説明

多層プリント配線板及びその製造方法

【課題】多層プリント配線板の電子部品実装面を有効に利用して回路を形成することができ、回路設計の自由度が高い多層プリント配線板を提供する。
【解決手段】第1絶縁性基材11の主面に形成された、第1接点13を含む第1回路パターン12を有する第1プリント配線板1と、第1プリント配線板1の主面側に積層され、第2絶縁性基材21の主面に形成された第2回路パターン22を有する第2プリント配線板2と、第2プリント配線板2の主面側に積層され、第3絶縁性基材31の主面に形成された第2接点33を含む第3回路パターン32を有する第3プリント配線板3と、を有し、第2プリント配線板2の主面に沿って延在する接続部42を有し、第1接点13と第2接点33とを接続する層間接続部材4を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、デジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯オーディオ機器、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯端末、携帯ゲーム機器などの電子機器に用いられる三層以上の多層プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器においては小型・薄型化及び多機能・高性能化が進んでおり、これに伴いプリント配線板の多層化が進んでいる。多層プリント配線板における層間導通手段としては、特許文献1に示されるように、基板を貫通する貫通ビアホールや、基板を貫通しない非貫通ビアホールが知られている。このように、多層プリント配線板の層間導通が図られることにより、基板の小型化及び薄型化を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−332105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、貫通ビアホールが形成された多層プリント配線板の表面に部品を実装すると、部品を実装するための半田が貫通ビアホールを通じて抜け落ちることにより実装不良が発生するという不都合や、非貫通ビアホールに溜まった半田が半田硬化時にボイドを発生させることにより接続不良が発生するといった不都合が生じる場合がある。
【0005】
このため、貫通ビアホール又は非貫通ビアホールが設けられている場所を回避して部品を実装するように設計すると、多層プリント配線板の表面のうちの回路形成に用いることができる領域が狭くなり、回路設計の自由度が低減するという問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、多層プリント配線板の表面を有効に利用して回路を形成することができ、回路設計の自由度が高い多層プリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1絶縁性基材の主面に形成された、第1接点を含む第1回路パターンを有する第1プリント配線板と、前記第1プリント配線板の主面側に積層され、第2絶縁性基材の主面に形成された第2回路パターンを有する第2プリント配線板と、前記第2プリント配線板の主面側に積層され、第3絶縁性基材の主面に形成された第2接点を含む第3回路パターンを有する第3プリント配線板と、を有し、前記第2プリント配線板の主面に沿って延在する接続部を有し、前記第1プリント配線板、前記第2プリント配線板、及び第3プリント配線板の外側面に接して前記第1接点と前記第2接点とを接続する層間接続部材を有することを特徴とする多層プリント配線板を提供することにより、上記課題を解決する。
【0008】
上記発明において、前記層間接続部材は、前記第1プリント配線板の主面に接して延在する第1接続部と、前記第2プリント配線板の主面に接して延在する第2接続部と、前記第3プリント配線板の主面に接して延在する第3接続部と、を備えた階段構造を有するように構成することができる。
【0009】
上記発明において、前記層間接続部材を、銀を含む導電性材料から形成することができる。
【0010】
上記発明において、前記第1絶縁性基材、前記第2絶縁性基材、又は前記第3絶縁性基材のいずれか一つ以上を、ポリイミド系材料で形成することができる。
【0011】
上記発明において、前記第1絶縁性基材、前記第2絶縁性基材、又は前記第3絶縁性基材のいずれか一つ以上を貫通して前記積層方向に沿って延在し、前記第1プリント配線板の第1回路パターン、前記第2プリント配線板の第2回路パターン、及び前記第3プリント配線板の第3回路パターンのいずれか2つ以上を接続するビアホールを、さらに備えるように構成することができる。
