説明

多孔質の不溶融性ポリマー部品

多孔質の不溶融性ポリマー(IP)部品は、微粒子IP内に0.2〜10体積パーセントの有機繊維、好ましくは長さが短い有機繊維を取り込み、圧力下および任意で加熱下で混合物を圧密化し、次に繊維を「焼失させる」ことによって製造される。繊維を焼失させた後、得られる部品は多孔性を有し、その細孔は細長く、通常は有機繊維の形状を保持する。これらの部品は、水分にさらされ(通常はそれを吸収し)そして急激に加熱されたときに、水の蒸発によるブリスタリングを起こしにくい。このことから、これらの部品は航空機(ジェット機)および他のエンジン、ならびに急激な温度上昇が起こり得る他の用途のための部品として有用であるとされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によってその全体が本明細書に援用される2006年12月22日に出願された米国仮特許出願第60/876,890号明細書の利益を主張する。
【0002】
制御された少量の多孔性(好ましくは、細孔は細長く、例えば円筒形状である)を含む多孔質の不溶融性ポリマー部品は、水分を吸収した後、損傷することなく急速加熱によりよく耐えることができる。
【背景技術】
【0003】
ポリマーは現代社会のいたるところに存在し、使用されている最も一般的なタイプのポリマーは、熱硬化性ポリマーおよび熱可塑性ポリマーである。しかしながら、いわゆる不溶融性ポリマー(IP)である第3のタイプのポリマーも使用される。これらは架橋されないポリマーなので理論的には熱可塑性のはずであるが、その融点および/または軟化点はその分解温度よりも高い温度であり、従って、加熱されると液化する前に分解する。通常、商業的に使用されているこれらのタイプのポリマーは高い分解温度を有し、従って、その使用最高温度は通常極めて高い。これらのタイプのポリマーには、ポリイミド、ポリ(p−フェニレン)、および式
【0004】
【化1】

【0005】
(式中、XはNH、N−フェニル、O(酸素)またはS(硫黄)であり、Arはp−フェニレン、4,4’−ビフェニレンまたは1,4−ナフチリレンである)の繰り返し基でほとんどまたは全てが構成されるポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0006】
これらのIPは典型的な熱可塑性樹脂として形成することができないので、多くの場合、ポリマーは化学的に形成され、得られるポリマーは、まだ粉末でなければ粉砕されて粉末にされる。次にこの粉末はモールド内で圧力および任意で熱が加えられ、粉末を圧密化して成形部品にする。また任意で、成形部品は次に焼結され、ポリマーをさらに圧密化することもできる。様々な意味で、このタイプの成形方法は、よりよく知られている粉末冶金において用いられる方法と同様である。
【0007】
ほとんどのポリマーは、液体の水または水蒸気(たとえば空気中の)としての水分にさらされるといくらかの水を吸収する。次にポリマーが水の沸点よりも十分に高い温度に急速に加熱されると、吸収された水はかなりの蒸気圧を有し、ポリマーから脱出しようとする。ポリマーからの水の拡散が遅いと、水の内圧はポリマー内に空隙の形成(ブリスタリング)を起こし、それによりポリマー部品の有用性が低下するかまたは損なわれ得る。例えば、ポリマーが、湿潤気候および/または雨の中で周囲温度に置かれるジェットエンジンの部品であれば、部品はかなりの量の水を吸収し得る。エンジンが始動されると、このようなIP部品が配置された場所を含むエンジンの部分は急速に加熱され、結果として、これらの部品はブリスタリングを起こし得る。部品の有用性を実質的に低下させずにこのようなブリスタリングを回避する方法が望ましいであろう。
【0008】
多孔質および発泡ポリイミドが知られており、例えば、米国特許第5,444,097号明細書および米国特許第4,780,097号明細書、米国特許出願公開第2006/0039984号明細書、ならびにD.W.Kimら、J.Appl.Polym.Sci.94:1711−18頁(2004年)を参照されたい。これらの全ての参考文献において、細孔は大体球形(測定または写真によって、および/または調製方法によって)であり、多くの場合、細孔はポリマーおよび細孔の全体積のうちのかなりの体積を有する。
【0009】
特開平04−077533号公報には、「ポリイミド樹脂」を含む「樹脂」であり得るマトリックスと、複合体の電解酸化から除去される「一方向」(平行)の炭素繊維とを圧密化することによって製造されることを特徴とする多孔質材料が記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様では、本発明は不溶融性ポリマーを含む部品であり、前記ポリマーは約0.2〜約10体積パーセントの範囲で存在する空隙を含み、前記空隙は細長く、前記空隙の最小寸法に対する前記空隙の最長寸法の比が、少なくとも10:1である。
