説明

多層基板の製造方法、デスミア処理方法

【課題】本発明は、形成される金属層の密着性およびパターンの高精細性に優れると共に、穴を介した金属層間の接続信頼性が高く、歩留りが良好な多層基板の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】絶縁層と第1の金属層とを少なくとも有するコア基材に対して、穴開け加工を施し、絶縁層の他方の面から第1の金属層に達する穴を絶縁層中に設ける穴形成工程および絶縁層の他方の面に所定の金属または金属イオンを付着させる金属付着工程の2つの工程を順不同で行う基材前処理工程と、基材前処理工程後に、プラズマエッチングによりデスミア処理を行うデスミア工程と、デスミア工程後に、酸性溶液を用いてコア基材を洗浄する洗浄工程と、絶縁層にめっき触媒またはその前駆体を付与して、めっき処理を行い、穴を介して第1の金属層と導通する第2の金属層を絶縁層上に形成するめっき工程と、を備えた多層基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層基板の製造方法、および、デスミア処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層配線基板を製造する際、配線との密着性の発現のため、また、ビアホールの底部の樹脂残渣を除去するために、過マンガン酸処理などの粗化(例えば、デスミアエッチング)を用いるのが一般的である。
しかしながら、サブトラクティブ法やセミアディティブ法などの金属エッチング法を適用し、配線の微細化を図ろうとした際には、配線の密着力の低下や、配線間の粗化面に食い込んでいる金属残渣の除去が困難となるためにエッチング時にオーバーエッチングが発生しやすく微細な金属配線を形成すること自体が困難となる、など配線下の粗化のデメリットは大きい。
【0003】
そこで、他のデスミア処理として、プラズマエッチングによってビアホール中に残存する樹脂残渣などを除去する方法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−277717号公報
【特許文献2】特開2002−50603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1を参照して導電性物質吸着性樹脂層にビアホールを形成し、デスミア処理としてプラズマエッチング処理を行ったところ、該樹脂層の膜厚が減る膜べりなどが生じ、樹脂層がダメージを受けてしまうことを見出した。その結果、該樹脂層上に形成される金属層の密着性の低下や、金属層のパターン形成性の低下、さらには、ビアホールの充填欠陥などが生じることがあった。
【0006】
そこで、本発明は、上記実情に鑑みて、形成される金属層の密着性およびパターンの高精細性に優れると共に、穴を介した金属層間の接続信頼性が高く、歩留りが良好な多層基板の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記製造方法に使用されるデスミア処理方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、従来技術の問題点について鋭意検討を行った結果、絶縁層表面に金属成分を付着させた後、プラズマエッチングを行うことにより、絶縁層の膜べりなどを抑制できることを見出した。
本発明者は、以下に示す手段により上記目的を達成しうることを見出した。
【0008】
(1) 最表層に配置された絶縁層と前記絶縁層の一方の面に設けられた第1の金属層とを少なくとも有するコア基材に対して、穴開け加工を施し、前記絶縁層の他方の面から前記第1の金属層に達する穴を前記絶縁層中に設ける穴形成工程、および、前記絶縁層の他方の面に原子番号13〜14、21〜33、および39〜50からなる群から選ばれる金属またはそのイオンを付着させる金属付着工程の2つの工程を順不同で行う基材前処理工程と、
前記基材前処理工程後に、プラズマエッチングによりデスミア処理を行うデスミア工程と、
前記デスミア工程後に、酸性溶液を用いて前記コア基材を洗浄する洗浄工程と、
前記絶縁層にめっき触媒またはその前駆体を付与して、めっき処理を行い、前記穴を介して前記第1の金属層と導通する第2の金属層を前記絶縁層上に形成するめっき工程と、を備えた多層基板の製造方法。
【0009】
(2) 前記酸性溶液が、塩酸、硫酸、または硝酸を含む、(1)に記載の多層基板の製造方法。
(3) 前記金属付着工程における前記金属またはそのイオンの付着量が、50〜1000mg/m2である、(1)または(2)に記載の多層基板の製造方法。
【0010】
(4) 前記絶縁層が、最表層にめっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有する密着絶縁層を少なくとも有する絶縁層である、(1)〜(3)のいずれかに記載の多層基板の製造方法。
(5) 前記穴開け加工が、ドリル加工またはレーザ加工である、(1)〜(4)のいずれかに記載の多層基板の製造方法。
【0011】
(6) 最表層に配置された絶縁層と前記絶縁層の一方の面に設けられた第1の金属層とを少なくとも有する基材のデスミア処理方法であって、
穴開け加工を施して前記絶縁層中に前記絶縁層の他方の面から前記第1の金属層に達する穴を設ける穴形成工程、および、前記絶縁層の他方の面に原子番号13〜14、21〜33、および39〜50からなる群から選ばれる金属またはそのイオンを付着させる金属付着工程の2つの工程を順不同で行い、その後プラズマエッチングを行う、基材のデスミア処理方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、形成される金属層の密着性およびパターンの高精細性に優れると共に、穴を介した金属層間の接続信頼性が高く、歩留りが良好な多層基板の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、上記製造方法に使用されるデスミア処理方法を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)〜(G)は、それぞれ本発明の多層基板の製造方法における各製造工程を順に示す模式的断面図である。
【図2】(A)〜(F)は、セミアディティブ法に基づいてパターン状の金属層を製造する際の各製造工程を順に示す模式的断面図である。
【図3】(A)〜(D)は、サブトラクティブ法に基づいてパターン状の金属層を製造する際の各製造工程を順に示す模式的断面図である。
【図4】(A)および(B)は、本発明で使用されるコア基材の別態様を示す模式的断面図である。
【図5】(A)〜(G)は、密着絶縁層を備えるコア基材を使用した際の本発明の多層基板の製造方法における各製造工程を順に示す模式的断面図である。
【図6】本発明で使用されるコア基材の別態様を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の多層基板の製造方法について説明する。
まず、本発明の従来技術と比較した特徴点について詳述する。
本発明の特徴点としては、プラズマエッチングによるデスミア処理の前処理として、絶縁層表面に金属または金属イオンを付着させる点、および、デスミア処理後に酸性溶液とコア基材とを接触させる点が挙げられる。まず、絶縁層表面に金属または金属イオンを付着させることにより、プラズマエッチングによる絶縁層へのダメージを低減させることができ、膜べりなどの発生が抑制される。また、デスミア処理後に酸性溶液とコア基材とを接触させることにより、絶縁層上の金属または金属イオンを除去すると共に、穴底に堆積した樹脂残渣や、第1の金属層表面に形成される酸化膜(例えば、第1の金属層が銅層の場合、酸化銅)を取り除くことができる。
【0015】
<第1の実施態様>
本発明の多層基板の製造方法は、以下の4つの工程を備える。
(基材前処理工程) 最表層に配置された絶縁層と上記絶縁層の一方の面に設けられた第1の金属層とを少なくとも有するコア基材に対して、穴開け加工を施し、絶縁層の他方の面から第1の金属層に達する穴を絶縁層中に設ける穴形成工程、および、絶縁層の他方の面に原子番号13〜14、21〜33、および39〜50からなる群から選ばれる金属またはそのイオンを付着させる金属付着工程を含み、2つの工程を順不同で行う工程
(デスミア工程) 基材前処理工程後に、プラズマエッチングによりデスミア処理を行う工程
(洗浄工程) デスミア工程後に、酸性溶液を用いてコア基材を洗浄する工程
(めっき工程) 絶縁層にめっき触媒またはその前駆体を付与して、めっき処理を行い、穴を介して第1の金属層と導通する第2の金属層を絶縁層上に形成する工程
以下に、各工程で使用する材料、および、その操作方法について詳述する。
【0016】
<基材前処理工程>
基材前処理工程は、後述する穴形成工程および金属付着工程を含み、この2つの工程を順不同で実施する工程である。穴形成工程と金属付着工程の実施順番は特に限定されないが、穴形成工程時に付着金属起因のスミアをより抑制するという観点から、穴形成工程を先に実施し、その後金属付着工程を実施することが好ましい。
以下に、穴形成工程および金属付着工程について詳述する。なお、図1においては、穴形成工程を先に実施する態様が記載される。
【0017】
<穴形成工程>
穴形成工程は、最表層に配置された絶縁層と上記絶縁層の一方の面に設けられた第1の金属層とを少なくとも有するコア基材に対して、穴開け加工を施し、絶縁層の他方の面から第1の金属層に達する穴を絶縁層中に設ける工程である。
より具体的には、まず、図1(A)に示すように、最表層に配置された絶縁層12と、該絶縁層12の一方の面(裏面)上に設けられた第1の金属層14と、該絶縁層12および該金属層14を支持する支持体16とを備えるコア基材10を用意する。次に、該コア基材10に対して穴開け加工を施し、図1(B)に示すように、絶縁層12の第1の金属層14がある面とは反対側の面(表面)から第1の金属層14に達する穴18を設ける。該穴18は、絶縁層12上に形成される後述する第2の金属層22と第1の金属層14とを導通させるために設けられる。なお、該処理を実施すると、穴の底部にスミア20が堆積する(図1(B)参照)。
まず、本工程で使用されるコア基材について詳述し、その後工程の手順について詳述する。
【0018】
(コア基材)
コア基材は、最表層に配置された絶縁層と、上記絶縁層の一方の面に設けられた第1の金属層とを少なくとも有する基材である。本発明の製造方法を実施することにより、該基材の最表層に配置される絶縁層上に別の金属層がさらに設けられる。
以下、コア基材の態様について、まず、図1(A)に従って詳述する。
なお、図1(A)では、支持体16の片面上に絶縁層12および第1の金属層14が配置されているが、両面に設けられていてもよい。その場合、支持体16の一方の面に設けられた第1の金属層14が、他方の面に設けられた第1の金属層と支持体16を貫通する貫通導体を介して電気的に接続していてもよい。
