を判定する。
【0076】
上記特開2006−147077号公報には、注目しているセル境界の前後2セルに記録された記録マークが符号間干渉する場合が述べられている。そして、データの多値度が8の場合が具体的に述べられており、学習に必要なパターンとして、8値データが2個連続する場合の全組み合わせ「00、01、…、76、77」の64パターンが示されている。
【0077】
この場合、上述したように符号間干渉の影響を検出するための学習の最小単位となる1セットは、注目しているセル境界の前後2セルであり、学習の最小単位となる1セットのセル数Nは2である。つまり、符号間干渉の影響を検出するための学習の最小単位となる1セットのセル数Nは、注目セル境界の前後で符号間干渉するマークの記録されたセルの個数の合計数である。
【0078】
この特開2006−147077号公報に記載のセル間値を用いた再生を行う場合を考えると、セル間値再生に必要な8値データが2個連続する場合の全組み合わせ64パターンは、本実施例のデータ列の中に全て含まれている。従って、セル間値再生に必要な学習データ64パターンは本実施例のデータ列から抽出すればよい。
【0079】
(実施例2)
実施例2では、データの多値度が8、注目セルの記録マークと符号間干渉するのが前後2セルの記録マークとなる状況で、学習の最小単位となる1セットのセル数Nが3であり、DSV一定値ブロックの長さ規定としてk=1である場合を示す。そして、後述する結合セクションの存在する場合を示す。
【0080】
実施例1では先頭セルから1セルずつずらしながら連続する3セル毎のパターンを順に取り上げていく中で、以前出現したパターンからなるブロックを削除することによりデータ量を低減している。上述した様に実施例1は全てのデータがDSV一定値ブロックで埋め尽くされた例であるが、この条件を緩めれば、更なるデータ量の低減が可能である。この例を図11(a)に示す。
【0081】
このデータ列はブロック長2・N=6、DSV一定値:21、DSV一定値ブロック:84個、後述する結合セクション:5個の、合計523個の多値レベルデータから構成されたデータ列である。“/”は実施例1と同様にブロックの境界を意味し、“[”、“]”で囲まれた領域はDSVがこのデータ列のDSV一定値21とならない、連続する複数の多値レベルデータ、或いは一つの多値レベルデータを表す。本願明細書では、このようにデータ列中でDSVが一定値と異なる値をとる、連続する複数の多値レベルデータ、或いは一つの多値レベルデータを、結合セクションと表現する。また、実施例1と同様にブロックの先頭データの値に応じて改行し、また、結合セクションでの改行も行って表記している。
【0082】
このデータ列は、DSV一定値ブロック部分において、上述の小さいレベルを含むパターンと大きいレベルを含むパターンを順次組み合わせていく形態として、特に、次の様な組み合わせ方としている。即ち、各ブロック内の1番目と4番目、2番目と5番目、3番目と6番目の多値レベルデータの和がそれぞれ7となる様な組み合わせ方としている。結合セクション部分においては、この様な組み合わせ方としていない。
【0083】
このデータ列において、先頭セルから1セルずつずらしながら3セル単位でのパターンを抽出していくと、8値データが3個連続する場合の全ての組み合わせ512パターンが出現する。
【0084】
本実施例は、合計523個の多値レベルデータにより学習に必要なパターンを網羅するもので、実施例1に対し、更に5個のデータ数が低減されている。これは、先頭データ0、1、2、3の各ブロック群の末尾ブロックにおいて、重複する不必要なデータを削除したことによる。
【0085】
しかし、実施例1のデータ列に対する削除の過程のために、実施例1では全てのデータがDSV一定値ブロックで埋め尽くされていたのに対し、実施例2ではDSVが一定値21とならない箇所が発生している。つまり、学習データは、DSVが一定のブロックと、DSVが一定ではないブロックとが混在している。
【0086】
本発明の課題は、学習データ部の再生信号の低周波成分を抑え、安定したトラッキングサーボを実現することである。このためには、実施例1の様に学習データ列の一定セル単位でのDSVが一定となっていることが望ましい。但し、それが一部分で崩れていても、この変化に伴う再生信号のトラッキングエラー信号への重畳が上述のサーボ残差よりも十分小さいため、本発明の課題の解決には影響しない。