【0012】
また、本発明は、第1絶縁性基材の主面に形成された、第1接点を含む第1回路パターンを有する第1プリント配線板と、第2絶縁性基材の主面に形成された第2回路パターンを有する第2プリント配線板と、第3絶縁性基材の主面に形成された第2接点を含む第3回路パターンを有する第3プリント配線板と、を準備し、前記第1プリント配線板の主面側に、前記第1接点を含む第1領域が露出するように第2プリント配線板を積層し、前記第2プリント配線板の主面側に、当該第2プリント配線板の主面側の前記第1領域と隣接する前第2領域が露出するように第3プリント配線板を積層し、前記第2領域の少なくとも一部を介して前記第1接点と前記第2接点とを接続する層間接続部材を、導電性ペーストをスクリーン印刷して形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。
【0013】
上記発明において、導電性ペーストをスクリーン印刷することにより前記層間接続部材を形成する際に、前記第1回路パターン、前記第2回路パターン、及び前記第3回路パターンの何れか一つ以上の回路パターンの一部又は全部を同時に形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、3層以上の積層構造を有し、下層の第1プリント配線板に形成された第1接点と、第2プリント配線板を介して積層された上層の第3プリント配線板の第2接点とを接続する層間接続部材を、第2プリント配線板の主面に沿って延在する接続部を有し、第1プリント配線板、第2プリント配線板、及び第3プリント配線板の外側面に接するように構成したので、プリント配線板の積層方向にビアホールを形成しなくても、プリント配線板の主面に沿って層間を接続することができる。この結果、層間接続を実現しつつも、ビアホールによって回路形成ができない領域の面積を低減させ、電子部品の実装面を有効に利用することができ、回路設計の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る多層プリント配線板を含む電子回路基板の斜視図である。
【図2A】層間接続部材が形成された多層プリント配線板の斜視図である。
【図2B】層間接続部材が接続する第1接点と第2接点を有する多層プリント配線板の斜視図である。
【図3】図2Aに示すIII−III線に沿う断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る多層プリント配線板の製造方法のフローチャート図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る多層プリント配線板の図3に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、図面に基づいて、本発明に係る第1実施形態の多層プリント配線板について説明する。
【0017】
本実施形態の多層プリント配線板は、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)などの電子機器に用いられる。本実施形態では、多層プリント配線板がフレキシブルプリント配線板に接続された多層リジッド・フレックスの構成を有する電子回路基板に本発明に係る多層プリント配線板を適用した例を説明する。
【0018】
図1は、多層プリント配線板10,10´が、屈強可能なフレキシブル基板20を介して接続されている電子回路基板100を示す斜視図である。電子回路基板100の多層リジッド・フレックスの構成は特に限定されず、フライングテールタイプ、フォールディングタイプ、ブックバインダータイプなどの様々な構成をとることができる。
【0019】
図1に示すように、本発明の本実施形態の多層プリント配線板10は、最下層に配置された第1プリント配線板1と、第1プリント配線板1の上に積層された第2プリント配線板2と、最上層に配置され、第2プリント配線板2の上に積層された第3プリント配線板3とを備えている。また、第3プリント配線板3の表面には複数の電子部品30が実装されている。本実施形態の多層プリント配線板10は、フレキシブル基板20との接続領域A(図1の破線で示す)において層間接続が図られている。なお、層間接続が図られる部位は特に限定されず、接続領域Aのように多層プリント配線板10の端部であってもよいし、端部以外の部位であってもよい。
【0020】
