多孔質シート、多孔質シートの製造方法および多孔質シートからなる電気化学素子用セパレータ
【課題】多孔質シートおよび多孔質シートからなる低内部抵抗で、ハイレート特性に優れる電気化学素子用セパレータと多孔質シートの製造方法を提供することである。
【解決手段】繊維と多孔質ポリウレタンを含有してなり、少なくとも片表面を、孔径分布が0.010〜50μmの貫通孔を有し、孔面積率が5.0%以上の多孔質ポリウレタンが99.0%以上被覆してなり、多孔質シートの平均孔径が0.29〜3.0μmであることを特徴とする多孔質シートおよび多孔質シートからなる電気化学素子用セパレータ。
【解決手段】繊維と多孔質ポリウレタンを含有してなり、少なくとも片表面を、孔径分布が0.010〜50μmの貫通孔を有し、孔面積率が5.0%以上の多孔質ポリウレタンが99.0%以上被覆してなり、多孔質シートの平均孔径が0.29〜3.0μmであることを特徴とする多孔質シートおよび多孔質シートからなる電気化学素子用セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、レドックスキャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、リチウムイオン電池等の電気化学素子用セパレータとして好適な多孔質シート、多孔質シートの製造方法および多孔質シートからなる電気化学素子用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、レドックスキャパシタ等の電気化学素子用セパレータとしては、溶剤紡糸セルロース繊維や再生セルロース繊維が叩解処理されてなる繊維を主体とする紙製セパレータが使用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。リチウムイオン電池用セパレータとしては、高分子被覆樹脂層を付与したセパレータが開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0003】
近年、電気二重層キャパシタは、静電容量の大容量化や高電圧化が進み、自動車や鉄道車両の補助電源などの高エネルギー密度、高出力密度が必要とされる用途での利用が期待されている。高エネルギー密度にするには、セパレータを薄くして収納できる電極の面積を大きくすることが手段の1つであるが、紙製セパレータは厚みが35μm以下になると自己放電しやすくなる問題があった。
【0004】
本発明者らは、電解液浸透性と耐ドライアップ性のバランスが良く、ハイレート特性に優れ、電気化学素子用セパレータとして好適な多孔質シートおよびその製造方法を開示した(特許文献4参照)。この多孔質シートは、平均繊維径0.01〜10μmの非フィブリル状繊維を含有する多孔質基材、およびポリマーからなる孔径0.01〜10μmの貫通孔を有する網状構造体からなり、該多孔質基材の表面および内部に該網状構造体が存在し、該平均繊維径0.01〜10μmの非フィブリル状繊維と該網状構造体とが絡合している。網状構造体は、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミドが好ましいとされている。しかし、ポリマーからなる網状構造体が多層に重なり合って形成される傾向に加えて、多孔質基材の内部にも多量の網状構造体が形成される傾向にあるため、多孔質基材内部の空間に過剰のポリマーが充填されてしまい、イオン移動を妨げる問題があり、電気化学素子用セパレータとしての内部抵抗を下げる余地がまだ残っていた。
【0005】
特許文献5のリチウムイオン電池用セパレータは、多孔性フィルム、不織布、および織布から選ばれるリチウムイオンを透過させる孔を有する基材の少なくとも片面に高分子樹脂被覆層を設けてなり、高分子樹脂被覆層がポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、テフロン(登録商標)系樹脂から選ばれる樹脂のうち少なくとも1種を主成分として含有することを特徴としている。このリチウムイオン電池用セパレータは、従来のポリオレフィン系微多孔質フィルムに比べて孔径を小さくできるため、脱落した電極活物質の移動による内部短絡が生じにくく、電池の寿命を長くできるとしている。しかし、高分子樹脂被覆層の形成法として、基材に高分子樹脂被覆層を形成する樹脂の極性有機溶剤溶液を塗布し、次いで水浴中に浸漬し高分子樹脂被覆層を形成する湿式凝固法を用いているため、高分子樹脂被覆層の貫通孔が小さくかつ少なくなりやすく、内部抵抗が高くなりやすい問題と大電流で放電させると容量が急激に減少する(ハイレート特性が悪い)問題とがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−267103号公報
【特許文献2】特開平11−168033号公報
【特許文献3】特開2000−3834号公報
【特許文献4】国際公開第2008/153117号パンフレット
【特許文献5】特開2004−31084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記実情を鑑みたものであって、多孔質シートおよび多孔質シートからなる低内部抵抗で、ハイレート特性に優れる電気化学素子用セパレータと多孔質シートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、この課題を解決するために鋭意研究を行った結果、特定の製造方法により製造された、繊維と多孔質ポリウレタンを含有してなる多孔質シートを発明し、該多孔質シートが電気化学素子用セパレータとして好適であることを見出し、本発明に至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、繊維と多孔質ポリウレタンを含有してなる多孔質シートにおいて、孔径分布が0.010〜50μmの貫通孔を有し、孔面積率が5.0%以上の多孔質ポリウレタンが少なくとも多孔質シートの片表面を99.0%以上被覆してなり、かつ、多孔質シートの平均孔径が0.29〜3.0μmであることを特徴とする多孔質シートである。
【0010】
本発明は、繊維を含有してなる多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸する工程、多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節する工程、多孔質基材を凝固液に接触させて多孔質基材に多孔質ポリウレタンを析出させる工程を経ることを特徴とする多孔質シートの製造方法である。
【0011】
本発明は、本発明の多孔質シートからなる電気化学素子用セパレータである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多孔質シートは繊維と多孔質ポリウレタンを含有してなり、少なくとも片表面を、孔径分布が0.010〜50μmの貫通孔を有し、孔面積率が5.0%以上の多孔質ポリウレタンが99.0%以上被覆してなり、多孔質シートの平均孔径が0.29〜3.0μmであるため、多孔質シート内部の相対的に大きな空間と多孔質ポリウレタン内の相対的に小さな空間を有する。多孔質シート内部に相対的に大きな空間が存在することにより、多孔質シートの厚み方向にイオン経路が直線的に形成されるため、充放電時の電極と電解液間でのイオン移動が迅速かつ円滑に進み、多孔質シートの抵抗を低く抑えることができ、内部抵抗が低く、ハイレート特性に優れる電気化学素子を得ることができる。
【0013】
本発明の多孔質シートは、繊維を含有してなる多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸する工程、多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節する工程、多孔質基材を凝固液に接触させて多孔質基材に多孔質ポリウレタンを析出させる工程を経て製造されるため、貫通孔を有さないポリウレタン皮膜や孔面積率の小さい多孔質ポリウレタンが形成されることがなく、多孔質シートの少なくとも片表面に、貫通孔の孔径分布が0.010〜50μmの多孔質ポリウレタンが形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1で作製した多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真(3000倍率)の一例を示す。
【図2】本発明の実施例3で作製した多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真(5000倍率)の一例を示す。
【図3】本発明の実施例9で作製した多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真(5000倍率)の一例を示す。
【図4】本発明の実施例10で作製した多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真(5000倍率)の一例を示す。
【図5】本発明の実施例17で作製した多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真(5000倍率)の一例を示す。
【図6】本発明の実施例18で作製した多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真(5000倍率)の一例を示す。
【図7】本発明の実施例19で作製した多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真(5000倍率)の一例を示す。
【図8】本発明の実施例3で作製した多孔質シートの断面の電子顕微鏡写真(1500倍率)の一例を示す。
【図9】本発明の実施例17で作製した多孔質シートの断面の電子顕微鏡写真(2000倍率)の一例を示す。
【図10】本発明の比較例2で作製した多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真(10000倍率)の一例を示す。
【図11】本発明の比較例6で作製した多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真(5000倍率)の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の多孔質シートは、繊維と多孔質ポリウレタンを含有してなり、孔径分布が0.010〜50μmの貫通孔を有し、孔面積率が5.0%以上の多孔質ポリウレタンが少なくとも多孔質シートの片表面を99.0%以上被覆してなり、かつ、多孔質シートの平均孔径が0.29〜3.0μmである。
【0016】
多孔質シートの少なくとも片表面を被覆している多孔質ポリウレタンにおける貫通孔の孔径分布は、0.010〜50μmであり、0.010〜3.0μmがより好ましく、0.040〜10μmがさらに好ましい。「孔径分布が0.010〜50μm」とは、貫通孔の孔径全てがこの範囲内であって、孔径0.010μm未満または50μmを超える貫通孔が存在しないことを意味する。孔径0.010μm未満または50μmを超える貫通孔が存在すると、電極との接触抵抗が大きくなる場合や電極表面から脱落した電極活物質が多孔質シートを貫通して内部短絡する場合があるので好ましくない。孔径分布が0.040〜10μmの場合は、孔径分布が狭く、多孔質シートの均一性が高くなる傾向がある。
【0017】
本発明における「被覆」とは、多孔質シートの少なくとも片表面の99.0%以上の面積を多孔質ポリウレタンが占めることを意味する。従って、多孔質シートの少なくとも片表面における多孔質ポリウレタンの被覆率は99.0〜100%である。多孔質ポリウレタンが存在しない領域、多孔質ポリウレタンの縁と多孔質基材中の繊維との隙間、多孔質ポリウレタンの貫通孔の孔径が50μmより大きく、かつ、その直下に多孔質ポリウレタンがない領域、貫通孔を有さない面積2000μm2以上のポリウレタン皮膜領域は、何れも多孔質ポリウレタンが被覆していない領域と見なす。
【0018】
孔径分布が0.010〜50μmの貫通孔を有し、孔面積率が5.0%以上の多孔質ポリウレタンが少なくとも多孔質シートの片表面を99.0%以上被覆してなる場合、反対側の表面(裏面)における多孔質ポリウレタンの被覆率は0〜100%の範囲であり、片表面の被覆率と異なっていても良いが、被覆率は50.0〜100%が好ましく、90.0〜100%がより好ましい。裏面における多孔質ポリウレタンの被覆率が50.0%以上の場合は、多孔質シートの引張強度や突刺強度をより強くできる。90.0%以上の場合は、引張強度や突刺強度をさらに強くでき、かつ、漏れ電流をより小さくできる。裏面における多孔質ポリウレタンの貫通孔の孔径分布は、0.010〜99μmが好ましく、0.010〜50μmがより好ましく、0.040〜10μmがさらに好ましい。貫通孔の孔径分布が0.010〜99μmの多孔質ポリウレタンは、多孔質シートの内部に存在していても良い。多孔質シート内部には多孔質ポリウレタンだけでなく、繊維状のポリウレタンも存在しても良い。
【0019】
本発明における多孔質ポリウレタンの貫通孔とは、ポリウレタンが周囲を囲んでできている貫通孔を意味する。貫通孔の孔径とは、電子顕微鏡写真で確認される貫通孔の平断面を同面積の円形に換算したときの直径を意味する。貫通孔の形は円形、楕円形、多角形、不定形、これらの複合形や混合などがある。多孔質ポリウレタンは多層状になっていても良い。貫通孔の孔径分布を調べるには目安として、10〜99μmの範囲であれば100〜500倍率で観察すれば良く、1.0〜10μmであれば1000〜5000倍率で観察すれば良く、0.010〜1.0μmであれば5000〜20000倍率で観察すれば良い。
【0020】
本発明の多孔質シートの少なくとも片表面を被覆してなる多孔質ポリウレタンは、孔面積率が5.0%以上である。孔面積率が5.0%未満だと、多孔質シートの電解液浸透性が悪くなり、電極との接触抵抗が大きくなる。多孔質シートの裏面を被覆してなる多孔質ポリウレタンの孔面積率は1.0%以上であることが好ましく、5.0%以上がより好ましい。
【0021】
本発明における孔面積率とは、所定面積S1の多孔質ポリウレタンに存在する貫通孔の総平面積S2の割合を意味する。多孔質ポリウレタンの電子顕微鏡写真を撮影して貫通孔を計測し、貫通孔の総平面積を算出することによって、孔面積率を算出することができる。S1は撮影倍率によって適宜決定すれば良い。例えば、撮影倍率が1000倍であれば、2500〜10000μm2の範囲が好ましく、5000倍であれば25〜200μm2の範囲が好ましい。
【0022】
本発明の多孔質シートは、バブルポイント法で測定される平均孔径が0.29〜3.0μmであり、0.35〜2.0μmがより好ましく、0.50〜2.0μmがさらに好ましい。平均孔径が0.29μm未満では、内部抵抗が高くなる。3.0μmより大きいと、漏れ電流が大きくなり、内部短絡する。多孔質シートの平均孔径は、多孔質ポリウレタンの平均孔径とは異なり、多孔質ポリウレタンの平均孔径より小さくなる。多孔質ポリウレタンと多孔質基材とは一体化していて分離できないため、多孔質ポリウレタンだけの平均孔径をバブルポイント法で測定することはできない。
【0023】
図1〜7は、本発明の多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真である。図8、9は、本発明の多孔質シートの断面の電子顕微鏡写真である。図8、9の多孔質シートは、それぞれ図2、5の多孔質シートである。図1〜9で示した多孔質シートは、繊維と多孔質ポリウレタンを含有してなり、貫通孔の孔径分布が0.010〜50μmの貫通孔を有し、孔面積率が5.0%以上の多孔質ポリウレタンが多孔質シートの少なくとも片表面を99.0%以上被覆してなる。図4の多孔質シートは、図3の多孔質シートを熱処理したもので、図3よりも多孔質ポリウレタンの貫通孔の孔径が大きくなっている。同様に、図6の多孔質シートは、図5の多孔質シートを熱処理したもので、図5よりも多孔質ポリウレタンの貫通孔の孔径が大きくなっている。図8の多孔質シートは、片表面に多孔質ポリウレタンが集中的に存在し、図9の多孔質シートは表裏面に多孔質ポリウレタンが集中的に存在し、何れも多孔質シート内部には大きな空間が保持されている。
【0024】
図10は、本発明外の製造方法で製造された多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真である。多孔質ポリウレタンの孔面積率が5.0%未満であることがわかる。図11は、特許文献5に開示されている多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真である。ポリアミドイミドからなる多層の網状構造体自体が、多孔質基材の表面および内部に形成されており、多孔質シート内部の空間が不十分である。
【0025】
本発明に用いられる繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびそれらの誘導体、芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルなどのポリエステル、ポリオレフィン、アクリル、ポリアセタール、ポリカーボネート、脂肪族ポリケトン、芳香族ポリケトン、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリ(パラ−フェニレンベンゾビスチアゾール)、ポリ(パラ−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルなどの樹脂からなる繊維、キュプラレーヨン、再生セルロース、セルロース、柔細胞繊維、リンター、天然繊維などの有機繊維、ガラス、アルミナ、シリカ、ジルコニア、炭化珪素、各種セラミックスからなる無機繊維が挙げられる。
【0026】
これら有機繊維や無機繊維は1種類だけでも良く、2種類以上併用しても良い。これら有機繊維は、フィブリルを有しても良く、フィブリッドや非フィブリルでも良い。有機繊維は、短繊維(いわゆるチョップドファイバー)でも連続繊維でも良い。これらの有機繊維の中でも、耐溶剤性や耐熱性、多孔質基材の製造安定性に優れることから、ポリエステル、全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、キュプラレーヨン、フィブリル状セルロースが好ましい。また、多孔質基材がポリオレフィン繊維を含有する場合には、電気化学素子内部の温度がポリオレフィン繊維の融点以上になったときにポリオレフィン繊維が溶融して正負電極間の電流を遮断する、いわゆるシャットダウン機能を付与できるため好ましい。
【0027】
芳香族ポリアミドや芳香族ポリエステルなどの芳香族とは、全芳香族とは違って主鎖の一部または全部に例えば脂肪鎖などを有するものを指す。全芳香族ポリアミドは、パラ型、メタ型の何れでも良い。ポリ(パラ−フェニレンベンゾビスチアゾール)はトランス型、シス型の何れでも良い。本発明におけるアクリルとは、アクリロニトリル100%の重合体からなるもの、アクリロニトリルに対して、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体、酢酸ビニルなどを共重合させたものを指す。セルロースとしては、溶剤紡糸セルロース、再生セルロース、麻、柔細胞繊維などが挙げられる。柔細胞繊維とは、植物の茎、葉、根、果実等に存在する柔細胞を主体とした部分をアルカリで処理する等して得られるセルロースを主成分とし、水に不溶な繊維である。
