説明

多孔質膜およびそれを含む記録媒体

本発明は、多孔質膜に関し、ここで、該多孔質膜は、硬化する前には少なくとも1つの硬化性化合物および溶媒を含んでいた硬化されたコーティング組成物を含み、ここで、該多孔質膜の表面は、該多孔質膜の表面積に対し0.3〜18%の総表面孔面積および0.02〜1.0μmの平均表面孔径を特徴とする。本発明は、さらに、これらの多孔質膜が使用される、画像記録媒体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線によって化合物を硬化することによって得られた多孔質膜に関する。本発明は、さらに、これらの多孔質膜が、特にインク受容層として、使用されている画像記録材料に関する。本発明はまた、前記膜および前記記録媒体を製造するための方法、ならびに該膜および該記録媒体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録媒体を製造するために硬化性混合物が使用されているいくつかの例が見られ得る。EP−A−1 289 767、EP−A−1 418 058およびEP−A−1 477 318は、十分な溶媒取り込みを得るために多孔質特性が有機または無機粒子によって提供されている、UV光または他の放射線によって硬化された層を開示している。しかし、無機粒子の適用は、層を物理的に弱くし、層の亀裂または破壊を生じさせ得る。
【0003】
EP−A−O 738 608は、水溶性高分子量化合物を含有する硬化組成物を記載しているが、これらの組成物は固体層を生じ、したがって迅速に乾燥しない。
【0004】
WO−A−99/21723は、水性溶媒混合物中に溶解されたバインダーでコーティングされた基体を開示しており、この層は次いで硬化される。この文献は、任意量の溶媒が好適であり、硬化前のバインダーの希釈度に制限はないことを教示している。
【0005】
WO−A−01/91999およびGB−A−2 182 046は、乾燥後に硬化される硬化性インクジェットコーティングを開示している。
【0006】
US−A−6 210 808は、水不溶性粒子および水不溶性モノマー/プレポリマーのコロイダル懸濁液が硬化される、インクジェット記録シートを記載している。
【0007】
US−A−6 734 514は、水不溶性ラテックスを含む、インクジェット印刷用の放射線硬化性コーティングを開示している。
【0008】
別の方法は、例えばEP−A−0 888 903におけるような発泡層の適用である。
【0009】
上述の先行技術において、受容層は分離されず、コーティングされた基体の乾燥後および/またはさらなる操作後に基体上に直接形成される。そのまま使用され得るかまたは有利な特性を与えるために別のプロセスで基体へ適用され得る膜として、このような層を分離することができることは、例えばインクジェット記録媒体として有利である。膜は、種々の方法、例えば、ポリマー溶液の乾式および湿式相転換、均質で部分的に結晶性のポリマーフィルムの延伸、粒状材料の焼結、均質なポリマー溶液の熱ゲル化、および照射または熱開始による同時相分離を伴うラジカル重合等によって作製される。これらの方法の中で、湿式相転換法(この方法中では、ポリマー溶液が、固体ポリマーリッチ相と液体溶媒リッチ相との分離を生じさせる沈殿剤または非溶媒と接触される)が、多孔質構造体を得るためにとりわけ最も広く使用されている。この技術が適用されている例は、WO−A−98/32541、WO−A−2005/016655、US−A−4 707 265、US−A−5 079 272、EP−A−O 803 533、EP−A−O 812 697、EP−A−O 824 959、EP−A−O 889 080およびEP−A−1 149 624において見られ得る。
【0010】
湿式相転換の主な欠点は、得られる生産速度が制限されていることおよび必要とされる有機溶媒が多量であることである。
【0011】
乾式相転換法は、例えばEP−A−1 176 030に記載されている。代替法がUS−A−4466 931、EP−A−0 216 622およびEP−A−0 481 517に開示されており、これらは、低沸点の洗浄液で洗浄することによって除去される不揮発性有機溶媒中の硬化性モノマーを照射することによって作製される膜を記載している。
【0012】
多くの硬化性化合物は本来疎水性であるので、乾式および湿式相転換技術はどちらも、透明な溶液を得るために有機無極性溶媒を必要とする。
【0013】
膜はまた、例えばEP−A−0 251 511、JP−A−5 177 120およびUS−A−4942 204に記載されるような熱重合、またはGB−A−1 549 352に記載されるようなアクリル酸のPVCフィルムへのグラフト化等の他の方法によっても作製され得るが、これらの膜またはフィルムは多孔質ではなく、溶媒からの相分離によって形成されない。
【0014】
自己保持フィルムとしての両親媒性コポリマーから作製された膜が、WO−A−01/88025に記載されており、これもまた多孔質ではなく、比較的小さなサイズ(1mm2以下)のものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特定の条件下では上述の先行技術材料でも受容可能な結果を得ることができるが、改善の必要性が依然として存在している。本発明は、この必要性を、少なくとも部分的に、満たすことを追求する。
【0016】
記録媒体については、多孔質フィルムの吸収特性(特に、吸収速度)に関連し得る、特にスミアリング(smearing)特性について、改善が必要とされている。同時に、良好な光沢を有する多孔質フィルムが提供されなければならない。安全性を保証しかつ環境汚染を防ぐために高価な手段を必要とすることなく、高速で製造され得る膜についての必要性が存在する。本発明は、少なくとも部分的に、これらの問題を解決することを目標とする。
【0017】
低コストかつ高コーティング速度で製造され得る多孔質膜を提供することが、本発明の目的である。優れた乾燥特性およびまた良好な光沢を有する記録媒体を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
我々は、予測不能にも、膜の表面上の孔のサイズおよび総面積が特定の限度内に制御されている膜を提供することによって、これらの目的が満たされ得ることを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
インク受容層として適用された膜について、高光沢を示すことが重要であり、このために表面層は滑らかであることが必要である。インク吸収速度の低下を伴わない良好な光沢は、高インク吸収速度を伴う最大光沢のために、孔によって占められる領域を好ましくは0.3〜18%、より好ましくは1.0〜15%へ制御することによって得られ得る。孔面積は孔の直径および量によって規定される。これは、ある量の孔について、孔面積は孔径に依存して変化することを意味する。一般的に、低頻度で大きな孔が存在することは、高頻度で小さな孔が存在することよりも好ましくない。表面孔の絶対平均孔径は、好ましくは0.02〜1μm、より好ましくは0.05〜0.7μmである。選択される実施形態について、0.06〜0.3μmの範囲が好ましい。少なくとも1つの硬化性化合物および溶媒を含む硬化性組成物を基体にコーティングし、コーティングされた組成物を硬化し、それによって架橋化化合物と溶媒との間の相分離を生じさせることによって、多孔質層が備えられた基体が形成される。膜は洗浄および/または乾燥工程へ供されてもよい。この方法によって、種々の用途に使用され得、かつ、その高い溶媒フラックスおよび/または取り込み能を特徴とする、多孔質膜が得られ得る。分離される場合、本発明の多孔質膜は、後で、あらゆる種類の支持体へ固定され得る。基体からの分離は、基体の適切な処理によって、例えば、基体上へ硬化性化合物混合物をコーティングする前に例えばシロキサン系ポリマーを含む「剥離」層を塗布することによって、容易に達成され得る。本発明の分離された多孔質膜は、接着層によって基体へ別個に接着され得る。この接着層はまた、得られる媒体へ特定の性質を与え得る。本開示を通して、用語 「硬化性化合物」および「(硬化性)モノマー」は、互換的に使用される。
【0020】
別の実施形態において、基体および多孔質層は、分離された多孔質膜を与えるように分離されるのではなく、形成されたままの状態で−例えば、不織支持体または光沢支持体上にコーティングされた膜として−使用され、ここで、多孔質膜は、記録媒体において使用される場合、色材受容層として機能し得る。これは、例えばインクジェット記録媒体であり得、この場合は色材がインク溶液である。
【0021】
別の実施形態において、基体は、2層以上の硬化性化合物混合物でコーティングされる。この方法によって、多孔質膜にわたって種々の特性を有する多孔質膜が、設計され、作製され得る。したがって、色材固定特性を有する外層が設計され作製され得、これは例えば外層に媒染剤を導入することによってなされる。また、最適化された水取り込み能を有する内部多孔質層が、構築され得る。あるいは、バックライト(backlit)材料にいわゆるバックビューオプションを導入するために、外層は耐引っ掻き性について最適化され、色材固定特性が、透明支持体に最も近い層に位置する。あるいは、分離膜への応用において、外層の多孔性は、分離特性を規定するように制御され、一方、内層は、膜に強度を与えかつ高い溶媒フラックスを可能にするように最適化される。
【0022】
一般的に、分離された形態の本発明の多孔質膜の乾燥厚みは、典型的には、10μm〜500μm、より好ましくは30〜300μmであり得る。基体へ接着される場合、膜は、内部強度を与える必要が無く、最適な厚みは、溶媒取り込み能等の特性に基づく。後者の場合、乾燥厚みは、典型的には5〜50μmである。基体が水性溶媒に対して不透過性である場合、乾燥厚みは、好ましくは20〜50μmであり、一方、例えば(コーティングされた)原紙の場合にそうであるように、基体が該溶媒の一部を吸収し得る場合、好ましい乾燥厚みは5〜30μmである。多孔質層が多層である場合、種々の層の厚みは、達成したい特性に依存して、自由に選択され得る。
【0023】
多くの硬化性化合物は本来疎水性であり、透明な溶液を得るために高濃度の有機無極性溶媒を必要とする。大量の揮発性有機溶媒は好ましくなく、何故ならば、これらは膜の乾燥段階の間に生産領域において有害な状態を生じさせ得るためであり、一方、不揮発性溶媒は除去するのが困難であり、したがってこれも好ましくない。安全性、健康および環境の理由のために、ならびに経済的観点から、水が最も好ましい溶媒である。好適な硬化性化合物は、水溶液を形成するように水希釈性(water reducible)であることが見出された。25℃で少なくとも2重量%の水が硬化性化合物と相溶性である場合、化合物は水希釈性と見なされる。好ましくは、少なくとも4重量%、より好ましくは少なくとも10重量%の水が、本発明の硬化性化合物と混和性である。好ましくは、水等の環境に優しい溶媒、が使用される。水を含む溶媒は、一般的に水性溶媒と呼ばれる。水性溶媒は、好ましくは、少なくとも30重量%の水、より好ましくは少なくとも50重量%を含み、他の極性または無極性共溶媒をさらに含み得る。水との混和性が硬化性化合物を完全に溶解するに十分でない場合、共溶媒の混合が望ましい。好ましくは、溶媒は、少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、そしてより好ましくは少なくとも80、あるいはさらには少なくとも90重量%、水を含有する。特定の実施形態において、溶媒は、水であり、有機共溶媒を含有しない。例えば、10%CN132、27.5%CN435および62.5%水、または21.5%CN132、21.5%CN435および57%水、または60%CN132および40%水、または49.75%CN132、49.75%水および0.5%塩化ドデシルトリメチルアンモニウムが、好ましい多孔質マトリクスを提供し得る。CN132およびCN435は、Cray Valley, France製の硬化性モノマーである。CN132は、低粘度脂肪族エポキシアクリレートである。CN435(USにおいてSR9035として入手可能)は、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートである。
【0024】
共溶媒としては、乾燥によって十分に除去され得る極性揮発性溶媒が好ましい。好ましい共溶媒は、低級アルキルアルコール、アルカノン、アルカナール、エステル、またはアルコキシ−アルカンである。用語「低級アルキル」は、アルキル鎖が7個未満、好ましくは6個未満、より好ましくは5個未満の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を含むことを意味する。一実施形態において、溶媒は、イソプロパノールおよび水の混合物である。他の好ましい共溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、アセトン、酢酸エチル、ジオキサン、メトキシエタノールおよびジメチルホルムアミドである。最も好ましいのは、水の沸点未満の沸点を有する共溶媒である。
【0025】
溶媒中の硬化性化合物の溶解性は、別の重要なパラメータである。好ましくは、硬化性組成物は、透明な溶液である。選択される硬化性化合物または化合物混合物が完全に溶解されるように、溶媒は選択され得る。透明な溶液はより安定であり、一般的に好ましい。しかし、僅かな濁りは、通常、不安定性を生じさせず、大抵の場合に受け入れられ得る。一方、相分離が生じるためには、成長中のポリマーは溶媒に不溶性であるべきである。これは、特定の溶媒と組み合わせて選択され得る硬化性化合物に特定の制限を与える。好適な組み合わせの選択を手助けし得る可能な方法は、例えば、EP−A−216622(曇り点)およびUS−A−3823027(Hansenシステム)に記載されている。
【0026】
