説明

多孔質粒状体

【課題】光のない場所や時間帯においても、マイナスイオンと炭の脱臭能力により暗い場所でも臭いが消える作用を発揮する多孔質粒状体を提供する。
【解決手段】粉末状炭と、マイナスイオンセラミックスと、酸化チタンと、粉末状トルマリンと、粘土とからなる各原料成分を混練し、該混練物を粒状に成形し、該成形体を焼成して得られた多孔質粒状体。好ましくは質量割合は、粉末炭が5〜10%、マイナスイオンセラミックスが1〜10%、二酸化チタンが1〜10%、トルマリンが1〜5%、残部が粘土である。粘土は、Feを実質的に含まないか、2質量%未満とする。粉末炭は、臭い成分を多く含まないカシ等の木材から得られたものを用いる。原料成分混練物の成形体の焼成は、600℃〜1300℃の温度で行う。これにより、脱臭作用、浄化作用、吸湿作用等の優れた諸機能を有する多孔質粒状体が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭作用、浄化作用、吸湿作用等の優れた諸機能を有する多孔質粒状体に関する。
【背景技術】
【0002】
炭は、脱臭作用、浄化作用、吸湿作用等の優れた諸機能を有する多孔質体であって、従来から上記優れた諸機能を利用する種々の用途に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
また、臭い成分の分解や殺菌効果のある光触媒として、酸化チタン(TiO2)が注目されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−278655号公報
【特許文献2】特開平11−43367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、酸化チタン等の触媒は、光(紫外線)があるところで、空気中にある有機物が分解され、臭いが消え、また雑菌が分解されるので、光が当たらない冷蔵庫や夜間の車内での光触媒による脱臭、殺菌機能は期待できないという問題があった。
本発明は、光のない場所や時間帯においても、マイナスイオンと炭の脱臭能力により暗い場所でも臭いが消える作用を発揮する多孔質粒状体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の構成は、粉末状炭と、マイナスイオンセラミックスと、酸化チタンと、粉末状トルマリンと、粘土とからなる各原料成分を混練し、該混練物を粒状に成形し、該成形体を焼成して得られた多孔質粒状体である。
この第1の構成において、粘土は、多孔質粒状体を形成するベース及び他の原料のつなぎになる原料であり、これに、燃焼した後に多孔質の細孔を形成するとともに、残留元素が脱臭・吸湿作用を有することになる粉末状炭と、光触媒作用を呈する酸化チタンと、光のないところで酸化チタンに光触媒作用を付与するマイナスイオンセラミックスおよび粉末状トルマリンとを加えることにより、光のない場所や時間帯においても、マイナスイオンと炭の脱臭能力により暗い場所でも臭いが消える作用を発揮する多孔質粒状体が得られる。
【0006】
本発明の第2の構成は、前記混練物が、粉末状炭、マイナスイオンセラミックス粉末、酸化チタン、粉末状トルマリン、及び粘土の各原料成分を含み、各原料成分の使用割合が質量%で、粉末炭が5〜10%、マイナスイオンセラミックスが1〜10%、二酸化チタンが1〜10%、トルマリンが1〜5%、残部が粘土である多孔質粒状体である。
この第2の構成においては、各原料成分の割合を規定したものである。粉末炭は5〜10%とする。5%未満であると、多孔質の細孔の形成が少なくなり、10%を超えると割れや崩壊が起きて、歩留まりが悪くなる。マイナスイオンセラミックス、二酸化チタン、トルマリンは、それぞれ、焼成後の製品の特性を維持するために、前記範囲としている。
【0007】
本発明の第3の構成は、前記粘土は、Feを実質的に含まないか、2質量%未満である多孔質粒状体である。粘土として、鉄分(Fe)を含むものを使用すると、酸化により酸化鉄が生じ、赤茶色に変色するので、鉄分を含まないものか、含有率が2質量%未満のものを使用する。
【0008】