【0028】
本発明においては、繊維を用いて多孔質基材を作製し、該多孔質基材と多孔質ポリウレタンを一体化させることにより多孔質シートが得られる。多孔質基材は、湿式抄紙法、エレクトロスピニング法、メルトブローン法、フラッシュ紡糸法、スパンボンド法、湿式スパンボンド法、これらの組み合わせなどの方法で製造することができる。多孔質基材は厚み調整、強度向上、寸法安定性付与の目的で、必要に応じて予めカレンダー処理、熱カレンダー処理、熱処理などが施される。
【0029】
多孔質基材は、厚み方向にフィブリル状繊維以外の短繊維および/または連続繊維が最大で2〜30本あることが好ましく、3〜20本あることがより好ましい。短繊維および/または連続繊維が2本未満では、多孔質基材の引張強度や引裂強度が弱い傾向があり、ポリウレタン溶液の含浸性に問題が生じる場合があり、30本より多いと多孔質シートの厚みを薄くしにくくなる場合や、繊維本数が多すぎて電解液中のイオン移動が阻害される場合がある。
【0030】
多孔質基材は、バブルポイント法で測定される最大孔径が1.00〜100μmであることが好ましく、5.00〜100μmであることがより好ましく、50.0〜100μmであることがさらに好ましい。最大孔径が1.00μm未満だと、多孔質基材を構成する繊維によってイオン移動が阻害されやすくなり、100μmより大きいと多孔質シートの強度が不十分になる場合やピンホールができる場合がある。多孔質基材の厚み方向に短繊維および/または連続繊維が最大で3〜20本あり、かつ多孔質基材の最大孔径が50.0〜100μmのとき、より内部抵抗が低く、よりハイレート特性に優れる多孔質シートが得られる。
【0031】
多孔質基材の坪量は、5〜40g/m2が好ましく、7〜20g/m2がより好ましい。多孔質基材の坪量が5g/m2未満では、多孔質基材の強度が不十分になりやすく、ポリウレタン溶液の含浸性に問題が生じる場合があり、40g/m2を超えると多孔質シートの厚みを薄くしにくくなる。
【0032】
本発明に用いられるポリウレタンは、活性水素を有するポリオールとポリイソシアネートを重付加反応させて得られる。ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、キシリレングリコール、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリラクトン系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、アクリル系ポリオール、これらの誘導体が挙げられる。
【0033】
ポリエステル系ポリオールは、二塩基酸とグリコールとを重縮合させて得られる。二塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸、蓚酸、マロン酸、グルタル酸、酒石酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸が挙げられる。グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、キシリレングリコールが挙げられる。
【0034】
ポリエーテル系ポリオールとしては、ポリエチレングリコールエーテル、ポリプロピレングリコールエーテル、ポリテトラメチレングリコールエーテルが挙げられる。
【0035】
ポリカーボネート系ポリオールとしては、ポリ1,6−ヘキサンカーボネートジオール、ポリ1,4−ブチレンカーボネートジオールが挙げられる。
【0036】
ポリイソシアネート化合物としては、ポリブチレンアジペート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、これらの誘導体が挙げられる。
【0037】
本発明の多孔質シートは、多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸する工程、多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節する工程、多孔質基材を凝固液に接触させて多孔質基材に多孔質ポリウレタンを析出させる工程を経て製造される。多孔質シートの製造方法において、多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸する代わりに、ワイヤーバーによる手塗りやコーターで塗布すると、表裏面の多孔質ポリウレタン被覆率が99.0%未満になる場合や多孔質ポリウレタンの孔面積率が5.0%未満になる場合があり、本発明の多孔質シートを得ることができない。ポリウレタン溶液の媒体としては、ポリウレタンを溶解する良溶媒を用いる。良溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられ、これらは単独で使用しても良いし、混合して使用しても良い。
【0038】
ポリウレタン溶液には、それ単独ではポリウレタンを溶解しない貧溶媒を混合しても良い。貧溶媒としては、水、アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、シクロヘキサン、トリクロロフルオロエタンなどが挙げられる。貧溶媒は、異なる貧溶媒を混合して用いても良い。水はイオン交換水や蒸留水が好ましい。ポリウレタン溶液における貧溶媒の含有率は0〜20質量%が好ましい。貧溶媒の含有率が20質量%を超えるとポリウレタンが析出してしまう。
【0039】
ポリウレタン溶液におけるポリウレタンの固形分濃度は、2.0〜10質量%が好ましく、3.0〜8.0質量%がより好ましく、4.0〜7.0質量%がさらに好ましい。固形分濃度が2.0質量%未満では、多孔質ポリウレタンの被覆率が不十分になる場合があり、10質量%より濃くなると、ポリウレタン溶液の粘度が高くなりすぎて、多孔質基材への含浸性に支障を来たす場合や多孔質ポリウレタンの孔面積率が5.0%未満になる場合がある。
【0040】
多孔質ポリウレタンを析出させるために使用する凝固液は、貧溶媒100%でも良いし、貧溶媒と良溶媒の混合液でも良い。貧溶媒100%の場合は、2種以上の貧溶媒を混合して用いても良い。貧溶媒としては、上述したポリウレタン溶液に混合しても良い貧溶媒を使用することができる。ポリウレタン溶液を含浸した後の多孔質基材は水に濡れにくいため、凝固液は水とアルコールの混合溶液を使用することが好ましい。凝固液以外の製造条件を一定にして比較したとき、水とアルコールの混合溶液は、水単独の場合よりも、短時間で多孔質ポリウレタンの孔面積率を高くする傾向があり、多孔質シートの製造効率を上げる効果がある。
【0041】
本発明の多孔質シートの製造方法において、多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸させるには、例えば、ディップコーターなどの含浸機を用いれば良い。
【0042】
多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸させた後は、多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節する。ポリウレタン溶液量を調節するには、2本のニップロール間に通して絞る方法、ブレードやワイヤーバーでポリウレタン溶液を掻き落とす方法、複数のロールに通して掻き落とす方法、これらを組み合わせた方法を用いる。ニップロールの材質は、ゴム、樹脂、金属の何れでも良いが、ポリウレタン溶液に対する耐性をもつものが良い。ブレードやワイヤーバーは2本以上用いても良い。多孔質基材の坪量と最大孔径を考慮して、多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節することにより、全ポリウレタンの含有率、多孔質ポリウレタンの孔径分布と被覆率、多孔質シートの平均孔径を調節することができ、多孔質ポリウレタンの均一性を高めることができる。
【0043】
一方、多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節せずに凝固液に接触させると、多孔質基材表面に過剰量のポリウレタン溶液が保持されるため、多孔質ポリウレタンの析出むらが生じ、多孔質シートの厚みを均一に薄くすることが困難で、少なくとも片表面の多孔質ポリウレタンの孔面積率が著しく小さくなる。また、ポリウレタン溶液の固形分濃度が3.0質量%以下になるとポリウレタンが粒状に析出して多孔質ポリウレタンの形成が不十分になる傾向がある。
【0044】
凝固液に多孔質基材を接触させる方法としては、多孔質基材を凝固液に浮かべる方法、トランスファロールコーターやリバースロールコーターなどを使い、凝固液で濡らしたロールに接触させる方法、凝固液をシャワー状やカーテン状に多孔質基材に当てる方法、凝固液を多孔質基材に噴霧する方法などが挙げられる。シャワー状やカーテン状に当てる場合は、ポリウレタン溶液が多孔質基材から流れ落ちたり、多孔質ポリウレタンの析出が斑になることがある。多孔質基材を連続で通す場合には、トランスファロールコーターやリバースロールコーターを使う方法や凝固液に浸漬する方法が好ましい。多孔質基材を連続して凝固液に通す場合は、断続的または連続的に排液と新液供給とを実施することが好ましい。凝固液の温度は特に限定されるものではないが、0〜60℃の範囲が好ましい。凝固液に多孔質基材を接触させる時間は、5秒以上が好ましい。多孔質基材を凝固液に所定時間接触させた後は、多孔質基材を水洗することが好ましい。
【0045】
多孔質ポリウレタンを析出させた後の多孔質基材の乾燥方法としては、熱風ドライヤー、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤーなどを用いて行えば良い。必要に応じて、赤外線ヒーターを併用しても良い。熱風ドライヤーの場合は、相対的に多孔質シートの裂断長が短めになる傾向があり、シリンダードライヤーとヤンキードライヤーの場合は、多孔質シートの裂断長が相対的に長めになる傾向がある。シリンダードライヤーとヤンキードライヤーの場合は、熱風ドライヤーよりも低温で効率良く乾燥できる傾向がある。
【0046】
本発明の多孔質シートは、熱処理されてなることが好ましい。熱処理は多孔質ポリウレタンの融点+10℃〜融点−50℃の範囲内の温度に加熱したロールに接触させる方法、同範囲内の温度で恒温乾燥機内に5分〜5時間静置する方法により行う。熱処理することにより、熱処理しない場合よりも多孔質ポリウレタンの貫通孔の孔径を大きくすることができ、孔面積率を大きくすることができる。多孔質ポリウレタンを析出させた直後の多孔質シートの乾燥温度を多孔質ポリウレタンの融点+10℃〜融点−50℃の範囲内にすることによって乾燥と熱処理を兼ねることもできる。
【0047】
本発明における多孔質ポリウレタンの厚みは、0.01〜4μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましい。0.01μm未満では、電極の膨張時やリチウムなどのデンドライトが発生したときに、多孔質ポリウレタンが破れて、電極活物質やデンドライトが貫通して、内部短絡する場合がある。4μmより厚いと、イオン移動の妨げになり、内部抵抗が高くなる場合がある。多孔質ポリウレタンの厚みやその存在状態は、多孔質シートの表面または断面を撮影した電子顕微鏡写真を観察することにより確認することができる。
【0048】
本発明の多孔質シート中の全ポリウレタンの含有率は2.0〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、15〜55質量%がさらに好ましい。全ポリウレタンの含有率が2.0質量%未満の場合、多孔質シートを電気化学素子用セパレータとして用いたときに、漏れ電流が大きくなる場合がある。55質量%より多い場合、特に70質量%より多いと、厚みを薄くしにくくなる場合や多孔質シート内部の空間が少なくなり、電解液浸透性が悪くなる場合や内部抵抗が高くなる場合がある。全ポリウレタンの含有率が10質量%以上、特に15質量%以上になると、多孔質シートの表裏面の多孔質ポリウレタン被覆率が高くなる傾向にあるため、漏れ電流は小さくなり、電気化学素子用セパレータとしての特性ばらつきと電解液のドライアップが抑制されるため、充放電サイクル特性が向上する。全ポリウレタンの含有率は、ポリウレタン溶液の固形分濃度とポリウレタン溶液量調節後の多孔質基材中のポリウレタン溶液量によって決まる。
【0049】
本発明の多孔質シートは、厚みが9〜100μmであることが好ましく、15〜30μmであることがより好ましい。本発明の多孔質シートの密度は0.250〜0.750g/cm3であることが好ましく、0.500〜0.700g/cm3であることがより好ましい。厚みが9μm未満では、取り扱い時や加工時に破れたり、穴があいたりすることがある。100μmより厚いと、電気化学素子用セパレータとして用いたときに収納できる電極面積が小さくなり、容量が不十分になる場合がある。密度が0.250g/cm3未満だと、電気化学素子用セパレータとして用いたときに、漏れ電流が大きくなる場合がある。0.750g/cm3より大きいと、電気化学素子用セパレータとして用いたときに内部抵抗が高くなる場合がある。
【0050】
本発明の多孔質シートは、ガーレー透気度が0.1〜50.0s/100mlであることが好ましく、0.5〜30.0s/100mlであることがより好ましく、1.0〜15.0s/100mlであることがさらに好ましい。ガーレー透気度が、0.5s/100ml未満、特に0.1s/100ml未満では、電気化学素子用セパレータとして用いたときに漏れ電流が大きくなる場合や内部短絡する場合がある。30.0s/100mlより大きいと、特に50.0s/100mlより大きいと、電気化学素子用セパレータとして用いたときに内部抵抗が高くなる場合がある。
【0051】
本発明における電気化学素子とは、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、レドックスキャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、リチウムイオン電池、ポリアセン電池などを指す。
【0052】
電解液には、イオン解離性の塩を溶解させた水溶液、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルソルブ、これらの混合溶媒などの有機溶媒にイオン解離性の塩を溶解させたもの、イオン性液体(固体溶融塩)などが挙げられる。水溶液系と有機溶媒系の何れも利用できる電気化学素子の場合は、水溶液系は耐電圧が低いため、有機溶媒系の方が好ましい。電解液の代わりにポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、これらの誘導体などの導電性高分子膜を用いても良い。
【0053】
電気二重層キャパシタの電極活物質としては、例えば、活性炭、カーボンブラック、カーボンエーロゲル、カーボンナノチューブ、非多孔性炭素などが挙げられる。リチウムイオンキャパシタの負極活物質としては、例えば、黒鉛、難黒鉛化炭素、ポリアセン系有機半導体などが挙げられ、正極活物質としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、活性炭、ポリアセン系有機半導体などが挙げられる。レドックスキャパシタの電極活物質としては、例えば、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化コバルトなどの金属酸化物、これら金属酸化物の複合物、これら金属酸化物の水和物、これら金属酸化物と炭素材料との複合物、窒化モリブデン、窒化モリブデンと金属酸化物との複合物などが挙げられる。
【0054】
ハイブリッドキャパシタとは、正極か負極のどちらかにファラデー反応を利用したキャパシタである。電極活物質としては、例えば、活性炭、カーボンブラック、カーボンエーロゲル、カーボンナノチューブ、非多孔性炭素、チタン酸リチウムなどが挙げられる。
【0055】
リチウムイオン電池の負極活物質としては、黒鉛やコークスなどの炭素材料、金属リチウム、アルミニウム、シリカ、スズ、ニッケル、鉛から選ばれる1種以上の金属とリチウムとの合金、SiO、SnO、Fe2O3、WO2、Nb2O5、Li4/3Ti5/3O4等の金属酸化物、Li0.4CoNなどの窒化物が用いられる。正極活物質としては、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、チタン酸リチウム、リチウムニッケルマンガン酸化物、リン酸鉄リチウムが用いられる。リン酸鉄リチウムは、さらに、マンガン、クロム、コバルト、銅、ニッケル、バナジウム、モリブデン、チタン、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、マグネシウム、ホウ素、ニオブから選ばれる1種以上の金属との複合物でも良い。
【0056】
リチウムイオン電池の電解液には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、これらの混合溶媒などの有機溶媒にリチウム塩を溶解させたものが用いられる。リチウム塩としては、六フッ化リン酸リチウムや4フッ化ホウ酸リチウムが挙げられる。固体電解質としては、ポリエチレングリコールやその誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、ポリシロキサンやその誘導体、ポリフッ化ビニリデンなどのゲル状ポリマーにリチウム塩を溶解させたものが用いられる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0058】
多孔質基材A〜Fを準備し、最大孔径、厚み、密度、厚み方向に存在する短繊維の本数を測定した。最大孔径は、ASTM−F316−86に規定されるバブルポイント法に準拠して測定した。厚みおよび密度は、JIS C2111に準拠して測定した。
【0059】
<多孔質基材A>
繊度0.06dtex、繊維長3mmのポリエステル繊維(帝人ファイバー製、商品名:TP04N)50質量%、繊度0.2dtex、繊維長3mmの熱融着性ポリエステル繊維(帝人ファイバー製、商品名:TK08PN)40質量%、質量平均繊維長0.39mm、カナディアンスタンダードフリーネス0mlのフィブリル状セルロース10質量%からなる厚み40μm、密度0.300g/cm3の湿式不織布を作製し、多孔質基材Aとした。多孔質基材Aの最大孔径は15.7μmであった。電子顕微鏡で観察した結果、厚み方向に存在する短繊維の本数は最大12本であった。
【0060】
<多孔質基材B>
繊度0.1dtex、繊維長3mmのポリエステル繊維(帝人ファイバー製、商品名:TM04PN)45質量%、繊度0.2dtex、繊維長3mmの熱融着性ポリエステル繊維(帝人ファイバー製、商品名:TK08PN)30質量%、質量平均繊維長0.39mm、カナディアンスタンダードフリーネス0mlのフィブリル状セルロース5質量%、質量平均繊維長0.61mm、カナディアンスタンダードフリーネス0mlのフィブリル状パラアラミド繊維20質量%からなる厚み35μm、密度0.286g/cm3の湿式不織布を作製し、多孔質基材Bとした。多孔質基材Bの最大孔径は11.4μmであった。電子顕微鏡で観察した結果、厚み方向に存在する短繊維の本数は最大12本であった。
【0061】
<多孔質基材C>