【0019】
(絶縁層12)
絶縁層12は、コア基材10の最表層に配置され、金属層間の絶縁信頼性を確保するために設けられる層である。
絶縁層12を構成する材料は特に制限されず、例えば、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂などの絶縁性樹脂が挙げられる。より具体的には、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、イソシアネート樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。
【0020】
絶縁層12の形成方法は特に制限されず、例えば、絶縁性樹脂を含有する絶縁性樹脂組成物を支持体16上に塗布して、絶縁層12を形成する方法(塗布法)や、絶縁性樹脂を含有する絶縁層12を支持体16上にラミネートする方法などが挙げられる。
絶縁層12の厚みは、多層基板の使用目的に応じて適宜選択されるが、10〜150μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。
なお、本発明における「絶縁性樹脂」とは、公知の絶縁膜や絶縁層に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂であることを意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
【0021】
なお、上記絶縁性樹脂組成物には、必要に応じて、充填剤(例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルクなど)、着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、などの各種添加剤を1種または2種以上添加してもよい。
これらの材料を絶縁性樹脂組成物に添加する場合は、いずれも樹脂に対して、1〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは10〜80質量%の範囲で添加される。
【0022】
(第1の金属層)
第1の金属層14は、上記絶縁層12の一方の面上に設けられる金属層である。該第1の金属層は、主に多層基板において金属配線として機能する。該金属層は、図1(A)に示すようにパターン状(例えば、ランド状)に設けられていてもよいし、絶縁層12の全面に設けられていてもよい。なお、パターン状の金属層は、公知の方法(サブトラクティブ法、セミアディティブ法など)によって形成されてもよい。
第1の金属層14を構成する材料は特に制限されないが、例えば、銅、銀、錫、ニッケル、金などが挙げられる。
第1の金属層の厚みは特に制限されないが、プリント基板における実用性の点から、4〜50μm程度であることが好ましい。
【0023】
(支持体)
支持体16は、絶縁層12と第1の金属層14とを支持するための部材であり、必要に応じて設けられる。つまり、該支持体16は、任意の構成部材である。
支持体16の種類は特に制限されず、例えば、ガラスエポキシ基板、BTレジン基板、アルミナ基板、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、液晶フィルム、アラミドフィルムなどが挙げられる。なかでも、寸法安定性や耐熱性など、熱的または機械的特性の観点から、ガラスエポキシ基板、BTレジン基板が好ましい。
【0024】
(工程の手順)
上述したコア基材に対して施される穴開け加工の方法は特に制限されず、公知の方法(例えば、化学エッチング、プラズマエッチングなど)が採用される。なかでも、形成される穴の径の大きさの制御や、位置合わせが容易な点から、レーザ加工またはドリル加工が好ましい。
レーザ加工に使用されるレーザは、絶縁層12を除去し、かつ、所望の径の穴18を形成しうるものであれば、特に制限はない。レーザの発光波長は特に制限されず、100nm〜15μmの範囲を好適に使用できる。
なかでも、加工性に優れる点、即ち、効率よくアブレーションすることが可能であり、生産性に優れるという点から、エキシマレーザ、炭酸ガスレーザ(CO2レーザ)、YAGレーザ、Nd:YAGレーザ、UV−YAGレーザ等が用いられる。なかでも、コストメリットの点で、炭酸ガスレーザ、UV−YAGレーザが好ましい。
【0025】
ドリル加工は、絶縁層12を除去し、かつ、所望の径の穴18を形成しうるものであれば特に制限はないが、生産性や小径ビア加工性の観点で、スピンドリル法が一般的に用いられる。
【0026】
本工程で形成される穴18の径は使用目的に応じて適宜最適な径の大きさが選択されるが、基板の小型化、配線の高密度化の点から、トップ径(φ)が10〜150μmであり、ボトム径(φ)が10〜150μmであることが好ましく、トップ径(φ)が10〜60μmであり、ボトム径(φ)が10〜60μmであることがより好ましい。
【0027】
<金属付着工程>
金属付着工程は、絶縁層の他方の面(第1の金属層がある面とは反対側の面)に所定の金属または金属イオンを付着させる工程である。絶縁層表面に付着された金属または金属イオンによって、後述するプラズマエッチング処理による絶縁層12のダメージが抑制される。
図1(C)に示されるように、本工程を施すことにより、金属または金属イオンが表面付着した絶縁層112が得られる。
まず、使用される材料(金属または金属イオン)について詳述し、その後工程の手順について詳述する。
【0028】
(金属または金属イオン)
本工程で使用される金属または金属イオンは、原子番号13〜14、21〜33、および39〜50の金属元素から選ばれる金属または金属イオンが使用される。なかでも、プラズマエッチング処理による絶縁層のダメージがより防止される点で、遷移金属元素(原子番号21〜29、および39〜47の元素)から選ばれる金属またはそのイオンであることがより好ましい。
さらに、本発明の効果がより優れる点で、周期表第10族、第11族の遷移金属元素が好ましく、パラジウム、銅、銀、ニッケルが特に好ましい。
上記以外の金属または金属イオン(例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属)を使用すると、絶縁層がダメージを受け、所望の効果が得られない。
【0029】
(工程の手順)
絶縁層表面上に金属または金属イオンを付着させる方法は特に制限されず、例えば、金属または金属イオンを含む溶液を絶縁層上に塗布する方法や、該溶液中に基材を浸漬させる方法などが挙げられる。
【0030】
絶縁層上の金属または金属イオンの付着量は、プラズマエッチンング処理による絶縁層のダメージがより防止される点で、50〜1000mg/m2が好ましく、100〜500mg/m2がより好ましい。
【0031】
<デスミア工程>
デスミア工程は、上記基材前処理工程後(図1の態様においては金属付着工程後)に、プラズマエッチングによりデスミア処理を行う工程である。該工程を施すことにより、図1(D)に示すように、穴18の底部の堆積していたスミア20を除去することができる。
【0032】
プラズマエッチングの方法は特に制限されず公知の方法が実施される。例えば、減圧プラズマ法、大気プラズマ法のいずれも適用することができるが、汎用される減圧プラズマ法が好適に用いられる。
プラズマエッチング処理を施す際の雰囲気圧としては、エッチング速度の観点から、100Pa以下であることが好ましく、10Pa以下であることがより好ましい。
なお、大気圧プラズマ法を用いる場合であれば、減圧の必要がないため、インライン処理が可能といった利点であり、これにより生産効率の向上が期待できる。
【0033】
該処理において、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノンの中から選ばれる不活性ガス、O2、CF4、C24、N2、CO2、SF6、CHF3、少なくともO、N、FまたはClを含む反応性ガスからなる群から選択されるいずれか1種類以上のガスを用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0034】
プラズマエッチングの時間は適宜選択されるが、通常、15〜300秒程度である場合が多い。
【0035】
<洗浄工程>
洗浄工程は、上記デスミア工程後に、酸性溶液を用いてデスミア処理されたコア基材を洗浄する工程である。該工程を実施することにより、図1(E)に示されるように、絶縁層表面に付着していた金属または金属イオンが実質的に除去される(金属または金属イオンが表面付着した絶縁層112から金属または金属イオンが実質的に除去された絶縁層212へ)と共に、穴18の底部に残存する樹脂や、第1の金属層14上に形成されていた酸化膜が除去される。
まず、本工程で使用される材料(酸性溶液)について詳述し、その後工程の手順について詳述する。
【0036】
(酸性溶液)
酸性溶液は、酸性を示せばよい。なかでも、酸化膜の除去性能がより優れる点から、pHが2以下であることが好ましく、1以下であることが好ましい。なお、下限は特に制限されないが、絶縁層への影響の点から、pH0以上が好ましい。
【0037】
酸性溶液に含まれる酸性成分は特に制限されないが、例えば、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸が挙げられる。なかでも、酸化膜の除去性能がより優れる点から、塩酸、硫酸、硝酸を含むことが好ましい。
酸性溶液で使用される溶媒は、通常、水であるが、必要に応じて有機溶媒(例えば、アルコール系溶媒)を使用してもよい。
【0038】
(工程の手順)
コア基材の洗浄方法は特に制限されず、コア基材の表面に上記酸性溶液を塗布する方法、コア基材を上記酸性溶液中に浸漬する方法などが挙げられる。
コア基材と酸性溶液との接触時間は使用される金属などに応じて適宜選択されるが、生産性、および、酸化膜などの除去性の点から、1〜30分が好ましく、3〜15分がより好ましい。
【0039】
<めっき工程>
めっき工程は、洗浄工程が施されたコア基材の絶縁層にめっき触媒またはその前駆体を付与して、めっき処理を行い、穴を介して第1の金属層と導通する第2の金属層を絶縁層上に形成する工程である。
より具体的には、まず、図1(F)に示すように、めっき触媒またはその前駆体が付与された絶縁層312が形成される。その後、図1(G)に示すように、穴18を介して第1の金属層14と導通する第2の金属層22が絶縁層312上に形成される。
以下では、本工程を、絶縁層にめっき触媒またはその前駆体を付与する工程Aと、めっき処理を行う工程Bとに分けて詳述する。
【0040】
<工程A>
工程Aでは、絶縁層にめっき触媒またはその前駆体を付与する。
以下に、まず、本工程で使用される材料について詳述し、その後工程の手順について詳述する。
【0041】
(めっき触媒またはその前駆体)
めっき触媒またはその前駆体は、後述するめっき処理における、めっきの触媒や電極として機能するものである。そのため、使用されるめっき触媒またはその前駆体の種類は、めっきの種類により適宜決定される。