【0011】
もう1つの態様では、本発明は細長い空隙を有する不溶融性ポリマーを含む部品を製造するための方法であり、この方法は、
(a)不溶融性ポリマーの粒子と、0.2〜10体積パーセントの第2のポリマーとを混合することによって混合物を形成するステップであって、前記体積百分率が前記不溶融性ポリマーおよび前記第2のポリマーの全体積を基準とし、前記第2のポリマーが細長い片の形態であり、前記片の最小寸法に対する前記片の最長寸法の比が、少なくとも10:1であるステップと、
(b)前記混合物に圧力を加え、部品を形成するステップと、
(c)前記部品を、前記第2のポリマーを焼失させるための温度まで加熱するステップと
を含み、ただし、前記不溶融性ポリマーが、第2のポリマーが焼失される温度よりも高い分解点を有することを条件とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本明細書で説明される方法によって製造される部品を示し、より具体的には、部品内の空隙を示すX線断層撮影を示す(実施例12を参照)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書では特定の用語が使用され、これらは以下のように定義される。
【0014】
本明細書において使用される「不溶融性ポリマー(infusible polymer)」または「IP」という用語は、本質的に架橋されていないがその分解温度よりも低い温度において溶融加工する(すなわち、溶融または軟化状態で加工する)のに十分に溶融または軟化しないポリマーである。有用なタイプのIPとしては、ポリイミド、ポリ(p−フェニレン)、および式
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、XはNH、N−フェニル、O(酸素)またはS(硫黄)であり、Arはp−フェニレン、4,4’−ビフェニレンまたは1,4−ナフチリレンである)の繰り返し基でほとんどまたは全てが構成されるポリマーが挙げられる。ポリイミドが好ましい。IPが架橋されていないことを試験によって証明するのは困難または不可能であることが多いので、本明細書の目的のためには、これらの示す形成の化学が、このような化学に基づいて架橋されていないと合理的に信じられるようなものであれば、IPは架橋されていないと考えられるであろう。
【0017】
「焼失させる」とは、化学的に不活性または化学的に反応性のいずれかの雰囲気中、IPの分解温度よりも低い温度で加熱することによって全てまたは実質的に全てのポリマーを除去することを意味する。例えば、特定の温度まで加熱されると、第2のポリマー(SP)は解重合するか、そうでなければその構成モノマーまたは他の分解生成物に熱分解し得る。空気などの化学反応性雰囲気中では、SPは空気中の酸素によって酸化され、水および/または二酸化炭素などの揮発性生成物を形成し得る。これに関連して、「実質的に全て」は、第2のポリマーの全てが溶融性ポリマーから除去されるとは限らないが、十分に除去され、適切な形状および「寸法」を有する空隙が形成されることを意味する。
【0018】
「細長い」とは、部材の最長寸法の比が最短寸法の少なくとも10倍でなければならず、好ましくは、比は少なくとも25、より好ましくは少なくとも100でなければならないことを意味する。これは、空隙およびSP片の両方に適用できる。本明細書において言及される場合、比はこのような細長い空隙の平均であり、IPの不完全な圧密化によって生じる空隙を含まない。この比は繊維の長さおよび直径によって決定されるので、組成物の製造において使用される繊維の比と考えられる。組成物の製造において繊維が使用されなければ、空隙の平均の長寸法および短寸法は、X線断層撮影によって決定されるであろう(以下を参照)。
【0019】
「空隙の体積パーセント」(多孔性)とは、多孔質部品を形成する際にIPおよびSPの混合物中でSPによって占有される体積を意味し、これらのポリマーは完全に圧密化されていると仮定する。これは、以下の計算:
【0020】
【数1】

【0021】
を用いて計算される数値であり、式中、Wt.は「〜の重量」であり、Denは「〜の密度」である。IP粉末が、粉末粒子自体に取り込まれた1つまたは複数の充填剤などの他の部材を既に有する場合、IPの密度は、粒子組成物の密度であると考えられるであろう。同様に、SPが、組成物中に他の部材を有する場合には、SPの密度はその組成物の密度であると考えられるであろう。