繊度0.3dtex、繊維長3mmのポリエステル繊維(帝人ファイバー製、商品名:TM04PN)60質量%、繊度0.5dtex、繊維長3mmの熱融着性ポリエステル繊維(帝人ファイバー製、商品名:TK08PN)40質量%からなる厚み29μm、密度0.269g/cm3のポリエステル製不織布を多孔質基材Cとした。多孔質基材Cの最大孔径は98.3μmであった。電子顕微鏡で観察した結果、厚み方向に存在する短繊維の本数は最大3本であった。
【0062】
<多孔質基材D>
湿式スパンボンド法で作製された厚み45μm、密度0.311g/cm3のキュプラレーヨン不織布(旭化成せんい製、商品名:ベンリーゼSA14G)を多孔質基材Dとした。多孔質基材Dの最大孔径は67.5μmであった。電子顕微鏡で観察した結果、厚み方向に存在する短繊維の本数は最大8本であった。
【0063】
<多孔質基材E>
繊度1.7dtex、繊維長5mmの溶剤紡糸セルロース(レンチング社製、商品名:テンセル)をダブルディスクリファイナーにて叩解処理して得られた、質量平均繊維長0.64mm、カナディアンフリーネス10mlのフィブリル化セルロースを50質量%、カナディアンフリーネス600mlの麻パルプを50質量%の比率で混合したスラリーを調製し、円網抄紙機と円網抄紙機のコンビネーション抄紙機を用い湿式抄紙して、厚み30μm、密度0.500g/cm3の紙を多孔質基材Eとした。多孔質基材Eの最大孔径は1.6μmであった。
【0064】
<多孔質基材F>
繊度0.44dtex、繊維長5mmのポリエステル繊維(クラレ製、商品名:エステルEP043)40質量%、繊度0.2dtex、繊維長3mmの熱融着性ポリエステル繊維(帝人ファイバー製、商品名:TK08PN)48質量%、繊度1.1dtexの芯鞘型ポリエステル繊維(帝人ファイバー製、商品名:TJ04CN)12質量%からなる厚み25μm、密度0.680g/cm3のポリエステル製不織布を多孔質基材Fとした。多孔質基材Fの最大孔径は22.5μmであった。電子顕微鏡で観察した結果、厚み方向に存在する短繊維の本数は最大15本であった。
【0065】
<ポリウレタン溶液1>
ポリエステル系ポリオールとポリイソシアネートとの重付加反応により得られたポリウレタンのDMF溶液(大日精化工業製、商品名:レザミンCU−4330)をN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、ポリウレタンの固形分濃度を3.0質量%に調製し、これをポリウレタン溶液1(PU溶液1)とした。ここで、DMFとは、N,N−ジメチルホルムアミドである。該ポリウレタンの融点は示差走査熱量測定装置を用いて測定した結果、203.5℃であった。
【0066】
<ポリウレタン溶液2>
ポリウレタン溶液(大日精化工業製、商品名:レザミンCU−4330)をN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、ポリウレタンの固形分濃度を4.5質量%に調製し、これをポリウレタン溶液2(PU溶液2)とした。
【0067】
<ポリウレタン溶液3>
ポリウレタン溶液(大日精化工業製、商品名:レザミンCU−4330)をN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、ポリウレタンの固形分濃度を6.0質量%に調製し、これをポリウレタン溶液3(PU溶液3)とした。
【0068】
<ポリウレタン溶液4>
ポリウレタン溶液(大日精化工業製、商品名:レザミンCU−4330)をDMFで希釈し、ポリウレタンの固形分濃度を6.0質量%に調製し、これをポリウレタン溶液4(PU溶液4)とした。
【0069】
<ポリウレタン溶液5>
ポリウレタン溶液(大日精化工業製、商品名:レザミンCU−4330)をDMFで希釈し、ポリウレタンの固形分濃度を10質量%に調製し、これをポリウレタン溶液5(PU溶液5)とした。
【0070】
<ポリウレタン溶液6>
ポリウレタン溶液(大日精化工業製、商品名:レザミンCU−4330)をDMFで希釈し、ポリウレタンの固形分濃度を12質量%に調製し、これをポリウレタン溶液6(PU溶液6)とした。
【0071】
<ポリウレタン溶液7>
ポリウレタン溶液(大日精化工業製、商品名:レザミンCU−4330)をN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、ポリウレタンの固形分濃度を12質量%に調製し、これをポリウレタン溶液7(PU溶液7)とした。
【0072】
<ポリウレタン溶液8>
ポリウレタンのDMF溶液(DIC製、商品名:クリスボンMP−829)100質量部、アニオン系界面活性剤(DIC製、商品名:クリスボンアシスターSD−11)2質量部、水3質量部、DMF20質量部の混合溶液を調製し、ポリウレタン溶液8(PU溶液8)とした。
【0073】
<ポリアミドイミド溶液1>
ポリアミドイミド溶液(東洋紡績製、商品名:バイロマックスHR16NN)をN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、ポリアミドイミドの固形分濃度を3.0質量%に調製し、これをポリアミドイミド溶液1(PAI溶液1)とした。
【0074】
<ポリエーテルスルホン溶液1>
ポリエーテルスルホン(住友化学製、商品名:スミカエクセル5003PS)をN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、ポリエーテルスルホンの固形分濃度を8.0質量%に調製し、これをポリエーテルスルホン溶液1(PES溶液1)とした
【0075】
<凝固液1>
20℃のイオン交換水を凝固液1とした。
【0076】
<凝固液2>
イオン交換水50質量%、メタノール50質量%の混合溶液を20℃にしたものを凝固液2とした。
【0077】
実施例1
ディップコーターを用いてPU溶液1を多孔質基材Aに含浸させ、直径50mmの2本のゴムロール間に線圧30N/cmで通して多孔質基材A中のポリウレタン溶液量を調節し、凝固液1に60秒間浸漬して多孔質ポリウレタンを析出させた。その後、イオン交換水で洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート1を得た。
【0078】
実施例2、3
多孔質基材、ポリウレタン溶液、凝固液の組み合わせを表1の通りにした以外は、実施例1と同様にして多孔質シート2、3を作製した。
【0079】
実施例4
多孔質基材、ポリウレタン溶液、凝固液の組み合わせを表1の通りにし、130℃の熱風乾燥機で乾燥した後、180℃の恒温乾燥機内に2時間静置して熱処理した以外は実施例1と同様にして多孔質シート4を作製した。
【0080】
実施例5
多孔質基材Aの巻取りから連続して繰り出し、ディップコーターを用いてPU溶液1を多孔質基材Aに含浸させた後、多孔質基材Aの片面にワイヤーバー(#20)を押し当てて多孔質基材A中のポリウレタン溶液量を調節し、凝固液2の槽に浸漬しながら通して多孔質ポリウレタンを析出させた。凝固液2に浸漬している時間は60秒であった。その後、イオン交換水の槽に通して洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート5を得た。
【0081】
実施例6
多孔質基材Aの巻取りから連続して繰り出し、ディップコーターを用いてPU溶液4を多孔質基材Aに含浸させた後、多孔質基材Aの表面と裏面に1箇所ずつワイヤーバー(#30)を押し当てて多孔質基材A中のポリウレタン溶液量を調節し、凝固液2の槽に浸漬しながら通して多孔質ポリウレタンを析出させた。凝固液2に浸漬している時間は60秒であった。その後、イオン交換水の槽に通して洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート6を得た。
【0082】
実施例7
多孔質基材Aの巻取りから連続して繰り出し、ディップコーターを用いてPU溶液2を含浸させ、8本のSUS製ロールに通すと同時に、表面1箇所と裏面1箇所にSUS製ブレードを直角に押し当てて多孔質基材Aの表面のポリウレタン溶液を掻き落として、多孔質基材A中のポリウレタン溶液量を調節し、さらに凝固液1の槽に浸漬しながら通して多孔質ポリウレタンを析出させた。凝固液1に浸漬している時間は60秒であった。その後、イオン交換水の槽に通して洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート7を得た。
【0083】
実施例8
表1に示した条件に従い、実施例7と同様にして多孔質基材Aに多孔質ポリウレタンを析出させた。その後、イオン交換水の槽に通して洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥した後、180℃の恒温乾燥機内に2時間静置して熱処理し、カレンダー処理して多孔質シート8を作製した。
【0084】
実施例9
表1に示した条件に従い、凝固液への接触時間を30秒にした以外は実施例7と同様にして多孔質シート9を作製した。
【0085】
実施例10
表1に示した条件に従い、実施例8と同様にして多孔質シート10を作製した。
【0086】
実施例11
多孔質基材Bの巻取りから連続して繰り出し、ディップコーターを用いてPU溶液1を含浸させ、直径50mmの2本のゴムロール間に線圧30N/cmで通して多孔質基材B中のポリウレタン溶液量を調節し、凝固液1の槽に浸漬しながら通して多孔質ポリウレタンを析出させた。凝固液1に浸漬している時間は30秒であった。その後、イオン交換水の槽に通して洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート11を得た。
【0087】
実施例12
多孔質基材、ポリウレタン溶液、凝固液の組み合わせを表1の通りにした以外は、実施例11と同様にして多孔質シート12を作製した。
【0088】
実施例13
多孔質基材、ポリウレタン溶液、凝固液の組み合わせを表1の通りにし、SUS製ブレードを使用せず、SUS製ロールに通してポリウレタン溶液を掻き落として多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節し、凝固液への接触時間を30秒にした以外は実施例7と同様にして多孔質シート13を作製した。
【0089】
実施例14
ディップコーターを用いてPU溶液4を多孔質基材Cに含浸させ、8本のSUS製ロールに通してポリウレタン溶液を掻き落として多孔質基材C中のポリウレタン溶液量を調節し、さらに、凝固液2に30秒間浮揚させて多孔質ポリウレタンを析出させた。その後、イオン交換水の槽に通して洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート14を作製した。
【0090】
実施例15
表1に示した条件に従い、実施例13と同様にして多孔質シート15を作製した。
【0091】
実施例16
表1に示した条件に従い、実施例13と同様にして多孔質基材Cに多孔質ポリウレタンを析出させた。その後、イオン交換水の槽に通して洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥した後、180℃の恒温乾燥機内に2時間静置して熱処理し、カレンダー処理して多孔質シート16を作製した。
【0092】
実施例17、19、21
表1に示した条件に従い、凝固液への接触時間を10秒にした以外は実施例13と同様にして多孔質シート17、19、21を作製した。
【0093】
実施例18、20
表1に示した条件に従い、実施例16と同様にして多孔質シート18、20を作製した。
【0094】
【表1】
【0095】
(比較例1)
ディップコーターを用いてPU溶液1を多孔質基材に含浸させ、多孔質基材A中のポリウレタン溶液量を調節せず、凝固液2に60秒間浸漬して多孔質ポリウレタンを析出させた。その後、イオン交換水で洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート22を得た。
【0096】
(比較例2)
ワイヤーバー(#30)を用いてPU溶液3を多孔質基材Aに塗布し、凝固液1に60秒間浸漬して多孔質ポリウレタンを析出させた。その後、イオン交換水で洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート23を得た。
【0097】
(比較例3)
ワイヤーバー(#30)を用いてPU溶液7を多孔質基材Aに塗布し、凝固液2に60秒間浸漬して多孔質ポリウレタンを析出させた。その後、イオン交換水で洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート24を得た。
【0098】
(比較例4)
ワイヤーバー(#30)を用いてPU溶液6を多孔質基材Aに塗布し、凝固液1に60秒間浸漬して多孔質ポリウレタンを析出させた。その後、イオン交換水で洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート25を得た。
【0099】
(比較例5)
ディップコーターを用いてPU溶液4を多孔質基材Aに含浸させ、多孔質基材A中のポリウレタン溶液量を調節せずに、凝固液1に60秒間浸漬して多孔質ポリウレタンを析出させた。その後、イオン交換水で洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート26を得た。
【0100】
(比較例6)
ワイヤーバー(#30)を用いてPAI溶液1を多孔質基材Aに塗布し、凝固液1に60秒間浸漬してポリアミドイミドからなる網状構造体を析出させた。その後、イオン交換水で洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート27を得た。
【0101】
(比較例7)
ディップコーターを用いてPES溶液1を多孔質基材Aに含浸させ、直径50mmの2本のゴムロール間に線圧30N/cmで通して多孔質基材A中のPES溶液量を調節し、凝固液1に60秒間浸漬してポリエーテルスルホンからなる網状構造体を析出させた。その後、イオン交換水で洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート28を得た。
【0102】
(比較例8)
多孔質基材Aを2枚積層したままディップコーターを用いてPAI溶液1を含浸させ、直径50mmの2本のゴムロール間に線圧30N/cmで通し、積層したまま凝固液1に60秒間浮揚させてポリアミドイミドからなる網状構造体を析出させた後、イオン交換水で洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥した。2枚の多孔質基材Aを剥離させて上層の多孔質基材Aだけをカレンダー処理して多孔質シート29を得た。
【0103】
(比較例9)
ディップコーターを用いてPU溶液2を多孔質基材Cに含浸させ、多孔質基材C中のポリウレタン溶液量を調節せずに、凝固液2に60秒間浸漬して多孔質ポリウレタンを析出させた。その後、イオン交換水で洗浄し、130℃の熱風乾燥で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート30を得た。
【0104】
(比較例10)
ワイヤーバー(#30)を用いて、多孔質基材FにPU溶液8を塗布し、凝固液1に2分間浸漬し、次いで40℃のイオン交換水に15分間、さらに60℃のイオン交換水に15分間浸漬して、80℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート31を得た。塗布量は乾燥後で10g/m2になるようにした。
【0105】
(比較例11)
多孔質基材Eを多孔質シート32として用いた。
【0106】
【表2】
【0107】
表1および2中の「接触方式」とは、多孔質基材を凝固液に接触させる方式を意味する。「接触時間」とは、多孔質基材を凝固液に接触させる時間を意味する。「熱処理温度」とは、多孔質シートの熱処理温度を意味し、全ての実施例において恒温乾燥機を用いて熱処理した。
【0108】
多孔質シート1〜32について、下記の試験方法により評価を行い、結果を表3と表4に示した。
【0109】
<厚み>
多孔質シート1〜32の厚みをJIS C2111に準拠して測定した。
【0110】
<密度>
多孔質シート1〜32の密度をJIS C2111に準拠して測定した。
【0111】
<透気度>
外径28.6mmの円孔を有するガーレー透気度計を用いて、多孔質シート1〜32の各シートにつき巾方向に10箇所のガーレー透気度を測定し、その平均値を示した。ガーレー透気度はJIS P8117に準拠して測定した。
【0112】
<含有率>
多孔質シート1〜26、30、31について全ポリウレタンの含有率を算出した。全ポリウレタンの含有率は、多孔質ポリウレタンを析出させた後の多孔質シートの質量W1から元の多孔質基材の質量W2を差し引いて得られる値W3をW1で除して100倍して得られる値とした。
【0113】
多孔質シート27、29について全ポリアミドイミドの含有率を算出した。全ポリアミドイミドの含有率は、ポリアミドイミドを析出させた後の多孔質シートの質量W4から元の多孔質基材の質量W2を差し引いて得られる値W5をW4で除して100倍して得られる値とした。
【0114】
多孔質シート28について全ポリエーテルスルホンの含有率を算出した。全ポリエーテルスルホンの含有率は、ポリエーテルスルホンを析出させた後の多孔質シートの質量W6から元の多孔質基材の質量W2を差し引いて得られる値W7をW6で除して100倍して得られる値とした。
【0115】
<被覆率A、B>
多孔質シート1〜26、30、31の表裏面を電子顕微鏡で観察し、100倍率の写真を撮影し、多孔質シートの表面1mm2当りに存在する多孔質ポリウレタンの面積の割合、すなわち被覆率を算出し、その平均値を示した。多孔質シートの表面Aに存在する多孔質ポリウレタンの被覆率を被覆率Aとし、表面Bに存在する多孔質ポリウレタンの被覆率を被覆率Bとした。表面AとBは表裏の関係にあり、どちらの面をAにするかは任意とした。
【0116】
多孔質シート27、29の表裏面を電子顕微鏡で観察し、100倍率の写真を撮影し、多孔質シートの表面1mm2当りに存在するポリアミドイミド網状構造体の面積の割合、すなわち被覆率を算出し、その平均値を示した。多孔質シートの表面Aに存在する網状構造体の被覆率を被覆率Aとし、表面Bに存在する網状構造体の被覆率を被覆率Bとした。表面AとBは表裏の関係にあり、どちらの面をAにするかは任意とした。
【0117】
多孔質シート28の表裏面を電子顕微鏡で観察し、100倍率の写真を撮影し、多孔質シートの表面1mm2当りに存在するポリエーテルスルホン網状構造体の面積の割合、すなわち被覆率を算出し、その平均値を示した。多孔質シートの表面Aに存在する網状構造体の被覆率を被覆率Aとし、表面Bに存在する網状構造体の被覆率を被覆率Bとした。表面AとBは表裏の関係にあり、どちらの面をAにするかは任意とした。
【0118】
<孔径分布A、B>
多孔質シート1〜26、30、31の表裏面を被覆してなる多孔質ポリウレタンの電子顕微鏡写真を撮り、貫通孔の孔径分布を調べた。多孔質シートの表面Aに存在する多孔質ポリウレタンの孔径分布を孔径分布Aとし、表面Bに存在する多孔質ポリウレタンの孔径分布を孔径分布Bとした。この場合の表面AとBは、多孔質シート1〜26、30、31の<被覆率A、B>と同じ面を意味する。
【0119】
多孔質シート27、29の表裏面に存在するポリアミドイミド網状構造体の電子顕微鏡写真を撮り、網状構造体の孔径分布を調べた。多孔質シートの表面Aに存在する網状構造体の孔径分布を孔径分布Aとし、表面Bに存在する網状構造体の孔径分布を孔径分布Bとした。この場合の表面AとBは、多孔質シート27、29の<被覆率A、B>と同じ面を意味する。