本発明の第4の構成は、前記粉末炭は、臭い成分を多く含まないカシ等の木材から得られたものである多孔質粒状体である。クヌギやブナ等は、臭い成分を含むので、消臭の目的には不適である。カシやナラや竹は、臭い成分を余り含まないので適している。
【0009】
本発明の第6の構成は、第1〜第5のいずれかの原料成分混練物の成形体の焼成が、600℃〜1300℃の温度で行われる多孔質粒状体である。600℃未満であると粘土中の無機質成分中に取り込まれている水分子が完全に脱水されず、また粉末炭を構成する炭素原子の酸化が不十分となり、また1300℃を超えると粘土中の鉱石の成分が溶融して多孔質の細孔が目詰まりし、多孔質の性状が得られなくなるため、この温度範囲とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粉末炭と、マイナスイオンセラミックスと、酸化チタンと、粉末状トルマリンと、粘土とからなる各原料成分を混練し、該混練物を粒状に成形し、該成形体を焼成して得られた多孔質粒状体であるので、粉末炭の活性炭による脱臭効果に加え、トルマリン及びマイナスイオンセラミックスから発生するイオンにより、光のないところでの酸化チタンによる光触媒作用が活性化し、消臭、殺菌効果が得られるので、冷蔵庫内、車両や部屋での使用が可能となり、またマイナスイオンによるリラックス効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の多孔質粒状体の原料に用いる粉末炭としては、木炭、竹炭等、種々の炭の粉末を一種類または複数種類用いることができる。また、その粒径は、必要に応じて適宜設定することができるが、一般に、0.05〜0.5mm程度とする。なお、栗の木などの臭いのある木材から作った木炭は、それ自体が臭いを発生し、脱臭の目的には適さないので、臭いのない木材、例えばカシを使用する。
【0012】
原料に用いる粘土としては、陶磁器用粘土等を適宜用いることができるが、鉄分(Fe)を含むものを使用すると、酸化により酸化鉄が生じ、赤茶色に変色するので、鉄分を含まないものか、含有率が2質量%未満のものを使用する。
【0013】
原料に用いるマイナスイオンセラミックス粉末、酸化チタン粉末および粉末状のトルマリン(電気石)の粒径は、必要に応じて適宜設定することができるが、一般に粉末状炭と同様、0.05〜0.5mmが好ましい。
【0014】
上記原料の粉末炭、マイナスイオンセラミックス、酸化チタンおよびトルマリンの使用割合は、必要に応じて適宜設定することができる。マイナスイオンセラミックスとしては、例えば、化粧品用材料を使用することができる。
【0015】
本発明の多孔質粒状体の製造工程について説明する。
(1)前述した粉末状炭、粘土、粉末状マイナスイオンセラミックス、粉末状酸化チタン、および粉末状トルマリンを所定量加え、必要に応じて所定量の水を加えて、混練する。
【0016】
(2)団子状になった混練物に圧力を加えて延ばし、できるだけ混練物から空気を抜く。所定期間、乾燥雰囲気中で放置し、混練物に含まれる水分を飛ばす。この工程を、必要に応じて数回、繰り返す。
【0017】
(3)所定の硬さになったら、成型機で平均粒径が5〜10mmの粒状に成形する。形状としては、錠剤状、球形、棒状など、任意の形状でよい。
【0018】
(4)粒状になったものを電気炉(窯)で焼成する。焼成温度は、600℃〜1300℃で行うことにより、粒状になった材料内部の水分や空気が排出され、また、粉末炭の炭素が酸化され、気体となって排出され、その空洞部が多孔質となる。粉末炭の一部は、炭素原子の形で、粒状体の内部に残留する。この炭素原子が、臭気の吸着物質として作用する。
【0019】
なお、急速加熱によって粘土中の水分が急激に放出されることによる割れや崩壊を防ぐため、水の沸点である100℃未満の温度、例えば50〜80℃で12時間程度予熱し、その後、600℃〜1300℃の範囲、例えば820℃で焼成することにより、割れや粒の崩壊を防止することもできる。
【0020】
上記の工程により製造された本発明の多孔質粒状体は、平均粒径が5〜10mmの、多孔性炭素質のマトリックス中に、粘土の微粒子、およびマイナスイオンセラミックス、酸化チタン、トルマリンの各構成成分が焼結されている構造を有する多孔質粒状体である。