図2Aは、層間接続部材4が形成された本実施形態の多層プリント配線板10を示す斜視図、図2Bは、層間接続部材4により接続される第1接点13と第2接点33が形成された本実施形態の多層プリント配線板10を示す斜視図である。
【0021】
図2Aに示すように、本実施形態の多層プリント配線板10は、積層構造を有する第1プリント配線板1と第2プリント配線板2と第3プリント配線板3とを備えている。
【0022】
最下層の第1プリント配線板1は、第1絶縁性基材11と、第1絶縁性基材11の主面に形成された、第1回路パターン12とを少なくとも有する。第1回路パターン12は後述する第1接点を含む。さらに、第1プリント配線板1は、第1回路パターン12の上に形成された第1カバーレイ15と、第1プリント配線板1に第2プリント配線板2を接着するための第1接着層16とを有する。
【0023】
同様に、本実施形態の第2プリント配線板2は、第2絶縁性基材21と、第2絶縁性基材21の主面に形成された第2回路パターン22とを少なくとも有する。さらに、第2プリント配線板2は、第2回路パターン22の上に形成された第2カバーレイ25と、第2プリント配線板2に第3プリント配線板3を接着するための第2接着層26とを有する。
【0024】
同様に、本実施形態の第3プリント配線板3は、第3絶縁性基材31と、第3絶縁性基材31の主面に形成された第3回路パターン32とを少なくとも有する。第3回路パターン32は、後述する第2接点を含む。さらに、第3プリント配線板3は、第3回路パターン32の上に形成された第3カバーレイ35を有する。
【0025】
特に限定されないが、第1絶縁性基材11、第2絶縁性基材12、又は第3絶縁性基材13のいずれか一つ以上は、厚さ5μm〜200μm程度のポリイミド系材料で形成されていることが好ましい。第1絶縁性基材11、第2絶縁性基材12、又は第3絶縁性基材13の何れか一つ以上を、可撓性を有するポリイミド(PI)系材料で形成することにより、屈曲性を備えた接続部分を有する多層プリント配線板10を提供することができる。なお、第1〜第3絶縁性基材11〜13としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)やポリエステル(PE)などを用いることも可能である。
【0026】
また、第1回路パターンを構成する第1回路層12、第2回路パターンを構成する第2回路層22、第3回路パターンを構成する第3回路層32は、厚さ5μm〜80μm程度の銅などの金属層で構成されている。第1回路層12、第2回路層22、第3回路層32は、絶縁性基材11〜13の主面に貼り付けられた圧延銅箔の所定領域を一般的なエッチング処理により除去して形成することができる。また、導電性インクを用いてスクリーン印刷やインクジェット印刷により形成することも可能である。
【0027】
第1回路パターン12を保護する第1カバーレイ15、第2回路パターン22を保護する第2カバーレイ25、第3回路パターン32を保護する第3カバーレイ35は、ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂をベースにした液状のカバーコートインクを用いてスクリーン印刷により形成してもよいし、フィルムタイプのカバーレイを用いることもできる。
【0028】
さらに、第1プリント配線板1と第2プリント配線板2を接着する第1接着層16、第2プリント配線板2と第3プリント配線板3を接着する第2接着層26は、ポリイミド系、エポキシ系又はアクリル系の接着シートにより形成される。
【0029】
図2Aに示すように、段差を介して連なる第1プリント配線板1の主面、第2プリント配線板2の主面、及び第3プリント配線板3の主面には、連続した単一の層間接続部材4が形成されている。この層間接続部材4は、後述する、第1プリント配線板1の主面に形成された第1接点13と、第3プリント配線板3の主面に形成された第2接点33とを電気的に接続する共通の導電性を有する部材である。
【0030】
本実施形態の層間接続部材4は、同図に示すように、第1プリント配線板1の主面に接して延在する第1接続部41と、第2プリント配線板2の主面に接して延在する第2接続部42と、第3プリント配線板3の主面に接して延在する第3接続部43とを有する2段以上の段差を有する階段構造を備えている。この階段構造の層間接続部材4は、第1接続部41と第2接続部42との間であって、垂直面方向(図中zy面方向)に延在し、第1接続部41と第2接続部42との間に形成された垂直面に接する第4接続部44と、第2接続部42と第3接続部43との間であって、垂直面方向(図中zy面方向)に延在し、第2接続部42と第3接続部43との間に形成された垂直面に接する第5接続部45と有している。