【0120】
多孔質シート28の表裏面に存在するポリエーテルスルホン網状構造体の電子顕微鏡写真を撮り、網状構造体の孔径分布を調べた。多孔質シートの表面Aに存在する網状構造体の孔径分布を孔径分布Aとし、表面Bに存在する網状構造体の孔径分布を孔径分布Bとした。この場合の表面AとBは、多孔質シート28の<被覆率A、B>と同じ面を意味する。
【0121】
<孔面積率A、B>
多孔質シート1〜26、30、31の表裏面を被覆している多孔質ポリウレタンの電子顕微鏡写真を撮り、所定面積S1の多孔質ポリウレタンに存在する貫通孔の総平面積S2を算出し、S1に占めるS2の割合を孔面積率とした。多孔質シートの表面Aに存在する多孔質ポリウレタンの孔面積率を孔面積率Aとし、表面Bに存在する多孔質ポリウレタンの孔面積率を孔面積率Bとした。この場合の表面AとBは、多孔質シート1〜26、30、31の<被覆率A、B>と同じ面を意味する。
【0122】
多孔質シート27、29の表裏面を被覆しているポリアミドイミドからなる網状構造体の電子顕微鏡写真を撮り、所定面積S3の網状構造体に存在する貫通孔の総平面積S4を算出し、S3に占めるS4の割合を孔面積率とした。多孔質シートの表面Aに存在する網状構造体の孔面積率を孔面積率Aとし、表面Bに存在する網状構造体の孔面積率を孔面積率Bとした。この場合の表面AとBは、多孔質シート27、29の<被覆率A、B>と同じ面を意味する。
【0123】
多孔質シート28の表裏面を被覆しているポリエーテルスルホンからなる網状構造体の電子顕微鏡写真を撮り、所定面積S5の網状構造体に存在する貫通孔の総平面積S6を算出し、S5に占めるS6の割合を孔面積率とした。多孔質シートの表面Aに存在する網状構造体の孔面積率を孔面積率Aとし、表面Bに存在する網状構造体の孔面積率を孔面積率Bとした。この場合の表面AとBは、多孔質シート28の<被覆率A、B>と同じ面を意味する。
【0124】
【表3】
【0125】
【表4】
【0126】
表4中の多孔質シート28の表面Bは、孔径分布が0.010〜50μmの多孔質ポリウレタンが存在せず、代わりに貫通孔のないポリエーテルスルホン皮膜が99.0%被覆していたため、平均孔径は測定不能であった。このことから平均孔径が0.29μm未満であることは明白である。多孔質シート29の表面Bは、孔径分布が0.010〜50μmの多孔質ポリウレタンが存在せず、97.5%は貫通孔を有さないポリアミドイミド皮膜が被覆しており、2.5%はポリアミドイミドが存在しない領域であったため、平均孔径は測定不能であった。このことから平均孔径が0.29μm未満であることは明白である。
【0127】
<電気二重層キャパシタ1〜32>
正極および負極として、表面をエッチング処理した厚み30μmのアルミニウム箔集電体に厚み120μmの電極活物質層が形成されてなる電極を用いた。電極活物質層は、平均粒径5μm、BET比表面積1400m2/gの粉末状活性炭85質量%、平均粒径200nmのアセチレンブラック7質量%、ポリフッ化ビニリデン8質量%からなる。多孔質シート1〜32を負極と正極の間に介して積層し、これをアルミニウムラミネート型収納袋に収納してスタック型素子を形成した。正極または負極に接触させる多孔質シート1〜32の表面の区別はしなかった。この素子ごと150℃で10時間真空乾燥し、電極および多孔質シートに含まれる水分を除去した。これを真空中で室温まで放冷した後、素子内に電解液を注入し、注入口を密栓した後、0.5MPaで加圧してスタック型素子を固定し、電気二重層キャパシタ1〜32(EDLC1〜32)をそれぞれ100個作製した。電解液には、プロピレンカーボネートに1.5mol/lになるように(C2H5)3(CH3)NBF4を溶解させたものを用いた。
【0128】
<リチウムイオンキャパシタ負極>
難黒鉛化炭素粉末(クレハ製、商品名:カーボトロンP)90質量%、ポリフッ化ビニリデン10質量%の比率で、N−メチル−2−ピロリドンに分散させたスラリーを調製した。厚さ32μm(気孔率57%)の銅製エキスパンドメタルからなる負極集電体の両面に、アプリケータを用いて該スラリーを塗工、乾燥した後に、ロールプレス装置を用いてプレス処理し、厚み90μmのリチウムイオンキャパシタ負極を作製した。
【0129】
<リチウムイオンキャパシタ正極>
フェノール樹脂を出発原料とする平均粒径50.0μm、比表面積2000m2/gの粉末状活性炭88質量%、平均粒径200nmのアセチレンブラック4質量%、エチレン−メタクリル酸共重合体からなるアクリル系バインダー5質量%、カルボキシメチルセルロース3質量%の比率で、イオン交換水に分散させたスラリーを調製した。厚み38μm(気孔率47%)のアルミニウム製エキスパンドメタル集電体の両面に、アプリケータを用いて上記のスラリーを塗工、乾燥した後に、ロールプレス装置を用いてプレス処理し、厚み173μmのリチウムイオンキャパシタ正極を作製した。
【0130】
<リチウムイオンキャパシタ1〜32>
リチウムイオンキャパシタ負極を50mm×80mmに切りそろえ、リチウムイオンキャパシタ正極を48mm×78mmに切りそろえ、多孔質シート1〜32を負極と正極の間に介して積層し、150℃で10時間真空乾燥し、リチウムイオンキャパシタ素子を作製した。正極または負極に接触させる多孔質シート1〜32の表面の区別はしなかった。負極活物質質量に対してドープ量が350mAh/gのイオン供給になるような金属リチウムを厚み70μmの銅ラスに圧着し、負極と対向するように上記リチウムイオンキャパシタ素子の最外部に1枚配置した。このように金属リチウムを配置したリチウムイオンキャパシタ素子をアルミニウム製収納袋に挿入後、エチレンプロピレンカーボネート50質量%とジメチルカーボネート50質量%の混合液に1.5mol/lになるようにLiClO4を溶解した電解液を注入し、真空封止してリチウムイオンキャパシタ1〜32(LIC1〜32)をそれぞれ100個作製した。
【0131】
<リチウムイオン電池負極>
天然黒鉛(関西熱化学製、商品名:NG7)97質量%、ポリフッ化ビニリデン3質量%の比率で、N−メチル−2−ピロリドンに分散させたスラリーを調製した。厚み15μmの銅箔集電体の両面に、アプリケータを用いて上記のスラリーを塗工、乾燥した後に、ロールプレス装置を用いてプレス処理し、厚み185μmのリチウムイオン電池負極を作製した。
【0132】
<リチウムイオン電池正極>
平均粒径5μmのLiMn2O4を95質量%、平均粒径200nmのアセチレンブラック2質量%、ポリフッ化ビニリデン3質量%の比率で、N−メチル−2−ピロリドンに分散させたスラリーを調製した。厚み20μmのアルミニウム箔集電体の両面に、アプリケータを用いて上記のスラリーを塗工、乾燥した後に、ロールプレス装置を用いてプレス処理し、厚み200μmのリチウムイオン電池正極を作製した。
【0133】
<リチウムイオン電池1〜31>
多孔質シート1〜31を介してリチウムイオン電池負極とリチウムイオン電池正極を合わせて巻回し、アルミニウム合金製の円筒型容器に収納して、リード体の溶接を行った。正極または負極に接触させる多孔質シート1〜31の表面の区別はしなかった。次いで、円筒型容器ごと150℃で10時間真空乾燥し、電極に含まれる水分を除去した。これを真空中で室温まで放冷した後、電解液を注入して密栓し、リチウムイオン電池1〜31(LIB1〜31)をそれぞれ100個作製した。電解液には、エチレンカーボネート30質量%、ジエチルカーボネート70質量%からなる混合溶媒に、LiPF6を1.2Mとなるように溶解させたものを用いた。
【0134】
EDLC1〜32、LIC1〜32、LIB1〜31について、下記の試験方法により評価を行い、その結果を表5〜7に示した。
【0135】
<内部抵抗>
EDLC1〜32を60℃、充電電流1Aで、3.5Vまで定電流充電し、3.5V到達後、1時間定電圧充電した。充電完了後、60℃、放電電流1Aで放電開始し、放電開始直後の電圧降下より内部抵抗を算出し、100個の平均値を表5に示した。
【0136】
LIC1〜32を60℃、充電電流1Aで3.8Vまで定電流充電し、3.8V到達後、1時間定電圧充電した。充電完了後、60℃、放電電流1Aで放電開始し、放電開始直後の電圧降下より内部抵抗を算出し、100個の平均値を表6に示した。
【0137】
LIB1〜31を60℃、充電電流1Aで4.2Vまで定電流充電し、4.2V到達後、3時間定電圧充電した。充電完了後、60℃、放電電流1Aで放電開始し、放電開始直後の電圧降下より内部抵抗を算出し、100個の平均値を表7に示した。
【0138】
<漏れ電流>
EDLC1〜32を60℃、充電電流1Aで3.5Vまで定電流充電し、60℃、3.5Vで24時間保持したときに計測される電流値を漏れ電流とし、100個の平均値を表5に示した。
【0139】
<静電容量維持率>
LIC1〜32を25℃、充電電流1Aで3.8Vになるまで定電流充電し、3.8V到達後、1時間定電圧充電した。充電完了後、放電電流1Aで2.2Vになるまで放電した。この充放電サイクルを繰り返し、10回目の放電における静電容量を初期静電容量とした。その後、3.8V、60℃にて1000時間の連続充電を行った。充電完了後、放電せずに60℃で3時間放置した後、60℃で3.8V−2.2Vの充放電サイクルを1回行って静電容量を算出し、初期静電容量に対する割合、すなわち静電容量維持率を求め、100個の平均値を表6に示した。
【0140】
<サイクル特性>
EDLC1〜32を25℃、充電電流1Aで、3.5Vまで定電流充電し、3.5V到達後、1時間定電圧充電した。充電完了後、25℃、放電電流1Aで放電したときの静電容量を初期静電容量とした。次いで、60℃、電流1Aで1000時間充放電を繰り返し、初期静電容量に対する1000時間後の静電容量の割合を算出し、100個の平均値を表5に示した。
【0141】
LIC1〜32を60℃、電流1Aで1000時間充放電を繰り返し、初期静電容量に対する1000時間後の静電容量の割合を算出し、100個の平均値を表6に示した。
【0142】
<自己放電率>
LIB1〜31を60℃、充電電流1Aで4.2Vまで定電流充電し、4.2V到達後、24時間定電圧充電した。充電完了後、放電せずに60℃で24時間放置し、24時間放置後の電圧減衰率を自己放電率(%)とし、100個の平均値を表7に示した。
【0143】
<ハイレート特性>
LIB1〜31を25℃、1Aで4.2Vになるまで充電し、さらに4.2Vで3時間定電圧充電した後、200mAで3.0Vまで放電したときの放電容量を測定し、これを初期容量とした。25℃、200mAで3.0Vまで放電した後、1Aで4.2Vになるまで充電し、さらに4.2Vで3時間定電圧充電した後、60℃、3Aで3.0Vまで放電して放電容量を測定し、初期容量に対する割合を計算し、ハイレート特性とした。ハイレート特性の値が大きいほど、ハイレート特性に優れることを意味する。
【0144】
【表5】
【0145】
【表6】
【0146】
【表7】
【0147】
実施例1〜21で作製した多孔質シートは、繊維と多孔質ポリウレタンを含有してなり、少なくとも片表面を、貫通孔の孔径分布が0.010〜50μmで孔面積率が5.0%以上の多孔質ポリウレタンが99.0%以上被覆してなり、多孔質シートの平均孔径が0.29〜3.0μmであるため、多孔質シート内部の相対的に大きな空間が保持され、電解液中のイオン移動を妨げることがなく該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン電池は、何れも内部抵抗が低く優れており、電気二重層キャパシタおよびリチウムイオンキャパシタはサイクル特性が優れており、リチウムイオン電池はハイレート特性に優れていた。
【0148】
実施例1〜21で作製した多孔質シートは、繊維を含有してなる多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸する工程、多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節する工程、多孔質基材を凝固液に接触させて多孔質基材に多孔質ポリウレタンを析出させる工程を経て製造されたため、多孔質シートの片表面または表裏面に集中的に多孔質ポリウレタンが形成され、電極活物質やデンドライトの貫通を阻止できるため、該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタは漏れ電流が小さく優れており、リチウムイオンキャパシタは静電容量維持率が高く優れており、リチウムイオン電池は自己放電率が低く優れていた。
【0149】
実施例3と4、7と8、9と10、15と16、17と18、19と20は、熱処理以外は同じ条件で製造された多孔質シートである。実施例4、8、10、12、16、18、20で作製した多孔質シートは、多孔質ポリウレタンの融点+10℃〜融点−50℃の範囲内の温度で熱処理されてなるため、熱処理しなかった実施例3、7、9、15、17、19の多孔質シートよりも平均孔径と孔面積率が大きくなっており、これらの多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン電池は何れも内部抵抗が低く優れていた。
【0150】
比較例1で作製した多孔質シートは、多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸した後に多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節しなかったため、表裏面のどちらも多孔質ポリウレタンの被覆率が99.0%未満であった。そのため、該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタは漏れ電流が大きく、リチウムイオンキャパシタは、静電容量維持率が悪く、リチウムイオン電池は自己放電率が悪かった。
【0151】
比較例2〜4で作製した多孔質シートは、本発明外の製造方法、すなわち多孔質基材にポリウレタン溶液を塗布する工程を経て製造されたため、多孔質ポリウレタンの孔面積率が5.0%未満であった。そのため、該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン電池は何れも内部抵抗が高かった。
【0152】
比較例5で作製した多孔質シートは、比較例1で使用したポリウレタン溶液よりも固形分濃度が高いポリウレタン溶液を使用したため、比較例1の多孔質シートよりも表裏面の多孔質ポリウレタンの被覆率が高くなったが、多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸した後に多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節しなかったため、多孔質ポリウレタンの孔面積率が小さく、多孔質シートの平均孔径が0.29μm未満であり、該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン電池は何れも内部抵抗が高かった。
【0153】
比較例6で作製した多孔質シートは、多孔質ポリウレタンではなく、ポリアミドイミドからなる網状構造体を含有してなり、図11に示したように該網状構造体が多孔質基材の表面および内部に多層に形成されたため、多孔質シート内部の空間が不十分になり、電解液中のイオン移動が妨げられて、該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタは実施例1〜21の多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタよりも内部抵抗が高く、リチウムイオンキャパシタは実施例1〜21の多孔質シートを具備してなるリチウムイオンキャパシタよりも内部抵抗が高く、静電容量維持率が悪く、リチウムイオン電池は、実施例1〜21の多孔質シートを具備してなるリチウムイオン電池よりも内部抵抗が高かった。
【0154】
比較例7で作製した多孔質シートは、表面Bにおいてポリエーテルスルホンの皮膜が97.5%被覆してなるため、平均孔径が0.29μm未満であり、該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン電池は何れも内部抵抗が高かった。
【0155】
比較例8で作製した多孔質シートは、表面Bにおいてポリアミドイミドの皮膜が99.9%被覆してなるため、電解液中のイオン移動を阻害してしまい、該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン電池は何れも内部抵抗が著しく高かった。
【0156】
比較例9で作製した多孔質シートは、比較例1および5で使用した多孔質基材よりも最大孔径の大きい多孔質基材を使用し、多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸した後、多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節しなかったため、表裏面を被覆してなる多孔質ポリウレタンの孔径分布が0.010〜50μmの範囲をはずれていた。そのため、多孔質シートの平均孔径が3.0μmより大きくなり、該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタは漏れ電流が大きく、リチウムイオンキャパシタは静電容量維持率が低く、リチウムイオン電池は自己放電率が高く劣っていた。
【0157】
比較例10で作製した多孔質シートは、本発明外の製造方法により製造されたため、多孔質ポリウレタンの孔面積率が著しく低く、該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン電池は何れも内部抵抗が高く、リチウムイオン電池はハイレート特性が悪かった。
【0158】
比較例11で作製した多孔質シートは、厚みの薄い紙であるため自己放電しやすく、該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタは漏れ電流がやや大きく、サイクル特性が悪く、リチウムイオンキャパシタは静電容量維持率とサイクル特性が悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明の活用例としては、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、レドックスキャパシタ、リチウムイオン電池などの電気化学素子用セパレータや限外濾過膜やエアフィルター、オイルフィルター、血液フィルター、逆浸透膜などが好適である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、レドックスキャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、リチウムイオン電池等の電気化学素子用セパレータとして好適な多孔質シート、多孔質シートの製造方法および多孔質シートからなる電気化学素子用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、レドックスキャパシタ等の電気化学素子用セパレータとしては、溶剤紡糸セルロース繊維や再生セルロース繊維が叩解処理されてなる繊維を主体とする紙製セパレータが使用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。リチウムイオン電池用セパレータとしては、高分子被覆樹脂層を付与したセパレータが開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0003】