【0087】
この点に鑑み、本発明は学習データ列中に一部DSVが一定値とならない部分(結合セクション)を含んだ、主にDSV一定値ブロックから構成されるデータ列も含め、結合セクションの長さを制限することで課題を解決する。本発明は、この結合セクションのセル数を、連続するDSV一定値ブロックのブロック群の長さ以下と規定する。
【0088】
また、DSV一定とならない結合セクションを持ち、先頭セルから1セルずつずらしながら3セル単位でのパターンを抽出していく中で8値データが3個連続する場合の全ての組み合わせ512パターンを含む形態は上述の実施例のデータ列だけに限定されない。例えば、図11(b)に示すように結合セクションを変更した学習データ列も考えられる。
【0089】
また、上記特開2006−147077号公報に記載のセル間値を用いた再生を行う場合を考えると、セル間値再生に必要な8値データが2個連続する場合の全組み合わせ64パターンは、本実施例のデータ列の中に全て含まれている。従って、セル間値再生に必要な学習データ64パターンは、本実施例のデータ列から抽出すればよい。
【0090】
(実施例3)
実施例1、2では、学習の最小単位として、符号間干渉の影響を検出するパターンを考えている。
【0091】
一方で、学習データとして必要な符号間干渉の影響を検出するパターンに更に符号間干渉の影響を低減するための新たな特有の多値レベルデータを加えて学習データ列を構成している従来技術も存在する。この様な場合、学習の最小単位は符号間干渉の影響を検出するパターンと、符号間干渉の影響を低減するための特有の多値レベルデータを合わせたものとする。
【0092】
ここで、本願出願人は、先に、特願2006−240259号において、学習データとして必要なパターン間に予め決められた多値レベルデータを付加する技術を提案している。この学習データに付加される値の固定された多値レベルデータはダミーセルデータと称している。
【0093】
ここでは、一例としてセル長160nmの系を現行のBlu−Rayディスクの光学系で再生する場合の様に、注目セルに記録された記録マークへの符号間干渉に、注目セルの二つ外側のセルの記録マークも影響する場合を考えている。そして、学習パターンを5セル単位ではなく3セル単位のままとし、学習パターンの記録されている3セル間に、値の固定されたダミーセルデータを付加している。
【0094】
この方法により、学習データを大幅に増やすことなく、3セルを挟む両端の記録マークレベルを固定し、二つ以上外側のセルの記録マークからの影響を平均化出来る。これにより、注目セルに記録された記録マークへの符号間干渉に二つ以上外側のセルの記録マークも影響するような系においても、学習の確度を高められることが示されている。
【0095】
この特願2006−240259号の様に学習データとして必要な符号間干渉の影響を検出するパターンに更に新たな多値レベル値の固定されたダミーセルデータを加えた単位で学習データ列を構成する場合、以下の点が実施例1,2の場合と異なる。
【0096】
即ち、学習データ列中のダミーセルデータのため、1セルずつずらしながら3セル単位でのパターンを抽出していっても、以前出現したパターンと重複するパターンはダミーセルデータの値を含んだものしか出現しない。従って、実施例1,2で行ったように1セルずつずらしながら3セル単位でのパターンを抽出する中で、重複データを削除することによってデータ量の効率化を図る事は出来ない。
【0097】
データ多値度が8の場合、8値データが3個連続する場合の全ての組み合わせ512パターンを出現させるには、3つの多値レベルデータ毎にダミーセルデータ1つが入ることから、512×(3+1)=2048個の多値レベルデータが必要である。
【0098】
このようにダミーセルデータを付加する場合においても、本発明のDSVが一定となる学習データ列の生成は可能である。この場合、学習の最小単位となる1セットは符号間干渉の影響を検出するパターンに符号間干渉の影響を低減するための多値レベル値の固定されたダミーセルデータを加えたパターンとする。つまり符号間干渉の影響を検出するための学習の最小単位となる1セットのセル数Nは符号間干渉の影響を検出するパターンが記録されたセル数に符号間干渉の影響を低減するための多値レベル値をとるダミーセルデータが記録されたセル数を加えた合計数である。