初期化合物と得られるポリマーとの間の溶解度の大きな差異およびしたがって迅速な相分離を得るために、好ましくは初期化合物の分子量(MW)は大きすぎないことであるが、しかしまた溶媒を注意深く選択すれば高MWポリマーによっても多孔質膜が実現され得る。好ましくは、硬化性モノマーまたはオリゴマーのMWは、10000ダルトン未満、より好ましくは5000ダルトン未満である。良好な結果は、1000ダルトン未満のMWを有する化合物で得られる。
【0027】
2重量%〜50重量%の水希釈性(water reducibility)を有する硬化性化合物に加えて、他のタイプの硬化性モノマーが、硬化性組成物中に存在し得る。本発明における硬化性化合物は、例えば、"Development of ultraviolet and electron beam curable materials"(Y. Tabata編, CMC publishing, 2003, ISBN 4882317915)に記載されており、エポキシ化合物、オキセタン誘導体、ラクトン誘導体、オキサゾリン誘導体、環状シロキサン、またはエチレン性不飽和化合物、例えば、アクリレート、メタクリレート、ポリエン−ポリチオール、ビニルエーテル、ビニルアミド、ビニルアミン、アリルエーテル、アリルエステル、アリルアミン、マレイン酸誘導体、イタコン酸誘導体、ポリブタジエンおよびスチレンから選択され得るが、これらに限定されない。好ましくは、主要成分として、(メタ)アクリレート、例えば、アルキル−(メタ)アクリレート、ポリエステル−(メタ)アクリレート、ウレタン−(メタ)アクリレート、ポリエーテル−(メタ)アクリレート、エポキシ−(メタ)アクリレート、ポリブタジエン−(メタ)アクリレート、シリコーン−(メタ)アクリレート、メラミン−(メタ)アクリレート、ホスファゼン−(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、およびそれらの組み合わせが、それらの高い反応性のため、使用される。他のタイプの硬化性化合物が、得られる膜の特定の特性を修飾するために、主成分と組み合わせられ得る。これらの化合物は、モノマー溶液、モノマー懸濁液、モノマー分散液、オリゴマー溶液、オリゴマー懸濁液、オリゴマー分散液、ポリマー溶液、ポリマー懸濁液およびポリマー分散液の形態で使用され得る。
【0028】
本発明の多孔質膜を作製するために、硬化性組成物およびプロセッシング条件は、注意して選択されなければならない。照射時に、前記モノマー(またはオリゴマーまたはプレポリマー)は、架橋し、徐々にポリマーを形成する。このプロセスの間、溶媒中の成長中のポリマーの溶解度は減少し、相分離を生じ、結果として、ポリマーは溶液から分離する。最終的に、ポリマーは、溶媒が孔を満たしている多孔質構造を有する網目を形成する。乾燥すると、溶媒は除去され、多孔質膜が残る。特定の実施形態において、膜は、乾燥されず、しかし、必要により洗浄され、孔の崩壊を防ぐために湿潤条件に維持される。多孔質膜の最適構造を得るために、硬化性化合物または硬化性化合物の混合物の濃度を注意深く選択することが重要である。濃度が低すぎる場合、硬化時に網目構造が形成されないことが予想され、濃度が高すぎる場合、多かれ少なかれ均質なゲル化層が形成され得、これは乾燥後に非多孔質透明層を生み出すことが実験によって示される。また、モノマーの溶媒への溶解性が高すぎる場合、相分離は生じず、次いで、通常、ゲル構造が重合後に形成される。多孔質構造は、高い溶媒フラックスに必須である。この観点から、溶媒中の硬化性化合物(1種または複数種)の濃度は、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20〜70重量%、最も好ましくは30〜60重量%である。
【0029】
多孔質膜が色材受容媒体、例えば水性インクが画像を形成するために使用される場合のインクジェット記録媒体として使用される場合、関係する水性溶媒を迅速に吸収するために、膜は親水性特性を有するべきである。硬化性組成物が主溶媒として水を含有する場合、相分離が生じるためには溶媒との不相溶性が重要であるので、形成されるポリマーは、一般的に、疎水性特性を有さなければならない。これは、この応用について、本発明の膜は親水性特性および疎水性特性の両方を有さなければならないことを暗示している。これらの一見矛盾する要求は、例えば、両親媒性構造を有する硬化性化合物を選択することによって実現化され得る:該分子のある部分は親水性であり、別の部分は疎水性特性を有する。両親媒性モノマーは、親水性基および疎水性基の両方を有してもよく、または両親媒性基(例えば、(1,2−もしくは1,3−)プロピレンオキシド鎖または(1,2−、1,3−もしくは1,4−)ブチレンオキシド鎖)を有してもよい。疎水性基の例は、脂肪族または芳香族基、C3より長いアルキル鎖などである。代替のアプローチは、硬化性組成物中に、親水性である硬化性化合物および疎水性である硬化性組成物を含めることである。後者の方法は、膜の特性が、両方のタイプの硬化性化合物の比率を変化させることによって制御されることを可能にする。親水性モノマーは、例えば、水溶性モノマー、ならびにヒドロキシ、カルボキシレート、スルフェート、アミン、アミド、アンモニウム、エチレンオキシド鎖などの親水性基を有するモノマーである。両親媒性は、いくつかの方法で得られ得る。両親媒性モノマーは、例えば、疎水性モノマーの構造中へ極性基(例えば、ヒドロキシ、エーテル、カルボキシレート、スルフェート、アミン、アミド、アンモニウムなど)を導入することによって作製され得る。一方、親水性構造から出発して、例えばアルキル基または芳香族基を導入することによって疎水性特性を増加させることによっても、両親媒性モノマーが作製され得る。
【0030】
少なくとも1つの硬化性化合物が制限された水希釈性を有する場合、良好な結果が得られる。好ましくは、水は、2/98〜50/50、より好ましくは4/96〜50/50、さらにより好ましくは10/90〜50/50の重量比で25℃において硬化性モノマーと混和性である。多くの好適な硬化性化合物は、本来は両親媒性である。共溶媒、界面活性剤の添加によって、組成物のpHを調節することによって、またはより高い水負荷で良好な溶解性を維持するモノマー中に混合することによって、モノマーの好適な濃度が達成され得る。後者のモノマーに対する水の混和性比率は、典型的に、25℃で50重量%を超える。
【0031】
本発明の多孔質膜を達成する別の可能な方法は、水との混和性に乏しい(典型的には、25℃でのモノマーに対する水の混和性比率が2重量%未満の)モノマーと水との混和性が良好な(即ち、25℃でのモノマー中への水の混和性が50重量%を超える)モノマーとの混合物を塗布することである。2、3またはそれ以上のタイプのモノマーの組み合わせを注意深く選択し、それらのそれぞれの濃度および溶媒組成を最適化することによって、多くの異なるタイプのモノマーを、本発明において首尾良く適用することができる。
【0032】
25℃における水/モノマー重量比が2/98〜50/50である水との混和性を示す好適なモノマーは、以下のものである。ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(好ましくはMW<500、例えば、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレートなど)、エチレングリコールエポキシレートジメタクリレート、グリセロールジグリセロレートジアクリレート(glycerol diglycerolate diacrylate)、プロピレングリコールグリセロレートジアクリレート(propylene glycol glycerolate diacrylate)、トリプロピレングリコールグリセロレートジアクリレート(tripropylene glycol glycerolate diacrylate)、オリゴ(プロピレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、オリゴ(プロピレングリコール)グリセロレートジアクリレート(oligo(propylene glycol) glycerolate diacrylate)、ポリ(プロピレングリコール)グリセロレートジアクリレート(poly(propylene glycol) glycerolate diacrylate)、オリゴ(ブチレンオキシド)ジアクリレート、ポリ(ブチレンオキシド)ジアクリレート、オリゴ(ブチレンオキシド)グリセロレートジアクリレート(oligo(butylene oxide) glycerolate diacrylate)、ポリ(ブチレンオキシド)グリセロレートジアクリレート(poly(butylene oxide) glycerolate diacrylate)、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(エトキシ化3−10mol)、エトキシ化ビスフェノール−Aジアクリレート(エトキシ化3−10mol)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−(エトキシエトキシ)エチルアクリレート、N,N'−メチレン−ビス(アクリルアミド)、N,N'−エチレン−ビス(アクリルアミド)。市販の化合物、例えば、全てCray Valley, France製の、CN129(エポキシアクリレート)、CN131B(単官能性脂肪族エポキシアクリレート)、CN133(三官能性脂肪族エポキシアクリレート)、CN9245(三官能性ウレタンアクリレート)、CN3755(アミノジアクリレート)、CN371(アミノジアクリレート)もまた好適である。
【0033】
水との良好な混和性(25℃で水/モノマーの重量比が50/50を超える)を有する好適な(親水性)モノマーは、以下である。ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート(好ましくはMW>500)、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート(好ましくはMW>500)、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(エトキシ化 10mol超)、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート第4級アンモニウム塩(クロリドまたはスルフェート)、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート第4級アンモニウム塩(クロリドまたはスルフェート)、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド第4級アンモニウム塩(クロリドまたはスルフェート)、3−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド第4級アンモニウム塩(クロリドまたはスルフェート)。
【0034】
水との混和性に乏しい(疎水性)(25℃で水/モノマーの重量比が2/98より低い)好適なモノマーは、以下である。アルキル(メタ)アクリレート (例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、n−ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート)、芳香族アクリレート(フェノールアクリレート、アルキルフェノールアクリレートなど)、脂肪族ジオール(ジ)(メタ)アクリレート(例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリルトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、スチレン誘導体、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、ビニルアルキルエーテル、アルケン、ブタジエン、ノルボネン(norbonene)、イソプレン、C4より長いアルキル鎖を有するポリエステルアクリレート、C4より長いアルキル鎖を有するポリウレタンアクリレート、C4より長いアルキル鎖を有するポリアミドアクリレート。
【0035】
好ましくは、硬化性組成物は、水/モノマーの比が25℃で2/98〜50/50である水との混和性を有するモノマーを、硬化性モノマーの総量基準で、1〜100重量%、より好ましくは10〜80重量%、最も好ましくは40〜70重量%含む。硬化性組成物は、さらに、水/モノマーの比が25℃で50/50を超える水との混和性を有するモノマーを硬化性モノマーの総量基準で、99重量%以下、好ましくは30〜60重量%含み得る。乏しい混和性を有するモノマーもまた、99重量%以下、混合物中に存在し得る。本発明による膜を得る別の方法は、水と良好な混和性を有するモノマー1〜99重量%、好ましくは30〜80重量%と、25℃で水/モノマーの比が2/98未満である水との混和性に乏しいモノマー1〜99重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20〜70重量%とを組み合わせることである。
【0036】
硬化性化合物混合物は、好ましくは、多孔質膜を得るために放射線へ供される。原則として、任意の好適な波長の(電磁)放射線、例えば、紫外線、可視線または赤外線が使用され得る。重合開始剤またはフリーラジカル開始剤が、硬化性組成物の照射時に重合反応を開始するために適用され得る。フリーラジカル重合の利点は、高反応速度および融通性であり、化学重合は、架橋剤の徹底的な混合を必要とし、通常遥かに遅い。開始剤は、本発明に従って使用され得、そして、好ましくは支持体へ混合物を塗布する前に、硬化性化合物の混合物中へ混合され得る。光開始剤は、通常、コーティングされた混合物がUV光または可視光放射線によって硬化される場合に必要とされる。好適な光開始剤は、ラジカルタイプ、カチオンタイプまたはアニオンタイプ光開始剤等の当該分野において公知のものである。
【0037】