近年、電気二重層キャパシタは、静電容量の大容量化や高電圧化が進み、自動車や鉄道車両の補助電源などの高エネルギー密度、高出力密度が必要とされる用途での利用が期待されている。高エネルギー密度にするには、セパレータを薄くして収納できる電極の面積を大きくすることが手段の1つであるが、紙製セパレータは厚みが35μm以下になると自己放電しやすくなる問題があった。
【0004】
本発明者らは、電解液浸透性と耐ドライアップ性のバランスが良く、ハイレート特性に優れ、電気化学素子用セパレータとして好適な多孔質シートおよびその製造方法を開示した(特許文献4参照)。この多孔質シートは、平均繊維径0.01〜10μmの非フィブリル状繊維を含有する多孔質基材、およびポリマーからなる孔径0.01〜10μmの貫通孔を有する網状構造体からなり、該多孔質基材の表面および内部に該網状構造体が存在し、該平均繊維径0.01〜10μmの非フィブリル状繊維と該網状構造体とが絡合している。網状構造体は、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミドが好ましいとされている。しかし、ポリマーからなる網状構造体が多層に重なり合って形成される傾向に加えて、多孔質基材の内部にも多量の網状構造体が形成される傾向にあるため、多孔質基材内部の空間に過剰のポリマーが充填されてしまい、イオン移動を妨げる問題があり、電気化学素子用セパレータとしての内部抵抗を下げる余地がまだ残っていた。
【0005】
特許文献5のリチウムイオン電池用セパレータは、多孔性フィルム、不織布、および織布から選ばれるリチウムイオンを透過させる孔を有する基材の少なくとも片面に高分子樹脂被覆層を設けてなり、高分子樹脂被覆層がポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、テフロン(登録商標)系樹脂から選ばれる樹脂のうち少なくとも1種を主成分として含有することを特徴としている。このリチウムイオン電池用セパレータは、従来のポリオレフィン系微多孔質フィルムに比べて孔径を小さくできるため、脱落した電極活物質の移動による内部短絡が生じにくく、電池の寿命を長くできるとしている。しかし、高分子樹脂被覆層の形成法として、基材に高分子樹脂被覆層を形成する樹脂の極性有機溶剤溶液を塗布し、次いで水浴中に浸漬し高分子樹脂被覆層を形成する湿式凝固法を用いているため、高分子樹脂被覆層の貫通孔が小さくかつ少なくなりやすく、内部抵抗が高くなりやすい問題と大電流で放電させると容量が急激に減少する(ハイレート特性が悪い)問題とがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−267103号公報
【特許文献2】特開平11−168033号公報
【特許文献3】特開2000−3834号公報
【特許文献4】国際公開第2008/153117号パンフレット
【特許文献5】特開2004−31084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記実情を鑑みたものであって、多孔質シートおよび多孔質シートからなる低内部抵抗で、ハイレート特性に優れる電気化学素子用セパレータと多孔質シートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、この課題を解決するために鋭意研究を行った結果、特定の製造方法により製造された、繊維と多孔質ポリウレタンを含有してなる多孔質シートを発明し、該多孔質シートが電気化学素子用セパレータとして好適であることを見出し、本発明に至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、繊維と多孔質ポリウレタンを含有してなる多孔質シートにおいて、孔径分布が0.010〜50μmの貫通孔を有し、孔面積率が5.0%以上の多孔質ポリウレタンが少なくとも多孔質シートの片表面を99.0%以上被覆してなり、かつ、多孔質シートの平均孔径が0.29〜3.0μmであることを特徴とする多孔質シートである。
【0010】
本発明は、繊維を含有してなる多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸する工程、多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節する工程、多孔質基材を凝固液に接触させて多孔質基材に多孔質ポリウレタンを析出させる工程を経ることを特徴とする多孔質シートの製造方法である。
【0011】
本発明は、本発明の多孔質シートからなる電気化学素子用セパレータである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多孔質シートは繊維と多孔質ポリウレタンを含有してなり、少なくとも片表面を、孔径分布が0.010〜50μmの貫通孔を有し、孔面積率が5.0%以上の多孔質ポリウレタンが99.0%以上被覆してなり、多孔質シートの平均孔径が0.29〜3.0μmであるため、多孔質シート内部の相対的に大きな空間と多孔質ポリウレタン内の相対的に小さな空間を有する。多孔質シート内部に相対的に大きな空間が存在することにより、多孔質シートの厚み方向にイオン経路が直線的に形成されるため、充放電時の電極と電解液間でのイオン移動が迅速かつ円滑に進み、多孔質シートの抵抗を低く抑えることができ、内部抵抗が低く、ハイレート特性に優れる電気化学素子を得ることができる。
【0013】
本発明の多孔質シートは、繊維を含有してなる多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸する工程、多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節する工程、多孔質基材を凝固液に接触させて多孔質基材に多孔質ポリウレタンを析出させる工程を経て製造されるため、貫通孔を有さないポリウレタン皮膜や孔面積率の小さい多孔質ポリウレタンが形成されることがなく、多孔質シートの少なくとも片表面に、貫通孔の孔径分布が0.010〜50μmの多孔質ポリウレタンが形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1で作製した多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真(3000倍率)の一例を示す。
【図2】本発明の実施例3で作製した多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真(5000倍率)の一例を示す。
【図3】本発明の実施例9で作製した多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真(5000倍率)の一例を示す。
【図4】本発明の実施例10で作製した多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真(5000倍率)の一例を示す。
【図5】本発明の実施例17で作製した多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真(5000倍率)の一例を示す。
【図6】本発明の実施例18で作製した多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真(5000倍率)の一例を示す。
【図7】本発明の実施例19で作製した多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真(5000倍率)の一例を示す。
【図8】本発明の実施例3で作製した多孔質シートの断面の電子顕微鏡写真(1500倍率)の一例を示す。
【図9】本発明の実施例17で作製した多孔質シートの断面の電子顕微鏡写真(2000倍率)の一例を示す。
【図10】本発明の比較例2で作製した多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真(10000倍率)の一例を示す。
【図11】本発明の比較例6で作製した多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真(5000倍率)の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の多孔質シートは、繊維と多孔質ポリウレタンを含有してなり、孔径分布が0.010〜50μmの貫通孔を有し、孔面積率が5.0%以上の多孔質ポリウレタンが少なくとも多孔質シートの片表面を99.0%以上被覆してなり、かつ、多孔質シートの平均孔径が0.29〜3.0μmである。
【0016】
多孔質シートの少なくとも片表面を被覆している多孔質ポリウレタンにおける貫通孔の孔径分布は、0.010〜50μmであり、0.010〜3.0μmがより好ましく、0.040〜10μmがさらに好ましい。「孔径分布が0.010〜50μm」とは、貫通孔の孔径全てがこの範囲内であって、孔径0.010μm未満または50μmを超える貫通孔が存在しないことを意味する。孔径0.010μm未満または50μmを超える貫通孔が存在すると、電極との接触抵抗が大きくなる場合や電極表面から脱落した電極活物質が多孔質シートを貫通して内部短絡する場合があるので好ましくない。孔径分布が0.040〜10μmの場合は、孔径分布が狭く、多孔質シートの均一性が高くなる傾向がある。
【0017】
本発明における「被覆」とは、多孔質シートの少なくとも片表面の99.0%以上の面積を多孔質ポリウレタンが占めることを意味する。従って、多孔質シートの少なくとも片表面における多孔質ポリウレタンの被覆率は99.0〜100%である。多孔質ポリウレタンが存在しない領域、多孔質ポリウレタンの縁と多孔質基材中の繊維との隙間、多孔質ポリウレタンの貫通孔の孔径が50μmより大きく、かつ、その直下に多孔質ポリウレタンがない領域、貫通孔を有さない面積2000μm2以上のポリウレタン皮膜領域は、何れも多孔質ポリウレタンが被覆していない領域と見なす。
【0018】
孔径分布が0.010〜50μmの貫通孔を有し、孔面積率が5.0%以上の多孔質ポリウレタンが少なくとも多孔質シートの片表面を99.0%以上被覆してなる場合、反対側の表面(裏面)における多孔質ポリウレタンの被覆率は0〜100%の範囲であり、片表面の被覆率と異なっていても良いが、被覆率は50.0〜100%が好ましく、90.0〜100%がより好ましい。裏面における多孔質ポリウレタンの被覆率が50.0%以上の場合は、多孔質シートの引張強度や突刺強度をより強くできる。90.0%以上の場合は、引張強度や突刺強度をさらに強くでき、かつ、漏れ電流をより小さくできる。裏面における多孔質ポリウレタンの貫通孔の孔径分布は、0.010〜99μmが好ましく、0.010〜50μmがより好ましく、0.040〜10μmがさらに好ましい。貫通孔の孔径分布が0.010〜99μmの多孔質ポリウレタンは、多孔質シートの内部に存在していても良い。多孔質シート内部には多孔質ポリウレタンだけでなく、繊維状のポリウレタンも存在しても良い。
【0019】
本発明における多孔質ポリウレタンの貫通孔とは、ポリウレタンが周囲を囲んでできている貫通孔を意味する。貫通孔の孔径とは、電子顕微鏡写真で確認される貫通孔の平断面を同面積の円形に換算したときの直径を意味する。貫通孔の形は円形、楕円形、多角形、不定形、これらの複合形や混合などがある。多孔質ポリウレタンは多層状になっていても良い。貫通孔の孔径分布を調べるには目安として、10〜99μmの範囲であれば100〜500倍率で観察すれば良く、1.0〜10μmであれば1000〜5000倍率で観察すれば良く、0.010〜1.0μmであれば5000〜20000倍率で観察すれば良い。
【0020】
本発明の多孔質シートの少なくとも片表面を被覆してなる多孔質ポリウレタンは、孔面積率が5.0%以上である。孔面積率が5.0%未満だと、多孔質シートの電解液浸透性が悪くなり、電極との接触抵抗が大きくなる。多孔質シートの裏面を被覆してなる多孔質ポリウレタンの孔面積率は1.0%以上であることが好ましく、5.0%以上がより好ましい。
【0021】
本発明における孔面積率とは、所定面積S1の多孔質ポリウレタンに存在する貫通孔の総平面積S2の割合を意味する。多孔質ポリウレタンの電子顕微鏡写真を撮影して貫通孔を計測し、貫通孔の総平面積を算出することによって、孔面積率を算出することができる。S1は撮影倍率によって適宜決定すれば良い。例えば、撮影倍率が1000倍であれば、2500〜10000μm2の範囲が好ましく、5000倍であれば25〜200μm2の範囲が好ましい。
【0022】
本発明の多孔質シートは、バブルポイント法で測定される平均孔径が0.29〜3.0μmであり、0.35〜2.0μmがより好ましく、0.50〜2.0μmがさらに好ましい。平均孔径が0.29μm未満では、内部抵抗が高くなる。3.0μmより大きいと、漏れ電流が大きくなり、内部短絡する。多孔質シートの平均孔径は、多孔質ポリウレタンの平均孔径とは異なり、多孔質ポリウレタンの平均孔径より小さくなる。多孔質ポリウレタンと多孔質基材とは一体化していて分離できないため、多孔質ポリウレタンだけの平均孔径をバブルポイント法で測定することはできない。
【0023】
図1〜7は、本発明の多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真である。図8、9は、本発明の多孔質シートの断面の電子顕微鏡写真である。図8、9の多孔質シートは、それぞれ図2、5の多孔質シートである。図1〜9で示した多孔質シートは、繊維と多孔質ポリウレタンを含有してなり、貫通孔の孔径分布が0.010〜50μmの貫通孔を有し、孔面積率が5.0%以上の多孔質ポリウレタンが多孔質シートの少なくとも片表面を99.0%以上被覆してなる。図4の多孔質シートは、図3の多孔質シートを熱処理したもので、図3よりも多孔質ポリウレタンの貫通孔の孔径が大きくなっている。同様に、図6の多孔質シートは、図5の多孔質シートを熱処理したもので、図5よりも多孔質ポリウレタンの貫通孔の孔径が大きくなっている。図8の多孔質シートは、片表面に多孔質ポリウレタンが集中的に存在し、図9の多孔質シートは表裏面に多孔質ポリウレタンが集中的に存在し、何れも多孔質シート内部には大きな空間が保持されている。
【0024】
図10は、本発明外の製造方法で製造された多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真である。多孔質ポリウレタンの孔面積率が5.0%未満であることがわかる。図11は、特許文献5に開示されている多孔質シートの表面の電子顕微鏡写真である。ポリアミドイミドからなる多層の網状構造体自体が、多孔質基材の表面および内部に形成されており、多孔質シート内部の空間が不十分である。
【0025】
本発明に用いられる繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびそれらの誘導体、芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルなどのポリエステル、ポリオレフィン、アクリル、ポリアセタール、ポリカーボネート、脂肪族ポリケトン、芳香族ポリケトン、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリ(パラ−フェニレンベンゾビスチアゾール)、ポリ(パラ−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルなどの樹脂からなる繊維、キュプラレーヨン、再生セルロース、セルロース、柔細胞繊維、リンター、天然繊維などの有機繊維、ガラス、アルミナ、シリカ、ジルコニア、炭化珪素、各種セラミックスからなる無機繊維が挙げられる。
【0026】
これら有機繊維や無機繊維は1種類だけでも良く、2種類以上併用しても良い。これら有機繊維は、フィブリルを有しても良く、フィブリッドや非フィブリルでも良い。有機繊維は、短繊維(いわゆるチョップドファイバー)でも連続繊維でも良い。これらの有機繊維の中でも、耐溶剤性や耐熱性、多孔質基材の製造安定性に優れることから、ポリエステル、全芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、キュプラレーヨン、フィブリル状セルロースが好ましい。また、多孔質基材がポリオレフィン繊維を含有する場合には、電気化学素子内部の温度がポリオレフィン繊維の融点以上になったときにポリオレフィン繊維が溶融して正負電極間の電流を遮断する、いわゆるシャットダウン機能を付与できるため好ましい。
【0027】
芳香族ポリアミドや芳香族ポリエステルなどの芳香族とは、全芳香族とは違って主鎖の一部または全部に例えば脂肪鎖などを有するものを指す。全芳香族ポリアミドは、パラ型、メタ型の何れでも良い。ポリ(パラ−フェニレンベンゾビスチアゾール)はトランス型、シス型の何れでも良い。本発明におけるアクリルとは、アクリロニトリル100%の重合体からなるもの、アクリロニトリルに対して、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体、酢酸ビニルなどを共重合させたものを指す。セルロースとしては、溶剤紡糸セルロース、再生セルロース、麻、柔細胞繊維などが挙げられる。柔細胞繊維とは、植物の茎、葉、根、果実等に存在する柔細胞を主体とした部分をアルカリで処理する等して得られるセルロースを主成分とし、水に不溶な繊維である。
【0028】
本発明においては、繊維を用いて多孔質基材を作製し、該多孔質基材と多孔質ポリウレタンを一体化させることにより多孔質シートが得られる。多孔質基材は、湿式抄紙法、エレクトロスピニング法、メルトブローン法、フラッシュ紡糸法、スパンボンド法、湿式スパンボンド法、これらの組み合わせなどの方法で製造することができる。多孔質基材は厚み調整、強度向上、寸法安定性付与の目的で、必要に応じて予めカレンダー処理、熱カレンダー処理、熱処理などが施される。
【0029】
多孔質基材は、厚み方向にフィブリル状繊維以外の短繊維および/または連続繊維が最大で2〜30本あることが好ましく、3〜20本あることがより好ましい。短繊維および/または連続繊維が2本未満では、多孔質基材の引張強度や引裂強度が弱い傾向があり、ポリウレタン溶液の含浸性に問題が生じる場合があり、30本より多いと多孔質シートの厚みを薄くしにくくなる場合や、繊維本数が多すぎて電解液中のイオン移動が阻害される場合がある。
【0030】
多孔質基材は、バブルポイント法で測定される最大孔径が1.00〜100μmであることが好ましく、5.00〜100μmであることがより好ましく、50.0〜100μmであることがさらに好ましい。最大孔径が1.00μm未満だと、多孔質基材を構成する繊維によってイオン移動が阻害されやすくなり、100μmより大きいと多孔質シートの強度が不十分になる場合やピンホールができる場合がある。多孔質基材の厚み方向に短繊維および/または連続繊維が最大で3〜20本あり、かつ多孔質基材の最大孔径が50.0〜100μmのとき、より内部抵抗が低く、よりハイレート特性に優れる多孔質シートが得られる。
【0031】