【0031】
ここで、層間接続部材4の下側にある第1接点13と第2接点33について説明する。図2Bは、この層間接続部材4により接続される第1接点13と第2接点33を備えた多層プリント配線板10を示す斜視図である。図2Bに示すように、第1プリント配線板1の第1回路パターン12を覆う第1カバーレイ15は、第1接点13に対向する領域が除去されており、第1接点13が第1プリント配線板1の主面側に露出している。また、同図に示すように、第3プリント配線板3の第3回路パターン13を覆う第3カバーレイ35は、第2接点33に対向する領域が除去されており、第2接点33が第3プリント配線板3の主面側に露出している。
【0032】
図2Bに示すように、層間接続部材4が形成される前においては、第1プリント配線板1の主面のうち、第1接点13を含む第1領域14が少なくとも露出しており、第2プリント配線板2の主面のうち、第1領域14に隣接する第2領域24が露出しており、第3プリント配線板3の主面のうち、第2接点33を含む第3領域34が少なくとも露出している。図2Bに示す3層以上の積層構造を有する多層プリント配線板10において、第1接点13と第2接点33との間には、互いに高さ(図中z方向の位置)の異なる第1プリント配線板1の第1領域14と、第2プリント配線板2の第2領域24と、第3プリント配線板3の第3領域34とが形成されている。第1領域14と第2領域24との間には段差が形成され、第2領域24と第3領域34との間には段差が形成されている。つまり、第1領域14、第2領域24、第3領域34が水平部分(階段構造における踏みづら)を構成し、第1領域14と第2領域24との境界の段差と、第2領域24と第3領域34との境界が垂直部分(階段構造における蹴上げ)を構成している。このように、第1接点13を含む第1領域14と、第1領域14と段差を介して隣接する第2領域24と、第2領域24と段差を介して隣接する第2接点33を含む第3領域34とが、第1接点13と第2接点33との間に階段構造を形成する。
【0033】
この階段構造の段差は、スクリーン印刷が可能な程度の厚さにすることができるので、導電性ペーストを用いたスクリーン印刷により多層プリント配線板10の外形に沿った階段状の層間接続部材4を形成することができる。これにより、層間接続を簡易な手法(スクリーン印刷)で実現することができる。また、層間接続部材4をスクリーン印刷する際に、第1回路パターン12、第2回路パターン22、及び第3回路パターン32の何れか一つ以上の回路パターンの一部又は全部を同時に印刷することにより、多層プリント配線板10の作製工程数を減らすことができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0034】
なお、層間接続部材4は、導電性インクを用いたインクジェット印刷によっても形成することができる。インクジェット印刷法によれば、所定位置に所定厚さの層間接続部材4を形成することができる。
【0035】
図3は、図2Aに示すIII−III線に沿う断面図である。
【0036】
先述したように、図3に示す層間接続部材4は、多層プリント配線板10の外形に沿って、すなわち第1〜第3プリント配線板1〜3の外側面に接して形成されている。具体的に、層間接続部材4は、上述した第1領域14上に形成された第1接続部41と、第2領域24上に形成された第2接続部42と、第3領域34上に形成された第3接続部43とを有する。同図に示すように、第1接続部41は第1プリント配線板1の主面に接して延在し、第2接続部42は第2プリント配線板2の主面に接して延在し、第3接続部43は、第3プリント配線板の主面に接して延在している。
【0037】
特に限定されないが、層間接続部材4は、銀、又はカーボンブラックなどの導電性粒子を含む導電ペーストを用いてスクリーン印刷により形成された導電層により構成することができる。銀粒子を含む導電性材料で層間接続部材4を形成すると、層間接続部材4が硬くならないようにできるので、多層プリント配線板10を屈曲可能とすることができる。また、第1接点13から第2接点33との間の距離を大きくすることによって、曲げに強い多層プリント配線板10を提供することができる。なお、銀粒子を含む導電性材料で層間接続部材4を形成した場合には、層間接続部材4を保護するために絶縁性インクを印刷するか、カバーレイを配置する。
【0038】
また、耐食性のあるカーボンブラックを含む導電性材料で層間接続部材4を形成すると、層間接続部材4を保護するための絶縁性インクの印刷、カバーレイの配置が不要となり、製造コストをさらに低減させることができる。