ラジカルタイプI光開始剤の例は、以下である。α−ヒドロキシアルキルケトン、例えば、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン(イルガキュア(Irgacure)(商標)2959:チバ(Ciba))、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(Irgacure(商標)184:チバ(Ciba))、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(Sarcure(商標)SR1173:Sartomer)、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−{4−(1−メチルビニル)フェニル}プロパノン](サルキュア(Sarcure)(商標)SR1130:サルトマー(Sartomer))、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−tert−ブチル−)フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−[4'−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパノン(Darcure(商標)1116:チバ(Ciba))、α−アミノアルキルフェノン、例えば、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−4'−モルホリノブチロフェノン(イルガキュア(Irgacure)(商標)369:チバ(Ciba))、2−メチル−4'−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン(イルガキュア(Irgacure)(商標)907:チバ(Ciba))、α,α−ジアルコキシアセトフェノン、例えば、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン(イルガキュア(Irgacure)(商標)651:チバ(Ciba))、2,2−ジエトキシ−1,2−ジフェニルエタノン(ウバトン(Uvatone)(商標)8302:ウピジョン(Upjohn))、α,α−ジエトキシアセトフェノン(DEAP:Rahn)、α,α−ジ−(n−ブトキシ)アセトフェノン(ウバトン(Uvatone)(商標)8301:ウピジョン(Upjohn))、フェニルグリオキシレート、例えば、メチルベンゾイルホルメート(ダロキュア(Darocure)(商標)MBF:チバ(Ciba))、ベンゾイン誘導体、例えば、ベンゾイン(エスキュア(Esacure)(商標)BO:ランバーチ(Lamberti))、ベンゾインアルキルエーテル(エチル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチルなど)、ベンジルベンゾインベンジルエーテル、アニソイン、モノ−およびビス−アシルホスフィンオキシド、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド(ルシリン(Lucirin)(商標)TPO:BASF)、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィナート(ルシリン(Lucirin)(商標)TPO−L:BASF)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(イルガキュア(Irgacure)(商標)819:チバ(Ciba))、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキシド(イルガキュア(Irgacure)1800または1870)。他の市販の光開始剤は、以下である。1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]−1,2−オクタンジオン(イルガキュア(Irgacure)OXE0l)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾル−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)エタノン(イルガキュア(Irgacure)OXE02)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(イルガキュア(Irgacure)127)、オキシ−フェニル−酢酸2−[2オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル(イルガキュア(Irgacure)754)、オキシ−フェニル−アセティック−2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル(イルガキュア(Irgacure)754)、2−(ジメチルアミノ)−2−(4−メチルベンジル)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(イルガキュア(Irgacure)379)、1−[4−[4−ベンゾイルフェニル)チオ]フェニル]−2−メチル−2−[(4−メチルフェニル)スルホニル)]−1−プロパノン(ランバーチ(Lamberti)製のエスキュア(Esacure)1001M)、2,2'−ビス(2−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビスイミダゾール(IGM製のオムニラッド(Omnirad)BCIM)。
【0038】
タイプII光開始剤の例は、以下である。ベンゾフェノン誘導体、例えば、ベンゾフェノン(アジトール(Additol)(商標)BP:UCB)、4−ヒドロキシベンゾフェノン、3−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4'−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,5−ジメチルベンゾフェノン、3,4−ジメチルベンゾフェノン、4−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、[4−(4−メチルフェニルチオ)フェニル]フェニル−メタノン、3,3'−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチルベンゼンメタンアミニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリド、4−(13−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデシル)ベンゾフェノン(Uvecryl(商標)P36:UCB)、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]エチルベンゼン−メタンアミニウムクロリド、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルスルフィド、アントラキノン、エチルアントラキノン、アントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム塩、ジベンゾスベレノン、アセトフェノン誘導体、例えば、アセトフェノン、4'−フェノキシアセトフェノン、4'−ヒドロキシアセトフェノン、3'−ヒドロキシアセトフェノン、3'−エトキシアセトフェノン、チオキサンテノン誘導体、例えば、チオキサンテノン、2−クロロチオキサンテノン、4−クロロチオキサンテノン、2−イソプロピルチオキサンテノン、4−イソプロピルチオキサンテノン、2,4−ジメチルチオキサンテノン、2,4−ジエチルチオキサンテノン、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリド(カヤキュア(Kayacure)(商標)QTX:日本化薬(Nippon Kayaku))、ジオン、例えば、ベンジル、カンファーキノン、4,4'−ジメチルベンジル、フェナントレンキノン、フェニルプロパンジオン、ジメチルアニリン、例えば、4,4',4"−メチリジン−トリス(N,N−ジメチルアニリン)(IGM製のオムニラッド(Omnirad)(商標)LCV)、イミダゾール誘導体、例えば、2,2'−ビス(2−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−ビスイミダゾール、チタノセン、例えば、ビス(η(eta)−5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス−[2,6−ジフルオロ−3−1H−ピロール−1−イル]フェニル]チタニウム(イルガキュア(Irgacure)(商標)784:チバ(Ciba))、ヨードニウム塩、例えば、ヨードニウム、(4−メチルフェニル)−[4−(2−メチルプロピル−フェニル)−ヘキサフルオロホスフェート(1−)。必要に応じて、光開始剤の組み合わせもまた使用され得る。
【0039】
アクリレート、ジアクリレート、トリアクリレートまたは多官能性アクリレートについて、タイプI光開始剤が好ましい。特に、アルファ−ヒドロキシアルキルフェノン、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−tert−ブチル−)フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−[4'−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびオリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−{4−(1−メチルビニル)フェニル}プロパノン]、アルファ−アミノアルキルフェノン、アルファ−スルホニルアルキルフェノンおよびアシルホスフィンオキシド、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイル−フェニルホスフィナートおよびビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドが、好ましい。好ましくは、光開始剤および硬化性化合物の比率は、重量に基づいて、0.001〜0.1、より好ましくは0.005〜0.05である。使用する光開始剤の量を最小化することが好ましい、換言すれば、好ましくは、全ての光開始剤が、硬化工程(単数又は複数)後に反応してしまっている。膜が記録媒体として使用される場合、残存している光開始剤は、色素の黄変化または分解等の悪影響を有し得る。分離膜として適用される場合、残存している光開始剤を洗い落とすために、過剰な洗浄が必要とされ得る。
【0040】
2以上の層が塗布される場合、各層において、光開始剤のタイプおよび濃度は、独立して選択され得る。例えば、多層構造において、最上層中の光開始剤は、下層(単数又は複数)中の光開始剤とは異なってもよく、このことは、単一の開始剤が全ての層にわたって適用される場合よりも、低い開始剤濃度でのより効果的な硬化を提供し得る。あるタイプの光開始剤は表面を硬化することにおいて最も効果的であり、一方、他のタイプは、放射線で照射されると、層のより深部を硬化する。より下の層については、良好な直通の硬化が重要であり、高効率の硬化については、最上層中に適用された光開始剤のスペクトルと完全には重複しない吸収スペクトルを有する光開始剤を選択することが好ましい。好ましくは、最上層中および下層中の光開始剤の間の吸収極大の差異は、少なくとも20nmである。UV線が使用される場合、数個の波長での発光を有する光源が選択され得る。UV光源と光開始剤との組み合わせは、十分な放射線が下層へ透過して光開始剤を活性化させるように最適化され得る。典型的な例は、約220nm、255nm、300nm、310nm、365nm、405nm、435nm、550nmおよび580nmに発光極大を有する、Fusion UV Systemsによって供給される600ワット/インチの出力のH電球である。代替物は、異なる発光スペクトルを有するV電球およびD電球である。UV光源のスペクトルと光開始剤のそれとの間に十分な重複が存在する必要があることは明らかである。光源および光開始剤の選択から、最適な組み合わせが作製され得る。複数のタイプの光開始剤の方法は、より厚い層が、同一の強度の照射で効果的に硬化されることを可能にする。さらに、種々のタイプの光開始剤を適用することによって、光沢および多孔性等の特性が、単一のタイプの光開始剤では可能でないレベルまで最適化され得る。
【0041】
硬化速度は、硬化性化合物へアミン共力剤(amine synergists)を添加することによって、増加され得る。アミン共力剤は、反応性を増強させ、酸素阻害を遅延させることが知られている。好適なアミン共力剤は、例えば、遊離アルキルアミン、例えば、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、芳香族アミン、例えば、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエートおよびまたポリマーアミン、例えばポリアリルアミンならびにその誘導体である。硬化性アミン共力剤、例えばエチレン性不飽和アミン(例えば、(メタ)アクリレート化アミン)が好ましく、何故ならば、それらの使用は、硬化によってポリマーマトリクス中へ組み込まれるその能力に起因して、より少ない臭い、より低い揮発性、およびより少ない黄変を与えるためである。
【0042】
アミン共力剤の量は、好ましくは、硬化性組成物中の硬化性化合物の量を基準として0.1〜10重量%、より好ましくは硬化性化合物を基準として0.3〜3重量%である。
【0043】