多孔質基材の坪量は、5〜40g/m2が好ましく、7〜20g/m2がより好ましい。多孔質基材の坪量が5g/m2未満では、多孔質基材の強度が不十分になりやすく、ポリウレタン溶液の含浸性に問題が生じる場合があり、40g/m2を超えると多孔質シートの厚みを薄くしにくくなる。
【0032】
本発明に用いられるポリウレタンは、活性水素を有するポリオールとポリイソシアネートを重付加反応させて得られる。ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、キシリレングリコール、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリラクトン系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、アクリル系ポリオール、これらの誘導体が挙げられる。
【0033】
ポリエステル系ポリオールは、二塩基酸とグリコールとを重縮合させて得られる。二塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸、蓚酸、マロン酸、グルタル酸、酒石酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸が挙げられる。グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、キシリレングリコールが挙げられる。
【0034】
ポリエーテル系ポリオールとしては、ポリエチレングリコールエーテル、ポリプロピレングリコールエーテル、ポリテトラメチレングリコールエーテルが挙げられる。
【0035】
ポリカーボネート系ポリオールとしては、ポリ1,6−ヘキサンカーボネートジオール、ポリ1,4−ブチレンカーボネートジオールが挙げられる。
【0036】
ポリイソシアネート化合物としては、ポリブチレンアジペート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、これらの誘導体が挙げられる。
【0037】
本発明の多孔質シートは、多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸する工程、多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節する工程、多孔質基材を凝固液に接触させて多孔質基材に多孔質ポリウレタンを析出させる工程を経て製造される。多孔質シートの製造方法において、多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸する代わりに、ワイヤーバーによる手塗りやコーターで塗布すると、表裏面の多孔質ポリウレタン被覆率が99.0%未満になる場合や多孔質ポリウレタンの孔面積率が5.0%未満になる場合があり、本発明の多孔質シートを得ることができない。ポリウレタン溶液の媒体としては、ポリウレタンを溶解する良溶媒を用いる。良溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられ、これらは単独で使用しても良いし、混合して使用しても良い。
【0038】
ポリウレタン溶液には、それ単独ではポリウレタンを溶解しない貧溶媒を混合しても良い。貧溶媒としては、水、アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、シクロヘキサン、トリクロロフルオロエタンなどが挙げられる。貧溶媒は、異なる貧溶媒を混合して用いても良い。水はイオン交換水や蒸留水が好ましい。ポリウレタン溶液における貧溶媒の含有率は0〜20質量%が好ましい。貧溶媒の含有率が20質量%を超えるとポリウレタンが析出してしまう。
【0039】
ポリウレタン溶液におけるポリウレタンの固形分濃度は、2.0〜10質量%が好ましく、3.0〜8.0質量%がより好ましく、4.0〜7.0質量%がさらに好ましい。固形分濃度が2.0質量%未満では、多孔質ポリウレタンの被覆率が不十分になる場合があり、10質量%より濃くなると、ポリウレタン溶液の粘度が高くなりすぎて、多孔質基材への含浸性に支障を来たす場合や多孔質ポリウレタンの孔面積率が5.0%未満になる場合がある。
【0040】
多孔質ポリウレタンを析出させるために使用する凝固液は、貧溶媒100%でも良いし、貧溶媒と良溶媒の混合液でも良い。貧溶媒100%の場合は、2種以上の貧溶媒を混合して用いても良い。貧溶媒としては、上述したポリウレタン溶液に混合しても良い貧溶媒を使用することができる。ポリウレタン溶液を含浸した後の多孔質基材は水に濡れにくいため、凝固液は水とアルコールの混合溶液を使用することが好ましい。凝固液以外の製造条件を一定にして比較したとき、水とアルコールの混合溶液は、水単独の場合よりも、短時間で多孔質ポリウレタンの孔面積率を高くする傾向があり、多孔質シートの製造効率を上げる効果がある。
【0041】
本発明の多孔質シートの製造方法において、多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸させるには、例えば、ディップコーターなどの含浸機を用いれば良い。
【0042】
多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸させた後は、多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節する。ポリウレタン溶液量を調節するには、2本のニップロール間に通して絞る方法、ブレードやワイヤーバーでポリウレタン溶液を掻き落とす方法、複数のロールに通して掻き落とす方法、これらを組み合わせた方法を用いる。ニップロールの材質は、ゴム、樹脂、金属の何れでも良いが、ポリウレタン溶液に対する耐性をもつものが良い。ブレードやワイヤーバーは2本以上用いても良い。多孔質基材の坪量と最大孔径を考慮して、多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節することにより、全ポリウレタンの含有率、多孔質ポリウレタンの孔径分布と被覆率、多孔質シートの平均孔径を調節することができ、多孔質ポリウレタンの均一性を高めることができる。
【0043】
一方、多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節せずに凝固液に接触させると、多孔質基材表面に過剰量のポリウレタン溶液が保持されるため、多孔質ポリウレタンの析出むらが生じ、多孔質シートの厚みを均一に薄くすることが困難で、少なくとも片表面の多孔質ポリウレタンの孔面積率が著しく小さくなる。また、ポリウレタン溶液の固形分濃度が3.0質量%以下になるとポリウレタンが粒状に析出して多孔質ポリウレタンの形成が不十分になる傾向がある。
【0044】
凝固液に多孔質基材を接触させる方法としては、多孔質基材を凝固液に浮かべる方法、トランスファロールコーターやリバースロールコーターなどを使い、凝固液で濡らしたロールに接触させる方法、凝固液をシャワー状やカーテン状に多孔質基材に当てる方法、凝固液を多孔質基材に噴霧する方法などが挙げられる。シャワー状やカーテン状に当てる場合は、ポリウレタン溶液が多孔質基材から流れ落ちたり、多孔質ポリウレタンの析出が斑になることがある。多孔質基材を連続で通す場合には、トランスファロールコーターやリバースロールコーターを使う方法や凝固液に浸漬する方法が好ましい。多孔質基材を連続して凝固液に通す場合は、断続的または連続的に排液と新液供給とを実施することが好ましい。凝固液の温度は特に限定されるものではないが、0〜60℃の範囲が好ましい。凝固液に多孔質基材を接触させる時間は、5秒以上が好ましい。多孔質基材を凝固液に所定時間接触させた後は、多孔質基材を水洗することが好ましい。
【0045】
多孔質ポリウレタンを析出させた後の多孔質基材の乾燥方法としては、熱風ドライヤー、シリンダードライヤー、ヤンキードライヤーなどを用いて行えば良い。必要に応じて、赤外線ヒーターを併用しても良い。熱風ドライヤーの場合は、相対的に多孔質シートの裂断長が短めになる傾向があり、シリンダードライヤーとヤンキードライヤーの場合は、多孔質シートの裂断長が相対的に長めになる傾向がある。シリンダードライヤーとヤンキードライヤーの場合は、熱風ドライヤーよりも低温で効率良く乾燥できる傾向がある。
【0046】
本発明の多孔質シートは、熱処理されてなることが好ましい。熱処理は多孔質ポリウレタンの融点+10℃〜融点−50℃の範囲内の温度に加熱したロールに接触させる方法、同範囲内の温度で恒温乾燥機内に5分〜5時間静置する方法により行う。熱処理することにより、熱処理しない場合よりも多孔質ポリウレタンの貫通孔の孔径を大きくすることができ、孔面積率を大きくすることができる。多孔質ポリウレタンを析出させた直後の多孔質シートの乾燥温度を多孔質ポリウレタンの融点+10℃〜融点−50℃の範囲内にすることによって乾燥と熱処理を兼ねることもできる。
【0047】
本発明における多孔質ポリウレタンの厚みは、0.01〜4μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましい。0.01μm未満では、電極の膨張時やリチウムなどのデンドライトが発生したときに、多孔質ポリウレタンが破れて、電極活物質やデンドライトが貫通して、内部短絡する場合がある。4μmより厚いと、イオン移動の妨げになり、内部抵抗が高くなる場合がある。多孔質ポリウレタンの厚みやその存在状態は、多孔質シートの表面または断面を撮影した電子顕微鏡写真を観察することにより確認することができる。
【0048】
本発明の多孔質シート中の全ポリウレタンの含有率は2.0〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、15〜55質量%がさらに好ましい。全ポリウレタンの含有率が2.0質量%未満の場合、多孔質シートを電気化学素子用セパレータとして用いたときに、漏れ電流が大きくなる場合がある。55質量%より多い場合、特に70質量%より多いと、厚みを薄くしにくくなる場合や多孔質シート内部の空間が少なくなり、電解液浸透性が悪くなる場合や内部抵抗が高くなる場合がある。全ポリウレタンの含有率が10質量%以上、特に15質量%以上になると、多孔質シートの表裏面の多孔質ポリウレタン被覆率が高くなる傾向にあるため、漏れ電流は小さくなり、電気化学素子用セパレータとしての特性ばらつきと電解液のドライアップが抑制されるため、充放電サイクル特性が向上する。全ポリウレタンの含有率は、ポリウレタン溶液の固形分濃度とポリウレタン溶液量調節後の多孔質基材中のポリウレタン溶液量によって決まる。
【0049】
本発明の多孔質シートは、厚みが9〜100μmであることが好ましく、15〜30μmであることがより好ましい。本発明の多孔質シートの密度は0.250〜0.750g/cm3であることが好ましく、0.500〜0.700g/cm3であることがより好ましい。厚みが9μm未満では、取り扱い時や加工時に破れたり、穴があいたりすることがある。100μmより厚いと、電気化学素子用セパレータとして用いたときに収納できる電極面積が小さくなり、容量が不十分になる場合がある。密度が0.250g/cm3未満だと、電気化学素子用セパレータとして用いたときに、漏れ電流が大きくなる場合がある。0.750g/cm3より大きいと、電気化学素子用セパレータとして用いたときに内部抵抗が高くなる場合がある。
【0050】
本発明の多孔質シートは、ガーレー透気度が0.1〜50.0s/100mlであることが好ましく、0.5〜30.0s/100mlであることがより好ましく、1.0〜15.0s/100mlであることがさらに好ましい。ガーレー透気度が、0.5s/100ml未満、特に0.1s/100ml未満では、電気化学素子用セパレータとして用いたときに漏れ電流が大きくなる場合や内部短絡する場合がある。30.0s/100mlより大きいと、特に50.0s/100mlより大きいと、電気化学素子用セパレータとして用いたときに内部抵抗が高くなる場合がある。
【0051】
本発明における電気化学素子とは、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、レドックスキャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、リチウムイオン電池、ポリアセン電池などを指す。
【0052】
電解液には、イオン解離性の塩を溶解させた水溶液、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルソルブ、これらの混合溶媒などの有機溶媒にイオン解離性の塩を溶解させたもの、イオン性液体(固体溶融塩)などが挙げられる。水溶液系と有機溶媒系の何れも利用できる電気化学素子の場合は、水溶液系は耐電圧が低いため、有機溶媒系の方が好ましい。電解液の代わりにポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、これらの誘導体などの導電性高分子膜を用いても良い。
【0053】
電気二重層キャパシタの電極活物質としては、例えば、活性炭、カーボンブラック、カーボンエーロゲル、カーボンナノチューブ、非多孔性炭素などが挙げられる。リチウムイオンキャパシタの負極活物質としては、例えば、黒鉛、難黒鉛化炭素、ポリアセン系有機半導体などが挙げられ、正極活物質としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、活性炭、ポリアセン系有機半導体などが挙げられる。レドックスキャパシタの電極活物質としては、例えば、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化コバルトなどの金属酸化物、これら金属酸化物の複合物、これら金属酸化物の水和物、これら金属酸化物と炭素材料との複合物、窒化モリブデン、窒化モリブデンと金属酸化物との複合物などが挙げられる。
【0054】
ハイブリッドキャパシタとは、正極か負極のどちらかにファラデー反応を利用したキャパシタである。電極活物質としては、例えば、活性炭、カーボンブラック、カーボンエーロゲル、カーボンナノチューブ、非多孔性炭素、チタン酸リチウムなどが挙げられる。
【0055】
リチウムイオン電池の負極活物質としては、黒鉛やコークスなどの炭素材料、金属リチウム、アルミニウム、シリカ、スズ、ニッケル、鉛から選ばれる1種以上の金属とリチウムとの合金、SiO、SnO、Fe2O3、WO2、Nb2O5、Li4/3Ti5/3O4等の金属酸化物、Li0.4CoNなどの窒化物が用いられる。正極活物質としては、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、チタン酸リチウム、リチウムニッケルマンガン酸化物、リン酸鉄リチウムが用いられる。リン酸鉄リチウムは、さらに、マンガン、クロム、コバルト、銅、ニッケル、バナジウム、モリブデン、チタン、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、マグネシウム、ホウ素、ニオブから選ばれる1種以上の金属との複合物でも良い。
【0056】
リチウムイオン電池の電解液には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、これらの混合溶媒などの有機溶媒にリチウム塩を溶解させたものが用いられる。リチウム塩としては、六フッ化リン酸リチウムや4フッ化ホウ酸リチウムが挙げられる。固体電解質としては、ポリエチレングリコールやその誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、ポリシロキサンやその誘導体、ポリフッ化ビニリデンなどのゲル状ポリマーにリチウム塩を溶解させたものが用いられる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0058】
多孔質基材A〜Fを準備し、最大孔径、厚み、密度、厚み方向に存在する短繊維の本数を測定した。最大孔径は、ASTM−F316−86に規定されるバブルポイント法に準拠して測定した。厚みおよび密度は、JIS C2111に準拠して測定した。
【0059】
<多孔質基材A>
繊度0.06dtex、繊維長3mmのポリエステル繊維(帝人ファイバー製、商品名:TP04N)50質量%、繊度0.2dtex、繊維長3mmの熱融着性ポリエステル繊維(帝人ファイバー製、商品名:TK08PN)40質量%、質量平均繊維長0.39mm、カナディアンスタンダードフリーネス0mlのフィブリル状セルロース10質量%からなる厚み40μm、密度0.300g/cm3の湿式不織布を作製し、多孔質基材Aとした。多孔質基材Aの最大孔径は15.7μmであった。電子顕微鏡で観察した結果、厚み方向に存在する短繊維の本数は最大12本であった。
【0060】
<多孔質基材B>
繊度0.1dtex、繊維長3mmのポリエステル繊維(帝人ファイバー製、商品名:TM04PN)45質量%、繊度0.2dtex、繊維長3mmの熱融着性ポリエステル繊維(帝人ファイバー製、商品名:TK08PN)30質量%、質量平均繊維長0.39mm、カナディアンスタンダードフリーネス0mlのフィブリル状セルロース5質量%、質量平均繊維長0.61mm、カナディアンスタンダードフリーネス0mlのフィブリル状パラアラミド繊維20質量%からなる厚み35μm、密度0.286g/cm3の湿式不織布を作製し、多孔質基材Bとした。多孔質基材Bの最大孔径は11.4μmであった。電子顕微鏡で観察した結果、厚み方向に存在する短繊維の本数は最大12本であった。
【0061】
<多孔質基材C>
繊度0.3dtex、繊維長3mmのポリエステル繊維(帝人ファイバー製、商品名:TM04PN)60質量%、繊度0.5dtex、繊維長3mmの熱融着性ポリエステル繊維(帝人ファイバー製、商品名:TK08PN)40質量%からなる厚み29μm、密度0.269g/cm3のポリエステル製不織布を多孔質基材Cとした。多孔質基材Cの最大孔径は98.3μmであった。電子顕微鏡で観察した結果、厚み方向に存在する短繊維の本数は最大3本であった。
【0062】
<多孔質基材D>
湿式スパンボンド法で作製された厚み45μm、密度0.311g/cm3のキュプラレーヨン不織布(旭化成せんい製、商品名:ベンリーゼSA14G)を多孔質基材Dとした。多孔質基材Dの最大孔径は67.5μmであった。電子顕微鏡で観察した結果、厚み方向に存在する短繊維の本数は最大8本であった。
【0063】
<多孔質基材E>
繊度1.7dtex、繊維長5mmの溶剤紡糸セルロース(レンチング社製、商品名:テンセル)をダブルディスクリファイナーにて叩解処理して得られた、質量平均繊維長0.64mm、カナディアンフリーネス10mlのフィブリル化セルロースを50質量%、カナディアンフリーネス600mlの麻パルプを50質量%の比率で混合したスラリーを調製し、円網抄紙機と円網抄紙機のコンビネーション抄紙機を用い湿式抄紙して、厚み30μm、密度0.500g/cm3の紙を多孔質基材Eとした。多孔質基材Eの最大孔径は1.6μmであった。
【0064】
<多孔質基材F>
繊度0.44dtex、繊維長5mmのポリエステル繊維(クラレ製、商品名:エステルEP043)40質量%、繊度0.2dtex、繊維長3mmの熱融着性ポリエステル繊維(帝人ファイバー製、商品名:TK08PN)48質量%、繊度1.1dtexの芯鞘型ポリエステル繊維(帝人ファイバー製、商品名:TJ04CN)12質量%からなる厚み25μm、密度0.680g/cm3のポリエステル製不織布を多孔質基材Fとした。多孔質基材Fの最大孔径は22.5μmであった。電子顕微鏡で観察した結果、厚み方向に存在する短繊維の本数は最大15本であった。
