説明

多孔性繊維状ナノ炭素及びその製造方法

【課題】ナノ繊維の外周面から繊維軸方向に放射状の細孔が炭素六角網面層の配列方向にそって形成された多孔性繊維状ナノ炭素およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】繊維の外周面上に細孔が形成され、その細孔は外周面から繊維軸に向けて形成されたトンネル形状であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周面に細孔が形成された多孔性繊維状ナノ炭素に係るもので、より詳しくは、ナノ繊維の外周面から繊維軸方向に放射状の細孔が炭素六角網面層の配列方向にそって形成された多孔性繊維状ナノ炭素およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔性の多孔物質に関する研究が活発に進行されるに従い、これを製造する方法が多く公知されている。特に、活性炭および活性炭素繊維を製造する方法と、繊維状ナノ炭素(Fibrous Nanocarbon)および炭素ナノチューブ(Carbon Nano Tube;繊維径が80nm以下の中空形極細炭素繊維)を、金属触媒を用いて製造する方法に関しては多数の特許及び論文に公知されている。このような一般の活性化方法によると、炭素材料の表面に多量のミクロ細孔(micropore)を形成することにより、通常の活性炭素といわれる多孔性炭素材料を製造することができる。
活性炭(Activated Carbon)及び活性炭素繊維は、炭素系物質を用いてこれを水蒸気、空気、二酸化炭素などの雰囲気で300−1100℃の温度で一定時間熱処理して製造する方法と、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属を含有する塩に上記の炭素系物質を300−1100℃の温度で一定時間熱処理した後にこれを分離洗浄及び乾燥して製造する方法とが公知されている。
1986年米国のハイペリオン・キャタリシス・インタ−ナショナル社(Hyperion Catalytic International Inc.)が出願した国際特許公開公報WO8603455には、繊維径が3.5−70nmで、炭素六角網面(Carbon Hexagonal Plane)が同心円状で繊維の軸に配列された中空形チューブ構造の炭素ナノチューブに関する技術が発表されたことがある。炭素ナノチューブは炭素六角網面が一枚の単層からなる単層炭素ナノチューブ(Single wall carbon nanotube;SWNT)と多層からなる多層炭素ナノチューブ(Multi wall carbon nanotube;MWNT)に分類され、単層ナノチューブは繊維径が0.4−3.5nm、多層ナノチューブは繊維径が2.5−50nm程度を有するものと知られている。
繊維状ナノ炭素は金属触媒上で炭素源の一酸化炭素及び炭化水素ガスを熱分解することにより製造する方法が広く知られている。例えば、米国特許第4,565,683号には一酸化炭素及び炭化水素類を鉄酸化物または鉄或いはニッケルなどの触媒を用いて540−800℃の温度で熱分解処理することによって生成された繊維長が1μm以上の繊維状炭素を製造する方法が公示されている。また、Baker及びRodriguezらは、鉄、ニッケル、コバルトなどの触媒を用いて500−700℃の温度で炭化水素を熱分解して、表面積が50−800m/gの炭素ナノ繊維を製造する方法を発表したことがあり、Boehm、ムラヤマ、Rodriguezらも、鉄、コバルト、ニッケルの転移金属またはそれらの合金触媒を用いて炭素水素を熱分解することにより、繊維状ナノ炭素を製造する技術を発表したことがある(Boehm, Carbon, 11, 583(1973); H.Murayama, T.Maeda, Nature, 245,791: Rodriguez, N.M.,1993. J. Master, Res.8(3233))。