赤外線による硬化もまた、熱硬化として公知である。したがって、硬化重合は、エチレン性不飽和モノマーとフリーラジカル開始剤とを組み合わせ、混合物を加熱することによって、行われ得る。例示的なフリーラジカル開始剤は、有機過酸化物、例えば過酸化エチルおよび過酸化ベンジル、ヒドロペルオキシド、例えばメチルヒドロペルオキシド、アシロイン、例えばベンゾイン、特定のアゾ化合物、例えばα,α'−アゾビスイソブチロニトリルおよびγ,γ'−アゾビス(γ−シアノ吉草酸)、ペルスルフェート、ペルアセテート、例えば過酢酸メチルおよび過酢酸tert−ブチル、過シュウ酸エステル(peroxalates)、例えば過シュウ酸ジメチルおよび過シュウ酸ジ(tert−ブチル)、ジスルフィド、例えばジメチルチウラムジスルフィド、ならびにケトンペルオキシド、例えばメチルエチルケトンペルオキシドである。約23℃〜約150℃の範囲内の温度が、一般的に使用される。よりしばしば、約37℃〜約110℃の範囲内の温度が使用される。
【0044】
紫外光による照射が好ましい。波長が光開始剤の吸収波長(存在する場合)と一致する限り、好ましい波長は、例えば、UV−A(400〜320nm)、UV−B(320〜280nm)、UV−C(280〜200nm)である。
【0045】
紫外光の好適な供給源は、水銀アーク灯、カーボンアーク灯、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、旋回流(swirlflow)プラズマアークランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ、レーザーおよび紫外線発光ダイオードである。特に好ましいのは、中圧または高圧水銀蒸気タイプの紫外光を発光するランプである。さらに、金属ハロゲン化物等の添加剤が、ランプの発光スペクトルを改変するために存在し得る。大抵の場合、200〜450nmの発光極大を有するランプが、最も好適である。
【0046】
露光装置の出力は、20〜240W/cm、好ましくは40〜150W/cmであり得るが、望まれる露光線量が実現され得る限り、より高くてもよい。露光強度は、膜の最終構造に影響を与える硬化の程度を制御するために使用され得るパラメータの1つである。好ましくは、露光線量は、High Energy UV Radiometer(EIT−Instrument Markets 製のUV Power Puck(商標))によって、該装置により示されるUV−B範囲において測定した場合、少なくとも40mJ/cm2、より好ましくは40〜600mJ/cm2、最も好ましくは70〜220mJ/cm2である。露光時間は、自由に選択され得るが長くする必要はなく、典型的には1秒未満である。
【0047】
光開始剤が添加されない場合、硬化性化合物は、有利には、当該分野において公知であるように電子線露光によって硬化され得る。好ましくは、出力は、50〜300keVである。硬化はまた、プラズマまたはコロナ露光によっても達成され得る。
【0048】
硬化性組成物のpHは、好ましくは、2〜11、より好ましくは3〜8の値から選択される。最適なpHは、使用されるモノマーに依存し、実験的に決定され得る。硬化速度は、pH依存性であるようであり、高pHで、硬化速度は明らかに低下し、多孔質度の低い膜が得られる。低pH値(2以下)で、膜の黄変がエージングの際に生じ、これは、良好な白色度か好まれる場合には望ましくない。
【0049】
望まれる場合、界面活性剤または複数の界面活性剤の組み合わせが、表面張力を調節するために、または良好な光沢等の他の目的のために、水性組成物へ湿潤剤として添加され得る。所望の用途およびコーティングされる基体に依存する適切な界面活性剤を使用することは、当業者の能力の範囲内である。放射線硬化性界面活性剤等の市販の界面活性剤が使用され得る。硬化性組成物における使用に好適な界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、およびそれらの組み合わせが挙げられる。好ましいノニオン性界面活性剤としては、エトキシ化アルキルフェノール、エトキシ化脂肪アルコール、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー、フルオロアルキルエーテルなどが挙げられる。好ましいイオン性界面活性剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。(アルキル基が8〜22個(好ましくは12〜18個)の炭素原子を含む)アルキルトリメチルアンモニウム塩、(アルキル基が8〜22個(好ましくは12〜18個)の炭素原子を含む)アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、およびエチルスルフェート、ならびに(アルキル基が8〜22個(好ましくは12〜18個)の炭素原子を含む)アルキルピリジニウム塩。界面活性剤は、フッ素系またはケイ素系であり得る。好適なフッ素系界面活性剤の例は、以下である。フルオロC2〜C20アルキルカルボン酸およびその塩、ジナトリウムN−ペルフルオロオクタンスルホニルグルタメート、ナトリウム3−(フルオロ−C6〜C11アルキルオキシ)−1−C3〜C4アルキルスルホネート、ナトリウム3−(オメガ−フルオロ−C6〜C8アルカノイル−N−エチルアミノ)−1−プロパンスルホネート、N−[3−(ペルフルオロオクタンスルホンアミド)−プロピル]−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、ペルフルオロアルキルカルボン酸(例えば、C7〜C13−アルキルカルボン酸)およびその塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、Li,KおよびNaペルフルオロC4〜C12アルキルスルホネート、Li、KおよびNa N−ペルフルオロC4〜C13アルカンスルホニル−N−アルキルグリシン、RfCH2CH2SCH2CH2CO2LiまたはRfCH2CH2O(CH2CH2O)xH(式中、Rf=F(CF2CF23-8およびx=0〜25)の化学構造を有する名称ゾニール(Zonyl)(登録商標)(イー.アイ.デュポン(E.I. Du Pont)製)で市販されているフルオロ界面活性剤、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロオクタンスルホンアミド、2−スルホ−1,4−ビス(フルオロアルキル)ブタンジオエート、1,4−ビス(フルオロアルキル)−2−[2−N,N,N−トリアルキルアンモニウム)アルキルアミノ]ブタンジオエート、ペルフルオロC6〜C10アルキルスルホンアミドプロピルスルホニルグリシネート、ビス−(N−ペルフルオロオクチルスルホニル−N−エタノールアミノエチル)ホスホネート、モノ−ペルフルオロC6〜C16アルキル−エチルホスホネート、およびペルフルオロアルキルベタイン。例えばUS−A−4 781 985およびUS−A−5 084 340に記載されるフルオロカーボン界面活性剤もまた有用である。
【0050】
ケイ素系の界面活性剤は、好ましくは、ポリシロキサン、例えば、ポリシロキサン−ポリオキシアルキレンコポリマーである。このようなコポリマーは、例えば、ジメチルシロキサン−メチル(ポリオキシエチレン)コポリマー、ジメチルシロキサン−メチル(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン)シロキサンコポリマー、トリシロキサンおよびポリエーテルのコポリマーとしてのトリシロキサンアルコキシレート、ならびにシロキサンおよびポリプロピレンオキシドのコポリマーとしてのシロキサンプロポキシレートであり得る。シロキサンコポリマー界面活性剤は、当業者に公知の任意の方法によって作製され得、ランダム、交互、ブロック、またはグラフトコポリマーとして作製され得る。ポリエーテルシロキサンコポリマーは、好ましくは、100〜10,000の範囲内の重量平均分子量を有する。市場において市販されているポリエーテルシロキサンコポリマーの例としては、以下が挙げられる。CK WITCO製の、SILWET DAシリーズ、例えばSILWET 408、560または806、SILWET Lシリーズ、例えばSILWET−7602、あるいはCOATSILシリーズ、例えばCOATSIL 1211、SHIN−ETSU製の、KF351A、KF353A、KF354A、KF618、KF945A、KF352A、KF615A、KF6008、KF6001、KF6013、KF6015、KF6016、KF6017、BYK−CHEMIE製の、BYK−019、BYK−300、BYK−301、BYK−302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−325、BYK−330、BYK−333、BYK−331、BYK−335、BYK−341、BYK−344、BYK−345、BYK−346、BYK−348、およびTEGO製の、TEGO GLIDEシリーズ、例えばGLIDE 450、FLOW シリーズ、例えばFLOW 425、WETシリーズ、例えばWET 265。
【0051】
プリンター搬送性、耐ブロッキング性および防水性を改善するために、界面活性剤は、硬化性組成物中に添加されてもよく、および/または膜の含浸によって導入されてもよい。界面活性剤は、使用される場合、好ましくは、膜の乾燥重量を基準として0.01〜2%、より好ましくは0.02〜0.5%の量で存在する。好ましくは、界面活性剤は、使用される濃度で組成物中に可溶である。水性溶媒が使用される場合、好ましくは、25℃での水中における界面活性剤の溶解度は、少なくとも0.5%である。
【0052】
特に水性インクの迅速な取り込みのために、界面活性剤は親水性であることを必要とする。表面の親水性は、水滴の接触角を測定することによって適切に表される。80°未満の値は親水性表面を示し、インク受容層としての応用において好ましい。
【0053】
本発明によれば、膜は、0.0001〜2.0μmの直径を好ましくは有する相当量の孔をそれが含む場合、「ポーラス、ナノポーラスまたはマイクロポーラス」と呼ばれる。より好ましくは、本発明の多孔質膜の孔の大部分は、0.001〜1.0μm、なおより好ましくは0.003〜0.7μmのサイズを有する。選択される実施形態について、平均孔径は、好ましくは0.01〜1.0μm、より好ましくは0.03〜0.4μmである。細孔形状に制限は存在しない。細孔は、例えば、球状または不規則状あるいは両方の組み合わせであり得る。好ましくは、細孔は相互接続されており、何故ならば、これは高いフラックスまたは迅速な溶媒吸収に寄与するためである。
【0054】
膜の空隙率は、好ましくは、SEM断面画像を分析することによって測定した場合、5〜90パーセントである。空隙率は以下の式によって決定される。
【0055】
【数1】

【0056】
式中、コーティングされた固体(マトリクス)の密度は、1kg/dmであると仮定される。より好ましくは、空隙率は、10〜70パーセント、なおより好ましくは20〜50%である。
【0057】
インク受容層として適用される膜について、高い光沢を示すことが重要であり、このためには、表面層は滑らかである必要があり、かつ、膜の表面上の細孔のサイズおよび総面積は特定の制限内に制御されなければならない。良好な光沢は、さらに、表面粗さ(Ra)値でさらに表され得る。Ra値は、孔径/孔面積によって影響される。良好な光沢を有する膜についての好ましいRa値は、0.8μm未満、より好ましくは0.5μm未満、なおより好ましくは0.3μm未満、最も好ましくは0.2μm未満である。光沢のある外観は、細孔間の表面積の滑らかさによって主に決定されると考えられる。ISO 13565−1(1998)およびJIS B0671−1(2002)において、計算への細孔の寄与を排除して表面のRa値を測定することが可能である方法が、記載されている。特別な実施形態において、膜は、別個の複数の構造体から構成される:オープンな高分子網目の形態の等方性バルクマトリクス、および完全に異なる構造の薄い表面層。この表面層または表皮層は、連結していない細孔を有する連続層であり、穿孔性連続層として記載され得る。プロセスおよびレシピ条件を変化させることによって、表面細孔の数およびサイズは、所望の仕様に従って制御され得る。この表面層は、膜の光沢に寄与すると考えられる。逆浸透(reversed osmosis)等の応用においては、表面に全く細孔が存在しないかまたは非常に小さな直径の細孔のみが存在することが好ましいことがありえ、これは、表皮層が閉鎖連続層としてみなされ得ることを意味する。インク受容層としての応用において、低光学密度の印刷画像につながる、インク中に存在する色素の膜深くへの吸収を、表面層は防ぐと考えられる。したがって、表面層は、高光学密度に寄与する。一方、表皮層は、膜を通る流量を減少させ、これは、乾燥特性を悪化させ得る。したがって、好ましくは、この表皮層は、薄く、3μm未満の厚みを有し、より好ましくは、表皮層の厚みは、1.5μm未満、例えば0.1〜1.2μmである。薄い表皮層を除いて、ある程度の非対称構造は許容されるものの、膜は好ましくは対称である。
【0058】
膜の重要な特性は、多孔質層の膨潤性である。多孔性に加えて、膨潤性は、溶媒取り込みの速度および能力に寄与する。所望の特性に依存して、多孔性と膨潤性との間の特定のバランスが選択され得る。あるレベルの溶媒取り込みを達成するため、高多孔性を低膨潤挙動と組み合すことができ、この逆も同様である。これにより、全てが十分な溶媒取り込み速度を有しながら膜構造体の大きなバリエーションを可能にする。インク受容層として適用される膜について、膨潤は、好ましくは、1〜50μm、より好ましくは2μm〜30μm、最も好ましくは3〜20μmである。多孔質層の乾燥厚みは所望の適用に依存して変化し得るので、膨潤は、より適切には、乾燥厚みのパーセンテージとして相対的なやり方で表される。好ましくは、膨潤は、多孔質膜の乾燥厚みの、少なくとも5%、より好ましくは6〜150%、なおより好ましくは10〜80%である。本発明における膨潤は、膨潤後の層の膨潤厚みから膨潤前の層の乾燥厚みを引くことによって決定され、ここで、膨潤厚みは、20℃蒸留水中に3分間浸漬した後の層の厚みを示し、乾燥厚みは、23℃および60%RHで24時間を超えて放置した層の厚みを示す。層の厚みは、種々の方法によって測定され得る。例えば、サンプルを所定の時間所定の温度で蒸留水中に浸漬し層を膨潤させた後、膨潤プロセスを針状位置センサーで膨潤された層に連続的に触れることによって観察し、膨潤前および後の層の厚みを測定する方法が存在する。さらに、表面に触れることなく光学センサーによって膨潤された層の高さを測定し、乾燥層の高さを引き、層の膨潤量を知る方法が存在する。膨潤の程度は、モノマーのタイプおよび比率、硬化/架橋の程度(露光線量、光開始剤タイプおよび量)および、他の成分(例えば、連鎖移動剤、共力剤)によって制御され得る。