【0065】
<ポリウレタン溶液1>
ポリエステル系ポリオールとポリイソシアネートとの重付加反応により得られたポリウレタンのDMF溶液(大日精化工業製、商品名:レザミンCU−4330)をN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、ポリウレタンの固形分濃度を3.0質量%に調製し、これをポリウレタン溶液1(PU溶液1)とした。ここで、DMFとは、N,N−ジメチルホルムアミドである。該ポリウレタンの融点は示差走査熱量測定装置を用いて測定した結果、203.5℃であった。
【0066】
<ポリウレタン溶液2>
ポリウレタン溶液(大日精化工業製、商品名:レザミンCU−4330)をN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、ポリウレタンの固形分濃度を4.5質量%に調製し、これをポリウレタン溶液2(PU溶液2)とした。
【0067】
<ポリウレタン溶液3>
ポリウレタン溶液(大日精化工業製、商品名:レザミンCU−4330)をN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、ポリウレタンの固形分濃度を6.0質量%に調製し、これをポリウレタン溶液3(PU溶液3)とした。
【0068】
<ポリウレタン溶液4>
ポリウレタン溶液(大日精化工業製、商品名:レザミンCU−4330)をDMFで希釈し、ポリウレタンの固形分濃度を6.0質量%に調製し、これをポリウレタン溶液4(PU溶液4)とした。
【0069】
<ポリウレタン溶液5>
ポリウレタン溶液(大日精化工業製、商品名:レザミンCU−4330)をDMFで希釈し、ポリウレタンの固形分濃度を10質量%に調製し、これをポリウレタン溶液5(PU溶液5)とした。
【0070】
<ポリウレタン溶液6>
ポリウレタン溶液(大日精化工業製、商品名:レザミンCU−4330)をDMFで希釈し、ポリウレタンの固形分濃度を12質量%に調製し、これをポリウレタン溶液6(PU溶液6)とした。
【0071】
<ポリウレタン溶液7>
ポリウレタン溶液(大日精化工業製、商品名:レザミンCU−4330)をN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、ポリウレタンの固形分濃度を12質量%に調製し、これをポリウレタン溶液7(PU溶液7)とした。
【0072】
<ポリウレタン溶液8>
ポリウレタンのDMF溶液(DIC製、商品名:クリスボンMP−829)100質量部、アニオン系界面活性剤(DIC製、商品名:クリスボンアシスターSD−11)2質量部、水3質量部、DMF20質量部の混合溶液を調製し、ポリウレタン溶液8(PU溶液8)とした。
【0073】
<ポリアミドイミド溶液1>
ポリアミドイミド溶液(東洋紡績製、商品名:バイロマックスHR16NN)をN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、ポリアミドイミドの固形分濃度を3.0質量%に調製し、これをポリアミドイミド溶液1(PAI溶液1)とした。
【0074】
<ポリエーテルスルホン溶液1>
ポリエーテルスルホン(住友化学製、商品名:スミカエクセル5003PS)をN−メチル−2−ピロリドンで希釈し、ポリエーテルスルホンの固形分濃度を8.0質量%に調製し、これをポリエーテルスルホン溶液1(PES溶液1)とした
【0075】
<凝固液1>
20℃のイオン交換水を凝固液1とした。
【0076】
<凝固液2>
イオン交換水50質量%、メタノール50質量%の混合溶液を20℃にしたものを凝固液2とした。
【0077】
実施例1
ディップコーターを用いてPU溶液1を多孔質基材Aに含浸させ、直径50mmの2本のゴムロール間に線圧30N/cmで通して多孔質基材A中のポリウレタン溶液量を調節し、凝固液1に60秒間浸漬して多孔質ポリウレタンを析出させた。その後、イオン交換水で洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート1を得た。
【0078】
実施例2、3
多孔質基材、ポリウレタン溶液、凝固液の組み合わせを表1の通りにした以外は、実施例1と同様にして多孔質シート2、3を作製した。
【0079】
実施例4
多孔質基材、ポリウレタン溶液、凝固液の組み合わせを表1の通りにし、130℃の熱風乾燥機で乾燥した後、180℃の恒温乾燥機内に2時間静置して熱処理した以外は実施例1と同様にして多孔質シート4を作製した。
【0080】
実施例5
多孔質基材Aの巻取りから連続して繰り出し、ディップコーターを用いてPU溶液1を多孔質基材Aに含浸させた後、多孔質基材Aの片面にワイヤーバー(#20)を押し当てて多孔質基材A中のポリウレタン溶液量を調節し、凝固液2の槽に浸漬しながら通して多孔質ポリウレタンを析出させた。凝固液2に浸漬している時間は60秒であった。その後、イオン交換水の槽に通して洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート5を得た。
【0081】
実施例6
多孔質基材Aの巻取りから連続して繰り出し、ディップコーターを用いてPU溶液4を多孔質基材Aに含浸させた後、多孔質基材Aの表面と裏面に1箇所ずつワイヤーバー(#30)を押し当てて多孔質基材A中のポリウレタン溶液量を調節し、凝固液2の槽に浸漬しながら通して多孔質ポリウレタンを析出させた。凝固液2に浸漬している時間は60秒であった。その後、イオン交換水の槽に通して洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート6を得た。
【0082】
実施例7
多孔質基材Aの巻取りから連続して繰り出し、ディップコーターを用いてPU溶液2を含浸させ、8本のSUS製ロールに通すと同時に、表面1箇所と裏面1箇所にSUS製ブレードを直角に押し当てて多孔質基材Aの表面のポリウレタン溶液を掻き落として、多孔質基材A中のポリウレタン溶液量を調節し、さらに凝固液1の槽に浸漬しながら通して多孔質ポリウレタンを析出させた。凝固液1に浸漬している時間は60秒であった。その後、イオン交換水の槽に通して洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート7を得た。
【0083】
実施例8
表1に示した条件に従い、実施例7と同様にして多孔質基材Aに多孔質ポリウレタンを析出させた。その後、イオン交換水の槽に通して洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥した後、180℃の恒温乾燥機内に2時間静置して熱処理し、カレンダー処理して多孔質シート8を作製した。
【0084】
実施例9
表1に示した条件に従い、凝固液への接触時間を30秒にした以外は実施例7と同様にして多孔質シート9を作製した。
【0085】
実施例10
表1に示した条件に従い、実施例8と同様にして多孔質シート10を作製した。
【0086】
実施例11
多孔質基材Bの巻取りから連続して繰り出し、ディップコーターを用いてPU溶液1を含浸させ、直径50mmの2本のゴムロール間に線圧30N/cmで通して多孔質基材B中のポリウレタン溶液量を調節し、凝固液1の槽に浸漬しながら通して多孔質ポリウレタンを析出させた。凝固液1に浸漬している時間は30秒であった。その後、イオン交換水の槽に通して洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート11を得た。
【0087】
実施例12
多孔質基材、ポリウレタン溶液、凝固液の組み合わせを表1の通りにした以外は、実施例11と同様にして多孔質シート12を作製した。
【0088】
実施例13
多孔質基材、ポリウレタン溶液、凝固液の組み合わせを表1の通りにし、SUS製ブレードを使用せず、SUS製ロールに通してポリウレタン溶液を掻き落として多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節し、凝固液への接触時間を30秒にした以外は実施例7と同様にして多孔質シート13を作製した。
【0089】
実施例14
ディップコーターを用いてPU溶液4を多孔質基材Cに含浸させ、8本のSUS製ロールに通してポリウレタン溶液を掻き落として多孔質基材C中のポリウレタン溶液量を調節し、さらに、凝固液2に30秒間浮揚させて多孔質ポリウレタンを析出させた。その後、イオン交換水の槽に通して洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート14を作製した。
【0090】
実施例15
表1に示した条件に従い、実施例13と同様にして多孔質シート15を作製した。
【0091】
実施例16
表1に示した条件に従い、実施例13と同様にして多孔質基材Cに多孔質ポリウレタンを析出させた。その後、イオン交換水の槽に通して洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥した後、180℃の恒温乾燥機内に2時間静置して熱処理し、カレンダー処理して多孔質シート16を作製した。
【0092】
実施例17、19、21
表1に示した条件に従い、凝固液への接触時間を10秒にした以外は実施例13と同様にして多孔質シート17、19、21を作製した。
【0093】
実施例18、20
表1に示した条件に従い、実施例16と同様にして多孔質シート18、20を作製した。
【0094】
【表1】
【0095】
(比較例1)
ディップコーターを用いてPU溶液1を多孔質基材に含浸させ、多孔質基材A中のポリウレタン溶液量を調節せず、凝固液2に60秒間浸漬して多孔質ポリウレタンを析出させた。その後、イオン交換水で洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート22を得た。
【0096】
(比較例2)
ワイヤーバー(#30)を用いてPU溶液3を多孔質基材Aに塗布し、凝固液1に60秒間浸漬して多孔質ポリウレタンを析出させた。その後、イオン交換水で洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート23を得た。
【0097】
(比較例3)
ワイヤーバー(#30)を用いてPU溶液7を多孔質基材Aに塗布し、凝固液2に60秒間浸漬して多孔質ポリウレタンを析出させた。その後、イオン交換水で洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート24を得た。
【0098】
(比較例4)
ワイヤーバー(#30)を用いてPU溶液6を多孔質基材Aに塗布し、凝固液1に60秒間浸漬して多孔質ポリウレタンを析出させた。その後、イオン交換水で洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート25を得た。
【0099】
(比較例5)
ディップコーターを用いてPU溶液4を多孔質基材Aに含浸させ、多孔質基材A中のポリウレタン溶液量を調節せずに、凝固液1に60秒間浸漬して多孔質ポリウレタンを析出させた。その後、イオン交換水で洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート26を得た。
【0100】
(比較例6)
ワイヤーバー(#30)を用いてPAI溶液1を多孔質基材Aに塗布し、凝固液1に60秒間浸漬してポリアミドイミドからなる網状構造体を析出させた。その後、イオン交換水で洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート27を得た。
【0101】
(比較例7)
ディップコーターを用いてPES溶液1を多孔質基材Aに含浸させ、直径50mmの2本のゴムロール間に線圧30N/cmで通して多孔質基材A中のPES溶液量を調節し、凝固液1に60秒間浸漬してポリエーテルスルホンからなる網状構造体を析出させた。その後、イオン交換水で洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート28を得た。
【0102】
(比較例8)
多孔質基材Aを2枚積層したままディップコーターを用いてPAI溶液1を含浸させ、直径50mmの2本のゴムロール間に線圧30N/cmで通し、積層したまま凝固液1に60秒間浮揚させてポリアミドイミドからなる網状構造体を析出させた後、イオン交換水で洗浄し、130℃の熱風乾燥機で乾燥した。2枚の多孔質基材Aを剥離させて上層の多孔質基材Aだけをカレンダー処理して多孔質シート29を得た。
【0103】
(比較例9)
ディップコーターを用いてPU溶液2を多孔質基材Cに含浸させ、多孔質基材C中のポリウレタン溶液量を調節せずに、凝固液2に60秒間浸漬して多孔質ポリウレタンを析出させた。その後、イオン交換水で洗浄し、130℃の熱風乾燥で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート30を得た。
【0104】
(比較例10)
ワイヤーバー(#30)を用いて、多孔質基材FにPU溶液8を塗布し、凝固液1に2分間浸漬し、次いで40℃のイオン交換水に15分間、さらに60℃のイオン交換水に15分間浸漬して、80℃の熱風乾燥機で乾燥し、カレンダー処理して多孔質シート31を得た。塗布量は乾燥後で10g/m2になるようにした。
【0105】
(比較例11)
多孔質基材Eを多孔質シート32として用いた。
【0106】
【表2】
【0107】
表1および2中の「接触方式」とは、多孔質基材を凝固液に接触させる方式を意味する。「接触時間」とは、多孔質基材を凝固液に接触させる時間を意味する。「熱処理温度」とは、多孔質シートの熱処理温度を意味し、全ての実施例において恒温乾燥機を用いて熱処理した。
【0108】
多孔質シート1〜32について、下記の試験方法により評価を行い、結果を表3と表4に示した。
【0109】
<厚み>
多孔質シート1〜32の厚みをJIS C2111に準拠して測定した。
【0110】
<密度>
多孔質シート1〜32の密度をJIS C2111に準拠して測定した。
【0111】
<透気度>
外径28.6mmの円孔を有するガーレー透気度計を用いて、多孔質シート1〜32の各シートにつき巾方向に10箇所のガーレー透気度を測定し、その平均値を示した。ガーレー透気度はJIS P8117に準拠して測定した。
【0112】
<含有率>
多孔質シート1〜26、30、31について全ポリウレタンの含有率を算出した。全ポリウレタンの含有率は、多孔質ポリウレタンを析出させた後の多孔質シートの質量W1から元の多孔質基材の質量W2を差し引いて得られる値W3をW1で除して100倍して得られる値とした。
【0113】
多孔質シート27、29について全ポリアミドイミドの含有率を算出した。全ポリアミドイミドの含有率は、ポリアミドイミドを析出させた後の多孔質シートの質量W4から元の多孔質基材の質量W2を差し引いて得られる値W5をW4で除して100倍して得られる値とした。
【0114】
多孔質シート28について全ポリエーテルスルホンの含有率を算出した。全ポリエーテルスルホンの含有率は、ポリエーテルスルホンを析出させた後の多孔質シートの質量W6から元の多孔質基材の質量W2を差し引いて得られる値W7をW6で除して100倍して得られる値とした。
【0115】
<被覆率A、B>
多孔質シート1〜26、30、31の表裏面を電子顕微鏡で観察し、100倍率の写真を撮影し、多孔質シートの表面1mm2当りに存在する多孔質ポリウレタンの面積の割合、すなわち被覆率を算出し、その平均値を示した。多孔質シートの表面Aに存在する多孔質ポリウレタンの被覆率を被覆率Aとし、表面Bに存在する多孔質ポリウレタンの被覆率を被覆率Bとした。表面AとBは表裏の関係にあり、どちらの面をAにするかは任意とした。
【0116】
多孔質シート27、29の表裏面を電子顕微鏡で観察し、100倍率の写真を撮影し、多孔質シートの表面1mm2当りに存在するポリアミドイミド網状構造体の面積の割合、すなわち被覆率を算出し、その平均値を示した。多孔質シートの表面Aに存在する網状構造体の被覆率を被覆率Aとし、表面Bに存在する網状構造体の被覆率を被覆率Bとした。表面AとBは表裏の関係にあり、どちらの面をAにするかは任意とした。
【0117】
多孔質シート28の表裏面を電子顕微鏡で観察し、100倍率の写真を撮影し、多孔質シートの表面1mm2当りに存在するポリエーテルスルホン網状構造体の面積の割合、すなわち被覆率を算出し、その平均値を示した。多孔質シートの表面Aに存在する網状構造体の被覆率を被覆率Aとし、表面Bに存在する網状構造体の被覆率を被覆率Bとした。表面AとBは表裏の関係にあり、どちらの面をAにするかは任意とした。
【0118】
<孔径分布A、B>
多孔質シート1〜26、30、31の表裏面を被覆してなる多孔質ポリウレタンの電子顕微鏡写真を撮り、貫通孔の孔径分布を調べた。多孔質シートの表面Aに存在する多孔質ポリウレタンの孔径分布を孔径分布Aとし、表面Bに存在する多孔質ポリウレタンの孔径分布を孔径分布Bとした。この場合の表面AとBは、多孔質シート1〜26、30、31の<被覆率A、B>と同じ面を意味する。
【0119】
多孔質シート27、29の表裏面に存在するポリアミドイミド網状構造体の電子顕微鏡写真を撮り、網状構造体の孔径分布を調べた。多孔質シートの表面Aに存在する網状構造体の孔径分布を孔径分布Aとし、表面Bに存在する網状構造体の孔径分布を孔径分布Bとした。この場合の表面AとBは、多孔質シート27、29の<被覆率A、B>と同じ面を意味する。
【0120】
多孔質シート28の表裏面に存在するポリエーテルスルホン網状構造体の電子顕微鏡写真を撮り、網状構造体の孔径分布を調べた。多孔質シートの表面Aに存在する網状構造体の孔径分布を孔径分布Aとし、表面Bに存在する網状構造体の孔径分布を孔径分布Bとした。この場合の表面AとBは、多孔質シート28の<被覆率A、B>と同じ面を意味する。
【0121】
<孔面積率A、B>
多孔質シート1〜26、30、31の表裏面を被覆している多孔質ポリウレタンの電子顕微鏡写真を撮り、所定面積S1の多孔質ポリウレタンに存在する貫通孔の総平面積S2を算出し、S1に占めるS2の割合を孔面積率とした。多孔質シートの表面Aに存在する多孔質ポリウレタンの孔面積率を孔面積率Aとし、表面Bに存在する多孔質ポリウレタンの孔面積率を孔面積率Bとした。この場合の表面AとBは、多孔質シート1〜26、30、31の<被覆率A、B>と同じ面を意味する。
【0122】
多孔質シート27、29の表裏面を被覆しているポリアミドイミドからなる網状構造体の電子顕微鏡写真を撮り、所定面積S3の網状構造体に存在する貫通孔の総平面積S4を算出し、S3に占めるS4の割合を孔面積率とした。多孔質シートの表面Aに存在する網状構造体の孔面積率を孔面積率Aとし、表面Bに存在する網状構造体の孔面積率を孔面積率Bとした。この場合の表面AとBは、多孔質シート27、29の<被覆率A、B>と同じ面を意味する。
【0123】
多孔質シート28の表裏面を被覆しているポリエーテルスルホンからなる網状構造体の電子顕微鏡写真を撮り、所定面積S5の網状構造体に存在する貫通孔の総平面積S6を算出し、S5に占めるS6の割合を孔面積率とした。多孔質シートの表面Aに存在する網状構造体の孔面積率を孔面積率Aとし、表面Bに存在する網状構造体の孔面積率を孔面積率Bとした。この場合の表面AとBは、多孔質シート28の<被覆率A、B>と同じ面を意味する。
【0124】
【表3】
【0125】
【表4】
【0126】