【0039】
図3に示すように、積層構造を有する多層プリント配線板10において、第1接点13と第2接点33との間に形成された層間接続部材4には、互いに高さ(図中z方向の位置)の異なる第1接続部41と、第2接続部42と、第3接続部43とが形成されている。第1接続部41と第2接続部42との間には段差が形成され、第2接続部42と第3接続部43との間には段差が形成されている。つまり、層間接続部材4の第1接続部41、第2接続部42、第3接続部43は階段構造の水平部分(階段構造における踏みづら)を構成している。
【0040】
さらに、同図に示すように、第1接続部41と第2接続部42との間には、第1プリント配線板1及び第2プリント配線板2の積層方向(図中z方向)に沿って、第1プリント配線板1及び第2プリント配線板2の積層端面に接して延在する第4接続部44が形成され、第2接続部42と第3接続部43との間には、第2プリント配線板2及び第3プリント配線板3の積層方向(図中z方向)に沿って、第2プリント配線板2及び第3プリント配線板3の積層端面に接して延在する第5接続部45が形成されている。つまり、層間接続部材4の第4接続部44、第5接続部45は階段構造の垂直部分(階段構造における蹴上げ)を構成している。
【0041】
特に限定されないが、層間接続部材4の第4接続部44、第5接続部45の段差は、所定値未満であるように構成することが好ましい。第4接続部44、第5接続部45の段差が所定値よりも大きいと、層間接続部材4を形成する際に導電性ペーストが段差部分に入り込まず、層間接続部材4に欠けが生じてしまうからである。階段構造の段差の長さは特に限定されないが、スクリーン印刷に用いる導電性ペーストやスクリーン版の透過孔の大きさ、形成する回路の太さ等に応じて設定することができる。一例であるが、階段構造の段差の長さをプリント配線板1の1枚又は2枚程度の厚さ、又は絶縁性基材11の一枚の厚さ、カバーレイ15、接着層16の厚さなどにすることもできるが、10μm〜250μm程度とすることが好ましい。所定厚さ以下であれば、第2プリント配線板2を複数重ねることも可能である。
【0042】
次に、本実施形態の多層プリント配線板10の製造方法を説明する。図4は多層プリント配線板10の製造方法を示すフローチャート図である。
【0043】
図4に示すように、まず、ステップS10において、第1プリント配線板1と、第2プリント配線板2と、第3プリント配線板3とを準備する。
【0044】
第1プリント配線板1は以下の手法により得る。まず、ポリイイミド系樹脂からなる第1絶縁性基材11の一方主面に銅箔が張り付けられた銅張積層板(CCL:Copper Clad Laminated)を準備し、一般的なフォトリソグラフィー法により銅箔の所定領域をエッチングして、所望の第1回路パターン12を形成する。さらに、第1接点13を含む露出接点に対応する領域が予め除去されたポリイミド系樹脂の第1カバーレイ15を準備し、これを、第1回路パターン12の保護領域を覆うように積層する。さらに、必要に応じて接着層16を積層する。同様の手法により、第2プリント配線板2と、第3プリント配線板3を得ることができる。
【0045】
次に、ステップS20において、第1プリント配線板1の主面側に、第1接点13を含む第1領域14が露出するように、第2プリント配線板2をポリイミド系の第1接着層16を介して積層する(図2B参照)。つまり、第1領域14は第2プリント配線板2に覆われていない。
【0046】
続いて、第2プリント配線板2の主面側に、この第2プリント配線板1の主面側の第1領域14と段差を介して隣接する第2領域24が露出するように、第3プリント配線板3を積層する(図2B参照)。つまり、第2領域24は第3プリント配線板3に覆われていない。さらに、最上層の第3プリント配線板3の主面には第2接点33とこれを含む第3領域34が露出している。
【0047】
得られた3層の多層プリント配線板10の第1接点13と第12接点33との間には、高さの異なる第1プリント配線板1の第1領域14と、第2プリント配線板2の第2領域24と、第3プリント配線板3の第3領域34とによって階段構造が形成されている。このような階段構造を形成することにより、第1接点13と第3接点33との間の高低差を徐々に小さくさせることができる。この結果、第1接点13と第2接点33との間に階段構造が構成されるので、層間接続部材4をスクリーン印刷工程で形成することができる。しかも、第1プリント配線板1の第1領域14と、第2プリント配線板2の第2領域24と、第3プリント配線板3の第3領域34と段差は、各プリント配線板1〜3の厚さ以下の10μm〜250μm程度にすることにより、階段構造の段差を小さくすることができるので、一般的な回路パターンの印刷条件で層間接続部材4を印刷形成することができる。つまり、第3プリント配線板3の表面に形成される実装回路と同時に相関接続部材4を形成することができる。