【0022】
「部品」とは、任意の成形物を意味する。それは、そのままで有用である最終形状でもよいし、あるいはその最終形状に切断および/または機械加工され得る「予備形成品」、「ブランク」または「標準形状」でもよい。
【0023】
SP片または空隙の最短寸法に対する最長寸法の比は、これらの部材のいずれかにおいて多数が測定され、結果が平均されて比が得られる。例えば、SP片が繊維であれば、それぞれの繊維の長さおよび直径が測定される。次に、各繊維の長さはその繊維の直径(円形の断面であると仮定する)によって除され、これらの多数の比の結果が平均される。
【0024】
多孔質IP部品は、IPの粒子、通常は微粉末と、SPの細長い粒子とを混合することによって製造される。混合は、好ましくは、IP中のSPの均一分散体を得るように行われるべきである。次に、この混合物はモールド内で圧力がかけられ、成形される。この点で、圧力は固体部品へ圧密化するための唯一の「力」であり得るが、熱が使用されてもよい。少なくとも圧密化の開始時は、IP部品の内部にSPによって占められる体積を「インプリントする」ために、温度はSPの分解点を超えてはならない。しかしながら、IP部品の形状が定められてしまえば、所望される場合にはSPの分解温度を超えることができる。多くの場合、過度の圧力が発生し、そして/あるいはSP分解生成物によってモールドが汚染され得るので、部品がモールド内にある間にSPの分解温度を超えることは望まれないであろう。部品は形成されたら、モールドから取り出され、加熱(焼結)され得る。焼結は熱分解および/または化学反応(例えば、空気中での酸化)によってSPを除去できるだけでなく、最終部品の密度を高めるのにも役立つこともできる。この段落において指摘される点に従って、IP微粒子から部品を形成するための条件は、通常使用される条件および/またはIPに対して推奨される条件と同じであり得る。
【0025】
SP片は、本質的に、IP内に形成される空隙の大きさおよび形状の「テンプレート」である。これらは、SPの大きさおよび形状の必要条件を満たす任意の細長い形状を有し得る。しかしながら、SPの好ましい形態は繊維、特に円形断面を有する繊維である。言い換えると、後者は、(大体において)円形断面を有する管の形状の空隙を形成し得る。この例では、上述したように、SPおよび空隙の両方について最短寸法に対する最長寸法の比は、繊維の長さをその直径で除したものである。繊維が好ましい1つの理由は、多数の熱可塑性樹脂から容易に形成できることであり、多くの場合、繊維は比較的安価である。
【0026】
SPは、SPおよびIPの全体積の最低約0.2体積パーセントであり、好ましくは0.5体積パーセント、そしてより好ましくは約1.0体積パーセントである。SPの最大量は存在するSPおよびIPの全体積の約10体積パーセントであり、好ましくは約7体積パーセント、好ましくは約5体積パーセント、そして非常に好ましくは約3体積パーセントである。最大および最小体積パーセントは組み合わせられ、好ましい体積パーセント範囲を形成し得る。
【0027】
本発明の多孔質IPにおいて、通常繊維は圧密化の前に微粒子IPとランダムに混合されるので、繊維、ひいては細孔は、好ましくは、互いに平行ではなく、より好ましくは互いに実質的に平行でない。「実質的に平行」とは、与えられるランダムな細孔の長軸が、ランダムに選択される他の任意の細孔に対して少なくとも10°の角度であることを意味する。言い換えると、任意の2つの細孔の長軸間の平均角度は少なくとも10°である。しかしながら、これは繊維(ひいては細孔)の全体的な位置合わせが存在しないことを意味せず、実質的に平行ではないとしても、繊維および細孔は好ましい方向性を有し得ることに注意する。
【0028】
好ましくは、本発明の部品はその最小断面寸法において少なくとも約1mmの厚さであり、より好ましくは少なくとも約2mmの厚さである。
【0029】