なお、本工程において用いられるめっき触媒またはその前駆体は、無電解めっき触媒またはその前駆体であることが好ましい。なかでも、めっき触媒またはその前駆体は、還元電位の点から、Pd、Ag、またはCuを含む化合物であることが好ましい。
以下、まず、無電解めっきまたはその前駆体について詳述する。
【0042】
(無電解めっき触媒)
無電解めっき触媒は、無電解めっき時の活性核となるものであれば、如何なるものも用いることができ、具体的には、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)などが挙げられ、具体的には、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。中でも、多座配位可能なものが好ましく、配位可能な官能基の種類数、触媒能の高さから、Ag、Pd、Cuが特に好ましい。
【0043】
この無電解めっき触媒として、金属コロイドを用いてもよい。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤または荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができる。
【0044】
(無電解めっき触媒前駆体)
無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には、上記無電解めっき触媒として挙げた金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンを絶縁層212へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0045】
無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、金属塩を用いて絶縁層212(絶縁層212内部およびその表面)に付与することが好ましい。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO3)n、MCln、M2/n(SO4)、M3/n(PO4)Pd(OAc)n(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、及び触媒能の点で、Agイオン、Pdイオンが好ましい。
【0046】
本発明で用いられる無電解めっき触媒またはその前駆体の好ましい例の一つとして、パラジウム化合物が挙げられる。このパラジウム化合物は、めっき処理時に活性核となり金属を析出させる役割を果たす、めっき触媒(パラジウム)またはその前駆体(パラジウムイオン)として作用する。パラジウム化合物としては、パラジウムを含み、めっき処理の際に核として作用すれば、特に限定されないが、例えば、パラジウム(II)塩、パラジウム(0)錯体、パラジウムコロイドなどが挙げられる。
【0047】
パラジウム塩としては、例えば、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、臭化パラジウム、炭酸パラジウム、硫酸パラジウム、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)、ビス(エチレンジアミン)パラジウム(II)塩化物などが挙げられる。なかでも、取り扱いやすさと溶解性の点で、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、硫酸パラジウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)が好ましい。
パラジウム錯体としては、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム錯体、ジパラジウムトリスベンジリデンアセトン錯体などが挙げられる。
パラジウムコロイドは、パラジウム(0)から構成される粒子で、その大きさは特に制限されないが、液中での安定性の観点から、5nm〜300nmが好ましく、10nm〜100nmがより好ましい。パラジウムコロイドは、必要に応じて、他の金属を含んでいてもよく、他の金属としては、例えば、スズなどが挙げられる。パラジウムコロイドとしては、例えば、スズ−パラジウムコロイドなどが挙げられる。なお、パラジウムコロイドは、公知の方法で合成してもよいし、市販品を使用してもよい。例えば、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、パラジウムイオンを還元することによりパラジウムコロイドを作製することができる。
【0048】
(その他の触媒)
本工程において、無電解めっきを行わず直接電気めっきを行うために用いられる触媒としては、0価金属を使用することができる。この0価金属としては、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、触媒能の高さから、Pd、Ag、Cuが好ましい。
【0049】
(工程の手順)
めっき触媒またはその前駆体を絶縁層に付与する方法は、特に制限されない。
例えば、金属を適当な分散媒に分散した分散液、または、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その分散液若しくは溶液(以後、適宜めっき触媒液と称する)を絶縁層212上に塗布する方法、または、その分散液若しくは溶液中に絶縁層212が形成された基材を浸漬する方法などが挙げられる。
絶縁層212とめっき触媒液の接触時間としては、30秒〜20分程度であることが好ましく、1分〜10分程度であることがより好ましい。
接触時のめっき触媒液の温度は、10〜60℃程度であることが好ましく、10〜30℃程度であることがより好ましい。
なお、上記処理を行う前に、必要に応じて絶縁層にアルカリ脱脂処理を施してもよい。
【0050】
めっき触媒液の溶媒としては、水や有機溶媒が用いられる。
有機溶剤を含有することで、絶縁層212に対するめっき触媒液の浸透性が向上し、効率よくめっき触媒またはその前駆体を付与することができる。
【0051】
めっき触媒液に用いられる水としては、不純物を含まないことが好ましく、そのような観点からは、RO水や脱イオン水、蒸留水、精製水などを用いるのが好ましく、脱イオン水や蒸留水を用いるのが特に好ましい。
【0052】
めっき触媒液の調製に用いられる有機溶剤としては、絶縁層212に浸透しうる溶剤であれば特に制限されない。例えば、アセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、エチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、アセトフェノン、2−(1−シクロヘキセニル)、プロピレングリコールジアセテート、トリアセチン、ジエチレングリコールジアセテート、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブなどを用いることができる。
【0053】
溶剤の含有量は、めっき触媒液全量に対して0.5〜40質量%が好ましく、5〜30質量%であることがより好ましく、5〜20質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0054】
<工程B>
工程Bは、工程Aで得られた基材に対してめっき処理を行う工程である。
本工程において行われるめっき処理の種類は、無電解めっき、電解めっき等が挙げられ、上記工程において、絶縁層に付与されためっき触媒またはその前駆体の機能によって、選択することができる。
なかでも、形成される金属層の密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の層厚の金属層を得るために、無電解めっきの後に、更に電解めっきを行うことがより好ましい態様である。
以下、本工程において好適に行われるめっきについて説明する。
【0055】
(無電解めっき)
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与されたコア基材を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行う。使用される無電解めっき浴としては、公知の無電解めっき浴を使用することができる。なお、無電解めっき浴としては、入手のしやすさの点から、アルカリ性の無電解めっき浴(pHが9〜14程度が好ましい)を使用する場合が好ましい。
また、無電解めっき触媒前駆体が付与されたコア基材を、無電解めっき触媒前駆体が絶縁層に吸着または含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、コア基材を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴中へ浸漬させる。この場合には、無電解めっき浴中において、めっき触媒前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としても、上記同様、公知の無電解めっき浴を使用することができる。
【0056】
なお、無電解めっき触媒前駆体の還元は、上記のような無電解めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、無電解めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、液全体に対する該還元剤の濃度が0.1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
浸漬の際には、無電解めっき触媒またはその前駆体が接触する絶縁層表面付近の無電解めっき触媒またはその前駆体の濃度を一定に保つ上で、攪拌または揺動を加えながら浸漬することが好ましい。
【0057】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、例えば、溶剤(例えば、水)の他に、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
【0058】
めっき浴に用いられる有機溶剤としては、水に可能な溶媒である必要があり、その点から、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましく用いられる。
【0059】
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、例えば、銅、すず、鉛、ニッケル、金、銀、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物が選択される。
【0060】