表4中の多孔質シート28の表面Bは、孔径分布が0.010〜50μmの多孔質ポリウレタンが存在せず、代わりに貫通孔のないポリエーテルスルホン皮膜が99.0%被覆していたため、平均孔径は測定不能であった。このことから平均孔径が0.29μm未満であることは明白である。多孔質シート29の表面Bは、孔径分布が0.010〜50μmの多孔質ポリウレタンが存在せず、97.5%は貫通孔を有さないポリアミドイミド皮膜が被覆しており、2.5%はポリアミドイミドが存在しない領域であったため、平均孔径は測定不能であった。このことから平均孔径が0.29μm未満であることは明白である。
【0127】
<電気二重層キャパシタ1〜32>
正極および負極として、表面をエッチング処理した厚み30μmのアルミニウム箔集電体に厚み120μmの電極活物質層が形成されてなる電極を用いた。電極活物質層は、平均粒径5μm、BET比表面積1400m2/gの粉末状活性炭85質量%、平均粒径200nmのアセチレンブラック7質量%、ポリフッ化ビニリデン8質量%からなる。多孔質シート1〜32を負極と正極の間に介して積層し、これをアルミニウムラミネート型収納袋に収納してスタック型素子を形成した。正極または負極に接触させる多孔質シート1〜32の表面の区別はしなかった。この素子ごと150℃で10時間真空乾燥し、電極および多孔質シートに含まれる水分を除去した。これを真空中で室温まで放冷した後、素子内に電解液を注入し、注入口を密栓した後、0.5MPaで加圧してスタック型素子を固定し、電気二重層キャパシタ1〜32(EDLC1〜32)をそれぞれ100個作製した。電解液には、プロピレンカーボネートに1.5mol/lになるように(C2H5)3(CH3)NBF4を溶解させたものを用いた。
【0128】
<リチウムイオンキャパシタ負極>
難黒鉛化炭素粉末(クレハ製、商品名:カーボトロンP)90質量%、ポリフッ化ビニリデン10質量%の比率で、N−メチル−2−ピロリドンに分散させたスラリーを調製した。厚さ32μm(気孔率57%)の銅製エキスパンドメタルからなる負極集電体の両面に、アプリケータを用いて該スラリーを塗工、乾燥した後に、ロールプレス装置を用いてプレス処理し、厚み90μmのリチウムイオンキャパシタ負極を作製した。
【0129】
<リチウムイオンキャパシタ正極>
フェノール樹脂を出発原料とする平均粒径50.0μm、比表面積2000m2/gの粉末状活性炭88質量%、平均粒径200nmのアセチレンブラック4質量%、エチレン−メタクリル酸共重合体からなるアクリル系バインダー5質量%、カルボキシメチルセルロース3質量%の比率で、イオン交換水に分散させたスラリーを調製した。厚み38μm(気孔率47%)のアルミニウム製エキスパンドメタル集電体の両面に、アプリケータを用いて上記のスラリーを塗工、乾燥した後に、ロールプレス装置を用いてプレス処理し、厚み173μmのリチウムイオンキャパシタ正極を作製した。
【0130】
<リチウムイオンキャパシタ1〜32>
リチウムイオンキャパシタ負極を50mm×80mmに切りそろえ、リチウムイオンキャパシタ正極を48mm×78mmに切りそろえ、多孔質シート1〜32を負極と正極の間に介して積層し、150℃で10時間真空乾燥し、リチウムイオンキャパシタ素子を作製した。正極または負極に接触させる多孔質シート1〜32の表面の区別はしなかった。負極活物質質量に対してドープ量が350mAh/gのイオン供給になるような金属リチウムを厚み70μmの銅ラスに圧着し、負極と対向するように上記リチウムイオンキャパシタ素子の最外部に1枚配置した。このように金属リチウムを配置したリチウムイオンキャパシタ素子をアルミニウム製収納袋に挿入後、エチレンプロピレンカーボネート50質量%とジメチルカーボネート50質量%の混合液に1.5mol/lになるようにLiClO4を溶解した電解液を注入し、真空封止してリチウムイオンキャパシタ1〜32(LIC1〜32)をそれぞれ100個作製した。
【0131】
<リチウムイオン電池負極>
天然黒鉛(関西熱化学製、商品名:NG7)97質量%、ポリフッ化ビニリデン3質量%の比率で、N−メチル−2−ピロリドンに分散させたスラリーを調製した。厚み15μmの銅箔集電体の両面に、アプリケータを用いて上記のスラリーを塗工、乾燥した後に、ロールプレス装置を用いてプレス処理し、厚み185μmのリチウムイオン電池負極を作製した。
【0132】
<リチウムイオン電池正極>
平均粒径5μmのLiMn2O4を95質量%、平均粒径200nmのアセチレンブラック2質量%、ポリフッ化ビニリデン3質量%の比率で、N−メチル−2−ピロリドンに分散させたスラリーを調製した。厚み20μmのアルミニウム箔集電体の両面に、アプリケータを用いて上記のスラリーを塗工、乾燥した後に、ロールプレス装置を用いてプレス処理し、厚み200μmのリチウムイオン電池正極を作製した。
【0133】
<リチウムイオン電池1〜31>
多孔質シート1〜31を介してリチウムイオン電池負極とリチウムイオン電池正極を合わせて巻回し、アルミニウム合金製の円筒型容器に収納して、リード体の溶接を行った。正極または負極に接触させる多孔質シート1〜31の表面の区別はしなかった。次いで、円筒型容器ごと150℃で10時間真空乾燥し、電極に含まれる水分を除去した。これを真空中で室温まで放冷した後、電解液を注入して密栓し、リチウムイオン電池1〜31(LIB1〜31)をそれぞれ100個作製した。電解液には、エチレンカーボネート30質量%、ジエチルカーボネート70質量%からなる混合溶媒に、LiPF6を1.2Mとなるように溶解させたものを用いた。
【0134】
EDLC1〜32、LIC1〜32、LIB1〜31について、下記の試験方法により評価を行い、その結果を表5〜7に示した。
【0135】
<内部抵抗>
EDLC1〜32を60℃、充電電流1Aで、3.5Vまで定電流充電し、3.5V到達後、1時間定電圧充電した。充電完了後、60℃、放電電流1Aで放電開始し、放電開始直後の電圧降下より内部抵抗を算出し、100個の平均値を表5に示した。
【0136】
LIC1〜32を60℃、充電電流1Aで3.8Vまで定電流充電し、3.8V到達後、1時間定電圧充電した。充電完了後、60℃、放電電流1Aで放電開始し、放電開始直後の電圧降下より内部抵抗を算出し、100個の平均値を表6に示した。
【0137】
LIB1〜31を60℃、充電電流1Aで4.2Vまで定電流充電し、4.2V到達後、3時間定電圧充電した。充電完了後、60℃、放電電流1Aで放電開始し、放電開始直後の電圧降下より内部抵抗を算出し、100個の平均値を表7に示した。
【0138】
<漏れ電流>
EDLC1〜32を60℃、充電電流1Aで3.5Vまで定電流充電し、60℃、3.5Vで24時間保持したときに計測される電流値を漏れ電流とし、100個の平均値を表5に示した。
【0139】
<静電容量維持率>
LIC1〜32を25℃、充電電流1Aで3.8Vになるまで定電流充電し、3.8V到達後、1時間定電圧充電した。充電完了後、放電電流1Aで2.2Vになるまで放電した。この充放電サイクルを繰り返し、10回目の放電における静電容量を初期静電容量とした。その後、3.8V、60℃にて1000時間の連続充電を行った。充電完了後、放電せずに60℃で3時間放置した後、60℃で3.8V−2.2Vの充放電サイクルを1回行って静電容量を算出し、初期静電容量に対する割合、すなわち静電容量維持率を求め、100個の平均値を表6に示した。
【0140】
<サイクル特性>
EDLC1〜32を25℃、充電電流1Aで、3.5Vまで定電流充電し、3.5V到達後、1時間定電圧充電した。充電完了後、25℃、放電電流1Aで放電したときの静電容量を初期静電容量とした。次いで、60℃、電流1Aで1000時間充放電を繰り返し、初期静電容量に対する1000時間後の静電容量の割合を算出し、100個の平均値を表5に示した。
【0141】
LIC1〜32を60℃、電流1Aで1000時間充放電を繰り返し、初期静電容量に対する1000時間後の静電容量の割合を算出し、100個の平均値を表6に示した。
【0142】
<自己放電率>
LIB1〜31を60℃、充電電流1Aで4.2Vまで定電流充電し、4.2V到達後、24時間定電圧充電した。充電完了後、放電せずに60℃で24時間放置し、24時間放置後の電圧減衰率を自己放電率(%)とし、100個の平均値を表7に示した。
【0143】
<ハイレート特性>
LIB1〜31を25℃、1Aで4.2Vになるまで充電し、さらに4.2Vで3時間定電圧充電した後、200mAで3.0Vまで放電したときの放電容量を測定し、これを初期容量とした。25℃、200mAで3.0Vまで放電した後、1Aで4.2Vになるまで充電し、さらに4.2Vで3時間定電圧充電した後、60℃、3Aで3.0Vまで放電して放電容量を測定し、初期容量に対する割合を計算し、ハイレート特性とした。ハイレート特性の値が大きいほど、ハイレート特性に優れることを意味する。
【0144】
【表5】
【0145】
【表6】
【0146】
【表7】
【0147】
実施例1〜21で作製した多孔質シートは、繊維と多孔質ポリウレタンを含有してなり、少なくとも片表面を、貫通孔の孔径分布が0.010〜50μmで孔面積率が5.0%以上の多孔質ポリウレタンが99.0%以上被覆してなり、多孔質シートの平均孔径が0.29〜3.0μmであるため、多孔質シート内部の相対的に大きな空間が保持され、電解液中のイオン移動を妨げることがなく該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン電池は、何れも内部抵抗が低く優れており、電気二重層キャパシタおよびリチウムイオンキャパシタはサイクル特性が優れており、リチウムイオン電池はハイレート特性に優れていた。
【0148】
実施例1〜21で作製した多孔質シートは、繊維を含有してなる多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸する工程、多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節する工程、多孔質基材を凝固液に接触させて多孔質基材に多孔質ポリウレタンを析出させる工程を経て製造されたため、多孔質シートの片表面または表裏面に集中的に多孔質ポリウレタンが形成され、電極活物質やデンドライトの貫通を阻止できるため、該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタは漏れ電流が小さく優れており、リチウムイオンキャパシタは静電容量維持率が高く優れており、リチウムイオン電池は自己放電率が低く優れていた。
【0149】
実施例3と4、7と8、9と10、15と16、17と18、19と20は、熱処理以外は同じ条件で製造された多孔質シートである。実施例4、8、10、12、16、18、20で作製した多孔質シートは、多孔質ポリウレタンの融点+10℃〜融点−50℃の範囲内の温度で熱処理されてなるため、熱処理しなかった実施例3、7、9、15、17、19の多孔質シートよりも平均孔径と孔面積率が大きくなっており、これらの多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン電池は何れも内部抵抗が低く優れていた。
【0150】
比較例1で作製した多孔質シートは、多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸した後に多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節しなかったため、表裏面のどちらも多孔質ポリウレタンの被覆率が99.0%未満であった。そのため、該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタは漏れ電流が大きく、リチウムイオンキャパシタは、静電容量維持率が悪く、リチウムイオン電池は自己放電率が悪かった。
【0151】
比較例2〜4で作製した多孔質シートは、本発明外の製造方法、すなわち多孔質基材にポリウレタン溶液を塗布する工程を経て製造されたため、多孔質ポリウレタンの孔面積率が5.0%未満であった。そのため、該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン電池は何れも内部抵抗が高かった。
【0152】
比較例5で作製した多孔質シートは、比較例1で使用したポリウレタン溶液よりも固形分濃度が高いポリウレタン溶液を使用したため、比較例1の多孔質シートよりも表裏面の多孔質ポリウレタンの被覆率が高くなったが、多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸した後に多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節しなかったため、多孔質ポリウレタンの孔面積率が小さく、多孔質シートの平均孔径が0.29μm未満であり、該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン電池は何れも内部抵抗が高かった。
【0153】
比較例6で作製した多孔質シートは、多孔質ポリウレタンではなく、ポリアミドイミドからなる網状構造体を含有してなり、図11に示したように該網状構造体が多孔質基材の表面および内部に多層に形成されたため、多孔質シート内部の空間が不十分になり、電解液中のイオン移動が妨げられて、該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタは実施例1〜21の多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタよりも内部抵抗が高く、リチウムイオンキャパシタは実施例1〜21の多孔質シートを具備してなるリチウムイオンキャパシタよりも内部抵抗が高く、静電容量維持率が悪く、リチウムイオン電池は、実施例1〜21の多孔質シートを具備してなるリチウムイオン電池よりも内部抵抗が高かった。
【0154】
比較例7で作製した多孔質シートは、表面Bにおいてポリエーテルスルホンの皮膜が97.5%被覆してなるため、平均孔径が0.29μm未満であり、該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン電池は何れも内部抵抗が高かった。
【0155】
比較例8で作製した多孔質シートは、表面Bにおいてポリアミドイミドの皮膜が99.9%被覆してなるため、電解液中のイオン移動を阻害してしまい、該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン電池は何れも内部抵抗が著しく高かった。
【0156】
比較例9で作製した多孔質シートは、比較例1および5で使用した多孔質基材よりも最大孔径の大きい多孔質基材を使用し、多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸した後、多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節しなかったため、表裏面を被覆してなる多孔質ポリウレタンの孔径分布が0.010〜50μmの範囲をはずれていた。そのため、多孔質シートの平均孔径が3.0μmより大きくなり、該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタは漏れ電流が大きく、リチウムイオンキャパシタは静電容量維持率が低く、リチウムイオン電池は自己放電率が高く劣っていた。
【0157】
比較例10で作製した多孔質シートは、本発明外の製造方法により製造されたため、多孔質ポリウレタンの孔面積率が著しく低く、該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン電池は何れも内部抵抗が高く、リチウムイオン電池はハイレート特性が悪かった。
【0158】
比較例11で作製した多孔質シートは、厚みの薄い紙であるため自己放電しやすく、該多孔質シートを具備してなる電気二重層キャパシタは漏れ電流がやや大きく、サイクル特性が悪く、リチウムイオンキャパシタは静電容量維持率とサイクル特性が悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明の活用例としては、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、レドックスキャパシタ、リチウムイオン電池などの電気化学素子用セパレータや限外濾過膜やエアフィルター、オイルフィルター、血液フィルター、逆浸透膜などが好適である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維と多孔質ポリウレタンを含有してなる多孔質シートにおいて、孔径分布が0.010〜50μmの貫通孔を有し、孔面積率が5.0%以上の多孔質ポリウレタンが少なくとも多孔質シートの片表面を99.0%以上被覆してなり、かつ、多孔質シートの平均孔径が0.29〜3.0μmであることを特徴とする多孔質シート。
【請求項2】
繊維と多孔質ポリウレタンを含有してなり、孔径分布が0.010〜50μmの貫通孔を有し、孔面積率が5.0%以上の多孔質ポリウレタンが少なくとも多孔質シートの片表面を99.0%以上被覆してなり、該多孔質シートの平均孔径が0.29〜3.0μmである多孔質シートの製造方法において、繊維を含有してなる多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸する工程、多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節する工程、多孔質基材を凝固液に接触させて多孔質基材に多孔質ポリウレタンを析出させる工程を経ることを特徴とする多孔質シートの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の多孔質シートからなる電気化学素子用セパレータ。
【請求項1】
繊維と多孔質ポリウレタンを含有してなる多孔質シートにおいて、孔径分布が0.010〜50μmの貫通孔を有し、孔面積率が5.0%以上の多孔質ポリウレタンが少なくとも多孔質シートの片表面を99.0%以上被覆してなり、かつ、多孔質シートの平均孔径が0.29〜3.0μmであることを特徴とする多孔質シート。
【請求項2】
繊維と多孔質ポリウレタンを含有してなり、孔径分布が0.010〜50μmの貫通孔を有し、孔面積率が5.0%以上の多孔質ポリウレタンが少なくとも多孔質シートの片表面を99.0%以上被覆してなり、該多孔質シートの平均孔径が0.29〜3.0μmである多孔質シートの製造方法において、繊維を含有してなる多孔質基材にポリウレタン溶液を含浸する工程、多孔質基材中のポリウレタン溶液量を調節する工程、多孔質基材を凝固液に接触させて多孔質基材に多孔質ポリウレタンを析出させる工程を経ることを特徴とする多孔質シートの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の多孔質シートからなる電気化学素子用セパレータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−46761(P2011−46761A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193891(P2009−193891)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】
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