【0048】
続くステップS30において、層間接続部材4を形成し、水平方向の層間接続を行う。具体的に、少なくとも層間接続部材4、加えて第1回路パターン12、第2回路パターン22、及び第3回路パターン32の何れか一つ以上の回路パターンの一部又は全部を形成するための透過層を有するスクリーン版を準備し、所定方向に移動するスキージにより銀ペーストを押し出して、層間接続部材4等を形成する。このように、層間接続部材4の形成が、他の回路パターン12,22,32の形成と同時にできるので、製造工程を簡易にすることができる。特に、第3プリント配線板3の表面に電子部品30を実装するための第3回路パターン32を形成する場合には、この実装回路とともに層間接続部材4を形成することができ、層間接続部材4の形成のために新たな工程を設ける必要がない。
【0049】
最後に、ステップS40において、必要に応じて第3プリント配線板3の表面に電子部品30を実装し、本実施形態の多層プリント配線板10を得る。
【0050】
<第2実施形態>
続いて、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、積層の態様及び階段構造の態様が第1実施形態と異なる。
【0051】
図5は、本発明の第2実施形態の多層プリント配線板10の断面を示す図であり、図3に相当する断面図である。図5に示す多層プリント配線板10は、第1プリント配線板1と、第1プリント配線板1の一方主面側に積層された第2プリント配線板2と、第2プリント配線板2の一方主面側に積層された第3プリント配線板3とを有する。さらに、多層プリント配線板10は、第1プリント配線板1の他方主面側に積層された第4プリント配線板6を有している。
【0052】
また、本例の各プリント配線板1〜3,6は、各絶縁性基材11,21,31,61の両面に各回路層12,22,32,62が形成されている。
【0053】
図5に示すように、第1プリント配線板1の第1接点13と第3プリント配線板3の第2接点33とは層間接続部材4により接続されている。図5に示す層間接続部材4も、図3に示すそれと同様に、第2プリント配線板2の主面に接して延在する第2接続部42を有する。
【0054】
ただし、本例の第2接続部42は、第2プリント配線板2の第2絶縁性基材21の主面に接してて延在する第2接続部42aと、第2プリント配線板2の第2接着層26の主面に接して延在する第2接続部42bとを有する。つまり、階段構造を、第2プリント配線板2の全体ではなく、第2絶縁性基材21、第2接着層26、又は第2カバーレイ25により構成することができる。この変形例は、第1プリント配線板1の主面に接して延在する第1接続部41、第3プリント配線板3の主面に接して延在する第3接続部43についても同様に適用することができる。
【0055】
このように、絶縁性基材11,21,31、カバーレイ15,25,35、接着層16,26、36の何れか一つ、又は幾つかを組み合わせて第1接点13と第2接点33との間に階段構造を形成することにより、階段構造の段差を小さく形成することができる。階段構造の段差を小さくすることができると、層間接続部材4をスクリーン印刷手法で形成するときに、階段構造の角部にも漏れなく導電性インクを塗ることができるので、電気的特性が安定した層間接続部材4を形成することができる。
【0056】
このように、階段構造の段差の高さや露出させる第2領域24の面積などを自在に設計することができるので、電子機器の外形形状の要求に応じることができる。
【0057】
また、同図に示すように、第1プリント配線板1の他方主面(図中下側)に第4プリント配線板6を積層することができる。図示はしないが、第4プリント配線板6の他方主面(図中下側)にさらに別の第5プリント配線板を積層することも可能である。この場合において、第1プリント配線板1、第4プリント配線板6、第5プリント配線板は、第1プリント配線板1、第2プリント配線板3、第3プリント配線板3と、同じ構成とすることができる。
【0058】
さらに、本実施形態の多層プリント配線板10では、第1絶縁性基材11と第2絶縁性基材21を貫通して積層方向(図中z方向)に沿って延在し、第1プリント配線板1の第1回路パターン12と第2プリント配線板2の第2回路パターン22とを接続する非貫通ビアホール52を有している。もちろん、第2絶縁性基材21と第3絶縁性基材31を貫通して積層方向に沿って延在し、第2プリント配線板2の第2回路パターン22と第3プリント配線板3の第3回路パターン32とを接続する非貫通ビアホール52を形成することもできる。
