説明

多光子顕微鏡

【課題】多光子顕微鏡において、超短パルス光の繰り返し周波数を上げて試料の劣化を抑制するとともに、高画質の観察像を容易に安定して得る。
【解決手段】超小型レーザ11は、その共振器長が15cm以下であり、繰り返し周波数が1GHz以上で、パルス幅がフェムト秒単位の超短パルス光を射出する。超小型レーザ11から射出された超短パルス光は、ビーム調整部12により各種の調整が行われた後、ダイクロイックミラー13により反射され、ダイクロイックミラー14および対物レンズ15を介して試料2に照射される。超短パルス光を照射することにより試料2から発せられた観察光は、蛍光検出部16、蛍光検出部20、または、蛍光検出部22により検出される。本発明は、例えば、多光子顕微鏡に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多光子顕微鏡に関し、特に、超短パルス光を使用可能な多光子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多光子励起を利用した走査型のレーザ顕微鏡である多光子顕微鏡が知られている。多光子顕微鏡では、非常に時間幅の短い(例えば、100フェムト秒の)パルス状のレーザ光である超短パルス光を集光して、生体等の試料に照射し、その超短パルス光の集光点近傍から発せられる多光子励起光を検出することにより、試料の観察が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、近年、超短パルス光を用いた多光子顕微鏡において、単位時間あたりに同じ強度の超短パルス光を試料に照射する場合、超短パルス光の1パルス当たりの強度を上げるよりも、1パルス当たりの強度を抑え、パルス数を増やすようにした方が、光褪色や光毒性などによる試料の劣化を抑制できることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
そこで、従来、特殊な光分割素子を用いて1つの超短パルス光を複数の超短パルス光に分割し、その一部をディレイライン(長い光路)を通過させて、分割後の複数の超短パルス光の間に時間差を与えた後、全ての超短パルス光の光路を一つに統合することにより、超短パルス光の1パルス当たりの強度を下げるとともに、単位時間当たりの超短パルス光の繰り返し周波数を上げることができる装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2848952号公報
【特許文献2】米国特許出願公開2009/0067458号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】N. Ji, J. Magee, and E. Betzig, "High-speed, low-photodamage nonlinear imaging using passive pulse splitters, Nature Methods Vol.5, 2008年, p.197-202
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2および非特許文献1に記載されている技術では、分割後の超短パルス光を遅延させるために、空気換算で最大数百mmにも及ぶディレイラインが必要となり、装置が大型化してしまう。
【0008】
また、ディレイラインが長くなると、超短パルス光が、温度変化、空気の変動や振動などの外乱の影響を受けやすくなる上に、超短パルス光のビーム径が、ディレイラインの光路長に応じて大幅に変化する。
【0009】
さらに、特許文献2および非特許文献1に記載されている技術では、分割した超短パルス光の光路の分岐や統合を繰り返しながら、最終的に全ての超短パルス光を、顕微鏡の対物レンズの光軸からずれないように同じ光路上を伝播する必要がある。そのため、超短パルス光の光路の分岐および統合に用いる光学素子を非常に高精度に調整する必要があり、調整の不備や光学素子の各種の誤差により、光路のズレが発生しやすい。
【0010】
従って、特許文献2および非特許文献1に記載されている技術では、超短パルス光の一部または全部が、顕微鏡の対物レンズの後側焦点面(いわゆる瞳面)から外れてしまい、効率よく多光子励起光を励起することができなかったり、多光子励起光を励起できたとしても、照明光の開口数が不足し、得られる蛍光像の分解能が不足してしまったりすることが起こりやすい。ゆえに、特許文献2および非特許文献1に記載されている技術では、明るくてS/N比の良い高画質の観察像を安定して得ることが難しい。