本発明における使用に適した第2のポリマーとしては、例えば、プロピレン、ポリエチレン、アクリルポリマー、酢酸セルロース、およびセルロースポリマーが挙げられる。その他の適切なポリマーがポリマー技術分野において当業者に知られている可能性があり、このようなポリマーは本発明の範囲外ではないであろう。ある種類のポリマーは、所与の温度で容易に解重合またはきれいに熱分解するように製造されており、例えば電子工学におけるマスキング用途のために製造されたポリマーがある。これらのポリマーも本明細書において有用である。分解するように製造されたこれらのポリマーは、(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリレートと他のモノマーとのコポリマーであることが多い。当然ながら、特定のIPと共に有用な特定のSPは、使用される特定のIPの分解温度に依存し得る。SPの熱分解または反応温度は、当然ながら、IP分解温度よりも少し低い温度、または好ましくはかなり低い温度でなければならない。どんなSPが使用されても、そして簡単な熱分解であるか反応(例えば酸化)であるかにかかわらず、IP部品内に残るSPの除去からの残渣が少ない程よい。
【0030】
好ましいタイプのIPはポリイミドである。ポリイミドは、通常、テトラカルボン酸(または二無水物などのその誘導体)およびジアミン、例えばピロメリト酸二無水物(PMDA)およびジアミノジフェニルエーテル(ODA)や、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)およびODAなどから誘導される。溶液イミド化法によって調製されるポリイミドの典型的な例は、繰り返し単位:
【0031】
【化3】

【0032】
を有する硬質芳香族ポリイミド組成物であり、式中、R5は約60モルパーセントよりも多く約85モルパーセントまでのp−フェニレンジアミン(PPD)単位と、約15モルパーセントから約40モルパーセント未満のm−フェニレンジアミン(MPD)単位である。
【0033】
好ましくは、本発明の実施においてテトラカルボン酸が使用されるか、あるいは本発明の実施において有用な誘導体を調製することができるものは、一般式:
【0034】
【化4】

【0035】
を有するものであり、式中、Aは4価の有機基であり、R6〜R9(両端を含む)は、水素または低級アルキル、好ましくはメチル、エチル、またはプロピルを含む。4価の有機基Aは、好ましくは、以下の構造:
【0036】
【化5】

【0037】
のうちの1つを有し、式中Xは、
【0038】
【化6】

【0039】
−O−、−S−、−SO2−、−CH2−、−CH2CH2―、および
【0040】
【化7】

【0041】
のうちの少なくとも1つを含む。
【0042】
芳香族テトラカルボン酸成分として、芳香族テトラカルボン酸、その酸無水物、その塩およびそのエステルが言及され得る。芳香族テトラカルボン酸の例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ピロメリト酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)チオエーテル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン、2,2−ビス(3’,4’−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、およびビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホンが挙げられる。
【0043】
これらの芳香族テトラカルボン酸は、単独でまたは組み合わせて使用することができる。好ましいのは芳香族テトラカルボン酸二無水物であり、特に好ましいのは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリト酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、およびこれらの混合物である。
【0044】
有機芳香族ジアミンとしては、好ましくは、1つまたは複数の芳香族および/または複素環式ジアミン(これら自体は当該技術分野で知られている)が使用される。このような芳香族ジアミンは構造:H2N−R10−NH2によって表すことができ、式中R10は、16個までの炭素原子を含有すると共に任意で1個までのへテロ原子を環内に含有する芳香族基であり、へテロ原子は−N−、−O−、または−S−を含む。R10がジフェニレン基またはジフェニルメタン基であるようなR10基も本明細書に含まれる。このようなジアミンの代表は、2,6−ジアミノピリジン、3,5−ジアミノピリジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、p,p’−メチレンジアニリン、2,6−ジアミノトルエン、および2,4−ジアミノトルエンである。
【0045】