【0099】
また、符号間干渉の影響を検出するパターンは、上述の様に注目セルと、注目セルの記録マークと符号間干渉するマークの記録されたセルの合計数(上述の例では5)以下のデータ数の単位(上述の例では3セル単位)としてもよい。上述の例の場合、学習の最小単位となる1セットのセル数Nは、3+1=4である。
【0100】
図12(a)は実施例3の学習データ列を示す。このデータ列は、データの多値度が8、学習の最小単位となる1セットセル数Nが、符号間干渉の影響を検出する3セルのパターンと、多値レベル値の固定された1セルのダミーセルデータとで4である。また、DSV一定値ブロックの長さ規定としてk=1のデータ列である。
【0101】
このデータ列は、ダミーセルデータの多値レベル値を3と4とした、ブロック長2・N=8、DSV一定値:28、DSV一定値ブロック:256個、結合セクション:0個の合計2048個の多値レベルデータから構成されたデータ列である。“/”は実施例1、2と同様にブロックの境界を意味し、“−”は学習データパターンとダミーセルデータの境界を、“_”は学習の最小単位となる1セットの境界を表している。
【0102】
このデータ列は、前述の小さいレベルを含むパターンと大きいレベルを含むパターンを順次組み合わせていく形態として、特に、以下のような組み合わせ方としている。即ち、各ブロック内の1番目と5番目、2番目と6番目、3番目と7番目の多値レベルデータの和がそれぞれ7となる様な組み合わせ方としている。
【0103】
また、ダミーセルデータの多値レベル値は「3」、「4」に限定されるものではなく、「0」等に設定する事も考えられる。
【0104】
図12(b)はデータの多値度が8、学習の最小単位となる1セットセル数Nが、符号間干渉の影響を検出する3セルのパターンと、多値レベル値の固定された1セルのダミーセルデータとで4であるデータ列を示す。このデータ列は、DSV一定値ブロックの長さ規定としてk=1である。
【0105】
このデータ列は、ダミーセルデータの多値レベル値を0とした、ブロック長2・N=8、DSV一定値:21、DSV一定値ブロック:256個、結合セクション:0個の合計2048個の多値レベルデータから構成されたデータ列である。“/”、“−”、“_”の意味は図12(a)のデータ列と同様である。
【0106】
また、図12(a)のデータ列と同様にこのデータ列は上述の小さいレベルを含むパターンと大きいレベルを含むパターンを順次組み合わせていく形態として、特に、以下のような組み合わせ方としている。即ち、各ブロック内の1番目と5番目、2番目と6番目、3番目と7番目の多値レベルデータの和がそれぞれ7となる様な組み合わせ方としている。
【0107】
実施例1,2では、重複データの削除を行うことから、学習に必要なパターン「000、001、…、776、777」の内で、二つのブロックにまたがって出現しているものがある。(例えば、図8に示す実施例1の学習データ列では、パターン「770」、「700」が、一番目のブロックと二番目のブロックにまたがって出現している)。従って、8値データが3個連続する場合の全ての組み合わせ512パターンを出現させるために、データ列を構成する各ブロックの並び順も考慮すべきである。
【0108】
それに対し、図12(a)、(b)に示す本実施例の多値データ系列では重複データの削除を行っていないため、学習に必要なパターン「000、001、…、776、777」のそれぞれが、二つのブロックにまたがることなく出現している。従って、ダミーセルデータの多値レベル値が3と4のブロック長2・N=8、DSV一定値:28、DSV一定値ブロック:256個、結合セクション:0個の合計2048個の多値レベルデータからなるデータ列は図12(a)の並びのパターンに限らない。即ち、各ブロックを任意の順序で並べ替えたものが考えられる。
【0109】
また、ダミーセルデータの多値レベル値を0とした、ブロック長2・N=8、DSV一定値:21、DSV一定値ブロック:256個、結合セクション:0個の合計2048個の多値レベルデータからなるデータ列は図12(b)の並びのパターンに限らない。即ち、各ブロックを任意の順序で並べ替えたものが考えられる。