【0011】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、多光子顕微鏡において、超短パルス光の繰り返し周波数を上げて試料の劣化を抑制するとともに、高画質の観察像を容易に安定して得ることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面の多光子顕微鏡は、共振器長が15cm以下であり、超短パルス光を射出するレーザ光源と、前記レーザ光源からの前記超短パルス光を前記試料に照射し、前記試料からの多光子励起光を検出するための光学系とを備える。
【0013】
本発明の一側面においては、繰り返し周波数が1GHz以上の超短パルス光が試料に照射され、試料からの多光子励起光が検出される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によれば、多光子顕微鏡において、超短パルス光の繰り返し周波数を上げて試料の劣化を抑制するとともに、高画質の観察像を容易に安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用した多光子顕微鏡の第1の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】本発明を適用した多光子顕微鏡の第2の実施の形態を示すブロック図である。
【図3】本発明を適用した多光子顕微鏡の第3の実施の形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態
2.第2の実施の形態
3.第3の実施の形態
4.変形例
【0017】
<1.第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態である多光子顕微鏡1の構成の例を示すブロック図である。
【0018】
多光子顕微鏡1の超小型レーザ11は、パルス幅がフェムト秒単位の(例えば、100フェムト秒の)超短パルス光を出射する超短パルスレーザにより構成される。より具体的には、超小型レーザ11は、例えば、多層膜ミラーにより構成される負分散ミラー、レーザ結晶、過飽和吸収ミラー(SESAM)、および、SESAMと組み合わせたイットリビウム(Yb)ベースの固体レーザなどにより構成され、ソリトンモードロッキング(ソリトン型モード同期)技術を用いることにより、共振器長を数cmと短くしても、モードロッキング状態を安定して維持することが可能な小型の超短パルスレーザにより構成される。このような小型超短パルスレーザの詳細については、例えば、「山添昇吾,加藤雅紀,笠松直史、“小型超短パルスレーザ”、富士フイルム研究報告No.54、2009年、P.43-46」(以下、非特許文献2と称する)などに記載されている。
【0019】
非特許文献2に記載されている小型超短パルスレーザは、超短パルス光の波長(例えば、赤外波長 約1000nm)が固定されているため、波長を変更するための可動部を設ける必要がなく、超短パルス光の射出角度が安定しており、さらに上述した技術的特徴により、従来の波長が可変の超短パルスレーザと比較して非常に小さくすることができる。また、この小型超短パルスレーザは、共振器長が短いため、従来の超短パルスレーザと比較して、超短パルス光の繰り返し周波数を大幅に高く設定することができる。例えば、非特許文献2には、共振器長を5cm未満とし、超短パルス光の最大繰り返し周波数を2.9GHzに設定できることが記載されている。
【0020】
ビーム調整部12は、超小型レーザ11から入射される超短パルス光のビーム径を、対物レンズ15の瞳径に合わせて調整する機能、試料2から発せられる多光子励起光の波長と超短パルス光の波長との軸上の色収差(ピント差)を補正するために超短パルス光の集光および発散角度を調整する機能、超短パルス光のパルス幅が光学系を通過する間に群速度分散により広がってしまうのを補正するために、超短パルス光の群速度に負分散を与えるプリチャープ機能等を有する。
【0021】
超小型レーザ11から発せられた超短パルス光は、ビーム調整部12により上述した調整が行われた後、ビーム調整部12から射出され、ダイクロイックミラー13によりダイクロイックミラー14の方向に反射され、ダイクロイックミラー14を通過し、対物レンズ15により集光されて試料2に照射される。このとき、図示せぬ走査手段により、超短パルス光が試料2の観察面において走査される。
【0022】
試料2の超短パルス光が照射された領域およびその近傍では、試料2が染色されている蛍光色素が多光子励起され、赤外波長である超短パルス光より波長が短い蛍光(以下、観察光と称する)が発せられる。
【0023】
試料2から対物レンズ15の方向に発せられた観察光は、対物レンズ15によりコリメートされ、その波長に応じて、ダイクロイックミラー14により反射されたり、あるいは、ダイクロイックミラー14を透過したりする。
【0024】