このようにして形成される無電解めっきによる金属層の層厚は、めっき浴の金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、または、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.1μm以上であることが好ましく、0.2〜2μmであることがより好ましい。
ただし、無電解めっきによる金属層を導通層として、後述する電解めっきを行う場合は、少なくとも0.1μm以上の膜が均一に付与されていることが好ましい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
【0061】
(電解めっき(電気めっき))
本工程おいては、上記工程において付与されためっき触媒またはその前駆体が電極としての機能を有する場合、その触媒またはその前駆体が付与された絶縁層に対して、電解めっきを行うことができる。
また、前述の無電解めっきの後、形成された金属層を電極とし、更に、電解めっきを行ってもよい。これによりコア基材との密着性に優れた無電解めっき膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属層を容易に形成することができる。このように、無電解めっきの後に、電解めっきを行うことで、金属層を目的に応じた厚みに形成しうるため、金属層を種々の応用に適用するのに好適である。
【0062】
電解めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、電解めっきに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0063】
また、電解めっきにより得られる金属層の層厚は、めっき浴中に含まれる金属濃度、または、電流密度などを調整することで制御することができる。
なお、一般的な電気配線などに適用する場合、金属層の層厚は、導電性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、1〜30μmがより好ましい。
なお、電気配線の厚みは、電気配線の線幅が狭くなる、すなわち微細化するほどアスペクト比を維持するために薄くなる。従って、電解めっきによって形成される金属層の層厚は、上記に限定されず、任意に設定できる。
【0064】
<多層基板>
上述した本発明の製造方法により得られた多層基板は、2層以上の金属層を有しており、例えば、半導体チップ、各種電気配線板(多層配線基板)、FPC、COF、TAB、マザーボード、パッケージインターポーザー基板等の種々の用途に適用することができる。なお、本明細書において、多層基板とは、金属層を2層以上有する基板を意図する。
また、必要に応じて、配線基板などへの使用のために、第2の金属層上にさらに絶縁層を設けてもよい。絶縁層としては公知の材料を使用することができ、例えば、公知の層間絶縁膜、ソルダーレジストなどが挙げられる。
【0065】
上記工程により得られた2層の金属層を有する多層基板は、実装に適するように、その金属層上に別の絶縁層を設けて、さらなる配線を形成するコア基材として使用することもできる。
また、必要に応じて、得られた多層基板の第2の金属層をパターン状にエッチングして、パターン状金属層を形成してもよい(パターン形成工程)。パターンを形成する方法は特に制限されず、公知のセミアディティブ法、サブトラクティブ法などを適用することができる。
以下、図2および図3を参照して、パターン状金属層を形成する代表的な形成方法について説明する。なお、図2の方法はいわゆるセミアディティブ法に基づく方法であり、図3の方法はいわゆるサブトラクティブ法に基づく方法である。
【0066】
セミアディティブ法に基づく場合は、まず、上記工程Aを実施して、めっき触媒またはその前駆体が付与された絶縁層312を備えるコア基材を用意する(図2(A))。次に、無電解めっきを行い、第1の金属層14と導通する第2の金属層122を設ける(図2(B)参照)。次に、第2の金属層122上にパターン状のマスク40を設け(図2(C)参照)、マスク40が設けられていない領域(マスク40の非形成領域)にさらに第2の金属層222が形成されるように電解めっきを行う(図2(D))。電解めっきを行った後は、図2(E)に示すように、マスク40を除去する。該工程を経ることにより、凸部222aと凹部222bを含む第2の金属層222が得られる。
【0067】
次に、得られた凹凸構造を有する第2の金属層222に対してクイックエッチングを行うことにより、第2の金属層222中の配線部に対応する凸部222a以外の凹部222bが除去され、パターン状の第2の金属層322が得られる。
クイックエッチングの方法としては、公知の方法を使用することができる。例えば、湿式エッチング(エッチング液を使用する方法)、ドライエッチングのいずれでもよいが、作業性の観点からは、湿式エッチングが好ましい。エッチング液として、例えば、硫酸・過酸化水素系や、硫酸・過酸化水素・塩化第二銅系の水溶液を使用することができる。
マスク40としては、公知のレジスト材料を使用することができる。レジスト材料の種類は特に制限されず、ネガ型、ポジ型、液状、フィルム状のものが使用できる。レジスト層の除去方法は特に限定されず、公知の方法(アルカリ溶液による除去、ドライエッチング)を使用できる。
【0068】
サブトラクティブ法に基づく場合は、まず、上記工程Bを実施して、金属層14と導通する第2の金属層22が絶縁層312上に形成された多層基板を用意する(図3(A))。次に、図3(B)に示すように、第2の金属層22上の所定位置にマスク40を設ける。その後、図3(C)に示すように、マスク40が設けられていない領域(マスク40の非形成領域)の第2の金属層22をエッチング除去して、パターン状の第2の金属層322を得る。その後、図3(D)に示すように、マスク40を除去する。
【0069】
<第2および第3の実施態様>
上述した第1の実施態様においては、図1(A)で示したように、絶縁層12、第1の金属層14、および支持体16からなるコア基材10が開示されているが、本発明の製造方法で使用されるコア基材10の態様はこれに限定されない。コア基材中において、絶縁層12と第1の金属層14とが所定の位置にあればよい。
本発明の製造方法の第2の実施態様として、複数(2以上)の絶縁層および金属層が交互に配置された多層積層体(積層基板)をコア基材に使用する態様が挙げられる。なお、多層積層体では、絶縁層を介して上下に位置する金属層同士は、それらの間の絶縁層に形成された貫通導体を介して電気的に接続されていてもよい。
具体的には、図4(A)に示すように、支持体16上に、絶縁層12と、3層のパターン状の金属層214が積層したコア基材(積層基板)110であってもよい。
また、本発明の製造方法の第3の実施態様として、図4(B)に示す、絶縁層12と第1の金属層14とからなるコア基材210を使用する態様も挙げられる。
【0070】
<第4の実施態様>
本発明の製造方法の第4の実施態様として、絶縁層を最表層に少なくとも有するコア基材であって、該絶縁層の最表層にめっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有する密着絶縁層を少なくとも有するコア基材を使用する態様が挙げられる。より具体的には、図5(A)に示すように、密着絶縁層30と下部絶縁層32とを備える積層絶縁層412を有するコア基材310が使用される。該態様においては、絶縁層は2層構造の積層絶縁層412として記載されているが、その態様は限定されず、密着絶縁層単層であってもよい。
該態様においては、密着絶縁層30が所定の官能基を有しており、その上に形成される第2の金属層との密着性がより優れる。
以下、該態様で使用されるコア基材310を構成する層について詳述し、その後該コア基材310を使用した場合の本発明の製造方法の態様について詳述する。
【0071】
(密着絶縁層)
密着絶縁層30は、積層絶縁層412中、最表層に配置され、めっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有する層である。
密着絶縁層30は、含有されるめっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する官能基の機能に応じて、上述しためっき触媒またはその前駆体を効率よく吸着する。つまり、密着絶縁層30は、めっき触媒(またはその前駆体)の良好な受容層として機能する。その結果、密着絶縁層30の表面に形成される第2の金属層22との優れた密着性が得られる。
【0072】
密着絶縁層30の厚みは特に制限されないが、第2の金属層の密着性の点から、0.02〜5.0μmが好ましく、0.05〜2.0μmがより好ましい。
また、密着絶縁層30の表面粗さ(Ra)は、高精細配線形成の点から、10〜200nmが好ましく、20〜100nmがより好ましい。なお、表面粗さ(Ra)は、非接触式干渉法により、JIS B 0601(20010120改訂)に記載のRaに基づき、サーフコム3000A(東京精密(株)製)を用いて測定した。
【0073】
密着絶縁層30に含まれるめっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基(以後、適宜相互作用性基とも称する)としては、極性基や、多座配位を形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などの非解離性官能基(解離によりプロトンを生成しない官能基)が挙げられる。
【0074】
極性基としては、アンモニウム、ホスホニウムなどの正の荷電を有する官能基、若しくは、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有するか負の荷電に解離しうる酸性基が挙げられる。これらは解離基の対イオンの形で金属イオンと吸着する。
また、例えば、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシ基、シアノ基などの非イオン性の極性基も用いることもできる。
その他、イミノ基、1〜2級のアミノ基、アミド基、ウレタン基、水酸基(フェノールも含む)、チオール基などを用いることもできる。
【0075】
また、非解離性官能基としては、具体的には、金属イオンと配位形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などが好ましい。具体的には、イミド基、ピリジン基、3級のアミノ基、ピロリドン基、アミジノ基、トリアジン環構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基などの含酸素官能基、チオエーテル基、チオキシ基、スルホキシド基、サルファイト基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基、フォスフィン基などの含リン官能基、塩素、臭素などのハロゲン原子を含む基が挙げられる。また、隣接する原子または原子団との関係により非解離性を示す態様であれば、イミダゾール基、ウレア基、チオウレア基を用いてもよい。