【0110】
また、上記特開2006−147077号公報に記載のセル間値を用いた再生を行う場合を考えると、セル間値再生に必要な8値データが2個連続する場合の全組み合わせ64パターンは、本実施例のデータ列の中に全て含まれている。従って、セル間値再生に必要な学習データ64パターンは、本実施例のデータ列から抽出すればよい。
【0111】
一方、特開2006−147077号公報に記載のセル間値を用いた再生を行う場合、次の様に多値レベル値の固定されたダミーセルデータを、記録する学習パターンの2セル単位の間に付加した学習データ列を記録してもよい。
【0112】
図12(c)はデータの多値度が8、学習の最小単位となる1セットセル数Nが、セル間値再生を行うための符号間干渉の影響を検出する2セルのパターンと、多値レベル値の固定された1セルのダミーセルデータとで3であるデータ列を示す。このデータ列は、DSV一定値ブロックの長さ規定としてk=1である。
【0113】
このデータ列は、ダミーセルデータの多値レベル値を3と4とした、ブロック長2・N=6、DSV一定値:21、DSV一定値ブロック:32個、結合セクション:0個の合計192個の多値レベルデータから構成されたデータ列である。“/”、“−”、“_”の意味は、図12(a)のデータ列と同様である。
【0114】
このデータ列は、上述の小さいレベルを含むパターンと大きいレベルを含むパターンを順次組み合わせていく形態として、特に、各ブロック内の1番目と4番目、2番目と5番目の多値レベルデータの和がそれぞれ7となる様な組み合わせ方としている。
【0115】
また、図12(d)はデータの多値度が8、学習の最小単位となる1セットセル数Nが、セル間値再生を行うための符号間干渉の影響を検出する2セルのパターンと、多値レベル値の固定された1セルのダミーセルデータとで3であるデータ列を示す。このデータ列は、DSV一定値ブロックの長さ規定としてk=1である。
【0116】
このデータ列は、ダミーセルデータの多値レベル値を0とした、ブロック長2・N=6、DSV一定値:14、DSV一定値ブロック:32個、結合セクション:0個の合計192個の多値レベルデータから構成されたデータ列である。“/”、“−”、“_”の意味は、図12(a)のデータ列と同様である。
【0117】
また、図12(c)のデータ列と同様にこのデータ列は上述の小さいレベルを含むパターンと大きいレベルを含むパターンを順次組み合わせていく形態として、特に、以下のような組み合わせ方としている。即ち、各ブロック内の1番目と4番目、2番目と5番目の多値レベルデータの和がそれぞれ7となる様な組み合わせ方としている。
【0118】
更に、図12(c)、(d)に示す多値データ系列においても、学習に必要なパターン「00、01、…、76、77」のそれぞれが、二つのブロックにまたがることなく出現している。このためダミーセルデータの多値レベル値を3と4としたブロック長2・N=6、DSV一定値:21、DSV一定値ブロック:32個、結合セクション:0個の合計192個の多値レベルデータからなるデータ列は図12(c)の並びのパターンに限らない。即ち、各ブロックを任意の順序で並べ替えたものが考えられる。
【0119】
また、ダミーセルデータの多値レベル値を0とした、ブロック長2・N=6、DSV一定値:14、DSV一定値ブロック:32個、結合セクション:0個の合計192個の多値レベルデータからなるデータ列は図12(d)の並びのパターンに限らない。即ち、各ブロックを任意の順序で並べ替えたものが考えられる。
【0120】
(実施例4)
実施例1〜3では、学習の最小単位となる1セットに対し、2セットを合わせたものを1ブロックとする場合、即ち、k=1の場合について説明した。これに対し、本発明のDSVが一定となる学習データ列は学習データ列再生信号のトラッキングエラー信号への重畳がサーボ残差以下となる条件を満たす範囲でkが2以上であってもよい。即ち、学習の最小単位となる1セットに対し、4セット、6セット、…単位でDSVが一定となるようなものであってもよい。
【0121】