繊維状ナノ炭素(Carbon Nano Fiber)は、炭素六角網面が繊維軸に対し直角に配列されるプレートリット(Platelet)構造と、繊維軸に対し20−80°の一定傾斜を有するヘリングボーン(Herringbone)構造(Rodriguez, N.M., 1993. J.Mater. Res. 8(3233))があり、ナノチューブとは異なって繊維の内部に中空を有しないのが大きな差異点である。図1a、図1b、図1cはそれぞれ炭素ナノチューブ、プレートリット繊維状ナノ炭素、ヘリングボーン繊維状ナノ炭素に対するTEMイメージを示している。
このような活性炭、炭素ナノチューブ及び繊維状ナノ炭素は、すべてその表面積が非常に大きいため、吸着剤または触媒の担体として応用することができる。これらは細孔のサイズが非常に微細であって2nm以下(micropore)の範囲を有するので、環境に有害なガス、水を汚染させるハロゲン化した炭化水素などのようなサイズの小さい分子を吸着するに効果的である。従って、工場での排気ガスによる汚染物の除去、飲用水の浄化処理などに使用できるが、高分子の吸着剤、原油のような高分子物質の変換のための触媒担体(catalyst support)として使用するには難しい。このためには2−100nmの中間サイズの細孔(mesopore size)を有し、かつ細孔サイズの均一度が高い吸収剤を安価で生産しなければならないからである。
中間サイズの細孔を製造する技術が幾つか公知されている。
第一に、適切なサイズを持つ除去可能な反応物(moiety)を含む原料物質を固形物に混ぜて重合させた後、前記反応物を除去して細孔を持つ多孔性固形物を製造する方法である。例えば、有機物と無機物の混合された高分子を燃やすと有機物が除去され、残された無機物には有機物のサイズほどの細孔が生成される。このように製造された多孔性の固形物は中間サイズをもつ細孔が均一に分布するとの長所はあるが、その製造費用が高価で且つ工程期間があまり長く掛かるとの問題点があった。
最近では、シリカとシリカアルミナにより中間サイズの細孔をもつ物質を合成する研究結果が発表されている。MCM−41、M41−Sといわれるもので、米国特許第5,108,725号及び第5,378,440号に公示されている。しかし、これは電気的に不導体で、且つアルカリ溶液で非常に不安定なので、燃料電池、バッテリ、電気分解電池、キャパシタなどへの応用に不適合である。
次いでは、中間サイズの細孔を選択的に有する炭素材料の合成に関する。中間サイズの細孔をもつゼオライト、アルミナ、シリカなどのテンプレートに炭素源となる高分子を注入して炭素化するか、或いは炭化水素気体から熱分解炭素を化学蒸着させた後にテンプレートをフッ酸などで除去する方法である。しかし、このような方法もやはり製造費用が高価で、製造期間及び生産量などの生産性に多くの問題点を有している。
一方、以上のような従来技術に従い製造された中間サイズの細孔をもつ固形物は、大抵粒子状であるため、高比表面積を有するとの長所にもかかわらずフィルターリングなどのような取扱上の問題点を内包している。
(特許文献)
国際特許公開公報WO8603455
米国特許第4,565,683号
米国特許第5,108,725号
米国特許第5,378,440号
(非特許文献)
Boehm, Carbon, 11, 583(1973); H.Murayama, T.Maeda, Nature, 245,791
Rodriguez, N.M.,1993. J. Master, Res.8(3233)
S.-H. Yoon, S. Lim, S.-h. Hong, I. Mochida, B. An. K. Yokogawa, 2004, Carbon, 42(15), 3087-3095;