中でも、相互作用性基としては、極性が高く、めっき触媒等への吸着能が高いことから、シアノ基またはカルボン酸基が特に好ましい。
【0076】
密着絶縁層30の形成方法は特に制限されず、塗布法、転写法、印刷法などの公知の層形成方法が使用される。
具体的には、めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する官能基を有するポリマーを後述する下部絶縁層32上に押出機でラミネートして密着絶縁層30を形成してもよい。また、該ポリマーを含有する組成物(以後、適宜密着絶縁層形成用組成物と称する)を用いて形成してもよい。組成物を使用する場合、使用する基材を密着絶縁層形成用組成物中に浸漬する方法や、密着絶縁層形成用組成物を後述する下部絶縁層32上に塗布する方法が挙げられる。
【0077】
(下部絶縁層)
下部絶縁層32は、積層絶縁層412中、上記密着絶縁層30の一方の面上に設けられる層であって、得られる多層基板中の金属層間の絶縁性を担保する機能を有する。
下部絶縁層32を構成する材料は特に制限されず、上述した絶縁層12を構成する材料が使用される。
また、下部絶縁層32は、2層以上の多層構造であってもよい。
【0078】
下部絶縁層32の厚みは特に制限されないが、得られる多層基板中の絶縁信頼性や、反りの抑制、あるいは特性インピーダンスなどの点から、10〜200μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。
【0079】
下部絶縁層32の形成方法は特に制限されず、絶縁層12の形成方法と同じ方法を使用することができる。
【0080】
(実施の手順)
上記コア基材310を使用した本発明の製造方法について、図5に基づいて詳述する。
まず、図5(A)に示す、コア基材310を用意し、上述した穴形成工程を実施することにより、密着絶縁層30の表面(下部絶縁層32がある側とは反対側の表面)から第1の金属層14に達する穴18を形成する(図5(B))。穴18の底部にはスミア20が堆積している。
【0081】
次に、上記金属付着工程で説明した手順を実施することにより、金属または金属イオンが表面に付着した密着絶縁層130を得る(図5(C)参照)。
その後、上記デスミア処理を行うことにより、穴18の底部に堆積したスミア20を除去する(図5(E)参照)。その際、密着絶縁層130は表面に付着した金属または金属イオンによって、プラズマエッチングから受けるダメージが抑制される。
【0082】
次に、上記洗浄工程を行うことにより、密着絶縁層130に付着していた金属または金属イオンが実質的に除去される(金属または金属イオンが付着した密着絶縁層130から、金属または金属イオンが実質的に除去された絶縁層230へ)と共に、穴18の底部に残存する樹脂や、第1の金属層14上に形成されていた酸化膜が除去される(図5(E)参照)。
その後、上記めっき工程の工程Aを実施することにより、めっき触媒またはその前駆体が付与された密着絶縁層330が得られる(図5(F))。
最後に、上記めっき工程の工程Bを実施することにより、穴を介して第1の金属層14と導通する第2の金属層22を密着樹脂層330上に形成することができる(図5(G))。
なお、上述したように、必要に応じて、形成された第2の金属層22をパターン状にしてもよい。
【0083】
<密着絶縁層の好適態様>
上記密着絶縁層30の好適な態様としては、めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する官能基と重合性基を有するポリマーを含む含有する密着絶縁層形成用組成物を下部絶縁層と接触させ、該下部絶縁層上の密着絶縁層形成用組成物にエネルギーを付与して形成される密着絶縁層が挙げられる。該態様であれば、密着絶縁層の上に形成される第2の金属層22の密着性がより優れる。
まず、該態様で使用される材料(ポリマーなど)について詳述し、その後該密着絶縁層の製造手順について説明する。
【0084】
(ポリマー)
使用されるポリマーは、めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する官能基と重合性基を有する。
相互作用性基については、上述の通りである。
【0085】
(重合性基)
重合性基は、エネルギー付与により、ポリマー同士、または、ポリマーと下部絶縁層との間に結合を形成しうる官能基であり、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基などが挙げられる。なかでも、反応性の観点から、ラジカル重合性基が好ましい。ラジカル重合性基としては、例えば、アクリル酸エステル基、メタクリル酸エステル基、イタコン酸エステル基、クロトン酸エステル基、イソクロトン酸エステル基、マレイン酸エステル基などの不飽和カルボン酸エステル基、スチリル基、ビニル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基などが挙げられる。なかでも、メタクリル酸エステル基、アクリル酸エステル基、ビニル基、スチリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基が好ましく、アクリロイル基、メタアクリロイル基、スチリル基が特に好ましい。
【0086】
重合性基および相互作用性基を有するポリマーとしては、相互作用性基を有するモノマーを用いて得られるホモポリマーやコポリマーに、重合性基としてビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基(重合性基)を導入したポリマーであることが好ましい。この重合性基および相互作用性基を有するポリマーは、少なくとも主鎖末端または側鎖に重合性基を有するものであり、側鎖に重合性基を有するものが好ましい。
【0087】
このような重合性基および相互作用性基を有するポリマーの合成方法は特に制限されず、公知の合成方法(特許公開2009−280905号の段落[0097]〜[0125]参照)が使用される。
【0088】
ポリマーの重量平均分子量は特に限定されないが、1000以上70万以下が好ましく、更に好ましくは2000以上20万以下である。特に、重合感度の観点から、重量平均分子量は、20000以上であることが好ましい。
また、ポリマーの重合度としては、10量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは20量体以上のものである。また、7000量体以下が好ましく、3000量体以下がより好ましく、2000量体以下が更に好ましく、1000量体以下が特に好ましい。
【0089】
(好適態様)
ポリマーの好適態様として、以下の式(1)で表されるユニット(重合性基含有ユニット)を有するポリマーが挙げられる。該ユニットがポリマー中に含まれることにより、密着樹脂層30とその上に形成される第2の金属層との優れた密着性が発現されると共に、膜中で架橋反応が進行し強度に優れた膜を得ることができる。
【0090】
【化1】

【0091】
式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、または置換若しくは無置換のアルキル基を表す。
1〜R4が、置換または無置換のアルキル基である場合、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。より具体的には、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としてはメトキシ基などで置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
【0092】
なお、R1としては、水素原子、またはメチル基が好ましい。R2としては、水素原子、またはメチル基が好ましい。R3としては、水素原子が好ましい。R4としては、水素原子が好ましい。
【0093】
YおよびZは、それぞれ独立して、単結合、または、置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基としては、置換若しくは無置換の二価の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜3)、置換若しくは無置換の二価の芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数6〜12)、−O−、−S−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基など)などが挙げられる。
【0094】
置換または無置換の二価の脂肪族炭化水素基(例えば、アルキレン基)としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、または、これらの基がメトキシ基などで置換されたものが好ましい。
置換または無置換の二価の芳香族炭化水素基としては、無置換のフェニレン基、または、メトキシ基などで置換されたフェニレン基が好ましい。
中でも、−(CH2)n−(nは1〜3の整数)が好ましく、更に好ましくは−CH2−である。
【0095】
YおよびZとしては、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、エーテル基(−O−)、または、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基などが好ましく挙げられる。
【0096】
1は、単結合、または、置換または無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上記YおよびZで表される有機基と同義であり、例えば、置換若しくは無置換の二価の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の二価の芳香族炭化水素基、−O−、−S−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
【0097】
1としては、単結合、無置換のアルキレン基、または、ウレタン結合若しくはウレア結合を有する二価の有機基(特に、脂肪族炭化水素基)が好ましく、無置換のアルキレン基およびウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。なお、ここで、L1の総炭素数とは、L1で表される置換または無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
1の構造として、より具体的には、式(1−1)、または式(1−2)で表される構造であることが好ましい。
【0098】
【化2】

【0099】