図13はデータの多値度が8、注目セルの記録マークと符号間干渉するのが前後2セルの記録マークとなる状況を考え、学習の最小単位となる1セットセル数Nが3であり、DSV一定値ブロックの長さ規定としてk=2の場合について示す。図13の多値データ系列はブロック長2・N・2=12、DSV一定値42であるデータ列である。
【0122】
このデータ列は、6セル単位のブロック(k=1)で考えるとDSVは一定となっていないが、12セル単位のブロック(k=2)で考えると、DSV一定となっている。このデータ列は、DSV一定値ブロック:44個、結合セクション:0個の、合計528個の多値レベルデータから構成されるデータ列である。
【0123】
“/”は実施例1〜3と同様にブロックの境界を意味し、“{”、“}”で囲まれた領域は、実施例1と同様の並びとした箇所を表す。また、表現上、実施例1、2と同様にブロックの先頭データの値に応じて改行して表記している。このデータ列において、先頭セルから1セルずつずらしながら3セル単位でのパターンを抽出していくと、8値データが3個連続する場合の全ての組み合わせ512パターンが出現する。
【0124】
本実施例の様な構成は、例えば、実施例1のデータ列に対し、連続する2ブロックのそれぞれの後半3セル部分を入れ替える操作によって得られる。但し、この操作を全てのブロックに対して行うと、8値データが3個連続する場合のパターンの全てが出現しない。このため、一部の箇所を実施例1と同様の並びとする。図13では上述のようにこの部分を“{”、“}”の記号で囲むことにより表現している。
【0125】
また、上記特開2006−147077号公報に記載のセル間値を用いた再生を行う場合を考えると、セル間値再生に必要な8値データが2個連続する場合の全組み合わせ64パターンは本実施例のデータ列の中に全て含まれている。従って、セル間値再生に必要な学習データ64パターンは、本実施例のデータ列から抽出すればよい。
【0126】
次に、本発明に係る学習データを記録した記録媒体について説明する。即ち、以上説明した学習データ列は、多段階に長さ或いは面積の異なる情報ピットを記録するROM媒体に対して、情報ピットの再生時レベル判定参照用として記録しても良い。
【0127】
具体的には、多値データを記録するROM記録媒体において、符号間干渉の影響を検出するための学習の最小単位となる1セットのセル数Nと、前記学習データ中でDSV(digital sum value)を一定値とする長さを規定する自然数kとする。このセル数Nと自然数kに対して、セル数2・N・kの単位を1ブロックとし、そのブロックが連続した構造を有すると共に、各ブロックにおいてDSVが一定値である学習データを記録する。自然数kは、学習データの再生信号のトラッキングエラー信号への重畳が、トラッキングエラー信号のサーボ残差以下となる条件を満たすものとする。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明に係る多値情報記録再生装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る多値デジタルデータの構成を示す概念図である。
【図3】光記録媒体上にランダムな多値データを記録した場合の記録マークを示す概念図である。
【図4】光記録媒体上の記録マークに再生光スポットを照射した場合のセルと光スポットの位置関係を示す概念図である。
【図5】セル間値再生方式におけるサンプリングポイントを示す概念図である。
【図6】DSV一定値とする長さと再生信号のトラッキングエラー信号への重畳の関係を説明するための図である。
【図7】サーボ残差と、再生信号のトラッキングエラー信号への重畳との大小関係を示す信号波形である。
【図8】本発明の実施例1の学習データ列を示す図である。
【図9】本発明の実施例1における学習データの再生信号波形と、トラッキングサーボ信号の波形である。
【図10】図9の学習データの再生信号波形を詳細に示す図である。
【図11】本発明の実施例2の学習データ列を示す図である。
【図12】本発明の実施例3の学習データ列を示す図である。
【図13】本発明の実施例4の学習データ列を示す図である。
【図14】本発明の課題を説明するための再生信号波形とトラッキングサーボ信号の波形を示す図である。
【図15】図14の学習データの再生信号波形を詳細に示す図である。
【符号の説明】
【0129】
11 記録データ生成回路