【0059】
驚くべきことに、膜は、その膨潤特性に起因して、インク受容層として使用される場合のより高い画像密度および改善されたオゾン堅牢性を示した。理論に拘束されることを望まないが、本研究者は、膨張に起因して、色材は高分子網目構造中へ組み込まれ、乾燥後にオゾンおよび他の気体の影響から保護されると考える。膨潤能を有さない多孔質網目中において、色材は層へ深く浸透し得、一方、膨潤によって、色材は、主に層の表面領域中に捕捉されると考えられ、このことは観察される増加された密度を説明している。
【0060】
多孔質層を強く膨潤することの欠点は、やや弱い耐引っ掻き性である。大きな膨潤性は、低度の架橋によって達成され、これは、膜の構造を物理的障害に対して敏感にする。驚くべきことに、乾燥が完了した後の乾燥膜の第2の硬化処理は、湿潤塗布層の硬化を強化するよりも、堅牢さを増強させることにおいてより有効であることが判った。再び、理論に拘束されることを望まないが、本発明者は、乾燥によって、未反応の硬化性二重結合が、互いに近くへ移動し、それによって硬化時の架橋の可能性が増大することを示唆する。この第2の硬化工程は、UV硬化によって行われてもよいが、EB硬化または他の放射線源(例えば、本明細書上記で記載のもの)等の他の方法もまた好適である。UV硬化が第2の硬化に適用される場合、少なくとも一部の光開始剤が、第1の硬化工程後に反応性形態で残っている必要がある。他方では、最終的に実質的に全ての光開始剤が反応されてしまっていることが重要である。何故なら、残存する光開始剤は、エージングに起因して膜の黄変につながり、これは特定の応用において望ましくないからである。これは、レシピにおける光開始剤の初期濃度を調節することによって容易に達成され得る。あるいは、第2の硬化についての光開始剤が、例えば含浸によって、別個に添加される。
【0061】
乾燥状態の膜の第2硬化の代わりに、湿潤状態で膜は硬化されてもよい。実行の1つの方法は、中間乾燥工程無しに第1硬化の直後に第2硬化を行うことである。別の方法は、界面活性剤等の1以上の成分を含有してもよい液体によって、乾燥された膜を予め湿らせることである。この手順の利点は、適用された液体中で膜が膨潤性である場合、膜構造は湿潤状態で硬化の際に変化することである。したがって、多孔性等の特性は、膜が膨潤された状態にある場合、第2硬化工程を行うことによって変更され得る。最初の硬化工程の後でも構造の調整が依然可能であるため、この方法によってより広範囲の材料およびプロセス条件が好適となる。両硬化工程の間に、含浸を行ってもよい。含浸によって、第1硬化工程の硬化性組成物とあまり相溶性でない化合物を、膜へ送達し得る。第1硬化後の膜の構造が既に良好である場合、第2硬化は不必要であり、含浸後の乾燥だけで十分である。しかし、含浸によってマトリクスへ送達された化合物を固定することが望まれる場合、第2硬化工程は、架橋の好ましい方法である。好ましくは、含浸工程が実施される前に、膜は部分的に乾燥される。部分的な乾燥によって、含浸によって、例えばコーティング、噴霧または浸漬によって導入された化合物が、膜中へより深く浸透し得る。部分的な乾燥によって、一部の溶媒が除去され、例えば、25%または50%場合によっては80%までの溶媒が、含浸前に除去される。良好なプロセス設計がされれば、2回を超えて硬化工程を行っても、一般的には改善された特性を生じさせないが、UV強度が制限されている等の特定の状況によって、複数回の硬化が有利になりうる。
【0062】
好ましくは、第2硬化工程における露光線量は、High Energy UV Radiometer(EIT−Instrument Markets製のUV Power Puck(商標))によって、装置により示されるUV−B範囲内で測定した場合、80〜300mJ/m2、より好ましくは100〜200mJ/m2である。
【0063】
多孔質膜はまた、放射線への露光によって架橋されない1以上の親水性ポリマーおよび/または1以上の非硬化性水溶性ポリマーを含み得る。非硬化性水溶性ポリマーは、硬化前に硬化性化合物混合物へ添加されてもよく、または硬化された膜へ硬化後に塗布されてもよい。
【0064】
非硬化性水溶性ポリマーに加えて、層中の非硬化性水溶性ポリマーの量を基準として、20重量%まで、好ましくは0.5〜5重量%の架橋剤が添加され得る。好適な架橋剤は、EP−A−1 437 229に記載されている。架橋剤は、単独でまたは組み合わせて使用され得る。
【0065】
一実施形態において、少なくとも2つの混合物が基体上へ塗布され、これらの少なくとも1つは硬化性化合物混合物であり、これは、硬化および乾燥後、少なくとも1つの最上層と該最上層よりも基体により近い少なくとも1つの最下層とを含む膜が得られる。少なくとも最上層は、好ましくは最下層も、本発明の多孔質膜を含む。2層膜構造について、最下層は、好ましくは、3〜50μm、好ましくは7〜40μm、最も好ましくは10〜30μmの乾燥厚みを有し、最上層は、好ましくは、1〜30μm、好ましくは2〜20μm、最も好ましくは4〜15μmの乾燥厚みを有する。
【0066】
別の実施形態において、基体には、少なくとも3層が塗布され、これらのうち少なくとも1つの層、好ましくは上(外)層は、硬化性化合物混合物を含む。基体へ硬化性組成物を塗布し、硬化し乾燥した後、少なくとも3層を含む膜が形成され、そのとき、これら3層は、3〜50μm、好ましくは5〜40μm、最も好ましくは7〜30μmの乾燥厚みを有する少なくとも1つの最下層と、1〜30μm、好ましくは2〜20μm、最も好ましくは3〜15μmの乾燥厚みを有する少なくとも1つの中間層と、該中間層の上の少なくとも1つの最上層とを含む。最上層は、好ましくは、10μm未満、好ましくは0.1〜8μm、最も好ましくは0.4〜4μmの乾燥厚みを有する。
【0067】
好ましい実施形態において、基体には、2、3またはそれ以上の硬化性化合物混合物が塗布され、硬化および乾燥後、全ての層が本発明の多孔質膜を含む層である記録媒体が得られる。前記混合物は、達成したい結果に依存して、同一または異なる組成を有し得る。さらに、硬化性化合物混合物は、同時に塗布され次いで硬化されてもよく、あるいは順次塗布され硬化されてもよい。順次とは、第1の混合物が塗布され、次いで硬化され、次いで第2の混合物が塗布され、硬化され、が続くことを意味する。後者の状況の場合、第2の混合物の少なくとも一部が第1の層に含浸している可能性が高く、したがって、得られる膜の細孔が封鎖されないように注意されなければならない。
【0068】
好ましくは、本発明の多孔質膜を含む最上層および中間層は、水性溶媒を吸収し得る(多孔質)有機または無機粒子を実質的に含まない。より好ましくは、多孔質膜は、粒子を実質的に含まない。実質的に含まないとは、本明細書中において、粒子の量または配置が、光沢または色密度の有意な減少が存在しないようなものであることを意味する。0.1g/m2未満の量は、実質的に含まないと見なされる。好ましくは、全ての多孔質層が、粒子を実質的に含まない。例外は、非常に滑らかな表面によって引き起こされる封鎖(blocking)等の取り扱い問題を防ぐために添加されるマット剤であり、好ましくは、少量が媒体の最上層に添加される。通常、多孔質層の総固形分の0.5%未満が、マット剤によって形成される。
【0069】
摩擦を減らすため、および数個の印刷されたインクジェット媒体が積み重ねられる場合の像移りを防止するために、最上層中にマット剤(アンチブロッキング剤としても知られている)を添加することが望ましいかもしれない。非常に好適なマット剤は、1〜20μm、好ましくは2〜10μmの粒子サイズを有する。マット剤の量は、0.005〜1g/m2、好ましくは0.01〜0.4g/m2である。大抵の場合、0.1g/m2未満の量で十分である。マット剤は、水性組成物中に分散され得る無機または有機材料の粒子と規定され得る。無機マット剤としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウム等の酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウムおよび硫酸マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、ならびにガラス粒子が挙げられる。有機マット剤としては、デンプン、酢酸プロピオン酸セルロース等のセルロースエステル、エチルセルロース等のセルロースエーテル、ならびに合成樹脂が挙げられる。前記合成樹脂は、不水溶性または水難溶性ポリマーであり、これらとしては、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル等のビニルエステル、アクリロニトリル、エチレンまたはスチレン等のオレフィン、のポリマー、ならびに上述のモノマーと他のモノマー(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アルファ、ベータ−不飽和ジカルボン酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、スルホアルキル(メタ)アクリレートおよびスチレンスルホン酸)とのコポリマーが挙げられる。さらに、ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、フェノール樹脂、ポリビニルカルバゾールまたはポリ塩化ビニリデンが使用され得る。これらのマット剤は、単独でまたは組み合わせて使用され得る。
【0070】
通常、多孔質膜は、マトリクスの多孔質構造に起因して、不透明な外観を有する。研究によって、より高い画像密度は、外層(単数又は複数)が幾分透明である場合に得られ得ることが明らかになった。これは、空隙率がより少なくなるように、外層の構造を修飾することによって達成され得る。多孔性のより低い最上層のさらなる利点は、より良い光沢である。溶媒吸収速度は特に多孔性に依存するので、このより透明である最上層はかなり薄いことが好ましい。このより透明である層の厚みは、塗布された最上層の厚みに通常対応していないので、この層を最上部領域と呼ぶことが、より正確かもしれない。色材が膜の上層に固定され、下層への色材の拡散が防止される場合に、画像密度に対する上部領域の透明性の最大の効果が得られる。固定は、膜中へ媒染剤機能性を組み込むことによって達成され得る。例えば、硬化性媒染剤が硬化性組成物へ添加され得、または非硬化性である媒染剤が添加され得る。媒染剤は、好ましくは、外層(単数又は複数)に、例えば最上層および/または最上層の直下の層に添加される。好ましくは、アニオン性色材と錯体を形成するに好適にするように媒染剤はカチオン性であり、有機または無機であり得る。有機および無機媒染剤が、独立して単独で、または互いに組み合わせて、使用され得る。外層に媒染剤を固定するために非常に好適な方法は、例えば硬化性組成物中にアニオン性硬化性化合物を適用することによって、外層に負電荷を導入することである。
【0071】
上述のカチオン性媒染剤は、好ましくは、カチオン性基として第1級〜第3級アミノ基または第4級アンモニウム塩を有するポリマー媒染剤であるが、カチオン性非ポリマー媒染剤もまた使用され得る。このようなポリマー媒染剤は、好ましくは、第1級〜第3級アミノ基またはその塩あるいは第4級アンモニウム塩基を有するモノマー(媒染剤モノマー)のホモポリマー、ならびにこのような媒染剤モノマーと他のモノマー(本明細書以下で非媒染剤モノマーと呼ぶ)とのコポリマーまたは縮合ポリマーである。このようなポリマー媒染剤は、水溶性ポリマーまたは水分散性ラテックス粒子(例えば、ポリウレタンの分散物)の形態であり得る。好適な媒染剤モノマーは、例えば、ビニル、(ジ)アリル、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドおよび(メタ)アクリロイル基等の1以上の硬化性基を含むアルキル−またはベンジルアンモニウム塩である。
【0072】
上述の非媒染剤モノマーは、第1級〜第3級アミノ基またはその塩あるいは第4級アンモニウム塩等の塩基性またはカチオン性部分を含有せず、かつ、インクジェット印刷用インク中に含有される色素と相互作用を示さないかまたは実質的に微々たる相互作用を示す、モノマーである。このような非媒染剤モノマーは、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、アラルキルエステル、芳香族ビニル、ビニルエステル、アリルエステルであり得る。上記に列挙される非媒染剤モノマーのいずれもが、単独でまたは互いに組み合わせて使用され得る。
【0073】
有機媒染剤は、好ましくは、その重量平均分子量が100000以下であるポリアミンまたはポリアリルアミンおよびその誘導体である。ポリアミンまたはその誘導体は、任意の公知のアミンポリマーおよびその誘導体であり得る。このような誘導体は、例えば、酸(酸は、例えば、塩酸、硫酸、リン酸および硝酸等の無機酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、桂皮酸、(メタ)アクリル酸等の有機酸、それらの組み合わせ、あるいはアミンの一部が塩へ変換されているものであり得る)とポリアミンとの塩、高分子反応によって得られたポリアミンの誘導体、他の共重合性モノマー(このようなモノマーは、例えば、(メタ)アクリレート、スチレン、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニルエステル等であり得る)とポリアミンとのコポリマーであり得る。