式(1−1)、および式(1−2)中、RaおよびRbは、それぞれ独立して、二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は上記と同様であり、好ましくは、置換若しくは無置換の、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、若しくはブチレン基などのアルキレン基、または、エチレンオキシド基、ジエチレンオキシド基、トリエチレンオキシド基、テトラエチレンオキシド基、ジプロピレンオキシド基、トリプロピレンオキシド基、テトラプロピレンオキシド基などのポリオキシアルキレン基などが挙げられる。
【0100】
式(1)で表されるユニットの好適態様として、式(1−A)で表されるユニットが挙げられる。
【0101】
【化3】

【0102】
式(1−A)中、R1、R2、ZおよびL1は、式(1)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。Tは、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0103】
式(1−A)で表されるユニットの好適態様として、式(1−B)で表されるユニットが挙げられる。
【0104】
【化4】

【0105】
式(1−B)中、R1、R2、およびL1は、式(1−A)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。VおよびTは、酸素原子、またはNR(Rは、水素原子またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0106】
上記式(1−B)において、Tは、酸素原子であることが好ましい。
また、上記式(1−A)および式(1−B)において、L1は、無置換のアルキレン基、または、ウレタン結合若しくはウレア結合を有する二価の有機基(特に、アルキレン基)が好ましく、ウレタン結合を有する二価の有機基がより好ましく、総炭素数1〜9であるものが特に好ましい。
【0107】
ポリマー中における式(1)で表されるユニットの含有量は特に制限されないが、反応性(重合性、硬化性)および絶縁層との密着性の点で、全ユニット(100モル%)に対して、5〜50モル%が好ましく、5〜40モル%がより好ましい。5モル%未満の場合、反応性(硬化性、重合性)が低下する場合があり、50モル%を超える場合、ポリマーの合成の際にゲル化が起きやすく、反応の制御が難しくなる。
【0108】
ポリマーの好適態様として、以下の式(2)で表されるユニット(相互作用性基含有ユニット)を有するポリマーが挙げられる。該ユニットがポリマー中に含まれることにより、めっき触媒またはその前駆体への吸着性が向上し、密着樹脂層30と第2の金属層との優れた密着性が担保される。
【0109】
【化5】

【0110】
式(2)中、R5は、水素原子、または、置換若しくは無置換のアルキル基を表す。R5で表される置換または無置換のアルキル基は、上述したR1〜R4で表される置換または無置換のアルキル基と同義である。
5としては、水素原子、メチル基、または、ヒドロキシ基若しくは臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
【0111】
XおよびL2は、それぞれ独立して、単結合、または置換若しく無置換の二価の有機基を表す。二価の有機基の定義は、上記ZおよびYで表される二価の有機基と同義であり、例えば、置換若しくは無置換の二価の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の二価の芳香族炭化水素基、−O−、−S−、−N(R)−(R:アルキル基)、−CO−、−NH−、−COO−、−CONH−、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
【0112】
Xとしては、単結合、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)、エーテル基(−O−)、または置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基などが好ましく挙げられ、より好ましくは単結合、エステル基(−COO−)、アミド基(−CONH−)である。
【0113】
2は、単結合、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、またはこれらを組み合わせた基であることが好ましい。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。
中でも、L2は総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、L2の総炭素数とは、L2で表される置換または無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、およびこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0114】
Wは、めっき触媒またはその前駆体と相互作用を形成する官能基(相互作用性基)を表し、その定義は上述の通りである。なかでも、めっき触媒またはその前駆体への吸着性に優れる点で、シアノ基またはカルボン酸基が好ましい。
【0115】
なお、該ポリマー中においては、Wの種類が異なる2種以上の式(2)で表されるユニットを含んでいてもよく、得られる多層基板の接続信頼性や歩留りがより優れる点で、Wがシアノ基である式(2)で表されるユニットと、Wがカルボン酸基である式(2)で表されるユニットとが含まれることが好ましい。
【0116】
式(2)で表されるユニットの好適態様として、式(2−A)または式(2−B)で表されるユニットが挙げられる。
【0117】
【化6】

【0118】
上記式(2−A)中、R5、L2およびWは、式(2)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。Uは、酸素原子、またはNR’(R’は、水素原子、またはアルキル基を表し、好ましくは、水素原子、または炭素数1〜5の無置換のアルキル基である。)を表す。
【0119】
式(2−A)におけるL2は、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基(なかでも、二価の芳香族炭化水素基が好ましい)、またはこれらを組み合わせた基であることが好ましい。
特に、式(2−A)においては、L2中のWとの連結部位が、直鎖、分岐、または環状のアルキレン基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、この二価の有機基が総炭素数1〜10であることが好ましい。
また、別の好ましい態様としては、式(2−A)におけるL2中のWとの連結部位が、芳香族基を有する二価の有機基であることが好ましく、中でも、該二価の有機基が、総炭素数6〜15であることが好ましい。
【0120】
式(2−B)中、R5およびWは、式(2)で表されるユニット中の各基の定義と同じである。
【0121】
ポリマー中における式(2)で表されるユニットの含有量は特に制限されないが、めっき触媒などに対する吸着性の点で、全ユニット(100モル%)に対して、5〜94モル%が好ましく、10〜80モル%がより好ましい。
【0122】
ポリマー中における各ユニットの結合様式は特に限定されず、各ユニットがランダムに結合したランダム重合体であっても、各ユニットが同じ種類同士連結してブロック部を形成するブロックポリマーであってもよい。
【0123】
ポリマーは、上述した式(1)で表されるユニット、式(2)で表されるユニット以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他のユニットを含んでいてもよい。
【0124】
(密着絶縁層形成用組成物)
密着絶縁層形成用組成物には上記ポリマーが含有される。
密着絶縁層形成用組成物中のポリマーの含有量は特に制限されないが、組成物全量に対して、2〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、密着絶縁層の層厚の制御がしやすい。
【0125】
密着絶縁層形成用組成物は、上記ポリマー以外に、必要に応じて溶剤が含まれていてもよい。
使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤、酢酸などの酸、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶剤、アセトニトリル、プロピロニトリルなどのニトリル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート系溶剤、この他にも、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤、チオール系溶剤、ハロゲン系溶剤などが挙げられる。
この中でも、アミド系溶剤、ケトン系溶剤、ニトリル系溶剤、カーボネート系溶剤が好ましく、具体的には、アセトン、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネートが好ましい。
【0126】
密着絶縁層形成用組成物中の溶剤の含有量は特に制限されないが、組成物全量に対して、50〜98質量%が好ましく、70〜95質量%がより好ましい。上記範囲内であれば、組成物の取扱い性に優れ、密着絶縁層の層厚の制御がしやすい。
【0127】
なお、密着絶縁層形成用組成物には、更に、界面活性剤、可塑剤、重合禁止剤、硬化剤、ラジカル発生剤、増感剤、ゴム成分(例えば、CTBN)、難燃化剤(例えば、りん系難燃化剤)、希釈剤やチキソトロピー化剤、顔料、消泡剤、レべリング剤、カップリング剤などを添加してもよい。
【0128】
(工程の手順)
上述した密着絶縁層形成用組成物を下部絶縁層に接触させる方法は特に限定されず、密着絶縁層形成用組成物を直接下部絶縁層上にラミネートする方法や、密着絶縁層形成用組成物が溶剤を含む液状である場合、該組成物を下部絶縁層上に塗布する方法などが挙げられる。得られる密着絶縁層の厚みを制御しやすい点から、組成物を塗布する方法が好ましい。
塗布の方法は特に制限されず、具体的な方法としては、ダブルロールコータ、スリットコータ、エアナイフコータ、ワイヤーバーコータ、スライドホッパー、スプレーコーチィング、ブレードコータ、ドクターコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ、トランスファーロールコータ、エクストロージョンコータ、カーテンコータ、ダイコータ、グラビアロールによる塗工法、押し出し塗布法、ロール塗布法等の公知の方法を用いることができる。
取り扱い性や製造効率の観点からは、密着絶縁層形成用組成物を下部絶縁層上に塗布・乾燥させて、残存する溶媒を除去して、ポリマーを含む組成物層を形成する態様が好ましい。
【0129】