【0021】
製造された多孔質粒状体の効果を測定するために、アンモニアの濃度変化、たばこ粒子の測定値変化、および湿度変化を測定したグラフを表1〜表3、および図1〜図3に示す。
【0022】
測定条件:平均粒径8mmの多孔質粒状体1kgを、容積約1立方メートルのアクリル製容器内に密封して常温かつ暗所で測定した。アンモニア濃度測定は光明理化学工業(株)の「北川式ガス検知器」、たばこ粒子測定は柴田科学(株)の「デジタル粉じん計P−5」、湿度変化は(株)ティアンドデイの「Thermo Recorder おんどとり 温湿度データロガー」をそれぞれ用いた。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

注)CPM:Count Per Minute=デジタル粉じん計の計数値
【0025】
【表3】

注)※は、湿度測定開始後180分を経過した後、そのままの状態で日光を当てて測定した。
【0026】
以上の結果から、アンモニア濃度は30分で3/4、180分を経過したときに1/2になり、たばこ粒子個数は、30分で2/3、90分位で1/2に減少することが判明した。また、吸湿効果は、5分で20%程度低下し、後は、余り変化がなかった。日光に当てると相対湿度が急減したが、温度が上昇したため、相対湿度が低くなったとも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、脱臭作用、浄化作用、吸湿作用等の優れた諸機能を有する多孔質粒状体として、冷蔵庫、車両、部屋、トイレ、靴箱等に設置する脱臭剤、吸湿剤などに利用することができる。また、水がまろやかになるため、シャワーヘッドに多孔質粒状体を収納して水道水を通すことにより、皮膚に対する刺激をやわらげることができる。水耕栽培の水質改善にも使用することができる。観葉植物や植木の土壌に混ぜることにより、マイナスイオンによる刺激により地中根、地下茎の育生を促進し、また、Cd,Hg等の有害物質の吸着作用もあるため、土壌改良材としても使用することができる。本発明の多孔質粒状体製造の過程で生じる微細粒の粉体は、壁面の内装時に塗布することにより、ハウスシック症候群の原因となる物質を吸着、分解し、環境改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例におけるアンモニアの濃度変化を示すグラフである。
【図2】実施例におけるたばこ粒子の測定値変化を示すグラフである。
【図3】実施例における湿度変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状炭と、マイナスイオンセラミックスと、酸化チタンと、粉末状トルマリンと、粘土とからなる各原料成分を混練し、該混練物を粒状に成形し、該成形体を焼成して得られた多孔質粒状体。
【請求項2】
前記混練物が、粉末状炭、マイナスイオンセラミックス粉末、酸化チタン、粉末状トルマリン、及び粘土の各原料成分を含み、各原料成分の使用割合が質量%で、粉末炭が5〜10%、マイナスイオンセラミックスが1〜10%、二酸化チタンが1〜10%、トルマリンが1〜5%、残部が粘土である請求項1記載の多孔質粒状体。
【請求項3】
前記粘土は、Feを実質的に含まないか、2質量%未満である請求項1または2記載の多孔質粒状体。
【請求項4】
前記粉末炭は、臭い成分を多く含まないカシ等の木材から得られたものである請求項1〜3のいずれかの項に記載の多孔質粒状体。
【請求項5】
原料成分混練物の成形体の焼成が、600℃〜1300℃の温度で行われる請求項1〜4のいずれかの項に記載の多孔質粒状体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−261906(P2007−261906A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91623(P2006−91623)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(506105869)エコライフ有限会社 (1)
【Fターム(参考)】