芳香族ジアミン成分のその他の例(単なる実例である)としては、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、および1,2−ジアミノベンゼンなどのベンゼンジアミンと、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、および4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテルなどのジフェニル(チオ)エーテルジアミンと、3,3’−ジアミノベンゾフェノンおよび4,4’−ジアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノンジアミンと、3,3’−ジアミノジフェニルホスフィンおよび4,4’−ジアミノジフェニルホスフィンなどのジフェニルホスフィンジアミンと、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルプロパン、および4,4’−ジアミノジフェニルプロパンなどのジフェニルアルキレンジアミンと、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィドおよび4,4’−ジアミノジフェニルスルフィドなどのジフェニルスルフィドジアミンと、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンおよび4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなどのジフェニルスルホンジアミンと、ベンジジンおよび3,3’−ジメチルベンジジンなどのベンジジン類とが挙げられる。
【0046】
他の有用なジアミンは、少なくとも1つのへテロ原子を含有しない芳香環、または官能基によって架橋された少なくとも2つの芳香環を有する。これらの芳香族ジアミンは、単独でまたは組み合わせて使用することができる。好ましくは、芳香族ジアミン成分として使用されるのは、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、およびこれらの混合物である。
【0047】
多孔質IPは、IPそのもの以外の材料を含有してもよい。充填剤、強化剤、顔料、および潤滑剤などのIP組成物に通常含有される材料を含有することができる。これらは、これらの材料のうちの1つまたは複数を含有する微粒子が生じるようにIPが形成される場合に存在し得る。IPに加えて他の材料を含有するこの微粒子は、本発明の方法において使用される。あるいは、IPに添加される他の材料は、本発明の方法においてIPおよびSPに混入され、全てが一緒に圧密化されてもよい。これらの2つの方法の組み合わせを用いて、種々の材料を組成物に添加することができる。当然であるが、最終組成物中にあることが意図される他の材料はどれも、SPが部品から除去される温度まで熱的に安定でなければならない。
【0048】
記載される空隙を含有する(多孔質)部品は、より低い(周囲)温度で水にさらされて水を吸収させられた後に水の沸点よりも高い温度(はるかに高いことが多い)に急速に加熱される場合に特に有用である。これらの条件下で、ブリスタリングを起こす(制御されない空隙を形成する)傾向は大幅に低下される。本発明の部品の細長い細孔は、「湿った」部品が急速に加熱されるときに形成し得る水(蒸気)の脱出を可能にする通路を形成すると考えられる。
【0049】
これにより、部品は、例えば、高温(内部または外部で発生される)にさらされるジェットエンジン、内燃機関、ターボチャージャー、電気および電子部品(これらに隣接する部品を含む)で使用される部品において有用であるとされる。これらの部品は多孔性を含有するが、多孔性の制御された性質およびその比較的低いレベルによって、その強度および靭性などの物理特性が通常多孔性によって著しい影響を受けない部品が得られる。当然ながら、高温(内部または外部で発生される)にさらされるジェットエンジン、内燃機関、ターボチャージャー、および電気および電子部品は、本明細書に記載される多孔質IPを含む部品を含むことができる。
【0050】
空隙の形状およびその寸法は、参照によって本明細書に援用されるA.SusovおよびD.van Dyck、デスクトップX線顕微鏡法およびマイクロトモグラフィ、Journal of Microscopy、191巻、151−158頁(1998年)に概略的に記載されるように、X線マイクロトモグラフィを用いることにより測定および「視覚化」することができる。実施例12に記載されるように製造された部品の断面である図1は、ポリプロピレン繊維が「焼失された」後にできた空隙を示す。
【0051】
実施例に記載される全ての特許および他の参考文献は、本明細書において完全に説明されたかのように参照によって本明細書に援用される。