【0059】
加えて、本実施形態の多層プリント配線板10では、第1絶縁性基材11と、第2絶縁性基材21と、第3絶縁性基材31と、第4絶縁性基材61とを貫通して積層方向(図中z方向)に沿って延在し、第1プリント配線板1の第1回路パターン12と、第2プリント配線板2の第2回路パターン22と、第3プリント配線板3の第3回路パターン32と、第4プリント配線板6の第6回路パターン62を接続する貫通ビアホール51を有している。本例では、第4プリント配線板6を貫通する貫通ビアホール51を示すが、第4プリント配線板6が形成されていない場合は、第1〜第3プリント配線板1〜3を貫通する貫通ビアホール51を形成すればよい。
【0060】
このように、各プリント配線板1〜3,6の各積層方向(図中z方向)に沿うビアホール51,52と、これに加えて、各プリント配線板1〜3,6の主面の延在方向に沿う層間接続部材4を設けることができるので、垂直方向及び水平方向の両方向に沿って層間接続ができる。これにより、層間接続の態様を増やすことができる。また、ビアホール51,52の上には電子部品30を実装できないという制限を設けた場合であっても、本実施形態の層間接続部材4により水平方向に層間接続が達成できるので、電子部品の実装面を有効に利用して回路を形成することができ、回路設計の自由度が高い多層プリント配線板10を提供することができる。
【0061】
本実施形態の多層プリント配線板10の製造方法は、基本的に第1実施形態の多層プリント配線板10の製造方法と共通する。
【0062】
本実施形態では、プリント配線板1〜3の母材として、絶縁性基材の両主面に銅箔が張り付けられた銅張積層板(CCL:Copper Clad Laminated)を準備する必要があるが、回路パターン12,22、32の形成手法は基本的に共通する。
【0063】
また、本実施形態では、非貫通ビアホール52と貫通ビアホール51を形成する必要がある。
【0064】
先に、内層の非貫通ビアホール52を形成する。第1プリント配線板1用の銅張積層板と、第2プリント配線板2用の銅張積層板の、非貫通ビアホール52を形成する位置にCOレーザーやYAGレーザーによりスルーホールを形成する。そして、形成されたスルーホールの内壁にスルーホールめっき層を形成する。さらにエッチング工程を経て1回路パターン12、第2回路パターン22を形成する。その後、図4のステップS20へ移行する。
【0065】
ステップS20で、第1プリント配線板1〜第3プリント配線板3を上述したとおりに接着層を介して積層し、さらに第1プリント配線板1の裏面側にも接着層を介して第4プリント配線板6を積層し、所定の温度及び圧力環境で熱硬化させる。
【0066】
その後、上面から底面までを貫通する貫通ビアホール51を形成する。貫通ビアホール51を形成する位置にCOレーザーやYAGレーザー又はドリルによりスルーホールを形成する。そして、形成されたスルーホールの内壁にスルーホールめっき層を形成するし、各プリント配線板1〜3,6の層間導通を図る。なお、ビアホールの形成手法、ビアホールの形成にともなう処理については詳述しないが、出願時に知られている手法を適宜用いることができる。
【0067】
このように、本実施形態の多層プリント配線板10の製造方法では、電子部品30を実装する直前に層間接続部材4を形成することができるので、先に作成したビアホール51、52に接続不良があった場合に、ビアホール51、52の代替手段として層間接続部材4を作成することができる。これにより、ビアホール51,52でできなかった層間接続を事後的に達成することができる。これにより、多層プリント配線板10の歩留まりを向上させることができる。
【0068】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0069】
本実施形態では、3層又は4層の多層プリント配線板を例に説明したが、6層、8層の多層プリント配線板に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0070】
100…電子回路基板
10,10´…多層プリント配線板
20…フレキシブル基板
30…電子部品
1…第1プリント配線板
11…第1絶縁性基材
12…第1回路層,第1回路パターン
13…第1接点
14…第1領域
15…第1カバーレイ
16…第1接着層
2…第2プリント配線板