【0074】
多価水溶性金属塩または疎水性金属塩化合物などの無機媒染剤を媒染剤として使用することも可能である。本発明の無機媒染剤は、好ましくは、アルミニウム含有化合物、チタン含有化合物、ジルコニウム含有化合物、周期表のIIIB族の系列の金属の化合物(塩または錯体)である。特定の多価金属イオンは、凝集剤であることが公知であり、周知の例は、アルミニウムおよび鉄(III)塩、例えば、ポリ(塩化アルミニウム)および両イオンの硫酸塩である。これらの化合物はまた、媒染剤として適用され得る。これらの化合物は高濃度においては水溶液中の他の化合物の存在下で凝集し得るが、より低濃度では透明溶液としての適用が可能である。
【0075】
媒染剤の量は、好ましくは0.01〜5g/m2、より好ましくは0.1〜3g/m2である。
【0076】
媒染剤が比較的小さな分子である場合、媒染剤または媒染剤−色材錯体は、前記層内または他の層内で拡散し得、シャープネスを低下させる。この問題はまた、長期ブリージングとも呼ばれる。媒染剤分子の拡散を防止する非常に良好な方法は、多孔質膜のポリマーマトリクス中へ負電荷を組み込むことである。好ましくは、負電荷を有する硬化性化合物が、硬化性組成物中へ添加される。これらの負に帯電した硬化性化合物の例は、スルホン酸またはカルボン酸またはリン酸基を有するエチレン性不飽和化合物、あるいはそれらの金属(またはアンモニウム)塩である。スルホン酸誘導体が、媒染剤とのより強力な結合のため、より好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸−(スルホアルキル)エステル(例えば、スルホプロピルアクリル酸およびスルホプロピルメタクリル酸)、(メタ)アクリル−(スルホアルキル)アミド(例えば、2−アクリロイルアミド−2−メチルプロパン−1−スルホン酸)、スチレンスルホン酸、イタコン酸−(アルキルスルホン酸)エステル、イタコン酸−ビス−(アルキルスルホン酸)エステル、マレイン酸−(アルキルスルホン酸)エステル、マレイン酸−ビス−(アルキルスルホン酸)エステル、アルキルスルホン酸アリルエーテル、メルカプト化合物(例えば、メルカプトアルキルスルホン酸)、ならびにそれらの金属/アンモニウム塩。付与される場合、これらの負に帯電した硬化性化合物は、好ましくは、硬化性組成物中の硬化性化合物の重量を基準として、30重量%以下の量、より好ましくは0.5〜10重量%、最も好ましくは1〜5重量%の量で、添加される。モノマー分子は2以上の負に帯電した基を含むことがあり、モノマーのMWは顕著に変化し得るため、導入される負電荷は、重量%によってよりも当量で表されるのがよい。好ましくは、本発明の多孔質膜は、最高で1m2当たり10ミリ当量(meq)、最低0.1meq/m2、より好ましくは0.3〜5meq/m2、最も好ましくは0.5〜3meq/m2を含む。負に帯電した化合物は、1つの組成物に添加されても良いし、または2以上の層用の組成物(複数)へ添加されてもよい。
【0077】
特に好ましいのは、1以上の官能性チオール基を含むアニオン性硬化性化合物である。その結果、これらの化合物は、酸素阻害に対してあまり敏感でないことが知られている連鎖移動剤として機能し、膜の構造に対して顕著な効果を有する。多孔性はより低くなり、表面はより滑らかとなる。驚くべきことに、画像密度は、連鎖移動剤が適用される場合、比較的少量であってさえ、増加する。連鎖移動剤の使用のさらなる利点は、硬化後の膜の表面の粘着性がより低くなり、構造がより堅牢になることである。例としては、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸アルキル、メルカプト−プロピルスルホネート、エチルジチオカルボナト−S−スルホプロピルエステル、ジメルカプトプロパンスルホネート、およびメルカプトベンズイミダゾールスルホネートが挙げられる。
【0078】
あるいは、非イオン性である連鎖移動剤が、構造および表面特性に対する類似の効果を得るために、負に帯電した硬化性化合物に加えてまたはこれの代わりに添加される。好適な物質を含む化合物のクラスは、メルカプタン、ポリメタクリレート、ポリハロアルカン、ベンゾキノン、オキシム、アントラセン、ジスルフィド、スルホニルクロリド、スルホキシド、ホスフィン、アルキルアニリン、アルキルアミン、および金属化合物(例えば、アルミニウム、鉄、コバルト、銅、の塩または錯体)である。好ましい化合物は、メルカプトエタノール、メルカプトエチルエーテル、メルカプトベンズイミダゾール、エチルジチオアセテート、ブタンチオール、ジメチルジスルフィド、テトラブロモメタン、ジメチルアニリン、エチレンジオキシジエタンチオール、およびトリエチルアミンである。
【0079】
連鎖移動剤の特別なクラスは、いわゆるRAFT剤(RAFT=可逆的付加−開裂連鎖移動)である。このRAFT反応は、制御されたラジカル重合であり、一般的に非常に狭い分子量分布を生み出す。好適なRAFT剤は、式R1−C(=S)−S−R2のジチオエステル基、式R1−O−C(=S)−S−R2のキサンテート基または式R1−S−C(=S)−S−R2のチオキサンテート(トリチオカーボネート)基、式R1−NR−C(=S)−S−R2のジチオカルバメート基を含み、式中、R、R1およびR2は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基またはアレニル基から選択される。例えば、エチルジチオアセテート、ベンジルジチオベンゾエート、クミルジチオベンゾエート、ベンジル1−ピロールカルボジチオエート、クミル1−ピロールカルボジチオエート、o−エチルジチオカルボナト−S−(3−スルホプロピル)エステル、N,N−ジメチル−S−チオベンゾイルチオプロピオンアミド、N,N−ジメチル−S−チオベンゾイルチオアセトアミド、トリチオカーボネート、およびジチオカルバメートである。
【0080】
連鎖移動剤は、いわゆる連鎖移動定数によって特徴づけることができ、これは好ましくは0.1より大きく、より好ましくは1.0より大きい。0.1未満の移動定数において、効果が無いかまたは非常に限定された効果だけが達成される。最適な量は、硬化性組成物の組成、連鎖移動剤のタイプ(反応性)、および照射線量に非常に依存し、したがって、最適な濃度は個別に決定されなければならない。高レベルの連鎖移動剤で、化合物が支持体に隣接した層にある場合、接着の問題が生じ得ることが判った。多層膜が作製される場合、連鎖移動剤は、好ましくは最上層にあり、ここで、画像密度に対する効果が最大となると予想される。非常に高いレベルは、架橋反応を過度に遅延させ得、密度の高い非多孔質層になったり、または依然として硬化されていない層でさえ生じうる。好ましくは、連鎖移動剤は、0.001〜1.0mmol/g硬化性化合物の量で存在する。大抵の化合物について、好ましい範囲は、0.005〜0.1mmol/g硬化性化合物である。膜が2以上の層からなる場合、記載された範囲は、連鎖移動剤を含む層(単数又は複数)に適用される。
【0081】
適切な色材固定特性のために、負に帯電した色材分子をつなぎとめることができる過剰な正電荷を有することが重要である。好ましくは、アニオン性硬化性化合物中に存在する負電荷とカチオン性化合物(例えば、媒染剤)中に存在する正電荷との比率は、少なくとも1:1、より好ましくは1:2〜1:10である。
【0082】
カチオン性媒染剤は、硬化性組成物へ添加されると、負に帯電した硬化性化合物と凝固し得る。したがって、組成物へ媒染剤を添加するのではなく、硬化後に多孔質膜へ媒染剤を適用することが、一般的に望ましい。これは、部分的な乾燥後または完全な乾燥後に、含浸によって行われ得る。含浸は、例えば、溶液を膜上へ塗布または噴霧することによって、あるいは膜を溶液中へ浸漬することによって、行われ得る。スライドまたはスロットコーティング等の計量コーティング(metering coating)が好ましい。乾燥後、多孔質膜が残り、ここでは、媒染剤分子は、負電荷がマトリクス中に組み込まれている部位に捕捉されている。
【0083】
好ましい実施形態において、カチオン性媒染剤(の一部)は硬化後に導入されるのではなく、硬化性組成物中のアニオン性硬化性化合物と組み合わされる。これらのアニオン性およびカチオン性化合物は、溶液中で錯体を形成し、これは、驚くべきことに、沈殿せずに溶液のままである。それらの錯体は、水との相溶性が限られたモノマー混合物中において、より良好な溶解性を有するようである。この水との限られた相溶性は、これらのモノマー混合物を、相分離を開始させるのに非常に好適なものとする。電荷がシールドされている錯体と比較して、単独のイオン性化合物はその電荷のためより親水性であると考えられる。また、両方の方法(硬化性組成物中への導入、および含浸)の組み合わせが使用され得る。膜が作製された後、過剰な正電荷が存在しないかまたは過剰分が高印刷密度で色素を固定するには不十分である場合、膜の形成後に、追加のカチオン性化合物を例えば含浸によって後の工程において添加してもよい。したがって、初めに硬化性組成物中において、アニオン性硬化性化合物中に存在する負電荷とカチオン性化合物中に存在する正電荷との比率は、1を超えていてもよく、例えば2:1であってもよい。好ましくは、この比率は、上述のように後の工程においてより多くのカチオン性電荷を導入することによって、減少される。
【0084】
一般的に、媒染剤は、インクからの色材(色素)を固定するために適用される。少なくとも3つの色がカラープリンターにおいて使用され、多くのブランドのインクが存在するので、通常、全ての色材を固定するために媒染剤の組み合わせが要求される。理想的には、媒染剤のこのような混合物は、既存の全ての色素を固定することができる。あるいは、特定のタイプのインク専用である媒体が開発され、これによって、全てのタイプのインクに好適な媒体によって達成されるよりも高い品質が実現され得る。
【0085】
含浸によって、全ての種類の添加剤が、多孔質膜中へ送達され得る。好ましくは、これらの添加剤は水溶性であるか、あるいはエマルジョンとして添加または分散され得る。多孔質特性を維持するために、添加される添加剤の総量は、膜の総細孔容積よりも低いべきであり、換言すれば、細孔は、添加剤で完全に充填されないべきである。含浸溶液のpHは、好ましくは、多孔質膜のpHと同程度であり、または必要であれば、透明溶液を得るように調節され得る。含浸溶液は、添加剤のタイプに依存して、広範囲の濃度で適用され得る。好適な濃度は1〜20重量%であり、5〜15重量%がより好ましい。含浸コーティングは、単一層の層であり得、しかし多層であってもよい。多層は、1以上の化合物を膜内の所望の領域へ向けるに非常に好適である。媒染剤および蛍光増白剤等の化合物は、好ましくは膜の上部領域に存在し、これらの化合物が最上層に存在する多層により膜を含浸することによって、これらの化合物は、膜の表面近くに配置される。含浸溶液の最上層は、好ましくは水溶液であり、媒染剤、蛍光増白剤、界面活性剤、硬化性モノマー、アミン共力剤、水溶性ポリマー、搬送性改善剤(transportability improving)/減摩剤、UV吸収剤、色素退色防止剤(dye fading prevention agents)(ラジカル捕捉剤、光安定剤、抗酸化剤)、架橋剤、および従来からの添加剤、例えば、pH調整剤、粘度調整剤、殺生物剤、有機溶媒を含み得る。引き続いての第2硬化は、膜構造を固定し、これによって最終状態が得られる。
【0086】
また、上述の非硬化性水溶性ポリマーが、含浸によって多孔質膜中へ送達され得る。
【0087】
硬化性組成物の1つ以上へ添加され得るかまたは含浸によって含められる他の添加剤は、UV吸収剤、増白剤、抗酸化剤、光安定剤、ラジカル捕捉剤、かすれ防止剤(anti−blurring agents)、帯電防止剤ならびに/あるいはアニオン性、カチオン性、非イオン性、および/または両性界面活性剤である。
【0088】
好適な蛍光増白剤は、例えば、RD11125、RD9310、RD8727、RD8407、RD36544およびUllmann's Encyclopedia of industrial chemistry(Vol. A18 pl53−167)に開示されており、チオフェン類、スチルベン類、トリアジン類、イミダゾロン類、ピラゾリン類、トリアゾール類、ビス(ベンゾオキサゾール)、クマリン類およびアセチレン類が挙げられる。本発明において使用される好ましい蛍光増白剤は、水溶性であり、以下のクラスから選択される化合物を含む。ジスチリルベンゼン類、ジスチリルビフェニル類、ジビニルスチルベン類、ジアミノスチルベン類、スチルベニル−2H−トリアゾール類、ジフェニルピラゾリン類、ベンズイミダゾール類、およびベンゾフラン類。好ましい実施形態において、蛍光増白剤は、カチオン性であり、マトリクス中に存在する負電荷部位によって捕捉される。これらの薬剤を適用する有効な方法は、上述の含浸による。正に帯電した蛍光増白剤は、多孔質膜の最上部領域に優先的に捕捉され、ここでそれらは最大の効果を有する。このため、膜の完全な層(あるいは多層膜の場合は全層)にわたって拡散する傾向にあるアニオン性薬剤と比較して、より少ない量で十分である。商業的に入手可能な適切なカチオン性蛍光増白剤の例は、ブランコファー(商標)ACR(Blankophor(商標)ACR)(バイエル(Bayer))およびリューコファー(商標)FTS(Leucophor(商標)FTS)(クラリアント(Clariant))である。
【0089】