ダイクロイックミラー14により反射された観察光は、蛍光検出部16に入射する。蛍光検出部16は、例えば、バリアフィルタ、PMT(photo multiplier tube:光電子増倍管)などにより構成され、ダイクロイックミラー14により反射された観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部16は、超短パルス光が試料2の観察面において走査されるのに合わせて、試料2の観察面にわたる観察光を検出する。
【0025】
一方、ダイクロイックミラー14を透過した観察光は、図示せぬ走査手段によりデスキャンされ、ダイクロイックミラー13を透過し、集光レンズ17により集光され、対物レンズ15の焦点位置とほぼ共役な位置に設けられているピンホール18を通過し、結像レンズ19を透過して、蛍光検出部20に入射する。蛍光検出部20は、例えば、バリアフィルタ、PMTなどにより構成され、結像レンズ19により蛍光検出部20の受光面において結像した観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部20は、超短パルス光が試料2の観察面において走査されるのに合わせて、試料2の観察面にわたる観察光を検出する。
【0026】
なお、ダイクロイックミラー14を光路から外すことにより、試料2から対物レンズ15の方向に発せられた全ての観察光を蛍光検出部20で検出するようにしてもよい。
【0027】
また、試料2から対物レンズ15と逆の方向に発せられた観察光は、ダイクロイックミラー21により反射され、蛍光検出部22に入射する。蛍光検出部22は、例えば、バリアフィルタ、PMTなどにより構成され、ダイクロイックミラー21により反射された観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部22は、超短パルス光が試料2の観察面において走査されるのに合わせて、試料2の観察面にわたる観察光を検出する。
【0028】
蛍光検出部16、蛍光検出部20、および、蛍光検出部22から出力された電気信号は、例えば、後段のコンピュータに入力され、そのコンピュータは、入力された電気信号に基づいて、観察画像を生成し、生成した観察画像を表示したり、観察画像のデータを記憶したりする。
【0029】
ここで、超小型レーザ11の共振器長Lの条件について考える。
【0030】
超小型レーザ11の共振器長Lと繰り返し周波数fの関係は、次式(1)により表される。
【0031】
f=c/(2nL) ・・・(1)
ただし、cは光速で3×108m/s、nは共振器内の媒質の屈折率である。
【0032】
上述した非特許文献1には、特許文献2に記載されている装置を使用して、1つの超短パルス光を128分割し、分割後の超短パルス光の時間間隔を37ピコ秒まで短縮することにより(すなわち、超短パルス光の繰り返し周波数fを約27GHz以上にすることにより)、光褪色や光毒性などによる試料の劣化を大幅に抑制できることが報告されている。そして、超短パルス光の繰り返し周波数f≧27GHzとするためには、超小型レーザ11の共振器内の媒質は空気なので、屈折率n=1とすると、式(1)から、共振器長L≦0.56cmとすればよい。
【0033】
また、特許文献1には、1つの超短パルス光を少なくとも16分割し、分割後の超短パルス光の時間間隔を300ピコ秒まで短縮することにより(すなわち、超短パルス光の繰り返し周波数fを約3.3GHz以上にすることにより)、試料の劣化の抑制効果が顕在化し始めることが報告されている。そして、超短パルス光の繰り返し周波数f≧3.3GHzとするためには、式(1)から、共振器長L≦4.5cmとすればよい。
【0034】
さらに、特許文献1には、分割後の超短パルス光の時間間隔を1ナノ秒まで短縮することにより(すなわち、超短パルス光の繰り返し周波数fを約1GHz以上にすることにより)、試料の劣化を軽減する効果が現れることが報告されている。そして、超短パルス光の繰り返し周波数f≧1GHzとするためには、式(1)から、共振器長L≦15cmとすればよい。
【0035】
以上をまとめると、多光子顕微鏡1の超小型レーザ11の共振器長Lの条件は、望ましくは15cm以下であり、さらに望ましくは4.5cm以下であり、さらに望ましくは0.56cm以下である。
【0036】
以上のように、多光子顕微鏡1では、超小型レーザ11を用いて、超短パルス光の繰り返し周波数を上げることにより、光褪色や光毒性などによる試料2の劣化を容易に抑制することができる。
【0037】