B.An.K. Yokogawa, S.Lim, S.-H. Yoon, I.Mochida. In; Carbon 2004 International Conference, Brown University:RI(USA), 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の目的は、多孔度が高く、そのサイズが均一で、2−30nmサイズの細孔をもつ繊維状ナノ炭素を含む多孔性繊維状ナノ炭素及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、蛋白質などの高分子物の分離のための吸収剤またはクロマトグラフィー物質、燃料電池の触媒担体、電気化学的反応のための多孔性繊維状ナノ炭素及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、中間サイズの細孔をもつ固形物が粒子状でなくナノサイズ直径の繊維状を有するようにして、取扱上の不便さを解消することができる多孔性繊維状ナノ炭素及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような目的を達成するため本発明の一実施例による多孔性繊維状ナノ炭素は、繊維の外周面上に細孔が形成され、その細孔は外周面から繊維軸に向けて放射状に形成されたトンネル形状であることを特徴とする。
前記繊維状ナノ炭素は炭素六角網面層が繊維軸に対して垂直に積層されたプレートリット構造のナノ繊維、或いは炭素六角網面層が繊維軸にそってV字形に20−80°の角度を有するヘリングボーン構造のナノ繊維であり、細孔は炭素六角網面にそって形成される。
また、ナノ繊維の直径は2−500nm、好ましくは10−200nmであり、 縦横比は4以上、好ましくは10以上であり、細孔のサイズは2−100nm、好ましくは2−30nmであり、空隙率は少なくとも20%以上、好ましくは50%以上である。
本発明の他の実施例による多孔性繊維状ナノ炭素の製造方法は、繊維状ナノ炭素の外周面に金属触媒を含む物質を付着させ、酸化性または還元性の雰囲気で金属触媒がまわりの炭素六角網面層をガス化(gasification)させて除去することにより、外周面から繊維軸に向けてトンネル形細孔を形成する触媒による活性化、いわばナノドリリング(nano- drilling)方法により細孔を有する繊維状ナノ炭素を製造することを特徴とする。
トンネル形状の細孔は金属触媒が付着された繊維状ナノ炭素の特定部位と金属触媒が選択的に反応することによって生成される。従って、金属触媒が付着された特定部位の炭素六角網面層が除去され、細孔は炭素六角網面方向にそって平行に形成される。このような選択的反応のため、繊維状ナノ炭素に付着される金属触媒のサイズまたはナノドリリングの条件に従いトンネル形状の細孔のサイズ及び繊維の空隙率の制御が可能である。
従って、繊維状ナノ炭素の外周面にナノサイズの細孔を形成し、細孔のサイズ、即ち直径は2−30nmのメソ孔サイズであるので、蛋白質、原油などの高分子化合物の分離或いは吸収、さらに燃料電池の触媒担体として応用することができる。
【発明の効果】
【0005】
本発明は多孔度が高く、そのサイズが均一で、2−100nmサイズの細孔を有する多孔性繊維状ナノ炭素が得られる。このような多孔性繊維状ナノ炭素は吸着剤、クロマトグラフィー物質、触媒担体などの多様な応用が可能である。一方、伝導性を必要とする電気化学的応用においても繊維状であるため粒子間の伝導性をさらに向上させることができる。また、メソ気孔をもつ固形物が粒子状でなくナノサイズ直径の繊維状であるので、フィルターリングなどの取扱上の不便さを解消できる効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1はチューブ形、プレートリット形、へリングボーン形の三つの代表的構造の繊維状ナノ炭素を高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)で分析した写真及びそれによる既存の2次元的モデルを示している。
図2、図3、図4は、上述の3形態の繊維状ナノ炭素がナノロッド(nano-rod)との構造単位の緻密な積層により形成されているのを示す。即ち、本発明によるトンネル形細孔は炭素ナノロッドの積層によって構成された繊維状ナノ炭素の新規構造に基づいて製造される。