【0052】
実施例において、特定の略語が使用される。それらは:
BPDA − 3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
MPD − m−フェニレンジアミン
PPD − p−フェニレンジアミン
である。
【実施例】
【0053】
実施例1
BPDA、PPD、およびMPD(70/30重量比のPPD/MPD)に基づく50重量%のポリイミドと、50重量%の人造黒鉛とを含むポリイミド樹脂の粒子を、米国特許第5,886,129号明細書(例えば、実施例7)に記載される方法に従って調製し、20メッシュスクリーンを通して粉砕した。
【0054】
実施例2
ポリプロピレン繊維(約3〜4デニールまで)を約0.5mm〜約3mmの長さに切断した。Waring型ブレンダー内で繊維および樹脂を混ぜ合わせることによって、これらの切断繊維を実施例1からの樹脂内に1重量%の負荷で分散させ、高速で15秒間ブレンドした。米国特許第4,360,626号明細書(特に、2欄、54〜60行)に記載される方法に従って、ミクロテンシルバー(micro−tensile bar)の形態の試験サンプルを成形した。比重を決定した。1122モデルInstron(登録商標)を用い、ASTM D638−03に従って引張強さおよび伸びを決定した。クロスヘッド速度は0.2インチ/秒(5.1mm/秒)であり、試験の間、伸びを測定するために伸び計をバーに取り付けた。結果は表1に報告される。
【0055】
実施例3および4
実施例2の方法に従って、2および4重量%のポリプロピレン繊維を含有する試験サンプルを調製した。物理試験結果は表1に報告される。
【0056】
比較例A
2重量%のポリプロピレン繊維を用いて実施例1に記載される樹脂から試験サンプルを調製した。繊維および樹脂の混合は、ブレンダー内ではなく、一晩のロール混合によって達成した。物理試験結果は表1に報告される。
【0057】
比較例BおよびC
実施例2の方法に従って、しかしポリプロピレン繊維を用いず、ブレンダー内で処理してあるいは処理せずに、実施例1に記載される樹脂から試験サンプルを調製した。物理試験結果は表1に報告される。
【0058】
表1において、比重はgm/mL、引張破断強度はMPaであり、伸びはパーセントである。
【0059】
【表1】

【0060】
多孔性が存在する場合、特に繊維が十分に分散されない場合には物理特性がいくらか低下しているが、特に1%レベルでは、多孔性はこれらの特性の非常に大幅な低下をもたらさない。
【0061】
実施例5
95℃の液体水中に14日間浸漬することによって、先行する実施例からのサンプルを熱衝撃試験のために調整した。次に、325℃、350℃、375℃、または400℃に加熱されたオーブン内に1時間置くことによって、サンプルに熱的な衝撃を与えた。1時間の加熱の後、サンプルをオーブンから取り出し、冷却させてから、ブリスタの存在について調査した。以下の表2において「観察」の下に記されるブリスタの存在は、どのサンプルが試験に不合格であるか、そしてブリスタが最初に出現した温度を示す。試験結果は表2に報告される。
【0062】
【表2】

【0063】
実施例6〜11
実施例2に記載される方法を用い、4重量%の繊維負荷で種々の繊維を用いて他のサンプルを調製した。これらの繊維(公称的に3mmの長さであった)は、Engineered Fibers Technology,LLC(Shelton,CT 06484,U.S.A.)から得た。ポリイミド部品において制御された多孔性を生じるために適切であると考えられるためには、焼結工程の間にブリスタリングを起こすことなく部品を成形することが可能でなければならない。これらの繊維を有するサンプルの成形結果は、表3に報告される。これらの結果は、繊維が「焼失される」際の加熱サイクルを変更することによって、特によりゆっくり加熱することによって、恐らく変化(改善)されるであろう。これらの実施例は、種々の直径を有する様々な繊維を使用して細孔を形成できることを説明する。
【0064】
【表3】

【0065】
実施例12