また、多光子顕微鏡1では、超小型レーザ11を用いることにより、装置を小型化でき、超短パルス光の光路を短くすることができる。その結果、光路上で超短パルス光が受ける外乱の影響や、超短パルス光のビーム径の変化を小さく抑えることができる。さらに、多光子顕微鏡1では、特許文献2および非特許文献1に記載されている技術のように、超短パルス光の光路を分岐したり統合したりする必要がなく、光路の分岐および統合に用いる光学素子の調整も必要ないため、超短パルス光の光路の調整が容易であり、光路のズレが発生しにくい。その結果、明るくてS/N比の良い高画質の観察像を容易に安定して得ることが可能になる。
【0038】
<2.第2の実施の形態>
図2は、本発明の第2の実施の形態である多光子顕微鏡101の構成の例を示すブロック図である。なお、図中、図1と対応する部分については同じ符号を付してあり、処理が同じ部分に関しては、その説明は繰り返しになるので省略する。
【0039】
図2の多光子顕微鏡101は、図1の多光子顕微鏡1と比較して、超小型レーザの台数が4台に増え、タイミング制御部111、並びに、ミラー121a,121b、ハーフミラー122a,122b、λ/2波長板123、および、偏光ビームスプリッタ124からなる統合部112が追加されている点が異なる。
【0040】
超小型レーザ11a乃至11dは、タイミング制御部111の制御に基づくタイミングで、同じ周波数で、かつ、同じ方向に偏光されている直線偏光の超短パルス光(以下、超短パルス光A乃至Dと称する)を射出する。
【0041】
なお、以下、超小型レーザ11a乃至11dを個々に区別する必要がない場合、単に超小型レーザ11と称する。
【0042】
超小型レーザ11aから射出された超短パルス光Aは、ハーフミラー122aに入射し、ハーフミラー122aを透過する光と、ハーフミラー122aにより反射される光に分岐される。そのうちハーフミラー122aを透過した超短パルス光Aは、偏光ビームスプリッタ124に入射する。
【0043】
超小型レーザ11bから射出された超短パルス光Bは、ミラー121aによりハーフミラー122aの方向に反射され、ハーフミラー122aを透過する光と、ハーフミラー122aにより反射される光に分岐される。そのうちハーフミラー122aにより反射された超短パルス光Bは、ハーフミラー122aを透過した超短パルス光Aと同じ光路を進み、偏光ビームスプリッタ124に入射する。
【0044】
超小型レーザ11cから射出された超短パルス光Cは、ハーフミラー122bに入射し、ハーフミラー122bを透過する光と、ハーフミラー122bにより反射される光に分岐される。そのうちハーフミラー122bにより反射された超短パルス光Cは、λ/2波長板123を透過することにより、偏光の振動面が90度回転する。そして、λ/2波長板123により偏光方向が変更された超短パルス光Cは、偏光ビームスプリッタ124に入射する。
【0045】
超小型レーザ11dから射出された超短パルス光Dは、ミラー121bによりハーフミラー122bの方向に反射され、ハーフミラー122bを透過する光と、ハーフミラー122bにより反射される光に分岐される。そのうちハーフミラー122bを透過した超短パルス光Dは、ハーフミラー122bにより反射された超短パルス光Cと同じ光路を進み、λ/2波長板123を透過することにより、偏光の振動面が90度回転する。そして、λ/2波長板123により偏光方向が変更された超短パルス光Dは、偏光ビームスプリッタ124に入射する。
【0046】
偏光ビームスプリッタ124は、λ/2波長板123により偏光方向が変更された後の超短パルス光Cおよび超短パルス光Dと同じ偏光方向の光を反射し、それ以外の光を透過する性質を有している。従って、偏光ビームスプリッタ124に入射した超短パルス光Aおよび超短パルス光Bは、そのまま偏光ビームスプリッタ124を透過して、ビーム調整部12に入射する。一方、偏光ビームスプリッタ124に入射した超短パルス光Cおよび超短パルス光Dは、偏光ビームスプリッタ124によりビーム調整部12の方向に反射され、偏光ビームスプリッタ124を透過した超短パルス光Aおよび超短パルス光Bと同じ光路を進み、ビーム調整部12に入射する。
【0047】
なお、このとき、超短パルス光A乃至Dが、偏光ビームスプリッタ124により光路が統合された後に互いに重ならないように、タイミング制御部111は、超小型レーザ11a乃至11dから超短パルス光A乃至Dを射出するタイミングを制御する。
【0048】
このように、4台の超小型レーザ11を用いるとともに、統合部112により、超短パルス光A乃至Dの光路を1つに統合することにより、試料2に照射する超短パルス光の繰り返し周波数を4倍にすることができ、試料2の劣化の抑制効果をより大きくすることができる。
【0049】
また、超短パルス光A乃至Dの光路を1つに統合するのに、λ/2波長板123および偏光ビームスプリッタ124を用いることにより、代わりにハーフミラーを用いる場合と比較して、超短パルス光の利用効率を2倍にすることができる。なお、ハーフミラー122aおよびハーフミラー122bにより発生する損失を考慮すると、統合部112における超短パルス光の利用効率は約50%となる。