ナノロッドは繊維状ナノ炭素を構成する基本単位であり、炭素六角網面層が重なってシリンダー状を作ったチューブの先端が閉じられた構造である(図3(a)を参照)。一般のナノロッドは六角柱形から構成され、直径は2.5nm程度、長さは20−80nmを有する。ナノ−ロッドに対する説明はS.-H. Yoonなどの論文(S.-H. Yoon, S. Lim, S.-h. Hong, I. Mochida, B. An. K. Yokogawa, 2004, Carbon, 42(15), 3087-3095; B.An.K. Yokogawa, S.Lim, S.-H. Yoon, I.Mochida. In; Carbon 2004 International Conference, Brown University:RI(USA), 2004)に詳しく報告されている。
本発明はナノドリル工程を用いて繊維状ナノ炭素の外周面にナノサイズの細孔を形成することである。繊維状ナノ炭素の外周面にナノ触媒を付着し、水素または酸素雰囲気で熱処理して活性化させると、水素化または酸化ガス化反応が起こり、外面から内部に向けて触媒サイズのトンネルが生成される。このような方法により作られたトンネルドリリング(tunnel drilling)パターンは従来技術とは異なって一定(not random)で、炭素六角網面層の面方向にそって均一に生成される。従って、水素化または酸化雰囲気のナノ触媒はナノ触媒が付着された部分からナノロッドの長さ方向にそってナノロッドを除去しながら穴をあけてナノトンネルを形成する。図5を参照すると、ナノロッドの一部分が除去されてトンネルが形成されたのを図示する。
このような反応は金属の炭素に対する水素或いは酸素などによるガス化反応に起因するものである。トンネル形に形成されるのは炭素六角網面の断面が基底面に比べてガス化の反応性が高くて、ガス化によるナノロッドの分解が六角柱で形成されたナノロッド単位の長さ方向にそって起こるためである。従って、トンネルを作るナノドリリング反応はナノロッドの長軸にそって繊維状ナノ炭素の外周面から繊維の中心に進行する。水素または酸素雰囲気でナノロッドの先端部に付着された触媒が、接触しているナノ−ロッドを優先的にガス化して除去することによって可能である。このとき、一つ以上のナノ−ロッドが触媒によりガス化することができるので、ナノロッドの直径よりも大きい広さ2−30nmのナノトンネルが作られる。従って、へリングボーン及びプレートリット構造の繊維状ナノ炭素ではその外周面からナノロッドの長軸方向にそって繊維の中心に向けて放射状にトンネル形の細孔が生成される。
触媒によるガス化、即ちナノドリリングのための金属触媒としては周期率表上のV、VI、VII、及びVIII族の元素が可能である。好ましくは、Fe、Co、Ni、Mo、V、Cr、Pt、Pd、Ru、Cu、Ag、Zn、Sn及びこれらの合金である。合金触媒としてはNi-Cu、Fe-Ni、Fe-Pt、Fe-Mo、Ni-Mo、Co-Mo、Pt-Ruなどが好ましい。触媒のサイズは2−50nmが適合であり、小さすぎるとあまり小さい細孔が生成され、大きすぎると繊維状ナノ炭素の多くの部分がガス化される。
活性化のための反応ガスとしては水素及び酸素が好ましく、Co2、SO2、NO、NO2、H2Oなども使用可能である。活性化過程において反応条件が適切に調節できないと、ガス化反応が起こらないか、或いはガス化しすぎて繊維状ナノの収率が低下するおそれがあるので、工程温度を適当に制御しなければならない。水素化の場合、400−1200℃が好ましく、より詳しくは500−900℃である。また、酸化の場合、100−500℃が好ましく、より好ましくは200−400℃である。
上記の本発明の意義は、図面を参照した好ましい実施例を通じてさらに明らかになる。以下の好ましい実施例を通じて当業者が本発明を容易に理解し再現できるように詳しく説明する。
まず、本発明に使用される繊維状ナノ炭素を製造する方法を簡単に説明する。