白色度は、CIELABカラーモデルのb値によって適切に表される。CIE L**b(CIELAB)は、人の目に見える全ての色を示すために通常使用されるカラーモデルである。それは、国際照明委員会(the International Commission on Illumination)(Commission Internationale d'Eclairage、したがって、その名称における頭文字CIE)によってこの特定の目的のために開発された。前記モデルにおける3つのパラメータは、色の輝度(L、最小のLは黒色を示す)、色の赤色と緑色の間の位置(a、最小値は緑色を示す)、および色の黄色と青色との間の位置(b、最小値は青色を示す)を表す。非常に白い膜のためには、低b値が好ましく、−5と−8との間の値は、非常に明るい白色外観を示す。比較的高い値(−4以上)は、より黄色みがかった色を示し、あまり好ましくない。より低い値(−8以下)を有する膜は、青みがかった色となる傾向にあり、一般的にあまり好ましくない。蛍光増白剤の量は、好ましくは1g/m2未満、より好ましくは0.004〜0.2g/m2、最も好ましくは0.01〜0.1g/m2である。
【0090】
さらに、多孔質膜は、1以上の光安定剤、例えば、立体障害フェノール、立体障害アミン、ならびにGB2088777、RD 30805、RD 30362およびRD 31980に開示されるような化合物を含み得る。特に好適なのは、WO−A−02/55618に開示されるような水溶性置換ピペリジニウム化合物、ならびにCGP−520(スイスのチバ・スペシャリティー・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals))およびチソーブ(Chisorb)582−L)(台湾のダブル・ボンド・ケミカル(Double Bond Chemical))等の化合物である。他の添加剤は、達成される目的に従って、1以上の可塑剤(例えば、(ポリ)アルキレングリコール、グリセロールエーテル、およびポリエチルアクリレート、ポリメチルアクリレート等の低Tg値を有するポリマー格子)、ならびに例えばEP−A−1 437 229およびEP−A−1 419 984ならびに国際特許出願WO−A−2005/032832、WO−A−2005/032834およびWO−A−2006/011800に記載されるもの等の1以上の従来からの添加剤、例えば、酸、殺生物剤、pH調整剤(pH controllers)、防腐剤、粘度調整剤 c.q.安定剤、分散剤、阻害剤、かすれ防止剤、消泡剤、カール防止剤、耐水性付与剤等であり得る。
【0091】
上述の添加剤(UV吸収剤、抗酸化剤、かすれ防止剤、可塑剤、従来の添加剤)は、当業者に公知のものから選択され得、好ましくは0.01〜10g/m2の範囲内で添加され得る。上述の成分はどれでも、単独でまたは互いに組み合わせて使用され得る。それらは、水中に溶解、分散、ポリマー分散、乳化、油滴へ変換された後に添加されてもよく、あるいはマイクロカプセル中に封入されてもよい。
【0092】
本発明の多孔質膜は、以下の工程によって製造され得る。
【0093】
− 少なくとも1つのタイプの硬化性モノマーおよび溶媒の混合物を提供すること、
− 該混合物を支持体へ塗布すること、
− 該硬化性モノマー混合物を硬化し、それによって該架橋化モノマーと該溶媒との間に相分離を生じさせること、
− 形成された多孔質膜を乾燥工程へ供し、該溶媒を除去し、該多孔質膜の表面積に対し0.3〜18%の総表面孔面積および0.02〜1.0μmの平均表面孔径を有する膜を得ること、ならびに
− 所望によっては該支持体および該多孔質膜を分離すること。
【0094】
硬化性組成物を架橋するために高強度UV光が適用される場合、UVランプによって熱が発生する。多くのシステムにおいて、ランプが過熱されるのを防ぐために、空気による冷却が適用される。それでも、かなりの線量のIR光が、UV線と共に照射される。一実施形態において、コーティングされた支持体の昇温は、UVランプ(単数又は複数)と該ランプの真下に導かれている該コーティングされた層との間にIR反射水晶板を配置することによって、低下される。
【0095】
この技術によって、最大200m/分あるいはそれ以上でさえも、例えば、300m/分以上のコーティング速度が到達され得る。所望の線量に到達するために、順になった2以上のUVランプが必要とされることがあり、その結果コーティングされた層は2以上のランプで連続的に露光される。2以上のランプが適用される場合、全てのランプは等しい線量を与えてもよく、あるいは各ランプは個別の設定を有し得る。例えば、第1のランプは、第2およびその後のランプよりも高い線量を与えてもよく、あるいは、第1のランプの露光強度の方が低くてもよい。驚くべきことに、線量が一定であれば、多孔性および構造に影響を与える光重合反応に対する相対強度の効果は、僅かなようであった。露光条件を変化させることによって、当業者は、達成したい特性に依存して、プロセスについての最適な設定を決定することができる。
【0096】
本発明の全ての利点を得るために、静止支持体表面を使用してバッチ方式で本発明を実施することが可能である一方、移動支持体表面(例えば、ロール駆動連続ウェブまたはベルト(roll−driven continuous web or belt))を使用して連続方式でそれを実施することも、非常に好ましい。このような装置を使用して、硬化性組成物は連続的方式で作製され得、あるいは大きなバッチ方式で作製され得、組成物は、駆動された連続ベルト支持体表面の上流末端へ連続的に注がれる等の方法で適用され、照射源は組成物適用ステーションの下流のベルト上に配置され、膜除去ステーションはベルトのさらに下流にあり、膜はその連続的シートの形態で除去される。膜からの溶媒の除去は、膜がベルトから取り出される前または後のどちらで行われてもよい。この実施形態および支持体表面から多孔質膜が除去されることが望ましいその他の全ての実施形態において、当然ながら、支持体表面は、そこからの膜の除去を可能な限り促進するようなものであることが好ましい。このような実施形態の実施のために有用な支持体表面として典型的なものは、滑らかな、ステンレス鋼板あるいはより良くはテフロンまたはテフロンコーティングされた金属板である。連続ベルトを使用しなくても、支持体表面は、ロールの形態の使い捨て材料、例えば剥離紙等のもの(ただし溶媒に可溶性でない)であり得、これは、連続的に駆動された長さ(continuous driven length)として、溶液適用ステーションの上流でロールから連続的に展開され、次いで放射線ステーションの下流でその上の多孔質膜と共に再び巻かれる。
【0097】
得られた膜が結合したままの多孔質シートまたは繊維ウェブ(これは例えば、多孔質膜についての強化補強または裏打ちとして機能し得る)上のまたはこれに混ぜられ支持されているコーティングとして、溶液の薄層を形成することもまた本発明の範囲内にある。多孔質膜が形成されるこのような多孔質支持体表面は、当然ながら、使用される溶媒に不溶性である材料のものであるべきである。このような実施形態の実施のために使用され得る多孔質支持体表面として典型的なものは、紙、織物および不織布などである。
【0098】
多孔質材料が固体支持体から分離されるべきものでなく、これら2つが結合したものが所望の最終製品である実施形態もまた認識される。このような実施形態の例は、電気泳動分離において使用されるポリエステルフィルムに支持された多孔質膜、画像用の記録媒体として使用される透明または不透明シートへ接着された膜などである。
【0099】
支持体として、透明材料(例えば、プラスチック)から構成される透明支持体、および不透明材料(例えば、紙)から構成される不透明支持体のいずれもが、使用され得る。大抵の膜の応用について、支持体は、存在する場合、流体または気体の通過を可能にするために多孔質でなければならない。これらの多孔質支持体は、紙、織物および不織布であり得る。
【0100】
不織布の例は、セルロース系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリプロピレン系等の材料である。
【0101】
記録媒体用透明支持体において使用され得る材料として、透明であり、かつ、オーバーヘッドプロジェクション(OHP)およびバックライトディスプレイにおける使用の際に放射熱に耐える性質を有する材料が、好ましい。これらの材料の例としては、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、三酢酸セルロース(TAC)、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等が挙げられる。支持体として使用され得る他の材料は、ガラス、ポリアクリレート等である。中でも、ポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0102】
透明支持体の厚みは、特に限定されないが、50〜200μmが、取り扱い性の観点から好ましい。
【0103】
高い光沢を有する不透明支持体として、少なくとも5%、好ましくは15%以上の光沢を有する、色材受容層が提供されている表面を有する支持体が好ましい。光沢は、75°で支持体の反射表面光沢を試験する方法(TAPPI T480)に従って得られる値である。
【0104】
実施形態としては、以下が挙げられる。高い光沢を有する紙支持体、例えば、樹脂コート(RC)紙、アート紙で使用されるバライタ紙、コート紙、キャストコート紙、銀塩写真紙のために使用される支持体など;(カレンダー処理へ供された表面を有し得る)ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、セルロースエステル(例えばニトロセルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース)、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミド等などの不透明プラスチックフィルムを作製し、白色顔料等を含有させることによって高い光沢を有するフィルム;あるいは、白色顔料を含有するかまたは含有しないポリオレフィンの被覆層が上述の種々の紙支持体、上述の透明支持体または白色顔料を含有するフィルムの表面上に提供されている支持体など。好適な実施形態の例としては、白色顔料含有発泡ポリエステルフィルム(例えば、ポリオレフィン微粒子を含有し、空洞が延伸によって形成されている、発泡PET)が挙げられる。
【0105】
不透明支持体の厚みは、特に限定されないが、50〜300μmが、取り扱い性の観点から好ましい。
【0106】
既に述べたように、記録媒体の重要な特性は光沢である。光沢は、Dr.レンジ・レフォ3−D(Dr.Lange Refo 3−D)反射率計によって測定した場合、好ましくは20°で20%より大きく、より好ましくは30%より大きい。媒体の光沢は、使用される支持体の好適な表面粗さを選択することによって改善され得ることが判った。1.0μm未満、好ましくは0.8μm未満であるRa値を特性とする表面粗さを有する支持体を提供すると、非常に光沢のある媒体が得られ得ることが判った。低い値のRaは、滑らかな表面を示す。Raは、下記の設定で、UBM装置、ソフトウェアパッケージバージョン1.62を使用して、DIN 4776に従って測定される。
(1)点密度 500P/mm、(2)面積 5.6×4.0mm2、(3)カットオフ波長 0.80mm、(4)速度 0.5mm/秒。

紙が本発明の支持体として使用される場合、紙は、高品質印刷用紙において従来使用される材料から選択される。一般的に、それは、天然木材パルプに基づき、所望によっては、タルク、炭酸カルシウム、TiO2、BaSO4等のフィラーが添加され得る。一般的に、紙はまた、内部サイジング剤、例えば、アルキルケテン二量体、高級脂肪酸、パラフィンワックス、コハク酸アルケニル、例えば、キメン、エピクロルヒドリン脂肪酸アミド等を含む。さらに、紙は、湿潤および乾燥強度剤、例えば、ポリアミン、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリ−エピクロロヒドリンまたはデンプン等を含有し得る。さらに、紙中の添加剤は、固定剤、例えば、硫酸アルミニウム、デンプン、カチオン性ポリマー等であり得る。通常グレードの原紙についてのRa値は、通常、2.0μm未満であり、典型的には1.0〜1.5μmの値を有し得る。本発明の多孔質層、または少なくとも1層が本発明の多孔質層を含む多層は、この原紙へ直接適用され得る。
【0107】
1.0μm未満のRa値を有する原紙を得るために、このような通常グレードの原紙は、顔料でコーティングされ得る。任意の顔料が使用され得る。原料の例は、炭酸カルシウム、TiO2、BaSO4、クレイ、例えばカオリン、スチレン−アクリルコポリマー、Mg−Al−シリケートなど、あるいはそれらの組み合わせである。量は、0.5〜35.0g/m2であり、より好ましくは2.0〜25.0g/m2である。紙は、片面または両面コーティングされ得る。前述の量は、片面のコーティング量である。両面がコーティングされる場合、総量は、好ましくは4.0〜50g/m2である。この顔料を含むコーティングは、当業者に公知の任意の方法、例えば、ディップコーティング、ロールコーティング、ブレードコーティング、バーコーティング、サイズプレスまたはフィルムプレスによって、好適なバインダー(例えば、スチレン−ブタジエンラテックス、スチレン−アクリレートラテックス、メタクリル酸メチル−ブタジエンラテックス、ポリビニルアルコール、変性デンプン、ポリアクリレートラテックスまたはそれらの組み合わせ)と共に、水中の顔料スラリーとして適用され得る。顔料コートされた原紙は、所望によってはカレンダー加工され得る。表面粗さは、使用される顔料の種類によってならびに顔料およびカレンダー加工の組み合わせに影響されうる。ベース顔料コートされた紙基体は、好ましくは、0.4〜0.8μmの表面粗さを有する。表面粗さがスーパーカレンダー加工によって0.4μm未満の値へさらに低下される場合、厚みおよび剛性値は、一般的に、いくぶん低くなる。
【0108】
多孔質層、または少なくとも1層が本発明の多孔質層を含む多層は、顔料がコートされた原紙へ直接塗布され得る。
【0109】