【0050】
<3.第3の実施の形態>
図3は、本発明の第3の実施の形態である多光子顕微鏡201の構成の例を示すブロック図である。なお、図中、図2と対応する部分については同じ符号を付してあり、処理が同じ部分に関しては、その説明は繰り返しになるので省略する。
【0051】
図3の多光子顕微鏡201は、図2の多光子顕微鏡101と比較して、光量調整部211a乃至211dが設けられている点が異なる。
【0052】
光量調整部211a乃至211dは、それぞれ超小型レーザ11a乃至11dの後段に設けられ、超小型レーザ11a乃至11dから射出される超短パルス光A乃至Dの光量を独立して調整する。これにより、例えば、統合部112により光路が1つに統合された後の超短パルス光A乃至Dのピーク強度がほぼ一定になるように、各超短パルス光の強度を個別に調整することが可能になる。
【0053】
<4.変形例>
以上の説明では、多光子顕微鏡101および多光子顕微鏡201において、超小型レーザ11を4台用いる例を示したが、超小型レーザ11の台数は2台以上の任意の数に設定することが可能である。
【0054】
また、多光子顕微鏡101および多光子顕微鏡102において、タイミング制御部111は必ずしも設ける必要はない。これは、超短パルス光のパルス幅が、超短パルス光の繰り返し周期と比較して非常に短く、超短パルス光が重なる可能性が低いためである。もし、超短パルス光が重なった場合には、例えば、超小型レーザ11を再起動するだけで、容易に超短パルス光が重ならないように出射タイミングをずらすことが可能である。
【0055】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明
の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 多光子顕微鏡, 2 試料, 11,11a乃至11d 超小型レーザ, 12 ビーム調整部, 13,14 ダイクロイックミラー, 15 対物レンズ, 16 蛍光検出部, 17 集光レンズ, 18 ピンホール, 19 結像レンズ, 20 蛍光検出部, 21 ダイクロイックミラー, 22 蛍光検出部, 101 多光子顕微鏡, 111 タイミング制御部, 112 統合部, 121a,121b ミラー, 122a,122b ハーフミラー, 123 λ/2波長板, 124 偏光ビームスプリッタ, 201 多光子顕微鏡, 211a乃至211d 光量調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振器長が15cm以下であり、超短パルス光を射出するレーザ光源と、
前記レーザ光源からの前記超短パルス光を前記試料に照射し、前記試料からの多光子励起光を検出するための光学系と
を備える多光子顕微鏡。
【請求項2】
前記レーザ光源を複数備え、
複数の前記レーザ光源からの前記超短パルス光の光路を、前記試料に照射する前に1つに統合する統合手段を
さらに備える請求項1に記載の多光子顕微鏡。
【請求項3】
複数の前記レーザ光源は、同じ波長の前記超短パルス光を射出する
請求項2に記載の多光子顕微鏡。
【請求項4】
複数の前記レーザ光源は、さらに同じ偏光方向の前記超短パルス光を射出し、
前記統合手段は、
複数の前記レーザ光源からの前記超短パルス光の一部の偏光方向を所定の偏光方向に変更する偏光手段と、
前記偏光手段により偏光方向が変更された前記超短パルス光および前記偏光手段により偏光方向が変更されていない前記超短パルス光のうち一方を透過し、他方を反射する分岐手段と
を備え、
前記分岐手段により反射された前記超短パルス光の光路と、前記分岐手段を透過した前記超短パルス光の光路とが一致する
請求項3に記載の多光子顕微鏡。
【請求項5】
複数の前記レーザ光源からの前記超短パルス光が、光路が統合された後に互いに重ならないように、複数の前記レーザ光源から前記超短パルス光を射出するタイミングを制御するタイミング制御手段を
さらに備える請求項2に記載の多光子顕微鏡。
【請求項6】
複数の前記レーザ光源から出射された前記超短パルス光の強度をそれぞれ独立に調整する調整手段を
さらに備える請求項2に記載の多光子顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−128287(P2011−128287A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285219(P2009−285219)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】