密着絶縁層形成用組成物を下部絶縁層と接触させる場合、その塗布量は、めっき触媒またはその前駆体との充分な相互作用形成性の観点から、固形分換算で0.1g/m2〜10g/m2が好ましく、特に0.5g/m2〜5g/m2が好ましい。
なお、本工程において密着絶縁層を形成するに際しては、塗布と乾燥との間に、20〜40℃で0.5時間〜2時間放置させて、残存する溶剤を除去してもよい。
【0130】
(エネルギーの付与)
下部絶縁層上(または支持体上)の密着絶縁層形成用組成物にエネルギー付与する方法は特に制限されないが、例えば、加熱や露光などが用いられることが好ましい。
露光には、UVランプ、可視光線などによる光照射等が用いられる。光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
一般的に用いられる具体的な態様としては、赤外線レーザによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や、赤外線ランプ露光などが好適に挙げられる。
露光時間としては、ポリマーの反応性および光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。露光エネルギーとしては、10〜8000mJ程度であればよく、好ましくは100〜3000mJの範囲である。
【0131】
なお、エネルギー付与として加熱を用いる場合、送風乾燥機、オーブン、赤外線乾燥機、加熱ドラムなどを用いることができる。
【0132】
図5(A)で示した上記コア基材310としては、密着絶縁層30、下部絶縁層32、第1の金属層14、および支持体16からなる構成が開示されているが、密着絶縁層30が絶縁層中において所定の位置にあればコア基材310の態様はこれに限定されない。
例えば、複数(2以上)の絶縁層および金属層が交互に配置され、最表面に絶縁層が配置され、その絶縁層中の最表層に密着絶縁層が配置される多層積層体(積層基板)をコア基材に使用する態様が挙げられる。また、各絶縁層の最表層に密着絶縁層が配置されていてもよい。
なお、該多層積層体では、絶縁層を介して上下に位置する金属層同士は、それらの間の絶縁層に形成された貫通導体を介して電気的に接続されていてもよい。
具体的には、図6に示すように、支持体16上に、密着絶縁層30と下部絶縁層32とからなる積層絶縁層が3層と、パターン状の金属層214が3層積層したコア基材(積層基板)410であってもよい。
【実施例】
【0133】
以下、実施例により、本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0134】
以下に、本実施例で使用するポリマーの合成方法について詳述する。
(合成例1:ポリマーA)
2Lの三口フラスコに酢酸エチル1L、2−アミノエタノール159gを入れ、氷浴にて冷却をした。そこへ、2−ブロモイソ酪酸ブロミド150gを内温20℃以下になるように調節して滴下した。その後、内温を室温(25℃)まで上昇させて2時間反応させた。反応終了後、蒸留水300mLを追加して反応を停止させた。その後、酢酸エチル層を蒸留水300mLで4回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに酢酸エチルを留去することで原料Aを80g得た。
次に、500mLの三口フラスコに、原料A47.4g、ピリジン22g、酢酸エチル150mLを入れて氷浴にて冷却した。そこへ、アクリル酸クロライド25gを内温20℃以下になるように調節して滴下した。その後、室温に上げて3時間反応させた。反応終了後、蒸留水300mLを追加し、反応を停止させた。その後、酢酸エチル層を蒸留水300mLで4回洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、さらに酢酸エチルを留去した。その後、カラムクロマトグラフィーにて、以下のモノマーMを精製し20g得た。
【0135】
【化7】

【0136】
500mLの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド8gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、モノマーM:14.3g、アクリロニトリル(東京化成工業(株)製)3.0g、アクリル酸(東京化成製)6.5g、V−65(和光純薬製)0.4gのN,N−ジメチルアセトアミド8g溶液を、4時間かけて滴下した。
滴下終了後、更に反応溶液を3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド41gを追加し、室温まで反応溶液を冷却した。上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成製)0.09g、DBU54.8gを加え、室温で12時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液54g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、ポリマーA(重量平均分子量3.4万)(Mw/Mn=1.8)を12g得た。得られたポリマーAの酸価を、電位差自動滴定装置(京都電子工業(株)製)、および滴定液として0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いて測定したところ、このポリマーAの酸価は3.9mmol/gであった。
【0137】
得られたポリマーAの同定をIR測定機((株)堀場製作所製)を用いて行った。測定はポリマーをアセトンに溶解させKBr結晶を用いて行った。IR測定の結果、2240cm-1付近にピークが観測されニトリルユニットであるアクリロニトリルがポリマーに導入されている事が分かった。また、酸価測定によりカルボン酸ユニットとしてアクリル酸が導入されている事が分かった。また、重DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、ブルカー製300MHzのNMR(AV−300)にて測定を行った。ニトリル基含有ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(5H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニットに相当するピークが7.8−8.1ppm(1H分)、5.8−5.6ppm(1H分)、5.4−5.2ppm(1H分)、4.2−3.9ppm(2H分)、3.3−3.5ppm(2H分)、2.5−0.7ppm(6H分)にブロードに観察され、カルボン酸含有ユニットに相当するピークが2.5−0.7ppm(3H分)にブロードに観察され、重合性基含有ユニット:ニトリル基含有ユニット:カルボン酸基ユニット=30:30:40(mol%)であることが分かった。
【0138】
【化8】

【0139】
<実施例1>
[1.絶縁層の作製]
パターン状の第1の金属層(ランド:φ150μm)(銅箔)が予め形成されたガラスエポキシ基板上に、電気的絶縁層として味の素ファインテクノ社製エポキシ系絶縁膜ABF GX−13(膜厚40μm)を、加熱、加圧して、真空ラミネーターにより0.2MPaの圧力で100〜110℃の条件により接着して、下部絶縁層を形成した。
【0140】
ポリマーAの7%アセトニトリル溶液(密着絶縁層形成用組成物)を上記下部絶縁層上に、スピンコータ(300rpmで5秒回転後、750rpmで20秒回転)にて塗布し、80℃にて30分乾燥した。乾燥後、三永電機製のUV露光機(型番:UVF−502S、ランプ:UXM−501MD)を用い、石英製のマスクを介して10mW/cm2の照射パワー(ウシオ電機製紫外線積算光量計UIT150−受光センサーUVD−S254で照射パワー測定)にて、100秒間照射し、下部絶縁層全面に密着樹脂層を形成した。積算露光量は500mJであった。
【0141】
その後、攪拌した状態のアセトニトリル中に上記基板を5分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄した。これにより、絶縁層の最表層に密着絶縁層が配置されたコア基材を得た。密着樹脂層の厚みは、0.3μmであった。
【0142】
[2.穴形成工程]
上記で得られた下部絶縁層と密着絶縁層からなる絶縁層に対して、炭酸ガスレーザ(HITACHI社製、LC−2E21B/1C)により、径60μmの銅箔(第1の金属層)に到達する穴(ビアホール)を所定の位置に形成した。
【0143】
[3.金属付着工程]
上記穴開け加工が施されたコア基材を、5質量%硝酸銀水溶液(めっき触媒液)に常温で15分間浸漬した。密着絶縁層への銀イオンの吸着量は400mg/m2であった。
【0144】
[4.デスミア工程]
銀イオンが密着絶縁層上に付着したコア基材に対して、プラズマ処理機(MW−DF方式、ニッシン社製)を用いて、90秒間ドライデスミアを行った。
【0145】
[5.洗浄工程]
デスミア処理が施されたコア基材を、10%硫酸水溶液(40℃)にて20分間洗浄した。洗浄後の密着絶縁層での銀イオンの残存量は、検出限界の0.5mg/m2以下であった。
【0146】
[6.無電解めっき工程]
(めっき触媒の付与)
洗浄工程後、得られたコア基材の表面をアルカリ脱脂処理し、得られたコア基材を、硝酸パラジウムの0.05質量%アセトン溶液に、30分間浸漬した後、アセトンおよび蒸留水で、各々1〜2分間洗浄した。
【0147】
(無電解めっき処理)
上記のようにして、めっき触媒が付与されたコア基材に対し、上村工業(株)製スルカップPGTを用い、下記組成の無電解めっき浴を用い、温度26℃で60分間無電解めっきを行い、密着絶縁層表面に無電解銅めっき層(第2の金属層)を有する多層基板を得た。得られた無電解銅めっき層の厚み(密着絶縁層表面からの第2の金属層表面までの厚み)は1.0μmであった。なお、第2の金属層は、穴形成工程で形成した穴を介して第1の金属層と電気的に接続していた(図2(B)参照)。
無電解めっき液の調液順序及び原料は以下の通りである。
蒸留水 約60容量%
PGT−A 9.0容量%
PGT−B 6.0容量%
PGT−C 3.5容量%
ホルマリン液* 2.3容量%
最後に、全量が100容量%となるように蒸留水にて液面調整した。
*ここで用いたホルマリンは、和光純薬のホルムアルデヒド液(特級)である。
【0148】
[7.フィリングめっき、および、配線パターン形成工程]
1%硫酸水溶液にて無電解銅めっき層表面を洗浄した後、温度110±10℃、圧力0.35±0.05Mpaにて、ドライフィルムレジスト(ALPHO NIT3025:ニチゴー・モートン(株)社製)をラミネートした。回路パターンの焼付けを、ガイド穴を基準として超高圧水銀ランプで120mJ/cm2にて紫外線を照射してパターン露光を実施した後、1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて30℃にてスプレー圧0.15MPaにてドライフィルムレジストを現像してめっきレジストパターンを形成した(図2(C)参照)。