別の実施形態において、顔料添加された最上面、およびバック面を有する顔料コートされた原紙は、高温共押し出しによって少なくとも最上面上にポリマー樹脂が提供され、ラミネート顔料コート原紙が得られる。典型的に、この(共)押し出し法における温度は、280℃を超えるが350℃未満である。使用される好ましいポリマーは、ポリオレフィン、特にポリエチレンである。好ましい実施形態において、最上面のポリマー樹脂は、化合物、例えば、不透明化白色顔料、例えば、TiO2(アナターゼまたはルチル)、ZnOまたはZnS、色素、着色顔料(ウルトラマリンまたはコバルトブルーなどの青味剤など)、接着促進剤、蛍光増白剤、抗酸化剤等を含み、ラミネート顔料コート原紙の白色度を改善する。白色顔料以外を使用することによって、種々の色のラミネート顔料コート原紙が得られ得る。ラミネート顔料コート原紙の総重量は、好ましくは、80〜350g/m2である。ラミネート顔料コート原紙は、非常に良好な滑らかさを示し、一層以上の本発明の多孔質層を含む一層以上の層が塗布された後、優れた光沢を有する記録媒体を生じさせる。
【0110】
他方では、作製したい製品に依存して、当該分野において周知であるような、マット表面またはシルキー表面を有する、ポリエチレンがコートされた紙が使用され得る。このような表面は、紙基体上にポリエチレンを押し出す際にエンボス加工処理を行うことによって、得られる。
【0111】
上記説明から明らかであるように、本発明の多孔質層を含む記録媒体は、支持体上に塗布された単層または多層であり得る。それはまた、多孔質膜の下に配置される非多孔質層を含み得る。
【0112】
本発明の多孔質層(単数又は複数)を含む媒体は、好ましい細孔サイズ、および多孔性が得られる限り、単一工程または連続工程でコーティングされ得る。
【0113】
コーティング方法として、任意の方法が使用され得る。例えば、カーティングコーティング、押し出しコーティング、エアナイフコーティング、スライドコーティング、ロールコーティング法、リバースロールコーティング、ディップコーティング、ロッドバーコーティング。このコーティングは、使用される実施形態に依存して、同時にまたは連続的に行われ得る。高速コーティング機に使用するために十分に流動性である組成物を作製するために、粘度は25℃で4000mPa.sを超えないことが好ましく、より好ましくは、それは25℃で1,000mPa.sを超えないべきである。
【0114】
上述の支持体材料の表面へコーティングを塗布する前に、この支持体は、湿潤性および接着性を改善するために、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理等へ供され得る。
【0115】
記録媒体として使用される場合、本発明の膜は、多数の記録用途のために使用され得、したがって、例えばジクレー(Giclee)印刷、カラー複写、スクリーン印刷、グラビア、色素−昇華(dye−sublimation)、フレキソ印刷、インクジェット等のような技術を使用して高品質画像を作製するために好適である記録媒体を提供することは、本発明の範囲内である。
【0116】
(インクジェット)記録媒体における適用以外でも、多孔質膜は種々の他の用途(例えば以下の用途)に用いうる;水処理用膜において、化学および石油化学産業において、塗料の電気塗装における限外濾過のため、食品産業において(例えば、チーズの製造プロセス、フルーツジュースの清澄化およびビール製造において)、製薬産業において(ここで、有機溶媒用に高抵抗膜が必要とされる)、および(特にタンパク質によるファウリング(fouling)に起因するフラックス減少が回避される必要がある)バイオテクノロジー産業において。膜は、好適な成分およびプロセス条件を選択することによって、ナノ濾過または逆浸透に好適とされ得る。本発明による多孔質膜の親水性特性は、膜のファウリング率の顕著な減少を生じさせ得、従来の精密および限外濾過が適用される、他のあらゆる種類の応用に好適である。
【0117】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって、より詳細に例示される。特に述べられない限り、与えられる全ての比率および量は、重量基準である。
(実施例)
下記の塗布溶液を、持続的に撹拌しながら室温で調製した。
【0118】
3層コンセプトを使用し、ここで、最下層、中間層および最上層を支持体へ塗布した。
【0119】
最下層(BL)について、下記の溶液を使用した。
【0120】
【数2】

【0121】
中間層(ML)について、下記の溶液を使用した。
【0122】
【数3】

【0123】
最上層(TL)について、下記の溶液を使用した。
【0124】
【数4】

【0125】
CN−132は、Cray Valleyによって供給されるアクリレートモノマーである。
【0126】
CN−435は、Cray Valleyによって供給されるアクリレートモノマーである。
【0127】
GMA−ゼラチンは、1:10の重量比でGMA変性されたゼラチンの22%水溶液である。GMAは、シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)によって供給されるグリシジルメタクリレートである。使用されるゼラチンは、加水分解酸豚皮ゼラチン(7−8kDa)(HAPG)である。
【0128】
AAMPSAは、シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)によって供給される2−アクリロイルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸モノマーである。
【0129】
イルガキュア(Irgacure)(商標)2959は、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)によって供給される光開始剤である。
【0130】
ゾニール(Zonyl)(商標)FSNは、デュポン(DuPont)によって供給されるフルオロ界面活性剤である。
【0131】
PA10は、GMA変性ゼラチン(GMA:ゼラチン重量比は1:10である)の13重量%溶液中の、アルケマ(Arkema)によって供給される、平均サイズ10μmを有するオルガソル(Orgasol)2001(商標)ポリアミドビーズの10%分散物である。
【0132】
両面にポリエチレンがラミネートされた写真グレード紙を、支持体として使用した。
【0133】
上記の溶液を、30m/分の塗布速度でスライドコーティング機によって同時に塗布した。最下層、中間層および最上層に、40、15および5cc/m2の量をそれぞれ塗布した。
【0134】
サンプル1〜4について、強度を変化させながら、焦点が合うように配置された、フュージョンUVシステムズ社(Fusion UV Systems Inc.)のライト・ハンマー(Light Hammer)(商標)10ランプを使用して、UV硬化を適用した。この硬化プロセス後、硬化されたサンプルを40℃、8%RHで3分間乾燥した。
【0135】
表面特性の差異を得るために、表1に示すようにプロセス条件を変化させた。塗布と硬化との時間間隔を、塗布機に対するランプの位置を変えることによって変化させた。ランプへの電力供給を変えることによって、硬化強度を変化させる。
【0136】
同一の溶液を、24m/分の塗布速度で別のスライドコーティング機で塗布し、サンプル5を得た。最下層、中間層および最上層に、40、15および5cc/m2の量をそれぞれ塗布した。60%の強度で、焦点が合うように配置された、フュージョンUVシステムズ社(Fusion UV Systems Inc.)のライト・ハンマー(Light Hammer)(商標)6ランプを使用して、UV硬化を適用した。この硬化プロセス後、硬化されたサンプルを40℃、8%RHで3分間乾燥した。

表1:実施例1〜5についてのプロセス条件
【0137】
【表1】

【0138】
評価
光沢
光沢をDr.レンジ・レフォ3−D(Dr.Lange Refo 3−D)反射率計によって測定した。較正後、反射率計をサンプル上に配置し、光沢値を20°の角度で記録した。表中の値は、少なくとも2回の独立した測定の平均値である。
【0139】
スミアリングテスト(Smearing test)(乾燥速度)
装置:HP325プリンター(紙:HP写真紙、印刷品質:最高)
インク:HP344(HPビベラ(Vivera)インク、黒色)
画像:ラインパターン、6×0.8mmライン、20cc/m2
摩擦:消しゴム(フランスのコンテ(Conte)によって供給されるペンシルから)
重量:30グラム
サンプルサイズ:10×15cm。
【0140】
高密度黒色ラインの印刷画像を各サンプル上に作製した。これらのラインを4秒間隔で印刷した。最後のラインが印刷された後、シートは即座にプリンターから排出された。プリンターの外で、消しゴムを、プリンターの内部からの輸送の間にシートに触れるように配置した。消しゴムの荷重を30gへ増加するように、ペンシルへ重量を加えた。ラインをそれぞれ0、4、8、12、16および20秒後に印刷した。最後のラインが印刷される時と印刷されたラインに消しゴムが触れる瞬間との間に、約0.5秒が経過する。この方法は、ラインが、印刷後、それぞれ0.5、4.5、8.5、12.5、16.5および20.5秒後に、固定された消しゴムを通過することを確実にした。ラインが依然として湿っている場合、目視検査によって判定され得る黒色ラインのスミアリングが生じた。
【0141】
表面構造
表面構造(平均孔径および相対的総表面孔面積)を、走査電子顕微鏡(SEM)画像から測定する。各サンプルの5枚の写真を、画像解析ソフトウエアによって評価した。平均値を表3に与える。
【0142】
結果
【0143】
【表3】

【0144】
結果から明らかであるように、相対的総表面孔面積は、光沢に対して大きな影響を有する。細孔によって占められる面積が狭いほど、光沢は高くなる。細孔無しで光沢は非常に良好になるが、スミアリング特性は悪い傾向となる。低い光沢値を有する実施例4を除いて、全ての実施例が良好な結果を示している。少なくとも20%の光沢値が好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの硬化性化合物および溶媒を含む硬化性組成物を硬化することによって支持体上に形成された多孔質膜であって、ここで、該多孔質膜の表面が、該多孔質膜の表面積に対し0.3〜18%の総表面孔面積および0.02〜1.0μmの平均表面孔径を特徴とする、多孔質膜。
【請求項2】
前記硬化性組成物が重合開始剤を含む、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
前記硬化性化合物がエチレン性不飽和化合物である、前記請求項のいずれかに記載の膜。
【請求項4】
前記硬化性化合物が1またはそれ以上の数のアクリレート基またはメタクリレート基を含む、前記請求項のいずれかに記載の膜。
【請求項5】
前記溶媒が少なくとも30重量%の水を含む、前記請求項のいずれかに記載の膜。
【請求項6】
前記膜が、水性溶媒を吸収し得る無機または有機粒子を本質的に含まない、前記請求項のいずれかに記載の膜。
【請求項7】
前記膜が少なくとも2つの層を含む、前記請求項のいずれかに記載の膜。
【請求項8】
前記膜が、光開始剤の存在下でのUV光照射による硬化によって得られる、前記請求項のいずれかに記載の膜。
【請求項9】
前記光開始剤は、アルファ−ヒドロキシアルキルフェノン、アルファ−アミノアルキルフェノン、アルファ−スルホニルアルキルフェノン、アシルホスフィンオキシドまたはそれらの組み合わせである、請求項8に記載の膜。
【請求項10】
前記受容層の表面との水の接触角が80°未満である、前記請求項のいずれかに記載の膜。
【請求項11】
前記請求項のいずれかに記載の多孔質膜を得るための方法であって、以下の工程、
− 少なくとも1種の硬化性モノマーおよび溶媒の混合物を提供すること、
− 該混合物を支持体へ適用すること、
− 該硬化性モノマー混合物を硬化し、それによって該架橋化モノマーと該溶媒との間に相分離を生じさせること、
− 形成された多孔質膜を乾燥工程へ供し、該溶媒を除去し、該多孔質膜の表面積に対し0.3〜18%の総表面孔面積および0.02〜1.0μmの平均表面孔径を有する膜を得ること、ならびに
− 所望ならば該支持体および該多孔質膜を分離すること、
を含む、方法。
【請求項12】
支持体と該支持体へ接着された請求項1〜10のいずれかに記載の多孔質膜とを備える、記録媒体。
【請求項13】
前記支持体が、バックライト(back−lit)適用のために好適な透明支持体であり、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド、ポリカーボネートおよびポリアミドからなる群から選択される、請求項12に記載の媒体。
【請求項14】
前記支持体が、反射性支持体であり、紙支持体、プラスチックフィルム、および所望ならば白色顔料を含有してもよいポリオレフィンの被覆層が備えられている支持体からなる群から選択される、請求項12に記載の媒体。
【請求項15】
20°での測定で20%を超える光沢を有する請求項12〜14に記載の媒体。
【請求項16】
ジクレー印刷、カラー複写、スクリーン印刷、グラビア、色素−昇華(dye−sublimation)、フレキソ印刷、および/またはインクジェット印刷を使用してその上に画像または文字を印刷するための請求項12〜15のいずれかに記載の媒体の使用。

【公表番号】特表2009−502583(P2009−502583A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524917(P2008−524917)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【国際出願番号】PCT/NL2006/000408
【国際公開番号】WO2007/018426
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(505232782)フジフィルム マニュファクチャリング ユーロプ ビー.ブイ. (50)
【Fターム(参考)】