第一は、チューブ構造の繊維状ナノ炭素、即ち、チューブラ(Tubular)炭素ナノ繊維である。金属触媒として使用されるFe/Ni合金を以下のような方法により製造する。ニッケル窒化物と鉄窒化物を常温で蒸留水に溶かし、アンモニウム重炭酸塩を入れて攪拌する。この溶液から生成された沈殿物を蒸留水及びエタノールで洗い落とし、真空中で乾燥させる。乾燥された沈殿物は400℃の温度で乾燥空気を用い酸化させてFe−Ni酸化物を製造する。Fe−Ni酸化物を400℃の温度及びH/He雰囲気で還元させた後、再度常温でO/Heの雰囲気で後処理してFe−Ni合金触媒を得る。このような方法により製造された触媒を反応炉中の石英管に入れ、625℃、H/He雰囲気で2時間熱処理した後、CO/Hの混合ガスを流しながら625℃で2時間熱処理して炭素繊維を得る。
製造された炭素繊維は炭素六角網面が繊維軸に平行に形成され、繊維の内部に中空を有する構造である(図2)。繊維の外径は5−35nmで、 縦横比は30以上である。図2(a)はTEMイメージであり、図2(b)はナノロッドが積層された構造を説明する説明図であり、図2(c)及び図2(d)は表面のSTMイメージである。ナノロッドが連結されて積層された構造を観察することができる。
第2は、プレートリット構造の繊維状ナノ炭素である。上述のような方法により鉄窒化物からFe触媒を製造して反応炉中の石英管に入れ、Co/H混合ガスを流しながら600℃で2時間熱処理する。製造された炭素繊維は炭素六角網面が繊維軸に垂直な方向に積層配列されたプレートリット構造である(図3)。繊維の直径は90−300nmであり、 縦横比は30以上である。図3(a)及び図3(b)はTEMイメージであり、図3(c)は表面のSTMイメージであり、図3(d)はナノロッドが積層された構造を説明する説明図である。ナノロッドが繊維軸と垂直方向に積層された構造を観察することができる。
第3は、へリングボーン構造の繊維状ナノ炭素である。上述の方法によりニッケル窒化物と銅窒化物からNi−Cu合金触媒を製造して反応炉中の石英管に入れ、エチレン/水素の混合ガスを流しながら580℃、H/Heの雰囲気で2時間熱処理して炭素繊維を合成する。得られた炭素繊維は炭素六角網面が繊維軸軸に沿ってV字形に20−80°の角度を有するヘリングボーン構造を示す(図4)。繊維の直径は80−350nmであり、 縦横比は30以上である。図4(a)及び図4(b)はTEMイメージであり、図4(c)は表面のSTMイメージであり、図4(d)はナノロッドが積層された構造を説明する説明図である。ナノロッドが繊維軸に一定な角度を有して積層された構造を観察することができる。
以下、本発明のナノドリリング工程を用いて多孔性繊維状ナノ炭素を製造する方法を説明する。
【実施例1】
【0007】
ニッケル窒化物溶液中にヘリングボーン繊維状ナノ炭素を浸し分散させて、ナノドリル触媒であるニッケル粒子がヘリングボーン繊維状ナノ炭素の外周面に付着されるようにする。繊維状ナノ炭素を150℃で真空乾燥させてニッケル触媒の付着されたナノ繊維を製造する。ニッケル触媒が付着された繊維状ナノ炭素を反応炉中の石英管に入れ、800℃の温度を維持しながらH/He混合ガス雰囲気で2時間熱処理する。
生成された多孔性繊維状ナノ炭素は図6のTEMのように、ナノトンネルが形成されて多孔質に変化されたナノ繊維である。ナノトンネルは繊維状ナノ炭素の構造は変化せずにナノロッドの長軸方向にそって形成され、ナノトンネルの大きさはその直径が5−30nmである。N BET(Brunauer-Emmett-Teller)法により非表面積と細孔の体積を測定するとそれぞれ352m/g、0.42cm/gである。
【実施例2】
【0008】
ニッケル窒化物溶液中にヘリングボーン繊維状ナノ炭素を浸し分散させて、ナノドリル触媒として使用されるニッケル粒子がヘリングボーン繊維状ナノ炭素の外周面に付着されるようにする。繊維状ナノ炭素を150℃で真空乾燥させて、ニッケル触媒の付着されたナノ繊維を製造する。ニッケル触媒が付着された繊維状ナノ炭素を反応炉中の石英管に入れ、350℃の温度O雰囲気で3時間熱処理する。