12 記録パルス生成回路
13 LD駆動回路
14 光ピックアップ
15 再生信号処理回路
16 学習パターンテーブル
17 多値レベル判定回路
18 二値データ変換回路
19 スピンドルモータ
10 光記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多値データを記録媒体に記録或いは再生し、再生時レベル判定参照用として学習データ列を記録する多値情報記録再生方法において、
前記多値データに、符号間干渉の影響を検出するための学習の最小単位となる1セットのセル数Nと、前記学習データ中でDSV(Digital Sum Value)を一定値とする長さを規定する自然数kに対して、セル数2・N・kの単位を1ブロックとし、前記ブロックが連続した構造を有すると共に、前記各ブロックにおいてDSVが一定値である学習データを付加して前記記録媒体に記録し、
前記多値データの再生時には前記学習データに基づき前記多値データのレベル判定を行うことを特徴とする多値情報記録再生方法。
【請求項2】
前記自然数kは、前記学習データの再生信号のトラッキングエラー信号への重畳が、前記トラッキングエラー信号のサーボ残差以下となる条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の多値情報記録再生方法。
【請求項3】
前記学習データは、前記DSVが一定のブロックと、前記DSVが一定ではないブロックとが混在していることを特徴とする請求項1に記載の多値情報記録再生方法。
【請求項4】
前記学習データは、前記DSVが一定のブロックのみからなることを特徴とする請求項1に記載の多値情報記録再生方法。
【請求項5】
前記学習データは、データ列の先頭から前記学習の最小単位であるNセル単位でのパターンを抽出する際に、以前出現したパターンからなるブロックが削除されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の多値情報記録再生方法。
【請求項6】
前記符号間干渉の影響を検出するための学習の最小単位となる1セットのセル数Nは、注目セルと、注目セルの記録マークと符号間干渉するマークの記録された隣接セルの個数の合計数であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の多値情報記録再生方法。
【請求項7】
前記符号間干渉の影響を検出するための学習の最小単位となる1セットのセル数Nは、注目セル境界の前後で符号間干渉するマークの記録されたセルの個数の合計数であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の多値情報記録再生方法。
【請求項8】
前記符号間干渉の影響を検出するための学習の最小単位となる1セットのセル数Nは、符号間干渉の影響を検出するパターンが記録されたセル数に、符号間干渉の影響を低減するための多値レベル値をとるダミーセルデータが記録されたセル数を加えた合計数であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の多値情報記録再生方法。
【請求項9】
多値データを記録するROM記録媒体において、符号間干渉の影響を検出するための学習の最小単位となる1セットのセル数Nと、前記学習データ中でDSV(digital sum value)を一定値とする長さを規定する自然数kに対して、セル数2・N・kの単位を1ブロックとし、前記ブロックが連続した構造を有すると共に、各ブロックにおいてDSVが一定値である学習データが記録されている記録媒体。
【請求項10】
前記自然数kは、前記学習データの再生信号のトラッキングエラー信号への重畳が、前記トラッキングエラー信号のサーボ残差以下となる条件を満たすことを特徴とする請求項9に記載の記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−26419(P2009−26419A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190812(P2007−190812)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】