【0149】
第2の導電層を給電層として、下記組成の電気銅めっき浴を用い、2.2A/dm2の条件で、電気めっきを25分間行った。得られた電気銅めっき層の厚み(密着絶縁層表面からの電気銅めっき層表面までの厚み)は20μmであった(図2(D)参照)。
【0150】
(電気めっき浴の組成)
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
【0151】
4質量%水酸化ナトリウム水溶液をレジスト剥離液として用い、80℃にてスプレー圧0.2MPaにて100秒間表面に適用することでめっきレジストパターンを剥離除去処理した(図2(E)参照)。その後、非回路パターン部分の下地導電層として使用した銅がなくなるように過水硫酸系のソフトエッチング液にて除去して、配線パターンを有する多層基板を作製した((図2(F)参照))。なお、形成された配線パターンのライン/スペース(L/S)は、15μm/15μmであった。
【0152】
<実施例2>
[5.洗浄工程]において、10%硫酸水溶液の代わりに10%硝酸水溶液を使用した以外は、実施例1と同様の手順に従って、多層基板を形成した。なお、洗浄後の密着絶縁層での銀イオンの残存量は、検出限界の0.5mg/m2以下であった。
【0153】
<実施例3>
[3.金属付着工程]において、0.05質量%硝酸銀水溶液を使用して、該水溶液にコア基材を常温で3分間浸漬し、密着絶縁層への銀イオンの吸着量を60mg/m2にした以外は、実施例1と同様の手順に従って、多層基板を形成した。
【0154】
<実施例4>
[3.金属付着工程]において、5質量%酢酸銅水溶液を使用して、該水溶液にコア基材を常温で3分間浸漬し、密着絶縁層への2価の銅イオン吸着量を200mg/m2にした以外は、実施例1と同様の手順に従って、多層基板を形成した。
【0155】
<実施例5>
[3.金属付着工程]において、0.5%酢酸パラジウムを使用して、該水溶液にコア基材を常温で15分間浸漬し、密着絶縁層への2価のパラジウムイオン吸着量を205mg/m2にした以外は、実施例1と同様の手順に従って、多層基板を形成した。
【0156】
<実施例6>
[3.金属付着工程]において、5質量%酢酸亜鉛水溶液を使用して、該水溶液にコア基材を常温で15分間浸漬し、密着絶縁層への亜鉛イオンの吸着量を180mg/m2にした以外は、実施例1と同様の手順に従って、多層基板を形成した。
【0157】
<実施例7>
[3.金属付着工程]において、5質量%硫酸アルミニウム水溶液を使用して、該水溶液にコア基材を常温で15分間浸漬し、密着絶縁層へのアルミニウムイオンの吸着量を140mg/m2にした以外は、実施例1と同様の手順に従って、多層基板を形成した。
【0158】
<比較例1>
[3.金属付着工程]において、5質量%水酸化カリウム水溶液を使用して、該水溶液にコア基材を常温で15分間浸漬し、密着絶縁層へのカリウムイオンの吸着量を410mg/m2にした以外は、実施例1と同様の手順に従って、多層基板を形成した。
【0159】
<比較例2>
[3.金属付着工程]において、5質量%水酸化セシウム水溶液を使用して、該水溶液にコア基材を常温で15分間浸漬し、密着絶縁層へのセシウムイオンの吸着量を400mg/m2にした以外は、実施例1と同様の手順に従って、多層基板を形成した。
【0160】
<比較例3>
[3.金属付着工程]において、5質量%塩化カルシウム水溶液を使用して、該水溶液にコア基材を常温で15分間浸漬し、密着絶縁層へのカルシウムイオンの吸着量を190mg/m2にした以外は、実施例1と同様の手順に従って、多層基板を形成した。
【0161】
<比較例4>
[3.金属付着工程]において、5質量%塩化マグネシウム水溶液を使用して、該水溶液にコア基材を常温で15分間浸漬し、密着絶縁層へのマグネシウムイオンの吸着量を185mg/m2にした以外は、実施例1と同様の手順に従って、多層基板を形成した。
【0162】
<比較例5>
[3.金属付着工程]を行わなかった以外は、実施例1と同様の手順に従って、多層基板の製造を行った。
【0163】
<各種評価>
(デスミア工程後の密着絶縁層の残膜率測定)
上記[4.デスミア工程]前後における密着絶縁層の厚みを、電界放出形走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー;SU8000)を用いて、断面観察により測定し、その残膜率{(デスミア工程後の密着絶縁層の厚み/デスミア工程前の密着絶縁層の厚み)×100}を求めた。結果を表1にまとめて示す。
なお、厚みは、任意の30箇所以上の点を測定して、平均した値である。
【0164】
(ピール強度)
各実施例および比較例で実施した[6.無電解めっき工程]後に、[7.パターン形成工程]にてドライフィルムレジストの工程を介さず、直接、電気めっき(電流密度:2.2A/dm2、時間:60分間)を行い、銅厚20μmのベタめっき基板を得た。その後、この基板に180℃、60分間の熱処理を施し、JIS C 6471に記載の90°引き剥がし試験を行なった。結果を表1にまとめて示す。
なお、実用上、ピール強度は0.6kN/m以上であることが好ましい。
【0165】
(パターン形成性)
各実施例および比較例にて得られた、ライン/スペース(L/S):15μm/15μmの配線パターンについて、顕微鏡にて配線200本を観察した。各配線において、ショート、断線、または、配線剥離がある場合を不良と判定し、これらのパターン不良率(%){(不良と判定された配線の数/200)×100}を算出した。
なお、実用上、パターン不良率はラボスケール品においても数%以下であることが好ましい。
【0166】
(ビアフィリング性)
各実施例および比較例にて得られたビアホールを研磨加工によって断面出し(ビアホール;100ヶ)を行い、走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー、S−3700N)にてフィリング状態を観察した。ビア内にボイドが存在する場合や、めっき接続不良がある場合をフィリング不良と判定し、これらのビアフィリング不良率(%){(不良と判定されたビアホール数/100)×100}を算出した。
なお、実用上、ビアフィリング不良率は0.3%以下であることが好ましい。
【0167】
【表1】

【0168】
上記実施例1〜7に示すように、本願発明の製造方法を用いて多層基板を製造した場合、形成される第2の金属層の密着性およびパターン形成性(高精細性)が優れると共に、ビアフィリング性も良好であった。
特に、周期表第10族、第11族の遷移金属元素である、銅、銀、およびパラジウムを使用した場合、より優れた効果が得られた。
【0169】
一方、比較例1〜4に示されるように、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を付着させた場合、ドライデスミアに対し、若干の膜減り抑制効果は見られるものの、密着性の著しい低下した。それに伴いパターン形成性、ビアフィリング性が大きく悪化した。
さらに、比較例5で示されるように、金属または金属イオンを付着させずに、プラズマエッチングを行った所、密着絶縁層が完全に除去されてしまった。比較例5では、めっきは析出するものの、ビール強度が極めて弱かった。また、配線パターンは全く形成されず、ビアフィリングについてもピール強度が弱いためか、電気めっき中にめっき膜剥がれが生じ、フィリングめっき自体がほとんど実施できなかった。
【符号の説明】
【0170】
10、110、210、310、410:コア基材
12:絶縁層
14、114:第1の金属層
16:支持体
18:穴
20:スミア
22、122、222:第2の金属層
26:ビアホール
30:密着絶縁層
32:下部絶縁層
40:マスク
112:金属または金属イオンが表面付着した絶縁層
130:金属または金属イオンが表面付着した密着絶縁層
212:金属または金属イオンが実質的に除去された絶縁層
214:パターン状の金属層
230:金属または金属イオンが実質的に除去された密着絶縁層
222a:凸部
222b:凹部
312:めっき触媒またはその前駆体が付与された絶縁層
330:めっき触媒またはその前駆体が付与された密着絶縁層
322:パターン状の第2の金属層
412:積層絶縁層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
最表層に配置された絶縁層と前記絶縁層の一方の面に設けられた第1の金属層とを少なくとも有するコア基材に対して、穴開け加工を施し、前記絶縁層の他方の面から前記第1の金属層に達する穴を前記絶縁層中に設ける穴形成工程、および、前記絶縁層の他方の面に原子番号13〜14、21〜33、および39〜50からなる群から選ばれる金属またはそのイオンを付着させる金属付着工程の2つの工程を順不同で行う基材前処理工程と、
前記基材前処理工程後に、プラズマエッチングによりデスミア処理を行うデスミア工程と、
前記デスミア工程後に、酸性溶液を用いて前記コア基材を洗浄する洗浄工程と、
前記絶縁層にめっき触媒またはその前駆体を付与して、めっき処理を行い、前記穴を介して前記第1の金属層と導通する第2の金属層を前記絶縁層上に形成するめっき工程と、を備えた多層基板の製造方法。
【請求項2】
前記酸性溶液が、塩酸、硫酸、または硝酸を含む、請求項1に記載の多層基板の製造方法。
【請求項3】
前記金属付着工程における前記金属またはそのイオンの付着量が、50〜1000mg/m2である、請求項1または2に記載の多層基板の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁層が、最表層にめっき触媒またはその前駆体と相互作用する官能基を有する密着絶縁層を少なくとも有する絶縁層である、請求項1〜3のいずれかに記載の多層基板の製造方法。
【請求項5】
前記穴開け加工が、ドリル加工またはレーザ加工である、請求項1〜4のいずれかに記載の多層基板の製造方法。
【請求項6】
最表層に配置された絶縁層と前記絶縁層の一方の面に設けられた第1の金属層とを少なくとも有する基材のデスミア処理方法であって、
穴開け加工を施して前記絶縁層中に前記絶縁層の他方の面から前記第1の金属層に達する穴を設ける穴形成工程および前記絶縁層の他方の面に原子番号13〜14、21〜33、および39〜50からなる群から選ばれる金属またはそのイオンを付着させる金属付着工程の2つの工程を順不同で行い、その後プラズマエッチングを行う、基材のデスミア処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−174758(P2012−174758A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32915(P2011−32915)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】