生成された多孔性繊維状ナノ炭素は図7のTEM写真のように、ナノトンネルが形成されて多孔質に変化される。ナノトンネルは繊維状の構造の変化はなく、ナノロッドの長軸方向にそって形成され、ナノトンネルの直径は2−10nmである。細孔の平均大きさは実施例1と比べてより小さいが、分布はより均一である。N BET(Brunauer-Emmett-Teller)法により非表面積と細孔の体積を測定するとそれぞれ298m/g、0.39cm/gである。
【実施例3】
【0009】
鉄窒化物溶液中にヘリングボーン繊維状ナノ炭素を浸し分散させて、ナノ−ドリル触媒として使用される鉄粒子がヘリングボーン繊維状ナノ炭素の外周面に付着されるようにする。繊維状ナノ炭素を150℃で真空乾燥させて、鉄触媒の付着されたナノ繊維を製造する。鉄触媒が付着された繊維状ナノ炭素を反応炉中の石英管に入れ、850℃の温度を維持しながらHe/H雰囲気で3時間熱処理する。
生成された多孔性繊維状ナノ炭素は図8のTEMのように、ナノトンネルが多数形成され多孔質に変化し、ナノトンネルはナノロッドの長軸方向にそって形成される。しかし、実施例1、2とは異なって、触媒によるガス化と同時に、触媒による部分的な黒鉛化が進行され、細孔近くの炭素構造が若干変化されることにより、細孔近くに黒鉛化性の優れた多孔性物質が製造される。N BET(Brunauer-Emmett- Teller)法により非表面積と細孔の体積を測定すると、それぞれ254m/g、0.33cm/gである。
【実施例4】
【0010】
ニッケル窒化物溶液中にプレートリット繊維状ナノ炭素を浸し分散させて、ナノドリル触媒として使用されるニッケル粒子がプレートリット繊維状ナノ炭素の外周面に付着されるようにする。繊維状ナノ炭素を150℃で真空乾燥させ、ニッケル触媒の付着されたナノ繊維を製造する。ニッケル触媒が付着された繊維状ナノ炭素を反応炉中の石英管に入れ、800℃の温度を維持しながらH/He雰囲気で3時間熱処理する。
生成された多孔性繊維状ナノ炭素は、図9のTEM写真のように、ナノトンネルが形成されて多孔質に変化された。ナノトンネルは繊維状ナノ炭素の構造を変化しなく、ナノロッドの長軸方向にそって形成され、ナノトンネルの大きさはその直径が6−32nmである。N BET(Brunauer-Emmett-Teller)法により非表面積と細孔の体積を測定するとそれぞれ154m/g、0.24cm/gである。
【比較例1】
【0011】
ヘリングボーン繊維状ナノ炭素に既存のアルカリ賦活法(アルカリ金属を用いた活性化方法として、通常“アルカリ賦活法”といわれる)を適用した。へリングボーン繊維状ナノ炭素とKOHの混合物(ナノ繊維:KOH=1:4w/w)が収められたパン(pan)上に配置し、反応炉中で850℃を維持しながらH/He混合ガス雰囲気で2時間熱処理する。
TEMイメージによると、黒鉛六角網面層の特定部位が梯子形状のように一定間隔で除去され、活性化された変化が観察される。BET結果によると、非表面積は866m/gで、1.0nm以下のミクロ気孔(micropore)がよく発達されていることがわかる。このようなアルカリ復活は本発明の多孔性繊維状ナノ炭素のようにメソ気孔(mesopore)を選択的に形成させるには不適切であることがわかる。
【比較例2】
【0012】
ニッケル窒化物溶液中にチューブラ(Tubular)繊維状ナノ炭素を浸し分散させて、ナノドリル触媒として使用されるニッケル粒子がヘリングボーン繊維状ナノ炭素の外周面に付着されるようにする。繊維状ナノ炭素を150℃で真空乾燥させてニッケル触媒の付着されたナノ繊維を製造する。ニッケル触媒が付着された繊維状ナノ炭素を反応炉中の石英管に入れ、800℃を維持しながらH/He混合ガス雰囲気で3時間熱処理する。
生成された繊維状ナノ炭素は上記の実施例とは異なって、反応後の重さ変化が5%未満として少なく、TEM写真から見ても細孔が均一に発達していないことがわかる。N BET(Brunauer-Emmett-Teller)法により非表面積と細孔の体積を測定するとそれぞれ122m/g、0.21cm/gである。本発明によるナノドリリング方法がチューブラ繊維状ナノ炭素、即ち、炭素ナノチューブには効果的でないことがわかる。本比較例の結果、即ち、ナノロッドの先端部が表面に現れていないチューブラ繊維状ナノ炭素はナノドリリング法が効果的でないことから、本発明のナノドリリングによるトンネル形細孔の製造は表面に現れたナノロッドの先端部に付着された触媒がナノロッドを選択的にガス化するものと考えられる。