21…第2絶縁性基材
22…第2回路層,第2回路パターン
24…第2領域
25…第2カバーレイ
26…第2接着層
3…第3プリント配線板
31…第3絶縁性基材
32…第3回路層,第3回路パターン
33…第2接点
34…第3領域
35…第3カバーレイ
36…第3接着層
4…層間接続部材
41…第1接続部
42…第2接続部
43…第3接続部
44…第4接続部
45…第5接続部
5…ビアホール
51…貫通ビアホール
52…非貫通ビアホール
6…第4プリント配線板
61…第4絶縁性基材
62…第4回路層,第4回路パターン
63…第4接点
64…第4領域
65…第4カバーレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁性基材の主面に形成された、第1接点を含む第1回路パターンを有する第1プリント配線板と、
前記第1プリント配線板の主面側に積層され、第2絶縁性基材の主面に形成された第2回路パターンを有する第2プリント配線板と、
前記第2プリント配線板の主面側に積層され、第3絶縁性基材の主面に形成された第2接点を含む第3回路パターンを有する第3プリント配線板と、を有し、
前記第2プリント配線板の主面に沿って延在する接続部を有し、前記第1プリント配線板、前記第2プリント配線板、及び第3プリント配線板の外側面に接して前記第1接点と前記第2接点とを接続する層間接続部材を有することを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項2】
請求項1に記載の多層プリント配線板において、
前記層間接続部材は、前記第1プリント配線板の主面に接して延在する第1接続部と、前記第2プリント配線板の主面に接して延在する第2接続部と、前記第3プリント配線板の主面に接して延在する第3接続部とを備えた階段構造を有することを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項3】
請求項1に記載の多層プリント配線板において、
前記層間接続部材が、銀を含む導電性材料から形成されていることを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項4】
請求項1に記載の多層プリント配線板において、
前記第1絶縁性基材、前記第2絶縁性基材、又は前記第3絶縁性基材のいずれか一つ以上が、ポリイミド系材料で形成されていることを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の多層プリント配線板において、
前記第1絶縁性基材、前記第2絶縁性基材、又は前記第3絶縁性基材のいずれか一つ以上を貫通して前記積層方向に沿って延在し、前記第1プリント配線板の第1回路パターン、前記第2プリント配線板の第2回路パターン、及び前記第3プリント配線板の第3回路パターンのいずれか2つ以上を接続するビアホールを、さらに備えることを特徴とする多層プリント配線板。
【請求項6】
第1絶縁性基材の主面に形成された、第1接点を含む第1回路パターンを有する第1プリント配線板と、第2絶縁性基材の主面に形成された第2回路パターンを有する第2プリント配線板と、第3絶縁性基材の主面に形成された第2接点を含む第3回路パターンを有する第3プリント配線板と、を準備し、
前記第1プリント配線板の主面側に、前記第1接点を含む第1領域が露出するように第2プリント配線板を積層し、
前記第2プリント配線板の主面側に、当該第2プリント配線板の主面側の前記第1領域と段差を介して隣接する第2領域が露出するように第3プリント配線板を積層し、
前記第2領域の少なくとも一部を介して前記第1接点と前記第2接点とを接続する層間接続部材を、導電性ペーストをスクリーン印刷して形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の多層プリント配線板の製造方法において、
導電性ペーストをスクリーン印刷することにより前記層間接続部材を形成する際に、前記第1回路パターン、前記第2回路パターン、及び前記第3回路パターンの何れか一つ以上の回路パターンの一部又は全部を前記層間接続部材と同時に形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−60026(P2012−60026A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203516(P2010−203516)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】