実施例2と同様の方法によって、1.2重量パーセントのポリプロピレン繊維をポリイミドとブレンドした。液圧プレス内に置いたモールド内に混合物を入れ、276MPaで圧縮した。59時間にわたる周囲温度から400℃への加熱サイクルを用いて、窒素下でこれらの部品を焼結させてから、400℃で3時間の保持し、次に冷却した。次に、部品を機械加工して最終部品にした。次に、これらの部品のうちの1つにX線断層撮影を行い、その結果は図1に示される(その断層撮影のビデオからのものである)。図中で目に見える「線」は、ポリプロピレン繊維の熱分解によって形成された細孔であり、ポリイミド(断層撮影法から「差し引かれた」)内の空隙である。図中にスケールマーカーが示される。これは部品の一部だけであり、そのポリイミド(「固体」)部分は示されていないが、図1において、矩形の形態であるように、図示される空隙の周辺全体に広がっている。繊維は好ましい方向性を有するように見えるが、実質的に平行ではないことに注意されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不溶融性ポリマーを含む部品であって、前記ポリマーが約0.2〜10体積パーセントの範囲で存在する空隙を含み、前記空隙が細長く、前記空隙の最小寸法に対する前記空隙の最長寸法の比が、少なくとも10:1である部品。
【請求項2】
前記不溶融性ポリマーがポリイミドである請求項1に記載の部品。
【請求項3】
前記空隙が、約1.0〜約5.0体積パーセントの範囲で存在する請求項1または2に記載の部品。
【請求項4】
前記部品が、その最小断面寸法において少なくとも約2mmの厚さである請求項1〜3のいずれか一項に記載の部品。
【請求項5】
前記空隙が、実質的に平行でない請求項1〜4のいずれか一項に記載の部品。
【請求項6】
前記不溶融性ポリマーが、少なくとも1種の充填剤、少なくとも1種の強化剤、少なくとも1種の顔料、少なくとも1種の潤滑剤、またはこれらの組み合わせをさらに含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の部品。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の部品を含むジェットエンジン、内燃機関、ターボチャージャー、電気部品、または電子部品。
【請求項8】
細長い空隙を有する不溶融性ポリマーを含む部品を製造するための方法であって、
(a)不溶融性ポリマーの粒子と、約0.2〜約10体積パーセントの第2のポリマーとを混合することによって混合物を形成するステップであって、前記体積百分率が前記不溶融性ポリマーおよび前記第2のポリマーの全体積を基準とし、前記第2のポリマーが細長い片の形態であり、前記片の最小寸法に対する前記片の最長寸法の比が、少なくとも10:1であるステップと、
(b)前記混合物に圧力を加え、部品を形成するステップと、
(c)前記部品を、前記第2のポリマーを焼失させるための温度まで加熱するステップと
を含み、ただし、前記不溶融性ポリマーが、第2のポリマーが焼失される温度よりも高い分解点を有することを条件とする方法。
【請求項9】
前記不溶融性ポリマーがポリイミドである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記部品が、その最小断面寸法において少なくとも約2mmの厚さである請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記細長い片が、実質的に平行でない請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2のポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリルポリマー、酢酸セルロース、またはセルロースポリマーのうちの1つまたは複数である請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(a)の前記混合物が、不溶融性ポリマー中の前記第2のポリマーの均一分散体である請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2のポリマーが繊維である請求項8〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のポリマーが円形の断面を有する請求項14に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−513679(P2010−513679A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542952(P2009−542952)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/026223
【国際公開番号】WO2008/079365
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】