【比較例3】
【0013】
ニッケル窒化物溶液中にカーボンブラックを浸し分散させて、ナノドリル触媒として使用されるニッケル粒子がカーボンブラックに付着されるようにする。カーボンブラックを150℃で真空乾燥させ、ニッケル触媒の付着されたカーボンブラックを製造する。ニッケル触媒が付着されたカーボンブラックを反応炉中の石英管に入れ、800℃を維持しながらH/He混合ガス雰囲気で3時間熱処理する。
カーボンブラックは反応後の重さ変化がほとんどなく、本発明によるナノドリル方法がカーボンブラックには効果的でないことがわかる。
以下、本発明のナノドリリング方法により製造された多孔性繊維状ナノ炭素を応用した例を挙げる。
第一に、吸着剤及びクロマトグラフィーである。本発明による多孔性繊維状ナノ炭素の細孔は最長経路が200nm程度なので、細孔の一方から他方へ分子が拡散するに2秒程度がかかる。このように拡散時間が非常に短いため、吸着剤及びクロマトグラフィーに相当に有効である。特に、クロマトグラフィーの場合、酵素、ステロイド、アルカロイド、ホルモン及び蛋白質などの生物学的に重要な分子を分離するため、適切に使用することができる。
第2に、触媒担体である。上述の短い拡散経路のため、ステロイド及び酵素の合成、原油の精製などのような高分子物質の変換に重要な触媒担体として応用することができる。
第3に、電気化学反応のための電極である。本発明による繊維状ナノ炭素を触媒金属の溶液中に浸し触媒金属をコーティングして、多孔性の繊維状ナノ炭素の表面に電極を形成する。このように製造された物質はアルカリ及び酸に強いので、過酷な環境を有する電気化学反応に応用することができる。例えば、Pt−Ru触媒をコーティングしたものをメタノール燃料電池におけるメタノール酸化のための触媒として使用することができる。図10は炭素繊維にコーティングされたPt−Ru触媒電極と、Ag/AgCl電極を使用したサイクリックボルタモグラム(cyclic voltammogram)を用いメタノール酸化を測定したもので、従来よりも約2倍以上の活性を示すことがわかる。
前述の説明のように、図面に図示された本発明の実施例は本発明の技術的思想を限定されるものとして解釈されてはいけない。本発明の技術分野において通常の知識を有したものは本発明の技術的思想を多様な形態に改良変更することができるので、改良及び変更が通常の知識を有した者に自明なものである限り、本発明の保護範囲に属するということができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1a】チューブ構造の繊維状ナノ炭素に対するTEMイメージである。
【図1b】プレートリット構造の繊維状ナノ炭素に対するTEMイメージである。
【図1c】ヘリングボーン構造の繊維状ナノ炭素に対するTEMイメージである。
【図2】チューブ構造の繊維状ナノ炭素である。
【図3】プレートリット構造の繊維状ナノ炭素である。
【図4】ヘリングボーン構造の繊維状ナノ炭素である。
【図5】本発明による、ナノドリリングにより細孔が生成された繊維状ナノ炭素のTEMイメージである。
【図6】本発明による、ナノドリリングにより細孔が生成された繊維状ナノ炭素のTEMイメージである。
【図7】本発明による、ナノドリリングにより細孔が生成された繊維状ナノ炭素のTEMイメージである。
【図8】本発明による、ナノドリリングにより細孔が生成された繊維状ナノ炭素のTEMイメージである。
【図9】本発明による、ナノドリリングにより細孔が生成された繊維状ナノ炭素のTEMイメージである。
【図10】本発明の繊維状ナノ炭素を応用した電気化学的活性度を示すグラフである。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔を持つ多孔性繊維状ナノ炭素であって、
前記細孔は前記繊維状ナノ炭素の外周面から前記繊維状ナノ炭素の中心軸に向けて放射状に形成されたトンネル形状であることを特徴とする多孔性繊維状ナノ炭素。
【請求項2】
前記繊維状ナノ炭素は炭素六角網面層が前記中心軸に対して垂直に積層されたプレートリット構造のナノ繊維であり、前記細孔はナノロッドの長軸方向にそって形成されることを特徴とする請求項1に記載の多孔性繊維状ナノ炭素。
【請求項3】
前記繊維状ナノ炭素は炭素六角網面層が前記中心軸を中心にV字形に20−80°の角度を有するヘリングボーン構造のナノ繊維であり、前記細孔はナノロッドの長軸方向にそって形成されることを特徴とする請求項1に記載の多孔性繊維状ナノ炭素。
【請求項4】
前記繊維状ナノ炭素は直径が2−50nmであり、 縦横比が4以上であることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか一つに記載の多孔性繊維状ナノ炭素。
【請求項5】
前記細孔のサイズは2−100nmであり、少なくとも20%以上の空隙率を有することを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか一つに記載の多孔性繊維状ナノ炭素。
【請求項6】
繊維状ナノ炭素の外周面に金属触媒を含む物質を付着させ、前記金属触媒を用い炭素六角網面層をガス化させて除去することにより、前記外周面から前記繊維状ナノ炭素の中心軸を向けて放射状にトンネル形細孔を形成することを含む多孔性繊維状ナノ炭素の製造方法。
【請求項7】
前記金属触媒は周期率表上のV、VI、VII、およびVIII族から構成されたグループの元素のうち選択された少なくとも一つの元素を含むことを特徴とする請求項6に記載の多孔性繊維状ナノ炭素の製造方法。
【請求項8】
前記金属触媒はFe、Ni、Cu、Pt、Mn、Vおよびこれらの混合物のうち選択された少なくとも一つであることを特徴とする請求項7に記載の多孔性繊維状ナノ炭素の製造方法。
【請求項9】
前記細孔は前記金属触媒が付着された前記繊維状ナノ炭素の特定部位が前記金属触媒により選択的にガス化反応するに従い形成されることを特徴とする請求項6に記載の多孔性繊維状ナノ炭素の製造方法。
【請求項10】
前記選択的反応により前記金属触媒が付着された特定部位の炭素六角網面層が除去されるに従い、前記細孔はナノロッドの長軸方向にそって形成されることを特徴とする請求項9に記載の多孔性繊維状ナノ炭素の製造方法。
【請求項11】
前記金属触媒による炭素六角網面層のガス化のための反応物は水素ガスを含むことを特徴とする請求項6に記載の多孔性繊維状ナノ炭素の製造方法。
【請求項12】
前記ガス化温度は500−900℃であることを特徴とする請求項11に記載の多孔性繊維状ナノ炭素の製造方法。
【請求項13】
前記金属触媒による炭素六角網面層のガス化のための反応物は酸化ガスを含むことを特徴とする請求項6に記載の多孔性繊維状ナノ炭素の製造方法。
【請求項14】
前記活性化温度は200−400℃であることを特徴とする請求項13に記載の多孔性繊維状ナノ炭素の製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−526663(P2008−526663A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549256(P2007−549256)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【国際出願番号】PCT/KR2005/004596
【国際公開番号】WO2006/071066
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(507215172)ネクセン ナノ テク カンパニー リミテッド (1)
【出願人】(507215183)
【出願人】(507215404)
【Fターム(参考)】